説明

多層プリント配線板の製造方法

【課題】めっきの密着力に優れ、信頼性に優れる多層プリント配線板を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】第1の絶縁層1、第1の導体層2a,2b,2c、脂環式オレフィン重合体を含有する第2の絶縁層3、及び、第2の導体層4a,4b,4c、がこの順に積層され、第1と第2の導体層を電気的に接続するビアホール5を有する多層プリント配線板の製造方法であって、第2の絶縁層に、ビアホール用開口を形成する工程、ビアホール用開口を含む第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液と有機溶剤とをそれぞれ接触させる工程、酸化剤水溶液を接触させる工程、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面を、中和還元処理する工程、中和還元処理後に、アルカリ水溶液を接触させる工程、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、めっき法により導体薄膜を形成する工程を含む、多層プリント配線板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっきの密着力に優れ、かつ、信頼性に優れた多層プリント配線板を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、多機能化に伴って、回路基板の高密度化が求められ、多層プリント配線板のように、配線を多層化することが行われている。
多層プリント配線板は、例えば、最外層に導体層が形成された内層基板の表面に、絶縁層を積層し、前記絶縁層の上に導体層を形成することによって得られる。また、必要に応じて、絶縁層と導体層とは、交互に数層積層され、さらなる多層化が図られる。
【0003】
多層プリント配線板の製造においては、導体層間を電気的に接続するために、通常、レーザー加工等によりビアホール用開口を形成した後、めっき処理等により導体層やビアホールが形成される。
【0004】
また、ビアホール用開口を形成した後、そのままの状態でめっき処理等を行うと、開口内部に存在する樹脂残渣(スミア)の影響で、内層の導体層と、めっき処理で形成された導体層との密着が不十分で導通不良となるおそれがある。このため、開口内の樹脂残渣を除去する処理(デスミア処理)が通常行われる。デスミア処理としては、過マンガン塩水溶液を用いる方法が知られている。
従来、このビアホール用開口の形成工程からめっき処理工程までの間に、層間密着性の向上を図ることを目的として種々の工夫がなされてきた。
【0005】
例えば、特許文献1には、ビアホール用開口の形成後、アルカリ水溶液を用いる絶縁層表面の膨潤処理、過マンガン酸カリウムのアルカリ水溶液を用いる粗化処理、硫酸ヒドロキシアミン水溶液を用いる過マンガン酸塩の中和除去処理を行った後、めっき処理を行う、多層プリント配線板の製造方法が記載されている。
特許文献2には、ビアホール用開口の形成後、酸化剤水溶液を用いて、絶縁層表面を粗化する工程、アルカリ溶液等を用いて、絶縁層表面に形成された脆弱層を除去する工程の後、めっき処理を行う、多層プリント配線板の製造方法が記載されている。
特許文献3には、ビアホール用開口の形成後、酸化剤水溶液を用いて、絶縁層表面を粗化する工程、アルカリ溶液等を用いて、絶縁層表層に残存している無機充填剤を除去する工程の後、めっき処理を行う、多層プリント配線板の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−173339号公報
【特許文献2】特開平11−261220号公報
【特許文献3】特開2007−299875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微細配線を電気絶縁層上に形成させる際、絶縁層の表面粗度が配線形成性や信頼性に大きく影響する。例えば、絶縁層の表面の粗度が大きいとエッチング不良でパターン間に導体が残ったり、導体に浮きや剥れが発生する。さらにめっき触媒残渣の影響により絶縁不良となりやすい。逆に絶縁層の表面の粗度が小さい場合はめっきの密着性が小さくなり、導体の剥離が発生するなど信頼性に影響を及ぼす。そのため、特に高密度パターンでは、低粗度でめっきの密着性が良好であることが重要となる。
【0008】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1〜3に記載の方法を用いた場合、絶縁層の表面の粗度が小さい条件を採用すると、十分なめっき密着性が得られなかったり、デスミア処理効果を得ることが困難であった。また、優れたデスミア処理効果が得られる条件を採用すると、絶縁層の表面粗度が大きくなりすぎたり、めっき密着性が低下することがあった。
本発明は、上記した従来技術に鑑みてなされたものであり、めっきの密着力に優れ、かつ、信頼性に優れる多層プリント配線板を効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく、第1の絶縁層、第1の導体層、第2の絶縁層及び第2の導体層がこの順に積層された構造を有し、前記第2の絶縁層中に形成された、前記第1の導体層と第2の導体層とを電気的に接続するビアホールを有する多層プリント配線板の製造方法について鋭意検討した。
その結果、第2の絶縁層を、脂環式オレフィン重合体を含有する絶縁層とし、かつ、ビアホール用開口を形成後、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面にアルカリ水溶液を接触させる工程を、酸化剤水溶液を接触させる工程の前後に設けることで、第2の絶縁層の表面粗度を大きくすることなく、ビアホール用開口内部の樹脂残渣を除去することができ、結果として、第2の導体層と第2の絶縁層間の密着性に優れ、かつ、第1の導体層と第2の導体層間の導電性に優れる多層プリント配線板を効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、(1)〜(4)の多層プリント配線板の製造方法が提供される。
(1)第1の絶縁層、第1の導体層、脂環式オレフィン重合体を含有する第2の絶縁層、及び、第2の導体層がこの順に積層された構造と、前記第2の絶縁層中に形成された、前記第1の導体層と第2の導体層とを電気的に接続するビアホールと、を有する多層プリント配線板の製造方法であって、前記第2の絶縁層に、ビアホール用開口を形成する工程(I)、前記ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液と有機溶剤とをそれぞれ接触させる工程(II)、前記アルカリ水溶液と有機溶剤とを接触させた、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、酸化剤水溶液を接触させる工程(III)、前記酸化剤水溶液を接触させた、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面を、中和還元処理する工程(IV)、前記中和還元処理後の、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液を接触させる工程(V)、並びに、工程(V)の後、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、めっき法により導体薄膜を形成する工程(VI)を含む、多層プリント配線板の製造方法。
(2)工程(II)及び工程(V)で用いるアルカリ水溶液が、それぞれ、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液である、(1)に記載の多層プリント配線板の製造方法。
(3)工程(II)及び工程(V)で用いるアルカリ水溶液の濃度が、それぞれ、0.15モル/L以上である、(2)に記載の多層プリント配線板の製造方法。
(4)工程(II)及び工程(V)で用いるアルカリ水溶液の温度が、それぞれ、20〜90℃である、(1)〜(3)のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2の絶縁層の表面粗度を大きくすることなく、ビアホール用開口内部の樹脂残渣を充分に除去することができ、第2の導体層と第2の絶縁層間の密着性に優れ、かつ、第1の導体層と第2の導体層間の導電性に優れた多層プリント配線板を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の製造方法で得られる多層プリント配線板の一例の断面図である。
【図2】本発明の製造方法の概要を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、第1の絶縁層、第1の導体層、脂環式オレフィン重合体を含有する第2の絶縁層、及び、第2の導体層がこの順に積層された構造と、前記第2の絶縁層中に形成された、前記第1の導体層と第2の導体層とを電気的に接続するビアホールと、を有する多層プリント配線板の製造方法であって、下記の工程(I)〜(VI)を含む多層プリント配線板の製造方法である。
・工程(I):第2の絶縁層に、ビアホール用開口を形成する工程
・工程(II):前記ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液と有機溶剤とをそれぞれ接触させる工程
・工程(III):前記アルカリ水溶液と有機溶剤とを接触させた、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、酸化剤水溶液を接触させる工程
・工程(IV):前記酸化剤水溶液を接触させた、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面を、中和還元処理する工程
・工程(V):前記中和還元処理後の、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液を接触させる工程
・工程(VI):工程(V)の後、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、めっき法により導体薄膜を形成する工程
【0014】
〔多層プリント配線板〕
本発明の製造方法により得られる多層プリント配線板は、第1の絶縁層、第1の導体層、脂環式オレフィン重合体を含有する第2の絶縁層、及び、第2の導体層がこの順に積層された構造と、前記第2の絶縁層中に形成された、前記第1の導体層と第2の導体層とを電気的に接続するビアホールと、を有する多層プリント配線板である。
【0015】
本発明の製造方法により得られる多層プリント配線板の一例(断面図)を図1に示す。
図1に示す多層プリント配線板(以下、多層プリント配線板Aという。)は、第1の絶縁層(1)、第1の導体層(2)、第2の絶縁層(3)、及び第2の導体層(4)が、この順に積層された構造と、第2の絶縁層(3)中に形成された、第1の導体層(2)と第2の導体層(4)とを電気的に接続するビアホール(5)とを有する。
【0016】
本発明の製造方法により得られる多層プリント配線板は、図1に示す多層プリント配線板Aに限定されない。本発明の多層プリント配線板は、少なくとも、上記の通りの層構成を有しておればよく、例えば、第1の絶縁層の両面に上記の通りの層構成を有していてもよい。
【0017】
〔多層プリント配線板の製造方法〕
本発明の多層プリント配線板の製造方法の概要を図2に示す。本発明は、図2に示すように、フローチャート(1)又はフローチャート(2)の手順に従って実施される。
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0018】
1.積層体
本発明の多層プリント配線板の製造方法は、第1の絶縁層、第1の導体層、及び脂環式オレフィン重合体を含有する第2の絶縁層が、この順で積層され、表面が前記第2の絶縁層である構造を有する積層体を出発材料として用いる。
【0019】
第1の絶縁層は、電気絶縁性を有する層であり、その上に上記の層構造を形成できるものであれば、第1の絶縁層の材料や製造方法は特に制限されない。例えば、多層プリント配線板の製造に用いられる公知の絶縁基板を第1の絶縁層とすることができる。
【0020】
絶縁基板としては、公知の電気絶縁材料(例えば、脂環式オレフィン重合体、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、全芳香族ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ガラス等)を含有する硬化性樹脂組成物を硬化することで得られる基板が挙げられる。絶縁基板の厚みは、通常、10μmから10mm、好ましくは20μmから5mm、より好ましくは30μmから2mmである。
【0021】
第1の絶縁層と第1の導体層とを含む積層体は、従来公知のプリント配線板の製造方法と同様にして得ることができる。例えば、絶縁基板と銅箔とを有する銅張積層板に対してエッチング処理をすることで、第1の絶縁層と第1の導体層とを含む積層体が得られる。
【0022】
第1の絶縁層と第1の導体層とを含む積層体を得た後、第1の導体層と第2の絶縁層との間の密着性を向上させるために、第1の導体層の表面には、公知の方法により前処理を施すことが好ましい。前処理の方法としては、導体層を構成する導電体が銅のときは、導体層表面に強アルカリ酸化剤水溶液を接触させて酸化銅の層を形成する酸化処理方法;導体層表面を酸化処理した後に、水素化ホウ素ナトリウム、ホルマリン等で還元処理する方法;めっき法により、導体層表面に金属皮膜を析出させる方法;導体層表面に有機酸を接触させて、銅の粒界を溶出させる方法;及び導体層表面にチオール化合物やシラン化合物等によりプライマー層を形成する方法;等が挙げられる。
【0023】
次いで、第2の絶縁層を第1の導体層上に形成する。
第2の絶縁層を形成する方法としては、例えば、脂環式オレフィン重合体を含有する硬化性樹脂組成物を調製し、これを用いて、未硬化又は半硬化の成形体、好ましくは、シート状又はフィルム状の成形体を得た後、このシート状又はフィルム状の成形体を第1の導体層上に加熱圧着し、次いで、この成形体を硬化する方法が挙げられる。
【0024】
前記硬化性樹脂組成物は、脂環式オレフィン重合体及び硬化剤を少なくとも含むものである。前記硬化性樹脂組成物中における脂環式オレフィン重合体の含有量は、固形分として、通常1重量%以上、好ましくは2重量%〜90重量%、より好ましくは2.5重量%〜80重量%である。
脂環式オレフィン重合体は1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本明細書において脂環式オレフィン重合体とは、脂環式構造を有するオレフィン(脂環式オレフィン)単量体単位、又は当該単量体単位と同視しうる単量体単位を含んでなる重合体をいう。前記脂環式構造としては、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造等が挙げられる。なかでも、第2の絶縁層の機械的強度及び耐熱性が向上することから、シクロアルカン構造が好ましい。また、脂環式構造としては、単環、多環、縮合多環、橋架け環や、これらを組み合わせてなる多環等が挙げられる。
脂環式構造を構成する炭素原子数は、特に限定されない。かかる炭素原子数は、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。脂環式構造を構成する炭素原子数がこの範囲にあることで、成形性に優れる樹脂組成物が得られ、また、第2の絶縁層の機械的強度及び耐熱性が向上する。
【0026】
脂環式オレフィン重合体は、極性基を有するものが好ましい。極性基を有する脂環式オレフィン重合体を用いることで、硬化性樹脂組成物が容易に得られる。極性基は、特に限定されず、1価の基であっても2価の基であってもよい。例えば、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシル基、アルコキシル基、エポキシ基、グリシジル基、オキシカルボニル基、カルボニル基、アミノ基、エステル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸基、リン酸基、オキソ基、ホルミル基等が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、及びフェノール性水酸基が好ましい。
【0027】
脂環式オレフィン重合体は、1種の極性基を有するものであってもよく、あるいは、2種以上の極性基を有するものであってもよい。また、極性基は、重合体の主鎖を構成する原子に直接結合していてもよく、あるいは、メチレン基、オキシ基、オキシカルボニルオキシアルキレン基、フェニレン基等の2価の基を介して結合していてもよい。
脂環式オレフィン重合体中の、極性基を有する繰り返し単位の割合は、特に制限されない。かかる繰り返し単位の割合は、全繰り返し単位数を基準として、通常5〜60モル%、好ましくは10〜50モル%である。
【0028】
脂環式オレフィン重合体は、(1)極性基を有する脂環式オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて、重合する方法、(2)極性基を有しない脂環式オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合する方法、(3)極性基を有する芳香族オレフィンを、必要に応じて他の単量体を加えて重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(4)極性基を有しない芳香族オレフィンを、極性基を有する単量体と共重合し、これにより得られる重合体の芳香環部分を水素化する方法、(5)極性基を有しない脂環式オレフィン重合体に極性基を有する化合物を変性反応により導入する方法、(6)前述の(1)〜(5)のようにして得られる極性基(例えばカルボン酸エステル基等)を有する脂環式オレフィン重合体の極性基を、例えば加水分解すること等により他の極性基(例えばカルボキシル基)に変換する方法等により得ることができる。これらの中でも、前述の(1)又は(2)の方法によって得られる重合体が好適である。
【0029】
極性基を有する脂環式オレフィンとしては、5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシメチル−5−ヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−メチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、9−カルボキシメチル−9−ヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−エキソ−6−エンド−ジヒドロキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−エキソ−10−エンド−ジヒドロキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、等のカルボキシル基を有する脂環式オレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン−9,10−ジカルボン酸無水物、ヘキサシクロ[10.2.1.13,10.15,8.02,11.04,9]ヘプタデカ−6−エン−13,14−ジカルボン酸無水物等のカルボン酸無水物基を有する脂環式オレフィン;9−メチル−9−メトキシカルボニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン等のカルボン酸エステル基を有する脂環式オレフィン;(5−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、9−(4−ヒドロキシフェニル)テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ−4−エン、N−(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド等のフェノール性水酸基を有する脂環式オレフィン;等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
極性基を有しない脂環式オレフィンとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、9−メチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−エチリデン−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−ビニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−プロペニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、9−フェニル−テトラシクロ〔6.2.1.13,6.02,7〕ドデカ−4−エン、テトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン、シクロペンテン、シクロペンタジエン等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
極性基を有する芳香族オレフィンとしては、p−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
極性基を有しない芳香族オレフィンとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
極性基を有する脂環式オレフィン以外の、極性基を有する単量体としては、極性基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。かかるエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸化合物;無水マレイン酸、ブテニル無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物;等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
脂環式オレフィン以外の、極性基を有しない単量体としては、極性基を有しないエチレン性不飽和化合物が挙げられる。かかるエチレン性不飽和化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
脂環式オレフィン重合体中の脂環式構造を含む繰り返し単位の割合は、特に限定されないが、通常30〜100重量%、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは70〜100重量%である。脂環式構造を含む繰り返し単位の割合がこの範囲にあることで、第2の絶縁層の耐熱性が向上する。脂環式オレフィン以外の単量体の種類は特に限定されず、目的に合わせて適宜選択することができる。
【0035】
脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算値で、通常、500〜1,000,000、好ましくは、1,000〜500,000、より好ましくは、5,000〜300,000の範囲である。
脂環式オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算値で、通常、500〜1,000,000、好ましくは、1,000〜500,000、より好ましくは、5,000〜300,000の範囲である。
また、脂環式オレフィン重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、通常、1〜7、好ましくは、1.5〜4、より好ましくは、2〜3の範囲である。
脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn),重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)がこの範囲であることで、シート状やフィルム状に成形する際の作業性に優れるとともに、第2の絶縁層の機械的強度が向上する。脂環式オレフィン重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、テトロヒドロフラン溶媒を用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
【0036】
脂環式オレフィン重合体は、上記の単量体を開環重合又は付加重合させることにより製造することができる。
【0037】
開環重合により脂環式オレフィン重合体を製造する場合、重合触媒としては、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができる。メタセシス重合触媒としては、Mo、W、Nb、Ta、Ru等を含有する遷移金属化合物が挙げられる。これらの中でも、重合活性に優れることから、Mo、W、又はRuを含有する遷移金属化合物が好ましい。かかる遷移金属化合物としては、(1)ハロゲン基、イミド基、アルコキシ基、アリロキシ基又はカルボニル基を配位子として有する、モリブデン又はタングステン化合物や、(2)ルテニウムを中心金属とするカルベン錯体が挙げられる。
【0038】
上記(1)のメタセシス重合触媒としては、MoCl、MoBr等のハロゲン化モリブデン化合物やWCl、WOCl、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド・ジエチルエーテル等のハロゲン化タングステン化合物が挙げられる。
また、これらの重合触媒を用いる際は、有機金属化合物を助触媒として用いることができる。かかる有機金属化合物としては、周期表第1族、2族、12族、13族又は14族の有機金属化合物が挙げられる。なかでも、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が好ましく、有機リチウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機スズ化合物が特に好ましい。
【0039】
有機リチウム化合物としては、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウム等が挙げられる。
有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリド等が挙げられる。
有機亜鉛化合物としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド等が挙げられる。また、これらの有機アルミニウム化合物と水との反応によって得られるアルミノキサン化合物も用いることができる。
有機スズ化合物としては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
これらの有機金属化合物の使用量は、用いる有機金属化合物によって異なるが、メタセシス重合触媒の中心金属に対して、モル比で、通常、0.1〜10,000倍、好ましくは0.2〜5,000倍、より好ましくは0.5〜2,000倍である。
【0040】
上記(2)のメタセシス重合触媒としては、(1,3−ジメシチル−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、トリシクロヘキシルホスフィン−〔1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジブロモイミダゾール−2−イリデン〕−〔ベンジリデン〕ルテニウムジクロリド、4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。
【0041】
メタセシス重合触媒の使用量は、重合に用いる単量体に対して、(メタセシス重合触媒中の遷移金属:単量体)のモル比で、通常1:100〜1:2,000,000の範囲であり、好ましくは1:200〜1:1,000,000の範囲である。触媒量が多すぎると触媒除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。
【0042】
メタセシス重合反応は、通常、有機溶媒中で行なわれる。用いる有機溶媒は、重合に影響しないものであれば、特に限定されない。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の含ハロゲン脂肪族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の含ハロゲン芳香族炭化水素系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素系溶媒;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン等のエ−テル系溶媒;アニソール、フェネトール等の芳香族エーテル系溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、工業的に汎用されている、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶剤、芳香族エーテル系溶媒が好ましい。
【0043】
有機溶媒の使用量は、通常、重合反応溶液中の単量体の濃度が、1〜50重量%となる量であり、好ましくは、2〜45重量%となる量であり、より好ましくは、3〜40重量%となる量である。単量体の濃度が1重量%未満の場合は生産性が悪くなるおそれがあり、50重量%を超えると、重合後の溶液粘度が高すぎて、その後の水素添加処理が困難になるおそれがある。
【0044】
重合温度は特に制限はない。通常、−30〜200℃、好ましくは0〜180℃である。また、重合時間は特に制限はない。通常、1分間〜100時間である。
【0045】
重合時に、ビニル化合物又はジエン化合物を適当量添加することで、脂環式オレフィン重合体の分子量を調整することができる。
ビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されない。例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物、アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物等が挙げられる。
ジエン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン、又は、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエンが挙げられる。
ビニル化合物又はジエン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて、重合に用いる単量体に対して、0.1〜10モル%の間で任意に選択することができる。
【0046】
付加重合により脂環式オレフィン重合体を製造する場合、重合触媒としては、チタン、ジルコニウム又はバナジウムを含有する遷移金属化合物を用いることができる。これらの重合触媒は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合触媒の使用量は、重合触媒中の金属化合物:重合に用いる単量体のモル比で、通常、1:100〜1:2,000,000の範囲である。
また、これらの重合触媒を用いる際は、有機アルミニウム化合物を助触媒として用いることができる。かかる有機アルミニウム化合物としては、先に開環重合の中で、例示したものを用いることができる。
【0047】
開環重合で得られた開環重合体は、さらに水素添加して、開環重合体水素添加物とすることが好ましい。
水素添加反応は、通常、公知の水素添加触媒を用いて行うことができる。
水素添加触媒としては、チーグラー系触媒やルテニウム錯体触媒等の均一系触媒;ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタン等の担体に担持させた不均一系触媒;を用いることができる。また、上述したメタセシス重合触媒をそのまま、水素添加触媒として用いることもできる。
【0048】
水素添加の反応は、通常、有機溶媒中で行うことができる。有機溶媒は生成する水素添加物の溶解性により適宜選択することができ、通常は、重合反応に用いた有機溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。有機溶媒としては、芳香族炭化水素系溶媒や脂肪族炭化水素系溶媒、脂環族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族エーテル系溶媒が好ましく、芳香族エーテル系溶媒がより好ましい。
【0049】
水素添加反応の条件は、使用する水素添加触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常、−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなるおそれがあり、250℃を超えると副反応が起こりやすくなるおそれがある。水素圧力は、通常、0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素化速度が遅くなるおそれがあり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる場合がある。
【0050】
反応時間は、目的の水素添加率に合わせて適宜決定することができる。通常は、0.1〜50時間の範囲である。
得られる開環重合体水素添加物の水素添加率は、重合体の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。
【0051】
水素添加反応を行った後、触媒を除去する処理を行ってもよい。触媒の除去方法は特に制限されず、遠心分離、濾過等の方法が挙げられる。さらに、水やアルコール等の触媒不活性化剤を添加したり、また活性白土、アルミナ、珪素土等の吸着剤を添加して、触媒の除去を促進させることもできる。
上記方法で得られた脂環式オレフィン重合体は、重合や水素添加反応後の重合体溶液のまま、硬化性樹脂組成物の調製に用いてもよく、また、溶媒を除去してから硬化性樹脂組成物の調製に用いてもよい。
【0052】
上記硬化性樹脂組成物には、脂環式オレフィン重合体及び硬化剤のほかに、硬化促進剤、硬化助剤等を配合してもよい。
硬化剤は、加熱により脂環式オレフィン重合体に架橋構造を形成させる化合物である。その種類は特に限定されず、絶縁層形成に用いられる公知の硬化剤を用いることができる。硬化剤としては、極性基を有する脂環式オレフィン重合体の極性基と反応して結合を形成することができる官能基を2個以上有する化合物が好ましい。
【0053】
脂環式オレフィン重合体として、カルボキシル基やカルボン酸無水物基、フェノール性水酸基を有する脂環式オレフィン重合体を用いる場合には、用いる硬化剤として、多価エポキシ化合物、多価イソシアナート化合物、多価アミン化合物、多価ヒドラジド化合物、アジリジン化合物、塩基性金属酸化物、有機金属ハロゲン化物等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの硬化剤は、過酸化物と併用することができる。
【0054】
多価エポキシ化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、クレゾール型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、水素添加ビスフェノールA型エポキシ化合物等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物;脂環式エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、フルオレン系エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物、イソシアヌレート型エポキシ化合物、リン含有エポキシ化合物等の多価エポキシ化合物;等の分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
多価イソシアナート化合物としては、炭素数6〜24の、ジイソシアナート類及びトリイソシアナート類が好ましい。ジイソシアナート類としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート等が挙げられる。トリイソシアナート類としては、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、ビシクロヘプタントリイソシアナート等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
多価アミン化合物としては、2個以上のアミノ基を有する炭素数4〜30の脂肪族多価アミン化合物、芳香族多価アミン化合物等が挙げられ、グアニジン化合物のように非共役の窒素−炭素二重結合を有するものは含まれない。脂肪族多価アミン化合物としては、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられる。芳香族多価アミン化合物としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3,5−ベンゼントリアミン等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
多価ヒドラジド化合物としては、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
アジリジン化合物としては、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、トリス[1−(2−メチル)アジリジニル]ホスフィノキシド、ヘキサ[1−(2−メチル)アジリジニル]トリホスファトリアジン等が挙げられる。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
硬化剤の配合量は、極性基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、1〜1000重量部、好ましくは5〜800重量部、より好ましくは10〜700重量部の範囲である。硬化剤の配合量を上記範囲とすることにより、第2の絶縁層の機械的強度及び電気特性が向上する。
【0060】
硬化促進剤としては、絶縁層形成に用いられる公知の硬化促進剤を用いることができる。硬化剤として多価エポキシ化合物を用いる場合には、第3級アミン系化合物(4−位に3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を有する化合物を除く)や三弗化ホウ素錯化合物等が硬化促進剤として好適に用いられる。なかでも、第2の絶縁層の絶縁抵抗性、耐熱性、及び耐薬品性が向上することから、第3級アミン系化合物が好ましい。
【0061】
第3級アミン系化合物としては、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルホルムアミド等の鎖状3級アミン化合物;ピラゾール類、ピリジン類、ピラジン類、ピリミジン類、インダゾール類、キノリン類、イソキノリン類、イミダゾール類、トリアゾール類等の化合物が挙げられる。これらの中でも、イミダゾール類、特に置換基を有する置換イミダゾール化合物が好ましい。
【0062】
置換イミダゾール化合物としては、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−メチル−2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のアルキル置換イミダゾール化合物;2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−(2’−シアノエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチル−1−[2’−(3’’,5’’−ジアミノトリアジニル)エチル]イミダゾール等のアリール基やアラルキル基等の環構造を含有する炭化水素基で置換されたイミダゾール化合物等が挙げられる。これらの中でも、環構造含有の置換基を有するイミダゾールが官能基を有する脂環式オレフィン重合体との相溶性の観点から好ましく、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが特に好ましい。
【0063】
これらの硬化促進剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
硬化促進剤の配合量は、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、極性基を有する脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、0.001〜30重量部、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.03〜5重量部である。
【0064】
硬化助剤としては、絶縁層形成に用いられる公知の硬化助剤を用いることができる。硬化助剤としては、キノンジオキシム、ベンゾキノンジオキシム、p−ニトロソフェノール等のオキシム・ニトロソ系硬化助剤;N,N−m−フェニレンビスマレイミド等のマレイミド系硬化助剤;ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系硬化助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のメタクリレート系硬化助剤;ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン等のビニル系硬化助剤;等が挙げられる。これらの硬化助剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
硬化助剤の配合量は、硬化剤100重量部に対して、通常、1〜1000重量部、好ましくは10〜500重量部の範囲である。
【0065】
硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、ゴム質重合体や、上記した脂環式オレフィン重合体以外の熱可塑性樹脂を配合することができる。硬化性樹脂組成物に、ゴム質重合体や前記熱可塑性樹脂を配合することにより、第2の絶縁層の柔軟性が向上する。
【0066】
ゴム質重合体は、常温(25℃)以下のガラス転移温度を持つ重合体であり、一般的なゴム状重合体及び熱可塑性エラストマーが含まれる。
ゴム状重合体としては、エチレン−α−オレフィン系ゴム状重合体;エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム;エチレン−メチルメタクリレート、エテレン−ブチルアクリレート等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン−酢酸ビニル等のエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等のアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン又はスチレン−イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル−アクリロニトリル−スチレン共重合体等のジエン系ゴム;エポキシ化ポリブタジエン等の変性ジエン系ゴム;ブチレン−イソプレン共重合体;等が挙げられる。
【0067】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体等の芳香族ビニル−共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーのうち、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体が好ましく、たとえば、特開平2−133406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−72512号公報、特開平3−74409号公報等に記載されているものが好ましく用いられる。
【0068】
前記熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート等が挙げられる。
【0069】
ゴム質重合体や前記熱可塑性樹脂は、それぞれ1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、30重量部以下とすることが好ましい。
【0070】
硬化性樹脂組成物には、ヒンダードフェノール化合物や、ヒンダードアミン化合物を配合することができる。
【0071】
ヒンダードフェノール化合物とは、ヒドロキシル基を有し、かつ、該ヒドロキシル基のβ位の炭素原子に水素原子を有さないヒンダード構造を分子内に少なくとも1つ有するフェノール化合物である。
ヒンダードフェノール化合物としては、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジョール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ホスホネート−ジエチルエステル、テトラキス〔メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメイト)〕メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル、ヒンダード・ビスフェノール等が挙げられる。
【0072】
ヒンダードフェノール化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、0.04〜50重量部、好ましくは0.4〜15重量部、より好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。ヒンダードフェノール化合物の配合量を上記範囲とすることにより、第2の絶縁層の機械的強度が向上する。
【0073】
ヒンダードアミン化合物とは、1−位に2級アミン又は3級アミンを有する2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン基を分子中に少なくとも一個有する化合物である。アルキルの炭素数としては、通常、1〜50である。ヒンダードアミン化合物としては、1−位に2級アミン又は3級アミンを有する2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基を分子中に少なくとも一個有する化合物が好ましい。
ヒンダードアミン化合物としては、ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1〔2−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−4−{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−2−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔〔2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、ポリ〔(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート−ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0074】
ヒンダードアミン化合物の配合量は、特に限定されないが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、0.002〜1250重量部、好ましくは0.02〜375重量部、より好ましくは0.025〜250重量部の範囲である。ヒンダードアミン化合物の配合量を上記範囲とすることにより、第2の絶縁層の機械的強度が向上する。
【0075】
また、ヒンダードフェノール化合物とヒンダードアミン化合物は、組み合わせて用いることが好ましい。これらを併用することで、工程(III)において、第2の絶縁層表面に酸化剤水溶液を接触させたあとも、表面粗度が小さい状態を効率よく保つことができる。
かかる効果が得られやすいことから、ヒンダードフェノール化合物と、ヒンダードアミン化合物との配合割合は、「ヒンダードフェノール化合物/ヒンダードアミン化合物」の重量比で、好ましくは、1/0.05〜1/25であり、より好ましくは、1/0.1〜1/10、さらに好ましくは、1/0.25〜1/5である。
【0076】
硬化性樹脂組成物には、難燃剤を配合することができる。難燃剤を配合することで、第2の絶縁層の難燃性が向上する。
難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤やリン酸エステル系難燃剤等が挙げられる。難燃剤の配合量は、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、好ましくは100重量部以下であり、より好ましくは60重量部以下である
【0077】
硬化性樹脂組成物には、酸化剤水溶液に可溶な重合体や無機充填剤を配合することができる。かかる重合体や無機充填剤を配合することで、工程(III)において、第2の絶縁層表面に酸化剤水溶液を接触させる際に、これらが選択的に溶解や脱落するため、第2の絶縁層の表面粗さを制御することができる。
【0078】
酸化剤水溶液に可溶な重合体としては、液状エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、シリコーン樹脂、ポリメチルメタクリル樹脂、天然ゴム、スチレン系ゴム、イソプレン系ゴム、ブタジエン系ゴム、ニトリル系ゴム、エチレン−プロピレン系ゴム、ウレタンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ノルボルネンゴム、エーテル系ゴム等が挙げられる。
これらの重合体の配合量は、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、1〜60重量部、好ましくは3〜25重量部、より好ましくは4〜40重量部である。
【0079】
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、水和アルミナ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー等が挙げられる。これらの中でも、微細な粒子が得やすく、かつ、酸化剤水溶液での脱落を制御しやすいため、炭酸カルシウム及びシリカが好ましく、特にシリカが好ましい。これらの無機充填剤は、シランカップリング剤処理やステアリン酸等の有機酸処理をしたものであってもよい。
【0080】
無機充填剤は、得られる絶縁層の誘電特性を低下させない非導電性のものが好ましい。また、無機充填剤の形状は、特に限定されず、球状、繊維状、板状等であってもよいが、微細な粗面形状を得るために、微細な球状であることが好ましい。
無機充填剤の平均粒径は、通常、0.008μm以上2μm未満、好ましくは0.01μm以上1.5μm未満、特に好ましくは0.02μm以上1μm未満である。
無機充填剤の配合量は、必要とされる密着性の程度に応じて適宜選択されるが、脂環式オレフィン重合体100重量部に対して、通常、1〜4000重量部、好ましくは3〜3000重量部、より好ましくは5〜2500重量部である。
【0081】
また、硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、老化防止剤、紫外線吸収剤(レーザー加工性向上剤)、レベリング剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、天然油、合成油、ワックス、乳剤、磁性体、誘電特性調整剤、靭性剤等の任意成分を配合してもよい。これらの任意成分の配合割合は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
【0082】
硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、上記各成分を、そのまま混合してもよいし、有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態で混合してもよいし、上記各成分の一部を有機溶剤に溶解もしくは分散させた状態の組成物を調製し、当該組成物に残りの成分を混合してもよい。
【0083】
前記硬化性樹脂組成物をシート状又はフィルム状に成形する方法としては、硬化性樹脂組成物に必要に応じて有機溶剤を添加して、これを支持体に塗布し、次いで、必要に応じて乾燥する方法が挙げられる。
【0084】
用いる支持体としては、樹脂フィルムや金属箔等が挙げられる。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアリレートフィルム、ナイロンフィルム等が挙げられる。これらのフィルムのうち、耐熱性、耐薬品性、剥離性等に優れることから、ポリエチレンテレフタレートフィルム又はポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。
金属箔としては、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔、クロム箔、金箔、銀箔等が挙げられる。
【0085】
シート状又はフィルム状の成形体の厚さは、特に限定されないが、作業性等の観点から、通常、1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜80μmである。また、支持体の表面粗さRaは、通常、300nm以下、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0086】
硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、ダイコート、スリットコート、グラビアコート等が挙げられる。
【0087】
また、硬化性樹脂組成物を、支持体上に塗布した後、乾燥する場合、乾燥温度は、硬化性樹脂組成物が硬化しない程度の温度とすることが好ましく、通常、20〜300℃、好ましくは30〜200℃である。乾燥温度が高すぎると、硬化反応が進行しすぎて、得られる成形体が未硬化又は半硬化の状態とならなくなるおそれがある。また、乾燥時間は、通常、30秒間〜1時間、好ましくは1分間〜30分間である。
【0088】
ここで、「成形体が未硬化」とは、成形体を、脂環式オレフィン重合体を溶解可能な溶剤に漬けたときに、実質的に脂環式オレフィン重合体の全部が溶解する状態をいう。また、「成形体が半硬化」とは、加熱すれば更に硬化しうる程度に、途中まで硬化された状態であり、好ましくは、脂環式オレフィン重合体を溶解可能な溶剤に脂環式オレフィン重合体の一部(具体的には7重量%以上)が溶解する状態であるか、あるいは、溶剤中に成形体を24時間浸漬した後の体積が、浸漬前の体積の200%以上(膨潤率)である状態をいう。
【0089】
また、上記の支持体の代わりに、繊維基材を用いることができる。この場合、硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸させて、次いで必要に応じて乾燥することでシート状又はフィルム状の複合成形体が得られる。
【0090】
用いる繊維基材としては、ロービングクロス、チョップドマット、サーフェシングマット等の織布、不織布;繊維の束や塊等が挙げられる。これら繊維基材の中で、寸法安定性の観点からは織布が好ましく、加工性の観点からは不織布が好ましい。
【0091】
シート状又はフィルム状の複合成形体の厚さは、特に限定されないが、作業性等の観点から、通常、1〜150μm、好ましくは2〜100μm、より好ましくは5〜80μmである。また、複合成形体中の繊維基材の量は、通常、20〜90重量%、好ましくは30〜85重量%である。
【0092】
硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させる方法としては、特に限定されないが、粘度等を調整するために硬化性樹脂組成物に有機溶剤を添加し、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物に繊維基材を浸漬する方法、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物を繊維基材に塗布や散布する方法等が挙げられる。塗布又は散布する方法においては、支持体の上に繊維基材を置いて、これに、有機溶剤を添加した硬化性樹脂組成物を塗布又は散布することができる。
また、複合成形体においても、上述した成形体と同様に、硬化性樹脂組成物が未硬化又は半硬化の状態で含有されていることが好ましい。したがって、硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸させた後、乾燥する場合、先にシート状又はフィルム状の成形体の中で挙げた乾燥条件を用いることが好ましい。
【0093】
上記の方法により得られた成形体又は複合成形体を、第1の導体層に加熱圧着する方法としては、例えば、支持体付きの成形体又は複合成形体を、第1の導体層に接するように重ね合わせ、加圧ラミネータ、プレス、真空ラミネータ、真空プレス、ロールラミネータ等の加圧機を使用して加熱圧着(ラミネーション)する方法が挙げられる。加熱圧着することにより、第1の導体層と成形体又は複合成形体との界面に空隙が実質的に存在しないようにすることができる。
また、第2の絶縁層の平坦性を向上させる目的や、第2の絶縁層の厚みを増す目的で、第1の導体層上に2枚以上の成形体又は複合成形体を重ね合わせて加熱圧着してもよい。
【0094】
加熱圧着の温度は、通常、30〜250℃、好ましくは70〜200℃である。加える圧力は、通常、10kPa〜20MPa、好ましくは100kPa〜10MPaである。加熱圧着時間は、通常、10秒〜5時間、好ましくは30秒〜3時間である。
加熱圧着は、配線パターンの埋め込み性を向上させ、気泡の発生を抑えるために減圧下で行うのが好ましい。加熱圧着する際の雰囲気の圧力は、通常100kPa〜1Pa、好ましくは40kPa〜10Paである。
【0095】
上記方法により加熱圧着した後に、成形体又は複合成形体を硬化することで第2の絶縁層を形成し、本発明に用いる積層体を得ることができる。成形体又は複合成形体は、通常、これらを加熱することにより、硬化することができる。
また、加熱圧着の条件を制御することで、加熱圧着と同時に成形体又は複合成形体を硬化させて、本発明に用いる積層体を得ることができる。
【0096】
2.工程(I)
工程(I)は、前記第2の絶縁層に、ビアホール用開口を形成する工程である。
第2の絶縁層にビアホール用開口を形成する方法としては、公知の方法を採用することができる。例えば、第2の絶縁層にレーザー光を照射することで、ビアホール用開口を形成することができる。用いるレーザー光としては、UV−YAGレーザー、エキシマレーザー、炭酸ガス(CO)レーザー等が挙げられる。
【0097】
UV−YAGレーザーは、口径の小さなビアホール用開口を形成する場合に好ましく用いられる。
エキシマレーザーを用いる場合は、貫通孔が形成されたマスク等を用いることにより、一度に多数のビアホール用開口を形成することができる。
短パルスの炭酸ガスレーザーは、開口内の樹脂残渣を少なくすることができる。また、開口周縁の樹脂に対するダメージが小さいため好ましい。
【0098】
炭酸ガスレーザーを照射して、ビアホール用開口を形成する場合、例えば、半硬化または硬化させた第2の絶縁層上から炭酸ガスレーザーを照射して、トップ径100μm以下のビアホール用開口を形成することができる。多層プリント配線板の薄型化、配線の高密度化に対応するため、ビアホール用開口のトップ径は100μm以下が好ましく、90μm以下がより好ましく、80μm以下がさらに好ましい。
【0099】
炭酸ガスレーザーとしては、一般に9.3〜10.6μmの波長のレーザーが使用される。また、ショット数は、形成すべきビアホール用開口の深さ、孔径によって適宜決定することができるが、通常1〜5ショットの間で選択される。多層プリント配線板の生産性の観点から、ショット数は1又は2が好ましい。炭酸ガスレーザーのエネルギーは好ましくは1mJ以上、より好ましくは2mJ以上であり、上限は、通常、5mJ以下、好ましくは4mJ以下、さらに好ましくは3.5mJ以下である。炭酸ガスレーザーのエネルギーが低すぎると加工性が低下し、エネルギーが高すぎるとビアホール用開口の下地導体層(第1の導体層)がダメージを受けやすくなる。
炭酸ガスレーザーのパルス幅は特に限定されず、28μsのミドルレンジから4μs程度の短パルスまで広い範囲で選択することができる。
【0100】
また、必要に応じて、積層体に貫通孔(スルーホール)を形成してもよい。貫通孔を形成する際は、ドリル加工等の従来公知の方法を用いることができる。
【0101】
3.工程(II)
工程(II)は、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面(以下、「ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面」を「第2の絶縁層表面」と記載することがある。)に、アルカリ水溶液と有機溶剤とをそれぞれ接触させる工程である。これらの接触処理の順番は特に制限されず、アルカリ水溶液を接触させた後に、有機溶剤を接触させてもよく、またその逆の順で接触させてもよい。
【0102】
第2の絶縁層表面にアルカリ水溶液を接触させることにより、第2の絶縁層を構成する樹脂等の残渣を分解することができる。
【0103】
用いるアルカリ水溶液としては、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液が挙げられる。
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等を用いることができ、なかでも水酸化カルシウムが好ましい。
これらのアルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
アルカリ水溶液の濃度は、通常、0.15モル/L以上、好ましくは0.15〜10モル/L、より好ましくは0.2〜7モル/L、特に好ましくは0.25〜5モル/Lである。アルカリ水溶液の濃度が0.15モル/L未満の場合には、処理温度、処理時間などを増加させても十分な効果が得られず、デスミア不十分などの問題を生じやすくなり、一方濃度が10モル/Lを超える場合には、処理液の粘度が著しく高くなるために、絶縁層に形成された微細なビアホールなどの内部にまで均一に処理を行うことが困難となり、やはりデスミア不十分などの問題を生じやすくなる。また、第1の絶縁層構成材料によっては、高濃度のアルカリ水溶液によって絶縁層が部分的に剥離する危険性もある。
かかるアルカリ水溶液の濃度範囲を逸脱せず、本発明の効果を阻害しない範囲で、アルカリ水溶液には有機溶剤を含有させることができる。
【0105】
第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液を接触させる際には、ビアホール用開口が形成された第2の絶縁層を予め洗浄しておくことが好ましい。ビアホール用開口内部にアルカリ水溶液を接触させる方法としては、例えば積層体を溶液に浸漬するディップ法、積層体の表面およびビアホール開口部に表面張力を利用して溶液を乗せる液盛り法、溶液を積層体に噴霧するスプレー法などいかなる方法であっても良いが、処理の時間や均一性の観点でディップ法が好ましい。処理する積層体の大きさ、アルカリ水溶液の使用量、第2の絶縁層の種類、アルカリ水溶液の濃度等によって異なるが、通常、20〜90℃のアルカリ水溶液中に積層体を1〜40分程度浸漬すればよい。
アルカリ水溶液の温度が低すぎると、樹脂残渣を十分に分解することができないおそれがある。一方、アルカリ水溶液の温度が高すぎると第2の絶縁層の表面が分解して不均一となるおそれがある。また、溶媒が揮発し易く、作業環境上好ましくない。
【0106】
第2の絶縁層表面に有機溶剤を接触させることにより、第2の絶縁層表面が適度に膨潤化され、次工程において、酸化剤水溶液により、第2の絶縁層の表面を粗化し易くなる。
【0107】
用いる有機溶剤としては、多価アルコールのエーテル誘導体、多価アルコールのエステル誘導体、多価アルコールのエーテル・エステル誘導体から選ばれる有機溶剤が好ましく、エチレングリコール又はプロピレングリコールの誘導体が好ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ピナコール、それらの2量体、3量体、多量体及びメチル、エチル、プロピル、ブチル基等の低級アルキル基の置換体が挙げられる。具体的には、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。また、ジアセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が用いられる。
【0108】
有機溶剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、有機溶剤には、有機溶剤と層分離を引き起こすことがない量であれば、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物のアルカリ水溶液を含有させることができる。有機溶剤に、アルカリ水溶液を含有させることによって、膨潤効果を向上させることができる場合がある。アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物としては、先にアルカリ水溶液の説明の中で挙げたものを用いることができる。
【0109】
第2の絶縁層表面に有機溶剤を接触させる際は、例えば積層体を溶液に浸漬するディップ法、積層体の表面およびビアホール開口部に表面張力を利用して溶液を乗せる液盛り法、溶液を積層体に噴霧するスプレー法などいかなる方法であっても良い。
【0110】
有機溶剤にはノニオン系界面活性剤を含有させることができる。ノニオン系界面活性剤を含有させることによって、第2の絶縁層表面を均一に膨潤させることができる。また、接触後に水洗する際には、有機溶剤を容易に洗い落とすことができる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル型界面活性剤等を使用できる。ノニオン系界面活性剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
ノニオン系界面活性剤の含有量は、0.05〜10g/Lが好ましい。この範囲内であることで、上記効果を十分に得ることができる。
【0112】
第2の絶縁層表面に、有機溶剤等を接触させる際には、第2の絶縁層を予め洗浄しておくことが好ましい。
第2の絶縁層表面に有機溶剤等を接触させる際の条件は、処理する積層体の大きさ、有機溶剤量、第2の絶縁層の種類、有機溶剤の濃度等によって異なるが、通常、20〜90℃の有機溶剤中に積層体を1〜40分程度浸漬させればよい。用いる有機溶剤等の温度が低すぎると、第2の絶縁層を十分に膨潤させることができないおそれがある。一方、有機溶剤等の温度が高すぎると、第2の絶縁層の膨潤が進行しすぎて表面が不均一となるおそれがある。また、溶剤が揮発し易く、作業環境上好ましくない。
【0113】
4.工程(III)
工程(III)は、前記アルカリ水溶液と有機溶剤とを接触させた第2の絶縁層表面に、酸化剤水溶液を接触させる工程である。第2の絶縁層表面に、酸化剤水溶液を接触させることにより、第2の絶縁層の表面を粗化することができ、第2の絶縁層上に形成する第2の導電層との密着性を高めることができる。
【0114】
酸化剤水溶液としては、表面粗化用に通常用いられるものを利用することができる。例えば、過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩の水溶液:重クロム酸、クロム酸塩等のクロム酸塩の水溶液;四酸化オスミウム等のオスミウム化合物の水溶液;等が挙げられる。酸化剤水溶液の濃度としては、5〜600g/Lが好ましく、10〜100g/Lがより好ましい。
【0115】
酸化剤水溶液には、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を含有させることができる。アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を含有させることによって、表面粗化効果が向上する。アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物としては、先にアルカリ水溶液の説明の中で挙げたものを用いることができる。
【0116】
酸化剤水溶液中、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物の含有量は、0.02〜2.5モル/Lが好ましく、0.1〜1.5モル/Lがより好ましい。この範囲内であることで、十分な表面粗化効果を得ることができる。
【0117】
第2の絶縁層表面に酸化剤水溶液を接触させる際は、第2の絶縁層を予め洗浄しておくことが好ましい。第2の絶縁層表面に酸化剤水溶液を接触させる方法としては、例えば、積層体を酸化剤水溶液に浸漬するディップ法、酸化剤水溶液の表面張力を利用して、酸化剤水溶液を第2の絶縁層に載せる液盛り法、酸化剤水溶液を、第2の絶縁層に噴霧するスプレー法、等が挙げられる。
【0118】
酸化剤水溶液を接触させる温度や時間は、処理方法、処理する積層体の大きさ、第2の絶縁層の種類、酸化剤水溶液の濃度等によって異なるが、温度は、通常、30〜95℃、好ましくは50〜90℃であり、時間は、通常、1〜90分、好ましくは3〜60分である。
【0119】
本発明に用いる積層体の第2の絶縁層は、脂環式オレフィン重合体を含有するため、酸化剤水溶液を接触させる際の条件を変化させた場合(たとえば、処理時間を長くした場合)でも、表面粗度を低く保つことができる。このため、本発明によれば、表面粗化処理後の絶縁層の表面粗さRaを容易に制御することができる。本発明において、表面粗さRaは、好ましくは1〜300nm、より好ましくは5〜200nmである。なお、本明細書において、Ra値とは、表面粗さを表す数値の一種であり、算術平均粗さと呼ばれるものであって、具体的には測定領域内で変化する高さの絶対値を平均ラインである表面から測定して算術平均したものである。
【0120】
5.工程(IV)
工程(IV)は、前記酸化剤水溶液を接触させた第2の絶縁層表面を、中和還元処理する工程である。中和還元処理することで、工程(III)の酸化剤処理により生成した二酸化マンガン等の金属酸化物の皮膜を除去することができる。
中和還元処理には還元性溶液を用いる。当該還元性溶液としては、酸性の還元性溶液が好ましく、例えば、硫酸ヒドロキシアミンと硫酸との混合液等が挙げられる。
中和還元処理においては、必要に応じて、第2の絶縁層を洗浄し、次いで、第2の絶縁層表面に酸性の還元性溶液を接触させればよい。第2の絶縁層表面に酸性の還元性溶液を接触させる方法としては、例えば、積層体を酸性の還元性溶液中に浸漬する方法が挙げられる。
【0121】
6.工程(V)
工程(V)は、前記中和還元処理後の第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液を接触させる工程である。このように、工程(V)において、再度、ビアホール用開口にアルカリ水溶液を接触させることにより、ビアホール用開口内の樹脂残渣を除去する効果を飛躍的に高めることができる。
工程(V)において用いるアルカリ水溶液としては、先に工程(II)の中で説明したアルカリ水溶液と同様のものを使用することができる、また、中和還元処理後の第2の絶縁層表面にアルカリ水溶液を接触させる方法としては、先に工程(II)の中で説明した方法と同様のものを採用することができる。
【0122】
7.工程(VI)
工程(VI)は、めっき法により、第2の絶縁層表面に導体薄膜を形成する工程である。
導体薄膜を形成する方法としては特に限定されず、例えば、第2の絶縁層表面に無電解めっき法により導体薄膜を形成する方法が挙げられる。
【0123】
無電解めっき法としては、公知の方法を採用することができる。通常は、まず、第2の絶縁層表面に、銀、パラジウム、亜鉛、コバルト等の触媒核を付着させる。触媒核を付着させる方法は特に制限されず、例えば、銀、パラジウム、亜鉛、コバルト等の金属化合物やこれらの塩や錯体を、水又はアルコールもしくはクロロホルム等の有機溶剤に0.001〜10重量%の濃度で溶解した液(必要に応じて酸、アルカリ、錯化剤、還元剤等を含有していてもよい。)に、積層体を浸漬した後、金属を還元する方法等が挙げられる。
【0124】
無電解めっき法に用いる無電解めっき液としては、公知の自己触媒型の無電解めっき液を用いることができる。無電解めっき液中に含まれる金属種、還元剤種、錯化剤種、水素イオン濃度、溶存酸素濃度等は特に限定されない。例えば、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸、水素化硼素アンモニウム、ヒドラジン、ホルマリン等を還元剤とする無電解銅めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−リンめっき液;ジメチルアミンボランを還元剤とする無電解ニッケル−ホウ素めっき液;無電解パラジウムめっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解パラジウム−リンめっき液;無電解金めっき液;無電解銀めっき液;次亜リン酸ナトリウムを還元剤とする無電解ニッケル−コバルト−リンめっき液等の無電解めっき液を用いることができる。
【0125】
無電解めっき法により、導体薄膜を形成した後、積層体を防錆剤と接触させて防錆処理を施すことができる。また、導体薄膜を形成した後、密着性向上等のため、導体薄膜を加熱することもできる。加熱温度は、通常、50〜350℃、好ましくは80〜250℃である。また、加熱は加圧条件下で実施してもよい。加圧方法としては、例えば、熱プレス機、加圧加熱ロール機等の物理的加圧手段を用いる方法が挙げられる。加える圧力は、通常、0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜10MPaである。この範囲であれば、導体薄膜と第2の絶縁層との高い密着性が確保できる。
【0126】
上記方法により形成された導体薄膜上にめっき用レジストパターンを形成し、更にその上に電解めっき等の湿式めっきによりめっきを成長させ(厚付けめっき)、次いで、レジストを除去し、更にエッチングにより導体薄膜をパターン状にエッチングして第2の導体層を形成する。従って、この方法により形成される第2の導体層は、通常、パターン状の導体薄膜と、その上に成長させためっきとからなる。
【0127】
以上のようにして、多層プリント配線板を得ることができる。また、さらに、その表面に上述した成形体又は複合成形体を加熱圧着し、硬化して絶縁層を形成し、この上に、上述した方法に従い、導体層の形成を行うことで、さらに多層化を図ることができる。
このような多層プリント配線板は、コンピューターや携帯電話機等の電子機器における、CPUやメモリ等の半導体素子、その他の実装部品用基板として好適に使用することができる。
【0128】
特に本発明の製造方法によれば、第2の絶縁層の表面粗度を大きくすることなく、ビアホール用開口内部の樹脂残渣を除去することができる。
このため、本発明によれば、第2の導体層と第2の絶縁層間の密着性に優れ、かつ、第1の導体層と第2の導体層間の導電性に優れる多層プリント配線板を効率よく製造することができる。
【実施例】
【0129】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0130】
(1)重合体溶液中の単量体含有量:重合体溶液をテトラヒドロフランで希釈し、ガス・クロマトグラフィー(GC)により測定し、重合体溶液中の単量体含有量を求めた。
(2)重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw):テトラヒドロフランを展開溶媒として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として求めた。
(3)重合体の水素添加率:重合体の水素添加率は、水素添加前における重合体中の不飽和結合のモル数に対する水素添加された不飽和結合のモル数の比率をいう。重合体の水素添加率は、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求めた。
【0131】
(4)重合体のカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率:重合体中の総単量体単位モル数に対するカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位のモル数の割合をいう。重合体のカルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は、400MHzのH−NMRスペクトル測定により求めた。
(5)ワニスの粘度:E型粘度計を用いて、25℃での動的粘度を測定した。
【0132】
(6)デスミア性:工程(V)の後に、ビアホール用開口を走査型電子顕微鏡(日立製S−4700)を用いて、拡大率5000倍で観察し、以下の基準で評価した。
○:スミアが測定面積の5%未満
×:スミアが測定面積の5%以上
【0133】
(7)第2の絶縁層の表面粗さ(算術平均粗さRa):試料(積層体)の表面を、表面形状測定装置(ビーコインスツルメンツ社製、WYKO NT1100)を用いて、測定範囲91μm×120μmで表面粗さ(算術平均粗さRa)を測定し、以下の基準で評価した。
○:Raが300nm未満
×:Raが300nm以上
【0134】
(8)第2の絶縁層と第2の導体層との間の密着性(ピール強度):試料(多層プリント配線板)における第2の絶縁層と第2の導体層との引き剥がし強さをJIS C6481−1996に準拠して測定し、以下の基準で評価した。
○:引き剥がし強さの平均値が5N/cm以上
×:引き剥がし強さの平均値が5N/cm未満
【0135】
〔製造例1〕脂環式オレフィン重合体(A−1)の合成
重合1段目として5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下、「EdNB」と略記する)35モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール340モル部、およびルテニウム系重合触媒として4−アセトキシベンジリデン(ジクロロ)(4,5−ジブロモ−1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(C1063、和光純薬工業社製、以下「Ruカルベン錯体C1063」と略記する。)0.005部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で30分間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。
次いで、重合2段目として重合1段目に得た溶液中にテトラシクロ[9.2.1.02,10.03,8]テトラデカ−3,5,7,12−テトラエン(メタノテトラヒドロフルオレン、以下、「MTF」と略記する。)35モル部、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物(以下、「NDCA」と略記する)30モル部、アニソール250モル部およびRuカルベン錯体C1063 0.01部を追加し、攪拌下に80℃で1.5時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーにより測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(A−1)の溶液を得た。得られた重合体(A−1)の重量平均分子量は60,000、数平均分子量は30,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は95%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は30モル%であった。重合体(A−1)の溶液の固形分濃度は22%であった。
【0136】
〔製造例2〕脂環式オレフィン重合体(A−2)の合成
MTF70モル部、NDCA30モル部、1−ヘキセン0.9モル部、アニソール590モル部およびRuカルベン錯体C1063 0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行ってノルボルネン系開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行って、ノルボルネン系開環重合体の水素添加物である脂環式オレフィン重合体(A−2)の溶液を得た。得られた重合体(A−2)の重量平均分子量は50,000、数平均分子量は26,000、分子量分布は1.9であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は30モル%であった。重合体(A−2)の溶液の固形分濃度は22%であった。
【0137】
〔製造例3〕脂環式オレフィン重合体(A−3)の合成
MTF70モル部、NDCA30モル部、1−ヘキセン6モル部、アニソール590モル部およびRuカルベン錯体C1063 0.015モル部を、窒素置換した耐圧ガラス反応器に仕込み、攪拌下に80℃で1時間の重合反応を行って開環重合体の溶液を得た。この溶液について、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、実質的に単量体が残留していないことが確認され、重合転化率は99%以上であった。
次いで、窒素置換した攪拌機付きオートクレーブに、得られた開環重合体の溶液を仕込み、150℃、水素圧7MPaで、5時間攪拌させて水素添加反応を行った。次いで、得られた水素化反応溶液を濃縮して、脂環式オレフィン重合体(A−3)の溶液を得た。得られた重合体(A−3)の重量平均分子量は10,000、数平均分子量は5,000、分子量分布は2であった。また、水素添加率は97%であり、カルボン酸無水物基を有する繰り返し単位の含有率は30モル%であった。重合体(A−3)の溶液の固形分濃度は55%であった。
【0138】
〔製造例4〕硬化性樹脂組成物(B−1)の調製
前記重合体(A−1)の溶液450部、および球状シリカ(アドマファイン(登録商標)SO−C1、アドマテックス社製、体積平均粒径0.25μm)40%と前記重合体(A−2)の溶液2%とをアニソールに分散したシリカスラリー113部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。 これに、硬化剤として多官能エポキシ樹脂(1032H60、三菱化学社製、エポキシ当量163〜175)をアニソールに70%溶解した溶液35.8部、レーザー加工性向上剤として2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール1部、ヒンダードフェノール化合物としてトリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート(IRGANOX(登録商標)3114、BASF社製)1部、ヒンダードアミン化合物としてテトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート(アデカスタブ(登録商標)LA52、ADEKA社製)1部、エラストマーとして液状エポキシ化ポリブタジエン(Ricon657、サートマー・ジャパン社製)をアニソールに80%溶解した溶液3部、およびアニソール553部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに5%溶解した溶液10部を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して硬化性樹脂組成物(B−1)のワニスを得た。ワニスの粘度は、70mPa・secであった。
【0139】
〔製造例5〕硬化性樹脂組成物(B−2)の調製
前記重合体(A−2)の溶液27部、前記重合体(A−3)の溶液2部、および表面処理球状シリカ(アドマファインSC−2500SXJ、アドマテックス社製、アミノシランタイプシランカップリング剤処理)217部と前記重合体(A-3)5.5部とアニソール70部を混合し、高圧ホモジナイザーで15分間処理し、分散させたシリカスラリー292.5部を混合し、遊星式攪拌機で3分間攪拌した。
これに、硬化剤として多官能エポキシ樹脂(1032H60、三菱化学社製、エポキシ当量163〜175)8部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(EPICLON HP7200L、DIC社製、エポキシ等量242〜252)40部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エピコート828EL、三菱化学社製、エポキシ当量184〜194〕10部、老化防止剤としてトリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート0.5部、ジシクロペンタジエン型ノボラック樹脂(GDP−6140、群栄化学工業社製)50部、アニソール5部を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌した。さらにこれに、硬化促進剤として1−べンジル−2−フェニルイミダゾールをアニソールに70%溶解した溶液0.4部を混合し、遊星式攪拌機で5分間攪拌して硬化性樹脂組成物(B−2)のワニスを得た。
【0140】
〔製造例6〕支持体付きフィルム(C−2)の製造
硬化性樹脂組成物(B−1)のワニスを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上にワイヤーバーを用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、100℃で10分間乾燥させて、未硬化の硬化性樹脂組成物(B−1)の厚みが3μmの樹脂層が形成された支持体付きフィルム(C−1)を得た。
次に、支持体付きフィルム(C−1)の硬化性樹脂組成物(B−1)の面に、硬化性樹脂組成物(B−2)のワニスを、ドクターブレード(テスター産業社製)とオートフィルムアプリケーター(テスター産業社製)を用いて塗布し、次いで、窒素雰囲気下、80℃で10分間乾燥させて、硬化性樹脂組成物の総厚みが40μmの樹脂層が形成された支持体付きフィルム(C−2)を得た。支持体付きフィルム(C−2)は、支持体、硬化性樹脂組成物(B−1)の樹脂層、硬化性樹脂組成物(B−2)の樹脂層の順で形成された。
【0141】
〔製造例7〕積層体(D−1)の製造
ガラスフィラー及びハロゲン不含エポキシ樹脂を含有するワニスをガラス繊維に含浸させて得られたコア材の表面に、厚みが18μmの銅が貼られた、厚み0.8mm、150mm角(縦150mm、横150mm)の両面銅張り基板表面に、配線幅及び配線間距離が150μm、厚みが18μmで、表面が有機酸との接触によってマイクロエッチング処理された導体層を形成して内層基板を得た。
この内層基板の両面に、150mm角に切断した前述の支持体付きフィルム(C−2)を、樹脂成形体フィルム面が内側となるようにして貼り合わせた後、一次プレスを行った。一次プレスは、耐熱ゴム製プレス板を上下に備えた真空ラミネータにて、200Paの減圧下で温度110℃、圧力0.1MPaで90秒間の加熱圧着である。さらに、金属製プレス板を上下に備えた油圧プレス装置を用いて、圧着温度110℃、1MPaで90秒間、加熱圧着した。次いで支持体を剥がすことにより、硬化性樹脂組成物の樹脂層と内層基板との積層体(D−1)を得た。さらに積層体を空気雰囲気下、180℃で60分間放置し、樹脂層を硬化させて内層基板上に第2の絶縁層を形成した。
【0142】
〔製造例8〕硬化性樹脂組成物(B−3)の調製
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製:EPICLON153)100部、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム(JSR社製:PNR−1H)5部、フェノールノボラック型樹脂(日立化成工業社製:HP−850)10部、リン酸エステル(三光化学社製:PX−200)30部、球状シリカ(アドマテックス社製:SC2050)70部、及びメチルエチルケトン100部を混合して、エポキシ系の硬化性樹脂組成物(B−3)のワニスを得た。
【0143】
〔製造例9〕支持体付きフィルム(C−3)の製造
硬化性樹脂組成物(B−3)のワニスを、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)上にワイヤーバーを用いて塗布し、110℃で乾燥させて、硬化性樹脂組成物(B−3)の厚みが40μmの樹脂層が形成された支持体付きフィルム(C−3)を得た。
【0144】
〔製造例10〕積層体(D−2)
製造例7において、支持体付きフィルム(C−2)に代えて製造例9で得られた支持体付きフィルム(C−3)を用いたこと以外は、製造例7と同様の方法により、積層体(D−2)を得た。
【0145】
〔実施例1〕
(工程(I))
製造例7で得られた積層体(D−1)の第2の絶縁層に、炭酸ガスレーザー加工機(日立ビアメカニクス社製:LC−2K212/2C)を使用して、パルス幅17μs、周波数1000Hz、2ショットで穴あけを行い、ビアホール用開口(トップ径60μm)を形成した。
(工程(II))
ビアホール用開口が形成された積層体を、120g/L(3モル/L)の水酸化ナトリウム水溶液に、80℃で15分間揺動浸漬した後、水洗した。
次に、この積層体を、膨潤液(スウェリング ディップ セキュリガント P(登録商標)(アトテック社製)500mL/L、水酸化ナトリウム3g/Lの水溶液)に、60℃で15分間揺動浸漬した後、水洗した。
(工程(III))
次に、この積層体を、過マンガン酸塩の水溶液(コンセントレート コンパクト CP(アトテック社製)500mL/L、水酸化ナトリウム40g/Lの水溶液)に、80℃で15分間揺動浸漬した後、水洗した。
(工程(IV))
次に、この積層体を、中和還元処理液(リダクション セキュリガント P 500(登録商標)(アトテック社製)100mL/L、硫酸35mL/Lの水溶液)に、40℃で5分間振動浸漬した後、水洗した。
(工程(V))
次に、この積層体を、120g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、80℃で5分間揺動浸漬した後、水洗した。
【0146】
工程(V)の水洗後の積層体について、デスミア性を評価した。評価結果を第1表に示す。
【0147】
別途、積層体(D−1)に対して、上記工程(II)〜(V)の各処理をこの順で行い、第2の絶縁層の表面粗さ測定用試料を得た。この試料を用いて、第2の絶縁層の表面粗さを評価した。評価結果を第1表に示す。
【0148】
積層体(D−1)に対して、上記工程(V)の後、以下の各処理をこの順で行った。
(クリーナー・コンディショナー工程)
工程(V)の処理を終えた積層体(D−1)を、クリーナー・コンディショナー水溶液(アルカップMCC−6−A(上村工業社製)が50mL/Lの水溶液)に、50℃で5分間浸漬し、次いで、水洗水に40℃で1分間浸漬した後、水洗した。
(ソフトエッチング処理工程)
次に、この積層体(D−1)を、硫酸100g/L、過硫酸ナトリウム100g/Lの水溶液に2分間浸漬した後、水洗した。
(酸洗処理工程)
次に、この積層体(D−1)を、100g/Lの硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水洗した。
【0149】
(工程(VI))
次に、この積層体(D−1)を、Pd塩含有めっき触媒水溶液(アルカップアクチベータMAT−1−A(上村工業社製)が200mL/L、アルカップアクチベータMAT−1−B(上村工業社製)が30mL/L、水酸化ナトリウムが0.35g/Lの水溶液)に、60℃で5分間浸漬した後、水洗した。
次に、この積層体(D−1)を、還元剤溶液(アルカップレデユーサ−MAB−4−A(上村工業社製)が20mL/L、アルカップレデユーサ−MAB−4−B(上村工業社製)が200mL/Lの水溶液)に、35℃で3分間浸漬して、めっき触媒を還元処理した後、水洗した。
次に、この積層体(D−1)を、アルカップアクセレレーターMEL−3−A(上村工業社製)が50mL/Lになるように調製した水溶液に、25℃で1分間浸漬した。
【0150】
上記処理の後、この積層体(D−1)を、無電解銅めっき液(スルカップPEA−6−A(上村工業社製)100mL/L、スルカップPEA−6−B−2X(上村工業社製)50mL/L、スルカップPEA−6−C(上村工業社製)14mL/L、スルカップPEA−6−D(上村工業社製)15mL/L、スルカップPEA−6−E(上村工業社製)50mL/L、37重量%ホルマリン水溶液5mL/Lの溶液)に空気を吹き込みながら、36℃で20分間浸漬した後、水洗して無電解銅めっき処理して積層体の第2の絶縁層表面に導体薄膜を形成した。
【0151】
(防錆処理及びアニール処理工程)
次に、この積層体(D−1)を防錆溶液(AT−21(上村工業社製)が10mL/Lの溶液)に、室温で1分間浸漬した後、水洗し、乾燥した。この防錆処理が施された積層体(D−1)を空気雰囲気下において150℃で30分間アニール処理を行った。
【0152】
(電解銅めっき処理工程)
次に、この積層体(D−1)に、電解銅めっきを施し、厚さ30μmの電解銅めっき膜を形成した。次いで、この積層体(D−1)を180℃で60分間加熱することにより、第2の絶縁層表面に、前記導体薄膜及び電解銅めっき膜からなる導体層を形成した両面2層の多層プリント配線板を得た。この多層プリント配線板を用いてピール強度を測定した。評価結果を第1表に示す。
【0153】
〔実施例2〕
実施例1の工程(II)及び工程(V)で用いた120g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に代えて、40g/L(0.71モル/L)の水酸化カリウム水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0154】
〔実施例3〕
実施例1の工程(II)及び工程(V)で用いた120g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に代えて、10g/L(0.25モル/L)の水酸化ナトリウム水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0155】
〔実施例4〕
実施例1の工程(II)及び工程(V)で用いた120g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に代えて、20g/L(0.27モル/L)の水酸化カルシウム水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0156】
〔比較例1〕
実施例1において、工程(V)を行わなかったことを以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0157】
〔比較例2〕
実施例1において、工程(II)のアルカリ水溶液接触処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0158】
〔比較例3〕
実施例1において、積層体(D−1)の代わりに、製造例10で得られた積層体(D−2)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0159】
〔比較例4〕
実施例3において、積層体(D−1)の代わりに、製造例10で得られた積層体(D−2)を用いたこと以外は、実施例3と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0160】
〔比較例5〕
実施例1において、工程(V)と工程(II)におけるアルカリ水溶液処理を行わず、さらに、工程(II)における膨潤液の代わりに、スウェリング ディップ セキュリガントP 600mL/L、水酸化ナトリウム5gからなる溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0161】
〔比較例6〕
比較例3において、工程(V)と工程(II)におけるアルカリ水溶液処理を行わず、さらに、工程(II)における膨潤液の代わりに、スウェリング ディップ セキュリガントP 600mL/L、水酸化ナトリウム5gからなる溶液を用いたこと以外は、比較例3と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0162】
〔比較例7〕
実施例1において、工程(V)と工程(II)におけるアルカリ水溶液処理を行わず、さらに、工程(III)の過マンガン酸塩の水溶液の揺動浸漬処理時間を30分に変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0163】
〔比較例8〕
比較例3において、工程(V)と工程(II)におけるアルカリ水溶液処理を行わず、さらに、工程(III)の過マンガン酸塩の水溶液の揺動浸漬処理時間を30分に変えたこと以外は、比較例3と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0164】
〔比較例9〕
実施例1において、工程(V)と工程(II)におけるアルカリ水溶液処理を行わず、さらに、工程(II)における膨潤液の代わりに、2−アミノエタノールの50体積%水を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0165】
〔比較例10〕
比較例3において、工程(V)と工程(II)におけるアルカリ水溶液処理を行わず、さらに、工程(II)における膨潤液の代わりに、2−アミノエタノールの50体積%水溶液を用いたこと以外は、比較例3と同様の方法により多層プリント配線板を製造した。
【0166】
【表1】

【0167】
第1表に示すように、実施例1〜4の製造方法によれば、第2の絶縁層の表面粗度を大きくすることなく、ビアホール用開口内部の樹脂残渣を除去することができる。
一方、比較例1、2及び5の製造方法においては、工程(II)や工程(V)のアルカリ水溶液処理を行っていないため、ビアホール用開口内部の樹脂残渣を除去しきれていない。
比較例7の製造方法においては、工程(II)や工程(V)のアルカリ水溶液処理を行わずに、工程(III)の酸化剤水溶液の接触処理条件を変えることで、デスミア性の改善を図っている。しかしながら、この条件では、第2の絶縁層の表面粗度が大きくなっている。
また、比較例9の製造方法においては、工程(II)や工程(V)のアルカリ水溶液処理を行わず、さらに、工程(II)の膨潤液を変えた結果、デスミア性に劣り、さらに、第2の絶縁層の表面粗度が大きくなっている。
また、比較例3,4,6,8及び10の製造方法においては、第2の絶縁層が脂環式オレフィン樹脂を含有しない絶縁層であるため、本発明の効果が得られず、第2の絶縁層の表面粗度が大きくなっている。
【符号の説明】
【0168】
1:電気絶縁性基板(第1の絶縁層)
2a〜2c:第1の導体層
3:第2の絶縁層
4a〜4c:第2の導体層
5:ビアホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁層、第1の導体層、脂環式オレフィン重合体を含有する第2の絶縁層、及び、第2の導体層がこの順に積層された構造と、
前記第2の絶縁層中に形成された、前記第1の導体層と第2の導体層とを電気的に接続するビアホールと、
を有する多層プリント配線板の製造方法であって、
前記第2の絶縁層に、ビアホール用開口を形成する工程(I)、
前記ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液と有機溶剤とをそれぞれ接触させる工程(II)、
前記アルカリ水溶液と有機溶剤とを接触させた、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、酸化剤水溶液を接触させる工程(III)、
前記酸化剤水溶液を接触させた、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面を、中和還元処理する工程(IV)、
前記中和還元処理後の、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、アルカリ水溶液を接触させる工程(V)、並びに、
工程(V)の後、ビアホール用開口表面を含む第2の絶縁層表面に、めっき法により導体薄膜を形成する工程(VI)
を含む、多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】
工程(II)及び工程(V)で用いるアルカリ水溶液が、それぞれ、アルカリ金属の水酸化物又はアルカリ土類金属の水酸化物の水溶液である、請求項1に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項3】
工程(II)及び工程(V)で用いるアルカリ水溶液の濃度が、それぞれ、0.15モル/L以上である、請求項2に記載の多層プリント配線板の製造方法。
【請求項4】
工程(II)及び工程(V)で用いるアルカリ水溶液の温度が、それぞれ、20〜90℃である、請求項1〜3のいずれかに記載の多層プリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−55301(P2013−55301A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194224(P2011−194224)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】