説明

多方向スライド型電子部品

【課題】操作つまみを第2方向に向かう異なる位置においてそれぞれ第1方向に移動できる多方向スライド型電子部品を提供する。
【解決手段】ケース10と、第1,第2方向A1,A2に移動する操作つまみ50と、操作つまみ50と一体に移動する駆動体70と、駆動体70の第1方向A1への移動に伴って駆動される第1移動検出体150と、駆動体70の第2方向A2への移動に伴って駆動される第2移動検出体270とを具備する。第1移動検出体150は、第1方向A1に移動するスライド移動体210と、スライド移動体210の移動に伴って電気的出力を変化する摺動子200等とを有する。スライド移動体210には第2方向A2に向かって突出する駆動体係合部213,215を設ける。駆動体70には駆動体係合部213,215に係合して第1方向A1に対してのみスライド移動体210を移動させるスライド移動体係合部79,81を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作つまみをケースの上面に沿って、直交方向などの交差する2方向に向けて移動することでその電気的出力を変化させる多方向スライド型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば携帯用デジタルカメラなどの電子機器の外装ケースの表面には、各種機能操作用の操作つまみが取り付けられている。そしてこれら操作つまみの中には、たとえばズーム操作用の操作つまみのように、ケースの表面に沿うようにスライド移動させる構造のものがある。この種の操作つまみは通常スライド型電子部品となっており、ケース上面の操作つまみをスライド移動させることで、ケース下面側に設置したスライド型電子部品の本体を駆動し、その電気的出力を変化させる(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
一方近年、電子機器の機能の多様化などの要望により、前記ケース上をスライド移動する操作つまみのスライド移動を、1方向(第1方向)だけでなく、第1方向に直交する第2方向に向けても行え、さらに第2方向に向かう異なる複数(たとえば2つ)の位置の何れの位置においてもその位置から第1方向に移動できる構造の多方向スライド型電子部品が要求されている。
【0004】
この機能は、たとえば操作つまみを第2方向の一方の端部側に移動した状態で第1方向に移動すれば通常のズーム動作が行え、第2方向の他方の端部側に移動した状態で第1方向に移動すれば低速のズーム動作(または高速のズーム動作)が行えるように使用する場合などに用いて好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−53018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来、上記のような操作つまみを多方向へ移動できる機能を有する多方向スライド型電子部品であって、構造が簡単で、その操作がスムーズに行えるものはなかった。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、操作つまみを、第2方向に向かう異なる複数の位置においてそれぞれ第1方向にスムーズかつ確実に移動することができて、各移動位置において異なる電気的出力を得ることができる、構造の簡単な多方向スライド型電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願請求項1に記載の発明は、ケースと、前記ケースの上面に沿って交差する第1,第2方向に移動自在に設置される操作つまみと、前記ケースの下面側に設置され、前記操作つまみと一体に移動する駆動体と、前記駆動体の第1方向への移動に伴って駆動されて電気的出力を変化する第1移動検出体と、前記駆動体の第2方向への移動に伴って駆動されて電気的出力を変化する第2移動検出体と、を具備し、前記第1移動検出体は、第1方向に移動するスライド移動体と、スライド移動体の移動に伴って電気的出力を変化する電気的機能部とを有して構成され、前記スライド移動体には、第2方向に向かって突出する駆動体係合部を設け、前記駆動体には、前記スライド移動体の駆動体係合部に係合して第1方向に対してはスライド移動体を駆動体とともに移動させ、第2方向に対しては駆動体のみを移動させるスライド移動体係合部を設けたことを特徴とする多方向スライド型電子部品にある。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多方向スライド型電子部品であって、前記第1移動検出体は、前記スライド移動体を第1方向の中立位置に自動復帰させるスライド移動体弾発部材を有し、一方前記駆動体を前記第2方向の一方の側に向けて弾発する駆動体弾発部材を設置し、これらスライド移動体弾発部材および駆動体弾発部材によって駆動体をその中立静止位置に自動復帰させることを特徴とする多方向スライド型電子部品にある。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の多方向スライド型電子部品であって、前記駆動体とケースの間に、駆動体の第1方向の中立位置から第1方向に向けて移動した駆動体の第2方向への移動を阻止するガイド機構を設けたことを特徴とする多方向スライド型電子部品にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、簡単な構造で、操作つまみの第1方向への移動の際はスライド移動体を一体に移動でき、操作つまみの第2方向への移動の際はスライド移動体を元の位置にそのまま留まらせることができる。そして操作つまみを第2方向に向かう異なる位置においてそれぞれ第1方向にスムーズかつ確実に移動することができて、各移動位置において異なる電気的出力を得ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、簡単な構造で容易かつ確実に、駆動体および操作つまみを中立静止位置に自動復帰させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、駆動体および操作つまみを第1方向の中立位置からは第2方向に移動できるが、第1方向の中立位置から第1方向に向けて移動した位置からは第2方向へ移動できず、そのような使用方法が求められる場合に好適な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】多方向スライド型電子部品1の斜視図である。
【図2】多方向スライド型電子部品1(上部の部品)を上側から見た分解斜視図である。
【図3】多方向スライド型電子部品1(下部の部品)を上側から見た分解斜視図である。
【図4】多方向スライド型電子部品1(上部の部品)を下側から見た分解斜視図である。
【図5】多方向スライド型電子部品1(下部の部品)を下側から見た分解斜視図である。
【図6】駆動体70のスライド移動体係合部79(81)とスライド移動体210の駆動体係合部213(215)との係合状態を示す図である。
【図7】多方向スライド型電子部品1の概略断面図である。
【図8】操作つまみ50を中立静止位置から第2方向A2に移動した状態での多方向スライド型電子部品1の概略断面図である。
【図9】操作つまみ50が中立静止位置でのケース10のガイド突起21と駆動体70のガイド凹部73との位置関係を示す図である。
【図10】操作つまみ50を中立静止位置から第1方向A1に移動した際のケース10のガイド突起21と駆動体70のガイド凹部73との位置関係を示す図である。
【図11】操作つまみ50を中立静止位置から第2方向A2に移動した際のケース10のガイド突起21と駆動体70のガイド凹部73との位置関係を示す図である。
【図12】操作つまみ50を図11の位置から第1方向A1に移動した際のケース10のガイド突起21と駆動体70のガイド凹部73との位置関係を示す図である。
【図13】駆動体70を下面側の別の角度から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態を適用してなる多方向スライド型電子部品1の斜視図、図2は多方向スライド型電子部品1(上部の部品)を上側から見た分解斜視図、図3は多方向スライド型電子部品1(下部の部品)を上側から見た分解斜視図、図4は多方向スライド型電子部品1(上部の部品)を下側から見た分解斜視図、図5は多方向スライド型電子部品1(下部の部品)を下側から見た分解斜視図である。なお以下の説明において、「上」とは下記する駆動体70から操作つまみ50を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとする。
【0016】
多方向スライド型電子部品1は、図1〜図5に示すように、ケース10と、ケース10の上面側に設置される操作つまみ50および摺動板60と、ケース10の下面側に設置される駆動体70および駆動体弾発部材100および第1,第2移動検出体150,270とを具備して構成されている。なお図2に示す矢印A1は第1方向、矢印A2は第2方向を示しており、これら第1,第2方向A1,A2は、ケース10の上面に沿って相互に直交する方向を向いている。
【0017】
ケース10は、合成樹脂(たとえばポリカーボネート(PC)樹脂)の一体成型品であり、その上面に操作つまみ50を挿入する浅い略矩形凹状のつまみ収納凹部11を設け、つまみ収納凹部11の内部に上下に貫通する略矩形状の貫通部13を設けて構成されている。つまみ収納凹部11の表面は第1方向A1に向けて少し円弧状に上方向に凸となるように湾曲している。ケース10の下面の貫通部13を挟んだその両側には、第1方向A1に向けて伸びる線状突起からなる駆動体ガイド部15,17が形成されている。駆動体ガイド部15,17はその間の凹部内に駆動体70を挿入して駆動体70を第2方向A2に向けて移動した際にその移動範囲を所定の移動範囲に規制するものである。駆動体ガイド部17の中央には、下記する駆動体弾発部材100の弾発体110を挿通するための切欠き19が形成されている。
【0018】
ケース10の下面の前記駆動体ガイド部15,17内側の4隅近傍には、第1方向A1に向けて延びる棒状突起からなるガイド突起21が形成されている。これら4つのガイド突起21は、下記する駆動体70の4つのガイド凹部73とともに、ガイド機構を構成する。
【0019】
ケース10の下面の前記駆動体ガイド部17の外側位置には、下方向に突出して下記する収納ケース130の各取付挿入部133を取り付ける4本の小突起からなる取付部23が設けられ、またケース10の下面の外周辺近傍位置には5本の小突起からなる取付部19が突出して設けられている。
【0020】
操作つまみ50は合成樹脂(たとえばABS樹脂)を略矩形状に成形して構成されており、その下面中央には下方向に突出する一対の小突起状の取付部51が形成されている。
【0021】
摺動板60は表面が滑らかで摺動性の良い材料(たとえばフッ素樹脂)を、薄板状で前記操作つまみ50とほぼ同一の外形形状に形成して構成されている。摺動板60の中央には、前記操作つまみ50の取付部51を挿通する矩形状の挿通孔61が設けられている。
【0022】
図13は駆動体70を下面側の別の角度から見た斜視図である。同図および図2,図4に示すように駆動体70は合成樹脂(たとえばABS樹脂)を略矩形板状に成形して構成されており、その中央には前記操作つまみ50の一対の取付部51を挿通する一対の貫通する小孔からなる取付係合部71が設けられている。また駆動体70の上面の4隅近傍には、第1方向A1に向かって切り欠かれて外周辺に至る凹状の4つのガイド凹部73が設けられている。駆動体70の4つの外周側面の内の第2方向A2に直交する一方の外周側面(駆動体弾発部材100を設置する側の側面)は、下記する駆動体弾発部材100の弾発体110の当接部113を弾接させる弾接面75となっている。駆動体70の下面の前記一対の取付係合部71を挟んだその両側位置(第2方向A2に向かって並ぶ位置)には、一対ずつ下方向に向かって突起部77を突出することでその間に凹状のスライド移動体係合部79,81を形成している。一対の突起部77の対向する内周側側面(スライド移動体係合部79,81の両側面)は上下に向かう平行面となっている。また駆動体70の下面のスライド移動体係合部81の弾接面75側には、略平板形状の突出部83が下方向に向かって突出している。突出部83の弾接面75側を向く面は検出体当接面85となっている。検出体当接面85は弾接面75よりも下方の位置まで張り出している。突出部83の中央には、検出体当接面85を第2方向A2に向けて貫通する挿通部87が設けられている。検出体当接面85はこの駆動体70が第1方向A1に移動しても常に下記する第2移動検出体270の押圧部材273に対向できる寸法形状(横長形状)に形成されている。また前記弾接面75はこの駆動体70が第1方向A1に移動しても常に下記する駆動体弾発部材100の弾発体110の当接部113に対向できる寸法形状(横長形状)に形成されている。
【0023】
駆動体弾発部材100は、弾発体110と弾発バネ120と収納ケース130とを具備して構成されている。弾発体110は合成樹脂(たとえばPOM樹脂)を棒状に成形して構成されており、円柱状の基部111の一端部にその径を大きくしてなる当接部113を設けている。当接部113の先端面は球面状となっている。当接面113の基部111を接続する側の面はバネ受け部115となっている。弾発バネ120は圧縮コイルバネであり、前記基部111に挿入され、バネ受け部115に当接する。
【0024】
収納ケース130は合成樹脂(たとえばABS樹脂)を略矩形状に成形して構成されている。収納ケース130は第2方向A2に向けて長尺であり、ケース10側を向く面にその面に平行で外方に舌片状に突出する4つの取付基部131を設け、それらの内部にそれぞれ小孔からなる取付挿入部133を設けている。各取付挿入部133は前記ケース10の各取付部23に対向してこれらを挿入する位置に設けられている。収納ケース130にはその長手方向(第2方向A2)に向かって貫通する収納部135が設けられている。収納部135の内径は、前記弾発バネ120および弾発体110の当接部113を収納できる内径としており、一方の端部側の内径部分だけを弾発バネ120の外径よりも小さく且つ弾発体110の基部111の外径よりも大きくして基部111のみが外部に突出できるようにしている。
【0025】
第1移動検出体150は、基台160と、基台160上に載置される基板180と、下面に摺動子200を取り付け第1方向に移動するスライド移動体210と、スライド移動体210を第1方向A1の中立位置に自動復帰させるスライド移動体弾発部材230と、ケース240とを具備して構成されている。基台160は合成樹脂(たとえばABS樹脂)を略平板状に成形して構成されており、その外周近傍の前記ケース10の5つの取付部19に対向する位置にこれら取付部19を挿入する小孔からなる挿入部161を設けている。また下記するケース240の各係止部245を挿入する小孔からなる係止部163も設けている。
【0026】
基板180は、この例では可撓性を有する合成樹脂フイルム(たとえばポリエチレンテレフタレートフイルム)の表面に所望の回路パターンを設けて構成されており、その上面の所定位置に下記する摺動子200が摺接する摺接パターン(この例では一方が抵抗体パターン、他方がコモンパターンからなる可変抵抗器用抵抗パターン)181を設け、また摺接パターン181の周囲の4か所(前記基台160の各係止部163に対向する位置)に小孔または切欠きからなる係止部183を設け、さらに基台160に設けた5つの挿入部161の内の2つの挿入部161に対向する位置に小孔からなる挿入部185を設けている。基板180上には下記する第2移動検出体270も取り付けられている。
【0027】
スライド移動体210は、合成樹脂(たとえばPOM樹脂)の一体成型品であり、略矩形状の本体部211と、本体部211の外周側面の内の第1方向A1と平行な両外周側面の中央から第2方向A2に向けて突出する一対の駆動体係合部213,215とを具備して構成されている。本体部211の上面には、下記するスライド移動体弾発部材230を収納する第1方向A1に長尺な細溝からなる弾発部材収納部217が設けられ、本体部211の下面には小突起からなる摺動子取付部219が設けられている。弾発部材収納部217の両端はその幅寸法を狭くすることで、スライド移動体弾発部材230が抜け出さないようにすると同時に、下記するケース240の弾発部材係止部243が挿入できるようにしている。
【0028】
駆動体係合部213,215は略棒状であって、前記駆動体70のスライド移動体係合部79,81をぴったり挿入する外径寸法を有し、少なくともスライド移動体係合部79,81のそれぞれの両側面(一対の突起部77の対向する平行な内周側側面)に当接する外周側面部分は円弧面形状に形成されている。さらに詳細にいえば、駆動体係合部213,215は、本体部211の外周側面から突出する支持部213a,215aの上辺上に、略円柱形状の係合部213b、215bを取り付けて構成され、係合部213b、215bの円弧状の外周側面を駆動体70のスライド移動体係合部79,81の両側面が当接する部分としている。
【0029】
摺動子200は弾性金属板製であり、略矩形状の基部201の外周の一辺から一対の摺動冊子203,203を突出し、これら摺動冊子203,203を根元部分で基部201の下面側に折り曲げて構成されている。基部201には一対の小孔205が設けられている。摺動子200はその基部201が図5に示すようにスライド移動体210の本体部211の下面に当接され、その際スライド移動体210の摺動子取付部219を摺動子200の小孔205に挿入し、摺動子取付部219の先端を熱かしめすることによって取り付けられる。この摺動子200と前記摺接パターン181とによって第1移動検出体150の電気的機能部が構成される。
【0030】
スライド移動体弾発部材230は、圧縮コイルバネからなる弾発バネ231と、その両端に取り付けられるバネ端保持部材233,233とを具備して構成されている。バネ端保持部材233,233は消音のため、弾性材(たとえばシリコンゴム)を使用している。なお図5においては、スライド移動体弾発部材230はスライド移動体210に装着されているため、図示されていない。
【0031】
ケース240は、金属板(たとえばステンレス板)を下面が解放された略箱型に形成して構成されており、内部の移動体収納部241は前記スライド移動体210の本体部211を第1方向A1に向けてのみ所定長さ移動自在とできる寸法形状としている。ケース240の上面の前記スライド移動体210に設けた弾発部材収納部217に対向する位置には、一対の弾発部材係止部243,243が形成されている。弾発部材係止部243,243は第1方向A1に向けて一対のスリットを並列に設けてその中央の細帯状の部分を下方向にL字状に折り曲げて構成されており、折り曲げて対向する部分が前記弾発部材係止部243,243となっている。ケース240の下端辺の前記基板180に設けた各係止部183に対向する4か所の位置からは舌片状の係止部245が突出している。ケース240の第1方向A1に平行な一対の外周側面には、それぞれその下辺を略矩形状に切り欠いてなる駆動体係合部挿通部247,247が設けられている。
【0032】
第2移動検出体270は従来公知の検出スイッチであり、合成樹脂製のケース271の外周側面から外部に押圧部材273を突出し、基板180の上面に取り付けて構成されている。そして押圧部材273をケース271内(第2方向A2)に押し込むように押圧することで、第2移動検出体270の電気的出力であるオンオフ信号が切り替わる。オンオフ信号は基板180に設けた図示しないオンオフパターンから外部に取り出される。押圧部材273への押圧を解除すれば、ケース271の内部に収納している図示しない弾発バネによって、押圧部材273は元の位置に自動復帰する。なお第2移動検出体270は、基台160と、基板180と、基板180上に取り付けられるケース271と、押圧部材273と、ケース271内に内蔵される図示しない各種部品(弾発バネや摺動子など)によって構成される。
【0033】
次に多方向スライド型電子部品1の組立方法を説明する。まず図3に示すように基台160上に基板180を載置し、その上にケース271などを組み立てることで第2移動検出体270を取り付ける。
【0034】
次に摺動子200を取り付けたスライド移動体210の弾発部材収納部217内に、両端にバネ端保持部材233,233を取り付けた弾発バネ231を挿入し、次にこのスライド移動体210の本体部211をケース240の移動体収納部241内に収納し、さらにこのケース240を基板180上に載置し、その際ケース240の各係止部245を基板180の各係止部183と基台160の各係止部163に挿入し、各係止部245の先端を基台160の下面で折り曲げ、第1移動検出体150を構成する。このとき摺動子200の各摺動冊子203,203は基板180の各摺接パターン181に弾接する。またこのときスライド移動体210の両駆動体係合部213,215はケース240の両駆動体係合部挿通部247,247を通してケース240の外部に突出している。またこのときスライド移動体弾発部材230のバネ端保持部材233,233の両端面は、スライド移動体210の弾発部材収納部217の両端面に弾接すると同時に、ケース240の両弾発部材係止部243,243に弾接し、これによってスライド移動体210は中立位置であるケース240の中央に位置している。
【0035】
次に弾発体110の基部111に弾発バネ120を装着したものを、収納ケース130の収納部135内に収納し(図4参照)、これをケース10の下面に設置することでケース10の各取付部23を収納ケース130の各取付挿入部133に挿入し、各取付部23の先端を熱かしめすることで、駆動体弾発部材100をケース10の下面に取り付ける。
【0036】
次にケース10の上面のつまみ収納凹部11内に摺動板60と操作つまみ50とを重ねて載置し、同時にケース10の下面の駆動体ガイド部15,17の間に駆動体70を挿入する。このとき、操作つまみ50の一対の取付部51を摺動板60の挿通孔61とケース10の貫通部13を介して駆動体70の一対の取付係合部71に挿入し、両取付部51の先端を熱かしめすることで操作つまみ50と摺動板60と駆動体70とを一体化する。このとき駆動体70の弾接面75には弾発体110の当接部113が弾接しており、これによって駆動体70は常に駆動体弾発部材100側から離れる方向に押圧される。
【0037】
そしてこのケース10の下面側に、前記第1,第2移動検出体150,270と基板180とを取り付けた基台160を設置し、ケース10の各取付部19を基板180の2つの挿入部185と基台160の各挿入部161に挿入し、基台160の下面から突出する各取付部19を熱かしめすれば、多方向スライド型電子部品1が完成する。このときスライド移動体210の駆動体係合部213,215は、図6に示すように、それぞれ駆動体70のスライド移動体係合部79,81にぴったり挿入される。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0038】
次に多方向スライド型電子部品1の動作を説明する。図7は操作つまみ50を操作していない状態での多方向スライド型電子部品1の概略断面図(図1のA−A概略断面図)である。また図9は操作つまみ50を操作していない状態でのケース10のガイド突起21と駆動体70のガイド凹部73との位置関係を示す図である。これらの図に示すように、駆動体70の弾接面75に駆動体弾発部材100の弾発体110が弾接することで、駆動体70および操作つまみ50は第2方向A2の一端側(図7,図9の右端側)に移動し、同時に第1移動検出体150のスライド移動体弾発部材230がスライド移動体210を第1方向A1の中立位置(すなわち第1方向A1の中央位置)に保持することで、駆動体70および操作つまみ50は中立静止位置に位置している。また駆動体70の検出体当接面85に対向する位置に所定距離離間して第2移動検出体270の押圧部材273が位置している。またこのときスライド移動体210の一方の駆動体係合部215は、駆動体70の挿通部87に挿入され、その分、多方向スライド型電子部品1の第2方向A2の寸法を小さくしている。
【0039】
図9〜図12の左端側には駆動体70の移動軌跡Tが図示されているが、移動軌跡Tは以下で説明するようにH型となっており、図9に示す現在の位置、すなわち駆動体70および操作つまみ50が第2方向A2の一端側(右端側)に移動しかつ第1方向A1の中立位置(中央位置)に位置することで、駆動体70および操作つまみ50は移動軌跡T中の点T1、すなわち中立静止位置に位置している。またこのとき駆動体70の4つのガイド凹部73はケース10のいずれのガイド突起21にも係合していない。
【0040】
次にたとえば操作つまみ50を操作することで、スライド移動体弾発部材230の弾発力に抗して、操作つまみ50を第1方向A1の一方側(図9,図10の上側)に移動するとこれと一体に駆動体70が同一方向に移動し、図10に示すように、移動軌跡T中の点T2に位置する。このとき図6に示すように駆動体70のスライド移動体係合部79,81とスライド移動体210の駆動体係合部213,215は第1方向A1については一体に移動するように係合しているので、スライド移動体210は駆動体70とともに第1方向A1の一方側に移動する。これによって摺動子200が摺接パターン181上を摺動し、その位置に応じた抵抗値の出力信号が出力される。なおつまみ収納凹部11の表面は前述のように第1方向A1に向けて少し円弧状に凸となるように湾曲しており、操作つまみ50および駆動体70もその湾曲面に沿うように円弧状にスライド移動するが、駆動体70のスライド移動体係合部79,81とスライド移動体210の駆動体係合部213,215との係合部分において前記駆動体70の円弧動作はスライド移動体210の直線動作にスムーズに変換される。またこのとき図10に示すように移動した側のケース10の1つのガイド突起21に駆動体70の1つのガイド凹部73が係合するので、この状態では操作つまみ50および駆動体70を第2方向A2へ移動させることができない。
【0041】
前記操作つまみ50の前記スライド移動方向への押圧を解除すれば、前記スライド移動体弾発部材230の弾発力によって駆動体70および操作つまみ50は元の図9に示す中立静止位置(点T1)に自動復帰する。操作つまみ50を中立静止位置(点T1)から第1方向A1の反対方向に向けて移動させた際も同様の動作となる。
【0042】
次に図9に示す中立静止位置から、操作つまみ50を第2方向A2(図9の左方向)に押圧移動すれば、駆動体弾発部材100の弾発力に抗して、図8に示すように操作つまみ50および駆動体70は第2方向A2の他方の端部側に移動し、図11に示すように移動軌跡T中の点T3に位置する。このとき駆動体70のスライド移動体係合部79,81はスライド移動体210の駆動体係合部213,215に対して駆動体係合部213,215の軸方向にスライド移動するので、第1移動検出体150の電気的出力は変化しない。一方駆動体70が第2方向A2に移動することで、駆動体70の検出体当接面85が第2移動検出体270の押圧部材273に当接してこれを押圧し、第2移動検出体270の電気的出力を変化する。そしてさらにこの操作つまみ50を操作することで、スライド移動体弾発部材230の弾発力に抗して、図11の状態から操作つまみ50を第1方向A1の他方側(図11の下側)に移動すればこれと一体に駆動体70が同一方向に移動し、図12に示すように、移動軌跡T中の点T4に位置する。このときも図8に示すように駆動体70のスライド移動体係合部79,81とスライド移動体210の駆動体係合部213,215は第1方向A1については一体に移動するように係合しているので、スライド移動体210は駆動体70とともに第1方向A1の他方側に移動する。これによって摺動子200が摺接パターン181上を摺動し、その位置に応じた抵抗値の出力信号が出力される。またこのときも図12に示すように移動した側のケース10の1つのガイド突起21に駆動体70の1つのガイド凹部73が係合するので、この状態では操作つまみ50および駆動体70を第2方向A2へ移動することはできない。
【0043】
前記操作つまみ50の前記スライド移動方向への押圧を解除すれば、前記スライド移動体弾発部材230の弾発力によって駆動体70および操作つまみ50はまず図11に示す位置(点T3)に自動復帰し、さらに駆動体弾発部材100の弾発力によって駆動体70および操作つまみ50は図9に示す中立静止位置(点T1)に自動復帰する。操作つまみ50を中立静止位置(点T1)から点T3に移動してさらに第1方向A1の反対方向に向けて移動させた際も同様の動作となる。
【0044】
つまりこの多方向スライド型電子部品1においては、第1方向A1の位置に応じて異なる第1移動検出体150の電気的出力と、第2方向A2の位置に応じて異なる第2移動検出体270の電気的出力の組み合わせによって、操作つまみ50の移動位置を検出することができる。
【0045】
以上説明したようにこの多方向スライド型電子部品1は、ケース10と、ケース10の上面に沿って交差する第1,第2方向A1,A2に移動自在に設置される操作つまみ50と、ケース10の下面側に設置され、操作つまみ50と一体に移動する駆動体70と、駆動体70の第1方向A1への移動に伴って駆動されて電気的出力を変化する第1移動検出体150と、駆動体70の第2方向A2への移動に伴って駆動されて電気的出力を変化する第2移動検出体270と、を具備している。そして第1移動検出体150は、第1方向A1に移動するスライド移動体210と、スライド移動体210の移動に伴って電気的出力を変化する電気的機能部(摺動子200および摺接パターン181)とを有している。さらにスライド移動体210には第2方向A2に向かって突出する駆動体係合部213,215を設け、駆動体70には、スライド移動体210の駆動体係合部213,215に係合して第1方向A1に対してはスライド移動体210を駆動体70とともに移動し、第2方向A2に対しては駆動体70のみを移動させるスライド移動体係合部79,81を設けている。これによって、駆動体70と一体に移動する操作つまみ50を第1方向A1に移動すればスライド移動体210はこれと一体に移動し、操作つまみ50を第2方向A2に移動すればスライド移動体210は元の位置にそのまま留まる。そして操作つまみ50を第2方向A2に向かう異なる位置においてそれぞれ第1方向A1にスムーズかつ確実に移動することができて、各移動位置において異なる電気的出力を得ることができる。
【0046】
また前記第1移動検出体150は、スライド移動体210を第1方向A1の中立位置に自動復帰させるスライド移動体弾発部材230を有し、一方駆動体70を第2方向A2の一方の側に向けて弾発する駆動体弾発部材100を設置し、これらスライド移動体弾発部材230および駆動体弾発部材100によって駆動体70をその中立静止位置(点T1)に自動復帰させている。これによって簡単な構造で容易かつ確実に、駆動体70および操作つまみ50を中立静止位置に自動復帰できる。
【0047】
また駆動体70とケース10の間に、駆動体70の第1方向A1の中立位置から第1の方向A1に向けて移動した駆動体70の第2の方向A2への移動を阻止するガイド機構(ガイド突起21とガイド凹部73)を設けたので、駆動体70を第1方向A1の中立位置からは第2方向A2に移動できるが、第1方向A1の中立位置から第1方向A1に向けて移動した位置からは第2方向A2へ移動できず、第2方向A2への移動を第1方向A1の中立位置のみで行えるようにするような使用方法が求められる場合に好適な構造となる。
【0048】
なお本発明におけるスライド移動方向は、直線方向だけではなく、上記実施形態のように円弧方向やその他の曲線方向など、直線方向以外の各種方向を含む概念である。
【0049】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では第1,第2の方向A1,A2を直交する方向としたが、直交以外の交差する方向であってもよい。
【0050】
また上記実施形態では第1移動検出体150としてスライド式可変抵抗器、第2移動検出体270として押圧式スイッチを用いたが、第1,第2移動検出体150,270は他の各種構造のスイッチ,可変抵抗器を用いてもよい。要は駆動体70の第1方向A1への移動に伴って駆動されて電気的出力(抵抗値やオンオフ信号)を変化する第1移動検出体150と、駆動体70の第2方向A2への移動に伴って駆動されて電気的出力(オンオフ信号や抵抗値)を変化する第2移動検出体270であればよい。
【0051】
また上記実施形態では第1方向は中立位置を含めて3ポジション、第2方向A2は2ポジションとしたが、それぞれ2ポジション以上の複数ポジションであってもよい。また上記実施形態では操作つまみ50および駆動体70の移動軌跡TをH型としたが、たとえば第1方向A1の中立位置を第1方向A1の一方の端部とすることで、移動軌跡を略U字型または逆U字型などとしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 多方向スライド型電子部品
10 ケース
A1 第1方向
A2 第2方向
21 ガイド突起(ガイド機構)
50 操作つまみ
60 摺動板
70 駆動体
73 ガイド凹部(ガイド機構)
79,81 スライド移動体係合部
100 駆動体弾発部材
150 第1移動検出体
181 摺接パターン(電気的機能部)
200 摺動子(電気的機能部)
210 スライド移動体
213,215 駆動体係合部
230 スライド移動体弾発部材
270 第2移動検出体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースの上面に沿って交差する第1,第2方向に移動自在に設置される操作つまみと、
前記ケースの下面側に設置され、前記操作つまみと一体に移動する駆動体と、
前記駆動体の第1方向への移動に伴って駆動されて電気的出力を変化する第1移動検出体と、
前記駆動体の第2方向への移動に伴って駆動されて電気的出力を変化する第2移動検出体と、を具備し、
前記第1移動検出体は、第1方向に移動するスライド移動体と、スライド移動体の移動に伴って電気的出力を変化する電気的機能部とを有して構成され、
前記スライド移動体には、第2方向に向かって突出する駆動体係合部を設け、
前記駆動体には、前記スライド移動体の駆動体係合部に係合して第1方向に対してはスライド移動体を駆動体とともに移動させ、第2方向に対しては駆動体のみを移動させるスライド移動体係合部を設けたことを特徴とする多方向スライド型電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の多方向スライド型電子部品であって、
前記第1移動検出体は、前記スライド移動体を第1方向の中立位置に自動復帰させるスライド移動体弾発部材を有し、
一方前記駆動体を前記第2方向の一方の側に向けて弾発する駆動体弾発部材を設置し、
これらスライド移動体弾発部材および駆動体弾発部材によって駆動体をその中立静止位置に自動復帰させることを特徴とする多方向スライド型電子部品。
【請求項3】
請求項2に記載の多方向スライド型電子部品であって、
前記駆動体とケースの間に、駆動体の第1方向の中立位置から第1方向に向けて移動した駆動体の第2方向への移動を阻止するガイド機構を設けたことを特徴とする多方向スライド型電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−18601(P2011−18601A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163516(P2009−163516)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000215833)帝国通信工業株式会社 (262)
【Fターム(参考)】