説明

基礎杭溶接装置

【課題】下杭上端と上杭下端とを自走架台に搭載した溶接トーチで溶接する基礎杭溶接装置において、自走架台を一定速度で確実に移動させられるようにする。
【解決手段】溶接装置10は、下杭1の上部に取りつけられる走行ガイド20と、走行ガイド20に支持されて下杭1と上杭2の周りを周回し、搭載した溶接トーチ70で下杭1の上端と上杭2の下端を溶接する自走架台40を備える。走行ガイド20はブロック100aとブロック100bに分割され、両者を組み合わせて1個の円環構造を形成する。円環構造となった走行ガイド20をチェーン26が取り巻く。チェーン26は走行ガイド20に移動不能に連結される。自走架台40にはチェーン26にかみ合うスプロケット49と、それを回転させる電動機47が設けられており、スプロケット49が回転することにより自走架台40は走行ガイド20に対し移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート杭や鋼管杭などの基礎杭の溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の基礎杭は、工業生産される既製杭にあっては、トレーラーで輸送可能な7mから15mといった長さとするのが普通である。ところがこの程度の長さでは地下の支持層には届かないケースがある。そのような場合には基礎杭を継ぎ足して必要な長さの延伸基礎杭を形成する。
【0003】
コンクリート製の基礎杭の端の部分には鋼鉄製のリングが取り付けてあり、このリング同士を連結して継ぎ足しを行う。連結には溶接継手、無溶接継手、ボルト継手などが用いられる。溶接継手の場合、まず下側の基礎杭に玉掛けをして建て込み穴の中に吊り下げておき、その上にクレーンで支持した上側の基礎杭を重ねて溶接する。この溶接継手の溶接作業を自動化する提案は以前からなされており、その例を特許文献1、2に見ることができる。
【0004】
特許文献1記載の溶接装置は、杭頭溶接部に近接してガイド用環体を設置し、このガイド用環体に自走溶接機を架設し、溶接棒を所定位置に支持しつつ繰り出して電気溶接を行う。特許文献2記載の溶接装置も基本的な仕組みは特許文献1記載のものと同じである。
【特許文献1】特開平8−281483号公報
【特許文献2】特開2005−334916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
溶接トーチを搭載した自走架台により基礎杭の溶接を行う場合、自走架台が走行ガイドに沿い一定速度で走行する必要があるが、上記特許文献1、2記載の装置は、一定速度の確保という面で次のような問題があった。
【0006】
特許文献1記載の装置では、ガイドレールに接触する駆動輪を回転させて自走溶接機を移動させる。ガイドレールに油が付着したりすると、駆動輪が空回りして自走溶接機が移動できない可能性がある。移動はできるにせよ、その速度が違ってくれば、所期の溶接結果が得られなくなる。
【0007】
特許文献2記載の装置も、ガイドレールに接触する車輪で自走架台を移動させる。滑りを防止するOリングが設けられてはいるものの、油が付着した場合の推進力低下は如何ともしがたい。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、下杭上端と上杭下端とを、それらの周りを周回する自走架台に搭載した溶接トーチで溶接する基礎杭溶接装置において、自走架台を一定速度で確実に移動させられるようにすることを目的とする。また、溶接トーチが溶接ラインを正確に辿って移動するようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために本発明は、下杭上端と上杭下端とを、それらの周りを周回する自走架台に搭載した溶接トーチで溶接する基礎杭溶接装置において、前記下杭または上杭には前記自走架台を支持する走行ガイドが取り付けられるものであり、前記走行ガイドは複数のブロックに分割され、それらを組み合わせて1個の円環構造を形成するものであり、前記走行ガイドを取り巻き、且つ走行ガイドに移動不能に連結されたチェーンを設け、前記チェーンにかみ合うスプロケットと、それを回転させる電動機を前記自走架台に設け、前記スプロケットの回転で自走架台を移動させることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、走行ガイドに移動不能に連結されたチェーンにかみ合うスプロケットを回転させて自走架台を移動させるものであるから、スリップということがあり得ず、自走架台を着実に一定速度で移動させることができる。これにより、肉盛りにむらのない溶接部を得ることができる。
【0011】
(2)また本発明は、上記構成の基礎杭溶接装置において、前記チェーンは、端部同士を連結して1個の無端チェーンを形成するものであることを特徴としている。
【0012】
この構成によると、自走架台を360°以上移動させ、切れ目のない環状の溶接部を得ることができる。
【0013】
(3)また本発明は、上記構成の基礎杭溶接装置において、前記自走架台は前記溶接トーチを角度可変に支持する支持部を備え、この支持部は前記下杭または上杭に接触するローラを備えることを特徴としている。
【0014】
この構成によると、基礎杭と溶接トーチの距離が一定に保たれ、アークを安定して発生させることができる。
【0015】
(4)また本発明は、上記構成の基礎杭溶接装置において、前記下杭または上杭に、前記走行ガイドよりも下の位置で固定される落下防止リングを設け、この落下防止リングと走行ガイドとの間に走行ガイドの水平度調節手段を配置したことを特徴としている。
【0016】
この構成によると、走行ガイドの落下が防がれるとともに、走行ガイドの水平度を調節して、溶接トーチが溶接ラインを正確に辿るようにすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、走行ガイドに移動不能に連結されたチェーンにかみ合うスプロケットを回転させて自走架台を移動させるものであるから、自走架台に搭載された溶接トーチを着実に一定速度で移動させることができる。また走行ガイドの水平度を調節して、溶接トーチに溶接ラインを正確に辿らせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態を図1−10に示す。図1は溶接装置の全体構造を示す側面図、図2は溶接装置の全体構造を示す上面図、図3は要部を断面した溶接装置の拡大側面図、図4は溶接装置の正面図、図5はチェーン端連結部の部分拡大上面図、図6はチェーン端連結部の部分拡大正面図、図7は下杭と上杭を整列させる状況を示す側面図、図8は下杭と上杭の整列と仮溶接に用いる整列ガイドの側面図、図9は整列ガイドの上面図、図10は整列ガイドの部分拡大断面図である。
【0019】
図1、3、7、10に2本の杭がそれぞれ一部ずつ実線あるいは仮想線で示されている。2本とも同一種類のコンクリート既製杭であるが、本明細書では、下に位置するものを下杭、上に位置するものを上杭と呼称し、下杭には1、上杭には2の符号を付すこととする。下杭1は両端に鋼鉄製リング3を有し、上杭2は両端に鋼鉄製リング4を有する。下杭1の上端の鋼鉄製リング3と上杭2の下端の鋼鉄製リング4を合わせると所定の開先形状が形成される。このリング3、4を溶接するのに用いられるのが溶接装置10である。
【0020】
下杭1は地面の穴から所定高さ突き出した状態で玉掛けによって保持されている。穴は建て込み用の本穴であっても良いし、溶接作業専用の仮穴であっても良い。溶接装置10は、下杭1の上部に取り付けられる走行ガイド20と、走行ガイド20に支持される自走架台40と、自走架台40に搭載される溶接トーチ70を主な構成要素とする。以下、それらの詳細構造を順次説明する。
【0021】
走行ガイド20は鋼鉄の板材同士を溶接して、あるいはボルト・ナット等の締結要素で連結して構成した円環状の構造物であり、下杭1の外周面にほぼ密着するハブ21と、ハブ21に複数のスポーク22を介して連結されたリム23を備える。ハブ21もリム23も主たる平面を垂直に立てる配置となっている。走行ガイド20は複数のブロックに分割され、それらを組み合わせて1個の円環構造を形成する。本実施形態では、軸心を含む垂直面で走行ガイド20を二分割し、ブロック数を2としている。ブロック同士の連結には図示しないボルト・ナットを用いる。
【0022】
走行ガイド20は下杭1の天面から所定距離下がった位置に固定する。固定には六角穴付き止めネジ24(図3参照)を用いる。六角穴付き止めネジ24は上下2本を一組として所定の角度間隔で配置され、それぞれ先端が下杭1の側面に面する形でハブ21にねじ込まれている。図示しない六角レンチで六角穴付き止めネジ24を回し、下杭1を圧迫することにより、走行ガイド20は固定される。六角穴付き止めネジ24を十分に締め込んだ後、緩み止めナット25で六角穴付き止めネジ24の緩み止めを行う。
【0023】
六角穴付き止めネジ24だけでは走行リング20がずり落ちるおそれがあるので、走行ガイド20の下にさらに落下防止リング30を配置する。落下防止リング30は鋼鉄製の半円形バンド31を2個、ヒンジ32(図1参照)で連結した構造であり、ヒンジ32から180°隔たった位置の開放端を閉じて図示しないボルトで締め付ければ、落下防止リング30は下杭1に固定される。摩擦力で下杭1にしっかりと保持されるよう、落下防止リング30の内面にゴムなど摩擦係数の高い物質のライニングを施しておくとよい。
【0024】
落下防止リング30には走行ガイド20の水平度調節手段が設けられる。水平度調節手段を構成するのは落下防止リング30に所定の角度間隔で配置された複数のボルト33である。ボルト33は軸線を垂直にする形で落下防止リング30にねじ込まれており、各々先端を走行ガイド20の下面に当ててこれを支える。ボルト33を回して上下させればその位置における走行ガイド20の高さが変化する。高さ調整の必要な箇所のボルト33を回すことにより、走行ガイド20を下杭1の天面(あるいは上杭2の底面)と平行にすることができる。
【0025】
下杭1の周囲に走行ガイド20のブロックを配置し、組み合わせる作業を終えた後、リム23を取り巻く形でチェーン26を水平に取り付ける。チェーン26は両端を連結して無端形状とする。連結は、図5に示すU字形の連結金具27によって行う。チェーン26には、所々のリンク板に、上または下に向かって突き出すブラケット28が形成されており、このブラケット29の貫通穴29を通じ図示しないビスをリム23にねじ込むことにより、走行ガイド20に移動不能に連結される。
【0026】
自走架台40も、鋼鉄の板材同士を溶接して、あるいはボルト・ナット等の締結要素で連結して、所定のフレーム構造を形成する。自走架台40は複数のローラでリム23を抱えるようにして走行ガイド20に走行自在に取り付けられる。そのローラとは、リム23を上下から挟むローラ41、42と、リム23の上端を表と裏から挟むローラ43、44と、同じくリム23の下端を表と裏から挟むローラ45、46である。これら3組のローラは、2セットが図4に示すように自走架台40の左右位置に対称的に設けられる。自走架台40の重量を支えるのはローラ41である。
【0027】
自走架台40は縦軸の電動機47を支持する。電動機47は減速機を一体に組み合わせたものであり、減速機部分から上向きに突き出した出力軸48にはスプロケット49が固定されている。スプロケット49はチェーン26にかみ合うものであり、スプロケット49が回転するとそれはチェーン26を手繰り寄せようとするが、チェーン26が走行ガイド20に移動不能に連結されているので、自らがチェーン26に対して移動する。これが自走架台40の動きとなる。
【0028】
自走架台40は、溶接トーチ70を角度可変に支持する支持部50をその上面に搭載している。以下、支持部50の構造を説明する。
【0029】
支持部50の基礎をなすのは直線動案内部材51である。直線動案内部材51は自走架台40に固定されたベース51aと、その上に載置されたスライダ51bを備える。スライダ51bは走行ガイド20の半径方向にスライドする。圧縮コイルばね52がスライダ51bを走行ガイド20の中心方向へ押す。圧縮コイルばね52は、自走架台40の上面から立ち上がるブラケット53に水平にねじ込まれたスタッドボルト54に一端をからませており、スタッドボルト54上のナット55を回すことによりスライダ51bに及ぼす圧力を変えられるようになっている。
【0030】
スライダ51bの上面からは支柱56が立ち上がる。支柱56はブラケット57、58を支持する。ブラケット57、58は各々支柱56を挟むすり割り部を有し、ブラケット57にあってはボルト59を、ブラケット58にあってはボルト60を、それぞれ締め付けることにより、支柱56に固定される。ボルト59、60を緩めればブラケット57、58の水平面内での角度あるいは支柱56に対する高さを変えることができる。
【0031】
ブラケット57にはブラケット61が固定される。ブラケット61にもすり割り部が設けられ、ここに溶接トーチホルダ71が挿入される。ボルト62を締め付ければ溶接トーチホルダ71は固定される。
【0032】
ブラケット58からは上杭2に向けアーム63が突き出す。アーム63は2枚の鋼板を望遠鏡式に伸縮可能に継ぎ合わせたものであり、2枚の板を連結するボルト64を緩めれば、両者をずらして全体の長さを調節することができる。
【0033】
アーム63の先端にはローラ65が取り付けられる。ローラ65は算盤玉形状をしており、アーム63に固定された垂直軸66に回転自在に支持されている。圧縮コイルばね52で押されてきたスライダ51bは、ローラ65が上杭2に当たることによりそれ以上移動しなくなる。これにより、溶接トーチホルダ71の上杭2に対する距離が一定化する。
【0034】
自走架台40には、溶接箇所から飛散するスパッタが作業者の方向や重要構成要素方向に飛んでくるのを防止するため、上下1対のカバー67、68が設けられる。カバー67、68はいずれもいずれも鋼板製で、カバー67はブラケット58に固定され、カバー68は自走架台40自体に固定されている。
【0035】
溶接トーチホルダ71が保持する溶接トーチ70は、市販の自動溶接機の一部分をなすものであり、図示しない自動溶接機本体が、溶接ワイヤ72の自動繰り出しと、溶接電流の供給を行う。
【0036】
溶接ワイヤ72の先端高さが溶接ライン(リング3、4の合わせ目)に一致するようにブラケット57の高さを調節し、また溶接ワイヤ72から溶接箇所までの距離が所定値になるようにアーム63の長さを調節した後、電動機47と自動溶接機をONにする。すると自走架台40は一方向にゆっくりと移動し、溶接トーチ70は溶接ラインに沿って溶接を行う。溶接ワイヤ72は所定速度で自動的に繰り出される。自動溶接機本体は手押し車あるいは自走車両等に搭載しておき、自走架台40からあまり離れないように追随させるのがよい。
【0037】
走行ガイド20に移動不能に連結されたチェーン26にかみ合うスプロケット49を回転させて自走架台40を移動させるものであるから、自走架台40はスリップと無縁の移動を行う。このため、自走架台40に搭載された溶接トーチ70を着実に一定速度で移動させることができる。また、走行ガイド20の水平度を予め調節しておくことにより、溶接トーチ70に溶接ラインを正確に辿らせることができる。これらが相まって、良好な溶接結果を得ることができる。
【0038】
下杭1と上杭2の周囲を自走架台40が一巡すれば溶接作業は終了する。自動溶接機をOFFにしてアークを消し、電動機47をOFFにして自走架台40の移動を止める。以後、チェーン26を走行ガイド20から取り外し、走行ガイド20を2個のブロックに分割して下杭1から分離する。落下防止リング30も下杭1から取り外す。そして新たな下杭1と上杭2に溶接装置10をセットし、次の溶接作業を開始する。
【0039】
溶接装置10による本格的な溶接作業に入る前に、下杭1と上杭2を整列状態にして仮溶接しておく必要がある。その作業に用いる整列ガイドの一例を図7−10に基づき説明する。
【0040】
整列ガイド100は、鋼板を筒形に加工したものであるが、単純な円筒形ではなく、下から上へと順次直径が大きくなるよう、4段の筒部を積み上げた形になっている。最下段の筒部101は円筒形であり、下杭1の外径より少し大きい内径を有する。その上の筒部102は上向きに広がるテーパ形状をなし、最小直径部の直径は筒部101の直径に等しい。その上の筒部103は筒部102の最大直径部と同じ直径の円筒形である。最上段の筒部104は上向きに広がるテーパ形状をなし、最小直径部の直径は筒部103の直径に等しい。なお筒部103の下部には横長の窓105が所定間隔で複数形成されている。窓105は下杭1と上杭2の整列状況の目視確認及びリング3、4の仮溶接作業に用いられる。
【0041】
整列ガイド100は軸心を含む垂直面で二分割され、第1ブロック100aと第2ブロック100bに分かれる。第1ブロック100aと第2ブロック100bは複数のアイボルト106で連結される。第1ブロック100aと第2ブロック100bには、それぞれ筒部103の箇所に2個ずつのハンドル107が固定される。計4個のハンドル107は、図9に示すように90°間隔で並ぶ。
【0042】
筒部101には下杭1を圧迫する六角穴付き止めネジ108が120°間隔で3個ねじ込まれる。個数が3個なので、第1ブロック100aに2本、第2ブロック100bに1本という配分になる。走行ガイド20の六角穴付き止めネジ24と同様、六角穴付き止めネジ108を回して下杭1を圧迫し、整列ガイド100を固定するが、それだけでは整列ガイド100がずり落ちるおそれがある。そこで、走行ガイド20に対し使用するのと同じ落下防止リング30をこの場合も用いる。ボルト33は整列ガイド100の下面を支えるものであり、ボルト33を回すことにより整列ガイド100の高さ及び水平度を調節できる。下杭1の天面が窓105の上下方向中央に来るように整列ガイド100の高さを調節する。
【0043】
筒部103には、上杭2を下杭1に対し整列させる六角穴付き止めネジ109が120°間隔で3個ねじ込まれる。個数が3個なので、六角穴付き止めネジ108と同様、第1ブロック100aに2本、第2ブロック100bに1本という配分にする。六角穴付き止めネジ109は先端に回転自在な当てコマ110(図10参照)を有し、当てコマ110を介して上杭2を圧迫する。当てコマ110は上杭2に対し回転しないので、上杭2の表面に六角穴付き止めネジ109の回転痕が残らない。
【0044】
上杭2を迎えるとき、六角穴付き止めネジ109は図10に示す後退位置に置かれるのであるが、それでも、上杭2が当たって当てコマ110がもげるおそれなしとしない。そこで、当てコマ110を上から覆うテーパ状の庇部材111を筒部103の内面に溶接する。庇部材111は上杭2の挿入ガイドともなる。
【0045】
図7のように下杭1の上部に整列ガイド100を固定した後、図示しないクレーンで吊り下げた上杭2を上方から整列ガイド100に挿入する。テーパ状の筒部104により整列ガイド100の上端が大きく広がっているので、挿入は容易である。なお上杭2を吊り下げる仕組みとして、天秤120を用いた玉掛けを採用すれば、上杭2を垂直に吊ることができ、整列ガイド100への挿入に苦労しない。
【0046】
上杭2の底面を下杭1の天面に載置した後、吊り下げ状態を保ったままで六角穴付き止めネジ109を回し、上杭2を下杭1に整列させる。整列完了後、窓105から溶接トーチを差し入れ、溶接ラインの数カ所に仮溶接を行う。それが済んだら整列ガイド100を分解して取り外す。この場所で引き続き本溶接を行う場合は、落下防止リング30を走行ガイド20に適合する高さに合わせて固定し、溶接装置10をセットする。
【0047】
上記実施形態では走行ガイド20は下杭1に取り付けられるが、上杭2に走行ガイド20を取り付ける構成も可能である。その場合は自走架台40から垂下する支柱に溶接トーチ70が支持されることになる。
【0048】
以上本発明の実施形態につき説明したが、発明の主旨を逸脱しない範囲でさらに種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明はコンクリート杭や鋼管杭などの基礎杭を継ぎ足す溶接装置に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】溶接装置の全体構造を示す側面図
【図2】溶接装置の全体構造を示す上面図
【図3】要部を断面した溶接装置の拡大側面図
【図4】溶接装置の正面図
【図5】チェーン端連結部の部分拡大上面図
【図6】チェーン端連結部の部分拡大正面図
【図7】下杭と上杭を整列させる状況を示す側面図
【図8】下杭と上杭の整列と仮溶接に用いる整列ガイドの側面図
【図9】整列ガイドの上面図
【図10】整列ガイドの部分拡大断面図
【符号の説明】
【0051】
1 下杭
2 上杭
10 溶接装置
20 走行ガイド
26 チェーン
30 落下防止リング
33 ボルト(水平度調節手段)
40 自走架台
47 電動機
49 スプロケット
50 支持部
70 溶接トーチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下杭上端と上杭下端とを、それらの周りを周回する自走架台に搭載した溶接トーチで溶接する基礎杭溶接装置において、
前記下杭または上杭には前記自走架台を支持する走行ガイドが取り付けられるものであり、
前記走行ガイドは複数のブロックに分割され、それらを組み合わせて1個の円環構造を形成するものであり、
前記走行ガイドを取り巻き、且つ走行ガイドに移動不能に連結されたチェーンを設け、
前記チェーンにかみ合うスプロケットと、それを回転させる電動機を前記自走架台に設け、
前記スプロケットの回転で自走架台を移動させることを特徴とする基礎杭溶接装置。
【請求項2】
前記チェーンは、端部同士を連結して1個の無端チェーンを形成するものであることを特徴とする請求項1に記載の基礎杭溶接装置。
【請求項3】
前記自走架台は前記溶接トーチを角度可変に支持する支持部を備え、この支持部は前記下杭または上杭に接触するローラを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の基礎杭溶接装置。
【請求項4】
前記下杭または上杭に、前記走行ガイドよりも下の位置で固定される落下防止リングを設け、この落下防止リングと走行ガイドとの間に走行ガイドの水平度調節手段を配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の基礎杭溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−212964(P2008−212964A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52137(P2007−52137)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【特許番号】特許第4040076号(P4040076)
【特許公報発行日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(505404471)美和産業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】