説明

増粘組成物およびこれを含有する皮膚外用剤

【課題】 カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーを使用していながらも容器の選択や配合成分に制限されず、しかも、製品安全性・安定性の悪化を引き起こさない増粘組成物を提供すること。
【解決手段】 次の成分(a)と、成分(b)および/または(c)とを含有することを特徴とする増粘組成物。
(a)カルボキシビニルポリマーおよびアルキル変性カルボキシビニルポリマーからな
る群から選ばれる水溶性高分子の1種または2種以上
(b)キサンタンガムおよびカラギーナンからなる群から選ばれるガム質の1種または
2種以上
(c)ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースからなる群か
ら選ばれるセルロース系高分子の1種または2種以上

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増粘組成物に関し、更に詳細には、紫外線の影響や塩の配合による粘度低下を起こし難い増粘組成物およびこれを含有する皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性高分子であるカルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、増粘剤、乳化剤、乳化安定剤、ゲル化剤等として広く用いられている。そして、これらの水溶液を適当な塩基物質で中和すると、粘度が上昇して高粘度水溶液となり、pHが約6〜10付近でその粘度が最も上昇することが知られている。
【0003】
しかしながら、上記性質を利用して増粘剤を調製しようとしても、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーはこれら単独もしくは組合せただけでは、製品が経時的に分離する等の製品の安全性や安定性に関する問題や、配合成分によっては増粘効果が得られないという問題があり、処方が限定されることがあった。
【0004】
また、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、紫外線の照射により系の粘度が低下し、製品の品質を維持することが困難であるという弱点もあった。この弱点を避けるために、使用する容器に紫外線吸収剤や散乱剤でコーティングする技術(例えば、特許文献1参照)を利用することが考えられるが、この手段では容器の選択が制限され、魅力的な製品設計の足枷になる場合がある。
【0005】
さらに、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、配合成分によっては系の粘度が低下するという弱点もあった。この弱点を解消するため、糖系の水溶性紫外線吸収剤が配合された化粧料が知られている(特許文献2)が、このものは粘度の低下する水溶性紫外線吸収剤以外の成分、例えば塩等を配合した場合については何ら報告していない。
【特許文献1】特開2004−307826号公報
【特許文献2】特開平10−306015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、使用容器に制限なく、しかも、製品安全性や、安定性の低下を招かずに、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーの増粘性を利用することのできる増粘組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究した結果、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーと、特定のガム質および/またはセルロース系高分子とを組み合わせた組成物は、紫外線の照射や塩の配合により系の粘度が低下せず、更にこれを製品に配合した場合であっても、安定性に優れたものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は次の成分(a)と、成分(b)および/または(c)とを含有することを特徴とする増粘組成物である。
(a)カルボキシビニルポリマーおよびアルキル変性カルボキシビニルポリマーからな
る群から選ばれる水溶性高分子の1種または2種以上
(b)キサンタンガムおよびカラギーナンからなる群から選ばれるガム質の1種または
2種以上
(c)ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースからなる群か
ら選ばれるセルロース系高分子の1種または2種以上
【0009】
また、本発明は上記増粘組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の増粘組成物は、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマーを有効成分として使用していながら、紫外線や配合成分の影響を受けにくく、しかも、製品安全性、安定性の低下を引き起こさないものである。
【0011】
従って、本発明の増粘剤を皮膚外用剤等に配合すれば、従来の増粘剤を用いた場合には利用することが出来なかった配合成分の添加や、紫外線透過性の容器の利用が可能となり、これを利用した商品の価値を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の増粘組成物は、次の成分(a)と、成分(b)および/または(c)とを含有するものであり、好ましくは上記成分(a)と成分(b)とを含有するものである。
(a)カルボキシビニルポリマーおよびアルキル変性カルボキシビニルポリマーからな
る群から選ばれる水溶性高分子の1種または2種以上
(b)キサンタンガムおよびカラギーナンからなる群から選ばれるガム質の1種または
2種以上
(c)ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースからなる群か
ら選ばれるセルロース系高分子の1種または2種以上
【0013】
本発明の増粘組成物に含有される成分(a)の水溶性高分子のうち、カルボキシビニルポリマーはカルボキシル基を有するアクリル酸、メタアクリル酸等を主体とする水溶性のビニルポリマーである。本発明においては、そのモノマー構成や分子量等に特に制約はなく使用することができ、市販されている種々のカルボキシビニルポリマーを特に制限無く使用することができる。これら市販品としては、例えば、BFグッドリッチ(B.F.Goodrich)社から販売されているカーボポール 940(Carbopol 940)、カーボポール 941(Carbopol 941)等を挙げられる。
【0014】
一方、成分(a)のうち、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは、上記カルボキシビニルポリマーのカルボキシル基の一部または全部をC10〜C30程度のアルキル基によりエステル化したものである。本発明においては、原料であるビニルポリマーの種類やその分子量、エステル化の程度やこのために用いるアルキル基等に特に制約なく使用することができ、市販されている種々のアルキル変性カルボキシビニルポリマーを使用することができる。これら市販品としては、例えば、BFグッドリッチ(B.F.Goodrich)社から販売されている、ペムレン TR−1(PEMULEN TR-1)、ペムレン TR−2(PEMUREN
TR-2)、カーボポール 1342(Carbopol 1342)等が挙げられる。
【0015】
本発明の増粘組成物における成分(a)の配合量は、最終製品中で0.05〜3質量%となる量であり、好ましくは0.1〜1質量%となる量である。なお、成分(a)の配合量が最終製品中で0.05質量%未満では適当な粘度を得ることができず、また、3質量%を超える場合には得られる粘度が大きいため塗布しにくくなる等の使用感の悪化や生産上の障害となる場合があるので好ましくない。
【0016】
一方、本発明の増粘組成物に含有される成分(b)のガム質のうち、キサンタンガムは炭化水素をキサントモナス属菌により発酵させて得られる多糖類であり、グルコース、マンノース、グルクロン酸等から構成されている。このキサンタンガムは、保水性、粘性、弾性、ゲル化特性に優れており、ミルク製品等の安定化剤の他、緩下剤や界面活性分散剤等、食品、化粧品および医薬品素材として広く用いられている。本発明においては、種々のキサンタンガムを特に制約なく使用することができる。このキサンタンガムの市販品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社から販売されているサンエースC、ケルコ社から販売されているケルトロール等を挙げられる。
【0017】
また、成分(b)のうち、カラギーナンは海藻(紅藻類)のスギノリやツノマタ等を原料として作られるガム類で、ガラクトース、アンヒドロガラクトース等から構成されている。このカラギーナンは牛乳を用いるデザート類や冷凍用デザート類、インスタントデザート類(例えば牛乳を混ぜればすぐできるゼリー等)等に幅広く用いられている。本発明においては、種々のカラギーナンを特に制約なく使用することができる。このカラギーナンの市販品としては、例えば、コペンハーゲン ペクチン社から販売されているゲニュービスコJ−J、株式会社タカラゲンから販売されているタカラゲンG−50等が挙げられる。
【0018】
本発明の増粘組成物における成分(b)の配合量は、最終製品中で0.05〜5質量%となる量であり、好ましくは0.1〜3質量%となる量である。また、成分(b)の配合量は、成分(a)と成分(b)との重量比が0.1〜10.0、特に0.2〜5.0となるような量で配合することが好ましい。なお、成分(b)の配合量が0.05質量%未満では適度な粘度を得ることができず、また、5質量%を超える場合には成分(a)との粘度の相乗効果が得られにくい、粘度が大きいため塗布しにくい等の使用感の悪化がみられる場合があるので好ましくない。
【0019】
更に、本発明の増粘組成物に含有される成分(c)のセルロース系高分子は、いずれも常法に従いリンターセルロースを高濃度、高温度の水酸化ナトリウムに浸し膨潤させ、アルカリセルロースとした後、酸化エチレンまたは酸化プロピレンと反応させる製造方法等により得ることができるものである。本発明においては、その分子量や酸化エチレン等の付加割合等に特に制約なく使用することができ、市販されているヒドロキシプロピルセルロースやヒドロキシエチルセルロースを使用することもできる。ヒドロキシプロピルセルロースの市販品としては、例えば、日本曹達社から販売されているHPC H(分子量25〜40万)、HPC M(分子量11万〜15万)、HPC SL(分子量3万〜5万)等を挙げることができ、これらの中でもHPC H、HPC Mが好ましい。また、ヒドロキシエチルセルロースの市販品としては、例えば、ダイセル化学工業社から販売されているHECダイセル等を挙げることができる。
【0020】
上記した成分(c)のうち、好ましいものとしては、効果の点から、ヒドロキシプロピルセルロースでは分子量10万以上のものが挙げられ、具体的にはHPC H、HPC Mが挙げられる。一方、ヒドロキシエチルセルロースでは1%水溶液にしたときの粘度が100mPa・s以上の中粘度または高粘度のものが挙げられ、好ましくは1000mPa以上の高粘度のものである。このようなヒドロキシエチルセルロースとしては、中粘度のHECダイセルSP600、HECダイセルSE600、高粘度のHECダイセルSP850、HECダイセルSP900、HECダイセルSE850、HECダイセルSE900が挙げられる。
【0021】
本発明の増粘組成物における成分(c)の配合量は、最終製品中で、0.05〜5質量%となる量であり、好ましくは0.1〜3質量%となる量である。
【0022】
本発明の増粘組成物は、通常の増粘剤と比べて粘度低下を起こしにくいので、前記成分に加えて、更に、塩や水溶性ビタミン類を添加することができる。添加することのできる塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム等の中性塩、クエン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムカリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム等の緩衝溶液作成に使用される酸性塩および塩基性塩が挙げられる。また、水溶性ビタミン類としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム等のアスコルビン酸およびその塩またはその誘導体、あるいはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン等のビタミンB群およびその塩またはその誘導体等が挙げられる。本発明の増粘組成物における塩や水溶性ビタミン類の配合量は、それらの総量として最終製品中で0.1〜3.0質量%、好ましくは0.2〜2.0質量%となる量である。
【0023】
本発明の増粘組成物は、上記した各成分を別々または同時に水、アルコール、または水とアルコールの混液等の水性溶媒に添加して攪拌、混合することにより製造することができる。この際、成分(a)は予め水等の溶媒に溶解した後、配合することが好ましく、また、成分(b)は予め1,3−ブチレングリコール(1,3−BG)等の多価アルコール溶媒に溶解した後、配合することが好ましい。
【0024】
斯くして得られる本発明の増粘組成物は、塩や水溶性ビタミン類の添加や紫外線の影響による粘度低下を起こし難いものである。具体的に本発明の増粘組成物は、塩や水溶性ビタミン類の添加時、もしくは32Wの紫外線を5時間照射した後のE型粘度計により測定された粘度が、紫外線照射前の50%以上、好ましくは45%以上、特に好ましくは40%以上である。本発明の増粘組成物は紫外線による粘度低下を引き起こし難いので、紫外線透過性の容器、好ましくは珪酸や酸化ソーダを主成分とする紫外線透過性のガラス容器やポリエチレンテレフタラートやクリアレン等からなる紫外線透過性の樹脂容器に保存しても、従来のものより粘度の低下を引き起こさないものである。具体的に紫外線透過性のガラス容器としては、軟質ガラス、硬質ガラス等で作製された透明ガラス容器が挙げられる。
【0025】
また、本発明の増粘組成物は、従来の増粘剤と同様に洗浄剤、入浴剤、育毛剤や整髪料等の頭髪用化粧料、あるいは化粧品、外用医薬品、医薬部外品等に配合することができるが、特に、化粧品、外用医薬品、医薬部外品等の頭髪化粧料、口唇化粧料、口腔組成物、育毛剤等の皮膚外用剤に配合することが好ましい。皮膚外用剤の形態としては、化粧水、乳液、保湿クリーム、クレンジングクリーム、マッサージクリーム、洗顔クリーム、パック、美容液等が挙げられる。また、上記皮膚外用剤を製造するには、増粘組成物の各成分を同時にまたは別々に任意の段階で配合する以外は、常法に従って製造することができる。例えば、化粧水であれば、増粘組成物および化粧水の各原料を同時に添加し、混合することにより製造される。
【0026】
上記皮膚外用剤には通常皮膚外用剤に使用される成分である、界面活性剤、油分、アルコール類、保湿剤、増粘剤(本発明の増粘組成物に配合される成分を除く)、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収・散乱剤、ビタミン類、アミノ酸類、水等を配合することができる。
【0027】
上記皮膚外用剤に配合される界面活性剤としては、親油型グリセリンモノステアレート、自己乳化型グリセリンモノステアレート、ポリグリセリンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン化ステロール、ポリオキシエチレン化ラノリン、ポリオキシエチレン化蜜ロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のノニオン界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルリン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤、塩酸アルキルアミノエチルグリシン液、レシチン等の両性界面活性剤等を例示することができる。
【0028】
油分としては、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボガド油等の植物油脂類、ミンク油、卵黄油等の動物油脂類、蜜ロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素類、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸等の天然および合成脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、ラウリルアルコール等の天然および合成高級アルコール類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、コレステロールオレート等のエステル類等を例示することができる。
【0029】
保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ソルビトール、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類、アミノ酸、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等のNMF成分、ヒアルロン酸、コラーゲン、ムコ多糖類、コンドロイチン硫酸等の水溶性高分子物質、ホエイ、海藻エキス、アロエキス等の天然由来成分等を例示することができる。
【0030】
増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、硅酸アルミニウム、マルメロ種子抽出物、トラガントガム、デンプン等の天然高分子物質、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、可溶性デンプン、カチオン化セルロース等の半合成高分子物質、ポリビニルアルコール等の合成高分子物質等を例示することができる。
【0031】
防腐剤としては、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’−トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、レゾルシン、エタノール等を例示することができる。
【0032】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸等を、キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩、ピロリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等を、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸水素カリウム等をそれぞれ例示することができる。
【0033】
紫外線吸収・散乱剤としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、酸化チタン、カオリン、タルク等を例示することができる。ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、α−リポ酸、オロット酸およびそれらの誘導体等を例示することができる。
【0034】
アミノ酸類としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、リジンおよびそれらの誘導体等を例示することができる。
【0035】
斯くして得られる本発明の増粘剤を含有する皮膚外用剤は、容器の選択や配合成分に制限されず、しかも、製品安全性・安定性に優れたものとなる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
実 施 例 1
増粘組成物の製造(1):
カルボキシビニルポリマーであるカーボポール940およびカーボポール941(共にBFグッドリッチ製)、アルキル変性カルボキシビニルポリマーであるペムレンTR−1およびペムレンTR−2(共にBFグッドリッチ製)の0.3質量%水溶液をそれぞれ調製し、この溶液の粘度をE型粘度計RE−80U(ロータコードNo.1、100rpm:東機産業株式会社製)にて測定した。次に、前記水溶液の100mlに、ガム質であるキサンタンガム(サンエースC三栄源エフ・エフ・アイ製)0.4gを1,3−ブチレングリコール3.0gに溶解した溶液を添加、混合して増粘組成物を製造し、上記と同様に粘度を測定した。その結果を表1に示した。また、ガム質添加前後の粘度から粘度上昇率(%)を算出し、その結果も併せて表1に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1より、カルボキシビニルポリマーおよびアルキル変性カルボキシビニルポリマーのいずれもガム質であるキサンタンガムを配合することで明かな粘度の上昇が認められた。
【0040】
実 施 例 2
増粘組成物の製造(2):
カーボポール940の0.3質量%水溶液100mlに、キサンタンガム0.4gを1,3−ブチレングリコール3.0gに溶解した溶液を添加、混合して増粘組成物(組成物2)を製造した。更に、前記増粘組成物に1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)2.0gを添加、混合して増粘組成物(組成物9)を製造した。また、対照としてカーボポール940の0.3質量%水溶液100mlのpHを水酸化ナトリウムで7.0に調整したもの(組成物10、11)、組成物11に更に1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を2.0g添加して調製したもの(組成物12)および精製水100mlにキサンタンガム0.4gを1,3−ブチレングリコール3.0gに溶解した溶液を添加、混合した比較組成物(組成物13、14)を製造した。上記で製造された増粘組成物の全てについての粘度をE型粘度計にて測定し、リン酸緩衝液添加前後の粘度から粘度低下率(%)を算出した。その結果を表2に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
表2より、増粘後(pH調整後)のカルボキシビニルポリマー単独では、リン酸緩衝液を配合した場合には著しい粘度の低下が認められた。一方、増粘後のカルボキシビニルポリマーにキサンタンガムを配合した増粘組成物は、リン酸緩衝液を更に配合しても粘度の低下はほとんど認められなかった。また、増粘前(pH調整前)のカルボキシビニルポリマーおよびキサンタンガムのみの水溶液では、リン酸緩衝液を配合しても粘度の低下は認められなかった。
【0043】
実 施 例 3
増粘組成物の製造(3):
カーボポール940の0.6質量%水溶液50mlに、キサンタンガム1.5gを1,3−ブチレングリコール5.0gに溶解した溶液を添加、混合し、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整した後、全量が100mlとなるように精製水を添加して増粘組成物(組成物15)を製造した。更に、この増粘組成物に塩化ナトリウムを0.4g添加した増粘組成物(組成物16)を製造した。また、対照としてカーボポール940またはキサンタンガムを添加しない以外は同様に調製した比較組成物(組成物17、18、19、20)を製造した。上記で製造された増粘組成物の全てについての粘度をE型粘度計にて測定し、塩化ナトリウム添加前後の粘度から粘度低下率(%)を算出し、その結果を表3に示した。
【0044】
【表3】

【0045】
表3より、カルボキシビニルポリマーにキサンタンガムを配合した増粘組成物には、塩化ナトリウムを配合しても粘度の低下はほとんど認められなかった。一方、カルボキシビニルポリマーに塩化ナトリウムを配合した場合には、著しい粘度の低下が認められた。また、キサンタンガムのみの水溶液も塩化ナトリウムを配合しても粘度の低下は認められなかった。
【0046】
実 施 例 4
増粘組成物の製造(4):
カーボポール940の0.3質量%水溶液100mlに、キサンタンガム2.0gを1,3−ブチレングリコール5.0gに溶解した溶液を添加、混合し、更に、水酸化ナトリウムでpHを7.0に調整して増粘組成物(組成物21)を製造した。次いで、この増粘組成物に1Mのアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム水溶液(アスコルビン酸PS:昭和電工社製)または0.25Mのリン酸アスコルビルマグネシウム水溶液(VC−PMG:日本サーファクタント工業社製)を2.0g添加、混合して増年組成物(組成物22および23)を製造した。また、対照としてカーボポール940またはキサンタンガムを添加しない以外は同様に調製した比較組成物(組成物21、24、25、26、27)を製造した。上記で製造された増粘組成物の全てについての粘度をE型粘度計にて測定し、1Mのアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム水溶液添加前後の粘度から粘度低下率(%)を算出し、その結果を表4に示した。
【0047】
【表4】

【0048】
表4より、カルボキシビニルポリマーにキサンタンガムを配合した増粘組成物には、1Mのアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム水溶液を配合しても粘度の低下はほとんど認められなかった。一方、カルボキシビニルポリマーに1Mのアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム水溶液を配合した場合には、著しい粘度の低下が認められた。また、キサンタンガムのみの水溶液は1Mのアスコルビン酸リン酸エステルナトリウム水溶液を配合しても粘度の低下は認められなかった。
【0049】
実 施 例 5
増粘組成物の製造(5):
以下に記載の増粘組成物を製造し、これらの組成物に紫外線(強度約32W)を照射し、紫外線照射前および照射5時間後の粘度をE型粘度計にて測定し、紫外線照射前後の粘度から粘度低下率(%)を算出し、その結果を表5に示した。
【0050】
<組成物28>
ペムレンTR−1を、精製水にディスパーを用いて溶解させ、0.3質量%ペムレンTR−1水溶液を調製した。一方、3.0gの1,3−ブチレングリコールに、0.2gのメチルパラベンを加え、加熱溶解させた。これが室温程度に冷えたところで、キサンタンガムを0.4g添加、混合し、キサンタンガムを分散させた。この分散液を前記ペムレンTR−1水溶液の100mlに添加、混合して増粘組成物を製造した。
【0051】
<組成物29>
上記組成物28に更に5質量%の水酸化カリウム水溶液を適量添加してpH7.0付近に調整し、増粘組成物を製造した。
【0052】
<組成物30>
ペムレンTR−1を、精製水にディスパーを用いて溶解させ、0.3質量%ペムレンTR−1水溶液を調製した。一方、3.0gの1,3−ブチレングリコールに0.2gのメチルパラベンを加えて加熱溶解させた。これを0.3質量%ペムレンTR−1水溶液100mlに添加、混合して増粘組成物を製造した。
【0053】
<組成物31>
上記組成物30に更に5質量%の水酸化カリウム水溶液を適量添加してpH7.0付近に調整し、増粘組成物を製造した。
【0054】
【表5】

【0055】
表6より、アルキル変性カルボキシルビニルポリマーにキサンタンガムを配合した増粘組成物は、紫外線照射による粘度低下の抑制が認められた。
【0056】
実 施 例 6
美容液:
下記表6に記載の成分のうち、成分6と7とを加熱溶解させた。一方、成分16を加熱溶解させたものに成分17を添加、混合した。これら加熱溶解させた成分を成分19にそれぞれ溶解させ、更に成分1〜5および成分8〜15を逐次投入、攪拌し溶解させた。最後に成分18を用いpHを弱酸性に調整し、美容液を得た。得られた美容液を硬質ガラス容器に封入して紫外線を照射したところ、粘度の低下はほとんど認められなかった。
【表6】

【0057】
実 施 例 7
乳液:
下記表7に記載の成分のうち、油相成分(成分13〜16)および水相成分(成分1〜11および19)をそれぞれ加熱溶解させた。加熱溶解させた水相に油相を投入しホモジナイザーで攪拌した後アルカリ(成分12)を投入し冷却した。冷却の途中で添加剤(成分17、18)を投入、混合して乳液を得た。
【表7】

【0058】
実 施 例 8
クリーム:
下記表9に記載の成分のうち、油相成分(成分12〜17)および水相成分(成分1〜10および19)をそれぞれ加熱溶解させた。加熱溶解させた水相に油相を投入しホモジナイザーで攪拌した後アルカリ(成分11)を投入し冷却した。冷却の途中で添加剤(成分18)を投入・混合しクリームを得た。
【表8】

【0059】
実 施 例 9
増粘組成物の製造(7):
カーボポール940の0.6質量%水溶液50mlに、ヒドロキシプロピルセルロースであるHPC−H(分子量25〜40万)およびヒドロキシエチルセルロースであるHECダイセルSE850(ダイセル化学工業製)の1.5gをそれぞれ精製水43.5mlに溶解した水溶液を、添加、混合した水溶液を調製した。次に前記水溶液のpHを水酸化ナトリウムにて6.0に調整して増粘組成物を製造した。更に、この増粘組成物に塩化ナトリウムを0.4g添加、混合して増粘組成物(組成物32、33、34)を製造した。また、対照としてカーボポール940の0.3質量%水溶液のpHを水酸化ナトリウムにて6.0に調整後、この100mlに更に塩化ナトリウムを0.4g添加して比較組成物を製造した。上記で製造された増粘組成物の全てについて粘度をE型粘度計にて測定し、塩化ナトリウム添加前後の粘度から粘度低下率(%)を算出した結果を表9に示した。
【0060】
【表9】

【0061】
表9より、ヒドロキシプロピルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子を配合した増粘組成物は、塩化ナトリウムを配合しても粘度の低下はほとんど認められなかった。
【0062】
実 施 例 10
増粘組成物の製造(8):
以下に記載の増粘組成物を製造し、これらの組成物に紫外線(強度約32W)を照射し、紫外線照射前、照射5時間後および照射10時間後の粘度をE型粘度計にて測定した。その結果を表10に示した。
【0063】
<組成物35〜36>
カーボポール940の0.6質量%水溶液50mlに、ヒドロキシプロピルセルロースであるHPC−H(分子量25〜40万)およびHPC−M(分子量11万〜15万)の1.5gをそれぞれ精製水43.5mlに溶解した水溶液を、添加、混合した水溶液を調製した。次に前記水溶液のpHを水酸化ナトリウムにて6.0に調整して増粘組成物を製造した。
【0064】
【表10】

【0065】
表10よりヒドロキシプロピルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子を配合した増粘組成物は、紫外線照射による粘度低下の抑制が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の増粘組成物は、従来の増粘組成物においては添加することのできなかった塩等を配合することができる上、紫外線に対する耐性が高いものである。
【0067】
従って、本発明の増粘剤組成物は、頭髪化粧料、口唇化粧料、口腔組成物、育毛剤等の皮膚外用剤等に好適に利用することができる。また、特に、本発明の増粘組成物を皮膚外用剤に用いた場合には、紫外線対策の何ら施されていない透明容器を使用することができるので、商品価値を高めることができる、
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)と、成分(b)および/または(c)とを含有することを特徴とする増粘組成物。
(a)カルボキシビニルポリマーおよびアルキル変性カルボキシビニルポリマーからな
る群から選ばれる水溶性高分子の1種または2種以上
(b)キサンタンガムおよびカラギーナンからなる群から選ばれるガム質の1種または
2種以上
(c)ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースからなる群か
ら選ばれるセルロース系高分子の1種または2種以上
【請求項2】
成分(a)と成分(b)とを含有し、成分(a)の水溶性高分子と成分(b)のガム質との重量比が、0.1〜10.0である請求項第1項記載の増粘組成物。
【請求項3】
更に、塩を含有するものである請求項第1項または第2項に記載の増粘組成物。
【請求項4】
更に、水溶性ビタミン類を含有するものである請求項第1項ないし第3項の何れかに記載の増粘組成物。
【請求項5】
32Wの紫外線を5時間照射した後のE型粘度計により測定された粘度が、紫外線照射前に測定された粘度の50%以上である請求項第1項ないし第4項の何れかの項に記載の増粘組成物。
【請求項6】
請求項第1項ないし第5項の何れかの項に記載の増粘組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項7】
紫外線透過性の容器入りのものである請求項第6項記載の皮膚外用剤。


【公開番号】特開2007−246667(P2007−246667A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71404(P2006−71404)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000006884)株式会社ヤクルト本社 (132)
【Fターム(参考)】