説明

変調回路の変調度調整方法

【課題】VCXOによって変調が行われる帯域の変調度と、VCOによって変調が行われる帯域の変調度とのバランス調整作業を改善すること。
【解決手段】本発明に係る変調回路の変調度調整方法では、
音声信号とトーン信号が合成された信号をVCXOとVCOの両方に入力して変調を行う変調回路であって、VCXOによる変調の変調度とVCOによる変調の変調度のバランスを調整する電子ボリュームを備えた変調回路の変調度調整方法において、
前記変調回路に、変調出力信号の変調度を計測する計測手段を接続し、
前記変調回路に、VCXOとVCOの通過帯域が重なる重複帯域の上端における周波数の正弦波を入力したときに前記計測手段にて計測される変調度と、前記重複帯域の下端における周波数の正弦波を入力したときに前記計測手段にて計測される変調度との差が、所定の範囲内に収まるように、前記電子ボリュームを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PLLの基準発振器であるVCXO(電圧制御可能な水晶発振器)と、前記PLLの出力で制御されるVCO(電圧制御可能な発振器)の両方で変調を行う送信回路を備えた無線機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、加算アンプでトーン信号と音声信号を合成した信号を、PLLの基準発振器であるVCXOと、前記PLLのVCOの両方に変調信号として入力させることで、音声帯域成分の変調と、トーン信号成分の変調の両方の変調が可能な変調回路があり、前記変調回路で平坦な変調特性を得るためには、VCXOによって変調が行われる帯域の変調度と、VCOによって変調が行われる帯域の変調度とをバランスさせる必要がある。(特許文献1の段落番号0008参照。)
そのようなバランス調整のために、従来は、当該無線機の内部で発生させたパルス列信号の波形をオシロスコープに表示させ、パルス列信号の波形を目視しながら、VCXOへの入力レベルを調整していた。
【0003】
特許文献1には、マイク入力された音声信号とデータ送信用のパルス列信号とを加算する加算手段と、電圧制御で周波数の可変する基準周波数信号を生成するVCXOと電圧制御で発振周波数の可変するVCOを含み,VCXOの生成する基準周波数信号の周波数と一定関係を保つようにVCOの発振周波数をフィードバック制御するようにしたPLL回路とを有し、加算手段の出力を2系統に分け、1系統をPLL回路のVCXOに変調用の制御電圧として印加し、他の1系統をPLL回路のVCOに変調用の制御電圧として印加し、該VCOからFM変調出力を得るようにしたFM通信機において、加算手段の2系統の出力の内の一方の出力系統に設けられた第1レベル調整手段と、加算手段に入力される音声信号のレベルを調整する第2レベル調整手段と、を備えたFM通信機が記載されている。
上記特許文献1においては、オシロスコープに表示させた波形を目視しながら、波形が理想形に近くなるように、第1レベル調整手段の調整を手動調整することでVCXOとVCOの変調特性のバランス調整ができる点が記載されている。
【0004】
しかし、上述したように、オシロスコープに表示させ、パルス列信号の波形を目視しながらの手動調整では、迅速な調整ができないという問題と、個人差などにより安定した調整ができないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】第3354453号特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、従来のように、VCXOによって変調が行われる帯域の変調度と、VCOによって変調が行われる帯域の変調度とのバランス調整を、目視による手動で行っていては、迅速な調整も、安定した調整も困難であるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1にかかる変調回路の変調度調整方法は、
音声信号とトーン信号が合成された信号をVCXOとVCOの両方に入力して変調を行う変調回路であって、VCXOによる変調の変調度とVCOによる変調の変調度のバランスを調整する電子ボリュームを備えた変調回路の変調度調整方法において、
前記変調回路に、変調出力信号の変調度を計測する計測手段を接続し、
前記変調回路に、VCXOとVCOの通過帯域が重なる重複帯域の上端における周波数の正弦波を入力したときに前記計測手段にて計測される変調度と、前記重複帯域の下端における周波数の正弦波を入力したときに前記計測手段にて計測される変調度との差が、所定の範囲内に収まるように、前記電子ボリュームを調整することを特徴としている。
請求項2では、
音声信号とトーン信号が合成された信号をVCXOとVCOの両方に入力して変調を行う変調回路であって、VCXOによる変調の変調度とVCOによる変調の変調度のバランスを調整する電子ボリュームを備えた変調回路の変調度調整方法において、
前記変調回路に、
変調出力信号の変調度を計測する計測手段と、
前記変調回路の電子ボリュームを制御する調整用制御信号とを出力する信号出力手段と、
VCXOとVCOの通過帯域が重なる重複帯域の上端における上端周波数の正弦波を入力させる上端信号入力手段と、
前記重複帯域の下端における下端周波数の正弦波を入力させる下端信号入力手段と、
前記上端周波数の正弦波が前記変調回路に入力されたときに前記計測手段から出力される上端変調度信号と、前記下端周波数の正弦波が前記変調回路に入力されたときに前記計測手段から出力される下端変調度信号との差が、所定の範囲内に収まるように、前記信号出力手段から出力される調整用制御信号を自動的に調整する制御手段と
を接続し、
前記変調回路に、前記上端信号入力手段からの上端周波数の正弦波を入力させて、そのときの変調度を前記計測手段で計測して前記制御手段に入力させ、
前記変調回路に、前記下端信号入力手段からの下端周波数の正弦波を入力させて、そのときの変調度を前記計測手段で計測して前記制御手段に入力させ、
前記制御手段では、前記上端変調度信号と、前記下端変調度信号との差が、所定の範囲内に収まるように、前記信号出力手段から出力される調整用制御信号を自動的に調整させることによって、
変調帯域の広い範囲で平坦な変調特性が得られるように自動的に調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る請求項1の変調回路の変調度調整方法によれば、
重複帯域の上端における変調度と、前記重複帯域の下端における変調度との差が、所定の範囲内に収まるように、計測手段にて計測される変調度の値を見ながら、電子ボリュームを調整することによって、バランス調整が可能であるので、オシロスコープに表示させた波形を目視しながらの手動調整に比較して迅速な調整が可能であるとともに、個人差などによる不安定要素が排除できるので、調整精度を向上させることができる。
本発明に係る請求項2の変調回路の変調度調整方法によれば、
制御手段を用いることによって、上記電子ボリュームを調整を自動化できるので、さらに迅速な調整が可能であるとともに、さらに高精度のバランス調整が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に用いる無線機のブロック図である。
【図2】本発明を実施する場合の無線機とパソコンと変調度計測手段との接続図である。
【図3】図2に示した状態で本発明を実施する場合の手順の要部を説明するフローチャートである。
【図4】本発明に用いる無線機のVCXOとVCOの変調度の特性を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る変調回路の変調度調整方法に用いる無線機のブロック図である。
図1に示した無線機1は、低周波部2と、変調部3と、送信部4と、アンテナスイッチ5と、アンテナ接続端子51と、アンテナ6と、制御部7と、図示しない受信部とから構成されている。
前記低周波部2は、マイク21から入力される音声信号と、トーン信号発生器22から出力されるトーン信号とを、加算アンプ23で加算処理して変調部3へ出力する。前記トーン信号のレベルを調整してトーン変調度を調整するためのトーン変調度調整用電子ボリューム24を備えている。
【0011】
前記変調部3は、前記低周波部2から出力される音声信号とトーン信号とが加算されたベースバンド信号が入力されるVCXO32と、同じく前記ベースバンド信号の一部が分岐されて入力されるVCO33と、前記VCXO32から出力される発振信号が、基準周波数信号として入力されるPLL回路34と、該PLL回路34の出力を平均化して前記VCO33へ出力するローパスフィルタ35とを備えている。
前記ベースバンド信号のレベルを調整して音声変調度を調整するための音声変調度調整用電子ボリューム36と、前記VCXO32へ入力される信号のレベルを調整して、VCXO32における変調度とVCO33における変調度のバランスを調整するためのバランス調整用電子ボリューム37を備えている。
なお、前記PLL回路34は、内部に分周器及び位相比較器を備えており、図示しない経路によって前記VCO33より入力されるVCO33の発振信号と、前記VCXO32の発振信号とをそれぞれ所定の分周比で分周した信号同士の位相差を前記位相比較器で検出し、前記位相差に応じた信号出力を前記ローパスフィルタ35に出力する。
つまり、前記VCXO32は、PLL回路34、ローパスフィルタ35、VCO33より形成されるPLL(位相同期ループ)の基準発振器として動作し、前記VCO33は、PLL回路34の出力により、VCXO32が出力する発振信号との位相差が一定となるように制御されている。
【0012】
前記トーン変調度調整用電子ボリューム24は、
前記制御部7から与えられる8ビット(256段階)のトーン変調度制御信号に従って、無線機1内部で発生させるトーン信号の信号レベルを制御することで、トーン信号の変調度を調整するように構成されている。
前記音声変調度調整用電子ボリューム36は、
音声信号とトーン信号とを合成する加算アンプ23の後段に設けられ、
前記制御部7から与えられる8ビット(256段階)の音声変調度制御信号に従って、加算アンプ23から出力されるベースバンド信号の信号レベルを制御することで、音声帯域の変調度を調整するように構成されている。
前記バランス調整用電子ボリューム37は、
音声信号とトーン信号とを合成する加算アンプ23の後段で、加算されたベースバンド信号がVCO33への信号とVCXO32への信号に分岐された後に設けられ、
前記制御部7から与えられる8ビット(256段階)のバランス調整信号に従って、VCXO32へ入力されるベースバンド信号の信号レベルを制御することで、VCXO32による変調度を調整し、VCO33による変調度とのバランスをとる。前記バランス調整信号の値が大きくなるほどVCXO32に入力されるベースバンド信号の信号レベルが大きくなり、VCXO32による変調度が大きくなる。
【0013】
前記送信部4は、前記変調部3から出力される変調された信号を電力増幅する送信電力増幅回路41を備えている。アンテナ6は、アンテナスイッチ5を介して、前記送信部4もしくは図示しない受信部の何れかに切り替え接続されるように構成されている。
【0014】
前記制御部7はマイコンを内蔵したシステムコントローラとして構成され、
調整時には、調整コマンド入力端子11から入力される種々の調整コマンドに従って、
トーン変調度調整信号ライン72を介して、前記トーン変調度調整用電子ボリューム24に対してトーン変調度調整信号を出力し、
音声変調度調整ライン73を介して、前記音声変調度調整用電子ボリューム36に対して音声変調度調整信号を出力し、
バランス調整信号ライン74を介して、前記バランス調整用電子ボリューム37に対してバランス調整信号を出力し、
指定された周波数の正弦波のトーン信号を生成して、前記変調部3に入力するように構成されている。
また、無線機として運用中は、PLL制御信号ライン75を介して、前記PLL回路34へ分周比設定信号などの制御信号を出力する等のように、当該無線機1全体の制御を行うように構成されている。
【0015】
前記無線機1の調整作業時には、前記無線機1の各部は、外部から制御信号入力端子11を介して入力される制御信号に基づいて制御される。
前記無線機1のアンテナ接続端子51は、変調度を計測するために変調出力信号を外部に取り出す変調度計測用出力端子を兼ねることができる。なお、変調度計測用出力端子としては、アンテナ接続端子に限らず、前記変調部3の後段の他の適切な部分に設けることができる。
【実施例1】
【0016】
上記構成の無線機1を用いて、本発明に係る変調回路の変調度調整方法を実施する場合には、図2に示したように、無線機1と、モジュレーションアナライザ等の変調度計測手段8と、バランス調整用のプログラムがインストールされたパソコン9と接続する。
図2の接続状態においては、
前記パソコン9の制御信号出力端子91は、無線機1の各部を制御するための制御信号入力端子11と接続され、
前記無線機1の前記アンテナ接続端子51は、前記変調度計測手段8の計測用信号入力端子81と接続され、
前記変調度計測手段8の計測結果出力端子82は、前記パソコン9の計測結果入力端子92と接続されている。
【0017】
図2に示した接続状態において、
まず、音声変調度調整用電子ボリューム36の調整作業は、外部で発生させた1kHzのオーディオ信号をマイク21から入力する。この1kHzのオーディオ信号はVCXO32による変調帯域の範囲外であるため、前記オーディオ信号を入力した状態で、変調された信号の変調度を、変調度計測手段8にて計測して、所定の変調度になるように音声変調度調整用電子ボリューム36を調整すれば、加算アンプ23の後段に配置した音声変調度調整用電子ボリューム36によって音声帯域の変調の調整を行うことができる。
また、ナロー(狭帯域)バンドで通信を行う場合の音声変調度調整用電子ボリューム36に対する音声変調度調整信号の値と、ワイド(広帯域)バンドで通信を行う場合の音声変調度調整用電子ボリューム36に対する音声変調度調整信号の値とを、それぞれ設定時に記憶手段に記憶しておき、ナロー(狭帯域)バンドでの通信とワイド(広帯域)バンドでの通信とを切り替える際に、前記記憶しておいた対応する音声変調度調整信号の値を音声変調度調整用電子ボリューム36に与えることができる。
また、音声変調度調整用電子ボリューム36は、ベースバンド信号が、VCXO32への入力経路とVCO33への入力経路の二つの経路に分岐する前段であって、且つ、前記加算アンプ23の後段に設けられている。このように、音声変調度調整用電子ボリューム36は、ベースバンド信号が、VCXO32への入力経路とVCO33への入力経路の二つの経路に分岐する前段に設けられているので、バランス調整用電子ボリューム37によってバランスがとられた状態を維持しながら、音声信号の変調度を調整することが可能である。
【0018】
次に、トーン変調度調整用電子ボリューム24の調整作業は、当該無線機1内部でトーン周波数の信号を発生させた状態で、前記変調度計測手段8にて計測した変調度が、所定の変調度になるように調整する。
【0019】
次に、前記無線機1のVCXO32による変調度とVCO33による変調度のバランスを調整する手順をフローチャート(図3参照。)を参照して説明する。
PLL回路34の特性上、ある周波数以下においては主にVCXO32によって変調が掛けられ、ある周波数以上においては主にVCO33によって変調が掛けられ、VCXO32によって変調が行われる帯域と、VCO33によって変調が行われる帯域の一部は図4に示したように重複している。この重複帯域の下端の周波数を下端周波数(例えば、67Hz)とし、上端の周波数を上端周波数(例えば、250.3Hz)とする。
なお、VCXO32による変調度は、前記下端周波数以下の帯域ではほぼ平坦な特性となり、VCO33による変調度は、前記下端周波数以下の帯域ではほぼ平坦な特性となっているので、前記重複帯域の上端周波数と下端周波数における変調度を一致させれば、VCXO32による変調度とVCO33による変調度は、変調帯域の全域にわたってほぼ平坦な特性とすることができるのである。
【0020】
ステップS1においては、
前記パソコン9から無線機1へ調整コマンドを送出する。無線機1は、前記調整コマンドが入力されると無線機1の内部に備えられたトーン信号発生器22を用いて前記上端周波数(250.3Hz)の正弦波を発生させる。
ステップS2では、
無線機1の前記変調部3は、前記上端周波数の正弦波を、VCXO32とVCO33とで変調して出力するので、変調された信号は前記変調度計測手段8に入力されて変調度M1が計測され、前記パソコン9は前記変調度M1を取得して記憶手段に記憶する。
ステップS3では、
前記パソコン9から無線機1へ次の調整コマンドを送出する。無線機1は、前記次の調整コマンドが入力されると無線機1の内部に備えられたトーン信号発生器22を用いて前記下端周波数(67Hz)の正弦波を発生させる。
ステップS4では、
無線機1の前記変調部3は、前記下端周波数の正弦波を、VCXO32とVCO33とで変調して出力するので、変調された信号は前記変調度計測手段8に入力されて変調度M2が計測され、前記パソコン9は前記変調度M2を取得して記憶手段に記憶する。
【0021】
ステップS5では、
パソコン9は、記憶していた2つの変調度M1,M2の大小を比較し、M1≧M2が成立するか否かをチェックし、成立すればステップS6へ進み、成立しなければステップS7へ進む。
ステップS7では、
M1≧M2が成立しないということは、M1<M2が成立し、前記上端周波数(250.3Hz)の正弦波に対する変調度の方が小さく、VCXO32における変調度の方が大きいということであるので、前記バランス調整信号を1ステップダウンさせて、前記下端周波数(67Hz)の正弦波に対する変調度がより小さくなるように前記バランス調整用電子ボリューム37を制御する。
ステップS6では、
パソコン9は、記憶していた2つの変調度M1,M2の大小を比較し、M1=M2が成立するか否かをチェックし、成立すればステップS8へ進み、成立しなければステップS9へ進む。
なお、M1=M2が成立するとは、M1とM2との差が所定の微小差の範囲内に収まる状態になったことを意味している。もしくは、M1とM2の数値を比較したとき、最上位桁から所定の桁までの数値が一致する状態になったことを意味している。
【0022】
ステップS9では、
M1=M2が成立しないということは、M1>M2が成立し、前記上端周波数(250.3Hz)の正弦波に対する変調度の方が大きく、VCXO32における変調度の方が小さいということであるので、前記バランス調整信号を1ステップアップさせて、前記下端周波数(67Hz)の正弦波に対する変調度がより大きくなるように前記バランス調整用電子ボリューム37を制御する。
ステップS8では、
M1=M2が成立してバランス調整が終了したので、終了時の前記バランス調整信号の値を記憶手段に記憶して、終了する。
【0023】
このように、順次、上端周波数の正弦波と、下端周波数の正弦波とを発生させて、それらの変調度を取得し、2つの変調度の差が所定の範囲内に収まる状態になるように、バランス調整用電子ボリュームを自動的に調整するので、VCXO32とVCO33の両方における変調度が広い範囲で平坦になるように調整することが可能となるのである。
なお、前記上端周波数および下端周波数の値はあくまでも例示であって、重複範囲の上端近傍の周波数もしくは下端近傍の周波数であって、且つ変調特性が平坦な領域の周波数であればよい。
また、バランス調整用電子ボリューム37は、ベースバンド信号が分岐した後であれば、VCXO32の入力経路ではなく、VCO33への入力経路に設けてもよい。その場合、バランス調整用電子ボリューム37と、音声変調用電子ボリューム36の両方で音声帯域の変調度が決まることを考慮して、音声変調用電子ボリューム36の調整を行う前に、バランス調整用電子ボリューム37を上記の方法で調整すればよい。
【0024】
また、図1のブロック図に示したように、バランス調整信号74によって前記バランス調整用電子ボリューム37を調整するときには、VCXO32における変調度は変わるが、主にVCO33によって変調が掛けられる音声帯域の信号の変調度への影響は小さい。また、前記音声変調度調整信号73によって前記音声変調度調整用電子ボリューム36を調整するとき、VCO33による変調度とともにVCXO32による変調度もバランスを保った状態で変わるので、バランスを一定に保つことができる。
以上のように、無線機1の変調度が広い範囲で平坦になるようにするバランス調整を、変調度計測手段8と、パソコン9とを用いて自動的に行うことができるので、
無線機の調整作業が、作業者の主観的な調整に頼ることなく、調整精度が向上するという効果が得られるとともに、
人手のかかる工程が減るので、人員削減または時間削減ができて、迅速な調整作業が可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1 無線機
2 低周波部
3 変調部、変調回路
4 送信部
51 アンテナ接続端子
7 制御部
21 マイク
22 トーン信号発生器、上端信号入力手段、下端信号入力手段
23 加算アンプ
24 トーン変調度調整用電子ボリューム
32 VCXO
33 VCO
34 PLL回路
36 音声変調度調整用電子ボリューム
37 バランス調整用電子ボリューム、電子ボリューム
72 トーン変調度制御信号
73 音声変調度調整信号
74 バランス調整信号
8 変調度計測手段、計測手段
9 パソコン、制御手段、信号出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号とトーン信号が合成された信号をVCXOとVCOの両方に入力して変調を行う変調回路であって、VCXOによる変調の変調度とVCOによる変調の変調度のバランスを調整する電子ボリュームを備えた変調回路の変調度調整方法において、
前記変調回路に、変調出力信号の変調度を計測する計測手段を接続し、
前記変調回路に、VCXOとVCOの通過帯域が重なる重複帯域の上端における周波数の正弦波を入力したときに前記計測手段にて計測される変調度と、前記重複帯域の下端における周波数の正弦波を入力したときに前記計測手段にて計測される変調度との差が、所定の範囲内に収まるように、前記電子ボリュームを調整することを特徴とする変調回路の変調度調整方法。
【請求項2】
音声信号とトーン信号が合成された信号をVCXOとVCOの両方に入力して変調を行う変調回路であって、VCXOによる変調の変調度とVCOによる変調の変調度のバランスを調整する電子ボリュームを備えた変調回路の変調度調整方法において、
前記変調回路に、
変調出力信号の変調度を計測する計測手段と、
前記変調回路の電子ボリュームを制御する調整用制御信号とを出力する信号出力手段と、
VCXOとVCOの通過帯域が重なる重複帯域の上端における上端周波数の正弦波を入力させる上端信号入力手段と、
前記重複帯域の下端における下端周波数の正弦波を入力させる下端信号入力手段と、
前記上端周波数の正弦波が前記変調回路に入力されたときに前記計測手段から出力される上端変調度信号と、前記下端周波数の正弦波が前記変調回路に入力されたときに前記計測手段から出力される下端変調度信号との差が、所定の範囲内に収まるように、前記信号出力手段から出力される調整用制御信号を自動的に調整する制御手段と
を接続し、
前記変調回路に、前記上端信号入力手段からの上端周波数の正弦波を入力させて、そのときの変調度を前記計測手段で計測して前記制御手段に入力させ、
前記変調回路に、前記下端信号入力手段からの下端周波数の正弦波を入力させて、そのときの変調度を前記計測手段で計測して前記制御手段に入力させ、
前記制御手段では、前記上端変調度信号と、前記下端変調度信号との差が、所定の範囲内に収まるように、前記信号出力手段から出力される調整用制御信号を自動的に調整させることによって、
変調帯域の広い範囲で平坦な変調特性が得られるように自動的に調整することを特徴とする変調回路の変調度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−200172(P2010−200172A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44789(P2009−44789)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】