説明

塗布装置および塗布方法

【課題】塗布領域に塗布液を精度良く塗布する。
【解決手段】ノズルを保持するノズルホルダ5をX方向に往復移動させながらノズルから塗布液を吐出させて往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とを基板1の非塗布領域に形成し、これらの塗布軌跡をCCDカメラ61,62で撮像する。制御部3は、その撮像に基づき往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量を算出し、このズレ量に基づき補正移動量を算出し、記憶部64に書き込む。そして、制御部3はテーブル移動機構21を制御して、往動吐出と復動吐出との切換ごとに、基板1をY方向に補正移動量ずつ移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板とノズルとを相対的に移動させながらノズルから塗布液を基板に向けて吐出して基板上の塗布領域に塗布する塗布技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基板とノズルとを相対的に移動させながらノズルから塗布液を基板に向けて吐出して基板上の塗布領域に塗布するようにした塗布装置が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。これら特許文献1,2記載の塗布装置では、ノズルをX方向に移動可能に構成するとともに、基板とノズルとをX方向に直交するY方向に相対移動可能に構成している。そして、基板上に設けられ、X方向に線状に延設され、Y方向に並んで配設された複数の塗布領域に向けてノズルから塗布液を吐出している。このとき、ノズルの(+X)方向の移動(往動)および(−X)方向の移動(復動)の両方の移動時にノズルから塗布液を吐出して、スループットを向上するようにしている。
【0003】
ところで、このような塗布装置では、塗布領域から塗布液がはみ出してしまうと、製品不良を引き起こしてしまうため、ノズルから塗布領域に向けて塗布液を精度良く吐出することが求められる。そこで、例えば特許文献1記載の装置では、試し塗りとして形成した塗布軌跡が塗布領域に一致するように基板とノズルとの相対的な位置関係を調整した後で、塗布領域への塗布液の塗布を実行している。また、特許文献2記載の装置では、ノズルが水平面内で180°反転可能に構成されているが、その反転前後の吐出孔の位置ずれを検出して補正することにより、ノズルの吐出孔が塗布領域から位置ずれしないようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−074050号公報(段落0020)
【特許文献2】特開2003−178677号公報(段落0021)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ノズルをX方向に移動可能に構成するとともに、基板とノズルとをX方向に直交するY方向に相対移動可能に構成した装置を用いた発明者の実験によると、ノズルの往動時と復動時とで、基板上の塗布軌跡がY方向にずれることがあることが分かった。すなわち、一定の移動量でY方向にノズルと基板とを相対移動しつつ、ノズルの往動と復動とを繰り返して塗布液の塗布を実行すると、往動時および復動時の一方では塗布領域に精度良く塗布されるが、他方では塗布領域に精度良く塗布されず、最悪の場合、塗布液が塗布領域からはみ出してしまうことがあった。
【0006】
この原因についての検討内容については、後に詳述するが、上記従来の特許文献1,2記載の装置では、ノズルの往動時と復動時とで基板上の塗布軌跡がずれる点については全く考慮されていない。したがって、塗布領域に塗布液を精度良く塗布することは困難であった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルを往復動させつつ、ノズルの往動時においてもノズルの復動時においてもノズルから塗布液を吐出させて塗布領域への塗布液の塗布を行う技術であり、塗布領域に塗布液を精度良く塗布することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる塗布装置の第1態様は、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布装置であって、上記目的を達成するため、基板に対してノズルをX方向に往復移動させるX方向移動手段と、ノズルを有し、ノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して塗布領域に塗布液を供給する塗布液供給手段と、ノズルに対して基板をY方向に相対移動させるY方向移動手段と、往動吐出時に形成される往動塗布軌跡と、復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量を記憶する記憶手段と、所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量をズレ量に基づき補正して補正移動量を求め、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに、Y方向移動手段を制御して次の吐出動作に先立って補正移動量だけ基板をY方向に相対移動させるY方向制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる塗布方法の第1態様は、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布方法であって、上記目的を達成するため、基板に対してX方向に往復移動可能に構成されたノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して塗布領域に塗布液を供給する塗布液供給工程と、往動吐出時に形成される往動塗布軌跡と、復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量を取得するズレ量取得工程と、所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量をズレ量に基づき補正して補正移動量を求め、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに、次の吐出動作に先立って補正移動量だけノズルに対して基板をY方向に相対移動させるY方向移動工程とを備えたことを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明の第1態様(塗布装置および塗布方法)によれば、ノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液が供給される。ここで、所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量を、往動吐出時に形成される往動塗布軌跡と、復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量に基づき補正して、補正移動量が求められる。そして、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに、次の吐出動作に先立って補正移動量だけノズルに対して基板がY方向に相対移動される。したがって、何らかの要因によってノズルの往動時と復動時とで基板上の塗布軌跡がずれた場合でも、そのズレ量に対応した補正移動量だけY方向に相対移動される。このため、ノズルの往動時と復動時のいずれにおいても、塗布軌跡が塗布領域と一致するように塗布処理が実行されて、塗布領域に塗布液が精度良く塗布されることとなる。
【0011】
また、往動吐出により形成される塗布軌跡および復動吐出により形成される塗布軌跡を検出する軌跡検出手段をさらに備え、Y方向制御手段は、軌跡検出手段による検出結果に基づきズレ量を算出し、記憶手段に書き込むとしてもよい。このように構成された発明によれば、往動吐出により形成される塗布軌跡および復動吐出により形成される塗布軌跡が検出され、その検出結果に基づきズレ量が算出されるため、検出動作を行うごとにズレ量を更新することができ、何らかの要因でズレ量が変化した場合でも対応することが可能になる。
【0012】
また、ノズルは交換可能に構成され、軌跡検出手段は、ノズルの交換ごとに検出動作を実行し、Y方向制御手段は、ノズルの交換ごとに、軌跡検出手段による検出結果に基づきズレ量を算出し、記憶手段に書き込むとしてもよい。このように構成された発明によれば、ノズルの交換ごとに、検出動作が実行され、その検出結果に基づきズレ量が算出されるため、検出動作を行うごとにズレ量を更新することができ、ノズルの交換によりズレ量が変化した場合でも対応することが可能になる。
【0013】
また、ノズルとして、少なくとも一つの吐出口が設けられた複数のノズルまたは複数の吐出口が設けられた少なくとも一つのノズルを備え、各吐出口からそれぞれ塗布液が吐出される塗布装置であって、軌跡検出手段は、各吐出口ごとに検出動作を実行し、Y方向制御手段は、軌跡検出手段による検出結果に基づき、各吐出口ごとに、双方の塗布軌跡のY方向における差異をそれぞれ算出し、各差異の平均値をズレ量として記憶手段に書き込むとしてもよい。このように構成された発明によれば、各吐出口ごとに、往動吐出により形成される塗布軌跡および復動吐出により形成される塗布軌跡が検出され、それらのY方向における差異がそれぞれ算出され、各差異の平均値がズレ量とされるため、各吐出口ごとの差異の平均値に基づき補正移動量が求められることとなる。したがって各吐出口ごとに各々の差異が異なる場合にも対応することが可能になる。
【0014】
また、Y方向制御手段は、各差異のうちの最大値と平均値との差が予め設定された上限値以上のときは、塗布動作を禁止するようにすると、往動吐出により形成される塗布軌跡および復動吐出により形成される塗布軌跡のいずれかが塗布領域と一致しないまま塗布処理が実行されるのを未然に防止することができる。
【0015】
また、各差異のうちの最大値と平均値との差が予め設定された上限値以上のときは、その旨を報知する報知手段をさらに備えるようにすると、ユーザは、直ぐにノズル交換などの対応策を講じることができるという利点がある。
【0016】
また、ズレ量を入力する入力手段をさらに備え、Y方向制御手段は、入力手段により入力されたズレ量を記憶手段に書き込むようにしてもよい。このように構成された発明によれば、ユーザが別の手段によりズレ量を求めていたり、ズレ量がユーザに既知であった場合には、簡易な構成でズレ量を更新することが可能になる。
【0017】
また、Y方向制御手段は、補正移動量として、基準移動量にズレ量を加算した第1補正値と、基準移動量からズレ量を減算した第2補正値とを求め、往動吐出から復動吐出に切り換える際には2つの補正値のうちズレ量の正負に応じた方の補正値だけ基板を相対移動させる一方、復動吐出から往動吐出に切り換える際には他方の補正値だけ基板を相対移動させるとしてもよい。このように構成された発明によれば、補正移動量として、基準移動量にズレ量を加算した第1補正値と、基準移動量からズレ量を減算した第2補正値とが求められる。そして、往動吐出から復動吐出に切り換える際には、第1補正値と第2補正値とのうち、ズレ量の正負に応じた方の補正値だけ基板が相対移動される一方、復動吐出から往動吐出に切り換える際には、他方の補正値だけ基板が相対移動される。したがって、連続する2つの往動吐出での移動量は必ず基準移動量の2倍となるとともに、連続する2つの復動吐出での移動量も必ず基準移動量の2倍となる。これによって、ノズルの往動時と復動時のいずれにおいても、塗布軌跡が塗布領域と一致するように塗布処理が実行されて、塗布領域に塗布液が精度良く塗布されることとなる。
【0018】
また、この発明にかかる塗布装置の第2態様は、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布装置であって、上記目的を達成するため、基板に対してノズルをX方向に往復移動させるX方向移動手段と、ノズルを有し、ノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して塗布領域に塗布液を供給する塗布液供給手段と、ノズルに対して基板をY方向に相対移動させるY方向移動手段と、基板を該基板の法線回りに回転する基板回転手段と、往動吐出時に形成される往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度、および復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度を記憶する記憶手段と、所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとにY方向移動手段を制御して次の吐出動作に先立って、基準移動量だけ基板をY方向に相対移動させるY方向制御手段と、往動傾斜角度に基づき往動補正角度を求め、復動傾斜角度に基づき復動補正角度を求め、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに基板回転手段を制御して次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ基板を回転させる回転制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0019】
また、この発明にかかる塗布方法の第2態様は、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布方法であって、上記目的を達成するため、基板に対してX方向に往復移動可能に構成されたノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して塗布領域に塗布液を供給する塗布液供給工程と、往動吐出時に形成される往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度、および復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度を取得する傾斜角度取得工程と、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、ノズルに対して基板を所定間隔のN(Nは正の整数)倍の基準移動量だけY方向に相対移動させるY方向移動工程と、往動傾斜角度に基づき往動補正角度を求め、復動傾斜角度に基づき復動補正角度を求め、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ基板を該基板の法線回りに回転させる回転工程とを備えたことを特徴としている。
【0020】
このように構成された発明の第2態様(塗布装置および塗布方法)によれば、ノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液が供給される。また、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、ノズルに対して基板が所定間隔のN(Nは正の整数)倍の基準移動量だけY方向に相対移動される。また、往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度に基づき往動補正角度が求められ、復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度に基づき復動補正角度が求められる。そして、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ基板が該基板の法線回りに回転される。すなわち、次の吐出動作が往動吐出のときは往動補正角度だけ回転され、次の吐出動作が復動吐出のときは復動補正角度だけ回転される。したがって、何らかの要因によってノズルの往動時と復動時とで基板上の塗布軌跡がX方向に対して傾くことがあった場合でも、その角度に対応して基板が回転される。これによって、ノズルの往動時と復動時のいずれにおいても、塗布軌跡が塗布領域と一致するように塗布処理が実行されて塗布領域に塗布液が精度良く塗布されることとなる。なお、Y方向相対移動と基板回転とは、いずれを先に行ってもよく、あるいは同時に行ってもよい。
【0021】
また、往動吐出により形成される塗布軌跡および復動吐出により形成される塗布軌跡を検出する軌跡検出手段をさらに備え、回転制御手段は、軌跡検出手段による検出結果に基づき往動傾斜角度および復動傾斜角度を算出して記憶手段に書き込むとしてもよい。このように構成された発明によれば、往動吐出により形成される塗布軌跡および復動吐出により形成される塗布軌跡が検出され、その検出結果に基づき往動傾斜角度および復動傾斜角度が算出されるため、検出動作を行うごとに往動傾斜角度および復動傾斜角度を更新することができ、何らかの要因で往動傾斜角度または復動傾斜角度が変化した場合でも対応することが可能になる。
【0022】
また、往動傾斜角度および復動傾斜角度を入力する入力手段をさらに備え、回転制御手段は、入力手段により入力された往動傾斜角度および復動傾斜角度を記憶手段に書き込むとしてもよい。このように構成された発明によれば、ユーザが別の手段により往動傾斜角度および復動傾斜角度を求めていたり、往動傾斜角度および復動傾斜角度がユーザに既知であった場合には、簡易な構成で往動傾斜角度および復動傾斜角度を更新することが可能になる。
【0023】
また、この発明にかかる塗布装置の第3態様は、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布装置であって、上記目的を達成するため、基板に対してノズルをX方向に往復移動させるX方向移動手段と、ノズルを有し、ノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して塗布領域に塗布液を供給する塗布液供給手段と、ノズルに対して基板をY方向に相対移動させるY方向移動手段と、基板を該基板の法線回りに回転する基板回転手段と、往動吐出時に形成される往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度、復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度、および往動塗布軌跡における往動塗布開始位置と復動塗布軌跡における復動塗布開始位置とのY方向におけるY方向距離を記憶する記憶手段と、所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量をY方向距離に基づき補正して補正移動量を求め、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとにY方向移動手段を制御して次の吐出動作に先立って、補正移動量だけ基板をY方向に相対移動させるY方向制御手段と、往動傾斜角度に基づき往動補正角度を求め、復動傾斜角度に基づき復動補正角度を求め、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに基板回転手段を制御して次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ基板を回転させる回転制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0024】
また、この発明にかかる塗布方法の第3態様は、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布方法であって、上記目的を達成するため、基板に対してX方向に往復移動可能に構成されたノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して塗布領域に塗布液を供給する塗布液供給工程と、往動吐出時に形成される往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度、および復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度を取得する傾斜角度取得工程と、往動塗布軌跡における往動塗布開始位置と復動塗布軌跡における復動塗布開始位置とのY方向におけるY方向距離を取得するY方向距離取得工程と、所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量をY方向距離に基づき補正して補正移動量を求め、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、補正移動量だけ基板をY方向に相対移動させるY方向移動工程と、往動傾斜角度に基づき往動補正角度を求め、復動傾斜角度に基づき復動補正角度を求め、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ基板を該基板の法線回りに回転させる回転工程とを備えたことを特徴としている。
【0025】
このように構成された発明の第3態様(塗布装置および塗布方法)によれば、ノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して、X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液が供給される。ここで、所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量を、往動塗布軌跡における往動塗布開始位置と復動塗布軌跡における復動塗布開始位置とのY方向距離に基づき補正して、補正移動量が求められる。そして、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、補正移動量だけノズルに対して基板がY方向に相対移動される。また、往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度に基づき往動補正角度が求められ、復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度に基づき復動補正角度が求められる。そして、往動吐出と復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ基板が該基板の法線回りに回転される。すなわち、次の吐出動作が往動吐出のときは往動補正角度だけ回転され、次の吐出動作が復動吐出のときは復動補正角度だけ回転される。したがって、何らかの要因によってノズルの往動時と復動時とで塗布開始位置がY方向にずれた場合でも、そのY方向距離に対応した補正移動量だけY方向に相対移動される。さらに、何らかの要因によってノズルの往動時と復動時とで基板上の塗布軌跡がX方向に対して傾くことがあった場合でも、その角度に対応して基板が回転される。これによって、ノズルの往動時と復動時のいずれにおいても、塗布軌跡が塗布領域と一致するように塗布処理が実行されて塗布領域に塗布液が精度良く塗布されることとなる。なお、Y方向相対移動と基板回転とは、いずれを先に行ってもよく、あるいは同時に行ってもよい。
【0026】
また、往動吐出により形成される塗布軌跡および復動吐出により形成される塗布軌跡を検出する軌跡検出手段をさらに備え、回転制御手段は、軌跡検出手段による検出結果に基づき往動傾斜角度および復動傾斜角度を算出して記憶手段に書き込み、Y方向制御手段は、軌跡検出手段による検出結果に基づき、往動塗布開始位置および復動塗布開始位置を求め、それらの位置からY方向距離を算出して記憶手段に書き込むとしてもよい。このように構成された発明によれば、往動吐出により形成される塗布軌跡および復動吐出により形成される塗布軌跡が検出される。そして、その検出結果に基づき、往動傾斜角度および復動傾斜角度が算出される。また、往動塗布開始位置および復動塗布開始位置が求められ、それらの位置からY方向距離が算出される。したがって、検出動作を行うごとに、往動傾斜角度、復動傾斜角度およびY方向距離を更新することができ、何らかの要因で往動傾斜角度、復動傾斜角度またはY方向距離が変化した場合でも対応することが可能になる。
【0027】
また、往動傾斜角度、復動傾斜角度およびY方向距離を入力する入力手段をさらに備え、回転制御手段は、入力手段により入力された往動傾斜角度および復動傾斜角度を記憶手段に書き込み、Y方向制御手段は、入力手段により入力されたY方向距離を記憶手段に書き込むとしてもよい。このように構成された発明によれば、ユーザが別の手段により往動傾斜角度、復動傾斜角度およびY方向距離を求めていたり、往動傾斜角度、復動傾斜角度およびY方向距離がユーザに既知であった場合には、簡易な構成で、これらを更新することが可能になる。
【0028】
これらの発明にかかる塗布装置および塗布方法の第1態様〜第3態様では、それぞれ、ノズルの往動時にノズルから塗布液を連続吐出させる往動吐出とノズルの復動時にノズルから塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して、基板の塗布領域に塗布液を供給している。これらの発明において、往動吐出と復動吐出との切換時にノズルからの塗布液の吐出を途切れることなく連続して行うようにしてもよい。すなわち、基板の塗布領域への塗布液の塗布開始から塗布終了まで、ノズルからの塗布液の吐出を継続して行うようにしてもよい。あるいはまた、往動吐出と復動吐出との切換時は、ノズルからの塗布液の吐出を停止するようにしてもよい。すなわち、往動吐出は、往動開始時に塗布液の吐出を開始するとともに往動終了時に塗布液の吐出を停止するようにして行い、復動吐出は、復動開始時に塗布液の吐出を開始するとともに復動終了時に塗布液の吐出を停止するようにして行ってもよい。
【発明の効果】
【0029】
この発明にかかる塗布装置および塗布方法によれば、ノズルの往動時と復動時のいずれにおいても、塗布軌跡が塗布領域と一致するように塗布処理が実行されて、塗布領域に塗布液を精度良く塗布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(第1実施形態)
図1はこの発明の第1態様にかかる塗布装置の第1実施形態を示す図、図2は図1の塗布装置でのノズル移動機構の概略構成を示す図で、(a)は平面図、(b)は(a)のB矢視図である。また、図3は図1の塗布装置の電気的構成を示すブロック図である。この塗布装置は、基板1上に形成されたバンク12間の溝11に液体状の有機層(正孔輸送層や有機EL層)を形成するための材料を含む塗布液(以下、単に「塗布液」という)を塗布する塗布装置である。溝11は、幅寸法L1でX方向に線状に延設されるとともに、X方向に直交するY方向に、ピッチP(本発明の「所定間隔」に相当)で並んで、基板1上に配設されている。各溝11が本発明の「塗布領域」に相当する。
【0031】
この塗布装置では、基板1を載置するテーブル2が設けられている。このテーブル2はY方向にスライド自在で、しかも垂直軸Zに対してθ方向に回動自在となっている。また、テーブル2にはテーブル移動機構21が接続されており、装置全体を制御する制御部3からの動作指令に応じてテーブル移動機構21が作動することでテーブル2をY方向に移動させたり、θ方向に回転させてテーブル2上の基板1を位置決めすることができる。
【0032】
また、このテーブル2の上方にはノズル4が配設されている。このノズル4は、ノズルホルダ5に保持されており、このノズルホルダ5は、ノズル移動機構50に接続されている。ノズル移動機構50は、ガイド棒51,51と、ローラ52,53に掛け渡された無端ベルト54と、ローラ53を駆動するモータ55とを備えている。ガイド棒51,51はノズル台56に固定されており、ノズルホルダ5を貫通し、ノズルホルダ5を支持するとともにその移動方向を案内するものである。無端ベルト54は、その外周面がノズルホルダ5の側面5aに固定されている。そして、制御部3からの動作指令に応じてモータ55が駆動されると、ローラ53の回転により無端ベルト54が回転することでノズルホルダ5(ノズル4)が移動する。
【0033】
ノズルホルダ5は、ノズル移動機構50によって、静止状態から高加速度(この実施形態では例えば、5G〜20G(Gは重力加速度)程度)で加速され、高速(この実施形態では例えば、1m/s〜10m/s)で等速運動するようになっており、これによってスループットの向上が図られている。また、モータ55は正転および反転が可能になっており、これによって、ノズルホルダ5(ノズル4)はX方向に往復移動可能となっている。したがって、ノズル4を基板1上の溝11に対向させた状態でX方向に移動させると、ノズル4は溝11に沿って移動することとなる。
【0034】
このノズル4は塗布液の供給源たる液供給部41と配管接続されており、制御部3からの動作指令に応じて液供給部41が駆動されると、液供給部41から圧送されてくる塗布液を基板1に向けて連続的に吐出可能となっている。このときの吐出流量は、溝11の幅寸法などに応じて予め設定されている。ここで、ノズル4の等速運動中にノズル4から塗布液が吐出されるようになっており、これによって溝11に塗布液が均一に塗布されるようになっている。また、ノズル4の(+X)方向の移動(往動)時においても(−X)方向の移動(復動)時においても、ノズル4から塗布液が吐出されるようになっている。すなわち、ノズル4の往動時にノズル4から塗布液を連続吐出させる往動吐出と、ノズル4の復動時にノズル4から塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行しており、これによってスループットの向上が図られている。なお、この実施形態では、往動吐出と復動吐出との切換時も、ノズル4から塗布液を途切れることなく連続して吐出している。ただし、基板1の溝11の左右両側にはテープなどでマスキングを施しており、連続吐出されても溝11の左右両側のテープに塗布液が付着するため、支障を来たすことがないようにしている。
【0035】
また、ノズル4はノズルホルダ5に対して着脱自在となっている。すなわち、この塗布装置ではノズル4が交換可能になっている。これによって、ノズル4として、基板1に設けられた溝11の幅寸法L1の大きさに対応する直径の吐出口を有するノズルを装着することで、種々の溝幅の基板1に適用可能になっている。
【0036】
さらに、基板1の溝11やノズル4からの塗布軌跡を撮像するための2つのCCDカメラ61,62が設けられている。CCDカメラ61,62は、CCDカメラ61,62の撮像領域の中心を結ぶ線がX方向に一致するようにノズル台56に固定されている。ただし、CCDカメラ61,62は、ノズルホルダ5の往復移動を妨げないように配置されている。また、各CCDカメラ61,62からの出力信号を画像処理部63に出力するように構成されている。そして、この画像処理部63はCCDカメラ61,62からの画像信号に対して所定の画像処理を施した後、画像処理後の画像データを制御部3に出力している。なお、この画像データを受け取った制御部3は後で詳述するアライメント処理を施して、往動吐出により形成される往動塗布軌跡と復動吐出により形成される復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量を算出し、Y方向の移動量を補正して、基板1上の溝(塗布領域)11に対する塗布処理の精度を高めている。
【0037】
また、この塗布装置は、例えばデータなどを一時的に記憶するRAMや制御プログラムなどを記憶するROMなどを有する記憶部64を備えるとともに、ユーザインターフェースとして、例えばキーボードなどからなる入力部65および例えばLCDなどからなる表示部66を備えている。
【0038】
次に、上記のような装置構成において、ノズルの往動時と復動時とで基板上の塗布軌跡がずれる原因の検討内容について、図4、図5を参照しつつ説明する。図4はノズルホルダ5の傾きを説明する図、図5は塗布液の吐出方向の傾きを説明する図である。
【0039】
発明者は、上記原因について鋭意検討した結果、以下のような点が原因ではないかと推測している。すなわち、この装置では、上述したように、ノズルホルダ5を高加速度で加速している。一方、ガイド棒51,51とノズルホルダ5の軸受部との間には、滑らかに移動するように微小な遊びが存在している。したがって、無端ベルト54(図2)によりノズルホルダ5の側面5aが急激に引っ張られたときに、上記遊びに起因して、図4に破線で示すように、往動(+X方向)の加速時と復動(−X方向)の加速時とで、ノズルホルダ5が反対向きに傾いている可能性がある。そうすると、この傾きによって、往動時と復動時とで塗布軌跡がY方向にズレてしまうということが考えられる。以下、ノズルホルダ5の傾きを「第1の原因」と称する。
【0040】
この第1の原因だけであれば、ズレ量は装置固有の値になる筈である。ところが、発明者は、ノズルホルダ5に取り付けるノズル4を交換すると、ズレ量が変化することを見出した。そこで、別の原因について検討した。図5(a)に示すように、ノズル4に設けられた吐出口からの塗布液40の吐出方向が真下であれば、往動時と復動時とで吐出方向に対する影響は同じであるため、塗布軌跡が異なることはないと考えられる。しかしながら、図5(b)に示すように、塗布液40の吐出方向が真下にはならずに微小に傾いている可能性がある。そうすると、この傾きによって、往動時と復動時とで吐出方向に対する影響が異なるため、塗布軌跡がY方向にズレてしまうということも考えられる。以下、塗布液40の吐出方向の傾きを「第2の原因」と称する。
【0041】
そこで、この第1実施形態および次に説明する第2実施形態では、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量を求め、ノズル4に対する基板のY方向における相対移動量を、このズレ量に基づき補正するようにしている。
【0042】
次に、上記のように構成された第1実施形態の塗布装置の動作について、図6〜図10を参照しつつ説明する。図6は第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【0043】
この塗布装置では、図示を省略する搬送ロボットにより未処理の基板1がテーブル2上に載置される(ステップS1)と、ノズル4が交換されたか否かが判別される(ステップS2)。そして、ステップS2で「YES」と判断されると、制御部3が記憶部64に予め記憶されているプログラムにしたがって装置各部を以下のように制御してアライメント・補正処理(ステップS3)を実行する。
【0044】
このアライメント・補正処理では、基板1の非塗布領域13(図8)に、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とを形成し、それらの塗布軌跡のY方向におけるズレ量を算出し、このズレ量に基づき補正移動量を求める。また、このアライメント・補正処理では、基板1上の溝(塗布領域)11が塗布開始位置に正確に一致するように、基板1のノズル4に対する相対的な位置関係が調整される。以下、図7〜図9を参照しつつ詳述する。
【0045】
図7はアライメント・補正処理のフローチャート、図8はCCDカメラの画像を模式的に示す図である。この塗布装置の初期状態では、ノズル4は、図1に示すようにノズル待機部42の対向位置に待機している。
【0046】
図7において、アライメント・補正処理の開始指令が制御部3から与えられると、この開始指令に応じてテーブル移動機構21が作動してテーブル2をY方向に移動させ、基板1の非塗布領域13をノズル4の移動経路に対応する第1の試塗位置に配置する(ステップS201)。この第1の試塗位置は、往動塗布軌跡を形成する位置である。そして、制御部3からの動作指令に応じて、液供給部41が作動してノズル4から塗布液の吐出を開始するとともに、ノズル移動機構50が作動してノズル4を(+X)方向に往動させて、基板1の非塗布領域13に向けて塗布液を連続吐出する往動吐出を行う(ステップS202)。これによって、往動塗布軌跡が基板1の非塗布領域13上に形成される。そして、この往動塗布軌跡をCCDカメラ61,62で撮像する(ステップS203)。これによって、例えば図8(a)中の画像I61,I62に示すような往動塗布軌跡の光学像If1が撮像され、画像処理部63で適当な画像処理が施された後、その往動塗布軌跡を示す画像データが制御部3に出力され、記憶部64に一時的に記憶される。
【0047】
次のステップS204では、駆動指令に応じてテーブル移動機構21が作動してテーブル2をY方向に微小量D0だけ移動させ、基板1の非塗布領域13をノズル4の移動経路に対応する第2の試塗位置に配置する。この第2の試塗位置は、復動塗布軌跡を形成する位置である。Y方向に微小量D0だけ移動させるのは、復動塗布軌跡が往動塗布軌跡に重ならないようにするためである。なお、この間、ノズル4からの塗布液の吐出は継続されている。そして、制御部3からの動作指令に応じてノズル移動機構50が作動して、ノズル4を(−X)方向に復動させて、基板1の非塗布領域13に向けて塗布液を連続吐出する復動吐出を行い、復動が終了すると塗布液の吐出を停止する(ステップS205)。これによって、復動塗布軌跡が基板1の非塗布領域13上に形成される。そして、この復動塗布軌跡をCCDカメラ61,62で撮像する(ステップS206)。これによって、例えば図8(b)中の画像I61,I62に示すような復動塗布軌跡の光学像Ib1が撮像され、画像処理部63で適当な画像処理が施された後、その復動塗布軌跡を示す画像データが制御部3に出力され、記憶部64に一時的に記憶される。
【0048】
次いで、記憶部64に記憶されている往動塗布軌跡の光学像If1の画像データおよび復動塗布軌跡の光学像Ib1の画像データに基づき、制御部3によって、Y方向におけるズレ量が算出され、記憶部64に書き込まれる(ステップS207)。例えば、往動塗布軌跡の光学像If1が、CCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D1に位置し、復動塗布軌跡の光学像Ib1がCCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D2に位置している場合には、ズレ量ΔDは、
ΔD=D1−D2
と算出され、制御部3によって、このズレ量ΔDが記憶部64に書き込まれる。この実施形態では、D1<D2であり、復動塗布軌跡は往動塗布軌跡に対して(−Y)方向にΔDだけずれているものとする。
【0049】
次のステップS208では、ズレ量ΔDに基づき補正移動量が算出され、記憶部64に書き込まれる。ここで、図9を参照して補正移動量について説明する。図9は、基板1をY方向に等ピッチで移動させた場合と、この実施形態のように可変ピッチ(補正移動量)で移動させた場合とを対比した説明図である。すなわち、図9の上段には、基板をY方向に等ピッチで移動させた場合の溝11と塗布軌跡との位置関係を示し、下段には、基板をY方向に可変ピッチ(補正移動量)で移動させた場合の溝11と塗布軌跡との位置関係を示している。
【0050】
図9では、基板1のバンク12を斜線で示し、溝11を白抜きで示している。また、図1を参照して説明したように、溝11はピッチPで形成されている。そして、図9の上段および下段の各々において、左端・中央・右端の順に、Y方向に移動する基板1を示している。すなわち、左端および右端の基板1には、ノズルの往動時の塗布液吐出(後述する図10のステップS303)により形成される往動塗布軌跡F1が示され、中央の基板1には、ノズルの復動時の塗布液吐出(後述する図10のステップS307)により形成される復動塗布軌跡B1が示されている。
【0051】
まず、図9の上段を参照して、等ピッチPずつY方向に基板1を移動させた場合の動作について説明する。ここでは、図8(d)を参照して後述するように、往動塗布軌跡F1が溝11に一致するように基板1を塗布開始位置に位置決めして塗布処理を開始している。したがって、図9の上段の左端の基板1に示すように、往動塗布軌跡F1は溝11に一致している。ところが、この実施形態では、上述したように、復動塗布軌跡B1は、往動塗布軌跡F1に対して(−Y)方向にΔDだけずれている。したがって、等ピッチPだけY方向に基板1を移動させると、中央の基板1に示すように、復動塗布軌跡B1が溝11に一致せず、塗布液が溝11に正確に供給されない。なお、さらに、等ピッチPだけY方向に基板1を移動させると、右端の基板1に示すように、往動塗布軌跡F1は溝11に一致することとなる。
【0052】
次に、図9の下段を参照して、可変ピッチ(補正移動量)ずつY方向に基板1を移動させた場合の動作について説明する。図9の下段の左端の基板1に示すように、上段と同様に、往動塗布軌跡F1は溝11に一致している。次いで、往動吐出から復動吐出への切換時のY方向移動の際(後述する図10のステップS306)の補正移動量P11は、復動塗布軌跡B1が往動塗布軌跡F1に対して(−Y)方向にΔDだけずれているため、
P11=P−ΔD
によって求められる。その結果、図9の下段の中央の基板1に示すように、復動塗布軌跡B1が溝11に一致することとなる。続いて、復動吐出から往動吐出への切換時のY方向移動の際(後述する図10のステップS310)の補正移動量P12は、
P12=P+ΔD
によって求められる。その結果、図9の下段の右端の基板1に示すように、往動塗布軌跡F1が溝11に一致することとなる。
【0053】
このようにして補正移動量P11,P12が算出され、記憶部64に書き込まれる。このように、この実施形態では、溝11のピッチPが、本発明の「基準移動量」に相当し、本発明の「N」がN=1になっている。また、補正移動量P11が、本発明の「第2補正値」に相当し、補正移動量P12が、本発明の「第1補正値」に相当する。
【0054】
図7に戻って、次のステップS209では、駆動指令に応じてテーブル移動機構21が作動してテーブル2をY方向に移動させ、基板1の溝11をノズル4の移動経路に対応する塗布位置に配置する(ステップS209)。そして、塗布位置では、溝11の光学像I11をCCDカメラ61,62で撮像する(ステップS210)。これによって、例えば図8(c)中の画像I61,I62に示すような溝(塗布領域)11の光学像I11が撮像され、画像処理部63で適当な画像処理が施された後、その溝(塗布領域)11を示す画像データが制御部3に出力され、記憶部64に一時的に記憶される。図8(c)では溝11の光学像I11がX方向と平行になっていないことがわかる。
【0055】
そこで、この実施形態では、制御部3が光学像I11の画像データに基づきθ方向におけるX方向に対する溝11の傾き量を演算により求めた(ステップS211)後、制御部3からの動作指令に応じてテーブル移動機構21が作動してテーブル2をθ方向に上記傾き量だけ回転させてX方向と溝11とが平行となるようにテーブル2上の基板1を位置決めする(ステップS212)。また、単に基板1を回転位置決めするのみで往動塗布軌跡が溝11の中心からずれている場合には、さらにテーブル2をY方向に移動させて、図8(d)に示すように、最も端(図1では最上端)の溝11の中心が、CCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D1に位置するように制御する。こうすることで、往動塗布軌跡と塗布領域たる溝11とを完全に一致させることができる。すなわち、図8(d)に示すように配置された基板1の位置が塗布処理開始位置となる。
【0056】
こうして、基板1のアライメント・補正処理が完了すると、図6のステップS5に進んで塗布処理を実行する。一方、図6のステップS2で「NO」と判断されると、アライメント処理(ステップS4)を実行する。このアライメント処理では、ズレ量および補正移動量の算出は行われず、基板1上の溝(塗布領域)11が塗布開始位置に正確に一致するように、基板1のノズル4に対する相対的な位置関係が調整される。具体的には、図7のステップS204〜S208が実行されず、ステップS201〜S203,S209〜S212のみが実行される。そして、このアライメント処理が完了すると、図6のステップS5に進んで塗布処理を実行する。
【0057】
図10は塗布処理のフローチャートである。この塗布処理では、制御部3からの動作指令に応じてノズル移動機構50が作動してノズル4をスタートポイント、つまり溝11の一方端部(図1中、左端)から(−X)方向に所定距離だけ離れた位置に位置決めする(ステップS301)。そして、制御部3からの動作指令に応じて、液供給部41が作動してノズル4から基板1に向けて塗布液の吐出を開始し(ステップS302)、ノズル移動機構50が作動してノズル4の(+X)方向への移動(往動)を開始する(ステップS303)。この実施形態では、予めアライメント・補正処理またはアライメント処理により基板1を塗布処理開始位置に位置決めしているため、ノズル4からの塗布液が確実に溝11に供給される。また、ノズル4の移動に伴って溝11に塗布液がライン状に塗布されていく。
【0058】
そして、ノズル4がライン塗布処理中の溝11より右側まで移動してくると、ステップS304で「YES」と判断されて、ステップS305で、全ての塗布対象の溝11に塗布液を塗布したか否かを、Y方向への移動回数に基づき判断する。すなわち、入力部65により予め基板1の溝11の本数が入力されて記憶部64に記憶しており、制御部3はY方向への移動回数をカウントして記憶部64に記憶している。そして、ステップS305では、入力本数とY方向への移動回数とを比較して、最後の溝11への塗布が終了したか否かを判断している。そして、このステップS305で「NO」と判断する、つまり未塗布の溝11が残っていると、制御部3からの動作指令に応じてテーブル移動機構21が作動して、補正移動量P11だけテーブル2をY方向に移動させた(ステップS306)後、ステップS307に進み、次の溝11に対してライン塗布を実行する。
【0059】
すなわち、制御部3からの動作指令に応じてノズル移動機構50が作動して、ノズル4を減速させ、移動方向を反転させてノズル4の(−X)方向への移動(復動)を開始する(ステップS307)。このとき、ノズル4から基板1への塗布液の吐出は継続されており、テーブル2をY方向に補正移動量P11だけ移動させているため、往動時と同様に、ノズル4から吐出された塗布液は確実に溝11に塗布される。
【0060】
次に、ノズル4がライン塗布処理中の溝11より左側まで移動してくると、ステップS308で「YES」と判断され、ステップS309で、全ての塗布対象の溝11に塗布液を塗布したか否かをステップS305と同様にして判断する。そして、このステップS309で「NO」と判断する、つまり未塗布の溝11が残っているときは、制御部3からの動作指令に応じてテーブル移動機構21が作動して、補正移動量P12だけテーブル2をY方向に移動させた(ステップS310)後、ステップS303に進み、制御部3からの動作指令に応じてノズル移動機構50が作動して、ノズル4を減速させ、移動方向を反転させてノズル4の(+X)方向への移動(往動)を開始して、さらに次の溝11に対して上記一連のライン塗布を実行する。
【0061】
一方、ステップS305またはステップS309で「YES」と判断すると、制御部3からの動作指令に応じて液供給部41が作動して塗布液の吐出を停止し(ステップS311)、塗布処理を終了して、図6のステップS4に進み、搬送ロボットによりテーブル2から処理済の基板1をアンロードし、次の処理装置に搬送する。
【0062】
以上説明したように、この第1実施形態によれば、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量ΔDを求め、このズレ量ΔDに基づきY方向の補正移動量P11,P12を求めている。そして、テーブル2を補正移動量P11,P12ずつY方向に移動させている。具体的には、往動吐出から復動吐出への切換時には、補正移動量P11だけY方向に移動させ、復動吐出から往動吐出への切換時には、補正移動量P12だけY方向に移動させている。したがって、往動吐出と復動吐出のいずれにおいても、基板1の溝11に精度良く塗布液を塗布することができる。
【0063】
また、この第1実施形態によれば、ノズル4が交換されると、ズレ量および補正移動量を算出し、記憶部64に記憶しているため、ノズル4の交換によりズレ量が変化した場合でも、補正移動量を更新することができ、ズレ量の変化に対応することができる。
【0064】
(第2実施形態)
図11は、この発明の第1態様にかかる塗布装置の第2実施形態を示す図である。この第2実施形態は、塗布液を吐出するノズルとして、ノズル4a,4b,4cの3個を備えている点で、ノズル4の1個のみを備える第1実施形態と相違している。ノズル移動機構50の構成および装置の電気的構成は、図2および図3を参照して説明した第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態と同一の構成要素には同一符号を付し、相違点を中心に説明する。
【0065】
図11に示すように、ノズル4a,4b,4cは、X方向に並んでノズルホルダ5に保持されている。また、この実施形態では、ノズル4a,4b,4cからR,G,B用塗布液をそれぞれ吐出するように構成されており、ノズル4a,4b,4cは、Y方向に溝11のピッチPと同一の間隔で並んで配設されている。すなわち、この第2実施形態では、ノズルホルダ5を(+X)方向に往動させてノズル4a,4b,4cから同時に塗布液を吐出すると、3本の溝11に対して同時に塗布液を塗布することが可能になっている。また、CCDカメラ61,62は、ノズル4a,4b,4cをカバーする撮像領域を備えており、ノズル4a,4b,4cからの塗布軌跡を撮像可能になっている。
【0066】
第2実施形態の装置の動作手順は、基本的に第1実施形態と同様である。すなわち、動作手順は、図6、図7、図10のフローチャートと同様である。ただし、ノズルが3個あるため、ズレ量や補正移動量の具体的な算出方法などが相違している。そこで、アライメント・補正処理および塗布処理について、それぞれ図7、図10のフローチャートにしたがって、図12〜図14を参照しつつ第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0067】
図12はCCDカメラの画像を模式的に示す図である。この実施形態では、図7のステップS202〜S206を3回繰り返して、ノズル4a,4b,4cのそれぞれについて個別に往動塗布軌跡および復動塗布軌跡を基板1の非塗布領域13に形成している。
【0068】
すなわち、1回目にノズル4aを往動しつつ塗布液を吐出して往動塗布軌跡を形成し、この往動塗布軌跡をCCDカメラ61,62で撮像して、図12(a)中の(i)ノズル4aの画像I61,I62に示すような往動塗布軌跡の光学像If11が撮像され、画像処理部63で適当な画像処理が施された後、その往動塗布軌跡を示す画像データが制御部3に出力され、記憶部64に一時的に記憶される(ステップS202,S203)。
【0069】
次いで、テーブル2をY方向に微小量だけ移動させ(ステップS204)、ノズル4aを復動しつつ塗布液を吐出して復動塗布軌跡を形成し、この復塗布軌跡をCCDカメラ61,62で撮像して、図12(b)中の(i)ノズル4aの画像I61,I62に示すような復動塗布軌跡の光学像Ib21が撮像され、画像処理部63で適当な画像処理が施された後、その復動塗布軌跡を示す画像データが制御部3に出力され、記憶部64に一時的に記憶される(ステップS205,S206)。
【0070】
2回目は、ノズル4bについて同様に行うと、図12(a)中の(ii)ノズル4bの画像I61,I62に示すような往動塗布軌跡の光学像If12が撮像され、また、図12(b)中の(ii)ノズル4bの画像I61,I62に示すような復動塗布軌跡の光学像Ib22が撮像される。さらに、3回目は、ノズル4cについて同様に行うと、図12(a)中の(iii)ノズル4cの画像I61,I62に示すような往動塗布軌跡の光学像If13が撮像され、また、図12(b)中の(iii)ノズル4cの画像I61,I62に示すような復動塗布軌跡の光学像Ib23が撮像される。
【0071】
ただし、1回目のノズル4aと2回目のノズル4bとの間、2回目のノズル4bと3回目のノズル4cとの間では、それぞれ基板1をY方向に微小距離だけ移動している。これによって図12(a),(b)に示すような光学像が得られている。なお、ここでは図7のステップS202〜S206を3回繰り返しているが、これに限られない。すなわち、ノズル4a,4b,4cの全てから塗布液を吐出して往動塗布軌跡を形成し、その3本の往動塗布軌跡をCCDカメラ61,62で撮像し、次いで、ノズル4a,4b,4cの全てから塗布液を吐出して復動塗布軌跡を形成し、その3本の復動塗布軌跡をCCDカメラ61,62で撮像するようにしてもよい。
【0072】
次いで、図7のステップS207において、記憶部64に記憶されている往動塗布軌跡の光学像If11,If12,If13の画像データおよび復動塗布軌跡の光学像Ib21,Ib22,Ib23の画像データに基づき、制御部3によって、Y方向におけるズレ量が算出され、記憶部64に書き込まれる。このズレ量の算出について、図12および図13を参照しつつ説明する。
【0073】
図13は、ノズル4a,4b,4cの各々について、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向における差異を説明する図である。なお、上述したように、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とは基板1の非塗布領域13に形成しているが、図13では、説明の便宜上、バンク(斜線部分)と溝(白抜き部分)とを示し、各塗布軌跡の位置関係を容易に理解できるようにしている。
【0074】
まず、ノズル4aについて、図12(a)に示すように、往動塗布軌跡の光学像If11が、CCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D11に位置し、図12(b)に示すように、復動塗布軌跡の光学像Ib21がCCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D21に位置している場合には、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向における差異ΔD31は、
ΔD31=D11−D21
と算出される。この実施形態では、D11<D21であり、図13に示すように、ノズル4aの復動塗布軌跡B4aは往動塗布軌跡F4aに対して(−Y)方向にΔD31だけずれているものとする。
【0075】
次に、ノズル4bについて、図12(a)に示すように、往動塗布軌跡の光学像If12が、CCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D12に位置し、図12(b)に示すように、復動塗布軌跡の光学像Ib22がCCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D22に位置している場合には、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向における差異ΔD32は、
ΔD32=D12−D22
と算出される。この実施形態では、D12<D22であり、図13に示すように、ノズル4bの復動塗布軌跡B4bは往動塗布軌跡F4bに対して(−Y)方向にΔD32だけずれているものとする。
【0076】
最後に、ノズル4cについて、図12(a)に示すように、往動塗布軌跡の光学像If13が、CCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D13に位置し、図12(b)に示すように、復動塗布軌跡の光学像Ib23がCCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D23に位置している場合には、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向における差異ΔD33は、
ΔD33=D13−D23
と算出される。この実施形態では、D13<D23であり、図13に示すように、ノズル4cの復動塗布軌跡B4cは往動塗布軌跡F4cに対して(−Y)方向にΔD33だけずれているものとする。
【0077】
図13に示すように、ΔD32<ΔD31<ΔD33であり、各差異の大きさが異なっている。そこで、この実施形態では、各差異の平均値をズレ量としている。すなわち、ズレ量ΔD30は、
ΔD30=(ΔD31+ΔD32+ΔD33)/3
により算出され、このズレ量ΔD30が、記憶部64に書き込まれる(図7のステップS207)。
【0078】
図7に戻って、次のステップS208では、ズレ量ΔD30に基づき、補正移動量が算出され、記憶部64に書き込まれる。ここで、図14を参照して補正移動量について説明する。
【0079】
図14は、基板1をY方向に補正移動量で移動させた場合の溝11と塗布軌跡との位置関係を示す図である。図14では、基板1のバンク12を斜線で示し、溝11を白抜きで示している。また、第1実施形態と同様に溝11はピッチPで形成されている。また、左端・中央・右端の順に、Y方向に移動する基板1を示している。すなわち、左端の基板1には、ノズル4a,4b,4cの往動時の塗布液吐出(図10のステップS303)により形成される往動塗布軌跡F4a1,F4b1,F4c1が示されている。また、中央の基板1には、さらに、ノズル4a,4b,4cの復動時の塗布液吐出(図10のステップS307)により形成される復動塗布軌跡B4a1,B4b1,B4c1が示されている。また、右端の基板1には、さらに、その次のノズル4a,4b,4cの往動時の塗布液吐出(図10のステップS303)により形成される往動塗布軌跡F4a2,F4b2,F4c2が示されている。
【0080】
塗布処理開始時点では、アライメント・補正処理またはアライメント処理により、図14の左端の基板1に示すように、往動塗布軌跡F4a1,F4b1,F4c1は、それぞれ溝11に一致している。次いで、往動吐出から復動吐出への切換時のY方向移動の際(図10のステップS306)の補正移動量P21は、ズレ量ΔD30だけ復動塗布軌跡が往動塗布軌跡に対して(−Y)方向にずれているため、
P21=3P−ΔD30
によって求められる。その結果、中央の基板1に示すように、復動塗布軌跡B4a1,B4b1,B4c1が、それぞれ溝11にほぼ一致することとなる。続いて、復動吐出から往動吐出への切換時のY方向移動の際(図10のステップS310)の補正移動量P22は、
P22=3P+ΔD30
によって求められる。その結果、右端の基板1に示すように、往動塗布軌跡F4a2,F4b2,F4c2が、それぞれ溝11に一致することとなる。
【0081】
このようにして、ズレ量ΔD30に基づき補正移動量P21,P22が算出され、記憶部64に書き込まれる(図7のステップS208)。このように、この実施形態では、溝11のピッチPの3倍である3Pが、本発明の「基準移動量」に相当し、本発明の「N」がN=3になっている。また、補正移動量P21が、本発明の「第2補正値」に相当し、補正移動量P22が、本発明の「第1補正値」に相当する。
【0082】
図7に戻って、次のステップS209〜S212では、第1実施形態と同様に動作する。そして、図12(c)に示すように、最も端(図1では最上端)の溝11の中心が、CCDカメラ61,62の画像I61,I62において、基準位置から距離D11に位置するように制御する。こうすることで、ノズル4aによる往動塗布軌跡と最上端の溝11とを完全に一致させることができる。すなわち、図12(c)に示すように配置された基板1の位置が塗布処理開始位置となる。
【0083】
なお、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのズレの原因として図4を参照して説明した上記第1の原因は、ノズル4a,4b,4cに対して全く同じように作用するので、上記第1の原因の方が上記第2の原因より影響が大きければ、ノズル4a,4b,4cの各往動塗布軌跡の間隔は、互いに寸法Pで差異は生じない。そこで、図13、図14では、ノズル4a,4b,4cの各往動塗布軌跡は互いに差異がないものとして説明している。ただし、上記第2の原因の方が上記第1の原因より影響が大きければ、ノズル4a,4b,4cの各往動塗布軌跡の間隔に差異が生じることも考えられる。その場合には、図12(c)で説明した塗布処理開始位置を、その差異の平均値に基づき決定すればよい。
【0084】
こうして、基板1のアライメント・補正処理が完了すると、続いて塗布処理を実行する。塗布処理の手順は、図10を参照して説明した第1実施形態と同じである。ただし、往動時には、最も左に位置するノズル4aが溝11より右側に達すると、ステップS304で「YES」と判断され、復動時には、最も右に位置するノズル4cが溝11より左側に達すると、ステップS308で「YES」と判断される。
【0085】
以上説明したように、この第2実施形態によれば、ノズル4a,4b,4cの各々について往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向における差異ΔD31,ΔD32,ΔD33を求め、これらの平均値ΔD30をズレ量とし、このズレ量ΔD30に基づきY方向の補正移動量P21,P22を求めている。そして、テーブル2を補正移動量P21,P22ずつY方向に移動させている。具体的には、往動吐出から復動吐出への切換時には、補正移動量P21だけY方向に移動させ、復動吐出から往動吐出への切換時には、補正移動量P22だけY方向に移動させている。したがって、往動吐出と復動吐出のいずれにおいても、基板1の溝11に精度良く塗布液を塗布することができる。
【0086】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。上記第1実施形態および第2実施形態では、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量を補正している。これに対して、この第3実施形態および次に説明する第4実施形態は、X方向に対して往動塗布軌跡および復動塗布軌跡に傾きが生じたときに、これを補正するようにしたものである。
【0087】
すなわち、発明者は、X方向に対して往動塗布軌跡および復動塗布軌跡に傾きが生じることがあることが分った。この原因について検討した結果、発明者は、以下のようにして傾きが生じるのではないかと推測している。すなわち、上記図4を参照して説明したように、急加速時に印加される力によって図4中、破線で示すように傾いたノズルホルダ5が、等速運動中(つまり塗布液の吐出中)に、加速による力の作用がなくなるため、図4中、実線で示すような傾きのない状態に戻る。このように移動中に傾きが解消されると、ノズル4の吐出口がX方向に平行に移動しないことになるため、往動時と復動時とで塗布軌跡にX方向に対する傾きが生じるということが考えられる。そこで、この第3実施形態および次に説明する第4実施形態では、この傾きを補正するようにしている。
【0088】
この第3実施形態は、この発明の第2態様にかかる塗布装置の一実施形態である。第3実施形態の構成は、図1〜図3を参照して説明した第1実施形態と同様である。また、第3実施形態の動作は、図6を参照して説明した第1実施形態と同様である。ただし、アライメント・補正処理および塗布処理の一部の動作が第1実施形態のアライメント・補正処理(図7)および塗布処理(図10)と相違している。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0089】
図15は、第3実施形態のアライメント・補正処理のフローチャート、図16はCCDカメラの画像を模式的に示す図、図17は、第3実施形態における往動塗布軌跡F3および復動塗布軌跡B3を示す図である。また、図18は、第3実施形態の塗布処理のフローチャートである。なお、これらの図において、第1実施形態と同一構成および同一ステップには同一符号を付している。
【0090】
図15のステップS202で基板1の非塗布領域13上に形成された往動塗布軌跡F3が、CCDカメラ61,62で撮像される(ステップS203)。これによって、例えば図16(a)中の画像I61,I62に示すような往動塗布軌跡F3の光学像If3が撮像され、画像処理部63で適当な画像処理が施された後、その往動塗布軌跡F3を示す画像データが制御部3に出力され、記憶部64に一時的に記憶される。
【0091】
また、ステップS205で基板1の非塗布領域13上に形成された復動塗布軌跡B3が、CCDカメラ61,62で撮像される(ステップS206)。これによって、例えば図16(b)中の画像I61,I62に示すような復動塗布軌跡B3の光学像Ib3が撮像され、画像処理部63で適当な画像処理が施された後、その復動塗布軌跡B3を示す画像データが制御部3に出力され、記憶部64に一時的に記憶される。
【0092】
そして、ステップS206に続くステップS221では、記憶部64に記憶されている往動塗布軌跡F3および復動塗布軌跡B3の画像データに基づき、制御部3によって、各塗布軌跡のX方向に対する傾斜角度などが算出され、記憶部64に書き込まれる(ステップS221)。すなわち、往動塗布軌跡F3の光学像If3の画像データに基づき、往動塗布軌跡F3のX方向に対する往動傾斜角度θf3と、往動塗布軌跡F3における塗布液の塗布開始位置である往動塗布開始位置Pf3とが算出される。また、復動塗布軌跡B3の光学像Ib3の画像データに基づき、復動塗布軌跡B3のX方向に対する復動傾斜角度θb3と、復動塗布軌跡B3における塗布液の塗布開始位置である復動塗布開始位置Pb3とが算出される。
【0093】
次いで、これらの算出されたデータに基づき、補正角度が算出され、記憶部64に書き込まれる(ステップS222)。すなわち、テーブル2は、図1に示すように、その中心のZ軸(すなわち基板1の法線)回りに回転するように構成されている。そこで、回転中心Zに対する往動塗布開始位置Pf3の方向および距離と、往動傾斜角度θf3とに基づき、往動補正角度が算出される。また、回転中心Zに対する復動塗布開始位置Pb3の方向および距離と、復動傾斜角度θb3とに基づき、復動補正角度が算出される。なお、この第3実施形態では、図17に示すように、往動塗布開始位置Pf3と復動塗布開始位置Pb3とは、Y方向において一致するものとしている。したがって、基板1のY方向の移動では、移動量を補正していない。
【0094】
次に、図18の塗布処理について説明すると、ステップS301に続いて、テーブル2が往動補正角度に応じた角度だけ回転された(ステップS321)後に、ステップS302に進み、ノズル4からの塗布液の吐出が開始される。そして、ステップS305で「NO」と判断されると、ステップS322において、Y方向にテーブル2をピッチP(基準移動量)だけ移動するとともに、θ方向に復動補正角度に応じた角度だけ回転する(ステップS322)。さらに、ステップS309で「NO」と判断されると、ステップS323において、Y方向にテーブル2をピッチP(基準移動量)だけ移動するとともに、θ方向に往動補正角度に応じた角度だけ回転する(ステップS323)。なお、ステップS322,S323では、Y方向の移動とθ方向の回転とは、いずれを先に行ってもよいし、あるいは同時に行ってもよい。
【0095】
ここで、ステップS321,S323では,いずれも往動補正角度に応じた角度だけ回転しているが、ステップS321の回転は、基板1の溝11がX方向に平行な状態からの回転である一方、ステップS323の回転は、ステップS322において復動補正角度に応じた角度の回転が行われた後の回転であるから、両者の実際の回転角度は互いに異なっている。そこで、上記図15のステップS222では、これらの実際の回転角度が算出されて記憶部64に書き込まれている。また、ステップS322では、復動補正角度に応じた角度だけ回転しているが、この回転は、往動補正角度に応じた角度の回転が行われた後の回転であり、上記図15のステップS222では、この点を加味した実際の回転角度が算出されて記憶部64に書き込まれている。
【0096】
以上説明したように、この第3実施形態によれば、往動塗布軌跡F3のX方向に対する往動傾斜角度θf3を算出し、これに基づき往動補正角度を算出するとともに、復動塗布軌跡B3のX方向に対する復動傾斜角度θb3を算出し、これに基づき復動補正角度を算出している。そして、往動吐出と復動吐出との切換ごとに次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ基板1を回転している。したがって、往動吐出と復動吐出のいずれにおいても、基板1の溝11に精度良く塗布液を塗布することができる。
【0097】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、この発明の第3態様にかかる塗布装置の一実施形態である。第4実施形態の構成は、図1〜図3を参照して説明した第1実施形態と同様である。また、第4実施形態の動作は、図6を参照して説明した第1実施形態と同様である。ただし、アライメント・補正処理および塗布処理の一部の動作が第1実施形態のアライメント・補正処理(図7)および塗布処理(図10)と相違している。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0098】
図19は、第4実施形態のアライメント・補正処理のフローチャート、図20は、第4実施形態における往動塗布軌跡F4および復動塗布軌跡B4を示す図である。また、図21は、第4実施形態の塗布処理のフローチャートである。なお、これらの図において、第1実施形態と同一構成および同一ステップには同一符号を付している。
【0099】
図19のステップS203,S206で、往動塗布軌跡F4および復動塗布軌跡B4をCCDカメラ61,62で撮像すると、それぞれ第3実施形態の図16に示すような傾斜した光学像が得られ、画像処理部63で適当な画像処理が施された後、その往動塗布軌跡F4および復動塗布軌跡B4を示す画像データが制御部3に出力され、記憶部64に一時的に記憶される。
【0100】
そして、ステップS206に続くステップS231では、記憶部64に記憶されている往動塗布軌跡F4および復動塗布軌跡B4の画像データに基づき、制御部3によって、各塗布軌跡のX方向に対する傾斜角度などが算出され、記憶部64に書き込まれる(ステップS231)。すなわち、往動塗布軌跡F4の光学像の画像データに基づき、往動塗布軌跡F4のX方向に対する往動傾斜角度θf4と、往動塗布軌跡F4における塗布液の塗布開始位置である往動塗布開始位置Pf4とが算出される。また、復動塗布軌跡B4の光学像の画像データに基づき、復動塗布軌跡B4のX方向に対する復動傾斜角度θb4と、復動塗布軌跡B4における塗布液の塗布開始位置である復動塗布開始位置Pb4とが算出される。また、この第4実施形態では、図20に示すように、往動塗布開始位置Pf4と復動塗布開始位置Pb4とは、Y方向において一致していない。そこで、往動塗布開始位置Pf4と復動塗布開始位置Pb4とのY方向における距離であるY方向距離ΔDyが算出される。
【0101】
次いで、これらの算出されたデータに基づき、補正角度および補正移動量が算出され、記憶部64に書き込まれる(ステップS232)。すなわち、テーブル2は、図1に示すように、その中心のZ軸(すなわち基板1の法線)回りに回転するように構成されている。そこで、第3実施形態と同様に、回転中心Zに対する往動塗布開始位置Pf4の方向および距離と、往動傾斜角度θf4とに基づき、往動補正角度が算出される。また、回転中心Zに対する復動塗布開始位置Pb4の方向および距離と、復動傾斜角度θb4とに基づき、復動補正角度が算出される。また、Y方向距離ΔDyに基づき、Y方向の補正移動量が算出される。
【0102】
次に、図21の塗布処理について説明する。ステップS301に続くステップS331では、第3実施形態(図18のステップS321)と同様に、テーブル2が往動補正角度に応じた角度だけ回転される。また、ステップS305で「NO」と判断されると、ステップS332において、Y方向にテーブル2を補正移動量だけ移動するとともに、θ方向に復動補正角度に応じた角度だけ回転する(ステップS332)。さらに、ステップS309で「NO」と判断されると、ステップS333において、Y方向にテーブル2を補正移動量だけ移動するとともに、θ方向に往動補正角度に応じた角度だけ回転する(ステップS333)。
【0103】
なお、第3実施形態と同様に、ステップS332,S333では、Y方向の移動とθ方向の回転とは、いずれを先に行ってもよいし、あるいは同時に行ってもよい。
【0104】
また、第3実施形態で説明したように、ステップS331,S333では,両者の実際の回転角度は互いに異なっている。そこで、上記図19のステップS232では、これらの実際の回転角度が算出されて記憶部64に書き込まれている。また、ステップS332での復動補正角度に応じた角度の回転についても、上記図19のステップS232では、実際の回転角度が算出されて記憶部64に書き込まれている。
【0105】
以上説明したように、この第4実施形態によれば、往動塗布軌跡F4のX方向に対する往動傾斜角度θf4を算出し、これに基づき往動補正角度を算出するとともに、復動塗布軌跡B4のX方向に対する復動傾斜角度θb4を算出し、これに基づき復動補正角度を算出している。また、往動塗布軌跡F4の往動塗布開始位置Pf4と復動塗布軌跡B4の復動塗布開始位置Pb4とのY方向距離ΔDyを算出し、これに基づきY方向の補正移動量を算出している。そして、往動吐出と復動吐出との切換ごとに次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ基板1を回転するとともに、Y方向に補正移動量だけ移動している。したがって、往動吐出と復動吐出のいずれにおいても、基板1の溝11に精度良く塗布液を塗布することができる。
【0106】
(その他)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記各実施形態では、アライメント・補正処理をノズル交換ごとに行っているが、これに限られず、基板ごとに常に行うようにしてもよい。ただし、塗布精度の向上とスループットの向上との両方を考慮すると、ノズル交換ごとに行うことが好ましい。また、ノズル交換を検出するセンサを備え、ノズル交換の有無を自動的に判別するようにしてもよいが、例えばノズル交換を行ったか否かをユーザに確認するメッセージを表示部66に表示し、ユーザによる入力部65への入力操作に応じてアライメント・補正処理を行うようにしてもよい。
【0107】
また、ノズル交換ごとに限られず、例えばアライメント・補正処理を行うか否かを選択させるメッセージを表示部66に表示し、ユーザの入力部65への入力操作によりユーザに選択させるようにしてもよい。また、例えば入力部65への入力操作によりユーザがアライメント・補正処理の実行を指示したときのみ行うようにしてもよい。
【0108】
また、上記各実施形態では、2つのCCDカメラ61,62により往動塗布軌跡、復動塗布軌跡および溝(塗布領域)11を撮像しており、これらCCDカメラ61,62が本発明の「軌跡検出手段」として機能しているが、軌跡検出手段を構成するカメラの個数や配設位置などは上記実施形態に限定されるものではなく、任意であり、例えば単一のカメラにより往動塗布軌跡、復動塗布軌跡および溝(塗布領域)11を撮像するようにしてもよい。
【0109】
また、上記各実施形態では、軌跡検出手段たるCCDカメラ61,62により往動塗布軌跡および復動塗布軌跡を撮像し、画像処理部63により画像処理が施された画像データに基づき制御部3で自動的にズレ量を算出し、その結果に基づき補正移動量を算出しているが、これに限られない。例えば、ユーザが他の手段で予めズレ量を求めておいたり、CCDカメラ61,62により往動塗布軌跡および復動塗布軌跡を撮像した結果に基づき手動でズレ量を求めてもよい。そして、ユーザが入力部65によりズレ量を入力すると、制御部3は、その入力されたズレ量を記憶部64に書き込むようにすればよい。あるいはまた、ユーザがズレ量に基づき補正移動量を求めておき、ユーザが入力部65により補正移動量を入力すると、制御部3は、その補正移動量を記憶部64に書き込むようにしてもよい。
【0110】
また、上記各実施形態では、基板1を載置するテーブル2をY方向に移動可能に構成しているが、これに限られず、例えばテーブル2を固定しておき、ノズル台56をY方向に移動可能に構成するようにしてもよい。すなわち、ノズル4に対して基板1がY方向に相対的に移動できればよい。
【0111】
また、上記各実施形態では、往動吐出と復動吐出との切換時にノズルからの塗布液の吐出を停止することなく連続して行うようにしているが、これに限られない。例えば往動吐出と復動吐出との切換時にノズルからの塗布液の吐出を停止するようにしてもよい。すなわち、往動吐出は、往動開始時に塗布液の吐出を開始するとともに往動終了時に塗布液の吐出を停止するようにして行い、復動吐出は、復動開始時に塗布液の吐出を開始するとともに復動終了時に塗布液の吐出を停止するようにして行ってもよい。この形態では、基板1の溝11の左右両側にマスキングを施す必要はない。
【0112】
また、上記各実施形態では、往動吐出と復動吐出との切換時にノズルの移動方向を反転させて直ぐに移動を開始するようにしているが、これに限られない。例えば往動吐出と復動吐出との切換時にノズルを所定時間だけ一旦停止させた後、反転させて移動を開始するようにしてもよい。
【0113】
また、上記第2実施形態では、3個のノズルを備えているが、これに限られず、2個または4個以上でもよい。また、上記第2実施形態では、それぞれ1個の吐出口が設けられた3個のノズル4a,4b,4cを備えているが、これに限られず、複数の吐出口が設けられた1個のノズルを備えるようにしてもよい。
【0114】
また、上記第2実施形態では、ノズル4a,4b,4cからR,G,B用塗布液をそれぞれ吐出するように構成しているが、これに限られない。例えばノズル4a,4b,4cから同一の例えばR用塗布液を吐出するように構成してもよい。この形態では、ノズル4a,4b,4cは、Y方向に溝11のピッチPの3倍の間隔3Pで並んで配設するようにすればよい。また、この形態では、往動吐出から復動吐出への切換時のY方向移動の際の補正移動量P21は、
P21=9P−ΔD30
によって求められる。また、復動吐出から往動吐出への切換時のY方向移動の際の補正移動量P22は、
P22=9P+ΔD30
によって求められる。
【0115】
また、上記第2実施形態では、各ノズルにおける往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向差異の平均値をズレ量としているが、各差異のバラツキが大きいときは、制御部3は塗布処理を禁止するようにしてもよい。すなわち、制御部3は、各差異のうち最大値と平均値との差を求め、この差が予め定められた上限値以上のときは、塗布処理を禁止するようにしてもよい。例えば上記第2実施形態では、ノズル4cのY方向差異ΔD33が最も大きい。そこで、上限値ΔDthとすると、
ΔDth≦|ΔD30−ΔD33|
のときは、制御部3は塗布処理を禁止するようにしてもよい。また、このとき、制御部3は、表示部66にその旨を表示してユーザに報知するようにしてもよい。なお、上限値ΔDthは、塗布処理が精度良く行えないような値であり、基板1の溝11の幅寸法などに基づき予め定めておき、記憶部64に記憶しておけばよい。
【0116】
また、上記第3、第4実施形態では、第1実施形態と同様にノズルを1個だけ備えているが、これに限られず、複数個備えるようにしてもよい。あるいは、複数の吐出口が設けられた1個のノズルを備えるようにしてもよい。それらの場合には、第2実施形態と同様に、各傾斜角度の平均値に基づき補正角度を求めたり(第3、第4実施形態)、各Y方向距離の平均値に基づき補正移動量を求めればよい(第4実施形態)。
【0117】
また、上記第3、第4実施形態では、補正角度だけ基板1を回転すると、当然のことながら、基板1はX方向およびY方向にもずれる。しかし、ここでは補正角度が微小であるため、その回転によるX方向およびY方向のズレは無視している。なお、基板1の溝11がファインピッチ(高精細)であり、このズレが無視できないときは、例えば第3実施形態では、制御部3は、往動補正角度および復動補正角度に基づき、Y方向の移動量やX方向におけるノズル4からの塗布液の吐出開始位置を補正すればよい。また、例えば第4実施形態では、制御部3は、往動補正角度および復動補正角度に加えてY方向距離ΔDyを加味すればよい。
【0118】
さらに、本発明は、半導体ウエハ、ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板に、液体状の有機EL材料や蛍光体、フォトレジスト液、現像液、エッチング液などの塗布液を塗布する塗布装置および塗布方法に対して適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、所望の塗布液を基板上の塗布領域に塗布する塗布装置および塗布方法全般に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】この発明の第1態様にかかる塗布装置の第1実施形態を示す図である。
【図2】図1の塗布装置でのノズル移動機構の概略構成を示す図である。
【図3】図1の塗布装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】ノズルホルダの傾きを説明する図である。
【図5】塗布液の吐出方向の傾きを説明する図である。
【図6】第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図7】アライメント・補正処理のフローチャートである。
【図8】CCDカメラの画像を模式的に示す図である。
【図9】基板をY方向に等ピッチで移動させた場合と可変ピッチ(補正移動量)で移動させた場合とを対比した説明図である。
【図10】塗布処理のフローチャートである。
【図11】この発明の第1態様にかかる塗布装置の第2実施形態を示す図である。
【図12】CCDカメラの画像を模式的に示す図である。
【図13】各ノズルについて、往動塗布軌跡と復動塗布軌跡とのY方向における差異を説明する図である。
【図14】基板をY方向に補正移動量で移動させた場合の溝と塗布軌跡との位置関係を示す図である。
【図15】第3実施形態のアライメント・補正処理のフローチャートである。
【図16】CCDカメラの画像を模式的に示す図である。
【図17】第3実施形態における往動塗布軌跡および復動塗布軌跡を示す図である。
【図18】第3実施形態の塗布処理のフローチャートである。
【図19】第4実施形態のアライメント・補正処理のフローチャートである。
【図20】第4実施形態における往動塗布軌跡および復動塗布軌跡を示す図である。
【図21】第4実施形態の塗布処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0121】
1…基板、2…テーブル、3…制御部(Y方向制御手段、回転制御手段、報知手段)、4…ノズル(塗布液供給手段)、41…液供給部(塗布液供給手段)、11…溝(塗布領域)、21…テーブル移動機構(Y方向移動手段、基板回転手段)、50…ノズル移動機構(X方向移動手段)、51…ガイド棒(X方向移動手段)、52,53…ローラ(X方向移動手段)、54…無端ベルト(X方向移動手段)、55…モータ(X方向移動手段)、61,62…CCDカメラ(軌跡検出手段)、64…記憶部(記憶手段)、65…入力部(入力手段)、66…表示部(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布装置において、
前記基板に対してノズルをX方向に往復移動させるX方向移動手段と、
前記ノズルを有し、前記ノズルの往動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる往動吐出と前記ノズルの復動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して前記塗布領域に前記塗布液を供給する塗布液供給手段と、
前記ノズルに対して前記基板をY方向に相対移動させるY方向移動手段と、
前記往動吐出時に形成される往動塗布軌跡と、前記復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量を記憶する記憶手段と、
前記所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量を前記ズレ量に基づき補正して補正移動量を求め、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに、前記Y方向移動手段を制御して次の吐出動作に先立って前記補正移動量だけ前記基板をY方向に相対移動させるY方向制御手段と
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記往動吐出により形成される塗布軌跡および前記復動吐出により形成される塗布軌跡を検出する軌跡検出手段をさらに備え、
前記Y方向制御手段は、前記軌跡検出手段による検出結果に基づき前記ズレ量を算出し、前記記憶手段に書き込む請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記ノズルは交換可能に構成され、
前記軌跡検出手段は、前記ノズルの交換ごとに検出動作を実行し、
前記Y方向制御手段は、前記ノズルの交換ごとに、前記軌跡検出手段による検出結果に基づき前記ズレ量を算出し、前記記憶手段に書き込む請求項2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記ノズルとして、少なくとも一つの吐出口が設けられた複数のノズルまたは複数の吐出口が設けられた少なくとも一つのノズルを備え、各吐出口からそれぞれ前記塗布液が吐出される請求項2または3記載の塗布装置であって、
前記軌跡検出手段は、前記各吐出口ごとに検出動作を実行し、
前記Y方向制御手段は、前記軌跡検出手段による検出結果に基づき、前記各吐出口ごとに、双方の前記塗布軌跡のY方向における差異をそれぞれ算出し、各差異の平均値を前記ズレ量として前記記憶手段に書き込む塗布装置。
【請求項5】
前記Y方向制御手段は、前記各差異のうちの最大値と前記平均値との差が予め設定された上限値以上のときは、塗布動作を禁止する請求項4記載の塗布装置。
【請求項6】
前記各差異のうちの最大値と前記平均値との差が予め設定された上限値以上のときは、その旨を報知する報知手段をさらに備える請求項4または5記載の塗布装置。
【請求項7】
前記ズレ量を入力する入力手段をさらに備え、
前記Y方向制御手段は、前記入力手段により入力されたズレ量を前記記憶手段に書き込む請求項1記載の塗布装置。
【請求項8】
前記Y方向制御手段は、
前記補正移動量として、前記基準移動量に前記ズレ量を加算した第1補正値と、前記基準移動量から前記ズレ量を減算した第2補正値とを求め、
前記往動吐出から前記復動吐出に切り換える際には前記2つの補正値のうち前記ズレ量の正負に応じた方の補正値だけ前記基板を相対移動させる一方、前記復動吐出から前記往動吐出に切り換える際には他方の補正値だけ前記基板を相対移動させる
請求項1ないし7のいずれかに記載の塗布装置。
【請求項9】
X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布方法において、
前記基板に対してX方向に往復移動可能に構成されたノズルの往動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる往動吐出と前記ノズルの復動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して前記塗布領域に前記塗布液を供給する塗布液供給工程と、
前記往動吐出時に形成される往動塗布軌跡と、前記復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とのY方向におけるズレ量を取得するズレ量取得工程と、
前記所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量を前記ズレ量に基づき補正して補正移動量を求め、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに、次の吐出動作に先立って前記補正移動量だけ前記ノズルに対して前記基板をY方向に相対移動させるY方向移動工程と
を備えたことを特徴とする塗布方法。
【請求項10】
X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布装置において、
前記基板に対してノズルをX方向に往復移動させるX方向移動手段と、
前記ノズルを有し、前記ノズルの往動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる往動吐出と前記ノズルの復動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して前記塗布領域に前記塗布液を供給する塗布液供給手段と、
前記ノズルに対して前記基板をY方向に相対移動させるY方向移動手段と、
前記基板を該基板の法線回りに回転する基板回転手段と、
前記往動吐出時に形成される往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度、および前記復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度を記憶する記憶手段と、
前記所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに前記Y方向移動手段を制御して次の吐出動作に先立って、前記基準移動量だけ前記基板をY方向に相対移動させるY方向制御手段と、
前記往動傾斜角度に基づき往動補正角度を求め、前記復動傾斜角度に基づき復動補正角度を求め、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに前記基板回転手段を制御して次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ前記基板を回転させる回転制御手段と
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項11】
前記往動吐出により形成される塗布軌跡および前記復動吐出により形成される塗布軌跡を検出する軌跡検出手段をさらに備え、
前記回転制御手段は、前記軌跡検出手段による検出結果に基づき前記往動傾斜角度および前記復動傾斜角度を算出して前記記憶手段に書き込む請求項10記載の塗布装置。
【請求項12】
前記往動傾斜角度および前記復動傾斜角度を入力する入力手段をさらに備え、
前記回転制御手段は、前記入力手段により入力された前記往動傾斜角度および前記復動傾斜角度を前記記憶手段に書き込む請求項10記載の塗布装置。
【請求項13】
X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布方法において、
前記基板に対してX方向に往復移動可能に構成されたノズルの往動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる往動吐出と前記ノズルの復動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して前記塗布領域に前記塗布液を供給する塗布液供給工程と、
前記往動吐出時に形成される往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度、および前記復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度を取得する傾斜角度取得工程と、
前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、前記ノズルに対して前記基板を前記所定間隔のN(Nは正の整数)倍の基準移動量だけY方向に相対移動させるY方向移動工程と、
前記往動傾斜角度に基づき往動補正角度を求め、前記復動傾斜角度に基づき復動補正角度を求め、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ前記基板を該基板の法線回りに回転させる回転工程と
を備えたことを特徴とする塗布方法。
【請求項14】
X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布装置において、
前記基板に対してノズルをX方向に往復移動させるX方向移動手段と、
前記ノズルを有し、前記ノズルの往動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる往動吐出と前記ノズルの復動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して前記塗布領域に前記塗布液を供給する塗布液供給手段と、
前記ノズルに対して前記基板をY方向に相対移動させるY方向移動手段と、
前記基板を該基板の法線回りに回転する基板回転手段と、
前記往動吐出時に形成される往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度、前記復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度、および前記往動塗布軌跡における往動塗布開始位置と前記復動塗布軌跡における復動塗布開始位置とのY方向におけるY方向距離を記憶する記憶手段と、
前記所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量を前記Y方向距離に基づき補正して補正移動量を求め、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに前記Y方向移動手段を制御して次の吐出動作に先立って、前記補正移動量だけ前記基板をY方向に相対移動させるY方向制御手段と、
前記往動傾斜角度に基づき往動補正角度を求め、前記復動傾斜角度に基づき復動補正角度を求め、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに前記基板回転手段を制御して次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ前記基板を回転させる回転制御手段と
を備えたことを特徴とする塗布装置。
【請求項15】
前記往動吐出により形成される塗布軌跡および前記復動吐出により形成される塗布軌跡を検出する軌跡検出手段をさらに備え、
前記回転制御手段は、前記軌跡検出手段による検出結果に基づき前記往動傾斜角度および前記復動傾斜角度を算出して前記記憶手段に書き込み、
前記Y方向制御手段は、前記軌跡検出手段による検出結果に基づき、前記往動塗布開始位置および前記復動塗布開始位置を求め、それらの位置から前記Y方向距離を算出して前記記憶手段に書き込む請求項14記載の塗布装置。
【請求項16】
前記往動傾斜角度、前記復動傾斜角度および前記Y方向距離を入力する入力手段をさらに備え、
前記回転制御手段は、前記入力手段により入力された前記往動傾斜角度および前記復動傾斜角度を前記記憶手段に書き込み、
前記Y方向制御手段は、前記入力手段により入力された前記Y方向距離を前記記憶手段に書き込む請求項14記載の塗布装置。
【請求項17】
X方向に線状に延設されるとともにX方向に直交するY方向に所定間隔で並んで基板上に配設された、複数の塗布領域に塗布液を塗布する塗布方法において、
前記基板に対してX方向に往復移動可能に構成されたノズルの往動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる往動吐出と前記ノズルの復動時に前記ノズルから前記塗布液を連続吐出させる復動吐出とを交互に実行して前記塗布領域に前記塗布液を供給する塗布液供給工程と、
前記往動吐出時に形成される往動塗布軌跡とX方向とのなす往動傾斜角度、および前記復動吐出時に形成される復動塗布軌跡とX方向とのなす復動傾斜角度を取得する傾斜角度取得工程と、
前記往動塗布軌跡における往動塗布開始位置と前記復動塗布軌跡における復動塗布開始位置とのY方向におけるY方向距離を取得するY方向距離取得工程と、
前記所定間隔のN(Nは正の整数)倍を基準移動量とし該基準移動量を前記Y方向距離に基づき補正して補正移動量を求め、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、前記補正移動量だけ前記基板をY方向に相対移動させるY方向移動工程と、
前記往動傾斜角度に基づき往動補正角度を求め、前記復動傾斜角度に基づき復動補正角度を求め、前記往動吐出と前記復動吐出との切換を行うごとに次の吐出動作に先立って、次の吐出動作に対応する方の補正角度だけ前記基板を該基板の法線回りに回転させる回転工程と
を備えたことを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2008−68202(P2008−68202A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249249(P2006−249249)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】