説明

塗布装置および塗布方法

【課題】塗料の種類や塗布条件が変更されても塗料の塗布量を塗布幅方向に均一化できる塗布装置を提供する。
【解決手段】マニホールド(15)内に、塗料の流れを塗料の塗布幅方向に広げるための流路を形成する流路調整ブロック(21,22)を設け、流路調整ブロック(21)には、ブロックを変形させる駆動手段(23,24)が付いており、変形可能な部位の流量が近隣の塗布量より多い場合はスリット方向に、少ない場合はスリット方向と反対側に変形する事により幅方向塗布量を均一化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクストルージョン型の塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材などに塗料を塗布する際には、エクストルージョン型の塗布ノズルが使用されている。
このエクストルージョン型の塗布ノズルを使用した塗布装置100を図11に示す。
【0003】
連続走行する基材103に塗料101を塗布する塗布装置100は、タンク102から送液ポンプ105と三方弁106を介して塗布ノズル104に塗料101が供給され、塗布ノズル104から吐出された塗料101が、塗布ノズル104に対向して設置されたバックアップロール107の上を連続走行中の基材103に塗布している。
【0004】
ここでは、バックアップロール107にフープ状の基材103を抱き付かせて、基材103上に塗布するロールトウロール方式を例に挙げて説明しているが、パネルなど一枚の平板状の基材103を塗布ノズル104と対向する位置に設置し、液の吐出と共に基材103もしくは塗布ノズル104を移動させて、基材103上に塗布する枚葉塗布方式もある。
【0005】
何れの塗布方式にしても、塗布ノズルを用いる理由として、安定して面内均一性に優れた塗膜を得ることを主目的としている。
塗布精度を向上させるために様々なノズルが提案されており、特許文献1には塗料の種類や塗布条件の違いに応じて塗布ノズルを交換することによって、塗料の塗布量を塗布幅方向に均一化できる塗布ノズルが提案されている。
【0006】
図12(a)(b)は特許文献1の塗布ノズルを示す。
図12(a)は、塗布ノズル110から吐出される塗料の塗布幅方向と直交する方向に切断した断面図、図12(b)は、塗布ノズル110のダイ上板111を省略した状態の上面図である。
【0007】
塗布ノズル110は、ダイ上板111の基端とダイ下板112の基端の間に、交換が可能なブロック122を挟んで対向させ、ダイ上板111の先端とダイ下板112の先端の間に、スリット114が形成されている。ブロック122は一対のブロック122a,122bからなり、スリット114の近傍には交換が可能なブロック121が配置されている。
【0008】
ブロック122a,122bの間に形成された供給口123からマニホールド113に供給された塗料は、ブロック121によって塗布幅方向に広がりながらダイ上板111とブロック121の間を流れてスリット114の開口114aから矢印I方向に吐出される。そして、この塗布ノズル110では、ブロック121,122を別のものと入れ替えることで、流路120および供給口123の形状を変更することができる。
【0009】
このように、特許文献1に提案された塗布ノズルによれば、塗料の種類や塗布条件が変更されても、塗布ノズルを改めて作り直す必要がなく、塗料の種類や塗布条件に応じてブロック121,122を選択することで、塗料の塗布量を塗布幅方向に均一化できる。
【0010】
また、特許文献2には塗布量を均一化する手段として、図13(a)(b)に示すように、ダイヘッド本体31のスリット114の出口付近の間隙を、幅方向に設けた複数の調節ボルト131a,131b,132a,132b,133a,133bとで物理的に変形させ、流量の多い箇所は間隙を狭め、逆に少ない箇所は間隙を広げる事で出口の抵抗を変化させ幅方向の流量均一化を図る手段が提案されている。
【特許文献1】特開平10−5660号公報
【特許文献2】特開2006−346649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の構成では、組み替え式であるため内部ブロックを交換する事で多品種の塗料に対応できる可能性はあるが、時間的に粘度が変動する塗料やロット間の粘度変動が大きい塗料に対しては対応しきれず、初期に比べ時間と共に幅方向での塗布量のバラツキが大きくなってしまう恐れがある。また、直線的な形状のマニホールドを形成しているノズルにノズル中央から液を供給した時に生じる凸状の幅方向流量分布とハンガー形状のマニホールドを形成しているノズルにノズル中央から液を供給した時に生じる凹状の幅方向流量分布の中間的な流れになるため、前述の2つの幅方向流量分布を組み合わせたW状の幅方向流量分布となる。
【0012】
特許文献2の構成では、間隙を調整する事で大きな流量分布を調整することが出来るが、何度も繰返し変化させる事によりリップ35の部分にひずみが残り、リップが変形してしまう可能性がある。リップ真直度が悪化する事でスリット出口部分では均一に吐出されているが、吐出された塗料を最後に整流する機能を果たすリップ部で基材とリップ間で形成するギャップが幅方向で分布をもってしまうために、リップ部の凹凸を反転した厚み分布を持つ塗膜になってしまう問題がある。
【0013】
本発明は、前記課題を解決するため、塗料の種類や塗布条件が変更されても、塗料の塗布量を塗布幅方向に均一化でき、リップ部を変形させること無く精度を高めることができる塗布装置と塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1記載の塗布装置は、マニホールドに供給された塗料をスリットから吐出するダイを有するエクストルージョン型の塗布装置であって、前記マニホールド内に着脱自在に取り付けられて前記塗料の流れを前記塗料の塗布幅方向に広げる流路を形成する流路調整ブロックを設け、前記流路調整ブロックの形状を可変して前記流路の形状を変更する駆動手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2記載の塗布装置は、請求項1において、前記流路調整ブロックは、前記マニホールドに塗料を供給する供給口の側の交換ブロックと、前記交換ブロックよりも前記スリットの側に配設された可動ブロックとで構成され、かつ、前記スリットへ続く流路の幅を可変するように前記可動ブロックを移動させる駆動手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3記載の塗布装置は、請求項2において、前記可動ブロックを、塗布幅方向に分割された複数のブロックで構成したことを特徴とする。
本発明の請求項4記載の塗布装置は、請求項1において、前記スリットを通過する塗料の圧力を測定するセンサを設けたことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5記載の塗布装置は、請求項4において、前記センサは、塗布幅方向に沿って複数設けたことを特徴とする。
本発明の請求項6記載の塗布方法は、マニホールドに供給された塗料をスリットから吐出するダイから塗布するに際し、前記塗料の流れを前記塗料の塗布幅方向に広げる流路を形成する流路調整ブロックを前記マニホールド内に着脱自在に取り付け、前記ダイの塗布幅方向の流量分布が小さくなるように駆動手段を運転して前記流路調整ブロックの形状を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
この構成によれば、塗料の流れを塗料の塗布幅方向に広げるための流路を形成する流量調整ブロックを有しているため、塗料の種類や塗布条件が変更されても、ブロックの位置調整および変形で塗料の塗布量を塗布幅方向に均一化できる。また、本発明の塗布装置に使用されるダイは、変形部分がリップ部とは関係のない部分なので、ダイのリップ部の精度を損なうこと無く、塗膜の幅方向精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の各実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1〜図3は本発明の実施の形態1を示す。
【0020】
図1は実施の形態1における塗布装置の断面図(図2のB−BB断面)である。また、図2は、本発明の実施の形態に係る塗布装置の斜視図で、ダイ上板と片方の側板を省略して描いている。図3は図2に示す塗布装置の断面図(図2のA−AA断面)である。
【0021】
ダイ上板11とダイ下板12の間に形成されたマニホールド15に供給された塗料14を、スリット16から吐出するダイ10を有するエクストルージョン型の塗布装置であって、マニホールド15内には、流路調整ブロックを構成する可動ブロック21と交換ブロック22が着脱自在に取り付けられて塗料の流れを塗料の塗布幅方向に広げる流路を形成している。
【0022】
交換ブロック22は、マニホールド15に塗料14を供給する供給口13bの側に取り付けられており、可動ブロック21は、図3に示すように、塗布幅方向に分割された複数の可動ブロック21a〜21eで構成されており、交換ブロック22よりもスリット16の側に設けられている。可動ブロック21aを塗布幅方向の中央にして、その両側に可動ブロック21b,21c,21d,21eが配置されている。可動ブロック21aは、スリット16へ続く流路の幅(ダイ上板11との間の隙間)を可変するように可動ブロック21を移動させる駆動手段を構成する第1,第2の駆動部23,24のうちの第1の駆動部23によって、ダイ上板11との隙間Daを可変する方向に駆動される。可動ブロック21aとこれに隣接した可動ブロック21b,21cの間は、裏面側でボルト51aとナット52a,ボルト51bとナット52bによって連結されている。可動ブロック21cとこれに隣接する可動ブロック21eの間も、裏面側でボルト51cとナット52cによって連結されている。可動ブロック21bとこれに隣接する可動ブロック21dの間も、裏面側でボルト51dとナット52dによって連結されている。可動ブロック21b,21c,21d,21eは格別に第2の駆動部24b,24c,24d,24eによって、ダイ上板11との隙間Db,Dc,Dd,Deを可変する方向に、第1の駆動部23とは別に駆動されている。
【0023】
なお、可動ブロック21b,21c,21d,21eには変形しやすいように接合部の付近にスリット53を入れて薄肉部54が形成されている。さらに、最も外側の可動ブロック21dと可動ブロック21eの間は、裏面側で連結部27によってピン55を介して連結されている。
【0024】
なお、第1の駆動部23はダイ下板12を基点として可動ブロック21の全体を上下動させる事ができる。第2の駆動部24は連結部27を基点として可動ブロック21b,21c,21d,21eを上下動させる事ができる。
【0025】
マニホールド15内に塗料を供給する供給口13bは、この実施の形態では交換ブロック22の中央の底部で開口している。供給口13bからマニホールド15に流入した塗料は、交換ブロック22の傾斜面57a,57bと可動ブロック21の傾斜面56a,56bによって塗布方向の幅方向に広げられながら、可動ブロック21とダイ上板11の間の隙間を乗り越えてスリット16から吐出する。
【0026】
この実施の形態ではダイ側板18によって両側を閉じて塗料が漏れないように構成したが、ダイ側板18をダイ上板11またはダイ下板12と一体に設けて構成することもできる。
【0027】
このように構成したため、塗料14の種類や塗料の状態が変化しても、可動ブロック21や交換ブロック22の変更や、第1,第2の駆動部23,24を適切に調節して隙間D〜Deを可変することによって、塗料14の塗布量を塗布幅方向に均一化できる。
【0028】
さらに、図2に示すように、スリット16には塗布幅方向に複数個、幅方向と垂直な流れ方向に2つ以上の圧力センサ30がダイ下板12(またはダイ上板11)に設けられており、この複数の圧力センサ30によって塗布幅方向の圧力分布を監視する事で、圧力と流量はほぼ比例関係にあるので、幅方向の流量差を算出し、部分的に多い部分を、第1,第2の駆動部23,24を調節して隙間Da〜Deを調節して幅方向流量を均一に直ちに制御する事が可能となる。
【0029】
また、マニホールド15内の角部40及び隅部41は、曲面形状に形成することにより、マニホールド15内の塗料14の滞留を防止できる。
また、ダイ下板12には、供給管13と供給口13b(図2参照)とを接続する流路45が形成されている。そして、流路45には屈曲部45aが形成されている。ここで、供給管13として図1に示すようなL字管を使用した場合、流路45内に流入した塗料14の流速が、供給管13の屈曲部13aの形状を反映して流路45の内径方向に不均一になる場合がある。このような場合でも、本実施の形態では、塗料14が流路45に形成された屈曲部45aを通過する際に、塗料14の流速のバラツキが解消されるため、供給口13b(図2参照)へ向けて、均一に塗料14を供給できる。
【0030】
(実施の形態2)
図4〜図6は本発明の実施の形態2を示す。
図4はこの実施の形態におけ塗布装置の断面図(図5のB−BB断面)である。図5は塗布装置の斜視図で、ダイ上板11と片方の側板を省略して描いている。図6は図4のA−AA断面である。
【0031】
実施の形態1ではマニホールド15の中央から塗料14を供給していたのに対し、この実施の形態2では、側方から液を供給する形態(以下、側方供給という)である点が異なっている。その他の実施の形態1と同じ部分は省略し、相違点のみを説明する。
【0032】
図4と図5に示すように、供給口13bはダイ側板18で開口している。対向する他方の側板にも供給口がある。塗布時はどちらか一方の供給口は閉じられており、他方の供給口から塗料が供給され、マニホールド15を通り、スリット16を通じて基材に塗布される。
【0033】
実施の形態1の可動ブロック21の形状が傾斜面56a,56bを有した形状であったが、この実施の形態2の可変ブロック21の形状は、図5に示すように傾斜面56a,56bを有していない四角柱になっている。
【0034】
図6に示すように、可変ブロック21は、塗布幅方向に分割された複数の可動ブロック21a〜21eで構成されている。可動ブロック21a,21eの間に設けられた可動ブロック21b,21c,21dには、実施の形態1の可動ブロック21b,21c,21d,21eと同じように、変形しやすいように接合部の付近にスリット53を入れて薄肉部54が形成されている。
【0035】
可動ブロック21aとこれに隣接した可動ブロック21bの間、可動ブロック21eとこれに隣接した可動ブロック21dの間、可動ブロック21bとこれに隣接した可動ブロック21cの間、可動ブロック21cとこれに隣接した可動ブロック21dの間は、裏面側でボルト51a〜51dとナット52a〜52dによって連結されている。
【0036】
可動ブロック21a,21eは、スリット16へ続く流路の幅を可変するように第1の駆動部23a,23bによって、ダイ上板11との隙間Da,Deを可変する方向に駆動される。可動ブロック21b,21c,21dは格別に第2の駆動部24b,24c,24dによって、ダイ上板11との隙間Db,Dc,Ddを可変する方向に、第1の駆動部23a,23bとは別に駆動されている。
【0037】
さらに、最も外側の可動ブロック21aと可動ブロック21eの間は、裏面側で連結部27によってピン55を介して連結されている。
可変ブロック21a,21eを同量だけ動かせば可動ブロック21の全体を塗布幅方向に傾けること無く動かせ、どちらか一方を動かせば塗布幅方向に傾斜させることができる。
【0038】
この実施の形態2のように側方供給の場合には、塗料供給側に対し他方のダイ側板18の側ではマニホールド15の内の圧力が低くなる。これは塗料14が通る長さに比例して抵抗が大きくなるため、圧力が供給側から遠くなればなるほど低下するためである。スリット16はダイの幅方向に長さが一定であればマニホールド15からスリット16方向に向けて直線的に塗料は流れるので抵抗は幅方向に一様である。また、閉流路から大気開放された出口に流れる流体は入口の圧力が高いほど流量が多い。すなわち、マニホールド15で生じた幅方向での圧力勾配がスリット16の圧力勾配とほぼ比例しており、幅方向で圧力分布を持つと言う事は幅方向の流量分布が勾配を持つと言う事を示している。
【0039】
よって、側方供給では供給側からその他方のダイ側板18の側にかけて、隙間Daを幅方向に供給側を狭くし、その他方のダイ側板18の側を広くするように傾斜させ、マニホールド内の圧力が均一になるようにすれば、理論上は幅方向にほぼ均一な塗膜を得ることが出来る。
【0040】
しかしながら、実際の塗料では粉体やバインダーが入っているために流体にかかるせん断により粘度が変化するものが多く、供給側からその他方のダイ側板18の側にかけて、一様に流量が低下していく流れにはならず、供給側から少し幅方向中央側に入った箇所の流量が多くなる事が多い。このような塗料の場合に主だった傾斜については可動ブロック21a,21eを傾斜させ対応し、傾斜で対応できない部分を可変ブロック21b〜21dの調整で補えば更に均一な塗膜を得ることが出来る。
【0041】
実施の形態1と実施の形態2について、具体的な解析例を下記に示す。
なお、本発明は以下の解析例に限定されない。
(解析例1)
実施の形態1に示した塗布装置によって粘度が相違する2種類の塗料を塗布する際において、スリット16の位置及び形状と塗布幅のバラツキとの関係について検討した。
【0042】
塗料には、PbO、B、SiOおよびCaOの内の少なくとも一つ以上の成分を含有するガラス粉末、バインダ、可塑剤、および溶剤を含むT.I.=5の塗料Aとカーボン、コバルト酸リチウム、フッ素系樹脂、有機溶剤を含むT.I.=90の塗料Bの塗料データを用いて数値解析を行った。
【0043】
なお、T.I.とは、せん断速度が1[1/s]のときの粘度η1と、せん断速度が1000[1/s]のときの粘度η1000との比(η1/η1000)である。
また、解析に用いた塗布装置は、可動ブロック長さL1(図2参照):20mm、スリット幅D2(図1参照):0.5mm、スリット長L2(図2参照):40mm、テーパ角度θ1(図1参照):60°、スリット16における塗布幅に平行な方向の長さL3(図2参照):500mmとした。
【0044】
また、可動ブロック21は可動ブロック21aを中央に配置し、左右に2個ずつ可動ブロック21b,21dと可動ブロック21c,21eを連結させた構成とし、各可変ブロック21b〜21e上の隙間を図3に示す様Db,Dc,Dd,Deとする。
【0045】
塗布する際におけるマニホールド15(図1参照)内の塗料の圧力は、塗料A:0.01MPa、塗料B:0.2MPaとした。また、スリット16の開口から吐出される塗料の単位時間当たりの吐出量は、2000ml/分とした。
【0046】
そして、可動ブロック21aとダイ上板11との距離Da(図1参照)、可変ブロック21b〜21e上の隙間Db,Dc,Dd,Deを使用した塗料に応じて表1に示すように調整し、塗布幅のバラツキを調査した。その結果を表1に示す。
【0047】
なお、表1に示すRは、連続走行する集電体(図示せず)上に塗料A,Bを塗布し、塗布膜を形成した際において、前記塗布膜の塗布幅のバラツキを示す指標である。具体的には、前記塗布膜の塗布幅の平均値をWaverage、前記塗布膜の塗布幅の最大値をWmax、前記塗布膜の塗布幅の最小値をWminとした場合に、(Wmax−Wmin)/Waverageで算出される数値である。
【0048】
【表1】

この表1に示すように、隙間Daを適宜調整することによって、粘度の相違する塗料を塗布しても塗布幅のバラツキを同程度に抑えることができた。更に、解析例1−3,1−4に示すように、可変ブロック21d,21e、21b,21c上の隙間Dd・De、Db・Dcを調整する事でバラツキをより低減できる事がわかった。
【0049】
図7、図8に結果の一例として、解析例1−2、解析例1−4の幅方向厚み分布の結果を示す。
(解析例2)
実施の形態2に示した塗布装置によって粘度が相違する2種類の塗料を塗布する際において、スリット16の位置及び形状と塗布幅のバラツキとの関係について検討した。
【0050】
解析に用いた塗布装置は、可動ブロック長さL1(図5参照):20mm、スリット幅D2(図4参照):0.5mm、スリット長L2(図5参照):40mm、テーパ角度θ1(図4参照):60°、スリット16における塗布幅に平行な方向の長さL3(図5参照):500mmとした。
【0051】
また、可動ブロック21は図6に示すように、可動ブロック21a,21eを左右に配置し、その間に3個の可動ブロック21b,21c,21dを連結させた構成とし、各可変ブロック21a〜21e上の隙間を、Da,Db,Dc,Dd,Deとする。
【0052】
塗布する際におけるマニホールド15(図4参照)内の塗料の圧力は、塗料A:0.01MPa、塗料B:0.2MPaとした。また、スリット16の開口から吐出される塗料の単位時間当たりの吐出量は、2000ml/分とした。
【0053】
そして、可動ブロック上の隙間Da,Db,Dc,Dd,De(図6参照・最も供給側の隙間がDe)を使用した塗料に応じて表2に示すように調整し、塗布幅のバラツキを調査した。結果を表2に示す。
【0054】
なお、表2に示すRは、連続走行する集電体(図示せず)上に塗料A,Bを塗布し、塗布膜を形成した際において、前記塗布膜の塗布幅のバラツキを示す指標である。
【0055】
【表2】

この表2に示すように、隙間Da,Db,Dc,Dd,Deを適宜調整することによって、粘度の相違する塗料を塗布しても塗布幅のバラツキを同程度に抑えることができた。更に、解析例2−3,解析例2−4に示すように、隙間Dc,Ddを調整する事でバラツキをより低減でき、側方からの供給形態であっても本発明は有効である事がわかった。図9、図10に結果の一例として、解析例2−2、解析例2−4の幅方向厚み分布の結果を示す。
【0056】
本発明の塗布装置は、塗料が供給されるマニホールドとマニホールドに供給された塗料を吐出するスリットとを形成するダイを含むエクストルージョン型の塗布装置であり、例えば、連続走行する集電体に電池やコンデンサなどの電極材料であるコバルト酸リチウムやニッケル酸リチウム、白金、ルテニウムなどの活物質とカーボン、樹脂とを水または溶剤に分散した活物質塗料を塗布する塗布装置や固定したガラス基板に対し、上方にダイを設置し、誘電体やレジスト塗料をダイから吐出させながら走行させ塗布する塗布装置等に好適に使用できる。
【0057】
塗料としては、例えば、粘度が0.003〜100[Pa・s](せん断速度:1/s)のものが使用できる。ダイは、例えば、ステンレススチール製の複数のダイ板で構成されている。そして、ダイの内部には、塗料が供給されるマニホールドとして空間部が形成され、更に、マニホールドに供給された塗料を吐出するスリットとして、マニホールドに連通する間隙が形成されている。
【0058】
マニホールドの容積は、例えば活物質塗料を塗布する場合、150〜2600cmが好ましい。また、スリットの開口において、ダイの幅方向と直交する方向の長さ(以下、「スリット幅」という)は、例えば活物質塗料を塗布する場合、0.5〜2mmが好ましく、マニホールドからスリットの開口までの長さ(以下、「スリット長」という)は、例えば活物質塗料を塗布する場合、20〜80mmが好ましい。また、スリットの開口から吐出される塗料の単位時間当たりの吐出量は、例えば1〜4000ml/分とすればよい。なお、「ダイの幅」とは、スリットから吐出された塗料の塗布幅方向と平行な方向のダイの長さをいう。
【0059】
また、ダイ10のリップ部ではなくてマニホールド15に設けられた可変ブロック21の形状を、塗布幅方向の流量分布が小さくなるように駆動手段を運転して調整しているので、リップ部の精度を損なうこと無く、塗膜の幅方向精度を高めることができる。
【0060】
なお、可変ブロック21の構成材料は、例えばダイの構成材料と同様のものを使用してもよいし、第1,第2の駆動部23,24、23,24b〜24dにより十分に変形可能な材料であれば金属、樹脂等が使用できる。また、前記流路の幅は、例えば50〜2000mmとすればよい。
【0061】
第1,第2の駆動部23,24、23,24b〜24dは、各部の機能を損なわない方法であれば特に限定されない。例えば、ボルトやマイクロメータヘッドを用いた調整方法や圧電素子を用いた調整方法、油圧・空圧シリンダ等を用いた方法が使用できる。また、可変ブロックは複数個の部品を連結していてもよい。塗料の種類や塗布条件について、大きく変形する事が可能になり、より広い範囲に対応することができ、塗布装置の汎用性が高まるからである。
【0062】
交換ブロック22には、塗料をマニホールドに供給するための供給口13bが形成されていてもよい。背景技術で説明した塗布ノズル110(図12参照)のように、複数のブロック間に塗料をマニホールドへ供給するための供給口を形成すると、ブロックの組み付けの状態によっては供給口の大きさが変化し、塗料を安定して供給することが困難となるおそれがある。一方、上述したように塗料をマニホールドに供給するための供給口を交換ブロック22に形成すると、供給口の大きさが変化しないため、塗料を安定して供給することができるようになる。なお、前記供給口の開口径は、例えば6〜30mmとすればよい。
【0063】
また、マニホールド15内の角部および隅部が、曲面形状に形成されていてもよい。マニホールド内の塗料の滞留を防止できるからである。なお、この場合、前記角部および前記隅部の曲率半径は、例えば1〜10mmとすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の塗布装置は、連続走行する集電体に活物質塗料を塗布する塗布装置や基板に対しノズルが平行に走行しながら塗布する塗布装置などに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態1に係る塗布装置の断面図
【図2】同実施の形態に係る塗布装置の斜視図
【図3】図2に示す塗布装置の分解斜視図
【図4】本発明の実施の形態2に係る塗布装置の断面図
【図5】同実施の形態に係る塗布装置の斜視図
【図6】図2に示す塗布装置の分解斜視図
【図7】本発明の実施の形態1の解析例1−2の幅方向の塗布厚み分布の結果
【図8】本発明の実施の形態1の解析例1−4の幅方向の塗布厚み分布の結果
【図9】本発明の実施の形態2の解析例2−2の幅方向の塗布厚み分布の結果
【図10】本発明の実施の形態2の解析例2−4の幅方向の塗布厚み分布の結果
【図11】従来の塗布装置を用いた塗布装置の概略構成図
【図12】従来の塗布装置の断面図と上面図
【図13】従来の塗布装置の構成図
【符号の説明】
【0066】
10 ダイ
11 ダイ上板
12 ダイ下板
13b 供給口
14 塗料
15 マニホールド
16 スリット
18 ダイ側板
21 可動ブロック
21a〜21e 可動ブロック
22 交換ブロック
23,23a,23b 第1の駆動部(駆動手段)
24,24b,24c,24d,24e 第2の駆動部
Db,Dc,Dd,De 隙間
27 連結部
30 圧力センサ
51a〜51d ボルト
52a〜52d ナット
53 スリット
54 薄肉部
55 ピン
56a,56b 傾斜面
57a,57b 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニホールドに供給された塗料をスリットから吐出するダイを有するエクストルージョン型の塗布装置であって、
前記マニホールド内に着脱自在に取り付けられて前記塗料の流れを前記塗料の塗布幅方向に広げる流路を形成する流路調整ブロックを設け、
前記流路調整ブロックの形状を可変して前記流路の形状を変更する駆動手段を設けた
塗布装置。
【請求項2】
前記流路調整ブロックは、
前記マニホールドに塗料を供給する供給口の側の交換ブロックと、
前記交換ブロックよりも前記スリットの側に配設された可動ブロックと
で構成され、かつ、前記スリットへ続く流路の幅を可変するように前記可動ブロックを移動させる駆動手段を設けた
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記可動ブロックを、
塗布幅方向に分割された複数のブロックで構成した
請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記スリットを通過する塗料の圧力を測定するセンサを設けた
請求項1に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記センサは、塗布幅方向に沿って複数設けた
請求項4に記載の塗布装置。
【請求項6】
マニホールドに供給された塗料をスリットから吐出するダイから塗布するに際し、
前記塗料の流れを前記塗料の塗布幅方向に広げる流路を形成する流路調整ブロックを前記マニホールド内に着脱自在に取り付け、
前記ダイの塗布幅方向の流量分布が小さくなるように駆動手段を運転して前記流路調整ブロックの形状を変更する
塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−273997(P2009−273997A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126553(P2008−126553)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】