多孔質発熱体
【課題】機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として使用可能であること。
【解決手段】多孔質発熱体1は、アルミニウム粉2と、黒鉛粉3と、蛙目粘土粉4と、木粉5と、これら原料が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダ6とを混合してなる焼結原料混合物7を圧力を加えて成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなるものである。
【解決手段】多孔質発熱体1は、アルミニウム粉2と、黒鉛粉3と、蛙目粘土粉4と、木粉5と、これら原料が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダ6とを混合してなる焼結原料混合物7を圧力を加えて成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウムを原料として焼結した焼結体に関するもので、特に、通電による抵抗発熱性を有し、発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属や金属酸化物・窒化物等の粉末を焼成してなる焼結体は、その緻密性から様々な分野での利用可能性があり、従来から多くの技術が開発されてきていた。
特に、金属材料としてのアルミニウム材料は、軽量かつ安価であり、加工性も良いことから、従来から焼結体を製造する原材料としてアルミニウム材料が検討されてきた。
しかし、アルミニウム材料は極めて酸化し易く、その表面に安定で硬い酸化皮膜が形成され易いため、これをそのまま焼結させても機械的強度の高い焼結体を得ることは困難である。
【0003】
ところで、本出願人は、先に、アルミニウム粉末を使用した焼結体の発明に係る特許文献1の特許出願をした。この特許文献1に記載の焼結体の発明は、アルミニウム微粒子とゼオライト微粒子と有機バインダ及び/または無機バインダとを含有し、これらが均一に混合された混合物を、常温でプレス成形し、非酸化雰囲気において1200℃〜1800℃の範囲内の温度で焼結したものであり、これによって、優れた機械的強度を有する焼結体が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010−179397
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の発明においては、1200℃〜1800℃の範囲内の温度で焼結したことから、得られる焼結体は主にアルミナ質であると予測され、通電発熱はなく、抵抗体、抵抗発熱体等の用途に適した導電性は備えられていなかった。このため、アルミニウム材料を使用した焼結体として応用分野の拡大を図ることはできなかった。
従来から使用されている発熱体として、ニクロム合金、カンタル合金等の金属材料や、炭化ケイ素(SiC)等のセラミック材料からなるものが開発されている。
しかし、金属材料からなる発熱体は、液体加熱用の発熱体等として使用する場合において、金属の周囲にマグネシア等の絶縁物を配設し、更に、全体を金属シースで包む必要があることから、また、金属線によって面放熱させていたことから、発熱効率が低かった。一方、セラミック材料からなる発熱体においては、脆くて急激な温度変化による熱衝撃にも弱く、急速加熱や急速冷却が困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる不具合を解決すべくなされたものであって、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙し、通電によって発熱する成型体を形成してなるものである。
【0008】
ところで、上記アルミニウム粉は、通常、アトマイズ法(噴霧式)によって製造された不規則な形状(針状、紡錘形状等)のものが使用される。
また、上記炭素粉は、通常、熱伝導率が低く、高温下でも前記アルミニウム粉とは反応しないものであるが、ここでは、前記アルミニウム粉の溶融点(668℃)より低い温度では溶融しないものであればよく、例えば、黒鉛、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維等の粉状物が挙げられる。
そして、上記鉱物質粉としての陶磁器用の粘土粉は、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有するものであればよく、例えば、蛙目粘土、木節粘土、カオリン、長石、陶石、ゼオライトの粉末等が使用される。前記蛙目粘土、木節粘土、カオリン、長石、陶石、ゼオライトの粉末は、通常、鉱物質粉と呼ばれ、陶磁器用の粘土粉である。
【0009】
ここで、上記成型体における空隙が5%〜50%の範囲内とは、本発明者らが、鋭意実験研究を重ねた結果、成型体における空隙が5%〜50%の範囲内においては、抵抗発熱体として使用において、十分な強度及び通電発熱性を確保できることを見出し、この知見に基づいて設定されたものである。即ち、成型体における空隙が5%未満のものでは、成型体の抵抗値が小さく、通電による発熱性が損なわれる。一方で、成型体における空隙が50%を超えると、抵抗発熱体として使用において、強度が足りず、また、通電性が損なわれる。
なお、上記5%〜50%の範囲内は、厳格に5%〜50%の範囲内であることを要求するものではなくて約5%〜約50%の範囲内であればよく、当然、誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0010】
上記5%〜50%の範囲内の空隙は、形成した乾燥状態の発熱体の体積及び重量を測定し、水を含浸させた状態の重量を測定し、再び乾燥させて重量を測定し、その重量の変化を気孔率に置き換えたものである。また、「パラフィン浸透装置(ULVAC DA−15D)」により真空に脱気したところにパラフィンを含浸させて、その重さの変化から算出したものも、結果的に大きな差は生じなかった。したがって、ここでは前者、後者の区別なく説明する。
【0011】
請求項2の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなるものである。
【0012】
ここで、請求項1と相違する要件についてのみ説明すると、上記水及び/またはバインダは、水のみを単独で用いても良いし、バインダのみを単独で用いても良く、水とバインダの両方を併用しても良いという意味である。そして、この水及び/またはバインダは、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量、即ち、重力沈降しない程度の量であり、即ち、比重の違いによって沈殿しない程度の量が、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉に混合される。
なお、上記常温とは、JIS Z 8703で規定されるように、20℃±15℃(5℃〜35℃)の範囲内の温度をいう。
【0013】
請求項3の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0014】
請求項4の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ(Al2O3)粉と、シリカ(SiO2)粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記アルミナ粉、前記シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0015】
請求項5の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0016】
ここで、上記セラミックス遠赤外線材料の粉末は、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるものであればよく、例えば、ムライト(Al2O3・3SiO2)、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、βスポジューメン(Li2O・Al2O3・4SiO2)等が使用される。なお、「遠赤外線」についての明確な定義はなく、それの波長範囲はそれを扱う分野等においてまちまちであるが、ここでは、セラミックス分野において一般的であるように、3μm程度以上の波長を有する赤外線を「遠赤外線」という。
【0017】
請求項6の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記セラミックス遠赤外線材料の粉末が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0018】
請求項7の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記炭素粉を黒鉛粉としたものである。
ここで、上記黒鉛(グラファイト、石墨)は、常圧で安定な炭素同素体の鉱物であり、炭素6員環が連なる層状構造を有し、融点が非常に高いものである。粉末化した黒鉛粉には、天然黒鉛を用いるのが一般的で、中でも鱗状黒鉛を用いるのが最も一般的であるが、その他にも土状黒鉛等の天然黒鉛や鱗状天然黒鉛粉末を長柱状に造粒した長柱状造粒黒鉛等の使用も可能である。
【0019】
請求項8の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記混合物において、前記アルミニウム粉の含有量が35重量%〜70重量%の範囲内、好ましくは、40重量%〜65重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量が3重量%〜15重量%の範囲内、好ましくは、5重量%〜10重量%の範囲内であり、前記鉱物質粉(陶磁器用の粘土粉)の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内、好ましくは、30重量%〜60重量%の範囲内であるものである。
なお、上記数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0020】
請求項9の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つの構成において、前記アルミニウム粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm〜75μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満であるもの、好ましくは、中位径が35μm〜65μmの範囲内であり、粒子径が100μm未満であるものである。
【0021】
ところで、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」の本文及び解説の用語の定義によれば、中位径とは、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数(または質量)が、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径(直径)、即ち、オーバサイズ50%の粒径であり、通常、メディアン径または50%粒子径といいD50と表わされる。定義的には、平均粒子径と中位径で粒子群のサイズを表現されるが、ここでは、商品説明の表示、レーザ回折・散乱法によって測定した値である。
そして、この「レーザ回折・散乱法によって測定した中位径」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算重量部が50%となる粒子径(D50)をいう。
なお、上記数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0022】
請求項10の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記炭素粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm〜90μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満であるであるもの、好ましくは、中位径が70μm〜80μmの範囲内であり、粒子径が150μm未満であるものである。
なお、上記数値も、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0023】
請求項11の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項10のいずれか1つの構成において、前記陶磁器用の粘土粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μ〜30μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満であるもの、好ましくは、中位径が10μ〜20μmの範囲内であり、粒子径が70μm未満であるものである。なお、上記数値も、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0025】
アルミニウム粉と、炭素粉と、陶磁器用の粘土粉が混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
【0026】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0027】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体等の使途に適する。また、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0028】
請求項2の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなる。
【0029】
アルミニウム粉と、炭素粉と、陶磁器用の粘土粉と、水及び/またはバインダが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
特に、アルミニウム粉、炭素粉、陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダが混合されることによって、成形性が向上するため、加熱加圧せずとも常温の加圧で、また、低圧力でも成形できる。このため、成形コストを抑えることができる。
【0030】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0031】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0032】
請求項3の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
アルミニウム粉と、炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
【0033】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0034】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、かつ、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0035】
請求項4の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記アルミナ粉、前記シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、常温で圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0036】
アルミニウム粉と、炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉と、水及び/またはバインダが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
特に、アルミニウム粉、炭素粉、アルミナ粉と、シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダが混合されることによって、成形性が向上するため、加熱加圧せずとも常温の加圧で、また、低圧力でも成形できる。このため、成形コストを抑えることができる。
【0037】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0038】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、かつ、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0039】
請求項5の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0040】
アルミニウム粉と、炭素粉と、セラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0041】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、かつ、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0042】
請求項6の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記セラミックス遠赤外線材料の粉末が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、常温で圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0043】
アルミニウム粉と、炭素粉と、セラミックス遠赤外線材料の粉末と、水及び/またはバインダが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
特に、アルミニウム粉、炭素粉、セラミックス遠赤外線材料の粉末が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダが混合されることによって、成形性が向上するため、加熱加圧せずとも常温の加圧で、また、低圧力でも成形できる。このため、成形コストを抑えることができる。
【0044】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0045】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0046】
請求項7の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記炭素粉は黒鉛粉であり、炭素粉としての黒鉛粉は、融点が非常に高く、また、アルミニウム粉の表面に付着しやすいことから、焼成過程において、溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良を確実に抑制できる。したがって、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の効果に加えて、安定した強度や通電発熱性等の性能を確保でき、高い品質を確保することができる。
【0047】
請求項8の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記混合物において、前記アルミニウム粉の含有量は35重量%〜70重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量は3重量%〜15重量%の範囲内であり、前記陶磁器用の粘土粉の含有量は25重量%〜65重量%の範囲内である。
【0048】
ここで、本発明者等は、より確実に高強度で通電発熱性を有する多孔質発熱体を得るための原料配合比について、鋭意実験研究を重ねた結果、前記混合物において、前記アルミニウム粉の含有量が35重量%〜70重量%の範囲内、好ましくは、40重量%〜65重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量が3重量%〜15重量%の範囲内、好ましくは、5重量%〜10重量%の範囲内であり、前記陶磁器用の粘土粉の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内、好ましくは、30重量%〜60重量%の範囲内であることによって、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0049】
即ち、混合物において、アルミニウム粉の含有量が35重量%未満であると、アルミニウム粉が少なすぎて、通電性が損なわれる。一方、アルミニウム粉の含有量が70重量%を超えると、アルミニウム粉において炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。
また、炭素粉の含有量が3重量%未満であると、炭素粉が極めて少な過ぎてアルミニウム粉において炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。一方、炭素粉の含有量が15重量%を超えると、炭素粉が多過ぎて成型体の強度及び純度が低下し、多孔質発熱体の抵抗発熱体としての使用において強度や通電発熱性が足りないものとなる。
更に、陶磁器用の粘土粉の含有量が25重量%未満であると、陶磁器用の粘土粉が少なすぎて、得られる成型体の抵抗値が小さくなり、多孔質発熱体の抵抗発熱体としての利用において通電発熱性が足りないものとなる。一方、陶磁器用の粘土粉の含有量が65重量%を超えると、陶磁器用の粘土粉が多過ぎて、通電性が損なわれる。
【0050】
したがって、この発明の多孔質発熱体によれば、請求項1乃至請求項7に記載の効果に加えて、確実に高強度で通電発熱性を有し、純度の高いものとなる。
なお、前記混合物において、前記アルミニウム粉の含有量が40重量%〜65重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量が5重量%〜10重量%の範囲内であり、前記鉱物質粉(陶磁器用の粘土粉)の含有量が30重量%〜65重量%の範囲内あることによって、更に確実に多孔質発熱体において高い強度及び純度並びに通電発熱性を確保できるため、より好ましい。
【0051】
請求項9の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記アルミニウム粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm〜75μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満である。
【0052】
ここで、アルミニウム粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm未満であると、焼成過程においてアルミニウム粉が低温で溶融しやすくて表面に噴出する可能性があり、一方、アルミニウム粉の中位径が75μmを超えると、炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。アルミニウム粉のふるい試験法によって測定した粒子径が150μm以上の場合においても、炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。
【0053】
したがって、この発明の多孔質発熱体によれば、請求項1乃至請求項8に記載の効果に加えて、確実に高強度及び通電発熱性を有するものとなる。また、このように小径粒子と大径粒子の取合せによって成形時における充填性が向上することになるため、多孔質発熱体における強度の向上を図ることができる。
なお、前記アルミニウム粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が35μm〜65μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満であることによって、高強度で通電発熱性を有する多孔質発熱体をより確実に得ることができるため、更に好ましい。
【0054】
請求項10の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記炭素粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm〜90μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満である。
【0055】
ここで、炭素粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm未満であると、焼成過程において炭素粉が液状化し易くてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。一方、炭素粉の中位径が90μmを超えると、炭素粉が均一に分散混合されにくくなって、アルミニウム粉において炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、同様に、焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。
炭素粉のふるい試験法によって測定した粒子径が200μm以上の場合においても、アルミニウム粉において炭素粉に覆われない部分が増大し、焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。
更には、このように小径粒子と大径粒子の取合せによって成形時における充填性が向上してアルミニウム粉に炭素粉が確実に付着することになるため、焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出するのが確実に防止される。
【0056】
したがって、この発明の多孔質発熱体によれば、請求項1乃至請求項9に記載の効果に加えて、確実に高強度及び通電発熱性を確保することができる。
なお、前記炭素粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が70μm〜80μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満であることによって、高強度で通電発熱性を有する多孔質発熱体をより確実に得ることができるため、更に好ましい。
【0057】
請求項11の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記陶磁器用の粘土粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μm〜30μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満である。
【0058】
ここで、陶磁器用の粘土粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μm未満の微細粉されたものを得るのにはコストが掛かるうえに、中位径が5μm未満であると、熱による陶磁器用の粘土粉の成分変化が生じ易くなり、成型体において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。一方、陶磁器用の粘土粉の中位径が30μmを超えると、陶磁器用の粘土粉が均一に分散混同され難くてその分布に偏りが生じたり、熱による陶磁器用の粘土粉の成分変化が生じ易い。それによって、やはり成型体において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。陶磁器用の粘土粉のふるい試験法によって測定した粒子径が100μm以上である場合においても、同様に、陶磁器用の粘土粉が均一に分散混同され難くてその分布に偏りが生じたり、熱による陶磁器用の粘土粉の成分変化が生じ易かったりする可能性があり、それによって、やはり成型体において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。
【0059】
したがって、この発明の多孔質発熱体によれば、請求項1乃至請求項10に記載の効果に加えて、確実に高強度及び通電発熱性を確保することができる。また、このように小径粒子と大径粒子の取合せによって成形時における充填性が向上することになるため、多孔質発熱体における強度の向上を図ることができる。
なお、前記鉱物質粉(陶磁器用の粘土粉)はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が10μm〜20μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が70μm未満であることによって、高強度で通電発熱性を有する多孔質発熱体をより確実に得ることができるため、更に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の成形例を示すもので、図2(a)は直方体状の多孔質発熱体であり、図2(b)は円筒状の多孔質発熱体の斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体のX線回析(多孔質発熱体を粉砕して測定)によるスペクトル図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1に係る厚み15mmの多孔質発熱体のSEM−EDX(エネルギ分散型X線分光法)によるBSE(反射電子顕微鏡)写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(a)、同じく厚み15mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真(走査型電子顕微鏡)におけるスペクトルの検出位置を示す図(b)である。
【図5】図5は図4(a)のBSE写真及び図4(b)のSEM写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態1に係る厚み15mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図である。
【図7】図7は図6のSEM写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(a)及びBSE写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(b)である。
【図9】図9は図8(a)のSEM写真及び図8(b)のBSE写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(a)及びBSE写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(b)である。
【図11】図11は図10(a)のSEM写真及び図10(b)のBSE写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(a)及びBSE(反射電子顕微鏡)写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(b)である。である。
【図13】図13は図12(a)のSEM写真及び図12(b)のBSE写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のBSE写真におけるスペクトルの検出位置を示す図である。
【図15】図15は図14のBSE写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図である。
【図17】図17は図16のSEM写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図18】図18は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図である。
【図19】図19は図18のSEM写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図20】図20は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を1mmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を100μmとする図(b)である。
【図21】図21は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を100μmとする図(a)、BSE写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を100μmとした写真の図(b)である。
【図22】図22は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を50μmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を50μmとした写真の図(b)である。
【図23】図23は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を20μmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を3μmとした写真の図(b)である。
【図24】図24は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を500μmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を50μmとした写真の図(b)である。
【図25】図25は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すBSE写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を50μmとする図(a)、SEM写真であり厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を30μmとした写真の図(b)である。
【図26】図26は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を20μmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を20μmとした写真の図(b)である。
【図27】図27は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の通電による温度変化を示すグラフ及びその下の表は電気特性値を示す表(a)であり、また、通電解除による温度変化を示すグラフ(b)である。
【図28】図28は、本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の実施物として、プレス成形してなる平板状の多孔質発熱体の通電による発熱温度分布を示す写真(サーモグラフィ)である。
【図29】図29は、本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の実施物として、長さ方向の中央部と両端部で厚みに差をつけた多孔質発熱体の写真(a)と、その通電による発熱温度分布を示す写真(サーモグラフィ)(b)である。
【図30】図30は本発明の実施の形態2に係る多孔質発熱体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態に係る発熱体について、図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態において、同一記号及び同一符号は、実施の形態の同一または相当する機能部分を意味し、実施の形態相互との同一記号及び同一符号は、それら実施の形態に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0062】
[実施の形態1]
まず、本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体について、図1乃至図29を参照して説明する。
本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、アルミニウム粉2、黒鉛粉末としての炭素粉3、無機酸化物材料としての陶磁器用の粘土粉である蛙目粘土粉4、有機化合物粉としての木粉5、水及び/またはバインダ6を使用して製造されるものである。
【0063】
図1のフローチャートに示されるように、本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体1においては、最初に、焼結原料混合工程にて、アルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4、木粉5、水6及び/またはバインダが混合され、焼結原料混合物7となる(ステップS1)。
【0064】
ここで、アルミニウム粉2としては、市販のアルミニウム粉末を用いることができ、このようなアルミニウム粉末は、ミナルコ(株)、日本軽金属(株)、東洋アルミニウム(株)、大和金属粉工業(株)等から発売されている。また、アルミニウム粉2には、100%アルミニウムでなく、無機物等の不純物が僅かに含まれたものや、リサイクルのアルミニウムでも使用可能であり、更には、鉄や銅等の金属を僅かに含有したアルミニウム合金の粉末等を使用することも可能である。
【0065】
このアルミニウム粉2には、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm〜75μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満であるものを用いるのが好ましい。つまり、小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性を向上させるためである。また、アルミニウム粉2の中位径が30μm未満であると、焼成過程においてアルミニウム粉2が低温で溶融しやすくて表面に噴出する可能性があり、一方、アルミニウム粉2の中位径が75μmを超えると、炭素粉3に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。アルミニウム粉2のふるい試験法によって測定した粒子径が150μm以上の場合においても、炭素粉3に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定したアルミニウム粉2の中位径が35μm〜65μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満である。
【0066】
炭素粉としての炭素粉3は、アルミニウム粉2の溶融点より低い温度では溶融しないものであり、この炭素粉3には、市販の黒鉛粉末を用いることができる。そして、このような黒鉛粉末は、西村黒鉛(株)、日本黒鉛工業(株)、伊藤黒鉛工業(株)、(株)中越黒鉛工業所等から発売されている。市販の黒鉛粉末には、鱗状黒鉛や土状黒鉛等の天然黒鉛、鱗状天然黒鉛粉末を長柱状に造粒した長柱状造粒黒鉛等の人造黒鉛が存在するが、中でも、一般的に純度が高いとされる天然の鱗状黒鉛を用いるのが好ましい。鱗状黒鉛を用いることで、アルミニウム粉2に絡んで付着し易く、アルミニウム粉2の溶融によりアルミニウムが表面に噴出する焼結不良を効果的に抑制することができるからである。
【0067】
この炭素粉3には、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm〜90μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満であるものを用いるのが好ましい。ここでも、小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性が向上するからである。
また、炭素粉3の中位径が60μm未満であると、焼成過程において炭素粉3が液状化し易く、アルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。一方、炭素粉3の中位径が90μmを超えると、炭素粉3が均一に分散混合され難くなって、アルミニウム粉2において炭素粉3に覆われない部分が増大し、そのことによって、同様に焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。炭素粉3のふるい試験法によって測定した粒子径が200μm以上の場合においても、アルミニウム粉2において炭素粉3に覆われない部分が増大し、焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定した炭素粉3の中位径が70μm〜80μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満である。
【0068】
陶磁器用の粘土粉としての蛙目粘土粉4は、花崗岩が風化し堆積してできた風化残留粘土を水簸(珪砂と粘土の分離)し、精製して粉末状にしたものであり、アルミニウムのケイ酸塩鉱物のAl2Si4010(OH)8であるカオリン主成分で、石英、長石、雲母等が混在する粘土粉である。そして、一般的に、化学成分析によればアルミニウム酸化物のAl2O3及びケイ素酸化物SiO2の成分量が最も多く、その他にFe2O3、TiO2、CaO、MgO、Na2O、K2O等の成分を含有しているが、成分量は産地等により異なるため、主としてAl2O3及びSiO2が含有されていればその他の成分や組成比は特に限定されるものではない。この蛙目粘土粉4には、例えば、(株)ヤマス、共立マテリアル(株)等から発売されている市販の蛙目粘土粉を用いることができる。
【0069】
また、この蛙目粘土粉4にはレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μm〜30μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満であるとし、小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性が向上するからである。
そして、蛙目粘土粉4の中位径が5μm未満の微細粉されたものを得るのにはコストが掛かる上に、蛙目粘土粉4の中位径が5μm未満であると、熱による蛙目粘土粉4の成分変化が生じやすくなり、後述の成型体8において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。一方、蛙目粘土粉4の中位径が30μmを超えると、蛙目粘土粉4が均一に分散混同され難くてその分布に偏りが生じたり、熱による蛙目粘土粉4の成分変化が生じやすかったりする可能があり、それによって、やはり成型体8において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。
蛙目粘土粉4のふるい試験法によって測定した粒子径が100μm以上の場合においても、同様に、蛙目粘土粉4が均一に分散混同され難くてその分布に偏りが生じたり、熱による蛙目粘土粉4の成分変化が生じやすかったりする。それによって、やはり成型体8において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。
なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定した蛙目粘土粉4の中位径が10μm〜20μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が70μm未満である。
【0070】
有機化合物粉末としての木粉5には、大鋸屑、間伐材のチップ、小径木、製材端材、樹皮等の木屑を粉砕機で微粉砕したものが使用されるが、ウィスカー状のものを用いるのが好ましい。ウィスカー状の木粉5を使用することでアルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4等の原料がウィスカーのヒケ状の隙間に絡みつくため、原料の充填性が高くなると共に、この状態で後述の成形工程で圧力を掛けて生じたものは強固で緻密なものとなる。そして、この成形された混合物を焼結することによって得られる成型体8は、その強度が非常に高いものとなる。
【0071】
また、この木粉5には、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が80μm〜120μmmの範囲内であり、ふるい試験法による粒子径が200μm未満であるものを用いることが好ましい。小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性が向上するからである。また、木粉5の中位径が80μm未満の微細粉されたものを得るにはコストが掛かり、一方で、木粉5の中位径が120μmを超えると、木粉5が均一に分散混合され難くて焼失による空隙の分布に偏りが生じ、成型体8において安定した強度が確保されない可能性がある。また、木粉5のふるい試験法による粒子径が200μm以上の場合においても、木粉5が均一に分散混合され難くて焼失による空隙の分布に偏りが生じ、成型体8において安定した強度が確保されない。なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定した木粉5の中位径が50μm〜100μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満である。
【0072】
なお、粒子径が200μm未満の木粉5を経済的に得るには、間伐材、小径木、樹皮、製材端材、大鋸屑等の木屑を、水分20重量部以下に乾燥した後に、微粉砕する必要がある。木屑を水分20重量部以下に乾燥することによって、粉砕物がスラリー化して微粉砕を妨げることを防止できるからである。更に、乾燥した木屑を微粉砕して、粒子径が200μm未満の木粉5とするためには、周速50m/秒〜80m/秒の範囲内の微粉砕機を用いるのが好ましく、このような微粉砕機としては、例えば、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミル等がある。
ここで、スギ(杉)・ヒノキ(檜)等の針葉樹は、我が国において広く分布しており、建材等として大量に使用されているため、大鋸屑や間伐材並びに樹皮を容易に大量に入手することができる。更に、針葉樹の微細組織はウィスカー状であり、微粉砕して木粉5とすることが容易である。したがって、原料収集と国土保全上は、大鋸屑及び間伐材のチップ並びに樹皮としては、針葉樹の大鋸屑または針葉樹の間伐材のチップ或いは針葉樹の樹皮を用いることが好ましい。
【0073】
そして、本実施の形態1では、アルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4、及び木粉5に、これら原料が比重の違いによって移動が生じない量(重力沈降しない量)の水及び/またはバインダ6が混合されることによって、蛙目粘土粉4が粘土鉱物質であることからこれが成形性または保形性等の確保に有利に機能して、原料同士が互いに接着され、手で握っても崩れることなくまとまった状態の焼結原料混合物7が得られる。このようにして得られた焼結原料混合物7は、アルミニウム粉2や木粉5の表面に炭素粉3が付着した状態になっている。
【0074】
なお、本実施の形態1においては、これら原料の混合に精密分散混合機が用いられ、アルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4、及び木粉5が均一に分散混合されて焼結原料混合物7となっている。なお、精密分散混合機としては、周速5μm/秒〜80m/秒の範囲内、より好ましくは、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いるのが好ましく、このような高速攪拌分散機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)等がある。
【0075】
また、本実施の形態1においては、原料に蛙目粘土粉4を用いることから、水6を少量混合するだけで容易に原料同士が接着されてまとまった状態となり、後述の成形工程においては常温で加圧するだけで、焼結原料混合物7が成形されて強固なものとすることができるが、本発明を実施する場合には、原料同士の接着に、有機バインダや無機バインダを使用することも可能であり、水とバインダとを併用することも可能である。
ここで、「有機バインダ」としては、例えば、合成樹脂、澱粉、合成糊、砂糖等を用いることができる。また、合成樹脂には熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があり、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂等を用いることができ、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタンプレポリマー等を用いることができる。なお、中でも、ポリオール系樹脂とイソシアネート系樹脂とは常温で反応して強固な結合を形成し、特に、イソシアネート系樹脂は、木粉5等における水酸基(−OH)と反応して強固なウレタン結合を形成するため、焼結原料混合物7を成形したものはとても強固で緻密な状態のものとなる。
【0076】
「無機バインダ」としては、セメント等の水硬性材料、磁器(タイル)・陶器の原料であるベントナイト等の粘土、ρ−アルミナ(Al2O3 ・nH2 O:n≒0.5)、ケイ酸ナトリウム、水溶性アルカリケイ酸、(株)ジャパンナノコート製のシリカバインダ、グランデックス(株)製のシリカバインダである汎用バインダFJ294等を用いることができる。
なお、有機バインダは、加熱過程において焼失し空隙となり、無機バインダは、焼失せずに焼成されることになる。
【0077】
更に、本発明を実施する場合においては、樹脂成型方法のように、アルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4及び木粉5に、水6を入れ、スラリー状の焼結原料混合物7として金型に充填し、固めたのちに、後述の成形工程(ステップS2)に供することもできる。また、セラミックや磁器(タイル)の製造のように、焼結原料混合物7をスプレードライヤーによって乾燥させた後、後述の成形工程(ステップS2)に供することも可能である。
いずれにせよ、後述する焼成過程において形状が保持される程度に固化された状態のものが作製できれば、原料同士を接着する手段やバインダの種類は特に限定されない。
【0078】
次に、本実施の形態1においては、この焼結原料混合物7が、成形工程において、常温で加圧され(ステップS2)、強固で緻密な固形状態の成型体8となる。
ここで、成形工程においては、焼結原料混合物7をプレス成形金型に投入し所定圧力のプレスで成形するプレス成形と、焼結原料混合物7を耐圧性の型枠に入れ所定圧力で押し出して成形する押出成形等が可能である。
【0079】
因みに、本実施の形態1においては、原料に蛙目粘土粉4を用いたことから、上述の如く、水及び/またはバインダ6を少量混合するだけで容易に原料同士が接着されてまとまった状態となる。このため、常温での加圧で、更に、低圧力で成形することができる。よって、高圧力や加熱装備のプレス装置を必ずしも用いなくても良く、低コスト化を図ることができる。
具体的に、水及び/またはバインダ6を混合してなる焼結原料混合物7をプレス成形する場合、プレス圧力は、10kg/cm2〜200kg/cm2 の範囲内とするのが好ましい。プレス成形の圧力が10kg/cm2未満であると、焼結原料混合物7が十分に圧縮されないため、得られる成型体8の強度が弱くなり後述の焼成過程において破損する可能性がある。また、プレス成形の圧力が200kg/cm2を超えると、焼結原料混合物7に圧力が掛かり過ぎて高緻密度とものとなり、成型体8の抵抗値が小さくなって多孔質発熱体1の通電発熱性が損なわれる可能性がある。焼結不良となる可能性がある。より好ましくは、50kg/cm2〜150kg/cm2の範囲内である。特に、水分量が多いほど低圧力での成形が可能となる。
【0080】
そして、このように本実施の形態1においては、常温の加圧によって成形でき、外部からの均一な加熱が不要であるため、プレス成形の場合には、厚い成型体8(例えば、150トンのプレス機で約20mm厚まで)を得ることも可能である。更に、加熱機構が不要であることから、プレス成形機及び金型の構造を簡単にして、広い面積の成型体8(例えば、1000mm×2000mm)を得ることも可能である。なお、このときのプレス成形機としては、例えば、150トン以上の粉末成形プレス機が使用できる。このプレス機によれば、成形途中にガス抜きが出来る機構が付いているため、成形によって高強度のものが安定して得られる。勿論、例えば、後述するように、凹凸を有する金型や曲線部を有する金型枠型等を使用し、成形によって焼結原料混合物7の意匠面に凹凸を形成したり、焼結原料混合物7を所望形状に成形することも可能である。
【0081】
一方、押出成形の場合には、焼結原料混合物7を曲面形状の筒状・棒状等複雑な形状に成形することが可能である。特に、水及び/またはバインダ6を混合してなる焼結原料混合物7は、成形性が良いため、押出成形によってハニカム状等の極めて複雑な形状に形成することも可能である。このようにして、図2に示す本実施の形態1に係る射出成型した多孔質発熱体10及び押出成形した多孔質発熱体20が得られる。
【0082】
なお、本発明を実施する場合には、勿論、加熱加圧によって、焼結原料混合物7を成形することも可能である。殊に、本発明においては、蛙目粘土粉4等の鉱物質粉が使用され、これが成形性または保形性等の確保に有利に機能することから、加熱加圧の場合、水やバインダを混合せずとも成形が可能である。因みに、水やバインダを混合せず加熱加圧する場合のプレス成形圧力は、50kg/cm2〜300kg/cm2の範囲内とするのが好ましい。プレス成形の圧力が50kg/cm2未満であると、水やバインダを混合していない場合に焼結原料混合物7が十分に圧縮されないため強度が弱くなり後述の焼成過程において破損する可能性がある。また、プレス成形の圧力が300kg/cm2を超えると、焼結原料混合物7に圧力が掛かり過ぎて高緻密度とものとなり、得られる成型体8の抵抗値が小さくなって多孔質発熱体1の通電発熱性が損なわれる可能性がある。より好ましくは、100kg/cm2〜200kg/cm2の範囲内である。しかし、抵抗値及び複合成分によっては、100kg/cm2〜200kg/cm2の範囲外の使用も有り得る。
【0083】
続いて、成形された焼結原料混合物7は、焼結工程において、温度制御電気炉内にて1000℃〜1200℃の範囲内で焼結される(ステップS3)。
ここで、焼結の温度が1000℃〜1200℃の範囲内とは、本発明者らが鋭意実験研究を重ねた結果、1000℃未満では、十分な焼成が行われずに粉状態のものが得られ焼結不良となってしまうことが確認されたことから、焼結温度の下限値を1000℃とし、一方で、1200℃を超えると、得られる成型体8は通電発熱性を有さないことが確認されたことから、焼結温度の上限値を1200℃としたものである。
なお、焼結工程の昇温プログラムは、各原料の種類、粒子径、配合量や、後述の成型体8において必要とされる抵抗値、発熱温度等によって予め実験によって最適値が設定される。
そして、このように1000℃〜1200℃の範囲内で焼結することによって、成型体8となる。このようにして得られた成型体8は、通電によって容易に抵抗発熱する。特に成型体8の全面で発熱する。
【0084】
このようにして、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1が得られる。
具体的には、図2(a)に示すように、直方体状の多孔質発熱体10(多孔質発熱体1)は、直方体状の抵抗体部11と、その抵抗体部11の両端に埋設した端子12,13とからなる。この端子12,13は、焼結原料混合物7を形成した後、型内に端子12及び端子13を配置し、成型工程S2で一体化させたものである。この端子12,13は、ステンレス製であり、焼結工程S3で溶融しない材料として、低抵抗材料として選択されたものである。
また、図2(b)は、円筒状の多孔質発熱体20(多孔質発熱体1)は、円筒形状の抵抗体部21と、その抵抗体部21の両端の表面に巻回した端子22,23とからなる。この端子22,23は、銅製であり、焼結工程S3で形成した成型体8に対して所定の圧力を加えながら巻回されたものである。
【0085】
なお、本実施の形態1の発熱体10では埋設端子とし、発熱体20では巻回端子としたが、本発明を実施する場合には、発熱体10または発熱体20の端部表面に電極を張り合わせてもよいし、強圧する構造としてもよい。いずれにせよ、端子は接触抵抗が低い状態で通電できるものとするのが望ましい。
以下、この本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、図2に示す射出成型した多孔質発熱体10を前提に説明する。
【0086】
このようにして得られた本実施の形態1に係る多孔質発熱体1(10)は軽量であると共に、アルミニウムより硬くて摩耗にも強く、各原料を混合して成形したものよりもその機械的強度は増大しており、高い機械的強度を有していた。殊に、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1が発熱している際に水を吹きつけても割れることもなく、また後述するように、この多孔質発熱体1に熱勾配(温度分布)がある場合においても、発熱時に割れることはなかった。更に、酸等の化学的にも強靭であることが判明した。
【0087】
また、図4乃至図26のBSE(反射電子顕微鏡)を含む走査型電子顕微鏡(SEM:2次電子像)により、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1には、開口した空隙が分布しており、多孔質であることが分かった。そして、この多孔質発熱体1の面にエアコンプレッサによる圧縮空気をエアガンで吹き付けたところ、圧縮空気が多孔質発熱体1を通り抜け、通気性を有することが明らかになった。これは、多数の空隙が連通しているためと思われる。
更に、この空隙の大きさは、ガス吸着式細孔分布測定器により測定した結果、数μm〜数十μmであったが、原料の粒子形状や配合量、成形時の圧力等によってこの空隙の大きさ、空隙率は制御可能である。
【0088】
そして、本発明者らの実験研究によって、この空隙率が5%〜50%の範囲内であることで、多孔質発熱体1の抵抗発熱体としての利用において十分な強度や通電発熱性が確保できることが確認されている。即ち、空隙率が5%未満であると、多孔質発熱体1の抵抗値が低く、通電発熱性が損なわれる。一方で、50%を超えると、抵抗発熱体としての利用において強度が足りず、通電発熱性も損なわれる。
なお、空隙の比率は、形成した乾燥状態の多孔質発熱体1の体積及び重量を測定し、水を含浸させた状態の重量を測定し、再び乾燥させて重量を測定し、その重量の変化を気孔率に置き換えて測定した。
【0089】
ここで、このようにして得られた本実施の形態1に係る多孔質発熱体1のX線回折(WAXS分析)によるスペクトルを図3に、また、SEM−EDXによるスペクトル及びBSE(反射電子顕微鏡)を含む走査型電子顕微鏡(SEM:2次電子像)写真を図4乃至図19に示す。なお、EDXは2μmのスポットによる点分析である。
図3乃至図19に示されるように、このようにして得られた本実施の形態1に係る多孔質発熱体1には、主に、アルミニウム(Al)や、ケイ素(Si)や、アルミナ(Al2O3)や、二酸化ケイ素(SiO2)や、アルミナ(Al2O3)と二酸化ケイ素(SiO2)の複合酸化物またはアルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物が存在していることが分かる。
このような本実施の形態1に係る多孔質発熱体1が得られるのは、焼成過程においてアルミニウム2の融点(660.4℃)に達しても、アルミニウム粉2が溶融して表面に噴出することなく、焼成により、焼結原料混合物7が複合化したためと推測される。
【0090】
このような特性の発熱体1が得られるのは、黒鉛粉3が混合されていることで、アルミニウム粉2が黒鉛粉3に覆われ、黒鉛粉3が燃焼することでアルミニウムの周囲は還元雰囲気に近い状態となるため、アルミニウムの酸化が防止され、また、アルミニウムの溶融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出することがなく、焼成により、焼結原料混合物7が複合化したためと推測される。
【0091】
より具体的には、上述の如く、この多孔質発熱体1はアルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、アルミナ(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、並びに、アルミナ(Al2O3)と二酸化ケイ素(SiO2)の複合酸化物またはアルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物が主成分となっているが、特に、焼成によって、溶融したアルミニウムのネットワークが形成され、また、シリコンが生成するという構造変化が起こったことで通電発熱性を有するものとなったと思われる。なお、金属シリコンは以下のような反応によって生成されたものと推測される。
SiO2+C→Si+CO2
SiO2+C→Si+2CO
2Al+3SiO2→3Si+Al2O3
なお、得られた発熱体1に通電したときに、560℃以上になると赤熱して表面に溶融物が噴出し始めたことから、アルミニウム2と蛙目粘土4からのシリカ(SiO2)や生成したシリコン(Si)とが反応結合してAl−Si合金(融点:577℃)が生成されている可能性もある。
【0092】
因みに、本発明者らの実験研究により、黒鉛粉等の炭素粉末3を用いずに焼成した場合、温度制御電気炉内の温度が600℃以上になるとアルミニウム2(融点:660.4℃)が溶融して表面に噴出する焼結不良となり表面に多数の窪みが形成されたアルミニウムの溶融物が生成されてしまい、上述のような発熱体1を製造することはできないことが確認されている。しかし、本発明においては、700℃以上の高温になってもアルミニウム2が溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはない。
【0093】
ここで、多孔質発熱体1の通電による発熱の様子について具体的に図27を参照にして説明する。
まず、多孔質発熱体1の通電による温度変化の様子について調べるために、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1の配合として、表1の配合内容で、図1のフローチャートにしたがって多孔質発熱体1を製造した。
【0094】
なお、表1に示される配合材料のうち、アルミニウム粉2としては、ミナルコ(株)製の#260S(Al:99wt%)でふるい試験法による粒子径が75μm未満(200メッシュアンダー)のものを用いた。このアルミニウム粉2について日機装(株)のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ中位径は45μmであった。
炭素粉3としては、西村黒鉛(株)製の天然の鱗状黒鉛粉1099M(固定炭素:99%でふるい試験法による粒子径が150μm未満(100メッシュアンダー)のものを用いた。この炭素粉3について日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ中位径は75μmであった。
【0095】
蛙目粘土粉4には、(株)ヤマス製の土岐口特級蛙目粘土粉(SiO2:48.77%、Al2O3:34.40%、Fe2O3:1.35%、TiO2:0.95%、K2O:0.85%、MgO:0.38%、CaO:0.16%、Na2O:0.16%等)で、ふるい試験法による粒子径が65μm未満(250メッシュアンダー)のものを用いた。この蛙目粘土粉4について日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ中位径は10μmであった。
【0096】
木粉5としては、スギの間伐材・小径木・製材端材・樹皮・大鋸屑等の木屑を、破砕機(木材用クラッシャー)で粗粉砕して、この粗粉砕木粉を、熱風乾燥機によって水分20重量部以下に熱風乾燥し、微粉砕機で微粉砕してなる木粉を使用した。ここで、微粉砕機としては、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミルを使用して、粉砕タービン羽の周速を50m/秒〜80m/秒として、微粉砕を行った。このようにして得られた木粉はウィスカー状であり、ふるい試験法による粒子径が150μm未満(100メッシュアンダー)で、日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところその中位径は100μmであった。
また、これら原料の混合には精密分散混合機であるホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)TCX−8を用いた。
【0097】
【表1】
【0098】
更に、ここでは、表1の配合内容で作製された焼結原料混合物7は押出成形し、1100℃の焼結温度で焼結して、厚み(T)5mm×幅(W)35mm×長さ(L)210mmの多孔質発熱体1とした。
なお、焼結工程の昇温プログラムとしては、まず室温から600℃まで20時間かけて昇温して600℃で3時間保持し、更に、600℃から900℃まで6時間かけて昇温して900℃で2時間保持し、最後に、900℃から1100℃まで4時間かけて昇温して1100℃で2時間保持して、焼結を完了させた後、自然冷却させた。
【0099】
そして、製造された多孔質発熱体1の長さ方向の両端に幅10mmの端子により電圧をかけ(10Vの通電)、多孔質発熱体1の所定部位(中心部分)の経時的な温度測定を行った。その測定結果のグラフを図27(a)に示す。更に、通電解除後における経時的な温度測定も行った。その測定結果のグラフを図27(b)に示す。
なお、参考までに、通電時における電流、抵抗値、電気抵抗率について、図27(a)としてグラフ下段の表に示す。表において、電流は電圧10Vを端子間に加えた場合の測定値であり、抵抗値は電圧及び電流の測定値から計算式
抵抗値=電圧/電流
によって算出したものである。また、電気抵抗率(比抵抗)も計算式
電気抵抗率=抵抗値/(長さ/断面積)
によって算出したものである。
【0100】
図27(a)に示すように、多孔質発熱体1に通電すると、直ぐに温度が上昇(発熱)して10分前後で完全に温度が上昇し、その後も高温(定温)状態が維持されることが分かる。また、図27(b)に示すように、通電解除直後からすぐに温度が急激に減少し、約5分前後で元の温度状態に戻ることが分かった。
このように、本実施の形態1に係る発熱体1は、体積の大きさに比較して通電による昇温速度が極めて速く、また、通電解除による降温速度も極めて速いものである。
なお、図27(a)の表に示したように、本実施の形態1に係る発熱体1の電気抵抗率は約49×10-8Ω・m乃至約56×10-8Ω・mであり、アルミニウムの電気抵抗率が2.65×10-8Ω・mからしても、本実施の形態1に係る発熱体1の電気抵抗率は極めて高いものである。ニクロムは1.5×10-6Ω・mであるから、それに近い値である。
【0101】
また、図27(a)のグラフに示すように、一定の電圧による連続通電のもとでは、次第に温度上昇がなくなり発熱温度は一定の状態となることが確認された。そこで、本実施の形態1に係る発熱体1の熱伝導率及び比熱を測定したところ、熱伝導率が7W/m・Kで、比熱が0.74kJ/Kg・Kであった。アルミニウムの熱伝導率が236W/m・Kで、比熱が0.90kJ/Kg・Kあることからすると、本実施の形態1に係る発熱体1は熱伝導が極めて低いものである。
【0102】
ここで、本発明者らの実験研究によれば、原料の粒子形状や配合量や種類、また、成形時の圧力によって多孔質発熱体1の抵抗値が変化することが確認された。その一因は、原料の粒子形状や配合量や種類、また、成形時の圧力によって多孔質発熱体1の緻密度が変化するためと思われる。具体的には、例えば、原料に粗い粒子を用いた場合、細かい粒子を用いた場合よりも抵抗値が大きくなったり、成形時におけるプレス圧力が高い程、抵抗値が大きくなったりした。
【0103】
よって、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、原料の粒子形状や配合量や種類、また、成形時の圧力の調節によって多孔質発熱体1の緻密度を変化させることにより、多孔質発熱体1の抵抗値を制御することが可能である。因みに、本発明者らの実験研究により、多孔質発熱体1の緻密度を高めると、多孔質発熱体1の抵抗値が低くなることが確認されている。したがって、加熱したい所望の位置のみの発熱を高くできる。
【0104】
特に、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、原料に木粉5が用いられており、焼成過程において、この木粉5が焼失することによってその部分が空隙となり、多孔質発熱体1の緻密性に大きく影響する。このため、木粉5の添加量を調節することで、多孔質発熱体1の抵抗値の制御が容易にできる。
【0105】
念のため、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1の配合として、各原料の配合比を様々変えて製造した実施例1乃至実施例7に係る多孔質発熱体1の抵抗値について表2に示す。
ここでは、表2に示した配合内容で作製された焼結原料混合物7は、それぞれ、150kg/cm2のプレス圧力でプレス成形し、1100℃の焼結温度で焼結して、多孔質発熱体1とした。
そして、交流スライダーダック電源(直流安定化電源)を使用し、各多孔質発熱体1に通電(V)したときの、電流(A)、抵抗値(Ω)をそれぞれ測定した。なお、表2において、電流(A)は直接電流計で、抵抗値(Ω)はテスタの抵抗レンジによって測定した測定値である。また、発熱温度は、赤外線サーモグラフィー(熱画像計測装置:(株)チノー社製 携帯用小形熱画像カメラ CPA−017)によって確認した。
【0106】
【表2】
【0107】
表2に示したように、各原材料の配合量・配合比によって抵抗値が変化することから、各原材料の配合量・配合比を調節することで多孔質発熱体1の抵抗値を制御できることが分かる。また、電圧を変化させると、抵抗値も変化することから、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1の発熱温度は通電量によって決定され、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は通電により抵抗発熱していることが分かる。
なお、表2から、蛙目粘土粉4の量が多いほど、多孔質発熱体1の抵抗値が高くなることが分かる。そして、本発明者らの実験研究によれば、アルミニウム粉末2100重量部に対して、蛙目粘土粉4が60重量部〜150重量部の範囲内であれば、多孔質発熱体1において抵抗体として使途に適した抵抗値・通電発熱性を確保できることが確認されている。
【0108】
更に、本発明者らの実験研究によれば、焼結原料混合物7において、アルミニウム粉2の含有量が35重量%〜70重量%の範囲内であり、黒鉛粉3の含有量が2重量%〜15重量%の範囲内であり、蛙目粘土粉4の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内であるのが好ましい。
焼結原料混合物7において、アルミニウム粉2の含有量が35重量%未満であると、アルミニウム粉2が少なすぎて、通電性が損なわれる可能性がある。一方、アルミニウム粉2の含有量が70重量%を超えると、アルミニウム粉2に対して黒鉛粉3が極めて少なくなり、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じる可能性がある。
【0109】
また、黒鉛粉3の含有量が2重量%未満であると、アルミニウム粉2に対して黒鉛粉3が極めて少な過ぎ、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じる可能性がある。一方、炭素粉の含有量が15重量%を超えると、黒鉛粉3が多過ぎて多孔質発熱体1の強度及び純度が低下し、抵抗発熱体としての使途に適した強度や通電発熱性が得られない可能性がある。
更に、蛙目粘土粉4の含有量が25重量%未満であると、蛙目粘土粉4が少なすぎて、成型体8の抵抗値が小さくなり、抵抗発熱体としての使途に適した通電発熱性が損なわれる可能性がある。一方、蛙目粘土粉4の含有量が65重量%を超えると、アルミニウム粉2の含有量が35重量%未満であると、アルミニウム粉2が少なすぎて、成型体8の通電性が損なわれる可能性がある。
【0110】
なお、より好ましくは、焼結原料混合物7において、アルミニウム粉2の含有量が40重量%〜65重量%の範囲内であり、黒鉛粉3の含有量が5重量%〜10重量%の範囲内であり、蛙目粘土粉4の含有量が30重量%〜60重量%の範囲内である。
ところで、表2において、電流(A)、抵抗値(Ω)の測定値において測定幅があるのは、部位によって抵抗値が多少異なるためである。
そして、本発明者らの実験研究によれば、長さ方向両端から中心部分に向かって抵抗値・発熱温度が高くなる傾向があることが確認されている。これは、プレス成形時に、中心部に近いほど原料粒子の動きが制限されて緻密度が高くなったためと思われる。
【0111】
参考までに、プレス成形によって厚み(T)5mm×幅(W)35mm×長さ(L)210mmの平板状とした多孔質発熱体1において、長さ方向両端に幅10mmの端子による通電を行い、多孔質発熱体1全体の温度分布を赤外線サーモグラフィー(熱画像計測装置:(株)チノー社製 携帯用小形熱画像カメラ CPA−017)によって測定した温度分布写真を図28に示す。
図28に示すように、この多孔質発熱体1は、長さ方向両端から中心部分に向かって温度が高くなっていて、長さ方向両端は温度が低くなっている。したがって、この多孔質発熱体1は、端子を両端に接続して通電する製品として使用した場合に、端子の過加熱による通電不良やショート更には、焼損を防止することができ、製品として長時間の安全な発熱を維持できる。
【0112】
また、本発明者らの実験研究によって、焼結温度の1000℃〜1200℃の範囲内において、焼結させる温度を様々調節することで、多孔質発熱体1の抵抗値が変化することが判明しておいる。これは、焼結温度によって焼結密度(焼成過程における粒子同士の密度)が変化するためと思われる。したがって、焼結温度を調節することによっても、多孔質発熱体1の抵抗値を制御することが可能である。
なお、その他、多孔質発熱体1は、その形状によっても抵抗値が変化したり、通電量によっても変化したりすることから、その形状や通電量を調節することによっても、多孔質発熱体1の抵抗値を制御することができる。
【0113】
更に、このように、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、多孔質発熱体1の抵抗値は、その緻密度、即ち、圧縮圧によって影響されることから、焼結原料混合物7を成形する際に、その緻密度分布を調節することにより、多孔質発熱体1において抵抗分布の制御が可能となる。即ち、成型体8において部位によって異なる発熱温度の設定ができ、多孔質発熱体1の特定部位を特定温度に発熱させることできる。
【0114】
ここで、焼結原料混合物7を成形する際に、その緻密度分布を調節する方法としては、成型時の金型形状や押出し成形等による成形形状の調節、成形時の原料充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節、圧縮面に形成した複数多数個の突起等が挙げられる。
具体的には、例えば、プレス成形の際に凹凸を有する金型を使用して焼結原料混合物7をプレス成形することが挙げられる。これによって、意匠面に凹凸部が形成されて、係る凹部と凸部とで緻密度が大きく異なるものを得ることができる。そして、この凹部と凸部とで緻密度が大きく異なるものを焼結することによって得られる成型体8は、凹部と凸部とで抵抗値が大きく異なり、多孔質発熱体1は凹凸部分で通電による発熱温度が大きく異なったものとなる。
【0115】
また、プレス成形の際に曲線部を有する金型を使用して、焼結原料混物7をプレス成形することによって、曲線部で緻密度が大きく変化したものを得ることができる。そして、これを焼結してなる成型体8は、曲線部で抵抗値が大きく変化し、多孔質発熱体1は通電による発熱温度が部位によって大きく異なるものとなる。
更に、プレス成形の際に、プレス成形金型に焼結原料混物7の充填率を変化させて充填しプレス成形することによって、また、焼結原料混物7を厚みが部位によって変化するようにプレス成形をすることによって、充填量や厚みの差によって緻密度が変化することから、これを焼結してなる成型体8も、部位によって抵抗値が大きく変化し、多孔質発熱体1は通電による発熱温度が部位によって大きく異なったものとなる。
【0116】
参考までに、中央部の厚み(T)が5.5mmで、長さ方向両端部の厚み(T)が4.5mmと厚みに差をつけた成型体(幅(W)45mm×長さ(L)130mm)8の写真と、この成型体8に30Vで45秒通電したときの赤外線サーモグラフィー(熱画像計測装置:(株)チノー社製 携帯用小形熱画像カメラ CPA−017)によって測定した多孔質発熱体1の温度分布の写真を図29に示す。図29に示されるように、厚みが大きい中央部付近で発熱温度が高くなっており、厚みが小さい長さ方向両端部では、発熱温度が低くなっていることが分かる。
その他にも、成形時に部分的に圧力を変えて成形することによっても緻密度を変化させることができることから、多孔質発熱体1において、特定部位を特定温度に発熱させることが可能である。
【0117】
また、押出成形の場合には、複雑な立体形状(断面形状で肉厚が変化している等)の成型体8を容易に形成できることから、成型体8の緻密度を部位によって変化させることが容易にできる。したがって、成型体8において、部位によって抵抗値を異にする(変化させる)ことが容易にでき、多孔質発熱体1の特定部位を特定の温度に発熱させることが容易に可能である。
【0118】
ここで、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1(10,20)の応用分野(使用用途)について説明する。
このように本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、通電性を有し、電気抵抗性が高く直接抵抗発熱特性を示すことから、抵抗発熱体として使用できる。
より具体的には、例えば、電気暖房発熱体、電熱器、電気温水器等の各種熱源としての使用が可能である。
殊に、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、その全面から発熱することから、面状発熱体としての利用も可能である。勿論、電磁誘導加熱(IH)の調理器としての使用も可能である。
また、各種発熱体としての使用において、抵抗発熱体としての多孔質発熱体1は、上述の如く、熱伝導が低く、通電量によって発熱温度を一定に保つことができることから、低温から高温まで幅広い温度範囲で使用でき、温度制御も容易にできる。
【0119】
そして、抵抗加熱式であることに加え、上述の如く、体積の大きさに比較して通電による昇温速度や通電解除による降温速度が速いことから、従来の各種発熱体と比較して、熱効率がよく省電力化が可能であり、安全性も高い。殊に、電熱器等としての使用において、多孔質発熱体1の直接抵抗発熱体としての使用により、従来の間接抵抗加熱式である電熱器等と比較して、熱効率が極めて高く、省電力である。更に、従来の面状発熱体がヒータ線を金属やセラミックで被覆したもので低熱効率であるのに対し、直接抵抗発熱体としての多孔質発熱体1の使用においては、熱効率が極めて高く、省電力とすることができる。また、多孔質発熱体1の昇温速度や通電解除による降温速度が速いという特性は、特に、焼入れ焼鈍用や工業製品加熱用発熱体として有望である。
【0120】
更に、上述の如く、製造コストを安価にできることから、従来の各種発熱体と比較して、低コスト化を図ることができ、また、軽量で機械的強度が高いことから、小型化が可能である。
加えて、本発明者らの実験研究によれば、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は550℃を超えるまでは変色(赤熱)せず、抵抗値の経年変化が確認できない程度に少ないこと、また、濃塩酸液に浸漬しても強度や電気的特性等の変化がないこと、更には、800℃の発熱状態下で水滴を滴下しても断線しないこと等が確認されており、焼損し難く、化学的にも安定であることから、上記電気材料としての具体的用途に特に好適に使用することができ、商品としての長寿命化も期待できる。
【0121】
また、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、原料の粒子形状や添加量の調節、また、成形時の圧力調節等によって、更には、焼結温度の調節等によって、成型体8の抵抗値の制御が可能となることから、抵抗発熱体として各用途に応じた発熱温度の制御が可能である。
更には、成形時の部分的な圧力調節や、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節等によって、成型体8における抵抗分布の制御が可能となることから、抵抗発熱体としての多孔質発熱体1は、発熱による温度分布の制御設定が可能である。なお、この発熱による温度分布の制御が可能であることを利用し、例えば、多孔質発熱体1を焼き菓子等の食品加工用発熱体として使用することで、食品の所望の部位に焼き焦げを付けたりすることができる。
【0122】
なお、通電による発熱状態の多孔質発熱体1に水を掛けたり水を噴霧したりしたところ、この多孔質発熱体1から温熱の水蒸気が発生した。このことから、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、例えば、加湿器、水蒸気発生装置等としての利用も可能である。また、例えば、電気暖房発熱体やとして使用される多孔質発熱体1において、一方面に送風しながら他方面に水を噴射することで、電気暖房発熱体としての多孔質発熱体1から温熱の水蒸気を発生させることができることから、過乾燥防止効果が期待できる電気暖房発熱体としての使用も考えられる。因みに、水掛け等による多孔質発熱体1からの微細な水蒸気の発生は、多孔質発熱体1が多孔質で通気性を有する(連通した気孔を有する)ことに起因すると思われる。また、この多孔質で通気性であることを利用して、例えば、熱風発生器や乾燥装置やアルコール等の蒸留用発熱体としての使用も期待できる。
【0123】
更に、本発明者らの実験研究によれば、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は遠赤外線を発生していることが確認されていることから、多孔質発熱体1は発熱体として、遠赤外線による伝熱効果をも期待できる。
そのようなセラミックス遠赤外線放射材料については、種々のものがその放射率及び放射特性と共に知られている。例えば、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、ジルコン(ZrSiO4)、マグネシア(MgO)、イットリア(Y2O3)、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、βスポジューメン(Li2O・Al2O3・4SiO2)、ムライト(Al2O3・3SiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2O3・TiO2)等であり、これらは、一般に白色を呈している。
【0124】
また、上記の白色系の他に、セラミックス遠赤外線放射材料としては、有色の全赤外域で放射率が高いセラミックス遠赤外線放射材料がある。そのような有色系のセラミックス材料としては、例えば、酸化銅(Cu2O,CuO)、酸化コバルト(CoO、Co3O4)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化錫(SnO2)等の遷移金属の酸化物、或いは、炭化ケイ素(SiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化タンタル(TaC)等の炭化物等が挙げられ、これらの多くは、窯業用顔料としても一般に用いられているものである。また、これらは2種以上の組合わせで高効率の赤外線放射が得られ、例えば、MnO2−Fe2O3−CuO−CoO、或いはCoO−Fe2O3−Cr2O3−MnO2等の一体の焼成物は高効率赤外線放射体と呼ばれるものであり、黒色を呈し、「黒体」に近い赤外線の放射特性が得られる。
【0125】
加えて、ゼーベック効果の起電力が生じていることも確認されていることから、それを利用した熱感知センサー等への用途も期待できる。特に、厚み(T)5mm×幅(W)35mm×長さ(L)210mmの平板状とした多孔質発熱体1から、0.3V程度の電圧が検出されている。したがって、5本程度の多孔質発熱体1の検出電圧を加算する方向に接続すれば、発光ダイオードの点灯が容易になる。このことから、電力の供給を終了してから5本程度からなる多孔質発熱体1のその時の温度が高いか、低いかを表示させることができる。
なお、この特性は、負荷電力の供給には無関係である。
【0126】
このように、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、アルミニウム粉2と、アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない黒鉛粉としての炭素粉3と、陶磁器用の粘土粉としての蛙目粘土粉4と、有機化合物粉5と、これらアルミニウム粉末2、炭素粉3、蛙目粘土粉4、及び木粉5が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダ6とが混合された焼結原料混合物7を、常温で圧力を加えて成形し、1000℃〜1200℃の範囲内の温度で焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなるものである。
したがって、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、機械的強度が高く、かつ、通電により抵抗発熱し、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0127】
特に、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体8の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体8の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体8の抵抗分布を調節することによって、多孔質発熱体1において異なる発熱温度の設定ができ、多孔質発熱体1の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。したがって、抵抗発熱体として発熱体等の使途に適する。
【0128】
更には、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1よれば、各原料は入手しやすく安価な材料であり、非酸化条件下等の特別な条件下で製造されるものでもないため、製造コストの低コスト化が可能である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、酸等の化学的にも強靭でり、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として使用可能な多孔質発熱体1となる。
【0129】
[実施の形態2]
続いて、本実施の形態2に係る多孔質発熱体1について説明する。
本実施の形態2に係る多孔質発熱体1は、上述した実施の形態1の製造方法とほぼ同様である。異なるのは、金属粉としての鉄粉9を混合した点である。その他は、上記実施の形態1と同じであるから、その詳細な説明を省略する。
【0130】
即ち、本実施の形態2に係る多孔質発熱体10は、アルミニウム粉2、炭素粉としての炭素粉3、陶磁器用の粘土粉としての蛙目粘土粉4、有機化合物粉としての木粉5、金属粉としての鉄粉末9と、これら原料が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダ6とが混合されてなる焼結原料混合物7を、圧力を加えて成形し、1000℃〜1200℃の範囲内の温度で焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなるものである。
【0131】
ここで、鉄粉末9としては、市販の鉄粉末を用いることができ、このような鉄粉末は、ヘガネスジャパン(株)、(株)神戸製鋼所等から発売されている。また、鉄粉9には、100%鉄粉でなく、無機物等の不純物が僅かに含まれたものや、リサイクルの鉄粉でも使用可能であり、更には、アルミニウム等のその他の金属を僅かに含有した鉄粉合金の粉末等を使用することも可能である。
【0132】
なお、この鉄粉末9は、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が150μm〜45μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満であるのが好ましい。小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性が向上するからである。なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定した鉄粉の中位径が75μm〜106μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満である。
【0133】
このようにして得られた本実施の形態2に係る多孔質発熱体10も、機械的強度が高く、通電によって発熱する。
ここで、参考までに本実施の形態2に係る多孔質発熱体10の配合として、表3の上段の配合内容で、図30のフローチャートにしたがって実施例8及び実施例9に係る多孔質発熱体10を製造したときの抵抗値を表3の下段に示す。なお、表3に示される配合材料のうち鉄粉末9以外のものについては、上述の表1で使用した配合材料と同様のものを使用した。また、鉄粉末9としては、ヘガネスジャパン(株)製のASC100.29(Fe:99wt%)でふるい試験法による粒子径が150μm未満(100メッシュアンダー)のものを用いた。この鉄粉末9について日機装(株)のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ中位径が75μmであった。
【0134】
【表3】
【0135】
鉄粉末9が混合された本実施の形態2に係る多孔質発熱体10においては、鉄粉末9を混合しないときと比べて、通電量を同様にした場合、その抵抗値が高く通電による発熱温度が高くなる傾向にあった。
また、本実施の形態2においては、鉄粉末9の配合量を調節することによって、成型体8の抵抗値を容易に制御できて多孔質発熱体10の通電による発熱温度を容易に調節することができた。
なお、本発明を実施する場合には、金属粉は鉄粉に限定されず、例えば、銅粉等を使用することも可能である。
【0136】
ところで、上記実施の形態1及び実施の形態2においては、陶磁器用の粘土粉として蛙目粘土粉4を用いたが、本発明を実施する場合には、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有するものであれば、蛙目粘土粉4の他に、木節粘土、カオリン、長石、陶石、ゼオライトの粉末等を用いることができる。
更には、本発明者らの実験研究によって、蛙目粘土粉4等の陶磁器用の粘土粉の代わりに、アルミナ(Al2 O3)粉及びシリカ粉(SiO2 )の併用や、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末を使用できることが確認されている。これによっても、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として使用可能な多孔質発熱体となる。
【0137】
即ち、アルミナ(Al2 O3)粉及びシリカ粉(SiO2 )を用いた場合には、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなる多孔質発熱体となる。
また、これに水及び/またはバインダを混合する場合には、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記アルミナ粉、前記シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、常温で圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなる多孔質発熱体となる。
【0138】
さらに、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末を使用する場合には、アルミナ(Al2 O3)粉及びシリカ粉(SiO2 )を用いた場合には、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなる多孔質発熱体となる。
また、これに水及び/またはバインダを混合する場合には、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記セラミックス遠赤外線材料の粉末とが比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、常温で圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなる多孔質発熱体となる。
このような構成の多孔質発熱体も上記実施の形態1及び実施の形態2に係る多孔質発熱体1と同様、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として使用可能である。
【0139】
また、上記実施の形態1及び実施の形態2においては、黒鉛粉として炭素粉3を用いたが、本発明を実施する場合には、炭素粉としては、アルミニウム粉2の溶融点より低い温度では溶融せず、アルミニウム粉2を覆うことで焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出して焼結されなくなる焼結不良を抑制することができるものであればよく、炭素粉3の他に、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、活性炭等が挙げられる。しかし、炭素粉3は、融点が高く、また、アルミニウム粉2の表面に付着しやすい(絡みやすい)ため、焼成過程でアルミニウムが表面に噴出する焼結不良を確実に抑制でき、発熱体において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できる。このため、黒鉛粉としては炭素粉3が適する。
【0140】
上記実施の形態1及び実施の形態2においては、原料に木粉等の有機化化合物5を使用しているが、これは本発明に必須の配合成分ではない。しかし、木粉等の有機化化合物5が混合されている場合には、成形固化の強度を向上させることができ、多孔質発熱体1の強度を向上させることが可能である。また、有機化化合物5は焼成過程において焼失し空隙となることから、その配合量を調節することで、多孔質発熱体1における空隙率を容易に制御することができ、更には、多孔質発熱体1の抵抗値を容易に制御することが可能である。
なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【0141】
上記実施の形態の多孔質発熱体1によれば、前記焼結温度は1000℃〜1200℃の範囲内の温度とした。ここで、本発明者らは、抵抗発熱体としての使用において、十分な高強度及び通電発熱性を確保できる多孔質発熱体を得るための焼結温度について鋭意実験研究を重ねた結果、焼結温度を1000℃〜1200℃の範囲内の温度とすることによって、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。即ち、焼結温度が1000℃未満である場合には、十分な焼成が行われずに焼結不良となり、一方で、1200℃を超えると、得られる成型体8は通電性が損なわれる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体1によれば、確実に機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有するものとなる。
【符号の説明】
【0142】
1,10,20 多孔質発熱体
2 アルミニウム粉
3 炭素粉(黒鉛粉)
4 無機酸化物材料の粉末(蛙目粘土粉)
5 有機化合物粉(木粉)
6 水・バインダ
7 焼結原料混合物
8 成型体
9 金属粉(鉄粉)
【技術分野】
【0001】
本発明はアルミニウムを原料として焼結した焼結体に関するもので、特に、通電による抵抗発熱性を有し、発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属や金属酸化物・窒化物等の粉末を焼成してなる焼結体は、その緻密性から様々な分野での利用可能性があり、従来から多くの技術が開発されてきていた。
特に、金属材料としてのアルミニウム材料は、軽量かつ安価であり、加工性も良いことから、従来から焼結体を製造する原材料としてアルミニウム材料が検討されてきた。
しかし、アルミニウム材料は極めて酸化し易く、その表面に安定で硬い酸化皮膜が形成され易いため、これをそのまま焼結させても機械的強度の高い焼結体を得ることは困難である。
【0003】
ところで、本出願人は、先に、アルミニウム粉末を使用した焼結体の発明に係る特許文献1の特許出願をした。この特許文献1に記載の焼結体の発明は、アルミニウム微粒子とゼオライト微粒子と有機バインダ及び/または無機バインダとを含有し、これらが均一に混合された混合物を、常温でプレス成形し、非酸化雰囲気において1200℃〜1800℃の範囲内の温度で焼結したものであり、これによって、優れた機械的強度を有する焼結体が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願2010−179397
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1の発明においては、1200℃〜1800℃の範囲内の温度で焼結したことから、得られる焼結体は主にアルミナ質であると予測され、通電発熱はなく、抵抗体、抵抗発熱体等の用途に適した導電性は備えられていなかった。このため、アルミニウム材料を使用した焼結体として応用分野の拡大を図ることはできなかった。
従来から使用されている発熱体として、ニクロム合金、カンタル合金等の金属材料や、炭化ケイ素(SiC)等のセラミック材料からなるものが開発されている。
しかし、金属材料からなる発熱体は、液体加熱用の発熱体等として使用する場合において、金属の周囲にマグネシア等の絶縁物を配設し、更に、全体を金属シースで包む必要があることから、また、金属線によって面放熱させていたことから、発熱効率が低かった。一方、セラミック材料からなる発熱体においては、脆くて急激な温度変化による熱衝撃にも弱く、急速加熱や急速冷却が困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる不具合を解決すべくなされたものであって、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙し、通電によって発熱する成型体を形成してなるものである。
【0008】
ところで、上記アルミニウム粉は、通常、アトマイズ法(噴霧式)によって製造された不規則な形状(針状、紡錘形状等)のものが使用される。
また、上記炭素粉は、通常、熱伝導率が低く、高温下でも前記アルミニウム粉とは反応しないものであるが、ここでは、前記アルミニウム粉の溶融点(668℃)より低い温度では溶融しないものであればよく、例えば、黒鉛、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維等の粉状物が挙げられる。
そして、上記鉱物質粉としての陶磁器用の粘土粉は、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有するものであればよく、例えば、蛙目粘土、木節粘土、カオリン、長石、陶石、ゼオライトの粉末等が使用される。前記蛙目粘土、木節粘土、カオリン、長石、陶石、ゼオライトの粉末は、通常、鉱物質粉と呼ばれ、陶磁器用の粘土粉である。
【0009】
ここで、上記成型体における空隙が5%〜50%の範囲内とは、本発明者らが、鋭意実験研究を重ねた結果、成型体における空隙が5%〜50%の範囲内においては、抵抗発熱体として使用において、十分な強度及び通電発熱性を確保できることを見出し、この知見に基づいて設定されたものである。即ち、成型体における空隙が5%未満のものでは、成型体の抵抗値が小さく、通電による発熱性が損なわれる。一方で、成型体における空隙が50%を超えると、抵抗発熱体として使用において、強度が足りず、また、通電性が損なわれる。
なお、上記5%〜50%の範囲内は、厳格に5%〜50%の範囲内であることを要求するものではなくて約5%〜約50%の範囲内であればよく、当然、誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0010】
上記5%〜50%の範囲内の空隙は、形成した乾燥状態の発熱体の体積及び重量を測定し、水を含浸させた状態の重量を測定し、再び乾燥させて重量を測定し、その重量の変化を気孔率に置き換えたものである。また、「パラフィン浸透装置(ULVAC DA−15D)」により真空に脱気したところにパラフィンを含浸させて、その重さの変化から算出したものも、結果的に大きな差は生じなかった。したがって、ここでは前者、後者の区別なく説明する。
【0011】
請求項2の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなるものである。
【0012】
ここで、請求項1と相違する要件についてのみ説明すると、上記水及び/またはバインダは、水のみを単独で用いても良いし、バインダのみを単独で用いても良く、水とバインダの両方を併用しても良いという意味である。そして、この水及び/またはバインダは、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量、即ち、重力沈降しない程度の量であり、即ち、比重の違いによって沈殿しない程度の量が、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉に混合される。
なお、上記常温とは、JIS Z 8703で規定されるように、20℃±15℃(5℃〜35℃)の範囲内の温度をいう。
【0013】
請求項3の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0014】
請求項4の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ(Al2O3)粉と、シリカ(SiO2)粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記アルミナ粉、前記シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0015】
請求項5の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0016】
ここで、上記セラミックス遠赤外線材料の粉末は、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるものであればよく、例えば、ムライト(Al2O3・3SiO2)、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、βスポジューメン(Li2O・Al2O3・4SiO2)等が使用される。なお、「遠赤外線」についての明確な定義はなく、それの波長範囲はそれを扱う分野等においてまちまちであるが、ここでは、セラミックス分野において一般的であるように、3μm程度以上の波長を有する赤外線を「遠赤外線」という。
【0017】
請求項6の多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記セラミックス遠赤外線材料の粉末が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0018】
請求項7の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記炭素粉を黒鉛粉としたものである。
ここで、上記黒鉛(グラファイト、石墨)は、常圧で安定な炭素同素体の鉱物であり、炭素6員環が連なる層状構造を有し、融点が非常に高いものである。粉末化した黒鉛粉には、天然黒鉛を用いるのが一般的で、中でも鱗状黒鉛を用いるのが最も一般的であるが、その他にも土状黒鉛等の天然黒鉛や鱗状天然黒鉛粉末を長柱状に造粒した長柱状造粒黒鉛等の使用も可能である。
【0019】
請求項8の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記混合物において、前記アルミニウム粉の含有量が35重量%〜70重量%の範囲内、好ましくは、40重量%〜65重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量が3重量%〜15重量%の範囲内、好ましくは、5重量%〜10重量%の範囲内であり、前記鉱物質粉(陶磁器用の粘土粉)の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内、好ましくは、30重量%〜60重量%の範囲内であるものである。
なお、上記数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0020】
請求項9の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項8のいずれか1つの構成において、前記アルミニウム粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm〜75μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満であるもの、好ましくは、中位径が35μm〜65μmの範囲内であり、粒子径が100μm未満であるものである。
【0021】
ところで、JIS Z 8901「試験用粉体及び試験用粒子」の本文及び解説の用語の定義によれば、中位径とは、粉体の粒径分布において、ある粒子径より大きい個数(または質量)が、全粉体のそれの50%を占めるときの粒子径(直径)、即ち、オーバサイズ50%の粒径であり、通常、メディアン径または50%粒子径といいD50と表わされる。定義的には、平均粒子径と中位径で粒子群のサイズを表現されるが、ここでは、商品説明の表示、レーザ回折・散乱法によって測定した値である。
そして、この「レーザ回折・散乱法によって測定した中位径」とは、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いてレーザ回折・散乱法によって得られた粒度分布において積算重量部が50%となる粒子径(D50)をいう。
なお、上記数値は、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0022】
請求項10の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記炭素粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm〜90μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満であるであるもの、好ましくは、中位径が70μm〜80μmの範囲内であり、粒子径が150μm未満であるものである。
なお、上記数値も、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【0023】
請求項11の多孔質発熱体は、請求項1乃至請求項10のいずれか1つの構成において、前記陶磁器用の粘土粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μ〜30μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満であるもの、好ましくは、中位径が10μ〜20μmの範囲内であり、粒子径が70μm未満であるものである。なお、上記数値も、厳格なものでなく概ねであり、当然、測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0025】
アルミニウム粉と、炭素粉と、陶磁器用の粘土粉が混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
【0026】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0027】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体等の使途に適する。また、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0028】
請求項2の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなる。
【0029】
アルミニウム粉と、炭素粉と、陶磁器用の粘土粉と、水及び/またはバインダが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
特に、アルミニウム粉、炭素粉、陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダが混合されることによって、成形性が向上するため、加熱加圧せずとも常温の加圧で、また、低圧力でも成形できる。このため、成形コストを抑えることができる。
【0030】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0031】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0032】
請求項3の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
アルミニウム粉と、炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
【0033】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0034】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、かつ、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0035】
請求項4の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記アルミナ粉、前記シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、常温で圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0036】
アルミニウム粉と、炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉と、水及び/またはバインダが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
特に、アルミニウム粉、炭素粉、アルミナ粉と、シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダが混合されることによって、成形性が向上するため、加熱加圧せずとも常温の加圧で、また、低圧力でも成形できる。このため、成形コストを抑えることができる。
【0037】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0038】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、かつ、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0039】
請求項5の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0040】
アルミニウム粉と、炭素粉と、セラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0041】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、かつ、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0042】
請求項6の発明に係る多孔質発熱体は、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記セラミックス遠赤外線材料の粉末が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、常温で圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体とし、通電によって前記成型体が発熱するものである。
【0043】
アルミニウム粉と、炭素粉と、セラミックス遠赤外線材料の粉末と、水及び/またはバインダが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形することによって、これら混合物は強固で緻密な固形状態となる。したがって、この状態で焼結することによって、高強度の成型体を得ることができる。
特に、アルミニウム粉、炭素粉、セラミックス遠赤外線材料の粉末が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダが混合されることによって、成形性が向上するため、加熱加圧せずとも常温の加圧で、また、低圧力でも成形できる。このため、成形コストを抑えることができる。
【0044】
ここで、炭素粉が混合されていることによって、アルミニウム粉の表面に炭素粉が付着し、アルミニウム粉が炭素粉に覆われた状態となるため、加熱過程においてアルミニウムの融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはなく、焼成によって上記混合物は複合化されて、5%〜50%の範囲内の空隙を有する成型体となり、かかる成型体は通電により発熱する。
これによって、機械的強度が高く、また、通電により抵抗発熱する多孔質発熱体となり、かかる多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0045】
特に、こうして得られた多孔質発熱体は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体の抵抗分布を調節することによって、成型体の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体は、抵抗発熱体として使用に好適であり、特に、面で加熱する発熱体に好適であり、酸等の化学的にも強靭である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として好適に使用可能な多孔質発熱体となる。
【0046】
請求項7の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記炭素粉は黒鉛粉であり、炭素粉としての黒鉛粉は、融点が非常に高く、また、アルミニウム粉の表面に付着しやすいことから、焼成過程において、溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良を確実に抑制できる。したがって、請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の効果に加えて、安定した強度や通電発熱性等の性能を確保でき、高い品質を確保することができる。
【0047】
請求項8の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記混合物において、前記アルミニウム粉の含有量は35重量%〜70重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量は3重量%〜15重量%の範囲内であり、前記陶磁器用の粘土粉の含有量は25重量%〜65重量%の範囲内である。
【0048】
ここで、本発明者等は、より確実に高強度で通電発熱性を有する多孔質発熱体を得るための原料配合比について、鋭意実験研究を重ねた結果、前記混合物において、前記アルミニウム粉の含有量が35重量%〜70重量%の範囲内、好ましくは、40重量%〜65重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量が3重量%〜15重量%の範囲内、好ましくは、5重量%〜10重量%の範囲内であり、前記陶磁器用の粘土粉の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内、好ましくは、30重量%〜60重量%の範囲内であることによって、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0049】
即ち、混合物において、アルミニウム粉の含有量が35重量%未満であると、アルミニウム粉が少なすぎて、通電性が損なわれる。一方、アルミニウム粉の含有量が70重量%を超えると、アルミニウム粉において炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。
また、炭素粉の含有量が3重量%未満であると、炭素粉が極めて少な過ぎてアルミニウム粉において炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。一方、炭素粉の含有量が15重量%を超えると、炭素粉が多過ぎて成型体の強度及び純度が低下し、多孔質発熱体の抵抗発熱体としての使用において強度や通電発熱性が足りないものとなる。
更に、陶磁器用の粘土粉の含有量が25重量%未満であると、陶磁器用の粘土粉が少なすぎて、得られる成型体の抵抗値が小さくなり、多孔質発熱体の抵抗発熱体としての利用において通電発熱性が足りないものとなる。一方、陶磁器用の粘土粉の含有量が65重量%を超えると、陶磁器用の粘土粉が多過ぎて、通電性が損なわれる。
【0050】
したがって、この発明の多孔質発熱体によれば、請求項1乃至請求項7に記載の効果に加えて、確実に高強度で通電発熱性を有し、純度の高いものとなる。
なお、前記混合物において、前記アルミニウム粉の含有量が40重量%〜65重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量が5重量%〜10重量%の範囲内であり、前記鉱物質粉(陶磁器用の粘土粉)の含有量が30重量%〜65重量%の範囲内あることによって、更に確実に多孔質発熱体において高い強度及び純度並びに通電発熱性を確保できるため、より好ましい。
【0051】
請求項9の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記アルミニウム粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm〜75μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満である。
【0052】
ここで、アルミニウム粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm未満であると、焼成過程においてアルミニウム粉が低温で溶融しやすくて表面に噴出する可能性があり、一方、アルミニウム粉の中位径が75μmを超えると、炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。アルミニウム粉のふるい試験法によって測定した粒子径が150μm以上の場合においても、炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。
【0053】
したがって、この発明の多孔質発熱体によれば、請求項1乃至請求項8に記載の効果に加えて、確実に高強度及び通電発熱性を有するものとなる。また、このように小径粒子と大径粒子の取合せによって成形時における充填性が向上することになるため、多孔質発熱体における強度の向上を図ることができる。
なお、前記アルミニウム粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が35μm〜65μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満であることによって、高強度で通電発熱性を有する多孔質発熱体をより確実に得ることができるため、更に好ましい。
【0054】
請求項10の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記炭素粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm〜90μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満である。
【0055】
ここで、炭素粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm未満であると、焼成過程において炭素粉が液状化し易くてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。一方、炭素粉の中位径が90μmを超えると、炭素粉が均一に分散混合されにくくなって、アルミニウム粉において炭素粉に覆われない部分が増大し、そのことによって、同様に、焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。
炭素粉のふるい試験法によって測定した粒子径が200μm以上の場合においても、アルミニウム粉において炭素粉に覆われない部分が増大し、焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。
更には、このように小径粒子と大径粒子の取合せによって成形時における充填性が向上してアルミニウム粉に炭素粉が確実に付着することになるため、焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出するのが確実に防止される。
【0056】
したがって、この発明の多孔質発熱体によれば、請求項1乃至請求項9に記載の効果に加えて、確実に高強度及び通電発熱性を確保することができる。
なお、前記炭素粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が70μm〜80μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満であることによって、高強度で通電発熱性を有する多孔質発熱体をより確実に得ることができるため、更に好ましい。
【0057】
請求項11の発明に係る多孔質発熱体によれば、前記陶磁器用の粘土粉はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μm〜30μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満である。
【0058】
ここで、陶磁器用の粘土粉のレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μm未満の微細粉されたものを得るのにはコストが掛かるうえに、中位径が5μm未満であると、熱による陶磁器用の粘土粉の成分変化が生じ易くなり、成型体において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。一方、陶磁器用の粘土粉の中位径が30μmを超えると、陶磁器用の粘土粉が均一に分散混同され難くてその分布に偏りが生じたり、熱による陶磁器用の粘土粉の成分変化が生じ易い。それによって、やはり成型体において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。陶磁器用の粘土粉のふるい試験法によって測定した粒子径が100μm以上である場合においても、同様に、陶磁器用の粘土粉が均一に分散混同され難くてその分布に偏りが生じたり、熱による陶磁器用の粘土粉の成分変化が生じ易かったりする可能性があり、それによって、やはり成型体において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。
【0059】
したがって、この発明の多孔質発熱体によれば、請求項1乃至請求項10に記載の効果に加えて、確実に高強度及び通電発熱性を確保することができる。また、このように小径粒子と大径粒子の取合せによって成形時における充填性が向上することになるため、多孔質発熱体における強度の向上を図ることができる。
なお、前記鉱物質粉(陶磁器用の粘土粉)はレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が10μm〜20μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が70μm未満であることによって、高強度で通電発熱性を有する多孔質発熱体をより確実に得ることができるため、更に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の成形例を示すもので、図2(a)は直方体状の多孔質発熱体であり、図2(b)は円筒状の多孔質発熱体の斜視図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体のX線回析(多孔質発熱体を粉砕して測定)によるスペクトル図である。
【図4】図4は本発明の実施の形態1に係る厚み15mmの多孔質発熱体のSEM−EDX(エネルギ分散型X線分光法)によるBSE(反射電子顕微鏡)写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(a)、同じく厚み15mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真(走査型電子顕微鏡)におけるスペクトルの検出位置を示す図(b)である。
【図5】図5は図4(a)のBSE写真及び図4(b)のSEM写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図6】図6は本発明の実施の形態1に係る厚み15mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図である。
【図7】図7は図6のSEM写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図8】図8は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(a)及びBSE写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(b)である。
【図9】図9は図8(a)のSEM写真及び図8(b)のBSE写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図10】図10は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(a)及びBSE写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(b)である。
【図11】図11は図10(a)のSEM写真及び図10(b)のBSE写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図12】図12は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(a)及びBSE(反射電子顕微鏡)写真におけるスペクトルの検出位置を示す図(b)である。である。
【図13】図13は図12(a)のSEM写真及び図12(b)のBSE写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図14】図14は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のBSE写真におけるスペクトルの検出位置を示す図である。
【図15】図15は図14のBSE写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図16】図16は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図である。
【図17】図17は図16のSEM写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図18】図18は本発明の実施の形態1に係る厚み30mmの多孔質発熱体のSEM−EDXによるSEM写真におけるスペクトルの検出位置を示す図である。
【図19】図19は図18のSEM写真におけるスペクトルの検出位置から検出したスペクトルを示す図である。
【図20】図20は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を1mmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を100μmとする図(b)である。
【図21】図21は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を100μmとする図(a)、BSE写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を100μmとした写真の図(b)である。
【図22】図22は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を50μmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を50μmとした写真の図(b)である。
【図23】図23は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を20μmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み15mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を3μmとした写真の図(b)である。
【図24】図24は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を500μmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を50μmとした写真の図(b)である。
【図25】図25は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すBSE写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を50μmとする図(a)、SEM写真であり厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を30μmとした写真の図(b)である。
【図26】図26は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の微細構造を示すSEM写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断面を示す両端スケール間を20μmとする図(a)、同じくSEM写真であり、厚み30mmの実施物の多孔質発熱体の割断状態を示す両端スケール間を20μmとした写真の図(b)である。
【図27】図27は本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の通電による温度変化を示すグラフ及びその下の表は電気特性値を示す表(a)であり、また、通電解除による温度変化を示すグラフ(b)である。
【図28】図28は、本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の実施物として、プレス成形してなる平板状の多孔質発熱体の通電による発熱温度分布を示す写真(サーモグラフィ)である。
【図29】図29は、本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体の実施物として、長さ方向の中央部と両端部で厚みに差をつけた多孔質発熱体の写真(a)と、その通電による発熱温度分布を示す写真(サーモグラフィ)(b)である。
【図30】図30は本発明の実施の形態2に係る多孔質発熱体の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の実施の形態に係る発熱体について、図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態において、同一記号及び同一符号は、実施の形態の同一または相当する機能部分を意味し、実施の形態相互との同一記号及び同一符号は、それら実施の形態に共通する機能部分であるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
【0062】
[実施の形態1]
まず、本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体について、図1乃至図29を参照して説明する。
本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、アルミニウム粉2、黒鉛粉末としての炭素粉3、無機酸化物材料としての陶磁器用の粘土粉である蛙目粘土粉4、有機化合物粉としての木粉5、水及び/またはバインダ6を使用して製造されるものである。
【0063】
図1のフローチャートに示されるように、本発明の実施の形態1に係る多孔質発熱体1においては、最初に、焼結原料混合工程にて、アルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4、木粉5、水6及び/またはバインダが混合され、焼結原料混合物7となる(ステップS1)。
【0064】
ここで、アルミニウム粉2としては、市販のアルミニウム粉末を用いることができ、このようなアルミニウム粉末は、ミナルコ(株)、日本軽金属(株)、東洋アルミニウム(株)、大和金属粉工業(株)等から発売されている。また、アルミニウム粉2には、100%アルミニウムでなく、無機物等の不純物が僅かに含まれたものや、リサイクルのアルミニウムでも使用可能であり、更には、鉄や銅等の金属を僅かに含有したアルミニウム合金の粉末等を使用することも可能である。
【0065】
このアルミニウム粉2には、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm〜75μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満であるものを用いるのが好ましい。つまり、小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性を向上させるためである。また、アルミニウム粉2の中位径が30μm未満であると、焼成過程においてアルミニウム粉2が低温で溶融しやすくて表面に噴出する可能性があり、一方、アルミニウム粉2の中位径が75μmを超えると、炭素粉3に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる可能性がある。アルミニウム粉2のふるい試験法によって測定した粒子径が150μm以上の場合においても、炭素粉3に覆われない部分が増大し、そのことによって、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定したアルミニウム粉2の中位径が35μm〜65μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満である。
【0066】
炭素粉としての炭素粉3は、アルミニウム粉2の溶融点より低い温度では溶融しないものであり、この炭素粉3には、市販の黒鉛粉末を用いることができる。そして、このような黒鉛粉末は、西村黒鉛(株)、日本黒鉛工業(株)、伊藤黒鉛工業(株)、(株)中越黒鉛工業所等から発売されている。市販の黒鉛粉末には、鱗状黒鉛や土状黒鉛等の天然黒鉛、鱗状天然黒鉛粉末を長柱状に造粒した長柱状造粒黒鉛等の人造黒鉛が存在するが、中でも、一般的に純度が高いとされる天然の鱗状黒鉛を用いるのが好ましい。鱗状黒鉛を用いることで、アルミニウム粉2に絡んで付着し易く、アルミニウム粉2の溶融によりアルミニウムが表面に噴出する焼結不良を効果的に抑制することができるからである。
【0067】
この炭素粉3には、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm〜90μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満であるものを用いるのが好ましい。ここでも、小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性が向上するからである。
また、炭素粉3の中位径が60μm未満であると、焼成過程において炭素粉3が液状化し易く、アルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。一方、炭素粉3の中位径が90μmを超えると、炭素粉3が均一に分散混合され難くなって、アルミニウム粉2において炭素粉3に覆われない部分が増大し、そのことによって、同様に焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。炭素粉3のふるい試験法によって測定した粒子径が200μm以上の場合においても、アルミニウム粉2において炭素粉3に覆われない部分が増大し、焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じ易くなる。なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定した炭素粉3の中位径が70μm〜80μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満である。
【0068】
陶磁器用の粘土粉としての蛙目粘土粉4は、花崗岩が風化し堆積してできた風化残留粘土を水簸(珪砂と粘土の分離)し、精製して粉末状にしたものであり、アルミニウムのケイ酸塩鉱物のAl2Si4010(OH)8であるカオリン主成分で、石英、長石、雲母等が混在する粘土粉である。そして、一般的に、化学成分析によればアルミニウム酸化物のAl2O3及びケイ素酸化物SiO2の成分量が最も多く、その他にFe2O3、TiO2、CaO、MgO、Na2O、K2O等の成分を含有しているが、成分量は産地等により異なるため、主としてAl2O3及びSiO2が含有されていればその他の成分や組成比は特に限定されるものではない。この蛙目粘土粉4には、例えば、(株)ヤマス、共立マテリアル(株)等から発売されている市販の蛙目粘土粉を用いることができる。
【0069】
また、この蛙目粘土粉4にはレーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μm〜30μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満であるとし、小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性が向上するからである。
そして、蛙目粘土粉4の中位径が5μm未満の微細粉されたものを得るのにはコストが掛かる上に、蛙目粘土粉4の中位径が5μm未満であると、熱による蛙目粘土粉4の成分変化が生じやすくなり、後述の成型体8において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。一方、蛙目粘土粉4の中位径が30μmを超えると、蛙目粘土粉4が均一に分散混同され難くてその分布に偏りが生じたり、熱による蛙目粘土粉4の成分変化が生じやすかったりする可能があり、それによって、やはり成型体8において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。
蛙目粘土粉4のふるい試験法によって測定した粒子径が100μm以上の場合においても、同様に、蛙目粘土粉4が均一に分散混同され難くてその分布に偏りが生じたり、熱による蛙目粘土粉4の成分変化が生じやすかったりする。それによって、やはり成型体8において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できない可能性がある。
なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定した蛙目粘土粉4の中位径が10μm〜20μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が70μm未満である。
【0070】
有機化合物粉末としての木粉5には、大鋸屑、間伐材のチップ、小径木、製材端材、樹皮等の木屑を粉砕機で微粉砕したものが使用されるが、ウィスカー状のものを用いるのが好ましい。ウィスカー状の木粉5を使用することでアルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4等の原料がウィスカーのヒケ状の隙間に絡みつくため、原料の充填性が高くなると共に、この状態で後述の成形工程で圧力を掛けて生じたものは強固で緻密なものとなる。そして、この成形された混合物を焼結することによって得られる成型体8は、その強度が非常に高いものとなる。
【0071】
また、この木粉5には、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が80μm〜120μmmの範囲内であり、ふるい試験法による粒子径が200μm未満であるものを用いることが好ましい。小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性が向上するからである。また、木粉5の中位径が80μm未満の微細粉されたものを得るにはコストが掛かり、一方で、木粉5の中位径が120μmを超えると、木粉5が均一に分散混合され難くて焼失による空隙の分布に偏りが生じ、成型体8において安定した強度が確保されない可能性がある。また、木粉5のふるい試験法による粒子径が200μm以上の場合においても、木粉5が均一に分散混合され難くて焼失による空隙の分布に偏りが生じ、成型体8において安定した強度が確保されない。なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定した木粉5の中位径が50μm〜100μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満である。
【0072】
なお、粒子径が200μm未満の木粉5を経済的に得るには、間伐材、小径木、樹皮、製材端材、大鋸屑等の木屑を、水分20重量部以下に乾燥した後に、微粉砕する必要がある。木屑を水分20重量部以下に乾燥することによって、粉砕物がスラリー化して微粉砕を妨げることを防止できるからである。更に、乾燥した木屑を微粉砕して、粒子径が200μm未満の木粉5とするためには、周速50m/秒〜80m/秒の範囲内の微粉砕機を用いるのが好ましく、このような微粉砕機としては、例えば、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミル等がある。
ここで、スギ(杉)・ヒノキ(檜)等の針葉樹は、我が国において広く分布しており、建材等として大量に使用されているため、大鋸屑や間伐材並びに樹皮を容易に大量に入手することができる。更に、針葉樹の微細組織はウィスカー状であり、微粉砕して木粉5とすることが容易である。したがって、原料収集と国土保全上は、大鋸屑及び間伐材のチップ並びに樹皮としては、針葉樹の大鋸屑または針葉樹の間伐材のチップ或いは針葉樹の樹皮を用いることが好ましい。
【0073】
そして、本実施の形態1では、アルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4、及び木粉5に、これら原料が比重の違いによって移動が生じない量(重力沈降しない量)の水及び/またはバインダ6が混合されることによって、蛙目粘土粉4が粘土鉱物質であることからこれが成形性または保形性等の確保に有利に機能して、原料同士が互いに接着され、手で握っても崩れることなくまとまった状態の焼結原料混合物7が得られる。このようにして得られた焼結原料混合物7は、アルミニウム粉2や木粉5の表面に炭素粉3が付着した状態になっている。
【0074】
なお、本実施の形態1においては、これら原料の混合に精密分散混合機が用いられ、アルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4、及び木粉5が均一に分散混合されて焼結原料混合物7となっている。なお、精密分散混合機としては、周速5μm/秒〜80m/秒の範囲内、より好ましくは、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いるのが好ましく、このような高速攪拌分散機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)等がある。
【0075】
また、本実施の形態1においては、原料に蛙目粘土粉4を用いることから、水6を少量混合するだけで容易に原料同士が接着されてまとまった状態となり、後述の成形工程においては常温で加圧するだけで、焼結原料混合物7が成形されて強固なものとすることができるが、本発明を実施する場合には、原料同士の接着に、有機バインダや無機バインダを使用することも可能であり、水とバインダとを併用することも可能である。
ここで、「有機バインダ」としては、例えば、合成樹脂、澱粉、合成糊、砂糖等を用いることができる。また、合成樹脂には熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があり、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂等を用いることができ、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタンプレポリマー等を用いることができる。なお、中でも、ポリオール系樹脂とイソシアネート系樹脂とは常温で反応して強固な結合を形成し、特に、イソシアネート系樹脂は、木粉5等における水酸基(−OH)と反応して強固なウレタン結合を形成するため、焼結原料混合物7を成形したものはとても強固で緻密な状態のものとなる。
【0076】
「無機バインダ」としては、セメント等の水硬性材料、磁器(タイル)・陶器の原料であるベントナイト等の粘土、ρ−アルミナ(Al2O3 ・nH2 O:n≒0.5)、ケイ酸ナトリウム、水溶性アルカリケイ酸、(株)ジャパンナノコート製のシリカバインダ、グランデックス(株)製のシリカバインダである汎用バインダFJ294等を用いることができる。
なお、有機バインダは、加熱過程において焼失し空隙となり、無機バインダは、焼失せずに焼成されることになる。
【0077】
更に、本発明を実施する場合においては、樹脂成型方法のように、アルミニウム粉2、炭素粉3、蛙目粘土粉4及び木粉5に、水6を入れ、スラリー状の焼結原料混合物7として金型に充填し、固めたのちに、後述の成形工程(ステップS2)に供することもできる。また、セラミックや磁器(タイル)の製造のように、焼結原料混合物7をスプレードライヤーによって乾燥させた後、後述の成形工程(ステップS2)に供することも可能である。
いずれにせよ、後述する焼成過程において形状が保持される程度に固化された状態のものが作製できれば、原料同士を接着する手段やバインダの種類は特に限定されない。
【0078】
次に、本実施の形態1においては、この焼結原料混合物7が、成形工程において、常温で加圧され(ステップS2)、強固で緻密な固形状態の成型体8となる。
ここで、成形工程においては、焼結原料混合物7をプレス成形金型に投入し所定圧力のプレスで成形するプレス成形と、焼結原料混合物7を耐圧性の型枠に入れ所定圧力で押し出して成形する押出成形等が可能である。
【0079】
因みに、本実施の形態1においては、原料に蛙目粘土粉4を用いたことから、上述の如く、水及び/またはバインダ6を少量混合するだけで容易に原料同士が接着されてまとまった状態となる。このため、常温での加圧で、更に、低圧力で成形することができる。よって、高圧力や加熱装備のプレス装置を必ずしも用いなくても良く、低コスト化を図ることができる。
具体的に、水及び/またはバインダ6を混合してなる焼結原料混合物7をプレス成形する場合、プレス圧力は、10kg/cm2〜200kg/cm2 の範囲内とするのが好ましい。プレス成形の圧力が10kg/cm2未満であると、焼結原料混合物7が十分に圧縮されないため、得られる成型体8の強度が弱くなり後述の焼成過程において破損する可能性がある。また、プレス成形の圧力が200kg/cm2を超えると、焼結原料混合物7に圧力が掛かり過ぎて高緻密度とものとなり、成型体8の抵抗値が小さくなって多孔質発熱体1の通電発熱性が損なわれる可能性がある。焼結不良となる可能性がある。より好ましくは、50kg/cm2〜150kg/cm2の範囲内である。特に、水分量が多いほど低圧力での成形が可能となる。
【0080】
そして、このように本実施の形態1においては、常温の加圧によって成形でき、外部からの均一な加熱が不要であるため、プレス成形の場合には、厚い成型体8(例えば、150トンのプレス機で約20mm厚まで)を得ることも可能である。更に、加熱機構が不要であることから、プレス成形機及び金型の構造を簡単にして、広い面積の成型体8(例えば、1000mm×2000mm)を得ることも可能である。なお、このときのプレス成形機としては、例えば、150トン以上の粉末成形プレス機が使用できる。このプレス機によれば、成形途中にガス抜きが出来る機構が付いているため、成形によって高強度のものが安定して得られる。勿論、例えば、後述するように、凹凸を有する金型や曲線部を有する金型枠型等を使用し、成形によって焼結原料混合物7の意匠面に凹凸を形成したり、焼結原料混合物7を所望形状に成形することも可能である。
【0081】
一方、押出成形の場合には、焼結原料混合物7を曲面形状の筒状・棒状等複雑な形状に成形することが可能である。特に、水及び/またはバインダ6を混合してなる焼結原料混合物7は、成形性が良いため、押出成形によってハニカム状等の極めて複雑な形状に形成することも可能である。このようにして、図2に示す本実施の形態1に係る射出成型した多孔質発熱体10及び押出成形した多孔質発熱体20が得られる。
【0082】
なお、本発明を実施する場合には、勿論、加熱加圧によって、焼結原料混合物7を成形することも可能である。殊に、本発明においては、蛙目粘土粉4等の鉱物質粉が使用され、これが成形性または保形性等の確保に有利に機能することから、加熱加圧の場合、水やバインダを混合せずとも成形が可能である。因みに、水やバインダを混合せず加熱加圧する場合のプレス成形圧力は、50kg/cm2〜300kg/cm2の範囲内とするのが好ましい。プレス成形の圧力が50kg/cm2未満であると、水やバインダを混合していない場合に焼結原料混合物7が十分に圧縮されないため強度が弱くなり後述の焼成過程において破損する可能性がある。また、プレス成形の圧力が300kg/cm2を超えると、焼結原料混合物7に圧力が掛かり過ぎて高緻密度とものとなり、得られる成型体8の抵抗値が小さくなって多孔質発熱体1の通電発熱性が損なわれる可能性がある。より好ましくは、100kg/cm2〜200kg/cm2の範囲内である。しかし、抵抗値及び複合成分によっては、100kg/cm2〜200kg/cm2の範囲外の使用も有り得る。
【0083】
続いて、成形された焼結原料混合物7は、焼結工程において、温度制御電気炉内にて1000℃〜1200℃の範囲内で焼結される(ステップS3)。
ここで、焼結の温度が1000℃〜1200℃の範囲内とは、本発明者らが鋭意実験研究を重ねた結果、1000℃未満では、十分な焼成が行われずに粉状態のものが得られ焼結不良となってしまうことが確認されたことから、焼結温度の下限値を1000℃とし、一方で、1200℃を超えると、得られる成型体8は通電発熱性を有さないことが確認されたことから、焼結温度の上限値を1200℃としたものである。
なお、焼結工程の昇温プログラムは、各原料の種類、粒子径、配合量や、後述の成型体8において必要とされる抵抗値、発熱温度等によって予め実験によって最適値が設定される。
そして、このように1000℃〜1200℃の範囲内で焼結することによって、成型体8となる。このようにして得られた成型体8は、通電によって容易に抵抗発熱する。特に成型体8の全面で発熱する。
【0084】
このようにして、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1が得られる。
具体的には、図2(a)に示すように、直方体状の多孔質発熱体10(多孔質発熱体1)は、直方体状の抵抗体部11と、その抵抗体部11の両端に埋設した端子12,13とからなる。この端子12,13は、焼結原料混合物7を形成した後、型内に端子12及び端子13を配置し、成型工程S2で一体化させたものである。この端子12,13は、ステンレス製であり、焼結工程S3で溶融しない材料として、低抵抗材料として選択されたものである。
また、図2(b)は、円筒状の多孔質発熱体20(多孔質発熱体1)は、円筒形状の抵抗体部21と、その抵抗体部21の両端の表面に巻回した端子22,23とからなる。この端子22,23は、銅製であり、焼結工程S3で形成した成型体8に対して所定の圧力を加えながら巻回されたものである。
【0085】
なお、本実施の形態1の発熱体10では埋設端子とし、発熱体20では巻回端子としたが、本発明を実施する場合には、発熱体10または発熱体20の端部表面に電極を張り合わせてもよいし、強圧する構造としてもよい。いずれにせよ、端子は接触抵抗が低い状態で通電できるものとするのが望ましい。
以下、この本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、図2に示す射出成型した多孔質発熱体10を前提に説明する。
【0086】
このようにして得られた本実施の形態1に係る多孔質発熱体1(10)は軽量であると共に、アルミニウムより硬くて摩耗にも強く、各原料を混合して成形したものよりもその機械的強度は増大しており、高い機械的強度を有していた。殊に、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1が発熱している際に水を吹きつけても割れることもなく、また後述するように、この多孔質発熱体1に熱勾配(温度分布)がある場合においても、発熱時に割れることはなかった。更に、酸等の化学的にも強靭であることが判明した。
【0087】
また、図4乃至図26のBSE(反射電子顕微鏡)を含む走査型電子顕微鏡(SEM:2次電子像)により、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1には、開口した空隙が分布しており、多孔質であることが分かった。そして、この多孔質発熱体1の面にエアコンプレッサによる圧縮空気をエアガンで吹き付けたところ、圧縮空気が多孔質発熱体1を通り抜け、通気性を有することが明らかになった。これは、多数の空隙が連通しているためと思われる。
更に、この空隙の大きさは、ガス吸着式細孔分布測定器により測定した結果、数μm〜数十μmであったが、原料の粒子形状や配合量、成形時の圧力等によってこの空隙の大きさ、空隙率は制御可能である。
【0088】
そして、本発明者らの実験研究によって、この空隙率が5%〜50%の範囲内であることで、多孔質発熱体1の抵抗発熱体としての利用において十分な強度や通電発熱性が確保できることが確認されている。即ち、空隙率が5%未満であると、多孔質発熱体1の抵抗値が低く、通電発熱性が損なわれる。一方で、50%を超えると、抵抗発熱体としての利用において強度が足りず、通電発熱性も損なわれる。
なお、空隙の比率は、形成した乾燥状態の多孔質発熱体1の体積及び重量を測定し、水を含浸させた状態の重量を測定し、再び乾燥させて重量を測定し、その重量の変化を気孔率に置き換えて測定した。
【0089】
ここで、このようにして得られた本実施の形態1に係る多孔質発熱体1のX線回折(WAXS分析)によるスペクトルを図3に、また、SEM−EDXによるスペクトル及びBSE(反射電子顕微鏡)を含む走査型電子顕微鏡(SEM:2次電子像)写真を図4乃至図19に示す。なお、EDXは2μmのスポットによる点分析である。
図3乃至図19に示されるように、このようにして得られた本実施の形態1に係る多孔質発熱体1には、主に、アルミニウム(Al)や、ケイ素(Si)や、アルミナ(Al2O3)や、二酸化ケイ素(SiO2)や、アルミナ(Al2O3)と二酸化ケイ素(SiO2)の複合酸化物またはアルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物が存在していることが分かる。
このような本実施の形態1に係る多孔質発熱体1が得られるのは、焼成過程においてアルミニウム2の融点(660.4℃)に達しても、アルミニウム粉2が溶融して表面に噴出することなく、焼成により、焼結原料混合物7が複合化したためと推測される。
【0090】
このような特性の発熱体1が得られるのは、黒鉛粉3が混合されていることで、アルミニウム粉2が黒鉛粉3に覆われ、黒鉛粉3が燃焼することでアルミニウムの周囲は還元雰囲気に近い状態となるため、アルミニウムの酸化が防止され、また、アルミニウムの溶融点(660.4℃)に達しても、アルミニウムが溶融して表面に噴出することがなく、焼成により、焼結原料混合物7が複合化したためと推測される。
【0091】
より具体的には、上述の如く、この多孔質発熱体1はアルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、アルミナ(Al2O3)、二酸化ケイ素(SiO2)、並びに、アルミナ(Al2O3)と二酸化ケイ素(SiO2)の複合酸化物またはアルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物が主成分となっているが、特に、焼成によって、溶融したアルミニウムのネットワークが形成され、また、シリコンが生成するという構造変化が起こったことで通電発熱性を有するものとなったと思われる。なお、金属シリコンは以下のような反応によって生成されたものと推測される。
SiO2+C→Si+CO2
SiO2+C→Si+2CO
2Al+3SiO2→3Si+Al2O3
なお、得られた発熱体1に通電したときに、560℃以上になると赤熱して表面に溶融物が噴出し始めたことから、アルミニウム2と蛙目粘土4からのシリカ(SiO2)や生成したシリコン(Si)とが反応結合してAl−Si合金(融点:577℃)が生成されている可能性もある。
【0092】
因みに、本発明者らの実験研究により、黒鉛粉等の炭素粉末3を用いずに焼成した場合、温度制御電気炉内の温度が600℃以上になるとアルミニウム2(融点:660.4℃)が溶融して表面に噴出する焼結不良となり表面に多数の窪みが形成されたアルミニウムの溶融物が生成されてしまい、上述のような発熱体1を製造することはできないことが確認されている。しかし、本発明においては、700℃以上の高温になってもアルミニウム2が溶融して表面に噴出する焼結不良が生じることはない。
【0093】
ここで、多孔質発熱体1の通電による発熱の様子について具体的に図27を参照にして説明する。
まず、多孔質発熱体1の通電による温度変化の様子について調べるために、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1の配合として、表1の配合内容で、図1のフローチャートにしたがって多孔質発熱体1を製造した。
【0094】
なお、表1に示される配合材料のうち、アルミニウム粉2としては、ミナルコ(株)製の#260S(Al:99wt%)でふるい試験法による粒子径が75μm未満(200メッシュアンダー)のものを用いた。このアルミニウム粉2について日機装(株)のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ中位径は45μmであった。
炭素粉3としては、西村黒鉛(株)製の天然の鱗状黒鉛粉1099M(固定炭素:99%でふるい試験法による粒子径が150μm未満(100メッシュアンダー)のものを用いた。この炭素粉3について日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ中位径は75μmであった。
【0095】
蛙目粘土粉4には、(株)ヤマス製の土岐口特級蛙目粘土粉(SiO2:48.77%、Al2O3:34.40%、Fe2O3:1.35%、TiO2:0.95%、K2O:0.85%、MgO:0.38%、CaO:0.16%、Na2O:0.16%等)で、ふるい試験法による粒子径が65μm未満(250メッシュアンダー)のものを用いた。この蛙目粘土粉4について日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ中位径は10μmであった。
【0096】
木粉5としては、スギの間伐材・小径木・製材端材・樹皮・大鋸屑等の木屑を、破砕機(木材用クラッシャー)で粗粉砕して、この粗粉砕木粉を、熱風乾燥機によって水分20重量部以下に熱風乾燥し、微粉砕機で微粉砕してなる木粉を使用した。ここで、微粉砕機としては、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミルを使用して、粉砕タービン羽の周速を50m/秒〜80m/秒として、微粉砕を行った。このようにして得られた木粉はウィスカー状であり、ふるい試験法による粒子径が150μm未満(100メッシュアンダー)で、日機装(株)製のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところその中位径は100μmであった。
また、これら原料の混合には精密分散混合機であるホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)TCX−8を用いた。
【0097】
【表1】
【0098】
更に、ここでは、表1の配合内容で作製された焼結原料混合物7は押出成形し、1100℃の焼結温度で焼結して、厚み(T)5mm×幅(W)35mm×長さ(L)210mmの多孔質発熱体1とした。
なお、焼結工程の昇温プログラムとしては、まず室温から600℃まで20時間かけて昇温して600℃で3時間保持し、更に、600℃から900℃まで6時間かけて昇温して900℃で2時間保持し、最後に、900℃から1100℃まで4時間かけて昇温して1100℃で2時間保持して、焼結を完了させた後、自然冷却させた。
【0099】
そして、製造された多孔質発熱体1の長さ方向の両端に幅10mmの端子により電圧をかけ(10Vの通電)、多孔質発熱体1の所定部位(中心部分)の経時的な温度測定を行った。その測定結果のグラフを図27(a)に示す。更に、通電解除後における経時的な温度測定も行った。その測定結果のグラフを図27(b)に示す。
なお、参考までに、通電時における電流、抵抗値、電気抵抗率について、図27(a)としてグラフ下段の表に示す。表において、電流は電圧10Vを端子間に加えた場合の測定値であり、抵抗値は電圧及び電流の測定値から計算式
抵抗値=電圧/電流
によって算出したものである。また、電気抵抗率(比抵抗)も計算式
電気抵抗率=抵抗値/(長さ/断面積)
によって算出したものである。
【0100】
図27(a)に示すように、多孔質発熱体1に通電すると、直ぐに温度が上昇(発熱)して10分前後で完全に温度が上昇し、その後も高温(定温)状態が維持されることが分かる。また、図27(b)に示すように、通電解除直後からすぐに温度が急激に減少し、約5分前後で元の温度状態に戻ることが分かった。
このように、本実施の形態1に係る発熱体1は、体積の大きさに比較して通電による昇温速度が極めて速く、また、通電解除による降温速度も極めて速いものである。
なお、図27(a)の表に示したように、本実施の形態1に係る発熱体1の電気抵抗率は約49×10-8Ω・m乃至約56×10-8Ω・mであり、アルミニウムの電気抵抗率が2.65×10-8Ω・mからしても、本実施の形態1に係る発熱体1の電気抵抗率は極めて高いものである。ニクロムは1.5×10-6Ω・mであるから、それに近い値である。
【0101】
また、図27(a)のグラフに示すように、一定の電圧による連続通電のもとでは、次第に温度上昇がなくなり発熱温度は一定の状態となることが確認された。そこで、本実施の形態1に係る発熱体1の熱伝導率及び比熱を測定したところ、熱伝導率が7W/m・Kで、比熱が0.74kJ/Kg・Kであった。アルミニウムの熱伝導率が236W/m・Kで、比熱が0.90kJ/Kg・Kあることからすると、本実施の形態1に係る発熱体1は熱伝導が極めて低いものである。
【0102】
ここで、本発明者らの実験研究によれば、原料の粒子形状や配合量や種類、また、成形時の圧力によって多孔質発熱体1の抵抗値が変化することが確認された。その一因は、原料の粒子形状や配合量や種類、また、成形時の圧力によって多孔質発熱体1の緻密度が変化するためと思われる。具体的には、例えば、原料に粗い粒子を用いた場合、細かい粒子を用いた場合よりも抵抗値が大きくなったり、成形時におけるプレス圧力が高い程、抵抗値が大きくなったりした。
【0103】
よって、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、原料の粒子形状や配合量や種類、また、成形時の圧力の調節によって多孔質発熱体1の緻密度を変化させることにより、多孔質発熱体1の抵抗値を制御することが可能である。因みに、本発明者らの実験研究により、多孔質発熱体1の緻密度を高めると、多孔質発熱体1の抵抗値が低くなることが確認されている。したがって、加熱したい所望の位置のみの発熱を高くできる。
【0104】
特に、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、原料に木粉5が用いられており、焼成過程において、この木粉5が焼失することによってその部分が空隙となり、多孔質発熱体1の緻密性に大きく影響する。このため、木粉5の添加量を調節することで、多孔質発熱体1の抵抗値の制御が容易にできる。
【0105】
念のため、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1の配合として、各原料の配合比を様々変えて製造した実施例1乃至実施例7に係る多孔質発熱体1の抵抗値について表2に示す。
ここでは、表2に示した配合内容で作製された焼結原料混合物7は、それぞれ、150kg/cm2のプレス圧力でプレス成形し、1100℃の焼結温度で焼結して、多孔質発熱体1とした。
そして、交流スライダーダック電源(直流安定化電源)を使用し、各多孔質発熱体1に通電(V)したときの、電流(A)、抵抗値(Ω)をそれぞれ測定した。なお、表2において、電流(A)は直接電流計で、抵抗値(Ω)はテスタの抵抗レンジによって測定した測定値である。また、発熱温度は、赤外線サーモグラフィー(熱画像計測装置:(株)チノー社製 携帯用小形熱画像カメラ CPA−017)によって確認した。
【0106】
【表2】
【0107】
表2に示したように、各原材料の配合量・配合比によって抵抗値が変化することから、各原材料の配合量・配合比を調節することで多孔質発熱体1の抵抗値を制御できることが分かる。また、電圧を変化させると、抵抗値も変化することから、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1の発熱温度は通電量によって決定され、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は通電により抵抗発熱していることが分かる。
なお、表2から、蛙目粘土粉4の量が多いほど、多孔質発熱体1の抵抗値が高くなることが分かる。そして、本発明者らの実験研究によれば、アルミニウム粉末2100重量部に対して、蛙目粘土粉4が60重量部〜150重量部の範囲内であれば、多孔質発熱体1において抵抗体として使途に適した抵抗値・通電発熱性を確保できることが確認されている。
【0108】
更に、本発明者らの実験研究によれば、焼結原料混合物7において、アルミニウム粉2の含有量が35重量%〜70重量%の範囲内であり、黒鉛粉3の含有量が2重量%〜15重量%の範囲内であり、蛙目粘土粉4の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内であるのが好ましい。
焼結原料混合物7において、アルミニウム粉2の含有量が35重量%未満であると、アルミニウム粉2が少なすぎて、通電性が損なわれる可能性がある。一方、アルミニウム粉2の含有量が70重量%を超えると、アルミニウム粉2に対して黒鉛粉3が極めて少なくなり、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じる可能性がある。
【0109】
また、黒鉛粉3の含有量が2重量%未満であると、アルミニウム粉2に対して黒鉛粉3が極めて少な過ぎ、焼成過程において溶融したアルミニウムが表面に噴出する焼結不良が生じる可能性がある。一方、炭素粉の含有量が15重量%を超えると、黒鉛粉3が多過ぎて多孔質発熱体1の強度及び純度が低下し、抵抗発熱体としての使途に適した強度や通電発熱性が得られない可能性がある。
更に、蛙目粘土粉4の含有量が25重量%未満であると、蛙目粘土粉4が少なすぎて、成型体8の抵抗値が小さくなり、抵抗発熱体としての使途に適した通電発熱性が損なわれる可能性がある。一方、蛙目粘土粉4の含有量が65重量%を超えると、アルミニウム粉2の含有量が35重量%未満であると、アルミニウム粉2が少なすぎて、成型体8の通電性が損なわれる可能性がある。
【0110】
なお、より好ましくは、焼結原料混合物7において、アルミニウム粉2の含有量が40重量%〜65重量%の範囲内であり、黒鉛粉3の含有量が5重量%〜10重量%の範囲内であり、蛙目粘土粉4の含有量が30重量%〜60重量%の範囲内である。
ところで、表2において、電流(A)、抵抗値(Ω)の測定値において測定幅があるのは、部位によって抵抗値が多少異なるためである。
そして、本発明者らの実験研究によれば、長さ方向両端から中心部分に向かって抵抗値・発熱温度が高くなる傾向があることが確認されている。これは、プレス成形時に、中心部に近いほど原料粒子の動きが制限されて緻密度が高くなったためと思われる。
【0111】
参考までに、プレス成形によって厚み(T)5mm×幅(W)35mm×長さ(L)210mmの平板状とした多孔質発熱体1において、長さ方向両端に幅10mmの端子による通電を行い、多孔質発熱体1全体の温度分布を赤外線サーモグラフィー(熱画像計測装置:(株)チノー社製 携帯用小形熱画像カメラ CPA−017)によって測定した温度分布写真を図28に示す。
図28に示すように、この多孔質発熱体1は、長さ方向両端から中心部分に向かって温度が高くなっていて、長さ方向両端は温度が低くなっている。したがって、この多孔質発熱体1は、端子を両端に接続して通電する製品として使用した場合に、端子の過加熱による通電不良やショート更には、焼損を防止することができ、製品として長時間の安全な発熱を維持できる。
【0112】
また、本発明者らの実験研究によって、焼結温度の1000℃〜1200℃の範囲内において、焼結させる温度を様々調節することで、多孔質発熱体1の抵抗値が変化することが判明しておいる。これは、焼結温度によって焼結密度(焼成過程における粒子同士の密度)が変化するためと思われる。したがって、焼結温度を調節することによっても、多孔質発熱体1の抵抗値を制御することが可能である。
なお、その他、多孔質発熱体1は、その形状によっても抵抗値が変化したり、通電量によっても変化したりすることから、その形状や通電量を調節することによっても、多孔質発熱体1の抵抗値を制御することができる。
【0113】
更に、このように、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、多孔質発熱体1の抵抗値は、その緻密度、即ち、圧縮圧によって影響されることから、焼結原料混合物7を成形する際に、その緻密度分布を調節することにより、多孔質発熱体1において抵抗分布の制御が可能となる。即ち、成型体8において部位によって異なる発熱温度の設定ができ、多孔質発熱体1の特定部位を特定温度に発熱させることできる。
【0114】
ここで、焼結原料混合物7を成形する際に、その緻密度分布を調節する方法としては、成型時の金型形状や押出し成形等による成形形状の調節、成形時の原料充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節、圧縮面に形成した複数多数個の突起等が挙げられる。
具体的には、例えば、プレス成形の際に凹凸を有する金型を使用して焼結原料混合物7をプレス成形することが挙げられる。これによって、意匠面に凹凸部が形成されて、係る凹部と凸部とで緻密度が大きく異なるものを得ることができる。そして、この凹部と凸部とで緻密度が大きく異なるものを焼結することによって得られる成型体8は、凹部と凸部とで抵抗値が大きく異なり、多孔質発熱体1は凹凸部分で通電による発熱温度が大きく異なったものとなる。
【0115】
また、プレス成形の際に曲線部を有する金型を使用して、焼結原料混物7をプレス成形することによって、曲線部で緻密度が大きく変化したものを得ることができる。そして、これを焼結してなる成型体8は、曲線部で抵抗値が大きく変化し、多孔質発熱体1は通電による発熱温度が部位によって大きく異なるものとなる。
更に、プレス成形の際に、プレス成形金型に焼結原料混物7の充填率を変化させて充填しプレス成形することによって、また、焼結原料混物7を厚みが部位によって変化するようにプレス成形をすることによって、充填量や厚みの差によって緻密度が変化することから、これを焼結してなる成型体8も、部位によって抵抗値が大きく変化し、多孔質発熱体1は通電による発熱温度が部位によって大きく異なったものとなる。
【0116】
参考までに、中央部の厚み(T)が5.5mmで、長さ方向両端部の厚み(T)が4.5mmと厚みに差をつけた成型体(幅(W)45mm×長さ(L)130mm)8の写真と、この成型体8に30Vで45秒通電したときの赤外線サーモグラフィー(熱画像計測装置:(株)チノー社製 携帯用小形熱画像カメラ CPA−017)によって測定した多孔質発熱体1の温度分布の写真を図29に示す。図29に示されるように、厚みが大きい中央部付近で発熱温度が高くなっており、厚みが小さい長さ方向両端部では、発熱温度が低くなっていることが分かる。
その他にも、成形時に部分的に圧力を変えて成形することによっても緻密度を変化させることができることから、多孔質発熱体1において、特定部位を特定温度に発熱させることが可能である。
【0117】
また、押出成形の場合には、複雑な立体形状(断面形状で肉厚が変化している等)の成型体8を容易に形成できることから、成型体8の緻密度を部位によって変化させることが容易にできる。したがって、成型体8において、部位によって抵抗値を異にする(変化させる)ことが容易にでき、多孔質発熱体1の特定部位を特定の温度に発熱させることが容易に可能である。
【0118】
ここで、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1(10,20)の応用分野(使用用途)について説明する。
このように本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、通電性を有し、電気抵抗性が高く直接抵抗発熱特性を示すことから、抵抗発熱体として使用できる。
より具体的には、例えば、電気暖房発熱体、電熱器、電気温水器等の各種熱源としての使用が可能である。
殊に、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、その全面から発熱することから、面状発熱体としての利用も可能である。勿論、電磁誘導加熱(IH)の調理器としての使用も可能である。
また、各種発熱体としての使用において、抵抗発熱体としての多孔質発熱体1は、上述の如く、熱伝導が低く、通電量によって発熱温度を一定に保つことができることから、低温から高温まで幅広い温度範囲で使用でき、温度制御も容易にできる。
【0119】
そして、抵抗加熱式であることに加え、上述の如く、体積の大きさに比較して通電による昇温速度や通電解除による降温速度が速いことから、従来の各種発熱体と比較して、熱効率がよく省電力化が可能であり、安全性も高い。殊に、電熱器等としての使用において、多孔質発熱体1の直接抵抗発熱体としての使用により、従来の間接抵抗加熱式である電熱器等と比較して、熱効率が極めて高く、省電力である。更に、従来の面状発熱体がヒータ線を金属やセラミックで被覆したもので低熱効率であるのに対し、直接抵抗発熱体としての多孔質発熱体1の使用においては、熱効率が極めて高く、省電力とすることができる。また、多孔質発熱体1の昇温速度や通電解除による降温速度が速いという特性は、特に、焼入れ焼鈍用や工業製品加熱用発熱体として有望である。
【0120】
更に、上述の如く、製造コストを安価にできることから、従来の各種発熱体と比較して、低コスト化を図ることができ、また、軽量で機械的強度が高いことから、小型化が可能である。
加えて、本発明者らの実験研究によれば、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は550℃を超えるまでは変色(赤熱)せず、抵抗値の経年変化が確認できない程度に少ないこと、また、濃塩酸液に浸漬しても強度や電気的特性等の変化がないこと、更には、800℃の発熱状態下で水滴を滴下しても断線しないこと等が確認されており、焼損し難く、化学的にも安定であることから、上記電気材料としての具体的用途に特に好適に使用することができ、商品としての長寿命化も期待できる。
【0121】
また、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、原料の粒子形状や添加量の調節、また、成形時の圧力調節等によって、更には、焼結温度の調節等によって、成型体8の抵抗値の制御が可能となることから、抵抗発熱体として各用途に応じた発熱温度の制御が可能である。
更には、成形時の部分的な圧力調節や、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節等によって、成型体8における抵抗分布の制御が可能となることから、抵抗発熱体としての多孔質発熱体1は、発熱による温度分布の制御設定が可能である。なお、この発熱による温度分布の制御が可能であることを利用し、例えば、多孔質発熱体1を焼き菓子等の食品加工用発熱体として使用することで、食品の所望の部位に焼き焦げを付けたりすることができる。
【0122】
なお、通電による発熱状態の多孔質発熱体1に水を掛けたり水を噴霧したりしたところ、この多孔質発熱体1から温熱の水蒸気が発生した。このことから、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、例えば、加湿器、水蒸気発生装置等としての利用も可能である。また、例えば、電気暖房発熱体やとして使用される多孔質発熱体1において、一方面に送風しながら他方面に水を噴射することで、電気暖房発熱体としての多孔質発熱体1から温熱の水蒸気を発生させることができることから、過乾燥防止効果が期待できる電気暖房発熱体としての使用も考えられる。因みに、水掛け等による多孔質発熱体1からの微細な水蒸気の発生は、多孔質発熱体1が多孔質で通気性を有する(連通した気孔を有する)ことに起因すると思われる。また、この多孔質で通気性であることを利用して、例えば、熱風発生器や乾燥装置やアルコール等の蒸留用発熱体としての使用も期待できる。
【0123】
更に、本発明者らの実験研究によれば、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は遠赤外線を発生していることが確認されていることから、多孔質発熱体1は発熱体として、遠赤外線による伝熱効果をも期待できる。
そのようなセラミックス遠赤外線放射材料については、種々のものがその放射率及び放射特性と共に知られている。例えば、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、シリカ(SiO2)、ジルコン(ZrSiO4)、マグネシア(MgO)、イットリア(Y2O3)、コージライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、βスポジューメン(Li2O・Al2O3・4SiO2)、ムライト(Al2O3・3SiO2)、チタン酸アルミニウム(Al2O3・TiO2)等であり、これらは、一般に白色を呈している。
【0124】
また、上記の白色系の他に、セラミックス遠赤外線放射材料としては、有色の全赤外域で放射率が高いセラミックス遠赤外線放射材料がある。そのような有色系のセラミックス材料としては、例えば、酸化銅(Cu2O,CuO)、酸化コバルト(CoO、Co3O4)、酸化ニッケル(NiO)、酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化錫(SnO2)等の遷移金属の酸化物、或いは、炭化ケイ素(SiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化タンタル(TaC)等の炭化物等が挙げられ、これらの多くは、窯業用顔料としても一般に用いられているものである。また、これらは2種以上の組合わせで高効率の赤外線放射が得られ、例えば、MnO2−Fe2O3−CuO−CoO、或いはCoO−Fe2O3−Cr2O3−MnO2等の一体の焼成物は高効率赤外線放射体と呼ばれるものであり、黒色を呈し、「黒体」に近い赤外線の放射特性が得られる。
【0125】
加えて、ゼーベック効果の起電力が生じていることも確認されていることから、それを利用した熱感知センサー等への用途も期待できる。特に、厚み(T)5mm×幅(W)35mm×長さ(L)210mmの平板状とした多孔質発熱体1から、0.3V程度の電圧が検出されている。したがって、5本程度の多孔質発熱体1の検出電圧を加算する方向に接続すれば、発光ダイオードの点灯が容易になる。このことから、電力の供給を終了してから5本程度からなる多孔質発熱体1のその時の温度が高いか、低いかを表示させることができる。
なお、この特性は、負荷電力の供給には無関係である。
【0126】
このように、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、アルミニウム粉2と、アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない黒鉛粉としての炭素粉3と、陶磁器用の粘土粉としての蛙目粘土粉4と、有機化合物粉5と、これらアルミニウム粉末2、炭素粉3、蛙目粘土粉4、及び木粉5が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダ6とが混合された焼結原料混合物7を、常温で圧力を加えて成形し、1000℃〜1200℃の範囲内の温度で焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなるものである。
したがって、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1によれば、機械的強度が高く、かつ、通電により抵抗発熱し、抵抗発熱体として使用可能となる。
【0127】
特に、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1は、体積が大きい割には通電による昇温速度及び通電解除による降温速度が速く、通電量によって発熱温度は一定である。
更には、製造過程における抵抗制御が容易である。即ち、原料の粒子形状や粒度分布を選択したり、その配合量を調節したり、また、成形時の圧力調節をしたりして成型体8の緻密度を調節することによって、更には、焼結温度を調節して焼結密度を調節することによって、成型体8の抵抗値を制御して通電による発熱温度を制御することが可能である。また、成型時の金型形状等による成形形状の調節、成形時の充填量の調節、成形時の部分的な圧力調節等で成型体8の抵抗分布を調節することによって、多孔質発熱体1において異なる発熱温度の設定ができ、多孔質発熱体1の特定部位を特定の温度に発熱させることできる。したがって、抵抗発熱体として発熱体等の使途に適する。
【0128】
更には、本実施の形態1に係る多孔質発熱体1よれば、各原料は入手しやすく安価な材料であり、非酸化条件下等の特別な条件下で製造されるものでもないため、製造コストの低コスト化が可能である。
このようにして、機械的強度が高く、かつ、酸等の化学的にも強靭でり、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として使用可能な多孔質発熱体1となる。
【0129】
[実施の形態2]
続いて、本実施の形態2に係る多孔質発熱体1について説明する。
本実施の形態2に係る多孔質発熱体1は、上述した実施の形態1の製造方法とほぼ同様である。異なるのは、金属粉としての鉄粉9を混合した点である。その他は、上記実施の形態1と同じであるから、その詳細な説明を省略する。
【0130】
即ち、本実施の形態2に係る多孔質発熱体10は、アルミニウム粉2、炭素粉としての炭素粉3、陶磁器用の粘土粉としての蛙目粘土粉4、有機化合物粉としての木粉5、金属粉としての鉄粉末9と、これら原料が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダ6とが混合されてなる焼結原料混合物7を、圧力を加えて成形し、1000℃〜1200℃の範囲内の温度で焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなるものである。
【0131】
ここで、鉄粉末9としては、市販の鉄粉末を用いることができ、このような鉄粉末は、ヘガネスジャパン(株)、(株)神戸製鋼所等から発売されている。また、鉄粉9には、100%鉄粉でなく、無機物等の不純物が僅かに含まれたものや、リサイクルの鉄粉でも使用可能であり、更には、アルミニウム等のその他の金属を僅かに含有した鉄粉合金の粉末等を使用することも可能である。
【0132】
なお、この鉄粉末9は、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が150μm〜45μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満であるのが好ましい。小径粒子と大径粒子の取合せによって充填性が向上するからである。なお、より好ましくは、レーザ回折・散乱法によって測定した鉄粉の中位径が75μm〜106μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満である。
【0133】
このようにして得られた本実施の形態2に係る多孔質発熱体10も、機械的強度が高く、通電によって発熱する。
ここで、参考までに本実施の形態2に係る多孔質発熱体10の配合として、表3の上段の配合内容で、図30のフローチャートにしたがって実施例8及び実施例9に係る多孔質発熱体10を製造したときの抵抗値を表3の下段に示す。なお、表3に示される配合材料のうち鉄粉末9以外のものについては、上述の表1で使用した配合材料と同様のものを使用した。また、鉄粉末9としては、ヘガネスジャパン(株)製のASC100.29(Fe:99wt%)でふるい試験法による粒子径が150μm未満(100メッシュアンダー)のものを用いた。この鉄粉末9について日機装(株)のレーザ回折式粒度分布測定装置マイクロトラックで測定したところ中位径が75μmであった。
【0134】
【表3】
【0135】
鉄粉末9が混合された本実施の形態2に係る多孔質発熱体10においては、鉄粉末9を混合しないときと比べて、通電量を同様にした場合、その抵抗値が高く通電による発熱温度が高くなる傾向にあった。
また、本実施の形態2においては、鉄粉末9の配合量を調節することによって、成型体8の抵抗値を容易に制御できて多孔質発熱体10の通電による発熱温度を容易に調節することができた。
なお、本発明を実施する場合には、金属粉は鉄粉に限定されず、例えば、銅粉等を使用することも可能である。
【0136】
ところで、上記実施の形態1及び実施の形態2においては、陶磁器用の粘土粉として蛙目粘土粉4を用いたが、本発明を実施する場合には、アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有するものであれば、蛙目粘土粉4の他に、木節粘土、カオリン、長石、陶石、ゼオライトの粉末等を用いることができる。
更には、本発明者らの実験研究によって、蛙目粘土粉4等の陶磁器用の粘土粉の代わりに、アルミナ(Al2 O3)粉及びシリカ粉(SiO2 )の併用や、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末を使用できることが確認されている。これによっても、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として使用可能な多孔質発熱体となる。
【0137】
即ち、アルミナ(Al2 O3)粉及びシリカ粉(SiO2 )を用いた場合には、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなる多孔質発熱体となる。
また、これに水及び/またはバインダを混合する場合には、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミナ粉と、シリカ粉と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記アルミナ粉、前記シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、常温で圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなる多孔質発熱体となる。
【0138】
さらに、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末を使用する場合には、アルミナ(Al2 O3)粉及びシリカ粉(SiO2 )を用いた場合には、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなる多孔質発熱体となる。
また、これに水及び/またはバインダを混合する場合には、アルミニウム粉と、前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末と、前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記セラミックス遠赤外線材料の粉末とが比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、常温で圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体8を形成してなる多孔質発熱体となる。
このような構成の多孔質発熱体も上記実施の形態1及び実施の形態2に係る多孔質発熱体1と同様、機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有し、抵抗発熱体として使用可能である。
【0139】
また、上記実施の形態1及び実施の形態2においては、黒鉛粉として炭素粉3を用いたが、本発明を実施する場合には、炭素粉としては、アルミニウム粉2の溶融点より低い温度では溶融せず、アルミニウム粉2を覆うことで焼成過程においてアルミニウムが表面に噴出して焼結されなくなる焼結不良を抑制することができるものであればよく、炭素粉3の他に、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、活性炭等が挙げられる。しかし、炭素粉3は、融点が高く、また、アルミニウム粉2の表面に付着しやすい(絡みやすい)ため、焼成過程でアルミニウムが表面に噴出する焼結不良を確実に抑制でき、発熱体において安定した強度や通電発熱性等の性能を確保できる。このため、黒鉛粉としては炭素粉3が適する。
【0140】
上記実施の形態1及び実施の形態2においては、原料に木粉等の有機化化合物5を使用しているが、これは本発明に必須の配合成分ではない。しかし、木粉等の有機化化合物5が混合されている場合には、成形固化の強度を向上させることができ、多孔質発熱体1の強度を向上させることが可能である。また、有機化化合物5は焼成過程において焼失し空隙となることから、その配合量を調節することで、多孔質発熱体1における空隙率を容易に制御することができ、更には、多孔質発熱体1の抵抗値を容易に制御することが可能である。
なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【0141】
上記実施の形態の多孔質発熱体1によれば、前記焼結温度は1000℃〜1200℃の範囲内の温度とした。ここで、本発明者らは、抵抗発熱体としての使用において、十分な高強度及び通電発熱性を確保できる多孔質発熱体を得るための焼結温度について鋭意実験研究を重ねた結果、焼結温度を1000℃〜1200℃の範囲内の温度とすることによって、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。即ち、焼結温度が1000℃未満である場合には、十分な焼成が行われずに焼結不良となり、一方で、1200℃を超えると、得られる成型体8は通電性が損なわれる。
したがって、この発明に係る多孔質発熱体1によれば、確実に機械的強度が高く、かつ、通電発熱性を有するものとなる。
【符号の説明】
【0142】
1,10,20 多孔質発熱体
2 アルミニウム粉
3 炭素粉(黒鉛粉)
4 無機酸化物材料の粉末(蛙目粘土粉)
5 有機化合物粉(木粉)
6 水・バインダ
7 焼結原料混合物
8 成型体
9 金属粉(鉄粉)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉とが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項2】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉と
前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項3】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミナ粉と、
シリカ粉とが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項4】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミナ粉と、
シリカ粉と、
前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記アルミナ粉、前記シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項5】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項6】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末と、
前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記セラミックス遠赤外線材料の粉末が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項7】
前記炭素粉は、黒鉛粉としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項8】
前記混合物は、前記アルミニウム粉の含有量が35重量%〜70重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量が3重量%〜15重量%の範囲内であり、前記陶磁器用の粘土粉の含有量が25重量%〜60重量%の範囲内としたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項9】
前記アルミニウム粉は、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm〜75μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項10】
前記炭素粉は、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm〜90μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項11】
前記陶磁器用の粘土粉は、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μ〜30μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項1】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉とが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項2】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミニウム酸化物及びケイ素酸化物、前記アルミニウム酸化物と前記ケイ素酸化物の複合酸化物、アルミニウムのケイ酸塩のうちの少なくとも1種を含有する陶磁器用の粘土粉と
前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記陶磁器用の粘土粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項3】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミナ粉と、
シリカ粉とが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項4】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミナ粉と、
シリカ粉と、
前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記アルミナ粉、前記シリカ粉が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダとが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項5】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末とが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項6】
アルミニウム粉と、
前記アルミニウムの溶融点より低い温度では溶融しない炭素粉と、
アルミニウム酸化物とケイ素酸化物の複合酸化物またはアルミニウムのケイ酸塩からなるセラミックス遠赤外線材料の粉末と、
前記アルミニウム粉、前記炭素粉、前記セラミックス遠赤外線材料の粉末が比重の違いによって移動が生じない量の水及び/またはバインダが混合されてなる混合物を、
圧力を加えて成形し、焼結して5%〜50%の範囲内の空隙を有し、通電によって発熱する成型体を形成してなることを特徴とする多孔質発熱体。
【請求項7】
前記炭素粉は、黒鉛粉としたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項8】
前記混合物は、前記アルミニウム粉の含有量が35重量%〜70重量%の範囲内であり、前記炭素粉の含有量が3重量%〜15重量%の範囲内であり、前記陶磁器用の粘土粉の含有量が25重量%〜60重量%の範囲内としたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項9】
前記アルミニウム粉は、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が30μm〜75μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が150μm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項10】
前記炭素粉は、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が60μm〜90μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が200μm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【請求項11】
前記陶磁器用の粘土粉は、レーザ回折・散乱法によって測定した中位径が5μ〜30μmの範囲内であり、ふるい試験法によって測定した粒子径が100μm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか1つに記載の多孔質発熱体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図13】
【図15】
【図17】
【図19】
【図27】
【図30】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図14】
【図16】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図11】
【図13】
【図15】
【図17】
【図19】
【図27】
【図30】
【図4】
【図6】
【図8】
【図10】
【図12】
【図14】
【図16】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2013−1614(P2013−1614A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135519(P2011−135519)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(398012801)株式会社ネイブ (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(398012801)株式会社ネイブ (26)
【Fターム(参考)】
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