説明

基準電圧生成回路

【課題】外部電源のノイズの影響を阻止しつつ、基準電圧を生成する。
【解決手段】電流制御部30のトランジスタNM31のゲートは、トランジスタNM13,NM14のゲートに接続されて、トランジスタNM13,NM14にそれぞれ流れるドレイン電流と同じ量のドレイン電流がトランジスタNM31に流れる。このドレイン電流は、定電流回路部20のトランジスタPM22にも流れる。トランジスタPM21とトランジスタPM22のチャンネル幅の比は、3対1に設定され、トランジスタPM21には、トランジスタPM22の3倍の電流が流れる。トランジスタPM21,PM22は飽和領域で動作し、電圧VCの外部電源から供給された電流を定電流化し、基準電圧Vrefを生成するバンドギャップ回路部10に供給する。バンドギャップ回路部10に供給される電流が定電流化されるので、外部電源に重畳したノイズの影響は阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準電圧生成回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アナログ回路では、アナログ信号と比較するための基準電圧を発生する基準電圧生成回路が備えられることが多い。特に、アナログ集積回路では、アナログ集積回路の大規模化、高機能化に伴って、電源電圧にも温度にも依存しない基準電圧生成回路が求められる。
【0003】
このような基準電圧生成回路として、Pチャンネルのバルクを電源とするオペアンプ型、Pチャンネル入力段のバルクをセルフバイアスするオペアンプ型、カレントミラー回路型のものがある。
【0004】
このうち、カレントミラー型の基準電圧生成回路は、オペアンプ型のものと比較して構成が簡易であり、消費電流を低減できる点で有利である。このカレントミラー型の基準電圧生成回路は、バイポーラトランジスタを使用して、順バイアスされたpn接合の電位と絶対温度に比例する電圧とを加算することにより、温度に依存しない基準電圧を生成する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−128939号公報(第11頁、図1、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の基準電圧生成回路では、外部電源の配線間のインダクタンス成分の影響により発生したノイズが電源ラインに重畳し、バンドギャップ電圧が低下するおそれがある。
【0006】
このカレントミラー型の基準電圧生成回路は、Pチャンネル入力段のバルクをセルフバイアスするオペアンプ型のものと比較してノイズの影響を受けやすく、ノイズの影響を受けるとバンドギャップ電圧が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、ノイズの影響を阻止することが可能な基準電圧生成回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る基準電圧生成回路は、
絶対温度に比例する電位差を生成し、生成した電位差と順バイアスされた半導体のpn接合の電位差とを加算することにより、前記半導体のバンドギャップ電圧に基づく基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
電流路を有するトランジスタを備え、前記トランジスタが飽和領域で動作して、外部電源から前記トランジスタの前記電流路に供給された電流を定電流化し、前記基準電圧生成部に供給する定電流供給部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
前記基準電圧生成部は、カレントミラー回路を構成する第1のトランジスタと第2のトランジスタとを有し、前記第1のトランジスタの電流路には、抵抗を介してpn接合部を有する第1の半導体が接続され、前記第2のトランジスタの電流路には、pn接合部を有する第2の半導体が接続され、前記第1の半導体と前記第2の半導体とのpn接合部の面積比が設定され、前記抵抗の両端で、絶対温度に比例する電位差を生成するように構成され、
前記定電流供給部は、カレントミラー回路を構成する第3のトランジスタと第4のトランジスタとを有し、前記第3のトランジスタの電流路の電流流出端が前記基準電圧生成部に接続されたものであり、
前記基準電圧生成部の前記第2のトランジスタの電流路に流れる電流の量を取得し、取得した電流の量に基づいて、前記第3のトランジスタが飽和領域で動作するように、前記定電流供給部の前記第4のトランジスタの電流路に流れる電流の量を制御する電流制御部を備えてもよい。
【0010】
前記定電流供給部の前記第3のトランジスタと前記第4のトランジスタとのチャンネル幅又はpn接合面積の比が、前記電流制御部の電流路と前記基準電圧生成部の電流路との比に対応させて設定されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノイズの影響を阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る基準電圧生成回路を図面を参照して説明する。
本実施形態に係る基準電圧生成回路の構成を図1に示す。
本実施形態に係る基準電圧生成回路は、バンドギャップ回路部10と、定電流回路部20と、電流制御部30と、からなる。
【0013】
バンドギャップ回路部10は、絶対温度に比例する電位差を生成し、生成した電位差と順バイアスされた半導体のpn接合の電位差とを加算することにより、半導体のバンドギャップ電圧に基づく基準電圧を生成する回路部である。
【0014】
バンドギャップ回路部10は、セルフバイアスカスコードカレントミラー型バンドギャップ回路によって構成され、トランジスタPM11〜PM16と、トランジスタNM11〜NM14と、トランジスタQ11〜Q13と、抵抗R1〜R4と、コンデンサC1と、からなる。
【0015】
トランジスタPM11〜PM16は、PチャンネルMOSFETからなるものであり、N型基板上に形成され、バルクは、電圧VHにバイアスされる。尚、トランジスタPM11〜PM16には、ほぼ同じような特性のものが用いられる。
【0016】
トランジスタPM11とトランジスタPM12とは、カレントミラー回路を構成する一対のトランジスタであり、制御端としての双方のゲートは互いに接続され、トランジスタPM11,PM12のそれぞれのソースは、電圧VHの電圧ラインに接続される。
【0017】
トランジスタPM13とトランジスタPM14とは、カレントミラー回路を構成する一対のトランジスタであり、双方のゲートは互いに接続される。そして、トランジスタPM13のソースは、トランジスタPM11のドレインに接続され、トランジスタPM14のソースは、トランジスタPM12のドレインに接続される。
【0018】
このように、バンドギャップ回路部10が、2段のカレントミラー回路を備えるのは、基準電圧Vrefの精度を高めるためである。
【0019】
トランジスタPM15、PM16は、電流路として、トランジスタPM11,PM13のそれぞれのソース−ドレイン間に流れるドレイン電流と同じ量のドレイン電流を流すためのトランジスタである。
【0020】
トランジスタPM15のソースは、電圧VHの電圧ラインに接続され、トランジスタPM16のソースは、トランジスタPM15のドレインに接続される。
【0021】
そして、トランジスタPM15のゲートは、トランジスタPM11,PM12のゲートに接続され、トランジスタPM16のゲートは、トランジスタPM13,PM14のゲートに接続される。
【0022】
抵抗R1は、トランジスタPM11、トランジスタPM12及びトランジスタPM15によって構成されたカレントミラー回路と、トランジスタPM13、トランジスタPM14及びトランジスタPM16によって構成されたカレントミラー回路と、が2段で動作するように介挿された抵抗であり、抵抗R1の一端は、トランジスタPM13のドレインに接続される。
【0023】
そして、トランジスタPM11、PM12のゲートは、ともに抵抗R1の一端に接続され、トランジスタPM13,PM14のゲートは、ともに抵抗R1の他端に接続される。
【0024】
トランジスタNM11〜NM14は、NチャンネルMOSFETからなるものであり、P型基板上に形成され、バルクは、電圧VLにバイアスされる。尚、トランジスタNM11〜NM14には、ほぼ同じような特性のものが用いられる。
【0025】
トランジスタNM11とトランジスタNM12とは、カレントミラー回路を構成する一対のトランジスタであり、制御端としての双方のゲートは、互いに接続される。また、トランジスタNM11のドレインは、抵抗R1の他端に接続される。
【0026】
トランジスタNM13とトランジスタNM14とは、カレントミラー回路を構成する一対のトランジスタであり、双方のゲートは、互いに接続される。そして、トランジスタNM13のドレインは、トランジスタNM11のソースに接続され、トランジスタNM14のドレインは、トランジスタNM12のソースに接続される。
【0027】
抵抗R2は、トランジスタNM11とトランジスタNM12とによって構成されたカレントミラー回路と、トランジスタNM13とトランジスタNM14とによって構成されたカレントミラー回路と、が2段で動作するように介挿された抵抗である。
【0028】
抵抗R2の一端は、トランジスタPM14のドレインに接続され、トランジスタNM11,NM12のゲートはともに、抵抗R2の一端に接続される。
【0029】
また、トランジスタNM12のドレイン、トランジスタNM13,NM14のゲートは、ともに抵抗R2の他端に接続される。
【0030】
トランジスタQ11〜Q13は、pnpバイポーラトランジスタからなるものであり、トランジスタQ11〜Q13のそれぞれのコレクタとベースとは、電圧VLにバイアスされる。
【0031】
トランジスタQ11のエミッタは、抵抗R3を介してトランジスタNM13のソースに接続され、トランジスタQ12のエミッタは、トランジスタNM14のソースに接続される。
【0032】
このトランジスタQ11とトランジスタQ12とのpn接合部の面積比は、m:1(但し、mは正の自然数)に設定され、トランジスタQ11のpn接合部の面積は、トランジスタQ12と比較して広くなっている。この分、トランジスタQ11のエミッタ−ベース間電圧Vbeは、トランジスタQ12と比較して小さくなる。
【0033】
トランジスタQ13のエミッタは、抵抗R4を介してトランジスタPM16のドレインに接続される。そして、バンドギャップ回路部10は、このトランジスタPM16のドレインと抵抗R4との接続点の電圧を基準電圧Vrefとして出力する。
【0034】
コンデンサC1は、出力される基準電圧Vrefを安定化するためのものであり、一端は、トランジスタPM16のドレインに接続され、他端は、電圧VLの電圧ラインに接続される。
【0035】
尚、バンドギャップ回路部10は、基準電圧Vrefが0Vで安定状態となって立ち上がらない場合が起こりうるため、基準電圧生成回路は、バンドギャップ回路部10を立ち上げるためのスタートアップ回路部(図示せず)を備える。
【0036】
次に、このように構成されたバンドギャップ回路部10の動作原理について説明する。
トランジスタQ11〜Q13のようなバイポーラトランジスタのpn接合の順方向電圧と絶対温度の関係は、次の数1によって表される。
【数1】

バイポーラトランジスタがシリコンで形成されている場合、シリコンのバンドギャップ電圧Vegは、約1.2Vであり、温度係数aは、約2mV/°Cである。
【0037】
また、バイポーラトランジスタのエミッタ電流Iとベース−エミッタ間電圧Vbeとの関係は、次の数2によって表される。
【数2】

【0038】
トランジスタPM11とトランジスタPM12、トランジスタPM13とトランジスタPM14、トランジスタNM11とトランジスタNM12、トランジスタNM13とトランジスタNM14によって、それぞれ、カレントミラー回路が構成されているため、トランジスタNM11,NM13に流れる電流Iq1と、トランジスタNM12,NM14に流れる電流Iq2とは、ほぼ等しくなる。
【0039】
電流Iq1と電流Iq2とがほぼ等しくなれば、トランジスタNM13のソースと抵抗R3との接続点N1の電圧と、トランジスタNM14のソースとトランジスタQ12のエミッタとの接続点N2の電圧ともほぼ等しくなる。このため、この電流Iq1、電流Iq2は、数2より、次の数3によって表される。
【数3】

また、トランジスタQ11とトランジスタQ12とのpn接合部の面積比は、m:1に設定され、この分、トランジスタQ11のエミッタ−ベース間電圧Vbeは、トランジスタQ12と比較して小さくなる一方、トランジスタNM13のソースとトランジスタQ11のエミッタとの間には抵抗R3が接続されている。このため、抵抗R3両端の電位差Vr3は、数3より、次の数4によって表される。
【数4】

数4に示すように、この抵抗R3の両端に、絶対温度に比例する電位差Vr3が現れることになる。
【0040】
次に、トランジスタPM11,PM13に流れる電流(Iq1)の電流量、トランジスタPM12,PM14に流れる電流(Iq2)の電流量をipとして、電流ipは、次の数5によって表される。
【数5】

【0041】
また、トランジスタPM15,PM16には、この電流量ipと同じ量の電流Iq3が流れる。このため、抵抗R4の両端の電位差(電圧降下)Vr4は、次の数6によって表される。
【数6】

【0042】
従って、基準電圧Vrefは、次の数7によって表される。
【数7】

この数7に示すように、基準電圧Vrefは、絶対温度に比例する電位差と順バイアスされた半導体のpn接合の電位差とが加算されて、半導体のバンドギャップ電圧に基づく電圧になる。
【0043】
また、この数7を参照すると、トランジスタQ13のようなバイポーラトランジスタのベース−エミッタ間の温度係数は負であり、そのベース−エミッタ間電圧Vbe13は、温度の上昇に伴い減少する。
【0044】
一方、数7の第2項の温度係数は正であり、抵抗R4における電圧降下Vr4は、温度の上昇に伴って大きくなる。
【0045】
このように、互いに異なる温度係数を有するパラメータを加算して基準電圧Vrefが生成されるため、抵抗R3,R4のそれぞれの抵抗値r3,r4が適切に設定されることにより、温度に依存しない基準電圧Vrefが生成される。
【0046】
次に、定電流回路部20は、電圧VCの外部電源から供給された電流を定電流化して、バンドギャップ回路部10に供給するためのものである。これにより、定電流回路部20は、電圧VCの電源ラインに重畳したノイズによる電圧変動を阻止する。
【0047】
定電流回路部20は、トランジスタPM21,PM22からなる。
トランジスタPM21とトランジスタPM22とは、ともにPチャンネルMOSFETからなる一対のトランジスタであり、カレントミラー回路を構成する。トランジスタPM21とトランジスタPM22とは、N基板上に形成され、バルクは、外部電源の電圧VCにバイアスされる。
【0048】
尚、トランジスタPM21,PM22のチャンネル幅の比は、電流制御部30の電流路とバンドギャップ回路部10の電流路との比に対応させて設定される。
【0049】
具体的に、バンドギャップ回路部10には、トランジスタPM11以下の電流路と、トランジスタPM12以下の電流路と、トランジスタPM15以下の電流路と、の3つの電流路が形成されている。また、電流制御部30には、トランジスタNM31以下の電流路が1つだけ形成されている。
【0050】
従って、本実施形態では、トランジスタPM21,PM22のチャンネル幅の比を3対1とし、この比となるように、トランジスタPM21,PM22のチャンネル幅が設定される。このようにチャンネル幅が設定されると、トランジスタPM21のソース−ドレイン間には、トランジスタPM22と比較して3倍の電流が流れる。
【0051】
制御端としてのトランジスタPM21,PM22のゲートは、ともにトランジスタPM22のドレインに接続され、トランジスタPM21,PM22のそれぞれのソース−ドレイン間は、電流路となる。
【0052】
また、トランジスタPM21,PM22のそれぞれのソースは、電圧VCの電源ラインに接続される。トランジスタPM21のドレインは、定電流回路部20の電流流出端であり、バンドギャップ回路部10は、このドレインに接続され、定電流回路部20は、バンドギャップ回路部10に電圧VHを印加する。
【0053】
電流制御部30は、定電流回路部20の一対のトランジスタPM21,PM22が飽和領域で動作してバンドギャップ部10に供給される電流が定電流となるように、トランジスタPM22のソース−ドレイン間に流れるドレイン電流の量を制御するためのものである。電流制御部30は、トランジスタNM31とトランジスタQ31とからなる。
【0054】
トランジスタNM31は、NチャンネルMOSFETからなり、P型基板上に形成され、バルクは、電圧VLにバイアスされる。トランジスタNM31のゲートは、バンドギャップ回路部10のトランジスタNM13,NM14のゲートに接続される。
【0055】
また、トランジスタNM31のドレインは、定電流回路部20のトランジスタPM22のドレインに接続される。
【0056】
トランジスタQ31は、pnpバイポーラトランジスタからなり、そのエミッタは、トランジスタNM31のソースに接続され、コレクタとベースとは、電圧VLにバイアスされる。
【0057】
尚、トランジスタNM31には、トランジスタNM11〜NM14とほぼ同じ特性のものが用いられ、また、トランジスタQ31には、トランジスタQ12とほぼ同じ特性のものが用いられる。
【0058】
このように構成された電流制御部30は、トランジスタNM13,NM14のゲートに供給された信号を取得する。そして、電流制御部30は、取得した信号のレベル、即ち、ゲート−ソース間電圧Vgs1に基づいて、定電流回路部20のトランジスタPM21,PM22が、図2に示すような飽和領域Sp1で動作するように、トランジスタPM22のソース−ドレイン間に流れるドレイン電流の電流量を制御する。
【0059】
尚、この図2において、L1は、飽和領域Sp1と線形領域Sp2との境界線であり、次の数8によって表される。
【数8】

【0060】
このように、トランジスタPM21,PM22が飽和領域Sp1で動作することにより、トランジスタPM21,PM22のゲート−ソース間電圧Vgs1が一定であれば、ドレイン−ソース間電圧Vdsが変動しても、ドレイン電流Idは変化しなくなり、電圧VCが変動しても、バンドギャップ回路部10に流れる電流は定電流となる。
【0061】
次に本実施形態に係る基準電圧生成回路の動作を説明する。
定電流回路部20は、外部電源の電圧VCが印加されて、バンドギャップ回路部10に電流の供給を開始する。定電流回路部20からバンドギャップ回路部10に電流が供給されると、バンドギャップ回路部10のトランジスタPM11,PM13には、電流Iq1が流れ、トランジスタPM12,PM14には、電流Iq2が流れる。
【0062】
電流Iq1と電流Iq2とのそれぞれの電流量ipはほぼ同じであり、トランジスタPM15,PM16に流れる電流Iq3の電流量もほぼ同じとなるため、バンドギャップ回路部10は、数7に示す基準電圧Vrefを出力する。
【0063】
一方、トランジスタNM31のゲートがトランジスタNM13,NM14のゲートに接続されている。また、トランジスタNM31の特性、トランジスタQ31の特性は、それぞれ、トランジスタNM13,NM14の特性、トランジスタQ12の特性とほぼ同じである。このため、トランジスタNM31、トランジスタQ31には、トランジスタNM11〜NM14、トランジスタQ11,Q12に流れる電流Iq1,Iq2とほぼ同じ電流量ipの電流が流れる。
【0064】
従って、定電流回路部20のトランジスタPM22のソース−ドレイン間にも、ほぼこの電流量ipの電流が流れる。また、トランジスタPM21のチャンネル幅は、トランジスタPM22と比較して3倍に設定されているため、トランジスタPM21には、電流量ipの3倍の電流が流れる。
【0065】
この電流は、トランジスタPM11,PM12,PM15の電流路にほぼ均等に、1/3ずつ分配され、各電流路には、それぞれ、電流量ipの電流Iq1,Iq2,Iq3が流れる。このため、定電流回路部20は、バンドギャップ回路部10に適切な量の電流を供給することになる。
【0066】
外部電源の配線間のインダクタンス成分の影響により、電圧VCの電源ラインに、図3に示すようなノイズnが重畳した場合、定電流回路部20のトランジスタPM21のドレイン−ソース間電圧Vdsは、ノイズnの影響により、変動する。
【0067】
しかし、トランジスタPM21のドレイン−ソース間電圧Vdsが変動しても、定電流回路部20のトランジスタPM21,PM22が、図2に示すような飽和領域Sp1で動作しているため、ドレイン電流Idは一定となり、トランジスタNM13,NM14のゲート−ソース間電圧は変化しない。
【0068】
トランジスタNM13,NM14のゲート−ソース間電圧が変化しなければ、トランジスタNM31のゲート−ソース間電圧、トランジスタPM21,PM22のゲート−ソース間電圧Vgs1も変化せず、トランジスタPM21,PM22のドレイン電流Idも一定となる。このように、電流制御部30が、定電流回路部20のトランジスタPM22のドレイン電流Idを制御しているため、電圧VCの変動にかかわらず、バンドギャップ回路部10に流れる電流は一定となる。
【0069】
従って、定電流回路部20は、電圧VCの電源ラインにノイズnが重畳しても、ノイズnの影響を受けずに、バンドギャップ回路部10に定電流を供給し、消費電流の増加を阻止することができる。
【0070】
また、バンドギャップ回路部10には、ノイズの影響を受けずに定電流が供給されて、基準電圧Vrefは一定に保持される。
【0071】
以上説明したように、本実施形態によれば、定電流回路部20に、一対のトランジスタPM21,PM22によって構成されたカレントミラー回路を備え、トランジスタPM21,PM22を飽和領域で動作させることにより、トランジスタPM21に流れる電流を定電流化して、バンドギャップ回路部10に供給するようにした。
【0072】
また、電流制御部30を備え、電流制御部30は、バンドギャップ回路部10のトランジスタNM13,NM14のゲート電圧に基づいて、定電流回路部20のトランジスタPM22に流れるドレイン電流の量を制御するようにした。
【0073】
従って、外部電源の配線間のインダクタンス成分の影響により、電圧VCの電源ラインにノイズが重畳しても、定電流回路部20は、ノイズの影響を受けずにバンドギャップ回路部10に定電流を供給することができ、バンドギャップ回路部10が生成した基準電圧Vrefを一定に保持することができる。
【0074】
また、定電流回路部20のトランジスタPM21,PM22のチャンネル幅の比を3対1として、トランジスタPM21には、バンドギャップ回路部10の各電流路に必要な電流を流すようにした。従って、定電流回路部20は、バンドギャップ回路部10に、適切な電流を供給することができ、トランジスタPM21,PM22を確実に飽和領域Sp1で動作させることができる。
【0075】
尚、本発明を実施するにあたっては、種々の形態が考えられ、上記実施の形態に限られるものではない。
例えば、上記実施の形態では、バンドギャップ回路部10にトランジスタPM11〜PM16を備えるようにした。しかし、トランジスタPM13,PM14、PM16,トランジスタNM11,NM12を備えずに、トランジスタPM11,PM12,PM15,NM13,NM14のみにすることもできる。
【0076】
また、トランジスタQ11〜Q13の代わりに、それぞれ、ダイオードを用いてもよい。また、定電流回路部20のトランジスタPM21,PM22の代わりに、pnpバイポーラトランジスタを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施形態に係る基準電圧生成回路の構成を示す回路図である。
【図2】トランジスタの飽和領域、線形領域を示す図である。
【図3】外部電源に重畳したノイズを示す図である。
【符号の説明】
【0078】
10 バンドギャップ回路部
20 定電流回路部
30 電流制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶対温度に比例する電位差を生成し、生成した電位差と順バイアスされた半導体のpn接合の電位差とを加算することにより、前記半導体のバンドギャップ電圧に基づく基準電圧を生成する基準電圧生成部と、
電流路を有するトランジスタを備え、前記トランジスタが飽和領域で動作して、外部電源から前記トランジスタの前記電流路に供給された電流を定電流化し、前記基準電圧生成部に供給する定電流供給部と、を備えた、
ことを特徴とする基準電圧生成回路。
【請求項2】
前記基準電圧生成部は、カレントミラー回路を構成する第1のトランジスタと第2のトランジスタとを有し、前記第1のトランジスタの電流路には、抵抗を介してpn接合部を有する第1の半導体が接続され、前記第2のトランジスタの電流路には、pn接合部を有する第2の半導体が接続され、前記第1の半導体と前記第2の半導体とのpn接合部の面積比が設定され、前記抵抗の両端で、絶対温度に比例する電位差を生成するように構成され、
前記定電流供給部は、カレントミラー回路を構成する第3のトランジスタと第4のトランジスタとを有し、前記第3のトランジスタの電流路の電流流出端が前記基準電圧生成部に接続されたものであり、
前記基準電圧生成部の前記第2のトランジスタの電流路に流れる電流の量を取得し、取得した電流の量に基づいて、前記第3のトランジスタが飽和領域で動作するように、前記定電流供給部の前記第4のトランジスタの電流路に流れる電流の量を制御する電流制御部を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の基準電圧生成回路。
【請求項3】
前記定電流供給部の前記第3のトランジスタと前記第4のトランジスタとのチャンネル幅又はpn接合面積の比が、前記電流制御部の電流路と前記基準電圧生成部の電流路との比に対応させて設定された、
ことを特徴とする請求項2に記載の基準電圧生成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−305010(P2007−305010A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134682(P2006−134682)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】