説明

変速操作装置の冷却構造

【課題】 変速操作装置の発熱を効果的に抑制することにより、変速操作装置の推力の低下を抑制した変速操作装置の冷却構造を提供する。
【解決手段】 変速機本体2にその内部に収容された変速要素を操作して変速を行うために取り付けられた変速操作装置3を冷却する構造であって、エンジンの回転に伴って回転されるクラッチ装置35が収容された上記変速機本体2の端部のハウジング34に、上記クラッチ装置35の回転によって上記ハウジング34内に生じる回転風Aをハウジング34外へ排出するための排出口43を設けると共に、該排出口43からハウジング34内の空気がハウジング34外へ排出されるに応じてハウジング34外の新たな空気をハウジング34内に導入するための吸入口45を設け、上記排出口43にダクト44を接続し、該ダクト44の出口44aを上記変速操作装置3に指向させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機本体に取り付けられた変速操作装置を冷却する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の変速機として、変速機本体に、この本体内に収容された変速要素(変速スリーブ、シフトフォーク等)を操作する変速操作装置を取り付けたものが開発・商品化されており、上記変速操作装置の駆動源に電磁ソレノイドを用いたものが知られている(特許文献1)。
【0003】
この変速操作装置は、電磁ソレノイドを構成するコイルに通電することでコイル内に設けられた固定鉄心を磁化させ、その近傍に配置された可動鉄心を上記固定鉄心に吸引させ、上記可動鉄心に連結された作動ロッドの移動によって上記変速要素を操作し、変速を成すようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−14105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者の研究によれば、変速動作が短時間内に多数回にわたって行われた場合、通電されるコイル及びその周辺が熱を帯びて、電磁ソレノイドの吸引力(推力)が低下することが分かった。そして、このように推力が低下することにより、変速動作がスムーズに行われない不具合が生じ得る。
【0006】
即ち、従来の電磁ソレノイドの放熱・冷却は、変速機本体の表面を流れる車速風に依存していたため、車速が低い場合、放熱・冷却効果は殆ど期待できない。このため、特に低車速で変速操作が所定時間内に多数回行われた場合、電磁ソレノイドの放熱・冷却が不十分となって推力の低下が顕著となり、変速動作不良の不具合が生じ易い。
【0007】
この対策として、電磁ソレノイドの能力を上記推力の低下を見越して予め高めに設計することが考えられるが、構造の巨大化及び消費電力の増加を招き、コスト面においても不利となる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、変速操作装置の発熱を効果的に放熱・冷却することにより、変速操作装置の推力の低下を抑制した変速操作装置の冷却構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、変速機本体にその内部に収容された変速要素を操作して変速を行うために取り付けられた変速操作装置を冷却する構造であって、エンジンの回転に伴って回転されるクラッチ装置が収容された上記変速機本体の端部のハウジングに、上記クラッチ装置の回転によって上記ハウジング内に生じる回転風をハウジング外へ排出するための排出口を設けると共に、該排出口からハウジング内の空気がハウジング外へ排出されるに応じてハウジング外の新たな空気をハウジング内に導入するための吸入口を設け、上記排出口にダクトを接続し、該ダクトの出口を上記変速操作装置に指向させたものである。
【0010】
上記ハウジングの内部に、上記排出口よりも上記クラッチ装置の回転方向前方側に位置させて、上記回転風の一部を堰き止めて上記排出口から排出させるための邪魔板を設けてもよい。
【0011】
上記ダクト内に、このダクト内を流れる空気の流れを促進するための換気扇を設けてもよい。
【0012】
上記吸入口、排出口又はダクト内のうちの少ないとも一つに、フィルタを設けてもよい。
【0013】
上記変速操作装置は、電磁ソレノイドを有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エンジンの回転に伴って回転されるクラッチ装置によって生成された風が変速操作装置に供給されるので、変速操作装置の発熱を車速風に依存することなく効果的に放熱・冷却することができ、変速操作装置の推力の低下を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0016】
図1は車両に搭載される変速機1の側面図を示し、図2は図1のII−II線矢視図である。
【0017】
変速機本体2内には、通常の二軸式のマニュアルトランスミッションと略同様の変速要素が収容されている。そして、変速要素を構成する変速スリーブに係合されたシフトフォークが、変速機本体2の外部に取り付けられた変速操作装置3によって操作され、変速が成されるようになっている。すなわち、変速機本体2の外部には、その内部に収容された変速要素(シフトフォーク)を操作して変速を行うための変速操作装置3が取り付けられている。
【0018】
変速操作装置3の構造を図3〜図5を用いて説明する。変速操作装置3は、変速機本体2内の4本のシフトフォークにそれぞれ設けられた図4に示す各シフトブロックS1、S2、S3、S4のうちの一つを適宜選択し、選択したシフトブロック(例えばS1)を図中裏表方向に操作して変速操作を行うものである。
【0019】
変速操作装置3は、いずれかのシフトブロックS1〜S4に当接してその操作を行うためのシフトレバー4を有する。シフトレバー4は、スライド筒5に取り付けられており、このスライド筒5は、装置3のケーシング6内に軸受7を介して軸支されたコントロールシャフト8に、スプライン9を介して装着されている。コントロールシャフト8は、シフトブロックS1〜S4の並列方向と平行に配置されている。
【0020】
上記スライド筒5がセレクトアクチュエータSLによってコントロールシャフト8の軸方向に移動されることで、上記シフトレバー4がシフトブロックS1〜S4の並列方向に沿って移動される。また、上記コントロールシャフト8がシフトアクチュエータSFによって回動されることで、上記シフトレバー4の先端部4a(シフトブロックS1〜S4に当接する部分)が図4の裏表方向に移動される。
【0021】
セレクトアクチュエータSLは、図3に示すように、電磁ソレノイド10と、電磁ソレノイド10によって作動される作動ロッド11と、作動ロッド11に連結されたリンク機構12と備え、電磁ソレノイド10によって作動ロッド11を作動させ、リンク機構12を介してシフトレバー4をコントロールシャフト8の軸方向に移動するものである。
【0022】
電磁ソレノイド10は、水平に配置されたコイル13と、その一端内の略半分に収容された筒状の固定鉄心14と、固定鉄心14を貫通して水平方向に移動可能に設けられた作動ロッド11の端部に装着された可動鉄心15とを備え、コイル13に通電されることで固定鉄心14が磁化され、可動鉄心15が固定鉄心14に吸引されることで作動ロッド11が水平にスライドするようになっている。
【0023】
作動ロッド11は、第1〜第4レバーから成るリンク機構12に連結されている。第1レバー16は、一端がボールジョイントを介して作動ロッド11に連結され、他端が支軸に枢支されている。第2レバー17は、屈曲されており、一端が第1レバー16に固定されていると共に支軸に枢支され、他端にピンを有する。第3レバー18は、一端に上記ピンが収容される長穴を有し、他端が支軸に枢支されている。第4レバー19は、一端が第3レバー18に固定されていると共に支軸に枢支され、他端が図4に示す上記スライド筒5に設けられた凹部に係合されている。
【0024】
以上の構成によれば、上記コイル13への給電に伴う作動ロッド11のスライドに応じてリンク機構12の第4レバー19が図3にて時計方向に回動し、図4にて上記スライド筒5が右方に移動し、シフトレバー4が右方に移動する。
【0025】
図4に示すように、上記スライド筒5の右方には、シフトレバー4の位置を各シフトブロックS1〜S4の位置(第1セレクト位置〜第4セレクト位置)に規制するためのセレクト位置規制機構20が配置されている。
【0026】
セレクト位置規制機構20は、第1コイルバネ21、第2コイルバネ22、第3コイルバネ23、第1移動リング24及び第2移動リング25を有する。第1コイルバネ21、第1移動リング24、第2コイルバネ22及び第2移動リング25は、順番に上記コントロールシャフト8にそれぞれ挿通されている。
【0027】
第1移動リング24は、筒部と外側フランジ部と内側フランジ部とからなり、内側フランジ部がコントロールシャフト8に挿通され、外側フランジ部が上記ケーシング6に設けられた第1ストッパ26に当接され、左方への移動が制限されている。第2移動リング25は、筒部と外側フランジ部と内側フランジ部とからなり、内側フランジ部がコントロールシャフト8に挿通され、筒部に第3コイルバネ23が挿通され、外側フランジ部が上記ケーシング8に設けられた第2ストッパ27に当接され、左方への移動が制限されている。
【0028】
第1コイルバネ21は、スライド筒5の端面と第1移動リング24の内側フランジとの間に収容され、第2コイルバネ22は、第1移動リング24の内側フランジと第2移動リング25の内側フランジとの間に収容される。第3コイルバネ23は、第2移動リング25の外側フランジとケーシング6の段差部との間に収容される。第2コイルバネ22のバネ力は、第1コイルバネ21のバネ力よりも大きく設定され、第3コイルバネ23のバネ力は、第1コイルバネ21のバネ力及び第2コイルバネ22のバネ力の合力よりも大きく設定されている。
【0029】
以上の構成により、上記コイル13に通電される電力の大きさ異ならせ、作動ロッド11に生じる推力を調節することで、シフトレバー4の位置を第1セレクト位置〜第4セレクト位置(ブロックS1〜S4の位置)に調節することができる。
【0030】
すなわち、コイル13に通電しないときには、図4に示すように、各コイルバネ21、22、23によってスライド筒5が実線に位置され、シフトレバー4が第1セレクト位置(ブロックS1の位置)に位置される。このときシフトレバー4は、図示しないストッパによって、左方への移動が規制されている。
【0031】
コイル13に所定電力(例えば2V)を通電すると、その電力に応じた推力で作動ロッド11がスライドされ、リンク機構12を介して図4に示す第1コイルバネ21が圧縮され、スライド筒5は、その右端が第1移動リング24の外側フランジに当接する位置に移動する。これにより、スライド筒5に設けられたシフトレバー4が第2セレクト位置(ブロックS2の位置)となる。
【0032】
コイル13に更に大きな所定電力(例えば4V)を通電すると、作動ロッド11が更に大きな力でスライドされ、リンク機構12を介して第2コイルバネ22もが圧縮され、スライド筒5は、第1移動リング24の外側フランジが第2移動リング25の外側フランジに当接する位置まで移動する。このとき、第1移動リング24の筒部は、第2移動リング25の筒部に内包される。これにより、シフトレバー4が第3セレクト位置(ブロックS3の位置)となる。
【0033】
コイル13に更に大きな所定電力(例えば8V)を通電すると、作動ロッド11が更に大きな力でスライドされ、リンク機構12を介して第3コイルバネ23もが圧縮され、スライド筒5は、第2移動リング25の内側フランジがケーシング8の段差部に当接する位置まで移動する。これにより、シフトレバー4が第4セレクト位置(ブロックS4の位置)となる。
【0034】
次に、シフトアクチュエータSFについて主に図5を用いて説明する。シフトアクチュエータSFは、上記コントロールシャフト8の端部にその中間部が挿通固定された作動レバー28と、作動レバー28の両端にそれぞれボールジョイントを介して連結された作動ロッド29と、各作動ロッド29をそれぞれ作動させるための電磁ソレノイド30とを有する。
【0035】
各電磁ソレノイド30は、鉛直に配置されたコイル31と、その一端の略上半分に収容された筒状の固定鉄心32と、固定鉄心32を貫通して上下方向に移動可能に設けられた作動ロッド29の下端部に装着された可動鉄心33とを備え、コイル31に通電されることで固定鉄心32が磁化され、可動鉄心33が固定鉄心32に吸引されることで作動ロッド29が上方にスライドするようになっている。
【0036】
例えば、図5にて左方のコイル31に通電すると、左方の固定鉄心32が磁化され、可動鉄心33が固定鉄心32に吸着され、作動ロッド29が上方にスライドし、作動レバー28を介してコントロールシャフト8が時計方向に回動される。これにより、図4においてコントロールシャフト8にスプライン9を介して装着されたスライド筒5が図中右方から見て時計方向に回動され、シフトレバー4の先端部4aが図中手前側に移動する。
【0037】
逆に、図5にて右方のコイル31に通電すると、コントロールシャフト8が反時計方向に回動され、図4にてシフトレバー4の先端部4aが図中奥側に移動する。また、図5にて双方のコイル31、31に通電すると、双方の作動ロッド29、29に生じる力が釣り合って作動レバー28が図5に示す水平状態となり、コントロールシャフト8の回動位置がニュートラルの位置となり、図4に示すシフトレバー4がその回動方向においてニュートラルの位置となる。
【0038】
以上の変速操作装置3によれば、セレクトアクチュエータSLの電磁ソレノイド10のコイル13に所定電力(2V、4V、8V)を供給すること又は給電をカットすることにより、シフトレバー4のセレクト方向の位置を第1セレクト位置〜第4セレクト位置の内から所望の位置に移動することができる。また、シフトアクチュエータSFのいずれかの電磁ソレノイド30、30のコイル31、31に給電すること又は双方のコイル31、31に給電することにより、シフトレバー4の先端部4aを図4にて裏表方向及び中立位置に移動することができる。
【0039】
図例では、第1セレクト位置のブロックS1にて後退−中立−1速が切り替えられ、第2セレクト位置のブロックS2にて2速−中立−3速が切り替えられ、第3セレクト位置のブロックS3にて4速−中立−5速が切り替えられ、第4セレクト位置のブロックS4にて6速−中立−7速が切り替えられるようになっている。
【0040】
さて、このようにシフトレバー4を移動させる駆動源として電磁ソレノイド10、30、30を用いた変速操作装置3においては、変速動作が短時間内に多数回にわたって行われた場合、通電されるコイル13、31、31及びその周辺が熱を帯びて、電磁ソレノイド10、30、30の作動力(推力)が低下する。そして、このように推力が低下することにより、変速動作がスムーズに所定時間内に行われない不具合が生じ得る。
【0041】
そこで、上記変速操作装置3を放熱・冷却して電磁ソレノイド10、30、30の推力の低下を抑制するために、図1及び図2に示すような冷却構造が変速機本体2に設けられている。この冷却構造は、変速機本体2の端部のクラッチハウジング34内に収容されたクラッチ装置35の回転を利用し、クラッチ装置35の回転に伴ってクラッチハウジング34内に生じた回転風Aをハウジング34外に排出し、その風を上記変速操作装置3に導くことで、電磁ソレノイド10、30、30のコイル13、31、31及びその周辺の熱を放熱させるものである。以下、この冷却構造について説明する。
【0042】
図1に示すように、変速機本体2の端部には、クラッチハウジング34が設けられており、このハウジング34の内部には、エンジンのクランク軸の回転に伴って回転されるクラッチ装置35が収容されている。図1は、クラッチ装置35の説明のため、便宜的にクラッチ装置35をハウジング34から左方に多少引き出した様子を示すものである。
【0043】
クラッチ装置35は、エンジンのクランク軸に連結されたフライホイール等の回転板36と、回転板36の側面に配置され変速機1の入力軸37にスプラインやキー等を介して取り付けられたクラッチディスク38と、クラッチディスク38の回転板36と反対側の面に配置されたプレッシャプレート39と、プレッシャプレート39を回転板36の方向に押し付けるためのダイヤフラムスプリング40と、上記入力軸37にスライド可能に挿通されたレリーズスリーブ41と、回転板36に取り付けられ上記各部品を覆うと共にダイヤフラムスプリング40を支持するクラッチカバー42とを備えている。
【0044】
レリーズスリーブ41を図示しないレリーズフォークにより左方に移動させると、ダイヤフラムスプリング40は、その内周部が外周部より左方に位置するように変形する。すると、ダイヤフラムスプリング40によるプレッシャプレート39の左方への押し付け力が略零となり、クラッチディスク38の回転板36への押し付けが解放され、クラッチディスク38が回転板36の回転から切り離される(クラッチ断)。
【0045】
また、レリーズスリーブ41をフリーにすると、ダイヤフラムスプリング40は、自身のバネ力により図1の形状に復元する。すると、このダイヤフラムスプリング40のバネ力によってプレッシャプレート39が左方に押し付けられ、クラッチディスク38が回転板36に押し付けられ、クラッチディスク38が回転板36の回転と一体的に回転する(クラッチ接)。
【0046】
クラッチカバー42は、上記各部品を覆ってクラッチ装置35の外郭を形成するものであるが、回転板36に取り付けられているため、クラッチの断接に拘わらず、クランク軸によって回転板36が回転されることで回転される。よって、クラッチ装置35が上記クラッチハウジング34の内部に収容されると、クラッチカバー42はクラッチの断接に拘わらず回転され、ハウジング34内の空気を旋回させて回転風Aを生成する。
【0047】
図2に示すように、ハウジング34の外周壁には、この回転風Aを外部に排出するための排出口43が設けられている。排出口43は図例ではハウジング34の略上部に配置されている。これにより、排出口43に接続される後述するダクト44が変速機本体2の上方に配置されることになり、車両の走行中に舞い上がった小石や砂利等がダクト44に当たってダクト44が損傷することを抑制できる。
【0048】
また、ハウジング34の外周壁には、排出口43からハウジング34内の空気がハウジング34外へ排出されるに応じてハウジング34外の新たな空気をハウジング34内に導入するための吸入口45が設けられている。吸入口45は、排出口43に対して上記回転風Aの方向の上流側に配置されている。詳しくは、吸入口45は、吸入口45から排出口43へ向かう回転風Aの経路がなるべく長くなるように、ハウジング34の略側部に配置されている。これにより、クラッチ装置35の回転による回転風Aの加速距離を可及的に稼ぐことができる。
【0049】
ハウジング34の内部には、排出口43よりもクラッチ装置35の回転方向前方側に位置させて、即ち排出口43の近傍の回転風Aの下流側に位置させて、回転風Aの一部を堰き止めて排出口43からの排出を促すための邪魔板46が設けられている。邪魔板46は、略円錐状に形成されたハウジング34の内面にその径方向に沿って形成されており、ハウジング34の補強リブを兼ねるものである。すなわち、この位置には、もともと補強リブが設けられているので、その補強リブの形状を多少改変することで上記邪魔板46としている。よって、邪魔板46は、低コストで形成できる。
【0050】
ハウジング34の外部には、図1に示すように、吸入口45を覆って、吸入ケース47が取り付けられている。吸入ケース47は、上方に入口47aを有し、変速機本体2の上方の空気を吸い込んでハウジング34内に導入するものである。これにより、車両の走行中に変速機本体2の側方あたりまで舞い上がった小石や砂利等がハウジング34内に入ることを抑制できる。なお、入口47aに小石や砂利等の侵入を防止するフィルタを設けてもよい。
【0051】
ハウジング34の外部には、上記排出口43に接続されたダクト44(冷却ダクト)が設けられている。ダクト44は変速機本体2の長手方向に延出され、その出口44aが上記変速操作装置3に向けられている。詳しくは、出口44aは、変速操作装置3の三つの電磁ソレノイド10、30、30に略均等に風が当たるように向けられている。
【0052】
本実施形態の作用を述べる。
【0053】
図1に示すように、ハウジング34の内部に収容されたクラッチ装置35は、クラッチの断接に拘わらずクラッチカバー42が回転板36の回転に伴って回転するため、車両の走行停止に拘わらずエンジンの運転中図2に示すようにハウジング34内に回転風Aを生成する。回転風Aは、その一部が邪魔板46に堰き止められ、排出口43から排出され、ダクト44を通って変速操作装置3の三つの電磁ソレノイド10、30、30に供給される(吹き当てられる)。これにより、変速操作に伴って電磁ソレノイド10、30、30に生じた熱が、車速(車速風)に依存することなく効果的に放熱され、電磁ソレノイド10、30、30の推力の低下が抑制される。
【0054】
ここで、回転風Aを発生するクラッチカバー42は、回転板36(クランク軸)と一体回転するので、回転板36の回転数(rpm)即ちクランク軸の回転数が高くなりがちな低速ギヤ段で走行するとき、つまり車速が比較的低いときには、クラッチカバー42の回転数が高まって回転風Aが強くなる。よって、低い車速時には、変速機本体2の表面を流れる車速風による変速操作装置3の放熱・冷却が余り期待できないものの、上述の強い回転風Aによって効果的に変速操作装置3を放熱・冷却できる。また、高速ギヤ段で走行するときには、そのギヤ比によりクラッチカバー42の回転数がそれ程高くなるわけではないため、回転風Aが比較的弱くなるものの、このとき変速機本体2の表面を流れる車速風が強くなるため、変速操作装置3は上記回転風Aに加えこの強い車速風によっても放熱・冷却される。
【0055】
こうして、変速操作装置3は、車速の大小に拘わらず即ち車速風の強弱に拘わらず効果的に放熱・冷却され、電磁ソレノイド10、30、30の推力の低下が抑制される。よって、変速操作装置3は、常に確実にスムーズな変速動作を行うことができる。
【0056】
なお、本発明の実施形態は上述のものに限定されることはない。
【0057】
例えば、上記ダクト44に、このダクト44内を流れる空気(回転風A)の流れを促進するための換気扇を設けてもよい。換気扇は、変速機1の入力軸37等の回転力を利用して回転駆動されるようになっていてもよく、バッテリーに接続されたモータを駆動源としてもよい。
【0058】
また、上記吸入口45、排出口43又はダクト44内のうちの少ないとも一つに、空気中の塵芥などを捕集するためのフィルタを設けてもよい。
【0059】
また、上記クラッチカバー42の外面に、クラッチハウジング34内の空気を効果的に旋回させて回転風Aを生成するためのフィンを、放射状又はスパイラル状に設けてもよい。
【0060】
また、上記クラッチ装置35、上記変速操作装置3は、図例の構成に限定されるものではなく、種々の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態に係る変速制御装置の冷却構造を示す説明図である。
【図2】図1のII−II線矢視図である。
【図3】変速制御装置の一部破断平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 変速機
2 変速機本体
3 変速操作装置
35 クラッチ装置
34 ハウジング
A 回転風
43 排出口
45 吸入口
44 ダクト
44a 出口
46 邪魔板
10 電磁ソレノイド
30 電磁ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機本体にその内部に収容された変速要素を操作して変速を行うために取り付けられた変速操作装置を冷却する構造であって、
エンジンの回転に伴って回転されるクラッチ装置が収容された上記変速機本体の端部のハウジングに、上記クラッチ装置の回転によって上記ハウジング内に生じる回転風をハウジング外へ排出するための排出口を設けると共に、該排出口からハウジング内の空気がハウジング外へ排出されるに応じてハウジング外の新たな空気をハウジング内に導入するための吸入口を設け、
上記排出口にダクトを接続し、
該ダクトの出口を上記変速操作装置に指向させた
ことを特徴とする変速操作装置の冷却構造。
【請求項2】
上記ハウジングの内部に、上記排出口よりも上記クラッチ装置の回転方向前方側に位置させて、上記回転風の一部を堰き止めて上記排出口から排出させるための邪魔板を設けた請求項1記載の変速操作装置の冷却構造。
【請求項3】
上記ダクト内に、このダクト内を流れる空気の流れを促進するための換気扇を設けた請求項1又は2記載の変速操作装置の冷却構造。
【請求項4】
上記吸入口、排出口又はダクト内のうちの少ないとも一つに、フィルタを設けた請求項1〜3記載の変速操作装置の冷却構造。
【請求項5】
上記変速操作装置は、電磁ソレノイドを有するものである請求項1〜4記載の変速操作装置の冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−10033(P2006−10033A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191155(P2004−191155)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】