説明

多方向切換弁

【課題】流路切換過渡時に、高圧冷媒の圧力が過度に上昇することを抑えることができて、フェールセーフ機構により装置に異常・故障が発生したと誤判断されて装置が無闇に停止がないようにする。
【解決手段】弁本体に、高圧通路部の出口に選択的に連通せしめられる第1入出口13及び第2入出口14が設けられた弁シート部、及び第1入出口13及び第2入出口14を介して低圧流体が導入される弁室が設けられ、流路切換過渡時に、弁体50における高圧通路部55の出口側端部55aが前記弁シート部65における第1入出口13と第2入出口14との間の部分に押し付けられた状態で摺動され、弁シート部における第1入出口13と第2入出口14との間に、流路切換過渡時において、高圧通路部55の高圧冷媒を弁室側に逃がすための溝、切欠、透孔等からなる逃がし通路部69が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル等に用いられる三方切換弁や四方切換弁等の多方切換弁に係り、特に、流路の切り換えを、ロータとステータからなるモーター等のアクチュエータで弁体を回動させることにより行うロータリ式の多方向切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気調和機、冷凍装置等の冷凍サイクルは、圧縮機、気液分離器、凝縮器(室外熱交換器)、蒸発器(室内熱交換器)、及び膨張弁等に加えて、流路(流れ方向)切換手段としての四方切換弁を備えている。
【0003】
この四方切換弁を備えた冷凍サイクルの一例を図5、図6を参照しながら説明する。図示例の冷凍サイクル300は、空気調和機のもので、運転モード(冷房運転と暖房運転)の切り換えを四方切換弁320で行うようになっている。すなわち、圧縮機310、気液分離器312、凝縮器(室外熱交換器)314、蒸発器(室内熱交換器)316、及び膨張弁318を備え、前記の圧縮機310、気液分離器312、凝縮器314、及び蒸発器316の四者の間に、第1〜第4の4つのポート(入出口)a、b、c、d(図6参照)を有する四方切換弁320が配在されている。
【0004】
前記各機器類間は導管(パイプ)等で形成される流路で接続されている。具体的には、気液分離器312内の冷媒を圧縮機310に導く吸入流路321、圧縮機310から吐出された高圧冷媒を四方切換弁320の第1ポートaに導く吐出流路322、四方切換弁320の第2ポートbと凝縮器314の第1流通口314aとを接続する凝縮器側送り戻し流路323、四方切換弁320の第3ポートcと蒸発器316の第1流通口316aとを接続する蒸発器側送り戻し流路324、四方切換弁320の第4ポートdと気液分離器312の戻し口312aとを接続する戻し流路325、凝縮器314の第2流通口314bと膨張弁318とを接続する流路326と、及び、膨張弁318と蒸発器316の第2流通口316bとを接続する流路327が設けられている。
【0005】
このような構成の冷凍サイクル300においては、冷房運転モードが選択されたときには、四方切換弁320が、図6(A)に示される如くに、吐出流路322と凝縮器側送り戻し流路323とを連通させるとともに、蒸発器側送り戻し流路324と戻し流路325とを連通させる状態に切り換えられる。このときには、図5において実線矢印で示される如くに、気液分離器312内の低圧冷媒が吸入流路321を介して圧縮機310に吸入されるとともに、圧縮機310の吐出口310aから高温高圧の冷媒が吐出流路322、四方切換弁320、及び凝縮器側送り戻し流路323を介して凝縮器314に導かれ、凝縮器314において室外空気と熱交換して凝縮し、高圧の二相冷媒となって流路326を介して膨張弁318に導入される。この膨張弁318により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、流路327を介して蒸発器316に導入され、ここで室内空気と熱交換(冷房)して蒸発し、蒸発器316からは低温低圧の冷媒が蒸発器側送り戻し流路324、四方切換弁320、及び戻し流路325を介して気液分離器312に戻される。
【0006】
それに対し、暖房運転モードが選択されたときには、四方切換弁320が、図6(B)に示される如くに、吐出流路322と蒸発器側送り戻し流路324とを連通させるとともに、凝縮器側送り戻し流路323と戻し流路325とを連通させる状態に切り換えられる。このときには、図5において破線矢印で示される如くに、気液分離器312内の冷媒が吸入流路321を介して圧縮機310に吸入されるとともに、圧縮機310の吐出口310aから高温高圧の冷媒が吐出流路322、四方切換弁320、及び蒸発器側送り戻し流路324を介して蒸発器316に導かれ、蒸発器316において室内空気と熱交換(暖房)して蒸発し、高圧の二相冷媒となって流路327を介して膨張弁318に導入される。この膨張弁318により高圧の冷媒が減圧され、減圧された低圧の冷媒は、流路326を介して凝縮器314に導入され、ここで室外空気と熱交換して凝縮し、凝縮器314からは低温低圧の冷媒が凝縮器側送り戻し流路323、四方切換弁320、及び戻し流路325を介して気液分離器312に戻される。
【0007】
前記した如くの冷凍サイクルに組み込まれるロータリ式の四方切換弁は、下記特許文献1にも見られるように、基本的には、モータ等のアクチュエータにより回動せしめられる弁体と、該弁体を回動可能に保持する、弁シート部及び弁室が設けられた弁本体とを備え、この弁本体の弁シート部に、第1入出口(凝縮器連通口)及び第2入出口(蒸発器連通口)、並びに、圧縮機吐出側からの高圧冷媒を前記弁室に導入するための高圧入口及び圧縮機吸入側へ低圧冷媒を導出するための低圧出口が設けられ、前記弁体を回動させることによって、前記弁体内に設けられた通路部により前記第1入出口及び第2入出口のいずれかと前記高圧入口(弁室)及び低圧出口のいずれかとを選択的に連通させることにより、流路の切り換えを行うようになっている。
【0008】
しかしながら、前記した如くの従来のロータリ式四方切換弁は、弁室に高圧冷媒を導入するとともに、弁体内の通路部に低圧冷媒を流すようになっているので、弁体の内外の差圧が極めて大きくなり、その差圧(高圧冷媒)により弁体が弁シート部に強く押し付けられ、そのため、流路切換時に弁体がスムーズに回動せず、流路切換動作が重くなる嫌いがあり、また、弁体や弁シート部が摩耗しやすいといった問題があった。
【0009】
このような問題を解消すべく、本発明の発明者等は、先に、次のような構成の四方切換弁を提案している(下記特許文献2)。
【0010】
すなわち、該提案の四方切換弁1’は、図3、図4に示される如くに、流路を切り換えるべくモータ等のアクチュエータ15により回動せしめられる弁体50と、この弁体50を回動可能に保持する弁本体60とを備え、前記弁体50内に高圧冷媒が導入される高圧通路部55が形成され、前記弁本体60に、前記高圧通路部55の出口側に選択的に連通せしめられる第1入出口13及び第2入出口14が設けられた弁シート部65と前記第1入出口13及び第2入出口14を介して選択的に低圧冷媒が導入される弁室61とが設けられ、流路切換時に、前記弁体50における前記高圧通路部55の出口側端部が前記弁シート部65における前記第1入出口13と第2入出口14との間を摺動するようにされ、前記高圧冷媒による前記弁体50を前記弁シート部65に押し付ける方向の力が略キャンセルされるように、前記弁体50等の寸法形状(具体的には、逆L形軸部53の下端部54の外径や角形リング75の実効内径が設定されてなる。
【0011】
より詳しくは、前記弁体50は、逆L形軸部53を有し、該逆L形軸部53内に、高圧冷媒を前記第1入出口13及び第2入出口14に選択的に導くための逆L形ないしクランク状の前記高圧通路部55が形成されている。また、前記弁室61における前記弁シート部65とは反対側の底部に前記弁体50の高圧通路部55に高圧流体を導くための高圧入口11が設けられ、さらに、前記弁室61に開口する低圧出口12が設けられて、前記冷凍サイクルで用いられる四方切換弁として機能するようにされている。
【0012】
かかる提案の四方切換弁1’では、弁体50内に高圧冷媒が導入される高圧通路部55が形成されるとともに、弁室61には低圧冷媒が導入されるようになっていて、高圧冷媒による弁体50を弁シート部65に押し付ける方向の力が略キャンセルされるように、弁体50等の寸法形状が設定されているので、流路切換動作を容易に軽やかに行うことができるとともに、弁体50や弁シート部65が摩耗しにくくなり、その結果、耐久性、信頼性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001-295951号公報
【特許文献2】特願2009-098188号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、前記した如くの従来のロータリ式四方切換弁1’では、弁体50を図4(A)に示される位置(以下、第1の運転位置)から図4(D)に示される位置(以下、第2の運転位置)へ回動させること、及び、その逆方向に回動させることにより、流路の切り換え、言い換えれば、第1入出口13と高圧通路部55とを連通させるとともに、第2入出口14と低圧出口12とを連通させる例えば冷房運転状態と、第2入出口14と高圧通路部55とを連通させるとともに、第1入出口13と低圧出口12とを連通させる例えば暖房運転状態との切り換え行われる。
【0015】
この場合、流路切換過渡時(第1の運転位置から第2の運転位置への、及び、第2の運転位置から第1の運転位置への切換途中)には、図4(B)、(C)に示される如くに、弁体50における高圧通路部55の出口側端部55a(角形リング75)が弁シート部65における第1入出口13と第2入出口14との間の部分に押し付けられた状態で摺動するので、高圧通路部55の出口側が弁シート部65によって閉止されてしまう。
【0016】
このように、流路切換過渡時に高圧通路部55の出口側が閉止されてしまうと、極短時間であるとはいえ、圧縮機吐出側の高圧冷媒に逃げ場がなくなり、高圧冷媒の圧力が急上昇して、流路切換動作に支障を来したり、フェールセーフ機構により装置に異常・故障が発生したと誤判断されて装置が無闇に停止してしまう等の問題が生じるおそれがある。
【0017】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、流路切換過渡時に、高圧冷媒の圧力が過度に上昇することを抑えることができて、流路切換動作に支障を来すことがないようにされるとともに、フェールセーフ機構により装置に異常・故障が発生したと誤判断されて装置が無闇に停止してしまうような事態を招くことがないようにできる多方切換弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成すべく、本発明に係る四方切換弁は、基本的には、流路を切り換えるべくモータ等のアクチュエータにより回動せしめられる弁体と、該弁体を回動可能に保持する弁本体とを備え、前記弁体内に高圧流体が導入される高圧通路部が形成され、前記弁本体に、前記高圧通路部の出口側に選択的に連通せしめられる第1入出口及び第2入出口が設けられた弁シート部と前記第1入出口及び第2入出口を介して選択的に低圧流体が導入される弁室とが設けられ、流路切換過渡時に、前記弁体における高圧通路部の出口側端部が前記弁シート部における第1入出口と第2入出口との間の部分に押し付けられた状態で摺動するようにされ、前記弁シート部に、流路切換過渡時において、前記高圧通路部の高圧冷媒を前記弁室側に逃がすための溝、切欠、透孔等からなる逃がし通路部が形成されていることを特徴としている。
【0019】
前記弁体は、好ましくは、逆L形軸部を有し、該逆L形軸部内に、高圧冷媒を前記第1入出口及び第2入出口に選択的に導くための逆L形ないしクランク状の前記高圧通路部が形成される。
【0020】
前記逃がし通路部は、好ましくは、前記第1入出口と第2入出口との間に形成され、前記高圧通路部の出口側端部と部分的に重なり合うように、平面視楕円形、長円形、勾玉形、飯ごう形等とされる。
【0021】
他の好ましい態様では、前記弁室における前記アクチュエータ側に、前記第1入出口及び前記第2入出口が形成された弁シート部が設けられ、前記弁室における前記アクチュエータとは反対側の底部に前記弁体の高圧通路部に高圧流体を導くための高圧入口が形成される。
【0022】
別の好ましい態様では、前記弁室に開口する低圧出口が形成されて、四方切換弁として機能するように構成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る多方切換弁では、弁シート部における第1入出口と第2入出口との間に、溝、切欠、透孔等からなる逃がし通路部が形成されていることから、流路切換過渡時においては、逃がし通路部と高圧通路部の出口側端部とが部分的に重なり合い、圧縮機吐出側の高圧冷媒は、高圧通路部から前記逃がし通路部を通じて弁室に逃がされる。そのため、流路切換過渡時に、高圧冷媒の圧力が過度に上昇することを抑えることができ、その結果、流路切換動作に支障を来すことがないようにされるとともに、フェールセーフ機構により装置に異常・故障が発生したと誤判断されて装置が無闇に停止してしまうような事態を招くことがないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る多方(四方)切換弁の一実施形態を示す縦断面図。
【図2】図1のX-X矢視線に従う断面図。
【図3】従来の多方(四方)切換弁の一例を示す縦断面図。
【図4】図3のX-X矢視線に従う断面図。
【図5】四方切換弁が用いられた冷凍サイクルの一例を示す図。
【図6】図5に示される四方切換弁の動作説明に供される図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の四方切換弁の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る多方(四方)切換弁の一実施形態を示す縦断面図である。なお、本実施形態の四方切換弁1において、前述した図3に示される従来の四方切換弁1’の各部に対応する部分には同一の符号が付されている。
【0026】
図示例の四方切換弁1も、カーエアコン等の冷凍サイクルに用いられるもので、アクチュエータとしてのロータ16及びステータ17からなるモータ15により回動せしめられる弁体50と、この弁体50を回動可能に保持する弁本体60とを備えている。
【0027】
本実施形態の四方切換弁1では、モータ15のロータ16と弁体50との間に、遊星歯車式減速機構40が介装されており、ロータ16の回転は相当減速されて弁体50に伝達されるようになっている。なお、遊星歯車式減速機構40の詳細構成は、必要なら、例えば本発明の出願人による特開2008-101765号公報等を参照されたい。
【0028】
前記弁本体60のモータ15側に位置する上側分割体60Aには、第1入出口13及び第2入出口14が適宜の角度間隔をあけて形成された弁シート部材65が嵌合固定されるとともに、弁室61が形成されている。前記弁本体60における前記上側分割体60Aの下側に位置する下側分割体60Bにおける底部中央(回転軸線O上)には、高圧入口11が設けられている。前記上側分割体60Aには、前記第1入出口13に連なる、周側部に開口する第1接続口(継手)63aを持つ逆L形通路部63、前記第2入出口14に連なる、周側部に開口する第2接続口(継手)64aを持つ逆L形通路部64が形成されている。
【0029】
前記弁体50は、上から順に、前記モータ15内の遊星歯車式減速機構40に連結された小径軸部51、中央軸部52、及び逆L形軸部53からなり、逆L形軸部53内には、高圧入口11からの高圧冷媒を前記第1入出口13及び第2入出口14に選択的に導くための逆L形ないしクランク状の高圧通路部55が形成されている。高圧通路部55は、高圧入口11側の下側通路部55Aと弁シート部材65側(第1入出口13及び第2入出口14側)の上側通路部55Bとからなり、上側通路部55Bの出口側端部55aにはシール材としてのOリング74、及び角形リング75(後述)が装着されている。
【0030】
前記弁体50の小径軸部51はモータ15側に設けられた厚肉円筒状のガイド部49に回動自在に嵌挿され、前記中央軸部52は、前記上側分割体60A及び弁シート部材65の中央(回転軸線O上)に形成された挿通穴66、67に回動自在に嵌挿され、前記逆L形軸部53の下端部は、底部中央の高圧入口11上に連設された挿通穴68に回動自在に挿入されている。
【0031】
また、前記高圧通路部55における弁シート部材65側の端部55a(出口側の端部)の内周溝(凹部)には、シール部材としてOリング74と角形リング75が装着されている。ここでは、高圧通路部55の高圧冷媒によりOリング74が半径方向外方に押圧されて断面が円形から楕円状に変化するが、このOリング74の形状変化を利用して角形リング75の一端面を弁シート部材65に押し付けてシール効果を得る構成となっている。さらに、弁シート部材65と前記上側分割体60Aとの間にもシール部材としてのOリング72、72が介装されている。
【0032】
さらに、本実施形態の四方切換弁1では、弁本体60の上下2カ所に、弁体50を摺動回転自在に支持するスリーブ状の軸受部材81、82が配設されるとともに、弁体50の縦辺部53Aと弁本体60の挿通穴68との間にシール材83が介装されている。
【0033】
かかる構成の四方切換弁1においては、弁体50を図2(A)に示される位置(第1の運転位置)から図2(D)に示される位置(第2の運転位置)へ回動させること、及び、その逆方向に回動させることにより、流路の切り換え、言い換えれば、第1入出口13と高圧通路部55とを連通させるとともに、第2入出口14と低圧出口12とを連通させる例えば冷房運転状態と、第2入出口14と高圧通路部55とを連通させるとともに、第1入出口13と低圧出口12とを連通させる例えば暖房運転状態との切り換え行われる。
【0034】
この場合、流路切換過渡時(第1の運転位置から第2の運転位置への、及び、第2の運転位置から第1の運転位置への切換途中)には、図2(B)、(C)に示される如くに、弁体50における高圧通路部55の出口側端部55a(角形リング75)が弁シート部65における第1入出口13と第2入出口14との間の部分に押し付けられた状態で摺動する。
【0035】
ここで、前述した図3、図4に示される従来の四方切換弁1’では、前記流路切換過渡時に高圧通路部55の出口側が弁シート部65によって閉止されてしまい、圧縮機吐出側の高圧冷媒に逃げ場がなくなり、高圧冷媒の圧力が急上昇して、流路切換動作に支障を来したり、フェールセーフ機構により装置に異常・故障が発生したと誤判断されて装置が無闇に停止してしまう等の問題が生じるおそれがあったが、本例の四方切換弁1では、前記問題を次のようにして解消している。
【0036】
すなわち、前記弁シート部65における前記第1入出口13と第2入出口14との間に、流路切換過渡時において、前記高圧通路部55の高圧冷媒を前記弁室61側に逃がすための溝穴からなる逃がし通路部69が形成されている。この逃がし通路部69は、前記高圧通路部55の出口側端部55aと部分的に重なり合うように、内周側と外周側とが同心の円弧で両端が半円の、平面視飯ごう形とされている。
【0037】
このように、弁シート部65における第1入出口13と第2入出口14との間に、溝穴からなる逃がし通路部69が形成されていることにより、流路切換過渡時においては、図2(B)、(C)に示される如くに、逃がし通路部69と高圧通路部55の出口側端部55aとが部分的に重なり合い、圧縮機吐出側の高圧冷媒は、高圧通路部55から前記逃がし通路部69を通じて弁室61に逃がされるので、流路切換過渡時に、高圧冷媒の圧力が過度に上昇することを抑えることができる。そのため、流路切換動作に支障を来すことがないようにされるとともに、フェールセーフ機構により装置に異常・故障が発生したと誤判断されて装置が無闇に停止してしまうような事態を招くことがないようにできる。
【0038】
なお、高圧通路部55から弁室61に逃がされた冷媒は、低圧出口12等を通じて圧縮機吸入側に戻されるので、空調装置(カーエアコン)の運転に何ら悪影響を及ぼすことはない。また、弁体50が図2(A)に示される第1の運転位置にあるとき、及び、図2(D)に示される第2の運転位置にあるときには、逃がし通路部69と高圧通路部55の出口側端部55aとは全く重なり合うことはないので、高圧冷媒が弁室61に漏れ出ることはない。
【0039】
上記実施形態では、本発明を多方切換弁の一つである四方切換弁に適用した場合について説明したが、本発明は、四方切換弁の他、例えば前記低圧出口12を無くした三方切換弁等にも同様に適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 四方切換弁
11 高圧入口
12 低圧出口
13 第1入出口
14 第2入出口
15 モータ(アクチュエータ)
16 ロータ
17 ステータ
20 弁体
25 高圧通路部
30 弁本体
31 高圧導入室
34 弁室
35 弁シート部
50 弁体
55 高圧通路部
60 弁本体
61 弁室
65 弁シート部
69 逃がし通路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を切り換えるべくモータ等のアクチュエータにより回動せしめられる弁体と、該弁体を回動可能に保持する弁本体とを備えた多方切換弁であって、
前記弁体内に高圧流体が導入される高圧通路部が形成され、前記弁本体に、前記高圧通路部の出口側に選択的に連通せしめられる第1入出口及び第2入出口が設けられた弁シート部と前記第1入出口及び第2入出口を介して選択的に低圧流体が導入される弁室とが設けられ、流路切換過渡時に、前記弁体における高圧通路部の出口側端部が前記弁シート部における第1入出口と第2入出口との間の部分に押し付けられた状態で摺動するようにされ、
前記弁シート部に、流路切換過渡時において、前記高圧通路部の高圧冷媒を前記弁室側に逃がすための溝、切欠、透孔等からなる逃がし通路部が形成されていることを特徴とする多方切換弁。
【請求項2】
前記弁体は、逆L形軸部を有し、該逆L形軸部内に、高圧冷媒を前記第1入出口及び第2入出口に選択的に導くための逆L形ないしクランク状の前記高圧通路部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多方切換弁。
【請求項3】
前記逃がし通路部は、前記第1入出口と第2入出口との間に形成され、前記高圧通路部の出口側端部と部分的に重なり合うように、平面視楕円形、長円形、勾玉形、飯ごう形等とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の多方切換弁。
【請求項4】
前記弁室における前記アクチュエータ側に、前記第1入出口及び前記第2入出口が形成された弁シート部が設けられ、前記弁室における前記アクチュエータとは反対側の底部に前記弁体の高圧通路部に高圧流体を導くための高圧入口が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多方切換弁。
【請求項5】
前記弁室に開口する低圧出口が形成されて、四方切換弁として機能するように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多方切換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−47426(P2011−47426A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194390(P2009−194390)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】