説明

増締め装置

【課題】 従来の増締め装置においては、締め付けネジ部が直接座金や締付ナットに作用しないため、締め付け効果が得られないことや、増締め装置全体の強度を高めなければならず重量の増加や大型化する。
【解決手段】 被緊締物を緊締するロッドのネジ部に装着することにより、該被緊締物に対する押圧力を付与する装置において、該ネジ部に螺合させて固定する貫通ネジ孔を設けた支持部材と、該支持部材の周囲に配設する弾性体と、該支持部材との間で該弾性体による押圧力を受け被緊締物に直接若しくは間接的に接当させる押圧部材と、該支持部材と該押圧部材を該弾性体を圧縮した状態に係合させるもので装着後にその係合を解除する保持部とによって構成したものであって、該支持部材は、該ネジ部を通して被緊締物に対し直接若しくは間接的に締め付けて固定する底部を有し、該押圧部材の底部を該支持部材の底部とほぼ同じレベルにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被緊締物を緊締するロッドのネジ部に取り付けることにより、該被緊締物に対する押圧力を付与する装置の改良に関するものである。押圧力を付与する被緊締物として、木材連結部における乾燥や圧力による緩み防止、地盤補強における緩み防止などを図ることを目的とする。

【背景技術】
【0002】
従来より、建築時における木材同士の連結金具として、六角ボルトや羽子板ボルトなどが専ら用いられている。このような被緊締物を締め付けるためのロッドに設けたネジ部にナットで締め付けて緊締する手段は、建築関係に限らず土木などの分野においても広く利用されている。
【0003】
しかしながら、木材や地盤等の被緊締物は経時的に緩みが生じやすく、定期的な締め直し(増締め)が必要であるものの、コストの問題もあってほとんどが施工時のまま放置されているのが現状である。
【0004】
このことから、特許文献1に示すように本発明者が開発したアンカーヘッドがある。これは、グラウンドアンカー工におけるアンカー頭部に取り付けるもので、収容部材とカバー部材との間に弾性体を圧縮した状態に設け、該収容部材と該カバー部材を固定部で固定した構造である。また、建築金具においては、特許文献2に示すように締付ナットをバネで回転させる方向に付勢する手段やコイルバネで座金を押し付ける方向に付勢する手段が開示されており、いずれも経時的な緩み防止を図ることを目的としている。
【特許文献1】特開2006−112064
【特許文献2】特開2000−234613
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地盤の変動や木材の乾燥等による被緊締物の緩みに対して、特許文献1のアンカーヘッドや特許文献2の建築用締め付けボルトにより、経時的に生じる緩みに対応した増締め効果を得ることができ、耐震対策としても極めて有用である。特に、特許文献1に示したアンカーヘッドは、工場出荷時において弾性体を圧縮した状態で収容部材とカバー部材を固定部で固定しているため、現場において弾性体を圧縮する作業が不要となり、取付作業の効率化が図れることになる。
【0006】
しかしながら、従来の増締め装置においては、緊締するロッドのネジ部の突出長さが相当長くなければ取り付けできない問題があった。新規工事の場合でも必要以上の長さのロッドを用いなければならない。また、既設の場合はロッドのネジ部が締付ナットからほとんど突出していないこともあり、既設のナットと取り替えたり、ロッドを付け替えしなければならないことになる。このため、既設のロッドのネジ部にも容易に取り付けることが出来なければ、かなりのコストがかかってしまうことになり、ほとんど対策がとられないまま放置されてしまうことに繋がる。
【0007】
また、従来の増締め装置では、締め付けネジ部が直接座金や締付ナットに作用しないため、締め付け効果が得られないことや、増締め装置全体の強度を高めなければならず重量の増加や大型化する問題があった。

【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は上記課題に鑑み鋭意研究した結果、本発明を成し得たものであり、その特徴とするところは、被緊締物を緊締するロッドのネジ部に装着することにより、該被緊締物に対する押圧力を付与する装置において、該ネジ部に螺合させて固定する貫通ネジ孔を設けた支持部材と、該支持部材の周囲に配設する弾性体と、該支持部材との間で該弾性体による押圧力を受け被緊締物に直接若しくは間接的に接当させる押圧部材と、該支持部材と該押圧部材を該弾性体を圧縮した状態に係合させるもので装着後にその係合を解除する保持部とによって構成したものであって、該支持部材は、該ネジ部を通して被緊締物に対し直接若しくは間接的に締め付けて固定する底部を有し、該押圧部材の底部を該支持部材の底部とほぼ同じレベルとしたことにある。
【0009】
本明細書中でいう「支持部材」とは、被緊締物を緊締するためのロッドのネジ部を通して該被緊締物を締め付ける部材をいう。この場合、支持部材で被緊締物を直接締め付けたり、座金や支圧板などを介して締め付ける。また、既に締め付けた既設のナットに対して締め付ける場合も含むものとする。ロッドとは、一般的な六角ボルトや羽子板ボルト、テンドンやタイロッドなど少なくとも端部にネジ部を設けた被緊締物を緊締するための棒材をいう。支持部材の周囲には弾性体を配する。弾性体としては、例えばコイルバネ、皿バネ、ガスクッション、ウレタンなどの硬質ゴムなどである。弾性体は、筒状やリング状のものを支持部材に外嵌したり、支持部材の周囲に複数配設することによって設ける。
【0010】
「押圧部材」とは、被緊締物に直接若しくは間接的に接当させる部材をいう。この押圧部材は、ロッドのネジ部に固定された支持部材に対し弾性体の押圧力を受けるものであって、その押圧力によって被緊締物を押圧する。支持部材と押圧部材は、保持部により、弾性体を圧縮した状態でを係合させておく。この状態で支持部材をロッドのネジ部に締め付けて固定した後、該保持部による支持部材と押圧部材の係合を解除し、被緊締物に対して押圧部材による押圧力を作用させる。
【0011】
本発明においては、被緊締物に対し直接若しくは間接的に締め付ける支持部材の底部と押圧部材の底部をほぼ同じレベルに設けているため、通常のナットと同様にしてロッドのネジ部に装着して締め付けることができる。押圧部材の底部と支持部材の底部は、必ずしも同じレベルにする必要はなく、支持部材を締め付けるときの弾性体の圧縮、保持部の解除時における弾性体の伸びにより対応することができる。
【0012】
本発明に係る増締め装置は、新規工事に用いるだけでなく、既設のロッドのネジ部にも取り付けて増締め機能を付与することができる。既設の場合は、既に取り付けられている締め付けナットに代えて取り付けてもよいが、そのナットに対して締め付けて固定することも可能である。この場合、既設のナットとほぼ同じ高さのスペーサを用いて押圧部材との高さレベルを調整する。既設ナットとスペーサは、弾性体の圧縮や伸びによって対応できるため、前述したように必ずしも同じレベルにしなくてもよい。

【発明の効果】
【0013】
本発明に係る増締め装置は、ロッドのネジ部に螺合させる貫通ネジ孔を設けた支持部材に、被緊締物に対し直接若しくは間接的に締め付ける底部を備え、且つ押圧部材の底部を該支持部材の底部とほぼ同じレベルにしたことにより、従来の締め付けナットと同じようにして締め付け固定することができる。このため、ロッドのネジ部の突出長さに関係なく取り付け可能となる。特に、既設のロッドに取り付ける場合でも、既設のナットの上から取り付けて確実に固定することができる。しかも、既設のナットと支持部材によるダブルナットの効果が得られ、固定力を高めることができるなど極めて有益な効果を有するものである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る増締め装置は、ロッドのネジ部に螺合させる貫通ネジ孔を設けた支持部材に、被緊締物に対し直接若しくは間接的に締め付ける底部を備え、且つ押圧部材の底部を該支持部材の底部とほぼ同じレベルにしたことで上記課題を解決した。

【実施例1】
【0015】
図1(a)(b)は、本発明に係る増締め装置1の一実施例を示すもので、中央部に貫通ネジ孔21を設けた支持部材2、該支持部材2の周囲に設けたコイルバネ3、被緊締物に直接若しくは間接的に接当させるもので該支持部材2との間で該コイルバネ3の押圧力を受ける押圧部材4、そしてコイルバネ3を圧縮した状態で該支持部材2と該押圧部材4を係合させる保持部5とによって構成している。本発明においては、支持部材2の底部と押圧部材4の底部をほぼ同じレベルにしている。
【0016】
増締め装置1は、締め付け部材としての支持部材2に押圧部材4を弾性体を圧縮した状態でセットした構造であり、従来の締付ナットと同じようにして用いることができる。このため、本例の支持部材2はラチェットレンチ等で締め付けるために、外形を六角に形成している。例えば、図2に示すように木造建築における連結金具のナットの代用として、増締め装置1を羽子板ボルト6に締め付け固定する。固定後、保持部5を取り外して支持部材2と押圧部材4の係合を解除する。これにより、締め付け効果のみならず増締め効果を得ることができる。保持部5も外形を六角にしてレンチで係合を解除するようにしてもよい。

【実施例2】
【0017】
また、本発明に係る増締め装置1は、既設の建築金具にも容易に取り付けることができる。これは、図3に示すようにボルト7に締め付けた既設ナット8の上から取り付ける場合である。この場合、押圧部材4の底部と座金9との間に既設ナット8とほぼ同じ厚みのスペーサ10を設けておく。通常、増締め装置1を既設の固定金具に取り付ける場合は、先ず既設ナット8を増締めして、これに対して増締め装置1を締め付ける。これにより、支持部材2と既設ナット7がダブルナットとなって、高い固定力が得られる。この状態で、保持部5を取り外して支持部材2と押圧部材4の係合を解除する。

【実施例3】
【0018】
本発明に係る増締め装置1は、図4に示すようにグラウンドアンカー工におけるテンドン12の定着具として用いることもできる。これは、安定基盤に形成したアンカー体11に連結したテンドン12を支圧板13を介して引張緊締するもので、従来の締付ナットに代えて締め付け固定する。本例の増締め装置1では、支持部材2の周囲に複数のコイルバネ3を配することにより押圧力を高めている。さらに、保持部5としてボルトで支持部材2と押圧部材4を連結固定している。また、スペーサ10を用いることにより、既設の締付ナットの上から増締め装置1をテンドン12に取り付けることも可能である。

【実施例4】
【0019】
図5は、増締め装置1をタイロッド工法におけるタイロッド14の定着具として用いた例である。本例では、既設ナット8にスペーサ10を嵌め込んでタイロッド14に取り付けた状態を示している。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る増締め装置の一実施例を示すもので、(a)は平面図、(b)は縦断面図である。(実施例1)
【図2】図1に示した増締め装置の使用状態の一例を示す斜視図である。
【図3】図1に示した増締め装置の使用状態の他の例を示す縦断面図である。(実施例2)
【図4】本発明に係る増締め装置の他の実施例を示す断面図である。(実施例3)
【図5】本発明に係る増締め装置のさらに他の実施例を示す断面図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0021】
1 増締め装置
2 支持部材
21 貫通ネジ孔
3 コイルバネ
4 押圧部材
5 保持部
6 羽子板ボルト
7 ボルト
8 既設ナット
9 座金
10 スペーサ
11 アンカー体
12 テンドン
13 支圧板
14 タイロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被緊締物を緊締するロッドのネジ部に装着することにより、該被緊締物に対する押圧力を付与する装置において、該ネジ部に螺合させて固定する貫通ネジ孔を設けた支持部材と、該支持部材の周囲に配設する弾性体と、該支持部材との間で該弾性体による押圧力を受け被緊締物に直接若しくは間接的に接当させる押圧部材と、該支持部材と該押圧部材を該弾性体を圧縮した状態に係合させるもので装着後にその係合を解除する保持部とによって構成したものであって、該支持部材は、該ネジ部を通して被緊締物に対し直接若しくは間接的に締め付けて固定する底部を有し、該押圧部材の底部を該支持部材の底部とほぼ同じレベルとしたことを特徴とする増締め装置。
【請求項2】
支持部材はロッドのネジ部に設けられた既設のナットに締め付けると共に、押圧部材は該ナットとほぼ同じ厚みのスペーサを介して被緊締物に対し直接若しくは間接的に接当させる請求項1記載の増締め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−25240(P2010−25240A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187719(P2008−187719)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(501249261)株式会社日本海技術コンサルタンツ (17)
【Fターム(参考)】