説明

塗布液の塗布装置および塗布方法

【課題】ガラス板面に速乾性の塗布液を、塗布ムラもなく均一に、速い速度で塗布する。
【解決手段】略水平姿勢で搬送されるガラス板の上面に塗布液を塗布する方法において、ガラス板を成膜室内に搬入後、ノズル位置調整手段とノズル高さ調整手段によって、ガラス板の搬送方向と直交する幅方向の湾曲面形状に沿って一定間隔で一列に配設した複数の塗布ノズルの各塗布位置がガラス板の先端位置以降、後端位置となる迄塗布ノズルを開にして塗布液を噴射するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板や樹脂パネル等の板状体の表面に塗布液を塗布する装置及び方法、特に、自動車の窓ガラス等の湾曲した異形状のガラス板面に酸化インジウムスズ(ITO:Indium Tin Oxide)等を含むシリカバインダーによるIRカット膜等の成膜液等、速乾性の塗布液を塗布する装置及びその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、板状体に薬液等の塗布液を塗布する場合、刷毛により薬液を塗布する方法、スプレーまたはシャワーにより塗布する方法や、あるいはロール等に転写して塗布する方法等さまざまな方法や装置が知られている。
【0003】
例えば特開平7−328506号公報に、ロボットアームに刷毛を把持させて板状物体の上面の端縁を塗布するようになった刷毛式塗布装置において、ロボットアームに、左右方向へスライド可能にガイド棒にガイドされ、かつこのガイド棒に沿ってばねで付勢されたスライダを備えた左右方向用スライド装置を取付け、前記スライダに、前記ガイド棒に対して直交方向へスライド可能にスライド棒をガイドするガイド筒を備え、かつ前記スライド棒を上方へ付勢するばねを装着された上下方向用スライド装置を取付け、前記スライド棒の下端部に、板状物体の下面の端縁に前記スライド棒の前記ばね付勢で下方から圧接する下面ローラを取付け、また前記スライド棒の上端部に、前記下面ローラが前記端縁に下方から当接した状態で上面の端縁に接触する刷毛に塗布材を供給する塗布材供給装置を取付け、前記上下方向用スライド装置の位置固定部分に、前記上下面の前記端縁間の端面に前記ガイド棒の前記ばね付勢で圧接する端面ローラを取付けた刷毛式塗布装置が開示されている(特許文献1)。
【0004】
あるいはまた、例えば特開平11−151458公報に、搬送コンベア上の所定位置に停止させた板状体面に薬液を塗布する方法において、板状体の一辺の長さ以上の幅を有する長尺な刷毛を薬液中に浸漬させ、該刷毛を板状体の一端辺と対向辺間を板状体の弯曲面形状に沿って昇降させながら少なくとも1回以上往復動させて、板状体面に均一に薬液を塗布し、開閉シリンダーによって開閉する一対の絞りロール間に開状態で刷毛を下降させて挿入し、刷毛の先端部を薬液槽内に浸漬させ、ついで絞りロールを閉状態で刷毛を上昇させて刷毛に付着した薬液を所望量に絞った後、該刷毛で板状体面に薬液を塗布するようにした薬液の塗布方法および装置が開示されている(特許文献2)。
【0005】
あるいはまた、例えば特開平11−217240公報に、搬送コンベアにより水平姿勢で連続的に搬送されるガラス板面に酸性液を散布処理する方法において、ガラス板の搬送手段の上方位置にシャワー液槽を設け、該液槽の底部に複数個の細孔を互いに等間隔となるよう均一に配列し、供給手段によって供給される酸性液の該液槽内の液面レベルを一定にし、下部細孔から酸性液をガラス板の上部側表面に自然落下させて、ガラス板面上に酸性液を均一に散布させるようにしたことを特徴とするガラス板面の酸処理方法が開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平7−328506号公報
【特許文献2】特開平11−151458号公報
【特許文献3】特開平11−217240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、特許文献1で示されるものは、洗浄剤、プライマ、接着剤等の塗布材を刷毛で塗布させるものであり、刷毛で順次ガラス面全体を塗布するような場合、既に塗布した部分とこれから塗布する部分との境界の重なり部分が段差や、塗布ムラとなり、またガラス板面全体を塗布しようとすると塗布時間も要するため、塗布液が刷毛内で固化して塗布ムラは免れ得ないという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2で示されるものは、湾曲した自動車の窓ガラスの一辺の長さ以上の幅を有する長尺な刷毛を薬液中に浸漬させ、該刷毛を板状体の一端辺と対向辺間を板状体の弯曲面形状に沿って昇降させながら少なくとも1回以上往復動させて、板状体面に均一に薬液を塗布させるようにするため、前記特許文献1の問題点が改良されてはいるものの、自動車の窓ガラスのようなサイズのガラス板に速乾性の薬液を塗布する場合には、ガラス板面全体を塗布しようとすると塗布時間も要するため、ガラス板面全体の塗布が完了しないうちに、既に塗布した部分の塗布液が固化して結晶化し、これから塗布する部分との境界の重なり部分が段差や、塗布ムラは免れ得ないという問題点があった。
【0008】
さらに、特許文献3で示されるような、シャワーにより薬液を散布する方法は、ガラス表面以外への飛散も多くなって薬液のロスと成り、薬液のガラス裏面側への裏周りも発生し易く、特に散布する薬液が速乾性の場合は、薬液が乾燥してくると一部結晶化して膜厚にムラが発生するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記問題点の解決を図る、すなわち簡易な構成にして上面の中央部が凹状に湾曲したガラス板の上面だけに、速乾性の塗布液を、必要最小限の塗布量で塗布ムラもなく均一に、速い速度で塗布することを目的とする。
【0010】
すなわち、本発明は、ガラス板面への塗布液による成膜予備工程として、搬送コンベア上で略水平姿勢で搬送される異形状のガラス板の上面に塗布液を塗布する装置において、搬送手段によって搬送される前記ガラス板の搬送方向の先端を検出する検出手段と、該ガラス板の搬送方向と直交する方向に一定間隔で一列に複数配設した塗布液を噴射する塗布ノズルと、該各塗布ノズルの高さをそれぞれ調節自在とするノズル高さ調整手段と、前記塗布ノズルの位置を移動調節自在とするノズル位置調整手段と、前記ガラス板の先端から後端迄、塗布ノズルを開として塗布液を供給するコントローラとからなることを特徴とする塗布液の塗布装置である。
【0011】
あるいはまた、本発明は、前記塗布装置を成膜室内のガラス板搬入口近傍に配設し、ガラス板を成膜室内へ搬入させるための開閉自在な昇降ドアの室内側に塗布ノズル又は溶媒タンクのいずれかを固定させ、昇降ドアの開時に塗布ノズルの先端部と溶媒タンクとが相対的に上下方向に切離され、昇降ドアが閉時に塗布ノズルの先端が溶媒タンク内に浸漬するようにしたことを特徴とする前述の塗布液の塗布装置である。
【0012】
あるいはまた、本発明は、上述の装置を用いて、ガラス板面への塗布液の成膜予備工程として、略水平姿勢で搬送されるガラス板の上面に塗布液を塗布する方法において、ガラス板を成膜室内に搬入後、ノズル位置調整手段とノズル高さ調整手段によって、ガラス板の搬送方向と直交する幅方向の湾曲面形状に沿って一定間隔で一列に配設した複数の塗布ノズルの各塗布位置がガラス板の先端位置以降、後端位置となる迄塗布ノズルを開にして塗布液を噴射するようにしたことを特徴とする塗布液の塗布方法である。
【0013】
あるいはまた、本発明は、昇降ドアが閉時に各塗布ノズルの先端がそれぞれ溶媒タンク内に浸漬されるようにし、搬入されるガラス板の先端を検出し、成膜室の搬入口の昇降ドアの室内側に塗布ノズル又は溶媒タンクのいずれか一方が固定され、昇降ドアを開とした時に塗布ノズルの先端部と溶媒タンクとが相対的に上下方向に切離され、塗布ノズルと溶媒タンク間を通過するガラス板面上に塗布液を塗布可能としたことを特徴とする上述の塗布液の塗布方法である。
【0014】
あるいはまた、本発明は、塗布ノズルからの塗布液の供給開始のタイミングが、前記昇降ドアの開閉用のガラス板検出用のセンサーによって該ガラス板の先端を検出後、各塗布ノズル毎に塗布開始のタイミングをタイマーで設定し、各塗布ノズルの下部を通過するガラス板の先端辺の該位置が先端辺から所定の長さだけ内側位置から塗布液の塗布を開始することを特徴とする上述の塗布液の塗布方法である。
【0015】
あるいはまた、本発明は、塗布ノズルからの塗布液の供給開始のタイミングが、幅方向に一列に配設した各塗布ノズルの取付位置とほぼ同位置に設けたガラス板検出用のセンサーのそれぞれが、該センサーと対応するガラス板の先端部分を検出後一定時間後にすると同時にガラス板の先端辺の検出後、塗布液の供給を開始することを特徴とする上述の塗布液の塗布方法である。
【0016】
あるいはまた、本発明は、塗布液の供給停止のタイミングが、前記供給開始のタイミング用のセンサーがガラス板を検出した後、各塗布ノズル毎にそれぞれ別々の設定時間でオフとし、各塗布ノズルにより供給された塗布液がガラス板の後端辺の各部で所定の長さだけ内側位置となるように設定することを特徴とする請求項5または6記載の塗布液の塗布方法。
【0017】
あるいはまた、本発明は、前記塗布ノズルの位置がガラス板の後端部の手前の位置で塗布液の供給を停止させるために、塗布ノズルの位置よりも2〜5cm上流位置に塗布停止指令用に用いるガラス検出センサーを設けて、該塗布停止指令用に用いるガラス検出センサーがオフとなった時点で塗布ノズルからの供給を停止させ、ガラス板の後端より2〜5cm内側の供給となるように設定することを特徴とする上述の塗布液の塗布方法である。
【0018】
あるいはまた、本発明は、上述した各塗布方法によって予めガラス板面上に塗布液を点在塗布した後、次工程で不織布のシート材によってガラス板面上で均一な膜厚となるように塗り広げることを特徴とする上述のいずれかに記載の塗布液の塗布方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、簡易な構成にしてフラット形状、または弯曲面形状で異形状のガラス板等の板状体の上部面に、速乾性の塗布液を塗布するにあたり、塗布ムラもなく均一に、塗布液のロスも最小限で塗布することができる。
【0020】
また、溶媒タンクの上部開口部内に蓋部を兼ねた塗布ノズルの先端を塗布液に浸すようにして上部開口部を閉としたので、塗布ノズル内の塗布液が乾燥固化により目詰まりすることはなく、また、溶媒タンク内の溶媒の蒸発乾燥も防止できる。
【0021】
ガラス面上に等間隔な平行線条で塗布液を散布させるので、ガラス板面上の塗布液が乾燥する前に、次工程の多関節のロボットのハンドに取り付けたシート材等によって塗布液を容易に迅速にかつ均一に引き伸ばすことができ、塗布ムラもなく、このような散布方法により必要最小限の塗布液の使用となり、大幅なコストダウンとなる。
【0022】
さらに、前記シート材の取付部材の幅をガラス板の一辺の長さ以上の幅を有する長尺な部材とすれば、塗布速度も速く、つなぎ目もなく、塗布することができ、作業効率、生産効率も良い。
【0023】
また、前記シート材を不織布としたことによって、塗布面にリントや埃等が付着することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1に示すように、水平姿勢のガラス板Gを搬送する搬送手段40と、搬送手段40によって搬送される前記ガラス板Gの搬送方向の先端を検出する検出手段20と、該ガラス板Gの搬送方向と直交する方向に一定間隔で一列に複数配設した塗布液を供給する塗布ノズル2、2、・・と、該各塗布ノズル2、2、・・の高さをそれぞれ調節自在とするノズル高さ調整手段30と、前記塗布ノズル2、2、・・の各位置をそれぞれ幅方向に移動調節自在とするノズル位置調整手段10と、前記ガラス板Gの先端から後端迄、塗布ノズル2、2、・・の供給をオンオフさせる図示しないコントローラとからなる。
【0025】
前記塗布装置1を成膜室50内のガラス板Gの搬入口の近傍に配設し、ガラス板Gを成膜室50内へ搬入させるにあたり、開閉自在な昇降ドア51の室内側に塗布ノズル2、2、・・又は溶媒タンク3のいずれか一方を固定させ、昇降ドア51が開の時に塗布ノズル2、2、・・の先端部と溶媒タンク3とが互いに相対的に上下方向で離れ、昇降ドア51が閉時には常時塗布ノズル2、2、・・の先端が溶媒タンク3内の溶媒液に浸漬するようにして、塗布ノズル2、2、・・の先端部内の塗布液が乾燥によって硬化し、結晶化により塗布ノズル2、2、・・内に目詰まりが発生しないようにした。
【0026】
前記ノズル位置調整手段10は、ガラス板Gの搬送方向と直交する水平方向に設けたノズル取付横レール11上に、前記塗布ノズル2、2、・・をそれぞれ移動調節自在に一列に取り付け、各塗布ノズル2、2、・・の取付位置はノズル取付横レール11に沿って移動調節可能である。
【0027】
前記ノズル高さ調整手段30は、図示しないが、前記ノズル取付横レール11上に固定した取付ブラケットの各塗布ノズル2の取付位置に垂直方向に図示しない縦レールを設け、該縦レール上を昇降自在に塗布ノズル2を設け、各塗布ノズル2の高さをガラス板Gの湾曲面カーブに沿った形状とすることができる。
【0028】
前記塗布ノズル2の高さ調整手段としては、図示しない縦レールに複数個の高さ調整用の穿孔部を一定ピッチで一列に設け、該高さの異なる穿孔部位置に塗布ノズル2を取り付ける、または、複数個の穿孔部に代えて図2に示したような100mm程度の長孔31とし、該長孔31の上端から下端までの範囲内で塗布ノズル2を取り付けて高さを調整することによって塗布ノズルの取り付け高さを調整するようにしても良い。
【0029】
塗布ノズル2の高さを、ガラス板Gの湾曲面形状に沿った高さとするのは、ガラス面から塗布ノズル2までの高さが異なると、成膜室外から成膜室内に搬送されるガラス板Gによって、塗布ノズル近傍の雰囲気に流されてガラス板G面の真下に落下しない場合があり、また、ガラス板G面への落下時の飛散範囲が大きくなり、裏周りや塗布液のロスが発生する恐れがあるためである。
【0030】
前記搬送手段40は、成膜室50内へのガラス板Gの搬入口である昇降ドア51の室外側に搬入コンベア41、昇降ドア51の室内側には搬送コンベア42を設け、該搬送コンベア41は昇降ドア51を挟んで前記搬入コンベア41の下流で連なる位置に搬送コンベア42が設けられ、昇降ドア51が開の時、搬入コンベア41と搬送コンベア42が連結状態となり、昇降ドア51が閉の時は2つのコンベア41、42間は遮断された状態となっている。
【0031】
前記成膜室50は、温度、湿度、塵埃等の空調を一定の管理条件で保たれた箱型の略密閉された部屋であり、ガラス板Gを搬入させる時のみ搬入用の昇降ドア51を開閉させ、ガラス板Gの搬出時も搬入時と同様に図示しない搬出用の昇降ドアの開閉により行う。
【0032】
前記検出手段20は、搬入コンベアの最下流位置近傍に設け、搬入コンベアによって成膜室に搬入されるガラス板Gの最先端部を検出することにより、前記成膜室の昇降ドア51を開閉させ、ガラス板Gを成膜室内に搬送させることができる。
【0033】
ガラス板Gの先端を検出するセンサーは、ガラス板Gの最下流側先端を遮った時にオンとするために、ガラス板Gの搬送面に平行、かつ昇降ドアに平行な水平方向にレーザー光等を一箇所設けると好都合である。尚、ガラス板Gの最先端部が通過する上下位置に近接センサーを調整して設けるようにしても良い。
【0034】
前記昇降ドア51は通常閉状態であり、該閉状態のときは、塗布ノズル2の先端は下方向で、溶媒タンク3内に浸漬され、該溶媒タンクを昇降ドア51の成膜室内側に固定し、塗布ノズル2を支持するノズル位置調整手段10は昇降ドアとは独立分離して、成膜室に固定した場合には、昇降ドアの下降に伴って溶媒タンクが下降し、塗布ノズル2と溶媒タンクは分離状態となる。
【0035】
前記溶媒タンクを昇降ドア51の成膜室内側に固定した場合、昇降ドアが開の状態のとき、固定高さである塗布ノズル2の下端はガラス板Gの上面より上方位置に設定し、昇降ドアに固定された溶媒タンクは、搬送コンベアの最上部面よりも低い位置に設定する必要がある。
【0036】
前記溶媒タンク3は、複数の塗布ノズル2、2、・・毎にそれぞれ独立して設けるようにしても良いが、すべての塗布ノズル2、2、・・を1つの溶媒タンク内に浸漬させるようにするのが好ましい。これは、溶媒タンク内に溶媒を補充するときに、1箇所から注入するだけで、すべての溶媒タンク内に均等に溶媒液を行き渡らせることができるためである。
【0037】
一方、塗布ノズル2を支持するノズル位置調整手段10を昇降ドア51の成膜室内側に固定し、該溶媒タンクを昇降ドアとは独立分離して、成膜室の搬送コンベア面よりも下部位置に固定した場合には、昇降ドアの上昇に伴って塗布ノズルが上昇し、塗布ノズル2と溶媒タンクは分離状態となる。
【0038】
前記ノズル位置調整手段10を昇降ドア51の成膜室内側に固定した場合、昇降ドアが開の状態のとき、塗布ノズル2の下端はガラス板Gの上面より上方位置に設定し、固定高さである溶媒タンクは、搬送コンベアの最上部面よりも低い位置に設定する必要がある。
【0039】
前記コントローラ(図示しない)は、前記ガラス板Gの先端辺から後端辺迄、塗布ノズル2、2、・・の供給をオンオフさせるようにコントロールするとともに、昇降ドアの昇降指令も行うものである。
【0040】
搬入コンベアによってガラス板Gが昇降ドア近傍まで搬送され、ガラス板Gの最先端部がセンサーによって検出されると昇降ドアが開となるが、成膜室の搬入口の昇降ドアの室内側に塗布ノズル又は溶媒タンクのいずれか一方が固定されているので、昇降ドアを開とした時に塗布ノズルの先端部と溶媒タンクとが相対的に上下方向に切離され、塗布ノズルと溶媒タンク間を通過するガラス板G面上への塗布液を塗布可能な待機状態とするが、塗布液の塗布指令はコントローラによって行われる。
【0041】
前記各塗布ノズルによる塗布液の供給開始のタイミングとしては、前記昇降ドアの開閉用として搬入コンベアの最下流位置近傍に設けたガラス板Gの先端検出用のセンサー21を利用し、該ガラス板Gの先端をセンサー21によって検出後、各塗布ノズル毎に塗布開始のタイミングをタイマーT1、・・Tnで設定し、各塗布ノズルの下部を通過するガラス板Gの先端辺の該位置が先端辺から所定の長さだけ内側位置から塗布液の塗布を開始する。
【0042】
すなわち、ガラス板Gの先端を該ガラス板Gの検出センサーによって検出後、各塗布ノズルそれぞれの位置を通過するガラス板Gの搬送方向の先端の形状位置に合わせて、図5に示したように各塗布ノズル2、2、・・それぞれに供給開始のタイマーT1〜Tnを設け、各タイマーT1〜Tnそれぞれにより異形状のガラス板Gの先端辺の形状に合わせて、各塗布ノズルのそれぞれについて別々のタイミングで塗布液の供給を開始する。
【0043】
塗布液の供給を開始するタイミングの別の方法として、幅方向に一列に配設した各塗布ノズルの取付位置とほぼ同位置に設けたガラス板G検出用のセンサーのそれぞれが、該センサーと対応するガラス板Gの先端部分を検出後一定時間後にすると同時にラス板の先端辺の検出後、塗布液の供給を開始するようにしても良い。
【0044】
一方、塗布液の供給を停止させるタイミングとしては、図5に示したように、前記昇降ドア開閉用のセンサー21がガラス板Gを検出した後、各塗布ノズル2、2、・・毎にそれぞれ別々のタイマーT1’〜Tn’により設定時間t1’〜tn’でオフとなるようにすれば良く、各塗布ノズル2、2、・・により供給された塗布液がガラス板Gの後端辺の各部で所定の長さだけ内側位置となるように設定する。
【0045】
また、塗布液6、6、・・の供給を停止させるタイミングの別の方法としては、塗布ノズルの位置がガラス板Gの後端部の手前の位置で塗布液の供給を停止させるために、塗布ノズルの位置よりも3cm程度上流位置に塗布停止指令用に用いる図示しないガラス検出センサーを設けて、該塗布停止指令用に用いるガラス検出センサーがオフとなった時点で塗布ノズルからの供給を停止させれば、ガラス板Gの後端より例えば3cm内側の供給となる。
【0046】
すなわち、塗布ノズルの位置がガラス板Gの後端部の手前の位置で塗布液の供給を停止させるために、塗布ノズルの位置よりも例えば3cm程度上流位置に塗布停止指令用に別のガラス検出センサーを設けて、該塗布停止指令用に用いるガラス検出センサーがオフとなった時点で塗布ノズルからの供給を停止させるようにしても良い。
【0047】
前記コントローラ(図示しない)は、搬送される異形状のガラス板Gの先端部を検出後、先端部より僅かに上流側位置より塗布液の供給を開始するタイミングをコントロールするタイマーT1〜Tnと、後端部の僅かに手前の位置で供給を停止するタイミングをコントロールするタイマーT1’〜Tn’を有する。
【0048】
また、ガラス板Gの品種、形状毎に、各塗布ノズル毎の塗布液の供給開始時間と停止時間をコントローラの上位コンピュータ設定登録しておき、搬送するガラス板Gの品種、形状の変更時に上位コンピュータより下位のコントローラに前記設定時間、および搬送速度等をダウンロードすることにより、所定位置での塗布ノズルの塗布開始、停止のタイミングをコントロール可能である。
【0049】
前記僅かに上流側位置、および後端部より僅かに手前の位置とは、図4に示したように、塗布液を塗布ノズル2から落下したときに、塗布液がガラス板G面上で破線で示した円形状に拡散するため、拡散した塗布液がガラス板Gの端面より垂れ下がらないようにさせるためであり、塗布ノズルの高さ、塗布液の量、ガラス板Gの搬送速度等によって異なるが、塗布液の中心がガラス板Gのエッジから概ね2〜5cm程度あれば良い。
【0050】
前記塗布ノズル2はガラス板Gの搬送方向と直交する幅方向に一定ピッチで複数箇所に設けられ、図4の太い実線で示したような軌跡となるように複数本の塗布ノズル2、2、・・から塗布液6の供給が行われる。ガラス板G面上で複数の平行線となるように塗布された糸状の塗布液6、6、・・は時間の経過とともに幅広に広がりを示し、次工程において、図示しないロボットのハンド、または人手により、図示しない不織布でガラス板Gの上部面側だけとなるように均一な厚みとなるように塗り広げられ、決してガラス板Gの端面や裏面には塗布液が付着しないように塗り広げられる。
【0051】
前記塗布液6は乾燥固化し易い液体であるため、自動車用の窓ガラス板Gのようなサイズのガラス板G面全体に塗布液6を均一に塗り広げる成膜予備工程として、まず本発明の塗布装置1によってガラス板G面全体に滴下塗布させるようにし、ガラス板G面上の該塗布液6が乾燥固化する前に図示しない不織布によって上面に均一に塗り広げるようにする。これによって、塗布液6を塗り広げている途中で塗布液6を追加補充したりする必要もなく、短時間で容易にムラなく塗り広げることができる。
【0052】
このように塗布液6を滴下する成膜予備工程を経た後に、本成膜工程として、前記不織布によって速乾性の塗布液をガラス板面上に均一に塗り広げる。
【0053】
図示しない本成膜工程においては、不織布によって塗布液をガラス板G面に均一に塗り広げるときに、塗布液6が不織布に染み込み、染み込んだ塗布液が不織布内で乾燥固化すると、次回、ガラス板面上の塗布液を塗り広げる時に塗布液がスジ状となる恐れがあるため、2枚目以降のガラス板Gに対しては不都合である。このため、一度使用し、乾燥固化した塗布液の付着した不織布は再利用せず、新しい不織布に取り替えたのち、塗布液を塗り広げるのが好ましい。
【0054】
以上好適な実施例について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の応用が考えられるものである。
【0055】
ガラス板Gは、フラットな板、湾曲板のいずれでも良く、また、自動車用の前後の窓ガラスや側部窓ガラス板Gのような異形状のガラス板Gでも良い。さらに、ガラス板Gは強化ガラス板、半強化ガラス板、生板等の単板、あるいは複数枚の強化ガラス相互、あるいは強化ガラスと生板ガラスを組み合わせてPVBやEVA等の中間膜または樹脂注入で接着した合わせガラス等が対象となる。
【0056】
また、ガラス板Gに限らず樹脂板、木板等の各種のパネル材にも応用できる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明に係わる塗布液の塗布方法および装置を図面に基づき詳細に説明する。
【0058】
図2〜図4に示すように、予めガラス板Gの平面形状に合わせて複数の塗布ノズルのそれぞれの幅方向の位置をノズル位置調整手段10によって調整しておく。
【0059】
また、図2に示すように、予めガラス板Gの幅方向の湾曲面に沿って各塗布ノズルの高さを位置調整する。
【0060】
図1、図2に示したように、ガラス板Gを成膜室5内に順次搬入するために、搬入コンベア41によってガラス板Gを昇降ドア51近傍まで搬送すると、ガラス板G検出センサー21がガラス板Gの最先端部を検出し、成膜室の搬入口の昇降ドア51が下降して開となる。
【0061】
昇降ドア51が下降すると、昇降ドア51の室内側壁面に取り付けられた溶媒タンクも同時に下降するが、溶媒タンク内の溶媒液に浸っていた塗布ノズルは、昇降ドア51ではなく成膜室側に固定されているので、溶媒タンクから切り離される。
【0062】
昇降ドア51が下降し、ガラス板Gが搬入されると、図5に示したように、前記ガラス板検出センサー21がオンのタイミングで各塗布ノズル2、2、・・毎に設定されたタイマーT〜Tを起動させ、各塗布ノズル2、2、・・位置にガラス板Gの先端Gsより設定値である例えば3cm程度内側の位置より塗布開始となるようにタイマーの設定時間t、t、・・tが設定され、ガラス板Gは一定速度で搬送されながら、各塗布ノズルによって塗布液6、6、・・が幾条かの平行な直線状で滴下される。
【0063】
さらに、図5に示したように、ガラス板Gの異形形状に合わせて、前記塗布ノズル毎に該塗布ノズルがガラス板Gの後端部Geの手前位置で該塗布ノズルからの塗布液6の供給を停止させるタイマーT1’〜Tn’を起動させ、各塗布ノズル2、2、・・位置にガラス板Gの後端より例えば3cm程度内側の位置で塗布停止となるようにタイマーの設定時間t’、t’、・・t’が設定され、前記位置で各塗布ノズル2、2、・・毎の塗布液6の供給を停止させる。
【0064】
ガラス板Gの後端が昇降ドア51を通過完了し、かつ塗布ノズル2、2、・・による塗布液6の塗布も停止した時点で、昇降ドア51は上昇し閉となる。
【0065】
このように、ガラス板Gの全上面に塗布液を散布するのではなく、間隔を設けた幾本かの平行な線条でガラス板Gの先端辺Gsの内側から後端辺Geの内側まで散布するようにしたので、塗布液6、6、・・がガラス板Gのエッジ端面や下面に裏回りすることはなく、必要最小限の塗布液の使用で均一な膜を形成することができる。
【0066】
特に、中央部が凹状になった湾曲ガラス板の上面側である凹面部に塗布液を塗布する場合であっても、下面側に塗布液の裏周りを発生させることがない。
【0067】
上部側面に平行線条に塗布液6、6、・・が塗布されたガラス板Gは、塗布液6、6、・・が乾燥固化する前に図示しない次工程のロボットハンドに取り付けた図示しない不織布のシート材によってガラス板Gの上面のみに塗り広げられた後、所定の時間を経てレベリングさせ、膜厚が均一となるようにした。
【0068】
前記塗布液を塗り広げるために使用した不織布のシート材は、乾燥固化した塗布液の付着により次のガラス板G面に使用すると、塗りムラや糸スジ等が発生して、均一な成膜が得られない恐れがあるため、ガラス板G毎に交換するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の塗布装置の側面図。
【図2】本発明の塗布装置の正面図。
【図3】本発明の塗布装置の平面図。
【図4】本発明の塗布方法の説明に使用するガラス板の平面図。
【図5】本発明の塗布方法の説明に使用するガラス板の平面図。
【符号の説明】
【0070】
G ガラス板
Gs 先端辺
Ge 後端辺
1 塗布装置
2 塗布ノズル
3 溶媒タンク
5 成膜室
6 塗布液
10 ノズル位置調整手段
11 ノズル取付横レール
20 検出手段
30 ノズル高さ調整手段
31 長孔
40 搬送手段
41 搬入コンベア
42 搬送コンベア
50 成膜室
51 昇降ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板面への塗布液による成膜予備工程として、搬送コンベア上で略水平姿勢で搬送される異形状のガラス板の上面に塗布液を塗布する装置において、搬送手段によって搬送される前記ガラス板の搬送方向の先端を検出する検出手段と、該ガラス板の搬送方向と直交する方向に一定間隔で一列に複数配設した塗布液を噴射する塗布ノズルと、該各塗布ノズルの高さをそれぞれ調節自在とするノズル高さ調整手段と、前記塗布ノズルの位置を移動調節自在とするノズル位置調整手段と、前記ガラス板の先端から後端迄、塗布ノズルを開として塗布液を供給するコントローラとからなることを特徴とする塗布液の塗布装置。
【請求項2】
前記塗布装置を成膜室内のガラス板搬入口近傍に配設し、ガラス板を成膜室内へ搬入させるための開閉自在な昇降ドアの室内側に塗布ノズル又は溶媒タンクのいずれかを固定させ、昇降ドアの開時に塗布ノズルの先端部と溶媒タンクとが相対的に上下方向に切離され、昇降ドアが閉時に塗布ノズルの先端が溶媒タンク内に浸漬するようにしたことを特徴とする請求項1記載の塗布液の塗布装置。
【請求項3】
前記請求項1または2記載の装置を用いて、ガラス板面への塗布液の成膜予備工程として、略水平姿勢で搬送されるガラス板の上面に塗布液を塗布する方法において、ガラス板を成膜室内に搬入後、ノズル位置調整手段とノズル高さ調整手段によって、ガラス板の搬送方向と直交する幅方向の湾曲面形状に沿って一定間隔で一列に配設した複数の塗布ノズルの各塗布位置がガラス板の先端位置以降、後端位置となる迄塗布ノズルを開にして塗布液を噴射するようにしたことを特徴とする塗布液の塗布方法。
【請求項4】
昇降ドアが閉時に各塗布ノズルの先端がそれぞれ溶媒タンク内に浸漬されるようにし、搬入されるガラス板の先端を検出し、成膜室の搬入口の昇降ドアの室内側に塗布ノズル又は溶媒タンクのいずれか一方が固定され、昇降ドアを開とした時に塗布ノズルの先端部と溶媒タンクとが相対的に上下方向に切離され、塗布ノズルと溶媒タンク間を通過するガラス板面上に塗布液を塗布可能としたことを特徴とする請求項3記載の塗布液の塗布方法。
【請求項5】
塗布ノズルからの塗布液の供給開始のタイミングが、前記昇降ドアの開閉用のガラス板検出用のセンサーによって該ガラス板の先端を検出後、各塗布ノズル毎に塗布開始のタイミングをタイマーで設定し、各塗布ノズルの下部を通過するガラス板の先端辺の該位置が先端辺から所定の長さだけ内側位置から塗布液の塗布を開始することを特徴とする請求項3または4記載の塗布液の塗布方法。
【請求項6】
塗布ノズルからの塗布液の供給開始のタイミングが、幅方向に一列に配設した各塗布ノズルの取付位置とほぼ同位置に設けたガラス板検出用のセンサーのそれぞれが、該センサーと対応するガラス板の先端部分を検出後一定時間後にすると同時にラス板の先端辺の検出後、塗布液の供給を開始することを特徴とする請求項3または4記載の塗布液の塗布方法。
【請求項7】
塗布液の供給停止のタイミングが、前記供給開始のタイミング用のセンサーがガラス板を検出した後、各塗布ノズル毎にそれぞれ別々の設定時間でオフとし、各塗布ノズルにより供給された塗布液がガラス板の後端辺の各部で所定の長さだけ内側位置となるように設定することを特徴とする請求項5または6記載の塗布液の塗布方法。
【請求項8】
前記塗布ノズルの位置がガラス板の後端部の手前の位置で塗布液の供給を停止させるために、塗布ノズルの位置よりも2〜5cm上流位置に塗布停止指令用に用いるガラス検出センサーを設けて、該塗布停止指令用に用いるガラス検出センサーがオフとなった時点で塗布ノズルからの供給を停止させ、ガラス板の後端より2〜5cm内側の供給となるように設定することを特徴とする請求項5または6記載の塗布液の塗布方法。
【請求項9】
前記請求項3乃至8の各塗布方法によって予めガラス板面上に塗布液を点在塗布した後、次工程で不織布のシート材によってガラス板面上で均一な膜厚となるように塗り広げることを特徴とする請求項3乃至8のいずれかに記載の塗布液の塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−183914(P2009−183914A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28826(P2008−28826)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】