説明

多層プリント基板

【課題】
検査プローブがテストパッドに刺さってもテストパットと内部電極は短絡を起こさない多層プリント基板を提供する。
【解決手段】
電子部品16を搭載する多層プリント基板の1層目の表面に、検査プローブによって多層プリント基板の内部に形成した電気回路や実装した電子部品16の特性を測定するためのテストパッド204、205を形成する。そして、テストパッド204、205の真下で2層目の樹脂層の表面に非電極領域(電極を形成しない領域)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査プローブ用のテストパッドを有する多層プリント基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路基板を検査プローブによって検査する際、電子回路基板のテストパッドがプローブによって押しつぶされ、変形または穴が開くなどの破損を起こすことが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−186437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は、検査プローブによってテストパッドが押しつぶされ変形または穴が開くなど破損が起こっても、テストパッドの破損部分に実装部品を接続しなければ特に問題は発生しなかった(特許文献1)。しかし、プリント基板が従来より多層化、薄層化されると、検査プローブによって破損したテストパッドの電極とプリント基板の内部電極が接触して短絡を起こす問題が発生するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層とを積層して成る多層プリント基板において、第1の樹脂層の表面には検査プローブを接触させる検査電極部が形成され、第1の樹脂層と第2の樹脂層の間には、内部電極と、内部電極が形成されていない非電極領域が形成され、非電極領域は、第1の樹脂層に対して検査電極部と対向する位置に形成されていることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の多層プリント基板において、非電極領域の大きさは、検査電極部の大きさと同じ、またはそれより大きいことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の多層プリント基板において、内部電極はグランド電極であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、検査プローブにより変形したテストパッドが内部電極と短絡することが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1を参照して本発明の実施形態における多層プリント基板を説明する。図1は本発明の実施形態の多層プリント基板の断面構造を示す図である。本実施形態の多層プリント基板1は、電極パターンが形成されている複数の樹脂層11、12、13、14を積層して構成される。
多層プリント基板1の表面には表面電極15が形成されている。表面電極15には電子部品16が実装されている。多層プリント基板1の内部には内部電極17、18、19が形成され、表面電極15と内部電極18はスルーホール20、21を介して接続されている。
【0007】
表面電極15の詳細を図2に示す。表面電極15は第1〜第4の電極パターン15A〜15Dを含み、これら各電極パターンはそれぞれ、電子部品16を実装するための実装パッド202、203と、検査プローブを当てるテストパッド204、205と、表面電極と内部電極を接続するスルーホール電極パッド206、207と、それぞれのパッド同士を接続する配線部208、209、210、211から成る。
【0008】
実装パッド202、203には、めっき処理がなされ、その上に半田が塗布される。半田が塗布された実装パッド202、203に電子部品16の端子部が搭載され、リフロー炉で熱処理することによって電子部品16は多層プリント基板1に固定される。
【0009】
テストパッド204、205は、多層プリント基板1に形成された電気回路の特性を測定するため、または、多層プリント基板1に実装した電子部品16の特性を測定するために使用される。テストパッド204、205に検査プローブに接触して、多層プリント基板1の良品、不良品の選別のための検査が行われる。また、多層プリント基板1に形成された電気回路の特性調整を行う際も、検査プローブがテストパッド204、205に強く押し付けられる。
【0010】
樹脂層11には、スルーホール電極パッド206、207の中心部に、内面が導体で覆われたスルーホールが形成されており、スルーホール電極パッド206、207はスルーホール20と電気的に接続される。
【0011】
図3により、多層プリント基板1の樹脂層12の表面に形成されている電極パターン17の詳細を説明する。電極パターン17には、グランド電極301が形成されている。このグランド電極301は、表面に実装した電子部品16や外部からの電磁波の影響が樹脂層13、14の電極パターン18、19により形成される電気回路に影響を及ぼさないようにするためのものである。グランド電極301は電子部品16や外部からの電磁波をできるだけ遮蔽するため、2層目の樹脂層12のできるだけ全面を覆うように形成される。
【0012】
多層プリント基板1の2層目の樹脂層12には、非電極領域(電極を形成しない領域)302、303が形成されている。この非電極領域302、303は、後述するようにテストパッド204または205に検査プローブが刺さり、穴が開くことによってテストパッド204または205とグランド電極301が短略することを防止するために設けられている。そのため、非電極領域302、303は1層目のテストパッド204、205と対向する位置、つまり、テストパッド204、205直下に形成される。非電極領域302、303は、テストパッドに穴が開いても短絡が生じないように、テストパッドと同じ大きさまたはそれより大きな範囲に形成される。
【0013】
多層プリント基板1の2層目、すなわち樹脂層12の表面には、表面電極15と内部電極18を接続するスルーホール20、21を接続するためのスルーホールパッド304、305が形成されている。樹脂層13には、スルーホールパッド304、305の中心部に、内面が導体で覆われたスルーホール21が形成されている。表面電極15と樹脂層12の表面のグランド電極301とは電気的に接続しないので、スルーホールパッド304、305の周りは非電極部304a、305aで囲まれている。また、スルーホールパッド304、305は、図1に示すスルーホール20と21の位置が多少ずれても、スルーホール20と21の電気的接続を確保するという機能も有している。
【0014】
図4を参照して、本発明の実施形態における多層プリント基板1による作用効果を説明する。検査プローブ401をテストパッド204に接触させたとき、検査プローブ401がテストパッド204を突き抜ける場合がある。このとき、図4に示すように、テストパッド204の中央部が多層プリント基板1の内部に向かって変形して、第2の樹脂層12の表面まで達しても、その表面領域には非電極領域302が形成されているので、変形したテストパッド204がグランド電極301と接触することはなく、テストパッド204とグランド電極301の短絡を防止することができる。したがって、テストパッド204に穴が開いても良品、不良品の選別をすることができる。あるいは、検査プローブ401を使用した多層プリント基板1の電気的性能の調整や不良品の測定作業を続行することができる。
【0015】
次に図5を使用して、非電極領域302を形成しなかった従来例について説明する。検査プローブ401をテストパッド204に押圧して接触させたとき、図5に示すように、検査プローブ401によりテストプパッド204に穴が開いたとする。この場合、テストパッド204は多層プリント基板の内部に向かって変形し、テストパッド204がグランド電極301に接触して短絡する。このような短絡が発生すると、良品、不良品の検査ができなくなり、検査プローブ401を使用した多層プリント基板に形成された電気回路の調整や不良品の再測定の作業が中断され、それまでの作業が無駄になってしまう。
【0016】
このような多層プリント基板によれば次のような作用効果が得られる。
検査プローブがテストパッドに刺さっても内部電極と短絡を起こさない。したがって、テストパッドと内部電極の短絡による検査や特性の調整のための作業の無駄がなくなる。
【0017】
特許請求の範囲の要素と実施形態との対応関係を説明する。
本願発明における第1の樹脂層は樹脂層11に、第2の樹脂層は樹脂層12にそれぞれ対応する。検査電極部はテストパッド204、205に、内部電極はグランド電極301に対応する。非電極領域は非電極領域302、303に対応する。
【0018】
以上説明した多層プリント基板は、一例を示すものであり、本発明は4層のプリント基板に限定されない。また、各層の電極パターンの形成も実施の形態に限定されない。即ち、検査プローブにより変形したテストパッドが下層の電極と接触しないように下層電極パターンに非電極領域を設けるものであれば、どのような形態でもよい。よって、本願発明の実施形態では、第2の樹脂層の表面に形成される内部電極はグランド電極であったが、インダクタやキャパシタを構成する電極や、実装した電子部品や多層プリント基板内に形成した素子などを電気的に接続させるための電極でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における多層プリント基板の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における多層プリント基板の1層目に形成された電極パターン例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態における多層プリント基板の2層目に形成された電極パターン例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態における多層プリント基板において、検査プローブがテストパッドを突き抜けた状態を示す図である。
【図5】従来の多層プリント基板において、検査プローブがテストパッドを突き抜けた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 多層プリント基板
11、12、13、14 樹脂層
15 表面電極
16 電子部品
17、18、19 内部電極
20、21 スルーホール
204、205 テストパッド
301 グランド電極
302、303 非電極領域
401 検査プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の樹脂層と第2の樹脂層とを積層して成る多層プリント基板において、
前記第1の樹脂層の表面には検査プローブを接触させる検査電極部が形成され、
前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層の間には、内部電極と、内部電極が形成されていない非電極領域が形成され、
前記非電極領域は、前記第1の樹脂層に対して前記検査電極部と対向する位置に形成されていることを特徴とする多層プリント基板。
【請求項2】
請求項1に記載の多層プリント基板において、
前記非電極領域の大きさは、前記検査電極部の大きさと同じ、またはそれより大きいことを特徴とする多層プリント基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多層プリント基板において、
前記内部電極はグランド電極であることを特徴とする多層プリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−49634(P2006−49634A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229600(P2004−229600)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】