説明

多環式有機化合物、それらの基材に基づいた位相差層および補償板

本発明は一般構造式(I)の多環式有機化合物に関する。前記式中、Yは少なくとも部分的に芳香性である主に平面の多環系であり、W、WおよびWは有機溶媒中における可溶性を提供する異なる基であり、(n1+n2+n3)の合計は1、2、3、4、5、6、7または8である。多環式有機化合物は、可視スペクトル範囲の電磁放射に対して実質的に透過性であり、有機溶媒中において超分子を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化学、とりわけ多環式有機化合物、その溶液、およびこれらの化合物に基づいた位相差層を備えた補償板に関する。より具体的には、本発明は液晶表示装置のための光学的補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的補償装置は、前記補償装置を通過する偏光の相対位相を変化させるために用いられ、よって偏光に対する制御が必要とされる用途における使用によく適している。例えば、少なくとも1つの位相差層を備えた光学的補償装置は、系内の他の光学部品によって導入された偏光の2つの成分の間の位相差を補正するために、入射光中に位相遅延を導入するために用いられる。
【0003】
光学的位相差層の特に重要な1つの用途は、液晶表示(LCD)パネルに偏光補償を提供することである。
LCDパネルは、腕時計および時計、写真用カメラ、技術機器、コンピューター、平面テレビ、投影スクリーン、コントロールパネル、情報提供装置の大部分において広く用いられている。多くのLCDパネル内の情報は、数字または文字の列の形で示されており、それらの数字または文字の列は、一定パターンに配列された多数の分割電極(segmented electrodes)によって生成される。各部分は個々のリードによって駆動電子回路に接続されており、前記駆動電子回路は、適切な組み合わせの部分に電圧を印加して、前記部分を介して透過される光を制御することにより所望の情報を表示する。図形情報またはテレビの表示は、2組の直交する導体間におけるX−Y順次アドレス指定方式によって接続されている画素のマトリックスによって行われ得る。より高度なアドレス方式は、駆動電圧を個々の画素において制御するために薄膜トランジスターのアレイを用いる。この方式は、主にねじれネマチック液晶表示装置に適用されているが、超ねじれネマチック液晶表示装置の高機能型にも用途が見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
理想的な表示装置は、通常の観察方向から逸れた異なる角度でその表示装置を見ているときでも、同等のコントラストおよび演色を示すべきである。しかしながら、ネマチック液晶に基づく様々な種類の表示装置は、コントラストの角度依存性を有する。これは、通常の観察方向から逸れた角度では、コントラストは低下し、情報の視認性が低減されるということである。一般的にネマチックLCDに用いられる材料は、光学的に、正の一軸複屈折性であり、これは異常光屈折率nが常光屈折率nよりも大きいこと、つまりΔn=n−n>0であることを意味する。斜めの角度における表示装置の視認性は、負の複屈折(Δn<0)を有する光学的補償装置を用いることにより改善することができる。その他に、コントラストの喪失は、大きな視野角における、黒色状態の画素素子を介した光の漏出によって引き起こされる。カラー液晶表示装置では、前記漏出はまた、飽和色およびグレースケール色の双方に対して深刻な色ずれを生じる。これらの制限は、操縦士の表示装置を副操縦士が見ることが重要である航空機用途におけるコントロールパネルに用いられる表示装置にとって特に重要である。広い視野にわたって高品質で高コントラストの像を示すことができる液晶表示装置を提供することは、当業において大幅な改善になるであろう。
【0005】
補償装置に用いられる化合物は、作用スペクトル波長範囲において透過性でなければならない。ほとんどのLCD装置はヒトの目に適合しており、これらの装置について、作用
範囲は可視スペクトル範囲である。
【0006】
水性位相差フィルム(water-based retardation films)は、高度な湿潤状態ではそれら
のフィルムの安定性が低いために、一部の用途においては必ずしも最適な解だとは限らない。したがって、良好な環境安定性および機械的強度を備えた新規の光学的補償装置を提供する必要がある。本発明は上記に述べた不都合の克服をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の説明および特許請求の範囲において用いられる様々な用語の定義を下記に列記する。
「部分的に芳香性」という用語は、分子内の芳香族共役系を指す。
【0008】
「光学軸」という用語は、伝播光が複屈折を示さない方向を指す。
「可視スペクトル範囲」という用語は、400nmとほぼ等しい下方境界と、700nmとほぼ等しい上方境界とを有するスペクトル範囲を指す。
【0009】
「位相差層」という用語は、入射単色偏光を各成分に分割し、それらの成分の間に相対的な位相差または位相ずれを導入する光学要素を指す。
位相差要素の「位相差」という用語は、直前に述べた位相ずれの相対的な位相差を指す。「4分の1波長板」は、90°に相当する一定の位相差を有する位相差要素を指す。「半波長板」は、180°に相当する一定の位相差を有する位相差要素を指す。
【0010】
「補償板」という用語は、位相差層を備えた光学装置を指す。
補償板におけるプレートの型は、プレートの自然座標系に対する特定の誘電率テンソルの主軸線の向きに緊密に関係している。プレートの自然xyz座標系は、Z軸が法線方向に平行であり、xy平面がプレート面と一致するように選択される。図1(従来技術)は、誘電率テンソルの主軸線(A、B、C)がxyz系に対して任意に配向されるときの一般的な事例を示す。
【0011】
主軸線の向きは3つのオイラー角(θ、φ、ψ)を用いて特徴付けることができる。前記オイラー角は、主要誘電率テンソル成分(ε、ε、ε)と共に、様々な種類の光学的補償装置(図1)を一意的に定義する。誘電率テンソルの主要成分がすべて異なる値を有するときの事例は、二軸補償装置に対応し、それによりプレートは2本の光学軸を有する。例えば、ε<ε<εの場合には、これらの光学軸は、C軸から両側に対称的にC軸およびA軸の平面上に位置する。ε=εの一軸の事例では、2本の軸が一致して、C軸が単一光学軸であるとき、縮退事例が存在する。
【0012】
C軸とz軸線との間の天頂角θは、様々な補償装置の型の定義に重要である。θ=0の場合、いくつかの重要な型の位相差層があり、それらの位相差層はLCDの補償に最もしばしば用いられる。以下、実験室枠のx軸,y軸およびz軸は、A軸、B軸およびC軸とそれぞれ一致して選択されている。
【0013】
誘電体誘電率テンソルの3つの主値ε,ε,εの最低および最高の大きさがA軸およびB軸にそれぞれ対応する場合、そのときε<ε<εであり、2つの光学軸はAB平面に属する。この位相差層は、「A」または「B」型プレート(図2(従来技術))と名付けられている。負のAプレートは、ε−ε<0のとき、正のBプレートと同等である(呼称の文字の順序を形式的に入れ替えることにより、誘電体誘電率の差の符号が変わる:ε−ε>0)。
【0014】
2本の光学軸がプレート面に直交する平面に属する場合、異なる事例が存在する。この
事例は、主要誘電率のうちの1つの最低または最高の大きさがC軸に対応する場合に生じる。例えばε<ε<εの場合、2本の光学軸がA軸およびC軸によって形成された平面に属するので、位相差層は負のCプレートまたは正のAプレートと名付けられる。
【0015】
LCDの補償に最もしばしば用いられる、いくつかの重要な型の一軸位相差層が存在する。
Cプレートは、ε=ε≠εによって定義される。この場合、光学軸は主要C軸と一致する。ε=ε<εの場合には、前記プレートは「正のCプレート」と呼ばれる。これとは反対に、ε=ε>εならば、前記プレートは「負のCプレート」と呼ばれる。これらの2つの場合において、C軸はまた異常光屈折率に対応する。図3(従来技術)は、正(a)および負(b)のCプレートの自然座標系に関する特定の誘電率テンソルの主軸線の向きおよび値を示している。
【0016】
ε≠ε=εの場合には、A主軸が光学軸であり、そのプレートは「Aプレート」と名付けられる。ε>ε=εの場合には、そのプレートは「正のAプレート」と名付けられる(図4a、従来技術)。さらに、ε<ε=εの場合には、そのプレートは「負のAプレート」と名付けられる(図4b、従来技術)。
【0017】
一般的な場合において、誘電率テンソル成分(ε,ε,ε)は、複素数値である。一軸媒体については、主要誘電率テンソル成分(ε,ε,ε)、主要屈折率(nA,nB,nC)、および主要吸収係数(k,k,k)は以下の関係に合致する:
【0018】
【数1】

所与の関係は非伝導性二軸媒体にも適用することができる。伝導性二軸材料の場合、導電率テンソルの主軸線の向きが誘電率テンソルのそれと異なるならば、所与の関係は有効ではない。
【0019】
異方性プレートの法線に沿って伝播する電磁波の位相速度は、主軸線に対する波の偏波ベクトル(wave polarization vector)の向きを依存する。電磁波の電界ベクトルが最低屈折率の主軸線に沿って振動する場合、波の位相速度は最も高い。対応する主軸線は「速軸(fast axis)」と呼ばれ、屈折率は「nf」として示され得る。類似した方法で、最大屈
折率は「遅」主軸を定義し、対応する屈折率の称呼は「ns」である。
【0020】
したがって、位相差層は、速主軸(fast principal axis)および遅主軸(slow principal
axis)に対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ得る。二軸プレートの場合には、屈折率nf,ns,nnがすべて異なる値を有する。以前に検討したように、BプレートおよびAプレートは二軸プレートである。屈折率は、Bプレートについては、条件ns>nn>nfに従い、正のAプレートについては、条件ns>nf>nnに従う。AプレートおよびCプレートは一軸プレートである。負のAプレートの屈折率は、条件nn=ns>nfに従う。Aプレートは位相差パラメーターR=d・(ns−nf)によって特徴付けることができ、前記式中、dは位相差層の厚さである。Cプレートの場合には、面内「速」軸、又は「遅」軸は存在しない(nf=ns)。負のAプレートの屈折指数は、条件:nf=ns>nnに従う。C−プレートは、位相差パラメーター
【0021】
【数2】

によって特徴付けることができ、前記式中、dは位相差層の厚さである。
【0022】
本発明の主題は以下の図によって示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来技術に対する例証として上記で説明した図。
【図2】従来技術に対する例証として上記で説明した図。
【図3】従来技術に対する例証として上記で説明した図。
【図4】従来技術に対する例証として上記で説明した図。
【図5】本発明に従ったC型の位相差層を備えた補償板のサンプルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付の実施例および詳細な明細書を検討して、以下の詳細な説明を参照することによって、本発明およびその効果がよりよく理解されると、本発明およびその効果のより完全な評価が容易になされるであろう。前記実施例および詳細な明細書はすべて、本開示の一部を形成する。
【0025】
第1態様において、本発明は、下記一般構造式(I)の多環式有機化合物を提供する。
【0026】
【数3】

前記式中、Yは少なくとも部分的に芳香性である主に平面の多環系であり、W、WおよびWは有機溶媒中における可溶性を提供する異なる基であり、(n1+n2+n3)の合計は1、2、3、4、5、6、7または8である。本発明の多環式有機化合物は、有機溶媒中において超分子を形成することができ、可視スペクトル範囲の電磁放射に対して実質的に透過性である。
【0027】
第2態様において、本発明は、少なくとも1つの下記一般構造式(I)の多環式有機化合物を含有する溶液を提供する。
【0028】
【数4】

前記式中、Yは少なくとも部分的に芳香性である主に平面の多環系であり、W、WおよびWは有機溶媒中における可溶性を提供する異なる基であり、(n1+n2+n3)の合計は1、2、3、4、5、6、7または8である。前記多環式有機化合物は、有機溶媒中において超分子を形成することができ、この化合物は、可視スペクトル範囲の電磁放射に対して実質的に透過性である。前記化合物の溶液は、可視スペクトル範囲において実質的に透過性の位相差層を形成することができる。
【0029】
第3態様において、本発明は、可視スペクトル範囲において実質的に透過性であり、かつ少なくとも1つの下記一般構造式(I)の多環式有機化合物を含有する少なくとも1つの位相差層を備えた補償板を提供する。
【0030】
【数5】

前記式中、Yは少なくとも部分的に芳香性である主に平面の多環系であり、W、WおよびWは有機溶媒中における可溶性を提供する異なる基であり、n1+n2+n3の合計は1、2、3、4、5、6、7または8である。前記多環式有機化合物は、有機溶媒中において超分子を形成することができ、この化合物は、可視スペクトル範囲の電磁放射に対して実質的に透過性である。
【0031】
開示した多環式有機化合物の一実施形態では、多環系Yは複素環である。別の実施形態において、複素環系中のヘテロ原子は、N、OおよびSを含むリストから選択される。開示した多環式有機化合物のさらに別の実施形態において、多環系Yは、フラン、オキシラン、4H−ピラン、2H−クロメン、ベンゾ[b]フラン、2H−ピラン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、パラチアジン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピリミジン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン、インドール、プリン、ベンゾイミダゾール、キノリン、フェノチアジン、モルホリン、チアジオール(thiaziole)、チアジアゾール、およびオキサゾ
ールを含むリストから選択される少なくとも1つのフラグメントを含む。
【0032】
開示した多環式有機化合物のさらに別の実施形態において、多環系Yは、芳香族炭化水素を表わす少なくとも1つのフラグメントを含む。別の実施形態において、前記芳香族炭化水素は、アセナフテン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、ビフェニレンおよびナフタレンを含むリストから選択される。
【0033】
さらに別の実施形態において、多環系Yは、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアイジン(triaizine)を含むリストから選択され、構造1〜24
から選択される一般構造式を有して表1に示されたフラグメントを含む。
【0034】
表1.多環式芳香族炭化水素、イミダゾール、ピラゾールおよびトリアイジンフラグメントを備えた多環系Yの例
【0035】
【表1】



開示した多環式有機化合物の一実施形態において、可溶性を提供する基Wのうちの少なくとも1つは、カルボン酸(COOH)基、直鎖および分岐(C〜C20)アルキル、(C〜C20)アルケニル基、および(C〜C20)アルキニル(alkinyl)基を含む
リストから選択される。一実施形態において、前記基Wは、少なくとも1つの共有結合によって多環系Yと連結されている。さらに別の実施形態において、アルキル基は、少なくとも2つの共有結合によって多環系Yに連結することにより、環を形成する。アルキル鎖間の疎水的相互作用は、超分子の形成により可溶性を改善し、不飽和結合の分子間π−π相互作用は、有機溶媒の溶液中における超分子の形成を保証するために大きな役割を果たし得る。以下、超分子という用語は、溶液中における分子凝集を含む。超分子の種類とし
ては、棒状超分子、層状超分子、および当業者に知られている他の種類が挙げられる。
【0036】
開示した多環式有機化合物の別の実施形態において、基Wのうちの少なくとも1つは架橋基Aによって多環系Yと連結される。さらに別の実施形態において、架橋基Aは、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)−NH−、−(SO)NH−、−O−、−CHO−、−NH−、>N−、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択される。
【0037】
開示した多環式有機化合物の一実施形態において、前記多環系はπ−π−相互作用によって棒状超分子を形成することができ得る。開示した多環式有機化合物の別の実施形態において、棒状超分子は、約3.1〜3.7Åの範囲にある多環系間における面間距離を有する。
【0038】
本発明はまた上記に開示したような溶液を提供する。開示した溶液の別の実施形態では、多環系Yは複素環である。前記複素環系中のヘテロ原子は、N、OおよびSを含むリストから選択される。本発明のさらに別の実施形態において、多環系Yは、フラン、オキシラン、4H−ピラン、2H−クロメン、ベンゾ[b]フラン、2H−ピラン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、パラチアジン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピリミジン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン、インドール、プリン、ベンゾイミダゾール、キノリン、フェノチアジン、モルホリン、チアジオール(thiaziole)、チアジアゾール、およびオキサ
ゾールを含むリストから選択される少なくとも1つのフラグメントを含む。
【0039】
開示した溶液の別の実施形態において、多環系Yは、芳香族炭化水素を表わす少なくとも1つのフラグメントを含む。さらに本発明の別の実施形態において、前記芳香族炭化水素は、アセナフテン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、ビフェニレンおよびナフタレンを含むリストから選択される。
【0040】
開示した溶液のさらに別の実施形態において、多環系Yは、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアジン(triaizine)を含むリストから選択され、
構造1〜24から選択される一般構造式を有して表1に示されたフラグメントを含む。
【0041】
開示した溶液の一実施形態において多環式有機化合物における可溶性を提供する基Wのうちの少なくとも1つは、カルボン酸(COOH)基、直鎖および分岐(C〜C20)アルキル、(C〜C20)アルケニル基、および(C〜C20)アルキニル基を含むリストから選択される。一実施形態において、開示した多環式有機化合物中の前記基Wは、少なくとも1つの共有結合によって多環系Yと連結されている。さらに別の実施形態において、アルキル基は、少なくとも2つの共有結合によって多環系Yに連結することにより、環を形成する。アルキル鎖間の疎水的相互作用は、超分子の形成により可溶性を改善し、不飽和結合の分子間π−π相互作用は、有機溶媒の溶液中における超分子の形成を保証するために大きな役割を果たし得る。
【0042】
開示した溶液の別の実施形態において、多環式有機化合物の基Wのうちの少なくとも1つは、架橋基Aによって多環系Yと連結される。さらに別の実施形態において、架橋基Aは、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)−NH−、−(SO)NH−、−O−、−CHO−、−NH−、>N−、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択される。
【0043】
開示した溶液の他の実施形態において、基Wのうちの少なくとも1つは架橋基Aによって多環系Yと連結される。さらに別の実施形態において、架橋基Aは、−C(O)−、−
C(O)O−、−C(O)−NH−、−(SO)NH−、−O−、−CHO−、−NH−、>N−、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択される。
【0044】
さらに開示された溶液の別の実施形態において、有機溶媒は、ケトン、カルボン酸、炭化水素、環式炭化水素、クロロ炭化水素、アルコール、エーテル、エステルおよび任意のそれらの組み合わせを含むリストから選択される。さらに開示された溶液の別の実施形態において、有機溶媒は、アセトン、キシレン、トルエン、エタノール、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、オクタン、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエテン、テトラクロロエテン、四塩化炭素、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、トリエチルアミン、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド(dimethulsulfoxide)および任意のそれらの
組み合わせを含むリストから選択される。
【0045】
本発明の一実施形態において、前記溶液はリオトロピック液晶溶液である。本発明の別の実施形態において、前記溶液は等方性溶液である。
開示した溶液の一実施形態において、超分子は、式(I)の少なくとも2つの前記異なる化合物の相互作用によって形成される。開示した溶液の別の実施形態において、超分子は、一般構造式(I)の同一の化合物の相互作用によって形成される。
【0046】
本発明の別の実施形態において、前記溶液はさらに、有機溶媒中に可溶である界面活性剤のような添加物および/または可塑剤を含有し得る。前記添加物および/または可塑剤は、溶液の調整を損なわない化合物から選択される。
【0047】
開示した溶液から位相差層を形成する方法は、a)有機溶媒中で一般構造式(I)の多環式有機化合物の溶液を調製する工程と、前記多環式有機化合物は、前記溶液中において超分子を形成することができ、前記化合物は、可視スペクトル範囲の電磁放射に対して実質的に透過性であることと、b)前記溶液の層を基材上に堆積する工程と、c)乾燥させて位相差層を形成する工程とを有する。本発明の一実施形態において、開示した補償板を調製する方法は、超分子の主要な配向を提供するために、前記溶液の層の上に外部からの配向作用を与えることをさらに含む。配向作用は、工程b)の溶液の層の堆積の後に行われ得る。別の実施形態において、前記配向作用は工程b)と同時であってもよい。前記配向作用は、外部からの機械的配向作用、電磁気配向作用、当業から知られている他の配向作用、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択され得る。
【0048】
本発明はまた上記に開示したような補償板を提供する。
前記補償板の一実施形態では、多環系Yは複素環である。前記複素環系中のヘテロ原子は、N、OおよびSを含むリストから選択される。前記補償板の別の実施形態において、多環系Yは、フラン、オキシラン、4H−ピラン、2H−クロメン、ベンゾ[b]フラン、2H−ピラン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、パラチアジン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピリミジン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン、インドール、プリン、ベンゾイミダゾール、キノリン、フェノチアジン、モルホリン、チアジオール(thiaziole)、チ
アジアゾール、およびオキサゾールを含むリストから選択される少なくとも1つのフラグメントを含む。
【0049】
開示した補償板のさらに別の実施形態において、多環系Yは、芳香族炭化水素を表わす少なくとも1つのフラグメントを含む。さらに別の実施形態において、前記芳香族炭化水素は、アセナフテン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、ビフェニレンおよびナフタレンを含むリストから選択される。
【0050】
開示した補償板の別の実施形態において、多環系Yは、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアジン(triaizine)を含むリストから選択され、表1
の構造1〜24から選択される一般構造式を有するフラグメントを含む。
【0051】
開示した補償板の一実施形態において、多環式有機化合物における可溶性を提供する基Wは、カルボン酸(COOH)基、直鎖および分岐(C〜C20)アルキル、(C〜C20)アルケニル基、および(C〜C20)アルキニル基を含むリストから選択される。開示した補償板の別の実施形態において、多環式有機化合物の基Wのうちの少なくとも1つは、架橋基Aによって多環系Yと連結される。さらに別の実施形態において、架橋基Aは、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)−NH−、−(SO)NH−、−O−、−CHO−、−NH−、>N−、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択される。
【0052】
本発明の別の実施形態において、補償板は2つ以上の位相差層を備え、前記層のうち少なくとも2つは、一般構造式(I)の異なる多環式化合物を含有する。
本発明の一実施形態において、開示した補償板は基材をさらに備える。開示した補償板の別の実施形態において、前記基材は可視スペクトル範囲にある電磁放射に対して透過性である。開示した補償板のさらに別の実施形態において、前記基材はポリマー製であってもよい。さらに別の実施形態において、前記基材はガラス製であってもよい。反射型LCDについては、前記基材は、鏡面反射面または乱反射面を有する箔から製造されていてもよい。一実施形態において、補償板は、位相差層の上面上に施された透明接着剤層をさらに備える。さらに別の実施形態において、補償板は接着剤透明層上に施された保護コーティングをさらに備える。
【0053】
補償板の一実施形態において、位相差層は少なくとも部分的に結晶性である。
開示した補償板のさらに別の好ましい実施形態において、位相差層は、BA型の二軸位相差層であり、前記BA型の二軸位相差層は、速主軸および遅主軸にそれぞれ対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ、それらの屈折率は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して以下の条件:ns>nn>nfに従う。
【0054】
開示した補償板のさらに別の好ましい実施形態において、位相差層は、AC型の二軸位相差層であり、前記AC型の二軸位相差層は、速主軸および遅主軸にそれぞれ対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ、それらの屈折率は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して以下の条件:ns>nf>nnに従う。
【0055】
本発明の一実施形態では、開示した補償板は、少なくとも1つの第1型の位相差層であって、その第1型位相差層の平面内に実質的に存在する遅主軸および速主軸を有する、第1型の位相差層と、少なくとも1つの第2型の位相差層であって、その第2型位相差層の平面にほぼ直交するように指向する光学軸を有する、第2型の位相差層とを備える。
【0056】
開示した補償板のさらに別の好ましい実施形態において、第1型の位相差層は、負のA型の一軸位相差層であり、前記負のA型の一軸位相差層は、速主軸および遅主軸にそれぞれ対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ、それらの屈折率は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して以下の条件:nn=ns>nfに従う。
【0057】
開示した補償板の一実施形態において、第1型の位相差層は、それらの長手軸線が速主軸とほぼ平行に配向された棒状超分子を含む。本発明の別の実施形態において、開示した
補償板は、それらの長手軸線に直交する平面においてほぼ等方的な分極性を有する前記棒状の超分子を含む。開示した補償板のさらに別の好ましい実施形態において、第2型の位相差層は、負のC型の一軸の位相差層である。前記負のC型の一軸の位相差層は、速主軸および遅主軸にそれぞれ対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ、それらの屈折率は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して以下の条件:nf=ns>nnに従う。さらに開示された補償板の別の実施形態において、第2型の位相差層は、前記位相差層の表面とほぼ平行に配向されたそれらの平面を有するシート状超分子を含む。
【0058】
以下の実施例は、本発明の特定の化合物の調製法および使用法の詳細な説明である。前記実施例は本発明の実施形態を示すために示され、本発明の範囲に対する限定として意図されない。
【0059】
提供された手順を用いて異なる基Wを備えた多くの他の変形物を容易に得ることができるので、本発明の範囲は、これらの特定の構造に限定されないことが理解されるに違いない。
【0060】
位相差層および補償板の詳細な調製を記載する以下の実施例は、例証のために含まれているものであり、当業者は、本発明の他の化合物を備えた位相差層および補償板を得ることができる。
【0061】
以下の実施例において、すべてのパーセントは重量パーセントであり、温度はすべて摂氏におけるものである。
【実施例1】
【0062】
実施例1は、N,N’−(1−ウンデシル)ドデシル−5,11−ジヘキシルコロネン−2,3:8,9−テトラカルボキシジイミドの調製について説明しており、前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式24に示されている。合成手順はスキーム1に示されており、6段階からなる。
【0063】
【化1】

スキーム1
市販のペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物(100.0g、0.255mol)を、100%硫酸(845mL)中、〜85℃で、臭素(29mL)およびヨウ素(2.38g)の混合物によって、臭素化した。1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物の収量は90g(64%)であった。
【0064】
分析:計算値:C24Br、C 52.40、H 1.10、Br 29.05、O 17.45%;実測値:C 52.29、H 1.07、Br 28.79%。吸収スペクトル(93%硫酸中9.82×10Mの溶液):405(9572)、516(27892)、553(37769)。
【0065】
N,N’−ジシクロヘキシル−1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミドは、1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボン酸二無水物(30.0g)を、N−メチルピロリドン(390mL)中、〜85℃で、シクロヘキシルアミン(18.6mL)と反応させることによって合成した。N,N’−ジシクロヘキシル−1,7−ジブロモペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミドの収量は30g(77%)であった。
【0066】
N,N’−ジシクロヘキシル−1,7−ジ(オクタ−1−イニル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミドは、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(ll)塩化物(2.42g)、トリフェニルホスフィン(triphenylphospine)(0.9g
)、および銅(I)ヨウ化物(0.66g)の存在下での、N,N’−ジシクロヘキシル−1,7−ジブロムペリレン(dibromperylene)−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミド(24.7g)およびオクチン−1(15.2g)の薗頭反応による。N,N’−ジシクロヘキシル−1,7−ジ(オクタ−1−イニル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミドの収量は15.7g(60%)であった。
【0067】
N,N’−ジシクロヘキシル−5,11−ジヘキシルコロネン−2,3:8,9−テトラカルボキシジイミドは、N,N’−ジシクロヘキシル−1,7−ジ(オクタ−1−イニ
ル)ペリレン−3,4:9,10−テトラカルボキシジイミド(7.7g)を、トルエン(400mL)中、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(0.6mL)の存在下、100〜110℃で20時間にわたって加熱することにより合成した。
【0068】
5,11−ジヘキシルコロネン−2,3:8,9−テトラカルボン酸二無水物は、N,N’−ジシクロヘキシル−5,11−ジヘキシルコロネン−2,3:8,9−テトラカルボキシジイミド(6.4g、8.3mmol)を、tert−ブタノール(400mL)と水(0.4mL)との混合物中、85〜90°で、水酸化カリウム(7.0g、85%)によって加水分解することによって調製した。5,11−ジヘキシルコロネン−2,3:8,9−テトラカルボン酸二無水物の収量は4.2g(83%)であった。
【0069】
N,N’−(1−ウンデシル)ドデシル−5,11−ジヘキシルコロネン−2,3:8,9−テトラカルボキシジイミドは、5,11−ジ(ヘキシル)コロネン−2,3:8,9−テトラカルボン酸二無水物と12−トリコサンアミンとの反応による。
【0070】
5,11−ジ(ヘキシル)コロネン−2,3:8,9−テトラカルボン酸二無水物(3.44g)、12−トリコサンアミン(7.38g)、安息香酸(45mg)および3−クロロフェノール(15mL)を、室温で2回、100℃で2回にわたって、アルゴンで脱気して飽和させた。反応混合物を、アルゴン流中、〜140℃で1時間、160〜165℃で20時間にわたって撹拌した。その後、反応混合物を〜100℃で撹拌し、10mmHgで30分間にわたって減圧した。次いで、装置をアルゴンで再び充填して、さらに24時間にわたって加熱を継続した。
【0071】
一滴の反応混合物を酢酸(5mL)と混合して、遠心分離機にかけ、固形物をクロロホルム(0.5mL)中に溶解させ、それを水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。薄層クロマトグラフィー調査は、Rf 0.9を有する生成物の良好な形成を示した。(溶離液:クロロホルム−ヘキサン−酢酸エチル−メタノール(体積比で100:50:0.3:0.1))。
【0072】
反応混合物を少量ずつ、酢酸(500mL)に、同時に振盪しながら添加した。橙赤色の懸濁液を周期的に振盪しながら3時間にわたって維持し、次いで、濾過した。濾過ケーキを水(0.5L)で洗浄し、次いで、分離器漏斗中で水(0.5L)およびクロロホルム(250mL)と共に振盪した。有機層を分離し、水(2×350mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で一晩乾燥させた。蒸発により、7.0gの粗製生成物を生じた。
【0073】
正確に調整した溶離混合物:クロロホルム(700mL)、石油エーテル(2L)、酢酸エチル(0.6mL)およびメタノール(0.2)を用いてカラムクロマトグラフィーを行った。
【0074】
カラムクロマトグラフィーはl=20、d=7cmのカラムを用いて行った。橙色画分の溶離および蒸発により、橙色の柔軟な固形物が生じた。該固形物をクロロホルム(25mL)に溶解し、撹拌しながらメタノール(400mL)にゆっくりと添加した。柔軟な沈澱物を空気中で一晩乾燥させ、次いで真空中(15mmHg)で温和加熱(35°)しながら5時間にわたって乾燥させた。N,N’−(1−ウンデシル)ドデシル−5,11−ジヘキシルコロネン−2,3:8,9−テトラカルボキシジイミドの調製の収量は5.0g(70%)であった。
【実施例2】
【0075】
実施例2は、C−型の位相差層と補償板の調製について説明する。コーティング液は、実施例1に従って調製したN,N’−(1−ウンデシル)ドデシル−5,11−ジヘキシ
ルコロネン−2,3:8,9−テトラカルボキシジイミドの5%のクロロホルム溶液として調製した。
【0076】
【化2】

ITO被覆ガラス基板を、標準的な有機物に基づいたプロトコルに従って清浄した。前記プロトコルは、5分間にわたって液体洗剤中に浸漬する工程、1時間にわたって脱イオン水によって超音波洗浄する工程、圧縮空気によって乾燥させる工程、10分間にわたるアセトンによる超音波浴の工程、30分間にわたって沸騰トリクロロエチレン中で洗浄する工程、10分間にわたるアセトンによる超音波浴の工程、30分間にわたって沸騰イソプロパノール中で洗浄する工程、および圧縮空気によってさらに乾燥させる工程を含む。
【0077】
コーティング液層の層は、メイヤーロッド技術によって、新たに処理した基材上に堆積した。結果として生じる位相差層の厚さは、コーティング液濃度およびメイヤーロッドゲージに依存する。標準値は100〜1000nmである。
【0078】
試料を炉内に配置し、230℃まで急速に加熱した。次いで、試料を5℃/分の速度で室温まで冷却した。
位相差層は、図5に示すように、数平方センチメートル(several sq.cm.)の欠陥のない均質な領域を有する均一なものであった。
【0079】
偏光顕微鏡検査は、ホメオトロピック分子配向テクスチャに特異的であること示している。透過率スペクトル領域における屈折率の異方性は、nf−nn=0.3(nf=ns)であると測定される。
【実施例3】
【0080】
実施例3は、ビスベンズイミドアゾ[1’,2’:3,4;1”,2”:5,6][1,3,5]トリアジノ[1,2−a]ベンゾイミダゾール−2,8,14−トリカルボン酸の合成について説明する。該化合物の主に平面の多環系は表1の構造式3に示されている。
【0081】
【化3】

A. 5−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オンの合成
4−メチル−1,2−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(20.75g、106mmol)を尿素(7.64g、127mmol)と共に粉砕した。その混合物を耐熱ビーカーに入れて、150℃まで加熱した。1.5時間後、反応混合物を室温に冷却した。固形物は粉砕して耐熱ビーカーに入れ、150℃で1.5時間にわたってさらに加熱した。次いで、反応混合物を、沸騰した1〜1.5%水酸化ナトリウム水溶液(1.5L)中に溶解させた。得られた溶液を、不溶解固形物から濾別し、活性黒色炭素(activated black
carbon)(BAU−A、2g)と共に20〜30分間にわたって沸騰させて、濾過した。濾液を濃塩酸によってpH〜6まで酸性化した。白色沈殿物を濾過して、水(100mL)で洗浄し、デシケーター内において、リン酸化物の存在下、減圧下で乾燥した。収量:13.1g(83.5%)。
【0082】
B. 2−クロロ−6−メチル−1H−ベンゾイミダゾールの合成
5−メチル−1,3−ジヒドロ−2H−ベンズイミダゾール−2−オン(13.1g,88.5mmol)およびオキシ塩化リン(130mL、新たに蒸留)を三つ口丸底フラスコに入れた。その混合物を、均一溶液が形成されるまで、沸点まで加熱した。その後、乾燥塩化水素を、注入ガス管を介して、反応混合物中にバブリングした。反応混合物を15時間にわたって沸騰させた。過剰なオキシ塩化リンは減圧下で蒸留した。氷および水の混合物(250mL)を残留物に加えた。得られた懸濁液を室温に冷却して濾過した。濾液をアンモニア水溶液によってpH8までアルカリ化し、冷水によって冷却し、粗製2−クロロ−6−メチル−1H−ベンゾイミダゾールを濾過した。白色粉体をメタノール水溶液(水−メタノール: 1:1、200mL)から結晶化させ、その白色粉体をメタノール水溶液によって洗浄して、デシケーター内において、リン酸化物の存在下、減圧下で乾燥した。収量:8.17g(55%)。
【0083】
C. 2,8,14−トリメチル−ビスベンズイミドアゾ[1’,2’:3,4;1”,2”:5,6][1,3,5]−トリアジノ[1,2−a]ベンゾイミダゾールの合成
2−クロロ−6−メチル−1H−ベンゾイミダゾール(2.7g、16.2mmol)を丸底フラスコに入れ、約1時間にわたって200〜205℃まで加熱した。反応混合物を室温に冷却した。固形物(2.2g)を沸騰したジオキサン(70mL)中に溶解させ、生じた溶液を室温に冷却した。溶液を濾過し、そのフィルタをジオキサン(25mL)で洗浄し、洗浄したジオキサンを主溶液と合わせた。得られた溶液に水(40mL)を滴下して加えた。沈澱物を濾過し、アセトンで洗浄して、約70℃において、リン酸化物の存在下、減圧下で乾燥した。収量:1.16g(54%)
D. ビスベンズイミドアゾ[1’,2’:3,4;1”,2”:5,6][1,3,5]トリアジノ[1,2−a]ベンゾイミダゾール−2,8,14−トリカルボン酸の合

2,8,14−トリメチル−ビスベンズイミドアゾ[1’,2’:3,4;1”,2”:5,6][1,3,5]トリアジノ[1,2−a]ベンゾイミダゾール(1.03g、2.6mmol)を、濃硫酸および氷酸(glacial acid)(比率8:12)の混合物(20mL)に加えた。次いで、三酸化クロム(3.5g)の粉末を、反応混合物を冷却しながら、ゆっくりと加えた。その混合物を室温で3時間撹拌した。前記反応混合物に、水(20mL)を、冷却(20〜40℃)しながら、滴下して加えた。沈澱物を濾過し、大量の水および希釈した塩化水素溶液(30mL)でさらに洗浄した。次いで、沈澱物をリン酸化物の元、減圧下で乾燥した。収量:0.72g(57.6%)。
【実施例4】
【0084】
実施例4は、実施例3で説明したように調製したビスベンズイミドアゾ[1’,2’:3,4;1”,2”:5,6][1,3,5]トリアジノ[1,2−a]ベンゾイミダゾール−2,8,14−トリカルボン酸による負のC−型の固体光学的位相差層の調製について説明する。
【0085】
1gのビスベンズイミドアゾ[1’,2’:3,4;1”,2”:5,6][1,3,5]トリアジノ[1,2−a]ベンゾイミダゾール−2,8,14−トリカルボン酸を9gのジメチルスルホキシド中に溶解させた。その懸濁液を完全に溶解するまで磁気撹拌器によって混合した。
【0086】
実施例2で説明したように、コーティングを生成し、光学的に特徴付けた。得られた固体光学的位相差層は、約300nmに相当する厚さと、下記条件:
nz < ny ≒ nx
に従う主屈折率によって特徴付けられる。面外複屈折は、0.15に相当する。
【実施例5】
【0087】
実施例5は、2,5,9−(ドデシン−1−イル)アセナフト[1,2−b]キノキサリンの調製を説明する。該化合物の主に平面の多環系は表1の構造式4に示されている。合成手順はスキーム2に示されており、2段階からなる。
【0088】
【化4】

スキーム2
A. 2,5,9−トリブロモアセナフト[1,2−b]キノキサリンの合成
1−ブロモ−3,4−ジアミノベンゼン(18.7g、100mmol)を4,7−ジブロモアセナフテンキノン(34g)の酢酸(350mL)中懸濁液に添加した。反応混合物を12時間還流した。固形物を分離し、酢酸(80mL)で洗浄し、120℃で3時間にわたって乾燥させると、36.26g(74%)の2,5,9−トリブロモアセナフト[1,2−b]キノキサリンを生じた。
【0089】
B. 2,5,9−(ドデシン−1−イル)アセナフト[1,2−b]キノキサリンの合成
トリブロモアセナフト[1,2−b]キノキサリン(49g、100mmol)を、アルゴン雰囲気下、100mLの乾燥したトリエチルアミン中において、PdCl(PPh(3.7g、5mol%)およびCuI(4g)と混合した。ドデシン−1(66g、400mmol)を添加し、その混合物を65℃で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させて、NHClおよびNaClの飽和溶液で連続的に洗浄した。濃縮した有機相から、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(9:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、2,5,9−(ドデシン−1−イル)アセナフト[1,2−b]キノキサリンを分離した。収量:63.49g、85%
【実施例6】
【0090】
実施例6は、2,5,9−トリス(デシロキシ)アセナフト[1,2−b]ピリド[2,3−e]ピラジンの調製について説明する。前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式6に示されている。合成手順はスキーム1に示されており、6段階からなる。
【0091】
【化5】

スキーム3
A. アセナフト[1,2−b]ピリド[2,3−e]ピラジン−2,5,9−トリオールの合成
5,6−ジアミノピリジン−2−オール(12.5g、100mmol)を、4,7−ジヒドロキシ−アセナフテンキノン(21.4g、100mmol)の酢酸(250mL)中懸濁液に添加した。反応混合物を12時間還流した。固形物を分離し、酢酸(80mL)で洗浄し、120℃で3時間にわたって乾燥させると、21.23g(58%)のアセナフト[1,2−b]ピリド[2,3−e]ピラジン−2,5,9−トリオールが生じた。
【0092】
B. 2,5,9−トリス(デシロキシ)アセナフト[1,2−b]ピリド[2,3−e]ピラジンの合成
アセナフト[1,2−b]ピリド[2,3−e]ピラジン−2,5,9−トリオール(36.6g、100mmol)をDCM(150mL)に溶解させた。1−ブロモデカン(66.3mL、300mmol)、KCO(55.2g、400mmol)、およ
び18−クラウン−6(10mol%、2.64g)を撹拌して加えた。反応混合物を50℃で15時間にわたって撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させて、NHClおよびNaClの飽和溶液で連続的に洗浄した。濃縮有機相から、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(9:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、2,5,9−トリス(デシロキシ)アセナフト[1,2−b]ピリド[2,3−e]ピラジンを分離した。収量:57.2g、79%
【実施例7】
【0093】
実施例7は、アセナフト[1,2−b]ピリド[4,3−e]ピラジン−2,5,10−トリカルボン酸の調製について説明する。前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式7に示されている。合成手順はスキーム4に示されており、2段階から成る。
【0094】
【化6】

スキーム4
2,5,10−トリメチルアセナフト[1,2−b]ピリド[4,3−e]ピラジンの合成
6−メチルピリジン−3,4−ジアミン(12.3g、100mmol)を、4,7−ジメチルアセナフテンキノン(21g、100mmol)の酢酸(150mL)中懸濁液に添加した。反応混合物を12時間還流した。固形物を分離し、酢酸(30mL)で洗浄し、120℃で3時間にわたって乾燥させると、20.2g(68%)の2,5,10−トリメチルアセナフト[1,2−b]ピリド[4,3−e]ピラジンを生じた。
【0095】
B. アセナフト[1,2−b]ピリド[4,3−e]ピラジン−2,5,10−トリカルボン酸の合成
2,5,10−トリメチルアセナフト[1,2−b]ピリド[4,3−e]ピラジン(29.7g、100mmol)を、濃硫酸および氷酸(glacial acid)(比率8:12)の混合物(200mL)に添加した。次いで、三酸化クロム(50g)の粉末を、反応混合物を同時に冷却しながら、ゆっくりと加えた。その混合物を室温で3時間撹拌した。冷却(20〜40℃)しながら、反応混合物に水(200mL)を滴下して加えた。沈澱物を濾過し、水および希塩酸(300mL)で洗浄した。生成物を、リン酸化物上、減圧下で乾燥させた。収量:20.12g(52%)。
【実施例8】
【0096】
実施例8は、N,N,N−トリス(3,5−ビス(オクチルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンの調製について説明する。前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式8に示されている。また、この実施例は、表1に示した構造式9および13を有する多環式芳香族系を有する化合物の合成の代表である。合成手順はスキーム5に示されており、2段階から成る。
【0097】
【化7】

スキーム5
A. 5,5’,5”−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリス(アザンジイル)トリベンゼン−1,3−ジオールの合成
市販の1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(12.6g、100mmol)および(3,5−ジヒドロキシフェニル)ボロン酸(15.3g、100mmol)をDCM(100mL)中に溶解させ、トリエチルアミン(10mL)およびCu(OAc)(10mol%、1.82g)を加えた。反応混合物を40℃で20時間にわたって撹拌し、次いで、NHClの飽和溶液でクエンチした。その混合物をDCM(3×100mL)で抽出した。溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって、5,5’,5”−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリス(アザンジイル)トリベンゼン−1,3−ジオールを分離した。収量:38.25g(85%)。
【0098】
B. N,N,N−トリス(3,5−ビス(オクチルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンの合成
5,5’,5”−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリス(アザンジイル)トリベンゼン−1,3−ジオール(45g)をDCM(450mL)中に溶解させた。撹拌して、1−ブロモオクタン(99g、600mmol)、KCO(96.6g、700mmol)および18−クラウン−6(10mol%、2.64g)を加えた。反応混合物を50℃で15時間にわたって撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させて、NHClおよびNaClの飽和溶液で連続的に洗浄した。濃縮有機相から、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(9:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、N,N,N−トリス(3,5−ビス(オクチルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミンを分離した。収量:102.2g、91%
【実施例9】
【0099】
実施例8は、9,9’−(1,4−フェニレンビス(アザンジイル))ビス(オキソメ
チレン)ジアセナフト−[1,2−b]キノキサリン−2,5−ジカルボン酸の調製について説明する。前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式18に示されている。また、この実施例は、表1に示した構造式11、14、16および19を有する多環式芳香族系を有する化合物の合成の代表である。合成手順はスキーム6に示されており、4段階から成る。
【0100】
【化8】

スキーム6
A. 2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボン酸の合成
3,4−ジアミノ安息香酸(15.2g、100mmol)を、4,7−ジメチルアセナフテンキノン(21g、100mmol)の酢酸(450mL)中懸濁液に加えた。反応混合物を12時間還流した。固形物を分離し、酢酸(130mL)で洗浄し、120℃で3時間にわたって乾燥させると、15.97g(49%)の2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボン酸を生じた。
【0101】
B. 2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]−キノキサリン−9−カルボニルクロリドの合成
2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボン酸(32.6g、100mmol)を塩化チオニル(300mL)に加え、その混合物を一晩還流した。前記混合物を室温に冷却して濾過した。過剰な塩化チオニルは減圧下で除去した。2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボニルクロリドをヘキサンから再結晶した後に分離した。収量:22.36g(65%)。
【0102】
C. N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボキサミド)の合成
2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボニルクロリド(34.4g、100mmol)および1,4−ジアミノベンゼン(5.4g、50mmol)をDCM(100mL)中に溶解させた。激しく撹拌して、NaOH(7g、25mL)水溶液を滴下して加えた。反応混合物を6時間撹拌し、有機層を分離して、NHClの飽和溶液で3回洗浄し、NaClの飽和溶液で2回洗浄した。溶液を減圧下で濃縮し、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物を用いて、シリカゲルを通して濾過した。溶媒を減圧下で除去すると、44g(61g)のN,N’−(1,4−フェニレン)ビス(2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]キノキサリン−9−カルボキサミド)が残った。
【0103】
D. 9,9’−(1,4−フェニレンビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ジアセナフト−[1,2−b]キノキサリン−2,5−ジカルボン酸の合成
N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(2,5−ジメチルアセナフト[1,2−b]
キノキサリン−9−カルボキサミド)(36.2g、50mmol)を濃硫酸および氷酸(glacial acid)(比率8:12)の混合物(100mL)に加えた。次いで、三酸化クロム(35g)の粉末を、反応混合物を同時に冷却しながら、ゆっくりと加えた。その混合物を室温で3時間撹拌した。冷却(20〜40℃)しながら、反応混合物に水(200mL)を滴下して加えた。沈澱物を濾過し、水および希塩酸(300mL)で洗浄した。9,9’−(1,4−フェニレンビス(アザンジイル))ビス(オキソメチレン)ジアセナフト−[1,2−b]キノキサリン−2,5−ジカルボン酸を、リン酸化物上、減圧下で乾燥した。収量:47.2(56%)
【実施例10】
【0104】
実施例10は、2,4,6−トリス(3,5−ビス(ドデシルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジンの調製について説明する、前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式10に示されている。合成手順はスキーム7に示されており、2段階から成る。
【0105】
【化9】

スキーム7
A. 5.5’,5”−(1.3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリベンゼン−1,3−ジオールの合成
市販の2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(18.4g、100mmol)および(3,5−ジヒドロキシフェニル)ボロン酸(45.9g、300mmol)をDMF(50mL)中に溶解させた。酢酸パラジウム(1.12g、5mol%)および炭酸カリウム(55.2g、400mmol)を加え、その反応混合物を45℃で一晩撹拌した。前記反応を酢酸エチル(ethylactetate)で抽出し、有機相をNHClおよび
NaClの飽和溶液で連続的に洗浄した。溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(9:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、5,5’,5”−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリベンゼン−1,3−ジオールを分離した。収量:35.2g、87%。
【0106】
B. 2,4,6−トリス(3,5−ビス(ドデシルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジンの合成
5,5’,5”−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリベンゼン−1,3−ジオール(40.5g、100mmol)をDCM(350mL)中に溶解した。撹拌して、1−ブロモドデカン(149.4g、600mmol)、KCO(96.6g、700mmol)および18−クラウン−6(10mol%、2.64g)を加えた。反応混合物を50℃で15時間にわたって撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させて、NHClおよびNaClの飽和溶液で連続的に洗浄した。濃縮有機相から、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(9:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、2,4,6−トリス(3,5−ビス(ドデシルオキシ)フェニル)−1,3,5−トリアジンを分離した。収量:83.5g、59%。
【実施例11】
【0107】
実施例11は、4,9−ジオクチル−2,7−ビス(オクチルオキシ)ピレンの調製について説明する。前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式22に示されている。合成手順はスキーム8に示されており、4段階から成る。
【0108】
【化10】

スキーム8
A. (2,2’−ジ(デカ−1−イニル)ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(tert−ブチルジメチルシラン)の合成
アルゴン雰囲気下、100mLの乾燥したトリエチルアミン中において、(2,2’−ジブロモビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(tert−ブチルジメチルシラン)(43.3g、100mmol)をPdCl(PPh(3.7g、5mol%)およびCuI(4g、2mol%)と混合した。デシン−1(27.3g、200mmol)を加え、その混合物を65℃で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させ、NHClおよびNaClの飽和溶液で連続的に洗浄した。濃縮有機相から、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(9:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、(2,2’−ジ(デカ−1−イニル)ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(tert−ブチルジメチルシラン)を分離した。収
量:39.45g、72%。
【0109】
B. (4,9−ジオクチルピレン−2,7−ジイル)ビス(オキシ)ビス(tert−ブチルジメチルシラン)の合成
トルエン(700mL)中において、(2,2’−ジ(デカ−1−イニル)ビフェニル−4,4’−ジイル)ビス(オキシ)ビス(tert−ブチルジメチルシラン)(27.4g、50mmol)を、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(91.2g、60mmol)の存在下、100〜110℃で20時間にわたって加熱することにより、(4,9−ジオクチルピレン−2,7−ジイル)ビス(オキシ)ビス(tert−ブチルジメチルシラン)を合成した。収量:11.50g(42%)
C. 4,9−ジオクチルピレン−2,7−ジオールの合成
4,9−ジオクチルピレン−2,7−ジオールは、THF中において、TBAFにより、t−ブチルジメチルシリル保護除去の標準的な手順によって調製した。
【0110】
D. 4,9−ジオクチル−2,7−ビス(オクチルオキシ)ピレンの合成
4,9−ジオクチルピレン−2,7−ジオール(45.8g、100mmol)をDCM(350mL)中に溶解した。撹拌の上、1−ブロモオクタン(38.6g、200mmol)、KCO(41.4g、300mmol)および18−クラウン−6(10mol%、2.64g)を添加した。反応混合物を50℃で15時間にわたって撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させ、NHClおよびNaClの飽和溶液で連続的に洗浄した。濃縮有機相から、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(9:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、4,9−ジオクチル−2,7−ビス(オクチルオキシ)ピレンを分離した。収量:49.8g、73%。
【実施例12】
【0111】
実施例12は、クリセン−2,5,8−トリカルボン酸の調製について説明する。前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式23に示されている。合成手順はスキーム9に示されており、3段階から成る。
【0112】
【化11】

スキーム9
A. 2−メチル−6−(2−(プロプ−1−イニル)フェニル)ナフタレンの合成
1−ブロモ−2−(プロプ−1−イニル)ベンゼン(20.9、100mmol)および6−メチルナフタレン−2−イルボロン酸(18.6g、100mmol)をDMF(50mL)中に溶解させた。酢酸パラジウム(1.12g、5mol%)および炭酸カリウム(27.6g、200mmol)を加え、その反応混合物を45℃で一晩撹拌した。前記反応を酢酸エチルで抽出し、有機相をNHClおよびNaClの飽和溶液で連続的
に洗浄した。溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(20:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、2−メチル−6−(2−(プロプ−1−イニル)フェニル)ナフタレンを分離した。収量:18.9g、70%。
【0113】
B. 2,5,8−トリメチルクリセンの合成
2,5,8−トリメチルクリセンは、2−メチル−6−(2−(プロプ−1−イニル)フェニル)ナフタレン(13.5g、50mmol)を、トルエン(700mL)中において、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)(91.2g、60mmol)の存在下、100〜110℃で20時間にわたって加熱することにより合成した。収量:9.72g(54%)
C. クリセン−2,5,8−トリカルボン酸の合成
2,5,8−トリメチルクリセン(27g、100mmol)を、濃硫酸および氷酸(glacial acid)(比率8:12)の混合物(200mL)に加えた。次いで、反応混合物を冷却しながら、三酸化クロム(35g)の粉末をゆっくりと加えた。その混合物を室温で3時間撹拌した。冷却(20〜40℃)しながら、反応混合物に水(200mL)を滴下して加えた。沈澱物を濾過して、水および希塩酸(300mL)で洗浄し、2,5,8−トリカルボン酸を、リン酸化物上、減圧下で乾燥させた。収量:16.2g(45%)
【実施例13】
【0114】
実施例13は、1,4−ジ(3,5−ジオクチルオキシフェニル)ベンゼンの調製について説明する。前記化合物の主に平面の多環系は表1の構造式1に示されている。合成手順はスキーム10に示されており、2段階から成る。
【0115】
【化12】

スキーム10
A. 1,4−ジ(3,5−ジヒドロキシフェニル)ベンゼンの合成
5−ブロモベンゼン−1,3−ジオール(18.9、100mmol)および1,4−フェニレンジボロン酸(8.28g、50mmol)をDMF(150mL)中に溶解した。酢酸パラジウム(1.12g、5mol%)および炭酸カリウム(27.6g、200mmol)を加え、その反応混合物を45℃で一晩撹拌した。前記反応を酢酸エチル(ethylactetate)で抽出し、有機相をNHClおよびNaClの飽和溶液で連続的に洗浄
した。溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(7:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、2−メチル−6−(2−(プロプ−1−イニル)フェニル)ナフタレンを分離した。収量:11.46g、75%。
【0116】
B. 1,4−ジ(3,5−ジオクチルオキシフェニル)ベンゼンの合成
1,4−ジ(3,5−ジヒドロキシフェニル)ベンゼン(29.4g、100mmol)をDCM(350mL)中に溶解した。1−ブロモオクタン(77.2g、400mmol)、KCO(41.4g、500mmol)および18−クラウン−6(10m
ol%、2.64g)を、撹拌して、加えた。反応混合物を50℃で15時間にわたって撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させ、NHClおよびNaClの飽和溶液で連続的に洗浄した。濃縮有機相から、溶離液としてヘキサン−酢酸エチル混合物(9:1)を用いたカラムクロマトグラフィーによって、4,9−ジオクチル−2,7−ビス(オクチルオキシ)ピレンを分離した。収量:60.1g、81%。
【0117】
本発明の特定の好ましい実施形態を具体的に開示しているが、当業者には多くの変形物が容易に明らかとなるように、本発明がそれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明は、以下の特許請求の用語の中において、できるだけ広い解釈を与えられるべきであることが理解されるに違いない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般構造式Iの多環式有機化合物であって、
【化1】

前記式中、Yは少なくとも部分的に芳香性である主に平面の多環系であり、
、WおよびWは有機溶媒中における可溶性を提供する異なる基であり、
(n1+n2+n3)の合計は1、2、3、4、5、6、7または8であり、
前記多環式有機化合物は、有機溶媒中において超分子を形成することができ、かつ可視スペクトル範囲の電磁放射に対して実質的に透過性である、多環式有機化合物。
【請求項2】
前記多環系Yは複素環である、請求項1に記載の多環式有機化合物。
【請求項3】
前記複素環系の1つ以上のヘテロ原子は、N、OおよびSを含むリストから選択される、請求項2に記載の多環式有機化合物。
【請求項4】
前記多環系Yは、フラン、オキシラン、4H−ピラン、2H−クロメン、ベンゾ[b]フラン、2H−ピラン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、パラチアジン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピリミジン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン、インドール、プリン、ベンゾイミダゾール、キノリン、フェノチアジン、モルホリン、チアジオール、チアジアゾール、およびオキサゾールを含むリストから選択される少なくとも1つのフラグメントを含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多環式有機化合物。
【請求項5】
前記多環系Yは、芳香族炭化水素を表わす少なくとも1つのフラグメントを含む、請求項1に記載の多環式有機化合物。
【請求項6】
前記芳香族炭化水素は、アセナフテン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、ビフェニレンおよびナフタレンを含むリストから選択される、請求項5に記載の多環式有機化合物。
【請求項7】
前記多環系Yは、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアイジンを含むリストから選択され、かつ下記構造1〜24から選択される一般構造式を有するフラグメントを含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多環式有機化合物。

【表1】



【請求項8】
前記可溶性を提供する基Wの少なくとも1つは、カルボン酸(COOH)基、直鎖および分岐(C〜C20)アルキル、(C〜C20)アルケニルおよび(C〜C20)アルキニルを含むリストから選択される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多環式有機化合物。
【請求項9】
前記可溶性を提供する基Wの少なくとも1つは、架橋基Aによって、多環系Yと連結されている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の多環式有機化合物。
【請求項10】
前記架橋基Aは、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)−NH−、−(SO)NH−、−O−、−CH2O−、−NH−、>N−、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択される、請求項9に記載の多環式有機化合物。
【請求項11】
前記多環系Yはπ−π−相互作用によって棒状超分子を形成することができる、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多環式有機化合物。
【請求項12】
前記棒状超分子は、約3.1〜37Aの範囲の多環系間の面間距離を有する、請求項11に記載の多環式有機化合物。
【請求項13】
下記一般構造式Iの少なくとも1つの多環式有機化合物を含む溶液であって、
【化2】

前記式中、Yは少なくとも部分的に芳香性である主に平面の多環系であり、
、WおよびWは有機溶媒中における可溶性を提供する異なる基であり、
(n1+n2+n3)の合計は1、2、3、4、5、6、7または8であり、
前記多環式有機化合物は、有機溶媒中において超分子を形成することができ、
前記多環式有機化合物は、可視スペクトル範囲の電磁放射に対して実質的に透過性であり、
前記溶液は、可視スペクトル範囲において実質的に透過性の位相差層を形成することができる、溶液。
【請求項14】
前記多環系Yは複素環である、請求項13に記載の溶液。
【請求項15】
複素環の系Yのヘテロ原子はN、OおよびSを含むリストから選択される、請求項14に記載の溶液。
【請求項16】
前記多環系Yは、フラン、オキシラン、4H−ピラン、2H−クロメン、ベンゾ[b]フラン、2H−ピラン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、パラチアジン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピリミジン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン、インドール、プリン、ベンゾイミダゾール、キノリン、フェノチアジン、モルホリン、チアジオール、チアジアゾール、およびオキサゾールを含むリストから選択される少なくとも1つのフラグメントを含む、請求項13乃至15のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項17】
前記多環系Yは、芳香族炭化水素を表わす少なくとも1つのフラグメントを含む、請求項13に記載の溶液。
【請求項18】
前記多環式芳香族炭化水素は、アセナフテン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、ビフェニレンおよびナフタレンを含むリストから選択される、請求項17に記載の溶液。
【請求項19】
前記多環系Yは、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアイジンを含むリストから選択され、かつ下記構造1〜24から選択される一般構造式を有する、請求項13乃至18のいずれか1項に記載の溶液。
【表2】



【請求項20】
前記可溶性を提供する基Wの少なくとも1つは、カルボン酸(COOH)基、直鎖および分岐(C〜C20)アルキル、(C〜C20)アルケニルおよび(C〜C20)アルキニルを含むリストから選択される、請求項13乃至19のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項21】
前記多環式有機化合物において可溶性を提供する基Wの少なくとも1つは、架橋基Aによって多環系Yと連結されている、請求項13乃至20のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項22】
前記架橋基Aは、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)−NH−、−(SO)NH−、−O−、−CHO−、−NH−、>N−、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択される、請求項21に記載の溶液。
【請求項23】
前記有機溶媒は、ケトン、カルボン酸、炭化水素、環式炭化水素、クロロ炭化水素、アルコール、エーテル、エステルおよび任意のそれらの組み合わせを含むリストから選択される、請求項13乃至22のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項24】
前記有機溶媒は、アセトン、キシレン、トルエン、エタノール、メチルシクロヘキサン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、オクタン、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエテン、テトラクロロエテン、四塩化炭素、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、トリエチルアミン、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよび任意のそれらの組み合わせを含むリストから選択される、請求項13乃至23のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項25】
前記溶液はリオトロピック液晶溶液である、請求項13乃至24のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項26】
前記溶液は等方性溶液である、請求項13乃至24のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項27】
前記超分子は、一般構造式Iの少なくとも2つの異なる化合物の相互作用によって形成される、請求項13乃至26のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項28】
前記超分子は一般構造式Iの同一の化合物の相互作用によって形成される、請求項13乃至26のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項29】
界面活性剤をさらに含む、請求項13乃至28のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項30】
可塑剤をさらに含む、請求項13乃至28のいずれか1項に記載の溶液。
【請求項31】
可視スペクトル範囲において実質的に透過性であり、かつ少なくとも1つの下記一般構造式(I)の多環式有機化合物を含有する少なくとも1つの位相差層を備えた補償板であって、
【化3】

前記式中、Yは少なくとも部分的に芳香性である主に平面の多環系であり、
、WおよびWは有機溶媒中における可溶性を提供する異なる基であり、
(n1+n2+n3)の合計は1、2、3、4、5、6、7または8であり、
前記多環式有機化合物は、有機溶媒中において超分子を形成することができ、かつ可視スペクトル範囲の電磁放射に対して実質的に透過性である、補償板。
【請求項32】
前記多環系Yは複素環である、請求項31に記載の補償板。
【請求項33】
前記複素環系Yのヘテロ原子は、N、OおよびSを含むリストから選択される、請求項32に記載の補償板。
【請求項34】
前記多環系Yは、フラン、オキシラン、4H−ピラン、2H−クロメン、ベンゾ[b]フラン、2H−ピラン、チオフェン、ベンゾ[b]チオフェン、パラチアジン、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピリミジン、ピリジン、ピペラジン、ピペリジン、ピラジン、インドール、プリン、ベンゾイミダゾール、キノリン、フェノチアジン、モルホリン、チアジオール、チアジアゾール、およびオキサゾールを含むリストから選択される少なくとも1つのフラグメントを含む、請求項31乃至33のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項35】
前記多環系は多環式芳香族炭化水素を表わす少なくとも1つのフラグメントを含む、請求項31に記載の補償板。
【請求項36】
前記多環式芳香族炭化水素は、アセナフテン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、ビフェニレンおよびナフタレンを含むリストから選択される、請求項35に記載の補償板。
【請求項37】
前記多環系Yは、オリゴフェニル、イミダゾール、ピラゾール、アセナフテン、トリアイジンを含むリストから選択され、かつ下記構造1〜24から選択される一般構造式を有する、請求項31乃至36のいずれか1項に記載の補償板。

【表3】



【請求項38】
前記有機溶媒中における多環式有機化合物の可溶性を提供する基Wのうちの少なくとも1つは、カルボン酸(COOH)基、直鎖および分岐(C〜C20)アルキル、(C〜C20)アルケニル基、および(C〜C20)アルキニル基を含むリストから選択される、請求項31乃至37のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項39】
前記多環式有機化合物の可溶性を提供するW基の少なくとも1つは、架橋基Aによって多環系Yと連結されている、請求項31乃至38のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項40】
前記多環式有機化合物の架橋基Aは、−C(O)−、−C(O)O−、−C(O)−NH−、−(SO)NH−、−O−、−CHO−、−NH−、>N−、およびそれらの任意の組み合わせを含むリストから選択される、請求項39に記載の補償板。
【請求項41】
2つ以上の位相差層を備え、前記層のうち少なくとも2つは、一般構造式(I)の異なる多環式化合物を含有する、請求項31乃至40のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項42】
さらに基材を備える、請求項31乃至41のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項43】
前記基材は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して透過性である、請求項42に記載の補償板。
【請求項44】
前記基材はポリマー製である、請求項42または43のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項45】
前記基材はガラス製である、請求項42または43のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項46】
前記基材は箔から製造されている、請求項42または43のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項47】
前記位相差層の上部に施された透明接着剤層をさらに備える、請求項31乃至46のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項48】
前記接着剤透明層上に施された保護コーティングをさらに備える、請求項47に記載の補償板。
【請求項49】
前記位相差層は少なくとも部分的に結晶性である、請求項31乃至48のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項50】
前記位相差層は、B型の二軸位相差層であり、前記B型の二軸位相差層は、速主軸および遅主軸にそれぞれ対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ、それらの屈折率は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して以下の条件:ns>nn>nfに従う、請求項31乃至49のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項51】
位相差層は、A型の二軸位相差層であり、前記A型の二軸位相差層は、速主軸および遅主軸にそれぞれ対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ、それらの屈折率は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して以下の条件:ns>nf>nnに従う、請求項31乃至49のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項52】
少なくとも1つの第1型の位相差層であって、その第1型位相差層の平面内に実質的に存在する遅主軸および速主軸を有する、第1型の位相差層と、少なくとも1つの第2型の位相差層であって、その第2型位相差層の平面にほぼ直交するように指向する光学軸を有する、第2型の位相差層とを備える、請求項31乃至49のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項53】
第1型の位相差層は、負のA型の一軸位相差層であり、前記負のA型の一軸位相差層は、速主軸および遅主軸にそれぞれ対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ、それらの屈折率は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して以下の条件:nn=ns>nfに従う、請求項52に記載
の補償板。
【請求項54】
第1型の位相差層は、それらの長手軸線が速主軸とほぼ平行に配向されている棒状超分子を含む、請求項52または53のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項55】
前記棒状の超分子は、それらの長手軸線に直交する平面においてほぼ等方的な分極率を有する、請求項54に記載の補償板。
【請求項56】
第2型の位相差層は、負のC型の一軸位相差層であり、前記負のC型の一軸位相差層は、速主軸および遅主軸にそれぞれ対応する2つの面内屈折率(nfおよびns)と、法線方向における1つの屈折率(nn)とによって特徴付けられ、それらの屈折率は可視スペクトル範囲の電磁放射に対して以下の条件:nf=ns>nnに従う、請求項52乃至55のいずれか1項に記載の補償板。
【請求項57】
第2型の位相差層は、前記位相差層の表面とほぼ平行に配向されたそれらの平面を有するシート状超分子を含む、請求項52乃至56のいずれか1項に記載の補償板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−515340(P2011−515340A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549199(P2010−549199)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【国際出願番号】PCT/GB2009/050219
【国際公開番号】WO2009/109782
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(508189717)クリスオプティクス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】