説明

塗布方法および塗布装置

【課題】塗布膜の形成の際に塗布中の固形分濃度の変化による塗布ムラ抑制することを目的とする。
【解決手段】塗布液の濃度や粒度を濃度計103で計測し、その計測結果を用いて塗布厚みや粒子の分散状態をコントロールすることにより、塗布液の固形分濃度や粒度の経時的な変化に由来する塗布ムラを発生させないで安定的な塗布膜形成を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布液を塗布することにより塗布膜を形成する塗布方法および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学フィルムやフラットディスプレイの需要が増加しつつある。この光学フィルムやフラットディスプレイパネルとしては、液晶セルに位相差板として使用される光学補償フィルムや、反射防止フィルム、防眩性フィルム等の各種の機能を有するフィルムやフラットディスプレイパネルが代表的である。
【0003】
このような光学フィルムの製造方法の代表的なものとして、走行する帯状可撓性の支持体の表面に塗工装置で塗布液を塗布し、これを乾燥させて各種組成の塗布膜を形成する方法が挙げられる。
【0004】
また、フラットディスプレイパネルの製造方法の代表的なものとして、走行するガラスパネルの表面に塗工装置で塗布液を塗布する又は固定したガラスパネルの表面上を塗工装置の塗布ヘッドが塗布液を塗布しながら走行し、これを乾燥させて各種組成の塗布膜を形成する方法が挙げられる。
【0005】
塗工装置としては、走行する支持体上に塗布液を全量塗布する、例えば、スリットダイ塗工装置や、液溜め部から塗布液を掻き上げて支持体に塗布し、塗布されなかった余剰の塗布液は回収され再度塗工装置に送液するコンマ塗工装置、バー塗工装置、グラビア塗工装置、ロール塗布装置などがある。
【0006】
近年においては、光学フィルムやフラットディスプレイパネルの高性能化によって塗布膜の薄層化及び膜厚ムラ防止の要求精度が以前に比べて格段に高くなってきている。この為、単純に塗工装置の機械精度を上げるだけでは解決できず、塗布経過時における塗布液中の固形分濃度や粒度を経時的な変化を精度良く管理し、常に一定の固形分濃度や粒度にすることが重要になってきている。
【0007】
従来、塗布液の管理としては、特許文献1に見られるように、塗布液の密度を測定して目標密度との差を求め、密度差に基づいて塗布液の密度をフィードバック制御する方法が提示されている。
【0008】
図6は、特許文献1に記載された従来の塗布装置の構成を示す図である。
図6において、供給タンク1内の塗布液の密度を測定し、測定した密度と予め規定した目標密度との密度差を演算手段2により演算し、目標密度よりも1桁粗い精度の密度調整用液が入った密度調整駅用タンク3に配管されたバルブ4を開閉し、密度調整用液を添加する第一の密度調整手段の後に、送液配管5を流れる塗布液の密度をインライン測定できる密度計6によりインライン測定し、測定した密度と予め規定した目標密度との密度差を演算手段7により演算し、密度差がなくなるように密度測定位置の上流側の送液配管5中に密度調整用液を、ポンプ8を用いて自動添加して塗布液の密度をフィードバック制御により調整する第二の密度調整工程と、により塗布液の固形分濃度を一定にして塗布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−173587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
光学フィルムの製造で使用される塗工装置としては、コンマ塗工装置、バー塗工装置(バー方式、ミイヤーバー方式)、グラビア塗工装置(ダイレクト方式、キス方式)、ロール塗工装置等が代表的であり、これらの塗工装置は液溜め部から塗布液を掻き上げて支持体に塗布する方式なので、塗布液中の有機溶媒が蒸発し易いという問題がある。また、これらの塗工装置の場合、ウエブ(支持体)に塗り付けられなかった余剰の塗布液は回収され、回収された塗布液は、塗工装置に送液する送液ラインに戻されて再利用されるのが通常である。このように塗布液を再利用する場合には、塗布液の回収時に塗布液が大気にふれて塗布液中の有機溶剤が蒸発し、塗布液中の固形分濃度が一層変化し易くなるという問題がある。
【0011】
そのため近年では、タンクから塗布ヘッド部まで塗布液が大気に触れにくいスリットダイ塗工装置がよく用いられている。
さらに、多くの光学フィルムやフラットディスプレイパネルを製造する場合、塗布液に粉体が分散されているものを用いる事が多く、時間と共に粉同士が凝集する事が多々あり、また粉体の方が塗布液の溶媒より密度が高い場合が多くあり、塗布液が静止していると粉体が沈降する。
【0012】
いずれの場合においても、光学フィルムやフラットディスプレイパネルにおいて光学特性を一定に保つため、フィルム上やガラス基盤上に塗布される塗布・乾燥を経た粉体の目付け量や粒子の分布を一定にすることが必要である。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、塗布膜の形成の際に塗布中の固形分濃度の変化による塗布ムラ抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の塗布方法は、供給タンクから送液配管を介して送液される塗布液を、走行する支持体上に塗布ノズルから塗布して薄膜を形成するに際し、前記送液配管の途中で塗布液の濃度および粒度をインライン測定する工程と、測定した前記濃度と予め規定した目標濃度との濃度差を演算する工程と、前記濃度差に応じて前記塗布液の流量をフィードバック制御する工程と、測定した前記粒度と予め規定した目標粒度との粒度差を演算する工程と、前記粒度差に応じて前記供給タンク中の前記塗布液の分散状態をフィードバック制御する工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明の塗布装置は、供給タンクから送液配管を介して送液される塗布液を、走行する支持体上に塗布ノズルから塗布して薄膜を形成する塗布装置であって、前記送液配管の途中で塗布液の濃度をインライン測定する濃度計と、測定した前記濃度と予め規定した目標濃度との濃度差を演算して前記塗布液の流量の制御を行う濃度演算器と、前記濃度演算器の制御によって前記流量を調整する定量ポンプとを有することを特徴とする。
【0016】
また、供給タンクから送液配管を介して送液される塗布液を、走行する支持体上に塗布ノズルから塗布して薄膜を形成する塗布装置であって、前記送液配管の途中で塗布液の濃度をインライン測定する濃度計と、測定した前記濃度から求めた粒度と予め規定した目標粒度との粒度差を演算して前記供給タンク中の前記塗布液の分散状態を制御する粒度演算器と、前記粒度演算器の制御によって前記供給タンク中の前記塗布液の分散を行う分散器とを有することを特徴とする。
【0017】
また、供給タンクから送液配管を介して送液される塗布液を、走行する支持体上に塗布ノズルから塗布して薄膜を形成する塗布装置であって、前記送液配管の途中で塗布液の濃度をインライン測定する濃度計と、測定した前記濃度と予め規定した目標濃度との濃度差を演算して前記塗布液の流量の制御を行う濃度演算器と、前記濃度演算器の制御によって前記流量を調整する定量ポンプと、測定した前記濃度から求めた粒度と予め規定した目標粒度との粒度差を演算して前記供給タンク中の前記塗布液の分散状態を制御する粒度演算器と、前記粒度演算器の制御によって前記供給タンク中の前記塗布液の分散を行う分散器とを有することを特徴とする。
【0018】
また、前記供給タンクに温度計を設け、前記濃度計の温度補正を行うことを特徴とする。
また、塗布停止時に前記塗布ノズルに蓋をした状態で、前記塗布液を所定の間隔で循環させる送液ポンプをさらに有することを特徴とする。
【0019】
また、前記濃度計が光学式濃度計であることを特徴とする。
また、前記光学式濃度計が、前記塗布液に光を照射する発光部と、前記塗布液を透過または反射した前記光を受光する受光部と、前記光が通る導光路ガラスと、前記光の照射および出射位置を開口して前記導光路ガラスの周囲に形成される遮光層とを有することを特徴とする。
【0020】
また、前記塗布液は粉体を分散した塗布液であることを特徴とする。
以上により、塗布膜の形成の際に塗布中の固形分濃度の変化による塗布ムラ抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、塗布液の濃度や粒度を計測し、その計測結果を用いて塗布厚みや粒子の分散状態をコントロールすることにより、塗布液の固形分濃度や粒度の経時的な変化に由来する塗布ムラを発生させないで安定的な塗布膜形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の塗布装置の構成を説明するための図
【図2】循環動作時の塗布装置の構成を説明するための図
【図3】濃度計の構成を示す断面図
【図4】ホースにより管路を形成した濃度計の構成を示す断面図
【図5】濃度計の出力結果を例示する図
【図6】従来の塗布装置の構成を示す図
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
従来の揮発した塗布液に塗布液の溶媒を加える単なるフィードバック制御による塗布液の固形分濃度調整では、仮にフィルム上やガラス基盤上に膜を製造するための塗布のように超精密な塗布液の固形分濃度の制御ができたとしても、分散状態が変化している事が多く、常に塗布・乾燥を経たフィルム上やガラス基盤上の塗膜の光学特性が一定にならず同一の光学特性を得ることができない。
【0024】
そこで、発明者は鋭意研究した結果、タンクから塗工装置までの送液配管中においてインライン測定した測定濃度と前記目標濃度との濃度差をなくすように定量ポンプの送り流量フィードバック制御により塗布時のウェット膜厚を微調整し、かつ塗布液の分散手段を用いて粒度を一定とすることで塗布・乾燥を経たフィルム上やガラス基盤上の塗膜の光学特性を一定にできることを見いだした。
【0025】
このように、本発明は、多量の塗布液の粒度を一定精度のレベルまで短時間で調整し易いタンク内での粒度調整の特徴と、塗布液中の溶媒の揮発をした時に濃度を高精度にインライン測定を行い易い送液配管途中での濃度測定の特徴と、その濃度と粒度に応じたウェット膜厚のフィードバック機能とを選択して組み合わせることにより、塗布・乾燥を経たフィルム上やガラス基盤上の塗膜の光学特性を一定にできる。また、塗布液の粘度変化として現れない塗布液中の微小な固形濃度変化であっても、塗布液の濃度を検出することで高精度且つリアルタイムに検出することができる。しかも、測定した測定濃度を予め規定した目標濃度のとの濃度差からウェット膜厚の厚みを演算する。また、濃度は目標濃度に対して濃くても薄くてもどちらであっても膜厚にフィードバックできる。また、目標濃度とは、塗布液を調製する際に本来規定された濃度のことであり、目標の固形分濃度に対応する濃度を言う。
【0026】
以下、図1〜図5を用いて本発明に係る塗布液の塗布方法及び塗布装置、並びにその塗布装置を使用して製造した光学フィルムやフラットディスプレイパネルの好ましい実施の形態について詳説する。ここでは、代表的な説明として、フラットディスプレイパネルを例に行う。
【0027】
図1は本発明の塗布装置の構成を説明するための図であり、本発明に係る塗布液の塗布方法、及び塗布装置が適用されるフラットディスプレイパネルの製造ラインを説明する説明図である。図2は、循環動作時の塗布装置の構成を説明するための図である。図3は濃度計の構成を示す断面図、図4はホースにより管路を形成した濃度計の構成を示す断面図である。図5は濃度計の出力結果を例示する図である。
【0028】
図1に示すように、フラットディスプレイパネルの製造ラインは、塗布液で満たされたタンク101より送液配管を介して塗工装置に送液された塗布液の濃度や粒度を光学式濃度計103を用いて測定し、その結果から算出した流量を定量ポンプ104にて流量制御し、走行するステージ107上に一時的に固定されたガラス基盤106に塗布ノズル105を通して塗布すると共に、間欠的に塗布液内の粒子の沈降防止と濃度計のクリーニングを目的とし、塗布ノズル先端を封印した後に送液ポンプ102を用いて塗布液の循環を行う塗布方法の場合である。
【0029】
ここで、塗布ノズル105が静止し、ステージ107が走行する場合でも、塗布ノズル105がステージ107上を走行し、ステージ107が静止している場合でも定量ポンプ104の流量を調整する事で塗布厚みが変更できる構成の場合に本発明は使用できる。塗布ノズル105はスリットダイの事を示す。スリットダイとは配管から供給された塗布液をマニホールドと呼ばれる溝で幅方向に均一に分配し、その先に設けられたスリット部から幅方向に均一な塗布厚みになるように塗布液をガラス基盤106に塗布する事ができる金型である。
【0030】
特に精度に問題がなければ、スリットダイの材質としては、ステンレス鋼、セラミックス、ガラス、PEEKやPAIなどの樹脂等が使用できる。
塗布液としては、PbO、MgO、B、SiOおよびCaOの内の少なくとも一つ以上の成分を含有するガラス粉末、バインダ、可塑剤、および溶剤を含むものが用いられる。
【0031】
濃度フィードバック制御機構111は、主として、配管内を流れる塗布液の濃度をインライン測定する濃度計103と、測定した測定濃度と予め規定した塗布液の目標濃度との濃度差を演算し、前記濃度差による乾燥後のガラス基盤106上の塗膜の光学特性の差がなくなるように、前記濃度差を定量ポンプ104にフィードバックし、濃度差がなくなるように塗布ノズル105を通して塗布される塗布液の流量を調整する濃度演算器とで構成される。ここでいう定量ポンプはプランジャーポンプ、ダイヤフラムポンプ、ギアポンプ等の定量ポンプであることが好ましい。
【0032】
濃度フィードバックを行うに際して、前記濃度計103で検出された現在の濃度と目標濃度とを比較し、測定した濃度の値より膜厚の過不足を予測し、所定の膜厚になるようにに調整する。つまり、目標濃度より現在の濃度が低ければ膜厚が不足していると判断して定量ポンプで送液される流量を増やし、目標濃度より現在の濃度が高ければ膜厚が厚くなりすぎると判断して定量ポンプで送液される流量を減らす。巻き出し部と巻取り部がありその間にフープ状の基材が走行し、その基材上に塗布するロールtoロールと呼ばれる塗布方式の場合は、逐次フィードバックを行うが、方形もしくは円形の基材を1枚毎に塗布する枚葉塗布では、その1枚が塗り終わった後にフィードバックを行う。つまり、1枚の塗り始めから塗り終わりまでの途中では面内の膜厚分布が悪くなるのでフィードバックを行わない。
【0033】
また、粒度フィードバック制御機構112は光学式濃度計103と分散手段108で構成され、光学式濃度計103で測定された粒度と目標粒度との差異を算出し、その算出した値から分散手段108の出力を調整し、塗布液の分散状態を一定に保つものである。ここでいう分散手段108はディスパー・プロペラなどの回転運動と超音波振動等の分散手段であることが好ましい。
【0034】
粒度フィードバックを行うに際して、前記濃度計103で検出された現在の粒度と目標粒度とを比較し、分散手段に値を出力する。つまり、目標粒度より現在の粒度が大きくなっていれば塗布液内の粒子が凝縮していると判断して分散手段の回転数や超音波の出力を増やし、目標粒度より現在の粒度が小さければ塗布液内の粒子が過剰に分散されていると判断して分散手段の回転数や超音波の出力を下げるもしくは止める。なお、分散手段は高速回転を常時続けると分散や粘度低下が進行する事が多い。前者の場合、特性に悪影響が出る事があり。後者の場合、粘度低下による沈降が進行する事がある。また、回転数についてはタンク内の沈降による濃度分布を抑制でき、粒度・粘度が著しく下がらない程度の低速回転している事が望ましい。
【0035】
また、図1に示すように、タンク101の側壁部に温度を計測する温度計113が設けることも可能であり、温度計113が設けられた場合、測定された塗布液の温度は演算手段に逐次入力されて、濃度計103で測定された濃度の温度補正が行われる。
【0036】
光学式濃度計103は受光部と発光部およびその出力値を演算する演算回路で構成される。発光部の光源としては赤外線レーザー、可視光線レーザー、紫外線レーザー、X線レーザーなどのレーザー光源、タングステンランプ、キセノンランプなどのランプ光源、赤色発光ダイオード、青色発光ダイオードなどの発光ダイオードが使用でき、受光部の検出素子としてはシリコン、ゲルマニウム、インジウム・ガリウム・ヒ素、硫化鉛といった材料を用いたフォトダイオードが使用できる。
【0037】
演算回路では次に示す測定法を使用して演算を行う。測定法の説明としては、赤外線を用いた例で記述しているが塗布液の性質によっては可視光、紫外光の方が良好に検出できるので波長特性を調べた上で発光部、受光部の材料・材質を選定することが望ましい。
(測定法の説明)
(濃度の測定)
光学式濃度計103における濃度τの測定は、配管内を循環させた塗布液に赤外線(波長:900nm)を照射し、発光部の入射光と受光部の透過光の値より、下記の式(1)から算出して行う。
τ=−ln(It/I0)/L (Lambertの式)・・・・(1)
(ただし、I0は入射光強度、Itは透過光強度、It/I0は塗布液の透過前後の光強度比、Lはペーストの深さとし、その値に特に制限はない。)
上式では(It/IO)が大きくなる、すなわち塗布液が薄い時は出力値が小さくなり、逆に塗布液が濃い時は出力値が大きくなる。
【0038】
また、濃度測定時における塗布液温度には、特に制限はないが、一般に温度が高いほど、塗布液の分散安定性が悪くなり、濁度が増大する傾向がある。したがって、温度は、10〜40℃、より好ましくは10〜25℃で測定するのがよい。
【0039】
なお、測定対象となる粉については、粒径は0.8nm〜1mmの範囲にあり、塗布液の溶媒成分と屈折率が異なるものであれば良い。色については目視では透明体または溶媒と同色であっても波長を変える事で溶媒と粉成分との屈折率差を検出できれば良い。ただし、発光部からでた光を完全に遮ってしまい受光部に届かない程の状態では使用できないので、その場合は受光部が発光部の光を検出できる距離まで発光部と受光部との距離を縮めることが望ましい。
【0040】
図2は間欠的に行う循環時の動作状態を示し、塗布ノズル105が上昇し、ゴムシール114を有するシールユニット115が塗布ノズルの先端部の下方に移動し、その後塗布ノズル105が下降して塗布ノズル105先端の吐出口が塞がれる。
【0041】
塞がれた後に送液ポンプ102でタンク101内の塗布液を塗布ノズルへ供給し、戻り配管116を介してタンク101へ戻ってくる事でタンク−塗布ノズル−戻り配管内の塗布液の沈降を抑制すると共に、濃度計103の検出部のクリーニングを行うことができる。
【0042】
循環動作は塗布液の粘度・塗布液内の粉体と塗布液の溶媒との比重差・配管径・塗布液の基準濃度にもよるが、動作間隔は濃度計103により検出された濃度が目標濃度に対し、現在の濃度が所定の差になった時に実施するという形でも良いし、一定時間毎に行っても良い。
【0043】
また、塗布液に大きな粒度差が見られる場合、この循環動作を行っている最中に前記粒度フィードバック制御を行うのが好ましい。
循環流量としては、粘度が20mPa・s以下で配管径が3/8〜1インチの管路では、3L/min以上の流量で配管径路内が3回入れ替わる程度の時間、循環を行うことが好ましい。
【0044】
図3は濃度計103の詳細図であり、塗布液を通す管路124の両側に発光部120と受光部121があり、直接接液しないためにガラスまたは樹脂でできた導光路グラス123を有し、管路124を構成するケーシング122により濃度計103が保持されている。高精度な濃度測定を行うには導光路グラス123の光路以外の周囲の部分(円筒部)にアルミ蒸着等の均一な遮光層125を形成する事により周囲からの乱反射を抑制する事ができ、ケーシング122と導光路グラス123との間に粒子が経時的に固着する事により生じる時間的な変化の影響を受けずに高精度に濃度・粒度を検出する事ができる。ここでは、受光部121にて透過光を受光する構成を示したが、塗布液からの反射光を受光するように受光部121を構成しても良い。
【0045】
また、粒子が導光路グラス123に付着し成長する性質を持つときは、付着しにくいPFA・PTFE・PVDF・FEP・PCTFE・ETFE・ECTFEなどのフッ素系樹脂やPP・PET・PE等の高分子系樹脂を薄くし、光を透過可能としたものを導光路グラス123に用いても良い。
【0046】
図4に示すように、管路124をケーシングを用いずにフッ素系樹脂および高分子系樹脂のホースを用いて形成する場合には、導光路グラスを用いずに一対の半割りのブラケット126に発光部120、受光部121を設け、管路124を形成するホース127を挟み込みボルトやネジ、磁力等で締結するという形態でもよい。
【0047】
この場合、図3の形態に比べ安価で製作可能であるが、ホースの内径により発光部と受光部との距離が制限されるので濃度の検出はできるが、高感度の粒子の検出が難しくなる事がある。
【0048】
そして、本発明の塗布装置110は、厳しい光学性能が要求される光学フィルム・フラットディスプレイパネルの製造において、粘度変化としては現れない塗布液中の固形分濃度・粒度の変化をも管理できるようにするため、光学式濃度計を用いることが好適である。
(粒度の測定)
以下、粒度の測定方法の説明を図5と図1,図3を用いて行い、上記濃度計103で用いる出力式(1)を基に波形のデータを取得したものが図5である。出力値としては、発光部120の光源から塗布液(およびケーシング122またはホース127)を介して受光部121の検出素子に届いた光量を電圧または電流にフォトダイオードを用いて変換し、更に前述の式(1)の演算を行いて変換している(本説明では電圧)。図5において一定期間の出力値の平均が濃度平均値150であり、濃度が薄くなると下降し、濃くなると上昇する。
【0049】
また、濃度平均値は管路124内を通る塗布液の平均的な粒径を示しており、濃度平均値に対して高い出力を部分的に示す大きな信号151が平均粒径より大きな粒子を測定した場合の信号であり、この上昇の期間152が粒子の大きさを示しており、粒子の大きさは配管内の流速と期間の時間との積で計算可能である。やや大きな粒子の信号153の様に短時間に出力値が大きくなる場合は平均粒径よりは大きいが比較的小さな粒子である。濃度平均値に対して低い信号154を部分的に示すものが平均粒径より小さな粒子または気泡を測定した場合の信号である。この出力の変動をある一定期間内でそれぞれの粒子の期間を計算し、頻度を算出する事で粒度の分布が計算でき、その出力に応じて、分散手段の出力を変える事で塗布液内の粒子の分布を均一にする事ができる。
(粒度の測定の実施例)
以下、粒度の測定の実施例を示す。
【0050】
図1と同一の構成で塗布液として、PbO、MgO、B、SiOおよびCaOの内の少なくとも一つ以上の成分を含有するガラス粉末、バインダ、可塑剤、および溶剤を含むものを用いた。
【0051】
塗布液の濃度は1wt%で塗布液内の平均粒径が3μmのものを用いた。
塗布幅1000mmの塗布ノズルを用いて、長さ560mmの区間を塗布厚み20μmでガラス基盤上に塗布速度30mm/sで塗布を行った。塗布後は真空乾燥装置を用いて乾燥し、塗布面積をタテ3×ヨコ3の9分割で検査を行い、JISK7165:1981に準拠して、ヘイズメーター(「NDH2000」,日本電色工業(株)製もしくは相当機種)でD65光源を用いて測定した。
【0052】
なお、塗布テストは500枚実施し、粒度が基準値から±5%の範囲内のものは○、範囲を外れたものは×として判定した。
(比較実験)
実施例と同一の構成で、比較例として濃度フィードバック機能のみを機能させない場合を比較例1とし、濃度フィードバックと粒度フィードバック機能の両方を機能させない場合を比較例2とし、実施例とその他は同一の条件で塗布を行った。
【0053】
ここで実施例と比較例との比較結果を表1に示し、判定結果に対応する枚数で比較する。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例の場合、塗布ムラ以外の不良発生による不良が生じたのに対し、濃度フィードバックのみを行わない比較例1の場合、塗布後半の半数以上に塗布液の粒子の沈降が進むことにより濃度が下がってしまい塗布量が少なくなってしまうために範囲外の塗布結果が多くなった。更に濃度フィードバックと粒度フィードバック機能の両方を機能させない比較例2の場合、粒子の分散状態が経時的に悪くなり、更に凝集する事で沈降速度が速くなり、比較例1より沈降しやすいため濃度の低下が著しくすすみ、範囲外の塗布結果が更に多くなった。
【0056】
このように、塗布装置中の塗布液の濃度をインライン測定し、測定濃度の目標濃度との差によって、塗布液の流量を濃度フィードバック制御することにより、膜厚を一定に保つことができるため、塗布ムラを防ぎ、安定した特性を確保することができる。また、これと同時または別途に、塗布装置中の塗布液の粒度をインライン測定し、測定粒度の目標粒度との差によって、塗布液の分散状態をフィードバック制御することにより、塗布液の分散状態を一定に保つことができるため、固形濃度変化や粒子の沈降を抑制し、塗布ムラを防ぎ、安定した特性を確保することができる。さらに、これらの制御と共に、塗布停止中に、所定の間隔で塗布液を循環させることにより、粒子の沈降の防止と濃度計のクリーニングを行うことができるため、より高精度にフィードバック制御を行うことができ、塗布ムラを防ぎ、より安定した特性を確保することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、光学フィルムの塗布方法で代表されるロールtoロールの塗布方法など各種の態様が採り得る。また、塗布液としては紛体を分散していても良いし、紛体が添加されていない塗布液でも良い。例えば、粉体の添加されていない塗布液として、アクリル、アクリル・スチレン、酢酸ビニル、EVA、フッ素、ウレタン系などのエマルジョン樹脂を分散させた塗布液にも使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、薄膜の形成の際に塗布中の固形分濃度の変化による塗布ムラ抑制することができ、塗布液を塗布することにより薄膜を形成する塗布方法および塗布装置等に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・タンク、2・・・演算手段、3・・・密度調整液用タンク、4・・・バルブ、5・・・送液配管、6・・・密度計、7・・・演算手段、8・・・ポンプ
101…タンク、102…送液ポンプ、103…濃度計、104・・・定量ポンプ、105・・・塗布ノズル、106・・・ガラス基盤、107・・・ステージ、108・・・分散手段、110・・・塗布装置、111…濃度フィードバック制御機構、112…粒度フィードバック制御機構、113…温度計
114・・・ゴムシール、115・・・シールユニット、116・・・戻り配管
120・・・発光部、121・・・受光部、122・・・ケーシング、123・・・導光路グラス、124・・・管路、
125・・・遮光層、126・・・ブラケット、127・・・ホース
150・・・濃度平均値、151・・・大きな粒子の信号、152・・・粒子の大きさを表す期間、
153・・・やや大きな粒子の信号、154・・・信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給タンクから送液配管を介して送液される塗布液を、走行する支持体上に塗布ノズルから塗布して薄膜を形成するに際し、
前記送液配管の途中で塗布液の濃度および粒度をインライン測定する工程と、
測定した前記濃度と予め規定した目標濃度との濃度差を演算する工程と、
前記濃度差に応じて前記塗布液の流量をフィードバック制御する工程と、
測定した前記粒度と予め規定した目標粒度との粒度差を演算する工程と、
前記粒度差に応じて前記供給タンク中の前記塗布液の分散状態をフィードバック制御する工程と
を有することを特徴とする塗布方法。
【請求項2】
供給タンクから送液配管を介して送液される塗布液を、走行する支持体上に塗布ノズルから塗布して薄膜を形成する塗布装置であって、
前記送液配管の途中で塗布液の濃度をインライン測定する濃度計と、
測定した前記濃度と予め規定した目標濃度との濃度差を演算して前記塗布液の流量の制御を行う濃度演算器と、
前記濃度演算器の制御によって前記流量を調整する定量ポンプと
を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
供給タンクから送液配管を介して送液される塗布液を、走行する支持体上に塗布ノズルから塗布して薄膜を形成する塗布装置であって、
前記送液配管の途中で塗布液の濃度をインライン測定する濃度計と、
測定した前記濃度から求めた粒度と予め規定した目標粒度との粒度差を演算して前記供給タンク中の前記塗布液の分散状態を制御する粒度演算器と、
前記粒度演算器の制御によって前記供給タンク中の前記塗布液の分散を行う分散器と
を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項4】
供給タンクから送液配管を介して送液される塗布液を、走行する支持体上に塗布ノズルから塗布して薄膜を形成する塗布装置であって、
前記送液配管の途中で塗布液の濃度をインライン測定する濃度計と、
測定した前記濃度と予め規定した目標濃度との濃度差を演算して前記塗布液の流量の制御を行う濃度演算器と、
前記濃度演算器の制御によって前記流量を調整する定量ポンプと、
測定した前記濃度から求めた粒度と予め規定した目標粒度との粒度差を演算して前記供給タンク中の前記塗布液の分散状態を制御する粒度演算器と、
前記粒度演算器の制御によって前記供給タンク中の前記塗布液の分散を行う分散器と
を有することを特徴とする塗布装置。
【請求項5】
前記供給タンクに温度計を設け、前記濃度計の温度補正を行うことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項6】
塗布停止時に前記塗布ノズルに蓋をした状態で、前記塗布液を所定の間隔で循環させる送液ポンプをさらに有することを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項7】
前記濃度計が光学式濃度計であることを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項8】
前記光学式濃度計が、
前記塗布液に光を照射する発光部と、
前記塗布液を透過または反射した前記光を受光する受光部と、
前記光が通る導光路ガラスと、
前記光の照射および出射位置を開口して前記導光路ガラスの周囲に形成される遮光層と
を有することを特徴とする請求項7記載の塗布装置。
【請求項9】
前記塗布液は粉体またはエマルジョン材料を分散した塗布液であることを特徴とする請求項2〜請求項8のいずれかに記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−259986(P2010−259986A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111699(P2009−111699)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】