説明

変速機の同期装置

【課題】リバースシフト時のシフティングキーによるシンクロ押しの発生およびニュートラル時のシフティングキーの戻り不良の発生の回避と、シフト荷重の変化の抑制との両立を図ることが可能な変速機の同期装置を提供する
【解決手段】変速機の同期装置では、スリーブ111の外周側にリバースドリブンギヤ102が一体的に設けられる。シフティングキー112のニュートラル状態で、このシフティングキー112の凸部1121とスリーブ111のキー溝1112との間には、隙間D1が設けられる。隙間D1の軸方向寸法は、シフティングキー112とアウタシンクロナイザリング115とが接触することがないような隙間B0の軸方向寸法から、シフティングキー112のニュートラル状態におけるシフティングキー112とアウタシンクロナイザリング115との初期隙間の軸方向寸法を減算した寸法に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の変速機の同期装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の変速機として、噛み合いクラッチによって変速段が切り換えられる常時噛み合い方式のものが知られている。このような常時噛み合い方式の変速機には、同期装置が備えられており、この同期装置により非伝動状態から伝動状態への切り換えを円滑に行うようにしている。変速機の同期装置は、例えば、回転軸上に、変速歯車、クラッチハブ、スリーブ、シフティングキー(インデックスキー)、シンクロナイザリングなどを備えた構成となっている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
具体的には、同期装置は、スリーブのニュートラル位置(中立位置)から何れかの変速位置(伝達位置)への移動にともなって、シフティングキーがシンクロナイザリングに当接され、シンクロナイザリングが変速歯車側に押圧されるようになっている。そして、シンクロナイザリングと変速歯車との間の摩擦力で、スリーブと変速歯車とが同期回転させられるようになっている。また、同期装置には、シフティングキーをスリーブの軸方向への移動とともに移動させるために、シフティングキーに径方向外方を向く凸部が設けられ、スリーブの内周側にその凸部と係合する凹部(キー溝)が設けられている。
【0004】
ところで、車両用の変速機においては、前進段には上述のような同期装置が設けられているものの、後進段には同期装置が設けられていないものが多い。その理由は、通常、前進段から後進段にシフトチェンジするリバースシフト操作は、クラッチが解放されかつ車両が停車した状態で行われるからである。この場合、変速機構のインプットシャフト上のリバースドライブギヤと、カウンタシャフト(FF車両の場合にはアウトプットシャフトとも呼ばれる)上のリバースドリブンギヤと、両ギヤ間のリバースアイドラギヤのうち、1つ(例えばリバースアイドラギヤ)を摺動させることによって、これらを伝動状態に噛み合わせる選択摺動式のリバースギヤ装置などが用いられる。
【0005】
ここで、リバースギヤ装置をリバースアイドラギヤを軸方向へ摺動する構成とした場合、以下のような点が懸念される。
【0006】
リバースシフト時にリバースギヤ装置を伝動状態に噛み合わせる際、リバースアイドラギヤによりリバースドリブンギヤが押されるため、リバースドリブンギヤが傾く。カウンタシャフト上のリバースドリブンギヤは上述した同期装置のスリーブ(具体的には、1段変速用および2段変速用のスリーブなど)の外周側に一体的に設けられる場合が多く、この場合、リバースドリブンギヤが傾くと、スリーブも傾くことになる。そして、スリーブの傾きの軸方向分だけ、シフティングキーが軸方向へ移動することになる。
【0007】
シフティングキーは、リバースシフト時には、ニュートラルの状態(中立位置)にあり、シンクロナイザリング(具体的には、2段変速用のシンクロナイザリングなど)との間には所定の隙間があいている。しかし、その隙間に比べシフティングキーの上記移動量が大きければ、シフティングキーによりシンクロナイザリングが押されてしまうという不具合(いわゆるシンクロ押しの不具合)が発生する。
【0008】
そのようなシフティングキーによるシンクロ押しの不具合を回避するには、ニュートラル時のシフティングキーとシンクロナイザリングとの隙間を拡大することが考えられる。特許文献1には、シンクロメッシュ機構(同期装置)のニュートラル時において、軸方向への振動にかかわらず、シフティングキーのシンクロナイザリングへの当接を防止するように、シフティングキーとシンクロナイザリングとの間に所定寸法の隙間を設けることが示されている。
【0009】
しかし、シフティングキーとシンクロナイザリングとの隙間を大きくすると、シフティングキーの可動範囲が大きくなるため、シフティングキーのキー溝への戻りが悪化する。つまり、ニュートラル時にシフティングキーの凸部がスリーブのキー溝内に戻りきらないという不具合(いわゆる戻り不良の不具合)が発生する可能性がある。
【0010】
そのような戻り不良の不具合を回避するには、例えば特許文献2に示されるように、スリーブのキー溝の傾斜面の形状(傾斜角度)や、シフティングキーの凸部の傾斜面の形状(傾斜角度)を変更することが考えられるが、その変更にともなってシフト荷重(シフトフィーリング)が変化してしまう。つまり、シフト荷重はシフティングキーの凸部とスリーブのキー溝との係合状態(接触状態)に応じて決まるため、シフティングキーの凸部の形状またはスリーブのキー溝の形状が変更されれば、シフト荷重が当初(変更前に)想定されていたものとは異なるという不具合がある。
【特許文献1】特開平10−47377号公報
【特許文献2】特開2004−52859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来では、リバースシフト時のシフティングキーによるシンクロ押しの発生、および、ニュートラル時のシフティングキーの戻り不良の発生を回避しながら、シフト荷重の変化を抑制することは困難であった。したがって、その点で改善の余地がある。
【0012】
本発明は、そのような点に着目してなされたものであり、そのようなシンクロ押しの発生および戻り不良の発生の回避と、シフト荷重の変化の抑制との両立を図ることが可能な変速機の同期装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、変速機の同期装置であって、回転軸に相対回転不能に配設されたクラッチハブと、前記クラッチハブの外周に相対回転不能かつ軸方向の相対移動可能に配設され、内周側に内周歯および凹部(キー溝)が設けられたスリーブと、前記クラッチハブに隣接して、前記回転軸に対して相対回転可能に配設され、前記スリーブの内周歯と噛み合う噛合歯および前記クラッチハブに向かうほど小径となる外周テーパ面が設けられた変速歯車と、前記クラッチハブに対し周方向所定範囲のみ相対回転可能に設けられ、前記変速歯車の外周テーパ面に対向する内周テーパ面が設けられたシンクロナイザリングと、前記クラッチハブと前記スリーブとの間に設けられ、前記クラッチハブに対して相対回転不能かつ軸方向に移動可能に設けられ、前記スリーブの凹部と係合可能な凸部が設けられたシフティングキーと、前記シフティングキーを前記スリーブ側に向けて付勢するスプリングとを備えている。また、前記スリーブの移動にともない前記シフティングキーが軸方向に移動されて前記シンクロナイザリングが押動されることによって前記シンクロナイザリングと前記変速歯車との間で摩擦力が発生し、この摩擦力により前記スリーブの内周歯と前記変速歯車の噛合歯とが同期して噛み合うように構成されている。そして、前記スリーブの外周側には、リバースドライブギヤとリバースドリブンギヤと両ギヤ間のリバースアイドラギヤのうち1つを軸方向へスライドさせることによって、これらを伝動状態に噛み合わせるリバースギヤ装置に用いられるいずれか1つのギヤ(ここではリバースギヤという)が一体的に設けられており、前記シフティングキーのニュートラル状態で、このシフティングキーの凸部と前記スリーブの凹部との間には、その凸部のリバースギヤをスライドさせる方向とは反対側に隙間が設けられ、前記隙間の軸方向寸法として、前記シフティングキーとシンクロナイザリングとが接触することがないような隙間の軸方向寸法から、前記シフティングキーのニュートラル状態における前記シフティングキーとシンクロナイザリングとの初期隙間の軸方向寸法を減算した寸法が少なくとも確保されていることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、シフティングキーの凸部のリバースギヤをスライドさせる方向とは反対側に上記隙間が設けられているので、リバースシフト時にリバースギヤとともにスリーブがシンクロナイザリング側へ押され、移動したとしても、その移動量が上記隙間の寸法よりも小さい場合には、スリーブの凹部がシフティングキーの凸部と係合することはない。この場合、シフティングキーがシンクロナイザリング側へ移動することも、シフティングキーがシンクロナイザリングに接触することもない。また、スリーブの移動量が上記隙間の寸法以上の場合には、凹部が凸部と係合し、シフティングキーがシンクロナイザリング側へ移動することになるが、そのシフティングキーの移動量が上記初期隙間の寸法を超えることはない。この場合にも、シフティングキーがシンクロナイザリングに接触することはない。
【0015】
これにより、リバースシフト時にスリーブがシンクロナイザリング側へ移動したとしても、シフティングキーがシンクロナイザリングに接触することはない。したがって、リバースシフト時のシンクロ押しの発生を確実に回避することができる。
【0016】
しかも、リバースシフト時のシンクロ押しの発生を回避するために、シフティングキーとシンクロナイザリングとの初期隙間を拡大する構成に比べて、ニュートラル時のシフティングキーの戻り性能を良好に維持できる。したがって、ニュートラル時のシフティングキーの戻り不良を確実に回避することができる。さらに、ニュートラル時のシフティングキーの戻り不良を回避するために、シフティングキーの凸部またはスリーブの凹部の形状を変更する構成に比べて、シフトチェンジ時のシフト荷重の変化(シフトフィーリングの変化)を抑制することができる。
【0017】
以上より、シフティングキーの凸部およびスリーブの凹部の位置関係を工夫することによって、リバースシフト時のシフティングキーによるシンクロ押しの発生、および、ニュートラル時のシフティングキーの戻り不良の発生の回避と、シフト荷重の変化の抑制との両立を図ることができる。
【0018】
ここで、前記シフティングキーの凸部と前記スリーブの凹部との隙間の軸方向寸法を、前記シフティングキーとシンクロナイザリングとが接触することがないような隙間の軸方向寸法から、前記シフティングキーのニュートラル状態における前記シフティングキーとシンクロナイザリングとの初期隙間の軸方向寸法を減算した寸法に設定することが好ましい。
【0019】
また、前記シフティングキーのニュートラル状態で、前記シフティングキーおよび前記スリーブのフラットな部分同士が当接するように構成することが好ましい。この場合、前記シフティングキーのフラットな部分を、前記凸部の軸方向両側の部分とし、前記スリーブのフラットな部分を、前記凹部の軸方向両側の部分としてもよい。また、前記シフティングキーのフラットな部分を、前記凸部の頂面とし、前記スリーブのフラットな部分を、前記凹部の内壁面としてもよい。
【0020】
上記構成によれば、シフティングキーのニュートラル状態では、シフティングキーおよびスリーブのフラットな部分同士が当接しているため、シフティングキーに対しスリーブが移動するとき、シフティングキーをスリーブ側へ押し付けているスプリングの荷重はほとんど変動しない。また、シフティングキーのニュートラル状態では、スプリングが最も伸張した状態にあるため、シフティングキーおよびスリーブに作用するスプリングの荷重が最も小さくなっている。これにより、スプリングの荷重を低荷重かつほとんど変動しない荷重とすることができ、シフトフィーリングへの影響を少なくすることができる。
【0021】
また、前記シフティングキーの凸部と前記スリーブの凹部との隙間の軸方向寸法の設定を、この隙間を設けない場合の前記凸部または凹部に対し、その凸部または凹部の傾斜開始位置を変更することによって行うことが好ましい。こうすれば、シフティングキーの凸部およびスリーブの凹部の形状を変更せずそのまま維持することができ、シフト荷重の変化の抑制に貢献できる。
【0022】
また、前記スリーブの外周側に設けられるリバースギヤの、リバースギヤをスライドさせる方向側の端面を、前記シフティングキーの凸部と前記スリーブの凹部との隙間の軸方向寸法と同じ寸法だけ、その隙間を設けない場合に比べリバースギヤをスライドさせる方向とは反対側へ短縮させて設けることが好ましい。こうすれば、スリーブのリバースギヤをスライドさせる方向への移動にともなうリバースギヤと変速歯車との干渉を確実に回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シフティングキーの凸部およびスリーブの凹部の位置関係を工夫することによって、リバースシフト時のシフティングキーによるシンクロ押しの発生、および、ニュートラル時のシフティングキーの戻り不良の発生の回避と、シフト荷重変化(シフトフィーリングの変化)の抑制との両立を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。以下では、前進6速段、後進1速段の同期噛み合い式手動変速機(マニュアルトランスミッション)に本発明を適用した場合について説明する。また、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両に搭載された手動変速機について説明する。
【0025】
まず、手動変速機のギヤレイアウトについて説明する。
【0026】
図1は、実施形態に係る手動変速機のギヤレイアウトの一部を断面で示した側面図である。この図1に示すギヤレイアウトは、図示しないトランスミッションケース内に収容されているとともに、互いに平行に配置されたインプットシャフト1とアウトプットシャフト2とリバースシャフト3(図1では仮想線で示している)とがトランスミッションケースによって回転自在に支持されている。
【0027】
インプットシャフト1は、図示しないエンジンのクランクシャフトにクラッチ機構を介して連結されており、このクラッチ機構の係合動作によりエンジンの回転駆動力が入力されるようになっている。
【0028】
インプットシャフト1とアウトプットシャフト2との間には、前進1速段〜前進6速段および後進段の各変速段を成立させるための複数の変速ギヤ列4〜10が設けられている。具体的には、前進段用のギヤ列として、図1において右側から軸方向左側に向かって、1速ギヤ列4、2速ギヤ列5、3速ギヤ列6、4速ギヤ列7、5速ギヤ列8、および、6速ギヤ列9が順に配設されている。また、後進段用のギヤ列として、リバースギヤ列10が配設されている。
【0029】
1速ギヤ列4は、インプットシャフト1に回転一体に取り付けられた1速ドライブギヤ41と、アウトプットシャフト2に対して相対回転自在に組み付けられた1速ドリブンギヤ42とを備えており、これら1速ドライブギヤ41と1速ドリブンギヤ42とは互いに噛み合っている。2速ギヤ列5は、インプットシャフト1に回転一体に取り付けられた2速ドライブギヤ51と、アウトプットシャフト2に対して相対回転自在に組み付けられた2速ドリブンギヤ52とを備えており、これら2速ドライブギヤ51と2速ドリブンギヤ52とは互いに噛み合っている。
【0030】
3速ギヤ列6は、インプットシャフト1に相対回転自在に組み付けられた3速ドライブギヤ61と、アウトプットシャフト2に回転一体に取り付けられた3速ドリブンギヤ62とを備えており、これら3速ドライブギヤ61と3速ドリブンギヤ62とは互いに噛み合っている。4速ギヤ列7は、インプットシャフト1に相対回転自在に組み付けられた4速ドライブギヤ71と、アウトプットシャフト2に回転一体に取り付けられた4速ドリブンギヤ72とを備えており、これら4速ドライブギヤ71と4速ドリブンギヤ72とは互いに噛み合っている。
【0031】
5速ギヤ列8は、インプットシャフト1に相対回転自在に組み付けられた5速ドライブギヤ81と、アウトプットシャフト2に回転一体に取り付けられた5速ドリブンギヤ82とを備えており、これら5速ドライブギヤ81と5速ドリブンギヤ82とは互いに噛み合っている。6速ギヤ列9は、インプットシャフト1に相対回転自在に組み付けられた6速ドライブギヤ91と、アウトプットシャフト2に回転一体に取り付けられた6速ドリブンギヤ92とを備えており、これら6速ドライブギヤ91と6速ドリブンギヤ92とは互いに噛み合っている。
【0032】
上記前進段用の各変速ギヤ列4〜9の切り換え動作(変速動作)は、3つのシンクロメッシュ機構(同期装置)11,12,13によって行われる。
【0033】
第1のシンクロメッシュ機構11は、1速−2速用の同期装置であって、1速ドリブンギヤ42と2速ドリブンギヤ52との間におけるアウトプットシャフト2上に設けられている。つまり、この第1のシンクロメッシュ機構11が1速ドリブンギヤ42側に作動すると(具体的には、スリーブ111が1速ドリブンギヤ42側に移動すると)、この1速ドリブンギヤ42がアウトプットシャフト2に回転一体に連結され、1速ドライブギヤ41と1速ドリブンギヤ42との間で、インプットシャフト1からアウトプットシャフト2への動力伝達が行われることになる(1段変速)。
【0034】
一方、第1のシンクロメッシュ機構11が2速ドリブンギヤ52側に作動すると(具体的には、スリーブ111が2速ドリブンギヤ52側に移動すると)、この2速ドリブンギヤ52がアウトプットシャフト2に回転一体に連結され、2速ドライブギヤ51と2速ドリブンギヤ52との間で、インプットシャフト1からアウトプットシャフト2への動力伝達が行われることになる(2段変速)。第1のシンクロメッシュ機構11は、スリーブ111に係合するシフトフォーク(図示省略)を介して、運転者のシフトレバーの操作に連動して機械的に作動されるようになっている。なお、第1のシンクロメッシュ機構11として、いわゆるマルチコーンシンクロ機構の同期装置が採用されている。第1のシンクロメッシュ機構11の詳細については後述する。
【0035】
第2のシンクロメッシュ機構12は、3速−4速用の同期装置であって、3速ドライブギヤ61と4速ドライブギヤ71との間におけるインプットシャフト1上に設けられている。つまり、この第2のシンクロメッシュ機構12が3速ドライブギヤ61側に作動すると(具体的には、スリーブ121が3速ドライブギヤ61側に移動すると)、この3速ドライブギヤ61がインプットシャフト1に回転一体に連結され、3速ドライブギヤ61と3速ドリブンギヤ62との間で、インプットシャフト1からアウトプットシャフト2への動力伝達が行われることになる(3段変速)。
【0036】
一方、第2のシンクロメッシュ機構12が4速ドライブギヤ71側に作動すると(具体的には、スリーブ121が4速ドライブギヤ71側に移動すると)、この4速ドライブギヤ71がインプットシャフト1に回転一体に連結され、4速ドライブギヤ71と4速ドリブンギヤ72との間で、インプットシャフト1からアウトプットシャフト2への動力伝達が行われることになる(4段変速)。第2のシンクロメッシュ機構12は、スリーブ121に係合するシフトフォーク(図示省略)を介して、運転者のシフトレバーの操作に連動して機械的に作動されるようになっている。なお、第2のシンクロメッシュ機構12として、マルチコーンシンクロ機構の同期装置が採用されている。
【0037】
第3のシンクロメッシュ機構13は、5速−6速用の同期装置であって、5速ドライブギヤ81と6速ドライブギヤ91との間におけるインプットシャフト1上に設けられている。つまり、この第3のシンクロメッシュ機構13が5速ドライブギヤ81側に作動すると(具体的には、スリーブ131が5速ドライブギヤ81側に移動すると)、この5速ドライブギヤ81がインプットシャフト1に回転一体に連結され、5速ドライブギヤ81と5速ドリブンギヤ82との間で、インプットシャフト1からアウトプットシャフト2への動力伝達が行われることになる(5段変速)。
【0038】
一方、第3のシンクロメッシュ機構13が6速ドライブギヤ91側に作動すると(具体的には、スリーブ131が6速ドライブギヤ91側に移動すると)、この6速ドライブギヤ91がインプットシャフト1に回転一体に連結され、6速ドライブギヤ91と6速ドリブンギヤ92との間で、インプットシャフト1からアウトプットシャフト2への動力伝達が行われることになる(6段変速)。第3のシンクロメッシュ機構13は、スリーブ131に係合するシフトフォーク(図示省略)を介して、運転者のシフトレバーの操作に連動して機械的に作動されるようになっている。なお、第3のシンクロメッシュ機構13として、マルチコーンシンクロ機構の同期装置が採用されている。
【0039】
このようにして、前進時には、シフトチェンジ動作時を除いて、上記インプットシャフト1の回転駆動力が、上述したシンクロメッシュ機構11,12,13のうちの何れか一つの作動によって選択された一つの変速ギヤ列4〜9を介してアウトプットシャフト2へ伝達される。
【0040】
一方、後進段用のリバースギヤ列10は、上記インプットシャフト1に回転一体に取り付けられたリバースドライブギヤ101と、アウトプットシャフト2に回転一体に組み付けられたリバースドリブンギヤ102と、上記リバースシャフト3に対してスライド移動自在に組み付けられたリバースアイドラギヤ103(図1では仮想線で示している)とを備えている。リバースドリブンギヤ102は、上記第1のシンクロメッシュ機構11のスリーブ111の外周側に回転一体に配設されている。
【0041】
これらのギヤ101,102,103は前進時には噛み合っていない。後進時においては、全てのシンクロメッシュ機構11,12,13がニュートラル状態(中立状態)に設定され、リバースアイドラギヤ103がリバースシャフト3の軸方向に移動することによって、上記リバースドライブギヤ101およびリバースドリブンギヤ102の両ギヤに噛み合う。これにより、リバースドライブギヤ101の回転方向とは逆方向にリバースドリブンギヤ102が回転するようになる。したがって、アウトプットシャフト2が上記前進段の場合とは逆方向に回転し、駆動輪(図示省略)は後退方向に回転する。リバースアイドラギヤ103は、リバースアーム(図示省略)を介して、運転者のシフトレバーの操作に連動してリバースシャフト3の軸方向に移動されるようになっている。
【0042】
このようにして、所定の変速比で変速または逆回転されてアウトプットシャフト2に伝達された回転駆動力は、ファイナルドライブギヤ151とファイナルドリブンギヤ152とからなるファイナルリダクションギヤ列15の終減速比によって減速された後、ディファレンシャル装置16へ伝達される。これによって、駆動輪(図示省略)が前進方向または後進方向に回転する。なお、上述したような前進1速段〜前進6速段および後進段の各変速段を成立させるために、シフトレバーの操作力を各シンクロメッシュ機構11,12,13やリバースアームに選択的に伝達するためのセレクト・シフト機構が設けられている。
【0043】
次に、アウトプットシャフト2上に設けられる1速−2速用の第1のシンクロメッシュ機構11の具体的な構成について、図2を用いて説明する。図2は、第1のシンクロメッシュ機構11を示す断面図である。なお、インプットシャフト1上に設けられる3速−4速用の第2のシンクロメッシュ機構12および5速−6速用の第3のシンクロメッシュ機構13も、ほぼ同様の構成になっている。
【0044】
第1のシンクロメッシュ機構11は、クラッチハブ110、スリーブ111、シフティングキー112、スプリング113、アウタシンクロナイザリング115、インナシンクロナイザリング116、ミドルリング117、変速歯車としての1速ドリブンギヤ42および2速ドリブンギヤ52を備えている。そして、第1のシンクロメッシュ機構11は、スリーブ111を軸方向一方側または他方側に移動させることによって、クラッチハブ110と1速ドリブンギヤ42および2速ドリブンギヤ52とを選択的に連結させるように構成されている。なお、シフティングキー112およびスプリング113は、円周方向にほぼ等角度間隔で複数(例えば3つなど)配設されている。
【0045】
クラッチハブ110は、外周歯1101(図4参照)を有し、スプライン嵌合によってアウトプットシャフト2に相対回転不能に配設されている。クラッチハブ110は、図示しないスナップリングや軸方向の両側に配設された1速ドリブンギヤ42および2速ドリブンギヤ52によって軸方向の位置が決められている。1速ドリブンギヤ42および2速ドリブンギヤ52は、ニードルベアリング43,53などによりアウトプットシャフト2に相対回転可能に配設されているとともに、図示しないスナップリングなどによって軸方向の位置が決められている。
【0046】
スリーブ111は、ほぼ円筒形状を呈しており、クラッチハブ110の外周歯1101と噛み合う内周歯1111と、幅方向(軸方向)の中央部において内周側に設けられた凹部(キー溝)1112とを有する。また、上述したように、スリーブ111の外周側には、リバースドリブンギヤ102が一体的に設けられている。
【0047】
スリーブ111は、クラッチハブ110の外周に相対回転不能かつ軸方向の相対移動可能にスプライン嵌合されるとともに、図示しないシフトフォークによって動力伝達が可能な状態である変速位置(伝達位置)および動力伝達を遮断する状態であるニュートラル位置(中立位置;図2に示す位置)へ移動可能に配設されている。この実施形態では、スリーブ111の上記変速位置は、軸方向一方側(図2では右側)に移動された1速位置および軸方向他方側(図2では左側)に移動された2速位置となっている。
【0048】
1速ドリブンギヤ42は、スリーブ111が上記1速位置に移動したときに、スリーブ111の内周歯1111と噛み合う噛合歯44を有している。同様に、2速ドリブンギヤ52は、スリーブ111が上記2速位置に移動したときに、スリーブ111の内周歯1111と噛み合う噛合歯54を有している。よって、1段変速または2段変速のとき、1速ドリブンギヤ42または2速ドリブンギヤ52から、スリーブ111およびクラッチハブ110を介して、アウトプットシャフト2に動力伝達が行われる。また、1速ドリブンギヤ42および2速ドリブンギヤ52のクラッチハブ110側の部分(テーパ部)45,55には、クラッチハブ110に隣接してクラッチハブ110側に向かうほど小径となる外周テーパ面(外周コーン面)46,56が形成されている。
【0049】
シフティングキー112は、クラッチハブ110に対して相対回転不能かつ軸方向移動自在な状態で、クラッチハブ110とスリーブ111との間に介装されている。また、シフティングキー112は、スリーブ111の軸方向位置に応じて径方向の内外へ移動可能に設けられている。詳しくは、シフティングキー112は、クラッチハブ110の外周に形成された軸方向に沿った切り欠き内に配設されている。シフティングキー112は、クラッチハブ110に設けられた凹部1102内に圧縮状態で配設されたスプリング113によって径方向外方に向けて付勢されている。
【0050】
シフティングキー112には、径方向外方を向く凸部1121が設けられている。凸部1121とキー溝1112とは、スリーブ111が変速位置へ移動される際に、凸部1121とキー溝1112とが互いに係合するように形成されている。また、凸部1121とキー溝1112とは、スリーブ111が中立位置へ戻される際に、シフティングキー112が上述した中立位置へ戻されるように形成されている。シフティングキー112の凸部1121およびスリーブ111のキー溝1112の形状や位置関係の詳細については後述する。
【0051】
アウタシンクロナイザリング115とインナシンクロナイザリング116とミドルリング117は、同期回転のための摩擦力を発生させるために設けられる1組のシンクロナイザリングである。これらの各リング115,116,117は、クラッチハブ110の軸方向両側にそれぞれ設けられる。具体的に、クラッチハブ110と1速ドリブンギヤ42との間に、1段変速用のアウタシンクロナイザリング115とインナシンクロナイザリング116とミドルリング117が設けられている。また、クラッチハブ110と2速ドリブンギヤ52との間に、2段変速用のアウタシンクロナイザリング115とインナシンクロナイザリング116とミドルリング117が設けられている。1段変速用の各リング115,116,117と、2段変速用の各リング115,116,117とは、同様の構成であるため、ここでは、2段変速用の各リング115,116,117について代表して説明する。
【0052】
ミドルリング117は、アウタシンクロナイザリング115とインナシンクロナイザリング116との間に配設されている。ミドルリング117は、クラッチハブ110に対して相対回転不能に設けられている。ミドルリング117は、クラッチハブ110と2速ドリブンギヤ52との間において、2速ドリブンギヤ52のクラッチハブ110側の円周方向に複数設けられた穴部57に対応する位置に設けられた突起部1171が穴部57に差し込まれることで位置決めされている。そして、ミドルリング117は、2速ドリブンギヤ52とともに回転しかつ軸方向の移動が許容される状態で配設されている。また、ミドルリング117は、クラッチハブ110に向かうほど小径となる内周テーパ面(内周コーン面)1172および外周テーパ面(外周コーン面)1173を備えている。
【0053】
アウタシンクロナイザリング115は、ミドルリング117の外周側に配設されている。また、アウタシンクロナイザリング115は、スリーブ111の内周側に配設されている。アウタシンクロナイザリング115は、クラッチハブ110に対して周方向の所定範囲だけ相対回転可能に設けられている。そして、アウタシンクロナイザリング115は、クラッチハブ110側に近接した軸方向内方位置と2速ドリブンギヤ52側に近接した軸方向外方位置との間で軸方向に移動可能に設けられている。また、アウタシンクロナイザリング115は、ミドルリング117の外周テーパ面1173に摺接させられる内周テーパ面(内周コーン面)1151と、スリーブ111と2速ドリブンギヤ52とが相対回転している間、言い換えれば、スリーブ111と2速ドリブンギヤ52とが同期回転するまでは、スリーブ111の内周歯1111と係合してスリーブ111の軸方向移動を阻止するための外周係合歯1152とを備えている。
【0054】
インナシンクロナイザリング116は、ミドルリング117の内周側に配設されている。また、インナシンクロナイザリング116は、2速ドリブンギヤ52のテーパ部55の外周側に配設されている。インナシンクロナイザリング116は、クラッチハブ110に対して相対回転不能に設けられている。インナシンクロナイザリング116は、ミドルリング117の内周テーパ面1172と摺接するための外周テーパ面(外周コーン面)1161と、2速ドリブンギヤ52の外周テーパ面56と摺接するための内周テーパ面(内周コーン面)1162とを備えている。
【0055】
以上のように、第1のシンクロメッシュ機構11は、アウタシンクロナイザリング115と2速ドリブンギヤ52のテーパ部55との間に、インナシンクロナイザリング116とミドルリング117の中間コーンリングを備えるマルチコーンシンクロ機構の同期装置として構成されている。すなわち、そのような中間コーンリングが設けられている分だけ、アウタシンクロナイザリング115と2速ドリブンギヤ52のテーパ部55との間の実質的な接触面積が大きくなり、両者の間に生じる摩擦力が増大されるように構成されている。
【0056】
次に、第1のシンクロメッシュ機構11の動作について簡単に説明する。ここでは、スリーブ111を中立位置から軸方向他方側の2速位置へ移動させる場合について主に説明する。
【0057】
まず、図2に示すスリーブ111が中立位置にある状態では、スリーブ111の内周歯1111が、1速ドリブンギヤ42の噛合歯44または2速ドリブンギヤ52の噛合歯54とは噛み合っていない。このため、1速ドライブギヤ41と1速ドリブンギヤ42との間、および、2速ドライブギヤ51と2速ドリブンギヤ52との間での動力伝達が不可能になっている。スリーブ111は、3〜6速段へのシフトチェンジ時および後進段へのシフトチェンジ時(リバースシフト時)には中立位置にある。
【0058】
また、スリーブ111が中立位置にある状態では、シフティングキー112もニュートラル位置(中立位置)に位置している。具体的には、シフティングキー112の凸部1121がスリーブ111のキー溝1112内に位置している。このとき、シフティングキー112とその軸方向の両側に設けられる一対のアウタシンクロナイザリング115,115との間には隙間A1,A2が設けられている。この隙間A1,A2は、シフティングキー112が中立位置にある場合の初期隙間である。なお、隙間A1,A2を同じ寸法に設定することが可能であり、この場合、シフティングキー112は、一対のアウタシンクロナイザリング115,115間の軸方向の中央に配置される。
【0059】
そして、この状態において、シフティングキー112は、スプリング113の付勢力によってスリーブ111側に向けて押圧されており、シフティングキー112とスリーブ111とが係合している。シフティングキー112の中立位置では、スプリング113が最も伸張した状態にあり、シフティングキー112およびスリーブ111に作用するスプリング113の荷重が最も小さくなっている。
【0060】
スリーブ111を中立位置から軸方向他方側へ移動させると、シフティングキー112の凸部1121とスリーブ111のキー溝1112とが係合され、シフティングキー112がスリーブ111とともに軸方向他方側へ移動される。これにともない、シフティングキー112と2段変速用のアウタシンクロナイザリング115との隙間が狭くなり、このシフティングキー112によりアウタシンクロナイザリング115が押動されるようになる。
【0061】
このようなアウタシンクロナイザリング115の軸方向他方側への移動により、アウタシンクロナイザリング115の内周テーパ面1151とミドルリング117の外周テーパ面1173との間、ミドルリング117の内周テーパ面1172とインナシンクロナイザリング116の外周テーパ面1161との間、および、インナシンクロナイザリング116の内周テーパ面1162と2速ドリブンギヤ52の外周テーパ面56との間で摩擦力が発生する。この摩擦力により、スリーブ111と2速ドリブンギヤ52とが相対回転させられるようになる。
【0062】
スリーブ111と2速ドリブンギヤ52とが相対回転している間、つまり、スリーブ111と2速ドリブンギヤ52とが同期回転するまでの間は、スリーブ111は2速位置へ移動する途中の状態にある(図3に示す状態)。この状態では、スリーブ111によってシフティングキー112が径方向内方へ向けて若干だけ押し込まれている。
【0063】
図3に示す状態では、スリーブ111の内周歯1111は、アウタシンクロナイザリング115の外周係合歯1152とは噛み合っているが、2速ドリブンギヤ52の噛合歯54とは噛み合っていない。そして、スリーブ111と2速ドリブンギヤ52とが同期回転させられると、スリーブ111の2速位置への移動が可能になり、スリーブ111の内周歯1111が2速ドリブンギヤ52の噛合歯54に噛み合わせられるようになり、動力伝達可能な状態になる(図4に示す状態)。つまり、2速ドリブンギヤ52がアウトプットシャフト2に回転一体に連結され、2速ドライブギヤ51と2速ドリブンギヤ52との間で、インプットシャフト1からアウトプットシャフト2への動力伝達が可能になる。
【0064】
図4に示すスリーブ111が2速位置にある状態では、シフティングキー112の凸部1121はスリーブ111のキー溝1112内には位置しておらず、凸部1121はキー溝1112から軸方向一方側へ外れた位置にある。この状態では、スリーブ111によってシフティングキー112が径方向内方へ向けて最も押し込まれている。このため、シフティングキー112が中立位置にある場合に比べて、スプリング113が収縮されており、シフティングキー112およびスリーブ111に作用するスプリング113の荷重が大きくなっている。
【0065】
一方、スリーブ111を2速位置から軸方向一方側の中立位置へ戻す場合には、スリーブ111を2速位置から軸方向一方側へ移動させると、スリーブ111の内周歯1111と2速ドリブンギヤ52の噛合歯54との噛み合わせが解除される。このため、2速ドライブギヤ51と2速ドリブンギヤ52との間での動力伝達が不可能になる。スリーブ111が2速位置から中立位置へ戻されると、シフティングキー112の凸部1121がスリーブ111のキー溝1112内に戻され、シフティングキー112も中立位置に戻されるようになる。
【0066】
次に、実施形態の特徴部分であるシフティングキー112の凸部1121およびスリーブ111のキー溝1112の形状・位置関係について説明する。この実施形態では、シフティングキー112の凸部1121およびスリーブ111のキー溝1112の形状・位置関係を工夫することによって、リバースシフト時のシフティングキー112によるいわゆるシンクロ押しの発生、および、ニュートラル時のシフティングキー112のいわゆる戻り不良の発生の回避と、シフト荷重変化(シフトフィーリングの変化)の抑制との両立を図るようにしている。以下、具体的に説明する。
【0067】
この実施形態では、図5に示すように、シフティングキー112の凸部1121とスリーブ111のキー溝1112との間に、隙間D1が設けられている。この隙間D1は、凸部1121の軸方向の一方側(図5ではX1方向側)にだけ設けられており、凸部1121の軸方向の他方側(図5ではX2方向側)には設けられていない。つまり、シフティングキー112の中立位置においては、凸部1121とキー溝1112とは、軸方向一方側で隙間D1だけ離間している一方、軸方向他方側で係合している。具体的には、隙間D1は、リバースシフト時のリバースアイドラギヤ103のスライド方向(図5ではX2方向)に対応して設けられており、より詳細には、凸部1121のリバースアイドラギヤ103のスライド方向に対し後方側(反対側)の部分にだけ設けられており、前方側の部分には設けられていない。
【0068】
上記隙間D1は、次のような寸法(軸方向寸法)に設定されている。シフティングキー112とアウタシンクロナイザリング115とが接触することがないような隙間を想定しその隙間(最大隙間)をB0とすると、[D1=B0−A2]、の関係を満たすような寸法に設定される。隙間B0は、第1のシンクロメッシュ機構11の製品バラツキおよびその制御にともなうコントロール系バラツキを考慮して設定される。隙間A2は、上述したように、ニュートラル時の初期隙間であり、第1のシンクロメッシュ機構11の諸元およびシフト荷重(シフトフィーリング)を考慮して設定される。したがって、隙間A2は、例えばシフティングキー112の戻り不良が発生しないような寸法に設定される。
【0069】
ここで、シフティングキー112の凸部1121の最も外方に突出した頂面1122はフラットな面になっている。一方、凸部1121の頂面1122の軸方向両側に設けられる側面1123,1123(図3参照)は湾曲面になっている。また、シフティングキー112の凸部1121の軸方向両側の部分1124,1124はフラットに形成されている。なお、側面1123,1123は湾曲面以外の形状であってもよい。
【0070】
スリーブ111のキー溝1112の最も外方に窪んだ内壁面1113(図3参照)はフラットな面になっている。一方、キー溝1112の内壁面1113の軸方向両側に設けられる側壁面1114,1114(図3参照)は所定の角度で傾斜する傾斜面になっている。また、スリーブ111のキー溝1112の軸方向両側の部分1115,1115(図3参照)はフラットに形成されている。なお、側壁面1114,1114は湾曲面であってもよい。
【0071】
シフティングキー112の中立位置では、シフティングキー112の凸部1121の軸方向一方側の側面1123、および、スリーブ111のキー溝1112の軸方向一方側の側壁面1114の間に、上記隙間D1が設けられている。この場合、隙間D1の寸法は、その側壁面1114と、その側面1123における側壁面1114に平行な接線との軸方向に沿う方向の距離となる。言い換えれば、隙間D1の寸法は、スリーブ111を軸方向他方側へ移動させたとき、側面1123と側壁面1114とが係合する位置での軸方向に沿う方向の距離となる。一方、シフティングキー112の凸部1121の軸方向他方側の側面1123、および、スリーブ111のキー溝1112の軸方向他方側の側壁面1114は接触している。
【0072】
また、シフティングキー112の中立位置では、シフティングキー112およびスリーブ111のフラットな部分同士が当接している。この場合、シフティングキー112の軸方向両側の部分1124,1124、および、スリーブ111の軸方向両側の部分1115,1115が当接している。したがって、フラットに形成されたスリーブ111の軸方向両側の部分で、スプリング113の荷重を受けることになる。
【0073】
そして、この実施形態では、上述のような隙間D1が設けられているので、リバースシフト時のシフティングキー112によるシンクロ押し(この場合、2段変速用のアウタシンクロナイザリング115についてのシンクロ押し)の発生を回避できる。すなわち、リバースシフト時には、X2方向へスライドするリバースアイドラギヤ103によりリバースドリブンギヤ102が押されて、リバースドリブンギヤ102が傾くため、スリーブ111もリバースドリブンギヤ102と同じ方向へ傾く。したがって、このスリーブ111の傾きの軸方向分だけ、スリーブ111が軸方向他方側(つまり、2段変速用のアウタシンクロナイザリング115側)へ移動することになる。
【0074】
この実施形態では、凸部1121のリバースアイドラギヤ103のスライド方向に対し後方側の部分に、上記隙間D1が設けられているので、リバースシフト時にスリーブ111が2段変速用のアウタシンクロナイザリング115側へ移動したとしても、その移動量が上記隙間D1の寸法よりも小さい場合には、スリーブ111のキー溝1112がシフティングキー112の凸部1121と係合することはない。この場合、シフティングキー112が2段変速用のアウタシンクロナイザリング115側へ移動することも、シフティングキー112が2段変速用のアウタシンクロナイザリング115に接触することもない。
【0075】
また、スリーブ111の移動量が上記隙間D1の寸法以上の場合には、キー溝1112が凸部1121と係合し、シフティングキー112が2段変速用のアウタシンクロナイザリング115側へ移動することになるが、そのシフティングキー112の移動量が上記隙間A2の寸法を超えることはない。この場合、シフティングキー112が2段変速用のアウタシンクロナイザリング115に接触することはない。
【0076】
以上より、リバースシフト時にスリーブ111が2段変速用のアウタシンクロナイザリング115側へ移動したとしても、シフティングキー112が2段変速用のアウタシンクロナイザリング115に接触することはない。したがって、リバースシフト時のシンクロ押しの発生を確実に回避することができる。
【0077】
ところで、上述のような隙間D1をシフティングキー112の凸部1121とスリーブ111のキー溝1112との間に設けない場合、リバースシフト時のシンクロ押しの発生およびニュートラル時の戻り不良の発生を確実に回避するには、次のような対策が必要になる。すなわち、シフティングキー112と2段変速用のアウタシンクロナイザリング115との間に、上記隙間B0の寸法の隙間を確保し、かつ、シフティングキー112の凸部1121またはスリーブ111のキー溝1112の形状を変更する必要がある。
【0078】
詳細には、リバースシフト時のシフティングキー112によるシンクロ押しの発生を回避するには、シフティングキー112と2段変速用のアウタシンクロナイザリング115との隙間を拡大する必要がある。さらに、その隙間の拡大にともなうニュートラル時のシフティングキー112の戻り不良の発生を回避するには、シフティングキー112の凸部1121またはスリーブ111のキー溝1112の形状をシフティングキー112の戻り性能を確保できるような形状に変更する必要がある。この場合、例えば、スリーブ111のキー溝1112の傾斜面の形状(傾斜角度)を緩やかな形状に変更することで、シフティングキー112を中立位置へ戻しやすくすることが可能である。
【0079】
しかし、シフティングキー112の凸部1121またはスリーブ111のキー溝1112の形状の変更にともなって、シフトチェンジ時のシフト荷重の特性が変更され、シフトフィーリングが変更される。したがって、シフト荷重が当初(変更前に)想定されていたものとは異なってしまう。例えば、スリーブ111のキー溝1112の傾斜面形状を緩やかな形状に変更すると、シフト荷重の特性が図7に示すように変化する。この図7は、2速段へのシフトチェンジ時、言い換えれば、スリーブ111が中立位置から2速位置へ移動される場合のシフト荷重の特性を示しており、横軸は運転者のシフトレバーの操作量(ストローク量)を表す。そして、この図7では、キー溝1112の形状変更前に当初想定されていたシフト荷重の特性を実線で示し、キー溝1112の傾斜面を緩やかな形状に変更した後のシフト荷重の特性を破線で示している。
【0080】
図7に示すように、キー溝1112を緩やかな形状に変更した場合には、変更しない場合に比べて、シフティングキー112がアウタシンクロナイザリング115へ接触した時点(図7では、キー溝1112の形状を変更しない場合をQ1、変更した場合をQ2で示す)から、スリーブ111と2速ドリブンギヤ52との同期回転が完了した時点(図7では、キー溝1112の形状を変更しない場合をQ3、変更しない場合をQ4で示す)までに長時間を要することになり、その分シフトフィーリングが悪化してしまう。したがって、上述のような隙間D1をシフティングキー112の凸部1121とスリーブ111のキー溝1112との間に設けない構成の場合、リバースシフト時のシフティングキー112によるシンクロ押しの発生およびニュートラル時のシフティングキー112の戻り不良の発生を回避しようとすると、シフトフィーリングの悪化を招いてしまう。
【0081】
これに対し、この実施形態では、上述のような隙間D1をシフティングキー112の凸部1121とスリーブ111のキー溝1112との間に設ける構成を採用しているため、シフトフィーリングの悪化を招くことなく、リバースシフト時のシフティングキー112によるシンクロ押しの発生およびニュートラル時のシフティングキー112の戻り不良の発生を回避することができる。
【0082】
詳細には、シフティングキー112と2段変速用のアウタシンクロナイザリング115との隙間A2をそのまま維持し、拡大しない構成を採用するため、ニュートラル時のシフティングキー112の戻り性能を損なうことはない。したがって、ニュートラル時のシフティングキー112の戻り不良を確実に回避することができる。
【0083】
さらに、シフティングキー112の凸部1121およびスリーブ111のキー溝1112の形状をそのまま維持し、変更しない構成を採用するため、シフトチェンジ時のシフト荷重の変化を抑制することができる。具体的には、図6に示すように、シフトチェンジ時のシフト荷重の特性は若干変化するが、図7に示す場合に比べると、その変化を抑制することができる。この図6は、2速段へのシフトチェンジ時のシフト荷重の特性を示しており、横軸は運転者のシフトレバーの操作量(ストローク量)を表す。そして、この図6では、上記隙間D1を設けない場合に当初想定されていたシフト荷重の特性を実線で示し、隙間D1を設けた場合のシフト荷重の特性を破線で示している。
【0084】
図6に示すように、上記隙間D1を設けた場合には、隙間D1を設けない場合に比べて、シフティングキー112がアウタシンクロナイザリング115へ接触した時点(図6では、隙間D1を設けない場合をP1、設けた場合をP2で示す)から、スリーブ111と2速ドリブンギヤ52との同期回転が完了した時点(図6では、隙間D1を設けない場合をP3、設けた場合をP4で示す)までに要する時間はほぼ同じになっている。したがって、図7に示す場合に比べて、その要する時間が短時間で済み、シフトフィーリングの悪化を回避できる。
【0085】
より詳細には、上記隙間D1を設けた場合には、隙間D1を設けない場合に比べて、シフト荷重の立ち上がりに遅れが発生するものの、その立ち上がり後のシフト荷重については隙間D1を設けない場合とほぼ同様の特性が得られる。この遅れは、上記隙間D1に相当するストローク量の分だけ発生する。すなわち、上記隙間D1を設けた場合、シフティングキー112をアウタシンクロナイザリング115へ接触する位置まで移動させるのに、隙間D1を設けない場合に比べて隙間D1の分だけスリーブ111を余分に移動させる必要があり、この隙間D1だけスリーブ111を移動させるのに要するストローク量がシフト荷重の立ち上がりの遅れになって現れている。
【0086】
上記隙間D1を設けた場合、立ち上がるまでのシフト荷重が隙間D1を設けない場合とは若干異なる。具体的には、スプリング113の荷重(図6ではW1で示す)がシフト荷重に影響している。この実施形態では、上述したように、シフティングキー112の中立位置において、スプリング113が最も伸張した状態にあるため、シフティングキー112およびスリーブ111に作用するスプリング113の荷重が最も小さくなっている。このスプリング113が最も伸張した状態におけるスプリング113の荷重は、シフトフィーリングに影響を与えない程度の低荷重に設定することが好ましい。
【0087】
また、シフティングキー112の中立位置では、シフティングキー112およびスリーブ111のフラットな部分同士が当接しているため、シフティングキー112に対しスリーブ111が移動するとき、スプリング113の荷重はほとんど変動しない。これにより、スプリング113の荷重を低荷重かつほとんど変動しない荷重とすることができ、シフトフィーリングへの影響を少なくすることができる。
【0088】
ここで、シフティングキー112の凸部1121およびスリーブ111のキー溝1112の形状を変更せずそのまま維持する構成を採用するためには、上述したような隙間D1の寸法の設定は、この隙間D1を設けない場合のシフティングキー112の凸部1121またはスリーブ111のキー溝1112に対し、その傾斜開始位置、具体的には、凸部1121の側面1123の開始位置またはキー溝1112の側壁面1114の開始位置を変更することによって行うことが好ましい。
【0089】
また、この実施形態では、上述したような隙間D1を設けるため、この隙間D1を設けない場合に比べて、スリーブ111の軸方向他方側への移動量が隙間D1の寸法の分だけ大きくなり、スリーブ111の外周側に設けられたリバースドリブンギヤ102の移動量も同じだけ大きくなる。したがって、スリーブ111の軸方向他方側への移動にともなうリバースドリブンギヤ102と2速ドリブンギヤ52との干渉を確実に回避するためには、リバースドリブンギヤ102の軸方向他方側の端面を、この隙間D1を設けない場合に比べて、その隙間D1の寸法と同じ寸法だけ軸方向一方側へ短縮(退避)させて設けることが好ましい。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここに示した実施形態は一例であり、さまざまに変形することが可能である。その一例を以下に挙げる。
【0091】
上記実施形態では、アウタシンクロナイザリング115、インナシンクロナイザリング116、ミドルリング117の3つのシンクロナイザリングを備える構成を採用したが、シンクロナイザリングの数はそれ以外であってもよい。
【0092】
上記実施形態では、1速−2速用の第1のシンクロメッシュ機構11のスリーブ111にリバースドリブンギヤ102が設ける構成を採用したが、リバースドリブンギヤ102を設けるスリーブはそれ以外であってもよい。また、リバースアイドラギヤ103のスライド方向が反対方向であってもよい。
【0093】
上記実施形態では、シフティングキー112の凸部1121とスリーブ111のキー溝1112との隙間D1が、[D1=B0−A2]、の関係を満たすような寸法に設定される場合について説明したが、この隙間D1の寸法として、その関係で設定される寸法が少なくとも確保されていればよい。なお、その隙間D1は上述した遅れ(図6参照)の原因になるため、この隙間D1の寸法が小さいほど好ましい。
【0094】
上記実施形態では、シフティングキー112の中立位置で、シフティングキー112およびスリーブ111のフラットな部分同士が当接する場合として、シフティングキー112の軸方向両側の部分1124,1124、および、スリーブ111の軸方向両側の部分1115,1115が当接している場合と挙げたが、シフティングキー112の頂面1122およびスリーブ111の内壁面1113が当接するような構成としてもよい。
【0095】
上記実施形態は、FF車両に搭載され、前進6速段、後進1速段の同期噛み合い式手動変速機に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両等、その他の形態の車両に搭載された手動変速機にも適用可能である。また、上記段数の異なる変速機(例えば前進5速段、後進1速段のもの)に対しても適用可能である。さらには、ドライバのシフトチェンジ操作に連動するアクチュエータを備え、このアクチュエータによって変速動作を行う構成とされた変速機(いわゆるSMT:シーケンシャル・マニュアル・トランスミッション)に対しても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施形態に係るマニュアルトランスミッションのギヤレイアウトを示す断面図である。
【図2】第1のシンクロメッシュ機構を示す断面図である。
【図3】第1のシンクロメッシュ機構の動作を説明するための図であって、スリーブを中立位置から2速位置へ移動させる途中の状態を示す図である。
【図4】第1のシンクロメッシュ機構の動作を説明するための図であって、スリーブを中立位置から2速位置へ移動させたときの状態を示す図である。
【図5】第1のシンクロメッシュ機構のシフティングキーの凸部およびスリーブのキー溝の位置関係を説明するための図である。
【図6】シフティングキーの凸部とスリーブのキー溝との間に隙間を設けたことにともなうシフト荷重の特性の変化を示す図である。
【図7】シフティングキーの凸部とスリーブのキー溝との間に隙間を設けない場合の問題点を説明するための図である。
【符号の説明】
【0097】
11 第1のシンクロメッシュ機構
52 2速ドリブンギヤ
102 リバースドリブンギヤ
103 リバースアイドラギヤ
110 クラッチハブ
111 スリーブ
1112 キー溝
112 シフティングキー
1121 凸部
113 スプリング
115 アウタシンクロナイザリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に相対回転不能に配設されたクラッチハブと、
前記クラッチハブの外周に相対回転不能かつ軸方向の相対移動可能に配設され、内周側に内周歯および凹部が設けられたスリーブと、
前記クラッチハブに隣接して、前記回転軸に対して相対回転可能に配設され、前記スリーブの内周歯と噛み合う噛合歯および前記クラッチハブに向かうほど小径となる外周テーパ面が設けられた変速歯車と、
前記クラッチハブに対し周方向所定範囲のみ相対回転可能に設けられ、前記変速歯車の外周テーパ面に対向する内周テーパ面が設けられたシンクロナイザリングと、
前記クラッチハブと前記スリーブとの間に設けられ、前記クラッチハブに対して相対回転不能かつ軸方向に移動可能に設けられ、前記スリーブの凹部と係合可能な凸部が設けられたシフティングキーと、
前記シフティングキーを前記スリーブ側に向けて付勢するスプリングとを備え、
前記スリーブの移動にともない前記シフティングキーが軸方向に移動されて前記シンクロナイザリングが押動されることによって前記シンクロナイザリングと前記変速歯車との間で摩擦力が発生し、この摩擦力により前記スリーブの内周歯と前記変速歯車の噛合歯とが同期して噛み合うように構成された変速機の同期装置において、
前記スリーブの外周側には、リバースドライブギヤとリバースドリブンギヤと両ギヤ間のリバースアイドラギヤのうち1つを軸方向へスライドさせることによって、これらを伝動状態に噛み合わせるリバースギヤ装置に用いられるいずれか1つのギヤが一体的に設けられており、
前記シフティングキーのニュートラル状態で、このシフティングキーの凸部と前記スリーブの凹部との間には、その凸部の前記ギヤをスライドさせる方向とは反対側に隙間が設けられ、
前記隙間の軸方向寸法として、前記シフティングキーとシンクロナイザリングとが接触することがないような隙間の軸方向寸法から、前記シフティングキーのニュートラル状態における前記シフティングキーとシンクロナイザリングとの初期隙間の軸方向寸法を減算した寸法が少なくとも確保されていることを特徴とする変速機の同期装置。
【請求項2】
請求項1に記載の変速機の同期装置において、
前記シフティングキーの凸部と前記スリーブの凹部との隙間の軸方向寸法が、前記シフティングキーとシンクロナイザリングとが接触することがないような隙間の軸方向寸法から、前記シフティングキーのニュートラル状態における前記シフティングキーとシンクロナイザリングとの初期隙間の軸方向寸法を減算した寸法に設定されていることを特徴とする変速機の同期装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の変速機の同期装置において、
前記シフティングキーのニュートラル状態で、前記シフティングキーおよび前記スリーブのフラットな部分同士が当接していることを特徴とする変速機の同期装置。
【請求項4】
請求項3に記載の変速機の同期装置において、
前記シフティングキーのフラットな部分が、前記凸部の軸方向両側の部分であり、
前記スリーブのフラットな部分が、前記凹部の軸方向両側の部分であることを特徴とする変速機の同期装置。
【請求項5】
請求項3に記載の変速機の同期装置において、
前記シフティングキーのフラットな部分が、前記凸部に設けられた頂面であり、
前記スリーブのフラットな部分が、前記凹部に設けられた内壁面であることを特徴とする変速機の同期装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の変速機の同期装置において、
前記シフティングキーの凸部と前記スリーブの凹部との隙間の軸方向寸法が、この隙間を設けない場合の前記凸部または凹部に対し、その凸部または凹部の傾斜開始位置を変更することで設定されることを特徴とする変速機の同期装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の変速機の同期装置において、
前記スリーブの外周側に設けられるギヤの、前記ギヤをスライドさせる方向側の端面が、前記シフティングキーの凸部と前記スリーブの凹部との隙間の軸方向寸法と同じ寸法だけ、その隙間を設けない場合に比べ前記ギヤをスライドさせる方向とは反対側へ短縮されることを特徴とする変速機の同期装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−36217(P2009−36217A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198428(P2007−198428)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】