説明

変性性眼疾患の処置のための、PDE4を伴う方法、組成物及びそのスクリーニング

本発明は、生物学、遺伝子学及び医学の分野に関する。特に、本発明は、神経変性性疾患の検出、特性決定及び/又は処置(もしくは管理)のための新規な方法に関する。本発明はまた、前述の疾患で有効な化合物の同定又はスクリーニングの方法に関する。本発明はさらに、上述の方法を実施するために使用される化合物、遺伝子、細胞、プラスミド又は組成物に関する。本発明は、神経変性性疾患におけるホスホジエステラーゼ4B、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)及びGABA(A)型GABA受容体の役割の同定に基づく。加えて、本発明は、前記障害のための治療、診断又は実験マーカ又は標的としてのそれらの使用を概説する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、遺伝子学及び医学の分野に関する。特に、本発明は、神経変性性疾患の検出、特性決定及び/又は処置(もしくは管理)のための新規な方法に関する。本発明はまた、前述の疾患で有効な化合物の同定又はスクリーニングの方法に関する。本発明はさらに、前記方法を実施するために使用される化合物、遺伝子、細胞、プラスミド又は組成物に関する。特に、本発明は、神経変性性眼疾患におけるホスホジエステラーゼ4B及び末梢型ベンゾジアゼピン受容体の役割の同定に基づき、前記障害のための治療、診断又は実験マーカ又は標的としてのそれらの使用を記載する。
【0002】
多くの神経変性性疾患は、アポトーシス又はプログラム細胞死の現象に関連するコンポーネント又は段階を有するものとして説明されている。例は、中枢神経系の神経変性性疾患(たとえば筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病又はアルツハイマー病)及び末梢神経変性性疾患、特に眼疾患を含む。現在、このような疾病に対しては対症的処置、特に関連の炎症現象の処置が存在するが、特に基礎にある機構及び代謝経路の複雑さならびに原因の多様性のせいで、これらの障害の原因に対する処置法はない。
【0003】
出願WO03/045949は、神経変性性疾患に使用することができるGSK3阻害剤を記載している。出願WO01/49321及びWO01/58469は、神経性疾患を処置するためのTNH阻害剤化合物の使用を提案している。出願WO00/15222は、勃起不全の処置におけるPDE5阻害剤の使用を記載している。出願EP583821は、頭蓋液量の調節不全を処置するための療法を提供している。
【0004】
本出願人によって出願された国際特許出願PCT/FR02/02861は、神経毒性の新規な分子標的及び神経変性性疾患の処置のための新規な療法を記載している。この手法は、ホスホジエステラーゼ4型の活性又は発現を変調させ、末梢型ベンゾジアゼピン受容体及びGABA(A)受容体の調節を改変することに基づく。
【0005】
今、本出願は、神経変性性眼疾患の新規な治療戦略に関する。この治療戦略は、神経細胞における興奮毒性及びアポトーシスの開始、発生及び進行と相関し、神経変性性眼疾患に特に関連する、本発明者らによって同定された一つ以上の代謝経路を変調することに基づく。
【0006】
より具体的には、DATAS法(出願WO99/46403に記載)にしたがって、60日齢のALSモデル動物の脳及び脊髄におけるRNAスプライシング変化のレパートリーを定性的ディファレンシャルスクリーニングによって同定した。このレパートリーは、発症に関連する選択的スプライシングイベントの最大値を考慮に入れるために、神経細胞を予備的に単離することなく、脳及び脊髄試料から抽出したRNAから構築した。このようにして生成されたレパートリーは、興奮毒性現象におけるキーコンポーネント、たとえばカリウム及びカルシウムチャネルを伴う、200を超える別個の配列を含有する。このレパートリーにおける配列の特異性は、90日齢の動物に対して実施された同じ遺伝子発現の定性的ディファレンシャル分析が、特に種々の興奮毒性マーカが不在である異なるレパートリーにつながったという事実によって確認される。スプライシング改変の分析は、分子イベントが疾病の段階に応じて異なるということを確認させる。
【0007】
特に注目すべき、かつ予想外なことに、60日齢の対照及びトランスジェニック動物からのRNAに対するDATASの使用は、ホスホジエステラーゼ4B、タンパク質AKAP1(Aキナーゼ固着タンパク質)及びタンパク質GABA(A)RAPL1(GABA(A)受容体関連タンパク質様1)のmRNAに由来するcDNA断片の単離につながった。cAMPを加水分解することができるPDE4Bタンパク質は、細胞内cAMP濃度の調節に関与している。AKAP1タンパク質は、タンパク質キナーゼA(cAMPによって活性化)の調節サブユニットをミトコンドリア膜に固着し、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)との相互作用を介してミトコンドリア移行孔の活性を調節する。
【0008】
これにより、本出願は、興奮毒性過程及び細胞死の発生におけるcAMP依存性シグナル伝達カスケード、PBR調節及びGABA(A)受容体依存性シグナル伝達の関与を実証する。
【0009】
より具体的には、得られる結果は、対応するRNAの構造的修飾、特に3′非コード領域中の領域の欠失に関連する、病的神経組織中のより高レベルのPDE4B発現を示す。この発見は、DATASによって同定された配列中のmRNA不安定化配列の存在と全く符合する。スプライシング又は選択的ポリアデニル化配列の使用による、PDE4B mRNAからの前記不安定化配列の欠失は、このRNAのコード部分の安定化、ひいては発現の増大を生じさせることができる。前記イベントは、病的対象の脳で特異的に起こり、対照被験者では起こらない。
【0010】
加えて、AKAP1に由来する断片の同定は、興奮毒性過程及び神経細胞死の発生におけるこのタンパク質の関与を実証する。AKAP1は、タンパク質キナーゼAの調節サブユニットとで、また、アポトーシスの具現化を特徴づけるミトコンドリア移行孔の開放の調節に役割を演じる末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)とで相互作用する。その結果、本発明は、AKAP1が、神経細胞死のような細胞死現象におけるPBRの関与を調節するということを提言する。
【0011】
GABA(A)RAPL1に由来する断片の同定は、GABA(A)受容体依存性シグナル伝達の調節不全を強調する。この考察は、特にGABA(A)受容体とのその相互作用を介するシナプス伝達の阻害剤としての神経伝達物質の重要性と全く符合する。この阻害は、興奮毒性からの神経細胞死につながるかもしれない持続性興奮から神経細胞を保護することを可能にする。したがって、われわれの研究は、このレベルの調節における変化を示す。
【0012】
したがって、本発明は、病的対象の脳におけるPDE4、AKAP1及びGABA(A)RAPL1のmRNAの発現における変化を特徴とし、時間とともに興奮毒性及び/又は神経細胞死の現象と相関する三つの根源的分子イベントを概説する。cAMPによって媒介されてPBRを調節し、GABA依存性シグナルを伝達するこれらのシグナル伝達経路は、特に疾病の早期段階で使用することができ、症状又は関連の炎症現象を標的とするではなく疾病の実際の分子ベースを標的とする、神経変性性疾患の治療法の開発のための新規な戦略を画定する。
【0013】
このように、これらの三つの代謝経路の一つに対して作用する、又は好ましくは三つに対して同時に作用する機会は、神経変性性疾患、特に眼疾患の特に効果的な処置につながるであろう。事実、網膜神経変性(及び特に光受容細胞の損失)がサイクリックヌクレオチド(cGMP、cAMP)の網膜レベルの変化に関連しているということが知られている。したがって、前記レベルの変調は、特に興奮毒性を制御することにより、神経変性性眼疾患の処置に有益であるかもしれない。
【0014】
したがって、本発明の第一の態様は、神経変性性疾患、特に神経変性性眼疾患の処置のための医薬組成物を調製するためのPBRリガンドの使用に関する。
【0015】
本発明のもう一つの態様は、神経変性性眼疾患の処置のための医薬組成物を調製するためのPDE4阻害剤化合物の使用に基づく。
【0016】
本発明の第三の態様は、神経変性性眼疾患の処置のための医薬組成物を調製するための、GABA(A)受容体の活性を調節する化合物の使用に基づく。
【0017】
本発明のさらに具体的な目的は、神経変性性眼疾患の患者における神経細胞生存率を高めるための医薬組成物を調製するための、ピラゾロピリジン系に属するPDE4阻害剤化合物の使用に関する。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、神経変性性眼疾患中の興奮毒性による神経細胞死を阻害又は減少させるための医薬組成物を調製するための、ピラゾロピリジン系に属するPDE4阻害剤化合物の使用に関する。
【0019】
好ましくは、PDE4阻害剤化合物はまた、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)のリガンド及び/又はGABA(A)受容体のβサブユニットのリガンドである。事実、このような化合物は、有利には、神経変性性疾患に関与する三つの代謝経路に作用することを可能にする。特に好ましい化合物はエタゾレート(etazolate)である。
【0020】
もう一つの実施態様で、3種の化合物−一つはPDE4阻害剤、第二のものはGABA(A)受容体リガンド、他の一つは末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)のリガンド−が組み合わせて使用される。この併用は、同時であることもできるし、別々であることもできるし、時間をかけてすることもできる。
【0021】
さらなる実施態様で、化合物は、PDE4B、AKAP1もしくはGABA(A)RAPL1遺伝子の転写又は対応するメッセンジャーmRNAの翻訳を阻害することができるアンチセンス核酸である。
【0022】
本発明は、網膜の変性過程の処置、特に網膜色素変性症、黄斑変性症、緑内障の網膜への影響又は糖尿病性網膜症の処置に対して特に適合される。
【0023】
本発明はまた、対象においてPDE4もしくはAKAP1又はGABA(A)RAPL1をコードする遺伝子、メッセンジャー又はタンパク質における調節不全又は変化の存在を決定することに基づく、前記疾病の検出、スクリーニング又はインビトロ診断のための試験、キット又は方法の開発を考慮している。本発明はまた、前記試験を実施するためのツール、特にプローブ、プライマー、細胞、試薬などを提供する。
【0024】
本発明はまた、神経変性性疾患の処置のための候補分子をスクリーニングする試験又は方法であって、受容体PBR、AKAP1、GABA(A)RAPL1、GABA(A)受容体及び/又はPDE4に結合する分子の能力を決定することを含む試験又は方法を提供する。
【0025】
本発明のもう一つの目的は、ピラゾロピリジン系の化合物及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む、眼外又は眼内投与に適合された医薬組成物に関する。好ましくは、化合物は、本明細書で先に定義したような化合物であり、特にエタゾレートである。通常、組成物は、注射液、洗眼剤、ゲル、滴剤などとして調合される。
【0026】
治療
このように、本発明は一般に、神経変性性眼疾患の処置のためのPDE4阻害剤及び/又はPBR及びGABA(A)のリガンドの使用に関する。
【0027】
神経細胞生存率を改善するための、より具体的には興奮毒性に対して神経細胞を保護するためのPDE4阻害剤の使用はかつて想定されたことはない。
【0028】
炎症現象を阻害するために開発されたPDE4阻害剤がアルツハイマー病のような中枢神経変性性疾患で潜在的に有用であると提言されている。この提言は、神経変性過程で脳内に見られる炎症を軽減する目標に基づくものであり、神経細胞死を直接阻害することを狙う論理的根拠には全く基づかない。そのうえ、この提言は、末梢疾患、特に眼疾患にはまったく関連しない。
【0029】
本発明は、神経細胞興奮毒性の発生に関連する、PDE4及びAKAP1及びGABA(A)RAPL1をコードする遺伝子に影響する選択的ポリアデニル化部位又はスプライシングイベントの存在を実証し、神経変性性眼疾患を処置するための、より一般的には、興奮毒性現象中の神経細胞生存率を特に前記疾患のまさに早期段階から改善するためのPDE4阻害剤及び/又はPBR及びGABA(A)受容体リガンドの使用を正当化する分子的根拠を提供する。
【0030】
したがって、本発明の一つの目的は、神経変性性眼疾患の処置のための、特に罹患した患者における神経細胞生存率を促進又は助長するための医薬組成物を調製するための、PDE4阻害剤化合物及び/又はPBR及びGABA(A)受容体リガンドの使用に基づく。
【0031】
好ましくは、PDE4阻害剤化合物はまた、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)及びGABA(A)受容体のリガンドである。事実、前記化合物は、神経変性性疾患に関与する三つの代謝経路に対して有利に作用することを可能にする。
【0032】
もう一つの実施態様で、3種の化合物−一つはPDE4阻害剤、第二のものは末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)リガンド、第三のものはGABA(A)受容体のリガンド−が組み合わせて使用される。この併用は、同時であることもできるし、別々であることもできるし、時間をかけてすることもできる。
【0033】
本発明のもう一つの目的は、神経変性性眼疾患を処置する方法であって、PDE4阻害剤化合物及び/又はPBR及びGABA(A)受容体リガンド、好ましくはPDE4阻害剤化合物ならびにPBR及びGABA(A)受容体のリガンドを対象に投与することを含む方法に基づく。
【0034】
本発明のさらなる目的は、神経変性性眼疾患に罹患した患者における神経細胞生存率を高める方法であって、本明細書で先に定義したような化合物を対象に投与することを含む方法に基づく。
【0035】
本発明のさらなる目的は、神経変性性眼疾患中の神経細胞興奮毒性を阻害又は低下させるための、すなわち、より具体的には、神経変性性疾患中の興奮毒性によるによる神経細胞死を阻害又は減少させるための、本明細書で先に定義したような化合物の使用に基づく。
【0036】
本発明のもう一つの態様は、神経変性性眼疾患の患者における神経細胞生存率を高めるための医薬組成物を調製するための、ピラゾロピリジン系に属する少なくとも一つのPDE4阻害剤化合物の使用に関する。
【0037】
本発明に関して、「処置」とは、予防的、治癒的、対症的処置及び患者の管理(苦痛の緩和、機能欠如の軽減、生存率の改善、病気進行の減速、神経細胞生存率の改善、興奮毒性又はアポトーシスに対する神経細胞の保護など)をいう。処置はさらに、特に疾病の後期イベントに関与する他の薬剤又は処置、たとえばカスパーゼ阻害剤又は他の活性化合物と組み合わせて実施することもできる。
【0038】
「PDE4阻害剤化合物」とは、PDE4、特にPDE4Bの発現又は活性を阻害することができる化合物、すなわち、特に、遺伝子の転写、RNAの成熟、mRNAの翻訳、タンパク質の翻訳後修飾、タンパク質の酵素活性、それと基質との相互作用などを阻害する化合物をいう。これは、RNAの修飾、特に3′非コード領域の一部の欠失を阻害する化合物であることができる。
【0039】
特定の実施態様では、化合物は、PDE4BもしくはAKAP1もしくはGABA(A)RAPL1遺伝子の転写又は対応するメッセンジャーの翻訳を阻害することができるアンチセンス核酸である。アンチセンス核酸は、PDE4BもしくはAKAP1もしくはGABA(A)RAPL1遺伝子の配列の全部もしくは一部、その断片、PDE4BもしくはAKAP1もしくはGABA(A)RAPL1メッセンジャー又はそれらに相補的な配列を含むことができる。特に、アンチセンス分子は、GenBank配列番号AF208023の残基218〜2383又はGenBank配列番号NM_002600の残基766〜2460に含まれる配列に対して相補的な領域を含み、タンパク質へのその翻訳を阻害(又は減少)することができる。アンチセンス分子は、DNA、RNA、リボザイムなどであることができる。これは、一本鎖であることもできるし、二本鎖であることもできる。これはまた、アンチセンス遺伝子によってコードされるRNAであることもできる。アンチセンスオリゴヌクレオチドである場合、これは通常、100未満の塩基、たとえば約10〜50の塩基を含む。前記オリゴヌクレオチドは、その安定性、そのヌクレアーゼ耐性、細胞へのその浸透などを改善するために修飾されることもできる。
【0040】
もう一つの実施態様によると、化合物は、たとえばPDE4(特にPDE4B)タンパク質の領域を含み、その活性に拮抗することができるペプチドである。
【0041】
もう一つの実施態様によると、化合物は、PDE4Bの発現又は活性を変調することができる、及び/又は、PBR受容体及び/又はGABA(A)型のGABA受容体に結合することができる天然又は合成の化合物、特に植物、バクテリア、ウイルス、動物、真核生物、合成又は半合成起源の有機又は無機分子である。
【0042】
好ましい変形態様では、特にエタゾレートのようなピラゾロピリジン系の化合物が使用される。事実、これらの化合物は、PBR及びGABA(A)受容体に結合し、PDE4を阻害することができる。
【0043】
ピラゾロピリジン系の化合物は、特に、以下の化合物からなる群より選択される。
【0044】
本発明の好ましい実施態様を代表する、以下の式
【0045】
【化1】

【0046】
を有するエタゾレート、
− 4−ブチルアミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル(トラカゾレート)、
− 4−ブチルアミノ−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 1−(4−アミノ−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−1−イル)−β−D−1−デオキシ−リボフラノース、
− 1−エチル−4−(N′−イソプロピリデン−ヒドラジノ)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル(SQ 20009)、
− 4−アミノ−6−メチル−1−n−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン、
− 4−アミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル(デスブチルトラカコレート)、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボキサミド、
− 1−エチル−6−メチル−4−メチルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−プロピル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 1−エチル−4−エチルアミノ−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−アミノ−1−ブチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 5−(4−アミノ−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−1−イル)−2−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3−オール、
− 1−アリル−4−アミノ−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸、
− 4−アミノ−1−エチル−3,6−ジメチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−ジメチルアミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 1−エチル−6−メチル−4−プロピルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−アミノ−1−ブタ−3−エニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−アリルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−イソプロピルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−N−n−プロピル−1H−ピラゾロ−〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボキサミド、
− 4−アミノ−1−ブチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−プロパ−2−イニルアミド、
− 4−アミノ−1−(3−メチル−ブチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ<3,4−b>ピリジン−5−N−(2−プロペニル)カルボキサミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ブチルアミド、
− 4−アミノ−1−ブタ−3−イニル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−1−ブタ−3−エニル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−アリルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−(3−メチル−ブチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸イソブチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ブチルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−(3−メチル−ブタ−2−エニル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−シクロプロピルアミド、
− エチル 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ヒドロオキサメート、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸プロパ−2−イニルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−エニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−プロピルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−シクロプロピルメチル−アミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸 2−メチルアリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−アリルアミド(ICI 190,622)、
− 4−アミノ−1−ペンタ−4−イニル−N−2−プロペニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボキサミド、
− 4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−プロパ−2−イニルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ブタ−2−イニルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−1−(2−シクロプロピル−エチル)−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−1−ヘキサ−5−イニル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−シクロプロピルメチル−アミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸ブタ−3−エニルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸シクロプロピルメチルエステル、
− 4−ブチルアミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−アリルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸2−シクロプロピル−エチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸シクロプロピルメチルエステル、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸シクロプロピルメチルエステル、
− 4−アミノ−1−ベンジル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ベンジルアミド、
− 4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−フェニルアミド、
− 4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸ベンジルエステル、
− 4−アジド−1−β−D−リボフラノシルピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン、
− 1−ペンタ−3−イニル−N−2−プロペニル−4−プロピオンアミド−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボキサミド、
− 2−(4−アミノ−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−1−イル)−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3,4−ジオール、
− 2−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−エタノール、
− 3−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−プロパン−1−オール、
− 3−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−酢酸プロピルエステル、
− 2−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−プロピオン酸エチルエステル、
− 2−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−ペンタン酸エチルエステル、
− 2−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−安息香酸エチルエステル、
− 3−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−ペンタン酸プロピルエステル、
− N−ベンジリデン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−フラン−2−イルメチレン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−(4−フルオロ−ベンジリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−(3−フラン−2−イル−アリリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−(4−メトキシ−ベンジリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− 4−〔(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラゾノメチル〕−ベンゾニトリル、
− N−ベンゾ〔1,3〕ジオキソール−5−イルメチレン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(4−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(4−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(5−ニトロ−フラン−2−イルメチレン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(2−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−ヒドラジン、
− N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(6−ニトロ−ベンゾ〔1,3〕ジオキソール−5−イルメチレン)−ヒドラジン、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−(ピリジン−4−イルメチル)−アミド、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−(テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)−アミド、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−(5−ヒドロキシ−ペンチル)−アミド、
− 4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−〔3−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル〕−アミド、
− 4−tert−ブチルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−シクロプロピルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−プロピルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−フェニルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−ブチルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−(2−エトキシ−エチルアミノ)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 4−ベンジルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
− 1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−フェネチルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル。
【0047】
本発明は、前記化合物が、細胞生命の調節に関与する三つの分子イベントに干渉することができる無類の関わりを有するということを明らかにする。前記化合物は、一方で、細胞内cAMP濃度を、細胞死アポトーシスカスケードの活性化を防ぐレベルに維持し、他方で、ミトコンドリア移行孔の開口を阻害することによってアポトーシスの実際の発生に干渉する。加えて、前記化合物は、GABA(A)受容体の活性を調節し、ひいては神経細胞の電気生理学的活性(分極)を調節して、それによって神経細胞を興奮毒性から保護することができる。
【0048】
前記化合物のもう一つの性質は、ホスホジエステラーゼの中でも、cAMP依存性ホスホジエステラーゼ、すなわち細胞内cAMPを加水分解するホスホジエステラーゼの優先的阻害である。その結果、前記化合物はcGMP濃度に影響しない。運動神経細胞のような神経細胞の生存率を維持することを望む場合、濃度増大は有利である。その一方で、網膜の細胞、たとえば杆細胞は、cGMPの過剰によって害を受けるが、cAMPの増大はさほど重要ではない。
【0049】
したがって、ピラゾロピリジンは、網膜色素変性症、年齢関連の黄斑変性症(ARMD)、緑内障の影響及び網膜症、特に糖尿病性網膜症に特徴的である網膜変性の処置に特に適合される。
【0050】
このように、本発明は、はじめて、PDE4、PBR及びGABA(A)受容体を、好ましくは組み合わせて、特に神経変性性眼疾患における興奮毒性に関連する分子イベントの処置のための治療標的として提案する。特定の実施態様によると、本発明は、前記疾病の早期段階で神経細胞興奮毒性を阻害又は低下するために使用することができる。特に、開放隅角緑内障及び閉塞隅角緑内障をはじめとする緑内障の網膜への影響、年齢関連の黄斑変性症(ARMD)、糖尿病性網膜症ならびに網膜色素変性症を処置するために使用することができる。
【0051】
眼疾患の他の例は、特に、眼内高血圧の網膜への影響、網膜黄斑症及び変性、たとえば滲出形及び萎縮(乾)形の年齢関連の黄斑変性症(ARMD)、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、中心性漿液性脈絡膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、近視性網膜変性、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、炎症性眼疾患、たとえば急性多病巣性板状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(birdshot)網脈絡膜症、ブドウ膜炎(前部、後部、全)、多病巣性脈絡膜炎、多発一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症、フォークト・小柳・原田症候群、点状脈絡膜症、急性黄斑性神経網膜症、血管及び滲出性疾患、たとえば糖尿病性網膜症、中央網膜動脈及び/又はその分枝の閉塞、中央網膜静脈閉塞、播種性血管内凝固、高血圧関連の眼底変化、眼性虚血症候群、網膜小動脈瘤、網膜外傷、網膜剥離、黄斑円孔、網膜腫瘍、たとえば網膜色素上皮の先天性肥厚、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜芽種、過誤腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞種、網膜のリンパ腫、網膜の遺伝子疾患、たとえば網膜色素変性症、杆体錐体ジストロフィー、シュタルガルト病ならびに黄色斑眼底を含む。
【0052】
本発明の特に好ましい目的は、神経変性性眼疾患の処置のための医薬組成物を調製するためのエタゾレートの使用に基づく。
【0053】
本発明の特に好ましい目的は、神経変性性眼疾患の患者における神経細胞生存率を高めるための医薬組成物を調製するためのエタゾレートの使用に基づく。
【0054】
本発明の特に好ましい目的は、神経変性性眼疾患の患者における神経細胞興奮毒性を阻害又は低下させるための医薬組成物を調製するためのエタゾレートの使用に基づく。
【0055】
神経変性性眼疾患は、好ましくは、網膜色素変性症、年齢関連の黄斑変性症(ARMD)、緑内障の網膜への影響(すなわち、特に網膜神経細胞の変性又は死)又は網膜症である。
【0056】
化合物は、種々の方法で調合し、投与することができる。投与は、当業者に公知の方法によって、好ましくは経口経路又は全身、局所もしくは局所領域注射によって実施することができる。通常、注射は、眼内、眼球後、腹腔内、脳室内、脊髄内、静脈内、動脈内、皮下又は筋内経路によって実施される。経口、全身又は眼球後もしくは眼内経路による投与が好ましい。投与量は、当業者が調節することができる。通常、化学的性質の阻害剤化合物の場合には約0.01mg〜100mg/kgが投与される。おそらくは他の活性薬剤又は薬学的に許容しうるビヒクルもしくは賦形剤(たとえば緩衝剤、生理食塩水、等張液、安定剤の存在など)と組み合わせて反復投与を実施してもよいことが理解されよう。
【0057】
薬学的に許容しうるビヒクル又は賦形剤は、緩衝液、溶媒、結合剤、安定剤、乳化剤などからなる群より選択することができる。緩衝液又は希釈剤としては、特に、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、デンプン、粉末糖及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(徐放のため)がある。結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン及び充填液、たとえばスクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースなどがある。また、天然又は合成のガム、たとえば特にアルギネート、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを使用することもできる。他の賦形剤の例としては、セルロース及びステアリン酸マグネシウムがある。安定剤、たとえば多糖(たとえばアカシア、アガー、アルギン酸、グアーガム及びトラガカント、キチン又はその誘導体ならびにセルロースエーテル)を配合物に含めることもできる。溶媒又は溶液の例としては、リンゲル溶液、水、蒸留水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩溶液及び他の従来の流体がある。また、洗眼剤、滴剤などのタイプの配合物を調製することもできる。
【0058】
本発明は、哺乳動物、特にヒトに使用することができる。実施例で提示する結果は、特に網膜培養物において興奮毒性の条件に付された神経細胞の生存率を改善する本発明の効力を例示し、ヒトへの投与の結果を記す。
【0059】
検出、診断及びスクリーニング
本発明のもう一つの目的は、対象における神経細胞ストレス又は興奮毒性の状況を検出する方法であって、対象からの試料におけるAKAP1、GABA(A)RAPL1及び/又はPDE4の発現をインビトロで計測することを含む方法に基づく。有利には、方法は、PDE4B遺伝子の3′非コード領域と、遺伝子の残り部分、特にコード領域とのディファレンシャル発現を計測することを含む。
【0060】
したがって、本発明のもう一つの目的は、対象における神経細胞ストレス又は興奮毒性の状況を検出する方法であって、対象からの試料におけるAKAP1、GABA(A)RAPL1及び/又はホスホジエステラーゼ4、特にホスホジエステラーゼ4BをコードするRNAの突然変異形態、特に3′非コード領域の全部又は一部が欠失している形態の存在を検出することを含む方法に基づく。
【0061】
本発明のもう一つの目的は、神経細胞ストレスの状況及び特に興奮毒性の状況の診断又は検出の方法を実施するための、AKAPL1、GABA(A)RAPL1又はPDE4Bをコードする遺伝子又はメッセンジャーRNAに由来する配列の全部又は一部を含む核酸の使用に基づく。
【0062】
一般に、本発明は、興奮毒性、ストレス又は神経細胞死などのタイプの病的イベントを検出するための、AKAP1、GABA(A)RAPL1及び/又はPDE4Bをコードする遺伝子又はメッセンジャーの全部又は一部に相補的な核酸の使用に基づく。より一般的には、本発明は、変性性眼疾患を診断、スクリーニング、特性決定又はモニタリングする方法であって、PDE4及び/又はAKAP1、GABA(A)RAPL1の遺伝子又は対応するRNAにおける変化を実証することを含む方法に基づく。
【0063】
AKAP1、GABA(A)RAPL1及び/又はPDE4Bの発現、すなわちディファレンシャル発現又は変形の存在は、従来の分子生物学技術、たとえば配列決定、ハイブリダイゼーション、増幅、RT−PCR、ゲル泳動などによって決定することができる。本発明は、興奮毒性現象を伴う種々の疾病、たとえば神経変性性眼疾患(網膜症、緑内障の網膜への影響、年齢関連の黄斑変性症など)の診断又は検出に使用することができる。素因を実証し、処置の選択及び適合を誘導し、疾病の進展をモニタリングするためなどに、早期検出に使用することができる。
【0064】
本発明による遺伝子的診断又は検出方法を実施するためには、より具体的に、AKAP1、GABA(A)RAPL1又はPDE4B mRNAの欠失形態、特にPDE4Bの3′非コード領域の全部又は一部が欠失している形態を明らかにすることができる核酸を使用する。具体例として、GenBank配列番号AF208023の残基2760〜2869又はヒトPDE4B遺伝子もしくはmRNAの配列の対応する残基に含まれる領域の全部又は一部に相補的である核酸が使用される。ヒトPDE4BをコードするcDNA配列は、GenBank配列番号NM_002600で入手可能である。ヒトPDE4B遺伝子又はRNAの3′非コード領域は、GenBank配列番号NM_002600の残基2461〜4068に対応する。
【0065】
有利には、使用される(プローブとして)核酸は、GenBank配列番号AF208023のヌクレオチド2384〜2869又はGenBank配列番号NM_002600のヌクレオチド2461〜4068に含まれるPDE4B遺伝子又はRNAの3′非コード領域をコードする配列又はそれに相補的な配列の全部又は一部を含む。
【0066】
特定の実施態様によると、本発明は、以下の配列に含まれる領域に相補的な核酸を使用する。
−GenBank配列番号AF208023の残基2384〜2869
−GenBank配列番号AF208023の残基2500〜2869
−GenBank配列番号AF208023の残基2760〜2869
−GenBank配列番号AF208023の残基2780〜2850
−GenBank配列番号AF208023の残基2790〜2810
−GenBank配列番号AF208023の残基2600〜4040
−GenBank配列番号AF208023の残基3000〜4040
−GenBank配列番号AF208023の残基3500〜4040
−GenBank配列番号AF208023の残基3900〜4040
【0067】
特定の実施態様によると、3′非コード領域の全部又は一部の欠失から生じるPDE4 RNAの領域の配列に相補的である核酸が使用される。ドメインの欠失が、配列中に、その欠失形態に特異的であり、試料中のそのような形態の存在を実証するために使用することができる新たな接合部を効果的に創造する。
【0068】
好ましくは、プローブ及び標的配列は、より良好なハイブリダイゼーション特異性を保証するため、完全な相補性を有する。それにもかかわらず、いくらかのミスマッチが寛容されることが理解されよう。上記方法を実施するために使用される核酸は、DNA又はRNA、好ましくは合成起源のDNAであることができる。それは、好ましくは、10〜500の塩基、通常は10〜100の塩基を含有する。望むならば、より長い核酸を使用してもよいが、それが好ましいわけではないことが理解されよう。有利には、核酸は、少なくともPDE4Bの3′非コード配列の領域に相補的である、10〜500塩基の一本鎖DNAである。核酸は、たとえば放射性標識、酵素標識、発光標識、蛍光標識、化学的標識などで標識付けすることができる。
【0069】
AKAP1、GABA(A)RAPL1又はPDE4遺伝子における変化の存在を検出するもう一つの手法は、好ましくはPDE4の3′非コード領域又はAKAP1、GABA(A)RAPL1のコード領域の一部を含む、AKAP1、GABA(A)RAPL1又はPDE4 RNAの一部の選択的増幅を可能にするプライマー又は核酸プライマー対を使用する。通常、AKAP1、GABA(A)RAPL1又はPDE4 RNAの変形の選択的増幅を可能にするプライマー、特に、スプライシングによってRNAの一部を欠失させることによって創造される接合部に特異的なプライマーが使用される。
【0070】
これに関して、本発明の目的は、AKAP1 RNAの一部に相補的であり、前記RNAの一部の増幅を可能にするプライマーである。プライマーは、有利には、8〜20の塩基を含有する。これは、好ましくは、GenBank配列番号NM009648の8〜20の連続残基の断片で構成され、より好ましくは、前記配列のヌクレオチド1794〜2322によって占められる領域の少なくとも一部で構成されている。特に、前記領域は、KHファミリーの「RNA結合」ドメインを含有する。本発明のもう一つの目的は、AKAP1 RNAの少なくとも一部の特異的増幅を可能にする、本明細書で先に定義したような少なくとも一つのプライマーを含むプライマー対に基づく。
【0071】
これに関して、本発明の目的は、GABA(A)PL1 RNAの一部に相補的であり、前記RNAの一部の増幅を可能にするプライマーに基づく。プライマーは、有利には、8〜20の塩基を含有する。これは、好ましくは、GenBank配列番号BC024706の8〜20の連続残基の断片で構成され、より好ましくは、前記配列のヌクレオチド999〜1400によって占められる領域の少なくとも一部で構成されている。前記領域は、RNAの安定性及び翻訳性に関与する、RNAの3′UTR配列に対応する。
【0072】
本発明の方法を実施するためには、核酸を含有する、対象からの生物学的試料を、本明細書で先に定義したような核酸(プローブ、プライマーなど)とインビトロで接触させ、ハイブリッド又は増幅産物の形成を検出する。生物学的試料は、血液、体液、細胞、組織などの試料であることができる。核酸は、ガラス、シリカ、ナイロンなどのタイプの支持体に固定化することができる。
【0073】
検出、スクリーニング又は診断の方法は、対象からの種々の試料、たとえば特に神経組織の組織生検材料とで実施することができる。また、特に驚くべき、かつ有利なことに、本発明は、興奮毒性現象と相関するPDE4発現の調節不全を筋組織中で直接実証することができるということを示す。
【0074】
もう一つの目的は、PDE4、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1の発現を分析するためのキットであって、PDE4、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1のmRNA配列の一部に特異的なヌクレオチドプローブを含むキットに基づく。
【0075】
もう一つの目的は、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1の発現、特にAKAP1及び又はGABA(A)RAPL1の変形の発現を分析するためのキットであって、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1の特異的アイソフォームのmRNAの領域の少なくとも一部の特異的増幅を可能にするヌクレオチドプライマー対を含むキットに基づく。
【0076】
選択の方法及びツール
本発明の他の目的は、興奮毒性又は神経細胞ストレスに関連する疾患、特に変性性眼疾患に対して活性な化合物の選択、同定又は特性決定の方法であって、試験化合物を、PDE4B(特に、3′非コード領域を欠失した変異体)、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1を発現する細胞と接触させることと、前記タンパク質の発現又は活性を阻害する化合物を同定することとを含む方法に関する。
【0077】
方法は、種々の細胞集団、たとえば初代細胞又は哺乳動物細胞株(ヒト、ネズミなど)とで実施することができる。有利には、所望の変異体をコード化する核酸をトランスフェクトされた、PDE4B、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1を自然には発現しない細胞が使用される。このようにして、方法の選択性が高められる。また、下等真核細胞(酵母など)又は原核細胞を使用することが可能である。
【0078】
また、スクリーニング法は、試験化合物がPDE4B、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1又はそれらの変異体もしくは断片に結合する能力を計測することにより、無細胞系で実施することもできる。
【0079】
本発明のもう一つの目的は、本明細書で先に定義したようなポリペプチドをコードする核酸、それを含有するベクター、組み換え細胞及び使用に関する。ベクターは、プラスミド、ファージ、コスミド、ウイルス、人工染色体などであることができる。好ましいベクターの例は、プラスミドベクター、たとえば市販のプラスミドに由来するベクター(pUC、pcDNA、pBRなど)である。このようなベクターは、有利には、選択遺伝子及び/又は複製開始点及び/又は転写プロモーターを含有する。他の特定のベクターの例としては、ウイルス又はファージ、特に複製欠陥組み換えウイルス、たとえばレトロウイルス、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、バキュロウイルスなどに由来するウイルスがある。ベクターは、任意のコンピテント宿主、たとえば原核細胞又は真核細胞で使用することができる。これらは、バクテリア(たとえば大腸菌)、酵母(たとえばSaccharomyces属又はKluyveromyces属)、植物細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞、特にヒト細胞などであることができる。これらは、細胞株、初代細胞、混合培養物などであることができる。
【0080】
本発明の他の態様及び利点は、限定のためではなく例示のために記載する以下の実施例で明らかになるであろう。
【0081】
拡大解釈により、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1に関して記載したすべての使用は、PBR及びGABA(A)受容体の場合にも実現することができる。
【0082】
実施例
実施例1:興奮毒性の分子標的としてのPDE4、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1の同定
疾病の発生に関連する選択的スプライシングイベントの最大値を考慮に入れるため、神経細胞を予備的に単離することなく、異なる段階に対応する動物の脳から抽出したポリアデニル化RNA(ポリA+)を使用して、定性ディファレンシャル分析を実施した。
【0083】
ポリA+RNAは、当業者に公知の方法にしたがって調製した。特に、これは、グアニジウムチオシアネートのようなカオトロピック剤で処理したのち、溶媒(たとえばフェノール、クロロホルム)を用いて全RNAを抽出することによって調製することができる。このような方法は当業者には周知であり(Maniatisら、Chomczynsliら、Anal. Biochem. 162 (1987) 156を参照)、市販のキットを使用して簡単に実施することができる。ポリA+RNAは、前記全RNAから、当該技術で公知であり、市販のキットで提供されている従来方法にしたがって調製した。
【0084】
これらのポリA+RNAは、逆転写酵素を援用する逆転写反応のためのマトリックスとして働いた。有利には、従来の逆転写酵素で得られるものよりも大きい第一の相補的DNA鎖を得ることを可能にする、RNA分解酵素H活性を欠く逆転写酵素を使用する。前記RNA分解酵素Hを欠く逆転写酵素調製物は市販されている。
【0085】
疾病発生の時間曲線の点ごとに(30日、60日及び90日)、トランスジェニック動物(T)及び同系対照(C)からポリA+RNA及び一本鎖cDNAを調製した。
【0086】
DATAS法にしたがって、mRNA(C)とcDNA(T)とのハイブリダイゼーション及びmRNA(T)とcDNA(C)との正逆ハイブリダイゼーションを時間点ごとに実施した。
【0087】
そして、これらのmRNA/cDNAヘテロ二重鎖をDATAS法のプロトコルにしたがって精製した。
【0088】
RNA分解酵素Hは対合RNA配列を分解するため、相補的DNAとで対合しなかったRNA配列をRNA分解酵素Hの作用によってヘテロ二重鎖から放出した。これらの非対合配列は、そうでなければ互いに相同であるRNAの間に存在する定性的差違を表す。前記定性的差違は、RNA配列上、5′、3′又は配列の内部、特にコード配列中に位置していることができる。それらの場所に依存して、前記配列は、スプライシング修飾であるだけでなく、転位又は欠失から生じることもできる。
【0089】
そして、当業者に公知の方法、特にDATAS法の特許に記載されている方法により、定性的差違を表すRNA配列をクローン化した。
【0090】
これらの配列を、定性的差違ライブラリーを構成するcDNAライブラリーにグループ分けした。前記ライブラリーの一つは、健康な状況に特異的なエキソン及びイントロンを含有し、その他のライブラリーは、病的状態に特徴的であるスプライシングイベントを含有する。
【0091】
試験下の異なる状況から抽出したメッセンジャーRNAの逆転写によって得られたプローブとのハイブリダイゼーションにより、クローンのディファレンシャル発現をチェックした。ディファレンシャルハイブリダイゼーションを示すクローンをさらなる分析のための保持した。DATASによって同定された配列は、スプライシングによって病的状況と健康な状況との間でディファレンシャルに発現したイントロン及び/又はエキソンに対応する。前記スプライシングイベントは、疾病発生の所与のステップに特異的であることもできるし、健康な状態に特徴的であることもできる。
【0092】
これらの配列とデータベースとの比較が、得られた情報を分類し、診断又は治療の目的に基づいて賢明な配列選択を提案することを可能にする。
【0093】
60日齢の対照及びトランスジェニック動物からのRNAに対するDATASの実施が、ホスホジエステラーゼ4B mRNAに由来するcDNA断片の単離につながった。前記断片は、対照動物中に特異的に存在し、したがって、60日段階でSOD1G93Aにトランスジェニックな動物中では特異的に欠失しているエクソン断片に対応する。前記断片は、マウスPDE4B終止コドンから番号付けして377〜486のヌクレオチドを包含する(GenBank配列番号AF208023)。前記配列は2912の塩基を含み、欠失断片が塩基2760〜2869に対応する。これは、3′非コードエクソンの選択的使用又は二つの選択的ポリアデニル化部位の使用のおかげで対照とトランスジェニック動物との間でディファレンシャルに発現する非コード領域である。
【0094】
60日齢の対照及びトランスジェニック動物からのRNAに対するDATASの実施はまた、AKAP1 mRNAに由来するcDNA断片の単離につながった。前記断片は、対照動物中に特異的に存在し、したがって、60日段階でSOD1G93Aにトランスジェニックな動物中では特異的に欠失しているエクソン断片に対応する。前記断片は、GenBank配列番号NM_009648のヌクレオチド1794〜2322に相同である。これは、選択的スプライシングのおかげで対照とトランスジェニック動物との間でディファレンシャルに発現するコード領域である。
【0095】
60日齢の対照及びトランスジェニック動物からのRNAに対するDATASの実施はまた、GABA(A)RAPL1 mRNAに由来するcDNA断片の単離につながった。前記断片は、対照動物中に特異的に存在し、したがって、60日段階でSOD1G93Aにトランスジェニックな動物中では特異的に欠失しているエクソン断片に対応する。前記断片は、GenBank配列番号BC024706のヌクレオチド1055〜1461に相同である。この領域は、3′非コード領域に由来し、対照とトランスジェニック動物との間でディファレンシャルに発現する。
【0096】
実施例2:RT−PCR実験:ディファレンシャル発現の確認
神経細胞ストレスの状況と参照状況との間のPDE4Bのディファレンシャル発現を、図1に示すRT−PCR実験によってチェックした。
【0097】
これらの実験は、当業者に周知の方法にしたがって実施し、PDE4B mRNAの二つの別個の領域の発現のモニタリングを可能にした。前記領域の一つは、このmRNAの開始コドン(PDE4B 5′)を含み、他方は、DATASによって同定される断片(PDE4B DATAS)を部分的に占める。使用したPCRプライマーの場所は図1に示されている。
【0098】
PO RNAは、実験点ごとに同じ量のRNAが使用されたことをチェックするために内部対照として使用されるリボソームRNAである。分析は、30、60及び90日齢の、すなわち病的症候が現れる前の対照動物(C)及びトランスジェニック動物(T)から抽出したRNAに対して実施した。
【0099】
標準Superscript(商標)プロトコル(Invitrogen)を使用して、30、60及び90日齢の対照SOD1G93Aマウスの脳からの全RNAをcDNAに転写した。半定量的PCRの場合には、逆転写反応の生成物を10倍希釈した。DATAS断片に特異的なプライマーは、センスヌクレオチドの場合には、ヌクレオチド2526〜2545(5′GCC AGG CCG TGA AGC AAA TA 3′;配列番号1)に対応し、アンチセンスの場合には、2790〜2807(5′TCA AAG ACG CGA AAA CAT 3′;配列番号2)に対応し、それ以上の3′断片の場合、プライマーは、センスヌクレオチドの場合には、ヌクレオチド145〜165(5′CCG CGT CAG TGC CTT TGC TAT 3′;配列番号3)に対応し、アンチセンスの場合には、426〜404(5′CGC TGT CGG ATG CTT TTA TTC AC 3′;配列番号4)に対応した。POを参照遺伝子として使用し、以下のプライマーによって増幅した。センス:5′TCG CTT TCT GGA GGG TGT C 3′(配列番号5)及びアンチセンス:CCG CAG GGG CAG CAG TGG 3′(配列番号6)。
【0100】
以下のようなPCRサイクル30回によって増幅を実施した。
−94℃で30秒
−57℃で1分
−72℃で30秒ののち、72℃で2分サイクル1回
【0101】
異なるPCR産物を1.5%アガロースゲル上で実験した。二つの異なる逆転写反応で実験を3回繰り返した。
【0102】
図1は、動物の脳又は筋肉から抽出したRNAに対して得られた結果を示す。
【0103】
すべての試料でPO RNAから同じ量のcDNAを増幅したが、PDE4B mRNAの場合に変動が見られた。もっとも有意な変動は90日齢の動物で見られた。PDE4 5′断片の発現はトランスジェニック動物の脳では増大したが、PDE4Bの発現(DATAS)は非常に急激に低下した。
【0104】
この結果は、PDE4B mRNAの3′非コード断片の発現の低下と、この同じメッセンジャーの5′コード領域の発現の増大との間の相関関係を確立する。この発見は、DATASによって同定された配列中のmRNA不安定化配列の存在と全く符合し、PDE4B発現と興奮毒性現象との間の相関関係を実証する。
【0105】
実施例3:PDE4阻害剤であるPBRリガンドによる興奮毒性の阻害
この実施例では、ラットからの小脳顆粒神経細胞、皮質神経細胞及び腹側脊髄細胞を当業者に公知の方法にしたがって培養した。
【0106】
小脳顆粒細胞の初代培養
7日齢のウィスターラットを断頭し、脳を解剖した。髄膜を除去したのち、組織を小片に切断し、37℃で15分間トリプシン処理した。細胞を粉砕によって分離したのち、10%ウシ胎児血清及び2mMグルタミンで補足したイーグル基礎培地中、1cm2あたり300,000個の密度で培養に配した。翌日、グリア細胞の増殖を防ぐため、有糸分裂阻害剤ARA−C10μMを加えた。培養9日目に細胞を阻害剤化合物エタゾレートで処理し、3時間後、10μM D−セリンの存在下、毒物50μMカイネート又は100μM N−メチル−D−アスパルテートを加えた。毒物を加える直前に、8−ブロモ−cAMPを加えた。すべての処理を、少なくとも二回の異なる培養で、少なくとも二重で実施した。6時間のインキュベーションののち、MTT試験によって毒性を計測した。結果を未処理の平均値に対して正規化し、ウィルコクソン試験によって統計的に解析した。有意さのレベルはp≦0.05であった。
【0107】
皮質細胞の初代培養
16日齢のウィスターラット胚胎を取り出し、皮質を解剖した。37℃で25分間トリプシン処理したのち、細胞を粉砕によって分離し、次いで、10%ウマ血清、10%ウシ胎児血清及び2mMグルタミンで補足した最小必須培地中、1cm2あたり300,000個の密度で播種した。4日間の培養ののち、培地の半分を、5%ウマ血清及び2mMグルタミンで補足した最小必須培地で置き換えた。その同じ日に、有糸分裂阻害剤5−フルオロ−2−デオキシウリジン(10μM)を加えた。7日間及び11日間の培養ののち、培地の半分を、5%ウマ血清及び2mMグルタミンで補足したMEMからなるならし培地(conditioned medium)で置き換え、使用の前に、この培地を皮質星状細胞の層に終夜通した。14日目、細胞を阻害剤化合物エタゾレートで処理し、1時間後、10μM D−セリンの存在下、毒物50μMカイネート又は20μM N−メチル−D−アスパルテートを加えた。すべての処理を、少なくとも二回の異なる培養で、少なくとも二重で実施した。6時間のインキュベーションののち、MTT試験によって毒性を計測した。結果を未処理の平均値に対して正規化し、ウィルコクソン試験によって統計的に解析した。有意さのレベルはp≦0.05であった。
【0108】
腹側脊髄細胞の初代培養
14日齢ウィスターラット胚胎から細胞を単離した。到着しだい、妊娠中のラットを二酸化炭素中毒によって殺処分した。
【0109】
鎖状の胚胎を取り出し、PBSを含有する皿に入れた。
【0110】
各胚胎の脊髄を解剖し、腹側脊髄を背側脊髄から分離した。そして、腹側脊髄を37℃で20分間トリプシン処理した。ライボビッツ15培地、20%ウマ血清、サプリメントN2(1×)、20%グルコース(3.2mg/ml)、7.5%炭酸水素塩(1.8mg/ml)及び2mM L−グルタミンの添加によってトリプシン処理を停止した。細胞を粉砕によって分離した。組織の集塊を除去したのち、分離した細胞をトリパンブルー染色によって定量化した。細胞を、2%ウマ血清、サプリメントB27(1×)及び2mMグルタミンを含有する神経細胞用基本培地中、1cm2あたり250,000個で播種した。3日間のインビトロ培養ののち、グリア細胞の増殖を防ぐため、有糸分裂阻害剤ARA−C(5μM)を細胞に加えた。細胞を加湿インキュベータ(5%CO2)中37℃で9日間培養したのち、阻害剤化合物エタゾレートで処理し、3時間後及び1時間後、10μM D−セリンの存在下、毒物50μMカイネート又は100μM N−メチル−D−アスパルテート(NMDA)を加えた。すべての処理を、少なくとも二回の異なる培養で、少なくとも二重で実施した。毒物としてのNMDA/D−セリンとの3時間のインキュベーション及びカイネートとの1時間のインキュベーションののち、MTT試験によって毒性を計測した。結果を未処理の平均値に対して正規化し、ウィルコクソン試験によって統計的に解析すると、p<0.05であった。
【0111】
MTT
毒性をMTT試験で計測した。化合物とのインキュベーションののち、MTTを1穴あたり0.5mg/mlの最終濃度で加えた。そして、プレートを暗所中37℃で30分間インキュベートした。培地を吸気させ、結晶をDMSO(ジメチルスルホキシド)500μl中に再懸濁させた。550nmでの吸光度を計測し、生存率を計算した。
【0112】
結果
得られた結果を図2〜6に示す。これらの結果は、神経細胞生存率に対する本発明化合物の保護効果を例示する。神経細胞を本発明の阻害剤化合物で同時処理したのち、二つの興奮毒性誘導モデル(NMDA/セリン及びカイネート)で用量関連保護効果が認められた。
【0113】
図2及び3は、小脳顆粒細胞に対してエタゾレートで得られた結果を示す。これらの結果は、エタゾレートが、これらの細胞に対し、NMDA/セリン処理の場合で60%、カイネート誘発毒性の場合で57%の保護効果を提供したことを示す。
【0114】
図4及び5は、皮質神経細胞に対してエタゾレートで得られた結果を示す。これらの結果は、エタゾレートが、これらの細胞に対し、NMDA/セリン処理の場合で33%、カイネート誘発毒性の場合で25%の保護効果を提供したことを示す。
【0115】
図6は、腹側脊髄細胞に対してエタゾレートで得られた結果を示す。これらの結果は、エタゾレートが、これらの細胞に対し、NMDA/セリン処理の場合で36%の保護効果を提供したことを示す。
【0116】
このように、本発明は、興奮毒性機構におけるPDE4B、PBR及びGABA(A)受容体の関与を実証するだけでなく、興奮毒性ストレス中に神経細胞生存率を保存する阻害剤及びリガンドの能力をも実証する。
【0117】
実施例4:網膜培養物に対するインビトロ実験
この実施例は、生後2週間で始まった視細胞の損失を特徴とするrd1マウスの網膜に対するPDE4阻害剤の効果を記載する。
【0118】
エタゾレート濃度(0.02μM、0.2μM、2μM及び20μM)ごとに、rd1マウスからの6個の網膜外植片を21日間培養した。培養は、生後7日目に、ウシ胎児血清を含まず、エタゾレートを前記濃度で含有する培地中で開始した。同じマウスからの6個の網膜外植片を処理外植片のための対照として使用した。この場合、外植片を、単独の培地中又はエタゾレートのために使用される媒体を含有する培地中で増殖させた。両条件(対照及び処理)ともに、培地を2日ごとに交換した。21日間の培養ののち、組織病理学的試験のために外植片を固定し、切り出し、標識した。
【0119】
未処理のrd1マウス(生後28日目)からの外植片は、培養中にその光受容細胞の大部分を損失したが、その後、残りの光受容細胞を計数することによって光受容細胞の増加の存在を検出した。
【0120】
結果
2μMエタゾレートで得られた結果は、エタゾレートで処理されたrd1マウスの光受容細胞が、未処理のrd−rdマウスの光受容細胞よりも良好に保存されたことを示す。図7に示すように、未処理のrd−rdマウスは、以下の特性−多数のピクノーゼ細胞(picnotic cell)及び光受容細胞核の減少−を示した。対照的に、エタゾレート処理した外植片では、光受容細胞層はより良好に保存され、非トランスジェニックマウスにおける光受容細胞層に類似していた。これらの外植片はまた、未処理のrd−rdマウスからの外植片と比較して、ピクノーゼ細胞の数の顕著な減少を特徴とした。
【0121】
実施例5:PBRに対するエタゾレートの効果
この効果を実証するため、PBRを発現することが示されているHeLa細胞で実験を実施した。PBRは、ミトコンドリア内膜とミトコンドリア外膜との間に位置している。これは、ミトコンドリア孔を開くことによってミトコンドリア流量の調節に関与する移行孔複合体の一部を形成する。PBRに対する高い親和性を示す分子、特にRo5−4864及びPK11195が存在する。
【0122】
ローダミン1、2、3のミトコンドリア特異的蛍光をモニタリングすることにより、PBR特異的リガンドの効果及びエタゾレートの効果を追跡した。
【0123】
結果は、エタゾレートがPBR特異的リガンドRo5−4864及びPK11195と同じ蛍光の損失を誘発したことを示す。
【0124】
したがって、エタゾレートは、興奮毒性現象中に神経細胞を死から保護するPBRリガンドであると考えられる。
【0125】
実施例6:ヒトにおける臨床使用
この実施例は、神経変性性疾患の処置におけるエタゾレートの臨床使用の条件を記載する。これは、本発明の潜在的治療能力及びヒトにおけるその使用の条件を例示する。
【0126】
この試験では、8名の若い健康な男性ボランティアの異なる連続グループに対し、漸増量のエタゾレート(0.5、1、2、5、10及び20mg)を0.5及び5mgカプセルの形態で経口投与した。これは、8名の被験者のうち2名がプラセボを服用する単一施設二重盲検であった。服用後24時間にわたり、以下のパラメータを評価した−臨床耐容性(有害作用、臨床徴候、血圧又は心拍数の変化)、心電図耐容性(ECGの記録)及び生物学的耐容性(血液学的及び血液生化学的分析、尿分析)。各被験者において、投与の前後の異なる時点で血漿中の生成物を検定した(0.25−0.50−1.00−1.50−2.00−3.00−4.00−5.00−6.00−8.00−10.00−12.00及び24.00時間)。また、投与の前後に採取した尿中で生成物を検定した(4、4−8、8−12及び12−24時間)。
【0127】
用量増大段階の最後に、被験者6名のさらなるグループに対し、二つの異なる時点−絶食後及び高脂肪食と供に−でエタゾレートを投与した。この第二段階は、二つの投与条件の間での生成物の血中レベルの変化を比較することを狙ったものである。服用後24時間にわたり、以下のパラメータを評価した−臨床耐容性(有害作用、臨床徴候、血圧又は心拍数の変化)、心電図耐容性(ECGの記録)及び生物学的耐容性(血液学的及び血液生化学的分析、尿分析)。各被験者において、投与の前後の異なる時点で血漿中の生成物を検定した(0.25−0.50−1.00−1.50−2.00−3.00−4.00−5.00−6.00−8.00−10.00−12.00及び24.00時間)。また、投与の前後に採取した尿中で生成物を検定した(4、4−8、8−12及び12−24時間)。また、ヒト臨床試用のために、この生成物のための耐胃液性カプセルを調製した。
【0128】
試験の第一の用量増大段階からの結果は、エタゾレートが十分に耐容され、副作用を生じさせなかったことを示す。そのうえ、血漿検定は、ヒトにおける生成物の吸収が高用量で良好であることを確認させた。
【0129】
総じて、これらの結果は、本発明の化合物が神経細胞、特に網膜神経細胞の生存率に関して抜群の性質を有し、副作用なしにヒトに投与することができることを実証する。したがって、これらの結果は、ヒト神経変性性眼疾患のための新規で効果的な治療法の開発を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1A】脳試料(1A)からのPDE4Bの半定量的PCRを示す。
【図1B】筋試料(1B)からのPDE4Bの判定量的PCRを示す、半定量的PCRを示す。
【図2】小脳顆粒細胞におけるNMDA/セリン誘発毒性に対するエタゾレートの神経保護効果を示す。
【図3】小脳顆粒細胞におけるカイネート誘発毒性に対するエタゾレートの神経保護効果を示す。
【図4】皮質神経細胞におけるNMDA/セリン誘発毒性に対するエタゾレートの神経保護効果を示す。
【図5】皮質神経細胞におけるカイネート誘発毒性に対するエタゾレートの神経保護効果を示す。
【図6】腹側脊髄細胞におけるNMDA/セリン誘発毒性に対するエタゾレートの神経保護効果を示す。
【図7】網膜におけるエタゾレートの神経保護効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経変性性眼疾患の患者における神経細胞生存率を高めるための医薬組成物を調製するための、ピラゾロピリジン系のPDE4阻害剤化合物の使用。
【請求項2】
神経変性性眼疾患中の興奮毒性による神経細胞死を阻害又は減少させるための医薬組成物を調製するための、請求項1記載の使用。
【請求項3】
化合物がまた、末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)のリガンドであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項4】
化合物がまた、GABA(A)型のGABA受容体のリガンドであることを特徴とする、請求項1又は3記載の使用。
【請求項5】
化合物が、エタゾレート及びトラカゾレートからなる群より選択され、好ましくはエタゾレートであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項6】
化合物が、以下の化合物
4−ブチルアミノ−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
1−(4−アミノ−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−1−イル)−β−D−1−デオキシ−リボフラノース、
1−エチル−4−(N′−イソプロピリデン−ヒドラジノ)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル(SQ 20009)、
4−アミノ−6−メチル−1−n−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン、
4−アミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル(デスブチルトラカコレート)、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボキサミド、
1−エチル−6−メチル−4−メチルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−プロピル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
1−エチル−4−エチルアミノ−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−アミノ−1−ブチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
5−(4−アミノ−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−1−イル)−2−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3−オール、
1−アリル−4−アミノ−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸、
4−アミノ−1−エチル−3,6−ジメチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−ジメチルアミノ−1−エチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
1−エチル−6−メチル−4−プロピルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−アミノ−1−ブタ−3−エニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−アリルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−イソプロピルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−N−n−プロピル−1H−ピラゾロ−〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボキサミド、
4−アミノ−1−ブチル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−プロパ−2−イニルアミド、
4−アミノ−1−(3−メチル−ブチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ<3,4−b>ピリジン−5−N−(2−プロペニル)カルボキサミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ブチルアミド、
4−アミノ−1−ブタ−3−イニル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−1−ブタ−3−エニル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−アリルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−(3−メチル−ブチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸イソブチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ブチルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−(3−メチル−ブタ−2−エニル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−シクロプロピルアミド、
エチル4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ヒドロオキサメート、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸プロパ−2−イニルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−エニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−プロピルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−シクロプロピルメチル−アミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸2−メチル−アリルエステル、
4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−アリルアミド(ICI 190,622)、
4−アミノ−1−ペンタ−4−イニル−N−2−プロペニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボキサミド、
4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−プロパ−2−イニルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ブタ−2−イニルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−1−(2−シクロプロピル−エチル)−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−1−ヘキサ−5−イニル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸アリルエステル、
4−アミノ−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−シクロプロピルメチル−アミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸ブタ−3−エニルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸シクロプロピルメチルエステル、
4−ブチルアミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−アリルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸2−シクロプロピル−エチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−3−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸シクロプロピルメチルエステル、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンタ−4−イニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸シクロプロピルメチルエステル、
4−アミノ−1−ベンジル−6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−ベンジルアミド、
4−アミノ−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−フェニルアミド、
4−アミノ−6−メチル−1−ペンチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸ベンジルエステル、
4−アジド−1−β−D−リボフラノシルピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン、
1−ペンタ−3−イニル−N−2−プロペニル−4−プロピオンアミド−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボキサミド、
2−(4−アミノ−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−1−イル)−5−ヒドロキシメチル−テトラヒドロ−フラン−3,4−ジオール、
2−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−エタノール、
3−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−プロパン−1−オール、
3−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−酢酸プロピルエステル、
2−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−プロピオン酸エチルエステル、
2−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−ペンタン酸エチルエステル、
2−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−安息香酸エチルエステル、
3−(6−メチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イルアミノ)−ペンタン酸プロピルエステル、
N−ベンジリデン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−フラン−2−イルメチレン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−(4−フルオロ−ベンジリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−(3−フラン−2−イル−アリリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−(4−メトキシ−ベンジリデン)−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
4−〔(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラゾノメチル〕−ベンゾニトリル、
N−ベンゾ〔1,3〕ジオキソール−5−イルメチレン−N′−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(4−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(2−ニトロ−ベンジリデン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(4−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(5−ニトロ−フラン−2−イルメチレン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N′−(2−トリフルオロメチル−ベンジリデン)−ヒドラジン、
N−(3−メチル−1−フェニル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−4−イル)−N−(6−ニトロ−ベンゾ〔1,3〕ジオキソール−5−イルメチレン)−ヒドラジン、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−(ピリジン−4−イルメチル)−アミド、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−(テトラヒドロ−フラン−2−イルメチル)−アミド、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−(5−ヒドロキシ−ペンチル)−アミド、
4−(3−クロロ−4−メトキシ−ベンジルアミノ)−1−エチル−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−〔3−(2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−プロピル〕−アミド、
4−tert−ブチルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−シクロプロピルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−プロピルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−フェニルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−ブチルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−(2−エトキシ−エチルアミノ)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、
4−ベンジルアミノ−1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル、及び
1−(2−クロロ−2−フェニル−エチル)−4−フェネチルアミノ−1H−ピラゾロ〔3,4−b〕ピリジン−5−カルボン酸エチルエステル
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項7】
化合物が、PDE4B遺伝子の転写又は対応するメッセンジャーの翻訳を阻害することができるアンチセンス核酸であることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項8】
網膜変性の患者における神経細胞生存率を高めるための医薬組成物を調製するための、請求項1〜7のいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
網膜色素変性症、年齢関連の黄斑変性症、緑内障の網膜への影響又は網膜症の患者における神経細胞生存率を高めるための医薬組成物を調製するための、請求項1〜8のいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
神経変性性眼疾患の処置のための医薬組成物を調製するためのエタゾレートの使用。
【請求項11】
神経変性性眼疾患の患者における神経細胞生存率を高めるための医薬組成物を調製するためのエタゾレートの使用。
【請求項12】
神経変性性眼疾患の患者における興奮毒性による神経細胞死を阻害又は減少させるための医薬組成物を調製するためのエタゾレートの使用。
【請求項13】
神経変性性眼疾患が網膜色素変性症であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
神経変性性眼疾患が年齢関連の黄斑変性症であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
神経変性性眼疾患が、緑内障の存在及び進展の網膜神経細胞への影響であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか1項記載の使用。
【請求項16】
神経変性性眼疾患が網膜症である、請求項10〜12のいずれか1項記載の使用。
【請求項17】
エタゾレートが経口形態で投与される、請求項10〜16のいずれか1項記載の使用。
【請求項18】
エタゾレート及びトラカゾレートからなる群より選択される化合物ならびに薬学的に許容しうる賦形剤を含み、眼球後及び/又は眼内投与を可能にする医薬組成物。
【請求項19】
対象における興奮毒性又は神経細胞ストレスの状況を検出する方法であって、対象からの試料におけるAKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1の発現をインビトロで測定すること又は前記試料におけるAKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1 RNAの突然変異形態の存在を検出することを含む方法。
【請求項20】
興奮毒性又は神経細胞ストレスに関連する疾患、特に神経変性性眼疾患に対して有効な化合物の選択、同定又は特性決定の方法であって、試験化合物を、PDE4B(特に、3′非コード領域を欠失した変異体)、AKAP1及び/又はGABA(A)RAPL1もしくはそれらを発現する細胞と接触させることと、前記タンパク質に結合する、又は前記タンパク質の発現もしくは活性を阻害する化合物を実証することとを含む方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−520753(P2006−520753A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502151(P2006−502151)
【出願日】平成16年2月18日(2004.2.18)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000366
【国際公開番号】WO2004/073711
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(599022270)エグゾニ・テラピューティック・ソシエテ・アノニム (12)
【氏名又は名称原語表記】EXONHIT THERAPEUTICS SA
【Fターム(参考)】