説明

変位測定装置および速度測定装置

【課題】高精度な変位測定装置を提供する。
【解決手段】移動物体102の変位量を測定する変位測定装置100であって、
発光領域101から発せられた光束で移動物体102を照射する光源と、移動物体102の移動方向において複数の受光領域を備え、移動物体102の凹面103により反射された光束を結像させて受光するフォトダイオードアレイ104、105と、光束を結像させてフォトダイオードアレイ104、105に形成された発光領域像106の移動量から、移動物体102の変位量を測定する測定手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動物体の変位量および速度を非接触で測定する変位測定装置および速度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動物体の変位量を非接触に検出する方式として、以下の2つの方法が知られている。一つは、移動物体にコヒーレントな光を照射して反射散乱された光束の複雑な干渉によるスペックルパターンを生成し、移動物体の移動に伴うスペックルパターンの移動に基づき移動物体の変位や速度を検出する方法である。もう一つは、移動物体に対して異なる入射角でコヒーレントな光を照射し、反射散乱時に受ける光周波数ドップラーシフトの差に基づいて、移動物体の速度を求める方法である。ところが、上記の方法では、コヒーレント光源として用いられるLDやVCSELの信頼性面での課題や、装置構成の複雑さによるコスト面の課題等がある。このため、インコヒーレントな光源を用い、撮像した物体の変位量および速度を検出する方法が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58−113762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された速度測定装置では、移動物体の表面からの反射光は結像系を介していないため、受光部上の光学パターン像は不鮮明になる。このため、受光部のフォトダイオードアレイで検出される信号の振幅は低く、信号品位としてのSN比が劣化する。その結果、光学パターン像の変位量の検出精度が低下し、速度の測定精度が低下してしまう。また、光学パターン像の鮮明化のために測定装置にレンズ等の結像系を追加すると、部品点数の増加によるコストアップや装置の小型化が妨げられる。
【0005】
そこで本発明は、高精度な変位測定装置および速度測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての変位測定装置は、移動物体の変位量を測定する変位測定装置であって、発光領域から発せられた光束で前記移動物体を照射する光源と、前記移動物体の移動方向において複数の受光領域を備え、前記移動物体の凹面により反射された光束を結像させて受光する受光素子と、前記光束を結像させて前記受光素子に形成された発光領域像の移動量から、前記移動物体の前記変位量を測定する測定手段とを有する。
【0007】
本発明の他の側面としての速度測定装置は、前記変位測定装置を備え、所定時間における前記移動物体の変位量又は所定距離を通過する時間から該移動物体の速度を検出する。
【0008】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高精度な変位測定装置および速度測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における変位測定装置の概略構成図である。
【図2】実施例1の変位測定装置における発光領域像の生成原理の説明図である。
【図3】実施例1において、移動物体の移動量と発光領域像の移動量との関係を示す図である。
【図4】実施例1において、移動物体の表面に周期的に配列した凹面を示す図である。
【図5】実施例2における変位測定装置の概略構成図である。
【図6】実施例3における速度測定装置の概略構成図である。
【図7】実施例3において、データに時間遅延を与えるプロセスのブロック図である。
【図8】実施例3における別の速度測定装置400aの概略構成図である。
【図9】実施例3における別の速度測定装置400bの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0012】
まず、本発明の実施例1における変位測定装置について説明する。図1は、本実施例における変位測定装置の概略構成図である。図1において、100は移動物体の変位量を測定する変位測定装置である。101は変位測定装置100に設けられた光源の発光領域101である。発光領域101から発せられた光束で移動物体を照射する。発光領域101とは、例えば、ベアチップLEDの発光面上の積層電極に形成された開口など、マスクにより作られた発光パターンを示す。また発光領域101には、VCSELなどの面発光光源の発光面や、LDの1μm〜2μm程度の発光面も含まれる。
【0013】
102は移動物体である。移動物体102は、変位測定装置100による変位量の測定対象である。移動物体102は、Y方向に移動可能であり、光源の発光領域101からの発散光により照射される。移動物体102に照射された発散光は、移動物体102の凹面103において反射および集光され、フォトダイオードアレイ104、105(受光素子)上で発光領域像106を結像する。図1に示されるように、受光素子は、移動物体102の移動方向(Y方向)において複数の受光領域(複数のフォトダイオードアレイ104、105)を備え、移動物体102の凹面103により反射された光束を結像させて受光する。また、変位測定装置100は、凹面103により反射された光束を結像させて受光素子に形成された発光領域像106の移動量から、移動物体102の変位量を測定する測定手段(不図示)を備える。
【0014】
凹面103は、光源の発光領域101上の発光点から凹面103までの光路長をL1、凹面103からフォトダイオードアレイ104、105までの光路長をL2としたとき、以下の式(1)を満たす焦点距離Fを有する凹面を含むことが望ましい。
【0015】
−1/L1−1/L2=1/F … (1)
また、フォトダイオードアレイ104、105は、それぞれ、移動物体102の移動方向(Y方向)において幅Pd/2、間隔Pd(周期幅)で交互に配置されている。また、フォトダイオードアレイ104、105は、同様の構成で空間的に移動物体102の移動方向に対して互いにPd/2ずらして配置されている。発光領域101の幅Weは、フォトダイオードアレイ104、105の幅に関連付けられて決定される。この詳細は後述する。
【0016】
次に、図2を参照して、変位測定装置100における発光領域像106の生成原理について説明する。まず、発光領域像106の生成位置にについて説明する。図2(a)に示される発光領域101を備えた光源から出射された発散光は、図2(b)に示される移動物体102の表面における各々の凹面103により反射および集光される。このため、図2(d)に示されるように、移動物体102の表面における各々の凹面103の位置に対応した位置関係で、フォトダイオードアレイ104、105の面上に光源の発光領域像106が結像される。
【0017】
次に、移動物体102の凹面103の形状と発光領域像106の結像現象について説明する。一般的な物の表面には、図2(b)に示されるように、様々な形状の凹面103が分布している。また、各々の凹面103の深さは、図2(b)のA−A断面図である図2(c)に示されるように、凹面103によって異なる。このように、様々な形状の凹面103が存在するが、移動物体102の凹面103の形状から決定される最適な観察位置に受光部表面(フォトダイオードアレイ104、105)を配置すると、発光領域像106が結像される場合がある。これは、凹面103が式(1)を満たす焦点距離Fを有する場合である。
【0018】
例えば、変位測定装置100(受光部表面)と移動物体102との間の距離が1〜3mm程度の領域では、凹面103の直径が100μm程度で深さが2μm程度以下の形状が、発光領域像106の結像に寄与する。また、受光部表面と移動物体102との間の距離が4〜6mm程度の領域では、凹面103の直径が200μm程度で深さが数μm程度の形状が、発光領域像106の結像に寄与する。このように、観察位置に応じて結像に寄与する凹面103内の領域が異なる。そのため、凹面103が、上述のように曲面の複合形状からなる場合、ある程度、受光部表面と移動物体102との間の距離が変化しても、発光領域像106は結像される。
【0019】
次に、結像される発光領域像106のサイズについて説明する。前述したように、凹面103が式(1)を満たす焦点距離Fを有する場合、発光領域像106がフォトダイオードアレイ104、105上に結像される。しかし、凹面103は理想的な曲面ではなく、複数の曲面の複合形状であることが多い。この場合、発光領域像106は、式(1)を満たす焦点距離Fの凹面103により結像される発光領域像と、複数の曲面の複合形状による複数のデフォーカスした発光領域像とが重なり合って形成される。このような現象により、フォトダイオードアレイ104、105上に結像される発光領域像106は、理想的に結像される発光領域101の幅に対して1.5〜2倍程度の幅を有する。
【0020】
本来、発光領域像106とフォトダイオードアレイ104、105の幅が一致していれば、光利用効率の高い検出が可能となる。しかし上述の現象のため、結像された発光領域像106は、フォトダイオードアレイ104、105のそれぞれの幅Pd/2を越えて、隣接したフォトダイオードアレイ104、105に発光領域像106がはみ出す。このため、後述する信号検出の原理により、検出される信号振幅が減少して、速度検知精度が低下する。ここで、Weを移動物体102の移動方向(Y方向)における光源の発光領域101の幅とする。上記現象により光源の発光領域幅Weとフォトダイオードアレイ間隔Pdとの比であるWe/Pdが0.87以上になってしまうと、受光面上で像の移動方向のサイズがフォトダイオードアレイ間隔幅以上となる。結果として移動体の変位に対する検出信号振幅が1割以上低下することで、変位の決定精度が低下するといった問題が生じる。その為、We/Pdは0.87以下であることが望ましい。
【0021】
また、その対策として光源の発光領域101を小さくしすぎると、隣接したフォトダイオードアレイに発光領域像がはみ出さなくなる。しかしWe/Pdが0.275よりも小さい時、発光領域の縮小に伴う検出光量低下により検出信号振幅が1割以上低下し移動体の変位量の決定精度が低下するといった問題が生じる。したがって、変位検出精度を得る為には以下の式(2)で表される条件を満たすように設定されることが好ましい。
【0022】
0.275≦We/Pd≦0.87 … (2)
次に、図3を参照して、発光領域像106の変位原理について説明する。図3は、移動物体102の移動量とフォトダイオードアレイ表面301上の発光領域像106の移動量との関係を示す。図3(a)は時刻T1における移動物体102と発光領域像106との位置関係であり、図3(b)は時刻T2における移動物体102と発光領域像106との位置関係である。図中の黒塗りの矢印は、時刻差(T2−T1)の間の移動物体102の移動量を示し、白抜きの矢印は時刻差(T2−T1)でのフォトダイオードアレイ表面301上での発光領域像106の移動量を示す。
【0023】
移動物体102の移動量と発光領域像106の移動量との関係は、移動物体:発光領域像=1:(L1+L2)/L1で表される。本実施例では、光源の発光領域101上の発光点から移動物体102の表面(凹面103)までの光路長L1と、移動物体102の表面から受光素子であるフォトダイオードアレイ104までの光路長L2とが、互いに等しい。このため、移動物体102の移動量と発光領域像106の移動量との関係は、移動物体:発光領域像=1:2となる。上記の原理に基づき、フォトダイオードアレイ表面301上に結像された発光領域像106は、移動物体102の移動に伴って移動する。
【0024】
次に、図1を参照して、移動物体102の変位量検出方法について詳細に説明する。まず、フォトダイオードアレイの構成および信号検出方法について説明する。移動物体102の凹面103によってフォトダイオードアレイ104、105上に発光領域像106が結像される。フォトダイオードアレイ104、105上に生成された発光領域像106からなる二次元光学パターン像は、フォトダイオードアレイ104、105により光電変換され、1次元の光強度を示す電圧値に変換される。そして、フォトダイオードアレイ104を構成する複数のフォトダイオードの検出電圧値の和を求め、空間フィルタ作用と合わせて、フォトダイオードアレイ104の検出電圧値V1が決定される。同様に、フォトダイオードアレイ105を構成する複数のフォトダイオードの検出電圧値の和を求め、空間フィルタ作用と合わせて、フォトダイオードアレイ105の検出電圧値V2が決定される。そして、変位測定装置100は、両フォトダイオードアレイ104、105の検出電圧値の差V1−V2(フォトダイオードアレイ104、105の出力の差動)を所定の時刻における電圧値として出力する。
【0025】
次に、移動物体102の移動に伴うフォトダイオードアレイ104、105上の光学パターン像の移動から、移動物体102の変位量を検出する方法について説明する。今、変位測定装置100の検出電圧値V1=Va、V2=Vbであり、検出電圧値の差V1−V2=Va−Vb>0で正の電圧値が得られている場合を考える。このとき、光学パターン像がPd/2だけ移動すると、強度分布の位相は180°反転し、検出電圧値は移動前後で正負反転して負の電圧値となる。すなわち、検出電圧値の差V1−V2≒Vb−Va<0である。
【0026】
さらに光学パターン像がPd/2、すなわちフォトダイオードアレイ104、105の間隔1周期分だけ移動すると、検出電圧値の符号は正負反転して正の電圧値となる。すなわち、V1−V2≒Va―Vb>0である。このように、光学パターン像がフォトダイオードアレイ104、105上で間隔Pd(変位量)だけ進むと、1周期分の波形が検出される。すなわち、移動物体102の移動に伴い、変位測定装置100で検出される出力電圧変化の周期の数をカウントすることで、フォトダイオードアレイ104、105上の光学パターン像の移動量を検出することができる。これにより、前述した移動物体102と発光領域像106との関係、および、検出された光学パターン像の移動量に基づき、図3を参照して説明したように、移動物体102の変位量を検出することができる。
【0027】
本実施例では、検出信号の振幅の増大させるために差動検出型のフォトダイオードアレイの構成を採用しているが、変位測定用のフォトダイオードアレイの構成はこれに限定されるものではない。例えば、従来のように、フォトダイオードアレイを用いて、光学パターン像の1次元強度分布がアレイ上を変位する様子から変位量を検出してもよい。また、差動用のフォトダイオードアレイ105を用いず、差動増幅を行わなくてもよい。
【0028】
また、凹面103は、移動物体102の上に離散的又は連続的に設けられており、以下の式(3)を満たす曲率半径を含む形状であることが好ましい。
【0029】
R=(L1+L2)/2 … (3)
ここで、Rは凹面103の曲率半径である。
【0030】
また、移動物体102に含まれる凹面103は、球面形状のような2次元形状に限定されるものではなく、反射型のシリンドリカル面のような1次元形状でもよい。さらに図4に示されるように、移動物体102に凹面形状を故意に周期的に形成してもよい。このとき、凹面103aの配列周期Plは、以下の式(4)を満たす。
【0031】
Pl=Pd/2×k … (4)
ただし、kは正の整数である。このように、フォトダイオードアレイ104、105上に結像された周期的な発光領域像106を用いて、移動物体102の変位量を検出してもよい。
【実施例2】
【0032】
次に、本発明の実施例2について説明する。図5は、本実施例における変位測定装置100aの概略構成図である。本実施例の変位測定装置100aは、光源に複数の発光領域401(偶数個の発光領域)を間隔Peで配置している点で、実施例1の変位測定装置100とは異なる。本実施例では、複数の発光領域401を設けることによる、発光領域像の変化および検出信号への影響について説明する。
【0033】
例えば、光路長L1=L2の場合、一つの凹面103により結像される発光領域像は等倍結像され、間隔Pe(ピッチ)を有する複数の発光領域像402が形成される。このように、複数の光源を設けることでランダムな光学パターン像中に所定の間隔の像を生成することができる。結像された発光領域像402の間隔Peとフォトダイオードアレイ104、105の間隔Pdとを合わせることで、間隔を空けて配置したフォトダイオードアレイ104、105の空間フィルタとしての効果を有効に生かすことができる。すなわち、仮に凹面103がランダムな周期である場合でも、発光領域像402に発光領域の周期性を持たせ、像検出のフォトダイオードアレイ周期と一致させることにより、結果として検出信号振幅を増加させ、変位検出制度の向上が図れる。
【0034】
また、光源又はフォトダイオードアレイのZ軸方向の実装精度により、複数の発光領域像402の結像倍率が変わり、複数の発光領域像402の発光領域像の間隔が所定の間隔Peからずれてしまうことがあり得る。この場合、信号振幅が減衰して速度検出精度の誤差が増大する。ずれ量が大きい場合、フォトダイオードアレイ104、105の検出電圧値が等しくなり、各フォトダイオードアレイの検出電圧値の差動によって信号が得られなくなることもある。そこで、有効な変位検出信号を得るためには、発光領域像402の間隔Peおよびフォトダイオードアレイ104、105の間隔Pdは、以下の式(5)で表される条件を満たすことが好ましい。
【0035】
(1−1/2/(N−1))×L1/L2 < Pe/Pd < (1+1/2/(N−1))×L1/L2 … (5)
ただし、Nは2以上の整数であり、発光領域の個数を示す。本実施例では、発光領域数を2点として説明しているが、上記の式(5)を満たすように設定されていればこれに限定されるものではない。また、空間フィルタの作用を得るには、式(5)を満足する発光領域像402の間隔Peの整数倍の周期を含む発光領域の配置であればよい。変位量の検出原理は実施例1と同様であるため、ここでの説明を省略する。
【0036】
本実施例では、検出信号の振幅を増大させるために差動検出型のフォトダイオードアレイの構成を採用しているが、変位測定用のフォトダイオードアレイの構成は、実施例1と同様に、これに限定されるものではない。例えば、フォトダイオードアレイを用いて、光学パターン像の1次元強度分布がアレイ上を変位していく様子から変位量を検出してもよい。また、作動用のフォトダイオードアレイ105を用いずに差動増幅を行わなくてもよい。また、移動物体102の凹面103は球面形状に限定されるものではなく、図4に示されるような反射型のシリンドリカル面である凹面が故意に周期的に形成されていてもよい。
【実施例3】
【0037】
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例では、実施例1、2で説明した変位測定装置100、100aを用い、移動物体102の速度を測定する方法について説明する。図6は、本実施例における速度測定装置400の概略構成図である。速度測定装置400は、所定時間における移動物体102の変位量又は所定距離を通過する時間から移動物体102の速度を検出するように構成される。
【0038】
速度測定装置400は、複数の発光領域501、および、フォトダイオードアレイグループ502、503を備える。フォトダイオードアレイグループ502は、フォトダイオードアレイ504、および、差動検出用のフォトダイオードアレイ505を含む。フォトダイオードアレイグループ503は、フォトダイオードアレイ506、および、差動検出用のフォトダイオードアレイ507を含む。フォトダイオードアレイグループ502、503は、互いに間隔Dだけ離れて配置されている。各フォトダイオードアレイグループ上に生成された複数の発光領域像402からなる二次元光学パターン像は、フォトダイオードアレイにより光電変換され、1次元の光強度が電圧値に変換される。そして、フォトダイオードアレイ504を構成する複数のフォトダイオードの検出電圧値の和として、フォトダイオードアレイ504の検出電圧値V1が決定される。同様に、フォトダイオードアレイ505を構成する複数のフォトダイオードの検出電圧値の和として、フォトダイオードアレイ505の検出電圧値V2が決定される。そして、フォトダイオードアレイグループ502は、これらの検出電圧値の差V1−V2を、所定の時刻における電圧値として出力する。フォトダイオードアレイグループ503も同様に、所定の時刻における電圧値を出力する。
【0039】
次に、速度の検出方法について説明する。移動物体102がY軸方向に移動している場合を考える。このとき、フォトダイオードアレイグループ502によって、先行して光学パターン像の移動による変位信号が検出される。続いて、これと同位置における光学パターン像の移動による変位信号が、フォトダイオードアレイグループの間隔Dと、移動物体102の速度に依存した時間だけ遅延して、フォトダイオードアレイグループ503により検出される。ここで、各フォトダイオードアレイグループにて検出された同一信号の検出時間差Tが正確に得られれば、移動物体102の速度を算出することができる。
【0040】
次に、図7を参照して、速度の検出方法について具体的に説明する。図7は、データに時間遅延を与えるプロセスのブロック図である。フォトダイオードアレイグループ502により先行して検出された、所定の時刻間の移動物体102の移動に伴う検出出力の変動データ(強度分布データ)をP1とする。同様に、遅れてフォトダイオードアレイグループ503により検出された、所定の時刻間の移動物体102の移動に伴う検出出力の変動データ(強度分布データ)をP2とする。変動データP1、P2は、比較器508により、時刻に対する電圧値同士が比較される。
【0041】
ここで、最適なデータの時間遅延量が変動データP1に与えられている場合、比較器508による比較の結果、各フォトダイオードアレイグループの時刻に対する変動データP1、P2が一致する。一方、変動データP1、P2が一致しない場合、速度検出回路601は時間遅延回路602に対して時間遅延量に対する補正値が与えられる。そして、補正された時間遅延量が与えられた変動データP1を用いて、再び比較器508にて比較が行われる。このようなループにより、速度検出回路601は検出時間差Tを決定する。そして、フォトダイオードアレイグループ502、503の間隔Dから、以下の式(6)を用いて移動物体102の速度Vを求めることができる。
【0042】
V=D/T/{(L1+L2)/L1} … (6)
本実施例は、実施例2における変位測定装置100aを用いて速度測定装置400を構成した例を説明したが、これに限定されるものではなく、実施例1の変位測定装置100を用いて速度測定装置400を構成してもよい。また、フォトダイオードアレイの構成についても、実施例1、2で説明したように、差動検出型のフォトダイオードアレイの構成に限定されるものではない。
【0043】
図8は、本実施例における別の速度測定装置400aの概略構成図である。図8に示されるように、速度測定装置400aは、フォトダイオードアレイグループ502、503を入れ子に配置している。また、フォトダイオードアレイグループ502、503の間隔Dを、フォトダイオードアレイグループ自体の長さよりも短く設定している。
【0044】
図9は、本実施例における別の速度測定装置400bの概略構成図である。図9に示されるように、フォトダイオードアレイグループ502、503を同一基板上に配置せず、実施例1、2にて説明した2つの変位測定装置を互いに所定間隔Dだけ離して配置してもよい。ただし、この場合の速度算出式は、変位測定装置のフォトダイオードグループの中心間隔Dにおける通過時間Tから、V=D/Tにより求められる。
【0045】
上記各実施例によれば、移動物体の凹面により受光素子面上(フォトダイオード上)に結像された発光領域像を利用することにより、明瞭な光学パターン像を得ることができる。これにより、信号品位としてSN比が良好な移動物体の変位検知信号が得られ、その結果、変位量および速度の検出精度を向上させることが可能となる。また、検出系にレンズなどの結像系を用いないため、小型・軽量・低コスト化が可能となる。このため、高精度な変位測定装置を提供することができる。
【0046】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
101 発光領域
102 移動物体
103 凹面
104、105 フォトダイオードアレイ
106 発光領域像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動物体の変位量を測定する変位測定装置であって、

発光領域から発せられた光束で前記移動物体を照射する光源と、
前記移動物体の移動方向において複数の受光領域を備え、前記移動物体の凹面により反射された光束を結像させて受光する受光素子と、
前記光束を結像させて前記受光素子に形成された発光領域像の移動量から、前記移動物体の前記変位量を測定する測定手段と、を有することを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】

以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。

0.275≦We/Pd≦0.87

ただし、Weは前記移動物体の移動方向における前記発光領域の幅であり、Pdは前記移動物体の移動方向において隣り合う受光領域の間隔である。
【請求項3】
前記光源は、前記移動物体の移動方向において偶数個の前記発光領域を備え、
以下の条件を満たすことを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。

(1−1/2/(N−1))×L1/L2 < Pe/Pd < (1+1/2/(N−1))×L1/L2

ただし、L1は前記光源の発光点から前記移動物体の前記凹面までの光路長、L2は前記移動物体の前記凹面から前記受光素子までの光路長、Peは前記移動物体の移動方向において隣り合う受光領域の間隔、Nは発光領域の個数であって2以上の偶数である。
【請求項4】
前記凹面は、前記移動物体の上に離散的又は連続的に設けられており、以下の条件を満たす曲率半径を含む形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の変位測定装置。

R=(L1+L2)/2
ただし、Rは前記凹面の曲率半径、L1は前記光源の発光点から前記移動物体の前記凹面までの光路長、L2は前記移動物体の前記凹面から前記受光素子までの光路長である。
【請求項5】
前記凹面は、以下の条件を満たすように配列されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の変位測定装置。
Pl=Pd/2×k
ただし、Plは前記凹面の配列周期、Pdは前記移動物体の移動方向において隣り合う受光領域の間隔、kは正の整数である。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の変位測定装置を備え、
所定時間における前記移動物体の変位量又は所定距離を通過する時間から該移動物体の
速度を検出することを特徴とする速度測定装置。


【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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