説明

多数の高速弾丸に対する軽量装甲

身体装甲、ヘルメット、胸当て、ヘリコプター座席、スポールシールド及び他の適用における多数の高速弾丸に対する防弾性、衝撃吸収性及び貫通抵抗性に対する用途を有する繊維強化物品。物品は、少なくとも一つの前面の積層物及び第2の積層物から構成され、前面の積層物は、ポリマー基質中の強力な無機質繊維の少なくとも一つのプライを含んでなり、そして第2の積層物は、ポリマー基質中の強力なポリマー繊維の少なくとも一つのプライを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、身体装甲、ヘルメット、胸当て、ヘリコプター座席、破片シールド(spall shield)並びに他の適用のための、多数の高速弾丸に対する防弾性、衝撃吸収性及び貫通抵抗性のための用途を有する繊維強化物品に関する。
【0002】
2.関連技術の説明
約1000ft/秒(305m/秒)の速度のハンドガンの弾薬に対する保護のために設計された近代的身体装甲は、通常柔軟な束にいっしょに撚り合わされた繊維の織られた布地又は繊維の不織シートの薄い層から形成される。然しながら、2000ft/秒(610m/秒)を超える速度を持つ重いライフルの弾丸を阻止するために設計された身体装甲は、重量、厚さ、柔軟性、多数の命中に対する性能、一過的変形(鈍的外傷)及び耐久性の相対する要求を満足するために、一般的により複雑な構造を必要とする。装甲は、弾丸を変形し又はそのエネルギーを吸収するために、硬質の前面及び/又は後部構成要素を組込むことができる。セラミックのような無機質物質が、その高い硬度及び金属と比較して低い密度のために、このような装甲に用途を見出している。セラミックの普通に使用される形態である板及びタイルは、しばしば弾丸を変形する過程において粉砕され、そして従ってその後続の弾丸の命中に対してわずかな保護しか提供しない。この問題は、装甲を貫通するために設計された鉄鋼貫通型弾頭を含有する弾丸の場合、特に明白である。
【0003】
従来の技術に記載された多くの防弾構造があるが、ほとんどはライフル弾丸又は多数の命中性能に対する保護を指向していない。米国特許第4,111,097号は、発泡プラスチック中の鋼鉄及びタングステンの金網を含んでなる積層多層装甲を記載している。米国特許第4,868,040号は、前面の織物布地複合材、セラミックタイルエネルギー吸収体及び後部の織物布地複合材を含んでなる三要素複合材を記載している。米国特許第5,221,807号は、規則正しい配列の小室を有する前面のセラミック板、蜂の巣構造を有する中間体層及びKevlar(登録商標)繊維、セラミック基質複合材又は鉄鋼であることができる後部板を含んでなる装甲を記載している。米国特許第5,545,455号は、いっしょに縫い合され、そして繊維質の帯によって連続的に取り囲まれたポリマー繊維質層を含んでなる硬質複合材を記載している。縫い合せ繊維は、無機質繊維であることができる。米国特許第5,456,156号は、金属強化セラミック及び丈夫な裏打ち板を含んでなる装甲を記載している。米国特許第5,635,288号は、セラミック、鉄鋼、ガラス、アルミニウム、チタン又は黒鉛からなる一体化前面板及びプラスチックフィルムによってその外側表面で結合された一方向に方向付けされたポリマー繊維を含んでなる後部層を含んでなる硬質複合材を記載している。
【0004】
米国特許第5,677,029号は、多数の継目が形成され、そして装甲が継ぎ目の方向に沿って柔軟であるように位置された、切り嵌めされた三角又は六角の形状の硬質物体を含んでなる表面を持つ、柔軟性繊維複合材の装甲を記載している。硬質物体は、ポリマー又は無機質繊維で強化することができる。米国特許第6,035,438号は、高強度の繊維の層間にサンドイッチされたうろこ状のパターンに置かれたセラミックのディスクを含んでなる身体装甲を記載している。米国特許第6,510,777号は、同様な構造の乗り物の装甲を記載している。米国特許第6,127,291号は、ポリマー又は無機質弾道繊維の織物の下部プライを含んでなる柔軟性耐貫通性複合材を記載している。米国特許第6,323,145B1号は、高強度のポリマー又は無機質繊維の耐貫通性織り交ぜ糸構造を記載している。米国特許第6,389,594号は、樹脂封入によって少なくとも10気圧のアイソスタシー的圧力下に維持されたセラミック板を含んでなる対弾道物品を記載している。
【0005】
米国特許第6,408,733B1号は、一体化セラミックの前面の構成要素及びアラミド繊維複合材の下部基質を含んでなる多数の弾丸に対する保護のための装甲を記載している。米国特許第6,532,857B1は、互いに間隔を空けられたエラストマーでカプセル化されたセラミックタイル及び所望による金属の裏打ち板を含んでなるセラミックアレイ装甲を記載している。米国特許第6,601,497B2は、包装物質中に拘束された多角形のセラミックタイルを含んでなる装甲の構成要素を記載し、ここにおいて包装物質は、高強度繊維、ポリマー複合剤基質中の高強度繊維、金属基質中の高強度繊維、高強度金属帯、及び高強度金属線の一つを含んでなることができる。
【0006】
米国特許出願2001/0053645A1は、少なくとも一つの硬質装甲層及び少なくとも一つの繊維質装甲層を含んでなる多層防弾物品を記載し、ここにおいて一つの繊維質プライの繊維は、隣接する繊維質プライの繊維に対して45°より小さい角度をなす。硬質装甲層の物質は、金属、金属/セラミック複合材、セラミック、硬化ポリマー又はこれらの組合せである。
【0007】
上記に引用したそれぞれの特許中の物品は、最先端の技術の改良を表す。然しながら、本発明の物品の具体的な構造を記載していなく、そして本発明によって満たされる必要性の全てを満足していない。高速弾丸に対する耐多重命中能力を有する軽量の防弾及び耐貫通性複合物を提供することが本発明の主たる目的である。
【0008】
発明の概要
本発明は:
a)一つ又はそれより多いプライを含んでなる前面の積層物であって、前記前面の積層物は、ポリマー基質中の一方向性の無機質繊維の複数の層を含んでなる少なくとも一つの前面のプライを有し、プライ中の前記層は、同一の成分及び構造を有し、前記前面の積層物の隣接するプライ中の前記層は、お互いに組成及び/又は構造において異なり、前記無機質繊維は、少なくとも2.0GPaの引張強度及び4.0g/cmより小さい密度を有するフィラメントで構成され、ここにおいてそれぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とある角度をなす、前記前面の積層物;及び
b)前記前面の積層物と表面同士(face-to face)の関係で一体化された第2の積層物であって、前記第2の積層物は、一つ又はそれより多いプライを含んでなり、それぞれのプライは、網状構造のポリマー繊維の複数の層を含んでなり、前記ポリマー繊維は、少なくとも17g/dのテナシティーを有し、前記網状構造は、ポリマー基質物質を所望により含有していてもよく、前記第2の積層物中のプライは、同一の組成及び構造を有する層によって規定され、これは、隣接するプライ中の前記層の組成及び/又は構造とは異なる、前記第2の積層物;
を含んでなる防弾及び耐貫通性物品である。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、身体装甲、ヘルメット、胸当て、ヘリコプター座席、破片シールド及び他の適用における多数の高速弾丸に対する防弾、衝撃吸収性及び耐貫通性に対して用途を有する繊維強化物品である。
【0010】
本発明は、表面同士で一体化されたa)前面の積層物及びb)第2の積層物を含んでなる防弾及び耐貫通性物品である。前面の積層物は、一つ又はそれより多いプライを含んでなり、その前面のプライは、基質中の一方向性の無機質繊維の複数の層を含んでなる。一つのプライは、同一組成及び構造を有し、そして隣接するプライ中の層とは組成及び/又は構造において異なっている層によって規定される。無機質繊維は、少なくとも2.0GPaの引張強さ及び4.0g/cmより小さい密度を有するフィラメントを含んでなる。それぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とは、ある角度をなす。
【0011】
第2の積層物は、一つ又はそれより多いプライを含んでなり、そのそれぞれは、網状構造のポリマー繊維の複数の層を含んでなる。ポリマー繊維は、少なくとも17g/dのテナシティーを有する。網状構造は、基質物質を所望により含有していてもよい。一つのプライは、同一組成及び構造を有し、そして隣接するプライ中の層とは組成及び/又は構造において異なった層によって規定される。
【0012】
本明細書中で使用される場合、“積層物”は、重ねて置かれたシート様の構成要素(層)が、例えばその末端を又はその角で縫い合せによって緩く、又は例えば全面積の結合によって強固に、或いは例えば止め金、鋲締め、縫い合せ、部分的結合、又は他の適した手段によっていずれもの中間の水準で、のいずれかで一体化された構造を意味する。
【0013】
本発明の目的のために、繊維は、その長さの寸法が、幅及び厚さの横方向の寸法よりはるかに大きい細長い物体である。従って、“繊維”は、本明細書中で使用される場合、規則的な又は不規則な断面を、連続又は不連続の長さで有する、一つ又は複数のフィラメント、リボン、条片、等を含む。糸は、連続又は不連続の繊維の集成体である。
【0014】
本明細書中で使用される場合、“繊維の網状構造”又は“網状構造”は、所定の配置に配列された複数の繊維、又は撚られた若しくは撚られていない糸を形成するためにいっしょにまとめられた複数の繊維を意味し、この糸は、所定の構成に配列される。繊維の網状構造は、各種の構造を有することができる。例えば、繊維又は糸は、フェルト、編物、組紐、織布、無作為に方向づけられた不織布(例えばエアレイド)、一方向に方向づけられた不織布に構築することができ、又はいずれもの慣用的な技術によって網状構造に形成することができる。特に好ましい網状構造の構成によれば、繊維は、これらがお互いに網状構造層の長手方向に沿って実質的に平行であるように一方向的に整列される。然しながら、これは、当技術において知られるような、他の繊維を安定化する目的のために、わずかな数の平行及び/又は平行ではない繊維の使用を排除することを意味しない。
【0015】
更なる態様において、本発明の物品は、先に記載したような、そして表面同士で一体化されたa)前面の積層物及びb)第2の積層物、これらと組合わされ第2の積層物と表面同士で重ね合わされたc)第3の積層物、を含んでなる。
【0016】
第3の積層物は、更に一つ又はそれより多いプライを含んでなり、そのそれぞれは、基質を含有しない網状構造のポリマー繊維の複数の層を含んでなる。ポリマー繊維は、少なくとも17g/dのテナシティーを有し、そして一つのプライは、同一組成及び構造を有し、そして隣接するプライ中の層とは組成及び/又は構造において異なる層によって規定される。
【0017】
もう一つの態様において、本発明の物品は、先に記載したような、そして表面同士で一体化されたa)前面の積層物及びb)第2の積層物、これらと組合わされ第2の積層物と表面同士で一体化されたc)第3の積層物、を含んでなる。この第3の積層物は、更に一つ又はそれより多いプライを含んでなり、そのそれぞれは、ポリマー基質中の一方向性の無機質繊維の複数の層を含んでなる。ここで一つのプライは、同一組成及び構造を有し、そして隣接するプライ中の層とは組成及び/又は構造において異なる層によって規定される。無機質繊維は、少なくとも2.0GPaの引張強度及び4.0g/cmより小さい密度を有する。それぞれの層の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とはある角度をなす。
【0018】
なおもう一つの態様において、本発明の物品は、表面同士で一体化されたa)前面の積層物及びb)第2の積層物、第2の積層物と表面同士で重ね合わされたc)第3の積層物、を含んでなる。
【0019】
この態様において、第1の積層物は、少なくとも三つのプライを含んでなり、前面のプライは、複数の一方向性の無機質繊維を含んでなり、第2のプライは、チタン金属板を含んでなり、そして第3のプライは、複数の一方向性の無機質繊維を含んでなる。第2のプライを形成するチタン金属の板は、全表面を第1及び第3のプライによって埋めこまれている。一つのプライは、同一組成及び構造を有し、そして隣接するプライ中の層とは組成及び/又は構造において異なる層によって規定される。無機質繊維は、少なくとも2.0GPaの引張強度、及び4.0g/cmより小さい密度を有するフィラメントから構成される。先の態様のように、それぞれの層の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とはある角度をなす。
【0020】
この態様の第2及び第3の層は、一つ又はそれより多いプライを独立に含んでなり、そのそれぞれは、網状構造のポリマー繊維の複数の層を含んでなる。ポリマー繊維は、少なくとも17g/dのテナシティーを有し、そして網状構造は、ポリマー基質物質を所望により含有していてもよい。先の態様のように、一つのプライは、同一組成及び構造を有し、そして隣接するプライ中の層とは組成及び/又は構造において異なる層によって規定される。
【0021】
それぞれの態様において、前面の積層物は、到来する脅威の方向に面することは理解されるものである。
図1は、前面の積層物50及び第2の積層物60を含んでなる本発明の一つの物品100の断面図である。例示された物品において、前面の積層物50は、ポリマー基質中の一方向性の無機質繊維の複数の層を含んでなる単一のプライから構成される。それぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とはある角度をなし、そしてそれぞれの層中の組成及び構造は、同一である。第2の積層物60は、前面の積層物50と表面同士で結合している。第2の積層物60も、更にポリマー基質中の一方向性のポリマー繊維の複数の層を含んでなる単一のプライから構成される。それぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とはある角度をなし、そしてそれぞれの層中の組成及び構造は、同一である。
【0022】
図2は、二つのプライ10及び20からなる前面の積層物50;二つのプライ30および40からなる第2の積層物60;並びに一つのプライからなる第3の積層物70を含んでなる本発明のもう一つの態様200の断面図である。第1の積層物50のプライ10及び20は、異なった無機質繊維及び/又は異なった基質及び/又は異なった構造の層からなることによって、お互いに識別される。第2の積層物60のプライ30及び40は、異なったポリマー繊維及び/又は異なった基質若しくは基質がないこと及び/又は異なった構造の層からなることによって、お互いに識別される。積層物70は、それぞれの層の組成及び構造が同一である単一のプライからなる。
【0023】
図3は、前面の積層物80、第2の積層物85、及び第3の積層物90を含んでなる本発明のなおもう一つの物品300の断面図である。前面の積層物80は、三つのプライからなる。前面のプライ81は、ポリマー基質中の一方向性の無機質繊維の複数の層からなり、ここにおいてそれぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とはある角度をなし、そしてそれぞれの層の組成及び構造は、同一である。第1の積層物の第2のプライ82は、第1及び第3のプライ(81及び83)によって全表面を埋めこまれたチタン金属の板である。第1の積層物80の第3のプライ83は、ポリマー基質中の一方向性の無機質繊維の複数の層からなり、ここにおいてそれぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とはある角度をなし、そしてそれぞれの層の組成及び構造は、同一である。第2の積層物85は、ポリマー基質中の一方向性のポリマー繊維の複数の層からなる単一のプライから構成され、ここにおいてそれぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とはある角度をなし、そしてそれぞれの層の組成及び構造は、同一である。第3の積層物90も、更にポリマー基質中の一方向性のポリマー繊維の複数の層からなる単一のプライから構成され、ここにおいてそれぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とはある角度をなし、そしてそれぞれの層の組成及び構造は、同一である。
【0024】
好ましくは、本発明の物品中のそれぞれの積層物は、平衡構成構造である。平衡構成積層構造は、全ての層が、積層物の中心線に対して±θ°の対で、又は0/90°でのみ見出されるものである。好ましくは、隣接する層中の繊維間の角度は、45ないし90度である。
【0025】
好ましくは、無機質繊維を構成するフィラメントは、少なくとも2.4GPaの引張強さ及び3.4g/cmより小さい密度、更に好ましくは、少なくとも3.4GPaの引張強さ及び3.4g/cmより小さい密度、そして最も好ましくは、少なくとも4.0GPaの引張強さ及び3.1g/cmより小さい密度を有する。
【0026】
本発明の積層物中で有用な無機質繊維のいくつかの例を、表Iに収載する。表I中の略語“CVD”は、化学蒸着を意味する。
プライは、表I中に収載した繊維で、単一で又は組合せで構築することができる。異なった組成のフィラメントを、単一の繊維/糸に組合せることができ、又は一方向性の層を、規則的又は不規則的配列でお互いに平行に置かれた異なった組成の繊維/糸で構築することができる。一つのプライは、同一の組成及び構造を有し、そして隣接するプライ中の層とは組成及び/又は構造において異なる層によって規定される。一つの積層物は、それぞれが、異なった繊維及び/又は異なった基質を有するいくつかのプライで構築することができる。一つの積層物は、また、それぞれが、同一の無機質繊維及び基質を有するが、しかし異なったフィラメント及び/又は基質濃度を有するいくつかのプライで構築することもできる。
【0027】
【表1】

【0028】
好ましくは、積層物を構成する無機質繊維は、タングステン上に化学蒸着されたホウ素又は炭素上に蒸着された炭化ケイ素、及びこれらの組合せである。好ましくは、無機質繊維は、積層物の60ないし95重量パーセントを構成する。
【0029】
第2の積層物又は第3の積層物のプライを構成するポリマー繊維は、好ましくは高分子量ポリエチレン、アラミド、ポリベンズアゾール、硬質ロッドポリマー繊維(M5(登録商標)ブランドのような)及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語ポリエチレンは、小量の分枝鎖又は100個の主鎖炭素原子当り5個の修飾単位を超えないコモノマーを含有することができ、そして更に約50重量%より多くないアルケン−1−ポリマー、特に低密度ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリブチレン、モノオレフィンを主たるモノマーとして含有するコポリマー、酸化されたポリオレフィン、グラフトポリオレフィンコポリマー及びポリオキシメチレンのような一つ又はそれより多い重合性添加物、或いは抗酸化剤、潤滑剤、紫外線遮断剤、着色剤等のような低分子量添加物を混合物として含有することができる、主として直鎖のポリエチレン物質を意味する。
【0031】
本発明の目的のための高分子量ポリエチレンは、約5デシリットル/グラム(dl/g)ないし約35dl/gの135℃におけるデカリン中の固有粘度を有する。このような高分子量ポリエチレン繊維は、米国特許第4,137,394号又は米国特許第4,356,138号中に記載されているように溶液中で成長させることができるか、或いはフィラメントは、ドイツ特許出願公開3,004,699及び英国特許第2051667号中に記載されているように、そして特に米国特許第4,413,110号に記載されているように、ゲル構造を形成するために溶液から紡糸され、そして、Honeywell International Inc.によってSPECTRA(登録商標)の商標で市販されている。米国特許第4,413,110号の開示は、これが本明細書と相反しない限りにおいて本明細書中に参考文献として援用される。ポリエチレン繊維は、また、米国特許第5,702,657号に記載されているような圧延及び延伸法によって製造することができ、そしてITS Industries Inc.によってTENSYLON(登録商標)の商標で市販されている。
【0032】
アラミド繊維の場合、芳香族ポリアミドから形成される適した繊維は、米国特許第3,671,542号及び5,010,168号に記載され、これらは、本明細書中に参考文献として援用される。アラミド樹脂は、E.I.Dupont Co.によってKEVLAR(登録商標)及びNOMEX(登録商標)の商標で;Teijin Twaron BVによってTWARON(登録商標)、TECHNORA(登録商標)及びTEIJINCONEX(登録商標)の商標で;JSC Chim VoloknoによってARMOSの名称で;そしてKamensk Volokno JSCによってRUSAR及びSVMの名称で商業的に製造されている。中程度に高い弾性率及びテナシティー値を有する、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)及びp−フェニレンテレフタルアミドアラミドコポリマー繊維は、本発明において特に有用である。本発明において有用なp−フェニレンテレフタルアミドコポリマーアラミドの例は、コ−ポリ−(パラフェニレン3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド)である。更に本発明の実施において有用なものは、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維である。
【0033】
本発明の実施のために適したポリベンズアゾール繊維は、例えば本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第5,286,833号、5,296,185号、5,356,584号、5,534,205号及び6,040,050号中に開示されている。好ましくは、ポリベンズアゾール繊維は、Toyobo Co.からのZYLON(登録商標)ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)繊維である。
【0034】
繊維のM5(登録商標)ブランドの構造を有する適した硬質ロッドポリマーは、本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第5,674,969号、5,939,553号、5,945,537号及び6,040,478号中に開示されている。好ましい繊維は、Magellan Systems International,LLC.から入手可能なM5(登録商標)ブランドである。
【0035】
第2の積層物又は第3の積層物のプライ中の繊維の網状構造は、上記に収載したポリマー繊維で、単一で又は組合せで構築することができる。異なった成分のフィラメントを、単一の繊維に組合せることができる。一方向性の繊維の網状構造は、規則的又は不規則的配列のお互いに平行に置かれた異なった組成の繊維で構築することができる。フェルト、組紐、編物及び織物布地は、異なった方向の異なった繊維を使用することができる。一つのプライは、同一の組成及び構造を有し、隣接するプライ中の層とは組成及び/又は構造において異なる層によって規定される。第2の積層物又は第3の積層物は、それぞれ異なったポリマー繊維、異なった基質又は基質がないこと、或いは異なった繊維の網状構造を有するいくつかのプライで構築することができる。異なったポリマー繊維が異なった速度の発射体に対する異なった弾道的有効性を有するので、前面の積層物に最も近い第2の積層物を、高速発射体に対して最も有効である繊維を含有するプライで構築することが好ましい。
【0036】
好ましくは、ポリマー繊維は、第2の積層物の75ないし100重量パーセントを構成し、残部は、基質物質である。
無機質繊維網状構造中に使用されるポリマー基質は、好ましくは、ASTM D638−94bによって測定される、少なくとも400,000psi(2.76GPa)の初期引張弾性率を有する。更に好ましくは、前面の積層物中の少なくとも一つのプライ中のポリマー基質は、ASTM D638−94bによって測定される、少なくとも1×10psi(6.9GPa)の初期引張弾性率を有する。本発明の積層物において有用な高弾性率の基質樹脂は、熱硬化性アリル、アミノ、シアネート、エポキシ、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ビスマレイミド、硬質ポリウレタン、シリコーン、ビニルエステル並びにこれらのコポリマー及び配合物を含む。基質樹脂が、必要な初期引張弾性率を保有することのみが重要である。熱硬化性ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0037】
好ましくは、ビニルエステルは、多官能性エポキシ樹脂の不飽和モノカルボン酸、通常メタクリル酸又はアクリル酸によるエステル化によって製造されるものである。例示的なビニルエステルは、アジピン酸ジグリシジル、イソフタル酸ジグリシジル、アジピン酸ジ−(2,3−エポキシブチル)、シュウ酸ジ−(2,3−エポキシブチル)、コハク酸ジ−(2,3−エポキシヘキシル)、マレイン酸ジ−(3,4−エポキシブチル)、ピメリン酸ジ−(2,3−エポキシオクチル)、フタル酸ジ−(2,3−エポキシブチル)、テトラヒドロフタル酸ジ−(2,3−エポキシオクチル)、マレイン酸ジ−(4,5−エポキシドデシル)、テレフタル酸ジ−(2,3−エポキシブチル)、チオジプロピオン酸ジ−(2,3−エポキシペンチル)、ジフェニルジカルボン酸ジ−(5,6−エポキシテトラデシル)、スルホニルジ酪酸ジ−(3,4−エポキシヘプチル)、トリ−(2,3−エポキシブチル)−1,2,4−ブタントリカルボキシレート、マレイン酸ジ−(5,6−エポキシペンタデシル)、アゼライン酸ジ−(2,3−エポキシブチル)、クエン酸ジ−(3,4−エポキシペンタデシル)、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸ジ−(エポキシオクチル)、マロン酸ジ−(4,5−エポキシオクタデシル)、ビスフェノール−A−フマル酸ポリエステル及び同様な物質を含む。
【0038】
最も好ましいものは、Dow Chemical Companyによって製造されているDERAKANE(登録商標)樹脂のようなエポキシ基剤のビニルエステル樹脂である。
【0039】
第2の積層物のプライ中で所望により使用されるポリマー基質は、好ましくは、ASTM D638−94bによって測定される、6000psi(41.3MPa)より少ない初期引張弾性率を有するエラストマーである。適当に低い弾性率を有する広い範囲のエラストマー物質及び配合物を、本発明において使用することができる。例えば、いずれもの次の物質:ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、ポリスルフィドポリマー、ポリウレタンエラストマー、クロロスルフィン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、フタル酸ジオクチル又は当技術において公知の他の可塑剤を使用する可塑化ポリ塩化ビニル、ブタジエンアクリロニトリルエラストマー、ポリ(イソブチレン−コ−イソプレン)、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリエーテル、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、熱可塑性エラストマー、エチレンのコポリマーを使用することができる。好ましいものは、共役ジエンのブロックコポリマー及びビニル芳香族コポリマーのである。これらのポリマーの多くは、Kraton Polymers,Inc.によって商業的に製造されている。
【0040】
別の方法として、本発明の物品が、硬質装甲として使用されるか、又は構造的な役割を有する場合、第2の積層物のプライ中に所望により使用されるポリマー基質は、好ましくは、ASTM D638−94bによって測定される、少なくとも400,000psi(2.76GPa)、更に好ましくは1×10psi(6.9GPa)の初期引張弾性率を有する。熱硬化性ビニルエステル樹脂が好ましい。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語“基質(matrix)”は、層中の又はその間の空隙体積の充填のいずれもの特定の程度を意味しない。積層物の衝撃特性は、繊維含有率によってほとんど完全に決定され、そして積層物の重量を最小にすることが所望されるために、基質含有率は、好ましくは特定の製造方法の要求に一致して、可能な限り低く保たれる。層を安定化し、そして頑強な製造操作を維持するために必要な基質の水準は、当業者にとって既知であるものである。
【0042】
基質樹脂は、各種の方法で繊維に適用することができ、そして当業者にとって既知のいずれもの方法を使用することができる。好ましくは、基質中の一方向性繊維の層は、図4に略図的に例示した連続法で形成される。繊維は、クリール102から供給され、そしてコーミングステーション104を通過して、一方向性の網状構造が形成される。繊維を横方向に周期的又は他の配列で繊維の網状構造を製造するように、異なった繊維をクリールに配列することができる。次いで繊維の網状構造物は、紙又はプラスチックフィルム或いはプラスチックシートの基質106であることができる支持体ウェブ上に置かれる。基質組成物が108において繊維の網状構造物に適用される。基質組成物は、溶媒希釈剤を含有することができ、又はこれは、容易な適用のために水性分散物の形態であることができる。次いで被覆された繊維の網状構造物は、一対のローラー110を通過する。ローラーは、基質組成物を繊維中に広げる。ローラーは、本明細書と矛盾しない範囲で、本明細書中に参考文献として援用される米国特許第5,093,158号に記載されているように非均質に分布された基質を作るように設計することができる。次いで被覆された繊維の網状構造物は、加熱されたオーブン112を通過して、基質組成物中のいずれもの溶媒又は水が蒸発される。ニップローラー116が、支持体ウェブ及びプレプレグを系を通して引張るために使用される。次いで層となったものである基質及びプレプレグは、本発明の物品の構築のための用意としてローラー118に巻き取ることができる。
【0043】
好ましい積層物のプライは、好ましくは、先に記載したような一方向性プレプレグの連続ロールから、本明細書と矛盾しない範囲において、本明細書中に参考文献として援用される、米国特許第5,173,138号又は5,766,725号の方法を使用する連続クロスプライ操作によって、又は手積み成形、或いはいずれもの適した手段によって製造される。米国特許第5,173,138号の装置及び図面に関して、一つのプレプレグロールは、クロスプライ機械の巻出ロール11上に置かれ、そして第2のプレプレグロールは、巻出ロール17上に置かれる。支持体ウェブは、プレプレグから剥ぎ取ることができ、又はこれは、最終積層物の一部となることができる。
【0044】
プレプレグロールの繊維組成は、同一であるか又は異なっていることができる。プレプレグ(層)は、クロスプライ装置中で熱及び圧力の適用によって圧密化される。架橋可能な基質樹脂は、一般的に構築のこの段階では硬化されない。
【0045】
層の一つより多い対を持つ好ましい積層物のプライを構築するために、クロスプライされた製品は、それ自体クロスプライされ、そして再び複数の回数クロスプライされて、所望する積層物構造を製造することができる。それぞれのクロスプライ操作において、層の数を、二倍にすることができる。別の方法として、第2及びその後のクロスプライ操作は、クロスプライされるプレプレグ中の異なった数の層で行うことができる。連続ロール形成に対して層の数が大きくなりすぎた場合、クロスプライは手積み又はいずれもの適した手段によって行うことができる。
【0046】
最後に、プライは、表面同士をいっしょに積み重ねることによって組立てられる。プライは、いずれもの熱硬化性基質樹脂を硬化するために十分な圧力下及び温度で結合することによって一体化することができる。存在する繊維及び基質の種類によるが、約90℃ないし約160℃の温度、及び約100psiないし約2500psi(69−17,000kPa)の圧力が使用される。
【0047】
本発明の物品は、今まで見られなかった軽量及び多数の高速弾丸に対する防弾性の組合せを有する。重量効率の一つの測定は、V50速度における積層物の比エネルギー吸収率(specific energy absorption)である。V50速度は、弾丸の50%が、MIL−STD662Eによって決定されるような積層物を貫通するものである速度である。好ましくは、本発明の積層物は、M80実包(ball)の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって衝撃を受けた場合、V50速度における少なくとも100J−m/kgの比エネルギー吸収率を有する。
【0048】
意外なことに、小さい面積に衝撃を与える後続の弾丸による貫通に対する本発明の物品の抵抗性は、多数回の命中後でさえ影響されないままである。なお更に意外なことに、本発明の物品は、装甲を貫通するために設計された鋼鉄の弾芯を含有する弾丸による多数回の命中による貫通に対するその抵抗性を維持する。これは、一番目の弾丸によって粉砕される強化されていない一体化セラミック構成要素を有する物品とは顕著に対照的である。好ましくは、本発明の物品は、M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃を受けた場合、一番目の弾丸の最小貫通速度の90%より小さくない、更に好ましくは一番目の弾丸の最小貫通速度の95%より小さくない3番目の弾丸に対する最小貫通速度を有する。
【0049】
なお更に好ましくは、本発明の物品は、M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃を受けた場合、一番目の弾丸の最小貫通速度の90%より小さくない、再び更に好ましくは一番目の弾丸の最小貫通速度の95%より小さくない5番目の弾丸に対する最小貫通速度を有する。
【0050】
なお更に好ましくは、本発明の物品は、M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃を受けた場合、一番目の弾丸の最小貫通速度の90%より小さくない、最も好ましくは一番目の弾丸の最小貫通速度の95%より小さくない7番目の弾丸に対する最小貫通速度を有する。
【0051】
好ましくは、更に、本発明の物品は、鉄鋼貫通型弾頭の弾芯を持つ7.62×39の56型実包の123gr.(7.97g)(ロシアのAK−47)の弾丸で、少なくとも1900ft/秒(579m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続して衝撃を受けた場合、一番目の弾丸の最小貫通速度の90%より小さくない3番目、5番目又は7番目の弾丸に対する最小貫通速度を有する。
【0052】
如何にして本発明が作用するかについて特別の理論に束縛されるものではないが、前面の積層物中の無機質繊維の高い硬度が、同一物質の一体化した板で行われるものであるものと、同様な方法で変形し、そして弾丸を遅くするために作用すると考えられる。然しながら、繊維が一方向性の配列に配置されているために、繊維の破断は、その長さに沿った短い距離に限定される。更に、繊維間に直接の接続が存在する織物の網状構造とは対照的に、弾丸の衝撃波は、基質を通して横方向で隣接しているが、しかし接続されていない繊維に伝達されるときに減衰される。従って、前面の積層物の与えられた面積中の多くの繊維は無傷のままであり、そして後続の弾丸を変形し、そして遅くすることの機能を行うために利用可能である。
【0053】
以下の実施例は、本発明のより完全な理解を提供するために与えられる。本発明の原理を例示するために記載された具体的な技術、条件、物質、比率及び報告されたデータは、例示であり、そして本発明の範囲を制約すると解釈されるべきではない。
【0054】
実施例
比較実施例
一体化炭化ケイ素(SiC)の前部板及びSiC板に結合された一方向性高分子量ポリエチレン繊維の層からなる後部積層板からなる積層物のパネルを構築した。SiCの前部板は、15.2cm×15.2cm×0.587cmの寸法を有し、そしてこれは、3.76lbs/ft(18.38Kg/m)の面密度を有していた。SiC板は、Saint−Gobain Advanced Ceramics,Niagra Falls,NY.によって製造された。これは、3.10g/cmの密度、410GPaの弾性率及び2800kg/mmのKnoop硬度を有するα−SiCの焼成された形態であった。
【0055】
後部積層物は、熱及び圧力下でいっしょに結合されたHoneywell International Inc.から入手の56枚のSPECTRA SHIELD(登録商標)PCRシートからなり、それぞれのシートは、熱可塑性エラストマーの基質中の高分子量ポリエチレン繊維の二枚の一方向性層からなり、そして0°/90°でクロスプライされていた。後部積層物の厚さは、0.3インチ(0.76cm)であり、そしてこれは、1.51lbs/ft(7.38Kg/m)の面密度を有していた。積層パネルの全面密度は、5.27ポンド/ft(25.75Kg/m)であった。
【0056】
1.35cmの厚さの積層パネルを、二発のM80実包の7.62×51mmの147グレイン(9.53g)の弾丸で連続して射撃した。3081ft/秒(939m/秒)の速度で射撃した一番目の弾丸は、積層パネルを貫通しなかったが、しかし前面のSiC板を粉砕した。わずか1625ft/秒(495m/秒)の速度で射撃した2番目の弾丸は、積層パネルを貫通した。
【0057】
実施例1
タングステン上に化学蒸着された(CVD)ホウ素繊維の一方向性プレプレグテープを、Specialty Materials,Inc,Lowell,MA.から入手した。CVDホウ素フィラメントは、0.004インチ(0.0102cm)の直径であり、そして2.60g/cmの密度及び3.44GPaの引張強さを有していた。CVDホウ素繊維は、67重量パーセントがプレプレグテープであり、残部はエポキシ樹脂であった。34本のCVDホウ素繊維/エポキシの一方向性テープを0°/90°でクロスプライし、そして121℃、及び1.0MPaでプレス中で前面の積層物に形成した。この15.2cm×15.2cm×0.526cm積層物の面密度は、2.0lbs/ft(9.77Kg/m)であった。
【0058】
第2の積層物を、熱及び圧力下でいっしょに結合したHoneywell International Inc.から入手した74枚のSPECTRA SHIELD(登録商標)PCRシートから形成し、それぞれのシートは、基質中の高分子量ポリエチレン繊維の二枚の内部の一方向性層からなり、0°/90°でクロスプライされ、そしてそれぞれの表面に外部のプラスチックフィルムを有していた。基質は、200psi(1.4MPa)の引張弾性率を有するスチレン−イソプレン−スチレン熱可塑性エラストマーであった。高分子量ポリエチレン繊維は、30g/dのテナシティーを有し、そして積層物の80重量パーセントを構成していた。この第2の積層物を、第1の積層物と表面同士で一体化(結合)して、4.0lbs/ft(19.6Kg/m)の面密度を有する本発明のパネル物品を作製した。
【0059】
この1.54cmの厚さのパネルを、7.62×51mmの147グレイン(9.53g)の鉄鋼ジャケットの連続した弾丸によって連続的に射撃し、そして以下の表II中に示す結果を得た。弾丸は、パネルの前面の積層物に衝撃を与えた。
【0060】
【表2】

【0061】
2719ft/秒(829m/秒)及び2521ft/秒(768m/秒)の速度における最初の二発の弾丸は、本発明の物品を貫通した。2379ft/秒(725m/秒)で射撃された3番目の弾丸は、パネルを貫通しなかった。従って、一番目の弾丸に対する最小貫通速度は、少なくとも2379ft/秒(725m/秒)であることがわかった。意外なことに、一番目の弾丸の最小貫通速度の98%より少なくない速度でこの同一のパネルを射撃した5番目、7番目、9番目及び11番目の弾丸も、また、パネルを貫通しなかった。
【0062】
本発明の物品は、また、1型防刃のためのNIJ Standard 0115.00の要求に少なくとも合致する貫通に対しても抵抗性がある。
実施例2
タングステン上に化学蒸着された(CVD)ホウ素繊維の一方向性プレプレグテープを、Specialty Materials,Inc,Lowell,MA.から入手した。CVDホウ素フィラメントは、0.004インチ(0.0102cm)の直径であり、そして2.60g/cmの密度及び3.44GPaの引張強さを有していた。CVDホウ素繊維は、67重量パーセントがプレプレグテープであり、残部はエポキシ樹脂であった。34本のCVDホウ素繊維/エポキシの一方向性テープを、0°/90°でクロスプライし、そして116℃の温度で、344KPaの外部圧力及び96KPaの真空度におけるオートクレーブ中で、前面の積層物に形成した。この15.2cm×14.0cm×0.526cm積層物の面密度は、2.0lbs/ft(9.77Kg/m)であった。
【0063】
第2の積層物を、熱及び圧力下でいっしょに結合した112枚のSPECTRA SHIELD(登録商標)PLUS PCR圧密化シートから形成し、それぞれのシートは、基質中の高分子量ポリエチレン繊維の二枚の内部の一方向性層からなり、0°/90°でクロスプライされ、そしてそれぞれの表面に外部のプラスチックフィルムを有していた。基質は、200psi(1.4MPa)の引張弾性率を有するスチレン−イソプレン−スチレン熱可塑性エラストマーであった。高分子量ポリエチレン繊維は、30g/dのテナシティーを有していた。この積層物の面密度は、3lbs/ft(14.66Kg/m)であった。
【0064】
第2の積層物を、前面の積層物と表面同士で結合して、1.49cmの厚さ、及び5.0lbs/ft(24.4Kg/m)の面密度を有する本発明のパネル物品を作製した。
【0065】
このパネルを、鉄鋼貫通型弾頭の弾芯を持つ7.62×39mmの56型実包の123gr.(7.97g)(ロシアのAK−47)の弾丸によって連続的に射撃し、そして表III中に示す結果を得た。弾丸は、パネルの前面の積層物に衝撃を与えた。
【0066】
【表3】

【0067】
本発明のパネル物品は、少なくとも1908ft/秒(582m/秒)のその最小貫通速度を、これに9発の弾丸を射撃した後でさえ維持していた。
実施例3
前面の積層物を、実施例2の前面の積層物と同一に形成した。15.2cm×14.0cm×0.526cmの寸法を有するこの前面の積層物の面密度は、2.0lbs/ft(9.77Kg/m)であった。
【0068】
第2の積層物を、熱及び圧力下でいっしょに結合された172枚のSPECTRA SHIELD(登録商標)PLUS PCR圧密シートから形成し、それぞれのシートは、基質中の高分子量ポリエチレン繊維の二枚の内部の一方向性層からなり、0°/90°でクロスプライされ、そしてそれぞれの表面に外部のプラスチックのフィルムを有していた。基質は、200psi(1.4MPa)の引張弾性率を有するスチレン−イソプレン−スチレン熱可塑性エラストマーであった。高分子量ポリエチレン繊維は、30g/dのテナシティーを有し、そしてこの積層物の面密度は、3.99lbs/ft(19.5Kg/m)であった。
【0069】
第2の積層物を、前面の積層物と表面同士で結合して、2.76cmの厚さ、及び5.99lbs/ft(29.3Kg/m)の面密度の本発明のパネル物品を作製した。このパネルを、M80実包の7.62×51mmの147グレイン(9.53g)の鉄鋼ジャケットの弾丸によって連続的に射撃し、そして表IVに示す結果を得た。弾丸は、パネルの前面の積層物に衝撃を与えた。
【0070】
【表4】

【0071】
本発明のパネル物品は、少なくとも3018ft/秒(920m/秒)のその最小貫通速度を、これに4発の弾丸を射撃した後でさえ維持していた。
実施例4
前面の積層物を、実施例2の前面の積層物と同一に形成した。15.2cm×14.0cm×0.526cmの寸法を有するこの前面の積層物の面密度は、2.0lbs/ft(9.77Kg/m)であった。
【0072】
第2の積層物を、実施例3の第2の積層物と同一に形成した。この積層物の面密度は、3.99lbs/ft(19.5Kg/m)であった。
第3の積層物を、Honeywell Internationalから入手した24枚のGOLDFLEX(登録商標)物質から、表面同士で重ね合わせ、そしてその末端の周りでいっしょに縫い合せ、形成し、それぞれのシートは、基質中のアラミド繊維の4枚の内部の一方向性層からなり、0°/90°でクロスプライされ、そしてそれぞれの表面に外部のプラスチックフィルムを有していた。基質は、200psi(1.4MPa)の引張弾性率を有するスチレン−イソプレン−スチレン熱可塑性エラストマーであった。アラミド繊維は、22g/dのテナシティーを有していた。この積層物の面密度は、1.14lbs/ft(5.57Kg/m)であった。
【0073】
第2の積層物を、前面の積層物と表面同士で結合し、そして第3の積層物を第2の積層物と表面同士で重ね合わせて、3.48cmの厚さ、及び5.99lbs/ft(29.3Kg/m)の面密度を有する本発明のパネル物品を作製した。
【0074】
この物品を、鉄鋼貫通型弾頭の弾芯を持つ7.62×39の56型実包の123gr.(7.97g)(ロシアのAK−47)の弾丸によって連続的に射撃し、そして表V中に示す結果を得た。弾丸は、パネルの前面の積層物に衝撃を与えた。
【0075】
【表5】

【0076】
本発明のパネル物品は、少なくとも3111ft/秒(948m/秒)のその最小貫通速度を、これに6発の弾丸を射撃した後でさえ維持していた。
実施例5
前面の積層物を、実施例1の前面の積層物と同一に形成した。15.2cm×15.2cm×0.526cmの寸法を有するこの前面の積層物の面密度は、2.0lbs/ft(9.77Kg/m)であった。
【0077】
第2の積層物を、15重量パーセントのビニルエステル基質樹脂を含有する27枚のアラミド織物織布から形成した。布地は、1500デニールのKEVLAR(登録商標)29番糸から織られた21×21本/インチ(8.27本/cm)を有する平織りであり、そしてBarrday,Inc.から得られた。基質樹脂は、1.5%の2,5ジメチル−2,5ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン硬化剤を含有するDow Chemical Co.のDerekane 411であった。含浸された繊維のシートを積重ね、そして加熱によっていっしょに結合し、そして樹脂を120℃で500psi(3.45MPa)の圧力下で結合した。硬化された状態の未処理の樹脂の初期引張弾性率は、460,000psi(3.17GPa)であった。第2の積層物の面密度は、1.72lbs/ft(9.77Kg/m)であった。
【0078】
第3の積層物を、表面同士で重ね合わされ、そしてその末端の周りでいっしょに縫い合せられた24枚のGOLDFLEX(登録商標)材料(Honeywell International Inc.)から形成し、それぞれのシートは、基質中のアラミド繊維の4枚の内部の一方向性層からなり、0°/90°でクロスプライされ、そしてそれぞれの表面に外部のプラスチックフィルムを有していた。基質は、200psi(1.4MPa)の引張弾性率を有するスチレン−イソプレン−スチレン熱可塑性エラストマーであった。アラミド繊維は、22g/dのテナシティーを有していた。この積層物の面密度は、1.14lbs/ft(5.57Kg/m)であった。
【0079】
第2の積層物を、前面の積層物と表面同士で結合し、そして第3の積層物を第2の積層物と表面同士で重ね合わせて、4.86lbs/ft(23.8Kg/m)の面密度を有する本発明の物品を作製した。
【0080】
この物品を、M80実包の7.62×51mmの147グレイン(9.53g)の鉄鋼ジャケットの弾丸によって連続的に射撃し、そして表VI中に示す結果を得た。弾丸は、物品の前面の積層物に衝撃を与えた。
【0081】
【表6】

【0082】
本発明の物品は、少なくとも1950ft/秒(594m/秒)のその最小貫通速度を、これに8発の弾丸を射撃した後でさえ維持していた。
実施例6
タングステン上に化学蒸着された(CVD)ホウ素繊維の一方向性プレプレグテープを、Specialty Materials,Inc,Lowell,MA.から入手した。CVDホウ素フィラメントは、0.004インチ(0.0102cm)の直径であり、そして2.60g/cmの密度及び3.44GPaの引張強さを有していた。CVDホウ素繊維は、67重量パーセントがプレプレグテープであり、残部はエポキシ樹脂であった。17本のCVDホウ素繊維/エポキシの一方向性テープをいっしょに積重ね、0°/90°でクロスプライして、前面のプライを形成した。1.8mmの厚さの11cm×11cmのチタンの板をこの積重ね上に置いて、第2のプライを形成し、そして更なる17本のCVDホウ素繊維/エポキシの一方向性テープをその積重ね物の上に置き、0°/90°でクロスプライして、第3のプライを形成した。チタンの板を中心に持つ全体の積重ね物を、116℃の温度、344KPaの外部圧力及び96KPaの真空度におけるオートクレーブ中で前面の積層物に形成した。この15.2cm×14.0cm×0.526cmの積層物の面密度は、2.86ポンド/ft(14.0Kg/m)であった。チタンの板は、全ての表面を、前面の積層物の前面及び第3のプライによって埋めこまれていた。
【0083】
第2の積層物を、熱及び圧力下でいっしょに結合した103枚のSPECTRA SHIELD(登録商標)PLUS PCR圧密シートから形成し、それぞれのシートは、基質中の高分子量ポリエチレン繊維の2枚の内部の一方向性層からなり、0°/90°でクロスプライされ、そしてそれぞれの表面に外部のプラスチックフィルムを有していた。基質は、200psi(1.4MPa)の引張弾性率を有するスチレン−イソプレン−スチレン熱可塑性エラストマーであった。高分子量ポリエチレン繊維は、30g/dのテナシティーを有していた。この積層物の面密度は、2.0ポンド/ft(9.77Kg/m)であった。
【0084】
第3の積層物を、表面同士で重ね合わされ、そしてその末端の周りでいっしょに縫い合せられた24枚のGOLDFLEX(登録商標)材料(Honeywell International Inc.)から形成し、それぞれのシートは、基質中のアラミド繊維の4枚の内部の一方向性の層からなり、0°/90°でクロスプライされ、そしてそれぞれの表面に外部のプラスチックフィルムを有していた。基質は、200psi(1.4MPa)の引張弾性率を有するスチレン−イソプレン−スチレン熱可塑性エラストマーであった。アラミド繊維は、22g/dのテナシティーを有していた。この積層物の面密度は、1.14ポンド/ft(5.57Kg/m)であった。
【0085】
第2の積層物を、前面の積層物と表面同士で結合し、そして第3の積層物を第2の積層物と表面同士で重ね合わせて、6.0lbs/ft(29.3Kg/m)の面密度を有する本発明の物品を作製した。
【0086】
この物品を、7.62×54Rの56型実包の149グレイン(9.66g)(ロシアのドラグノフ(Dragnov),LPS)の鉄鋼貫通型弾頭の弾芯の弾丸によって連続的に射撃し、そして表VIIに示す結果を得た。弾丸は、物品の前面の積層物に衝撃を与えた。
【0087】
【表7】

【0088】
本発明の物品は、少なくとも2344ft/秒(714m/秒)の最小貫通速度を、これに4発の弾丸を射撃した後でさえ維持していた。
実施例7
前面の積層物を、実施例1の前面の積層物と同一に形成する。15.2cm×15.2cm×0.526cmの寸法を有するこの前面の積層物の面密度は、2.0lbs/ft(9.77Kg/m)であった。
【0089】
第2の積層物を、KEVLAR(登録商標)のスクリムを有する5枚のPBO(ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)フェルトから形成する。PBOフェルトは、Bayrische Wollfilz FabrikからPBO/KR−KRと命名され、そして0.27lbs/ft(1.35Kg/m)の面密度及び4mmの初期厚さを有する。フェルトのシートは、シート間及び積重ね物の両側の0.35mmのポリエチレンフィルムと、表面同士でいっしょに積重ねられ、そして積重ね物は、120℃で100psi(0.69MPa)の圧力下で成形される。第2の積層物は、10mmの厚さ及び1.38lbs/ft(6.75Kg/m)の面密度を有する。
【0090】
第3の積層物を、表面同士で重ね合わされ、そしてその末端の周りでいっしょに縫い合せられた24枚のGOLDFLEX(登録商標)材料から形成し、それぞれのシートは、基質中のアラミド繊維の4枚の内部の一方向性層からなり、0°/90°でクロスプライされ、そしてそれぞれの表面に外部のプラスチックフィルムを有している。基質は、200psi(1.4MPa)の引張弾性率を有するスチレン−イソプレン−スチレン熱可塑性エラストマーである。アラミド繊維は、22g/dのテナシティーを有する。この積層物の面密度は、1.14lbs/ft(5.57Kg/m)である。
【0091】
第2の積層物を、前面の積層物と表面同士で結合し、そして第3の積層物を第2の積層物と表面同士で重ね合わせて、4.52lbs/ft(22.1Kg/m)の面密度を有する本発明の物品を作製する。
【0092】
このパネルが、前面の積層物において、M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃を受けた場合、一番目の弾丸の最小貫通速度の90%より小さくない3番目の弾丸に対する最小貫通速度を有するものであると考えられる。
【0093】
実施例8
炭素繊維上に化学蒸着された炭化ケイ素であるSCS−ULTRA(登録商標)を、Specialty Materials,Inc.から得る。CVD SiC繊維は、0.0056インチ(0.0142cm)の直径であり、そして5.86GPaの引張強さ及び3.0g/cmの密度を有する。繊維は、図3に例示した装置を使用して一方向性のプレプレグに形成される。450,000psi(3.1GPa)の引張弾性率を有するDERAKANE(登録商標)エポキシビニルエステル樹脂を、基質として適用する。CVD SiC繊維は、プレプレグの90重量パーセントを構成する。プレプレグは、米国特許第5,173,138号に記載されている方法及び装置を使用して、0°/90°にクロスプライされる。16枚のクロスプライされたシート(32枚の層)を、いっしょに結合して、2.70ポンド/ft(13.2Kg/m)の面密度を有する前面の積層物を形成する。
【0094】
第2の積層物を、熱及び圧力下でいっしょに結合された37枚のSPECTRA SHIELD(登録商標)PCRシートから形成し、それぞれのシートは熱可塑性エラストマーの基質中の高分子量ポリエチレン繊維の2枚の一方向性の層からなり、そして0°/90°でクロスプライされている。高分子量ポリエチレン繊維は、30g/dのテナシティーを有する。第2の積層物の面密度は、2lbs/ft(9.77Kg/m)である。
【0095】
第3の積層物を、8枚のみのCVD SiCのクロスプライされたシート(16枚の層)をいっしょに結合したことを除いて、前面の積層物を形成するために使用したものと同一の方法によって形成する。第3の積層物の面密度は、1.35lbs/ft(6.60Kg/m)である。
【0096】
前面の積層物、第2の積層物及び第3の積層物を、表面同士でいっしょに結合して、5.64lbs/ft(27.6Kg/m)の面密度を有する本発明の積層物のパネルを作製する。
【0097】
このパネルが、前面の積層物において、M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃を受けた場合、一番目の弾丸の最小貫通速度の90%より小さくない3番目の弾丸に対する最小貫通速度を有するものであると考えられる。
【0098】
本発明を、このようにやや詳細に記載してきたが、このような詳細が、厳密に固執される必要はなく、しかし更なる変更及び改変は、これら自体が、全てが特許請求の範囲によって定義されるとおりの本発明の範囲内に入ることを当業者に示唆することができることは理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1は、前面の積層物中に一方向性の無機質繊維の一つのプライを、そして第2の積層物中にポリマー繊維の一つのプライを有する本発明の物品の2−プライの態様の断面図である。
【図2】図2は、前面の積層物中に、一方向性の無機質繊維のそれぞれのプライが異なった組成又は構造を有する二つのプライを、第2の積層物中にポリマー繊維のそれぞれのプライが異なった組成又は構造を有する二つのプライを、そして第3の積層物中の無機質繊維の一つのプライを有する本発明の物品の5−プライの態様の断面図である。
【図3】図3は: a)一方向性の無機質繊維の前面のプライ、チタン金属の板からなる第2のプライ、及び一方向性の無機質繊維の第3のプライからなる前面の積層物であって、チタン金属の板は、全ての表面を前面及び第3のプライによって埋めこまれ; b)ポリマー繊維の一つのプライからなる第2の積層物;及び c)第2の積層物中のものとは異なる組成又は構造のポリマー繊維の一つのプライからなる第3の積層物;を有する本発明の物品の5−プライの態様の断面図である。
【図4】図4は、層を製造するための方法の略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一つ又はそれより多いプライを含んでなる前面の積層物であって、前記プライの一つは、ポリマー基質中の一方向性の無機質繊維の複数の層を含んでなる前面のプライであり、プライ中の前記層は、同一の組成及び構造を有し、前記前面の積層物の隣接するプライの前記層は、組成又は構造において異なり、前記無機質繊維は、少なくとも2.0GPaの引張強度、及び4.0g/cmより小さいを有するフィラメントから構成され、ここにおいてそれぞれの前記層の繊維の方向は、隣接する前記層の繊維の方向とある角度をなしている、前記積層物;及び
b)前記前面の積層物と表面同士で一体化された第2の積層物であって、前記第2の積層物は、一つ又はそれより多いプライを含んでなり、それぞれの前記プライは、網状構造のポリマー繊維の複数の層を含んでなり、前記ポリマー繊維は、少なくとも17g/dのテナシティーを有し、前記網状構造は、基質物質を所望により含有していてもよく、プライ中の前記層は、同一の組成及び構造を有し、前記第2の積層物の隣接するプライ中の前記層は、組成又は構造において異なる、前記第2の積層物;
を含んでなる物品。
【請求項2】
前記第2の積層物に表面同士で重ね合わされた第3の積層物を含んでなり、前記第3の積層物は、一つ又はそれより多いプライを含んでなり、それぞれの前記プライは、基質を所望により含有していてもよい網状構造中のポリマー繊維の複数の層を含んでなり、前記ポリマー繊維は、少なくとも17g/dのテナシティーを有し、プライ中の前記層は、同一の組成及び構造を有し、前記第3の積層物の隣接するプライ中の前記層は、組成又は構造において異なる、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記前面の積層物が、一方向性の無機質繊維の前面のプライ、チタン金属板の第2のプライ、及び一方向性の無機質繊維の第3のプライからなり、前記チタンの板は、全ての表面において前記第1及び第3のプライによって埋めこまれ、前記無機質繊維は、少なくとも2.0GPaの引張強度及び4.0g/cmより小さい密度を有するフィラメントから構成され、ここにおいてそれぞれの層の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とある角度をなしている、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記第2の積層物と表面同士で一体化された第3の積層物を更に含んでなり、前記第3の積層物は、一つ又はそれより多いプライを含んでなり、それぞれの前記プライは、ポリマー基質中の一方向性の無機質繊維の複数の層を含んでなり、プライ中の前記層は、同一の組成及び構造を有し、前記第3の積層物の隣接するプライ中の前記層は、組成又は構造において異なり、前記無機質繊維は、少なくとも2.0GPaの引張強度及び4.0g/cmより小さい密度を有するフィラメントから構成され、ここにおいてそれぞれの層中の繊維の方向は、隣接する層中の繊維の方向とある角度をなしている、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記前面の積層物及び前記第2の積層物が、平衡構成構造を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記第2の積層物を構成する前記層が、織物、編物、組紐、無作為に方向づけられた不織布及び一方向的に方向づけられた不織布からなる群から選択される繊維の網状構造を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記第2の積層物を構成する前記層が、不織繊維の網状構造を一方向的に含んでなる、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記第2の積層物を構成する隣接する層中の繊維間の角度が、45ないし90度である、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記無機質繊維を構成するフィラメントが、少なくとも2.4GPaの引張強さ及び3.4g/cmより小さい密度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記無機質繊維を構成するフィラメントが、少なくとも3.4GPaの引張強さ及び3.4g/cmより小さい密度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記無機質繊維を構成するフィラメントが、少なくとも4.0GPaの引張強さ及び3.1g/cmより小さい密度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記無機質繊維が、化学蒸着されたホウ素、化学蒸着された炭化ケイ素、β−SiC、非晶質相のSi−O−C−中のβ−SiC、E−ガラス、S−ガラス、(54.4%Si、32.4%C、10.2%O、2%Ti)組成物、(55.3%Si、33.9%C、9.8%O、1.0%Zr)組成物、1−3%Oを伴うSiBNC及びこれらの組合せ、からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記無機質繊維が、タングステン上に化学蒸着されたホウ素、炭素上に化学蒸着された炭化ケイ素、及びこれらの組合せ、からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記無機質繊維が、前記前面の積層物の60ないし95重量パーセントを構成する、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
前記ポリマー繊維が、高分子量ポリエチレン、アラミド、ポリベンズアゾール、硬質ロッドポリマー及びこれらの組合せ、からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項16】
前記ポリマー繊維が、高分子量ポリエチレン、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(2−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、M5及びこれらの組合せ、からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記ポリマー繊維が、前記第2の積層物の75ないし95重量パーセントを構成する、請求項1に記載の物品。
【請求項18】
前記前面の積層物のそれぞれのプライのそれぞれの層中の前記ポリマー基質が、ASTM D638によって測定される、少なくとも400,000psi(2.76GPa)の初期引張弾性率を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記第2の積層物のそれぞれのプライのそれぞれの層中の前記ポリマー基質が、ASTM D638によって測定される、6,000psi(41.3MPa)より小さい初期引張弾性率を有するエラストマーである、請求項1に記載の物品。
【請求項20】
M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の90%より少なくない三番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項21】
M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の95%より少なくない三番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項22】
M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の90%より少なくない五番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の95%より少なくない五番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の90%より少なくない七番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項25】
M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸によって、少なくとも2000ft/秒(610m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の95%より少なくない七番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項26】
M80実包の7.62×51の147グレイン(9.53g)の弾丸に対して、V50速度において少なくとも100J−m/kgの比エネルギー吸収率を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項27】
鉄鋼貫通型弾頭の弾芯を持つ、7.62×39の56型実包の123グレイン(7.97g)(ロシアのAK−47)の弾丸によって、少なくとも1900ft/秒(579m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の90%より少なくない三番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項28】
鉄鋼貫通型弾頭の弾芯を持つ、7.62×39の56型実包の123グレイン(7.97g)(ロシアのAK−47)の弾丸によって、少なくとも1900ft/秒(579m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の90%より少なくない五番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項29】
鉄鋼貫通型弾頭の弾芯を持つ、7.62×39の56型実包の123グレイン(7.97g)(ロシアのAK−47)の弾丸によって、少なくとも1900ft/秒(579m/秒)の速度で、15cm×15cmの側面積内に連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の90%より少なくない七番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項30】
鉄鋼貫通型弾頭の弾芯を持つ、7.62×54Rの56型実包の149グレイン(9.66g)(ロシアのドラグノフ、LPS)の弾丸によって連続的に衝撃が与えられた場合、一番目の弾丸の最低貫通速度の90%より少なくない三番目の弾丸に対する最低貫通速度を有する、請求項1に記載の物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2008−515669(P2008−515669A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535777(P2007−535777)
【出願日】平成17年10月4日(2005.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/035840
【国際公開番号】WO2007/005043
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】