説明

塗布装置

【課題】ガイドレールの分割部分をガントリが塗布動作中に走行するガイドレールに設けた場合であっても、不良基板が生産されるのを抑えて効率よく大型基板を生産することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】基板を保持するステージと、このステージに沿って延びるとともに複数に分割されたガイドレールと、ガイドレール上を走行し、塗布液を基板に塗布する塗布ユニットと、を備え、前記ガイドレールは、塗布ユニットと対向するガイド面を有するレール部が複数連結されることによって形成されており、隣接するレール部の端部同士によって分割溝部が形成され、この分割溝部に埋込部材が埋め込まれることにより、隣接するレール部のガイド面及び埋込部材が連続する平坦面となるように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に塗布液を塗布する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス基板上にレジスト液が塗布されたもの(塗布基板と称す)が使用されている。この塗布基板は、レジスト液を均一に塗布する塗布装置によって形成されている。
【0003】
この塗布装置は、ガラス基板を載置するステージと、レジスト液を吐出する口金と、この口金をステージ上に支持するとともにステージに沿って移動させる門型のガントリとを有しており、口金のスリットノズルからレジスト液を吐出させながらガントリをガラス基板に沿う方向に定速で走行させることにより(塗布動作)、均一厚さのレジスト液膜が塗布された塗布基板が形成されるようになっている。
【0004】
このような塗布装置では、ステージを載置する基台上に一方向に延びる石材製のガイドレールが設置されている。すなわち、ガントリに取り付けられたエアベアリングからガイドレールにエアが排出されることによりガントリが浮上し、この状態でガイドレールに沿って走行するように構成されている。近年では、フラットパネルディスプレイの大型化に伴い、大型の塗布基板を生産すべく、ステージの大型化及びガイドレールの長尺化が余儀なくされている。しかし、ガイドレールが長尺化されると、石材製のガイドレールの長尺化に伴う加工限界の問題や、塗布装置の運送上の問題が避けられないことから、下記特許文献1では、複数のレール部品を連結することによりガイドレールを構成するステージ装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−95665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に示されたステージ装置を塗布装置に適用すると、ガイドレールの継ぎ目の存在により、不良基板が生産されやすいという問題がある。すなわち、上記ステージ装置のガイドレールには、そのほぼ中央部分にガイドレールの継ぎ目(分割部分)が設けられているため、ガントリがガイドレールの分割部分を通過する際にガントリの定速走行に乱れが生じる虞れがあり、これにより、塗布ムラが発生して不良基板が生産されやすいという問題がある。
【0007】
このような問題を回避するために、前記分割部分をガントリが塗布動作中に走行するガイドレール部分以外の部分に設けることが考えられる。しかし、ガントリが塗布動作中に走行するガイドレール部分、すなわち、ガントリがレジスト液を吐出する際に走行するガイドレール部分の長さ寸法が石材加工限界を超える場合には、ガントリが塗布動作中に走行する部分に分割部分を設けざるを得ない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ガイドレールの分割部分をガントリが塗布動作中に走行するガイドレールに設けた場合であっても、不良基板が生産されるのを抑えて効率よく大型基板を生産することができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を保持するステージと、前記ステージに沿って延びるとともに複数に分割されたガイドレールと、前記ガイドレール上を走行し、塗布液を基板に塗布する塗布ユニットと、を備え、前記ガイドレールは、前記塗布ユニットと対向するガイド面を有するレール部が複数連結されることによって形成されており、隣接するレール部の端部同士によって分割溝部が形成され、この分割溝部に埋込部材が埋め込まれることにより、前記隣接するレール部のガイド面及び埋込部材が連続する平坦面を形成することを特徴としている。
【0010】
上記塗布装置によれば、隣接するレール部のガイド面及び埋込部材が連続する平坦面を形成することにより、隣接するレール部のガイド面がガイドレール全体に亘って平坦状に形成される。そのため、塗布ユニットがガイドレールの分割部分(分割溝部)を通過した場合であっても、塗布ユニットの定速性に与える影響が小さくなり、塗布ユニットが定速を維持した状態で走行することができる。これにより、ガイドレールの分割溝部を位置的制限を受けることなく配置することができるため、塗布ユニットが塗布動作の際に走行するガイドレール部分、すなわち、ガントリがレジスト液を吐出する際に走行するガイドレール部分に分割溝部を設けることができる。したがって、塗布ユニットが塗布動作の際に走行するガイドレール部分の長さ寸法が石材加工限界を超える大型基板を生産する場合であっても、塗布ムラの発生を抑えて効率よく生産することができる。
【0011】
また、前記塗布ユニットには、ガイド面にエアを排出することにより塗布ユニットをレールから浮上させる軸受け部が備えられている構成とすることもできる。
【0012】
この構成によれば、塗布ユニットが分割溝部を通過する際、分割溝部に埋め込まれた埋込部材の存在により軸受け部からガイド面に排出されるエアが乱れるのを抑えることができる。したがって、このような軸受け部を備えている場合であっても、分割溝部を走行する塗布ユニットの定速性を維持することができる。
【0013】
また、前記分割溝部の具体的な様態として、前記分割溝部は、隣接する前記レール部の端部に形成された面取り部によって形成されている場合も含まれる。
【0014】
この構成によれば、分割溝部が形成されるレール部の端部は、欠けを防止するために面取りされ、面取り部が形成される。そして、このようなレール部同士を連結すると双方の面取り部によって分割溝部が形成されるが、このような分割溝部であっても、埋込部材が埋め込まれることにより、塗布ユニットの定速性が乱れるのを抑えることができる。
【0015】
また、前記埋込部材は、接着剤であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、塗布ユニットの走行中に埋込部材が分割溝部から外れてしまうのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗布装置によれば、ガイドレールの分割部分を位置的制限を受けることなく配置することができるため、塗布ユニットが塗布動作の際に走行するガイドレール部分の長さ寸法が石材加工限界を超える大型基板であっても不良基板が生産されるのを抑えて効率よく生産することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置1を示す概略上面図、図2は、その側面図、図3は、塗布ユニット5のユニット支持部52付近を示す図である。なお、図1においては、塗布ユニット5等は省略している。
【0020】
図1〜図3に示すように、塗布装置は、一辺の長さ寸法が石材加工限界を超える大型基板2に薬液やレジスト等の液状物(以下塗布液と称す)を塗布するものであり、基台3と、基板2を載置するためのステージ4と、このステージ4に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット5とを備えている。
【0021】
なお、以下の説明では、塗布ユニット5が移動する方向をX軸方向(本発明の特定方向)、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向とし、基台3に基板2が載置される側を上方、基板2が載置される側と反対側を下方として説明を進めることとする。
【0022】
前記基台3は、ステージ4、塗布ユニット5等が載置されるものであり、ステージ4が載置される基準ベース部31とこの基準ベース部31に連結される4体の分割ベース部32とを有している。そして、基台3上には、ステージ4に沿って特定方向(X軸方向)に延びるガイドレール6がステージ4を挟むように配置されている。
【0023】
前記ガイドレール6は、塗布ユニット5の走行をガイドするものである。このガイドレール6は、基準ベース部31のレール部61及び分割ベース部32のレール部62が連結されることによって構成されており、塗布走行部6aと延長部6bとを有している。
【0024】
ここで、塗布走行部6aは、前記塗布ユニット5が塗布液の吐出開始から吐出終了まで走行する部分であり、図2において、塗布液の吐出が開始される位置(吐出開始位置S)から塗布液の吐出が終了する位置(吐出終了位置T)までに相当する部分である。また、延長部6bは、この塗布走行部6aからX軸方向に延長される部分である。そして、塗布走行部6a及び延長部6bには、ガイドレール6が分割される分割部63が形成されている。
【0025】
基準ベース部31は、石材によって形成されており、図4(a)、(b)に示すように、X軸方向ほぼ中央部分に分割部63を有している。ここで、図4(a)は、基準ベース部31をY軸方向から見た図、図4(b)は、基準ベース部31をX軸方向から見た図である。図1〜図4に示すように、基準ベース部31には、Y軸方向両側にX軸方向に延びるレール部61が形成されており、このレール部61は分割部63で分割されている。そして、このレール部61は、塗布走行部6aと延長部6bとを有しており、Z軸方向に突出して形成されている。このレール部61には、平坦かつ平滑なガイド面61aが形成されている。すなわち、このガイド面61aは、後述する塗布ユニット5のエアベアリング14(本発明の軸受け部)と対向する位置に形成されており、本実施形態では、それぞれのレール部61に、Z軸方向に垂直をなす方向と、Y軸方向に垂直をなす方向との2カ所にガイド面61aが形成されている。
【0026】
また、基準ベース部31のX軸方向側面、すなわち分割ベース部32と対向する面には、分割ベース部32と連結する基準ベース側連結部33を有している。この基準ベース側連結部33には、雌ネジ部33aが複数行列に亘って形成されており、この雌ネジ部33aにボルトを螺合させることにより、基準ベース部31と分割ベース部32とが連結されるようになっている。なお、雌ネジ部33aの配置は、格子状、千鳥状等であってもよいが、本実施形態では、この雌ネジ部33aが格子状に配列されている。
【0027】
また、基準ベース部31の下面には、基準ベース部31を支持する支持部31bが取り付けられている。本実施形態では、基準ベース部31には8つの支持部31bが取り付けられており、この支持部31bにより、基準ベース部31上面のガイド面61aが水平となる姿勢を維持できるようになっている。そして、支持部31bは、高さ調節部(不図示)を有しており、支持部31bが高さ方向(Z軸方向)に変位可能になっている。これにより、基準ベース部31上面のガイド面61aの高さ位置を所定の高さ位置に調節することができるようになっている。
【0028】
ここで、分割部63付近における互いに近接する支持部31b間のX軸方向寸法βは、後述する塗布ユニット5のユニット支持部52の特定方向寸法α(X軸方向寸法)よりも小さくなっている(図2参照)。すなわち、塗布ユニット5がガイドレール6の分割部63を通過した際に、分割部63における基準ベース部31の塗布走行部6aには、塗布ユニット5の重量による僅かな撓みが発生するが、支持部31bが上記間隔寸法βを保って配置されていることにより、分割部63を通過した塗布ユニット5を基台3の下面側から支持することができる。したがって、塗布ユニット5が通過することによる撓みを小さくすることができる。これにより、塗布ユニット5が分割部63を通過した際、塗布ユニット5の定速走行への影響を抑えることができる。
【0029】
分割ベース部32は、石材で形成されており、図5(a)、(b)に示すように、ブロック状に形成された分割ベース本体部32aと、この分割ベース本体部32aの上方に配置されるレール部62とを有している。なお、図5(a)は、分割ベース部32をY軸方向から見た図、図4(b)は、分割ベース部32をX軸方向から見た図である。
【0030】
分割ベース部32のレール部62は、基準ベース部31のレール部61と同様に、Z軸方向に突出するとともに、分割ベース部32のX軸方向に亘って連続して形成されている。このレール部62は、延長部6bを有しており、分割ベース本体部32aにボルトで連結されている。具体的には、分割ベース本体部32aには、レール部62を連結するためのボルト穴34bが形成されており、このボルト穴34bには、ボルトの取付け、取外し作業を行うための連結作業窓34からアクセスできるようになっている。そして、この連結作業窓34からボルト穴34bに挿入されたボルトにより、レール部62と分割ベース本体部32aとが連結されるようになっている。そして、図5に示す例では、連結作業窓34が2カ所形成されている。
【0031】
また、レール部62は、平坦かつ平滑なガイド面62aを有しており、このガイド面62aは、後述する塗布ユニット5のエアベアリング14(本発明の軸受け部)と対向する位置に形成されている。すなわち、ガイド面62aは基準ベース部31と同様に、Z軸方向に垂直をなす方向と、Y軸方向に垂直をなす方向との2カ所にガイド面62aが形成されている。そして、基準ベース部31と分割ベース部32とが連結された状態では、レール部61,62がX軸方向に延びるように連結され、レール部61,62のガイド面61a、62aが分割部63を形成しつつ連続状に連結される。すなわち、ガイドレール6の分割部63においては、それぞれのレール部61,62のガイド面61a,62a同士が連続し、平坦かつ平滑に連結される。これにより、塗布ユニット5が基準ベース部31のレール部61及び分割ベース部32のレール部62上をスムーズに移動できるようになっている。
【0032】
また、分割ベース部32には、基準ベース部31と連結される側に、基準ベース部31と連結するためのボルトを挿通するボルト穴34aが形成されている。このボルト穴34aは、基準ベース部31側(図5(a)において右側)の連結作業窓34から、アクセスできるようになっている。そして、このボルト穴34aは、基準ベース側連結部33の雌ネジ部33aに対応する位置に形成されており、このボルト穴34aにボルトを挿通させて雌ネジ部33aに螺着させることにより、分割ベース部32が基準ベース部31に連結固定されるようになっている。
【0033】
また、図1、図5に示すように、分割ベース部32の下面には、分割ベース部32を支持する支持部32bが取り付けられている。本実施形態では、分割ベース本体部32aに3つの支持部32bが取り付けられている。具体的には、図1の破線で示すように、分割ベース部32の基準ベース部31側に2つの支持部32bがY軸方向に並んだ状態で取り付けられているとともに、この2つの支持部32bよりもX軸方向に離れた位置に1つの支持部32bが取り付けられている。この3つの支持部32bにより、分割ベース部32のガイド面62aが水平となる状態に維持されるようになっている。すなわち、分割ベース部32は、基準ベース部31と連結に適した姿勢を維持できるようになっている。
【0034】
また、支持部32bは、高さ調節部を有しており、支持部32bが高さ方向(Z軸方向)に変位可能になっている。これにより、分割ベース部32のガイド面62aの高さ位置を所定の高さ位置に調節することができるようになっている。すなわち、4つの分割ベース部32は、この支持部32bにより、それぞれ独立して基準ベース部31と連結される姿勢に維持されるとともに、高さ調節可能になっている。
【0035】
また、基準ベース部31の支持部31bのうち分割ベース部32に最も近接する位置に取り付けられた支持部31bと、分割ベース部32の支持部32bのうち基準ベース部に最も近接する位置に取り付けられた支持部32bとの間隔寸法γは、後述する塗布ユニット5のユニット支持部52(本発明の脚部)の特定方向寸法α(X軸方向寸法)よりも小さくなっている(図2参照)。すなわち、塗布ユニット5がガイドレール6の分割部63を通過した際に、基準ベース部31の延長部6b、分割ベース部32の延長部6bには、塗布ユニット5の重量による僅かな撓みが発生するが、支持部31b、32bが上記間隔寸法γに配置されていることにより、分割部63を通過した塗布ユニット5を基台3の下面側から支持することができる。したがって、塗布ユニット5が通過することによる撓みを小さくすることができる。これにより、塗布ユニット5が分割部63を通過した際、塗布ユニット5の定速走行への影響を抑えることができる。
【0036】
また、上記分割部63には、分割溝部63aが形成されており、この分割溝部63aは、図6に示すように、埋込部材8によって溝埋めされている。この分割溝部63aは、隣接するレール部61、62の端部同士によって形成されている。具体的には、レール部61、62の端部には、1mm程度の面取り加工が施されることにより、テーパ部61c、62c(本発明の面取り部)が形成されており、隣接するレール部61,62のテーパ部61c、62cにより、V字状の分割溝部63aが形成されている。この分割溝部63aにより、分割部63におけるレール部61、62のガイド面61a、62aは、X軸方向において不連続となっている。
【0037】
また、埋込部材8は、分割溝部63aを埋める部材である。具体的には、分割溝部63a全体を埋めるとともに、埋込部材8の上面がレール部61、62の上面とほぼ同一高さを有する平面状に形成される。すなわち、隣接するレール部61,62のガイド面61a、62a及び埋込部材8が連続する平坦面を形成するようになっている。また、本実施形態では、レール部61、62の側面におけるガイド面61a、62aについても同様に、ガイド面61a、62a及び埋込部材8が連続する平坦面を形成するようになっている。この平坦面とは、後述する塗布ユニット5のエアベアリング14からのエアの流れが乱れることにより、塗布ユニットの定速性が損なわれて塗布ムラが発生しない程度の平面である。すなわち、埋込部材8の上面がレール部61、62の上面に比べて僅かに内側に窪む形状に形成されるものも含む。
【0038】
また、埋込部材8は、本実施形態では、接着剤が用いられている。接着剤を用いることにより、分割溝部63a全体を隙間なく埋めることができるとともに、塗布ユニット5が分割溝部63aを通過する際に、埋込部材8が分割溝部63aから外れるのを防止することができる点で有効である。
【0039】
このように、分割溝部63aに埋込部材8が埋め込まれることにより、塗布ユニット5が分割溝部63aの影響を受けずに定速走行を維持することができる。すなわち、塗布ユニット5には、後述するようにエアベアリング14が設けられており、このエアベアリング14からガイド面61a、62aに排出されるエアにより、塗布ユニット5がガイド面61a、62aから浮上した状態で走行する。そのため、塗布ユニット5が分割溝部63aを通過する際、埋設部材8が存在しない場合には、分割溝部63aによって排出されるエアの流れが乱れることにより、塗布ユニット5の浮上する姿勢が僅かに変動し、定速走行に乱れが生じる場合がある。しかし、分割溝部63aに埋め込まれた埋込部材8の存在によりエアベアリング14からガイド面61a、62aに排出されるエアの流れが乱れるのを抑えることができる。したがって、分割溝部を走行する塗布ユニットの定速性を維持することができる。
【0040】
前記ステージ4は、搬入された基板2をその表面に載置して保持するものである。具体的には、ステージ4には、その表面に開口する複数の吸引孔(不図示)が形成されており、これらの吸引孔と真空ポンプとが連通して接続されている。そして、ステージ4の表面に基板2が載置された状態で真空ポンプを作動させることにより、吸引孔に吸引力が発生し基板2がステージ4の表面側に吸引されて吸着保持されるようになっている。
【0041】
また、ステージ4には、基板2を昇降動作させる基板昇降機構(不図示)が設けられている。すなわち、ステージ4の表面には複数のピン孔が形成されており、このピン孔にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピンが埋設されている。これにより、ステージ4の表面に基板2を載置した状態でリフトピンを上昇又は下降させることにより、基板2にリフトピンの先端部分が当接した状態で、基板2の昇降動作、及び、基板2を所定の高さ位置に保持できるようになっている。
【0042】
前記塗布ユニット5は、ステージ4に載置された基板2に塗布液を塗布するためのものであり、図3に示すように、一方向に延び塗布液を吐出する口金部51と、この口金部51の両端部分に設けられたユニット支持部52とを有している。本実施形態では、互いに独立して動作することができる塗布ユニット5が2台設置されている。これら塗布ユニット5は、塗布動作前では、図2に示すように、初期位置Pで停止している。すなわち、図2において左側の塗布ユニット5は左側の初期位置Pで停止しており(二点鎖線で示す)、右側の塗布ユニット5は右側の初期位置Pで停止している。
【0043】
前記ユニット支持部52は、口金部51を昇降動作可能に支持するとともに、この口金部51をX軸方向に移動させるためのものである。すなわち、このユニット支持部52は、口金部51を昇降動作させる昇降装置20と、口金部51を走行させる走行装置10とを有している。
【0044】
昇降装置20は、図3に示すように、口金部51を昇降動作させるものであり、Z軸方向に延びるガイドレール21と、口金部51と連結されるスライダ22とを有している。このガイドレール21には、スライダ22がガイドレール21に沿ってスライド自在に取り付けられている。また、スライダ22にはサーボモータにより駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータを駆動制御することにより、スライダ22がZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。これにより、口金部51は、Z軸方向への昇降動作が駆動制御され、ステージ4に対して接離可能に動作するようになっている。
【0045】
走行装置10は、図3に示すように、口金部51をX軸方向に走行させるためのものであり、スライド支持部11とリニアモータ12とを有している。
【0046】
このスライド支持部11は、ガイドレール6との間に設けられるエアベアリング14(本発明の軸受け部)によってガイドレール6上に支持されている。そして、スライド支持部11に取り付けられたリニアモータ12を駆動制御することにより、スライド支持部11がX軸方向に移動するようになっている。具体的には、スライド支持部11に設けられたエアベアリング14にはコンプレッサが接続されており、このコンプレッサを作動させることにより、エアベアリング14からガイド面61a、62a側にエアが供給される。そして、エアベアリング14とガイド面61a、62aとの間にエアが供給されることにより、スライド支持部11がガイド面61a、62aから浮上する状態に維持される。そして、スライド支持部11が浮上する状態においてリニアモータ12を駆動させることにより、スライド支持部11がX軸方向に移動するようになっている。すなわち、塗布ユニット5は、リニアモータ12を駆動させることにより、エアベアリング14がガイドレール6から浮上した状態で、X軸方向に沿って走行することができるようになっている。
【0047】
また、塗布ユニット5はX軸方向における位置が検出されるようになっている。すなわち、ガイドレール6上には、ガイド面62aに沿ってスケール15bが設けられている。そして、スライド支持部11には、このスケール15bと対向する位置にスケール読取部15aが取り付けられており、このスケール読取り部15aによりスケール15bを読み取ることにより、塗布ユニット5が走行中であっても、現在における塗布ユニット5の位置を精度よく検出できるようになっている。
【0048】
これにより、塗布ユニット5は、初期位置PからX軸方向において移動終了位置Qまで移動することができるとともに、これらを含めた任意の位置で停止できるようになっている。なお、この移動終了位置Qは、塗布動作終了後、塗布ユニット5が基板2の取出しの妨げになることのない位置である。
【0049】
前記口金部51は、基板2上に塗布液を吐出するものである。この口金部51は、Y軸方向に延びる形状を有する柱状部材であり、ステージ4の表面と対向する側には塗布液を吐出するノズル51a(図3参照)が形成されている。このノズル51aは、ステージ4の表面側に突出し、この突出した部分にはY軸方向に延びる形状のスリットが形成されている。すなわち、このスリットを通じて口金部51に供給された塗布液が基板2の表面に吐出されるようになっている。本実施形態では、塗布ユニット5は、初期位置PからX軸方向に移動し、吐出開始位置Sで塗布液の吐出が開始されるとともに吐出終了位置Tで塗布液の吐出を終了させ、さらに、移動終了位置Qまで移動できるようになっている。
【0050】
また、分割ベース部32上には、口金部51を清掃する清掃装置7が設けられている。この清掃装置7は、スクレーパとトレイとを有しており、スクレーパにより口金部51のノズル付近に付着した塗布液の残留物を掻き取って、剥がれた付着物をトレイにて受け取るように構成されている。本実施形態では、清掃装置7が分割ベース部32上に2カ所設けられており、図2において右側の塗布ユニット5が右側の清掃装置7で清掃されるとともに、左側の塗布ユニット5が左側の清掃装置7で清掃されるようになっている。なお、初期位置Pは、この清掃装置7上に口金部51が位置する状態である。
【0051】
次に、この塗布装置における動作について、図7に示すフローチャート及び図8に示す塗布ユニット5とガイドレール6等との位置関係を示す概略図を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、一方の塗布ユニット5(図2において左側)によって塗布動作を行う場合について説明するものとし、他方の塗布ユニット5(図2において右側)については、一方の塗布ユニット5の塗布動作と同様であるため説明は省略する。
【0052】
まず、ステップS1において、基板2の搬入が行われる。すなわち、図示しないロボットハンドにより基板2が搬入される。具体的には、ステージ4の表面から複数のリフトピンが突出した状態で待機されており、これらのリフトピンの先端部分に基板2が載置される。そして、リフトピンを下降させて基板2をステージ4の表面に載置し、この状態で真空ポンプを作動させて吸引孔に吸引力を発生させることにより、基板2をステージ4の表面上に吸着させて保持させる。
【0053】
次に、ステップS2において、塗布ユニット5が初期位置Pに位置しているか否かの確認が行われる。具体的には、塗布ユニット5に設けられた位置検出器15a、15bにより、それぞれの塗布ユニット5が初期位置Pに位置しているか否か判断される。そして、塗布ユニット5が初期位置Pに位置していないと判断した場合には、ステップS2においてNOの方向に進み、リニアモータ12を駆動制御することにより、それぞれの塗布ユニット5を初期位置Pに復帰させる(ステップS3)。すなわち、塗布ユニット5は、図8(a)に示す位置に配置された状態となる。
【0054】
ステップS2において、塗布ユニット5がそれぞれの初期位置Pに位置している場合には、ステップS2においてYESの方向に進み、塗布動作が行われる(ステップS4)。具体的には、塗布動作を行う塗布ユニット5(図8において左側)がガイドレール6の延長部6bを走行し、吐出開始位置Sまで移動する(図8(b))。このとき、ガイドレール6の分割部63を通過するが、埋設部材8が分割溝部63aに埋め込まれていることにより、塗布ユニット5が定速走行を維持したまま通過することができる。
【0055】
そして、吐出開始位置Sから塗布ユニット5の口金部51から塗布液が吐出され、その状態で塗布ユニット5がガイドレール6の塗布走行部6aを走行することにより、基板上に塗布液が塗布される。そして、塗布ユニット5は、塗布走行部6aを走行中にガイドレール6の分割部63を通過するが、埋設部材8が分割溝部63aに埋め込まれていることにより、塗布ユニット5が定速走行を維持したまま通過することができるため、塗布ユニット5の定速走行の乱れから塗布ムラが発生するのを抑えることができる。そして、塗布ユニット5が吐出終了位置Tに達すると塗布液の吐出が停止した後、さらにガイドレール6の延長部6bを走行して移動終了位置Qで停止する(図8(c))。
【0056】
塗布動作が終了すると、次に初期位置復帰動作が行われる(ステップS5)。すなわち、塗布ユニット5のリニアモータ12を駆動制御することにより、塗布ユニット5をもとの初期位置Pに位置させる(図8(d))。このとき、塗布ユニット5がガイドレール6の分割部63を通過するが、埋設部材8が分割溝部63aに埋め込まれていることにより、塗布ユニット5が定速走行を維持したまま通過することができる。
【0057】
次に、塗布ユニット5の清掃処理が行われる(ステップS6)。具体的には、図8(e)に示すように、初期位置Pに位置した塗布ユニット5の口金部51を下降させることにより、口金部51の下方部分と清掃装置7のスクレーパを接触させる。この状態からスクレーパを口金部51の延びる方向に移動させることにより、スリットノズル51a付近の付着物が掻き取られ、口金部51のノズル部分の清掃が完了する。
【0058】
次に、基板2の取出しが行われる(ステップS7)。具体的には、リフトピンを上昇させることにより、リフトピンの先端部分で基板2を保持する。そして、図示しないロボットハンドに基板2の受け渡しが行われ、ステージ4表面から基板2が排出される。
【0059】
このように、本実施形態における塗布装置によれば、隣接するレール部61、62のガイド面61a、62a及び埋込部材8が連続する平坦面を形成することにより、隣接するレール部61、62のガイド面61a、62aをガイドレール6全体に亘って平坦状に形成される。そのため、塗布ユニット5がガイドレール6の分割部63(分割溝部63a)を通過した場合であっても、塗布ユニット5の定速性に与える影響が小さくなり、塗布ユニット5が定速を維持した状態で走行することができる。したがって、ガイドレールの分割部63を位置的制限を受けることなく配置することができるため、ガイドレール6の分割部63をガイドレール6の塗布走行部6aに設けることにより、石材加工限界を超える大型基板2を生産する場合であっても、不良基板が生産されるのを抑えることができる。なお、基板2の一辺の長さが石材加工限界を超えず、前記塗布ユニット5が塗布液の吐出開始から吐出終了まで走行する塗布走行部6aの長さ寸法が石材加工限界を超える場合、すなわち、塗布ユニットが塗布動作の際に走行するガイドレール部分の長さ寸法が石材加工限界を超える場合であっても、上記同様に不要基板が生産されるのを抑えることができる。
【0060】
また、上記実施形態では、埋込部材8として接着剤を用いる例について説明したが、樹脂等からなり、分割溝部63aに嵌合可能な別部材であってもよい。このような部材で分割溝部63aの溝埋めを行うことにより、隣接するレール部61、62のガイド面61a、62aをガイドレール6全体に亘って平坦状に形成することができ、塗布ユニット5の定速走行に乱れが生じるのを抑えることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、基準ベース部31の分割部63における支持部31b同士の間隔寸法β、及び、分割ベース部32に近接する基準ベース部31の支持部31bと、基準ベース部31に近接する分割ベース部32の支持部32bの支持部32bとの間隔寸法γが、ユニット支持部52の特定方向寸法αよりも小さい例について説明したが、それぞれの支持部31b同士、あるいは支持部31b、32bが接する(β、γ≒0)ものであってもよい。これにより、塗布ユニット5がガイドレール6の分割部63を通過した際の僅かな撓みの発生を有効に抑制することができるため、塗布ユニット5が分割部63を通過した際の塗布ムラの発生を有効に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態における塗布装置を示す概略上面図である。
【図2】上記塗布装置の側面図である。
【図3】上記塗布装置のユニット支持部付近を示す図である。
【図4】基準ベース部を示す図であり、(a)は、Y軸方向から見た図、(b)は、X軸方向から見た図である。
【図5】分割ベース部を示す図であり、(a)は、Y軸方向から見た図、(b)は、X軸方向から見た図である。
【図6】分割溝部付近を示す概略図である。
【図7】上記塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】塗布ユニットとレールとの位置関係を示す概略図である。
【符号の説明】
【0063】
2 基板
3 基台
5 塗布ユニット
6 レール
6a 塗布走行部
6b 延長部
8 埋込部材
14 エアベアリング
61、62 レール部
61a、62a ガイド面
63 分割部
63a 分割溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持するステージと、
前記ステージに沿って延びるとともに複数に分割されたガイドレールと、
前記ガイドレール上を走行し、塗布液を基板に塗布する塗布ユニットと、
を備え、
前記ガイドレールは、前記塗布ユニットと対向するガイド面を有するレール部が複数連結されることによって形成されており、隣接するレール部の端部同士によって分割溝部が形成され、この分割溝部に埋込部材が埋め込まれることにより、前記隣接するレール部のガイド面及び埋込部材が連続する平坦面を形成することを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記塗布ユニットには、ガイド面にエアを排出することにより塗布ユニットをレールから浮上させる軸受け部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記分割溝部は、隣接する前記レール部の端部に形成された面取り部によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記埋込部材は、接着剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−264606(P2008−264606A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107145(P2007−107145)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】