説明

基板端子間電圧検知回路

【目的】電圧測定器を接続することなく、半導体ウェハに生じたプラズマチャージアップを広い範囲にわたって迅速に検知することが可能な基板端子間電圧検知回路を提供する
【構成】半導体基板上に設けられた一対の電極間に生じた電圧を検知する基板端子間電圧検知回路は、電極間に接続された抵抗路と、抵抗路の中間点に一端が接続された回路電源と、抵抗路の両端部の一方と回路電源の他端との間に互いに並列接続されて互いに異なる溶断定格電流を有する少なくとも2つのヒューズ回路と、からなる基板端子間電圧検知回路であって、ヒューズ回路の各々は、一方と前記中間点との間の電位差に応じてオンオフするスイッチと、前記スイッチに直列接続した抵抗素子及びヒューズ素子を含んで前記回路電源の両端に接続した電流路と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを構成する荷電粒子によって半導体基板に生じた帯電を検知する回路に関し、特に、電圧計を接続することなく、ワイヤレスで帯電量に相当する電圧を迅速に測定可能な基板端子間電圧検知回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、半導体ウェハやその上に形成された絶縁膜にホールやウェル構造等のパターンを形成するために、プラズマエッチング処理が使用されている。プラズマエッチング工程では、マスクを介してプラズマを構成する荷電粒子を半導体ウェハ上に入射することによって、一定のパターン形成が試みられる。プラズマの不均一性によってウェハに流入する荷電粒子に偏りが生じ、半導体ウェハやその上に形成された絶縁膜等電気伝導率が低いことと相まって、半導体ウェハに「チャージング」現象が生ずる。すなわち、正又は負電荷が半導体ウェハ又は絶縁膜の表面近傍に局在化してしまう。
【0003】
かかる「チャージング」現象が生じた状態で、さらに、プラズマエッチング処理を行うと、形状異常、すなわち、所望の加工形状が得られないという問題が生ずる。半導体ウェハ又は絶縁膜の表面近傍に局在化した電荷の極性と荷電粒子の極性とが同一である場合、局在化した電荷が生ずる表面に向けて荷電粒子を照射しても、お互いのクーロン反発によって、荷電粒子の軌道が曲げられてしまうからである。荷電粒子の軌道が局在化した電荷を避けるように半導体ウェハ又は絶縁膜の表面に照射される結果、パターンの加工形状に異常が生じてしまう。
【0004】
さらに、例えば、半導体ウェハ上の絶縁膜にホールパターンやその他のウェル構造を形成する際、ホールやウェルの上面である絶縁膜表面とホールやウェルの底面との電荷帯電量の差によって電位差が発生し、プラズマからエッチングを促進するための正イオンが十分なエネルギーを持ってホールやウェルの底面に入射することができず、ある深さ以上は、エッチングが進行しないというエッチングストップの問題も生じる。
【0005】
プラズマによって引き起される形状異常やエッチングストップ等のこれら問題の分析及び解決のために、プラズマ自体の様々な物理量(プラズマ密度、プラズマ温度等)やプラズマエッチング処理の際に生ずるウェハ上の帯電分布をIn−situにて測定するためのセンサが提案されている。
【0006】
かかる帯電量測定回路として、プラズマ生成チャンバ内に帯電分布を検知するセンサを設置し、プラズマチャンバ外に検知された帯電量に相当する電圧を測定する電圧計を設置する技術が開示されている(特許文献1)。かかる技術においては、プラズマチャンバ内にあるセンサからの出力を得るために、センサに接続されたワイヤをチャンバ外の電圧計へ引き出すための専用端子をプラズマチャンバに取り付ける必要がある。また、プラズマを構成する荷電粒子がワイヤに照射されたり、プラズマ発生装置に用いる高圧電源により出力電圧が影響される可能性もある。
【0007】
基板上に形成されたヒューズの溶断を視覚的に観察したり、ヒューズの抵抗値を測定することによって、エッチング工程において基板に生じたチャージアップを測定する技術も開示されている(特許文献2)。しかしながら、ヒューズ自身にプラズマ荷電粒子が照射されて、ヒューズに流れる電流が荷電粒子によって大きく影響される可能性がある。空間的に離間された箇所における帯電量の偏りを測定することとなると、ヒューズ長や配線経路が増大し、プラズマ荷電粒子による影響がますます大きくなってしまう。また、帯電量の偏りを多段階的に検知するには、溶断電流が異なるヒューズを複数個準備することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−225677
【特許文献2】特開2008−170274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、電圧測定器を接続することなく、半導体ウェハに生じたプラズマチャージアップを広い範囲にわたって迅速に検知することが可能な基板端子間電圧検知回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴による基板端子間電圧検知回路は、半導体基板上に設けられた一対の電極間に生じた電圧を検知する基板端子間電圧検知回路であって、前記電極間に接続された抵抗路と、前記抵抗路の中間点に一端が接続された回路電源と、前記抵抗路の両端部の一方と前記回路電源の他端との間に互いに並列接続されて互いに異なる溶断定格電流を有する少なくとも2つのヒューズ回路と、からなる基板端子間電圧検知回路であって、前記ヒューズ回路の各々は、前記一方と前記中間点との間の電位差に応じてオンオフするスイッチと、前記スイッチに直列接続した抵抗素子及びヒューズ素子を含んで前記回路電源の両端に接続した電流路と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴による基板端子間電圧検知回路を半導体基板に装着し、プラズマチャージングによる帯電量の偏りが生じた場合、2つのヒューズ回路は異なる溶断定格電流を有するので、その各々には異なる電流が生ずる。帯電量が増加することにともなって、電極間の電圧が増大して、ヒューズ回路に流れる電流が溶断定格電流に到達すれと、ヒューズ素子が断線する。ヒューズが断線する際の溶断定格電流と電極間の電圧との関係について予め設定しておけば、電極間に生じた帯電量の偏りを断線ヒューズ素子の個数により定量的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1実施例である基板端子間電圧検知回路の概略平面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例である基板端子間電圧検知回路の回路図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施例である基板端子間電圧検知回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1である基板端子間電圧検知回路について図1及び図2を参照して説明する。図1及び図2に示した実施例1の基板端子間電圧検知回路(13)は、半導体基板(1)上に設けられた一対の電極(10及び11)間に生じた電圧を検知し、電極間に接続された抵抗路(点B〜点C)と、抵抗路(点B〜点C)の中間点Aに一端が接続された回路電源(15)と、前記抵抗路(点B〜点C)の両端部の一方(点B)と前記回路電源の他端との間に互いに並列接続されて互いに異なる溶断定格電流を有する少なくとも2つのヒューズ回路(抵抗素子31、ヒューズ素子41、MOSトランジスタ51からなる直列接続回路、抵抗素子32、ヒューズ素子42、MOSトランジスタ52からなる直列接続回路)と、からなり、前記ヒューズ回路の各々は、前記一方(点B)と前記中間点(点A)との間の電位差に応じてオンオフするスイッチ(51、52)と、前記スイッチ(51、52)に直列接続した抵抗素子(31、32)及びヒューズ素子(41、42)を含んで前記回路電源の両端に接続した電流路と、を含む。
【0015】
図1は、本発明の基板端子間電圧検知回路13を半導体基板1に搭載したときの概略平面図である。図1に示すように、半導体ウェハ上にある電極10及び11に基板端子間電圧検知回路13が接続されている。この基板端子間電圧検知回路は透明な絶縁性カバー12により覆われており、プラズマから保護されている。透明であるので、基板端子間電圧検知回路のヒューズ素子が断線しているか否かを視認することができる。さらに、プラズマを構成する荷電粒子が基板端子間電圧検知回路に直接的に照射されて、基板端子間電圧検知回路内のヒューズ素子、素子間を接続する配線、端子等に荷電粒子が流入することを防ぐ保護カバーとしても機能し得る。
【0016】
図1に示した基板端子間電圧検知回路13の回路構成について図2を参照して説明する。図1に示した基板端子間電圧検知回路13はプラズマ発生チャンバ内(図示せず)内に配送され得る。図2に示した回路は、図1の電極10、11、及び基板端子間電圧検知回路13に相当する。
【0017】
電極10と電極11との間には、第1抵抗21及び第2抵抗22が直列に接続された抵抗路(点C〜点B)がある。実施例1において、第1抵抗の抵抗値は、第2抵抗の抵抗値よりも大となるように構成している。具体的には、第1抵抗の抵抗値は、例えば、900MΩに設定し、第2抵抗は、例えば、100MΩに設定している。このように第1抵抗の抵抗値を第2抵抗の抵抗値に比べて大となるように構成しているのは、基板端子間電圧検知回路が電極間に生ずる電圧に及ぼす影響を最小限に抑えるためである。プラズマ発生チャンバ内は高温となるため、抵抗路は温度依存性が小さいものを使用するのが好ましい。プラズマ発生条件によって、チャンバ内の温度の変化に応じて抵抗率が変化してしまうと、これに応じてヒューズに流れる電流値にも影響するからである。
【0018】
第1抵抗及び第2抵抗との間にあるA点に電圧電源15の一端が接続されている。実施例においては、電源は3Vの電圧を供給する。プラズマ発生チャンバ内は高温となるため、電圧電源は耐熱性を有するものか或いは耐熱処理をなされたものを使用するのが好ましい。プラズマ発生時に電圧を供給できなくなってしまうと、MOSトランジスタのスイッチ動作に影響を及ぼすからである。
【0019】
電源15に対して、抵抗素子31、ヒューズ素子41、MOSトランジスタ51からなる直列接続が並列接続されている。同様に、抵抗素子32、ヒューズ素子42、MOSトランジスタ52からなる直列接続と、抵抗素子34、ヒューズ素子44、MOSトランジスタ54からなる直列接続と、抵抗素子35、ヒューズ素子45、MOSトランジスタ55からなる直列接続とは、電源15に並列に接続されている。図2に示した実施例において、4つの直列接続が接続されているが、その個数は4つ限定されず、少なくとも2つの直列接続があればよい。抵抗素子31、32、33、34の抵抗値は、互いに異なる抵抗値を有するように設定しており、例えば、それぞれ5Ω、6Ω、7Ω、8Ωに設定されている。
【0020】
ヒューズ素子41、42、43、44は、互いに同一の特性をし、所定の電流が生じると断線する。本実施例においては、全てのヒューズ素子が、0.1A以上の電流が流れると断線する。
【0021】
MOSトランジスタ51、52、53、54の各々は、ドレイン、ゲート、ソースを有し、ドレインは対応するヒューズ素子に接続され、ゲートは電極11の一端に接続され、ソースはA点に接続されている。MOSトランジスタ51、52、53、54は互いに同一の特性を有し、電極11の電位によってゲート制御され、ドレイン電位がソース電位よりも高くなるとオン状態になる。また、ドレイン電位がソース電位よりも高い場合であっても、ソースとゲートの電位が同電位のときにはオフ状態となる。プラズマ発生チャンバ内は高温となるため、抵抗素子、ヒューズ素子、MOSトランジスタは、抵抗値等の物理特性の温度依存性が小さいものを使用するのが好ましい。
【0022】
次に図1及び図2に示した回路の動作について説明する。
1.電極間の電位差が0Vである場合
まず、図1及び図2に示した電圧検知回路において、電極間に帯電量の偏りが生じていない場合、すなわち、電極間に電位差が生じていない場合について説明する。
【0023】
かかる場合、電極11における電位を0Vとした場合、MOSトランジスタ51のゲート電位は0Vであり、かつソース電位は0Vであり、ゲート‐ソース間の電圧は0Vとなっているので、MOSトランジスタはオフ状態である。同様に、他の全てのMOSトランジスタもオフ状態である。
【0024】
よって、電極間に電圧が生じていない場合には、MOSトランジスタ51、52、53、54の全てがオフ状態であるので、ヒューズ素子の各々には電流は流れない。
2.電極間に15Vの電位差が生じている場合
次に、図1に示したセンサをプラズマに曝すと、プラズマから荷電粒子が半導体ウェハに入射され、ウェハ上に電荷が帯電する。同様に電極11及び12の露出部分にも帯電が生ずる。この時、電極間に帯電量の偏りが生じることによって、電極間に+15Vの電位差が生じた場合について説明する。なお、説明を簡略化するため、電極11における電位を+15Vとして、電極10における電位を0Vとする。
【0025】
かかる場合、電極10における電位は0Vであり、電極11における電位は+15Vであり、電圧分配の規則によって、電極10及び点A間の電圧は、15Vの9/10倍に相当する13.5Vであり、点Bと点A間の電圧は、15Vの1/10倍に相当する1.5Vである。これは、抵抗21と抵抗22との比が、9:1であることに帰属する。よって、点Aでの電位は13.5Vであり、点Bにおける電位は15Vとなっている。このように、抵抗21の抵抗値を抵抗22の抵抗値に比べて大きく設定することによって、各MOSトランジスタのゲート‐ソース間の電圧を低減することができる。
【0026】
このように電極間に15Vの電位差が生じた場合において、MOSトランジスタ51、52、53、54の各々オン‐オフ状態について説明する。点AはMOSトランジスタ51、52、53、54の各々のソースに接続されているので、ソース電位は点Aの電位に等しく、13.5Vである。一方、MOSトランジスタのゲートは点Bに接続されているので、ゲート電位は15Vである。MOSトランジスタのソースとゲートとの間には、1.5Vの電圧が生ずる。さらに、MOSトランジスタのドレインは、3Vの電源を介して点Bに接続されているので、13.5Vより大きな電位となっている。また、MOSトランジスタのソースとトレイン間には、電圧源から供給される3Vから抵抗素子での電圧降下分を差し引いた電圧が印加されることになる。
【0027】
かかる場合、MOSトランジスタの原理に従って、MOSトランジスタ51、52、53、54の各々はON状態となり、電源15→抵抗31→ヒューズ素子41→MOSトランジスタ51のドレイン‐ソース→電源15からなる閉ループに電流が生ずる。同様に、MOSトランジスタ52、53、54を介した閉ループにおいても電流が流れる。このように、MOSトランジスタ51、52、53、54が同時にON状態となるのは、MOSトランジスタ51、52、53、54が同一の特性を有し、各々のゲートが共に電極11に接続され、各々がソースが共にA点に接続され、各々のドレインの電位が電源電圧、抵抗素子、ヒューズ素子を介して各々のソース電位よりも高電位となるからである。
【0028】
図2に示した実施例において、ヒューズ素子41、42、43、44と電源15との間にそれぞれ接続された抵抗素子31、32、33、34の抵抗値は、それぞれ、5Ω、6Ω、7Ω、8Ωに設定しており、段階的に増加するようにしている。MOSトランジスタ51、52、53、54は同一特性を有し、ヒューズ素子も同一特性を有する。よって、ヒューズ素子11、12、13、14に流れる電流値の各々は、抵抗素子21、22、23、24の抵抗値に依存している。
【0029】
例えば、ヒューズ11には0.10Aの電流が流れ、ヒューズ12には0.09Aが流れ、ヒューズ13には0.08Aの電流が流れ、ヒューズ14には0.07Aの電流が流れる。これは、各ヒューズと電源との間に接続された抵抗素子の抵抗値を、本実施例のように、5Ω、6Ω、7Ω、8Ω・・・と段階的に増加させることによって、電圧を段階的に降下させたことに起因する。
【0030】
実際には、抵抗11に印加される電圧の大きさと各ヒューズ素子に流れる電流の大きさは、ヒューズに接続されている抵抗素子の抵抗値とMOSトランジスタの特性に依存する。よって、抵抗素子11に対して、ある電圧が印加されるとき、各ヒューズに所定電流が流れるように、事前に各抵抗素子の抵抗値とMOSトランジスタの特性を調整する必要がある。よって、これらのヒューズ素子に流れる電流は事前に調整を行うことによって得られた値である。
【0031】
図2に示した実施例において、すべてのヒューズ素子について0.1A以上の電流が流れると溶断するものを採用した場合、ヒューズ素子41に0.10Aの電流が流れるので、このヒューズ素子のみが断線する。残りのヒューズ素子には0.10A以上の電流は流れないので、断線することなく、電極間の電荷の偏りがなくなるまで、電流が流れ続ける。
【0032】
電極間に20Vの電位差が生じた場合については、例えば、ヒューズ41には0.11Aの電流が流れ、ヒューズ42には0.10Aが流れ、ヒューズ43には0.09Aの電流が流れ、ヒューズ44には0.07Aの電流が流れる。この場合、すべてのヒューズ素子について0.1A以上の電流が流れると溶断するものを採用した場合、ヒューズ素子41及び42に0.10A以上の電流が流れるので、これらヒューズ素子41及び42のみが断線し、残りのヒューズ素子には0.10A以上の電流は流れないので、断線しない。
【0033】
図2に示した回路においては、電極間の電位差が15Vの時には、ヒューズ素子41のみが断線し、さらに電極間の電位差が増大して15Vから20Vに到達した場合には、ヒューズ素子41の次段のヒューズ素子42のみが断線する。さらに、電極間の電位差が増大すれば、電極間の電位差の大きさに応じてヒューズ素子43、44が断線する。
【0034】
図2に示した実施例は以下の効果を奏する。
【0035】
低電位の電極10には抵抗素子21を接続し、高電位の電極には抵抗素子22を接続し、抵抗素子21の抵抗値を抵抗素子22に比べて大きくなるよう設定しているので、MOSトランジスタのゲート‐ソース間の電位差を低減することができる。MOSトランジスタのON‐OFF状態は、MOSトランジスタのゲート‐ソース間の電位差、及び、ソース電位に対して電源等を介して印加されるドレイン電位と関連しており、電源の供給電圧を低減することができる。
【0036】
スイッチング素子としてMOSトランジスタを使用している。MOSトランジスタのゲート絶縁膜によって、各ヒューズ素子41、42、43、44に流れる電流が電極11に流れることが防止される。これにより、電極間の電位差は、各ヒューズ素子41、42、43、44に流れる電流によって影響されないので、電圧検知回路自信に帰属する不要因子を排除して、帯電によって生じた電極間の電位差を信頼性よく検知することができる。
【0037】
抵抗素子、ヒューズ素子、MOSトランジスタからなる直列接続を電源に対して複数個並列に接続している。直列接続の各々の抵抗素子の抵抗値を段階的に増大させることによって、直列接続の各々のヒューズ素子に流れる電流を、段階的に低減することができる。よって、ヒューズ素子が断線する電流値が互いに同一であれば、電極間の電位差に応じてヒューズ素子は断線する。断線したときのヒューズ素子に流れた断線電流と、電極間の電位差との関係とは、予め分かっているので、ヒューズ素子が断線した際の電極間の電位差を、計算することなく視認することによって見積もることができる。電極10と電極11間の電圧が10Vづつ高くなるほど、断線するヒューズの数が1個づつ多くなるように、ヒューズに接続されている抵抗素子の抵抗値を調整すると、例えば、OV〜100Vの範囲の電圧に対して、10個のヒューズがある場合、10V間隔で断線するヒュ−ズの数が変わる。例えば、電極10と電極11間の電圧が50Vの場合、10個のうち5個のヒューズが断線する。また、電極10と電極11間の電圧が100Vの場合、10個全てのヒューズが断線する。つまり、OV〜100Vの範囲の電圧に対して、断線するヒューズの数から、10Vの精度で電極10と電極11間に発生した電位差を知ることが出来る。よって、MOSトランジスタと抵抗素子とヒューズからなる直列接続を1セットとすると、電圧測定のために回路に配置するこのセット数が大きいほど、例えばOV〜100Vの範囲の電圧に対して、高い精度(細かい間隔)で電圧を知ることが出来る。また、ここでは説明を簡単化するために、少ない素子の場合で説明したが、MOSトランジスタと抵抗素子とヒューズからなる直列接続セットを100〜200セット用いることが望ましい。100〜200セット用いた場合、例えば、OV〜100Vの間の測定電圧に対して、1.0V〜0.5Vの間隔で、帯電によって生じた電極間の電位差を測定することができる。
【0038】
また、電極10と電極11間に発生する電位差の大きさと断線するヒューズの関係は、ヒューズに配線接続される抵抗素子の抵抗値又はMOSトランジスタの調整によって変更することができる。よって、各MOSトランジスタに配線接続される抵抗素子の抵抗値の調整によって測定する電圧の範囲を変えることが出来る。例えば、MOSトランジスタと抵抗素子とヒューズのセットを100セット用いた場合、ヒューズに配線接続される抵抗素子が異なる抵抗値を有するように調整することによって(又は、MOSトランジスタの特性を調整することによって)、OV〜1000Vの範囲の測定電圧に対して10V間隔で測定することが出来る。
【0039】
実施例1の回路によれば、ヒューズ等の検出素子を半導体基板や絶縁膜等に直接的に接続するのではなく電極を介して接続しており、回路自身は絶縁性プレートで覆われているので、プラズマ荷電粒子がヒューズに照射することによって誘起される不要成分が排除される。
【0040】
端子間電圧とヒューズの溶断電流の値との関係は、予め分かっているので、溶断したヒューズの個数を目視するだけで、端子間電圧を測定することができる。
【0041】
MOSトランジスタと、抵抗素子と、ヒューズとからなる直列接続の複数セットを電源に並列に接続した単純な回路であるので、In−situにて電位差を測定することが可能である。回路自身の配線が単純であり、壊れ難く、低コストで製造することができる。
【0042】
また、プラズマチャンバ外の電圧計と検知素子を接続する必要がないため、ワイヤレスで、プラズマ装置を改良することなく電圧を測定することができる。プラズマチャンバ外の電圧計と接続するセンサに比べて、プラズマ発生高圧電源の影響や、プラズマ荷電粒子のワイヤへの流入も防止することができる。
【0043】
更に、ワイヤレスであるため、センサを通常の搬送経路からプラズマチャンバ内に導入することができるので、プラズマチャンバを大気に戻すことを必要とせず、プラズマチャンバが汚染されることも防止される。
【0044】
実施例1の変形例について説明する。実施例1においては、本発明に係るヒューズ回路を、抵抗素子31〜34、ヒューズ素子41〜44及びMOSトランジスタ51〜54が直列接続された回路として説明した。また、ヒューズ素子41〜44の全てを同一特性とし、MOSトランジスタ51〜54の全てを同一特性とし、抵抗素子31〜34の抵抗値のみを互いに異なる値に設定することによって、ヒューズ回路の各々が、異なる溶断定格電流を有するものとして説明してきた。変形例においては、全ての抵抗素子の抵抗値を同一とし、MOSトランジスタを同一特性とし、ヒューズ素子のみ互いに異なる溶断電流を有するように設定することによっても、ヒューズ回路の各々が異なる溶断定格電流を有するものとなすことも可能である。また、MOSトランジスタの全てについて互いに特性が異なるよう設定して、他の素子を同一特性に設定すれば、ヒューズ回路が互いに異なる溶断定格電流を有することができる。或いは、抵抗素子、ヒューズ素子、及びMOSトランジスタの全てが互いに異なる特性を有するように設定することによっても、ヒューズ回路の各々は互いに異なる定格電流を有することができる。
【実施例2】
【0045】
図1及び図2に示した第1実施例においては、測定電圧値はプラズマチャンバから取り出し電圧検知回路の断線したヒューズの数から読み取るので、ヒューズ素子の径のサイズが数ミリオーダーである場合、ヒューズ素子の各々について目視やテスターによっては、迅速に検知結果を得ることはできない。
【0046】
第二の実施例は、プラズマチャンバから検知回路を取り出して、全ヒューズの断線の有無を同時に、しかも、目視容易な表示形態にて測定することができる回路。具体的には、第1実施例を適用したセンサをプラズマに曝し、プラズマチャンバからセンサを取り出した後に、センサの回路(第1実施例の回路)上に第2実施例の回路を接続する。第2実施例の回路には発光素子が第一の実施例のヒューズに相当する数だけ配置されており、断線したヒューズの数を特定の発光色を有する発光素子の点灯によって判断することができる。よって、断線したヒューズの数を利用者が視覚的に容易に判断することが可能となる。
【0047】
図3を用いてワイヤレス電圧検知回路の構成について説明する。図3は、本発明の第1実施例であるワイヤレス電圧検知回路に接続される発光回路である。
【0048】
発光回路は、電圧電源15、スイッチ16、第1発光素子61、62、63、64、65、第2発光素子71、72、73、74、75から構成されている。
【0049】
発光回路の端子対311及び312は、図2に示した電圧検知回路のヒューズ素子41の両端に接続され、端子321及び322は電圧検知回路のヒューズ素子42の両端に接続され、端子331及び332は電圧検知回路のヒューズ素子43の両端に接続され、端子341及び342は電圧検知回路のヒューズ素子44の両端に接続される。図3から分かるように、発光回路の端子対は、図2に示した電圧検知回路のヒューズ素子に各々対応するので、その端子対の個数と電圧検知回路のヒューズ素子数とは一致させてある。
【0050】
発光回路の端子311、321、331、341はスイッチに接続されている。一方、発光回路の端子312、322、332、342は、それぞれ発光素子61、62、63、64を介して、電源の−側に接続されている。第1発光素子61、62、63、64は例えば赤色のLEDである。
【0051】
第1発光素子61、62、63、64とそれぞれペアとなるように、第2発光素子71、72、73、74が隣接して設けられている。第2発光素子71、72、73、74は発光回路の端子対の各々に対応して、スイッチと電源とからなる直列接続に対して並列に接続されている。第2発光素子71、72、73、74は例えば緑色のLEDである。スイッチがON状態になると、スイッチ→電源→第2発光素子→スイッチからなる閉ループが各々形成されて、第2発光素子の各々に電流が流れ、発光する。
【0052】
図3に示した発光回路が、図2に示した電圧検知回路に接続されたとき動作について説明する。
【0053】
尚、説明を簡略化するため、図2に示すヒューズ素子41が断線している場合について説明する。
【0054】
スイッチがOFF状態のときには、第1及び第2発光素子には電流が流れず、発光しない。スイッチがオン状態になると、閉ループが形成されて、第2発光素子71、72、73、74が同時に発光する。図2に示すヒューズ素子41が断線している場合には、端子312→電源→スイッチ→端子311に閉ループが形成されない以上、第1発光素子61には電流が流れず、発光しない。断線していないヒューズ素子42については、端子322→第1発光素子62→電源→スイッチ→端子321→抵抗素子32→端子322からなる閉ループが形成されているので、第1発光素子62に電流が流れ、発光する。同様に、断線していないヒューズ素子43、44に対応してそれぞれ設けられた発光素子63、64についても閉ループが形成され、発光素子63、64に電流が流れ、発光する。
【0055】
以上より、図3に示した回路によって、図2の電圧検知回路において断線したヒューズ素子41に対応する第1発光素子61は発光せず、断線していないヒューズ素子42、43、44に対応する第1発光素子62、63、64と、第2発光素子71、72、73、74とが発光する。ここで、第1発光素子と第2発光素子は互いに重なり合うように配置されているので、第1発光素子が赤色に発光し、第2発光素子が緑色に発光し、かかる一対の発光素子61、71を一つの光源とみなしたとき、色の三原色の規則によって、この光源からの光は黄色に見える。一方、断線したヒューズ素子に対応して接続された第1及び第2発光素子対は、緑色のみが発光するので、光は緑色のままである。
【0056】
第2実施例によれば、第1実施例の電圧検知回路のヒューズ素子の各々に対して、第1及び第2発光素子からなる一対の光源が割り当てられている。ヒューズ素子が断線している光源については、第1及び第2発光素子のうち第2発光素子のみが発光する。ヒューズ素子が断線していない光源については、第1及び第2発光素子の双方が発光し、両発光素子の合成光が発せられる。よって、ヒューズの断線チェックを、テスター等の測定器を用いることなく、発光素子の光の色によって視認することができる。図2のヒューズの数が多い場合、テスター等の測定装置を用いて1個づつ断線の有無を確認する必要もないので、全てのヒューズの溶断状態をしらべることができ、また、目視によるヒューズ溶断の有無を確認するよりも、信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0057】
実施例2の変形例について説明する。図2の回路において溶断したヒューズ素子に対応する発光素子のみが発光したり、点滅したり、輝度が低減又は増大するよう変形することによって、より目視容易な表示形態にも変更することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 半導体ウェハ
10 電極
11 電極
12 絶縁性カバー
13 基板端子間電圧検知回路
15 電圧電源
16 電圧電源
17 スイッチ
21 第1抵抗
22 第2抵抗
31〜34 抵抗素子
41〜44 ヒューズ素子
51〜54 MOSトランジスタ
61〜65 第1発光素子
71〜75 第2発光素子
311〜315 端子
321〜325 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に設けられた一対の電極間に生じた電圧を検知する基板端子間電圧検知回路であって、
前記電極間に接続された抵抗路と、
前記抵抗路の中間点に一端が接続された回路電源と、
前記抵抗路の両端部の一方と前記回路電源の他端との間に互いに並列接続されて互いに異なる溶断定格電流を有する少なくとも2つのヒューズ回路と、からなる基板端子間電圧検知回路であって、
前記ヒューズ回路の各々は、前記一方と前記中間点との間の電位差に応じてオンオフするスイッチと、前記スイッチに直列接続した抵抗素子及びヒューズ素子を含んで前記回路電源の両端に接続した電流路と、を含むことを特徴とする基板端子間電圧検知回路。
【請求項2】
前記抵抗素子の抵抗の大きさが互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の基板端子間電圧検知回路。
【請求項3】
前記ヒューズ素子の定格電流の大きさが互いに異なることを特徴とする請求項1に記載の基板端子間電圧検知回路。
【請求項4】
前記スイッチはMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1に記載の基板端子間電圧検知回路。
【請求項5】
請求項1に記載の基板端子間電圧検知回路の前記ヒューズ素子の各々の両端に接続されて、前記ヒューズ素子の溶断及び非溶断状態に応じて異なる態様にて発光する発光素子を含むヒューズ溶断状態表示回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−192972(P2011−192972A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21792(P2011−21792)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】