説明

塩基増殖剤、それを用いた樹脂組成物、及び物品

【課題】より安価で耐熱性の良好な塩基増殖剤、及び、その塩基増殖剤を含有した樹脂組成物、感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される構造を少なくとも1つ有し、アミノ化合物と共存下で150℃以上の加熱により分解し、アミノ化合物を生成することを特徴とする塩基増殖剤。


(式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シリル基、シラノール基、又は1価の有機基であり、それらは互いに同一であっても異なっていても良く、それらが互いに結合を介して環状構造を形成していても良い。Rは置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、或いは置換又は無置換の芳香族炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩基増殖剤、及び、それを含む樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、耐熱性が高く、合成が容易で低コストで生産が可能な塩基増殖剤、また、その塩基増殖剤を含む樹脂組成物および感光性樹脂組成物、並びに、当該感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されている高耐熱性、高安定性の物品に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の放射線の照射によって硬化するか又は溶解性が変化する感光性樹脂は、一般に、露光部の溶解性が良好なもの(ポジ型)と、未露光部の溶解性が良好なもの(ネガ型)の2種に分類される。ネガ型の場合、感光性樹脂自体が露光により硬化し不溶になることから、感光性樹脂が基材上に残存し機能膜として製品の一部となる場合が多い。
ネガ型の感光性樹脂は当初、例えば塗料、印刷インキ、オーバーコート層、接着剤、印刷原版等に用いられてきたが、近年、プリント配線板の配線保護用のソルダーレジストや、層間絶縁膜、カラーフィルターの画素、反射防止膜、ホログラム等を形成するためのレジスト等にまで用途が広がってきている。
【0003】
一般に多く用いられるネガ型の感光性樹脂は、ラジカル重合を用いてエチレン性不飽和結合を有する化合物を硬化させるタイプ、酸や塩基を用いてエポキシ化合物やオキセタン化合物などを重合させたり、芳香族化合物などを架橋反応や縮合反応させ、不溶化させるタイプ、アゾ化合物を用いて高分子を架橋し不溶化させるタイプなどが提案されている。
アゾ化合物を用いるタイプやラジカル重合を用いるタイプは古くから実用化され、種々の用途に用いられている。
ラジカル重合を用いたネガ型感光性樹脂は、感度も高く、歴史もあることから多くの種類のエチレン性不飽和基含有化合物や光ラジカル発生剤が上市されており、目的の物性にあわせて組成を設計することが出来るといった利点がある。一方で、酸素による重合阻害や、エチレン性不飽和結合が必須であることより、耐熱性に限界があるなどの問題がある。
【0004】
酸や塩基を用いるネガ型の感光性樹脂組成物は、硬化物が耐熱性に優れるエポキシ化合物を用いることが出来る為、電子部品等の比較的耐熱が必要とされる用途に対しての適用が検討されている。
そこで、課題となるのが、絶縁膜などの機能膜として製品の一部として用いられる場合に、塗膜中に残存する光重合開始剤などの添加剤が、製品性能に悪影響を及ぼす場合である。光酸発生剤を用いて硬化させた感光性樹脂が、電子部品などの絶縁膜として用いられると、高温高湿の環境下で配線を腐食し不具合を起こす場合があることが知られている。
【0005】
その為、金属と直接接する用途に置いては、光酸発生剤ではなく、酸と同じくエポキシ樹脂などの硬化触媒として作用する塩基を発生させる光塩基発生剤を用いたネガ型感光性樹脂が注目されている。
光塩基発生剤は、光を吸収することで分解や転位反応等により、塩基を発生させる化合物のことである。硬化剤として塩基を用いることで、金属を腐食させることなく硬化膜を形成することが出来る。
上記のような事情で光塩基発生剤を用いた感光性樹脂組成物には大きな期待がかかっているものの、一般の高圧水銀灯からの光に対して感度が高い光塩基発生剤は、知られていない。
【0006】
そのため、特許文献1には、塩基増殖反応を用いた感光性材料が提案されている。塩基増殖反応を利用した感光性材料とは、光塩基発生剤から発生した少量の塩基の作用によって分解や転位反応し塩基を発生させる化合物(塩基増殖剤)を用いることで、光塩基発生剤の感度不足を補うという考え方に基づく材料のことである。
この考え方を用いると感度の低い光塩基発生剤を用いても、少量の塩基が発生さえすれば、増殖反応によって塩基の数を増やせるので、十分実用的な感度を示す感光性樹脂とすることが出来る。しかしながら、特許文献1で開示されているような塩基増殖剤は、合成が煩雑でコストが高いという課題があった。
さらに、特許文献1で開示されているような塩基増殖剤は、分子内解裂反応でアミンを発生させる為、分解後に、分解生成物が安定構造をとるような構造の導入(電子吸引性基)が必要であり、その為、耐熱性の低下や合成ルートが複雑化するという課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開2000−330270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、その主目的は、より安価で耐熱性の良好な塩基増殖剤、及び、その塩基増殖剤を含有した樹脂組成物、及び、感光性樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を解決するため、本発明により提供される塩基増殖剤は、下記式(1)で表される構造を少なくとも1つ有し、アミノ化合物と共存下で150℃以上の加熱により分解し、アミノ化合物を生成することを特徴とする塩基増殖剤である。
【0010】
【化1】

(式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シリル基、シラノール基、又は1価の有機基であり、それらは互いに同一であっても異なっていても良く、それらが互いに結合を介して環状構造を形成していても良い。Rは置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、或いは置換又は無置換の芳香族炭化水素基である。)
【0011】
本発明に係る塩基増殖剤は、ウレタン結合の酸素原子に直接芳香環が結合しており、耐熱性に優れる。その為、150℃以上の耐熱性が要求される、ポリアミック酸のような感光性ポリイミド前駆体や感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体等のような耐熱性の要求される用途に適用が可能となる。
【0012】
本発明に係る塩基増殖剤は、フェノール誘導体とイソシアン酸エステルとの付加反応により1段階で合成が可能なので、合成時に脱離成分がなく、安価で、精製も容易である。さらには、原料となるフェノール誘導体、イソシアン酸エステル双方とも、市販されている化合物の種類が多く、構造の選択肢が多いので、用途に対応した特性を有する塩基増殖剤をより安価に合成することが可能である。
【0013】
本発明の塩基増殖剤は、光又は熱の作用によりアミノ化合物を生成する化合物と組み合わせて添加されることが好ましいが、光又は熱の作用によりアミノ化合物を生成する化合物がない場合には、自身の熱分解によって生成したアミノ化合物の触媒作用によって加水分解され、アミノ化合物を生成する。
【0014】
また、本発明の塩基増殖剤においては、前記式(1)における、R〜Rのうち少なくとも一つが、電子供与性基であることが好ましい。電子供与性基を芳香環に導入すると、ウレタン結合の電子密度が高まり、安定性が向上し、その結果、耐熱性が良好となる。電子供与性基としては、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、オキシアシル基、アミド基、アルキル基、アリール基が挙げられる。
【0015】
また、本発明の塩基増殖剤はアミノ化合物と共存下で150℃以上の加熱により加水分解し、アミノ化合物を生成する。その為、水、または、水を供給できる官能基(アミック酸、ジカルボン酸等)が反応系内に含まれることが好ましい。
【0016】
本発明の塩基増殖剤においては、5%重量減少温度が150℃以上であることが、耐熱性の点から好ましい。
【0017】
本発明の塩基増殖剤は400nm以上の波長域に吸収を持たないことが好ましく、360nm以上の波長域に吸収を持たないことがさらに好ましい。400nm以上に吸収を有すると、感光性樹脂組成物に添加した際に、光源からの光を吸収してしまい、感度の低下を招く。一般に露光に用いられる高圧水銀灯の主な発光波長が436nm(g線)、405nm(h線)、365nm(i線)であり、そのうち、最も発光強度が大きいのが365nmであることより、360nm以上の波長域に吸収を持たないことがさらに好ましい。
【0018】
次に、本発明に係る樹脂組成物は、上記本発明に係る塩基増殖剤と、塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物とを含有することを特徴とする。
本発明に係る樹脂組成物は、上記本発明に係る塩基増殖剤と、塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物とを含有するので、通常、樹脂組成物を加熱する事により、硬化する。本発明の樹脂組成物中に含まれる上記本発明に係る塩基増殖剤は、分解前は中性の化合物であるので、本発明の樹脂組成物の保存安定性は良好となる。
【0019】
本発明に係る樹脂組成物においては、上記塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物は、分子量が1000以上であることが、乾燥後の表面のべたつきがなく、塗布後のサンプルの取り扱いが容易になる点から好ましい。
【0020】
本発明に係る樹脂組成物においては、上記塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物として、ポリアミック酸を組み合わせることが好ましい。ポリアミック酸はアルカリ可溶性を有するポリイミド前駆体であり、ポリアミック酸を用いると耐熱性及び機械特性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0021】
本発明に係る樹脂組成物においては、更に、光、又は熱の作用によりアミノ化合物を生成する化合物を含有することが、好ましい。中でも、光によってアミノ化合物を発生する化合物と組み合わせることにより、高感度の感光性樹脂組成物とすることが可能である。
【0022】
本発明に係る樹脂組成物は、パターン形成材料として好適に用いられる。
例えば、本発明に係る樹脂組成物を所定のパターンに塗布するか或いは所定の形状に成形した後に、適当な温度に加熱することで、本発明の塩基増殖剤が加水分解されアミノ化合物が増殖される。後に又は同時に、樹脂組成物中に含まれる塩基の作用により硬化又は縮合反応が促進する化合物の反応に十分な熱を加えることにより、硬化させ、所定のパターンを形成する事が出来る。
本発明に係る樹脂組成物が、更に、熱の作用によりアミノ化合物を生成する化合物を含有する場合には、適宜加熱することによりアミノ化合物を発生する化合物からアミノ化合物が発生し、同時に本発明の塩基増殖剤が加水分解されアミノ化合物を増殖させる。組み合わせる塩基増殖剤よりも低温で分解しアミノ化合物を生成する化合物を選択することにより、塩基増殖剤を単独で用いた場合よりも低温の加熱によりアミノ化合物の増殖を行うことが可能となる。
【0023】
一方、本発明に係る樹脂組成物を感光性樹脂組成物として用いる場合、所定のパターンに塗布するか或いは所定の形状に成形した後に、必要に応じて所望のパターンに光を照射すると、露光部においては光によってアミノ化合物を発生する化合物(光塩基発生剤)から塩基が発生する。その後適当な温度に加熱することで、塩基増殖剤が加水分解され塩基が増殖される。
後に又は同時に、硬化反応に十分な熱を加えることにより、照射部と未照射部とでそれぞれ硬化した部位と未硬化の部位を形成する事ができ、光照射した所望のパターンを形成することができる。
【0024】
本発明によれば、従来、露光部と未露光部の間で溶解性のコントラストを取りにくかったポリアミック酸についても、光塩基発生剤と本発明の塩基増殖剤との組み合わせにより感光性樹脂組成物とすることにより、溶解阻害剤、溶解抑制剤の適用なしで良好なパターン形状を得ることができる。
すなわち、ポリアミック酸はイミド化の温度を高くする必要があるが、従来の塩基増殖剤は耐熱性が低く、イミド化の温度で未露光部においても塩基増殖剤が分解して塩基を発生してしまう問題があり、露光部と未露光部の間で溶解性のコントラストを良好に取ることができなかった。それに対し、本発明の塩基増殖剤は、耐熱性が高いのでポリアミック酸とも好適に組み合わせることができる。
また上述のように、本発明の塩基増殖剤は、その塩基増殖反応機構が加水分解によるものであるため、水、又は、水を供給できる官能基(アミック酸、ジカルボン酸等)と共に用いられると、特に塩基を増殖する反応の進行が早くなる。
【0025】
前記本発明に係る樹脂組成物を、パターン形成材料として、或いは、塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料の形成材料として用いる場合には、材料コストが安く、用いる感光性樹脂組成物が高感度である為、より安価に製造できる効果がある。
【0026】
また、本発明に係る物品は、前記本発明に係る樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されている、印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料いずれかの物品である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の塩基増殖剤は、ウレタン結合の酸素原子に直接芳香環が結合しており、耐熱性に優れる。その為、150℃以上の耐熱性が要求される、ポリアミック酸のような感光性ポリイミド前駆体や感光性ポリベンゾオキサゾール前駆体等のような耐熱性の要求される用途に適用が可能となる。
本発明の塩基増殖剤は、既存の化合物を用いて簡便に合成することが出来る為、安価に入手が可能である。本発明に係る塩基増殖剤は、多くの種類の原料が入手可能なため、構造選択の幅が広い。
また、本発明の塩基増殖剤はアミノ化合物の触媒作用により加水分解されるため、水が含まれる系で用いると分解反応が促進される。
【0028】
また、本発明の塩基増殖剤を必須成分とする樹脂組成物は、アミノ基を潜在化させているので、硬化成分を含有していても保存安定性が良好である。さらに、加熱により生成したアミノ化合物によって、本発明の樹脂組成物は硬化することが出来る。
【0029】
本発明によれば、従来、露光部と未露光部の間で溶解性のコントラストを取りにくかったポリアミック酸に対しても、本発明の加水分解反応によりアミノ化合物を発生する塩基増殖剤との組み合わせにより、感度が高く、良好なパターン形状を得ることができる感光性樹脂組成物とすることができる。
【0030】
本発明に係る樹脂組成物は、パターン形成材料(レジスト)、コーティング材、印刷インキ、接着剤、充填剤、電子材料、成形材料、3次元造形等、光の照射によって硬化したり又は溶解性が変化する材料が用いられている公知の全ての分野・製品に利用できるが、特に、耐熱性が必要で高度の信頼性を要求される、塗料、印刷インキ、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料を形成するのに適している。
【0031】
本発明に係る印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料いずれかの物品は、高耐熱性の樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されているため、製品や膜としても高耐熱性、高安定性であり、そのため生産の歩留まりも高いというメリットがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下において本発明を詳しく説明する。なお本発明において照射光は、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。樹脂組成物の硬化には、主に、波長が2μm以下の電磁波、電子線、電離放射線等が使用される。
【0033】
先ず、本発明に係る塩基増殖剤について説明する。
本発明により提供される塩基増殖剤は、下記式(1)で表される構造を少なくとも1つ有し、アミノ化合物と共存下で150℃以上の加熱により分解し、アミノ化合物を生成することを特徴とする塩基増殖剤である。
【0034】
【化2】

(式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シリル基、シラノール基、又は1価の有機基であり、それらは互いに同一であっても異なっていても良く、それらが互いに結合を介して環状構造を形成していても良い。Rは置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、或いは置換又は無置換の芳香族炭化水素基である。)
【0035】
本発明の塩基増殖剤は、加熱によって分解しアミノ化合物を発生する。また、アミノ化合物存在下ではその触媒作用により、より低い温度の加熱により、加水分解しアミノ化合物を発生させる。その為、水存在下では加水分解反応速度が大きくなる。
【0036】
【化3】

【0037】
なお、上記加水分解が起こっていることは、NMRスペクトルを測定し、フェノール性水酸基の水素が観測されることにより確認できる。
【0038】
さらに、本発明に係る塩基増殖剤が、下記式(1)で表される構造を2つ以上有する場合には、当該塩基増殖剤は、2つ以上のアミノ基を有する化合物を発生させることができ、当該2つ以上のアミノ基を有する化合物は、例えばエポキシ化合物やオキセタン化合物に対して、架橋性部位としても機能する。ここで、架橋とは、架橋結合を生成することをいい、架橋結合とは、鎖状に結合した原子からなる分子のうちの任意の2原子間に橋をかけるようにして形成された結合をいい、この場合の結合は、同一分子内でも他分子間でも良い(化学辞典 東京化学同人 p.1082)。
【0039】
式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シリル基、シラノール基、又は1価の有機基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。アミノ基としては、1級アミノ基(−NH)の他、2級アミノ基、3級アミノ基であっても良い。2級アミノ基は、モノ置換アミノ基であり、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、アニリノ基、アニシジノ基、フェネチジノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、ピリジルアミノ基、チアゾリルアミノ基、ベンジルアミノ基、ベンジリデンアミノ基などが挙げられる。また、3級アミノ基は、ジ置換アミノ基であり、環状であってもよく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ブチルメチルアミノ基、ジアミルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジキシリルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、ベンジルメチルアミノ基などのほか、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基、モルホリノ基、1−ピロリル基、1−ピラゾリル基、1−イミダゾリル基、1−トリアゾリル基などが挙げられる。
【0040】
また、1価の有機基としては、置換又は無置換の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基、置換又は無置換の芳香族炭化水素基等の炭化水素骨格を有する基が挙げられる。脂肪族炭化水素基は、直鎖でも分岐でも環状でも良い。1価の有機基としては、炭素数1〜20程度が好ましい。これら1価の有機基は、酸素や窒素などヘテロ原子等の、炭化水素基以外の結合や置換基を含んでよい。
炭化水素骨格を有する基に含まれるヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合など、また置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、不飽和アルキルエーテル基、アリールエーテル基、不飽和アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基等が挙げられるが特に限定されない。
【0041】
1価の有機基の好ましいものとしては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13の環状アルキル基、炭素数4〜13の環状アルケニル基、炭素数7〜16のフェノキシアルキル基、炭素数7〜20のアリールアルキル基、炭素数2〜11のシアノアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のオキシアシル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基および/または電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基および/または電子吸引性基が置換したベンジル基等が挙げられる。
また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐でも環状でも良い。
【0042】
炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。炭素数4〜13の環状アルキル基としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基が挙げられる。炭素数4〜13のシクロアルケニル基としては、例えば、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプチニル基、シクロオクテニル基が挙げられる。炭素数7〜16のフェノキシアルキル基としては、例えば、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、フェノキシ‐n‐プロピル基、フェノキシ‐iso‐プロピル基、フェノキシ‐n‐ブチル基、フェノキシ‐sec-ブチル基、フェノキシ‐tert‐ブチル基、フェノキシペンチル基、フェノキシ‐iso‐ペンチル基、フェノキシ‐neo‐ペンチル基、フェノキシヘキシル基が挙げられる。炭素数7〜20のアリールアルキル基としては、例えば、フェニルメチル基、フェニルエチル基、フェニル‐n‐プロピル基、フェニル‐iso‐プロピル基、フェニル‐n‐ブチル基、フェニル‐sec‐ブチル基、フェニル‐tert‐ブチル基、フェニルペンチル基、フェニル‐iso‐ペンチル基、フェニル‐neo‐ペンチル基、フェニルヘキシル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチル‐n‐プロピル基、ナフチル‐iso‐プロピル基、ナフチル‐n‐ブチル基、ナフチル‐sec‐ブチル基、ナフチル‐tert‐ブチル基、ナフチルペンチル基、ナフチル‐iso‐ペンチル基、ナフチル‐neo‐ペンチル基、ナフチルヘキシル基が挙げられる。炭素数2〜11のシアノアルキル基としては、例えば、シアノメチル基、シアノエチル基、シアノ‐n‐プロピル基、シアノ‐iso‐プロピル基、シアノ‐n‐ブチル基、シアノ‐sec‐ブチル基、シアノ‐tert‐ブチル基、シアノペンチル基、シアノ‐iso‐ペンチル基、シアノ‐neo‐ペンチル基、シアノヘキシル基が挙げられる。炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ‐n‐プロピル基、ヒドロキシ‐iso‐プロピル基、ヒドロキシ‐n‐ブチル基、ヒドロキシ‐sec‐ブチル基、ヒドロキシ‐tert‐ブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシ‐iso‐ペンチル基、ヒドロキシ‐neo‐ペンチル基、ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
【0043】
炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、iso−ペンチルオキシ基、neo−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。炭素数2〜11のアミド基としては、アセトアミド基等が挙げられる。炭素数1〜10のアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、iso−ペンチルチオ基、neo−ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基が挙げられる。炭素数1〜10のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、イソブチリル基、バレリル基、シクロヘキシルカルボニル基等が挙げられる。 炭素数2〜11のオキシアシル基としては、アセトキシ基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられる。また、アリール基に置換されていても良い電子供与性基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、メトキシ基等が挙げられ、電子吸引性基としては、例えば、ニトロ基、カルボニル基、ニトリル基等が挙げられる。
【0044】
また、式(1)において、R〜Rは、互いに同一であっても異なっていても良く、それらが互いに結合を介して環状構造を形成していても良い。置換基が互いに結合を介して形成する環状構造とは、シクロヘキシル基等の脂肪族性の環構造だけでなく、例えば、R、Rに芳香環が結合してナフタレン構造をとるものなども含まれる。また、環構造は芳香族性の縮合環であっても、脂肪族性の環構造であっても良く、さらに環構成原子として炭素原子以外の異種原子を含んでいても良い。
【0045】
また、式(1)において、R〜Rは、式(1)における−O(C=O)NH−Rであっても良い。また、R〜Rは、−O(C=O)NH−Rで置換された芳香族炭化水素を含む置換基であっても良い。
【0046】
本発明の塩基増殖剤は、上述のようなメカニズムによるので、式(1)に示されるR〜Rは、基本的にどのような構造であっても本発明が目的とする機能は発現する。加水分解のメカニズムから、カルバメート結合中のカルボニル基の炭素の電子密度が高いほど、分解されにくくなるので、特に、高い分解温度を必要とされる用途に対しては、式(1)に示されるR〜Rは、電子供与性基である事が好ましい。この場合の電子供与性基とは、水素原子に比べ結合電子側に電子を与えやすい置換基の事をいい(化学辞典 第一版 東京化学同人 p.929)、具体的には、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、オキシアシル基、アミド基、アルキル基、アリール基などが例示される。ここでのアルキル基には、直鎖又は分岐鎖アルキル基、環状アルキル基、フェノキシアルキル基、アリールアルキル基が含まれる。またアリール基には、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、メトキシ基等の電子供与性基が置換していても良いアリール基が含まれる。
【0047】
も、同様に電子供与性であると、カルバメート結合中のカルボニル基の炭素の電子密度を高くする作用があるため、耐熱性が向上する点から、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、或いは置換又は無置換の芳香族炭化水素基を用いる。また、分解後のアミンの塩基性は高ければ高いほど、樹脂組成物中での硬化触媒としての作用が大きくなるので、その観点から、Rとしては、置換又は無置換の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0048】
前記式(1)においてRである脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、又は環状、或いはそれらの組み合わせからなり、炭素数1〜20であることが好ましい。Rの脂肪族炭化水素基としては、炭素骨格の途中に、エステル結合、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、チオカルバメート結合、カルボジイミド結合、又は、カーボネート結合を含んでいても良い。
の置換又は無置換の脂肪族炭化水素基としては、具体的には例えば、アダマンチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクチル、シクロヘキシル、イソボルニル、ノルボルニル、へプチル、ペンチル、ベンジル、メチルベンジル、メトキシベンジル、クロロエチル、クロロプロピル、クロロベンジル、フルオロベンジル基等が挙げられる。
【0049】
本発明の塩基増殖剤を、樹脂組成物中に混合して用いる場合には、樹脂組成物の硬化性や、硬化後の物性、また、親和性・溶解性を持たせたい対象の溶媒、プロセスで加えられる温度などにより、その構造、物性を適宜調整することが好ましい。
【0050】
本発明の塩基増殖剤の好適な一例としては、前記式(1)において、Rが電子供与性基であり、R,R,R,Rが水素であり、Rが、環状の脂肪族炭化水素基である化合物があげられる。このような場合には、十分な透明性と良好な耐熱性、溶解性を示し、広範な樹脂組成物に対して適用可能な汎用性の高い塩基増殖剤を得ることができる。上記のような構造の塩基増殖剤を用いると、硬化性が向上し、硬化膜の感度、硬度、強度、密着性等が改善されると共に、パターンのエッジ形状が良好になり、基材の現像による露出面の残渣が低減したり、現像時間が短縮されるような感光性樹脂組成物を得ることが可能になる。
【0051】
本発明における塩基増殖剤は、公知の種々の手法を用いて合成することができる。例えば、Rがメトキシ基であり、R,R,R,Rが水素であり、Rが、シクロヘキシル基である化合物の場合は、4−メトキシフェノールと、シクロヘキシルイソシアネートを、ジブチル錫ジラウレートを触媒として乾燥させたテトラヒドロフラン中で、窒素気流下60℃で撹拌することで定量的に得ることが出来る。
他の手法として、4−メトキシフェニルクロロホルメートと、シクロヘキシルアミンとの縮合反応により合成する方法、等が挙げられる。
原料のコスト、入手の容易さ、市販されている種類などの観点から、水酸基を有する化合物とイソシアネートとの反応により合成することが、より低コストで製造できるので好ましい。
【0052】
本発明の塩基増殖剤を合成する手法をこれより具体的に例示するが、本発明は下記方法により限定されるものではない。
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、p−メトキシフェノール 1.24g[10mmol]、および乾燥させたテトラヒドロフラン(THF) 15mlを投入し、撹拌した。そこへシクロヘキシルイソシアネート 1.30ml[1.25g 10mmol]と ジブチル錫ジラウレート 2滴を添加し、乾燥させた窒素気流下60℃に加熱しつつ、17時間撹拌をした。
この時、用いる反応溶媒は、テトラヒドロフラン(以下THF)に限定されず、最終生成物が溶解する溶媒であればよく、各種の有機極性溶媒が好適に用いられる。反応の収率を高める為には、反応に用いる器具、試薬はなるべく水分が反応系に混入しないような注意を払って行うと良い。
【0053】
先に述べた様に、ここで用いるイソシアン酸エステルはシクロヘキシルイソシアネート(イソシアン酸シクロヘキシル)だけでなく、目的に応じて適宜選択して用いる事が出来る。具体的には、イソシアン酸1−アダマンチル、イソシアン酸オクチル、イソシアン酸2−クロロエチル、イソシアン酸3−クロロプロピル、イソシアン酸2−クロロベンジル、イソシアン酸n−ドデシル、イソシアン酸トリクロロメチル、イソシアン酸4−フルオロベンジル、イソシアン酸ヘキサデシル、イソシアン酸n−ヘキシル、イソシアン酸ヘキシル、イソシアン酸へプチル、イソシアン酸ベンジル、イソシアン酸ペンチル、イソシアン酸2−メチルベンジル、イソシアン酸3−メチルベンジル、イソシアン酸4−メチルベンジル、イソシアン酸4−メトキシベンジル、イソシアン酸フェニルなどが挙げられる。
【0054】
また、ここで用いる水酸基含有化合物も4−メトキシフェノールに限定されず、目的に応じて種々のフェノール性水酸基含有化合物を用いることができる。例えば、フェノール、ハイドロキノン、フロログリシノール、4−メトキシフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、3,5−ジメトキシフェノール、4―エトキシフェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,6−ジメトキシクレゾール、4−アセトキシフェノール、などが例示されるが、本発明の規定の範囲に含まれるものであれば、これらに限定されるものではない。
【0055】
このように、数時間攪拌された反応液の溶媒を留去、または、水等に投入することで除去し、目的物を取り出す。これを、再結晶等の処理を行なうことで、本発明の塩基増殖剤を得ることができる。精製の方法は、再結晶に限定されず、昇華精製やカラムクロマトグライフィー等、公知のあらゆる方法を用いることが可能であるが、コストの観点から再結晶が好ましい。
【0056】
本発明に係る塩基増殖剤は、ウレタン結合に芳香環が直接結合している為、共役構造がのび、ウレタン結合が安定であるため、耐熱性に優れる。加えて本発明の塩基増殖剤が、上記式(1)で表される構造の−O(C=O)NH−Rを2つ以上有する場合には、1分子から複数の塩基を発生させることが出来る為、発生する塩基1つ辺りの分子量が小さくなり、樹脂組成物に添加する際の添加量を削減することができる。
【0057】
本発明の塩基増殖剤の分子量は、100〜3000であることが、取り扱いの容易さ、硬化性、溶解性・相溶性の観点から好ましい。100より小さい場合,芳香環とウレタン結合を分子内に含有することが出来ず、耐熱性を高めるという本発明の目的が達せられない。3000より大きい場合は、溶解性が低下したり、塩基の発生する部位が局在化しやすく、パターン形成材料に用いる場合に微細なパターンをマスクパターンどおりに再現しにくくなる。当該分子量は、本発明の塩基増殖剤が繰り返し単位を有する場合においては、重量平均分子量であって、ゲル浸透クロマトグラフィ−(GPC)によるポリスチレン換算の値をいう。
【0058】
本発明の塩基増殖剤を、感光性樹脂組成物の一成分として用いる場合には、感光性樹脂組成物の感度を高める為、一般的に感光性樹脂の露光に用いられる高圧水銀ランプの発光波長で、比較的強度の高い365nm(i線)405nm(h線)、436nm(g線)の3種の波長に吸収を出来るだけ持たないことが好ましい。具体的には、本発明の塩基増殖剤は400nm以上の波長域に吸収を持たないことが好ましく、360nm以上の波長域に吸収を持たないことがさらに好ましい。400nm以上に吸収を有すると、感光性樹脂組成物に添加した際に、光源からの光を吸収してしまい、感度の低下を招く。一般に露光に用いられる高圧水銀灯の主な発光波長が436nm(g線)、405nm(h線)、365nm(i線)であり、そのうち、最も発光強度が大きいのが365nmであることより、360nm以上の領域に吸収を持たないことがさらに好ましい。
【0059】
耐熱性の点から、本発明に係る塩基増殖剤の5%重量減少温度は、150℃以上であることが好ましく、190℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることがより更に好ましい。
ここで、5%重量減少温度とは、後述の本発明の実施例と同様の手法で、熱重量分析装置を用いて重量減少を測定した時に、サンプルの重量が初期重量から5%減少した時点(換言すればサンプル重量が初期の95%となった時点)の温度である。
【0060】
上記塩基増殖剤は、塗布適性、硬化後の透明性、露光時の感度等を向上させる点から、樹脂組成物に配合する時の溶解性が高いことが好ましい。
塗布時の塗工適性の点からは、塩基増殖剤は特に溶剤に対する溶解性が高いことが好ましい。具体的には、樹脂組成物に使用する溶剤、特に後述する汎用溶剤のいずれかに対する塩基増殖剤の溶解性が0.1重量%以上であることが好ましい。
【0061】
次に、本発明に係る樹脂組成物について説明する。
本発明に係る樹脂組成物は、前記本発明に係る塩基増殖剤、及び塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物を必須成分として含有するものであり、更に必要に応じて、光、又は熱の作用によりアミノ化合物を生成する化合物(光又は熱塩基発生剤)、高分子量のバインダー成分など、他の成分を含有しても良い。
【0062】
本発明に係る樹脂組成物は、所定のパターンに塗布するか或いは所定の形状に成形した後に熱などの刺激を与えることにより、前記本発明に係る塩基増殖剤の分解反応が進行し、塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物の硬化及び/又は溶解性の変化を引き起こす。本発明に係る樹脂組成物は、前記本発明に係る塩基増殖剤を必須成分として含有しているので、硬化反応前の耐熱性に優れ、しかも低コストであるというメリットがある。
【0063】
特に、前記本発明に係る塩基増殖剤が、光塩基発生剤と一緒に樹脂組成物中に含有される場合には、本発明に係る樹脂組成物は感光性樹脂組成物として用いることができる。本発明に係る感光性樹脂組成物は、塗布するか或いは所定の形状に成形した後に光照射を行うと、光照射部で光塩基発生剤により塩基が発生する。その後、適度な温度で加熱をすることにより、塩基増殖剤が光塩基発生剤より発生した塩基の触媒作用で、分解され、塩基を生成させる。その後、さらに加熱を行うことにより、塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物の種類によって重合反応や、脱水閉環反応等、さまざまな反応が進行し、硬化及び/又は溶解性の変化を引き起こす。従って、適宜マスク等を用いてパターン状に光照射した場合には、光照射した部分のみが塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進されて適度な加熱により硬化されるため、適当に選ばれた溶媒や水溶液で未露光部を溶出することにより、所望のパターンを形成することができる。更に、用いられる本発明に係る塩基増殖剤がポリアミック酸のような加熱により脱水縮合反応を起こす化合物と共に用いられる場合には、本発明に係る感光性樹脂組成物は、パターン状に光照射した後に、加熱を行った後、未露光部のみをアルカリ溶液により現像することにより、所望のパターンを形成することができる。
【0064】
本発明に係る樹脂組成物が充分な効果を発揮するためには、前記本発明に係る塩基増殖剤は、樹脂組成物の固形分全体の0.1重量%以上であることが、樹脂組成物の硬化速度が遅くなることを防ぐ点から好ましい。前記本発明に係る塩基増殖剤は、樹脂組成物の固形分全体の1重量%以上であることが、高感度化の点から、更に好ましい。なお、樹脂組成物の固形分とは溶剤以外の全成分であり、液状のモノマー成分も固形分に含まれる。
【0065】
一方、本発明の樹脂組成物に用いられる、塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物は、塩基の触媒作用によって硬化又は縮合反応を促進する置換基を有する化合物である。塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物は、本発明の塩基増殖剤と共に用いられることで、反応時間の短縮や反応温度の低減といった目的を達成できるものである。
前記本発明に係る塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物としては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基を1つ又は2つ以上有する化合物を用いることができる。
【0066】
上記のエポキシ基を有する化合物のうち、単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
【0067】
また、エポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン等があげられる。
多官能化合物を用いることにより、より架橋密度の高い、硬く耐熱性の高い化合物を得ることが出来る。
【0068】
上記のオキセタニル基を有する化合物のうち、単官能オキセタンの例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
【0069】
オキセタニル基を2つ以上有する多官能オキセタンの例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
【0070】
また、塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物の他の例としては、ポリイミド 前駆体であるポリアミック酸、ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミドなどが挙げられる。
本発明に係る樹脂組成物においては、上記塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物として、ポリアミック酸を組み合わせることが好ましい。ポリアミック酸はアルカリ可溶性を有するポリイミド前駆体であり、ポリアミック酸を用いると耐熱性及び機械特性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができる。
ポリアミック酸はイミド化の温度を高くする必要があり、従来の塩基増殖剤はポリアミック酸と共に使用するためには耐熱性の点で問題があったが、本発明の塩基増殖剤は耐熱性が高いので好適に組み合わせることができる。
また上述のように、本発明の塩基増殖剤は、その塩基増殖反応機構が加水分解によるものであるため、水、又は、水を供給できる官能基(アミック酸、ジカルボン酸等)と共に用いられると、特に塩基を増殖する反応の進行が早くなる。
従って、本発明によれば、従来、露光部と未露光部の間で溶解性のコントラストを取りにくかったポリアミック酸についても、本発明の加水分解反応による塩基増殖剤との組み合わせにより、溶解阻害剤、溶解抑制剤の適用なしで良好なパターン形状を得ることができる。
【0071】
ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体のように、塩基の触媒作用によって熱硬化温度が低下する高分子前駆体を用いる場合には、先ず、そのような高分子前駆体と光塩基発生剤と前記本発明に係る塩基増殖剤を組み合わせた感光性樹脂組成物の塗膜又は成形体上のパターンを残したい部分に電磁波を照射する。すると、照射部には、塩基性物質が発生及び増殖し、その部分の熱硬化温度が選択的に低下する。次に、照射部は熱硬化するが、非照射部は熱硬化しない処理温度で加熱し、照射部のみ硬化させる。次に、所定の現像液(有機溶媒や塩基性水溶液等)で非照射部を溶解して熱硬化物からなるパターンを形成する。このパターンを、更に必要に応じ加熱して熱硬化を完結させる。以上の工程によって、所望の2次元樹脂パターン(一般的な平面パターン)又は3次元樹脂パターン(立体的に成形された形状)が得られる。
このようにパターンを形成する感光性樹脂組成物に用いられる塩基増殖剤としては、上記高分子前駆体の照射部のみ硬化する加熱温度において、自身が分解して塩基を発生させないという耐熱性が必要である。本発明に係る塩基増殖剤は、耐熱性が高く、熱分解温度が高いので、例えば160℃など上記高分子前駆体の照射部のみ硬化する加熱温度においても、未露光部の塩基増殖剤は安定であり塩基を発生させることなく、好適にパターンを形成することが可能である。感光性樹脂組成物に用いられる本発明に係る塩基増殖剤は、組み合わせて用いられる高分子前駆体の熱硬化温度との兼ね合いで、その5%重量減少温度を参考にして、適宜選択して用いる。
【0072】
ポリアミック酸を製造する方法としては、従来公知の手法を適用することができる。例えば、(1)酸二無水物とジアミンから前駆体であるポリアミック酸を合成する手法。(2)酸二無水物に1価のアルコールやアミノ化合物、エポキシ化合物等を反応させ合成した、エステル酸やアミド酸モノマーのカルボン酸に、ジアミノ化合物やその誘導体を反応させてポリイミド前駆体を合成する手法などが挙げられるがこれに限定されない。
【0073】
上記ポリアミック酸に適用可能な酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4−ビス〔(3,4−ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、
【0074】
2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’−ビス〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’−ビス〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、2,2−ビス{4−〔4−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルプロパン二無水物、2,2−ビス{4−〔3−(1,2−ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}−1,1,1,3,3,3−プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは単独あるいは2種以上混合して用いられる。そして、特に好ましく用いられるテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
【0075】
併用する酸二無水物としてフッ素が導入された酸二無水物や、脂環骨格を有する酸二無
水物を用いると、ポリイミド前駆体の透明性が向上する。また、ピロメリット酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの剛直な酸二無水物を用いると、最終的に得られるポリイミドの線熱膨張係数が小さくなる。
【0076】
一方、アミン成分も、1種類のジアミン単独で、または2種類以上のジアミンを併用して用いることができる。用いられるジアミン成分は限定されるわけではないが、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(3−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジ(3−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ジ(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1−(3−アミノフェニル)−1−(4−アミノフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−α,α−ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、
【0077】
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’−ビス(3−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ビス(4−アミノフェノキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(4−アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω−ビス(3−アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、
【0078】
1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロへキシル)メタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、また、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てをフルオロ基、メチル基、メトキシ基、トリフルオロメチル基、又はトリフルオロメトキシ基から選ばれた置換基で置換したジアミンも使用することができる。
さらに目的に応じ、架橋点となるエチニル基、ベンゾシクロブテン−4’−イル基、ビニル基、アリル基、シアノ基、イソシアネート基、及びイソプロペニル基のいずれか1種又は2種以上を、上記ジアミンの芳香環上水素原子の一部若しくは全てに置換基として導入しても使用することができる。
【0079】
ジアミンは、目的の物性によって選択することができ、p−フェニレンジアミンなどの剛直なジアミンを用いれば、最終的に得られるポリイミドは低膨張率となる。剛直なジアミンとしては、同一の芳香環に2つアミノ基が結合しているジアミンとして、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、2、6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、1,4−ジアミノアントラセンなどが挙げられる。
【0080】
また、前記塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物の分子量は1000以上であることが、塗布後の作業性の点から好ましい。より好ましくは、当該化合物の分子量は2000以上である。当該分子量は、本発明に用いられる塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物が繰り返し単位を有する場合においては、重量平均分子量であって、ゲル浸透クロマトグラフィ−(GPC)によるポリスチレン換算の値をいう。
【0081】
前記塩基増殖剤や前記塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物は単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる。これら前記塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物の好ましい配合割合は、樹脂組成物の固形分全体に対して1重量%以上99重量%以下で、より好ましくは、5重量%以上95重量%以下である。
【0082】
本発明の樹脂組成物を光の照射の有無により部分的に硬化させる際には、(感光性樹脂組成物として使用する際には)露光の有無による塩基の存在の分布を形成するためには、光塩基発生剤を添加することが好ましい。
光塩基発生剤としては、公知の光塩基発生剤を用いることが出来る。光塩基発生剤としては、例えば、以下のオキシムエステル系化合物、オキシムエステル系高分子が挙げられる。
【0083】
【化4】

【0084】
また、光塩基発生剤としては、例えば、以下の4級アンモニウム塩系化合物が挙げられる。
【0085】
【化5】

【0086】
また、光塩基発生剤としては、例えば、以下のアシル化合物が挙げられる。
【0087】
【化6】

【0088】
また、光塩基発生剤としては、例えば、以下のカルバメート化合物等が挙げられる。
【0089】
【化7】

【0090】
【化8】

【0091】
これらの光塩基発生剤は単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる。これら光塩基発生剤の好ましい配合割合は、樹脂組成物の固形分全体に対して0.1重量%以上35重量%以下で、より好ましくは、1重量%以上10重量%以下である。
【0092】
なお、光塩基発生剤を含有する本発明の感光性樹脂組成物は、露光後に、100℃〜250℃、好ましくは150℃〜220℃の間の温度で加熱を行うことが望ましい。この加熱の工程で、光塩基発生剤によって生成された塩基が塩基増殖剤を分解する反応と、塩基を触媒とする硬化反応や縮合反応がほぼ同時進行で起こり、樹脂組成物が不溶化したり、溶解性が変化したりする。
【0093】
また、前記本発明に係る塩基増殖剤以外の化合物は、照射光に対する樹脂組成物の感度を阻害しないために、照射波長と光塩基発生剤の吸収波長が重なる波長領域に吸収を持たないことが好ましい。
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物には、当該組成物の未硬化状態での成膜性及び硬化後の塗膜物性を調節するために、バインダー樹脂として、高分子化合物を配合しても良い。
上記バインダー樹脂としては、樹脂組成物の用途に合わせて公知のあらゆる高分子化合物を用いることができる。また、高分子化合物としては、非反応性高分子、及び、反応性高分子のいずれを用いても良い。バインダー成分として用いられる高分子化合物は、重量平均分子量が3000以上であることが好ましく、また、分子量が大きすぎると、溶解性や加工特性の悪化を招くことから、重量平均分子量が通常、10,000,000以下であることが好ましい。ここで本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ−(GPC)によるポリスチレン換算の値をいう。
【0095】
前記非反応性高分子、及び、反応性高分子、としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネート;酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル又はビニル化合物の重合体及び共重合体;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ホルマール樹脂やブチラール樹脂等のアセタール樹脂;シリコーン樹脂;フェノキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂等に代表されるエポキシ樹脂;ポリウレタン等のウレタン樹脂;フェノール樹脂;ケトン樹脂;キシレン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリベンゾオキサゾール樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ノボラック樹脂;ポリカルボジイミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリノルボルネン等の脂環式高分子;シロキサン系高分子等の公知のあらゆる高分子化合物が挙げられる。
以上のような、高分子化合物はそれぞれ、単独で用いても、2種以上を組合わせて用いても良い。
【0096】
また、本発明に係る樹脂組成物は、非反応性の高分子化合物を含む場合、用途に応じて、非反応性の高分子化合物が樹脂組成物全体の固形分の1重量%以上97重量%以下となるように含むことが好ましい。非反応性の高分子化合物が97重量%よりも多い場合は、塩基の触媒作用による硬化反応、縮合反応の反応性が低下しやすい。
【0097】
本発明に係る樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、エチレン性二重結合などの重合性不飽和結合を有する化合物、その他の硬化反応性化合物、染料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、その機能又は形態としては顔料、フィラー、繊維等がある。
これら任意成分の配合割合は、樹脂組成物の固形分全体に対し、0.1重量%〜95重量%の範囲が好ましい。0.1重量%未満だと、添加物を添加した効果が発揮されにくく、95重量%を越えると、本発明に係る樹脂組成物の特性が最終生成物に反映されにくい。
【0098】
照射光を吸収してしまうような成分を樹脂組成物中に多量に配合する場合には、光塩基発生剤に光が十分到達しなくなり、感度が低下する。そのため、樹脂組成物の感度を重視する点から、照射光源の発光波長と樹脂組成物に混合されている光塩基発生剤の吸収波長が重なる波長領域における、前記本発明に係る樹脂組成物の透過率が20%以上であるように調節して、樹脂組成物に用いられる成分を適宜選択することが好ましい。
【0099】
また、本発明に係る樹脂組成物は、溶剤を用いて適切な濃度に希釈しても良い。溶剤としては各種の汎用溶剤、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、メトキシプロピルアセテート、エトキシプロピルアセテート、修酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1−クロロプロパン、1−クロロブタン、1−クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドンなどのピロリドン類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、その他の有機極性溶媒類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶媒類等も挙げられる。また、反応性希釈剤として、常温で液体のエチレン性不飽和化合物等、反応性官能基を構造中に有するような化合物を溶剤として用いても良い。これらの溶媒は単独もしくは組み合わせて用いられる。また、これら溶剤は、通常例えば孔径0.05μm〜0.2μm程度のフィルター等、既知の種々の方法で不純物を濾過して用いても良い。
【0100】
また、溶剤を用いて透明に溶解した樹脂組成物であっても、その中に含有される固形分同士の相溶性が低い場合には、塗工時に溶剤が揮発すると乾燥中の塗膜内で析出物が生じ、充分な透明性が得られない。そのため、光学部材のように透明性が高い塗膜又は成形体が要求される場合には、樹脂組成物中の他の固形成分との相溶性が高い塩基増殖剤を適宜選択して用いることが好ましい。高い透明性が求められる場合には、樹脂組成物を硬化させて形成した塗膜の膜厚が10μmの時に、全光線透過率(JIS K7105)が90%以上であることが好ましく、95%以上であることが更に好ましい。
【0101】
本発明に係る樹脂組成物は、必須成分である前記本発明に係る光塩基増殖剤、及び塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物と、必要に応じて光塩基発生剤や高分子量のバインダー成分等、その他任意成分を場合や用途に応じて混合することにより調製できる。
【0102】
このようにして得られる本発明に係る樹脂組成物は、パターン形成材料(レジスト)、コーティング材、印刷インキ、接着剤、充填剤、電子材料、成形材料、3次元造形等、光照射や加熱によって硬化したり又は溶解性が変化する材料が用いられている公知の全ての分野・製品に利用できる。特に、耐熱性が必要で高度の信頼性を要求される、塗料、印刷インキ、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料を形成するのに適している。
【0103】
例えば、カラーフィルターの場合には、画素部、当該画素部の境界に設けられる遮光部(ブラックマトリックス)、保護膜、セルギャップを維持するためのスペーサーを上記感光性樹脂組成物の硬化物により形成することができる。
電子部品の場合には、例えば、半導体装置のアンダーフィル剤、封止剤、等が例示できる。
層間絶縁膜としては、耐熱性、絶縁信頼性が要求されるビルドアップ基板用の層間絶縁膜や燃料電池における層間絶縁膜、自動車部品や家電製品の絶縁コーティング等を上記樹脂組成物の硬化物により形成することができる。
【0104】
また、配線保護膜としては、プリント配線板の表面の配線保護層であるソルダーレジストや、電線の表面被覆、等が例示できる。
光学部材の場合には、各種光学レンズのオーバーコートや、反射防止膜、光導波路、分波装置等の光回路部品、レリーフ型、及び体積型のホログラム、等が例示できる。
建築材料の場合には、壁紙、壁材、床材その他の揮発成分の少ない表皮材料、接着・粘着材料、インキ等が例示できる。
【0105】
本発明に係る印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料は、高耐熱性、高安定性の感光性樹脂組成物の硬化物により少なくとも一部分が形成されているため、低コスト、高感度というメリットがある。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、p−メトキシフェノール 1.24g [10mmol]、および乾燥させたテトラヒドロフラン(THF) 15mlを投入し撹拌した。そこへシクロヘキシルイソシアネート 1.30ml [1.25g 10mmol]と ジブチル錫ジラウレート 2滴を添加し、乾燥させた窒素気流下60℃に加熱しつつ、17時間撹拌をした。
反応終了後、蒸留水2Lで再沈殿し、得られた白色沈殿を、酢酸エチル−ヘキサンによって再結晶し、下記構造式を有する目的物(塩基増殖剤1)2.35gを得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ(ppm):7.57(1H,d,NH),6.99(2H,d,Ar),6.89(2H,d,Ar),4.47(1H,m,−CH(cyclohexyl)),3.73(3H,s,−OCH3),1.82(2H,d,−CH2(cyclohexyl)),1.69(2H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.54(2H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.23(2H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.06(4H,m,−CH2(cyclohexyl))
【0107】
【化9】

【0108】
(実施例2)
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、ハイドロキノン 1.10g [10mmol]、および乾燥させたテトラヒドロフラン(THF) 15ml を投入し撹拌した。そこへシクロヘキシルイソシアネート 2.59ml [2.534g 20mmol]と、ジブチル錫ジラウレート 2滴を添加し、乾燥させた窒素気流下60℃で17時間撹拌をした。
反応終了後、蒸留水2Lで再沈殿し、得られた白色沈殿を、酢酸エチル−ヘキサンによって再結晶し、下記構造式を有する目的物(白色粉末、 塩基増殖剤2)3.41gを得た。
H NMR(400MHz,DMSO−d6)δ(ppm): 7.6(2H,br,NH)7.05(4H,d,Ar),3.30(2H,m,−CH(cyclohexyl)),1.82(4H,d,−CH2(cyclohexyl)),1.68(4H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.54(4H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.23(4H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.11(8H,m,−CH2(cyclohexyl))
【0109】
【化10】

【0110】
(実施例3)
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、p−メトキシフェノール 1.24g [10mmol]、および乾燥させたテトラヒドロフラン(THF) 15mlを投入し撹拌した。そこへアダマンチルイソシアネート 1.77g [10mmol]と、ジブチル錫ジラウレート 2滴を添加し、乾燥させた窒素気流下70℃に加熱し48時間撹拌をした。
反応終了後、溶媒を留去し、クロロホルムによるカラムクロマトグラフィーによって精製し、下記構造式を有する目的物(塩基増殖剤3)2.71gを得た。
H NMR(400MHz,CDCL)δ(ppm): 7.02(2H,d,Ar), 6.86(2H,d,Ar),4.85(1H,d,NH),3.79(3H,s,−OCH3),2.10(3H,d,−CH(adamantyl)),2.00(6H,m,−CH2(adamantyl)), 1.68(6H,m,−CH2(adamantyl))
【0111】
【化11】

(実施例4)
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、p−ニトロフェノール 1.39g [10mmol]、および乾燥させたテトラヒドロフラン(THF) 15mlを投入し撹拌した。そこへシクロヘキシルイソシアネート 1.30ml [1.25g 10mmol]と ジブチル錫ジラウレート 2滴を添加し、乾燥させた窒素気流下70℃に加熱しつつ、48時間撹拌をした。
反応終了後、溶媒を留去し、クロロホルムによるカラムクロマトグラフィーによって生成し、下記構造式を有する目的物(塩基増殖剤4)2.42gを得た。
H NMR(400MHz,CDCL) δ(ppm): 8.24(2H,d,Ar), 7.31(2H,d,Ar),5.01(1H,d,NH),3.57(1H,m,−CH(cyclohexyl)), 2.02(2H,d,−CH2(cyclohexyl)),1.77(2H,m,−CH2(cyclohexyl)), 1.64(2H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.38(2H,m,−CH2(cyclohexyl)), 1.23(4H,m,−CH2(cyclohexyl))
【0112】
【化12】

【0113】
(比較例1)
100mlの3つ口フラスコを窒素気流下加熱し、十分乾燥させた後、空気中の水分に対して十分注意しながら、および乾燥させた2−プロパノール(IPA) 20mlを投入し撹拌した。そこへシクロヘキシルイソシアネート 3.00g[24mmol]と ジブチル錫ジラウレート 2滴を添加し、乾燥させた窒素気流下60℃に加熱しつつ、17時間撹拌をした。
反応終了後、蒸留水2Lで再沈殿し、得られた白色沈殿を、酢酸エチル−ヘキサンによって再結晶し、下記構造式を有する目的物(比較塩基増殖剤1)4.02gを得た。
H NMR(400MHz,CDCL) δ(ppm):4.89(1H,m,−CH(cyclohexyl)),4.47(1H,br,NH),3.46(1H,m,CH(i-Pr)),1.93(2H,d,−CH2(cyclohexyl)),1.69(2H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.59(2H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.34(2H,m,−CH2(cyclohexyl)),1.22(6H,d,−CH3(i-Pr)),1.27(4H,m,−CH2(cyclohexyl))
【0114】
【化13】

【0115】
(試 験)
(1)熱分解温度測定
差動型示差熱天秤(製品名:TG8120、(株)リガク製)を用いて、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で、塩基増殖剤1〜4と比較塩基増殖剤1の5%重量減少温度を測定した。以下の表1に結果を示す。
【0116】
【表1】

【0117】
以上の結果より、本発明に係る塩基増殖剤は、ウレタン結合の酸素原子に直接芳香環が結合しており、耐熱性に優れることが明らかになった。中でも、電子供与性基であるメトキシ基が、4位に置換されたフェノールを用いた塩基増殖剤は熱分解温度がより高く、耐熱性に優れる事がわかった。
【0118】
(2)熱分解挙動
以下のサンプルを用意し、核磁気共鳴装置(NMR)(日本電子(株)製 JNM−LA−400WB)を用い、塩基増殖剤の分解挙動を測定した。
サンプルA:5mgの塩基増殖剤3を500μlのDMSO−d6に溶解させたもの。
サンプルB:5mgの塩基増殖剤3を500μlのDMSO−d6に溶解させたものを150℃で10分間オイルバスで加熱したもの。
サンプルC:5mgの塩基増殖剤3と1mgのジメチルピペリジンを500μlのDMSO−d6に溶解させたものを150℃で10分間オイルバスで加熱したもの。
サンプルD:5mgの塩基増殖剤3を500μlのDMSO−d6に溶解させたものを200℃で10分間オイルバスで加熱したもの。
【0119】
その結果、サンプルAとサンプルBは、全く同じスペクトルが得られたが、サンプルCについては、塩基増殖剤由来のピークが消失し、新たにジメチルピペリジンのピークの他に、4−メトキシフェノールと1−アダマンチルアミンのピークが現れた。サンプルD については、塩基増殖剤由来のピーク強度が減少し、新たに、4−メトキシフェノールと1−アダマンチルアミンのピークが現れた。
この結果より、塩基増殖剤3は、ジメチルピペリジン存在下で、150℃の加熱によって分解し、4−メトキシフェノールと1−アダマンチルアミンになるということが確認された。さらに、200℃の加熱により、自身で分解してアミンを発生させることが確認された。
【0120】
(3)硬化性評価
ポリグリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体(重量平均分子量 15000 共重合比 1:3) 0.85g、下記構造を有する光塩基発生剤 0.05g、実施例3の塩基増殖剤3 0.10gを、テトラヒドロフラン5mlに溶解させ感光性樹脂組成物を調整した。(感光性樹脂組成物1)
【0121】
【化14】

【0122】
感光性樹脂組成物1をガラス上にスピンコートし、80℃ 3分 ホットプレート上で乾燥させた後、手動露光装置(大日本スクリーン株式会社製、MA−1200)により、h線換算で5J紫外線照射を行い、その後、160℃のホットプレート上で5分加熱し、ガラス上に感光性樹脂組成物1の硬化膜を作成した。
その硬化膜を、テトラヒドロフランに室温で1時間浸漬させたところ、溶出せず不溶化していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造を少なくとも1つ有し、アミノ化合物と共存下で150℃以上の加熱により分解し、アミノ化合物を生成することを特徴とする塩基増殖剤。
【化1】

(式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、メルカプト基、ニトロ基、シリル基、シラノール基、又は1価の有機基であり、それらは互いに同一であっても異なっていても良く、それらが互いに結合を介して環状構造を形成していても良い。Rは置換又は無置換の脂肪族炭化水素基、或いは置換又は無置換の芳香族炭化水素基である。)
【請求項2】
前記式(1)における、R〜Rのうち少なくとも一つが、電子供与性基であることを特徴とする請求項1に記載の塩基増殖剤。
【請求項3】
前記電子供与性基が、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、オキシアシル基、アミド基、アルキル基、アリール基であることを特徴とする請求項2に記載の塩基増殖剤。
【請求項4】
5%重量減少温度が150℃以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の塩基増殖剤。
【請求項5】
400nm以上の波長域に吸収を持たないことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塩基増殖剤。
【請求項6】
イソシアン酸エステルとフェノール誘導体の反応から得られることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の塩基増殖剤。
【請求項7】
アミノ化合物と共存下で150℃以上の加熱により加水分解し、アミノ化合物を生成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の塩基増殖剤。
【請求項8】
前記請求項1乃至7に記載の塩基増殖剤と、塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項9】
前記塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物は、分子量が1000以上であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項10】
前記塩基の作用により硬化又は縮合反応を促進する化合物が、ポリアミック酸であることを特徴とする請求項8又は9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
光、又は熱の作用によりアミノ化合物を生成する化合物を、更に含有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
光の作用によりアミノ化合物を生成する化合物を含有し、感光性樹脂組成物である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
パターン形成材料として用いられることを特徴とする、請求項8乃至12のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項14】
塗料又は印刷インキ、或いは、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料の形成材料として請求項8乃至13のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項15】
前記請求項8乃至14のいずれかに記載の樹脂組成物、またはその硬化物により少なくとも一部分が形成されている、印刷物、カラーフィルター、電子部品、層間絶縁膜、配線被覆膜、光学部材、光回路、光回路部品、反射防止膜、ホログラム又は建築材料いずれかの物品。

【公開番号】特開2008−250111(P2008−250111A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92984(P2007−92984)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】