基礎杭用の先端ヘッド及び施工具並びに基礎杭
【課題】 強固な支持力を発揮し得ると共に、安価且つ簡易に施工することができる基礎杭用の先端ヘッドを提供する。
【解決手段】 本先端ヘッド1は、筒状の本体2の外周面に外方に拡がる翼体3を設けてなり、且つ、筒状のケーシング10により地中に埋め込まれる基礎杭用の先端ヘッドであって、前記本体に設けられ且つ前記ケーシングに設けられた被係止部(切欠部11)と係脱可能な係止部(凸部4)を備え、前記翼体は、前記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板3a,3bを有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部7と、該水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部8と、該水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部9と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の該第1曲折部と他方の該分割板の該第2曲折部とが近接している。
【解決手段】 本先端ヘッド1は、筒状の本体2の外周面に外方に拡がる翼体3を設けてなり、且つ、筒状のケーシング10により地中に埋め込まれる基礎杭用の先端ヘッドであって、前記本体に設けられ且つ前記ケーシングに設けられた被係止部(切欠部11)と係脱可能な係止部(凸部4)を備え、前記翼体は、前記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板3a,3bを有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部7と、該水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部8と、該水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部9と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の該第1曲折部と他方の該分割板の該第2曲折部とが近接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭用の先端ヘッド及び施工具並びに基礎杭に関し、さらに詳しくは、強固な支持力を発揮し得る基礎杭用の先端ヘッド及び施工具並びに基礎杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建造物の基礎に用いられる基礎杭として、筒状の杭本体の先端側の外周面にらせん状の翼体を設けてなるものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。このような基礎杭の施工では、杭回転圧入機等によって基礎杭が地中にねじ込まれ、その際に翼体によって土砂等が掘削され、杭本体のまわりに押し出されることとなる。
【0003】
しかし、上記特許文献1〜3では、らせん状の翼体を用いているので、地震、風圧等により杭本体に外力が加わると、杭本体がらせん状に回転してしまう恐れがあり、さらに強固な支持力を発揮し得る基礎杭の開発が望まれていた。
【0004】
また、上記特許文献1〜3では、杭本体(中空パイル)を回転させつつ地中に押し込むようにしているので、比較的長尺な杭本体では、土の摩擦力によって杭本体に戻りモーメントが大きく作用して杭本体が損傷することがあり、その結果、基礎杭の支持力が低下してしまう場合があった。
ここで、従来の杭埋設方法として、中空パイルの下端部に回転自在に支持された推進ヘッド(先端ヘッド)に回転ロッドを連結し、回転ロッドにより推進ヘッドを回転させつつ、パイルを非回転で戻りモーメントを抑制して地中に埋め込むようにしたものが知られている(例えば、特許文献4及び5参照)。
しかし、上記特許文献4及び5では、パイル下端部に推進ヘッドを回転自在に支持するために、推進ヘッドに多数の転動部材を設ける必要があり、推進ヘッド自体が高価なものとなり、更に、回転ロッドを回転させる駆動手段の他に、パイルの上端部を挟持するクランプ手段を備える必要があり、全体として高額な施工となっていた。
また、上記特許文献4及び5では、らせん状の翼体を有する先端ヘッドが開示されており、上記特許文献1〜3の基礎杭と略同様にして、地震、風圧等により杭本体に外力が加わると、杭本体がらせん状に回転してしまう恐れがあり、さらに強固な支持力を発揮し得る基礎杭用の先端ヘッドの開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−85028号公報
【特許文献2】特開平7−292666号公報
【特許文献3】特開2002−339353号公報
【特許文献4】特開2002−81059号公報
【特許文献5】特開2003−147770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上より本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、強固な支持力を発揮し得ると共に、安価且つ簡易に施工することができる基礎杭用の先端ヘッド及び施工具を提供することを目的とする。また、本発明は、強固な支持力を発揮し得る基礎杭を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.筒状の本体の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなり、且つ、筒状のケーシングにより地中に埋め込まれる基礎杭用の先端ヘッドであって、
前記本体に設けられ且つ前記ケーシングに設けられた被係止部と係脱可能な係止部を備え、該係止部及び該被係止部の係止によって、前記ケーシング及び前記先端ヘッドをつれ回りさせつつ地中に埋め込めることができると共に、該係止部及び該被係止部の係止解除によって、前記先端ヘッドを地中の所定深さ位置に残したまま前記ケーシングを地中より引き抜くことができ、
前記翼体は、前記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部と、該水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の該第1曲折部と他方の該分割板の該第2曲折部とが近接していることを特徴とする基礎杭用の先端ヘッド。
2.前記本体の底壁部の上面には補強部が設けられている上記1.記載の基礎杭用の先端ヘッド。
3.前記係止部が、前記本体の上部周面側に設けられ且つ径方向に向って突出する凸部であり、前記被係止部が、前記ケーシングの下端縁から上方に向って切り欠かれた切欠部であり、前記先端ヘッド及び前記ケーシングの軸方向への相対移動によって、前記凸部が前記切欠部に挿脱し得るようになっている上記1.又は2.に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
4.前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
5.前記本体の底壁部の下面には、下方に向って突出する突出部が設けられている上記1.乃至4.のいずれか一項に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
6.筒状の杭本体の先端側の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなる基礎杭において、
前記翼体は、前記杭本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なる一方の分割端側で該杭本体の軸心方向の一方側に向って曲折された第
1曲折部と、該水平部に連なる他方の分割端側で該杭本体の軸心方向の他方側に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の第1曲折部と他方の該分割板の第2曲折部とが近接していることを特徴とする基礎杭。
7.前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる上記6.記載の基礎杭。
8.前記杭本体の底壁部の下面には、下方に向って突出する突出部材が設けられている上記6.又は7.に記載の基礎杭。
9.前記杭本体が、前記翼体が設けられる第1杭本体と、該第1杭本体より大きな軸心長さを有し且つ該第1杭本体に固定可能である第2杭本体とからなる上記6.乃至8.のいずれか一項に記載の基礎杭。
10.上記1.乃至5.のいずれか一項に記載の先端ヘッドと、該先端ヘッドが着脱自在に取着される前記ケーシングと、を備える基礎杭用の施工具。
【発明の効果】
【0008】
本発明の基礎杭用の先端ヘッドによると、係止部及び被係止部の係止によって、ケーシング及び先端ヘッドがつれ回りされつつ地中に埋め込められる一方、係止部及び被係止部の係止解除によって、先端ヘッドを所定深さの地中に残したままケーシングが地中より引き抜かれる。そして、先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体の互いに近接する第1曲折部及び第2曲折部によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭では、複数の分割体の水平部によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
また、前記本体の底壁部には補強部が設けられている場合は、地中の所定深さ位置に位置する先端ヘッドと杭体(例えば、鋼管杭、PC杭、場所打ちコンクリート杭等)とをより強固に結合させることができる。
また、前記係止部が凸部であり、前記被係止部が切欠部である場合は、より簡易な構造でケーシング及び先端ヘッドの着脱機構を構成できる。
また、前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる場合は、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
また、前記本体の底壁部には突出部が設けられている場合は、突出部によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
本発明の基礎杭によると、基礎杭を回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体の互いに近接する第1曲折部及び第2曲折部によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭は、複数の分割体の水平部によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
また、前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる場合は、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
また、前記杭本体の底壁部には突出部が設けられている場合は、突出部によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
また、前記杭本体が、第1杭本体と、第2杭本体とからなる場合は、第1杭本体及び第2掘削体の固定状態と分離状態とを適宜選択でき、取り扱い容易な基礎杭とすることができる。
本発明の基礎杭用の施工具によると、係止部及び被係止部の係止によって、ケーシング及び先端ヘッドがつれ回りされつつ地中に埋め込められる一方、係止部及び被係止部の係止解除によって、先端ヘッドを所定深さの地中に残したままケーシングが地中より引き抜かれる。そして、先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体の互いに近接する第1曲折部及び第2曲折部によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭では、複数の分割体の水平部によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
本実施形態1に係る基礎杭用の先端ヘッドは、以下に述べる本体、翼体、及び係止部を備えている。この先端ヘッドは、後述するケーシングにより地中に埋め込まれるものである。
【0010】
上記「本体」は、筒状である限り、その材質、形状、大きさ等は特に問わない。この本体としては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。また、この本体は、例えば、底壁部と、この底壁部の周縁から上方に向って延びる周壁部と、を有することができる。この場合、上記本体の底壁部の上面には、例えば、補強部が設けられていることができる。上記補強部としては、例えば、鉄筋材からなる鉄筋部、鋼管部等を挙げることができる。また、上記本体の底壁部の下面には、例えば、下方に向って突出する突出部が設けられていることができる。この突出部は、例えば、1又は2以上の板材からなることができる。この板材の形状としては、例えば、平面状、湾曲状、波状、屈曲状等を挙げることができる。
【0011】
上記「翼体」は、上記本体の外周面に外方に拡がるように設けられ、以下に述べる複数の分割板を有している。この翼体としては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0012】
上記「複数の分割板」は、上記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つほぼ同一水平面内に配設されている。この環状板の分割数、位置等は特に問わないが、掘削性及び支持力といった観点から、上記環状板が円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割されることが好ましい。
【0013】
上記分割板は、水平部、第1曲折部及び第2曲折部を有している。上記第1曲折部は、水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された部位である。また、上記第2曲折部は、上記水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された部位である。また、隣接する分割板の間では、一方の分割板の第1曲折部(又は第2曲折部)と他方の分割板の第2曲折部(又は第1曲折部)とが近接している。なお、掘削性(推力)及び食込み力といった観点から、上記第1及び第2曲折部の曲折角度が略同じ値に設定され、その値が5〜30度、より7〜27度、特に10〜25度であることが好ましい。
【0014】
上記「係止部」は、上記本体に設けられ且つケーシングに形成された被係止部と係脱可能である限り、その係脱形態等は特に問わない。この係脱形態としては、例えば、係止、螺合、嵌合、挟持、溶着、接着等を挙げることができる。
特に、上記係脱形態は、前記係止部が、前記本体の上部周面側に設けられ且つ径方向に向って突出する凸部であり、前記被係止部が、前記ケーシングの下端縁から上方に向って切り欠かれた切欠部であり、前記先端ヘッド及び前記ケーシングの軸心を一致させた状態での両者の軸方向への相対移動によって、前記凸部が前記切欠部に挿脱し得るようになっていることが好ましい。なお、上記切欠部には、例えば、前記凸部の軸方向移動を規制する規制部(例えば、フック部等)が設けられていることができる。これにより、ケーシングに対する先端ヘッドの脱落を防止することができる。
【0015】
上記「ケーシング」は、筒状である限り、その材質、形状、大きさ等は特に問わない。このケーシングは、通常、杭埋込機によって回転されつつ地中に埋め込まれる。また、このケーシングとしては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
上記ケーシングの下端部には、例えば、ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部から漏出される漏出物(例えば、硬化前のコンクリート、セメントミルク等の固化材等)を攪拌させるための攪拌部が設けられていることができる。これにより、基礎杭の主要部(例えば、鋼管杭、PC杭、場所打ちコンクリート杭等)の外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
【0016】
尚、上記実施形態1に係る先端ヘッドは、例えば、以下に述べる杭埋設方法〔a〕〜〔c〕で好適に用いられることができる。
【0017】
〔a〕筒状のケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、次に、前記ケーシングの内部に補強部材を挿入し、次いで、前記ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入し、その後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜くことを特徴とする杭埋設方法。
【0018】
上記杭埋設方法〔a〕は、通常、長尺なケーシングを吊下支持可能な杭埋込機を用いて行われる。また、上記補強部材は、例えば、鉄筋かごであることができる。また、この補強部材の大きさは、通常、ケーシングの軸方向長さに対応している。また、上記コンクリートの投入量は、通常、上記ケーシングの内部空間の大きさに対応している。尚、上記「硬化前のコンクリート」とは、通常、生コンクリートを示すが、施工現場で作業者により調合されるコンクリートであってもよい。これは以下の説明においても同様に適用されるものとする。
上記杭埋設方法〔a〕は、例えば、ケーシングを回転させつつ引き抜くことができる。この場合、前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記硬化前のコンクリートを攪拌させることが好ましい。これにより、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
【0019】
〔b〕(1)複数の分割ケーシングを軸方向に連結して筒状の分割ケーシング連結体をなし、該分割ケーシング連結体の最下端側の前記分割ケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記分割ケーシング連結体及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、次に、(2)前記分割ケーシング連結体の内部に補強部材を挿入し、次いで、(3)少なくとも最下端側の前記分割ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入した後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記分割ケーシング連結体を上方に向って移動させて、最上端側の前記分割ケーシングを、地中より引き抜いて該分割ケーシング連結体から分離し、その後、(4)必要に応じて上記(3)を繰り返し行って前記分割ケーシング連結体を地中から引き抜くことを特徴とする杭埋設方法。
【0020】
上記杭埋設方法〔b〕は、通常、地表近くで分割ケーシングを支持可能な杭埋込機(いわゆる全旋回機等)を用いて行われる。また、上記分割ケーシング連結体は、複数の分割ケーシングを軸方向に連結してなり筒状である限り、その連結数、サイズ等は特に問わない。この分割ケーシングの材質、サイズ等は特に問わない。この分割ケーシングの連結形態としては、例えば、係止、螺合、嵌合、挟持、溶着、接着等を挙げることができる。また、この分割ケーシングとしては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。また、上記補強部材は、例えば、鉄筋かごであることができる。また、この補強部材の大きさは、通常、分割ケーシング連結体の軸方向長さに対応している。また、上記コンクリートの投入量は、例えば、上記分割ケーシングの内部空間の大きさに対応していることができる。
上記杭埋設方法〔b〕は、例えば、分割ケーシング連結体を回転させつつ上方へ移動させることができる。この場合、前記分割ケーシング連結体を地中より引き抜く際、最下端側の分割ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該分割ケーシングの下端部から漏出される前記硬化前のコンクリートを攪拌させることが好ましい。これにより、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
尚、「必要に応じて」とは、分割ケーシング連結体の連結個数に応じることを意味する。例えば、分割ケーシング連結体の連結個数が2つの場合には、上記投入・分離工程(3)を1回繰り返して行われ、また、分割ケーシング連結体の連結個数が3つの場合には、上記投入・分離工程(3)を2回繰り返して行われることとなる。
【0021】
〔c〕筒状のケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程と、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に固化材を投入する工程と、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に杭体を挿入する工程と、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜く工程と、を備えることを特徴とする杭埋設方法。
【0022】
上記杭埋設方法〔c〕は、通常、長尺なケーシングを吊下支持可能な杭埋込機を用いて行われる。上記固化材としては、例えば、セメントミルク、モルタル、接着剤等を挙げることができる。安価で取扱い容易であるといった観点から、上記固化材がセメントミルクであることが好ましい。また、上記杭体は、例えば、中空パイルであることができる。この中空パイルとしては、例えば、コンクリート製、金属製(鋼製等)、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。安価で取扱い容易であるといった観点から、中空パイルがコンクリート製であることが好ましい。
上記杭埋設方法〔c〕は、例えば、ケーシングを回転させつつ引き抜くことができる。この場合、前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記固化材を攪拌させることが好ましい。この攪拌部は、例えば、ケーシングの下端部外周面より外方に突出していることができる。
【0023】
ここで、上記〔c〕杭埋設方法における上述の各工程の実施順序、タイミング等は特に問わない。上記投入工程及び上記挿入工程の実施順序としては、例えば、〔1〕前記固化材を投入する工程の後、前記杭体を挿入する工程が行われる形態、〔2〕前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程が行われる形態、〔3〕前記固化材を投入する工程と前記杭体を挿入する工程とが同時に行われる形態等を挙げることができる。
【0024】
上記〔1〕形態の場合、例えば、前記投入工程は、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に所定量の前記固化材を投入する工程であり、前記挿入工程は、所定量の該固化材が投入された該ケーシングの内部に前記杭体を挿入する工程であることができる。これにより、1本のケーシングを用いて、より簡易且つ迅速に基礎杭の施工を実施することができる。
【0025】
上記〔2〕形態の場合、例えば、前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程と前記ケーシングを引き抜く工程とが同時に行われることができる。これにより、固化材をケーシングの内周側と杭体の外周側との間に一様に行き渡らせることがき、杭体の外周側の周辺地盤をより強固且つ一様に固めることができる。
尚、上記「同時に行われる」とは、各工程の開始及び終了時期の一致、不一致等に拘わらず、固化材が投入されつつケーシングが引き抜かれることを意味する。
【0026】
上記〔2〕形態の場合、例えば、下部ケーシングと、この下部ケーシングの上端部に連結され且つその下端部から固化材を噴射し得る上部ケーシングと、からなるケーシングを用いることができる。この場合、上記埋込工程は、例えば、下部ケーシングの下端部に、上記先端ヘッドを装着させた状態で、連結状態の下部ケーシング及び上部ケーシングと共に上記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程であることができる。また、上記挿入工程は、例えば、地中に埋め込まれた下部ケーシングから上部ケーシングを切離した状態で、この下部ケーシングの内部に上記杭体を挿入する工程であることができる。また、上記投入工程は、例えば、地中に埋め込まれた下部ケーシングに上部ケーシングを連結させた状態で、この下部ケーシングの内部に、上部ケーシングの下端部から噴射された固化材を投入する工程であることができる。また、上記引抜工程は、例えば、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、連結状態の上部ケーシング及び下部ケーシングを地中より引き抜く工程であることができる。
基礎杭の施工性といった観点から、上記挿入工程の後、地中に埋め込まれた下部ケーシングに上部ケーシングを連結させた状態で、連結状態の下部ケーシング及び上部ケーシングと共に上記先端ヘッドを回転させつつ再度地中に埋め込む再埋込工程を更に備えることが好ましい。
尚、上記上部ケーシングは、例えば、その内部に設けられ且つ固化材が供給される筒体と、この筒体の下端側に連なる噴射ノズル部材と、を有することができる。この筒体は、例えば、上部ケーシングの内部で回転自在且つ軸方向に伸縮自在に設けられていることができる。これにより、既存の杭埋込機を用いてケーシングを回転圧入させることができると共に、上部ケーシングから固化材を好適に噴射させることができる。
【0027】
上記杭埋設方法〔c〕は、例えば、投入工程を更に備えることができる。この投入工程は、上記ケーシングが地中より引抜かれた後、上記中空パイル(杭体)の内部に、固定材を投入する工程である限り、その投入形態、タイミング等は特に問わない。この固定材としては、例えば、モルタル、コンクリート等を挙げることができる。この投入工程を備えることにより、先端ヘッドと杭体とをより強固に結合させることができる。
【0028】
(他の実施形態)
他の本実施形態に係る基礎杭は、以下に述べる杭本体及び翼体を備えている。
【0029】
上記「杭本体」は、筒状である限り、その材質、形状、大きさ等は特に問わない。この本体としては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。また、この杭本体は、例えば、底壁部と、この底壁部の周縁から上方に向って延びる周壁部と、を有することができる。また、この杭本体の底壁部の下面には、例えば、下方に向って突出する突出部が設けられていることができる。この突出部は、例えば、1又は2以上の板材からなることができる。この板材の形状としては、例えば、平面状、湾曲状、波状、屈曲状等を挙げることができる。
【0030】
上記杭本体は、例えば、翼体が設けられる第1杭本体と、この第1杭本体より大きな軸心長さを有し且つ第1杭本体に固定可能である第2杭本体とからなることができる。この第1杭本体と第2杭本体との固定形態としては、例えば、溶着、ボルト止め等を挙げることができる。
【0031】
上記「翼体」は、上記本体の外周面に外方に拡がるように設けられ、以下に述べる複数の分割板を有している。この翼体としては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0032】
上記「複数の分割板」は、上記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つほぼ同一水平面内に配設されている。この環状板の分割数、位置等は特に問わないが、掘削性及び支持力といった観点から、上記環状板が円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割されることが好ましい。
【0033】
上記分割板は、水平部、第1曲折部及び第2曲折部を有している。上記第1曲折部は、水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された部位である。また、上記第2曲折部は、上記水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された部位である。また、隣接する分割板の間では、一方の分割板の第1曲折部(又は第2曲折部)と他方の分割板の第2曲折部(又は第1曲折部)とが近接している。なお、掘削性(推力)及び食込み力といった観点から、上記第1及び第2曲折部の曲折角度が略同じ値に設定され、その値が5〜30度、より7〜27度、特に10〜25度であることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
(1)先端ヘッドの構成
本実施例1に係る先端ヘッド1について説明する。この先端ヘッド1は、図1〜3に示すように、筒状の本体2と、この本体2の外周面に設けられた翼体3と、この本体2の上端部に設けられた凸部4(本発明に係る「係止部」として例示する。)と、この本体2の下端部に設けられ且つ先端に向って尖って突出する平板状の突出部5と、を備えている。
【0036】
上記本体2は、円板状の底壁部2a及びこの底壁部2aの周縁から上方に立ち上がる周壁部2bを有し、上方を開放している(図3参照)。
上記翼体3は、本体2に外嵌可能な内径、即ち本体2の外径と略一致する内径を有する環状板を径方向に2分割してなる2枚の分割板3a,3bを有している。これら各分割板3a,3bは、同一水平面内に配設されている。また、各分割板3a,3bは、水平部7と、この水平部7に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部8、及び他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部9と、を有している。そして、これら分割板3a,3bの間では、一方の第1曲折部8と他方の第2曲折部9とが近接している。
【0037】
上記凸部4は、本体2の上部外周面に円周方向に沿って等ピッチ間隔(90度間隔)で4つ設けられている。これら各凸部4は、本体2の外周より遠心方向に向って突出している。また、各凸部4は、筒状のケーシング10の下端部に形成された切欠部11(本発明に係る「被係止部」として例示する。)に係脱し得るようになっている。
【0038】
上記切欠部11は、ケーシング10の下端内周側に円周方向に沿って等ピッチ間隔(90度間隔)で4つ形成されている。これら各切欠部11は、ケーシング10の下端縁から上方に向って切り欠かれて形成されている。また、各切欠部11は、その軸方向長さが上記凸部4の軸方向長さより大きな値に設定されていると共に、その円周方向幅が上記凸部4の円周方向幅より大きな値に設定されている。また、各切欠部11には、凸部4の挿入口を狭めるように円周方向に延びるフック片12が設けられている。
【0039】
ここで、上記先端ヘッド1及びケーシング10を、それぞれの軸芯を一致させた状態で、軸方向に相対移動させると、先端ヘッド1の凸部4がケーシング10の切欠部11に対して挿入・脱出する。そして、この凸部4を切欠部11に挿入させた状態で、ケーシング10を所定方向(時計回り)に回転させると、凸部4と切欠部11とが側方で係止して、ケーシング10及び先端ヘッド1がつれ回りされることとなる(図3参照)。また、そのつれ回りを停止させた状態で、先端ヘッド1が自重により下方に移動しても、先端ヘッド1の凸部4がフック部12に当接するので、ケーシング10から先端ヘッド1が脱落してしまうことが防止される。そして、先端ヘッド1を位置決めした状態で、ケーシング10を、所定方向(反時計回り)に回転させると共に下方に移動させると、凸部4が切欠部11から脱出して、先端ヘッド1及びケーシング10の係合が解除されることとなる。
【0040】
(2)杭埋込方法1
次に、本実施例に係る先端ヘッド1を用いる杭埋設方法1について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及びケーシング10を用いることとする。
【0041】
先ず、図4(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4をケーシング10の切欠部11に挿入した状態、即ち、ケーシング10の下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング10を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング10と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図4(b)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング10は地中に埋め込まれる。
【0042】
次に、図4(c)(d)に示すように、ケーシング10の内部に鉄筋かごR(本発明に係る「補強部材」として例示する。)が挿入される。次いで、図4(e)に示すように、ケーシング10の内部に所定量の生コンクリートCが投入される。
【0043】
その後、図4(f)に示すように、先端ヘッド1に対してケーシング10を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出して、ケーシング10に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング10が上方に移動される。このとき、ケーシング10の下端開放部より生コンクリートCが漏出して掘削孔内に流入する。その後、図4(g)に示すように、ケーシング10が地中より完全に引抜かれ、生コンクリートCの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0044】
以上より、杭埋設方法1では、生コンクリートCの硬化によって、杭体(コンクリート)の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、杭体の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。また、長尺物であるケーシング10を吊下支持可能な杭埋込機を用いて、より短時間で杭埋込作業を完了させることができる。
【0045】
(3)杭埋込方法2
次に、本実施例に係る先端ヘッド1を用いる杭埋設方法2について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及び以下に説明する複数の分割ケーシングを用いることとする。
【0046】
上記分割ケーシング20a〜20dは、図5に示すように、軸方向の両端側に継手部21を有している。この継手部21によって、各分割ケーシング20a〜20dを軸方向に連結して分割ケーシング連結体22(図6参照)を構成し得るようになっている。なお、上記分割ケーシング20aは、他の分割ケーシング20b〜20dより短尺に形成されている。また、この分割ケーシング20aは、その上端側にのみ上記継手部21を有し、その下端側には、実施例1のケーシングと同様な構成の切欠部11を有している。
【0047】
先ず、図6(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4を分割ケーシング20aの切欠部11に挿入した状態、即ち、分割ケーシング20aの下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、全旋回式杭埋込機40によって、分割ケーシング20aを時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、分割ケーシング20aと共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、先端ヘッド1及び分割ケーシング20aが地中に埋め込められる。次に、分割ケーシング20aの上端側に他の分割ケーシング20bを連結して分割ケーシング連結体22をなし、この分割ケーシング連結体22及び先端ヘッド1を回転させつつ地中に埋め込める。そして、上記作用を必要に応じて繰り返し行って、全ての分割ケーシング20a〜20dが地中に埋め込まれる。
【0048】
次に、図6(b)に示すように、分割ケーシング連結体22の内部に鉄筋かごR(本発明に係る「補強部材」として例示する。)が挿入される。
【0049】
次いで、図6(c)に示すように、分割ケーシング20a,20bの内部に生コンクリートCが投入される。その後、先端ヘッド1に対して分割ケーシング連結体22を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、分割ケーシング20aに対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたまま、分割ケーシング連結体22が上方に移動される。このとき、分割ケーシング20aの下端開放部から生コンクリートCが漏出して掘削孔内に流入する。その後、最上端側の分割ケーシング20dが、地中より引き抜かれて分割ケーシング連結体22から分離される。
そして、図6(d)に示すように、上記作用が必要に応じて繰り返し行われる。その結果、図6(e)に示すように、全ての分割ケーシング20a〜20dが地中から引抜かれる。
【0050】
以上より、杭埋設方法2では、生コンクリートCの硬化によって、杭体(コンクリート)の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、杭体の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。また、上記ケーシング10に比べて短尺物である分割ケーシング20a〜20dを支持可能な全旋回式杭埋込機40を用いて、より安価に杭埋込作業を行うことができる。
【0051】
(4)杭埋込方法3
次に、本実施例に係る先端ヘッド1を用いる杭埋設方法3について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及びケーシング10を用いることとする。
【0052】
先ず、図7(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4をケーシング10の切欠部11に挿入した状態、即ち、ケーシング10の下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング10を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング10と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図7(b)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング10が地中に埋め込まれる。
【0053】
次に、図7(c)に示すように、ケーシング10の内部に、所定量のセメントミルクM(本発明に係る「固化材」として例示する。)が投入される。次いで、図7(d)に示すように、ケーシング10の内部に、コンクリート製の中空パイルP(本発明に係る「杭体」として例示する。)が挿入される。なお、この中空パイルPの下端は塞がれているものとする。すると、図7(e)に示すように、セメントミルクMが、ケーシング10の内部で中空パイルPの外周側で軸方向に一様にいきわたることとなる。
【0054】
その後、図7(f)に示すように、先端ヘッド1に対してケーシング10を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、ケーシング10に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング10が上方に移動する。このとき、ケーシング10の下端開放部よりセメントミルクMが漏出して掘削孔内に流入する。その後、図7(g)に示すように、ケーシング10が地中より完全に引抜かれ、セメントミルクMの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0055】
以上より、杭埋設方法3では、セメントミルクMの硬化によって、中空パイルPの下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、中空パイルPの外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。
【0056】
(5)杭埋込方法4
次に、本実施例に係る先端ヘッド1を用いる杭埋設方法4について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及び以下に説明するケーシング60を用いることとする。
【0057】
上記ケーシング60は、図22及び23に示すように、下部ケーシング60aと、この下部ケーシング60aの上端部に連結される上部ケーシング60bとを有している。この上部ケーシング60bは、筒体62と、この筒体62の下端部に連なる複数の噴射ノズル部材63と、を有している。従って、筒体62にその上方より供給される後述の固化材は、複数の噴射ノズル部材63より噴射されて下部ケーシング60aの内部に投入されるようになっている(図22中の矢印参照)。なお、上記筒体62は、2重筒構造をなしており、上部ケーシング60bの内部で回転自在且つ軸方向に伸縮自在に設けられている。また、下部ケーシング60aの下端部は、上述のケーシング10の下端部と略同じ構成であり、切欠部11が形成されている。
【0058】
先ず、図24(a)に示すように、先端ヘッド1とケーシング60(連結状態の下部ケーシング60a及び上部ケーシング60b)との軸心を一致させた状態より、図24(b)に示すように、先端ヘッド1の凸部4を下部ケーシング60aの切欠部11に挿入し、即ち、下部ケーシング60aの下端部に先端ヘッド1を装着させる。次に、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング60を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング60と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図24(c)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング60が地中に埋め込まれる。
【0059】
次いで、図24(d)に示すように、地中に埋め込まれた下部ケーシング60aから上部ケーシング60bを切り離す。その後、図24(e)に示すように、上方を開放した下部ケーシング60aの内部にPC杭65(本発明に係る「杭体」及び「中空パイル」として例示する。)を挿入する。次に、図24(f)に示すように、下部ケーシング60aに上部ケーシング60bを連結する。次いで、図24(g)に示すように、ケーシング60及び先端ヘッド1を、再度つれ回りさせつつ地中の所定深度まで埋め込ませる。
【0060】
次に、図24(h)に示すように、上部ケーシング60bを構成する筒体62にセメントミルク(本発明に係る「固化材」として例示する。)が供給される。すると、そのセメントミルクは、噴射ノズル部材63より噴射されて下部ケーシング60aの内周側とPC杭65の外周側との間に投入される(図22参照)。そして、図24(i)に示すように、そのセメントミルクの投入(噴射)を続けながら、先端ヘッド1に対してケーシング60を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、ケーシング60に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング60が上方に移動する。このとき、ケーシング60の下端開放部よりセメントミルクが漏出してPC杭65の外周側の掘削孔内に流入する。その後、図24(j)に示すように、ケーシング60が地中より完全に引抜かれ、セメントミルクの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0061】
以上より、杭埋設方法4では、セメントミルクの硬化によって、PC杭65の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、PC杭65の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。
【0062】
(6)実施例1の効果
以上より、本実施例1によると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング10及び先端ヘッド1がつれ回りされつつ地中に埋め込められる一方、凸部4及び切欠部11の係止解除によって、先端ヘッド1を所定深さの地中に残したままケーシング10が地中より引き抜かれる。そして、先端ヘッド1を回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体3a,3bの互いに近接する第1曲折部8及び第2曲折部9によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭では、複数の分割体3a,3bの水平部7によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
また、本実施例1では、上述の杭埋設方法1〜3を用いて、ケーシング10を用いて先端ヘッド1を回転させつつ地中に埋め込み、その後、先端ヘッド1を地中の所定深さ位置に残したままケーシング10を地中から引き抜いて基礎杭を形成するようにしたので、従来のように先端ヘッドに転動部材等を設ける必要がなく、比較的安価な先端ヘッドとすることができる。さらに、従来のように、先端ヘッドを地中に埋め込む際にケーシングの上端部をクランプする必要がなく、極めて安価且つ簡易に基礎杭を施工することができる。
また、本実施例では、前記本体2の底壁部2aの鉄筋材からなる鉄筋部36を設けたので、地中の所定深さ位置に位置する先端ヘッド1と杭体(例えば、鋼管杭、PC杭、場所打ちコンクリート杭等)とをより強固に結合させることができる。
また、本実施例では、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に2分割して2枚の分割板3a,3bをなすようにしたので、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
また、本実施例では、前記本体2の底壁部2aに突出部5を設けたので、突出部5によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
【0063】
(他の実施例)
次に、その他の実施例に係る基礎杭について説明する。
(1)基礎杭の構成
上記実施例に係る基礎杭50は、図20に示すように、筒状の杭本体52と、この杭本体52の外周面に設けられた翼体53と、この杭本体52の底壁部52aの下面に設けられ且つ先端に向って尖って突出する平板状の突出部55と、を備えている。
【0064】
上記翼体53は、杭本体52に外嵌可能な内径、即ち杭本体52の外径と略一致する内径を有する環状板を径方向に2分割してなる2枚の分割板53a,53bを有している。これら各分割板53a,53bは、同一水平面内に配設されている。また、各分割板53a,53bのそれぞれは、水平部57と、この水平部57に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部58、及び他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部59と、を有している。そして、これら分割板53a,53bの間では、一方の第1曲折部58と他方の第2曲折部59とが近接している。
【0065】
(2)他の実施例の作用・効果
本実施例に係る基礎杭50によると、基礎杭50を回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体53a,53bの互いに近接する第1曲折部58及び第2曲折部59によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭50は、複数の分割体53a,53bの水平部57によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
また、本実施例では、環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に2分割して2枚の分割板53a,53bをなすようにしたので、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
また、本実施例では、杭本体52の底壁部52aに突出部55を設けたので、突出部55によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
【0066】
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、本実施例において、ケーシング10,60を地中より引き抜く際(図7(g)及び図23(j)参照)、ケーシング10,60を回転させつつ上方に移動させて、ケーシング10,60の下端外周部に形成された攪拌部30(例えば、突起部、らせん翼、環状部等)によって、ケーシング10,60の下端部から漏出されるセメントミルクMを攪拌させるようにしてもよい。これにより、セメントミルクMを周辺地盤により一様にいきわたらせることができる。
【0067】
また、本実施例では、先端ヘッド1の本体2の外周側に凸部4を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、先端ヘッド1の本体2の内周側に凸部4を設けるようにしてもよい。また、本実施例では、角棒状の凸部4を例示したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、丸棒状の凸部4としてもよい。さらに、本実施例1〜3では、軸方向に一様な外径のケーシング10(又は分割ケーシング20a)の内周側に切欠部11を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、ケーシング10の下端部に拡径部10aを設け、この拡径部10aの内周側に切欠部11を設けるようにしてもよい。さらに、先端ヘッド1に切欠部11を設け且つケーシング10に凸部4を設けるようにしてもよい。
【0068】
また、本実施例では、互いに係脱可能な凸部4及び切欠部11によって、先端ヘッド1とケーシング10との着脱機構を構成したが、これに限定されず、例えば、図10に示すように、互いに係脱可能な枠部32及び凸部33等によって、着脱機構を構成するようにしてもよい。さらに、互いに係脱可能な一対の噛合歯部によって、着脱機構を構成するようにしてもよい。
【0069】
また、本実施例では、先端に向って尖った1枚の平板である突出部5を例示したが、これに限定されず、例えば、平板の先端側に複数の凹部を設けて突出部5a(図11(a)参照)としたり、1枚の矩形平板からなる突出部5b(図11(b)参照)としたり、2枚の略三角平板を所定間隔で併設してなる突出部5c(図11(c)参照)としたり、2枚の矩形平板を所定間隔で併設してなる突出部5d(図11(d)参照)としたりしてもよい。さらに、一対の湾曲部を、各湾曲部と交差する平板部で連結してなる平面略Z字状の突出部5e(図12参照)としたり、一対の平板部を、各平板部と交差する平板部で連結してなる平面略Z字状の突出部5f(図13参照)としたり、一対の湾曲板を所定間隔で併設してなる突出部5g(図14参照)としたり、一対の平板を所定間隔で併設してなる突出部5h(図15参照)としたり、一対の湾曲板を、中心軸(又は中心孔)を介して併設してなる突出部5i(図16参照)としたり、一対の平板を、中心軸(又は中心孔)を介して併設してなる突出部5j(図17参照)としたりしてもよい。
【0070】
また、本実施例に係る先端ヘッド1において、例えば、図18及び19に示すように、その底壁部2aの上面に、複数の鉄筋材35を交差させて適宜固定(例えば、電気溶接固定、ネジ固定等)してなる鉄筋部36(本発明に係る「補強部」として例示する。)を設けるようにしてもよい。これにより、実施例1及び2に係る杭埋設方法(ケーシングの内部に生コンクリートを投入する形態)では、硬化後のコンクリート杭の下端部と先端ヘッド1とがより強固に結合される(図18参照)。また、実施例に係る杭埋設方法3及び4(ケーシングの内部に鋼管杭、PC杭等の中空パイルを挿入する形態)では、ケーシングを地中から引抜いた後、中空パイルPの内部にモルタル、コンクリート等の固定材を投入すれば、この固定材の硬化によって、中空パイルPの下端部と先端ヘッド1とがより強固に結合される(図19参照)。特に、既製の中空パイルPの下端面に、中空パイルPの内径より小さな内径を有する環状の引抜抵抗板37を適宜固定(例えば、電気溶接固定、ネジ固定等)しておけば、引抜き荷重に対して更に強い抵抗力を発揮できる。
【0071】
また、上記他の実施例に係る基礎杭50では、1本の筒状部材からなる杭本体52(図20参照)を例示したが、これに限定されず、例えば、図21に示すように、翼体53が溶着される短尺状の第1杭本体52Aと、この第1杭本体52Aに溶着可能である長尺状の第2杭本体52Bとから杭本体52を構成するようにしてもよい。これにより、これにより、例えば、基礎杭の製造現場から施工現場まで、第1杭本体及び第2杭本体を別部材として輸送し、施工現場で、両者を溶着して完成品とすることができ、輸送効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
回転圧入式の基礎杭に関する技術として適用される。特に、中低層住宅等の建築物あるいは小規模構造物等の基礎杭に関する技術として好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施例に係る先端ヘッド及びケーシングの分離状態を示す側面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】本実施例に係る先端ヘッド及びケーシングの装着状態を示す側面図である。
【図4】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法1を説明するための説明図である。
【図5】分割ケーシングを説明するための説明図である。
【図6】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法2を説明するための説明図である。
【図7】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法3を説明するための説明図である。
【図8】先端ヘッドの係止部の他の形態を説明するための説明図である。
【図9】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図10】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図11】先端ヘッドの突出部の他の形態を説明するための説明図である。
【図12】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図13】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図14】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図15】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図16】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図17】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図18】先端ヘッドの他の形態を説明するための説明図である。
【図19】先端ヘッドのさらに形態を説明するための説明図である。
【図20】その他の実施例に係る基礎杭を説明するための説明図である。
【図21】基礎杭の他の形態を説明するための説明図である。
【図22】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法4で用いられるケーシング(筒部材が短縮状態)を説明するための説明図である。
【図23】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法4で用いられるケーシング(筒部材が伸長状態)を説明するための説明図である。
【図24】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法4を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1;先端ヘッド、2;本体、2a;底壁部、3;翼体、3a,3b;分割板、4;凸部、5;突出部、7;水平部、8;第1曲折部、9;第2曲折部、10,60;ケーシング、11;切欠部、36;鉄筋部、50;基礎杭、52;杭本体、52a;底壁部、52A;第1杭本体、52B;第2杭本体、53;翼体、53a,53b;分割板、55;突出部、57;水平部、58;第1曲折部、59;第2曲折部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭用の先端ヘッド及び施工具並びに基礎杭に関し、さらに詳しくは、強固な支持力を発揮し得る基礎杭用の先端ヘッド及び施工具並びに基礎杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建造物の基礎に用いられる基礎杭として、筒状の杭本体の先端側の外周面にらせん状の翼体を設けてなるものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。このような基礎杭の施工では、杭回転圧入機等によって基礎杭が地中にねじ込まれ、その際に翼体によって土砂等が掘削され、杭本体のまわりに押し出されることとなる。
【0003】
しかし、上記特許文献1〜3では、らせん状の翼体を用いているので、地震、風圧等により杭本体に外力が加わると、杭本体がらせん状に回転してしまう恐れがあり、さらに強固な支持力を発揮し得る基礎杭の開発が望まれていた。
【0004】
また、上記特許文献1〜3では、杭本体(中空パイル)を回転させつつ地中に押し込むようにしているので、比較的長尺な杭本体では、土の摩擦力によって杭本体に戻りモーメントが大きく作用して杭本体が損傷することがあり、その結果、基礎杭の支持力が低下してしまう場合があった。
ここで、従来の杭埋設方法として、中空パイルの下端部に回転自在に支持された推進ヘッド(先端ヘッド)に回転ロッドを連結し、回転ロッドにより推進ヘッドを回転させつつ、パイルを非回転で戻りモーメントを抑制して地中に埋め込むようにしたものが知られている(例えば、特許文献4及び5参照)。
しかし、上記特許文献4及び5では、パイル下端部に推進ヘッドを回転自在に支持するために、推進ヘッドに多数の転動部材を設ける必要があり、推進ヘッド自体が高価なものとなり、更に、回転ロッドを回転させる駆動手段の他に、パイルの上端部を挟持するクランプ手段を備える必要があり、全体として高額な施工となっていた。
また、上記特許文献4及び5では、らせん状の翼体を有する先端ヘッドが開示されており、上記特許文献1〜3の基礎杭と略同様にして、地震、風圧等により杭本体に外力が加わると、杭本体がらせん状に回転してしまう恐れがあり、さらに強固な支持力を発揮し得る基礎杭用の先端ヘッドの開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−85028号公報
【特許文献2】特開平7−292666号公報
【特許文献3】特開2002−339353号公報
【特許文献4】特開2002−81059号公報
【特許文献5】特開2003−147770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上より本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、強固な支持力を発揮し得ると共に、安価且つ簡易に施工することができる基礎杭用の先端ヘッド及び施工具を提供することを目的とする。また、本発明は、強固な支持力を発揮し得る基礎杭を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.筒状の本体の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなり、且つ、筒状のケーシングにより地中に埋め込まれる基礎杭用の先端ヘッドであって、
前記本体に設けられ且つ前記ケーシングに設けられた被係止部と係脱可能な係止部を備え、該係止部及び該被係止部の係止によって、前記ケーシング及び前記先端ヘッドをつれ回りさせつつ地中に埋め込めることができると共に、該係止部及び該被係止部の係止解除によって、前記先端ヘッドを地中の所定深さ位置に残したまま前記ケーシングを地中より引き抜くことができ、
前記翼体は、前記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部と、該水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の該第1曲折部と他方の該分割板の該第2曲折部とが近接していることを特徴とする基礎杭用の先端ヘッド。
2.前記本体の底壁部の上面には補強部が設けられている上記1.記載の基礎杭用の先端ヘッド。
3.前記係止部が、前記本体の上部周面側に設けられ且つ径方向に向って突出する凸部であり、前記被係止部が、前記ケーシングの下端縁から上方に向って切り欠かれた切欠部であり、前記先端ヘッド及び前記ケーシングの軸方向への相対移動によって、前記凸部が前記切欠部に挿脱し得るようになっている上記1.又は2.に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
4.前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
5.前記本体の底壁部の下面には、下方に向って突出する突出部が設けられている上記1.乃至4.のいずれか一項に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
6.筒状の杭本体の先端側の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなる基礎杭において、
前記翼体は、前記杭本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なる一方の分割端側で該杭本体の軸心方向の一方側に向って曲折された第
1曲折部と、該水平部に連なる他方の分割端側で該杭本体の軸心方向の他方側に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の第1曲折部と他方の該分割板の第2曲折部とが近接していることを特徴とする基礎杭。
7.前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる上記6.記載の基礎杭。
8.前記杭本体の底壁部の下面には、下方に向って突出する突出部材が設けられている上記6.又は7.に記載の基礎杭。
9.前記杭本体が、前記翼体が設けられる第1杭本体と、該第1杭本体より大きな軸心長さを有し且つ該第1杭本体に固定可能である第2杭本体とからなる上記6.乃至8.のいずれか一項に記載の基礎杭。
10.上記1.乃至5.のいずれか一項に記載の先端ヘッドと、該先端ヘッドが着脱自在に取着される前記ケーシングと、を備える基礎杭用の施工具。
【発明の効果】
【0008】
本発明の基礎杭用の先端ヘッドによると、係止部及び被係止部の係止によって、ケーシング及び先端ヘッドがつれ回りされつつ地中に埋め込められる一方、係止部及び被係止部の係止解除によって、先端ヘッドを所定深さの地中に残したままケーシングが地中より引き抜かれる。そして、先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体の互いに近接する第1曲折部及び第2曲折部によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭では、複数の分割体の水平部によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
また、前記本体の底壁部には補強部が設けられている場合は、地中の所定深さ位置に位置する先端ヘッドと杭体(例えば、鋼管杭、PC杭、場所打ちコンクリート杭等)とをより強固に結合させることができる。
また、前記係止部が凸部であり、前記被係止部が切欠部である場合は、より簡易な構造でケーシング及び先端ヘッドの着脱機構を構成できる。
また、前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる場合は、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
また、前記本体の底壁部には突出部が設けられている場合は、突出部によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
本発明の基礎杭によると、基礎杭を回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体の互いに近接する第1曲折部及び第2曲折部によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭は、複数の分割体の水平部によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
また、前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる場合は、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
また、前記杭本体の底壁部には突出部が設けられている場合は、突出部によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
また、前記杭本体が、第1杭本体と、第2杭本体とからなる場合は、第1杭本体及び第2掘削体の固定状態と分離状態とを適宜選択でき、取り扱い容易な基礎杭とすることができる。
本発明の基礎杭用の施工具によると、係止部及び被係止部の係止によって、ケーシング及び先端ヘッドがつれ回りされつつ地中に埋め込められる一方、係止部及び被係止部の係止解除によって、先端ヘッドを所定深さの地中に残したままケーシングが地中より引き抜かれる。そして、先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体の互いに近接する第1曲折部及び第2曲折部によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭では、複数の分割体の水平部によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
本実施形態1に係る基礎杭用の先端ヘッドは、以下に述べる本体、翼体、及び係止部を備えている。この先端ヘッドは、後述するケーシングにより地中に埋め込まれるものである。
【0010】
上記「本体」は、筒状である限り、その材質、形状、大きさ等は特に問わない。この本体としては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。また、この本体は、例えば、底壁部と、この底壁部の周縁から上方に向って延びる周壁部と、を有することができる。この場合、上記本体の底壁部の上面には、例えば、補強部が設けられていることができる。上記補強部としては、例えば、鉄筋材からなる鉄筋部、鋼管部等を挙げることができる。また、上記本体の底壁部の下面には、例えば、下方に向って突出する突出部が設けられていることができる。この突出部は、例えば、1又は2以上の板材からなることができる。この板材の形状としては、例えば、平面状、湾曲状、波状、屈曲状等を挙げることができる。
【0011】
上記「翼体」は、上記本体の外周面に外方に拡がるように設けられ、以下に述べる複数の分割板を有している。この翼体としては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0012】
上記「複数の分割板」は、上記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つほぼ同一水平面内に配設されている。この環状板の分割数、位置等は特に問わないが、掘削性及び支持力といった観点から、上記環状板が円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割されることが好ましい。
【0013】
上記分割板は、水平部、第1曲折部及び第2曲折部を有している。上記第1曲折部は、水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された部位である。また、上記第2曲折部は、上記水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された部位である。また、隣接する分割板の間では、一方の分割板の第1曲折部(又は第2曲折部)と他方の分割板の第2曲折部(又は第1曲折部)とが近接している。なお、掘削性(推力)及び食込み力といった観点から、上記第1及び第2曲折部の曲折角度が略同じ値に設定され、その値が5〜30度、より7〜27度、特に10〜25度であることが好ましい。
【0014】
上記「係止部」は、上記本体に設けられ且つケーシングに形成された被係止部と係脱可能である限り、その係脱形態等は特に問わない。この係脱形態としては、例えば、係止、螺合、嵌合、挟持、溶着、接着等を挙げることができる。
特に、上記係脱形態は、前記係止部が、前記本体の上部周面側に設けられ且つ径方向に向って突出する凸部であり、前記被係止部が、前記ケーシングの下端縁から上方に向って切り欠かれた切欠部であり、前記先端ヘッド及び前記ケーシングの軸心を一致させた状態での両者の軸方向への相対移動によって、前記凸部が前記切欠部に挿脱し得るようになっていることが好ましい。なお、上記切欠部には、例えば、前記凸部の軸方向移動を規制する規制部(例えば、フック部等)が設けられていることができる。これにより、ケーシングに対する先端ヘッドの脱落を防止することができる。
【0015】
上記「ケーシング」は、筒状である限り、その材質、形状、大きさ等は特に問わない。このケーシングは、通常、杭埋込機によって回転されつつ地中に埋め込まれる。また、このケーシングとしては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
上記ケーシングの下端部には、例えば、ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部から漏出される漏出物(例えば、硬化前のコンクリート、セメントミルク等の固化材等)を攪拌させるための攪拌部が設けられていることができる。これにより、基礎杭の主要部(例えば、鋼管杭、PC杭、場所打ちコンクリート杭等)の外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
【0016】
尚、上記実施形態1に係る先端ヘッドは、例えば、以下に述べる杭埋設方法〔a〕〜〔c〕で好適に用いられることができる。
【0017】
〔a〕筒状のケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、次に、前記ケーシングの内部に補強部材を挿入し、次いで、前記ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入し、その後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜くことを特徴とする杭埋設方法。
【0018】
上記杭埋設方法〔a〕は、通常、長尺なケーシングを吊下支持可能な杭埋込機を用いて行われる。また、上記補強部材は、例えば、鉄筋かごであることができる。また、この補強部材の大きさは、通常、ケーシングの軸方向長さに対応している。また、上記コンクリートの投入量は、通常、上記ケーシングの内部空間の大きさに対応している。尚、上記「硬化前のコンクリート」とは、通常、生コンクリートを示すが、施工現場で作業者により調合されるコンクリートであってもよい。これは以下の説明においても同様に適用されるものとする。
上記杭埋設方法〔a〕は、例えば、ケーシングを回転させつつ引き抜くことができる。この場合、前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記硬化前のコンクリートを攪拌させることが好ましい。これにより、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
【0019】
〔b〕(1)複数の分割ケーシングを軸方向に連結して筒状の分割ケーシング連結体をなし、該分割ケーシング連結体の最下端側の前記分割ケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記分割ケーシング連結体及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込み、次に、(2)前記分割ケーシング連結体の内部に補強部材を挿入し、次いで、(3)少なくとも最下端側の前記分割ケーシングの内部に硬化前のコンクリートを投入した後、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記分割ケーシング連結体を上方に向って移動させて、最上端側の前記分割ケーシングを、地中より引き抜いて該分割ケーシング連結体から分離し、その後、(4)必要に応じて上記(3)を繰り返し行って前記分割ケーシング連結体を地中から引き抜くことを特徴とする杭埋設方法。
【0020】
上記杭埋設方法〔b〕は、通常、地表近くで分割ケーシングを支持可能な杭埋込機(いわゆる全旋回機等)を用いて行われる。また、上記分割ケーシング連結体は、複数の分割ケーシングを軸方向に連結してなり筒状である限り、その連結数、サイズ等は特に問わない。この分割ケーシングの材質、サイズ等は特に問わない。この分割ケーシングの連結形態としては、例えば、係止、螺合、嵌合、挟持、溶着、接着等を挙げることができる。また、この分割ケーシングとしては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。また、上記補強部材は、例えば、鉄筋かごであることができる。また、この補強部材の大きさは、通常、分割ケーシング連結体の軸方向長さに対応している。また、上記コンクリートの投入量は、例えば、上記分割ケーシングの内部空間の大きさに対応していることができる。
上記杭埋設方法〔b〕は、例えば、分割ケーシング連結体を回転させつつ上方へ移動させることができる。この場合、前記分割ケーシング連結体を地中より引き抜く際、最下端側の分割ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該分割ケーシングの下端部から漏出される前記硬化前のコンクリートを攪拌させることが好ましい。これにより、硬化後のコンクリートの外周側の周辺地盤をより一様に固めることができる。
尚、「必要に応じて」とは、分割ケーシング連結体の連結個数に応じることを意味する。例えば、分割ケーシング連結体の連結個数が2つの場合には、上記投入・分離工程(3)を1回繰り返して行われ、また、分割ケーシング連結体の連結個数が3つの場合には、上記投入・分離工程(3)を2回繰り返して行われることとなる。
【0021】
〔c〕筒状のケーシングの下端部に、外方に拡がる翼体を有する先端ヘッドを着脱自在に装着させた状態で、前記ケーシング及び前記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程と、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に固化材を投入する工程と、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に杭体を挿入する工程と、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、前記ケーシングを地中より引き抜く工程と、を備えることを特徴とする杭埋設方法。
【0022】
上記杭埋設方法〔c〕は、通常、長尺なケーシングを吊下支持可能な杭埋込機を用いて行われる。上記固化材としては、例えば、セメントミルク、モルタル、接着剤等を挙げることができる。安価で取扱い容易であるといった観点から、上記固化材がセメントミルクであることが好ましい。また、上記杭体は、例えば、中空パイルであることができる。この中空パイルとしては、例えば、コンクリート製、金属製(鋼製等)、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。安価で取扱い容易であるといった観点から、中空パイルがコンクリート製であることが好ましい。
上記杭埋設方法〔c〕は、例えば、ケーシングを回転させつつ引き抜くことができる。この場合、前記ケーシングを地中より引き抜く際、該ケーシングの下端部に形成された攪拌部によって、該ケーシングの下端部から漏出される前記固化材を攪拌させることが好ましい。この攪拌部は、例えば、ケーシングの下端部外周面より外方に突出していることができる。
【0023】
ここで、上記〔c〕杭埋設方法における上述の各工程の実施順序、タイミング等は特に問わない。上記投入工程及び上記挿入工程の実施順序としては、例えば、〔1〕前記固化材を投入する工程の後、前記杭体を挿入する工程が行われる形態、〔2〕前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程が行われる形態、〔3〕前記固化材を投入する工程と前記杭体を挿入する工程とが同時に行われる形態等を挙げることができる。
【0024】
上記〔1〕形態の場合、例えば、前記投入工程は、地中に埋め込まれた前記ケーシングの内部に所定量の前記固化材を投入する工程であり、前記挿入工程は、所定量の該固化材が投入された該ケーシングの内部に前記杭体を挿入する工程であることができる。これにより、1本のケーシングを用いて、より簡易且つ迅速に基礎杭の施工を実施することができる。
【0025】
上記〔2〕形態の場合、例えば、前記杭体を挿入する工程の後、前記固化材を投入する工程と前記ケーシングを引き抜く工程とが同時に行われることができる。これにより、固化材をケーシングの内周側と杭体の外周側との間に一様に行き渡らせることがき、杭体の外周側の周辺地盤をより強固且つ一様に固めることができる。
尚、上記「同時に行われる」とは、各工程の開始及び終了時期の一致、不一致等に拘わらず、固化材が投入されつつケーシングが引き抜かれることを意味する。
【0026】
上記〔2〕形態の場合、例えば、下部ケーシングと、この下部ケーシングの上端部に連結され且つその下端部から固化材を噴射し得る上部ケーシングと、からなるケーシングを用いることができる。この場合、上記埋込工程は、例えば、下部ケーシングの下端部に、上記先端ヘッドを装着させた状態で、連結状態の下部ケーシング及び上部ケーシングと共に上記先端ヘッドを回転させつつ地中に埋め込む工程であることができる。また、上記挿入工程は、例えば、地中に埋め込まれた下部ケーシングから上部ケーシングを切離した状態で、この下部ケーシングの内部に上記杭体を挿入する工程であることができる。また、上記投入工程は、例えば、地中に埋め込まれた下部ケーシングに上部ケーシングを連結させた状態で、この下部ケーシングの内部に、上部ケーシングの下端部から噴射された固化材を投入する工程であることができる。また、上記引抜工程は、例えば、前記先端ヘッドの装着を解除した状態で、連結状態の上部ケーシング及び下部ケーシングを地中より引き抜く工程であることができる。
基礎杭の施工性といった観点から、上記挿入工程の後、地中に埋め込まれた下部ケーシングに上部ケーシングを連結させた状態で、連結状態の下部ケーシング及び上部ケーシングと共に上記先端ヘッドを回転させつつ再度地中に埋め込む再埋込工程を更に備えることが好ましい。
尚、上記上部ケーシングは、例えば、その内部に設けられ且つ固化材が供給される筒体と、この筒体の下端側に連なる噴射ノズル部材と、を有することができる。この筒体は、例えば、上部ケーシングの内部で回転自在且つ軸方向に伸縮自在に設けられていることができる。これにより、既存の杭埋込機を用いてケーシングを回転圧入させることができると共に、上部ケーシングから固化材を好適に噴射させることができる。
【0027】
上記杭埋設方法〔c〕は、例えば、投入工程を更に備えることができる。この投入工程は、上記ケーシングが地中より引抜かれた後、上記中空パイル(杭体)の内部に、固定材を投入する工程である限り、その投入形態、タイミング等は特に問わない。この固定材としては、例えば、モルタル、コンクリート等を挙げることができる。この投入工程を備えることにより、先端ヘッドと杭体とをより強固に結合させることができる。
【0028】
(他の実施形態)
他の本実施形態に係る基礎杭は、以下に述べる杭本体及び翼体を備えている。
【0029】
上記「杭本体」は、筒状である限り、その材質、形状、大きさ等は特に問わない。この本体としては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。また、この杭本体は、例えば、底壁部と、この底壁部の周縁から上方に向って延びる周壁部と、を有することができる。また、この杭本体の底壁部の下面には、例えば、下方に向って突出する突出部が設けられていることができる。この突出部は、例えば、1又は2以上の板材からなることができる。この板材の形状としては、例えば、平面状、湾曲状、波状、屈曲状等を挙げることができる。
【0030】
上記杭本体は、例えば、翼体が設けられる第1杭本体と、この第1杭本体より大きな軸心長さを有し且つ第1杭本体に固定可能である第2杭本体とからなることができる。この第1杭本体と第2杭本体との固定形態としては、例えば、溶着、ボルト止め等を挙げることができる。
【0031】
上記「翼体」は、上記本体の外周面に外方に拡がるように設けられ、以下に述べる複数の分割板を有している。この翼体としては、例えば、金属製(例えば、鋼製)、コンクリート製、樹脂製等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0032】
上記「複数の分割板」は、上記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つほぼ同一水平面内に配設されている。この環状板の分割数、位置等は特に問わないが、掘削性及び支持力といった観点から、上記環状板が円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割されることが好ましい。
【0033】
上記分割板は、水平部、第1曲折部及び第2曲折部を有している。上記第1曲折部は、水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された部位である。また、上記第2曲折部は、上記水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された部位である。また、隣接する分割板の間では、一方の分割板の第1曲折部(又は第2曲折部)と他方の分割板の第2曲折部(又は第1曲折部)とが近接している。なお、掘削性(推力)及び食込み力といった観点から、上記第1及び第2曲折部の曲折角度が略同じ値に設定され、その値が5〜30度、より7〜27度、特に10〜25度であることが好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0035】
(実施例1)
(1)先端ヘッドの構成
本実施例1に係る先端ヘッド1について説明する。この先端ヘッド1は、図1〜3に示すように、筒状の本体2と、この本体2の外周面に設けられた翼体3と、この本体2の上端部に設けられた凸部4(本発明に係る「係止部」として例示する。)と、この本体2の下端部に設けられ且つ先端に向って尖って突出する平板状の突出部5と、を備えている。
【0036】
上記本体2は、円板状の底壁部2a及びこの底壁部2aの周縁から上方に立ち上がる周壁部2bを有し、上方を開放している(図3参照)。
上記翼体3は、本体2に外嵌可能な内径、即ち本体2の外径と略一致する内径を有する環状板を径方向に2分割してなる2枚の分割板3a,3bを有している。これら各分割板3a,3bは、同一水平面内に配設されている。また、各分割板3a,3bは、水平部7と、この水平部7に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部8、及び他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部9と、を有している。そして、これら分割板3a,3bの間では、一方の第1曲折部8と他方の第2曲折部9とが近接している。
【0037】
上記凸部4は、本体2の上部外周面に円周方向に沿って等ピッチ間隔(90度間隔)で4つ設けられている。これら各凸部4は、本体2の外周より遠心方向に向って突出している。また、各凸部4は、筒状のケーシング10の下端部に形成された切欠部11(本発明に係る「被係止部」として例示する。)に係脱し得るようになっている。
【0038】
上記切欠部11は、ケーシング10の下端内周側に円周方向に沿って等ピッチ間隔(90度間隔)で4つ形成されている。これら各切欠部11は、ケーシング10の下端縁から上方に向って切り欠かれて形成されている。また、各切欠部11は、その軸方向長さが上記凸部4の軸方向長さより大きな値に設定されていると共に、その円周方向幅が上記凸部4の円周方向幅より大きな値に設定されている。また、各切欠部11には、凸部4の挿入口を狭めるように円周方向に延びるフック片12が設けられている。
【0039】
ここで、上記先端ヘッド1及びケーシング10を、それぞれの軸芯を一致させた状態で、軸方向に相対移動させると、先端ヘッド1の凸部4がケーシング10の切欠部11に対して挿入・脱出する。そして、この凸部4を切欠部11に挿入させた状態で、ケーシング10を所定方向(時計回り)に回転させると、凸部4と切欠部11とが側方で係止して、ケーシング10及び先端ヘッド1がつれ回りされることとなる(図3参照)。また、そのつれ回りを停止させた状態で、先端ヘッド1が自重により下方に移動しても、先端ヘッド1の凸部4がフック部12に当接するので、ケーシング10から先端ヘッド1が脱落してしまうことが防止される。そして、先端ヘッド1を位置決めした状態で、ケーシング10を、所定方向(反時計回り)に回転させると共に下方に移動させると、凸部4が切欠部11から脱出して、先端ヘッド1及びケーシング10の係合が解除されることとなる。
【0040】
(2)杭埋込方法1
次に、本実施例に係る先端ヘッド1を用いる杭埋設方法1について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及びケーシング10を用いることとする。
【0041】
先ず、図4(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4をケーシング10の切欠部11に挿入した状態、即ち、ケーシング10の下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング10を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング10と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図4(b)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング10は地中に埋め込まれる。
【0042】
次に、図4(c)(d)に示すように、ケーシング10の内部に鉄筋かごR(本発明に係る「補強部材」として例示する。)が挿入される。次いで、図4(e)に示すように、ケーシング10の内部に所定量の生コンクリートCが投入される。
【0043】
その後、図4(f)に示すように、先端ヘッド1に対してケーシング10を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出して、ケーシング10に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング10が上方に移動される。このとき、ケーシング10の下端開放部より生コンクリートCが漏出して掘削孔内に流入する。その後、図4(g)に示すように、ケーシング10が地中より完全に引抜かれ、生コンクリートCの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0044】
以上より、杭埋設方法1では、生コンクリートCの硬化によって、杭体(コンクリート)の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、杭体の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。また、長尺物であるケーシング10を吊下支持可能な杭埋込機を用いて、より短時間で杭埋込作業を完了させることができる。
【0045】
(3)杭埋込方法2
次に、本実施例に係る先端ヘッド1を用いる杭埋設方法2について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及び以下に説明する複数の分割ケーシングを用いることとする。
【0046】
上記分割ケーシング20a〜20dは、図5に示すように、軸方向の両端側に継手部21を有している。この継手部21によって、各分割ケーシング20a〜20dを軸方向に連結して分割ケーシング連結体22(図6参照)を構成し得るようになっている。なお、上記分割ケーシング20aは、他の分割ケーシング20b〜20dより短尺に形成されている。また、この分割ケーシング20aは、その上端側にのみ上記継手部21を有し、その下端側には、実施例1のケーシングと同様な構成の切欠部11を有している。
【0047】
先ず、図6(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4を分割ケーシング20aの切欠部11に挿入した状態、即ち、分割ケーシング20aの下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、全旋回式杭埋込機40によって、分割ケーシング20aを時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、分割ケーシング20aと共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、先端ヘッド1及び分割ケーシング20aが地中に埋め込められる。次に、分割ケーシング20aの上端側に他の分割ケーシング20bを連結して分割ケーシング連結体22をなし、この分割ケーシング連結体22及び先端ヘッド1を回転させつつ地中に埋め込める。そして、上記作用を必要に応じて繰り返し行って、全ての分割ケーシング20a〜20dが地中に埋め込まれる。
【0048】
次に、図6(b)に示すように、分割ケーシング連結体22の内部に鉄筋かごR(本発明に係る「補強部材」として例示する。)が挿入される。
【0049】
次いで、図6(c)に示すように、分割ケーシング20a,20bの内部に生コンクリートCが投入される。その後、先端ヘッド1に対して分割ケーシング連結体22を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、分割ケーシング20aに対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたまま、分割ケーシング連結体22が上方に移動される。このとき、分割ケーシング20aの下端開放部から生コンクリートCが漏出して掘削孔内に流入する。その後、最上端側の分割ケーシング20dが、地中より引き抜かれて分割ケーシング連結体22から分離される。
そして、図6(d)に示すように、上記作用が必要に応じて繰り返し行われる。その結果、図6(e)に示すように、全ての分割ケーシング20a〜20dが地中から引抜かれる。
【0050】
以上より、杭埋設方法2では、生コンクリートCの硬化によって、杭体(コンクリート)の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、杭体の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。また、上記ケーシング10に比べて短尺物である分割ケーシング20a〜20dを支持可能な全旋回式杭埋込機40を用いて、より安価に杭埋込作業を行うことができる。
【0051】
(4)杭埋込方法3
次に、本実施例に係る先端ヘッド1を用いる杭埋設方法3について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及びケーシング10を用いることとする。
【0052】
先ず、図7(a)に示すように、先端ヘッド1の凸部4をケーシング10の切欠部11に挿入した状態、即ち、ケーシング10の下端部に先端ヘッド1を装着させた状態で、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング10を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング10と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図7(b)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング10が地中に埋め込まれる。
【0053】
次に、図7(c)に示すように、ケーシング10の内部に、所定量のセメントミルクM(本発明に係る「固化材」として例示する。)が投入される。次いで、図7(d)に示すように、ケーシング10の内部に、コンクリート製の中空パイルP(本発明に係る「杭体」として例示する。)が挿入される。なお、この中空パイルPの下端は塞がれているものとする。すると、図7(e)に示すように、セメントミルクMが、ケーシング10の内部で中空パイルPの外周側で軸方向に一様にいきわたることとなる。
【0054】
その後、図7(f)に示すように、先端ヘッド1に対してケーシング10を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、ケーシング10に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング10が上方に移動する。このとき、ケーシング10の下端開放部よりセメントミルクMが漏出して掘削孔内に流入する。その後、図7(g)に示すように、ケーシング10が地中より完全に引抜かれ、セメントミルクMの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0055】
以上より、杭埋設方法3では、セメントミルクMの硬化によって、中空パイルPの下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、中空パイルPの外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。
【0056】
(5)杭埋込方法4
次に、本実施例に係る先端ヘッド1を用いる杭埋設方法4について説明する。この杭埋設方法では、上記先端ヘッド1及び以下に説明するケーシング60を用いることとする。
【0057】
上記ケーシング60は、図22及び23に示すように、下部ケーシング60aと、この下部ケーシング60aの上端部に連結される上部ケーシング60bとを有している。この上部ケーシング60bは、筒体62と、この筒体62の下端部に連なる複数の噴射ノズル部材63と、を有している。従って、筒体62にその上方より供給される後述の固化材は、複数の噴射ノズル部材63より噴射されて下部ケーシング60aの内部に投入されるようになっている(図22中の矢印参照)。なお、上記筒体62は、2重筒構造をなしており、上部ケーシング60bの内部で回転自在且つ軸方向に伸縮自在に設けられている。また、下部ケーシング60aの下端部は、上述のケーシング10の下端部と略同じ構成であり、切欠部11が形成されている。
【0058】
先ず、図24(a)に示すように、先端ヘッド1とケーシング60(連結状態の下部ケーシング60a及び上部ケーシング60b)との軸心を一致させた状態より、図24(b)に示すように、先端ヘッド1の凸部4を下部ケーシング60aの切欠部11に挿入し、即ち、下部ケーシング60aの下端部に先端ヘッド1を装着させる。次に、吊下式杭埋込機(図示せず)によって、ケーシング60を時計回りに回転させつつ下方に押し込む。すると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング60と共に先端ヘッド1がつれ回りされる。その結果、図24(c)に示すように、先端ヘッド1及びケーシング60が地中に埋め込まれる。
【0059】
次いで、図24(d)に示すように、地中に埋め込まれた下部ケーシング60aから上部ケーシング60bを切り離す。その後、図24(e)に示すように、上方を開放した下部ケーシング60aの内部にPC杭65(本発明に係る「杭体」及び「中空パイル」として例示する。)を挿入する。次に、図24(f)に示すように、下部ケーシング60aに上部ケーシング60bを連結する。次いで、図24(g)に示すように、ケーシング60及び先端ヘッド1を、再度つれ回りさせつつ地中の所定深度まで埋め込ませる。
【0060】
次に、図24(h)に示すように、上部ケーシング60bを構成する筒体62にセメントミルク(本発明に係る「固化材」として例示する。)が供給される。すると、そのセメントミルクは、噴射ノズル部材63より噴射されて下部ケーシング60aの内周側とPC杭65の外周側との間に投入される(図22参照)。そして、図24(i)に示すように、そのセメントミルクの投入(噴射)を続けながら、先端ヘッド1に対してケーシング60を反時計回りに回転させつつ上方に移動させる。すると、凸部4が切欠部11から脱出し、ケーシング60に対する先端ヘッド1の装着状態が解除され、先端ヘッド1が地中内の所定の深さ位置に残されたままケーシング60が上方に移動する。このとき、ケーシング60の下端開放部よりセメントミルクが漏出してPC杭65の外周側の掘削孔内に流入する。その後、図24(j)に示すように、ケーシング60が地中より完全に引抜かれ、セメントミルクの硬化によって基礎杭が完成されることとなる。
【0061】
以上より、杭埋設方法4では、セメントミルクの硬化によって、PC杭65の下端部及び先端ヘッド1が強固に連結されると共に、PC杭65の外周側の周辺地盤が強固に固められて基礎杭が形成されるので、地震や風圧等により強力な外力が加わったとしても、極めて強固な支持力を発揮することができる。
【0062】
(6)実施例1の効果
以上より、本実施例1によると、凸部4及び切欠部11の係止によって、ケーシング10及び先端ヘッド1がつれ回りされつつ地中に埋め込められる一方、凸部4及び切欠部11の係止解除によって、先端ヘッド1を所定深さの地中に残したままケーシング10が地中より引き抜かれる。そして、先端ヘッド1を回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体3a,3bの互いに近接する第1曲折部8及び第2曲折部9によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭では、複数の分割体3a,3bの水平部7によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
また、本実施例1では、上述の杭埋設方法1〜3を用いて、ケーシング10を用いて先端ヘッド1を回転させつつ地中に埋め込み、その後、先端ヘッド1を地中の所定深さ位置に残したままケーシング10を地中から引き抜いて基礎杭を形成するようにしたので、従来のように先端ヘッドに転動部材等を設ける必要がなく、比較的安価な先端ヘッドとすることができる。さらに、従来のように、先端ヘッドを地中に埋め込む際にケーシングの上端部をクランプする必要がなく、極めて安価且つ簡易に基礎杭を施工することができる。
また、本実施例では、前記本体2の底壁部2aの鉄筋材からなる鉄筋部36を設けたので、地中の所定深さ位置に位置する先端ヘッド1と杭体(例えば、鋼管杭、PC杭、場所打ちコンクリート杭等)とをより強固に結合させることができる。
また、本実施例では、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に2分割して2枚の分割板3a,3bをなすようにしたので、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
また、本実施例では、前記本体2の底壁部2aに突出部5を設けたので、突出部5によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
【0063】
(他の実施例)
次に、その他の実施例に係る基礎杭について説明する。
(1)基礎杭の構成
上記実施例に係る基礎杭50は、図20に示すように、筒状の杭本体52と、この杭本体52の外周面に設けられた翼体53と、この杭本体52の底壁部52aの下面に設けられ且つ先端に向って尖って突出する平板状の突出部55と、を備えている。
【0064】
上記翼体53は、杭本体52に外嵌可能な内径、即ち杭本体52の外径と略一致する内径を有する環状板を径方向に2分割してなる2枚の分割板53a,53bを有している。これら各分割板53a,53bは、同一水平面内に配設されている。また、各分割板53a,53bのそれぞれは、水平部57と、この水平部57に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部58、及び他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部59と、を有している。そして、これら分割板53a,53bの間では、一方の第1曲折部58と他方の第2曲折部59とが近接している。
【0065】
(2)他の実施例の作用・効果
本実施例に係る基礎杭50によると、基礎杭50を回転させつつ地中に埋め込む際、互いに隣接する分割体53a,53bの互いに近接する第1曲折部58及び第2曲折部59によって、土砂等が良好に掘削される。また、施工後の基礎杭50は、複数の分割体53a,53bの水平部57によって、地震、風圧等により杭本体に外力が加わっても、地盤に対する強固な支持力が得られる。
また、本実施例では、環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に2分割して2枚の分割板53a,53bをなすようにしたので、地盤に対する支持力をより向上させることができる。
また、本実施例では、杭本体52の底壁部52aに突出部55を設けたので、突出部55によって案内掘削でき、掘削性をより向上させることができる。
【0066】
尚、本発明においては、前記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、本実施例において、ケーシング10,60を地中より引き抜く際(図7(g)及び図23(j)参照)、ケーシング10,60を回転させつつ上方に移動させて、ケーシング10,60の下端外周部に形成された攪拌部30(例えば、突起部、らせん翼、環状部等)によって、ケーシング10,60の下端部から漏出されるセメントミルクMを攪拌させるようにしてもよい。これにより、セメントミルクMを周辺地盤により一様にいきわたらせることができる。
【0067】
また、本実施例では、先端ヘッド1の本体2の外周側に凸部4を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、先端ヘッド1の本体2の内周側に凸部4を設けるようにしてもよい。また、本実施例では、角棒状の凸部4を例示したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、丸棒状の凸部4としてもよい。さらに、本実施例1〜3では、軸方向に一様な外径のケーシング10(又は分割ケーシング20a)の内周側に切欠部11を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、ケーシング10の下端部に拡径部10aを設け、この拡径部10aの内周側に切欠部11を設けるようにしてもよい。さらに、先端ヘッド1に切欠部11を設け且つケーシング10に凸部4を設けるようにしてもよい。
【0068】
また、本実施例では、互いに係脱可能な凸部4及び切欠部11によって、先端ヘッド1とケーシング10との着脱機構を構成したが、これに限定されず、例えば、図10に示すように、互いに係脱可能な枠部32及び凸部33等によって、着脱機構を構成するようにしてもよい。さらに、互いに係脱可能な一対の噛合歯部によって、着脱機構を構成するようにしてもよい。
【0069】
また、本実施例では、先端に向って尖った1枚の平板である突出部5を例示したが、これに限定されず、例えば、平板の先端側に複数の凹部を設けて突出部5a(図11(a)参照)としたり、1枚の矩形平板からなる突出部5b(図11(b)参照)としたり、2枚の略三角平板を所定間隔で併設してなる突出部5c(図11(c)参照)としたり、2枚の矩形平板を所定間隔で併設してなる突出部5d(図11(d)参照)としたりしてもよい。さらに、一対の湾曲部を、各湾曲部と交差する平板部で連結してなる平面略Z字状の突出部5e(図12参照)としたり、一対の平板部を、各平板部と交差する平板部で連結してなる平面略Z字状の突出部5f(図13参照)としたり、一対の湾曲板を所定間隔で併設してなる突出部5g(図14参照)としたり、一対の平板を所定間隔で併設してなる突出部5h(図15参照)としたり、一対の湾曲板を、中心軸(又は中心孔)を介して併設してなる突出部5i(図16参照)としたり、一対の平板を、中心軸(又は中心孔)を介して併設してなる突出部5j(図17参照)としたりしてもよい。
【0070】
また、本実施例に係る先端ヘッド1において、例えば、図18及び19に示すように、その底壁部2aの上面に、複数の鉄筋材35を交差させて適宜固定(例えば、電気溶接固定、ネジ固定等)してなる鉄筋部36(本発明に係る「補強部」として例示する。)を設けるようにしてもよい。これにより、実施例1及び2に係る杭埋設方法(ケーシングの内部に生コンクリートを投入する形態)では、硬化後のコンクリート杭の下端部と先端ヘッド1とがより強固に結合される(図18参照)。また、実施例に係る杭埋設方法3及び4(ケーシングの内部に鋼管杭、PC杭等の中空パイルを挿入する形態)では、ケーシングを地中から引抜いた後、中空パイルPの内部にモルタル、コンクリート等の固定材を投入すれば、この固定材の硬化によって、中空パイルPの下端部と先端ヘッド1とがより強固に結合される(図19参照)。特に、既製の中空パイルPの下端面に、中空パイルPの内径より小さな内径を有する環状の引抜抵抗板37を適宜固定(例えば、電気溶接固定、ネジ固定等)しておけば、引抜き荷重に対して更に強い抵抗力を発揮できる。
【0071】
また、上記他の実施例に係る基礎杭50では、1本の筒状部材からなる杭本体52(図20参照)を例示したが、これに限定されず、例えば、図21に示すように、翼体53が溶着される短尺状の第1杭本体52Aと、この第1杭本体52Aに溶着可能である長尺状の第2杭本体52Bとから杭本体52を構成するようにしてもよい。これにより、これにより、例えば、基礎杭の製造現場から施工現場まで、第1杭本体及び第2杭本体を別部材として輸送し、施工現場で、両者を溶着して完成品とすることができ、輸送効率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
回転圧入式の基礎杭に関する技術として適用される。特に、中低層住宅等の建築物あるいは小規模構造物等の基礎杭に関する技術として好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本実施例に係る先端ヘッド及びケーシングの分離状態を示す側面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】本実施例に係る先端ヘッド及びケーシングの装着状態を示す側面図である。
【図4】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法1を説明するための説明図である。
【図5】分割ケーシングを説明するための説明図である。
【図6】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法2を説明するための説明図である。
【図7】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法3を説明するための説明図である。
【図8】先端ヘッドの係止部の他の形態を説明するための説明図である。
【図9】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図10】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図11】先端ヘッドの突出部の他の形態を説明するための説明図である。
【図12】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図13】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図14】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図15】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図16】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図17】先端ヘッドの係止部のさらに他の形態を説明するための説明図である。
【図18】先端ヘッドの他の形態を説明するための説明図である。
【図19】先端ヘッドのさらに形態を説明するための説明図である。
【図20】その他の実施例に係る基礎杭を説明するための説明図である。
【図21】基礎杭の他の形態を説明するための説明図である。
【図22】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法4で用いられるケーシング(筒部材が短縮状態)を説明するための説明図である。
【図23】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法4で用いられるケーシング(筒部材が伸長状態)を説明するための説明図である。
【図24】本実施例に係る先端ヘッドを用いる杭埋込方法4を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1;先端ヘッド、2;本体、2a;底壁部、3;翼体、3a,3b;分割板、4;凸部、5;突出部、7;水平部、8;第1曲折部、9;第2曲折部、10,60;ケーシング、11;切欠部、36;鉄筋部、50;基礎杭、52;杭本体、52a;底壁部、52A;第1杭本体、52B;第2杭本体、53;翼体、53a,53b;分割板、55;突出部、57;水平部、58;第1曲折部、59;第2曲折部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなり、且つ、筒状のケーシングにより地中に埋め込まれる基礎杭用の先端ヘッドであって、
前記本体に設けられ且つ前記ケーシングに設けられた被係止部と係脱可能な係止部を備え、該係止部及び該被係止部の係止によって、前記ケーシング及び前記先端ヘッドをつれ回りさせつつ地中に埋め込めることができると共に、該係止部及び該被係止部の係止解除によって、前記先端ヘッドを地中の所定深さ位置に残したまま前記ケーシングを地中より引き抜くことができ、
前記翼体は、前記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部と、該水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の該第1曲折部と他方の該分割板の該第2曲折部とが近接していることを特徴とする基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項2】
前記本体の底壁部の上面には補強部が設けられている請求項1記載の基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項3】
前記係止部が、前記本体の上部周面側に設けられ且つ径方向に向って突出する凸部であり、前記被係止部が、前記ケーシングの下端縁から上方に向って切り欠かれた切欠部であり、前記先端ヘッド及び前記ケーシングの軸方向への相対移動によって、前記凸部が前記切欠部に挿脱し得るようになっている請求項1又は2に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項4】
前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項5】
前記本体の底壁部の下面には、下方に向って突出する突出部が設けられている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項6】
筒状の杭本体の先端側の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなる基礎杭において、
前記翼体は、前記杭本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なる一方の分割端側で該杭本体の軸心方向の一方側に向って曲折された第
1曲折部と、該水平部に連なる他方の分割端側で該杭本体の軸心方向の他方側に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の第1曲折部と他方の該分割板の第2曲折部とが近接していることを特徴とする基礎杭。
【請求項7】
前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる請求項6記載の基礎杭。
【請求項8】
前記杭本体の底壁部の下面には、下方に向って突出する突出部材が設けられている請求項6又は7に記載の基礎杭。
【請求項9】
前記杭本体が、前記翼体が設けられる第1杭本体と、該第1杭本体より大きな軸心長さを有し且つ該第1杭本体に固定可能である第2杭本体とからなる請求項6乃至8のいずれか一項に記載の基礎杭。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の先端ヘッドと、該先端ヘッドが着脱自在に取着される前記ケーシングと、を備える基礎杭用の施工具。
【請求項1】
筒状の本体の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなり、且つ、筒状のケーシングにより地中に埋め込まれる基礎杭用の先端ヘッドであって、
前記本体に設けられ且つ前記ケーシングに設けられた被係止部と係脱可能な係止部を備え、該係止部及び該被係止部の係止によって、前記ケーシング及び前記先端ヘッドをつれ回りさせつつ地中に埋め込めることができると共に、該係止部及び該被係止部の係止解除によって、前記先端ヘッドを地中の所定深さ位置に残したまま前記ケーシングを地中より引き抜くことができ、
前記翼体は、前記本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なり且つ一方の分割端側で上方に向って曲折された第1曲折部と、該水平部に連なり且つ他方の分割端側で下方に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の該第1曲折部と他方の該分割板の該第2曲折部とが近接していることを特徴とする基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項2】
前記本体の底壁部の上面には補強部が設けられている請求項1記載の基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項3】
前記係止部が、前記本体の上部周面側に設けられ且つ径方向に向って突出する凸部であり、前記被係止部が、前記ケーシングの下端縁から上方に向って切り欠かれた切欠部であり、前記先端ヘッド及び前記ケーシングの軸方向への相対移動によって、前記凸部が前記切欠部に挿脱し得るようになっている請求項1又は2に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項4】
前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項5】
前記本体の底壁部の下面には、下方に向って突出する突出部が設けられている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の基礎杭用の先端ヘッド。
【請求項6】
筒状の杭本体の先端側の外周面に外方に拡がる翼体を設けてなる基礎杭において、
前記翼体は、前記杭本体に外嵌可能な内径を有する環状板を径方向に分割してなり且つ同一水平面内に配設される複数の分割板を有し、複数の該分割板のそれぞれは、水平部と、該水平部に連なる一方の分割端側で該杭本体の軸心方向の一方側に向って曲折された第
1曲折部と、該水平部に連なる他方の分割端側で該杭本体の軸心方向の他方側に向って曲折された第2曲折部と、を有し、複数の該分割板のうちで隣接する該分割板では、一方の該分割板の第1曲折部と他方の該分割板の第2曲折部とが近接していることを特徴とする基礎杭。
【請求項7】
前記分割板が、前記環状板を円周方向に沿って等ピッチ間隔で径方向に分割してなる請求項6記載の基礎杭。
【請求項8】
前記杭本体の底壁部の下面には、下方に向って突出する突出部材が設けられている請求項6又は7に記載の基礎杭。
【請求項9】
前記杭本体が、前記翼体が設けられる第1杭本体と、該第1杭本体より大きな軸心長さを有し且つ該第1杭本体に固定可能である第2杭本体とからなる請求項6乃至8のいずれか一項に記載の基礎杭。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の先端ヘッドと、該先端ヘッドが着脱自在に取着される前記ケーシングと、を備える基礎杭用の施工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−57404(P2006−57404A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242906(P2004−242906)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(503386713)
【出願人】(593207499)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(503386713)
【出願人】(593207499)
【Fターム(参考)】
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