説明

基板洗浄液

【課題】Low−k材等の基板材料を腐食させずに、埋め込み材を選択的に除去することができる基板洗浄液を提供する。
【解決手段】フッ化物塩および水を含有する基板洗浄液であって、このフッ化物塩の含有量を、基板洗浄液全体を100質量%として、10質量%以上50質量%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路パターン製造時において、基板をエッチング、アッシング処理等した際に発生する残渣を洗浄する際に用いる基板洗浄液に関する。特に、電子回路パターン製造時において埋め込み材を使用した場合に、この埋め込み材を選択的に除去することができる基板洗浄液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ上の集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)、液晶表示板(LCD)等は、一般的にフォトリソグラフィー技術を用いて、基板上に微細な電子回路パターンを形成して製造されている。具体的には、酸化ケイ素等の絶縁膜、Al、AlCu、AlSiCu、Cu、Ti、TiN等の金属膜、またはスピンオングラス(SOG)等の低誘電層間絶縁膜(いわゆるLow−k材からなる膜)が形成された基板ウエハ上に、レジストを塗布し、所望のパターンを形成したマスクを通じて露光し、現像することで、所望の部位にレジストパターンを形成させ、次いでこのレジストパターン上から上記絶縁膜、金属膜、または低誘電層間絶縁膜に対してエッチング、アッシング処理を行い、その後レジストパターンを除去して製造されている。
【0003】
上記の低誘電層間絶縁膜を形成しているLow−k材とは、低誘電率の絶縁材料であり、これを使用することにより、層間絶縁膜の誘電率を低くすることができる。そして、配線間の容量は、層間絶縁膜の誘電率に比例することから、Low−k材を使用することによって、配線容量が低減され、LSIの高速動作の障害となるクロストーク(配線間に生じる相互干渉効果)を低減することができる。
【0004】
また、近年、半導体素子の高集積化とチップサイズの縮小化に伴い、配線回路の微細化および多層化が進む中、半導体素子においては、用いる金属膜の抵抗と配線容量に起因する配線遅延などが問題視されている。そして、このような問題を解決するために、配線材料として、従来用いられているアルミニウムから、より配線抵抗の少ない、たとえば銅のような金属を用いる方向へと移行している。
【0005】
そして、銅を配線材料として用いた場合は、絶縁膜の溝に銅を埋め込んで配線を形成するダマシン法、あるいはViaホールの形成と配線になる溝の形成とを連続的に行い、銅の埋め込みも同時に行うデュアルダマシン法が行われている。そして、ダマシン法およびデュアルダマシン法において、パターン転写処理が繰り返される際に、形成したViaホールあるいは配線溝を一時的に埋める埋め込み材が使用されている。
【0006】
この埋め込み材は、レジストパターンを形成するために一時的に付与されるもので、最終的に除去する必要がある。よって、エッチングおよびアッシング処理後に、配線溝の底部等に埋め込み材が残存している場合は、この埋め込み材を洗浄液によって除去する必要がある。そして、この洗浄液は、基板を形成している材料である、酸化ケイ素あるいはLow−k材等を腐食しないことが必要である。
【0007】
また、埋め込み材を埋め込んだ後で、前工程をやり直す必要がある場合、この埋め込んだ埋め込み材を除去して、元の状態に戻すことが要求される場合がある。この場合、酸化ケイ素、Low−k材等を腐食しないで、埋め込み材のみを除去することができる洗浄液が必要とされていた。
【0008】
配線基板の加工において使用されている、レジスト残渣等を剥離するための剥離液としては、特許文献1に、フッ化水素酸の塩、水溶性有機溶媒、所定のメルカプト基含有防食剤、および水を含有するフォトレジスト用剥離液が記載されている。
【特許文献1】特開2003−114539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した埋め込み材は有機シロキサン系ポリマーから形成されており、Low−k材とほぼ同一の組成を有している。よって、特許文献1に記載の剥離液によって、埋め込み材を除去しようとした場合においては、同時にLow−k材の腐食を進行させてしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、Low−k材等の基板材料を腐食させずに、埋め込み材を選択的に除去することができる基板洗浄液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を続けた結果、フッ化物塩の濃度を調整した基板洗浄液を用いることによって、Low−k材等の基板材料の腐食を抑えつつ、相対的に埋め込み材の除去性を向上させることができることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0012】
第一の本発明は、フッ化物塩および水を含有する基板洗浄液であって、このフッ化物塩の含有量が、基板洗浄液全体を100質量%として、10質量%以上50質量%以下である、基板洗浄液である。
【0013】
上記の基板洗浄液において、フッ化物塩は、フッ化アンモニウムであることが好ましい。
【0014】
上記の基板洗浄液において、基板洗浄液全体を100質量%として、0.0001〜0.01質量%の水溶性高分子をさらに含んでいることが好ましい。
【0015】
上記の基板洗浄液において、基板洗浄液全体を100質量%として、10質量%以下の有機溶剤をさらに含んでいることが好ましい。
【0016】
第二の本発明は、低誘電層間絶縁膜と埋め込み材とを有する基板を、上記第一の本発明の基板洗浄液に接触させて、この基板から埋め込み材を選択的に除去する基板の洗浄方法である。
【0017】
第三の本発明は、低誘電層間絶縁膜を有する基板上にレジストパターンを形成し、エッチングおよびアッシング処理により、レジストパターンを転写する第一工程、このレジストパターンに埋め込み材を埋め込んで、基板上を平滑にする第二工程、第一工程を繰り返して、別のレジストパターンを転写する第三工程、並びに、基板と上記の第一の本発明の基板洗浄液とを接触させて、基板から埋め込み材の残渣を除去する第四工程、を有する基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の基板洗浄液によれば、フッ化物塩の濃度を一定範囲に調整することによって、Low−k材等の基板材料の腐食を抑えつつ、相対的に埋め込み材の除去性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の基板洗浄液について、より詳しく説明する。
本発明の基板洗浄液は、フッ化物塩、および水を含有する。また、本発明の基板洗浄液は、必要に応じて、さらに、水溶性高分子、有機溶剤、界面活性剤、金属防食剤、金属酸化物除去剤、pH調整剤等を含んでいてもよい。
【0020】
<フッ化物塩>
フッ化物塩としては、フッ化アンモニウム塩、あるいはメチルアミンフッ化水素塩、エチルアミンフッ化水素塩、プロピルアミンフッ化水素塩、メチルエタノールアミンフッ化水素塩、ジメチルエタノールアミンフッ化水素塩などのアルキルアミンフッ化水素塩等が好ましく用いられる。これらの化合物は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明においては、これらのフッ化物塩の中でも洗浄効果が高いという理由から、フッ化アンモニウム塩を用いることが好ましい。なお、フッ化アンモニウム塩は、そのカチオン種であるアンモニウムイオンの窒素原子に結合する4個の水素原子のうちの一部または全部が置換されていてもよく、アンモニウム塩を構成する置換基としては、特に制限されるものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜3の低級アルキル基またはフェニル基などのアリール基などが好ましく挙げられる。
【0022】
本発明において好ましく用いられるフッ化アンモニウム塩としては、フッ化アンモニウム;フッ化モノメチルアンモニウム、フッ化モノエチルアンモニウム、フッ化モノフェニルアンモニウムなどのフッ化第1級アンモニウム塩;フッ化ジメチルアンモニウム、フッ化ジエチルアンモニウム、フッ化ジフェニルアンモニウムなどのフッ化第2級アンモニウム塩;フッ化トリメチルアンモニウム、フッ化トリエチルアンモニウム、フッ化トリフェニルアンモニウムなどのフッ化第3級アンモニウム塩;フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラプロピルアンモニウム、フッ化トリメチルエチルアンモニウム、フッ化トリエチルメチルアンモニウム、フッ化ジメチルジエチルアンモニウム、フッ化ジメチルジプロピルアンモニウム、フッ化テトラフェニルアンモニウム、フッ化トリメチルフェニルアンモニウムなどのフッ化第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらの中でも洗浄効果が特に優れるという理由から、フッ化アンモニウム{(NH}を用いることがもっとも好ましい。
【0023】
上記のフッ化物塩の含有量は、基板洗浄液全体の質量を100質量%として、下限が10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、上限は、特に限定されないが、フッ化物塩の腐食性を制御し易いことから、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0024】
従来の基板洗浄液においては、フッ化物塩の含有量は1質量%程度と低い値に抑えられていた。有機シロキサン系ポリマーからなる埋め込み材を除去する際には、このような低い濃度では長時間の処理が必要であったが、この場合には基板材料の腐食性も高くなっていた。またpHを酸側に調整して、除去性を高くする方法があるが、この場合には、Low−k材などの基板材料の腐食も大きくなるといった問題を生じ、埋め込み材を選択的に除去することができなかった。
【0025】
このような状況の中、本願発明者らは、基板洗浄液中のフッ化物塩の濃度を上げていくと、上記の所定の濃度領域において、フッ化物塩による埋め込み材の除去性の上昇率が、フッ化物塩によるLow−k材の腐食性の上昇率を上回り、フッ化物塩による埋め込み材の除去性が相対的に上昇することを見出した。つまり、本願発明は、基板洗浄液による洗浄時間を所定の短時間に制御して、上記の相対的に上昇したフッ化物塩による埋め込み材の除去性を利用して、埋め込み材を選択的に除去するものである。なお、フッ化物塩の含有量が、上記の範囲を超えて少なすぎると、フッ化物塩による埋め込み材の除去性が相対的に上昇する効果が得られにくくなる。一方、フッ化物塩の含有量が、上記の範囲を超えて多すぎると、フッ化物塩の腐食性を制御するのが難しくなる。
【0026】
<水>
また、本発明の基板洗浄液は、残渣を溶解したり分散させたりして被洗浄物である基板から除去するために水を必須成分として含有する。当該水としては洗浄時における汚染を防止するため、超純水を用いることが特に好ましい。なお、超純水は、半導体製造に通常用いられる超純水を意味し、Naイオン、Kイオンなどの金属カチオンの総計含有量が5ppb以下であり、かつハロゲンイオンの総含有量が5ppb以下である水を意味する。
【0027】
また、本発明の基板洗浄液には、有機溶剤が含有されていてもよい。有機溶剤を加える場合の、その含有量は、基板洗浄液全体の質量を基準(100質量%)として、10質量%以下とすることが好ましく、5質量%以下とすることがより好ましい。所定量の有機溶剤を加えることによって、フッ化物塩によるLow−k材の腐食性に対する、フッ化物塩による埋め込み材の除去性を相対的に上昇させる効果を向上させることができる。また、有機溶剤の含有量が上記の範囲を超えて多すぎると、フッ化物塩の洗浄効果が妨げられ、埋め込み材およびアッシング残渣等の除去性が劣る場合がある。
【0028】
有機溶剤としては、水溶性でありかつ極性の高いものを用いることが好ましい。このような有機溶剤としては、ジメチスルホキシドなどのスルホキシド類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム類;ジオキサンなどのエーテル類;イソプロピルアルコールなどのアルコール類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類などを挙げることができる。なお、上記有機溶剤を用いる際は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明の基板洗浄液中の水の含有量は特に限定されないが、本発明の基板洗浄液に含まれる、フッ化物塩、および、必要によって含有されていてもよい、有機溶媒、以下において説明する水溶性高分子、界面活性剤、金属防食剤、金属酸化物除去剤、pH調整剤等以外の成分であるため、40〜90質量%とすることが好ましい。
【0030】
<水溶性高分子>
本発明の基板洗浄液は、水溶性高分子を含有していてもよい。本発明において用いられる水溶性高分子とは、親水基が分子中に統計的に均一に分布して存在する合成または天然の高分子物質である。具体的には合成高分子としてはポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられ、天然に存在するものにはポリリン酸、アミロース、多糖類、ゼラチンなどが挙げられる。これらの水溶性高分子のうちで好ましいのは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸である。
【0031】
これらの水溶性高分子の分子量は、3,000以上、好ましくは10,000以上のものである。分子量が3,000よりも小さい場合には、防食の効果が弱くなる傾向がある。また、分子量があまりに大きい場合には、一般に水に対する溶解度が小さくなったり、または溶液の粘度が増し、防食ムラを生じたりする可能性があるので、500,000以下のものがよい。特に好適には10,000〜100,000の範囲である。
【0032】
本発明における水溶性高分子は、分子中に存在する親水基によって、下地を構成する金属あるいは低誘電層間絶縁膜を形成するLow−k材と電気的に、あるいは配位結合等の親和力によって吸着して、その表面に保護被膜を形成し、防食の効果を発揮するものと考えられる。このため、水溶性高分子は、これらの下地金属あるいはLow−k材の表面に単分子層を形成するにたる量以上用いるのが好ましい。しかしながらあまりに多量に用いた場合には、溶液の粘度が増し、かえって残渣が十分に除去されないことがある。そこで、水溶性高分子の洗浄液中での濃度は、0.0001〜0.01質量%、好ましくは、0.0005〜0.005質量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0033】
<その他の成分>
本発明の基板洗浄液は、その他の成分として、界面活性剤および金属防食剤、金属酸化物除去剤、pH調整剤を含んでいてもよい。界面活性剤は、表面張力を低下させて、基板との濡れ性を向上させる目的で添加される。界面活性剤の種類については特に限定されないが、界面活性剤としては、剥離洗浄液に対しての溶解度からイオン性の界面活性剤を用いることが好ましい。このような界面活性剤としては、たとえば、カチオン系界面活性剤ではモノアルキルアミンとその塩、アルキルトリメチルアミンとその塩、ジアルキルジメチルアミンとその塩、イミダゾリニウムとその塩、アルキルベンジルジメチル四級アンモニウムとその塩、ベンジルピリジニウムとその塩、ベンジルトリアルキルアンモニウムとその塩、アルキルピリジニウムとその塩、ポリオキシエチレンアルキルベンジルアンモニウムとその塩、2−ヒドロキシ−N,N,N−トリアルキルエタナミニウムハイドロオキサイドとその塩、2−ヒドロキシ−(N,N−ジメチル−N−アルキル)エタナミニウムハイドロオキサイドとその塩等が挙げられ、アニオン系界面活性剤ではドデシルベンゼンスルホン酸およびその塩等が挙げられる。
【0034】
また、金属防食剤、金属酸化物除去剤としては、たとえば、システイン、N−アセチルシステイン、ペニシラミン、チオ乳酸、チオグリセロール、1−メルカプト−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0035】
また、pH調整剤としては、たとえば、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0036】
<基板洗浄液の調整方法>
本発明の基板洗浄液の調製方法は特に限定されず、たとえば所定量の各成分を混合することにより調製することができる。このとき、温度および撹拌条件など特に制限はない。ただし、本発明の基板洗浄液は、洗浄による基板の汚染を極力少なくするため、該洗浄液中に含まれる各種金属イオンの含有量およびパーティクルの含有量は極力少ないことが好ましい。たとえば各種金属イオン含有量は、それぞれ50ppb以下、より好ましくは10ppb以下に管理され、パーティクルについても好ましくは0.5ミクロン以下の粒子が1ml中に50個以内となるように、さらに好ましくは0.3ミクロン以下の粒子が1ml中に50個以内となるように管理することが望ましい。したがって、本発明の基板洗浄液を調製するに際しては、金属イオンおよびパーティクルが混入しないような条件下で行われることが好ましい。また、調製後においては、パーティクルを除去する目的でフィルターを通過させるなどの処理を行うことが好ましい。
【0037】
<基板の洗浄方法>
本発明の基板洗浄液は、電子回路パターン製造時において、埋め込み材を使用した場合において、この埋め込み材を選択的に除去することができる洗浄液として使用される。
【0038】
(埋め込み材の選択的除去)
埋め込み材は、銅を配線材料として用いた場合における電子回路パターンの製造方法である、ダマシン法あるいはデュアルダマシン法において使用される。これらの方法においては、酸化ケイ素等の絶縁膜、Cu等の金属膜、Low−k材からなる低誘電層間絶縁膜が形成された基板ウエハ上に、レジストパターンを形成して、エッチングおよびアッシング処理により、Viaホールおよび/または配線溝が形成され、そして、このViaホールあるいは配線溝が埋め込み材によって一時的に埋められ、そして、レジストによるパターニング、エッチングおよびアッシング処理が繰り返される。
【0039】
埋め込み材は、最終的には除去する必要があり、エッチングおよびアッシング処理の後において、配線溝の底部等に埋め込み材が残存している場合は、本発明の基板洗浄液を使用することによって、埋め込み材が選択的に除去される。
【0040】
上記したように、埋め込み材と基板材料であるLow−k材とは、ほぼ同一の組成を有しているが、本発明の基板洗浄液は、所定の濃度のフッ化アンモニウムを有する構成とすることによって、Low−k材を腐食せずに、埋め込み材を選択的に除去することができる。
【0041】
本発明において使用するレジストとしては、特に限定されず、電子回路パターンの製造に用いられるg線用、i線用、KrFエキシマ光線用、ArFエキシマ光線用、Fエキシマ光線用、X線用、電子線用のレジストなどのノボラック系樹脂、ポリヒドロキシスチレン系樹脂またはポリメタクリル酸系樹脂などからなる公知のレジストが挙げられる。
【0042】
また、本発明の基板洗浄液は、上記した埋め込み材以外に、レジストやレジスト由来の残渣等を除去するのに使用することもできる。レジスト由来の残渣としては、基板ウエハ上に形成されたレジストパターンにエッチングまたはイオン注入などの処理を行った後に残存するレジストおよび現像残渣、またはこのウエハ上に形成されたレジストパターンをアッシング処理した後に残存するレジスト残渣が挙げられる。
【0043】
アッシング処理としては、通常の酸素ラジカルを発生させてレジストを灰化させる方法、または、Low−k材の変質を抑えるためにアッシングガスに酸素を用いないでレジストを除去する公知の方法が制限なく適用できる。たとえば、バッチ式でも枚葉処理式でもよく、さらにオゾンアッシング方式、UVオゾンアッシング方式などが制限なく適用できる。
【0044】
エッチング処理としては、ウエットエッチングおよびドライエッチングのどちらでも構わないが、通常はドライエッチッグした後の残渣を除去する際に用いられる。ドライエッチングとしてはプラズマエッチング、リアクティブイオンエッチングなどがあるが制限なく適用できる。
【0045】
また、洗浄対象となる基板ウエハは、特に制限されるものではなく、表面にSiO層などの絶縁膜層、SOGなどの低誘電層間絶縁膜材料、Al、AlCu、AlSiCu、Cu、Ti、TiNなどの配線が形成されたシリコンウエハ、ガラスなど、一般的に用いられている基板が制限なく用いることができる。本発明の洗浄液を用いることによるメリット、埋め込み材を使用するダマシン法およびデュアルダマシン法において埋め込み材を選択的に除去することができるという観点から、本発明の洗浄液は銅配線パターンを有する基板に対して特に好ましく用いられる。
【0046】
なお、上記の銅配線パターンを有する基板は、銅配線パターンが表面に形成された基板だけでなく、表面に銅配線パターンが露出していない基板、たとえば銅配線パターンの上部にストッパー膜などが残存する基板も含まれる。
【0047】
銅配線パターンを形成するCuダマシンプロセスにおいては、銅配線パターンの上部にストッパー膜を残したままダマシン構造を形成し、最後にストッパー膜をエッチングすることが多い。そのため、一般的に、ダマシン構造を形成する際に用いられる洗浄液と、ストッパー膜をエッチングした後に用いられる洗浄液は、同じ洗浄液を用いる。本発明の基板洗浄液は、ダマシン構造を形成する際においても、ストッパー膜をエッチングした後においても、使用することができる。
【0048】
また、埋め込み材を埋め込んだ後で、前工程をやり直す必要がある場合がある。その場合、この埋め込み材を除去して、元の状態に戻す必要がある。本発明の基板洗浄液は、このような場合においても、Low−k材等を腐食させずに、埋め込み材を選択的に除去することができる。
【0049】
上記した、埋め込み材の選択的除去において、本発明の基板洗浄液を用いた洗浄方法は、従来の洗浄液を用いた洗浄方法と特に変わる点はなく、たとえば被洗浄物を洗浄液に浸漬したり、その処理表面(レジストまたは残渣等が付着している面)に洗浄液をスプレーしたりすることにより行うことができる。その際、洗浄液の温度は特に制限されるものではないが、通常は10〜80℃、好ましくは20〜60℃の範囲である。また洗浄時間は、用いる装置、洗浄温度、残渣の種類または量などによって大きく変化するが、通常2.0秒〜30分程度、好ましくは40秒〜20分である。
【0050】
一般に洗浄液は加温して用いた方が残渣に対する除去能力は向上するが、一方で、下地の腐食も大きくなるため、許容できる洗浄時間は短くなる傾向がある。したがって、被洗浄物の種類に応じて、洗浄性(残渣除去性)、防食性、操作性を勘案して好適な温度を適宜設定すればよい。なお、使用後の洗浄液はポンプなどで循環し、必要によりフィルタレーションして、可能な限り繰り返し用いてもよく、また、有効成分のみを再生して用いてもよい。
【実施例】
【0051】
以下に実施を示して、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施により何ら制限されるものではない。
【0052】
実施例1〜11および比較例1〜5
表1および表2に示した組成を有する洗浄液を調製し、以下の評価を行った。
<埋め込み材の除去性の評価>
シリコンウエハ上にCVDタイプのLow−k膜Aを成膜し、さらにその上にp−SiOを成膜し、その上に市販のポジ型レジスト組成物を塗布、乾燥してレジスト膜を形成した。このレジスト層にマスクを介してパターンを露光し、現像後、これをマスクとしてp−SiO、Low−k膜をエッチングして除去した後、レジストパターンにプラズマアッシング処理を行うことによりViaホールを生成した。その後、埋め込み材である有機シロキサン系ポリマーを塗布して、Viaホール内を埋め込み平坦化させた。
【0053】
液温30℃に保持した実施例1〜11および比較例1〜5の洗浄液中に、このウエハを5分間浸漬した後、超純水で洗浄し、さらに乾燥を行った。処理後のウエハのFE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡)観察により、塗布した有機シロキサン系ポリマーの除去性を確認し、またViaホールの腐食の様子を確認した。これら判断基準は以下の通りである。得られた結果を表1および表2に示す。
【0054】
(1)Low−kA腐食の様子
○:腐食なし
×:腐食有り
【0055】
(2)p−SiO腐食の様子
○:腐食なし
×:腐食有り
【0056】
(3)有機シロキサン系ポリマーの除去性
○:完全に除去
×:除去不完全
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
上記の表1〜2中において、「DMAc」は、ジメチルアセトアミドであり、「DMSO」は、ジメチルスルホキシドであり、「NMP」は、N−メチルピロリドンである。「Low−k膜A」は、CVDタイプLow−k膜であり、「p−SiO」は、プラズマSiOである。「PVP」は、水溶性高分子であるポリビニルピロリドンである。
【0060】
「ROB−05001」は、2−ヒドロキシ−(N,N−ジメチル−N−ラウリル)エタナミニウムハイドロオキサイドの22%水溶液(日本乳化剤社製の界面活性剤)であり、「ニューコール714F」は、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル(日本乳化剤社製の界面活性剤)である。なお、表1〜2中における「%」は、洗浄液全体の質量を基準(100質量%)とした質量%である。
【0061】
<評価結果>
本発明の基板洗浄液(実施例1〜11)は、Low−k膜Aおよびp−SiOを腐食せずに、埋め込み材である有機シロキサン系ポリマーを除去することができた。
【0062】
これに対して、比較例1〜5の基板洗浄液は、いずれも、フッ化アンモニウム塩の濃度が低く、洗浄性が劣っているため、有機シロキサン系ポリマーの除去性が劣っていた。
【0063】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う基板洗浄液、基板の洗浄方法および基板の製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物塩および水を含有する基板洗浄液であって、
このフッ化物塩の含有量が、基板洗浄液全体を100質量%として、10質量%以上50質量%以下である、基板洗浄液。
【請求項2】
前記フッ化物塩が、フッ化アンモニウムである、請求項1に記載の基板洗浄液。
【請求項3】
前記基板洗浄液全体を100質量%として、0.0001〜0.01質量%の水溶性高分子をさらに含む、請求項1または2に記載の基板洗浄液。
【請求項4】
前記基板洗浄液全体を100質量%として、10質量%以下の有機溶剤をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の基板洗浄液。
【請求項5】
低誘電層間絶縁膜と埋め込み材とを有する基板を、請求項1〜4のいずれかに記載の基板洗浄液に接触させて、この基材から埋め込み材を選択的に除去する、基板の洗浄方法。
【請求項6】
低誘電層間絶縁膜を有する基板上にレジストパターンを形成し、エッチングおよびアッシング処理により、レジストパターンを転写する第一工程、
このレジストパターンに埋め込み材を埋め込んで、基板上を平滑にする第二工程、
前記第一工程を繰り返して、別のレジストパターンを転写する第三工程、
並びに、前記基板と請求項1〜4のいずれかに記載の基板洗浄液とを接触させて、前記基板から前記埋め込み材の残渣を除去する第四工程、を有する基板の製造方法。

【公開番号】特開2007−109744(P2007−109744A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−297011(P2005−297011)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【出願人】(504435829)AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社 (79)
【Fターム(参考)】