説明

多接合型太陽電池、該多接合型太陽電池を備えた太陽電池モジュール、及び該多接合型太陽電池の製造方法

【課題】多接合型薄膜太陽電池の特性を改善する。
【解決手段】少なくとも2層以上の光電変換層3,5を含む多接合型太陽電池において、隣り合う光電変換層どうしの間に形成された積層領域4に、該積層領域の平面方向に沿って島状に分布する、表面を酸化させた金属粒からなる中間反射構造体8を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2層以上の光電変換層を含む多接合型太陽電池、該多接合型太陽電池を備えた太陽電池モジュール、及び該多接合型太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の太陽電池は、その特性を向上させるために、吸収波長帯域が異なる半導体からなる光電変換層を複数積層した多接合型構造としたものが、多く実用化されている。多接合型太陽電池では、複数の光電変換層が、電気的に直列に接続された構造を有するので、複数の光電変換層の中で最も電流密度が低い層によって、全体の電流密度が律速される。
【0003】
一方、比較的大きな開放電圧を生じうる、例えばアモルファスSi(アモルファスシリコン)系等の光電変換層を、光入射側から第1層目のトップ層に用いて、高エネルギーな短波長の光の吸収に利用するのが効率的である。
【0004】
このような多接合型太陽電池においては、例えば、光入射側から第1層目のトップ層に配した光電変換層の光劣化を抑制するためには、その膜厚をより薄くすることが好ましい。また、光電変換層自体の膜厚によって不必要な抵抗損失を生じさせないためにも、その膜厚をより薄くすることが好ましい。しかしながら、その光電変換層の薄膜化によって、かえって全体の電流密度が低く抑えられてしまうという問題があった。
【0005】
このような問題を改善するための1つの手段として、複数の光電変換層を接続する際に生じる中間領域に、入射光の一部を反射する中間反射層を設ける方法が提唱されている。すなわち、例えば、トップ層に用いた光電変換層と光入射側から第2層目の光電変換層とを接続する際に生じる中間領域に、トップ層を抜けて光入射側から第2層目の光電変換層に入ろうとする光を反射するための中間反射層を設けることで、トップ層での光路を長くして光をより吸収させて電流密度を増やすことができる。これにより光劣化を避けるため等の目的でトップ層を薄く形成した場合であっても、比較的大きな電流密度を生じさせることができ、他の光電変換層が生じる電流密度との整合も図ることができるので、太陽電池特性の向上につながる。
【0006】
上記のような中間反射層を備えた多接合型太陽電池に関して、特許文献1には、非晶質半導体光電変換ユニット層と、結晶質半導体光電変換ユニット層との間に、部分的に光を反射しかつ透過する導電性の光学的中間層を配したハイブリッド薄膜光電変換装置が記載されている。そして、その光学的中間層は、10〜100nmの範囲内の厚さを有するとともに1×10-3〜1×10-1Ω・cmの範囲内の抵抗率を有し、酸化亜鉛、酸化錫、又はインジウム錫酸化物の透明導電性酸化物を利用して形成されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、積層された少なくとも2層の光電変換層の間に介在し、その2層の光電変換層を電気的及び光学的に接続する中間領域とを備えた発電ユニットを有する太陽電池が記載されている。そして、その中間領域は、2層の光電変換層の延在方向に電気的に不連続に分散した小領域を含み、その小領域は、光電変換層より低導電率の絶縁体微粒子、例えば、SiO、TiO、ZnOなどの金属酸化物微粒子や、MgF等の他の透明絶縁材料からなる微粒子で形成されるか、又は、光電変換層より光電変換層より高導電率の導電体微粒子、例えば、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)や、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明金属酸化物微粒子で形成されている。
【0008】
太陽電池から出力を得るには、受光した光電変換層の全面から集電しなければならないので、通常、光電変換層の全面をはさむように電極層が形成されている。そして、その少なくとも一方の電極は、光電変換層に光を通さなければならないので、比抵抗の小さくない光透過性の材料で構成された透明電極であることを要する。したがって、特に、高出力を求めて太陽電池を大面積化した場合などには、多大な抵抗損失が生じてしまう。
【0009】
このような問題は、太陽電池として短冊状に小面積化したユニットを、抵抗の低い導電性金属で直列に電気的に接続して集積化することにより回避されている。すなわち、その集積化により、透明電極に流れる電流量を減らし損失を抑えることができる。
【0010】
このような太陽電池の集積化は、通常、太陽電池の基板上に各層を積層する工程において、レーザースクライブ加工等により、各層の選択的な位置に、基板表面方向に対して垂直方向に溝を設け、その溝から上方の層が下方の層に延在するように加工することにより実現されている。図10には、このような集積構造を有する太陽電池の概略部分断面図が示されている。すなわち、aで示す箇所には、基板1の表面方向に対して垂直方向に裏面電極層2を分断するように基板1に達する溝が設けられ、その溝に第1の光電変換層3が延在している。また、bで示す箇所には、同様に裏面電極層2に達する溝が設けられ、その溝に第2の光電変換層5が、第1の光電変換層3と中間反射層50とをそれぞれ分断するように延在している。更に、cで示す箇所には、やや幅広な裏面電極層2に達する溝が設けられ、その溝に透明電極層6が、第2の光電変換層5と第1の光電変換層3と中間反射層50とをそれぞれ分断し、その分断側面を覆うように延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−118273号公報
【特許文献2】特開2007−266096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1のハイブリッド薄膜光電変換装置のように、中間反射層を、光電変換層の延在方向に層状に設けた場合、太陽電池の集積構造を加工する際に、レーザー加工等の高エネルギーで、中間反射層のスクライブ部が結晶化して、集積化後の太陽電池においてそのスクライブ部に基板表面方向に対して垂直方向に延在する裏面電極等との間で、電気的に短絡(リーク)してしまうという問題があった。
【0013】
また、上記特許文献2に記載の太陽電池では、中間反射の作用効果を発揮する中間領域が、2層の光電変換層の延在方向に電気的に不連続に分散した小領域を含んでいることにより、集積化された太陽電池においてその基板表面方向に電流が流れることが抑制され、中間反射層を光電変換層の延在方向に層状に設けた場合に問題となるような、電気的短絡が生じないものとされている。
【0014】
しかしながら、その中間反射の作用効果を発揮する中間領域を構成する材料としては、第1の光電変換層から第2の光電変換層への透光を保たなければならないことに考慮して、光透過性を有する材料である、例えば、SiO、TiO、ZnO、MgF、ガリウム添加酸化亜鉛(GZO)、酸化インジウムスズ(ITO)等が用いられており、必ずしも光の反射効率が十分とはいえず、非効率な構成であった。
【0015】
したがって、本発明は、多接合型太陽電池における隣り合う光電変換層どうしの間にあって中間反射の作用効果を発揮するための新規な構造を提供し、もって多接合型薄膜太陽電池の特性の改善及びそれを備えた太陽電池モジュールの特性の改善に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、金属粒を、多接合型太陽電池における隣り合う光電変換層どうしの間に形成された積層領域の平面方向に沿って島状に分布するように形成し、その表面を酸化することで、優れた中間反射構造体となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明の多接合型太陽電池は、少なくとも2層以上の光電変換層を含む多接合型太陽電池において、隣り合う光電変換層どうしの間に形成された積層領域に、該積層領域の平面方向に沿って島状に分布する、表面を酸化させた金属粒からなる中間反射構造体が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の多接合型太陽電池によれば、表面を酸化させた金属粒からなる中間反射構造体を、その積層領域の平面方向に対して島状に分布するように形成したので、光入射側に配置された光電変換層(トップ層)を通過した光の一部は、中間反射構造体の金属粒表面で反射されて、トップ層に戻される。なお、金属粒表面の酸化膜は、屈折効果により光を乱反射させるのに寄与する。その結果、トップ層を通る光路が長くなり、トップ層が薄くても、その電流密度を増やすことができる。したがって、トップ層の光劣化を抑制するため、トップ層の膜厚を薄くしても、太陽電池全体としての効率を損なうことがない。また、トップ層を通過した光の残りの部分は、中間反射構造体の金属粒の隙間を通って、トップ層に隣り合う光電変換層(ボトム層)に入射される。その結果、中間反射構造体がない場合と比べると、ボトム層に入射する光量は減少することになるが、光劣化しにくい光電変換材料をボトム層に用いた上で、その発電層の膜厚を厚くする、あるいは裏面電極層の光閉じ込め効果を改善させるなどにより、優れた電流整合が得られ、太陽電池全体としての効率を向上させることができる。また、光劣化後の安定化効率を高めることができる。そして、本発明における中間反射構造体は、表面を酸化させた金属粒からなるので、反射効率が高く、トップ層での電流密度をより効果的に増大できると共に、上記金属粒が島状をなすので、集積化された太陽電池において裏面電極等との間で電気的に短絡(リーク)してしまうという問題も回避することができる。
【0019】
本発明の多接合型太陽電池の一つの好ましい態様においては、前記隣り合う光電変換層どうしは、互いに接して積層され、前記中間反射構造体は、両光電変換層の接合界面に形成されている。
【0020】
本発明の多接合型太陽電池の別の好ましい態様においては、前記隣り合う光電変換層どうしは、接合層を介して積層され、前記中間反射構造体は、前記接合層の内部に形成されている。
【0021】
本発明の多接合型太陽電池の更に別の好ましい態様においては、前記隣り合う光電変換層どうしは、接合層を介して積層され、前記中間反射構造体は、前記接合層といずれか一方の光電変換層との接合界面に形成されている。
【0022】
また、本発明の多接合型太陽電池において、前記金属粒は、(1)Ag、Al、Ti、Zn、Sn、及びInからなる群から選ばれた金属、(2)Ag、Au、Al、Ti、Zn、Sn、及びInからなる群から選ばれた金属を複数用いて形成された合金、から選ばれた1種又は2種以上からなることが好ましい。金属粒が、上記金属又は合金で形成されることによって、中間反射構造体の光の反射効率をより高めることができる。
【0023】
本発明の多接合型太陽電池において、光入射側から第1層目の光電変換層(トップ層)は、非晶質の材料からなることが好ましい。これによれば、高エネルギーな短波長の光を吸収して比較的大きな開放電圧を生じる、例えばアモルファスSi(アモルファスシリコン)系等の光電変換層を、光入射側から第1層目のトップ層に用いることにより、太陽電池全体としての効率をより向上させることができる。
【0024】
また、本発明の太陽電池モジュールは、上記多接合型太陽電池を複数電気的に接続したことを特徴とする。
【0025】
更に、本発明の多接合型太陽電池の製造方法は、少なくとも2層以上の光電変換層を含む多接合型太陽電池の製造方法において、少なくとも下記の工程を有することを特徴とする。
(1)基板に第1の光電変換層を積層する工程。
(2)前記第1の光電変換層の前記基板とは反対側に金属を粒状に積層して、前記第1の光電変換層の平面方向に対して島状に分布するように前記金属からなる金属粒を形成する工程。
(3)前記金属粒を酸化して中間反射構造体とする工程。
(4)前記第1の光電変換層の前記中間反射構造体が形成されたのと同じ側に、第2の光電変換層を積層する工程。
【0026】
本発明の多接合型太陽電池の製造方法によれば、上記(2)、(3)の工程によって形成される中間反射構造体により、前述したように、トップ層の電流密度を増やして全体としての効率を向上させ、裏面電極等との間で電気的に短絡(リーク)してしまうという問題も回避できる太陽電池を得ることができる。
【0027】
本発明の多接合型太陽電池の製造方法の一つの好ましい態様においては、前記(1)の工程と前記(2)の工程との間、又は前記(3)の工程と(4)の工程との間で、接合層を形成する工程を行う。
【0028】
本発明の多接合型太陽電池の製造方法の別の好ましい態様においては、前記(1)の工程の後に接合層を形成する工程を行い、該接合層を形成する工程の途中で、前記(2)及び(3)の工程を行う。
【0029】
また、本発明の多接合型太陽電池の製造方法においては、前記(3)の工程を、前記金属粒を大気、Oガス、又は希ガス-O混合ガスに暴露することより行うことが好ましい。これによって、金属粒の表面を効率よく酸化させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、表面を酸化させた金属粒からなる中間反射構造体を島状に分布するように形成したので、光入射側の光電変換層(トップ層)を通過した光の一部を中間反射構造体で効率よく反射させてトップ層に戻すことにより、トップ層が薄くても、その電流密度を増やすことができる。また、トップ層を通過した光の残りの部分は、中間反射構造体の金属粒の隙間を通って、トップ層に隣り合う光電変換層(ボトム層)に入射され、ボトム層においても適度な電流密度が得られるので、太陽電池全体としての効率を高めることができる。そして、本発明における中間反射構造体は、表面を酸化させた金属粒からなるので、反射効率が高く、トップ層での電流密度をより効果的に増大できると共に、上記金属粒が島状をなすので、集積化された太陽電池において裏面電極等との間で電気的に短絡(リーク)してしまうという問題も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の態様に係る第1の多接合型太陽電池の模式的部分断面図である。
【図2】本発明の実施の態様に係る第2の多接合型太陽電池の模式的部分断面図である。
【図3】本発明の実施の態様に係る第3の多接合型太陽電池の模式的部分断面図である。
【図4】本発明の実施の態様に係る第4の多接合型太陽電池の模式的部分断面図である。
【図5】本発明の実施の態様に係る第5の多接合型太陽電池の模式的部分断面図である。
【図6】本発明の実施の態様に係る第6の多接合型太陽電池の模式的部分断面図である。
【図7】本発明の実施の態様に係る第7の多接合型太陽電池の模式的部分断面図である。
【図8】本発明の実施の態様に係る第8の多接合型太陽電池の模式的部分断面図である。
【図9】表面を酸化させた金属粒からなる中間反射構造体が積層領域の平面方向に沿って島状に分布するように形成されている状態を示す模式的部分平面図である。
【図10】多接合型太陽電池の集積構造を示す概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図1〜10を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。なお、図中、実質的に同じ部材は共通の符号を付して表す。
【0033】
本発明において、太陽電池の基板としては、特に限定されないが、例えばポリイミドフィルム、PET、PEN、PES、アクリル、アラミド等の絶縁性プラスチックフィルム基板や、ガラス基板、ステンレス基板などを用いることができる。なお、この基板が、後述するスーパーストレート型太陽電池のように、光入射側に配される場合には、光透過性の材料で構成すべきことはいうまでもない。
【0034】
光電変換層を構成する材料としては、通常太陽電池の光電変換層として用いられる単結晶シリコン薄膜、多結晶シリコン薄膜、アモルファスシリコン薄膜、微結晶シリコン薄膜等のシリコン系材料、CIGS系半導体等のカルコパイライト系材料、有機薄膜半導体、色素を担持した酸化物半導体などを用いることができる。上記光電変換層は、それぞれの材料に適した、薄膜スライス加工、CVD、印刷、蒸着、スピンコート、スパッタリング、エピタキシャル成長法などの方法で、太陽電池の基板上への積層を行うことができる。光電変換効率に影響する光電変換層のn層、i層、p層の各厚さなどは、適宜、当業者に周知の技術により調整することができる。
【0035】
本発明の多接合型太陽電池は、少なくとも2層以上の光電変換層を含んでいる。隣り合う光電変換層は、直接接するように積層されていてもよく、接合層やその他の層(第3の光電変換層などの他の光電変換層を含む)を介して積層されていてもよい。少なくとも2層以上の光電変換層のうち、光の入射側に配置される光電変換層(トップ層)としては、アモルファスシリコン等の材料からなるものが好ましく使用され、トップ層の背面側に配置される光電変換層(ボトム層)としては、微結晶シリコン等の材料からなるものが好ましく使用される。
【0036】
また、接合層としては、n型またはp型にドーピングした微結晶シリコン等の層が好ましく使用される。
【0037】
本発明の多接合型太陽電池においては、隣り合う光電変換層どうしの間に形成された積層領域に、表面を酸化させた金属粒からなる中間反射構造体が、その積層領域の平面方向に沿って島状に分布するように形成されている。ここで、「島状」とは、例えば図9に示すように、金属の粒状の層が、所定の間隙をもって互いに分離して配列された状態を意味する。島状をなす金属粒の平面方向の平均長径は、好ましくは5〜100nm、より好ましくは5〜50nmであり、その平均粒子密度は、好ましくは10〜10000個/μmであり、より好ましくは500〜5000個/μmである。なお、前記平均粒子密度は、走査型電子顕微鏡像によって確認することができる。
【0038】
中間反射構造体の材料としては、(1)Ag、Al、Ti、Zn、Sn、及びInからなる群から選ばれた金属、(2)Ag、Au、Al、Ti、Zn、Sn、及びInからなる群から選ばれた金属を複数用いて形成された合金、から選ばれた1種又は2種以上が好ましく用いられる。
【0039】
中間反射構造体は、これらの材料をスパッタリング法、真空蒸着法、スプレー製膜法、スピンコート法、インクジェット印刷法などの製膜方法に供し、その製膜方法に供する際の設定膜厚を、好ましくは30nm以下、より好ましくは15nm以下とすることにより、膜状の形態ではなく、ナノメートルオーダーでの微細な粒子状の金属粒を形成することができる。形成した金属粒には、製膜装置中、又は装置から出した後に、大気、Oガス、又は希ガス-O混合ガスに曝すなどして、自然酸化皮膜を形成させ、上記中間反射構造体とすることができる。
【0040】
本発明において、「積層領域」とは、隣り合う光電変換層どうしの間に形成された領域を意味する。中間反射構造体は、隣り合う光電変換層が直接接して積層される場合には、それらの界面に形成することができ、隣り合う光電変換層が接合層又は他の層を介して積層される場合には、接合層又は他の層の中に形成してもよく、隣り合う光電変換層のいずれかと、接合層又は他の層(第3の光電変換層などの他の光電変換層を含む)との間に形成してもよい。
【0041】
本発明の多接合型太陽電池においては、上記のほか、多接合型太陽電池に用いられる当業者に周知の材料や層を、適宜選択して設けることができる。
【0042】
例えば、光入射側には透明電極層を設けることができる。透明電極層を構成する材料としては、ITO(酸化インジウム+酸化スズ)、ZnO、TiO、SnO、IZO(酸化インジウム+酸化亜鉛)などの透明導電性酸化物を用いることができる。
【0043】
また、例えば、光入射側とは反対側には裏面電極層を設けることができる。裏面電極層を構成する材料としては、Ag、Ag合金、Al、金属/透明電極などの多層構造からなる膜などを用いることができる。
【0044】
また、例えば、光入射側に備えられた透明電極層には、更に集電極層を設けることができる。集電極層を構成する材料としては、Ag、Al、Tiなどの金属、あるいはそれらのいずれかの金属からなる合金を用いることができる。また、集電極層は多層膜でもよいし、単層膜でもよい。
【0045】
これらの電極層は、スパッタリング法、真空蒸着法、スプレー製膜法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、めっき法などにより製膜することができる。
【0046】
また、例えば、本発明の多接合型太陽電池は、その各層の積層の工程において、レーザースクライブ加工等を施しつつ積層して、各層の選択的な位置に、基板表面方向に対して垂直方向に溝を設け、その溝から上方の層が下方の層に延在するようにして、集積化することができる(図10参照。)。
【0047】
また、例えば、本発明の多接合型太陽電池は、これを複数電気的に接続して太陽電池モジュールとすることができる。
【0048】
<本発明の実施の形態 その1>
図1には、本発明の実施の態様に係る第1の多接合型太陽電池を表した模式的部分断面図を示す。この多接合型太陽電池は、太陽電池の基板とは反対側から入射する光を受光して発電するサブストレート型太陽電池である。以下その製造方法について説明する。
【0049】
基板1としては、厚さ50μmのポリイミドフィルムを用いた。また、基板1上に裏面電極層2として、膜厚約200nmのAgをスパッタリング法により製膜した。
【0050】
次に、ボトム層となる第1の光電変換層3として、プラズマCVD法により堆積されるnip接合型の水素化微結晶シリコン(μc−Si:H)からなる層を製膜した。膜厚構成はn層30nm、i層2μm、p層30nmとした。
【0051】
次に、接合層41としてn型水素化微結晶シリコン(μc−Si:H)からなる層を5nmの膜厚で製膜した。
【0052】
次に、マグネトロン・スパッタリング装置の設定膜厚を5nmにしてAg−Al合金のスパッタリングを行い、Ag−Al合金粒を形成させた。なお、このAg−Al合金粒の構造については、走査型電子顕微鏡による観察により、その形成過程がVolmer―Weber型の成長であるところから、膜状の形態ではなく、ナノメートルオーダーでの微細な粒子状の構造体であることを確認した。スパッタリングの後、装置を大気開放することで、Ag−Al合金粒の表面に自然酸化皮膜を形成させて、中間反射構造体8を形成した。
【0053】
次に、接合層42としてn型水素化微結晶シリコン(μc−Si:H)からなる層を5nmの膜厚で製膜した。
【0054】
次に、トップ層となる第2の光電変換層5を製膜した。第2の光電変換層5としては、プラズマCVD法により堆積されるnip接合型の水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)からなる層を製膜した。膜厚構成はn層10nm、i層200nm、p層10nmとした。
【0055】
次に、第2の光電変換層5の上に透明電極層6を形成した。具体的には、スパッタリング法によりITO(Indium Tin Oxide)の透明電極を膜厚約70nmに製膜した。
【0056】
次に、マスクを用いた電子ビーム蒸着法によりTi/Agの集電極層7を膜厚約100nm/500nmに製膜した。
【0057】
<本発明の実施の形態 その2>
図2には、本発明の実施の態様に係る第2の多接合型太陽電池を表した模式的部分断面図を示す。この態様の多接合型太陽電池は接合層を形成しないで構成されている。すなわち、その製造方法は、上記図1で示した多接合型太陽電池の製造方法において、第1の光電変換層3を製膜した後に、マグネトロン・スパッタリング装置によるAg−Al合金のスパッタリングを行い、第1の光電変換層3上に中間反射構造体8を形成した。その後、上記図1で示した多接合型太陽電池の製造方法と同様にして、順次、第2の光電変換層5、透明電極層6、集電極層7を形成した。
【0058】
<本発明の実施の形態 その3>
図3には、本発明の実施の態様に係る第3の多接合型太陽電池を表した模式的部分断面図を示す。この態様の多接合型太陽電池では、中間反射構造体8が、接合層42と第1の光電変換層3との間の接合界面に形成されている。すなわち、その製造方法は、上記図1で示した多接合型太陽電池の製造方法において、第1の光電変換層3を形成した後に、マグネトロン・スパッタリング装置によるAg−Al合金スパッタリングを行い、第1の光電変換層3上に中間反射構造体8を形成した。その後、上記図1で示した多接合型太陽電池の製造方法と同様にして、順次、接合層42、第2の光電変換層5、透明電極層6、集電極層7を形成した。
【0059】
<本発明の実施の形態 その4>
図4には、本発明の実施の態様に係る第4の多接合型太陽電池を表した模式的部分断面図を示す。この態様の多接合型太陽電池では、中間反射構造体8が、接合層41と第2の光電変換層5との間の接合界面に形成されている。すなわち、その製造方法は、上記図1で示した多接合型太陽電池の製造方法において、中間反射構造体8を形成した後に、第2の光電変換層5を形成した。その後、上記図1で示した多接合型太陽電池の製造方法と同様にして、順次、透明電極層6、集電極層7を形成した。
【0060】
<本発明の実施の形態 その5>
図5には、本発明の実施の態様に係る第5の多接合型太陽電池を表した模式的部分断面図を示す。この態様の多接合型太陽電池の光電変換層は、トップ層(光入射側から第1層目)、ミドル層(光入射側から第2層目)、ボトム層(光入射側から第3層目)の3層から構成されており、中間反射構造体8が、接合層41と接合層42との間の接合界面に形成されている。すなわち、その製造方法は、上記図1で示した多接合型太陽電池の製造方法において、ボトム層となる第1の光電変換層3を製膜した後に、同じ製膜条件にて、設定膜厚をn層30nm、i層1μm、p層30nmとしてミドル層(図中、「第3の光電変換層9」で表す。)を製膜した。その後、上記図1で示した多接合型太陽電池の製造方法と同様にして、順次、接合層41、中間反射構造体8、接合層42、トップ層となる第2の光電変換層5、透明電極層6、集電極層7を形成した。
【0061】
<本発明の実施の形態 その6>
図6には、本発明の実施の態様に係る第6の多接合型太陽電池を表した模式的部分断面図を示す。この態様の多接合型太陽電池は、上記図5で示したトップ層、ミドル層、ボトム層の3層からなる光電変換層を有する多接合型太陽電池において、その接合層を形成しないで構成されている。すなわち、その製造方法は、上記図5で示した多接合型太陽電池の製造方法において、ミドル層を製膜した後に、マグネトロン・スパッタリング装置によるAg−Al合金のスパッタリングを行い、ミドル層(図中、「第3の光電変換層9」で表す。)上に中間反射構造体8を形成した。その後、上記図5で示した多接合型太陽電池の製造方法と同様にして、順次、第2の光電変換層5、透明電極層6、集電極層7を形成した。
【0062】
<本発明の実施の形態 その7>
図7には、本発明の実施の態様に係る第7の多接合型太陽電池を表した模式的部分断面図を示す。この態様の多接合型太陽電池は、上記図5で示したトップ層、ミドル層、ボトム層の3層からなる光電変換層を有する多接合型太陽電池において、中間反射構造体8が、接合層42とミドル層との間の接合界面に形成されている。すなわち、その製造方法は、上記図5で示した多接合型太陽電池の製造方法において、ミドル層を形成した後に、マグネトロン・スパッタリング装置によるAg−Al合金スパッタリングを行い、ミドル層(図中、「第3の光電変換層9」で表す。)上に中間反射構造体8を形成した。その後、上記図5で示した多接合型太陽電池の製造方法と同様にして、順次、接合層42、第2の光電変換層5、透明電極層6、集電極層7を形成した。
【0063】
<本発明の実施の形態 その8>
図8には、本発明の実施の態様に係る第8の多接合型太陽電池を表した模式的部分断面図を示す。この態様の多接合型太陽電池は、上記図5で示したトップ層、ミドル層、ボトム層の3層からなる光電変換層を有する多接合型太陽電池において、中間反射構造体8が、接合層41と第2の光電変換層5との間の接合界面に形成されている。すなわち、その製造方法は、上記図5で示した多接合型太陽電池の製造方法において、中間反射構造体8を形成した後に、第2の光電変換層5を形成した。その後、上記図5で示した多接合型太陽電池の製造方法と同様にして、順次、透明電極層6、集電極層7を形成した。
【符号の説明】
【0064】
1…基板
2…裏面電極層
3…第1のnip接合からなる光電変換層
4…積層領域
41…第1に形成したトンネル接合層
42…第2に形成したトンネル接合層
5…第2のnip接合からなる光電変換層
6…透明電極層
7…集電極層
8…表面を酸化させた中間反射構造体
9…第3のnip接合からなる光電変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層以上の光電変換層を含む多接合型太陽電池において、隣り合う光電変換層どうしの間に形成された積層領域に、該積層領域の平面方向に沿って島状に分布する、表面を酸化させた金属粒からなる中間反射構造体が形成されていることを特徴とする多接合型太陽電池。
【請求項2】
前記隣り合う光電変換層どうしは、互いに接して積層され、前記中間反射構造体は、両光電変換層の接合界面に形成されている請求項1記載の多接合型太陽電池。
【請求項3】
前記隣り合う光電変換層どうしは、接合層を介して積層され、前記中間反射構造体は、前記接合層の内部に形成されている請求項1記載の多接合型太陽電池。
【請求項4】
前記隣り合う光電変換層どうしは、接合層を介して積層され、前記中間反射構造体は、前記接合層といずれか一方の光電変換層との接合界面に形成されている請求項1記載の多接合型太陽電池。
【請求項5】
前記金属粒は、(1)Ag、Al、Ti、Zn、Sn、及びInからなる群から選ばれた金属、(2)Ag、Au、Al、Ti、Zn、Sn、及びInからなる群から選ばれた金属を複数用いて形成された合金、から選ばれた1種又は2種以上からなる、請求項1〜4のいずれか1つに記載の多接合型太陽電池。
【請求項6】
光入射側から第1層目の光電変換層が非晶質の材料からなる、請求項1〜5のいずれか1つに記載の多接合型太陽電池。
【請求項7】
請求項1〜6記載の多接合型太陽電池を複数電気的に接続したことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項8】
少なくとも2層以上の光電変換層を含む多接合型太陽電池の製造方法において、少なくとも下記の工程を有することを特徴とする多接合型太陽電池の製造方法。
(1)基板に第1の光電変換層を積層する工程。
(2)前記第1の光電変換層の前記基板とは反対側に金属を粒状に積層して、前記第1の光電変換層の平面方向に対して島状に分布するように前記金属からなる金属粒を形成する工程。
(3)前記金属粒を酸化して中間反射構造体とする工程。
(4)前記第1の光電変換層の前記中間反射構造体が形成されたのと同じ側に、第2の光電変換層を積層する工程。
【請求項9】
前記(1)の工程と前記(2)の工程との間、又は前記(3)の工程と(4)の工程との間で、接合層を形成する工程を行う、請求項8記載の多接合型太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記(1)の工程の後に接合層を形成する工程を行い、該接合層を形成する工程の途中で、前記(2)及び(3)の工程を行う、請求項8記載の多接合型太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記(3)の工程を、前記金属粒を大気、Oガス、又は希ガス-O混合ガスに暴露することより行う、請求項8〜10のいずれか1つに記載の多接合型太陽電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−124474(P2011−124474A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282652(P2009−282652)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】