変位センサ
【課題】より高い分解能を得ることが可能な変位センサを提供する。
【解決手段】センサヘッド100は、レンズ10(対物レンズ)と、レンズ10を変位させるための振動子8と、フォトダイオード2(受光部)と、反射光の光路上に位置するピンホール7aが形成された絞り板7と、レンズ9(コリメートレンズ)とを備える。光軸Xは、レンズ9,10の光軸であるとともに、ピンホール7aの中心軸に対応する。遮光部材13は、ピンホール7aの中心軸に対して反射光の光路が傾いた状態で、反射光にピンホール7aを通過させる。遮光部材13を省略し、レーザダイオード1の光軸をピンホール7aの中心軸に対して傾けてもよい。これにより、フォトダイオード2からの受光信号に対する電気的ノイズあるいはスペックルの影響を小さくすることができる。
【解決手段】センサヘッド100は、レンズ10(対物レンズ)と、レンズ10を変位させるための振動子8と、フォトダイオード2(受光部)と、反射光の光路上に位置するピンホール7aが形成された絞り板7と、レンズ9(コリメートレンズ)とを備える。光軸Xは、レンズ9,10の光軸であるとともに、ピンホール7aの中心軸に対応する。遮光部材13は、ピンホール7aの中心軸に対して反射光の光路が傾いた状態で、反射光にピンホール7aを通過させる。遮光部材13を省略し、レーザダイオード1の光軸をピンホール7aの中心軸に対して傾けてもよい。これにより、フォトダイオード2からの受光信号に対する電気的ノイズあるいはスペックルの影響を小さくすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で計測対象物の変位を計測する変位センサに関し、特に、共焦点光学系を用いた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する計測装置が提案されている。たとえば特開平7−113617号公報(特許文献1)に開示された変位計は、音叉に取り付けられたレンズを光軸方向に振動させることで計測対象物体へ向けて照射する光の集光位置を変化させ、その集光位置が計測対象物の表面と一致するときに、ピンホールを通って受光部で受光される反射光の受光量が最大となることに基づいて変位量を計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−113617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成を有する変位センサの場合、計測の分解能は、受光部から出力される信号の強度がピークとなる位置の安定性に依存する。ここでの「位置」は、音叉に取り付けられたレンズの位置に対応する。
【0005】
受光部からの受光信号におけるピーク位置がぶれることによって分解能が低下する。ピーク位置がぶれる原因としては、たとえば受光部から出力される電気信号に含まれるノイズ成分の影響がある。あるいは分解能は、音叉の振幅の安定性にも依存する。また、光を拡散させる拡散面を有する計測対象物の場合には、スペックルの影響によってピーク位置がぶれやすい。
【0006】
しかしながら、特開平7−113617号公報(特許文献1)に開示された変位センサの構成では、このようなピーク位置のぶれによって分解能が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、より高い分解能を得ることが可能な変位センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に係る変位センサは、計測対象物に光を照射するための投光部と、投光部から計測対象物に照射される光を集めるための対物レンズと、計測対象物に光が照射されることによって生じた反射光を受ける受光部と、反射光の光路上に開口が形成された第1の遮光部材と、対物レンズと共通の光軸に配置され、投光部から照射された光が計測対象物の表面で焦点を結んだときに、反射光が開口の位置において焦点を結ぶように反射光を集光するコリメートレンズと、投光部から計測対象物に照射された光が計測対象物の表面で焦点を結ぶように対物レンズあるいはコリメートレンズを変位させるための振動子とを備える。変位センサは、開口の中心軸に対して反射光の光路を傾かせるように構成される。
【0009】
好ましくは、変位センサは、光を遮断あるいは弱めるための第2の遮光部材を含む。第2の遮光部材は、対物レンズおよびコリメートレンズの光軸および開口の中心軸の少なくとも一方に配置される。
【0010】
好ましくは、第2の遮光部材は、円形の形状を有する。
好ましくは、第2の遮光部材は、円形に形成された第1の部材と、第1の部材と同心上に配置された、輪環状の第2の部材とを有する。
【0011】
好ましくは、投光部の光軸が、対物レンズおよびコリメートレンズの光軸に対して傾いた方向に向けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より高い分解能を得ることが可能な変位センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示した変位センサの測定原理を説明するための模式図である。
【図3】図1に示した遮光部材13を省略した場合に得られる分解能の一例を説明した図である。
【図4】遮光部材が配置されていない場合にピンホールを通過する光を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る構成による効果を説明する図である。
【図6】図4に示した従来構成によって得られる受光信号と、図5に示した本発明の実施の形態1に係る構成によって得られる受光信号とを比較した波形図である。
【図7】遮光部材の配置の例を示した図である。
【図8】遮光部材の形状の一例を示した図である。
【図9】遮光部材の形状の他の例を示した図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る構成による効果を説明する図である。
【図12】実施の形態1に係る変位センサの他の構成例を示した図である。
【図13】実施の形態2に係る変位センサの他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。図1を参照して、実施の形態1に係る変位センサは、センサヘッド100と、当該センサヘッド100を制御するコントローラ200とを備える。
【0016】
センサヘッド100は、レーザダイオード1と、フォトダイオード2と、ビームスプリッタ3と、ピンホール7aが形成された絞り板7と、レンズ9(コリメートレンズ)と、遮光部材13と、音叉状の振動子8と、振動子8のアームに取り付けられたレンズ10(対物レンズ)と、振動子8を振動させるための駆動部11と、振動子8のアームの位置を検出するための位置検出部12とを備える。
【0017】
レーザダイオード1はコントローラ200から電流が供給されることによって一定の強度の光を発生させる。レーザダイオード1から発せられた光はビームスプリッタ3を透過してレンズ9に入射する。レーザダイオード1からの光はレンズ9によってコリメートされてレンズ10に入射する。レンズ10は、レンズ9からの光を計測対象物90の表面に集光させる。
【0018】
レンズ10は、振動子8のアームに支持される。振動子8の近傍には、振動子8を駆動するための駆動部11が設けられる。図1に示していないが、駆動部11はコイルおよびそのコイルに通電するための駆動回路を有する。コイルへの電流の供給とコイルへの電流の供給の停止とが一定の周期で繰返される。これにより振動子8のアームが振動する。
【0019】
レンズ10は、振動子8の振動により、計測対象物90に接近する方向および遠ざかる方向に移動する。位置検出部12は、光軸Xの方向に沿ったレンズ10の位置を検出する。この実施の形態では、光軸Xは、レーザダイオード1から発せられる光ビームの光軸であり、レンズ9,10の光軸でもある。
【0020】
レーザダイオード1から計測対象物90へ向けて照射された光は、当該計測対象物90によって反射される。計測対象物90からの反射光は、レンズ10、レンズ9、ビームスプリッタ3を介してフォトダイオード2に導かれる。
【0021】
ビームスプリッタ3は、計測対象物90からの反射光の光路をレーザダイオード1から発せられる光の光路から分離する。なおビームスプリッタに代えてハーフミラーを用いてもよい。反射光の光線が光軸X上を通る場合、その光線はビームスプリッタ3で反射して、ピンホール7aの中心軸を通る。
【0022】
絞り板7は、ビームスプリッタ3とフォトダイオード2との間に配置される。絞り板7にはピンホール7aが形成される。ビームスプリッタ3によってフォトダイオード2に導かれた反射光はピンホール7aを通過してフォトダイオード2に入射する。
【0023】
遮光部材13は、光軸Xと交差するように配置されて、光軸X付近の光を遮断する。遮光部材13は、ピンホール7aの中心軸に対して反射光の光軸が傾いた状態で、反射光にピンホール7aを通過させるための光軸調整部を実現する。このように反射光がピンホール7aを通過することによって、フォトダイオード2から出力される受光信号の線幅(半値全幅とする)を狭めることができる。したがって実施の形態1によれば、計測対象物の変位を高い精度で計測することができる。遮光部材13は、光を遮断するものに限定されず、光を弱めるもの(一例を示すと減光フィルター)であってもよい。
【0024】
コントローラ200は、駆動部11に信号を送り、駆動部11の動作を制御する。さらに、コントローラ200は、位置検出部12からの信号およびフォトダイオード2からの受光信号に基づいて、レンズ10の変位量と受光信号の強度とを対応付ける。これにより、コントローラ200は、受光信号の強度がピークに達したときのレンズ10の変位量を検出する。この変位量に基づいて、コントローラ200は、計測対象物90の表面の変位を測定する。
【0025】
なお、この明細書では「変位」とはレーザダイオード1の照射光の光軸方向における位置の変化を意味する。したがって、「変位」とは高さ方向の変化に限定されるものではない。たとえばレーザダイオード1の光軸方向が水平方向となるように光学系が構成されている場合には、「変位」とは水平方向の変化に対応する。
【0026】
図2は、図1に示した変位センサの測定原理を説明するための模式図である。図2を参照して、測定原理を分かりやすく説明するため、レーザダイオード1、フォトダイオード2およびビームスプリッタ3の図示を省略している。
【0027】
図示しないレーザダイオードから投射された光は、絞り板7のピンホール7aを通り、レンズ9およびレンズ10によって集められ、計測対象物90の表面に照射される。計測対象物90の表面で反射した光は、レンズ10およびレンズ9によって集められ、絞り板7の位置に到達する。ピンホール7aを通過する反射光の光量は、レンズ10の変位量に依存する。なお、上述のように、レンズ10を固定してレンズ9を変位させてもよい。
【0028】
図2(a)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の手前で焦点を結ぶ場合を示している。この場合には、計測対象物90の表面で反射した光が、レンズ9,10によって集められるが、ピンホール7aの手前で焦点を結ぶ。このため、ピンホール7aの位置ではピンホール7aの径よりも光スポットの径が大きくなり、ピンホール7aを通過する光の量が小さくなる。したがって受光信号の強度が小さくなる。
【0029】
図2(b)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の表面で焦点を結ぶ場合を示している。この場合には、計測対象物90の表面で反射した光は、レンズ9,10によって集められ、ピンホール7aの位置で焦点を結ぶ。このため、ピンホール7aを通過する光の量が最大となるので、受光信号の強度も最大となる。なお、この場合にはレーザダイオードから投射された光の光路と計測対象物90の表面で反射した光の光路とは一致する。ただし図2では、計測対象物90に照射される光と計測対象物90で反射した光とを分かりやすく示すために、これらの光路をわずかにずらして示している。
【0030】
図2(c)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の表面よりも内部の位置で焦点を結ぶ場合を示している。この場合にも、計測対象物90の表面からの反射光がピンホール7aの位置で形成するスポットは、ピンホール7aより大きくなる。したがってピンホール7aを通過する光の量が小さくなる。
【0031】
図2(a)〜図2(c)より、受光信号の強度は、レーザダイオードから投射された光の焦点位置が計測対象物90の表面に一致するときに最大となり、焦点位置が計測対象物90の表面と異なる場合には、最大値に比べて著しく小さくなることが分かる。図2の上半分に示したレンズ9の変位と受光信号の強度との関係は、上記の関係を表わしている。レンズ10の変位と計測対象物の変位との関係は予め求められている。したがって、受光信号の強度が最大になるときのレンズ10の変位から、計測対象物90の変位を求めることができる。
【0032】
焦点位置の計測対象物90の表面からのずれに対して受光信号の強度が大きく変化するほど、計測対象物90の変位を精度よく求めることができる。すなわち、図2の上半分に示した変位と受光信号の強度との関係において、受光信号波形の幅が細いほど変位の計測の分解能が高い。実施の形態1では、遮光部材13を設けることによって、高い分解能を得ることができる。
【0033】
図3は、図1に示した遮光部材13を省略した場合に得られる分解能の一例を説明した図である。
【0034】
図3(a)は、フォトダイオード2からの受光信号に電気的ノイズが重畳していることを示している。このような場合には、計測対象物が静止したままであっても、受光信号のピーク位置が測定ごとに異なりうる。すなわちピーク位置のぶれが生じる。このピーク位置のぶれの大きさが分解能に相当する。
【0035】
一方、拡散面を有する計測対象物の変位を測定する場合には、スペックルにより、図3(b)に示されるようにピーク位置がぶれる。このピーク位置のぶれの大きさが分解能に相当する。
【0036】
このように、分解能は電気的ノイズあるいはスペックルによるピーク位置のぶれによって低下する。このような問題を解決するためには、受光信号の線幅を狭くすることが有効である。受光信号の線幅を狭くする方法としては、たとえば、レンズ9および/またはレンズ10のNA(開口数)を大きくする方法あるいはピンホール7aの径を小さくする方法が考えられる。
【0037】
しかしながらレンズのNAを大きくするためには、たとえばレンズの外径を大きくする必要がある。このため、センサヘッドの大型化、あるいは部品コストの増加といった課題が生じ得る。一方、ピンホールの径を小さくした場合には、たとえば絞り板7のアラインメントが難しくなる。すなわちセンサヘッドの組み立て精度を確保することが難しくなる。また、ピンホールの径をより小さく設計するほど、ピンホールの形成が難しくなる。
【0038】
一方、実施の形態1によれば、遮光部材を配置することによって、受光信号の線幅を細くすることができる。また、後で詳細に説明するが、遮光部材の配置の自由度が高い。したがって、実施の形態1によれば上述の課題を生じさせることなく、分解能を改善できる。この点について、以下に詳細に説明する。
【0039】
図4は、遮光部材が配置されていない場合にピンホールを通過する光を説明する図である。図4(a)は共焦点状態を説明する図であり、図4(b)は、共焦点からずれた状態を説明する図である。図4を参照して、共焦点状態では、レーザダイオード(図示せず)からの光は、計測対象物90の表面において焦点を結び、計測対象物90の表面からの反射光はピンホール7aの位置において焦点を結ぶ。これにより、計測対象物90で反射されてピンホール7aを通過する反射光の光量が最大となる。これに対して、図4(b)では、レーザダイオード(図示せず)からの光は計測対象物90の手前の位置で焦点を結び、計測対象物90の表面からの反射光はピンホール7aの手前の位置において焦点を結ぶ。このため、ピンホール7aを通過する反射光の光量が減少する。焦点のずれに対して反射光の光量の減少が大きいほど受光信号の線幅が細くなる。
【0040】
しかしながら、焦点がずれた状態であっても、光軸Xの近傍の反射光ビーム20はピンホール7aを通過しやすい。一方、反射光ビームのうち、レンズ10およびレンズ9の端部の側を通過する光線は、ピンホール7aでけられる。すなわち、その光線は絞り板7によって遮られる。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態1に係る構成による効果を説明する図である。図5(a)は共焦点状態を説明する図であり、図5(b)は、共焦点からずれた状態を説明する図である。図5を参照して、実施の形態1に係る構成では、遮光部材13が光軸Xと交わるように配置される。したがって、光軸Xの近傍の反射光ビーム20は遮光部材13によって遮られる。この結果、ピンホール7aを通過する反射光の光路が、ピンホール7aの中心軸に対して傾けられている。
【0042】
なお、図5に示した構成によれば、レーザダイオード(図示せず)からの光ビームの一部、すなわち光軸X近傍の光ビームが遮光部材13によって遮られる。このため光軸X付近の反射光ビーム(反射光ビーム20)は実質的に生じない。このため、上記のように、光軸Xの近傍の反射光ビーム20が遮光部材13によって遮られると説明する。
【0043】
反射光ビームのうち、レンズ10およびレンズ9の端部の側を通過する光線は、共焦点状態(図5(a))ではピンホール7aを通過できるのに対し、共焦点からずれた状態(図5(b))ではピンホール7aにけられる。このため、共焦点状態からの変化に応じて、ピンホール7aを通過する反射光の光量が大きく変化する。この結果、実施の形態1に係る構成によれば受光信号の線幅を狭くすることができる。
【0044】
図6は、図4に示した従来構成によって得られる受光信号と、図5に示した本発明の実施の形態1に係る構成によって得られる受光信号とを比較した波形図である。図6を参照して、共焦点状態における受光信号の強度が等しくなるように、各構成における受光信号の強度が調整されている。なお図6において「中央遮蔽」とは、実施の形態1に係る構成を意味する。レンズの位置が共焦点状態での位置から変化すると受光信号の強度もピーク強度から低下する。レンズの変位量が同じである場合、受光信号の強度の低下量は、本発明の実施の形態1に係る構成のほうが従来構成より大きい。したがって、本発明の実施の形態1に係る構成によれば受光信号の線幅が狭くなる。
【0045】
なお図1等では、遮光部材13は、レンズ9とレンズ10との間に配置されているが、遮光部材13の位置は特に限定されるものでない。レンズ9,10の光軸Xとピンホール7aの中心軸とが重なる(一致する)場合には、その光軸上の任意の個所に遮光部材13を配置できる。また、図1に示した構成では、レンズ9,10の光軸Xを通る反射光の光線はビームスプリッタ3によってピンホール7aの中心軸を通る。このような場合には、レンズ9,10の光軸Xおよびピンホール7aの中心軸の少なくとも一方に遮光部材13を配置すればよい。
【0046】
図7は、遮光部材の配置の例を示した図である。図7を参照して、遮光部材13は、たとえば、レンズ9とビームスプリッタ3との間の位置(位置A)、レンズ10と計測対象物90との間の位置(位置B)、ビームスプリッタ3とピンホール7a(絞り板7)との間の位置(位置C)、あるいはピンホール7a(絞り板7)とフォトダイオード2との間の位置(位置D)に配置される。いずれの場合においても、遮光部材13は、光軸X上あるいはピンホール7aの中心軸上に配置される。
【0047】
なお、遮光部材13の数は1つに限定されない。複数の遮光部材13を光軸X上あるいはピンホール7aの中心軸上に配置してもよい。
【0048】
図8は、遮光部材の形状の一例を示した図である。図8を参照して、遮光部材13は円形に形成される。遮光部材13は矩形であってもよいが、遮光部材の角の部分における光の回折により、計測対象物90の表面に照射される光スポットの径は大きくなる。一方、遮光部材13を円形にした場合には、遮光部材13の周囲における光の回折により、計測対象物90の表面に照射される光スポットの径は小さくなる。したがって、受光信号の線幅を狭くする効果がより一層高められる。
【0049】
また、遮光部材13は、たとえばレンズ10の表面に取り付けられる。なお、レンズ9の表面に遮光部材13が取り付けられてもよい。
【0050】
図9は、遮光部材の形状の他の例を示した図である。遮光部材13を参照して、遮光部材13Aは、中央遮蔽部131と、周囲遮蔽部132とを有する。中央遮蔽部131と周囲遮蔽部132との間に輪帯開口133が形成される。図8に示された構成と同様に、たとえば遮光部材13Aはレンズ10(レンズ9でもよい)に取り付けられる。遮光部材13に示されるように輪帯開口が形成されることによって、計測対象物90の表面に形成される光スポットの径を小さくすることができる。さらに、中央遮蔽部131によって光軸X付近の反射光ビームが遮蔽される。したがって、受光信号の線幅を細くする効果がより一層高められる。
【0051】
以上のように実施の形態1によれば、対物レンズ(レンズ10)およびコリメートレンズ(レンズ9)の光軸およびピンホール7aの中心軸のうちの少なくとも一方に遮光部材13を配置する。これによって受光信号の線幅を細くすることが可能になる。したがって、計測対象物の変位の計測において、電気的ノイズあるいはスペックルなどの影響を小さくすることが可能になるため、変位を計測する際の分解能を高めることができる。
【0052】
[実施の形態2]
図10は、本発明の実施の形態2に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。図10を参照して、実施の形態2に係る変位センサは、レーザダイオード1の光軸(X1で示す)が光軸Xに対して傾けられている点において実施の形態1に係る変位センサと異なる。実施の形態1と同じく、光軸Xはレンズ9,10の光軸に対応する。
【0053】
さらに、実施の形態2に係る変位センサは、遮光部材13が存在しない点において実施の形態1に係る変位センサと異なる。実施の形態2に係る変位センサの他の部分の構成は実施の形態1に係る変位センサの対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0054】
図11は、本発明の実施の形態2に係る構成による効果を説明する図である。図11(a)は共焦点状態を説明する図であり、図11(b)は、共焦点からずれた状態を説明する図である。
【0055】
図11(a)、図11(b)を参照して、実施の形態2に係る構成では、レーザダイオード1の光軸X1がレンズ9,10の光軸Xに対して傾いている。このため計測対象物90表面で反射した光がレンズ9、10を通り、さらに、ピンホール7aを抜けるときに、当該反射光の光軸X2も光軸Xに対して傾いている。したがって、ピンホール7aの中心軸に対して反射光の光路が傾いている。なお、光軸X2の光軸Xに対する傾きの角度は、光軸X1の光軸Xに対する傾きの角度に等しい。
【0056】
実施の形態2に係る構成においても、レンズ9,10の中央を通過する反射光の成分が存在しない。これにより実施の形態1の構成による効果と同様の効果が得られる。したがって、実施の形態2によれば共焦点状態から焦点がずれた状態においてピンホール7aを通過する反射光の光量を減らすことができる。この結果、受光信号の線幅を狭くすることができる。
【0057】
なお、上記の各実施の形態では、コリメートレンズが固定されて、対物レンズが振動子によって変位している。ただしコリメートレンズを振動子によって変位させて、対物レンズを固定してもよい。
【0058】
また、本発明は、共焦点光学系を用いた変位センサに対して適用可能である。共焦点光学系の構成は上記の実施の形態に示された構成に限定されるものではない。たとえば、センサヘッドは以下のような光学系によって構成されてもよい。
【0059】
図12は、実施の形態1に係る変位センサの他の構成例を示した図である。図12を参照して、レーザダイオード1から計測対象物90に投射される光と、計測対象物90により反射された光とが共通のピンホール(7a)を通過する。すなわちピンホール7aは、実質的な光源となり、また、計測対象物90での反射光に対する絞りとなっている。これにより、光源と絞りとが同一のもので構成されるため、両者の位置ずれに起因する計測誤差の発生を抑制することができる。
【0060】
図12に示した構成では、レーザダイオード1の発光点1aから発せられた光はレンズ4によってコリメートされる。ビームスプリッタ3は、レンズ4によってコリメートされた光を透過させる。ビームスプリッタ3を透過した光はレンズ5によって、絞り板7に設けられたピンホール7aに向けて集光され、ピンホール7aを通過する。
【0061】
レーザダイオード1から計測対象物90へ向けて照射された光は、当該計測対象物90によって反射される。計測対象物90からの反射光は、レンズ9,10によって絞り板7に設けられたピンホール7aに向けて集光される。ピンホール7aを通過した光は、レンズ5によってコリメートされてビームスプリッタ3に入射する。
【0062】
ビームスプリッタ3は、レンズ5からの光の光路を、レーザダイオード1から発せられる光の光路から分離する。ビームスプリッタ3によって反射した光はレンズ6によって集光されてフォトダイオード2の受光面2aに入射する。
【0063】
この構成では、光軸Xは、レーザダイオード1の光軸でもあり、ピンホール7aの中心軸でもあり、レンズ9,10の光軸でもある。遮光部材13は、たとえばレンズ9とレンズ10との間に設けられる。ただし、遮光部材13は、レンズ9とピンホール7a(絞り板7)との間の位置、レンズ10と計測対象物90との間の位置、レンズ5とピンホール7a(絞り板7)との間の位置、ビームスプリッタ3とレンズ6との間の位置、あるいはレンズ6とフォトダイオード2との間の位置に配置されてもよい。
【0064】
図13は、実施の形態2に係る変位センサの他の構成例を示した図である。図13を参照して、レーザダイオード1の光軸X1は、レンズ9,10の光軸Xに対して傾けられている。光軸Xは、ピンホール7aの中心軸でもある。レーザダイオード1から発せられた光ビームは、ピンホール7aに対して傾斜した状態でピンホール7aを通過する。一方、計測対象物90からの反射光ビームがピンホール7aを通過する際にも、反射光ビームの光軸X2は光軸Xに対して傾いている。
【0065】
図12および図13に示された構成によれば、レーザダイオード1から計測対象物90に投射される光と、計測対象物90により反射された光とが共通のピンホール(ピンホール7a)を通過する。すなわちピンホール7aは、実質的な光源となり、また、計測対象物90での反射光に対する絞りとなっている。
【0066】
さらに本発明は共焦点光学系であれば反射型の光学系に限定されず、透過型の光学系に対して適用可能である。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザダイオード、1a 発光点、2 フォトダイオード、2a 受光面、3 ビームスプリッタ、4〜6,9,10 レンズ、7 絞り板、7a ピンホール、8 振動子、11 駆動部、12 位置検出部、13,13A 遮光部材、20 反射光ビーム、90 計測対象物、100 センサヘッド、131 中央遮蔽部、132 周囲遮蔽部、133 輪帯開口、200 コントローラ、X,X1,X2 光軸。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で計測対象物の変位を計測する変位センサに関し、特に、共焦点光学系を用いた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する計測装置が提案されている。たとえば特開平7−113617号公報(特許文献1)に開示された変位計は、音叉に取り付けられたレンズを光軸方向に振動させることで計測対象物体へ向けて照射する光の集光位置を変化させ、その集光位置が計測対象物の表面と一致するときに、ピンホールを通って受光部で受光される反射光の受光量が最大となることに基づいて変位量を計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−113617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成を有する変位センサの場合、計測の分解能は、受光部から出力される信号の強度がピークとなる位置の安定性に依存する。ここでの「位置」は、音叉に取り付けられたレンズの位置に対応する。
【0005】
受光部からの受光信号におけるピーク位置がぶれることによって分解能が低下する。ピーク位置がぶれる原因としては、たとえば受光部から出力される電気信号に含まれるノイズ成分の影響がある。あるいは分解能は、音叉の振幅の安定性にも依存する。また、光を拡散させる拡散面を有する計測対象物の場合には、スペックルの影響によってピーク位置がぶれやすい。
【0006】
しかしながら、特開平7−113617号公報(特許文献1)に開示された変位センサの構成では、このようなピーク位置のぶれによって分解能が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、より高い分解能を得ることが可能な変位センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に係る変位センサは、計測対象物に光を照射するための投光部と、投光部から計測対象物に照射される光を集めるための対物レンズと、計測対象物に光が照射されることによって生じた反射光を受ける受光部と、反射光の光路上に開口が形成された第1の遮光部材と、対物レンズと共通の光軸に配置され、投光部から照射された光が計測対象物の表面で焦点を結んだときに、反射光が開口の位置において焦点を結ぶように反射光を集光するコリメートレンズと、投光部から計測対象物に照射された光が計測対象物の表面で焦点を結ぶように対物レンズあるいはコリメートレンズを変位させるための振動子とを備える。変位センサは、開口の中心軸に対して反射光の光路を傾かせるように構成される。
【0009】
好ましくは、変位センサは、光を遮断あるいは弱めるための第2の遮光部材を含む。第2の遮光部材は、対物レンズおよびコリメートレンズの光軸および開口の中心軸の少なくとも一方に配置される。
【0010】
好ましくは、第2の遮光部材は、円形の形状を有する。
好ましくは、第2の遮光部材は、円形に形成された第1の部材と、第1の部材と同心上に配置された、輪環状の第2の部材とを有する。
【0011】
好ましくは、投光部の光軸が、対物レンズおよびコリメートレンズの光軸に対して傾いた方向に向けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より高い分解能を得ることが可能な変位センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示した変位センサの測定原理を説明するための模式図である。
【図3】図1に示した遮光部材13を省略した場合に得られる分解能の一例を説明した図である。
【図4】遮光部材が配置されていない場合にピンホールを通過する光を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る構成による効果を説明する図である。
【図6】図4に示した従来構成によって得られる受光信号と、図5に示した本発明の実施の形態1に係る構成によって得られる受光信号とを比較した波形図である。
【図7】遮光部材の配置の例を示した図である。
【図8】遮光部材の形状の一例を示した図である。
【図9】遮光部材の形状の他の例を示した図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る構成による効果を説明する図である。
【図12】実施の形態1に係る変位センサの他の構成例を示した図である。
【図13】実施の形態2に係る変位センサの他の構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。図1を参照して、実施の形態1に係る変位センサは、センサヘッド100と、当該センサヘッド100を制御するコントローラ200とを備える。
【0016】
センサヘッド100は、レーザダイオード1と、フォトダイオード2と、ビームスプリッタ3と、ピンホール7aが形成された絞り板7と、レンズ9(コリメートレンズ)と、遮光部材13と、音叉状の振動子8と、振動子8のアームに取り付けられたレンズ10(対物レンズ)と、振動子8を振動させるための駆動部11と、振動子8のアームの位置を検出するための位置検出部12とを備える。
【0017】
レーザダイオード1はコントローラ200から電流が供給されることによって一定の強度の光を発生させる。レーザダイオード1から発せられた光はビームスプリッタ3を透過してレンズ9に入射する。レーザダイオード1からの光はレンズ9によってコリメートされてレンズ10に入射する。レンズ10は、レンズ9からの光を計測対象物90の表面に集光させる。
【0018】
レンズ10は、振動子8のアームに支持される。振動子8の近傍には、振動子8を駆動するための駆動部11が設けられる。図1に示していないが、駆動部11はコイルおよびそのコイルに通電するための駆動回路を有する。コイルへの電流の供給とコイルへの電流の供給の停止とが一定の周期で繰返される。これにより振動子8のアームが振動する。
【0019】
レンズ10は、振動子8の振動により、計測対象物90に接近する方向および遠ざかる方向に移動する。位置検出部12は、光軸Xの方向に沿ったレンズ10の位置を検出する。この実施の形態では、光軸Xは、レーザダイオード1から発せられる光ビームの光軸であり、レンズ9,10の光軸でもある。
【0020】
レーザダイオード1から計測対象物90へ向けて照射された光は、当該計測対象物90によって反射される。計測対象物90からの反射光は、レンズ10、レンズ9、ビームスプリッタ3を介してフォトダイオード2に導かれる。
【0021】
ビームスプリッタ3は、計測対象物90からの反射光の光路をレーザダイオード1から発せられる光の光路から分離する。なおビームスプリッタに代えてハーフミラーを用いてもよい。反射光の光線が光軸X上を通る場合、その光線はビームスプリッタ3で反射して、ピンホール7aの中心軸を通る。
【0022】
絞り板7は、ビームスプリッタ3とフォトダイオード2との間に配置される。絞り板7にはピンホール7aが形成される。ビームスプリッタ3によってフォトダイオード2に導かれた反射光はピンホール7aを通過してフォトダイオード2に入射する。
【0023】
遮光部材13は、光軸Xと交差するように配置されて、光軸X付近の光を遮断する。遮光部材13は、ピンホール7aの中心軸に対して反射光の光軸が傾いた状態で、反射光にピンホール7aを通過させるための光軸調整部を実現する。このように反射光がピンホール7aを通過することによって、フォトダイオード2から出力される受光信号の線幅(半値全幅とする)を狭めることができる。したがって実施の形態1によれば、計測対象物の変位を高い精度で計測することができる。遮光部材13は、光を遮断するものに限定されず、光を弱めるもの(一例を示すと減光フィルター)であってもよい。
【0024】
コントローラ200は、駆動部11に信号を送り、駆動部11の動作を制御する。さらに、コントローラ200は、位置検出部12からの信号およびフォトダイオード2からの受光信号に基づいて、レンズ10の変位量と受光信号の強度とを対応付ける。これにより、コントローラ200は、受光信号の強度がピークに達したときのレンズ10の変位量を検出する。この変位量に基づいて、コントローラ200は、計測対象物90の表面の変位を測定する。
【0025】
なお、この明細書では「変位」とはレーザダイオード1の照射光の光軸方向における位置の変化を意味する。したがって、「変位」とは高さ方向の変化に限定されるものではない。たとえばレーザダイオード1の光軸方向が水平方向となるように光学系が構成されている場合には、「変位」とは水平方向の変化に対応する。
【0026】
図2は、図1に示した変位センサの測定原理を説明するための模式図である。図2を参照して、測定原理を分かりやすく説明するため、レーザダイオード1、フォトダイオード2およびビームスプリッタ3の図示を省略している。
【0027】
図示しないレーザダイオードから投射された光は、絞り板7のピンホール7aを通り、レンズ9およびレンズ10によって集められ、計測対象物90の表面に照射される。計測対象物90の表面で反射した光は、レンズ10およびレンズ9によって集められ、絞り板7の位置に到達する。ピンホール7aを通過する反射光の光量は、レンズ10の変位量に依存する。なお、上述のように、レンズ10を固定してレンズ9を変位させてもよい。
【0028】
図2(a)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の手前で焦点を結ぶ場合を示している。この場合には、計測対象物90の表面で反射した光が、レンズ9,10によって集められるが、ピンホール7aの手前で焦点を結ぶ。このため、ピンホール7aの位置ではピンホール7aの径よりも光スポットの径が大きくなり、ピンホール7aを通過する光の量が小さくなる。したがって受光信号の強度が小さくなる。
【0029】
図2(b)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の表面で焦点を結ぶ場合を示している。この場合には、計測対象物90の表面で反射した光は、レンズ9,10によって集められ、ピンホール7aの位置で焦点を結ぶ。このため、ピンホール7aを通過する光の量が最大となるので、受光信号の強度も最大となる。なお、この場合にはレーザダイオードから投射された光の光路と計測対象物90の表面で反射した光の光路とは一致する。ただし図2では、計測対象物90に照射される光と計測対象物90で反射した光とを分かりやすく示すために、これらの光路をわずかにずらして示している。
【0030】
図2(c)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の表面よりも内部の位置で焦点を結ぶ場合を示している。この場合にも、計測対象物90の表面からの反射光がピンホール7aの位置で形成するスポットは、ピンホール7aより大きくなる。したがってピンホール7aを通過する光の量が小さくなる。
【0031】
図2(a)〜図2(c)より、受光信号の強度は、レーザダイオードから投射された光の焦点位置が計測対象物90の表面に一致するときに最大となり、焦点位置が計測対象物90の表面と異なる場合には、最大値に比べて著しく小さくなることが分かる。図2の上半分に示したレンズ9の変位と受光信号の強度との関係は、上記の関係を表わしている。レンズ10の変位と計測対象物の変位との関係は予め求められている。したがって、受光信号の強度が最大になるときのレンズ10の変位から、計測対象物90の変位を求めることができる。
【0032】
焦点位置の計測対象物90の表面からのずれに対して受光信号の強度が大きく変化するほど、計測対象物90の変位を精度よく求めることができる。すなわち、図2の上半分に示した変位と受光信号の強度との関係において、受光信号波形の幅が細いほど変位の計測の分解能が高い。実施の形態1では、遮光部材13を設けることによって、高い分解能を得ることができる。
【0033】
図3は、図1に示した遮光部材13を省略した場合に得られる分解能の一例を説明した図である。
【0034】
図3(a)は、フォトダイオード2からの受光信号に電気的ノイズが重畳していることを示している。このような場合には、計測対象物が静止したままであっても、受光信号のピーク位置が測定ごとに異なりうる。すなわちピーク位置のぶれが生じる。このピーク位置のぶれの大きさが分解能に相当する。
【0035】
一方、拡散面を有する計測対象物の変位を測定する場合には、スペックルにより、図3(b)に示されるようにピーク位置がぶれる。このピーク位置のぶれの大きさが分解能に相当する。
【0036】
このように、分解能は電気的ノイズあるいはスペックルによるピーク位置のぶれによって低下する。このような問題を解決するためには、受光信号の線幅を狭くすることが有効である。受光信号の線幅を狭くする方法としては、たとえば、レンズ9および/またはレンズ10のNA(開口数)を大きくする方法あるいはピンホール7aの径を小さくする方法が考えられる。
【0037】
しかしながらレンズのNAを大きくするためには、たとえばレンズの外径を大きくする必要がある。このため、センサヘッドの大型化、あるいは部品コストの増加といった課題が生じ得る。一方、ピンホールの径を小さくした場合には、たとえば絞り板7のアラインメントが難しくなる。すなわちセンサヘッドの組み立て精度を確保することが難しくなる。また、ピンホールの径をより小さく設計するほど、ピンホールの形成が難しくなる。
【0038】
一方、実施の形態1によれば、遮光部材を配置することによって、受光信号の線幅を細くすることができる。また、後で詳細に説明するが、遮光部材の配置の自由度が高い。したがって、実施の形態1によれば上述の課題を生じさせることなく、分解能を改善できる。この点について、以下に詳細に説明する。
【0039】
図4は、遮光部材が配置されていない場合にピンホールを通過する光を説明する図である。図4(a)は共焦点状態を説明する図であり、図4(b)は、共焦点からずれた状態を説明する図である。図4を参照して、共焦点状態では、レーザダイオード(図示せず)からの光は、計測対象物90の表面において焦点を結び、計測対象物90の表面からの反射光はピンホール7aの位置において焦点を結ぶ。これにより、計測対象物90で反射されてピンホール7aを通過する反射光の光量が最大となる。これに対して、図4(b)では、レーザダイオード(図示せず)からの光は計測対象物90の手前の位置で焦点を結び、計測対象物90の表面からの反射光はピンホール7aの手前の位置において焦点を結ぶ。このため、ピンホール7aを通過する反射光の光量が減少する。焦点のずれに対して反射光の光量の減少が大きいほど受光信号の線幅が細くなる。
【0040】
しかしながら、焦点がずれた状態であっても、光軸Xの近傍の反射光ビーム20はピンホール7aを通過しやすい。一方、反射光ビームのうち、レンズ10およびレンズ9の端部の側を通過する光線は、ピンホール7aでけられる。すなわち、その光線は絞り板7によって遮られる。
【0041】
図5は、本発明の実施の形態1に係る構成による効果を説明する図である。図5(a)は共焦点状態を説明する図であり、図5(b)は、共焦点からずれた状態を説明する図である。図5を参照して、実施の形態1に係る構成では、遮光部材13が光軸Xと交わるように配置される。したがって、光軸Xの近傍の反射光ビーム20は遮光部材13によって遮られる。この結果、ピンホール7aを通過する反射光の光路が、ピンホール7aの中心軸に対して傾けられている。
【0042】
なお、図5に示した構成によれば、レーザダイオード(図示せず)からの光ビームの一部、すなわち光軸X近傍の光ビームが遮光部材13によって遮られる。このため光軸X付近の反射光ビーム(反射光ビーム20)は実質的に生じない。このため、上記のように、光軸Xの近傍の反射光ビーム20が遮光部材13によって遮られると説明する。
【0043】
反射光ビームのうち、レンズ10およびレンズ9の端部の側を通過する光線は、共焦点状態(図5(a))ではピンホール7aを通過できるのに対し、共焦点からずれた状態(図5(b))ではピンホール7aにけられる。このため、共焦点状態からの変化に応じて、ピンホール7aを通過する反射光の光量が大きく変化する。この結果、実施の形態1に係る構成によれば受光信号の線幅を狭くすることができる。
【0044】
図6は、図4に示した従来構成によって得られる受光信号と、図5に示した本発明の実施の形態1に係る構成によって得られる受光信号とを比較した波形図である。図6を参照して、共焦点状態における受光信号の強度が等しくなるように、各構成における受光信号の強度が調整されている。なお図6において「中央遮蔽」とは、実施の形態1に係る構成を意味する。レンズの位置が共焦点状態での位置から変化すると受光信号の強度もピーク強度から低下する。レンズの変位量が同じである場合、受光信号の強度の低下量は、本発明の実施の形態1に係る構成のほうが従来構成より大きい。したがって、本発明の実施の形態1に係る構成によれば受光信号の線幅が狭くなる。
【0045】
なお図1等では、遮光部材13は、レンズ9とレンズ10との間に配置されているが、遮光部材13の位置は特に限定されるものでない。レンズ9,10の光軸Xとピンホール7aの中心軸とが重なる(一致する)場合には、その光軸上の任意の個所に遮光部材13を配置できる。また、図1に示した構成では、レンズ9,10の光軸Xを通る反射光の光線はビームスプリッタ3によってピンホール7aの中心軸を通る。このような場合には、レンズ9,10の光軸Xおよびピンホール7aの中心軸の少なくとも一方に遮光部材13を配置すればよい。
【0046】
図7は、遮光部材の配置の例を示した図である。図7を参照して、遮光部材13は、たとえば、レンズ9とビームスプリッタ3との間の位置(位置A)、レンズ10と計測対象物90との間の位置(位置B)、ビームスプリッタ3とピンホール7a(絞り板7)との間の位置(位置C)、あるいはピンホール7a(絞り板7)とフォトダイオード2との間の位置(位置D)に配置される。いずれの場合においても、遮光部材13は、光軸X上あるいはピンホール7aの中心軸上に配置される。
【0047】
なお、遮光部材13の数は1つに限定されない。複数の遮光部材13を光軸X上あるいはピンホール7aの中心軸上に配置してもよい。
【0048】
図8は、遮光部材の形状の一例を示した図である。図8を参照して、遮光部材13は円形に形成される。遮光部材13は矩形であってもよいが、遮光部材の角の部分における光の回折により、計測対象物90の表面に照射される光スポットの径は大きくなる。一方、遮光部材13を円形にした場合には、遮光部材13の周囲における光の回折により、計測対象物90の表面に照射される光スポットの径は小さくなる。したがって、受光信号の線幅を狭くする効果がより一層高められる。
【0049】
また、遮光部材13は、たとえばレンズ10の表面に取り付けられる。なお、レンズ9の表面に遮光部材13が取り付けられてもよい。
【0050】
図9は、遮光部材の形状の他の例を示した図である。遮光部材13を参照して、遮光部材13Aは、中央遮蔽部131と、周囲遮蔽部132とを有する。中央遮蔽部131と周囲遮蔽部132との間に輪帯開口133が形成される。図8に示された構成と同様に、たとえば遮光部材13Aはレンズ10(レンズ9でもよい)に取り付けられる。遮光部材13に示されるように輪帯開口が形成されることによって、計測対象物90の表面に形成される光スポットの径を小さくすることができる。さらに、中央遮蔽部131によって光軸X付近の反射光ビームが遮蔽される。したがって、受光信号の線幅を細くする効果がより一層高められる。
【0051】
以上のように実施の形態1によれば、対物レンズ(レンズ10)およびコリメートレンズ(レンズ9)の光軸およびピンホール7aの中心軸のうちの少なくとも一方に遮光部材13を配置する。これによって受光信号の線幅を細くすることが可能になる。したがって、計測対象物の変位の計測において、電気的ノイズあるいはスペックルなどの影響を小さくすることが可能になるため、変位を計測する際の分解能を高めることができる。
【0052】
[実施の形態2]
図10は、本発明の実施の形態2に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。図10を参照して、実施の形態2に係る変位センサは、レーザダイオード1の光軸(X1で示す)が光軸Xに対して傾けられている点において実施の形態1に係る変位センサと異なる。実施の形態1と同じく、光軸Xはレンズ9,10の光軸に対応する。
【0053】
さらに、実施の形態2に係る変位センサは、遮光部材13が存在しない点において実施の形態1に係る変位センサと異なる。実施の形態2に係る変位センサの他の部分の構成は実施の形態1に係る変位センサの対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰返さない。
【0054】
図11は、本発明の実施の形態2に係る構成による効果を説明する図である。図11(a)は共焦点状態を説明する図であり、図11(b)は、共焦点からずれた状態を説明する図である。
【0055】
図11(a)、図11(b)を参照して、実施の形態2に係る構成では、レーザダイオード1の光軸X1がレンズ9,10の光軸Xに対して傾いている。このため計測対象物90表面で反射した光がレンズ9、10を通り、さらに、ピンホール7aを抜けるときに、当該反射光の光軸X2も光軸Xに対して傾いている。したがって、ピンホール7aの中心軸に対して反射光の光路が傾いている。なお、光軸X2の光軸Xに対する傾きの角度は、光軸X1の光軸Xに対する傾きの角度に等しい。
【0056】
実施の形態2に係る構成においても、レンズ9,10の中央を通過する反射光の成分が存在しない。これにより実施の形態1の構成による効果と同様の効果が得られる。したがって、実施の形態2によれば共焦点状態から焦点がずれた状態においてピンホール7aを通過する反射光の光量を減らすことができる。この結果、受光信号の線幅を狭くすることができる。
【0057】
なお、上記の各実施の形態では、コリメートレンズが固定されて、対物レンズが振動子によって変位している。ただしコリメートレンズを振動子によって変位させて、対物レンズを固定してもよい。
【0058】
また、本発明は、共焦点光学系を用いた変位センサに対して適用可能である。共焦点光学系の構成は上記の実施の形態に示された構成に限定されるものではない。たとえば、センサヘッドは以下のような光学系によって構成されてもよい。
【0059】
図12は、実施の形態1に係る変位センサの他の構成例を示した図である。図12を参照して、レーザダイオード1から計測対象物90に投射される光と、計測対象物90により反射された光とが共通のピンホール(7a)を通過する。すなわちピンホール7aは、実質的な光源となり、また、計測対象物90での反射光に対する絞りとなっている。これにより、光源と絞りとが同一のもので構成されるため、両者の位置ずれに起因する計測誤差の発生を抑制することができる。
【0060】
図12に示した構成では、レーザダイオード1の発光点1aから発せられた光はレンズ4によってコリメートされる。ビームスプリッタ3は、レンズ4によってコリメートされた光を透過させる。ビームスプリッタ3を透過した光はレンズ5によって、絞り板7に設けられたピンホール7aに向けて集光され、ピンホール7aを通過する。
【0061】
レーザダイオード1から計測対象物90へ向けて照射された光は、当該計測対象物90によって反射される。計測対象物90からの反射光は、レンズ9,10によって絞り板7に設けられたピンホール7aに向けて集光される。ピンホール7aを通過した光は、レンズ5によってコリメートされてビームスプリッタ3に入射する。
【0062】
ビームスプリッタ3は、レンズ5からの光の光路を、レーザダイオード1から発せられる光の光路から分離する。ビームスプリッタ3によって反射した光はレンズ6によって集光されてフォトダイオード2の受光面2aに入射する。
【0063】
この構成では、光軸Xは、レーザダイオード1の光軸でもあり、ピンホール7aの中心軸でもあり、レンズ9,10の光軸でもある。遮光部材13は、たとえばレンズ9とレンズ10との間に設けられる。ただし、遮光部材13は、レンズ9とピンホール7a(絞り板7)との間の位置、レンズ10と計測対象物90との間の位置、レンズ5とピンホール7a(絞り板7)との間の位置、ビームスプリッタ3とレンズ6との間の位置、あるいはレンズ6とフォトダイオード2との間の位置に配置されてもよい。
【0064】
図13は、実施の形態2に係る変位センサの他の構成例を示した図である。図13を参照して、レーザダイオード1の光軸X1は、レンズ9,10の光軸Xに対して傾けられている。光軸Xは、ピンホール7aの中心軸でもある。レーザダイオード1から発せられた光ビームは、ピンホール7aに対して傾斜した状態でピンホール7aを通過する。一方、計測対象物90からの反射光ビームがピンホール7aを通過する際にも、反射光ビームの光軸X2は光軸Xに対して傾いている。
【0065】
図12および図13に示された構成によれば、レーザダイオード1から計測対象物90に投射される光と、計測対象物90により反射された光とが共通のピンホール(ピンホール7a)を通過する。すなわちピンホール7aは、実質的な光源となり、また、計測対象物90での反射光に対する絞りとなっている。
【0066】
さらに本発明は共焦点光学系であれば反射型の光学系に限定されず、透過型の光学系に対して適用可能である。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
1 レーザダイオード、1a 発光点、2 フォトダイオード、2a 受光面、3 ビームスプリッタ、4〜6,9,10 レンズ、7 絞り板、7a ピンホール、8 振動子、11 駆動部、12 位置検出部、13,13A 遮光部材、20 反射光ビーム、90 計測対象物、100 センサヘッド、131 中央遮蔽部、132 周囲遮蔽部、133 輪帯開口、200 コントローラ、X,X1,X2 光軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物に光を照射するための投光部と、
前記投光部から前記計測対象物に照射される光を集めるための対物レンズと、
前記計測対象物に光が照射されることによって生じた反射光を受ける受光部と、
前記反射光の光路上に開口が形成された第1の遮光部材と、
前記対物レンズと共通の光軸に配置され、前記投光部から照射された光が前記計測対象物の表面で焦点を結んだときに、前記反射光が前記開口の位置において焦点を結ぶように前記反射光を集光するコリメートレンズと、
前記投光部から前記計測対象物に照射された光が前記計測対象物の表面で焦点を結ぶように前記対物レンズあるいは前記コリメートレンズを変位させるための振動子とを備え、
前記開口の中心軸に対して前記反射光の光路を傾かせるように構成された、変位センサ。
【請求項2】
前記変位センサは、
光を遮断あるいは弱めるための第2の遮光部材をさらに備え、
前記第2の遮光部材は、前記対物レンズおよび前記コリメートレンズの光軸および前記開口の前記中心軸の少なくとも一方に配置される、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記第2の遮光部材は、円形の形状を有する、請求項2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記第2の遮光部材は、
円形に形成された第1の部材と、
前記第1の部材と同心上に配置された、輪環状の第2の部材とを有する、請求項2に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記投光部の光軸が、前記対物レンズおよび前記コリメートレンズの光軸に対して傾いた方向に向けられている、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項1】
計測対象物に光を照射するための投光部と、
前記投光部から前記計測対象物に照射される光を集めるための対物レンズと、
前記計測対象物に光が照射されることによって生じた反射光を受ける受光部と、
前記反射光の光路上に開口が形成された第1の遮光部材と、
前記対物レンズと共通の光軸に配置され、前記投光部から照射された光が前記計測対象物の表面で焦点を結んだときに、前記反射光が前記開口の位置において焦点を結ぶように前記反射光を集光するコリメートレンズと、
前記投光部から前記計測対象物に照射された光が前記計測対象物の表面で焦点を結ぶように前記対物レンズあるいは前記コリメートレンズを変位させるための振動子とを備え、
前記開口の中心軸に対して前記反射光の光路を傾かせるように構成された、変位センサ。
【請求項2】
前記変位センサは、
光を遮断あるいは弱めるための第2の遮光部材をさらに備え、
前記第2の遮光部材は、前記対物レンズおよび前記コリメートレンズの光軸および前記開口の前記中心軸の少なくとも一方に配置される、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記第2の遮光部材は、円形の形状を有する、請求項2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記第2の遮光部材は、
円形に形成された第1の部材と、
前記第1の部材と同心上に配置された、輪環状の第2の部材とを有する、請求項2に記載の変位センサ。
【請求項5】
前記投光部の光軸が、前記対物レンズおよび前記コリメートレンズの光軸に対して傾いた方向に向けられている、請求項1に記載の変位センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−189547(P2012−189547A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55489(P2011−55489)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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