説明

外部クロック信号に同期する内部クロック信号を発生する方法および装置

【課題】外部クロック信号に同期した内部クロック信号を生成するクロック回路を提供すること。
【解決手段】位相ロックループ(PLL)からなる集積回路のためのクロック発生回路は、遅延した外部クロック信号の位相を内部クロック信号の位相と比較する位相検波器を含む。2つのクロック信号間の位相差分に一致するエラー信号が、差動増幅器に与えられる。エラー信号は位相検波器に結合される時、外部クロック信号の遅延に一致する値だけオフセットされる。オフセットエラー信号は、内部クロック信号を発生する電圧制御発振器の制御入力に与えられる。内部クロック信号の位相は、外部クロック信号の位相と実質的に同じになるように調整される。電圧制御発振器は、オフセットエラー信号が比較的狭い範囲の内部クロック信号の周波数を制御するだけで済むように複数の別個の周波数帯域内で動作するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、クロック信号を発生するためのクロック回路に関し、より詳細には、外部クロック信号をクロック回路に結合する際の遅延にも関わらず外部クロック信号に同期する、集積回路のための内部クロック信号を発生するクロック回路に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明の好適な実施形態は、特に、外部から与えられたクロックが集積回路内に存在する他の信号と共に登録を行うことを目的とする高速集積回路において増大しつつある問題を解決するように調整されている。外部クロックは、その動作が互いに同期できるように多数の回路に頻繁に与えられる。その結果、外部クロック信号が与えられる信号パスは、他の信号を受け取る信号パスよりもかなり大きな程度にまで容量的に負荷される。この重い容量負荷の結果、外部クロック信号は、集積回路内の内部回路に達する前に大幅に遅延され得る。この遅延は深刻であり、遅延外部クロック信号は他の信号と共に適切に登録できなくなり得る。
【0003】
上述の問題を、図1に示す集積回路10によって例示する。集積回路10は、簡略且つ明晰を目的として省略される、多くの他の信号に加えて外部クロックCLK信号およびデータ信号Dを受け取る、DRAM、SRAM、バスブリッジ等を含む広範囲に亘るさまざまなデジタル回路のうちの任意の回路であり得る。クロック信号は信号パス12を介してさまざまな目的のためにクロック信号を用いる多くの回路14a、14b、14nに結合される。やはり回路14a−14nは、集積回路に従来使用されるさまざまな回路のうちの任意の回路であり得る。外部から与えられたクロックCLK信号は、集積回路10の動作全体を同期させるのにしばしば用いられ、従って、通常、多数の回路ノードにルーティングされる。その結果、信号パス12上の容量負荷は比較的高くなる。特に、信号パス12上の容量負荷はしばしば、外部端子Dからかなり少ない数の信号ノード、または、この例においては、NANDゲート22である単一のノードへと延びるデータパス20上の容量負荷よりもかなり高くなる。その結果、D端子からNANDゲート22へと結合される時にデータ信号の遅延は、NANDゲート22と他の回路14a−nとに結合される時のクロック信号の遅延と比較して比較的小さくなる。この遅延のために、NANDゲート22へのクロック入力は遅延クロックCLK-DELに指定される。
【0004】
図1に示す例示する回路10の動作は、図2のタイミング図を更に参照して最もよく説明される。図2に示すように、データ信号は25%のデューティサイクルしか有さないが、外部クロックCLK信号の立ち上がりはD端子に与えられたデータ信号の立ち上がりと合わせる。クロックCLK信号は別の集積回路(図示せず)からのデータをクロックするのに使用し得るので、データ信号は、通常、集積回路10に与えられる前にクロックCLK信号に同期される。主に信号パス12の容量負荷のために、NANDゲート22に結合された遅延クロックCLK-DEL信号は、タイミング図の第3の波形として示すように、4分の1クロック周期、または90゜遅延されている。その結果、CLK-DEL信号がハイになる時間まで、データ信号はローになるので、出力OUT信号はハイを維持する。従って、外部クロックの遅延のために、外部クロック信号はNANDゲート22を介したデータのクロッキングには有効でない。
【0005】
クロック速度が増加し続けるに従って、タイミング公差はますます厳しくなる。多数の事象を互いに正確なタイミングで行うことを要求する現在の集積回路における複雑さの増大によって、この問題は悪化する。これらのタイミングの制約が、多くの従来の集積回路における動作速度の増大を妨げる障壁となる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明のクロック発生器は、集積回路で使用するように調整されている。集積回路では、少なくとも複数の内部回路の動作を損なう大幅な遅延を伴って外部クロックが複数の内部回路に結合される。集積回路はダイナミックランダムアクセスメモリまたは他のいくつかのデジタル回路であり得る。クロック発生器は、遅延外部クロック信号を用いて、遅延されていない外部クロック信号に同期する内部クロック信号を発生する。クロック発生器は、遅延外部クロック信号および内部クロック信号を受け取る位相検波器を含む位相ロックループを用いて内部クロック信号を発生する。位相検波器は、遅延外部クロック信号と内部クロック信号との間の位相の差分を判定する。この位相比較は、外部クロック信号の位相と遅延外部クロック信号の位相との遅延の差分に一致する位相オフセットによって調整される。次に、調整された位相比較は、内部クロック信号の位相が外部クロック信号の位相と実質的に同じになるように、内部クロック信号の周波数および位相を制御するために使用される。位相検波器に加えて、位相ロックループは好適には、周波数制御信号によって判定された周波数で内部クロック信号を発生する電圧制御発振器(「VCO」)、および調整された位相比較(phase comparison)に一致する信号から周波数制御信号を発生するループフィルタを含む。クロック回路はまた、外部クロック信号の複数の所定の周波数範囲の1つを示すデータを記憶する記憶装置を含み得る。次に、記憶されたデータは、所定の周波数範囲にそれぞれ対応する複数の別個の周波数帯域のうちの1つの周波数帯域でVCOを動作させるために使用される。その結果、内部クロック信号の周波数および位相は、記憶装置からのデータに対応する周波数範囲内の周波数の比較的狭い帯域内での調整された位相比較に応答して制御すればよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明の好適な実施形態を、図3に示す集積回路30内に例示する。以下に詳細に説明するように、集積回路は、遅延外部クロック信号から内部クロックを発生することにより、従来技術の外部クロックの遅延の問題を除去する。重要なこととして、内部クロック信号の位相は、内部クロック信号の対応する部分が遅延外部信号の対応する部分の前に実際に発生するように遅延外部クロック信号からオフセットされる。この位相オフセットは、内部クロックが外部クロックと実質的に同期するように内部回路に結合された時に外部信号の遅延に一致する。
【0008】
図3を参照すると、外部クロックCLK-E信号は、例示する回路14a−14nに与えられる。図1の実施例において、回路14a−14nは、例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリに普通見られる回路等の、従来のまたは以後に開発される広範囲のさまざまな回路の中の任意の回路であり得る。実際、この実施例を目的として、集積回路30をダイナミックランダムアクセスメモリデバイスとする。外部クロックCLK-E信号はまた、従来の位相検波器36、従来の高利得差動増幅器38、ループフィルタ40、および従来のVCO42を含む位相ロックループ34に与えられる。電圧制御発振器の出力は、位相検波器36にフィードバックされた内部クロックCLK-I信号である。位相検波器36は、遅延クロックCLK-D信号の位相を内部クロックCLK-I信号の位相と比較して、位相の差分に一致するエラーE信号を発生する。エラーE信号は、抵抗器50を介して差動増幅器38の合計接合52に与えられる。また、差動増幅器38の出力からの負のフィードバック信号が抵抗器56を介して、オフセット電圧Vが抵抗器58を介して合計接合52に結合される。差動増幅器38の非反転の入力は、抵抗器60を介してグラウンドに結合される。
【0009】
当業者に周知のように、差動増幅器38は、抵抗器56の抵抗器50に対する比によって重み付けされたエラーE信号と、抵抗器56の抵抗器58に対する比によって重み付けされたオフセット電圧Vとの差分と比例した出力信号Oを発生する。従って、エラーE信号が0となるように遅延クロックCLK-D信号が内部クロックCLK-I信号と同期された場合、差動増幅器38の出力はオフセット電圧Vの加重値に等しくなる。しかし、差動増幅器38の出力電圧が実質的に0であった場合、遅延クロックCLK-D信号の位相と内部クロックCLK-I信号の位相との差分は、オフセット電圧Vの加重値に一致する。この特徴の重要性は、以下に明らかになる。
【0010】
差動増幅器38の出力は、位相ロックループ34のループダイナミクスを制御するループフィルタ40に与えられる。適切なループフィルタ40の設計は、当業者の能力の範囲内に十分含まれ、且つ、動作パラメータの変動に依存する。
【0011】
ループフィルタ40の出力は、内部クロックCLK-I信号を発生するVCO42の周波数制御入力に与えられる。内部クロックCLK-I信号の周波数は、ループフィルタ40からの電圧の値によって決定される。VCO42はまた、周波数帯域選択信号fを含む。周波数帯域選択信号fについては以下に説明するが、ここでは省略する。
【0012】
動作において、位相ロックループ34の利得は、内部クロックCLK-I信号の周波数が遅延クロックCLK-D信号の周波数と等しくなり、内部クロックCLK-I信号の位相が遅延クロックCLK-D信号の位相から重み付けされたオフセット電圧Vに一致する大きさの分だけオフセットされるのに十分な利得である。言い換えると、位相ロックループ34の利得は、VCO42が差動増幅器38の出力が0ボルトに近づくように調整されるのに十分な利得である。上で説明したように、差動増幅器38出力を実質的に0にするために、エラーE信号の加重値はオフセット電圧Vの加重値に一致せねばならない。エラーE信号がオフセット電圧Vに一致する十分に大きな値を有するようにするために、遅延クロックCLK-D信号と内部クロックCLK-I信号との間には大きな位相差を設ける必要がある。動作において、オフセット電圧Vの加重値は、位相検波器36に与えられた信号における位相差が、それが外部回路に結合された時の外部クロックCLK-E信号の遅延、つまり、CLK-E信号とCLK-D信号との位相差、に一致するように選択される。
【0013】
位相ロックループ34の動作は、更に図4のタイミング図を参照して最もよく説明される。図4に示すように、外部クロックCLK-E信号は、外部端子から内部回路14a−14nに結合される時、4分の1クロック周期分、または90゜遅延される。再び、データ信号は集積回路30のD端子に与えられ、NANDゲート70に結合される。NANDゲート70は、VCO42からの内部クロックCLK-I信号によってゲートされる。従って、図4に説明するように、集積回路の外部端子において内部クロックCLK-I信号が外部クロックCLK-E信号と同期をとるように、内部クロックCLK-I信号は、遅延クロック信号CLK-Dの4分の1クロック周期または90゜前に発生される。その結果、内部クロックCLK-I信号は、NANDゲート70を介してデータD信号全体をクロックすることができる。従って、NANDゲート70の出力における信号OUTは、データ信号Dの全部分の間、ローになる。
【0014】
外部クロックCLK-E信号の周波数が大幅に変動することが予測される場合、VCO42は、異なる周波数帯域で動作するようにスイッチされるように構成されるべきである。異なる周波数帯域または範囲で動作することによって、ループフィルタ40の出力は、内部クロックCLK-I信号の周波数を比較的狭い範囲で調節すればよく、これにより、「位相ジッタ」を最小化する。位相ジッタは、ループフィルタ40からVCO42の周波数制御入力に与えられた信号上のノイズから発生する。基本的に、制御電圧の所定の変化についてのVCO周波数出力におけるより大きな変化は、位相ロックループ34がロックされる場合により大きな位相ジッタとなる。別個の周波数帯域で動作するVCO42および制御電圧を用いてVCO42の周波数をこの帯域内でのみ調節することにより、制御電圧の所定の変化についての周波数の変化は、比較的小さい。これらの特徴を有する電圧制御発振器42は従来のものであり、且つ、当業者の能力の範囲内にあるものである。VCO42の周波数帯域は、外部クロック信号CLK-Eの周波数を示すデータを含む速度レジスタ74からのデータ信号によって選択される。データは、キーボード等の従来の入力装置76を介して速度レジスタ74にロードされ得る。あるいは、データは、他の手段によって速度レジスタ74に記録され得る。好適には、速度レジスタ74は、外部クロックCLK-E信号のそれぞれ許容可能な周波数に対応する複数の記憶セル78a−fを含む。記憶セル78Cのうちの1つのセルのみがビット、つまり、論理「1」を含み、それぞれの周波数を外部クロックCLK-E信号の周波数として指定する。
【0015】
以上のように、図3の、本発明30の好適な実施形態は、外部クロックCLK-E信号の、集積回路30を介して結合された時の大幅な遅延を補償することができる。
【0016】
以上から、本明細書中に説明を目的として本発明の特定の実施形態を説明したが、本発明の精神および範囲から逸れることなくさまざまな修正を行い得ることが理解される。例えば、本発明の好適な実施形態は位相ロックルックを用いたが、遅延ロックループ、あるいは、内部クロック信号の位相が外部クロック信号と実質的に同じである遅延外部クロック信号から内部クロック信号を発生する他の手段を含む他の技術を用い得ることが理解される。同様に、本発明の好適な実施形態を、同期型または非同期型のダイナミックランダムアクセスメモリの一部分として例示することを目的として説明したが、他の集積回路装置の一部分として使用し得ることが理解される。従って、本発明は、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、外部クロック信号が、外部クロック信号を用いて回路に結合される間に大幅に遅延された、従来技術の集積回路のブロック図である。
【図2】図2は、図1の集積回路内に存在するさまざまな信号を示すタイミング図である。
【図3】図3は、内部クロック信号が、内部クロック信号を発生するクロック発生器に結合されている外部クロックにおける大幅な遅延に関わらず外部クロック信号と同期をとる、本発明の好適な実施形態のブロック図および模式図である。
【図4】図4は、図3の集積回路内に存在するさまざまな信号を示すタイミング図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部回路(14a...14n)に結合された外部クロック信号(CLK−E)を受け取る複数の内部回路(14a...14n)を有する集積回路(30)において、該外部クロック信号(CLK−E)に対して遅延された遅延外部クロック信号(CLK−D)を受け取り、該遅延外部クロック信号(CLK−D)から、該外部クロック信号(CLK−E)に同期した内部クロック信号(CLK−I)を生成するクロック回路であって、
該クロック回路は、
該遅延外部クロック信号を受け取る位相ロックループと、
該内部クロック信号と、該外部クロック信号に対応するタイミングを有するデータ信号とを受け取る論理回路であって、該内部クロック信号を用いて該データ信号のデータをクロックする論理回路と
を含み、
該位相ロックループは、
周波数制御信号によって決定された周波数を有する出力信号を生成する電圧制御発振器(VCO)(42)であって、該内部クロック信号(CLK−I)がVCO出力信号から導出される、電圧制御発振器(VCO)(42)と、
該遅延外部クロック信号(CLK−D)と該VCO出力信号とを受け取り、該遅延外部クロック信号と該VCO出力信号との間の位相の差分に対応するエラー信号(E)を生成する位相検出器(36)と、
該エラー信号(E)と位相調整信号とを受け取り、該エラー信号(E)と該位相調整信号との組合せに対応する出力信号を生成する差動増幅器(38)であって、該位相調整信号が該外部クロック信号(CLK−E)の位相と該遅延外部クロック信号(CLK−D)の位相との差分に対応する、差動増幅器(38)と、
該差動増幅器(38)からの出力信号を受け取るループフィルタ(40)であって、該ループフィルタ(40)は、該差動増幅器の出力信号から該周波数制御信号を生成し、該内部クロック信号(CLK−I)が該外部クロック信号(CLK−E)に同期するように該VCO(42)、該位相検出器(36)、該差動増幅器(38)および該ループフィルタ(40)が位相ロックループとして接続されている、ループフィルタ(40)と
を含む、クロック回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−151183(P2007−151183A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41506(P2007−41506)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【分割の表示】特願平10−534893の分割
【原出願日】平成10年2月11日(1998.2.11)
【出願人】(596079127)マイクロン・テクノロジー・インコーポレーテッド (55)
【氏名又は名称原語表記】MICRON TECHNOLOGY,INC.
【Fターム(参考)】