説明

外部端子付き封口板およびその製造方法

【課題】 電池またはコンデンサー等の圧力容器に用いられる封口板において、封口板本体、リベット部および外部端子等の構成部品の互いの接合強度を高めることができる封口板を提供する。
【解決手段】 封口板と、貫通孔を有する外部端子とが、リベットを介して接合固定されてなる端子付き封口板であって、
前記外部端子は、その内側端面に、貫通孔の周縁に設けられた突起を有し、
前記リベットは、前記外部端子の貫通孔にリベットを挿入した際に、外部端子の突起部分突きあたるように、側部に段差が設けられてなり、
前記外部端子を狭持するように前記リベットを封口板に挿入して、加圧溶接することにより、前記封口板に外部端子が固定されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、車載用圧力容器、定置式の燃料電池内、インバーター用キャパシタ、バッテリ等に用いられる外部端子付き封口板に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサー、特に比較的大型のコンデンサーは、コンデンサー素子を入能する外装ケースの開口部に、外部接続用の端子が固着された封口板を装着して、コンデンサー素子の内容物を密封することが行われている。封口板には、電極として機能する外部端子がリベットを介して接合されており、この接合部分の強度が求められている。この封口板においては、封口板本体とリベット部間およびリベット部とこれに接続される外部端子間の接合強度が求められる。
【0003】
従来、このようなコンデンサーとして、図10に示すように、外部端子16にリベット部17を設け、そのリベット部を封口板18に貫通させて封口板の裏面から突出したリベット部にワッシャー19を係留し、これらを一体圧接することにより、外部端子と封口板とを接合固定したものが知られている。この外部端子16とリベット17とは、予め加圧溶接により一体化されたものが使用されている。そして、外部端子にはリベットとの接合面にバーリングと呼ばれる突起が設けられている。この突起を設けることにより、プロジェクション溶接した場合に、電流を集中させ発熱させることができるため、外部端子およびリベットにアルミ等の同質素材を使用した場合であっても、外部端子とリベットとてら強固に接合できる(例えば、特許文献1等)。
【特許文献1】特開2001−308109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バーリングを設けた端子を使用することにより、外部端子とリベットとの接合強度は向上するものの、外部端子に力がかかると、リベットとワッシャーとの接合部分に緩みが生じて封口板とリベットとの間に隙間が生じることがあった。このような隙間は、外部端子の強度が低下するだけでなく、コンデンサー内の電解液がリベットと封口板との隙間を伝って外部に漏洩するといった問題も生じ得るものである。
【0005】
本発明者らは今般、リベットと外部端子の形状を工夫することにより、封口板本体、リベット部および外部端子等の構成部品の互いの接合強度を高めることができる、との知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、電池またはコンデンサー等の圧力容器に用いられる封口板において、封口板本体、リベット部および外部端子等の構成部品の互いの接合強度を高めることができる封口板を提供することにある。また、封口板本体、リベット部および外部端子等の構成部品の互いの接合強度を高めることができる封口板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による封口板は、封口板と、貫通孔を有する外部端子とが、リベットを介して接合固定されてなる端子付き封口板であって、
前記外部端子は、その内側端面に、貫通孔の周縁に設けられた突起を有し、
前記リベットは、前記外部端子の貫通孔にリベットを挿入した際に、外部端子の突起部分突きあたるように、側部に段差が設けられてなり、
前記外部端子を狭持するように前記リベットを封口板に挿入して、加圧溶接することにより、前記封口板に外部端子が固定されたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の端子付き封口板によれば、外部端子の内側端面の貫通孔周縁に設けられた突起が、リベットの段差部分に突きあたった状態で加圧溶接されるため、加圧の際に、その突起部分によりリベット段差部分が、外周方向に広がるように変形する。その結果、段差部分が外周方向に広がった状態で外部端子の内側端面と溶接されるので、強固に外部端子とリベットとが固定されるとともに、リベット段差部分の広がりが、封口板の貫通孔を押し広げるように食い込むため封口板と密着し、外部端子と封口板とが隙間無く密着した状態で固定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の端子付き封口板を、図面を参照しながら説明する。
【0010】
本発明による端子付き封口板の構成斜視図を図1に示す。端子付き封口板は、外部端子1と封口板本体2とリベット3とから構成される。
【0011】
外部端子1は、リベット3と係合するように端面に貫通孔14を有しており、封口板2にもリベット3を挿入するための貫通孔5が設けられている。また、リベット3には、側面の途中に段差6を有し、リベット下端の方が上端よりも外径が大きい。さらに、リベット3には予め、ワッシャーとして機能する固定リング7が予め設けられている。
【0012】
リベット3を外部端子1の貫通孔4に挿入し、封口板本体2と組み合わせた状態の模式断面図を図2に示す。外部端子1には、その内側端面に貫通孔の周縁に設けられた突起8が設けられており、この突起部分8がリベットの段差部分6に突き当たって係合するようになっている。また、リベットの下端に設けられた固定リング7により封口板2を狭持している。リベットの外径が大きい部分(段差よりも下方)が、封口板に設けられた貫通孔の外径に嵌合するように、リベットの外径および封入板本体の貫通孔の外径を決定することができる。
【0013】
この状態で、加圧溶接機の陽極端子9を外部端子1の端面上面10に押しつけ、他方の陰極端子11をリベット(または固定リング)下端に押しつけることにより加圧溶接を行う。本発明においては、図3に示すように、外部端子の内側端面に、貫通孔周縁に設けられた突起8を有するため、この突起8がリベットの段差部分6に押しつけられ、リベット段差部分が外周方向に広がった状態12となる。そして、このリベットの広がり12が封口板の弾性絶縁板部分13において生じると、弾性絶縁材13を押し広げた状態でリベット3が封口板2に固定される。また、この段差部分の変形と同時に、溶接によりリベットの広がり部分12と外部端子の内側端面とが溶接されるため、外部端子1はリベット3に強固に固定される。
【0014】
また、封口板2の弾性絶縁部分13に食い込むようにリベット段差部分12が広がっているため、封口板本体2とリベット3との隙間がなく密着した状態で固定される。そのため、封口板の貫通孔の隙間からコンデンサーの電解液等が漏れ出すこともない。
【0015】
次に、リベット上端と下端とに力をかけて加圧することにより、図4に示すようにリベット上端15をかしめて外部端子1と封口板2とを固定する。本発明に使用するリベット3は、予め固定リング7が設けられてあるため、従来のワッシャー等を用いてかしめる場合と比較して、リベット下端部分に隙間が存在しない。そのため、封口板の貫通孔を通じてコンデンサー内の内容物が漏れ出すこともない。また、固定リング7はリベット3と一体成型されているため、外部端子1を封口板2に固定した後も、従来にようにワッシャーが緩んで外部端子の固定強度が低下したりすることもない。
【0016】
以下、本発明の端子付き封口板を構成する部材について説明する。
【0017】
(1)リベット
本発明の端子付き封口板に使用するリベットは、外部端子の貫通孔にリベットを挿入した際に、外部端子の突起部分に突きあたるように、側部に段差が設けられている。この段差部分に外部端子の突起が突き当たり加圧されることにより、リベットの段差部分が変形して外周方向に広がる。
【0018】
リベットの段差部分は、図5に示すように、リベット3の太い部分の外径をA、段差部分6の長さをBとした場合に、
0.2≧B/A≧2.0
を満足するものであることが好ましい。B/Aの値が2.0を超えるとリベットの細い部分の外径が小さくなりすぎるため、外部端子を固定した時の強度が不足する場合がある。一方、B/Aが0.2未満であると、加圧溶接によって押し広げられたリベットの段差部分が薄く、外部端子との溶接強度が不足する。
【0019】
リベット3の段差6は、図6に示すように、テーパー加工が施してあってもよいが、本発明においては、図7に示すように、段差部分6がリベット3の鉛直方向に対して垂直な平坦部分を有する形状であることが好ましい。このように段差部分を平坦とすることにより、外部端子をリベットに組み合わせた場合に、外部端子の位置決め精度が向上する。すなわち、段差を平坦形状とすることにより、外部端子をリベットに取り付けた際に傾いたりすることがない。
【0020】
(2)封口板本体
本発明に使用する封口板は、プレート状に成形された、例えば円板状、楕円状あるいは略方形に成形されたものであり、リベットを厚さ方向に挿入するための貫通孔が表面の所定の位置に設けられている。そして、封口板本体はコンデンサーの開口部等(図示せず)に封着される。
【0021】
封口板は、図2に示すように、弾性絶縁板13と硬質絶縁板14とからなる二層構造を有することが好ましく、この弾性絶縁板が外部端子を接合する面側に設けられていることがより好ましい。弾性絶縁材を使用することにより、リベットを加圧した際に、リベットの段差部分が、この弾性絶縁板に食い込むようにして広がるとともに、下面の硬質絶縁材料がストッパーの役目をして、弾性絶縁板部分にのみ段差の広がりが食い込むようにできる。
【0022】
硬質絶縁板の材料としては、ポリオレフィン系樹脂、メタロセン触媒にて重合したポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶性樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、ガラス繊維、炭素繊維またはウィスカー等の繊維状充填剤、炭素粒子、マイカ、ガラスビーズ等の粒子状充填剤等の充填剤・補強材、金属酸化物または加工助剤等が適宜配合される。これらの中でも、耐熱性およびコストの面で熱硬化性樹脂の一つであるフェノール樹脂が好適に使用できる。
【0023】
弾性絶縁板の材料としては、ゴム材料では、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ビニル変性ブチルゴム、エチレンプロピレン系ゴム、フッ素系ゴム、アクリル系ゴム、水素添加ニトリルゴム等の飽和系ゴムが挙げられ、架橋剤、充填剤、可塑剤または老化防止剤等を適宜配合する。また熱可塑性エラストマーでは、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、水素添加スチレン・ブタジエンブロック共重合体、水素添加スチレン・イソプレンブロック共重合体等が挙げられ、ブロック共重合方法、グラフト共重合方法、動的架橋方法等で製造され、架橋剤、可塑剤、老化防止剤または充填剤を適宜配合する。樹脂材料とゴムの混合物またはブロック共重合体またはグラフト共重合体等のエラストマーでは、フェノール系樹脂と水素化ニトリルゴム、フェノール系樹脂とアクリルゴム、ブチルゴムまたはフッ素ゴム等との混合物等が挙げられる。
【0024】
(3)外部端子
本発明の端子付き封口板に使用する外部端子1は、図8に示すように、貫通孔4を有し、その貫通孔4の周縁に突起8が環状に設けられている。この突起部分8は、リベットと組み合わさった場合に、図2に示すように、リベットの段差部分に突き当たる。
【0025】
この外部端子を封口板本体に固定する際には、固定リング付きのリベットを封口板本体の貫通孔に封口板の下端面側から挿入し、リベットの上端側を外部端子の貫通孔に挿入するようにして、封口板本体に外部端子を取り付ける。
【0026】
外部端子は、純鉄または鉄系の合金(例えばSPCC、SECC、SGCまたはSPHC等)、アルミニウム系材料、純銅または銅系の合金等の金属材料からなり、必要に応じてその表面に表面処理として、銅および半田メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、亜鉛メッキまたは金メッキ等を施す。
【0027】
(4)端子付き封口板の製造方法
上記の外部端子を狭持するようにリベットを封口板に挿入し、外部端子を封口板とリベットとに挟み込むことにより、外部端子、リベット、および封口板本体を組み合わせる。
【0028】
この状態で、図3に示すように、外部端子1の外側端面(端子の上面)10とリベット(または固定リング)下端面とを加圧しながら、抵抗溶接により前記外部端子とリベットとを溶接する。
【0029】
本発明においては、外部端子の内側端面に突起が設けられており、その突起とリベットの段差部分とが接触している状態である。このように、外部端子とリベットとの接合部の面積が減少することにより溶接時の電流密度が高くなり、よって強力な溶接部強度を得ることができる。したがってリベットと外部端子間の接合強度を高めることができる。
【0030】
また、外部端子の突起部分がくさびのようにしてリベットの段差部分に食い込み、リベットの段差部分近傍の側面が押し広げられる。この押し広げられたリベットは、封口板の貫通孔部分に食い込むようにして広がるため、封口板本体とリベットとがしっかりと隙間無く固定される。上記したように、封口板を弾性絶縁板と硬質絶縁板とからなる二層構造とすることにより、このリベットの広がりは弾性絶縁板部分のみが変形するようにして食い込むため、硬質絶縁版は変形を受けない。これによって、リベットの広がりが大きくなり(弾性絶縁板への食い込みが大きくなり)、より一層リベットと封口板との強固な密着を実現できる。
【0031】
この加圧溶接時のリベットの変形は、上記したように、リベットの段差部分の長さによって調製することができるが、外部端子1に設けられた突起8の形状によっても調節できる。例えば、図9に示すように、突起部分8の角度をθとした場合、θの値が45〜75°、好ましくは55〜65°となるような突起形状とすることにより、リベット段差部分が押し広げられた場合に、弾性絶縁板をリベットが挟み込むように、リベット段差部分が変形するため、封口板とリベットと隙間無く密着する。
【0032】
上記のように加圧溶接された後、リベットの上端と下端とを加圧して、封口板と外部端子とをかしめる。具体的には、図4に示すように、リベット上端を潰して外部端子とかしめることにより、リベット、封口板本体、および外部端子をしっかりと固定する。
【0033】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0034】
すなわち、本発明の端子付き封口板によれば、外部端子の内側端面の貫通孔周縁に設けられた突起が、リベットの段差部分に突きあたった状態で加圧溶接されるため、加圧の際に、その突起部分によりリベット段差部分が、外周方向に広がるように変形する。その結果、段差部分が外周方向に広がった状態で外部端子の内側端面と溶接されるので、強固に外部端子とリベットとが固定されるとともに、リベット段差部分の広がりが、封口板の貫通孔を押し広げるように食い込むため封口板と密着し、外部端子と封口板とが隙間無く密着した状態で固定される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の端子付き封口板の構成図。
【図2】封口板に外部端子とリベットとを組み合わせた状態の断面図。
【図3】外部端子の取付工程を示す断面図。
【図4】外部端子の取付工程を示す断面図。
【図5】リベットに外部端子を挿入した状態の断面図。
【図6】本発明の端子付き封口板に使用するリベットの一実施態様を示す断面図。
【図7】本発明の端子付き封口板に使用するリベットの他の実施態様を示す断面図。
【図8】本発明の端子付き封口板に使用する外部端子の一実施態様を示す断面図。
【図9】外部端子の貫通孔近傍を拡大した断面図。
【図10】従来の封口板を示す構成図。
【符号の説明】
【0036】
1.外部端子
2.封口板
3.リベット
4.外部端子の貫通孔
5.封口板の貫通孔
6.段差
7.固定リング
8.突起
9.加圧溶接機の陽極端子
10.外部端子の外側端面(上面)
11.加圧溶接機の陰極端子
12.段差部分の広がり
13.弾性絶縁板
14.硬質絶縁板
15.リベット上端
16.従来の外部端子
17.従来のリベット
18.従来の封口板
19.従来のワッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
封口板と、貫通孔を有する外部端子とが、リベットを介して接合固定されてなる端子付き封口板であって、
前記外部端子は、その内側端面に、貫通孔の周縁に設けられた突起を有し、
前記リベットは、前記外部端子の貫通孔にリベットを挿入した際に、外部端子の突起部分に突きあたるように、側部に段差が設けられてなり、
前記外部端子を狭持するように前記リベットを封口板に挿入して、加圧溶接することにより、前記封口板に外部端子が固定されたことを特徴とする、端子付き封口板。
【請求項2】
前記リベットの段差が平坦な部分を有する、請求項1に記載の端子付き封口板。
【請求項3】
前記封口板が、弾性絶縁板と硬質絶縁板とからなる二層構造を有する、請求項1または2に記載の端子付き封口板。
【請求項4】
前記リベットが加圧溶接により変形して、リベット段差部分が外周方向に広がった状態となる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の端子付き封口板。
【請求項5】
前記リベット段差部分の外周方向への広がりが、封口板の弾性絶縁板部分において生じる、請求項3または4に記載の端子付き封口板。
【請求項6】
前記リベットが、その一端に固定リングを有してなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の端子付き封口板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の端子付き封口板を製造する方法であって、
外部端子を狭持するようにリベットを封口板に挿入し、前記外部端子を封口板とリベットとに挟み込み、
前記外部端子の外側端面と前記リベット下端とを加圧しながら、抵抗溶接により前記外部端子とリベットとを溶接し、
前記リベットの上端と下端とを加圧するかしめ工程により、前記封口板と前記外部端子とを固定する、ことを含んでなる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−313818(P2006−313818A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135782(P2005−135782)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(392017004)湖北工業株式会社 (16)
【Fターム(参考)】