説明

多連チューブ

【課題】それぞれのチューブの接着性及びチューブの内層と外層との接着性に優れ、適切な柔軟性及び十分なガスバリア性を有する多連チューブを提供する。
【解決手段】複数のチューブが並行に連設された多連チューブ1であって、上記チューブ1は、構成材料としてポリオレフィン系樹脂を含む内層2と、構成材料としてスチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂を含む外層3とからなり、該外層3でそれぞれのチューブが接続している多連チューブ1。上記内層2のポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンである多連チューブ1。上記内層2の構成材料であるポリオレフィン系樹脂の融点より、上記外層3の構成材料であるポリオレフィンの融点の方が高い多連チューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、インクジェットプリンタのインク供給チューブとして使用される、複数のチューブが並行に連設された多連チューブに関するもので、特に、それぞれのチューブの接着性及びチューブの内層と外層との接着性に優れ、適切な柔軟性及び十分なガスバリア性を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタにおいては、インクタンクからインクチューブを用いてインクジェットヘッドへインクを供給している。ここで、インクチューブ内には、印刷を停止しているときにもインクが残留し、この残留したインクから溶媒や水分が蒸発すると、インク濃度が濃くなり、粘性が高くなるためインクの詰まりを生ずることがある。そのため、インクチューブにはガスバリア性が要求されている。
【0003】
また、カラーインクジェットプリンタでは、各色でインクタンクとインクチューブとインクジェットヘッドとを備えている。このとき、複数のインクチューブがそれぞれ独立した動作をすると、インクチューブ同士が擦れて磨耗したり、絡んでしまったりする可能性がある。そのため、複数のインクチューブを一体化したものとするよう要求されている。
【0004】
これらのような問題に対応した技術として、例えば、特許文献1が挙げられる。この特許文献1によるチューブは、複数のチューブを平行に並べ、そのチューブ同士が接触する箇所に熱風を吹き付けて加熱し、チューブ同士を熱融着したものである。個々のチューブは、内層と外層の2層を有し、内層と外層の間に中間層を有し、内層の高分子材料は、外層の高分子材料より結晶融解温度が高い材料で形成されている。具体的には、内層材料としてポリエチレン、外層材料としてエチレン−α−オレフィン共重合体、中間層材料としてエチレン−ビニルアルコール共重合体が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−307875公報:クレハプラスチックス
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1によるチューブは、チューブを構成する各層材料の接着性について十分な考察がなされていない。特に、中間層のエチレン−ビニルアルコール共重合体は、内層のポリエチレンや外層のエチレン−α−オレフィン共重合体との接着性が良くないこともあり、各層の接着は接着層に頼っている状態である。このような接着層による各層の接着であると、接着層を形成するための工程が必要となり、作業効率の低下とコストの増大を招くことになってしまう。また、接着剤による接着であると、初期的に接着できていても、接着強度の耐久性や、熱による接着力低下なども問題となる。内層と外層とが剥離した場合、その剥離した部分のガスバリア性は低下するとともに、屈曲の際には、剥離した部分を基点に座屈し易くなってしまう。
【0007】
本発明はこのような点に基づいてなされたもので、その目的とするところは、それぞれのチューブの接着性及びチューブの内層と外層との接着性に優れ、適切な柔軟性及び十分なガスバリア性を有する多連チューブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するべく、本発明の請求項1による多連チューブは、複数のチューブが並行に連設された多連チューブであって、上記チューブは、構成材料としてポリオレフィン系樹脂を含む内層と、構成材料としてスチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂を含む外層とからなり、該外層でそれぞれのチューブが接着していることを特徴とするものである。
また、請求項2記載の多連チューブは、上記内層のポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とするものである。
また、請求項3記載の多連チューブは、上記内層の構成材料であるポリオレフィン系樹脂の融点より、上記外層の構成材料であるポリオレフィンの融点の方が高いことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による多連チューブによれば、内層の構成材料がガスバリア性を有し、外層の構成材料が柔軟であるため、多連チューブとしても、適切な柔軟性と十分なガスバリア性を得ることができる。また、内層、外層ともにポリオレフィン系樹脂を含んでいるため、両層の接着性は非常に優れたものとなる。特に、上記内層の構成材料であるポリオレフィン系樹脂の融点より、上記外層の構成材料であるポリオレフィンの融点の方が高いものであれば、熱融着によって複数のチューブが並行に連設する際に、外層のみでなく、内層における外層との境界部分近傍も融解し、外層と内層とが熱融着することになる。従って、接着剤等を使わなくとも、外層と内層を強固に接着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図1は多連チューブを示す斜視図である。
【0011】
まず、内側を直鎖状低密度ポリエチレン、外側をスチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体とポリプロピレンの混合物として2層同時押出成形をし、内径2mm厚さ1mmの内層2と厚さ1mmの外層3とからなる外径4mmのチューブを成形した。このチューブを5本並行に配した状態で、チューブ同士が接触する部分に熱風を吹き付け、それぞれのチューブにおける外層3同士を熱融着し、5本のチューブが並行に接続された多連チューブ1とした。
【0012】
内層2を構成する材料としては、ポリオレフィン系樹脂を含むものが使用される。ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、ポリプロピレン、ポリブテンなどが挙げられ、これらを適宜混合しても良い。これらの中でも、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンといったポリエチレン樹脂は、適度な柔軟性を有し、ガスバリア性に優れているため好ましい。また、高密度ポリエチレンは特にガスバリア性に優れ、低密度ポリエチレンは特に柔軟性に優れるという特性を有するものであり、要求に応じて適宜使い分ければよいが、直鎖状低密度ポリエチレンは、これら高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンの中間の特性を有し、万能に使用できるものであり特に好ましい。
【0013】
外層3を構成する材料としては、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系樹脂を含むものが使用される。スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、部分水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、などが挙げられ、これらを適宜混合しても良い。ポリオレフィン系樹脂としては例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなど、或いは、上記した内層を構成する材料としてあげたポリオレフィン樹脂が挙げられ、これらを適宜混合しても良い。外層を構成する材料としてのポリオレフィン樹脂は、上記内層を構成する材料としてのポリオレフィン樹脂よりも、融点が高い方が好ましい。これにより、熱融着によって複数のチューブが並行に連設する際に、外層のみでなく、内層における外層との境界部分近傍も融解し、外層と内層とが熱融着することとなり、内層と外層の接着を更に強固にすることができる。また外層3には更にオレフィン系オイルや各種添加剤を含んでいても構わない。また外層3はスチレン系エラストマー、オレフィン系樹脂、オイル、添加剤の種類や比率を変えることによって幅広い柔軟性を実現することができる。そして、柔軟性が高いほどガスバリア性が低下し、ガスバリア性が高いほど柔軟性が低下する傾向にあるので、内層2の特性に応じて適宜選定し、チューブ全体としての柔軟性及びガスバリア性が最も適切になるように設定することが好ましい。
【0014】
内層2と外層3を形成し、チューブとする方法としては、例えば、予め内層2を押出成形した後にこの内層2の外周に外層3を押出成形する方法、内層2と外層3を同時押出成形する方法、別に内層2と外層3を押出成形しておき外層3の内部に内層2を圧入する方法などが考えられる。例えば、上記実施の形態においては、内層2のポリオレフィン系樹脂の融点が外層3の軟化点よりも低いため、内層2の外周に外層3を押出成形することは困難である。また、内層2と外層3が隙間なく接着されている必要があるため、外層3の内部に内層2を圧入することは困難である。そのため、内層2と外層3を同時押出成形する方法が最も好ましい。
【0015】
上記のチューブを並列に接着する方法としては、例えば、外層3の軟化点温度以上に設定した加熱炉中に並行に配したチューブを通過させ、チューブ同士を熱融着する方法、チューブを並行に配してこれらチューブ同士が接触する箇所に熱風を吹き付けて、チューブ同士を熱融着する方法などが考えられる。この際に、内層2の構成材料であるポリオレフィン系樹脂の融点より、外層3の構成材料であるポリオレフィンの融点の方が高いものであれば、内層2における外層3との境界部分近傍も融解し、外層3と内層2とが強固に熱融着することになる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
以上詳述したように本発明によれば、特に、それぞれのチューブの接着性及びチューブの内層と外層との接着性に優れ、適切な柔軟性及び十分なガスバリア性を有する多連チューブを提供することができる。このような多連チューブは、インクジェットプリンタのインク供給チューブとして好適に使用することができる。また、本発明による多連チューブは、空気中の酸素・二酸化炭素等のガスをチューブ内に透過させることもない。そのため、この多連チューブを用いて配管すれば、溶存ガスによるポンプ等機器の劣化を防止することができる。また、純水移送用チューブとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による多連チューブの構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 多連チューブ
2 内層
3 外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチューブが並行に連設された多連チューブであって、上記チューブは、構成材料としてポリオレフィン系樹脂を含む内層と、構成材料としてスチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂を含む外層とからなり、該外層でそれぞれのチューブが接着していることを特徴とする多連チューブ。
【請求項2】
上記内層のポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1記載の多連チューブ。
【請求項3】
上記内層の構成材料であるポリオレフィン系樹脂の融点より、上記外層の構成材料であるポリオレフィンの融点の方が高いことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の多連チューブ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−69780(P2010−69780A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241168(P2008−241168)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000129529)株式会社クラベ (125)
【Fターム(参考)】