説明

多層配線基板、部品内蔵基板、および多層配線基板の製造方法

【課題】配線基板と電気絶縁層を積層して一体化した多層配線基板において、電気絶縁層に形成されたビアと、配線基板に形成されたビアランド間の接続信頼性を向上させる。
【解決手段】貫通するビアホールに導電性ペーストが充填されて形成されたビア202を有する電気絶縁層201の表裏の、ビアに対応する位置に、ビアの、電気絶縁層の面方向の断面積より大きいビアランド207が形成された多層配線基板251、252が積層して一体化され、少なくとも一方の多層配線基板には、電気絶縁層に埋め込まれた電子部品が実装されている。ビアとビアランドとの間には、一部隙間205が形成されており、ビアと接触するビアランドの接触面積は、ビアの断面積の20%以上75%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気絶縁層上に導体回路が形成された多層配線基板に関するものである。例えば、電気絶縁層に形成された内層の導体配線層と接続されるビアホールなどに金属粉末を含有する導電性ペーストを充填したビアを具備する多層配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器の小型化、多機能化、多様化に伴い、多層配線基板を一層高密度配線や高密度実装ができるようにする事が所望されており、そのために提案されたのが、インナービアホール(IVH)接続法である。このIVH法では、ビアホール中に導電性ペーストを充填して導電性を持たせ、そしてビアホール中の導電性ペーストを封止するようにビアランドを設けるものが採用されるに至っている。また、更なる高密度化に向けた方法として、部品を内蔵した多層基板の技術開発が進んでいる。
【0003】
多層配線基板の1種類である部品内蔵基板の構造として、電子部品が実装された回路基板2枚の間に電気絶縁層を設け、この電気絶縁層に両基板間を電気的に接続するビアを設けた構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図9(b)は、特許文献1に記載された従来の部品内蔵基板の一例を示す断面図である。図9(a)は、その部品内蔵基板の積層前における多層配線基板および電気絶縁層の断面図を示している。
【0005】
図9(a)において、多層配線基板751、752は既存の回路基板であり、配線パターン703に、内蔵されるチップ部品などの電子部品711が表面実装されている。
【0006】
電気絶縁層701には、電子部品711を内蔵するためのキャビティ722と、多層配線基板751および752間の電気的な接続を行うための導電性ペーストで形成されるビア702が設けられている。
【0007】
多層配線基板751、752には、ビア702と電気的接続を行うビアランド707が形成されている。ビアランド707は、配線パターン703の一部、もしくは独立して存在する。
【0008】
多層配線基板751、752と電気絶縁層701は、積層された状態で熱プレスを行う事により、電気絶縁層701が半硬化状態から一旦溶融してから熱硬化する際に、電子部品711が電気絶縁層701に埋め込まれた状態で多層配線基板751、752と接着して一体化し、図9(b)に示す部品内蔵基板766ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−197849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した従来の構成の多層配線基板では、多層配線基板を形成する熱プレスの過程において、ビアとビアランドの間に十分な圧縮力を加えることができず、十分な層間接続の信頼性が得られない場合があった。
【0011】
以下に、この課題について説明する。
【0012】
図10(a)および図10(b)に、従来の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示す。
【0013】
図10(a)に示すように、2枚の多層配線基板651および652を電気的に接続するためには、熱プレスにより電気絶縁層601から突出しているビア602とビアランド607との間に一定以上の圧縮力がかかり、ビア602を圧縮しながら熱硬化させる事が必要である。なお、ビアランド607の表面には、ニッケル・金メッキ層604が形成されている。
【0014】
しかし、図10(b)に示すように、多層配線基板651、652には、配線パターン603やソルダーレジスト606などが形成されている。電気絶縁層601に形成されたビア602は、電気絶縁層601よりも0.01mmから0.02mm程度突出しているが、一般的なソルダーレジスト606は0.02mmから0.05mm程度の厚みを有しており、ビア602の突出量よりも大きく、貼り合わせただけではビア602に圧縮力が加わらない。
【0015】
図10(c)は、図10(b)に示す従来の部品内蔵基板の熱プレスを行う際の、ビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示し、図10(d)は、熱プレス時の、ビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示している。また、図10(e)は、図10(b)よりもソルダーレジスト開口部が狭い従来の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示し、図10(f)は、図10(e)に示す部品内蔵基板の熱プレス時の、ビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示している。
【0016】
図10(c)に示すように、ビアランド607のビア602が接触する部分に対して、ソルダーレジスト開口部608が設けられている場合、プレス面の凹凸に対して均一な圧力をかけるための弾性シート672を介して熱プレス装置671により熱プレスを行う事で、図10(d)に示すように多層配線基板651、652が変形するため、ビア602に圧縮力をかける事が可能である。
【0017】
一方、図10(e)に示すように、ソルダーレジスト開口部609が狭い場合には、図10(f)に示すように多層配線基板651、652が変形する事ができず、ビア602に十分な圧縮力を加える事ができない。
【0018】
したがって、ビア602とビアランド607を接続する部分のソルダーレジスト606の開口部を大きく設計しなければならず、これにより多層配線基板の小型化が妨げられてしまう。
【0019】
図11(a)は、ビアランドの裏面にソルダーレジスト開口部が配置された従来の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示している。図11(b)は、図11(a)に示す部品内蔵基板の、熱プレス時のビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示し、図11(c)は、図11(b)をさらに拡大した断面図を示している。
【0020】
図11(a)に示すように、多層配線基板651、652のビアランド607の裏面に例えばソルダーレジスト開口部610などの狭い開口部を有している場合においても、図11(b)および図11(c)に示すように、ビア602が多層配線基板651、652を変形させる事で、ビア602に十分な圧力を加える事ができない。
【0021】
図12に示すグラフは、多層配線基板表面の段差の開口距離とビアの初期接続抵抗値の相関を示している。図12に示すグラフは、図11(a)に示す構成の部品内蔵基板について評価した結果である。
【0022】
多層配線基板651、652の厚みは0.35mm、電気絶縁層601の厚みは0.66mm、多層配線基板651、652の表層にあるソルダーレジスト606による段差が0.03mm、ビア602の直径は200μmである。パラメータとして、ソルダーレジスト開口部610の開口距離(段差開口距離)を用いている。そして、温度200℃、圧力2MPaの条件により熱プレスを行った。
【0023】
この評価の結果、段差開口距離が1.0mmの時に十分に圧縮が加えられておらず、ビア602の初期接続抵抗値が悪化している事がわかる。
【0024】
一方で、全体のプレス力を高くすると、電気絶縁層601全体が流動し、形状を維持できないという問題が発生する。そのため、信頼性の高い層間接続を実現するためには、設計制約を設けなければならず、多層配線基板の小型化の妨げとなっている。
【0025】
本発明は、上記従来の課題を考慮して、多層配線基板を形成する熱プレスの過程において信頼性の高い層間接続ができる、多層配線基板、部品内蔵基板および多層配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述した課題を解決するために、第1の本発明は、
貫通するビアホールに導電性ペーストが充填されて形成されたビアを有する電気絶縁層と、前記ビアの、前記電気絶縁層の面方向の断面積より大きいビアランドが、前記ビアに対応する位置に形成された回路基板と、を積層して一体化した多層配線基板であって、
前記ビアと前記ビアランドとの間には、一部隙間が形成されており、
前記ビアと接触する前記ビアランドの接触面積は、前記ビアの断面積の20%以上75%以下である、多層配線基板である。
【0027】
また、第2の本発明は、
前記ビアランドの一部に凹部を形成しておき、前記ビアの平面である上端面が前記ビアランドに当接するように前記電気絶縁層および前記回路基板を積層して構成された、第1の本発明の多層配線基板である。
【0028】
また、第3の本発明は、
貫通するビアホールに導電性ペーストが充填されて形成されたビアを有する電気絶縁層の表裏の、前記ビアに対応する位置に、前記ビアの、前記電気絶縁層の面方向の断面積より大きいビアランドが形成された多層配線基板が積層して一体化され、少なくとも一方の前記多層配線基板には、前記電気絶縁層に埋め込まれた電子部品が実装された、部品内蔵基板であって、
前記ビアと前記ビアランドとの間には、一部隙間が形成されており、
前記ビアと接触する前記ビアランドの接触面積は、前記ビアの断面積の20%以上75%以下である、部品内蔵基板である。
【0029】
また、第4の本発明は、
前記ビアランドの一部に凹部を形成しておき、前記ビアの平面である上端面が前記ビアランドに当接するように前記電気絶縁層および前記多層配線基板を積層して構成された、第3の本発明の部品内蔵基板である。
【0030】
また、第5の本発明は、
シート状の形成材料に貫通するビアホールを形成し、前記ビアホールに導電性ペーストを充填してビアを形成して電気絶縁層を作製する電気絶縁層作製ステップと、
シート状の基材の表面の、前記ビアの、前記電気絶縁層の面方向の断面積より大きいビアランドを形成し、前記ビアランドに凹部を形成した後に、前記ビアランドを除いた前記基材上の一部にソルダーレジストを形成して、回路基板を作製する回路基板作製工程と、
前記電気絶縁層の少なくとも片面に、前記ビアの平面である上端面が前記ビアランドに当接するようにして前記回路基板を積層し、熱プレスすることにより一体化させて多層配線基板を作製する、積層一体化ステップとを備え、
前記凹部が形成されていることにより、前記積層一体化ステップにおいて、前記ビアと接触する前記ビアランドの接触面積は、前記ビアの断面積の20%以上75%以下である、多層配線基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、多層配線基板を形成する熱プレスの過程において信頼性の高い層間接続ができる、多層配線基板、部品内蔵基板および多層配線基板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(a)本発明の実施の形態1の部品内蔵基板の、積層前における多層配線基板および電気絶縁層の断面図、(b)本発明の実施の形態1の部品内蔵基板の断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図、(b)本発明の実施の形態1の部品内蔵基板の、熱プレス時のビアおよびビアランド近傍の部分断面図、(c)本発明の実施の形態1の部品内蔵基板の部分拡大断面図
【図3】(a)本発明の実施の形態1のビアランドの側断面図、(b)本発明の実施の形態1のビアランドの水平断面図
【図4】上に配置される多層配線基板にビアランドを貫通する孔を形成した構成の部品内蔵基板において、電気絶縁層からガスが発生したときのビアおよびビアランド近傍の部分断面模式図
【図5】本発明の実施の形態1の、多層配線基板のビアランドの直下にビアが設けられている構成の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図
【図6】(a)〜(d)本発明の実施の形態1の部品内蔵基板に用いる電気絶縁層の製造方法を説明するための断面図
【図7】ビア断面積に対するビア−ビアランド間接触面積の割合と、ビア抵抗値およびビアにかかる圧力との相関を示したグラフ
【図8】(a)〜(d)本発明の実施の形態1における、異なる形状の凹部を有するビアランドの水平断面図
【図9】(a)従来の部品内蔵基板の積層前における、多層配線基板および電気絶縁層の断面図、(b)従来の部品内蔵基板の断面図
【図10】(a)、(b)従来の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図、(c)従来の部品内蔵基板の熱プレスを行う際の、ビアおよびビアランド近傍の部分断面図、(d)従来の部品内蔵基板の熱プレス時の、ビアおよびビアランド近傍の部分断面図、(e)ソルダーレジストの開口部が狭い従来の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図、(f)ソルダーレジストの開口部が狭い従来の部品内蔵基板の、熱プレス時のビアおよびビアランド近傍の部分断面図
【図11】(a)ビアランドの裏面にソルダーレジスト開口部が配置された従来の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図、(b)ビアランドの裏面にソルダーレジスト開口部が配置された従来の部品内蔵基板の、熱プレス時のビアおよびビアランド近傍の部分断面図、(c)ビアランドの裏面にソルダーレジスト開口部が配置された従来の部品内蔵基板の、熱プレス時のビアおよびビアランド近傍の部分拡大断面図
【図12】従来の部品内蔵基板における、多層配線基板表面の段差開口距離とビアの初期接続抵抗値との関係図
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1(b)は、本発明にかかる部品内蔵基板の断面図を示している。図1(a)は、本実施の形態1の部品内蔵基板の積層前における多層配線基板および電気絶縁層の断面図を示している。
【0035】
図2(c)は、本実施の形態1の部品内蔵基板のビア近傍の部分拡大断面図であり、図1(b)の点線で囲んだ部分を拡大した図である。図2(a)は、本実施の形態1の部品内蔵基板の積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図であり、図2(b)は、本実施の形態1の部品内蔵基板の熱プレス時の、ビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示している。なお、図2(b)は、説明をわかり易くするために、各部の変形量を誇張して記載している。
【0036】
図1(a)および図2(a)に示すように、本実施の形態1の多層配線基板251、252は、表層に、配線パターン203およびビアランド207がフォトリソグラフィー等の工法にて形成されている。また、エッチングなどによりビアランド207に凹部205を形成する。このとき凹部205は、ビアランド207を貫通してはならない。
【0037】
その後、ソルダーレジスト206を形成し、ソルダーレジスト206から露出した配線パターン203およびビアランド207にはNiAu(ニッケル・金)メッキ204を施す。
【0038】
図3(a)および図3(b)に、ビアランド207の構成図を示す。図3(a)は、ビアランド207の側断面を示し、図3(b)は、図3(a)のA−Aで示した部分の水平断面を示している。
【0039】
図3(a)および図3(b)に示すように、ビアランド207は、外形が円形のビアランド(ハッチングを施している部分)であり、ビアランド207の中央に円形の凹部205を形成している。
【0040】
凹部205によってビアランド207上に形成される開口部は、熱プレス時にビア202とビアランド207が接触する時の、円柱状のビア202の水平断面積に対するビアランド207とビア202との接触面積が20%以上75%以下となる面積としている。また、凹部205は、ビアランド207を貫通しないように形成している。
【0041】
なお、ビア202の水平断面積が、本発明の、電気絶縁層の面方向の断面積の一例にあたる。
【0042】
電気絶縁層201は、上下の多層配線基板251および252間の電気的導通を得るためのビア202を有している。
【0043】
ビアランド207の開口部が上記条件の面積となるようにする凹部205をビアランド207に形成した事によって、図2(b)に示すように、熱プレス時にビア202に圧縮力を加える過程において、圧縮方向のビア202とビアランド207の接触面積を減少させる事により、単位面積あたりの圧縮力を増加させる事が可能となり、多層配線基板251、252の表面形状に依存せず、信頼性の高い層間接続を可能とする。また、ビアランド207に形成する凹部205の内側の側面においてもビア202が接触する事により、より信頼性の高い層間接続を実現できる。
【0044】
一方で、ビアランド207に形成する凹部205がビアランド207を貫通していない事によって、ビアランド207と多層配線基板251、252との接着している面積を現行どおり確保できるため、吸湿リフローなどの信頼性評価によって多層配線基板251、252とビアランド207間に剥離方向の力が加わったとしても現行水準の信頼性を確保する事が可能である。
【0045】
図4は、上に配置される多層配線基板にビアランドを貫通する孔を形成した構成の部品内蔵基板において、電気絶縁層からガスが発生したときの、ビアおよびビアランド近傍の部分断面模式図を示している。
【0046】
図4に示す部品内蔵基板は、電気絶縁層201の下に積層される多層配線基板252のビアランド207には貫通しない凹部205を形成しているのに対し、電気絶縁層201の上に積層される多層配線基板251のビアランド210には貫通する孔を形成している。
【0047】
吸湿リフローなどの信頼性評価においてリフロー炉で加熱したときに、図4に示すように電気絶縁層201からガス291が発生する。
【0048】
このとき、ビアランド210に貫通する孔を形成した多層配線基板251側では、ガス291が貫通孔を抜けて、多層配線基板251が剥離してしまう。一方、ビアランド207に貫通孔ではなく凹部205を設けた多層配線基板252側では、ガス291が貫通孔を抜けて多層配線基板252とビアランド207が剥離する事を回避する事ができる。
【0049】
図5は、多層配線基板のビアランドの直下にビアが設けられている構成の、本実施の形態1の部品内蔵基板の、積層前のビアおよびビアランド近傍の部分断面図を示している。
【0050】
図5に示す部品内蔵基板では、電気絶縁層201の下に積層される多層配線基板252のビアランド283の直下にビア282が存在し、且つ、凹部205がビアランド283を貫通している。
【0051】
このような構成の場合、多層配線基板251、252の形成過程において、ビアランド283の表面までビア282が存在する事になり、ビア202とビア282を含めたビアランド283との接触面積を減少させる事ができないが、凹部205とする事によって、直下にビア282が存在しても、ビア202とビアランド283との接触面積を減らす事ができる。
【0052】
以下、図2、図6および図7を用いて、製造方法を含め本実施の形態1について詳細に説明する。
【0053】
図6(a)〜(d)は、本実施の形態1の電気絶縁層の製造方法を説明する図である。
【0054】
図6(a)において、301は電気絶縁層の形成材料で、半硬化状態のエポキシ樹脂と無機フィラーで構成するシート状のコンポジット材料である。無機フィラーとして平均粒径8μmのシリカ(SiO)を75質量%含んでいる。無機フィラーはアルミナ、マグネシア、窒化ホウ素、窒化アルミ、窒化珪素、ポリテトラフルオロエチレン等の材料でも良く、多層配線基板の熱膨張係数等の物理的特性に合わせ、好ましくは含有量を50質量%以上95質量%以下の範囲で設定できる。これは、含有量50質量%以下では、熱膨張が大きくなり多層配線基板との熱膨張係数のミスマッチによりリフロー工程などの熱応力でビア接続不良を起こす原因となるためである。また、含有量95質量%以上では、高粘度となりシート化が困難となると共に、樹脂量が減り熱プレス後の密着力が低下してしまうためである。無機フィラーの代わりに、不織布や織布構造の無機材料を用いても構わない。
【0055】
電気絶縁材料301の厚みは0.6mmであるが、厚みは設定する事ができる。保護フィルム321a、321bは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等でなる厚み16μmのフィルムで、電気絶縁材料301の両面にラミネートを行い3層構造にする。
【0056】
電気絶縁材料301と保護フィルム321a、321b、または電気絶縁材料301間の接着は、電気絶縁材料301を構成する樹脂が半硬化状態(Bステージ)である事から、例えば温度70℃で圧力1MPaにて真空ラミネートを行う事で半硬化状態の樹脂表面が軟化して気泡の発生無く接着できる。
【0057】
次に、図6(b)に示すように、電気絶縁材料301に直径0.2mmのビアホール323を打ち抜き形成する。なお、ビアホール323は、レーザ加工等、別の手段を用いて形成しても良い。
【0058】
次に、図6(c)に示すように、ビアホール323に導電性ペーストを印刷等の手段により充填してビア302を形成する。導電性ペーストは、金属粒子と熱硬化性樹脂とを混合した組成物を用いる事ができる。金属粒子としては、金、銀、銅またはニッケルなどを用いる事ができる。金、銀、銅またはニッケルは、導電性が高いため好ましく、銅は導電性が高くマイグレーションも少ないため特に好ましい。銅を銀で被覆した金属粒子を用いても、マイグレーションの少なさと導電性の高さ、両方の特性を満たす事ができる。熱硬化性樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂またはイソシアネート樹脂を用いる事ができる。
【0059】
そして、図6(d)に示すように、導電性ペーストを充填後に保護フィルム321aおよび321bを剥離することで、表面から16μm飛び出たビア302を有する電気絶縁層201を得る事ができる。
【0060】
次に、多層配線基板251、252の製造方法について説明する。
【0061】
図2(a)に示すように、まず多層配線基板のベースとなる基材に厚み12μmの銅箔を貼り合わせ、フォトグラフィ技術によって所望の配線パターンを形成する。また、配線パターン203上のビア202を配置する位置に、エッチングなどにより直径0.12mm、深さ8μmの凹部205を形成する。配線パターン203形成後に、厚み20μmのソルダーレジスト206を所望の箇所に形成する。さらに、露出されたビアランド207にNiAu(ニッケル・金)メッキ204を行う。ニッケルを8μm、金を0.05μmの厚みでメッキを行う。
【0062】
最後に、上記のようにして作製した電気絶縁層201の両主面に多層配線基板251、252を配置して位置合わせを行い積層した後、温度200℃、圧力2MPaの条件にて熱プレスを行う。この際、半硬化状態の電気絶縁層201が一旦軟化した後、熱反応により硬化する事で多層配線基板251、252と接着し一体化でき部品内蔵基板を製造する事ができる。
【0063】
なお、図2(b)および図2(c)において、凹部205の存在によって、ビア202の端面とビアランド207の間にできる隙間が、本発明の隙間の一例にあたる。また、ビアランド207に当接するビア202の端面が、本発明の、ビアの平面である上端面の一例にあたる。
【0064】
この熱プレスの工程において、まずビア202の突出部とビアランド207が接触し、更にビア202を圧縮するが、図2(b)に示すように、多層配線基板251、252の表面にあるソルダーレジスト開口部208の部分に熱プレス装置271からの圧縮力が伝わらない。
【0065】
そのため、凹部205が形成されていない従来の構成の部品内蔵基板の場合には、図11(c)に示すように、多層配線基板651、652は、ビア602からの反力を受けて、ソルダーレジスト開口部610の方向に変形する。このように、ビアランド607に凹部205が無ければ、ビア602を圧縮する力よりも多層配線基板651、652を変形させる力の方が勝るため、電気的接続をさせるために必要なビア602への圧縮力を加えられていない状態になってしまう。
【0066】
一方、本実施の形態1の構成の部品内蔵基板の場合には、図2(b)に示すようにビアランド207に形成される凹部205を有する事によって、凹部205の部分ではビア202は圧縮力を受けず、ビアランド207とビア202が接触している部分のみに圧縮力がかかる事から、凹部205にビア202が入り込みながら、部分的にビア202を圧縮する事が可能となる。その結果、信頼性の高い層間接続が実現できる。
【0067】
図7に示すグラフは、多層配線基板表面に凹凸がある場合の、水平方向のビア断面積に対するビア−ビアランド間接触面積の割合とビア抵抗値との相関、および、ビア断面積に対するビア−ビアランド間接触面積の割合とビアにかかる圧力との相関を示している。
【0068】
ここでは、図2(c)に示す構成の部品内蔵基板を用いて評価を行なった。評価を行なった部品内蔵基板の構成について説明する。
【0069】
多層配線基板251、252の厚みが0.35mm、電気絶縁層201の厚みが0.66mm、多層配線基板251、252の表層にあるソルダーレジスト206による段差が0.03mm、ソルダーレジスト開口部208の幅が1.0mm、ビア202の直径が200μmである。条件として、厚さ0.02mmのビアランド207に、深さ8μmで、直径が各60μm、80μm、100μm、120μm、140μm、160μm、180μm、190μmの凹部205を形成し、評価を行った。
【0070】
温度200℃、圧力2MPaの条件により熱プレスを行った結果、図7より、ビア断面積に対するビア−ビアランド間接触面積の割合換算で、20%以上75%以下の条件において、低い初期抵抗値を示している事がわかる。
【0071】
また、ビア202にかかる圧力は、ビア断面積に対するビア−ビアランド間接触面積の割合換算で75%以下の条件において2MPa以上を示している。この事から、ビアの断面積に対するビアランドとビアの接触面積が75%以下である事が必要な事がわかる。
【0072】
一方で、ビアを形成する導電性ペーストに含有される導電粒子の粒径が10μm程度であり、ビアの断面積に対するビアランドとビアの接触面積が20%以下の場合、導電性粒子がビアランドに接触しない可能性が高い事から、ビアの断面積に対するビアランドとビアの接触面積が20%以上である必要がある。
【0073】
なお、ここでは、図3(a)および図3(b)に示すように、ビアランド207に円形状の凹部205を形成することとして説明したが、上記したビアの断面積に対するビアランドとビアの接触面積の条件を満たすようにすれば、その他の形状の凹部をビアランド207に形成しても同様の効果が得られる。
【0074】
図8(a)〜(d)に、異なる形状の凹部を形成したビアランドの水平断面図を示す。
【0075】
図8(a)〜(d)に示すビアランド101〜104は、いずれもビアランド207と同様の円形であり、図8(a)〜(d)は、図3(a)のA−Aで示した部分に相当する部分の各ビアランド101〜104の水平断面を示している。したがって、図8(a)〜(d)の白抜きで示した部分が、各凹部105〜108の上面から見た形状を表している。
【0076】
図8(a)は、ビアランド101の中央に十字型の凹部105を形成したものを示している。図8(b)は、ビアランド102にスリットの凹部106を形成したものを示している。図8(c)は、ビアランド103に複数個の円形の凹部107を形成したものを示している。図8(d)は、ビアランド104に籠目状に凹部108を形成したものを示している。
【0077】
図8(a)〜(d)に各種変形例として様々な凹部105〜108を示したように、凹部の形状はいかなる形でも良いが、ビアランドにおける開口面積に関しては、熱プレス時にビアとビアランドが接触する時の、ビアの断面積に対するビアランドとビアの接触面積が20%以上75%以下である事を条件とする。また、凹部はビアランドを貫通してはならない。
【0078】
以上に説明したように、本発明の部品内蔵基板は、多層配線基板間を電気的に接続するビアとビアランドの接触面積を減少させる事によって、熱プレス時の圧力を高める事ができ、信頼性の高いビア接続を得る事ができる。したがって、多層配線基板を一体化する熱プレスの過程において、ビアとビアランドの間に加わる単位面積あたりの圧縮力を高める事ができ、信頼性の高い層間接続が可能となる。その結果、設計制約が緩和され、多層配線基板の小型化が進展するとともに、基板設計リードタイムの短縮ができる。
【0079】
なお、上記した本実施の形態1では、部品内蔵基板の例で説明したが、貫通するビアが形成された電気絶縁層の両面または片面に回路基板を積層して構成される多層配線基板についても本発明を適用でき、同様の効果が得られる。
【0080】
また、図10(e)に示すような、ビア602がビアランド607に接続される部分に狭い開口面積のソルダーレジスト開口部609が形成されているような構成においても、本発明の構成を適用することにより、接続するビアとビアランドの接触面積が従来よりも減少し、熱プレス時の圧力を高める事ができるので、信頼性の高いビア接続を得る事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係る多層配線基板、部品内蔵基板および多層配線基板の製造方法は、多層配線基板を形成する熱プレスの過程において信頼性の高い層間接続ができる効果を有し、この様にして構成される多層配線基板等は、既存の多層配線基板の小型高密度化を実現できるため、携帯電話などのモバイル機器等の用途として有用である。
【符号の説明】
【0082】
101〜104 ビアランド
105〜108 凹部
201 電気絶縁層
202 ビア
203 配線パターン
204 ニッケル・金メッキ
205 凹部
206 ソルダーレジスト
207 ビアランド
208 ソルダーレジスト開口部
210 ビアランド
251、252 多層配線基板
271 熱プレス装置
272 弾性シート
282 ビア
283 ビアランド
291 ガス
301 電気絶縁材料(形成材料)
302 ビア
321a、321b 保護フィルム
323 ビアホール
601 電気絶縁層
602 ビア
603 配線パターン
604 ニッケル・金メッキ層
606 ソルダーレジスト
607 ビアランド
608、609、610 ソルダーレジスト開口部
651、652 多層配線基板
671 熱プレス装置
672 弾性シート
701 電気絶縁層
702 ビア
703 配線パターン
707 ビアランド
711 電子部品
722 キャビティ
751、752 多層配線基板
766 部品内蔵基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通するビアホールに導電性ペーストが充填されて形成されたビアを有する電気絶縁層と、前記ビアの、前記電気絶縁層の面方向の断面積より大きいビアランドが、前記ビアに対応する位置に形成された回路基板と、を積層して一体化した多層配線基板であって、
前記ビアと前記ビアランドとの間には、一部隙間が形成されており、
前記ビアと接触する前記ビアランドの接触面積は、前記ビアの断面積の20%以上75%以下である、多層配線基板。
【請求項2】
前記ビアランドの一部に凹部を形成しておき、前記ビアの平面である上端面が前記ビアランドに当接するように前記電気絶縁層および前記回路基板を積層して構成された、請求項1に記載の多層配線基板。
【請求項3】
貫通するビアホールに導電性ペーストが充填されて形成されたビアを有する電気絶縁層の表裏の、前記ビアに対応する位置に、前記ビアの、前記電気絶縁層の面方向の断面積より大きいビアランドが形成された多層配線基板が積層して一体化され、少なくとも一方の前記多層配線基板には、前記電気絶縁層に埋め込まれた電子部品が実装された、部品内蔵基板であって、
前記ビアと前記ビアランドとの間には、一部隙間が形成されており、
前記ビアと接触する前記ビアランドの接触面積は、前記ビアの断面積の20%以上75%以下である、部品内蔵基板。
【請求項4】
前記ビアランドの一部に凹部を形成しておき、前記ビアの平面である上端面が前記ビアランドに当接するように前記電気絶縁層および前記多層配線基板を積層して構成された、請求項3に記載の部品内蔵基板。
【請求項5】
シート状の形成材料に貫通するビアホールを形成し、前記ビアホールに導電性ペーストを充填してビアを形成して電気絶縁層を作製する電気絶縁層作製ステップと、
シート状の基材の表面の、前記ビアの、前記電気絶縁層の面方向の断面積より大きいビアランドを形成し、前記ビアランドに凹部を形成した後に、前記ビアランドを除いた前記基材上の一部にソルダーレジストを形成して、回路基板を作製する回路基板作製工程と、
前記電気絶縁層の少なくとも片面に、前記ビアの平面である上端面が前記ビアランドに当接するようにして前記回路基板を積層し、熱プレスすることにより一体化させて多層配線基板を作製する、積層一体化ステップとを備え、
前記凹部が形成されていることにより、前記積層一体化ステップにおいて、前記ビアと接触する前記ビアランドの接触面積は、前記ビアの断面積の20%以上75%以下である、多層配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−234852(P2012−234852A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100310(P2011−100310)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】