説明

多孔質金属を電気的接続に用いたデバイス、及び配線接続方法

【課題】デバイス構造が形成された基板と、これを封止する基板を陽極接合する際に電気的な接続を確実に行うことができる配線接続方法を提供する。
【解決手段】第1の基板40と第2の基板45とが陽極接合され、かつ前記第1の基板と前記第2の基板とが、純度99.9質量%以上で、平均粒径0.005μm〜1.0μmの金、銀、白金及びパラジウムから選択される1種以上の金属からなる多孔質金属51,52を介して電気的に接続されたデバイス4、及び第1の基板の接続電極部及び第2の基板の接続電極部の少なくとも一方に多孔質金属(バンプ)を形成し、前記第1及び第2基板の接続電極部同士がバンプを挟んで対向するように前記第1及び第2基板を重ね合わせた後、両基板を陽極接合すると同時に多孔質金属を介して前記第1及び第2基板の接続電極部間を電気的に接続する配線接続方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質金属を電気的接続に用いたデバイスに関する。さらに詳しく言えば、第1の基板と第2の基板とが陽極接合され、かつ多孔質金属を介して配線接続部で電気的に接続されたデバイス、及びデバイス構造が形成された基板(第1の基板)とデバイス構造を封止する基板(第2の基板)とを陽極接合する際に多孔質金属を介して電気的な接続を行う配線接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の製造では、デバイス構造が形成されたウェハ(第1の基板)に別のガラス等のウェハ(第2の基板)を陽極接合し、デバイス構造を封止することがしばしば行われる。このとき、デバイス構造と貫通配線とは、両ウェハ(基板)に形成された金属薄膜が接合界面で接することによって、電気的に接続される。しかし、2つの基板の金属薄膜が陽極接合面より出っ張り過ぎると陽極接合ができず、一方、相手側金属薄膜に届かないと電気接続ができない。模式図(図10〜12)を参照してさらに詳しく説明すると、例えば、図10に示すようにガラス基板101とシリコン(Si)基板102において、それぞれの対向面に金属層101a、102aが出っ張るように設けられている場合には、金属層101a、102a同士は接触するが、ガラス基板とSi基板との金属層101a、102aを設けていない面同士は接触しないため、少なくとも金属層の周辺ではガラス基板101とSi基板102とを陽極接合することができない。
【0003】
逆に、図11に示すように、ガラス基板101にはその対向面101bから出っ張って金属層101aが設けられているが、Si基板102における対向面102bには凹陥部102cが形成されており、金属層102aがその凹陥部102cに設けられている場合であっても、金属層102aの高さが低い場合には、ガラス基板101とSi基板102とを陽極接合することはできるが、金属層101a、102a同士を電気的に接続することはできない。
【0004】
図10に示すようなケースを回避するためには、ガラス基板101、Si基板102において金属層101a、102aを形成しない面と金属層101a、102aの表面とが同じ高さとなるよう構造設計し、各金属層101a、102aの厚みを正確に調整する必要がある。また、図11に示すようなケースを回避するためには、ガラス基板101、Si基板102にそれぞれ形成する金属層101a、102aの厚みを両者が接するように調整する必要がある。このように、基板同士を陽極接合し、かつ同時に基板上の金属層同士を電気的に接続するためには、個々の金属層の厚みを調整しなければならず、製品の歩留まりはよくなかった。
【0005】
また、図12(A)に示すような厚み方向に配線が貫通するように設けられている基板(貫通配線付き基板)103を別の基板と陽極接合する場合には、貫通配線付基板103を予め研磨して接合に適した面に形成するが、配線材とウェハ基材との研磨特性の違いに起因して貫通配線103a表面がウェハ表面より僅かに凹むことがある(図12(B)の103b)。この場合、貫通配線103aと別の基板104上の金属層104aとを接続し、かつ貫通配線付き基板103と別の基板104とを陽極接合するには、少なくとも、凹んだ貫通配線表面またはこの貫通配線に接続する金属層104aのいずれか一方の上に、凹み103bを補うための、バンプと称される金属膜(図示せず)を別途形成する必要がある。この場合も、形成するバンプの厚みを厳密に調整する必要があるが、貫通配線付き基板103の表面研磨処理において、貫通配線103aの表面の凹み量が一定にならないと金属膜の厚みの調整・管理が難しくなるという問題がある。
【0006】
このような、デバイス構造が形成されたウエハ(第1の基板)に、これを封止する別のウェハ(第2の基板)を陽極接合し、かつ電気接続をも確実に行う方法として、本出願人らは、先に、第1基板及び第2基板の接続電極部の少なくとも一方に、陽極接合時に接続電極部の金属との間で金属間化合物または合金を形成するバンプ(金属層)を設けておき、両基板の接続電極部が前記金属層を挟んで対抗するように重ね合わせた後、陽極接合温度まで昇温し直流電圧を印加して、両基板を陽極接合すると同時に金属層を融解させて両基板の接続電極部を電気的に接続する方法を提案している(平成22年電気学会全国大会199-200頁;非特許文献1)。
【0007】
また、本発明の配線接続方法に関連する技術として、半導体ウエハ上のバンプ形成用として純度が99.9質量%以上で、平均粒径が0.005μm〜1.0μm以上である金粉、銀粉またはパラジウム粉から選択される金属粉と有機溶媒からなる金属ペーストが開示され(特開2005−216508号公報、特許文献1)、サブミクロンの金、銀、白金またはパラジウム粒子焼結体を半導体チップ接合のバンプとして用いる低温接合技術が開示されているが(特開2007−324523号公報;特許文献2、エレクトロニクス実装学会誌Vol.10, No.7, 560-566頁(2007);非特許文献2)、これらの文献は、上述した基板を陽極接合する際の配線接続の課題については記載していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−216508号公報
【特許文献2】特開2007−324523号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】平成22年電気学会全国大会199-200頁
【非特許文献2】エレクトロニクス実装学会誌Vol.10, No.7, 560-566頁(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、デバイス構造などが形成された基板(第1の基板)と、これを封止する基板(第2の基板)とが陽極接合され、かつ前記第1の基板と前記第2の基板の接続電極部とが確実に電気的に接続されたデバイスを提供することにある。
また、本発明の他の課題は、第1の基板と第2の基板を陽極接合する際に電気的な接続を確実に行うことができる配線接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、サブミクロン金属粒子からなる多孔質金属を基板の接続電極部のバンプとして用いることにより、基板同士の陽極接合と同時に接続電極部間の電気的な接続が確実かつ容易にできることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は下記の1〜9の多孔質金属を介して電気的に接続されたデバイス、及び10〜16の配線接続方法を提供する。
【0012】
1.第1の基板と第2の基板とが陽極接合され、かつ前記第1の基板と前記第2の基板とが多孔質金属を介して電気的に接続されたデバイス。
2.前記多孔質金属が、金、銀、白金及びパラジウムから選択される1種以上の金属からなる前項1に記載のデバイス。
3.前記多孔質金属が、金、または金を主要成分とする金属混合物である請求項2に記載のデバイス。
4.前記多孔質金属が、純度99.9質量%以上で、平均粒径0.005μm〜1.0μmの金属粉からなる多孔質体である前項1〜3のいずれかに記載のデバイス。
5.前記第1の基板及び第2の基板のいずれか一方が、ガラス基板またはLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板である前項1に記載のデバイス。
6.第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方に貫通配線または内部配線が形成されている前項5に記載のデバイス。
7.前記LTCC基板が金系合金からなる貫通配線または内部配線を有する前項5に記載のデバイス。
8.前記第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方が、電子回路及び/またはMEMS(Micro Electronic Mechanical Systems)が形成されているチップである前項5〜7のいずれかに記載のデバイス。
9.前記第1の基板と第2の基板とで画成された内部空間が気密封止されている前項8に記載のデバイス。
【0013】
10.第1の基板の接続電極部及び第2の基板の接続電極部の少なくとも一方に多孔質金属からなるバンプを形成し、前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とが前記バンプを挟んで対向するように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせた後、前記第1基板と前記第2基板とを陽極接合すると同時に多孔質金属を介して前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とを電気的に接続することを特徴とする配線接続方法。
11.前記バンプを設ける前の段階で、前記第1の基板と前記第2の基板とを重ね合わせた状態で前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とが接触しない空間部を有しており、前記バンプを前記第1基板または前記第2基板のいずれかから突出した状態で設ける前項10に記載の配線接続方法。
12.第1の基板の接続電極部及び第2の基板の接続電極部の少なくとも一方に多孔質金属からなるバンプを形成し、80〜300℃の温度で焼成し、前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とが前記バンプを挟んで対向するように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせた後、次いで200〜500℃の温度に昇温し、その温度を維持しながら前記第1基板と前記第2基板に直流電圧を印加することにより、前記第1基板と前記第2基板とを陽極接合すると同時に多孔質金属を介して前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とを電気的に接続する前項10または11に記載の配線接続方法。
13.前記第1基板の接続電極部及び第2基板の接続電極部の電気的接点となる表面に、金薄膜を最表面にもつ薄膜構造体を設け、その少なくとも一方に多孔質金属からなるバンプを形成する前項10〜12のいずれかに記載の配線接続方法。
14.前記多孔質金属が、金、銀、白金及びパラジウムから選択される1種以上の金属からなる前項10に記載の配線接続方法。
15.前記多孔質金属が、金、または金を主要成分とする金属混合物である前項14に記載の配線接続方法。
16.前記多孔質金属が、純度99.9質量%以上で、平均粒径0.005μm〜1.0μmの金属粉からなる多孔質体である前項10〜14のいずれかに記載の配線接続方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、基板の接続電極部に設けるバンプとして、金、銀、白金及びパラジウムから選択される1種以上のサブミクロン粒子からなる多孔質金属を用いる配線接続方法、及び基板同士が陽極接合されかつ両基板とが多孔質金属を介して電気的に接続されたデバイスを提供したものである。
サブミクロン金属粒子からなる多孔質体のバンプは、変形しやすく段差吸収力が高いこと、高く積むことができるのでMEMSを収める大きな掘り込み(キャビティ)の底に付けられることから、陽極接時される2つの基板間の電気接続を容易に行うことができ、製品の歩留りが高くなる。
MEMSと実装基板を陽極接合という接合力と信頼性の高い接合方法でしっかりと接合でき、その接合内部で同時に形成される電気的接続(電気接点の接合)機構が圧接に加え金属間の拡散による接合という安定した接合力に基づくとともに、化学的に安定な金属粒子単体を接点材料に用いているために、製造プロセスの安定性と材料的な安定性に優れ、信頼性に富んだMEMS製品を製造することができる。
本発明によれば、陽極接合時に、多孔質金属からなるバンプを接続電極部に配置することによって、陽極接合との一括プロセスの中で接続電極部間の電気的接続を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)及び(B)は本発明の実施形態に係る配線接続方法の工程を模式的に示す。
【図2】(A)及び(B)は本発明の実施形態に係る配線接続方法の別の工程を模式的に示す。
【図3】本発明の実施形態に係るデバイスの構造を模式的に示す。
【図4】(A)は図3に示すデバイスを製造するために用意される2つの基板を模式的に示し、(B)は陽極接合する前の状態を模式的に示す。
【図5】本発明の実施形態に係るデバイスの構造を模式的に示す。
【図6】図5に示すデバイスを製造する際の、2つの基板を陽極接合する前の状態を模式的に示す。
【図7】本発明の実施形態に係るデバイスの構造を模式的に示す。
【図8】図7に示すデバイスを製造する際の陽極接合する前の状態を模式的に示す。
【図9】(A)及び(B)は本発明の実施例の配線接続方法の工程を模式的に示す。
【図10】金属薄膜を有する2つの基板を陽極接合すると同時に電気的に接続する態様を説明する模式図である。
【図11】金属薄膜を有する2つの基板を陽極接合すると同時に電気的に接続する他の態様を説明する模式図である。
【図12】(A)は貫通配線を有する基板の断面図、(B)は前記基板と金属薄膜を有する基板を陽極接合すると同時に電気的に接続する場合の態様を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、基板の接続電極部に設けるバンプとして、サブミクロン金属粒子からなる多孔質体(バンプ)を使用する。
サブミクロン金属粒子としては、純度99.9質量%以上で、平均粒径0.005μm〜1.0μmの金、銀、白金及びパラジウムから選択される1種以上の金属を使用する。これら金属の中でも、金及び金を主要成分とする金属混合物が好ましい。
【0017】
多孔質金属体のバンプを接続電極部に設ける方法は特に限定されないが、特開2005-216508号公報(特許文献2)及び特開2007-324523号公報(特許文献3)に記載されている方法が好ましい。具体的には、純度が99.9質量%以上で、平均粒径が0.005μm〜1.0μmの金粉、銀粉、白金粉、またはパラジウム粉から選択される1種以上の金属粉末と、有機溶剤とからなる金属ペーストを、好ましくはスクリーン印刷法により、第1の基板の接続電極部及び第2の基板の接続電極部の少なくとも一方の所定箇所に、所定の厚みに塗布し、前記ペースト中の有機溶剤を除去する(乾燥する)。乾燥は室温で行い、減圧雰囲気下で行ってもよい。本明細書では、この乾燥後、加熱(焼結)前の金属粉末集合体(多孔質金属)をバンプと称する。
本発明では、この多孔質金属を加熱圧着することにより、金属粒子同士及び基板の接合面(接続電極部)と金属粒子との間に互いに点接触した近接状態を形成させ、圧接力と金属間の拡散接合によって電気接続を形成した多孔質金属体とする。具体的には、多孔質金属を、前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とが前記多孔質金属を挟んで対向するように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせた後、80〜300℃、好ましくは150〜300℃の温度で加熱する。80℃未満の温度では上記の点接触が生じない。
【0018】
本発明で使用する金属粉として99.9質量%以上のものを使用するのは、純度が99.9質量%未満であると粉末の硬度が上昇し、塑性変形し難くなるからである。また、金属粉の平均粒径については、1.0μmを超えると焼結の際、好ましい近接状態を発現させ難くなり、0.005μm未満の場合にはペーストとしたときに凝集しやすく取扱いが困難となる。
【0019】
金属ペーストを構成する有機溶剤としては、比較的低温で乾燥させることができる溶剤である、エステルアルコール、ターピネオール、パインオイル、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、カルビトールが使用される。
【0020】
本発明では、加熱圧着及び陽極接合が行なわれる際に、多孔質金属と接続電極部との間で金属間の拡散接合が進行しやすいように、接続電極部(ビア)上に金薄膜を表面層にもつ薄膜構造を形成しておくことが好ましい。薄膜構造としては、密着層としてのCrもしくはTiに拡散バリア層としてのPt、CuもしくはNi等、表面酸化保護膜そして多孔質金属金属焼結体との接合膜としてのAuなどが考えられる。拡散バリア層としてのPtやCu、Niなどは陽極接合条件によっては、不要な場合もある。
【0021】
[陽極接合]
本発明では、前記多孔質金属体を挟んで対向する前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせた状態で200〜500℃の温度に昇温し、その温度を維持しながら前記第1基板と前記第2基板に直流電圧を印加することにより、前記第1基板と前記第2基板とを陽極接合すると同時に多孔質金属を介して前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部との電気接点が確立する。
【0022】
以下本発明の実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1(A)及び(B)は本発明の実施形態に係る配線接続方法の工程を模式的に示す図である。陽極接合する第1の基板10と第2の基板15とを用意する(A)。第1の基板10、第2の基板15には互いに対向する面に接続電極部12、17をそれぞれ備えている。図示する例では、第1の基板10はSi基板11上にMEMS構造体(図示せず)が搭載されており、かつ接続電極部12として電極パッドが対向面に形成されている、接続電極部12はSi基板11を部分的エッチングにより除去した凹陥部13内に設けられている。この接続電極部12の下には、必要に応じて絶縁層を設ける(図示せず)。第2の基板15は、例えば絶縁材16に接続電極部17を電極パッドとして設けたガラス基板である。この状態では第1の基板10と第2の基板15とを重ね合わせても接続電極部12、17同士は接触しないで所定の間隔を有する。
【0023】
次に、第1の基板10、第2の基板15のいずれか一方、図1(A)では第1の基板10の接続電極部12に、特許文献2に記載の方法により調整した金属ペーストを用いてスクリーン印刷法等で多孔質金属前駆体(多孔質金属のバンプとなるもの)を所定の厚みに設ける。これは後述するように、多孔質金属前駆体は焼成後、多孔質金属(バンプ)14となり、接合時に、それが加圧によってつぶれ変形することにより、多孔質金属14の高さが、空間(凹陥部13と同じ高さまで低くなり、高さ減少分の金属材は多孔質金属14を配置していない凹陥部13の空間部分に張り出すからである(図1(B))。図示するように、第1の基板10の凹陥部13内に接続電極部12を設けた場合には、その接続電極部の表面の寸法より小さければよく、陽極接合面より距離d1だけ突出する高さに多孔質金属(バンプ)14を形成すればよい。
【0024】
次に、第1の基板10、第2の基板15の各接続電極部12,17が多孔質金属14を介して互い重なり合うように第1の基板10と第2の基板15とを重ね合わせ、多孔質金属14の焼結が進行する80〜300℃の温度まで昇温し、クラスタ構造を形成させるとともに加圧して電極部12,17との接合をとる。その後、加圧しながら陽極接合温度(200〜500℃)まで昇温して、第1の基板10と第2の基板15との間に直流電圧を印加して陽極接合させる。この一連のプロセスの中で、多孔質金属体1を介して第1の基板10と第2の基板15の各接続電極部12,17の電気接続が確立されるとともに、第1の基板10と第2の基板15との接合が同時に確立される。
【0025】
以上の工程により、第1の基板10と第2の基板15とを陽極接合すると同時に電気的な接続を確立することができる。
【0026】
さらに、接続電極部12に設ける多孔質金属(バンプ)14については、多孔質金属が焼結する際、更には加圧、陽極接合が行なわれる際に、接続電極部12、17との間で金属間の拡散接合が進行しやすいように、接続電極部(ビア)上に金(Au)薄膜を表面層にもつ薄膜構造を設けることが好ましい。この薄膜構造としては、密着層としてのCrもしくはTiに拡散バリア層としてのPt、CuもしくはNi等、表面酸化保護膜そして多孔質金属金属焼結体との接合膜としてのAuなどが考えられる。拡散バリア層としてのPtやCu、Niなどは陽極接合条件によっては、不要な場合もある。
【0027】
図2(A)及び(B)は本発明の他の実施形態に係る配線接続方法の工程を模式的に示す図である。陽極接合する第1の基板20と第2の基板25とを用意する。第1の基板20、第2の基板25には互いに対向する面に接続電極部22,27をそれぞれ備えている。図示する例では、第1の基板20は絶縁材21に接続電極部22として配線が貫通して設けられているLTCC基板であり、第2の基板25はSi基板26上にMEMS構造体(図示せず)が搭載されておりかつ接続電極部27として電極パッドが対向面に形成されてなる。この電極パッドの下には、必要に応じて絶縁層を設ける(図示せず)。この状態では、第1の基板20と第2の基板25とを重ね合わせたとき僅かな空間(凹陥部)23を画成すればよく、具体的には、空間23の大きさは、接続電極部22としての貫通配線が陽極接合面より僅かに凹んでいればよい。例えば図示するように、第1の基板20が貫通配線付き基板である場合には、研磨処理により生じる窪みを活用してもよく、陽極接合面より僅かに凹んでいればよい。
【0028】
次に、第1の基板20、第2の基板25のいずれか一方、図2に示す例では第1の基板20の接続電極部22に、多孔質金属(バンプ)24を、図1の場合と同様の手法により所定の厚みで設ける。多孔質金属24は陽極接合面から距離d2だけ突出する厚みを有しているが、多孔質金属24の体積が空間23の体積以下となるような厚みを有するようにする。これは後述するように多孔質金属24は焼結後クラスター(多孔質金属体)構造となり、それが加圧によってつぶれて変形することで、多孔質金属14の高さが空間23と同じ高さまで低くなり、高さ減少分の多孔質金属体24を配置していない隙間部分に張り出すかまたは空間23全体を埋めるからである。接続電極部22が貫通配線である場合には、その貫通配線の湾曲面より小さく、空間23の高さより厚い金属パッドを形成すればよい。かかる状態を示したのが図2(A)である。
【0029】
次に、第1の基板20、第2の基板25の各接続電極部22,27が多孔質金属24を介して互い重なり合うように第1の基板20と第2の基板25とを重ね合わせ、多孔質金属24の焼結が進行する温度(80〜300℃)まで昇温し、クラスタ(多孔質金属体)構造を形成させるとともに加圧して電極部22,27との接合をとる。その後、加圧しながら陽極接合温度(200〜500℃)まで昇温して、第1の基板20と第2の基板25との間に直流電圧を印加して陽極接合させる。この一連のプロセスの中で、多孔質金属体2を介して第1の基板20と第2の基板25の各接続電極部22,27の電気接続が確立されるとともに、第1の基板20と第2の基板25との接合が同時に確立される。
【0030】
以上の工程により、第1の基板20と第2の基板25とを陽極接合すると同時に電気的な接続を確立することができる。
【0031】
さらに、接続電極部22に多孔質金属24を設けるに際しては、多孔質金属が焼結する際、更には加圧、陽極接合が行なわれる際に、接続電極部22、27との間で金属間の拡散接合が進行しやすいように、接続電極部上に金薄膜を表面層にもつ薄膜構造を形成しておくことが好ましい。この薄膜構造としては、密着層としてのCrもしくはTiに拡散バリア層としてのPt、CuもしくはNi等、表面酸化保護膜そして多孔質金属金属焼結体との接合膜としてのAuなどが考えられる。拡散バリア層としてのPtやCu、Niなどは陽極接合条件によっては、不要な場合もある。
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る配線接続方法を適用して作製することができるデバイスについて説明する。図3は本発明の実施形態に係るデバイスの構造を模式的に示す。デバイス3は、第1の基板として各種の素子や貫通配線が搭載されているLTCC基板、あるいは薄膜配線等が形成されたガラス基板(以下、「LTCC基板またはガラス基板」と称する。)30と、第2の基板としてMEMS基板35とを陽極接合して構成されている。この機能デバイス3はLTCC基板またはガラス基板30側の電極部31に対してMEMS基板35の可動部35aにおける電極部36が当接することで、スイッチング回路を構成している。
【0033】
図4(A)は図3に示すデバイス3を製造するために用意されるLTCC基板またはガラス基板30とMEMS基板35とを模式的に示す図であり、(B)はLTCC基板またはガラス基板30とMEMS基板35とを陽極接合する前の状態を模式的に示す図である。MEMS基板35は、図示していない支持基板で支えられている。LTCC基板またはガラス基板30は、図4(A)に示すように、表面に電極部31と接続電極部32とを有している。MEMS基板35は断面略L字状を有するよう可動部35aと固定部35bとからなり、MEMS基板35は、LTCC基板またはガラス基板30との対向面側に、電極部36を有している。その電極部36の一端は接続電極部37につながっており、その接続電極部37は固定部35bの底面側に沿って設けられている。
【0034】
このデバイス3を作製するための配線接続方法について説明する。図4(A)に示すように、LTCC基板またはガラス基板30とMEMS基板35とをそれぞれ用意する。LTCC基板またはガラス基板30は表面に接続電極部32と電極部31とを有する。LTCC基板またはガラス基板30における接続電極部32は表面の窪み(凹陥部)33に設けられており、接続電極部32の表面はLTCC基板またはガラス基板30の陽極接合面と同一の高さにはない。次に、図4(B)に示すように、接続電極部32に対して多孔質金属34を設ける。その際、多孔質金属34は窪み33を埋めることなく、図4(A)に示すLTCC基板またはガラス基板30とMEMS基板35とを重ね合わせたときに生じる接続電極部32、37同士の離隔寸法よりも長く、かつ多孔質金属34の体積が、窪み33の空間よりも小さくなるように、多孔質金属34を形成する。多孔質金属34の厚みは、図4(A)に示すLTCC基板またはガラス基板30とMEMS基板35とを合わせたときに生じる接続電極部32と接続電極部37との間の隙間の高さより大きくする。
【0035】
その後、図4(B)に示すようにLTCC基板またはガラス基板30の接続電極部32とMEMS基板35の接続電極部37とが互いに対向するようにして、LTCC基板またはガラス基板30とMEMS基板35とを重ね合わせる。そして、これらを昇温して陽極接合温度に維持して、LTCC基板またはガラス基板30に対してMEMS基板35がプラスとなるよう電圧を印加する。すると、多孔質金属34が接続電極部37と接合して配線接続部38となり、この配線接続部38により接続電極部32と接続電極部37とが電気的に接続されると同時に、LTCC基板またはガラス基板30とMEMS基板35との対向面が接触して接合される。図3において符号A1で示す部分が陽極接合された面を示している。
【0036】
図5は本発明の実施形態に係るデバイス4の構造を模式的に示しており、図6は図5に示されるデバイス4を製造するに当たり、2つの基板を陽極接合する前の状態を模式的に示す図である。デバイス4は、図5に示すように、第1の基板としてMEMS構造体41が搭載されているMEMS基板40と、第2の基板としてLTCC基板45とを陽極接合して構成されている。MEMS基板40は、Siウェハ上に薄膜形成、エッチング、犠牲層の除去などを所定の順に繰り返してMEMS構造体41を搭載したものである。MEMS基板40は平板状の第1電極部42及び第2電極部43と片持ち式のMEMS構造体41を備えている。MEMS基板40の表面側には凹陥部44が形成されており、凹陥部44に第1電極部42及び第2電極部43が設けられており、第1の電極部42上にMEMS構造体41が設けられている。第1電極部42及び第2電極部43の下には、絶縁層が設けられている(図示せず)。MEMS構造体41の構造を説明すると、固定部41bが第1電極部42上に設けられ、可動部41aが固定部41bの先端に第2電極部43に対向するよう設けられている。MEMS構造体41は凹陥部44以外のMEMS基板40表面、すなわち陽極接合面から突出している。LTCC基板45は、第1の下側電極部46、第2の下側電極部47と第1の上側電極部48と第2の上側電極部49とを多層配線および貫通配線により接続するよう、例えば貫通配線した基材に配線印刷したものを積層し、上下から圧力を加えて拘束して焼成してなる。
【0037】
本実施形態においては、MEMS基板40における第1電極部42とLTCC基板45における第1下側電極部46とを多孔質金属53に圧接させ、好ましくは金属間に拡散接合をも生じさせて配線接続部51を形成し、MEMS基板40における第2電極部43とLTCC基板45における第2の下側電極部47とを多孔質金属54に圧接させ、好ましくは金属間に拡散接合をも生じさせて配線接続部52を形成してなる。
【0038】
この機能デバイス4は、MEMS基板40上に形成したMEMS構造体41をLTCC基板45で気密パッケージングしており、MEMS基板40における第1の電極部42及び第2の電極部43がそれぞれLTCC基板における第1の下側電極部46、第2の下側電極部47に配線接続部51,52を介して電気的に接合されており、かつLTCC基板45の下面とMEMS基板40の上面とが陽極接合されてなる。陽極接合している界面を部分的にハッチングA2を付して示している。MEMS構造体41が、図示するように、第1の基板40と離隔されているので、例えばジュール熱などによりMEMS構造体41が撓んで変形してMEMS基板40における第1の電極部43に接触する。この接触の有無をLTCC基板45の上面に設けた第1及び第2の上側電極部48,49から電気信号の出力の有無として判断することができる。あるいは、加速度の印加によりMEMS構造体41が撓んで変形して、MEMS基板40における第1の電極部43との距離が変化する。この距離の変化をLTCC基板45の上面に設けた第1及び第2の上側電極部48,49から静電容量変化として測定することができる。
【0039】
この機能デバイス4を作製するための配線接続方法について説明する。LTCC基板45とMEMS基板40とをそれぞれ用意する。LTCC基板45は貫通配線構造及び/または多層配線構造を有し、かつ下側表面に第1の接続電極部としての第1の下側電極部46と第2の接続電極部としての第2の下側電極部47とを有する。LTCC基板45における第1及び第2の下側電極部46、47は窪みの空間(凹陥部)55、56にそれぞれ設けられており、第1及び第2の下側電極部46,47の表面はLTCC基板45の陽極接合面と同一の高さにはない。そして、図6に示すように、第1及び第2の接続配線部としての第1及び第2の下側電極部46、47に対して多孔質金属53、54をそれぞれ設ける。その際、多孔質金属53,54は窪みの空間55、56をそれぞれ埋めることなく、図6に示す多孔質金属53、54を設けていない状態でのLTCC基板45とMEMS基板40とを重ね合わせたときに生じる接続電極部同士間の隙間高さより厚く、かつ金属層53,54の体積は、凹陥部55、56よりも小さくなるようにする。すなわち、多孔質金属53、54の厚みは図6に示すLTCC基板45とMEMS基板40とを重ね合わせたときに生じる下側電極部46,47と第1及び第2の電極部42,43との距離より長くする。
【0040】
その後、図6に示すようにLTCC基板45における第1及び第2の接続電極部としての第1及び第2の下側電極部46,47とMEMS基板40における第1及び第2の電極部42,43とをそれぞれ対応させて対向するようにして、LTCC基板45とMEMS基板40とを重ね合わせる。そして、多孔質金属53,54の焼結が進行する温度まで昇温し、クラスタ構造を形成させるとともに加圧して、多孔質金属53,54を第1及び第2の電極部42,43と接合させることで第1及び第2の配線接続部51,52がそれぞれ形成され、第1及び第2の電極部42、43と第1及び第2の下側電極部46、47とが電気的に接続される。その後、加圧しながら陽極接合温度まで昇温して、LTCC基板45に対してMEMS基板40側がプラスとなるよう直流電圧を印加する。その際、LTCC基板45とMEMS基板40との対向面が接触して接合される。図中、符号A2で示すハッチング部分が陽極接合部分を表している。この一連のプロセスの中で、多孔質金属53,54と第1及び第2の電極42,43との各接続電極部51,52が確立されるとともに、LTCC基板とMEMS基板45とMEMS基板40との接合が同時に確立される。
【0041】
以上の工程により、MEMS基板40上に設けたMEMS構造体41をLTCC基板45に形成した収容部50を収めてLTCC基板45で蓋をすることができる。
【0042】
さらに別の実施形態について説明する。図7は本発明の実施形態に係るデバイス5の構造を模式的に示す断面図であり、図8は図7に示される機能デバイス5を製造するに当たり、陽極接合する前の状態を模式的に示す図である。デバイス5は、図7に示すように、第1の基板としてのLTCC基板60に対して各種チップ65A、65B、65Cを陽極接合して構成されている。チップ65A、65B、65Cとしては、例えばSi基板上にMEMS構造体を形成したMEMSチップ、Si基板上に集積回路を形成したICチップなど、Siなどの半導体材料でなるウェハ上に半導体プロセスによりデバイスを形成したものが含まれている。チップ65A、65B、65Cには下面に複数の箇所に接続電極部66が形成されている。
【0043】
LTCC基板60は、複数のチップ65A、65B、65Cの各接続電極部66に対応するように、複数の接続電極部61が多層配線により接続するよう、例えば貫通配線した基材に配線印刷したものを積層し、上下から圧力を加えて拘束して焼成してなる。LTCC基板60の表面側の接続電極部61には窪み(凹陥部)62の空間が形成される。そこで、LTCC基板60における各接続電極部61に多孔質金属63を形成する。多孔質金属63の体積は凹陥部62の空間の体積以下であり、多孔質金属63の厚みは、LTCC基板60とチップ65A、65B、65Cとを合わせたとき、LTCC基板60における接続電極部61とチップ65A、65B、65Cにおける接続電極部66との間の隙間高さより大きい。つまり、LTCC基板60における多孔質金属63はLTCC基板60の対向面より突出している。
【0044】
本実施形態においては、チップ65A、65B、65Cにおける接続電極部66とLTCC基板60における接続電極部61とが多孔質金属63と圧接し、好ましくは金属間に拡散接合をも生じて配線接続部67を形成する。各配線接続部67がチップ65A、65B、65CとLTCC基板60とを電気的に接続する。
【0045】
この機能デバイス5は、MEMSチップやICチップなどの複数個のチップ65A、65B、65CをLTCC基板60に陽極接合し、LTCC基板60内の多層配線により接続し、LTCC基板60をインターポーザー的に利用している。これにより、各種機能デバイスを実現できる。
【0046】
この機能デバイス5を作製するための配線接続方法について説明する。LTCC基板60と複数個のチップ65A、65B、65Cを用意する。LTCC基板60は多層配線構造を有し、かつ表面に複数の接続電極部61を有する。LTCC基板60における各接続電極部61には窪み62が形成されており、接続電極部61の表面はLTCC基板60の接合面とは同一の面上にはない。このようなLTCC基板60において、図8に示すように、各接続電極部61に対して多孔質金属63を設ける。その際、多孔質金属63は凹陥部62を埋めることなく、図8に示す多孔質金属63を設けていない状態でのLTCC基板60とチップ65A、65B、65Cとを合わせたときに生じる接続電極部61と接続電極部66との間の隙間高さよりも厚く、かつ多孔質金属63の体積は、凹陥部62の空間よりも小さくなるように形成される。
【0047】
その後、図8に示すようにLTCC基板に60における各接続電極部61とチップ65A、65B、65Cの接続電極部66とをそれぞれ互いに対向するようにして、LTCC基板60にチップ65A、65B、65Cを合わせる。そして、多孔質金属63の焼結が進行する温度まで昇温し、クラスタ構造を形成させるとともに加圧して、多孔質金属63を接続電極部66と接合させることで配線接続部67が形成される。その後、加圧しながら陽極接合温度まで昇温して、LTCC基板60に対してチップ65A、65B、65Cがプラスとなるよう直流電圧を印加する。その際、LTCC基板60とチップ65A、65B、65Cとの対向面が接触して接合される。この一連のプロセスの中で、多孔質金属63とチップ65A、65B、65Cの接続電極部66との各接続電極部66が確立されるとともに、LTCC基板60とチップ65A、65B、65Cとの接合が同時に確立される。
【0048】
以上の工程により、複数のチップを一つのLTCC基板に陽極接合すると共にチップ間を配線接続することができる。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の配線接続方法の実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1:
図9(A)及び(B)は、実施例1の配線接続方法の工程を示す模式図である。
第1の基板71と第2の基板77とは次の要領で作製した。
第1の基板71については、SOI(Silicon On Insulator)基板72のハンドル層(300μm厚)側に部分的に18μmの段差となる凹陥部73を形成し、熱拡散炉で酸化膜74を形成した後に、第2の基板77と接合される面の酸化膜をウエットエッチングし、残った酸化膜74上に、接続電極部75としてCr層、Pt層、Au層を、この順にそれぞれ厚さが45nm、75nm、200nmとなるよう積層した。試料中央部にSOI基板のデバイス層からなる8μm厚みのダイヤフラム76を深掘り反応性イオンエッチング(Deep RIE)で形成した。このダイヤフラムは、封止空間の内圧を測定し、気密封止性能を評価するためのものである。Deep RIEマスクには、フォトレジストを用いたが、Deep RIEの前に同じフォトレジストマスクを用いて酸化膜をウェットエッチングしておいた。また、ハンドル層を貫通するDeep RIEの後、埋め込み酸化膜(1μm厚)をウェットエッチングで除去した。
【0051】
第2の基板77については、LTCC基板78の配線79上の接続電極部80としてCr層、Pt層、Au層を、この順にそれぞれ50nm、50nm、100nmとなるよう積層した。第2の基板77上にフォトレジスト(PMER、東京応化工業(株)製)を30μm厚みで形成した後、フォトリソグラフィー技術で開口径50μmの穴を配線79の110μm径のビア上の位置に露光・現像して形成した。このレジスト開口部にサブミクロン金粒子スラリーを流し込み室温・減圧下で乾燥した上で、オーブン中で90℃60分の加熱処理を行なって仮焼結させた。硫酸過水(H2SO4+H22)を用いてレジストを剥離し、超音波洗浄・乾燥を行なって多孔質金属81を形成した。
【0052】
用いたSi基板72、LTCC基板78の寸法は100mmφであり、厚みはそれぞれ0.3mmと0.35mmである。LTCC基板は陽極接合できるように3nmRa程度に鏡面研磨した。これらの100mmφ基板には、20mm角の試料が9個配置されており、更に20mm角の試料中に5mm角の試料が9個入っている。20mm角のSi基板とLTCC基板を接合させると、各々の5mm角試料で、SiとLTCC基板の配線が10個の多孔質金属体82を介して1本のデイジー・チェーン(Daisy Chain)を形成し、LTCC基板の裏面に形成されている電極間の抵抗値を測定することで電気接合が正常に行なえたかどうか判断できる。また陽極接合できているかの判断は、Si基板に形成されているダイヤフラム76が、陽極接合後大気中に取り出した際、正常に気密封止できていれば、圧力差から凹むことから行うことができる。接合試験に入る前にSi基板72、LTCC基板78をダイシングして、寸法20mm角に調整した。
【0053】
第1の基板71と第2の基板77を位置決めした上で陽極接合装置にセットし、6×10-3mbar程度に減圧した上で230℃まで昇温し、90個の多孔質金属81に対して7Nで押圧した(図9(B))。引き続き400℃まで昇温し、800Vの直流電圧を30分間第1の基板71と第2の基板77との間に印加した。
【0054】
比較例1:
第2の基板77のLTCC基板78の配線79上に接続電極部80を形成せずに直接配線79上に多孔質金属体82を形成したこと以外は実施例1と同様にして配線の接続を実施した。
【0055】
20mm角2基板の接合試験において、実施例1及び比較例1で歩留まり100%で電気的接続と気密封止接合の確認がとれた。接合試料を第1の基板71と第2の基板77に分解したところ、実施例1ではLTCC基板78の配線79上の接続電極部80に多孔質金属体82の一部分が付いた状態で多孔質金属体82が内部破壊していた。また、接合試料の断面観察を行なったところ、LTCC基板78の配線79上の接続電極部80と多孔質金属体82は連続した隙間のない接合体となっていることが確認できた。比較例ではLTCC基板78の配線79上に多孔質金属体82が押し付けられた凹んだ跡はあるものの多孔質金属体82の付着は観察されず、断面観察においても配線79と多孔質金属体82との間には隙間が観察された。接続電極80がなくても圧接力で電気的な接続がとれるが、金属間の拡散接合を形成したほうが、より信頼性の高い接続を形成できる。
【0056】
本発明の実施形態及び実施例で説明したように、陽極接合する際の温度にて、第1の基板と第2の基板の間に電圧を印加することにより、基板同士を陽極接合することができると同時に金属粒子同士及び基板の接合面(接続電極部)と金属粒子との間に互いに点接触した近接状態を形成させ、圧接力と金属間の拡散接合によって電気接続を形成した多孔質金属体を形成することにより安定した電気的な接続を行うことができる。本発明によれば、変形代の大きい多孔質金属体を接続バンプに用いているため、接続バンプの高さを厳密に制御する必要がなく、また、MEMSが形成された基板への加工追加を行う必要もない。本発明の配線接続方法は、汎用性の高い、信頼性のあるウェハレベルでの気密パッケージングに極めて有用である。
【符号の説明】
【0057】
1,2:多孔質金属体
3,4,5:デバイス
15,20,30:第1の基板(LTCC基板またはガラス基板)
11,26:Si基板
12,17,22,27,32,37,61,66:接続電極部
13,23,33,44,55,56,62:凹陥部
14,24,34,53,54,63:多孔質金属
10,25,35:第2の基板(MEMS基板)
16,21:絶縁材
38,51,52,67:配線接続部
31,36,42,43:電極部
35a,41a:可動部
35b,41b::固定部
40:MEMS基板
41:MEMS構造体
46:第1の下側電極部
47:第2の下側電極部
48:第1の上側電極部
49:第2の上側電極部
50:収容部
60:LTCC基板
65A,65B,65C:チップ
71:第1の基板
72:Si基板
73:凹陥部
74:酸化膜
75,80:接続電極部
76:ダイヤフラム
77:第2の基板
78:LTCC基板
79:配線
101,102,103,104:基板
101a,102a,104a:金属層
103a:貫通配線
102c,103b:凹み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板とが陽極接合され、かつ前記第1の基板と前記第2の基板とが多孔質金属を介して電気的に接続されたデバイス。
【請求項2】
前記多孔質金属が、金、銀、白金及びパラジウムから選択される1種以上の金属からなる請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記多孔質金属が、金、または金を主要成分とする金属混合物である請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記多孔質金属が、純度99.9質量%以上で、平均粒径0.005μm〜1.0μmの金属粉からなる多孔質体である請求項1〜3のいずれかに記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1の基板及び第2の基板のいずれか一方が、ガラス基板またはLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)基板である請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方に貫通配線または内部配線が形成されている請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記LTCC基板が金系合金からなる貫通配線または内部配線を有する請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1の基板及び第2の基板の少なくとも一方が、電子回路及び/またはMEMS(Micro Electronic Mechanical Systems)が形成されているチップである請求項5〜7のいずれかに記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1の基板と第2の基板とで画成された内部空間が気密封止されている請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
第1の基板の接続電極部及び第2の基板の接続電極部の少なくとも一方に多孔質金属からなるバンプを形成し、前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とが前記バンプを挟んで対向するように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせた後、前記第1基板と前記第2基板とを陽極接合すると同時に多孔質金属を介して前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とを電気的に接続することを特徴とする配線接続方法。
【請求項11】
前記バンプを設ける前の段階で、前記第1の基板と前記第2の基板とを重ね合わせた状態で前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とが接触しない空間部を有しており、前記バンプを前記第1基板または前記第2基板のいずれかから突出した状態で設ける請求項10に記載の配線接続方法。
【請求項12】
第1の基板の接続電極部及び第2の基板の接続電極部の少なくとも一方に多孔質金属からなるバンプを形成し、80〜300℃の温度で焼成し、前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とが前記バンプを挟んで対向するように前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせた後、次いで200〜500℃の温度に昇温し、その温度を維持しながら前記第1基板と前記第2基板に直流電圧を印加することにより、前記第1基板と前記第2基板とを陽極接合すると同時に多孔質金属を介して前記第1基板の接続電極部と前記第2基板の接続電極部とを電気的に接続する請求項10または11に記載の配線接続方法。
【請求項13】
前記第1基板の接続電極部及び第2基板の接続電極部の電気的接点となる表面に、金薄膜を最表面にもつ薄膜構造体を設け、その少なくとも一方に多孔質金属からなるバンプを形成する請求項10〜12のいずれかに記載の配線接続方法。
【請求項14】
前記多孔質金属が、金、銀、白金及びパラジウムから選択される1種以上の金属からなる請求項10に記載の配線接続方法。
【請求項15】
前記多孔質金属が、金、または金を主要成分とする金属混合物である請求項14に記載の配線接続方法。
【請求項16】
前記多孔質金属が、純度99.9質量%以上で、平均粒径0.005μm〜1.0μmの金属粉からなる多孔質体である請求項10〜14のいずれかに記載の配線接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−49298(P2012−49298A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189433(P2010−189433)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(390010216)ニッコー株式会社 (49)
【出願人】(509352945)田中貴金属工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】