説明

塗装システム及びそれを用いた塗装方法

【課題】塗装後の乾燥を誘導加熱により行う塗装システムにおいて、誘導加熱による加熱乾燥の処理を中断することなく連続加熱を可能にすること。
【解決手段】コンベア3によりワークを搬送する搬送ライン2と、搬送ライン2の途上に配設された塗装ブース7と、塗装ブース7内に配設された塗料噴射手段10と、塗装ブース7の前方側に配置した加熱室12と、塗装済みワークを塗装可能範囲から外へ搬送して未塗装のワークを塗装可能範囲内へ搬送する第1モーター15と、加熱済みワークを加熱室12から外へ搬送して未加熱のワークを加熱室12へ搬送する第2モーターと、第1モーター15の前方側に配置した加熱待ちエリア17と、第2モーター16の前方側に配置した搬送待ちエリア20を具備し、ワークの塗装中は塗装ブース内ではコンベアを駆動せず、塗装済ワークの加熱中は加熱室12内ではコンベアを駆動しないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱を用いて塗装済みの被塗装物の加熱乾燥処理を行うことを特徴とした塗装システム及びそれを用いた塗装方法に係り、より詳しくは、塗装済みの多数個の被塗装物を、処理を中段せずに連続して誘導加熱により加熱可能としたことを特徴とする塗装システム及びそれを用いた塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、被塗装物(以下「ワーク」という。)の塗装に際しては、スプレーガン等によってワークに塗料を塗布した後に、この塗布した塗料を乾燥させてワークに定着させる必要がある。そして、従来からこの乾燥は、乾燥炉を用いて、塗料を塗布したワークを前記乾燥炉に入れた後に、ワークに熱風を吹き付けることにより行なわれていた。
【0003】
しかし、例えば、自動車用アルミホイールを乾燥させるためには150℃程度にまで昇温する必要があるが、自動車用アルミホイールを150℃程度にするためには、昇温に約40分程度が必要なために、熱風乾燥では乾燥時間が長時間に及んでしまい、これにより塗装ライン通過時間全体が長くなってしまうという問題点が指摘できる。
【0004】
また、乾燥炉内での乾燥においては、有毒ガス等が発生するために、この有毒ガスを排気する必要上、乾燥炉内は換気されており、これにより熱ロスが生じてしまい、このことが乾燥炉のエネルギーロスとなってしまう。
【0005】
そのため、このような熱風による乾燥の問題点を解決する手法として、誘導加熱を利用した加熱方法が提案されており、この誘導加熱による加熱では、短時間でワークに塗布した塗料を加熱することができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−130384号公報
【特許文献2】特開2004−2965号公報
【特許文献2】特開2000−239896号公報
【特許文献2】特開平6−238223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、誘導加熱により塗装済みのワークの加熱を行う場合において、コンベアによる搬送ラインを用いた塗装システムにおいては、塗装ブース内における塗装時間が、加熱室内における誘導加熱による加熱時間よりも短いために、加熱処理を連続して行うことができないという問題点が指摘されていた。
【0008】
例えば自動車用のホイールの塗装に際しては、塗装ブース内において約1分間、塗料をホイールに噴射して塗装を行い、その後、加熱室内において約4分間、誘導加熱による加熱を行う必要があるため、塗装ブース内における塗装が終了して、コンベアにより塗装済みのワークを塗装ブースの外に搬送するたびごとに、加熱室内における加熱処理を中断する必要がある。
【0009】
即ち、コンベアを用いた搬送ラインによってワークを搬送しつつ、その搬送の途上で塗装、加熱等を行う塗装システムの場合には、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了した後にコンベアを駆動して塗装済みのワークを塗装ブースから外へ搬送する必要があり、そのとき、コンベアの駆動によって当然、加熱室内の加熱中のワークも移動してしまうこととなる。
【0010】
そしてそのとき、誘導加熱を用いた加熱では、加熱室内に誘導加熱用の加熱コイルを具備し、この加熱コイルを下降させ、あるいはワークを上昇させて、加熱コイル内にワークを収容し、この状態において加熱コイルに電流を流すことでワークを誘導加熱することとしているために、加熱コイル内にワークを収容した状態ではワークを搬送することができないので、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了してコンベアを駆動するときは、加熱室内においては、加熱コイルを上昇あるいは下降させてワークから外さなければならない。
【0011】
従って、従来の塗装システムにおいては、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了するたびごとに加熱室内においては誘導加熱の処理を中断しなければならず、そのため、4分間の連続した加熱ができず、1分間の加熱を4回に分ける必要があるために、ワークの昇温時間が延びてしまい、熱効率が悪くなってしまうという問題点がある。
【0012】
この関係を図6を用いて説明すると、図6において31は塗装ブース、32は加熱室、33はコンベア、そして、34はコンベアにより搬送されるワークであり、図においては、塗装ブース31では2個のワークを同時に塗装することとし、加熱室32では8個のワークを同時に加熱可能としている。
【0013】
そして、(a)は、塗装工程における最初のワーク2個を、塗装ブース31内で塗装している状態を示しており、(b)は、塗装が終了した後に、コンベア33を駆動して塗装済みのワーク2個を加熱室32に搬送するとともに未塗装のワーク2個を塗装ブース31に搬送して、塗装ブース31内で2個のワークを塗装するとともに、加熱室32内で塗装済みの2個のワークを加熱している状態を示している。
【0014】
そして、(b)の状態において、塗装ブース31内における1分間の塗装が終了した後は、加熱室32内の加熱処理を中断してコンベア33を駆動して、塗装済みのワーク2個を加熱室32に搬送するとともに未塗装のワーク2個を塗装ブース31に搬送し、(c)の状態にした後に、塗装ブース31内で2個のワークを塗装し、加熱室32内では、加熱を中断していた2個のワークと、塗装ブース31から搬送されてきた塗装済みの2個のワークの合計4個のワークの加熱を行う。
【0015】
次に、(c)の状態において、塗装ブース31内における1分間の塗装が終了した後は、加熱室32内の乾燥を中断してコンベア33を駆動して、塗装済みのワーク2個を加熱室32に搬送するとともに未塗装のワーク2個を塗装ブースに搬送し、(d)の状態にして、塗装ブース31内で2個のワークを塗装し、加熱室32内では、加熱を中断していた4個のワークと、塗装ブース31から搬送されてきた塗装済みの2個のワークの合計6個のワークの加熱を行う。
【0016】
そして次に、(d)の状態において、塗装ブース31内における1分間の塗装が終了した後は、加熱室32内の乾燥を中断してコンベアを駆動して、塗装済みのワーク2個を加熱室32に搬送するとともに未塗装のワーク2個を塗装ブース31に搬送し、(e)の状態にした後に、塗装ブース31内で2個のワークを塗装し、加熱室32内では、加熱を中断していた6個のワークと、塗装ブース31から搬送されてきた塗装済みの2個のワークの合計8個のワークの加熱を行い、この(e)における加熱が終了すると、最初に加熱室32に搬送された2個のワークは、加熱時間の合計が4分間となり、加熱処理が終了する。
【0017】
このように、従来の塗装システムにおいては、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了して塗装が終了したワークの搬送を行うたびごとに、加熱室内における加熱の処理を中断しなければならず、即ち連続した加熱処理を行うことができなかったために、加熱効率が悪いという問題点があった。
【0018】
そこで、本発明は、塗装後の加熱を誘導加熱により行う塗装システムにおいて、誘導加熱による加熱の処理を中断することなく連続加熱を可能にした塗装システム及びそれを用いた塗装方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の塗装システムは、
コンベアを具備した、ワークを搬送するための搬送ラインと、
該搬送ラインの途上に配設された、複数個のワークを収容可能な塗装ブースと、
該塗装ブース内に配設された、前記塗装ブース内における塗装可能範囲内に位置する複数のワークに向けて塗料を噴射するための塗料噴射手段と、
前記搬送ラインにおけるコンベアの移動方向に見た前記塗装ブースの前方側に配置した、前記塗装ブース内で塗装されたワークを複数個収容して誘導加熱により加熱するための加熱室と、を具備した塗装システムにおいて、
前記塗装ブース内でワークの塗装を行っている間は塗装ブース内においてはコンベアを移動させず、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了した後に、塗装済のワークを塗装可能範囲の外へ搬送するとともに未塗装のワークを塗装ブース内における塗装可能範囲内へ搬送するための第1モーターと、
前記加熱室内で塗装済ワークの加熱を行っている間は加熱室内においてはコンベアを移動させず、加熱室内における塗装済ワークの加熱が終了した後に、加熱済のワークを加熱室外へ搬送するとともに未加熱の塗装済ワークを加熱室内へ搬送するための第2モーターと、
前記搬送ラインにおけるコンベアの移動方向に見た前記第1モーターの前方側に配置した、コンベアの弛みを吸収するための第1テンション手段を備え、該第1テンション手段によってコンベアの弛みを防止しつつ、塗装済のワークを加熱のために待機させる加熱待ちエリアと、
前記搬送ラインにおけるコンベアの移動方向に見た前記第2モーターの前方側に配置した、コンベアの弛みを吸収するための第2テンション手段を備え、該第2テンション手段によってコンベアの弛みを防止しつつ、加熱済みワークを搬送のために待機させる搬送待ちエリアと、を具備したことを特徴としている。
【0020】
そして、この塗装システムを用いた本発明の塗装方法では、塗装ブース内においてワークの塗装を行っている間は、前記第1モーターを駆動しないことで前記塗装ブース内においてはコンベアを移動させず、
加熱室内において塗装済ワークの加熱を行っている間は、前記第2モーターを駆動しないことで前記加熱室内においてはコンベアを移動させず、
塗装ブース内におけるワークの塗装が終了した後は、
第1モーターを駆動して、塗装ブース内の塗装済みのワークを塗装可能な範囲の外へ移動可能な距離だけコンベアを移動して、塗装済みのワークを塗装可能な範囲の外へ搬送するとともに、
未塗装のワークを塗装ブース内における塗装可能範囲へ搬送して、塗装ブース内においてコンベアを移動することなく未塗装のワークの塗装を行い、
更に、前記加熱室内におけるワークの加熱が終了するまで、塗装ブースから搬送されてきた塗装済ワークを、前記第1テンション手段によってコンベアの弛みを吸収しつつ、加熱待ちエリアに待機させ、
加熱室内における塗装済ワークの加熱が終了した後は、
第2モーターを駆動し、加熱室内の加熱済みのワークのすべてを加熱室の外へ移動可能な距離だけコンベアを移動して、加熱済みのワークのすべてを加熱室の外へ搬送するとともに、
前記加熱待ちエリアで待機させていたワークを加熱室内に搬送して、前記加熱室内においてコンベアを移動することなく塗装済みのワークの加熱を行い、
更に、第2モーターの駆動に伴って搬送されてくる加熱済みのワークを、前記第2テンション手段によってコンベアの弛みを吸収しつつ、塗装ブース内におけるワークの塗装終了に伴う前記第1モーターの駆動によってアンロードエリアに向けて搬送されるまで、前記搬送待ちエリアに待機させ、
以後はこれを繰り返すことを可能にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の塗装システム及びそれを用いた塗装方法では、加熱室内において塗装済ワークの加熱を行っている間は加熱室内においてはコンベアを移動させず、加熱室内におけるワークの加熱が終了するまでは、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了して塗装ブースの外へ搬送されたワークを加熱待ちエリアに待機させ、加熱室内における塗装済ワークの加熱が終了した後に、加熱待ちエリアに待機させていた塗装済みのワークを加熱室内に搬送することとしている。
【0022】
そのために、加熱室内においては、処理を中断することなく、誘導加熱による加熱処理が連続して行うことができるため、効率の良い加熱処理を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の塗装システムの実施例の全体構成を説明するためのシステム図である。
【図2】本発明の塗装システムの実施例における加熱待ちエリアを説明するための図である。
【図3】本発明の塗装システムの実施例における加熱待ちエリアを説明するための図である。
【図4】本発明の塗装システムの実施例における加熱待ちエリアを説明するための図である。
【図5】本発明の塗装システムの実施例における加熱待ちエリアを説明するための図である。
【図6】本発明の塗装システムの他の構成を説明するための図である。
【図7】本発明の塗装システムの他の構成を説明するための図である。
【図8】従来の塗装システムの問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の塗装システムでは、ワークを搬送するための搬送ラインを具備しており、この搬送ラインは、コンベアを具備している。
【0025】
また、本発明の塗装システムでは、ワークを固定可能なワーク供給テーブルを複数個備えており、このワーク供給テーブルは、前記コンベアに、間隔を置いて装着され、コンベアの駆動に伴って搬送されることとしている。
【0026】
更に、本発明の塗装システムでは、搬送ライン上に塗装ブースが配設されており、前記コンベアはこの塗装ブース内を通過し、これにより、ワークが固定されたワーク供給テーブルも、前記コンベアとともに塗装ブース内を通過可能としている。
【0027】
そして、塗装ブース内には塗料噴射手段が配設されており、この塗料噴射手段は、塗装ブース内における塗装可能範囲内に位置する複数のワークに向けて塗料を噴射するための、複数個のスプレーガンを備えており、これにより、塗装ブース内において、塗装可能範囲内に位置する複数個のワークの塗装を同時に行うことを可能にしている。
【0028】
また、本発明の塗装システムでは、搬送ラインにおけるコンベアの移動方向に見た塗装ブースの前方側に、塗装ブース内で塗装されたワークを複数個収容し、誘導加熱により加熱するための加熱室が配置されている。
【0029】
また、本発明の塗装システムでは第1モーターと第2モーターを有しており、第1モーターは、塗装ブース内でワークの塗装を行っている間は塗装ブース内においてはコンベアを移動させず、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了した後に、塗装済のワークを塗装可能な範囲の外へ搬送するとともに、未塗装のワークを塗装ブース内における塗装可能な範囲内へ搬送するために駆動する。
【0030】
一方、第2モーターは、加熱室内で塗装済ワークの乾燥を行っている間は加熱室内においてはコンベアを移動させず、加熱室内における塗装済ワークの加熱が終了した後に、加熱済のワークを加熱室の外へ搬送するとともに未加熱の塗装済ワークを加熱室内へ搬送するために駆動する。
【0031】
更に、本発明の塗装システムでは、加熱待ちエリアを有しており、この加熱待ちエリアは、搬送ラインにおけるコンベアの移動方向に見た前記第1モーターの前方側に配置しており、コンベアの弛みを吸収するための第1テンション手段を備え、この第1テンション手段によってコンベアの弛みを防止しつつ、塗装済のワークを、乾燥のために待機させるエリアとしている。
【0032】
また、本発明の塗装システムでは、搬送待ちエリアを有しており、この搬送待ちエリアは、搬送ラインにおけるコンベアの移動方向に見た前記第2モーターの前方側に配置しており、コンベアの弛みを吸収するための第2テンション手段を備え、この第2テンション手段によってコンベアの弛みを防止しつつ、乾燥済みワークを搬送のために待機させるエリアとしている。
【0033】
ここで、前記コンベアとしてはチェーンコンベアを用いるとよく、更に、このとき、前記第1テンション手段及び第2テンション手段としては、チェーンを搬送するためのスプロケットと、このスプロケットを所定の張力で一方向へ引っ張るためのエアーシリンダーを用いるとよい。
【0034】
そして、このように構成される本発明の塗装システムを用いてワークの塗装を行う本発明の塗装方法では、塗装ブース内においてワークの塗装を行うときは、第1モーターを駆動しないことで、塗装ブース内においてはコンベアを移動させない。
【0035】
また、加熱室内において塗装済ワークの加熱を行っている間は、第2モーターを駆動しないことで、乾燥ブース内においてもコンベアを移動させない。
【0036】
そして、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了した後は、第1モーターを駆動して、塗装ブース内の塗装済みのワークを、塗装可能な範囲の外へ移動可能な距離だけコンベアを移動して、塗装済みのワークを塗装可能な範囲の外へ搬送するとともに、未塗装のワークを塗装ブース内における塗装可能な範囲内へ搬送して、その後は、塗装ブース内において、コンベアを移動することなく、塗装可能な範囲内に搬送された未塗装のワークの塗装を行う。
【0037】
また、加熱室内におけるワークの加熱が終了するまで、第1モーターの駆動に伴って塗装ブースから搬送されてきた塗装済ワークを、前記第1テンション手段によってコンベアの弛みを吸収しつつ、加熱待ちエリアに待機させる。
【0038】
一方、加熱室内における塗装済ワークの加熱が終了した後は、第2モーターを駆動し、加熱室内の加熱済みのワークのすべてを加熱室の外へ移動可能な距離だけコンベアを移動して、加熱室内にある加熱済みのワークのすべてを加熱室の外へ搬送するとともに、加熱待ちエリアで待機させていたワークを加熱室内に搬送し、その後は、加熱室内において、コンベアを搬送することなく塗装済みのワークの加熱を行う。
【0039】
また、第2モーターの駆動に伴って搬送されてくる加熱済みのワークを、第2テンション手段によってコンベアの弛みを吸収しつつ、搬送エリアに待機させ、この搬送待ちエリアにおいて待機させているワークを、順次、塗装ブース内におけるワークの塗装終了に伴う第1モーターの駆動によって、アンロードエリアに向けて搬送し、以後は上記を繰り返す。
【実施例1】
【0040】
本発明の塗装システム塗装システムの実施例について図面を参照して説明すると、図1は、本実施例の塗装システムの全体構成を示す図であり、図において1が本実施例の塗装システムで、本実施例の塗装システムでは、自動車用のホイールを塗装するための塗装システムとしている。但し、本発明における塗装対象は自動車用のホイールには限定されず、いずれでもよい。
【0041】
そして、本実施例の塗装システム1では、ワークを搬送するための搬送ラインを具備しており、この搬送ラインはチェーンコンベアにより構成されている。即ち、図において2が搬送ラインであり、また図において3がチェーンコンベアであり、前記チェーンコンベア3は無端状のチェーンとしている。
【0042】
また、図において6はワーク供給テーブルであり、本実施例の塗装システム1では、前記チェーンコンベア3にワーク供給テーブル6を装着しており、1個のワーク供給テーブル6にワークとしてのホイール1個を固定することとしており、これによって、ワーク供給テーブル6を介して、搬送ライン2上でワークを搬送可能としている。
【0043】
なお、ワーク供給テーブルの形態は特に限定されず、ホイールを取り付けることが可能であり、更に、コンベアのチェーンに連結されてチェーンの移動とともに搬送される形態であればいずれの形態でもよい。また、1個のワーク供給テーブル6に固定可能なワークの数も特に限定されず、2個以上でもよい。
【0044】
次に、図において4はロードエリア、5はアンロードエリアである。即ち、前記搬送ライン2の任意の箇所には、隣り合う配置で、ワークのロードエリア4とアンロードエリア5とを設置しており、ロードエリア4において、前記ワーク供給テーブル6にワークを固定し、アンロードエリア5においては、前記ワーク供給テーブル6に固定した塗装処理済みのワークを取り外すこととしている。但し、前記ワークのロードエリア4及びアンロードエリア5の設置箇所は得に限定されない。
【0045】
次に、図1において7は塗装ブースである。即ち、本実施例の塗装システム1では、搬送ライン2の途上に塗装ブース7が配置されており、この塗装ブース7内において、チェーンコンベア3によって搬送されてきたワークを塗装可能としている。
【0046】
ここで、前記塗装ブース7について説明すると、本実施例において前記塗装ブース7は、搬送ライン2の途上において、前記チェーンコンベア3が通過可能な配置で備えられているとともに、その内部には、ワークを塗装するための塗装可能範囲が確保されており、これにより、ワークは、チェーンコンベア3によって塗装ブース7内に搬送され、塗装ブース7内の塗装可能範囲内で塗装された後に、再びチェーンコンベア3によって搬送されて、塗装ブース7から出されることとしている。
【0047】
また、前記塗装ブース7内には支持用レール8が備えられており、この支持用レール8には、ロボットアーム9が取り付けられている。
【0048】
そして、前記ロボットアーム9には、支持アーム1001が連結され、この支持アーム1001には、複数個のスプレーガン1002が装着され、支持アーム1001と、この支持アーム1001に取り付けたスプレーガン1002によって、塗料噴射手段10が構成されている。
【0049】
更に、各スプレーガン1002には、図示しない塗料供給手段が一端に連結された塗料ホースの他端が連結され、これにより、スプレーガン1002から塗料を噴射可能としており、塗装ブース7内において、スプレーガン1002から噴射される塗料によってワークを塗装可能な範囲が、塗装可能範囲となっている。
【0050】
また、本実施例において前記塗料噴射手段10は、図にも示されるように、2個のスプレーガン1002を有しており、これにより、塗装可能範囲内に位置する2個のワーク供給テーブルに固定されたワークを同時に塗装可能としている。
【0051】
一方、前記塗装ブース7は、少なくとも2個のワーク供給テーブル6を同時に収容可能なスペースを有しており、これにより、塗装ブース7内においては、少なくとも2個のワーク供給テーブル6を同時に収容し、塗装可能範囲内に位置する2個のワーク供給テーブルに固定されたワークに向けて、2個のスプレーガン1002から塗料を噴射可能としている。
【0052】
但し、本発明の塗装システムでは、必ずしもロボットアームを用いる必要はなく、その他、例えば、床置き型の塗装ロボット等を用いてもよい。また、スプレーガンの数は特に限定されず、塗装ブース7内に収容可能なワーク供給テーブルの数も2個には限定されない。
【0053】
なお、ホイールの塗装を行う本実施例の塗装システムにおいては、塗装ブース7内において1個のワークの塗装に要する時間は約1分としている。
【0054】
次に、図において11は、前記塗装ブース7内で塗装されたワークを乾燥するための乾燥ブースである。即ち、本実施例の塗装システム1では、前記搬送ライン2におけるコンベア3の移動方向に見た前記塗装ブース7の前方側に乾燥ブース11を配置しており、この乾燥ブース11内において、塗装済みのワークの乾燥を行うこととしている。
【0055】
ここで、前記乾燥ブース11について説明すると、本実施例において前記乾燥ブース11は、加熱室12と、この加熱室12の前方側に配置した保温室13と、この保温室13の前方に配置した冷却エリア14を有して構成されている。
【0056】
そして、加熱室12では、誘導加熱によりワークを加熱することとしている。即ち、加熱室12内には、8個の誘導加熱装置1201が配設されており、これらの誘導加熱装置1201はそれぞれ、加熱コイル1202を有している。
【0057】
また、前記加熱コイル1202は、図示しない電源に接続されているとともに、ワークを収容可能な内径を有する形状としている。
【0058】
そして、前記加熱コイル1202は、所定位置にワークが搬送されて停止したときに、下降することでその内部にワークを収容し、この状態において加熱コイルに電流を流すことで、加熱コイル1202内に収容したワークを昇温させて加熱することとしている。
【0059】
また、本実施例の塗装システム1では、前記誘導加熱装置を8個配設しているために、加熱室12内においては、8個のワークを同時に加熱することを可能としている。
【0060】
更に、ホイールの塗装を行う本実施例の塗装システムにおいては、ワークの目標昇温温度は約180℃としており、1個のワークの加熱を行うために要する時間は約4分とし、4分間の誘導加熱によってワークの加熱を終了することとしている。
【0061】
なお、誘導加熱の方法等に関しては周知技術であるために詳細な説明は省略する。また、加熱コイル1202の下降機構に関しても特に限定されず、エアーシリンダーを用いる等、加熱コイルを下降及び上昇可能な機構であればいずれの機構を採用してもよい。
【0062】
次に、前記保温室13について説明すると、前記保温エリア13は、前記搬送ライン2におけるコンベア3の移動方向に見た前記加熱室12の前方側に配置しており、この保温室13においては、前記加熱室12内で加熱されたワークを保温することとしている。
【0063】
そして、前記搬送ライン2におけるコンベア3の移動方向に見た前記保温室13の前方側に前記冷却エリア14が配置されており、この冷却エリア14は、ワークの温度を下げるために用いられ、この冷却エリア14においてワークの冷却が完了すると、ワークの加熱乾燥処理が終了する。
【0064】
次に、図において15と16は、前記チェーンコンベア3を駆動するためのモーターであり、15は第1モーター、16は第2モーターである。
【0065】
まず、本実施例において前記第1モーター15は、連続送りとタクト送りを可能にしたモーターであり、コンベア2の移動方向に見た前記塗装ブース7の前方側に配置し、塗装ブース7内でワークの塗装を行っている間は停止し、それにより、塗装ブース7内でワークの塗装を行っている間は塗装ブース7内においてはコンベア2のチェーンを移動させないこととしている。
【0066】
そして、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了した後は、塗装が終了した2個のワークを塗装可能範囲の外に搬送するとともに未塗装の2個のワークを塗装可能範囲内へ搬送可能な距離だけコンベアを駆動して、塗装済みの2個のワークを塗装可能範囲の外へ搬送するとともに、未塗装の2個のワークを塗装可能範囲内へ搬送することとしている。従って、1個のワークの塗装に要する時間を約1分としている本実施例の塗装システムにおいて前記第1モーター15は、ワークの塗装を行っている約1分間は停止し、その後駆動してワークを搬送し、その後も、1分間の停止と、搬送を、繰り返すこととしている。
【0067】
一方、前記第2モーターもまた、連続送りとタクト送りを可能にしたモーターとしており、コンベア2の移動方向に見た前記加熱室12の前方側に配置しており、加熱室12内で塗装済みのワークの加熱が行われている間は停止し、それにより、加熱室12内で塗装済みのワークの加熱が行われている間は加熱室12内においてはコンベア2のチェーンを移動させないこととしている。
【0068】
そして、加熱室12内におけるワークの加熱が終了した後に、加熱処理が終了した8個のワークを加熱室12の外に搬送するとともに未加熱の8個のワークを加熱室12内に搬送可能な距離だけコンベアを駆動し、加熱処理が終了した8個のワークを加熱室12の外に搬送するとともに未加熱の8個のワークを加熱室12内に搬送することとしている。従って、1個のワークの加熱に要する時間を約4分としている本実施例の塗装システムにおいて前記第2モーター15は、ワークの加熱を行っている約4分間は停止し、その後駆動してワークを搬送し、その後も、4分間の停止と、搬送を、繰り返すこととしている。
【0069】
次に、図において17は、加熱待ちエリアである。即ち、本実施例の塗装システム1では、前記搬送ライン2において、前記加熱室12の手前側に加熱待ちエリア17を配設して、加熱室12内においてワークの誘導加熱が行われている間は、チェーンコンベア3により搬送されてきたワークを加熱待ちエリア17に待機させておくこととしている。
【0070】
即ち、本実施例の塗装システム1では、加熱室12内でワークの加熱を行っている間は、第2モーター16を駆動せずに加熱室12内ではチェーンコンベア3を停止しており、また、塗装ブース7内でワークの塗装を行っている間は第1モーターを駆動せずに塗装ブース7内ではチェーンコンベア3を停止しているが、加熱時間が約4分であるのに対して塗装時間は約1分であるため、第2モーター16が停止している4分間に第1モーター15は3回駆動してしまう。従って、何らの手当てもしない場合には、第1モーター15の駆動のたびにチェーンが加熱室12内に移動してしまい、加熱室12内に塗装済みのワークが搬送されるとともに、加熱室12内においてチェーンコンベア3に弛みが発生してしまい、加熱室12内で行われているワークの加熱に支障が生じてしまう。
【0071】
そこで、本実施例の塗装システム1では、前記搬送ライン2において、前記加熱室12の手前側に加熱待ちエリア17を配設して、加熱室12内においてワークの誘導加熱が行われている間は、加熱室12内にワークが搬送されないようにしている。
【0072】
ここで、前記加熱待ちエリア17について図2を参照して説明すると、本実施例において前記加熱待ちエリア17は、第1テンション手段を有しており、この第1テンション手段によって、加熱室12の手前において、チェーンコンベア3のチェーンを緊張させて弛みを防止し、加熱室12内においてワークの加熱が行われている4分間は、加熱室12内にチェーンが移動しないようにしている。
【0073】
即ち、図2において18が第1テンション手段であり、本実施例において前記第1テンション手段18は、チェーンコンベア3のチェーンが係止しているスプロケットとしており、このスプロケット18を、一定方向への移動及び元の位置への復元を自在とし、移動方向を、チェーンコンベア3の延伸方向としている。
【0074】
そして、前記スプロケット18は、駆動手段としてのエアーシリンダー19によって、前記延伸方向へ常に所定の力によって引かれている。そのため、第1モーター15の駆動によって加熱待ちエリア17まで移動してきたチェーンは、加熱室12の手前において、エアーシリンダー19の張力によって延伸方向へ引かれているスプロケット18とともに延伸方向へ伸びていき、それによって、チェーンコンベア3のチェーンの緊張が維持されて、弛みの発生を防止可能としている。
【0075】
この作用を示した図が図3〜図5であり、図3では、加熱待ちエリア17内に3個のワークが待機しており、加熱待ちエリア17内に位置するチェーンが短いために、スプロケット18は、延伸方向へ移動することができずに、エアーシリンダー19による延伸方向への張力に対抗して下方に位置している。
【0076】
一方、この後、第1モーター15の駆動によって加熱待ちエリア17までワークが2個ずつ搬送されてくると、図4〜図5に示すように、エアーシリンダー19によって延伸方向へ引かれているスプロケット18は、ワークの搬送に伴って加熱待ちエリア17内に位置するチェーンが徐々に長くなるに従って、チェーンが長くなった分だけ、エアーシリンダー19の力によって延伸方向へ移動していく。
【0077】
そうすると、このスプロケット18に係止しているチェーンもまた延伸方向へ伸びていき、これによって、加熱待ちエリア17内において、チェーンコンベア3のチェーンの緊張が維持されて弛みの発生を防止することができ、未加熱のワークが加熱室12内に搬送されてしまうことを防止することができる。
【0078】
そのため、本実施例の塗装システム1では、ワークの加熱に伴って加熱室12内でチェーンが停止している場合に、第1モーター15の駆動によって塗装ブース7から搬送されてきたワークを加熱待ちエリア17に待機させることができるので、加熱室12内においては、加熱処理を中断することなく、1個のワークについて4分間の連続した加熱を行うことができ、効率の良い加熱乾燥を行うことが可能である。
【0079】
また、前記第1テンション手段18としてのスプロケットは、延伸方向への移動及び元の位置への復元を自在としているために、第2モーター16の駆動によって、加熱待ちエリア17内のワークが所定数だけ加熱ブース17内に搬送されていき、加熱待ちエリア17内のチェーンが短くなると、チェーンに引かれながら反延伸方向へ縮んでいくので、これによりスムーズな搬送を可能にしている。
【0080】
なお、図からも明らかなように、本実施例においては、第1モーター15を加熱待ちエリア17内に配設しているが、必ずしもその必要はなく、前記搬送ライン2におけるコンベア3の移動方向に見た前記第1モーター15の前方側に加熱待ちエリア17が配置されていればよい。
【0081】
次に、図1において20は搬送待ちエリアである。即ち、本実施例の塗装システム1では、前記搬送ライン2において、前記チェーンコンベア3の移動方向に見た前記冷却エリア14の前方側に搬送待ちエリア20を配設し、加熱室12内におけるワークの加熱が終了した後に、第2モーター16の駆動によってワーク8個分の距離だけチェーンコンベア3を駆動して加熱室12内の加熱済みのワークを加熱室12の外に移動した際に、前記チェーンコンベア3の移動方向に見た加熱室12の前方側においてチェーンが弛んでしまうことを防止して、あるいは、加熱室12内におけるワークの加熱に伴って第2モーター16が停止している間に第1モーター15が駆動してワーク2個分のチェーンが移動したときに、チェーンが切れてしまうことを防止している。
【0082】
即ち、本実施例の塗装システム1では、第1モーター15は、ワーク塗装中の1分間の停止と塗装後のワーク2個分の搬送を繰り返し、第2モーター16は、ワーク加熱中の4分間の停止と加熱処理後のワーク8個分の搬送を繰り返しており、従って、第1モーター15と第2モーター16とは駆動間隔と駆動時間が異なっている。
【0083】
そのために、何らの手当てもしない場合には、第2モーター16の駆動によって8個のワークが加熱室12から加熱室12の外へ搬送されたときに、第2モーター16と第1モーター15間において、チェーンに弛みが発生してしまう。
【0084】
また、同様に何らの手当てもしない場合には、第2モーター16が駆動せずに加熱室12内のチェーンが停止している4分間の間に、塗装の終了に伴う第1モーター15の駆動で2個のワークが塗装可能範囲の外へ搬送された場合は、第1モーター15と第2モーター16間においてチェーンが切れてしまうおそれも考えられる。
【0085】
そこで、本実施例の塗装システム1では、前記チェーンコンベア3の移動方向に見た前記冷却エリア14の前方側に搬送待ちエリア20を配設し、加熱室12内におけるワークの加熱が終了し、第2モーター16の駆動によって加熱済の8個のワークを加熱室12から外に搬送可能な距離のチェーンが移動したときに、それに伴い搬送されてくる8個のワークを搬送待ちエリア20に待機させることとしている。そして、この搬送待ちエリア20に待機させたワークは、塗装ブース7内における塗装の終了に伴う第1モーターの駆動によって順次、アンロードエリア5まで搬送されていく。
【0086】
ここで、前記搬送待ちエリア20について説明すると、本実施例において前記搬送待ちエリア20の構成は、前述した加熱待ちエリア17の構成とほぼ同じであり、第2テンション手段を有している。
【0087】
そして、この第2テンション手段は、チェーンが係止したスプロケット21としており、このスプロケット20は、一定方向への往復移動を自在として、この移動方向をチェーンコンベア3の延伸方向としている。
【0088】
また、前記スプロケット21は、駆動手段としてのエアーシリンダー22によって、前記延伸方向へ常に所定の力によって引かれており、これにより、搬送待ちエリア20においては、常にチェーンコンベア3のチェーンを緊張させて弛みの発生を防止している。
【0089】
そのため、第2モーター16の駆動によって、搬送待ちエリア20に移動してきたチェーンは、エアーシリンダー22の張力によって延伸方向へ引かれているスプロケット21とともに延伸方向へ伸びていき、それによって、チェーンコンベア3のチェーンの緊張を維持して弛みの発生を防止可能としている。この作用は前述の加熱待ちエリア17の場合と同様である。
【0090】
従って、本実施例の塗装システム1では、加熱室12内におけるワークの誘導加熱が終了し、第2モーター16の駆動によって、加熱室12内の8個の加熱済のワークを加熱室12の外に搬送可能な距離のチェーンが搬送待ちエリア20に移動してきたときに、エアーシリンダー22の張力によってスプロケット21が延伸方向に引かれるとともに、このスプロケット21に係止されているチェーンも延伸方向に引かれるために、コンベアの弛みを吸収しつつコンベアにより搬送されてくる乾燥処理済みのワークを搬送待ちエリア20に待機させることができる。
【0091】
また、乾燥処理済みのワーク搬送待ちエリア20に待機させているために、加熱室12内での加熱処理中の4分間に、塗装の終了に伴う第1モーター15の駆動で2個のワークが塗装可能範囲の外へ搬送されたときでも、第1モーター15と第2モーター16間においてチェーンが切れてしまうことを防止できる。
【0092】
更に、前述の加熱待ちエリア17の場合と同様に、スプロケット21は、延伸方向への移動及び元の位置への復元を自在としているために、搬送待ちエリア20内のワークが搬送待ちエリア20の外へ搬送されていき搬送待ちエリア20内のチェーンが短くなるに従って、短くなっていくチェーンに引かれながら反延伸方向へ移動していき、これによりスムーズな搬送を可能にしている。
【0093】
なお、図からも明らかなように、搬送待ちエリア20は、必ずしも冷却室14の前方側に配置する必要はなく、前記搬送ライン2におけるコンベア3の移動方向に見た前記第2モーター16の前方側に配置してあればよい。
【0094】
次に、このように構成される本実施例の塗装システム1を用いた本発明の塗装方法の実施例について説明すると、前述の塗装システムを用いてワークの塗装を行う場合には、まず、第1モーター15及び第2モーター16の双方を連続駆動してチェーンコンベアを連続送りするとともに、ロードエリア4において、コンベアチェーンの移動とともに搬送されてくる、空のワーク供給テーブルに、ワークとしての未塗装のホイールを固定していく。
【0095】
そして、未塗装のワークが2個、塗装ブース7内における塗装可能範囲に搬送された時点で、第1モーター15及び第2モーター16の双方を停止して、塗装ブース7内においては、コンベア3を停止した状態で、塗装ブース7内の塗装可能範囲に搬送されたワークに向けてスプレーガン1002から塗料を噴射し、約1分間の塗装を行う。
【0096】
そして、約1分間の塗装の後に、第1モーター15を駆動して、塗装済みの2個のワークを塗装可能範囲の外へ移動可能な距離だけコンベアを移動して、塗装済みのワークを塗装可能な範囲の外へ搬送するとともに、未塗装の2個のワークを塗装ブース7における塗装可能範囲に搬送し、以後はこの動作を繰り返す。
【0097】
そのため、コンベアの駆動する際には、第1モーター15のみの駆動によりチェーンが切れてしまうことを防止するために、搬送待ちエリア20内に8個以上のワーク供給テーブルが待機する状態にしておく。
【0098】
一方、第2モーター16は、加熱待ちエリア17内に8個以上のワークが移動してくるまでは停止させ、第1モーター16の駆動によって塗装ブース7から外へ搬送されたワークは順次、加熱待ちエリア17へ移動して待機させる。
【0099】
そして、加熱待ちエリア17内に8個以上のワークが移動してきた時点で、第2モーター16を駆動して、8個のワークを加熱室12内に搬送する。
【0100】
なお、第2モーター16を駆動するときに加熱待ちエリア17に待機しているワークの数は限定されず、第2モーター16を駆動して8個のワークを同時に加熱ブース内へ搬送可能な数であればよい。従って、第2モーター16を駆動する際には、加熱待ちエリア17に8個以上のワークが待機されていればよい。
【0101】
次に、8個のワークが搬送された加熱室12内においては、前記加熱コイル1202を下降することで加熱コイル1202内にワークを収容するとともに、加熱コイル1202に通電してワークを加熱して昇温し、この加熱処理を約4分間行うとともに、この4分間の加熱処理中は、第2モーター16を停止しておく。
【0102】
一方、前記加熱室12内における4分間のワークの加熱が終了するまでは、塗装の終了に伴う第1モーター15の駆動によって搬送されてきたワークは、前記第1テンション手段18によってコンベア3の弛みを吸収しつつ、加熱待ちエリア17に待機させる。
【0103】
そして、加熱室12内の4分間の加熱処理が終了した後は、第2モーター16を駆動し、加熱室12内の加熱済みのワーク8のすべてを加熱室12の外へ移動可能な距離だけコンベア3を駆動して、加熱済みのワークのすべてを加熱室12の外へ搬送するとともに、前記加熱待ちエリア17で待機させていたワークを加熱室12内に搬送して、前記加熱室12内において、誘導加熱によって、コンベア3を搬送することなく塗装済みのワークの加熱を行い、以後はこの動作を繰り返す。
【0104】
一方、加熱室12から外へ搬送されたワークは、第2モーター16の駆動のたびごとに、8個の加熱済のワークを加熱室12から外へ搬送可能な距離だけ移動して、保温室13、冷却室14の順番で通過していく。
【0105】
また、第2モーター16の駆動によってチェーンが移動したときに、前記搬送待ちエリア20においては、前記第2テンション手段21によってコンベア3の弛みを吸収しつつ、第2モーター16の駆動に伴って搬送されてくる乾燥済みのワークを、塗装ブース7内におけるワークの塗装終了に伴う前記第1モーター15の駆動によってアンロードエリア5に向けて搬送されるまで、前記搬送待ちエリア20に待機させる。
【0106】
そして、以後は、塗装ブース7内での塗装、乾燥ブース11内での乾燥、塗装済ワークの搬送及び加熱待ちエリア17内での待機、乾燥済ワークの搬送待ちエリア20での待機、搬送待ちエリア20内のアンロードエリアへの搬送等を繰り返す。
【0107】
このように、本実施例の塗装システム及びそれを用いた塗装方法では、加熱室内において塗装済ワークの加熱を行っている間は加熱室内においてはコンベアを移動させないこととしているとともに、加熱室内におけるワークの加熱が終了するまでは、塗装ブース内におけるワークの塗装が終了して塗装ブースの外へ搬送されたワークを加熱待ちエリアに待機させることとしている。
【0108】
従って、本実施例によれば、塗装ブース内での塗装及び塗装終了後の搬送を継続しつつ、加熱室内においては、処理を中断することなく、連続して必要時間の加熱処理を行うことが可能であるために、誘導加熱による加熱を行う塗装システムにおいて、効率の良い加熱乾燥を行うことが可能である。
【0109】
なお、前述の説明では、塗装ブース7内では2個のワークの塗装を可能にしており、加熱室12内においては8個のワークの加熱を同時に行うことを可能にした形態を説明したが、この個数は特に限定されない。
【0110】
また、前述の説明では、第1、第2テンション手段としてスプロケットを用いて、このスプロケットをエアーシリンダーで一定方向へ引くことでコンベアチェーンの緊張を維持して弛みを防止したが、本発明では必ずしもこの方法には限定されず、コンベアチェーンの緊張を維持して弛みを防止可能な方法であればいずれを採用してもよい。
【0111】
更に、前述の説明では、加熱待ちエリア17と搬送待ちエリア20をそれぞれ独立させた形態を説明したが、本発明においては、加熱待ちエリア17と搬送待ちエリア20を連結させて構成してもよい。
【0112】
即ち、本発明においては、第1モーター15が駆動してチェーンが移動した場合、及び、第2モーター16が駆動してチェーンが移動した場合にはそれぞれ、第1テンション手段18と第2テンション手段21は反対方向へ同距離だけ移動する。例えば、塗装の終了に伴う第1モーター15の駆動で2個のワーク供給テーブルが塗装可能範囲の外へ搬送された場合は、加熱待ちエリア17において第1テンション手段18はチェーンが移動した距離だけ延伸方向へ移動するが、搬送待ちエリア20において第2テンション手段21は、チェーンが移動した距離だけ反延伸方向へ移動する。また、第2モーター16の駆動によって8個のワークが加熱室12から加熱室12の外へ搬送されたときは、搬送待ちエリア20において第2テンション手段21はチェーンが移動した距離だけ延伸方向へ移動するが、加熱待ちエリア17において第1テンション手段18はチェーンが移動した距離だけ反延伸方向へ移動する。
【0113】
そこで、図6及び図7に示すように、加熱待ちエリア17と搬送待ちエリア20を合体させるとともに、第1テンション手段18と第2テンション手段21とを連結部材23で連結し、更にこの連結部材23を、加熱待ちエリア側と搬送待ちエリア20側の双方へ移動自在にした形態にしてもよい。
【0114】
即ち、図6に示す形態では、加熱待ちエリア17側と搬送待ちエリア20側の双方へ移動自在に配設した連結部材23の両端部分に前記第1テンション手段18と第2テンション手段21を固定しており、これにより、第1モーター15が駆動してチェーンが移動した場合、及び、第2モーター16が駆動してチェーンが移動した場合のそれぞれにおいて、第1テンション手段18と第2テンション手段21が同時に、互いに反対方向へ同距離だけ移動可能としている。
【0115】
また、図7に示す形態では、加熱待ちエリア17側と搬送待ちエリア20側の双方へ移動自在に配設したプレート状の連結部材23の両端部分に、前記第1テンション手段18と第2テンション手段21を固定し、これにより、図6に示す場合と同様に、第1モーター15が駆動してチェーンが移動した場合、及び、第2モーター16が駆動してチェーンが移動した場合のそれぞれにおいて、第1テンション手段18と第2テンション手段21が同時に、互いに反対方向へ同距離だけ移動可能としている。
【0116】
従って、図6及び図7に示す形態のいずれでも、図1に示す形態の場合と同様に、第1モーター15が駆動してチェーンが移動した場合、及び、第2モーター16が駆動してチェーンが移動した場合にそれぞれ、第1テンション手段18と第2テンション手段21が反対方向へ同距離だけ移動可能である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の塗装システム及びそれを用いた塗装方法では、誘導加熱により塗装後の加熱処理を行う塗装システムにおいて、加熱処理を連続して行うことで、効率の良い加熱乾燥を行うことを可能にしているため、誘導加熱による加熱処理を行う塗装システムの全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0118】
1 塗装システム
2 搬送ライン
3 チェーンコンベア
4 ロードエリア
5 アンロードエリア
6 ワーク供給テーブル
7 塗装ブース
8 支持用レール
9 ロボットアーム
10 塗料噴射手段
1001 支持アーム
1002 スプレーガン
11 乾燥ブース
12 加熱室
1201 加熱装置
1202 加熱コイル
13 保温室
14 冷却室
15 第1モーター
16 第2モーター
17 加熱待ちエリア
18 第1テンション手段(スプロケット)
19 エアーシリンダー
20 搬送待ちエリア
21 第2テンション手段(スプロケット)
22 エアーシリンダー
23 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア(3)を具備した、ワークを搬送するための搬送ライン(2)と、
該搬送ライン(2)の途上に配設された、複数個のワークを収容可能な塗装ブース(7)と、
該塗装ブース(7)内に配設された、前記塗装ブース(7)内における塗装可能範囲内に位置する複数のワークに向けて塗料を噴射するための塗料噴射手段(10)と、
前記搬送ライン(2)におけるコンベア(3)の移動方向に見た前記塗装ブース(7)の前方側に配置した、前記塗装ブース(7)内で塗装されたワークを複数個収容して誘導加熱により加熱するための加熱室(12)と、を具備した塗装システムにおいて、
前記塗装ブース(7)内でワークの塗装を行っている間は塗装ブース(7)内においてはコンベア(3)を移動させず、塗装ブース(7)内におけるワークの塗装が終了した後に、塗装済のワークを塗装可能範囲の外へ搬送するとともに未塗装のワークを塗装ブース(7)内における塗装可能範囲へ搬送するための第1モーター(15)と、
前記加熱室(12)内で塗装済ワークの加熱を行っている間は加熱室(12)内においてはコンベア(3)を移動させず、加熱室(12)内における塗装済ワークの加熱が終了した後に、加熱済のワークを加熱室(12)外へ搬送するとともに未加熱の塗装済ワークを加熱室(12)内へ搬送するための第2モーター(16)と、
前記搬送ライン(2)におけるコンベア(3)の移動方向に見た前記第1モーター(15)の前方側に配置した、コンベア(3)の弛みを吸収するための第1テンション手段(18)を備え、該テンション手段(18)によってコンベア(3)の弛みを防止しつつ、塗装済のワークを加熱のために待機させる加熱待ちエリア(17)と、
前記搬送ライン(2)におけるコンベア(3)の移動方向に見た前記第2モーター(16)の前方側に配置した、コンベア(3)の弛みを吸収するための第2テンション手段(21)を備え、該第2テンション手段(21)によってコンベア(3)の弛みを防止しつつ、加熱済みワークを搬送のために待機させる搬送待ちエリア(20)と、を具備し、
塗装ブース(7)内においてワークの塗装を行っている間は、前記第1モーター(15)を駆動しないことで前記塗装ブース(7)内においてはコンベアを移動させず、
加熱室(12)内において塗装済ワークの加熱を行っている間は、前記第2モーター(16)を駆動しないことで前記加熱室(12)内においてはコンベア(3)を移動させず、
塗装ブース(7)内におけるワークの塗装が終了した後は、
第1モータ(15)を駆動して、塗装ブース(7)内の塗装済みのワークを塗装可能範囲の外へ移動可能な距離だけコンベア(3)を移動して、塗装済みのワークを塗装可能範囲の外へ搬送するとともに、
未塗装のワークを塗装ブース(7)内における塗装可能範囲へ搬送して、塗装ブース(7)内においてコンベア(3)を移動することなく未塗装のワークの塗装を行い、
更に、前記加熱室(12)内におけるワークの加熱が終了するまで、塗装ブース(7)から搬送されてきた塗装済ワークを、前記第1テンション手段(17)によってコンベア(3)の弛みを吸収しつつ、加熱待ちエリア(17)に待機させ、
加熱室(12)内における塗装済ワークの加熱が終了した後は、
第2モーター(16)を駆動し、加熱室(12)内の加熱済みのワークのすべてを加熱室(12)の外へ移動可能な距離だけコンベア(3)を移動して、加熱済みのワークのすべてを加熱室(12)の外へ搬送するとともに、
前記加熱待ちエリア(13)で待機させていたワークを加熱室(12)内に搬送して、前記加熱室(12)内においてコンベア(3)を移動することなく塗装済みのワークの加熱を行い、
更に、第2モーター(16)の駆動に伴って搬送されてくる加熱済みのワークを、前記第2テンション手段(21)によってコンベア(3)の弛みを吸収しつつ、塗装ブース(7)内におけるワークの塗装終了に伴う前記第1モーター(15)の駆動によってアンロードエリア(5)に向けて搬送されるまで、前記搬送待ちエリア(20)に待機させ、
以後はこれを繰り返すことを可能にしたことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
前記コンベア(3)がチェーンコンベアであることを特徴とする請求項1に記載の塗装システム。
【請求項3】
前記第1テンション手段及び第2テンション手段が、チェーンを搬送するためのスプロケット(18、21)であるとともに、該スプロケット(18、21)をエアーシリンダー(19、22)によって所定の力で一方向へ引っ張ることを特徴とする請求項2に記載の塗装システム。
【請求項4】
コンベア(3)を具備した、ワークを搬送するための搬送ライン(2)と、
該搬送ライン(2)の途上に配設された、複数個のワークを収容可能な塗装ブース(7)と、
該塗装ブース(7)内に配設された、前記塗装ブース(7)内に位置する複数のワークに向けて塗料を噴射するための塗料噴射手段(10)と、
前記搬送ライン(2)におけるコンベア(3)の移動方向に見た前記塗装ブース(7)の前方側に配置した、前記塗装ブース(7)内で塗装されたワークを複数個収容して誘導加熱により加熱するための加熱室(12)と、
前記塗装ブース(7)内でワークの塗装を行っている間は塗装ブース(7)内においてはコンベア(3)を移動させず、塗装ブース(7)内におけるワークの塗装が終了した後に、塗装済のワークを塗装可能範囲の外へ搬送するとともに未塗装のワークを塗装ブース(7)内における塗装可能範囲へ搬送するための第1モーター(15)と、
前記加熱室(12)内で塗装済ワークの加熱を行っている間は加熱室(12)内においてはコンベア(3)を移動させず、加熱室(12)内における塗装済ワークの加熱が終了した後に、加熱済のワークを加熱室(12)外へ搬送するとともに未加熱の塗装済ワークを加熱室(12)内へ搬送するための第2モーター(16)と、
前記搬送ライン(2)におけるコンベア(3)の移動方向に見た前記第1モーター(15)の前方側に配置した、コンベア(3)の弛みを吸収するための第1テンション手段(18)を備え、該テンション手段(18)によってコンベア(3)の弛みを防止しつつ、塗装済のワークを乾燥のために待機させる加熱待ちエリア(17)と、
前記搬送ライン(2)におけるコンベア(3)の移動方向に見た前記第2モーター(16)の前方側に配置した、コンベア(3)の弛みを吸収するための第2テンション手段(21)を備え、該第2テンション手段(21)によってコンベア(3)の弛みを防止しつつ、乾燥済みワークを搬送のために待機させる搬送待ちエリア(20)と、を具備した塗装システムを用いた塗装方法であって、
塗装ブース(7)内においてワークの塗装を行っている間は、前記第1モーター(15)を駆動しないことで前記塗装ブース(7)内においてはコンベアを移動させず、
加熱室(12)内において塗装済ワークの加熱を行っている間は、前記第2モーター(16)を駆動しないことで前記加熱室(12)内においてはコンベアを移動させず、
塗装ブース(7)内におけるワークの塗装が終了した後は、
第1モータ(15)を駆動して、塗装ブース(7)内の塗装済みのワークを塗装可能な範囲の外へ移動可能な距離だけコンベア(3)を移動して、塗装済みのワークを塗装可能な範囲の外へ搬送するとともに、
未塗装のワークを塗装ブース(7)内における塗装可能範囲へ搬送して、塗装ブース(7)内においてコンベア(3)を移動することなく未塗装のワークの塗装を行い、
更に、前記加熱室(12)内におけるワークの加熱が終了するまで、塗装ブース(7)から搬送されてきた塗装済ワークを、前記第1テンション手段(17)によってコンベア(3)の弛みを吸収しつつ、加熱待ちエリア(17)に待機させ、
加熱室(12)内における塗装済ワークの加熱が終了した後は、
第2モーター(16)を駆動し、加熱室(12)内の加熱済みのワークのすべてを加熱室(12)の外へ移動可能な距離だけコンベア(3)を移動して、加熱済みのワークのすべてを加熱室(12)の外へ搬送するとともに、
前記加熱待ちエリア(13)で待機させていたワークを加熱室(12)内に搬送して、前記加熱室(12)内においてコンベア(3)を移動することなく塗装済みのワークの加熱を行い、
更に、第2モーター(16)の駆動に伴って搬送されてくる加熱済みのワークを、前記第2テンション手段(21)によってコンベア(3)の弛みを吸収しつつ、塗装ブース(7)内におけるワークの塗装終了に伴う前記第1モーター(15)の駆動によってアンロードエリア(5)に向けて搬送されるまで、前記搬送待ちエリア(20)に待機させ、
以後はこれを繰り返すことを特徴とする塗装方法。
【請求項5】
前記コンベア(3)としてチェーンコンベアを用いたことを特徴とする請求項4に記載の塗装方法。
【請求項6】
前記第1テンション手段及び第2テンション手段として、チェーンを搬送するためのスプロケット(18、21)を用いるとともに、該スプロケット(18、21)をエアーシリンダー(19、22)によって所定の力で一方向へ引っ張ることを特徴とする請求項5に記載の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−45513(P2012−45513A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191933(P2010−191933)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(593081224)タクボエンジニアリング株式会社 (23)
【Fターム(参考)】