塗布装置および塗布制御装置
【課題】間欠的に塗布液を吐出して所定の塗布パターンを形成する塗布装置において、その各パターンの塗布開始点や終了点等の過渡的部分の形状をも精度良く形成する。
【解決手段】塗布装置の制御装置は、塗布領域について設定された目標形状に基づき算出される制御量にてアクチュエータを制御する一方、形状検出部により検出される塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶し、設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域の設定部分を形成するための制御量を補正する。
【解決手段】塗布装置の制御装置は、塗布領域について設定された目標形状に基づき算出される制御量にてアクチュエータを制御する一方、形状検出部により検出される塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶し、設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域の設定部分を形成するための制御量を補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に向けて塗布液を間欠的に吐出することにより所定の塗布パターンを形成する塗布装置、及びその塗布液の塗布流量制御を実行する塗布制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムやガラス等の基材に向けて薬液を間欠的に塗布することにより、その基材表面に所定の塗布パターンを形成する塗布装置が知られている。このような塗布装置においては一般に、基材に薬液を一定の厚さで塗布するためにその吐出流量を調整する塗布流量制御が行われる。その塗布流量制御は、吐出部と基材との距離や薬液の吐出圧力などの塗布条件を調整しつつ行われる。薬剤の塗布厚さの維持は、連続的な塗布領域においてはその塗布条件を一定に保つことで実現できる。しかし、その塗布領域の塗布開始点や終了点の近傍などの過渡的な部分については塗布条件と塗布結果との相関関係が複雑となるため、その塗布条件の設定が試行錯誤的に行われているのが現状である。
【0003】
例えば特許文献1には、一方向に搬送される基材の塗布面に対向配置されるダイを有し、液体貯留槽から供給される塗布液をダイのスリットから吐出して基材に塗布する塗布装置が記載されている。液体貯留槽とダイとの間には、液体貯留槽から送出された塗布液をダイへ供給するための供給用バルブ、液体貯留槽から送出された塗布液が戻り配管を介して液体貯留槽へ戻ることを許容する戻り用バルブが配設され、それぞれ圧空により駆動される。塗布液の塗布形状の調整は、各バルブの開閉タイミングの調整等により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−38276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の塗布装置においては事実上、各バルブの駆動制御がオープンループでなされているため、塗布液の粘度の変化やバルブの摺動抵抗の経年変化などによりバルブの開閉動作が変化し、所望の塗布形状を得るための塗布条件が変化する。このため、その塗布条件設定をその都度試行錯誤的に行うことが要され、時間的およびコスト的なロスが発生するといった問題がある。これに対し、塗布条件の設定を一般的なリアルタイムフィードバック制御によるクローズドループで実現する方法も考えられる。しかし、特に塗布領域の塗布開始点近傍や終了点近傍などの過渡的部分に対するバルブの動作時間は数msecと短いため、フィードバックの応答性が不足する。このため、その過渡的部分の塗布形状についてまで十分な精度を期待することができない。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、間欠的に塗布液を吐出して所定の塗布パターンを形成する塗布装置において、その各パターンの塗布開始点や終了点等の過渡的部分の形状をも精度良く形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の塗布装置は、連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、塗布液を貯留する塗布液供給源と、基材の塗布面に対向配置され、塗布液供給源から供給される塗布液を塗布面に向けて吐出可能な吐出部と、吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるリニアモータと、リニアモータを駆動して塗布液の吐出流量を制御する制御部と、を備える。
【0008】
この態様によると、吐出部から塗布液を吐出させるためのアクチュエータとしてリニアモータが用いられるため、エアアクチュエータやボールねじ装置などの他のアクチュエータと比較して塗布液の吐出制御の線形性を維持しやすく、塗布制御の制御性が向上する。また、そのように線形性が維持されるため、制御量の事後的な調整も容易になるといった利点がある。
【0009】
なお、制御量の事後的な調整については、塗布領域について設定された目標形状と、リニアモータを実際に制御することにより得られた実形状との誤差(偏差)に基づき、リニアモータの制御量が補正されるものでよい。例えば、作業員が塗布領域の実形状を目視するなどしてその目標形状との偏差を特定し、制御部が塗布制御に用いる制御量(制御パラメータ)を調整してもよい。あるいは、吐出部よりも基材の搬送方向下流側に塗布領域の形状を検出する形状検出部を設けてもよい。そして、制御部が、リニアモータを制御する一方、形状検出部により検出される塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶し、その設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域の設定部分を形成するための制御量を補正するようにしてもよい。
【0010】
本発明の別の態様の塗布装置は、連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する。この塗布装置は、塗布液を貯留する塗布液供給源と、基材の塗布面に対向配置され、塗布液供給源から供給される塗布液を塗布面に向けて吐出可能な吐出部と、吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、アクチュエータを駆動して塗布液の吐出流量を制御する制御部と、吐出部よりも基材の搬送方向下流側に配置され、搬送されてきた塗布領域の形状を検出する形状検出部と、を備える。
【0011】
制御部は、塗布領域について設定された目標形状に基づき算出される制御量にてアクチュエータを制御する一方、形状検出部により検出される塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶し、設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域の設定部分を形成するための制御量を補正する。
【0012】
この態様によると、制御部は、塗布領域の設定部分の塗布制御に際し、同じ塗布条件で先に塗布制御が完了した塗布領域の実形状をフィードバックし、目標形状との偏差を減少させるように制御量を補正する。フィードバック制御によるクローズドループで制御量が補正されるため、塗布液の特性変化や部品の経年変化等によってアクチュエータの作動状態が変化していたとしても、その変化に応じた制御量の補正がなされ、適正な塗布制御を実現することができる。また、塗布領域の設定部分についてその実形状をリアルタイムでフィードバックするのではなく、同条件にて先に塗布が完了した同部分の形状をフィードバックする形をとるため、フィードバックの応答遅れの問題がなくなり、塗布制御そのものを安定に継続することができる。
【0013】
本発明の別の態様は塗布制御装置であり、塗布装置をその制御対象とする。制御対象となる塗布装置は、連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する装置であって、基材に対向配置されて塗布液を吐出する吐出部と、吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、吐出部よりも基材の搬送方向下流側に配置され、搬送されてきた塗布領域の形状を検出する形状検出部とを備える。
【0014】
この塗布制御装置は、アクチュエータを駆動して塗布液の吐出流量を制御する制御装置であって、塗布領域について設定される目標形状に基づきアクチュエータの制御量を演算する演算手段と、形状検出部により検出される形状情報を取得し、塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶する記憶手段と、演算された制御量に基づいてアクチュエータに制御指令を出力する実行手段と、を備える。演算手段は、設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域を形成するための制御量を補正する。
【0015】
この態様によると、演算手段は、同じ塗布条件で先に塗布制御が完了した塗布領域の設定部分の実形状の情報を取得し、目標形状との偏差を減少させるように制御量を補正する。フィードバック制御によるクローズドループで制御量を補正するため、塗布液の特性変化や部品の経年変化等によってアクチュエータの作動状態が変化したとしても、その変化に応じた制御量の補正がなされ、塗布装置による適正な塗布制御を実現することができる。また、塗布領域の設定部分についてその実形状をリアルタイムでフィードバックするのではなく、同条件にて先に塗布が完了した同部分の形状をフィードバックする形をとるため、フィードバックの応答遅れの問題がなくなり、塗布装置による塗布制御そのものを安定に継続させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗布装置によれば、塗布パターンの塗布開始点や終了点等の過渡的部分の形状をも精度良く形成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布装置を模式的に示すシステム構成図である。
【図2】仕切弁の概略構成を表す断面図である。
【図3】塗布装置に関する制御ブロック図である。
【図4】塗布制御方法の概要を表す図である。
【図5】塗布制御方法の概要を表す図である。
【図6】塗布制御処理の流れを表すフローチャートである。
【図7】図6のS22のプロファイル補正処理を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る塗布装置を模式的に示すシステム構成図である。
【図9】塗布装置に関する制御ブロック図である。
【図10】塗布制御の補正処理方法の概要を表す図である。
【図11】プロファイル補正処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本実施形態は、本発明の塗布装置を、リチウムイオン電池の製造工程において電極材料からなる塗布液を金属薄膜シート(基材)の表面に塗布する間欠塗布装置として具現化したものである。この間欠塗布装置は、リチウムイオン電池の正極部材または負極部材を形成するものであり、正極を形成する場合には、アルミ箔からなるシートの表面にコバルト酸リチウム酸化コバルトを主体とする溶剤を塗布パターンにて塗布する。負極を形成する場合には、銅箔からなるシートの表面にカーボンを主体とする溶剤を所定の塗布パターンにて塗布する。リチウムイオン電池は、このようにして電極材料が塗布された複数のシートが絶縁シートを介して積層状に巻回されて形成される。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る塗布装置を模式的に示すシステム構成図である。
塗布装置10は、金属薄膜からなる長尺状のシート12を長手方向に搬送する搬送装置14と、塗布液を貯留するタンク16と、タンク16から供給された塗布液をシート12の塗布面に向けて吐出可能なダイ18と、タンク16とダイ18とをつなぐ液通路19に設けられた仕切弁20と、仕切弁20を駆動してダイ18から吐出させる塗布液の流量を制御するコントローラ100とを備える。
【0020】
搬送装置14は、図示しないモータ等により回転駆動される複数の搬送ローラを含む搬送機構を備え、シート12を一方向に連続的に搬送する。図示の例では、搬送されるシート12の塗布位置を背面側から支持するようにメインローラ22が配設されている。その塗布位置においてメインローラ22と対向するようにダイ18が配置されている。ダイ18は、シート12の塗布面に対向配置されるスリットを有する。そのスリットから搬送状態にあるシート12に対して塗布液が間欠的に吐出されることにより、シート12の搬送方向に塗布領域24と非塗布領域26を交互に有する所定の塗布パターンが形成される。本実施形態において、搬送装置14は、シート12を基本的に一定の速度で搬送する。
【0021】
タンク16は、ダイ18よりも所定高さ高位置に設置され、上述した溶剤からなる塗布液を貯留する。タンク16にはそれより上流側にある図示しないメインタンクから塗布液を供給可能となっており、タンク16に貯留される塗布液は、図示しない液面調整装置によってその液面高さが一定に維持される。このため、液通路19における仕切弁20よりも上流側の液圧は常にほぼ一定に維持される。
【0022】
仕切弁20は、リニアアクチュエータにより駆動される電磁弁からなり、液通路19の所定位置の開度を調整することにより、タンク16からダイ18へ供給される塗布液の流量を変化させる。仕切弁20の開度は、コントローラ100にて設定された通電量によって制御される。上述のように上流側の液圧がほぼ一定であるため、ダイ18のスリットから吐出される塗布液の吐出流量は、仕切弁20の開度にほぼ比例する。仕切弁20は、その弁部を駆動するアクチュエータと、その弁部の開度(つまり弁体の変位量)を検出するエンコーダを内蔵している。
【0023】
搬送装置14の搬送路における塗布位置よりも下流側には乾燥機30が設置され、塗布工程を経たシート12の部分が順次送り込まれ、その塗布領域が硬化される。乾燥機30のやや下流側には形状センサ32が配置されている。形状センサ32は、乾燥工程を経た塗布領域24の形状を検出する。このとき検出された形状がコントローラ100にフィードバックされ、後の塗布制御の精度を高めるために用いられる。本実施形態では、形状センサ32として、シート12に塗布された塗布領域24の各部の厚み、つまりシート12の表面に対する塗布領域24の表面の各部の高さを検出するセンサを用いる。例えば、CCDカメラ等の画像検出手段を用いて塗布領域24を撮像して高さを検出する公知のセンサを用いることができる。
【0024】
すなわち、塗布領域24の形状は理想的には一定の高さ(厚み)を有する正確な長方形状であることが望ましいところ、シート12を搬送しながら塗布を行うため、特に塗布領域24の塗布開始点近傍や終了点近傍などの過渡部をエッジ形状とするのは難しい。一般にその過渡部の先端部は肉厚になり、後端部は肉薄になる傾向がある。いずれにしても過渡部が傾斜面となる傾向にあるので、その傾斜角度をできるだけ搬送面に対して90度に近づけることが望ましい。本実施形態では、その過渡部の形状の精度を高める塗布制御を実現するが、その詳細については後述する。
【0025】
コントローラ100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース、バックアップメモリ等を備えるものである。コントローラ100は、仕切弁20へ供給する制御電流を調整してその弁開度を制御する。コントローラ100は、シート12に予め設定された塗布パターンが形成されるよう塗布液の吐出量を制御する。コントローラ100の制御によりダイ18からは塗布液が間欠的に吐出され、その結果、シート12の表面に塗布領域24と非塗布領域26とを交互に有する所定の塗布パターンが形成される。本実施形態では特に、塗布領域24の過渡部の形状が精度良く得られるよう事前に学習処理を実行するが、その詳細については後述する。
【0026】
図2は、仕切弁20の概略構成を表す断面図である。
仕切弁20は、内部に塗布液の流通路が形成された筒状のボディ50を有する。ボディ50は、その中央部に設けられた隔壁52によって弁室54と収容室56とに区画されている。ボディ50の側部中央には、タンク16から弁室54へ塗布液を導入するための導入ポート58が設けられ、収容室56と反対側の端部には、弁室54からダイ18へ塗布液を導出するための導出ポート60が設けられている。弁室54の中間部には、弁室54を弁部の上流側と下流側に区画する隔壁62が設けられている。隔壁62の中央には弁部を構成する弁孔64が設けられている。
【0027】
また、隔壁52の中央を軸線方向に貫通するように作動ロッド68が設けられている。なお、隔壁52と作動ロッド68との間には、塗布液が収容室56に進入することを防止するためのシール部材66が介装されている。作動ロッド68の弁室54側の端部には弁体70が一体に設けられ、収容室56側の端部には可動子72が一体に設けられている。弁体70は、弁孔64に対して導出ポート60側から着脱して弁部を開閉する。すなわち、隔壁62における弁孔64の下流側開口端縁によって弁座63が形成され、弁体70のテーパ面がこれに着脱することにより弁部を開閉する。
【0028】
収容室56には、弁体70を開閉駆動するためのリニアアクチュエータ80が収容されている。リニアアクチュエータ80は、リニアモータからなり、ヨークとして機能する筒状の固定子82と、固定子82の内側に往復動可能に設けられた可動子72と、固定子82の内周部の一対の対向面にそれぞれ固定された一対の永久磁石84,86と、固定子82に固定された一対のコイル88,90とを備えている。永久磁石84,86は、軸線方向の磁極の並びが逆となるよう配設されている。一方、可動子72は、その外径が永久磁石84,86により形成される仮想円の内径よりも若干小さく、永久磁石84,86と対向しつつ同軸をなすように挿入されている。
【0029】
このように構成されたリニアアクチュエータ80においては、永久磁石84によって可動子72を軸線方向の一方に付勢する力を発生し、永久磁石86によって可動子72を軸線方向の他方に付勢する力を発生する。このため、コイル88,90に通電していない状態では、可動子72は相反する方向の力に引っ張られて中立点に停止した状態を保つ。一方、コイル88,90に通電がなされると、そのコイル88,90に流す電流の方向により、永久磁石84,86からそれぞれ発生する磁力とコイル88,90から発生する磁力とが同方向の場合には強めあい、逆方向の場合には弱めあうことで磁束の偏りを作り出し軸線方向の推力を発生する。
【0030】
このリニアアクチュエータ80により発生する推力の向きは各流す電流の方向で決まり、発生する推力の大きさは電流の大きさに比例する。このリニアアクチュエータ80による推力が可動子72および作動ロッド68を介して弁体70に伝達され、弁部の開度が調整される。すなわち、仕切弁20は、コイル88,90に供給される通電状態によってその弁開度が調整される。
【0031】
図3は、塗布装置10に関する制御ブロック図である。
コントローラ100は、その機能として形状誤差演算部102、動作量演算部104、動作誤差演算部106、および制御量演算部108を有し、仕切弁20の動作そのものをフィードバックするループと、塗布形状をフィードバックするループとの2重ループによるフィードバック制御を実行する。
【0032】
すなわち、コントローラ100は、シート12に形成する塗布領域24の目標形状プロファイル[0,1,・・・n]を取得し、動作量演算部104にてその目標形状に応じて仕切弁20の目標動作(つまり弁体70の動作プロファイル)を演算する。ここでいう形状プロファイルは、コントローラ100による制御周期ごとの塗布領域24の厚み(シート12の塗布面からの高さ)を表すデータを意味する。ここでは、塗布領域24の形状プロファイルがその搬送方向にn点の形状データから定義される場合を例示している。また、ここでいう動作プロファイルは、制御周期ごとの弁体70の動作位置を意味する。ここでは、その動作プロファイルがn点の位置データから定義される場合を例示している。
【0033】
コントローラ100は、算出された目標動作プロファイル[0,1,・・・n]に応じて制御量演算部108にて仕切弁20の制御量、つまり仕切弁20への通電制御の制御プロファイル[0,1,・・・n]を演算し、仕切弁20に対して制御指令として出力する。ここでいう制御プロファイルは、コントローラ100による制御周期ごとに仕切弁20へ供給する制御電流を表すデータを意味する。ここでは、制御プロファイルがn点の制御量データから定義される場合を例示している。
【0034】
したがって、仕切弁20への通電制御は、その制御プロファイル[0,1,・・・n]にそって実行され、シート12への塗布が行われる。このような制御過程で、仕切弁20のエンコーダからの出力信号に基づいて仕切弁20の実動作(つまり弁体70の実動作)がサンプリングされる。コントローラ100は、所定のタイミングで動作誤差演算部106にて目標動作プロファイル[0,1,・・・n]と実動作との偏差を演算し、制御量演算部108にてその偏差を減少させるよう制御プロファイル[0,1,・・・n]の補正を実行する。補正後の制御指令値は、概念的には下記式(1)のように表される。G1は補正係数であり、適宜設定される。
【0035】
制御指令[0,1,・・・n]=前回制御指令[0,1,・・・n]+G1・偏差[0,1,・・・n]
=前回制御指令[0,1,・・・n]
+G1(目標動作[0,1,・・・n]−実動作[0,1,・・・n])・・・(1)
また、コントローラ100は、一方で形状センサ32により検出された塗布領域24の実形状をサンプリングしている。コントローラ100は、所定のタイミングで形状誤差演算部102にて目標形状プロファイル[0,1,・・・n]と実形状との偏差を演算し、動作量演算部104にてその偏差を減少させるよう目標動作プロファイル[0,1,・・・n]の補正を実行する。補正後の動作目標は、概念的には下記式(2)のように表される。G2は補正係数であり、適宜設定される。
【0036】
動作目標[0,1,・・・n]=前回動作目標[0,1,・・・n]+G2・偏差[0,1,・・・n]
=前回動作目標[0,1,・・・n]
+G2(目標形状[0,1,・・・n]−実形状[0,1,・・・n])・・・(2)
コントローラ100は、このような仕切弁20の動作量および制御量の補正を、塗布制御の結果が得られる期間を待って実行する。図1に示したように、搬送装置14の搬送路において塗布液の塗布位置から塗布領域24が複数分含まれる距離をあけた下流側位置に形状センサ32が配置されているため、塗布領域24がその塗布位置から形状センサ32の検出位置まで到達するまでに一定期間(本実施形態では30秒)を要する。このため、コントローラ100は、塗布制御(またはそのテスト制御)を開始してからその一定期間以上の所定期間が経過したタイミングで補正処理を開始する。本実施形態では、その所定期間として30秒を設定している。
【0037】
次に、本実施形態における塗布制御方法について具体的に説明する。図4および図5は、塗布制御方法の概要を表す図である。図4には、その上段から塗布領域24の目標形状、仕切弁20の補正前の目標動作、補正前の制御電流、塗布制御で得られた塗布領域24の実際の形状(実形状)、塗布制御における仕切弁20の実際の動作(実動作)、補正後の目標動作、補正後の制御電流が、それぞれ示されている。同図の横軸は時間の経過を表している。図5(a)は図4のA部拡大図を示し、図5(b)は図4のB部拡大図を示している。
【0038】
本実施形態の塗布制御は、逐次リアルタイムフィードバックを行う手法はとらず、塗布装置10を起動させたときにまず、クローズドループによる塗布テスト制御を実行して適正な制御プロファイルを得る。そして、適正な制御プロファイルが得られた後に、その制御プロファイルをオープンループにて繰り返し利用する塗布制御を実行する。
【0039】
すなわち、図4に示すように、塗布装置10を起動させたときにはまず、予め設定された目標形状を取得し、その目標形状を実現するための仕切弁20の目標動作を演算する。図示の例では、塗布領域24が長方形状となる目標形状が設定されている。この目標形状における塗布開始点近傍および終了点近傍の過渡部はエッジ形状、つまり塗布面に対して90度をなす先端面、後端面が設定されている。そして、この目標形状が得られるよう仕切弁20の開弁動作(弁体70の開弁方向への動作)、定常動作(弁体70の動作位置を保持)、および仕切弁20の閉弁動作(弁体70の閉弁方向への動作)が目標動作量として算出され、その動作プロファイルが設定される。そして、算出された動作プロファイルを実現するための制御量として、仕切弁20へ供給する制御電流の通電量および通電タイミングを定義した制御プロファイルが算出され、その制御プロファイルに沿った通電制御が実行される。
【0040】
このように塗布テスト制御を開始してから所定時間が経過すると、その塗布制御により得られた制御結果がフィードバックされる。同図中段には、このとき得られた実形状(実線)が示されている。図示の例では、目標形状(点線)に対し、塗布領域24の塗布開始点近傍の先端部に隆起がみられる一方で、塗布終了点近傍では立ち下がりが遅れる状態が示されている。すなわち、塗布開始点近傍では塗布量が過剰となり、塗布終了点近傍では塗布領域がやや超過している。
【0041】
このような現象が生じるのは以下の理由によると考えられる。すなわち、図2を参照すると、塗布動作が開始されていない状態においては弁体70が弁座63に着座し、仕切弁20は閉弁状態を保持する。この状態から塗布動作が開始されると、仕切弁20の開弁動作の立ち上がり時に弁体70が弁孔64から離間する際、弁体70が弁室54内の塗布液を導出ポート60側に押す状態となる。すなわち、この開弁開始時には弁孔64がほとんど開いていない状態であるため、開弁が完了するまでは弁体70による圧力が塗布液を導出ポート60側に押すように作用する。その結果、塗布開始時には弁体70の圧力が作用して立ち上がりのオーバーシュートのような隆起が生じると考えられる。
【0042】
本実施形態ではこのような場合、仕切弁20の目標動作量と実動作量の偏差に基づいて目標動作量を補正するとともに、それに応じて目標制御量を補正する。すなわち、例えば図5(a)に示すように目標動作(白点)と実動作(黒点)との間に偏差が生じた場合、制御周期ごとの目標動作の偏差を打ち消すように制御量を補正する。また、塗布領域24の目標形状と実形状との偏差を打ち消すように制御量を補正する。
【0043】
すなわち、図5(b)に示すように、前回の制御指令値(白点)に対して動作量の偏差を打ち消すための制御電流(黒点)を制御周期ごと(黒点のプロット間隔ごと)に演算し、その結果得られた制御プロファイルに基づいてそれ以降の制御を実行する。このような補正処理を、塗布領域24の目標形状と実形状との偏差が予め設定した許容範囲に収まるまで継続する。本実施形態では、塗布領域の目標形状としてその塗布高さがシート12の搬送方向に実質的に一定となるよう仕切弁20の制御量を演算する一方、塗布領域24の先頭部分の端面とシート12の塗布面とのなす角、および塗布領域24の末尾部分の端面とシート12の塗布面とのなす角がいずれも60°〜90°の範囲に収まることを許容範囲として設定している。
【0044】
すなわち、仕切弁20の動作についての補正と、それによる塗布領域24の形状についての補正を2重ループにて実行し、それぞれが予め設定した許容範囲に収束するまで制御プロファイルの更新を繰り返す。そして、両者が許容範囲に収束した時点でその制御プロファイルを実制御プロファイルとして記憶し、それ以降に塗布装置10が停止されるまで塗布制御に用いる。
【0045】
図6は、塗布制御処理の流れを表すフローチャートである。この処理は、塗布装置10が起動されて以降、停止されるまで所定の周期でコントローラ100により繰り返し実行される。
【0046】
コントローラ100は、塗布装置10の起動直後で塗布制御が開始されおらず(S10のN)、後述する補正完了フラグがオフであり(S12のN)、また後述のプロファイル補正処理も開始されていなければ(S14のN)、予め設定された目標形状を取得する(S16)。そして、その目標形状から理論的に演算されるデフォルトの制御プロファイルを設定し(S18)、塗布制御テストを開始する(S20)。続いて、後述するプロファイル補正処理を実行する(S22)。一方、既に補正処理が開始されていれば(S14のY)、S16からS20の処理をスキップする。
【0047】
一方、コントローラ100は、補正完了フラグがオンであれば(S12のY)、その補正完了フラグをオフにしたうえで(S24)、プロファイル補正処理にて得られた実制御プロファイルを設定し(S26)、塗布制御のテスト制御を終了して本処理を開始する(S28)。塗布制御が開始済であれば(S10のY)、予め定める塗布制御終了条件が成立していれば(S30のY)、塗布制御を終了する(S32)。塗布制御終了条件については、例えば塗布装置10に終了指示を表すコマンドが入力されたことをその条件としてもよい。コントローラ100は、同条件が成立すると、例えば塗布制御終了を示す表示画面を表示させるなどの終了処理を実行する。塗布制御終了条件が成立していなけば(S30のN)、S32の処理をスキップして本処理を一旦終了する。
【0048】
図7は、図6のS22のプロファイル補正処理を示すフローチャートである。
このプロファイル補正処理において、コントローラ100は、制御プロファイルが設定または更新されてから上述した設定時間(例えば30秒)を経過すると(S40のY)、塗布領域24の形状情報を取得する(S42)。すなわち、形状センサ32から入力される実形状の形状データが逐次サンプリングされており、その形状データに基づく形状情報を取得する。そして、そのとき設定されている目標形状と実形状との偏差を演算する(S44)。このとき、その偏差が予め設定された偏差許容範囲になければ(S42のN)、RAM上の所定領域に設定された形状許容フラグをオフにするとともに(S44)、仕切弁20の目標動作を表す動作プロファイルを演算して更新する(S46)。一方、偏差が偏差許容範囲にあれば(S42のY)、形状許容フラグをオンにする(S48)。
【0049】
続いて、コントローラ100は、仕切弁20の動作情報を取得する(S50)。すなわち、仕切弁20に設けられたエンコーダから入力される実動作の動作データが逐次サンプリングされており、その動作データに基づく動作情報を取得する。そして、そのとき設定されている目標動作と実動作との偏差を演算する(S52)。このとき、その偏差が予め設定された偏差許容範囲になければ(S54のN)、仕切弁20へ出力する制御指令を表す制御プロファイルを演算して更新する(S56)。一方、偏差が偏差許容範囲にあれば(S54のY)、形状許容フラグがオンであれば(S58のY)、そのとき設定されている制御プロファイルを実制御プロファイルとして記憶する(S60)。そして、プロファイル補正処理の終了を示すためにRAM上の所定領域に設定された補正完了フラグをオンにする(S62)。この補正完了フラグは、既に述べた図6のS12の判定処理に用いられる。形状許容フラグがオンでなければ(S58のN)、S60およびS62の処理をスキップする。制御プロファイルが設定または更新されてから設定時間を経過していなければ(S40のN)、S42からS56の処理をスキップして本処理を一旦終了する。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態の塗布装置10においては、間欠塗布により一定の塗布パターンを実現する塗布制御の開始に際し、事前に塗布制御テストを実行して適正な制御プロファイルを設定する。すなわち、過渡的な部分を有する塗布領域の塗布制御に際し、同じ塗布条件で先に塗布制御が完了した塗布領域の実形状をフィードバックし、目標形状との偏差を減少させるように制御電流の制御プロファイルを補正する。すなわち、フィードバック制御によるクローズドループで制御量が補正されるため、塗布液の特性変化や部品の経年変化等によって仕切弁20の作動状態が変化していたとしても、その変化に応じた制御量の補正がなされ、適正な塗布制御を実現することができる。また、塗布領域の実形状をリアルタイムでフィードバックするのではなく、塗布位置から塗布領域が複数分含まれる位置にて形状検出を行い、同条件にて先に塗布が完了した同部分の形状をフィードバックする形をとるため、フィードバックの応答遅れの問題がなくなり、塗布制御そのものを安定に継続することができる。
【0051】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。この実施形態はあくまで例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
上記実施形態では、塗布領域24の全域にわたって目標形状を予め設定し、これを実現するための制御プロファイルを作成する例を示した。変形例においては、塗布領域24の過渡部など特定部分に限定して制御プロファイルを作成してもよい。そして、その特定部分の形状のみをフィードバックして補正処理を行うようにしてもよい。
【0053】
上記実施形態では、塗布形状および仕切弁20の動作を2重ループにてフィードバックさせる塗布制御を、リチウムイオン電池の製造工程において用いられる間欠塗布装置に適用した例を示したが、対象製品やそのアクチュエータの種類が例示のものに限られないことはもちろんである。すなわち、所定のアクチュエータを駆動して所定の塗布液を塗布することにより塗布パターンを形成する装置であれば適用することができる。例えば、インクジェットプリンタなどにおいて、その塗布液であるインクの塗布装置として構成することも可能である。
【0054】
あるいは、アクチュエータの作動応答性についての考慮が不要である場合などには、塗布形状のみをフィードバックさせる構成としてもよい。逆に、塗布形状のフィードバックの応答性が十分に確保される一方、アクチュエータの劣化対応を主目的とする場合には、塗布形状のフィードバックを省略してアクチュエータの動作のみをフィードバックさせるようにしてもよい。また、そのようにアクチュエータの動作のみをフィードバックさせる場合、制御対象としての装置は塗布装置に限られず、所定の動作を行うアクチュエータの駆動装置に適用することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、リアルタイムフィードバックではなく、反復される制御について、その結果が得られる所定期間後の制御結果をフィードバックする制御方式を採用するが、一定の反復的なパターンで動作する制御対象については同制御方式を適用することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では特に述べなかったが、図1に示したメインローラ22にロータリエンコーダを設けるとともに、コントローラ100により搬送装置14の搬送速度を制御できるようにしてもよい。すなわち、コントローラ100が、そのロータリエンコーダから出力されるパルス信号に基づいてシート12の搬送速度を取得し、制御状態に応じて各搬送ローラの回転速度、つまりシート12の搬送速度を変化させられるようにしてもよい。その場合、搬送ローラを駆動するアクチュエータについて、上述した制御プロファイルの補正処理を適用するようにしてもよい。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る塗布装置は、塗布制御に関する補正処理方法が異なる以外は第1実施形態とほぼ同様である。このため、第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。図8は、第2実施形態に係る塗布装置を模式的に示すシステム構成図である。図9は、塗布装置に関する制御ブロック図である。図10は、塗布制御の補正処理方法の概要を表す図である。図11は、プロファイル補正処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
図8に示すように、本実施形態の塗布装置210は、第1実施形態の塗布装置10と概ね同様の構成を有するが、塗布制御における制御パラメータの補正処理を作業員による外部入力に基づいて実行する点で異なっている。コントローラ100には、少なくともプロファイル補正処理の実行時に入力装置232が接続される。本実施形態の入力装置232はパーソナルコンピュータからなり、補正処理か開始されると、そのディスプレイに塗布領域24の目標形状と実形状との誤差(偏差)を入力するための入力画面が表示される。具体的には、塗布領域24について搬送方向に分割された複数箇所の位置のそれぞれについて、調整値としての誤差(偏差)を手動で入力可能な入力画面が表示される。
【0059】
すなわち、図9にも示すように、本実施形態では塗布制御の補正処理に際し、作業員がシート12に塗布領域24の形状を目視し、必要に応じて目標形状との誤差(偏差)を入力装置232を介して入力する。すなわち、作業員は、補正処理が実行されると、例えば乾燥工程を経た塗布領域24の形状を目視し、目標形状とのずれを把握する。そして、塗布量の調整が必要な位置の形状誤差(調整量)を入力する。入力装置232は、このとき入力された誤差を逐次記憶して形状偏差[0,1,・・・n]を演算し、その誤差を塗布領域24の搬送方向の位置に対応づける形でコントローラ100に入力する。コントローラ100は、入力された形状偏差[0,1,・・・n]に基づき仕切弁20の目標動作プロファイル[0,1,・・・n]を補正し、その補正後の目標動作プロファイルに応じた制御プロファイル[0,1,・・・n]の補正を実行する。
【0060】
すなわち、図10に示すように、目標動作と実動作との偏差Δx(Δx1,Δx2,Δx3,Δx4,・・・)を演算し、その偏差Δxをゼロに近づけるための制御電流の補正値ΔI(ΔI1,ΔI2,ΔI3,ΔI4,・・・)を演算し、制御電流の指令値となる制御プロファイル[0,1,・・・n]を補正して更新する。
【0061】
これは以下の考え方による。すなわち、本実施形態における仕切弁20のアクチュエータもリニアモータであるため(図2参照)、塗布制御において高精度な線形性が得られる。ここで、仕切弁20の可動部(弁体70,作動ロッド68,可動子72)の弁部の開閉方向の推力をF、その可動部の開閉方向の加速度をa1、その可動部の開閉方向の変位をxとすると下記式(3)の関係がある。
F=a1・x ・・・(3)
【0062】
一方、その推力Fはリニアアクチュエータ80(リニアモータ)に供給する制御電流Iに比例するため、下記式(4)の関係がある。a2は比例係数である。
F=a2・I ・・・(4)
【0063】
このため、上記式(3)と上記式(4)との関係を簡易的に用いることにより、偏差Δxから制御電流の補正値ΔIを簡単に求めることができる。このとき、制御電流Iは、下記式(5)により求めることができる。
I=I(補正前)+ΔI ・・・(5)
【0064】
また、より詳細には、仕切弁20の可動部の質量をM、塗布液の粘性係数をD、可動部に開閉方向の付勢力が作用する場合のばね定数をKとすると下記式(6)の関係がある。
【数1】
このため、上記式(6)の2階線形微分方程式として制御系の伝達関数を演算し、可動部の速度および加速度を考慮したより高精度な補正をすることも可能である。
【0065】
図11は、プロファイル補正処理を示すフローチャートである。
本実施形態のプロファイル補正処理においては、コントローラ100は、補正処理が開始され(S210のY)、入力装置232を介した形状誤差Δx(調整量)が入力されると(S212のY)、図10(a)に示した時間単位の形状偏差Δxを記憶し(S214)、図10(b)に示した時間単位の制御量(制御電流値)の偏差ΔIを演算する(S216)。そして、制御電流の指令値となる制御プロファイル[0,1,・・・n]を補正して更新する(S218)。
【0066】
このとき、補正完了を示す入力があった場合には(S220のY)、予め定める補正終了処理を実行する(S222)。すなわち、作業員は、その目視により塗布領域24の実形状が目標形状に収束したと判断すると、補正処理を指示するための終了コマンドを入力する。コントローラ100は、その終了コマンドを受けて補正処理を終了し、塗布装置210の駆動を停止させる。
【0067】
なお、補正完了を示す入力がなかった場合には(S220のN)、S222の処理がスキップされ、S212からS218の処理が繰り返されることになる。また、形状誤差が入力されない場合(S212のN)、S214以降の処理をスキップする。補正処理の開始指示がなければ(S210のN)、本処理を一旦終了する。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態の塗布装置210においても、仕切弁20のアクチュエータとしてリニアモータが用いられるため、塗布液の吐出制御の線形性を良好に維持することができ、塗布制御の制御性が向上する。また、その線形性を利用することで、上述のように制御量の補正処理を容易に行うことができる。
【0069】
なお、本実施形態においては、入力装置232を設けることにより形状誤差Δx(調整量)を作業員が手動で入力する例を示したが、第1実施形態のように形状センサ32による検出値を用いることにより自動的に補正処理を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 塗布装置、 12 シート、 14 搬送装置、 16 タンク、 18 ダイ、 20 仕切弁、 24 塗布領域、 26 非塗布領域、 32 形状センサ、 100 コントローラ、 102 形状誤差演算部、 104 動作量演算部、 106 動作誤差演算部、 108 制御量演算部、 210 塗布装置、 232 入力装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に向けて塗布液を間欠的に吐出することにより所定の塗布パターンを形成する塗布装置、及びその塗布液の塗布流量制御を実行する塗布制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムやガラス等の基材に向けて薬液を間欠的に塗布することにより、その基材表面に所定の塗布パターンを形成する塗布装置が知られている。このような塗布装置においては一般に、基材に薬液を一定の厚さで塗布するためにその吐出流量を調整する塗布流量制御が行われる。その塗布流量制御は、吐出部と基材との距離や薬液の吐出圧力などの塗布条件を調整しつつ行われる。薬剤の塗布厚さの維持は、連続的な塗布領域においてはその塗布条件を一定に保つことで実現できる。しかし、その塗布領域の塗布開始点や終了点の近傍などの過渡的な部分については塗布条件と塗布結果との相関関係が複雑となるため、その塗布条件の設定が試行錯誤的に行われているのが現状である。
【0003】
例えば特許文献1には、一方向に搬送される基材の塗布面に対向配置されるダイを有し、液体貯留槽から供給される塗布液をダイのスリットから吐出して基材に塗布する塗布装置が記載されている。液体貯留槽とダイとの間には、液体貯留槽から送出された塗布液をダイへ供給するための供給用バルブ、液体貯留槽から送出された塗布液が戻り配管を介して液体貯留槽へ戻ることを許容する戻り用バルブが配設され、それぞれ圧空により駆動される。塗布液の塗布形状の調整は、各バルブの開閉タイミングの調整等により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−38276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の塗布装置においては事実上、各バルブの駆動制御がオープンループでなされているため、塗布液の粘度の変化やバルブの摺動抵抗の経年変化などによりバルブの開閉動作が変化し、所望の塗布形状を得るための塗布条件が変化する。このため、その塗布条件設定をその都度試行錯誤的に行うことが要され、時間的およびコスト的なロスが発生するといった問題がある。これに対し、塗布条件の設定を一般的なリアルタイムフィードバック制御によるクローズドループで実現する方法も考えられる。しかし、特に塗布領域の塗布開始点近傍や終了点近傍などの過渡的部分に対するバルブの動作時間は数msecと短いため、フィードバックの応答性が不足する。このため、その過渡的部分の塗布形状についてまで十分な精度を期待することができない。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、間欠的に塗布液を吐出して所定の塗布パターンを形成する塗布装置において、その各パターンの塗布開始点や終了点等の過渡的部分の形状をも精度良く形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の塗布装置は、連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、塗布液を貯留する塗布液供給源と、基材の塗布面に対向配置され、塗布液供給源から供給される塗布液を塗布面に向けて吐出可能な吐出部と、吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるリニアモータと、リニアモータを駆動して塗布液の吐出流量を制御する制御部と、を備える。
【0008】
この態様によると、吐出部から塗布液を吐出させるためのアクチュエータとしてリニアモータが用いられるため、エアアクチュエータやボールねじ装置などの他のアクチュエータと比較して塗布液の吐出制御の線形性を維持しやすく、塗布制御の制御性が向上する。また、そのように線形性が維持されるため、制御量の事後的な調整も容易になるといった利点がある。
【0009】
なお、制御量の事後的な調整については、塗布領域について設定された目標形状と、リニアモータを実際に制御することにより得られた実形状との誤差(偏差)に基づき、リニアモータの制御量が補正されるものでよい。例えば、作業員が塗布領域の実形状を目視するなどしてその目標形状との偏差を特定し、制御部が塗布制御に用いる制御量(制御パラメータ)を調整してもよい。あるいは、吐出部よりも基材の搬送方向下流側に塗布領域の形状を検出する形状検出部を設けてもよい。そして、制御部が、リニアモータを制御する一方、形状検出部により検出される塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶し、その設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域の設定部分を形成するための制御量を補正するようにしてもよい。
【0010】
本発明の別の態様の塗布装置は、連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する。この塗布装置は、塗布液を貯留する塗布液供給源と、基材の塗布面に対向配置され、塗布液供給源から供給される塗布液を塗布面に向けて吐出可能な吐出部と、吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、アクチュエータを駆動して塗布液の吐出流量を制御する制御部と、吐出部よりも基材の搬送方向下流側に配置され、搬送されてきた塗布領域の形状を検出する形状検出部と、を備える。
【0011】
制御部は、塗布領域について設定された目標形状に基づき算出される制御量にてアクチュエータを制御する一方、形状検出部により検出される塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶し、設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域の設定部分を形成するための制御量を補正する。
【0012】
この態様によると、制御部は、塗布領域の設定部分の塗布制御に際し、同じ塗布条件で先に塗布制御が完了した塗布領域の実形状をフィードバックし、目標形状との偏差を減少させるように制御量を補正する。フィードバック制御によるクローズドループで制御量が補正されるため、塗布液の特性変化や部品の経年変化等によってアクチュエータの作動状態が変化していたとしても、その変化に応じた制御量の補正がなされ、適正な塗布制御を実現することができる。また、塗布領域の設定部分についてその実形状をリアルタイムでフィードバックするのではなく、同条件にて先に塗布が完了した同部分の形状をフィードバックする形をとるため、フィードバックの応答遅れの問題がなくなり、塗布制御そのものを安定に継続することができる。
【0013】
本発明の別の態様は塗布制御装置であり、塗布装置をその制御対象とする。制御対象となる塗布装置は、連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する装置であって、基材に対向配置されて塗布液を吐出する吐出部と、吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、吐出部よりも基材の搬送方向下流側に配置され、搬送されてきた塗布領域の形状を検出する形状検出部とを備える。
【0014】
この塗布制御装置は、アクチュエータを駆動して塗布液の吐出流量を制御する制御装置であって、塗布領域について設定される目標形状に基づきアクチュエータの制御量を演算する演算手段と、形状検出部により検出される形状情報を取得し、塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶する記憶手段と、演算された制御量に基づいてアクチュエータに制御指令を出力する実行手段と、を備える。演算手段は、設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域を形成するための制御量を補正する。
【0015】
この態様によると、演算手段は、同じ塗布条件で先に塗布制御が完了した塗布領域の設定部分の実形状の情報を取得し、目標形状との偏差を減少させるように制御量を補正する。フィードバック制御によるクローズドループで制御量を補正するため、塗布液の特性変化や部品の経年変化等によってアクチュエータの作動状態が変化したとしても、その変化に応じた制御量の補正がなされ、塗布装置による適正な塗布制御を実現することができる。また、塗布領域の設定部分についてその実形状をリアルタイムでフィードバックするのではなく、同条件にて先に塗布が完了した同部分の形状をフィードバックする形をとるため、フィードバックの応答遅れの問題がなくなり、塗布装置による塗布制御そのものを安定に継続させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の塗布装置によれば、塗布パターンの塗布開始点や終了点等の過渡的部分の形状をも精度良く形成することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る塗布装置を模式的に示すシステム構成図である。
【図2】仕切弁の概略構成を表す断面図である。
【図3】塗布装置に関する制御ブロック図である。
【図4】塗布制御方法の概要を表す図である。
【図5】塗布制御方法の概要を表す図である。
【図6】塗布制御処理の流れを表すフローチャートである。
【図7】図6のS22のプロファイル補正処理を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る塗布装置を模式的に示すシステム構成図である。
【図9】塗布装置に関する制御ブロック図である。
【図10】塗布制御の補正処理方法の概要を表す図である。
【図11】プロファイル補正処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本実施形態は、本発明の塗布装置を、リチウムイオン電池の製造工程において電極材料からなる塗布液を金属薄膜シート(基材)の表面に塗布する間欠塗布装置として具現化したものである。この間欠塗布装置は、リチウムイオン電池の正極部材または負極部材を形成するものであり、正極を形成する場合には、アルミ箔からなるシートの表面にコバルト酸リチウム酸化コバルトを主体とする溶剤を塗布パターンにて塗布する。負極を形成する場合には、銅箔からなるシートの表面にカーボンを主体とする溶剤を所定の塗布パターンにて塗布する。リチウムイオン電池は、このようにして電極材料が塗布された複数のシートが絶縁シートを介して積層状に巻回されて形成される。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る塗布装置を模式的に示すシステム構成図である。
塗布装置10は、金属薄膜からなる長尺状のシート12を長手方向に搬送する搬送装置14と、塗布液を貯留するタンク16と、タンク16から供給された塗布液をシート12の塗布面に向けて吐出可能なダイ18と、タンク16とダイ18とをつなぐ液通路19に設けられた仕切弁20と、仕切弁20を駆動してダイ18から吐出させる塗布液の流量を制御するコントローラ100とを備える。
【0020】
搬送装置14は、図示しないモータ等により回転駆動される複数の搬送ローラを含む搬送機構を備え、シート12を一方向に連続的に搬送する。図示の例では、搬送されるシート12の塗布位置を背面側から支持するようにメインローラ22が配設されている。その塗布位置においてメインローラ22と対向するようにダイ18が配置されている。ダイ18は、シート12の塗布面に対向配置されるスリットを有する。そのスリットから搬送状態にあるシート12に対して塗布液が間欠的に吐出されることにより、シート12の搬送方向に塗布領域24と非塗布領域26を交互に有する所定の塗布パターンが形成される。本実施形態において、搬送装置14は、シート12を基本的に一定の速度で搬送する。
【0021】
タンク16は、ダイ18よりも所定高さ高位置に設置され、上述した溶剤からなる塗布液を貯留する。タンク16にはそれより上流側にある図示しないメインタンクから塗布液を供給可能となっており、タンク16に貯留される塗布液は、図示しない液面調整装置によってその液面高さが一定に維持される。このため、液通路19における仕切弁20よりも上流側の液圧は常にほぼ一定に維持される。
【0022】
仕切弁20は、リニアアクチュエータにより駆動される電磁弁からなり、液通路19の所定位置の開度を調整することにより、タンク16からダイ18へ供給される塗布液の流量を変化させる。仕切弁20の開度は、コントローラ100にて設定された通電量によって制御される。上述のように上流側の液圧がほぼ一定であるため、ダイ18のスリットから吐出される塗布液の吐出流量は、仕切弁20の開度にほぼ比例する。仕切弁20は、その弁部を駆動するアクチュエータと、その弁部の開度(つまり弁体の変位量)を検出するエンコーダを内蔵している。
【0023】
搬送装置14の搬送路における塗布位置よりも下流側には乾燥機30が設置され、塗布工程を経たシート12の部分が順次送り込まれ、その塗布領域が硬化される。乾燥機30のやや下流側には形状センサ32が配置されている。形状センサ32は、乾燥工程を経た塗布領域24の形状を検出する。このとき検出された形状がコントローラ100にフィードバックされ、後の塗布制御の精度を高めるために用いられる。本実施形態では、形状センサ32として、シート12に塗布された塗布領域24の各部の厚み、つまりシート12の表面に対する塗布領域24の表面の各部の高さを検出するセンサを用いる。例えば、CCDカメラ等の画像検出手段を用いて塗布領域24を撮像して高さを検出する公知のセンサを用いることができる。
【0024】
すなわち、塗布領域24の形状は理想的には一定の高さ(厚み)を有する正確な長方形状であることが望ましいところ、シート12を搬送しながら塗布を行うため、特に塗布領域24の塗布開始点近傍や終了点近傍などの過渡部をエッジ形状とするのは難しい。一般にその過渡部の先端部は肉厚になり、後端部は肉薄になる傾向がある。いずれにしても過渡部が傾斜面となる傾向にあるので、その傾斜角度をできるだけ搬送面に対して90度に近づけることが望ましい。本実施形態では、その過渡部の形状の精度を高める塗布制御を実現するが、その詳細については後述する。
【0025】
コントローラ100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース、バックアップメモリ等を備えるものである。コントローラ100は、仕切弁20へ供給する制御電流を調整してその弁開度を制御する。コントローラ100は、シート12に予め設定された塗布パターンが形成されるよう塗布液の吐出量を制御する。コントローラ100の制御によりダイ18からは塗布液が間欠的に吐出され、その結果、シート12の表面に塗布領域24と非塗布領域26とを交互に有する所定の塗布パターンが形成される。本実施形態では特に、塗布領域24の過渡部の形状が精度良く得られるよう事前に学習処理を実行するが、その詳細については後述する。
【0026】
図2は、仕切弁20の概略構成を表す断面図である。
仕切弁20は、内部に塗布液の流通路が形成された筒状のボディ50を有する。ボディ50は、その中央部に設けられた隔壁52によって弁室54と収容室56とに区画されている。ボディ50の側部中央には、タンク16から弁室54へ塗布液を導入するための導入ポート58が設けられ、収容室56と反対側の端部には、弁室54からダイ18へ塗布液を導出するための導出ポート60が設けられている。弁室54の中間部には、弁室54を弁部の上流側と下流側に区画する隔壁62が設けられている。隔壁62の中央には弁部を構成する弁孔64が設けられている。
【0027】
また、隔壁52の中央を軸線方向に貫通するように作動ロッド68が設けられている。なお、隔壁52と作動ロッド68との間には、塗布液が収容室56に進入することを防止するためのシール部材66が介装されている。作動ロッド68の弁室54側の端部には弁体70が一体に設けられ、収容室56側の端部には可動子72が一体に設けられている。弁体70は、弁孔64に対して導出ポート60側から着脱して弁部を開閉する。すなわち、隔壁62における弁孔64の下流側開口端縁によって弁座63が形成され、弁体70のテーパ面がこれに着脱することにより弁部を開閉する。
【0028】
収容室56には、弁体70を開閉駆動するためのリニアアクチュエータ80が収容されている。リニアアクチュエータ80は、リニアモータからなり、ヨークとして機能する筒状の固定子82と、固定子82の内側に往復動可能に設けられた可動子72と、固定子82の内周部の一対の対向面にそれぞれ固定された一対の永久磁石84,86と、固定子82に固定された一対のコイル88,90とを備えている。永久磁石84,86は、軸線方向の磁極の並びが逆となるよう配設されている。一方、可動子72は、その外径が永久磁石84,86により形成される仮想円の内径よりも若干小さく、永久磁石84,86と対向しつつ同軸をなすように挿入されている。
【0029】
このように構成されたリニアアクチュエータ80においては、永久磁石84によって可動子72を軸線方向の一方に付勢する力を発生し、永久磁石86によって可動子72を軸線方向の他方に付勢する力を発生する。このため、コイル88,90に通電していない状態では、可動子72は相反する方向の力に引っ張られて中立点に停止した状態を保つ。一方、コイル88,90に通電がなされると、そのコイル88,90に流す電流の方向により、永久磁石84,86からそれぞれ発生する磁力とコイル88,90から発生する磁力とが同方向の場合には強めあい、逆方向の場合には弱めあうことで磁束の偏りを作り出し軸線方向の推力を発生する。
【0030】
このリニアアクチュエータ80により発生する推力の向きは各流す電流の方向で決まり、発生する推力の大きさは電流の大きさに比例する。このリニアアクチュエータ80による推力が可動子72および作動ロッド68を介して弁体70に伝達され、弁部の開度が調整される。すなわち、仕切弁20は、コイル88,90に供給される通電状態によってその弁開度が調整される。
【0031】
図3は、塗布装置10に関する制御ブロック図である。
コントローラ100は、その機能として形状誤差演算部102、動作量演算部104、動作誤差演算部106、および制御量演算部108を有し、仕切弁20の動作そのものをフィードバックするループと、塗布形状をフィードバックするループとの2重ループによるフィードバック制御を実行する。
【0032】
すなわち、コントローラ100は、シート12に形成する塗布領域24の目標形状プロファイル[0,1,・・・n]を取得し、動作量演算部104にてその目標形状に応じて仕切弁20の目標動作(つまり弁体70の動作プロファイル)を演算する。ここでいう形状プロファイルは、コントローラ100による制御周期ごとの塗布領域24の厚み(シート12の塗布面からの高さ)を表すデータを意味する。ここでは、塗布領域24の形状プロファイルがその搬送方向にn点の形状データから定義される場合を例示している。また、ここでいう動作プロファイルは、制御周期ごとの弁体70の動作位置を意味する。ここでは、その動作プロファイルがn点の位置データから定義される場合を例示している。
【0033】
コントローラ100は、算出された目標動作プロファイル[0,1,・・・n]に応じて制御量演算部108にて仕切弁20の制御量、つまり仕切弁20への通電制御の制御プロファイル[0,1,・・・n]を演算し、仕切弁20に対して制御指令として出力する。ここでいう制御プロファイルは、コントローラ100による制御周期ごとに仕切弁20へ供給する制御電流を表すデータを意味する。ここでは、制御プロファイルがn点の制御量データから定義される場合を例示している。
【0034】
したがって、仕切弁20への通電制御は、その制御プロファイル[0,1,・・・n]にそって実行され、シート12への塗布が行われる。このような制御過程で、仕切弁20のエンコーダからの出力信号に基づいて仕切弁20の実動作(つまり弁体70の実動作)がサンプリングされる。コントローラ100は、所定のタイミングで動作誤差演算部106にて目標動作プロファイル[0,1,・・・n]と実動作との偏差を演算し、制御量演算部108にてその偏差を減少させるよう制御プロファイル[0,1,・・・n]の補正を実行する。補正後の制御指令値は、概念的には下記式(1)のように表される。G1は補正係数であり、適宜設定される。
【0035】
制御指令[0,1,・・・n]=前回制御指令[0,1,・・・n]+G1・偏差[0,1,・・・n]
=前回制御指令[0,1,・・・n]
+G1(目標動作[0,1,・・・n]−実動作[0,1,・・・n])・・・(1)
また、コントローラ100は、一方で形状センサ32により検出された塗布領域24の実形状をサンプリングしている。コントローラ100は、所定のタイミングで形状誤差演算部102にて目標形状プロファイル[0,1,・・・n]と実形状との偏差を演算し、動作量演算部104にてその偏差を減少させるよう目標動作プロファイル[0,1,・・・n]の補正を実行する。補正後の動作目標は、概念的には下記式(2)のように表される。G2は補正係数であり、適宜設定される。
【0036】
動作目標[0,1,・・・n]=前回動作目標[0,1,・・・n]+G2・偏差[0,1,・・・n]
=前回動作目標[0,1,・・・n]
+G2(目標形状[0,1,・・・n]−実形状[0,1,・・・n])・・・(2)
コントローラ100は、このような仕切弁20の動作量および制御量の補正を、塗布制御の結果が得られる期間を待って実行する。図1に示したように、搬送装置14の搬送路において塗布液の塗布位置から塗布領域24が複数分含まれる距離をあけた下流側位置に形状センサ32が配置されているため、塗布領域24がその塗布位置から形状センサ32の検出位置まで到達するまでに一定期間(本実施形態では30秒)を要する。このため、コントローラ100は、塗布制御(またはそのテスト制御)を開始してからその一定期間以上の所定期間が経過したタイミングで補正処理を開始する。本実施形態では、その所定期間として30秒を設定している。
【0037】
次に、本実施形態における塗布制御方法について具体的に説明する。図4および図5は、塗布制御方法の概要を表す図である。図4には、その上段から塗布領域24の目標形状、仕切弁20の補正前の目標動作、補正前の制御電流、塗布制御で得られた塗布領域24の実際の形状(実形状)、塗布制御における仕切弁20の実際の動作(実動作)、補正後の目標動作、補正後の制御電流が、それぞれ示されている。同図の横軸は時間の経過を表している。図5(a)は図4のA部拡大図を示し、図5(b)は図4のB部拡大図を示している。
【0038】
本実施形態の塗布制御は、逐次リアルタイムフィードバックを行う手法はとらず、塗布装置10を起動させたときにまず、クローズドループによる塗布テスト制御を実行して適正な制御プロファイルを得る。そして、適正な制御プロファイルが得られた後に、その制御プロファイルをオープンループにて繰り返し利用する塗布制御を実行する。
【0039】
すなわち、図4に示すように、塗布装置10を起動させたときにはまず、予め設定された目標形状を取得し、その目標形状を実現するための仕切弁20の目標動作を演算する。図示の例では、塗布領域24が長方形状となる目標形状が設定されている。この目標形状における塗布開始点近傍および終了点近傍の過渡部はエッジ形状、つまり塗布面に対して90度をなす先端面、後端面が設定されている。そして、この目標形状が得られるよう仕切弁20の開弁動作(弁体70の開弁方向への動作)、定常動作(弁体70の動作位置を保持)、および仕切弁20の閉弁動作(弁体70の閉弁方向への動作)が目標動作量として算出され、その動作プロファイルが設定される。そして、算出された動作プロファイルを実現するための制御量として、仕切弁20へ供給する制御電流の通電量および通電タイミングを定義した制御プロファイルが算出され、その制御プロファイルに沿った通電制御が実行される。
【0040】
このように塗布テスト制御を開始してから所定時間が経過すると、その塗布制御により得られた制御結果がフィードバックされる。同図中段には、このとき得られた実形状(実線)が示されている。図示の例では、目標形状(点線)に対し、塗布領域24の塗布開始点近傍の先端部に隆起がみられる一方で、塗布終了点近傍では立ち下がりが遅れる状態が示されている。すなわち、塗布開始点近傍では塗布量が過剰となり、塗布終了点近傍では塗布領域がやや超過している。
【0041】
このような現象が生じるのは以下の理由によると考えられる。すなわち、図2を参照すると、塗布動作が開始されていない状態においては弁体70が弁座63に着座し、仕切弁20は閉弁状態を保持する。この状態から塗布動作が開始されると、仕切弁20の開弁動作の立ち上がり時に弁体70が弁孔64から離間する際、弁体70が弁室54内の塗布液を導出ポート60側に押す状態となる。すなわち、この開弁開始時には弁孔64がほとんど開いていない状態であるため、開弁が完了するまでは弁体70による圧力が塗布液を導出ポート60側に押すように作用する。その結果、塗布開始時には弁体70の圧力が作用して立ち上がりのオーバーシュートのような隆起が生じると考えられる。
【0042】
本実施形態ではこのような場合、仕切弁20の目標動作量と実動作量の偏差に基づいて目標動作量を補正するとともに、それに応じて目標制御量を補正する。すなわち、例えば図5(a)に示すように目標動作(白点)と実動作(黒点)との間に偏差が生じた場合、制御周期ごとの目標動作の偏差を打ち消すように制御量を補正する。また、塗布領域24の目標形状と実形状との偏差を打ち消すように制御量を補正する。
【0043】
すなわち、図5(b)に示すように、前回の制御指令値(白点)に対して動作量の偏差を打ち消すための制御電流(黒点)を制御周期ごと(黒点のプロット間隔ごと)に演算し、その結果得られた制御プロファイルに基づいてそれ以降の制御を実行する。このような補正処理を、塗布領域24の目標形状と実形状との偏差が予め設定した許容範囲に収まるまで継続する。本実施形態では、塗布領域の目標形状としてその塗布高さがシート12の搬送方向に実質的に一定となるよう仕切弁20の制御量を演算する一方、塗布領域24の先頭部分の端面とシート12の塗布面とのなす角、および塗布領域24の末尾部分の端面とシート12の塗布面とのなす角がいずれも60°〜90°の範囲に収まることを許容範囲として設定している。
【0044】
すなわち、仕切弁20の動作についての補正と、それによる塗布領域24の形状についての補正を2重ループにて実行し、それぞれが予め設定した許容範囲に収束するまで制御プロファイルの更新を繰り返す。そして、両者が許容範囲に収束した時点でその制御プロファイルを実制御プロファイルとして記憶し、それ以降に塗布装置10が停止されるまで塗布制御に用いる。
【0045】
図6は、塗布制御処理の流れを表すフローチャートである。この処理は、塗布装置10が起動されて以降、停止されるまで所定の周期でコントローラ100により繰り返し実行される。
【0046】
コントローラ100は、塗布装置10の起動直後で塗布制御が開始されおらず(S10のN)、後述する補正完了フラグがオフであり(S12のN)、また後述のプロファイル補正処理も開始されていなければ(S14のN)、予め設定された目標形状を取得する(S16)。そして、その目標形状から理論的に演算されるデフォルトの制御プロファイルを設定し(S18)、塗布制御テストを開始する(S20)。続いて、後述するプロファイル補正処理を実行する(S22)。一方、既に補正処理が開始されていれば(S14のY)、S16からS20の処理をスキップする。
【0047】
一方、コントローラ100は、補正完了フラグがオンであれば(S12のY)、その補正完了フラグをオフにしたうえで(S24)、プロファイル補正処理にて得られた実制御プロファイルを設定し(S26)、塗布制御のテスト制御を終了して本処理を開始する(S28)。塗布制御が開始済であれば(S10のY)、予め定める塗布制御終了条件が成立していれば(S30のY)、塗布制御を終了する(S32)。塗布制御終了条件については、例えば塗布装置10に終了指示を表すコマンドが入力されたことをその条件としてもよい。コントローラ100は、同条件が成立すると、例えば塗布制御終了を示す表示画面を表示させるなどの終了処理を実行する。塗布制御終了条件が成立していなけば(S30のN)、S32の処理をスキップして本処理を一旦終了する。
【0048】
図7は、図6のS22のプロファイル補正処理を示すフローチャートである。
このプロファイル補正処理において、コントローラ100は、制御プロファイルが設定または更新されてから上述した設定時間(例えば30秒)を経過すると(S40のY)、塗布領域24の形状情報を取得する(S42)。すなわち、形状センサ32から入力される実形状の形状データが逐次サンプリングされており、その形状データに基づく形状情報を取得する。そして、そのとき設定されている目標形状と実形状との偏差を演算する(S44)。このとき、その偏差が予め設定された偏差許容範囲になければ(S42のN)、RAM上の所定領域に設定された形状許容フラグをオフにするとともに(S44)、仕切弁20の目標動作を表す動作プロファイルを演算して更新する(S46)。一方、偏差が偏差許容範囲にあれば(S42のY)、形状許容フラグをオンにする(S48)。
【0049】
続いて、コントローラ100は、仕切弁20の動作情報を取得する(S50)。すなわち、仕切弁20に設けられたエンコーダから入力される実動作の動作データが逐次サンプリングされており、その動作データに基づく動作情報を取得する。そして、そのとき設定されている目標動作と実動作との偏差を演算する(S52)。このとき、その偏差が予め設定された偏差許容範囲になければ(S54のN)、仕切弁20へ出力する制御指令を表す制御プロファイルを演算して更新する(S56)。一方、偏差が偏差許容範囲にあれば(S54のY)、形状許容フラグがオンであれば(S58のY)、そのとき設定されている制御プロファイルを実制御プロファイルとして記憶する(S60)。そして、プロファイル補正処理の終了を示すためにRAM上の所定領域に設定された補正完了フラグをオンにする(S62)。この補正完了フラグは、既に述べた図6のS12の判定処理に用いられる。形状許容フラグがオンでなければ(S58のN)、S60およびS62の処理をスキップする。制御プロファイルが設定または更新されてから設定時間を経過していなければ(S40のN)、S42からS56の処理をスキップして本処理を一旦終了する。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態の塗布装置10においては、間欠塗布により一定の塗布パターンを実現する塗布制御の開始に際し、事前に塗布制御テストを実行して適正な制御プロファイルを設定する。すなわち、過渡的な部分を有する塗布領域の塗布制御に際し、同じ塗布条件で先に塗布制御が完了した塗布領域の実形状をフィードバックし、目標形状との偏差を減少させるように制御電流の制御プロファイルを補正する。すなわち、フィードバック制御によるクローズドループで制御量が補正されるため、塗布液の特性変化や部品の経年変化等によって仕切弁20の作動状態が変化していたとしても、その変化に応じた制御量の補正がなされ、適正な塗布制御を実現することができる。また、塗布領域の実形状をリアルタイムでフィードバックするのではなく、塗布位置から塗布領域が複数分含まれる位置にて形状検出を行い、同条件にて先に塗布が完了した同部分の形状をフィードバックする形をとるため、フィードバックの応答遅れの問題がなくなり、塗布制御そのものを安定に継続することができる。
【0051】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。この実施形態はあくまで例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
上記実施形態では、塗布領域24の全域にわたって目標形状を予め設定し、これを実現するための制御プロファイルを作成する例を示した。変形例においては、塗布領域24の過渡部など特定部分に限定して制御プロファイルを作成してもよい。そして、その特定部分の形状のみをフィードバックして補正処理を行うようにしてもよい。
【0053】
上記実施形態では、塗布形状および仕切弁20の動作を2重ループにてフィードバックさせる塗布制御を、リチウムイオン電池の製造工程において用いられる間欠塗布装置に適用した例を示したが、対象製品やそのアクチュエータの種類が例示のものに限られないことはもちろんである。すなわち、所定のアクチュエータを駆動して所定の塗布液を塗布することにより塗布パターンを形成する装置であれば適用することができる。例えば、インクジェットプリンタなどにおいて、その塗布液であるインクの塗布装置として構成することも可能である。
【0054】
あるいは、アクチュエータの作動応答性についての考慮が不要である場合などには、塗布形状のみをフィードバックさせる構成としてもよい。逆に、塗布形状のフィードバックの応答性が十分に確保される一方、アクチュエータの劣化対応を主目的とする場合には、塗布形状のフィードバックを省略してアクチュエータの動作のみをフィードバックさせるようにしてもよい。また、そのようにアクチュエータの動作のみをフィードバックさせる場合、制御対象としての装置は塗布装置に限られず、所定の動作を行うアクチュエータの駆動装置に適用することができる。
【0055】
また、上記実施形態では、リアルタイムフィードバックではなく、反復される制御について、その結果が得られる所定期間後の制御結果をフィードバックする制御方式を採用するが、一定の反復的なパターンで動作する制御対象については同制御方式を適用することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では特に述べなかったが、図1に示したメインローラ22にロータリエンコーダを設けるとともに、コントローラ100により搬送装置14の搬送速度を制御できるようにしてもよい。すなわち、コントローラ100が、そのロータリエンコーダから出力されるパルス信号に基づいてシート12の搬送速度を取得し、制御状態に応じて各搬送ローラの回転速度、つまりシート12の搬送速度を変化させられるようにしてもよい。その場合、搬送ローラを駆動するアクチュエータについて、上述した制御プロファイルの補正処理を適用するようにしてもよい。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る塗布装置は、塗布制御に関する補正処理方法が異なる以外は第1実施形態とほぼ同様である。このため、第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付すなどしてその説明を省略する。図8は、第2実施形態に係る塗布装置を模式的に示すシステム構成図である。図9は、塗布装置に関する制御ブロック図である。図10は、塗布制御の補正処理方法の概要を表す図である。図11は、プロファイル補正処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
図8に示すように、本実施形態の塗布装置210は、第1実施形態の塗布装置10と概ね同様の構成を有するが、塗布制御における制御パラメータの補正処理を作業員による外部入力に基づいて実行する点で異なっている。コントローラ100には、少なくともプロファイル補正処理の実行時に入力装置232が接続される。本実施形態の入力装置232はパーソナルコンピュータからなり、補正処理か開始されると、そのディスプレイに塗布領域24の目標形状と実形状との誤差(偏差)を入力するための入力画面が表示される。具体的には、塗布領域24について搬送方向に分割された複数箇所の位置のそれぞれについて、調整値としての誤差(偏差)を手動で入力可能な入力画面が表示される。
【0059】
すなわち、図9にも示すように、本実施形態では塗布制御の補正処理に際し、作業員がシート12に塗布領域24の形状を目視し、必要に応じて目標形状との誤差(偏差)を入力装置232を介して入力する。すなわち、作業員は、補正処理が実行されると、例えば乾燥工程を経た塗布領域24の形状を目視し、目標形状とのずれを把握する。そして、塗布量の調整が必要な位置の形状誤差(調整量)を入力する。入力装置232は、このとき入力された誤差を逐次記憶して形状偏差[0,1,・・・n]を演算し、その誤差を塗布領域24の搬送方向の位置に対応づける形でコントローラ100に入力する。コントローラ100は、入力された形状偏差[0,1,・・・n]に基づき仕切弁20の目標動作プロファイル[0,1,・・・n]を補正し、その補正後の目標動作プロファイルに応じた制御プロファイル[0,1,・・・n]の補正を実行する。
【0060】
すなわち、図10に示すように、目標動作と実動作との偏差Δx(Δx1,Δx2,Δx3,Δx4,・・・)を演算し、その偏差Δxをゼロに近づけるための制御電流の補正値ΔI(ΔI1,ΔI2,ΔI3,ΔI4,・・・)を演算し、制御電流の指令値となる制御プロファイル[0,1,・・・n]を補正して更新する。
【0061】
これは以下の考え方による。すなわち、本実施形態における仕切弁20のアクチュエータもリニアモータであるため(図2参照)、塗布制御において高精度な線形性が得られる。ここで、仕切弁20の可動部(弁体70,作動ロッド68,可動子72)の弁部の開閉方向の推力をF、その可動部の開閉方向の加速度をa1、その可動部の開閉方向の変位をxとすると下記式(3)の関係がある。
F=a1・x ・・・(3)
【0062】
一方、その推力Fはリニアアクチュエータ80(リニアモータ)に供給する制御電流Iに比例するため、下記式(4)の関係がある。a2は比例係数である。
F=a2・I ・・・(4)
【0063】
このため、上記式(3)と上記式(4)との関係を簡易的に用いることにより、偏差Δxから制御電流の補正値ΔIを簡単に求めることができる。このとき、制御電流Iは、下記式(5)により求めることができる。
I=I(補正前)+ΔI ・・・(5)
【0064】
また、より詳細には、仕切弁20の可動部の質量をM、塗布液の粘性係数をD、可動部に開閉方向の付勢力が作用する場合のばね定数をKとすると下記式(6)の関係がある。
【数1】
このため、上記式(6)の2階線形微分方程式として制御系の伝達関数を演算し、可動部の速度および加速度を考慮したより高精度な補正をすることも可能である。
【0065】
図11は、プロファイル補正処理を示すフローチャートである。
本実施形態のプロファイル補正処理においては、コントローラ100は、補正処理が開始され(S210のY)、入力装置232を介した形状誤差Δx(調整量)が入力されると(S212のY)、図10(a)に示した時間単位の形状偏差Δxを記憶し(S214)、図10(b)に示した時間単位の制御量(制御電流値)の偏差ΔIを演算する(S216)。そして、制御電流の指令値となる制御プロファイル[0,1,・・・n]を補正して更新する(S218)。
【0066】
このとき、補正完了を示す入力があった場合には(S220のY)、予め定める補正終了処理を実行する(S222)。すなわち、作業員は、その目視により塗布領域24の実形状が目標形状に収束したと判断すると、補正処理を指示するための終了コマンドを入力する。コントローラ100は、その終了コマンドを受けて補正処理を終了し、塗布装置210の駆動を停止させる。
【0067】
なお、補正完了を示す入力がなかった場合には(S220のN)、S222の処理がスキップされ、S212からS218の処理が繰り返されることになる。また、形状誤差が入力されない場合(S212のN)、S214以降の処理をスキップする。補正処理の開始指示がなければ(S210のN)、本処理を一旦終了する。
【0068】
以上に説明したように、本実施形態の塗布装置210においても、仕切弁20のアクチュエータとしてリニアモータが用いられるため、塗布液の吐出制御の線形性を良好に維持することができ、塗布制御の制御性が向上する。また、その線形性を利用することで、上述のように制御量の補正処理を容易に行うことができる。
【0069】
なお、本実施形態においては、入力装置232を設けることにより形状誤差Δx(調整量)を作業員が手動で入力する例を示したが、第1実施形態のように形状センサ32による検出値を用いることにより自動的に補正処理を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 塗布装置、 12 シート、 14 搬送装置、 16 タンク、 18 ダイ、 20 仕切弁、 24 塗布領域、 26 非塗布領域、 32 形状センサ、 100 コントローラ、 102 形状誤差演算部、 104 動作量演算部、 106 動作誤差演算部、 108 制御量演算部、 210 塗布装置、 232 入力装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、
前記塗布液を貯留する塗布液供給源と、
前記基材の塗布面に対向配置され、前記塗布液供給源から供給される塗布液を前記塗布面に向けて吐出可能な吐出部と、
前記吐出部から前記塗布液を吐出させるために駆動されるリニアモータと、
前記リニアモータを駆動して前記塗布液の吐出流量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布領域について設定された目標形状に基づき算出される前記リニアモータの制御量と、算出された制御量にて前記リニアモータを制御することにより得られた前記塗布領域の実形状との偏差に基づき、前記制御部により前記リニアモータを駆動するときの制御量が調整されることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布パターンとして、共通の形状を有する塗布領域が前記基材の搬送方向に繰り返し形成される塗布パターンが設定され、
前記制御部は、個々の塗布領域の実形状を実現した逐次の制御量を制御プロファイルとして記憶し、前記個々の塗布領域の目標形状と実形状との偏差に基づいて補正された制御プロファイルを実制御プロファイルとして保持し、その後の前記リニアモータの制御に用いることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記塗布領域の目標形状としてその塗布高さが前記基材の搬送方向に実質的に一定となるよう前記リニアモータの制御量を演算する一方、
前記塗布領域の先頭部分および末尾部分の少なくとも一方を前記塗布領域の設定部分とし、その設定部分の端面と前記基材の表面とのなす角が60°〜90°の範囲に収まるよう前記制御部の制御量が調整されることを特徴とする請求項2または3に記載の塗布装置。
【請求項5】
連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、
前記塗布液を貯留する塗布液供給源と、
前記基材の塗布面に対向配置され、前記塗布液供給源から供給される塗布液を前記塗布面に向けて吐出可能な吐出部と、
前記吐出部から前記塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動して前記塗布液の吐出流量を制御する制御部と、
前記吐出部よりも前記基材の搬送方向下流側に配置され、搬送されてきた塗布領域の形状を検出する形状検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記塗布領域について設定された目標形状に基づき算出される制御量にて前記アクチュエータを制御する一方、前記形状検出部により検出される前記塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶し、前記設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域の設定部分を形成するための制御量を補正することを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
前記塗布パターンとして、前記設定部分に共通の形状を有する塗布領域が前記基材の搬送方向に繰り返し形成される塗布パターンが設定され、
前記制御部は、前記形状検出部により検出される個々の塗布領域について、その実形状を実現した逐次の制御量を制御プロファイルとして記憶し、前記設定部分の目標形状と実形状との偏差が予め定める許容範囲となったときの制御プロファイルを実制御プロファイルとして保持し、その後の前記アクチュエータの制御に用いることを特徴とする請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記塗布領域の目標形状としてその塗布高さが前記基材の搬送方向に実質的に一定となるよう前記アクチュエータの制御量を演算する一方、前記塗布領域の先頭部分および末尾部分の少なくとも一方を前記設定部分とし、その設定部分の端面と前記基材の表面とのなす角が60°〜90°の範囲に収まるよう前記制御量を補正することを特徴とする請求項5または6に記載の塗布装置。
【請求項8】
連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、前記基材に対向配置されて塗布液を吐出する吐出部と、前記吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、前記吐出部よりも前記基材の搬送方向下流側に配置され、搬送されてきた塗布領域の形状を検出する形状検出部とを備えた塗布装置に用いられ、前記アクチュエータを駆動して前記塗布液の吐出流量を制御する塗布制御装置であって、
前記塗布領域について設定される目標形状に基づき前記アクチュエータの制御量を演算する演算手段と、
前記形状検出部により検出される形状情報を取得し、前記塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶する記憶手段と、
演算された制御量に基づいて前記アクチュエータに制御指令を出力する実行手段と、
を備え、
前記演算手段は、前記設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域を形成するための制御量を補正することを特徴とする塗布制御装置。
【請求項9】
前記記憶手段は、前記形状検出部により検出される個々の塗布領域について、その実形状を実現した逐次の制御量を制御プロファイルとして記憶し、
前記演算手段は、前記設定部分の目標形状と実形状との偏差が予め定める許容範囲となったときの制御プロファイルを実制御プロファイルとして保持し、その後の前記アクチュエータの制御量として用いることを特徴とする請求項8に記載の塗布制御装置。
【請求項10】
前記アクチュエータの動作量を検出する動作検出部をさらに備える塗布装置に用いられる塗布制御装置であって、
前記演算手段は、前記塗布領域について設定される目標形状に基づき前記アクチュエータの目標動作量を演算し、
前記記憶手段は、前記動作検出部により検出される前記アクチュエータの実動作量を実現した逐次の制御量を動作制御プロファイルとして記憶し、
前記演算手段は、目標動作量と実動作量との偏差が予め定める許容動作範囲となったときの動作制御プロファイルを実動作制御プロファイルとして保持し、その後の前記アクチュエータの制御量として用いることを特徴とする請求項9に記載の塗布制御装置。
【請求項11】
連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、前記基材に対向配置されて塗布液を吐出する吐出部と、前記吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの動作量を検出する動作検出部とを備えた塗布装置に用いられ、前記アクチュエータを駆動して前記塗布液の吐出流量を制御する塗布制御装置であって、
前記塗布領域について設定される目標形状に基づき前記アクチュエータの目標動作量を演算し、さらにその目標動作量を実現するための制御量を演算する演算手段と、
前記動作検出部により検出される前記アクチュエータの実動作量を実現した逐次の制御量を動作制御プロファイルとして記憶する記憶手段と、
演算された制御量に基づいて前記アクチュエータに制御指令を出力する実行手段と、
を備え、
前記演算手段は、目標動作量と実動作量との偏差が予め定める許容動作範囲となったときの動作制御プロファイルを実動作制御プロファイルとして保持し、後の前記アクチュエータの制御量として用いることを特徴とする塗布制御装置。
【請求項1】
連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、
前記塗布液を貯留する塗布液供給源と、
前記基材の塗布面に対向配置され、前記塗布液供給源から供給される塗布液を前記塗布面に向けて吐出可能な吐出部と、
前記吐出部から前記塗布液を吐出させるために駆動されるリニアモータと、
前記リニアモータを駆動して前記塗布液の吐出流量を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布領域について設定された目標形状に基づき算出される前記リニアモータの制御量と、算出された制御量にて前記リニアモータを制御することにより得られた前記塗布領域の実形状との偏差に基づき、前記制御部により前記リニアモータを駆動するときの制御量が調整されることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記塗布パターンとして、共通の形状を有する塗布領域が前記基材の搬送方向に繰り返し形成される塗布パターンが設定され、
前記制御部は、個々の塗布領域の実形状を実現した逐次の制御量を制御プロファイルとして記憶し、前記個々の塗布領域の目標形状と実形状との偏差に基づいて補正された制御プロファイルを実制御プロファイルとして保持し、その後の前記リニアモータの制御に用いることを特徴とする請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記塗布領域の目標形状としてその塗布高さが前記基材の搬送方向に実質的に一定となるよう前記リニアモータの制御量を演算する一方、
前記塗布領域の先頭部分および末尾部分の少なくとも一方を前記塗布領域の設定部分とし、その設定部分の端面と前記基材の表面とのなす角が60°〜90°の範囲に収まるよう前記制御部の制御量が調整されることを特徴とする請求項2または3に記載の塗布装置。
【請求項5】
連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、
前記塗布液を貯留する塗布液供給源と、
前記基材の塗布面に対向配置され、前記塗布液供給源から供給される塗布液を前記塗布面に向けて吐出可能な吐出部と、
前記吐出部から前記塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、
前記アクチュエータを駆動して前記塗布液の吐出流量を制御する制御部と、
前記吐出部よりも前記基材の搬送方向下流側に配置され、搬送されてきた塗布領域の形状を検出する形状検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記塗布領域について設定された目標形状に基づき算出される制御量にて前記アクチュエータを制御する一方、前記形状検出部により検出される前記塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶し、前記設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域の設定部分を形成するための制御量を補正することを特徴とする塗布装置。
【請求項6】
前記塗布パターンとして、前記設定部分に共通の形状を有する塗布領域が前記基材の搬送方向に繰り返し形成される塗布パターンが設定され、
前記制御部は、前記形状検出部により検出される個々の塗布領域について、その実形状を実現した逐次の制御量を制御プロファイルとして記憶し、前記設定部分の目標形状と実形状との偏差が予め定める許容範囲となったときの制御プロファイルを実制御プロファイルとして保持し、その後の前記アクチュエータの制御に用いることを特徴とする請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記塗布領域の目標形状としてその塗布高さが前記基材の搬送方向に実質的に一定となるよう前記アクチュエータの制御量を演算する一方、前記塗布領域の先頭部分および末尾部分の少なくとも一方を前記設定部分とし、その設定部分の端面と前記基材の表面とのなす角が60°〜90°の範囲に収まるよう前記制御量を補正することを特徴とする請求項5または6に記載の塗布装置。
【請求項8】
連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、前記基材に対向配置されて塗布液を吐出する吐出部と、前記吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、前記吐出部よりも前記基材の搬送方向下流側に配置され、搬送されてきた塗布領域の形状を検出する形状検出部とを備えた塗布装置に用いられ、前記アクチュエータを駆動して前記塗布液の吐出流量を制御する塗布制御装置であって、
前記塗布領域について設定される目標形状に基づき前記アクチュエータの制御量を演算する演算手段と、
前記形状検出部により検出される形状情報を取得し、前記塗布領域の設定部分の実形状を逐次記憶する記憶手段と、
演算された制御量に基づいて前記アクチュエータに制御指令を出力する実行手段と、
を備え、
前記演算手段は、前記設定部分の目標形状と実形状との偏差に基づいて後の塗布領域を形成するための制御量を補正することを特徴とする塗布制御装置。
【請求項9】
前記記憶手段は、前記形状検出部により検出される個々の塗布領域について、その実形状を実現した逐次の制御量を制御プロファイルとして記憶し、
前記演算手段は、前記設定部分の目標形状と実形状との偏差が予め定める許容範囲となったときの制御プロファイルを実制御プロファイルとして保持し、その後の前記アクチュエータの制御量として用いることを特徴とする請求項8に記載の塗布制御装置。
【請求項10】
前記アクチュエータの動作量を検出する動作検出部をさらに備える塗布装置に用いられる塗布制御装置であって、
前記演算手段は、前記塗布領域について設定される目標形状に基づき前記アクチュエータの目標動作量を演算し、
前記記憶手段は、前記動作検出部により検出される前記アクチュエータの実動作量を実現した逐次の制御量を動作制御プロファイルとして記憶し、
前記演算手段は、目標動作量と実動作量との偏差が予め定める許容動作範囲となったときの動作制御プロファイルを実動作制御プロファイルとして保持し、その後の前記アクチュエータの制御量として用いることを特徴とする請求項9に記載の塗布制御装置。
【請求項11】
連続的に搬送される基材上に塗布液を間欠的に塗布することにより、その搬送方向に塗布領域と非塗布領域を交互に有する塗布パターンを形成する塗布装置であって、前記基材に対向配置されて塗布液を吐出する吐出部と、前記吐出部から塗布液を吐出させるために駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの動作量を検出する動作検出部とを備えた塗布装置に用いられ、前記アクチュエータを駆動して前記塗布液の吐出流量を制御する塗布制御装置であって、
前記塗布領域について設定される目標形状に基づき前記アクチュエータの目標動作量を演算し、さらにその目標動作量を実現するための制御量を演算する演算手段と、
前記動作検出部により検出される前記アクチュエータの実動作量を実現した逐次の制御量を動作制御プロファイルとして記憶する記憶手段と、
演算された制御量に基づいて前記アクチュエータに制御指令を出力する実行手段と、
を備え、
前記演算手段は、目標動作量と実動作量との偏差が予め定める許容動作範囲となったときの動作制御プロファイルを実動作制御プロファイルとして保持し、後の前記アクチュエータの制御量として用いることを特徴とする塗布制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−88138(P2011−88138A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208440(P2010−208440)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】
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