多重化分子分析装置および方法
【課題】最適なアッセイパラメーターを迅速に決定するための多重化環境と、標的アナライトの定量分析のための迅速で費用効果的で高精度な系とを提供し、それにより単一測定アッセイの制限を回避する。
【解決手段】サンプル物質を適用する複数の試験部位を有するアレイを使用してサンプル物質中の分子構造体を分析するための方法および装置。また、複数の試験部位を有する分子アレイを構築するための方法および装置に関する。これらの装置は平行的に作動し、各ユニットが、一定の実験に対する完全な解答を全体として与える特定のセットのデータを与える。このアプローチは、限られた量のサンプルから高密度の情報を迅速かつ費用効果的に与える特有の能力を有する。
【解決手段】サンプル物質を適用する複数の試験部位を有するアレイを使用してサンプル物質中の分子構造体を分析するための方法および装置。また、複数の試験部位を有する分子アレイを構築するための方法および装置に関する。これらの装置は平行的に作動し、各ユニットが、一定の実験に対する完全な解答を全体として与える特定のセットのデータを与える。このアプローチは、限られた量のサンプルから高密度の情報を迅速かつ費用効果的に与える特有の能力を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み入れる1996年12月31日付け米国仮出願第60/034,627号を基礎とする。
【0002】
米国連邦政府の援助によりなされた研究に関する陳述
本発明の少なくとも一部は、米国航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration)からの基金(授与番号NAGW 4530)によりなされたものである。
【0003】
技術分野
本発明は、サンプル中の1以上の分子構造体の検出および定量のための多重化(マルチプレックス化)分子分析装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
サンプル中の1以上の分子構造体を迅速に検出し定量することは、非常に望ましいことである。そのような分子構造体は、典型的には、リガンド、例えば抗体および抗抗体を含む。リガンドは、ある特定の受容体に認識される分子である。リガンドには、細胞膜受容体に対するアゴニストおよびアンタゴニスト、毒素、毒物、オリゴ糖、タンパク質、細菌およびモノクローナル抗体を含めることが可能であるが、これらに限定されるものではない。例えば、DNAまたはRNA配列分析は、遺伝病および伝染病の診断、毒物学的試験、遺伝的研究、農学および医薬の開発に非常に有用である。同様に、細胞および抗体の検出は、多数の疾患の診断において重要である。
【0005】
特に、核酸に基づく分析は、しばしば、配列の同定および/または分析、例えばin vitro診断アッセイおよび方法の開発、天然産物の生物活性に関するハイスループット(高処理量)スクリーニング、および分解しやすい物質(例えば、提供された血液、組識または食品)の、多種多様な病原体に関する迅速なスクリーニングを必要とする。これらのいずれの場合においても、分析に対する基本的な制約(例えば、限られたサンプル、時間または多くの場合はその両方)がある。
【0006】
これらの使用分野においては、前記の制約との関連において精度、速度および感度の間でバランスをとる必要がある。既存のほとんどの方法は、一般には、多重化されていない。すなわち、分析条件の最適化および結果の解釈は、単純化された単一の測定アッセイで行なわれる。しかしながら、これは、決定的な診断が必要とされる場合には問題となることがある。なぜなら、核酸ハイブリダイゼーション技術においては、スクリーニングする病原体を予め知っておく必要があるからである。症状が明らかでなかったり、かなり多数の異なる病原生物を示す場合には、考えうる多数の原因因子に関してスクリーニングするアッセイが非常に望ましいであろう。さらに、おそらく複数の病原体により症状が複合的になる場合には、特異性の増加と共に関与生物が示される「決定樹(decision tree)」として機能するアッセイが、診断上非常に貴重であろう。
【0007】
多重化は、精度を維持するために追加的な制御を要する。分析条件の設計の際には、汚染、サンプルの分解、インヒビターまたは交差反応体の存在および鎖間/内相互作用による偽陽性または陰性の結果を考慮すべきである。
【0008】
通常の技術および限界
サンガーの配列決定
既存のすべての技術のなかで最も信頼のおけるものの1つとして、伝統的なサンガーの配列決定技術が挙げられる。この技術は、予め知られていない又は疑われていない病原体を同定する場合に非常に貴重である。また、それは、病原生物の特定の株に薬剤耐性を付与する突然変異を決定する場合に貴重である。これらの分析は、一般には、研究指向的なものである。この研究の最終的な結果(例えば、ある特定の病原体の配列決定)を用いて、臨床場面における同定用途のためのプローブを設計することができる。
【0009】
しかしながら、この技術を臨床研究室で用いることに対しては制約がある。主な制約としては、熟練者が多工程を実施することを要する固有の労働集約的手法による経費および処理量が挙げられる。例えば、典型的な分析は、通常、完了に1日以上を要する。より懸念されるのは、複数の病原体株が1つのサンプル中に存在する場合に不明確になる可能性があることだ。病原体のビルレンスは、株によって決まることが多い。一例として、ヒトパピローマウイルスとしても公知のHPVが挙げられる。70株のHPVが存在することが、一般に公知である。特に、2株が頚部癌のリスクの増大に強く関連しており、したがって、悪性度に関するスクリーニングまたは治療の攻撃性は、HPV株の存在により影響される。配列決定の方法を用いる場合には、複数の株が、不明確な結果を招く。理想的なアッセイは、含まれるすべての株を同定するための選択性により多重化されるであろう。
【0010】
ブロッティング技術
ブロッティング技術(例えば、サザン分析およびノーザン分析で用いるブロッティング技術)は、臨床的に重要な核酸の検出のための主要技術として広く用いられている。内在性ヌクレアーゼからサンプルを保護するようサンプルを迅速に調製し、ついで該アッセイに適した核酸断片を得るために該サンプルを制限酵素消化またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析に付す。ゲル電気泳動を用いて、サイズによる分離を行なう。ついで、標的核酸分子と結合するメンブレン上へのブロッティングにより、該変性断片を標識プローブに対するハイブリダイゼーションで利用可能なものとする。複数の断片を同定するために、適当な洗浄およびハイブリダイゼーション工程と共に連続的にプローブを使用する。これは、非特異的結合によるシグナルの喪失およびバックグラウンドの増加につながることがある。ブロッティング技術は高感度かつ安価であるが、それらは、労働集約的であり、技術者の技量に左右される。また、それらにおいては、種々のプローブの連続的使用に関連した問題のため、高度の多重化が不可能である。
【0011】
マイクロプレートアッセイ
結合アッセイ(例えば、ELISAアッセイ、受容体結合および核酸プローブハイブリダイゼーション技術)を利用するために、マイクロプレートアッセイが開発されている。典型的には、1個のマイクロプレート(例えば、マイクロウェルタイタープレート)の場合、例えば発光分析により1ウェル当たり1回しか読取りを行なうことができない。これらのアッセイは、(1)溶液中でのハイブリダイゼーション、または(2)表面に結合した分子に対するハイブリダイゼーションの2つの様式のいずれか1つで機能する。後者の場合、1ウェル当たり1個の要素だけが固定化される。これは、もちろん、サンプル1単位当たりで決定されうる情報の量を限定する。サンプルのサイズ、労働コストおよび分析時間などの実際の考慮事項が、多重分析におけるマイクロプレートの使用に制限を課す。適当なコントロールによる複数の病原体のスクリーニングにおいては、1ウェル当たり1回の分析、反応または測定だけで、典型的な96ウェルフォーマットのマイクロプレートのかなりの部分を消費することになろう。株の決定を行なう場合には、複数のプレートを使用しなければならない。そのような多数のウェル上に患者のサンプルを分布させることは、入手可能なサンプル材料が限定されるため非常に非実用的なものとなる。このように、入手可能な患者のサンプル容量が分析を本質的に制限し、また、容量を増加させるためにサンプルを希釈すると、感度が著しく損なわれる。
【0012】
ポリメラーゼ連鎖反応
標的配列を増幅しアッセイの感度を増加させるためにはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いることができるが、サンプル中の増幅可能な配列の数には事実上限界がある。例えば、臨床用途のためのほとんどの多重化PCR反応は、1反応当たり数個の標的配列しか増幅しない。得られたアンプリコンは更に、サンガーの配列決定法、ゲル電気泳動またはハイブリダイゼーション技術(例えば、サザンブロッティングまたはマイクロプレートアッセイ)により分析しなければならない。PCRの選択的増幅の場合、サンプル成分が、交差反応による異常な結果を与える可能性は低いであろう。しかしながら、これは完全には除去されず、対照を使用すべきである。さらに、PCRは、汚染による偽陽性結果の可能性を増加させ、したがって環境的コントロールを必要とする。また、PCRの対照には、偽陰性を防ぐための増幅陽性対照を含める必要がある。PCR法に対するインヒビター(例えば、ヘモグロビン)は、臨床的サンプルにおいて一般的である。その結果、多重分析のためのPCR法は、既に大まかに説明したほとんどの問題にさらされる。正確な診断的判定を保証するためには、高密度の情報を得る必要がある。全般的に、PCRは、定量的アッセイ、または多数の病原体の広域スクリーニングには実用的でない。
【0013】
プローブに基づくハイブリダイゼーションアッセイ
最近では、固体表面上のアレイフォーマット(「チップフォーマット」とも称される)において、プローブハイブリダイゼーションアッセイが行われている。これらのチップフォーマットを用いることにより、非常に少量のサンプルを使用する多数のハイブリダイゼーション反応を行なうことができ、それにより、合理的なサンプル容量を用いて、情報に富む分析を容易にすることができる。
【0014】
プローブに基づくこれらのハイブリダイゼーションアッセイの精度を増加させるために、種々の方法が実施されている。1つの方法は、種々のGC含量の多数の核酸プローブを用いるアッセイでの選択性の維持の問題に対処するものである。GCに富むプローブに対する単一塩基のミスマッチ交差反応を除去するために用いるストリンジェンシー条件は、ATに富むプローブの完全なマッチを除去することになる。この問題を克服するための方法は、ストリンジェンシーの制御のための個々のアドレス可能(addressable)なプローブ部位における電界の使用から、別々の洗浄条件の維持が可能となるよう別々のマイクロ容量反応チャンバーを設けることまで、多岐にわたる。この後者の例は、小型化マイクロプローブに類似しているであろう。他の系では、それほどストリンジェントでない条件を用いる一方でミスマッチに対する識別を可能にする「プルーフリーダー」としての酵素を使用する。
【0015】
前記の考察はミスマッチの問題に向けられているが、核酸ハイブリダイゼーションは他の誤りにもさらされる。偽陰性は、重要な問題であり、以下の状況から生じることが多い。
【0016】
1)標的またはプローブ分子中の鎖内フォールディング、タンパク質結合、交差反応DNA/RNA競合結合、または標的分子の分解によりしばしば生じる、結合ドメインが利用できないこと。
2)小分子インヒビターの存在、サンプルの分解および/または高いイオン強度により標的分子が増幅されないこと。
3)標識系の問題は、サンドイッチアッセイにおいて問題となることが多い。ハイブリダイゼーション実験においては、結合標的分子上の二次部位に相補的な標識プローブよりなるサンドイッチアッセイが一般に用いられる。これらの部位は、前記の結合ドメインの問題にさらされる。酵素化学発光系は、酵素または基質のインヒビターの影響を受け、内在性ペルオキシダーゼが、化学発光性基質を酸化することにより偽陽性を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【0017】
概要
本発明は、最適なアッセイパラメーターを迅速に決定するための多重化環境と、標的アナライトの定量分析のための迅速で費用効果的で高精度な系とを提供し、それにより単一測定アッセイの制限を回避する。多重化アッセイの最適化は、ハイブリダイゼーションおよびストリンジェンシー洗浄のための適当な溶解条件を決定するための実験的応答(experimental interrogation)により行なうことができる。これらの最適な化学的環境の開発は、結合捕捉プローブ分子のアレイの特性、その相補的標的分子およびサンプルマトリックスの性質に大きく左右されるであろう。
【0018】
多重化分子分析は、しばしば、特定の問題に対する解答を得ることを要する。例えば、考えうる生物のパネルの中のいずれの感染性因子が一連の特定の疾患症状を引き起こすのかを決定するためには、多数の分析を必要とする。捕捉プローブアレイは、これらの多変数の解答を与える状況を提供する。しかしながら、単一プローブアレイプラットフォームの使用は、この種の問題を解決するための十分な情報を常に提供するわけではない。近位(proximal)荷電結合素子(CCD)技術の最近の革新的な応用は、マイクロプレートウェルの底に組込まれた分子プローブアレイを定量的に検出しイメージングすることを可能にした。これは、非常に複雑な分析パラメーターによるいくつかの適用の検討を可能にする格別に有用なハイスループットプラットフォームを与える。
【0019】
用途
本発明の多重化分子分析系は、サンプル物質を適用する複数のバイオサイト(biosite)を有するアレイを使用してサンプル物質中のいくつかの分子標的を分析し定量するのに有用である。例えば、本発明は、多重化診断、薬物発見およびスクリーニング分析、遺伝子発現分析、細胞分取ならびに微生物のモニターのために(各用途に関しては、後記実施例を参照されたい)、マイクロプレート中のマイクロアレイと共に使用することができる。
【0020】
多重化アレイによる近位CCDイメージング
本発明のマイクロプレートに基づくアレイの1つの用途は、多数のサンプルの平行処理におけるものである。大きな臨床試験所では、1日に数千個のサンプルを処理する。96ウェルのそれぞれにおいて4×4マトリックスのバイオサイトで構成されたマイクロプレートであれば、図1に示す近位CCDイメージャーを使用して、96個の異なる患者サンプルから合計1536個の試験をほぼ同時に行なうことが可能であろう。図1は、多重化分子分析検出/イメージング系を示す概要図である。さらに、96ウェルのそれぞれにおいて15×15アレイのプローブ要素で構成されたマイクロプレートは、合計21,600個のほぼ同時的なハイブリダイゼーション分析を可能にし、これは、特定の細胞からの遺伝子発現の分析に重要となる。
【0021】
生物活性に関して天然産物をスクリーニングする場合には、スループット(処理量)も重要である。関心のある結合部位をモデルにしたバイオサイトのマトリックスを、各ウェルの底に配置し、未知産物で応答(interrogate)させることが可能である。これらのバイオサイトアレイに対して、1日に数千の分子をスクリーニングすることができる。
【0022】
階層アレイの作製
マイクロプレートに基づく該アレイのもう1つの用途は、複合分析のための階層(hierarchical)アレイの作製である。このフォーマットにおいては、複合アッセイに対する解答を得るために、複数のアレイを同時に作動させる。「背景」の節に記載の診断アッセイの具体例は、正確な結果を得るために考慮すべきパラメーターのいくつかを示している。いずれの特定の分析においても、1組のプローブ要素を選択しなければならない。選択したプローブ要素は、定められた標的と選択的に会合する能力を有すべきであり、この場合、ある特定のサンプル型に一般に関連した患者または他の生物から予想される他の巨大分子に対する有意な交差会合を伴うべきではない。対照は、「背景」の節で大まかに説明した原因に由来する偽陽性または陰性の結果を避けるように設計しなければならない。これを行なったら、定められた分析のための最適な会合および選択性の条件を同定するために組合せ法を用いることができる。核酸の適用の場合には、これらの条件は、捕捉プローブの長さおよび組成、標的の塩基組成、およびサンプルマトリックスに大きく左右される。使用するアレイの数は、多数の種々の要因、例えば、行なう制御、および捕捉プローブの塩基組成の相違に左右される。最終的には、関心のある分子分析の解答を迅速に効率的に正確に与える1組の集積(integrated)化学装置が得られる。
【0023】
該階層アレイおよび反応容器に基づくアレイのもう1つの用途は、広範囲の可能な標的に関してサンプルをスクリーニングすることである。1つの場合には、定められた一群の症状の原因を探るために診断試験を行なう。ほとんどの場合には、これは、考えうる生物の範囲を少数の生物に狭める。逆に、提供された血液または組識を広範囲の病原生物に関してスクリーニングするためには、決定樹アプローチを用いることが可能であろう。この場合には、より広いクラスの病原体に関してスクリーニングするために、高度に保存された核酸領域のためのプローブを使用して開始アレイまたは1組のアレイを選択することが可能であろう。この結果は、より大きな特異性へと進むために、つぎにマイクロプレート内のどの追加的アレイセットをサンプリングすべきかを示すであろう。提供された血液または組識の場合のように十分なサンプルが入手可能な場合には、決定樹要素のすべてを同時に応答(interrogate)させることが可能であろう。サンプル量が限られている場合には、このアプローチを連続的に進めることが可能であろう。
【0024】
いずれの多重分析のアッセイ開発にも、多くの時間がかかる。本明細書に記載のマイクロプレートに基づくアレイは、捕捉プローブ/標的結合またはハイブリダイゼーションのための方法を加速化するために使用することができる。一定のアレイを、マイクロプレートの各ウェル中に固着(deposit)させることが可能であり、ついで、二次元で変化する条件の「勾配(gradient)」を用いて会合反応を行なうことができる。例えば、8列12行に配置された核酸を含有する96ウェルマイクロプレートで考えてみる。最適化の1つの工程では、種々の基質組成に対するpHの影響を調べて、これがハイブリダイゼーションの特異性に対してどのような影響を及ぼすかを知ることが可能であろう。12個の異なるpH(各行に1個)および8個の異なる表面化学(各列に1個)を、その他の点では同一のハイブリダイゼーション条件下で用いて、アレイ中の各捕捉プローブ/標的要素に関するハイブリダイゼーションに対する影響を測定することが可能であろう。アレイ技術が広く用いられるようになり任意の受容体/リガンド結合型実験に適したものになるにつれて、このタイプの分析が不可欠となるであろう。
【0025】
複合分析の解答を与えるために平行的に機能する個別的に最適化された化学環境を有する一定の組のアレイよりなる階層アレイフォーマットを、他の方法で実施することができる。各マイクロプレート中に一連の分析セットを配置するバッチ法の代わりに、階層アレイ分析セットをフローセル(flow cell)配置に設計することができる。これは、ある特定の分析に特異的であり、適当なアレイセットと、単一のサンプルを採取し適当なアリコートを該セット中の各アレイに運搬するのに必要なフルイディクスとからなる。該フルイディクスが、該セット中の各アレイに関して定められたとおりに反応を行なうための適当な会合および洗浄流体を運搬することとなる。
【0026】
利点
本発明の多重化分子分析系は、通常の系に対して多数の利点を有する。これらの利点のいくつかを以下で考察する。
【0027】
ハイスループット
マイクロタイタープレート1個当たり1,536(96×16)〜21,600(96×225)個のハイブリダイゼーション試験を行なう可能性を与える96ウェルマイクロタイタープレートの底に、複数のDNA/RNAプローブアレイを作製することができる。各ウェルは、プラスチックまたはガラス上に分注されマイクロタイタープレートに結合しているN個の要素(エレメント)のプローブアレイを含有する。さらに、該マイクロタイタートレイを直接(無レンズ)CCD近位/イメージャーに連結することにより、合計1,536〜21,600個のハイブリダイゼーション試験を室温で数秒以内に定量的に行なうことができる。そのような近位CCD検出アプローチは、本質的に高い集積効率および平行的イメージング運転のため、前例のない速度および分解能を可能にする。該ハイブリダイゼーション試験のマイクロタイタープレート1個当たりの上限は、中心間間隔100μmのバイオサイトに基づけば100,000を超える。
【0028】
低コスト
反応基質上に分注する捕捉プローブの容量は約50ピコリットル(pL)に限定することが可能であるため、1,500個以上の異なる結合試験を行なうのに、捕捉プローブ試薬は150ナノリットル(nL)しか必要とされない。プラスチックロール上または薄いガラスシート上へのプローブアレイの分注は、モジュラーインクジェットまたはキャピラリー固着系で流れ作業的に効率的に行なうことができる。
【0029】
自動化運転
該多重化アッセイは、サンプルの運搬および調製に利用する通常のロボットシステムに適応した室温での運転のための標準的な96ウェルマイクロタイタープレートフォーマットとして設計することができる。また、グラフィック(graphical)ユーザ・インターフェースを有する近位CCDに基づくイメージャーは、多数のハイブリダイゼーション試験結果の同時入手の自動化を可能にするであろう。CCDイメージングシステムソフトウェアは、各プローブ/標的結合領域の自動化されたフィルタリング(filtering)、スレショルディング(thresholding)、標識、統計分析および定量的グラフィック表示を数秒以内にもたらす。
【0030】
汎用性
該多重化分子分析系の特定の実施形態で用いる近位CCD検出器/イメージャーは、蛍光、化学発光および放射性同位体を含む多数の分子標識手段に適応する。その結果、最大限の情報抽出のために多重化態様で別々に又は一緒に使用する種々のリポーター基に関して、単一の装置を使用することができる。
【0031】
高分解能
併用する近位CCD検出器/イメージャーは、空間的およびデジタル的な高い分解能を与える。好ましい実施形態では、約25×25μm2のCCDピクセルサイズが、反応基体上の数百個から数千個のバイオサイトのイメージングを支持する。16ビットのデジタルイメージングと共に、高密度のバイオサイトの高度に定量的なイメージが得られる。
【0032】
速いタイム・ツー・マーケット
大まかに説明されているアプローチは、通常のサイズのマイクロタイタープレート中に分注されたマイクロアレイに連結した既に実証されている近位CCD検出およびイメージングに基づくため、全体の分子分析系は、複雑な多成分分子に基づく分析に対する速いタイム・ツー・マーケット(time-to-market)の解答を与えると予想される。
【0033】
全体的には、開示されている発明は、最適なアッセイパラメーターを迅速に決定するための多重環境と、分子の定量分析のための迅速で費用効果的で高精度な系との両方のための方法および装置を提供し、それにより単一測定アッセイの制限を回避する。
【0034】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求の範囲から明らかとなろう。
【0035】
詳細な説明
定義
本発明の目的においては、種々の語句を以下のとおりに定義する。
【0036】
「標的分子または標的アナライト」は、アレイ中に固定化された捕捉プローブに対する結合により応答させようとする物質中の、関心のある分子を意味する。
【0037】
「mRNA標的分子またはmRNA標的アナライト」は、同一mRNA成分または本質的に異なるmRNAの混合物を含有する物質を意味する。
【0038】
「捕捉プローブ、プローブ分子またはプローブ」は、標的分子に応答させるために反応基体上にバイオサイトとして固着された分子を意味する。プローブは、核酸、DNA、RNA、受容体、リガンド、抗体、抗抗体、抗原、タンパク質、および小さな化合物(例えば、薬物、ハプテンまたはペプチド)をも包含する意である。
【0039】
「ハプテン結合性ポリペプチド」なる語は、無傷抗体分子ならびにそのフラグメント、例えば、Fab、F(ab')2、Fv、一本鎖抗体(SCA)および単一の相補性決定領域(CDR)を含む。本発明の目的においては、「ハプテン」および「エピトープ」は互換性があるとみなされる。
【0040】
「アレイ」なる語は、二次元の空間的布置または配置を意味する。
【0041】
「階層アレイ」は、階層として配置された又は一連の等級もしくはランク付けで配置されたアレイを意味する。本発明の多重化アッセイを含む異なる「階層アレイ」には、例えば、96ウェルマイクロタイタープレートのアレイのうち、1ウェル当たりN個のプローブ部位またはバイオサイトが存在するもの、各プローブ部位またはバイオサイト当たり107〜1010個の分子が存在するもの、96マイクロタイターウェル反応チャンバー中の該ウェルの底を形成するフィルム基体上の各プローブ部位内にプローブを固着させるためにM個のデポジター(depositor)のアレイを使用するものが含まれるが、これらに限定されるものではない。該デポジターは、種々の多数のメカニズム、例えば、インクジェット固着、キャピラリーおよびフォトリソグラフィーによりプローブを固着させることが可能である。
【0042】
「プローブアレイ」なる語は、標的分子の混合物または該アレイの表面に投与された単一の標的分子上の複数の部位に応答するように機能する、反応基体上に固着されたN個の異なるバイオサイトのアレイを意味する。
【0043】
「オリゴヌクレオチドプローブアレイ」なる語は、プローブが核酸から構成されているプローブアレイを意味する。
【0044】
「荷電結合素子」は、CCDとも称され、空間的にアドレス可能な態様でCCD表面上への入射エネルギーに比例した電子的シグナルを出力する良く知られている電子装置を意味する。
【0045】
「CCD近位検出」なる語は、CCDが分析サンプルに対して近位に存在することにより通常のレンズの必要性を回避する、検出およびイメージングのためのCCD技術の使用を意味する。
【0046】
「リガンド」は、ある特定の受容体に認識される分子を意味する。「リガンド」には、細胞膜受容体に対するアゴニストおよびアンタゴニスト、毒素、毒物、オリゴ糖、タンパク質、細菌およびモノクローナル抗体を含めることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
「多重化」は、多数または複数の数を意味する。
【0048】
「多重化診断アッセイ」は、多数の組または多数の診断アッセイを平行して行なうための方法を意味する。したがって、既に記載されている方法における単一サンプルと同じ労力で1組の平行反応を取り扱うことができる。したがって、より多数のアッセイを一定時間内で取り扱うことができる。平行した組の反応または多重化アッセイを、該方法の終了時に解析しなければならない。これは、本明細書に記載のとおり、バイオサイトに標識またはタグを付けることにより行なう。
【0049】
「反応容器」なる語は、以下に定義する反応チャンバーのアレイを意味する。反応容器の一例として、96ウェルマイクロタイタープレートが挙げられる。
【0050】
「反応チャンバー」は、ハイブリダイゼーションまたは他の会合が生じる環境を意味する。商業的に入手可能な反応容器は、少なくとも1つの反応チャンバーを含有するが、8、24、96または384個の反応チャンバーを含有することが可能である。本発明では、「反応チャンバー」、「ウェル」、「反応部位」、「反応基体」、「アレイハイブリダイゼーション部位」、「ハイブリダイゼーションチャンバー」および「ハイブリダイゼーションウェル」を互換的に使用する。反応チャンバーの一例として、96ウェルマイクロタイタープレート中の96個のマイクロタイターウェルの1個が挙げられる。
【0051】
「バイオサイト」は、反応基体または基体材料の最上表面上に固着されている生物学的分子または捕捉プローブを意味する。適当な条件下、会合またはハイブリダイゼーションが、捕捉プローブと標的分子との間で生じうる。生物学的分子と標的分子との各成分鎖間で反応が生じる可能性があるため、生物学的分子の成分鎖がバイオサイトを形成する。例えば、各反応容器は、少なくとも1つのバイオサイトを含有することが可能である。反応チャンバー1個当たりのバイオサイトの最大数は、反応容器のサイズと、付随する検出器/イメージャーの実際の光学的分解能とに左右されることになる。例えば、16個(4×4アレイ)のバイオサイトのアレイを、反応容器全体の底を最終的に形成するハイブリダイゼーション基体または基体材料上に固着させることができる。各バイオサイトは、直径約25〜200ミクロン(μm)の円を含む。したがって、16個のバイオサイトのアレイでは、16×直径200μmの領域のそれぞれが、ハイブリダイゼーション基体(基体材料)に結合したプローブの均一領域を、プローブサイズおよびウェルサイズに大きく依存する濃度で含有する。半径25〜200μmの各領域は、数百万個のプローブ分子を含有することが可能である。また、16個の異なるバイオサイト(プローブ部位)のそれぞれは、1つの型のプローブを含有することが可能である。したがって、反応チャンバー1個当たり16個のバイオサイト(4×4アレイ)を含有するアレイ中で、16個の異なるプローブ型をアッセイすることができる。もう1つの例として、4個の独立した10×10アレイ(400個のバイオサイト)を、96ウェルマイクロタイタープレートの1個のウェル中に適合するように作製することが可能であり、この場合、その400個の各バイオサイト間に十分な間隔を設けるようにする。この10×10フォーマットの場合、単一反応チャンバー内で、400個のハイブリダイゼーション実験が可能であり、これは、ほぼ同時に行なうことができる38,400(96×400)個のアッセイ/ハイブリダイゼーションに相当する。
【0052】
「反応基体」は、デポジターを使用してバイオサイトまたはプローブ部位が固着されている基体を意味する。「反応基体」には、例えば、ナイロンメンブレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ビニル、他のプラスチックおよびガラスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
「モジュラー固着アレイ」は、デポジターのアレイを意味する。デポジターの数は、主に、反応基体の寸法に左右される。例えば、4個のデポジターが、互いに隣接して嵌合し、各デポジターの前から後への位置に関してずれていること(斜置、staggered)が可能である。各デポジターは、収容リザーバーに直接結合させることが可能である。収容リザーバーは、溶液(例えば、所望のプローブを適当な濃度で含有する溶液)を収容する。ここでもまた、噴射機構の数は、デポジターの設計に左右され、例えば、デポジター1個当たり1個〜数個の噴射機構となることが可能である。
【0054】
「固体表面上のアレイフォーマット」は、チップフォーマットまたはマイクロアレイを意味する。
【0055】
「スループット」は、一定の単位時間内に完了されるアナライトの数を意味する。
【0056】
「決定樹アプローチ」は、いずれが後続の工程を方向づけるかの評価を各工程で行なう連続的な経路決定アプローチを意味する。
【0057】
「ハイブリダイゼーション検出」は、ハイブリダイゼーション、会合、連結、結合、化学的結合、共有結合、鍵−鍵穴会合および反応を介して相互作用する2以上の成分の手段を包含する意であるが、これらに限定されるものではない。本発明の目的においては、これらの用語を互換的に使用する。
【0058】
「会合/ハイブリダイゼーションの検出方法(または検出)」は、蛍光標識、放射性同位体標識、化学発光標識、生物発光標識、比色標識を包含する意であるが、これらに限定されるものではない。標識は、当業者に公知の種々の多数の方法の1つにより行なうことができる。
【0059】
「発光」なる語は、電気的なもの、化学的なもの、蛍光、りん光、生物発光などを意味するが、これらに限定されるものではない。しかしながら、本発明では、過剰な標的分子を溶液から除去するための洗浄工程を必要とせず高感度であるもう1つの検出方法として、電解化学発光または電気化学発光(ECL)標識が含まれる。電解化学発光または電気化学発光による検出方法では、ハイブリダイゼーション/会合が生じ電圧をかけたら、バイオサイトと会合した標識標的分子だけが発光し検出されることになる。したがって、バイオサイトと会合せずに溶液中に残存する過剰の標識は発光しないことになる。
【0060】
本出願は、参照により本明細書に組み入れる以下の係属中の米国特許出願と関連している:1991年11月11日付け出願の米国特許出願第07/794,036号(“Method and Apparatus for Molecular Detection”)、1996年7月2日付け発行の米国特許出願第08/353,957号(“Multiple Molecular Detection Apparatus”)、1995年6月1日付け出願の米国特許出願第08/457,096号(“Multiple Molecular Detection Method”)、1992年4月23日付け出願の米国特許出願第07/872,582号(“Optical and Electrical Methods and Apparatus for Molecular Detection”)、1995年8月7日付け出願の米国特許出願第08/511,649号(“Optical and Electrical Methods and Apparatus for Molecular Detection”)、および1994年2月25日付け出願の米国特許出願第08/201,651号(“Method and Apparatus for Detection and Imaging Particles”)。
【0061】
概観
本発明の多重化分子分析系は、以下の4つの態様に分けることができる。
【0062】
A.反応チャンバー内のプローブアレイに対する後続の会合のためにサンプルを調製すること。これは、標的分子をサンプルから抽出するために必要な精製、単離、変性、標識などのすべての前工程を含む。
【0063】
B.会合が生じるのに十分な濃度で、特定の反応チャンバー内のバイオサイトに標的分子を結合させること。標的分子の非特異的結合は、会合後に反応チャンバーを洗浄することにより最小限に抑えられる場合が多い。
【0064】
C.各反応チャンバー内のバイオサイトと標的分子との会合(ハイブリダイゼーション)を近位検出/イメージングにより検出および/またはイメージングすること。
【0065】
D.分析結果につながる、一定のサンプル内の特異的分子構成成分の存在および量などの、標的分子に関する情報を判定するためにイメージを処理すること。
【0066】
本発明の利点は、前記の4つの方法/工程の個々の手段、特に、以下の工程のための方法および装置にある。
【0067】
工程1:バイオサイトの固着
バイオサイトの固着は、マイクロアレイの構築に関連する。
【0068】
工程2:自己集合アレイ−汎用アレイ
自己集合プローブアレイまたは汎用アレイの作製および構築は、バイオサイトのオンライン形態(on-line configuration)を可能にし、この場合、標的または標的混合物の分析のために特別に設計された改変されたプローブアレイを得るために、一定のプローブアレイ(捕捉プローブ)を、1組の同類アダプター(標的プローブ)に結合させることにより活性化する。本発明では、「同類」は、核酸に関しては、ワトソン・クリック型対合によりもう1つの配列と相補的である配列と定義される。
【0069】
工程3:分子標識方法
分子標識方法は、大きな近位領域の検出/イメージングに適合した標的分子の汎用標識(蛍光、化学発光など)に関連している。
【0070】
工程4.検出系
検出系は、大きな近位領域の検出器/イメージャーを使用する、反応チャンバーを含有する反応容器中での平行的な検出および/またはイメージングに関連している。
【0071】
工程1:バイオサイトの固着
バイオサイトの固着は、マイクロアレイの構築に関連している。反応チャンバー中/上にバイオサイトを固着させるためには、種々の多数の方法を用いることができる。これらのうちの3つのアプローチを、以下に記載する。
【0072】
1.インクジェット固着
生物学的流体をプリントしてバイオサイトを形成するために、インクジェットプリントを用いることができる。このアプローチは、非常に小さな滴容量(直径75μmのスポットサイズを有する約100pL)を与え、そのため、使用する試薬(したがってコスト)が最小限に抑えられる。さらに、該プリント方法は、液滴数千個/秒にまで加速することができ、それにより反応容器に関するハイスループットの生産能を可能にする。
【0073】
本発明で有用な1つの方法では、圧電気材料に電圧をかけることにより流体の容量変化を生じさせる電気機械的に駆動されるインクジェットを用いる(Hansell, 米国特許第2,512,743号, 1950を参照されたい)。その容量変化は、それに続いて流体中に過渡的な圧力を生じさせ、それを、要求に応じて液滴を形成するように導くことが可能である(D. Boggら, IBM Jour Res Develop (1984) 29:214-321)。
【0074】
複数の流体のプリントが可能となるよう、個々のインクジェット装置をモジュラー形態に組込むことができる。例えば、MicroFab Inc.は、個々の駆動および制御エレクトロニクスによりアドレスされる一体式(integral)の500mLリザーバーをそれぞれが有する8個のモジュラー分注単位からなる、インクジェットに基づくDNAプローブアレイプリンターを開発している。
【0075】
図2は、インクジェットプリントで固着されたDNAプローブバイオサイトを示すプリントされたコンピューターイメージを図示する。図2は、実際のバイオサイトの固着を例示しており、この場合、1cm2当たり100個のDNAプローブバイオサイトのアレイがガラス基体上にインクジェット固着されている。該アレイは、マッチおよびミスマッチの12マー(12量体)のプローブの交互の行よりなり、それをついで、12マーの一本鎖DNA標的にハイブリダイズさせた。ミスマッチの行は、プローブ/標的複合体におけるA-Aミスマッチに対応する。その実際のイメージは、後記の近位CCD検出器/イメージャーにより1秒以内に捕捉された。
【0076】
図3に例示するとおり、反応チャンバーの底表面上にL×M個の異なるバイオサイトをプリントするために、モジュール1個当たりM個のデポジターを含有するモジュラーインクジェット装置のL個の並びを斜置的に合体させることができる。図3は、斜置インクジェット分注モジュールを使用するバイオサイト固着系を示す概要図である。この場合、高速プリント用インクジェット装置の下の精密モータ制御されたステージにより、反応容器を移動させる。モジュラーインクジェット装置の追加的な並びを構築することにより、および/または、個々のデポジターを小型化することにより、任意の大きな個数の異なるバイオサイトを、反応容器内にプリントすることができる。別法として、ガラスまたはプラスチックなどの薄い基体上でプリントを行ない、ついで反応容器の底を形成するよう該基体を結合させることが可能である。
【0077】
2.キャピラリー固着
バイオサイトの固着のためのもう1つのアプローチは、図4、4aおよび4bに例示されているとおり、反応基体上に少量のバイオサイト溶液を分注するために毛管を使用することを含む。図4は、複数の毛管を使用するバイオサイト固着系を図示する。図4aは、アレイ鋳型によるバイオサイトの固着を示す概要図である。図4bは、ナノリットルウェル中へのバイオサイトの固着を示す概要図である。示されているとおり、適当な溶液を含有する貯蔵容器を、しばらくの間加圧して、マニホルドにより適当な位置に保持された管をプライム(prime)して、毛管分注作用を開始させる。非常に小さな内径(<50μm)の毛管を使用して、連続的な圧力をかけることができる。種々の持続時間の圧力パルスを用いて、より大容量の溶液を運搬する。反応基体との接触に際して、毛管は、束ねた毛管の空間的配置により制御された正確な位置で小容量のバイオサイト溶液を同時に運搬する。
【0078】
本発明では、貯蔵容器は、標準的フォーマットのマイクロタイタープレートまたは小容量の液体を保持するように設計された特製プレートからのサンプリングを可能にし、蒸発による損失または交差汚染の可能性を最小限に抑えて毛管がピコリットルの容量の液体を数千個のバイオサイトに効率的に分注することを可能にする。
【0079】
ロボットアームにより運搬可能なマイクロプレート中に含まれるバイオサイト溶液の自動的変化を可能にするために、貯蔵容器ホルダーの蓋をZ軸運動制御装置に結合させることができる。これは、薬物の発見に使用する小分子ライブラリーなどの多数の溶液を含有するアレイのセットをプリントするのに有用である。
【0080】
また、本発明では、毛管は、ポリイミドの外層でコーティングされた融解石英からなることが可能である。これらの管は、種々の幅および内径を有する任意の長さのものが商業的に入手可能である。好ましい寸法は、外径(OD)80〜500μmおよび内径(ID)10〜200μmである。毛管の束はロボットアームに固定することができ、毛管をアレイ鋳型に通すことにより該束を正確な形態で保持することができる。アレイ鋳型は、毛管を所望の配置および間隔で維持するように設計された構造体であり、金属格子またはメッシュ、強固に保持された布メッシュ、流体運搬毛管を収容するのに十分な内径を有する「スリーブ」管の束、または孔またはチャンネルを有する固体ブロック(例えば、有孔アルミニウムブロック)(これらに限定されるものではない)よりなることが可能である。
【0081】
示されている実施形態では、プリント固定具の最上部の結合部位に通した外径190μmの毛管を使用している。該管は、結合部位から、プリント中に毛管が曲がるのを可能にする領域を通過して伸長する。柔軟化領域以降は、毛管は、アレイ鋳型または1組の融解石英スリーブ(アルミニウムホルダーアセンブリにより格子形態で保持されているもの)を通る。該毛管スリーブ/アレイ鋳型は、重要な革新をもたらす。また、アレイ鋳型/毛管スリーブは、毛管が滑らかに且つプリント中に垂直軸方向で互いに独立して移動することを可能にする。
【0082】
該プリント系は、マイクロプレートウェルの底表面に広がる高密度プローブアレイをプリントする。これを達成するためには、該プリント系は、正確なプリントパターンを維持しなければならず、不規則な表面に適合しなければならない。正確なパターンを維持するためには、強固な管を使用することが可能であろう。しかしながら、それらは、不規則な表面に容易に適応することはできない。柔軟な管は、不均一な表面上にプリントするものの、正確なプリントパターンを維持しないであろう。その強固なスリーブは、アルミニウムホルダーアセンブリの下方に約2cm伸長し、柔軟な外径190μmの融解石英毛管を支持し、この距離にわたり、正確な格子パターンを維持するのに必要な構造的剛性を付与する。また、該スリーブは、190μmの管がプリント中にZ軸方向に滑らかに移動するのを可能にする。この能力は小さな外径の毛管の柔軟性と共に、完全には平坦でない又はプリント固定具に対して完全には垂直でない表面上に成功裡にプリントするのを可能にする。ロボットアームは、毛管の束が該表面に接触する点を越えて0.1mm〜0.3mm伸長しているため、毛管は図4に示すたわみ領域内で曲がり、該束中の全毛管における全表面の接触をもたらす。プリント固定具が基体から退去すると、毛管は真っ直ぐになり、その元の位置に戻る。キャピラリーバンドル(capillary bundle、毛管束)プリント技術の高度な平行的特性は、2〜10,000個以上の化学的に特有のバイオサイトを含有するマイクロアレイが1回の「スタンプ」で作製されることを可能にする。該プリンターは、これらのアレイを毎秒約1個の速度でプリントする。これは、通常のロード・分注技術を用いるフォトリソグラフィックin situ合成またはロボット固着(robotic deposition)などの既存の技術に対して10倍以上の速度増加に相当する。
【0083】
フォトリソグラフィックマイクロアレイ合成では、基体ごとに核酸プローブを一度に作製するために一連のマスクを連続的に適用する。それぞれ12塩基長のオリゴヌクレオチドプローブのアレイであれば、48個のマスク(12ヌクレオチド位×4塩基)が必要となるであろう。この方法では、48個のマイクロアレイを含有するウェーハを完成するのに約16時間かかる。
【0084】
現在のロボットマイクロアレイプリンティングまたはグリッディング系は、一般に、種々のロード・分注技術に基づく。これらの技術は、2つの範疇に分けることができる。注射針、毛管などの能動ローディング(active loading)系は、複数のバイオサイトまたはアレイ要素に分注するのに十分な溶液を吸い上げた後、新たなプローブ溶液を再ロードまたは集めるために戻る。ピン形態のプリンティングまたはグリッディング系は、一度にピン1個当たり1個のバイオサイトをプリントできるにすぎない。ピンを、しばらくの間、プローブ溶液中に浸す。ピンに付着した溶液の量は、単一のバイオサイトをプリントするのに十分である。どちらの範疇も、本明細書に記載のキャピラリーバンドルプリント系によって解決される制約を有する。
【0085】
製造能力は、マイクロアレイの製造における主な制約であり、コストおよび制限された入手可能性のため、薬物の発見などの高容量適用におけるマイクロアレイの使用を制限する。フォトリソグラフィックin situ合成における制約は、有効となるために必要な長さのプローブのアレイを作製するために適用しなければならない個々のマスクの数である。製造能力を向上させるためには、製造系を重複させなければならない。このアプローチの現在の能力(1997年で約80,000個のアレイ)は、1社当たりで毎年100,000個を超えるサンプルをスクリーニングする可能性がある薬物発見の市場の要求を満たしていない。
【0086】
ロボットプリント系は、現在、大規模で連続的にマイクロアレイを製造している。流体リザーバーの形状が、しばしば、バイオサイトの同時固着の程度を制限する。これは、マイクロアレイを製造するために必要な方法を例示することにより説明することができる。「マイクロ」アレイは、典型的には2cm×2cm未満の小さな全体寸法を有する。実際のサイズは、アレイ要素の数およびそれらの間隔により決定され、試薬のコストおよびサンプルの要件を減少させるために全体のサイズを可能な限り減少させることが重要となる。複数のピンまたはデポジターを使用して平行プリントアプローチを行なう場合には、これらのデポジターの形状は、それらがプローブ溶液リザーバーと相互作用するのが可能で、なおかつ、マイクロアレイに占有される領域の境界内にぴったり合致しうるものでなければならない。プローブ溶液リザーバーとして中心間間隔4.5mmのウェルを有する標準的な384ウェルマイクロプレートを使用して1cm2の100エレメントのマイクロアレイ(10×10)を構築する場合には、該マイクロアレイ内に同時にプリントするためにはデポジターを4個しか使用できない。該アレイを完成させるためには、合計25サイクルのローディングおよびプリントが必要となろう。それに比べて、100本の毛管を有するキャピラリーバンドルプリンターでは、このアレイは単一のプリント工程で製造されるであろう。これは、ロード・分注技術を用いるロボットデポジターより50倍速い。同じアレイを0.5cm2の領域内に凝縮させる場合には、デポジターは1個しか使用できず、キャピラリーバンドルプリンターと比べて製造時間で200倍の差が生じる。
【0087】
キャピラリーバンドルプリンターの重要な特徴は、それをプリント溶液貯蔵容器に接続させる方法にある。毛管の束(キャピラリーバンドル)は、プリント(遠位)末端および貯蔵容器末端を有する。各管がマイクロタイタープレートの特定のウェル(供給チャンバー)内にウェル1個当たり管1本で浸されるように、マニホルドを介してプリントバンドル内に各管を配置する密封された容器中に、プリント溶液は保持される。現在のマルチウェルマイクロタイタープレートは、96、384または1536ウェルのものが入手可能であり、それぞれ96、384または1536個のプローブ溶液を含有することが可能である。より多数のプローブ要素を含有するマイクロアレイの場合には、図4aに例示するとおり、複数のプリント溶液リザーバーまたは貯蔵容器を単一のプリントヘッドに接続させることが可能である。この設計概念では、ロード・分注系に伴う形状の問題が回避される。柔軟な融解石英毛管をアレイ鋳型またはスリーブと一緒に集めて、中心間間隔が僅か200μmの毛管を有するプリントヘッドを作製することができる。
【0088】
封入されたプリント溶液貯蔵容器を、該プリント法のプライム工程中に不活性ガスでパージする。これはまた、プローブ溶液のために不活性環境を維持することにも役立つ。毛管内の流動は一方通行であるため、プローブ溶液の汚染は最小限に抑えられる。ロード・分注技術の場合と同様に、各プリントサイクルの後にプリント末端はリザーバー内に浸されない。これは、マイクロアレイを含有することになるチップまたはスライドの表面にデポジターが接触する接触プリント(contact printing)の場合に重要である。これらの表面は、プローブ溶液と相互作用または結合するように化学的に処理される。ロード・分注系では、残存した反応性化学物質または塵や汚れでさえも、プローブ溶液供給チャンバー内に導入される可能性がある。しばしば、プリントする溶液は、限られた量しか入手できないか、または非常に高価である。合成された又は天然源から採集および精製された数十万個の特有の化学構造体を含有する小分子ライブラリーを、可能な限り多数の潜在的疾患標的のハイスループットスクリーニングで使用する、医薬発見のための用途において、これが当てはまることが多い。これらのライブラリーは、可能な限り効率的に使用しなければならない。各プリント系に必要な流体の量は、設計によって異なる。ほとんどの場合、最低で100マイクロリットル(μL)必要であり、プリントサイクルの間の洗浄でかなりの量の溶液が失われ、1,000個未満のスライドしかプリントできない。該キャピラリーアレイプリンターでは、3μLしか必要とされず、初期プライミングに使用されるのは1μL未満である。プリント溶液のこの容量は、各毛管がアレイ1個当たり50〜100pLを分注する場合、20,000〜30,000個のマイクロアレイをプリントするのに十分な量である。ロード・分注系は、アレイ1個当たり800pL〜数nLをいずれかの位置に運搬する。
【0089】
そのような高度に平行的なアプローチは、プローブ溶液貯蔵容器の形状とは無関係にマイクロアレイの形状(2cm×2cm未満)でプローブ溶液を固着するのを可能にする。これは、プリントヘッドの1回のスタンプにおいて、2〜10,000個以上の特有の捕捉プローブ(バイオサイト)を含有する全マイクロアレイの製造を可能にする。
【0090】
プリント用貯蔵容器から出た柔軟な融解石英管(または他の適当な材料、例えばガラス、Teflonまたは他の比較的不活性なプラスチックまたはゴム、または薄く柔軟な金属、例えばステンレス鋼)は、プリントヘッド中の特定の位置に保持された一連のアレイ鋳型またはスリーブを通過する。結合部位は、水平または垂直の移動を一般に許容しない一定の位置に毛管を保持する。毛管は、この固定点から開放領域(「柔軟領域」)を経て1組のアレイ鋳型またはスリーブ中に伸長する。より低いこれらのアレイ鋳型またはスリーブは、プリントするマイクロアレイに合致した形態でプリント用毛管を保持するように機能する。アレイ鋳型は、正確なプリントパターンを維持するためにプリント用毛管の横方向の移動を制限し、一方、互いに独立した各プリント用毛管の無制限な垂直移動を可能にする。この特徴は、プリントヘッドが若干不規則または不均一な表面上にプリントするのを可能にする。プリントヘッドは下方に移動して、プローブ溶液を受け取ることになる基体と接触し、最初の接触の後、プリント用毛管のすべてが該表面と接触するのが保証されるように下方運動が継続する(距離は、その表面によって異なり、100μm〜数mmである)。結合部位(固定されたキャピラリーを保持している)とアレイ鋳型またはスリーブとの間に位置する柔軟領域は、プリントヘッドの「オーバードライブ(overdrive、過剰移動)」に適応するために各毛管が曲がるのを可能にする。プリントヘッドが基体から上方へ移動すると、プリント用毛管は再び真っ直ぐになる。
【0091】
キャピラリーバンドルは、分離した流体供給チャンバー(例えば、マイクロタイタープレート中のウェル)を含有する封入容器から出発する。各毛管は、特定のウェル(これは、通常、その他のウェルに対して特有のプローブ溶液を含有する)中に挿入される。該貯蔵容器を、しばらくの間、加圧して、毛管のすべてにおいて同時に流体の流動を開始させ、プリンターをプライムすることができる。プライムの後、ヘッドの高さ(ヘッド高)ΔH(図4に示すとおり、上側の流体リザーバーからプリント先端までの垂直距離)を調節することにより、あるいは電気浸透力または電気泳動力により(この場合、電気浸透および/または電気泳動ポテンシャルを維持し調整するよう、管、貯蔵容器および反応チャンバーを適当に修飾する)、毛管を通るプローブ溶液の連続的な流動を促進する。窒素、アルゴンなどの不活性ガスで該チャンバーを加圧することにより、該チャンバーは不活性環境を維持することが可能である。
【0092】
ヘッド高を調節することにより、プリント溶液貯蔵容器に圧力をかけることにより、プリント用毛管の長さ又は内径を変化させることにより、あるいはプローブ溶液またはプリントされる基体の表面張力を調節することにより、各バイオサイトに固着させる流体容量を改変することができる。
【0093】
複数の毛管によるプライムおよび連続的なプリントは、ロード・分注系(それは、表面と接触し、ついで更に流体を引き込むためにプローブ溶液に戻らなければならない)で生じうるプローブ溶液の汚染を防ぐ。キャピラリーバンドルプリンターの連続的なプリントは、非常に効率的であり、小容量のプローブ溶液の使用を要する用途のための実施可能な技術であることが判明している。プリント用毛管の小さな外径および内径は、5μL未満の合計容量から1μL当たり10,000スポットものプリントを可能にする。
【0094】
もう1つの実施形態では、毛管は、柔軟な又は移動可能な様態で結合部位に取付けられアレイ鋳型によりスライド可能に保持された実質的に強固な管(例えば、ステンレス鋼)であることが可能である。この実施形態では、複数の毛管を反応基体に押付け、該毛管は、アレイ鋳型を通って縦方向に移動することにより、それらの遠位末端で「平均化(even up)」して、それにより不均一な固着表面に適応するすることができる。
【0095】
3.フォトリソグラフィー/キャピラリー固着
キャピラリー固着アプローチの空間的分解能および精度を増加させるために、組合されたフォトリソグラフィー化学マスキングおよびキャピラリーアプローチを本明細書で開示する。最初のフォトリソグラフィー工程は、反応基体上の正しいバイオサイト領域を選択的に活性化する。選択的活性化が達成されたら、生じるキャピラリー固着は、均一なバイオサイト分布を与える。
【0096】
本発明では、種々の多数の基体(例えば、ガラスまたはプラスチック基体)を使用することができる。ガラス基体の場合、基体をアミノシランでコーティングして該表面をアミノ化することにより、該方法を開始する。ついで、このアミンをUV感受性保護基(例えば、「かご状(caged)スクシミダート」とも称されるα(4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル)のスクシミジルエステル)と反応させる。UV励起源(UVレーザーまたは水銀アーク)での局所照射により、遊離アミンの分離スポットが該かご状スクシミダート表面上に現れる。これは遊離酸基を現し、ついでこれを、アミンで修飾されたオリゴヌクレオチドプローブと反応させることができる。そのような方法は、比較的高い表面張力の無反応部位を有する基質領域に囲まれた局所バイオサイトの修飾をもたらす。
【0097】
プラスチック基体を使用する場合には、難水溶性であり従って高い表面張力のコーティングを与えるアミン保護基(例えば、トリチル)でアミノ化プラスチックをコーティングすることにより、この方法を開始する。ついで、励起源(例えば、エキサイマまたはIRレーザー)を用いて、光誘導性加熱によりトリチルを選択的に除去する。ついで該バイオサイト領域を、二官能性NHSエステルまたは等価体で活性化する。正味の結果は、ガラスの場合と同様であり、この場合、局所的に活性化されたバイオサイト領域が、バイオサイト領域に対するキャピラリー分注を抑制する比較的高い表面張力により囲まれた低い水性表面張力を有することになる。
【0098】
工程2:自己集合アレイ−汎用アレイ
自己集合プローブアレイまたは汎用アレイの作製および構築は、バイオサイトのオンライン形態(on-line configuration)を可能にし、この場合、標的または標的混合物の分析のために特別に設計された改変されたプローブアレイを得るために、一定のプローブアレイ(捕捉プローブ)を、1組の同類アダプター(標的プローブ)に結合させることにより活性化する。
【0099】
汎用アレイ(Universal Array)フォーマットは、プローブアレイ技術が商業的に広く実施されるのを現在妨げている著しい障害を克服する。基本的には、結合事象の高度に平行的な分析を可能にするプローブアレイは、結合パターンを解釈するための装置を製造し精巧にするための特別の設備を必要とする。残念なことに、バイオサイトアレイを製造するための現在の製造法(例えば、インクジェット、ロボット固着またはフォトリソグラフィーin situ合成)は、比較的に柔軟性に欠ける。これらの技術は、設置および運転のコストを賄うために多数の特異的アレイを製造するように設計されている。したがって、小さな容量の特製(custom)アレイは、法外に高価なものとなろう。
【0100】
これに対して、本明細書に開示する汎用アレイ系は、捕捉プローブアレイ専用の効率的な大容量の製造技術を用いることにより、この問題を解決する。この方法では、最終使用者が容易に「自家製または特製」化できる予備製造された高密度バイオサイト捕捉アレイを、各買い手が使用することができる。本発明では、「標的アナライト」を、プローブアレイに対する結合を介して分析される溶液状態の溶質と定義する。要するに、アレイの特製化は、買い手の研究室で行なうことができる。最終使用者は、2つの分離した結合ドメイン[1つの結合ドメインは、該アレイ中の特異的メンバーと同類であり(捕捉ドメイン)、もう1つの結合ドメインは、関心のある標的アナライトに特異的である(標的ドメイン)]を含有する二官能性標的プローブを合成したり製造する。実際のアッセイでは、最終使用者は、彼らの特製の二官能性プローブを、アナライトの液相混合物に付加し、予備製造された汎用捕捉アレイを含有する反応チャンバー中でインキュベートする。別法として、まず該捕捉アレイを二官能性プローブと共にインキュベートし、ついで該アナライト混合物を加える(図5を参照されたい)。図5aは、汎用アレイを示す概要図である。該アナライトは、標的および捕捉アレイの両相補的部分に対するそれらの二官能性プローブの選択的結合によりサンドイッチ式に該アレイ上に自己集合する。得られたアドレス可能な自己集合したアレイは、相補的近位検出器/イメージャーで容易に分析される。表面に結合する捕捉プローブおよび標的プローブの構築に関する概要を、以下に開示する。
【0101】
1.捕捉プローブ
表面に結合される(表面結合)汎用捕捉プローブは、固体支持体に結合したバイオサイトのアレイ内に配置される。各バイオサイトは、該アレイ中の他のすべてのバイオサイトで見出されるものと機能または組成において異なる多数の特異的分子よりなる。これらの捕捉プローブは、標的プローブの捕捉ドメインに対する迅速かつ効率的な結合を得るために特異的な組成または配列を有するように設計する。また、特異的な組成は、捕捉プローブとそれらの特異的標的プローブとの間の交差会合が最小限になるように選択する。
【0102】
特に核酸捕捉プローブの場合には、表面結合捕捉アレイは、最適な長さ、塩基組成、配列、化学およびプローブ間相違になるように設計すべきである。
【0103】
核酸捕捉プローブの長さは、2〜30塩基、好ましくは5〜25塩基となるべきである。より好ましくは、その長さは、捕捉プローブ間の十分な相違を可能にする約10〜20塩基、最も好ましくは約16塩基長である。また、10−9Mと同程度に希薄な標的プローブ混合物の添加により捕捉プローブアレイが活性化されうるよう、標的プローブ結合親和性を増加させるために、長さをこの範囲で調節する。これは、標的プローブが小規模かつ安価で合成されるのを可能にする。また、捕捉プローブアレイからの標的プローブの解離の速度を減少させるために、長さをこの範囲に調節する。これは、特異的に結合した標的プローブが該表面から解離することなく未結合標的プローブを除去するために活性化捕捉プローブアレイが完全に洗浄されるのを可能にする。そのようなサイズ範囲の捕捉プローブを使用した場合、標的プローブと捕捉プローブとの相互作用によりそれらの間で形成される複合体は、後続の風乾の間じゅう安定であり、冷凍により無限に貯蔵することが可能である。
【0104】
捕捉プローブアレイのセットに関する好ましい塩基組成率は、約30〜40%のG、30〜40%のC、10〜20%のA、10〜20%のTである。生じる捕捉標的プローブの対合の熱力学的安定性が高くなり、そのため低い標的プローブ添加濃度(例えば、10−9Mの範囲)での表面の活性化が可能になるよう、比較的にG+Cに富む捕捉プローブが望ましい。該捕捉プローブのセットにおける最隣接頻度は、G-GまたはC-Cの隣接を最小限に抑えるはずである。この基準は、表面に対する捕捉プローブの結合中または捕捉プローブ−標的プローブ結合段階中のGカルテット(G-quartet)の形成により媒介される副反応の可能性を最小限に抑える。
【0105】
捕捉プローブのセットでは、該捕捉プローブのセットの各メンバーが他のすべてと最大限に相違しているセット構造を得ることが望ましい。そのような最大限に相違しているセットを得るためには、以下のアルゴリズムを用いることができる。
【0106】
1)セットサイズを定める。好ましい実施形態では、16、24、36、48、49、64、81、96および100が、有用なサイズを構成する。
2)捕捉プローブセットの全体の配列構造を定める。前記の長さ及び塩基組成を用いて、そのようなパラメーターを定める。一般に、G塩基およびC塩基の数は、A塩基およびT塩基の数と等しく保たれる。この同一性は、最終セットの立体配置多様性を最適化する。したがって、そのようなセットを、式GnCnAmTmで表すことにする。
3)mおよびnで定められるセット構造の場合、ランダムな配列異性体のセットを得るために乱数発生器を使用する。
4)該ランダム配列セットの1つのメンバーは、該セットの要素#1として使用するよう選択する。
5)セットメンバー間で許容される最大類似性を定める。類似性は、局所的な対状(pair-wise)の塩基の比較の点で定義される。例えば、同じ長さnの2つのオリゴマー鎖を、5'および3'末端が正確に合うように整列させ、ミスマッチの欠如は、1〜nのすべての位置においてそれらの2本の鎖中の塩基が同一である状況を意味する。完全なミスマッチは、1〜nのすべての位置においてそれらの2本の鎖中の塩基が異なっている状況を意味する。例えば、有用な最大類似性は、16個の16マー捕捉プローブのセット内で10以上のミスマッチとなることが可能であろう。
6)ランダムな配列セットの第2のメンバーを選択し、要素#1に対するその類似性を決定する。要素#2が、要素#1に対する最大許容類似性より小さい類似性を有する場合には、それをセット中に残しておく。要素#2が、最大許容類似性より大きな類似性を有する場合には、それを捨て、比較のために新たな配列を選択する。第2の要素が決定するまで、この過程を繰返す。
7)既に選択したすべての要素に関する相違上の制約を満たす該ランダム配列セットの追加的なメンバーを連続的に選択する。
【0107】
捕捉プローブの合成においては、標準的なデオキシリボ核酸塩基のホモログ、または修飾されたプリンまたはピリミジンを有するホモログ塩基、または修飾されたバックボーン化学(例えば、ホスホルアミダート、メチルホスホナートまたはPNA)を用いることができる。
【0108】
捕捉プローブは、固体支持体に結合させるべきである。これは、該プローブをその3'または5'末端によりカップリングさせることにより行なうことができる。3'または5'ビオチン化誘導体として、3'/5'アミン修飾誘導体、3'/5'カルボキシル化誘導体、3'/5'チオール誘導体として、または化学的等価体としての捕捉プローブの合成を介して、結合を得ることができる。そのような末端修飾された捕捉プローブを、ストレプトアビジンフィルム(ビオチンの場合)との相互作用、表面カルボン酸またはエポキシド基またはハロゲン化アルキルまたはイソチオシアナート(アミンの場合)に対する、あるいはエポキシドまたはハロゲン化アルキル(チオールの場合)に対する、あるいは表面アミン(カルボン酸の場合)に対するカップリングを介して、基礎となるマイクロタイタープレートに化学的に結合させる。捕捉プローブアレイの一般的な性能特性を改変することなく、当業者に容易に知られる他の結合化学法を代用することが可能である。捕捉プローブアレイは、ロボットまたはマイクロインクジェット技術を用いて、そのような化学法により作製することができる。
【0109】
標的プローブ活性化工程中の交差ハイブリダイゼーションを最小限に抑えるために、捕捉プローブセットの各メンバーが、該セットの平均長と同一または1塩基だけ異なる長さを有し、該セットのすべての他のメンバーと同一または実質的に類似している全総塩基組成を有するように、捕捉プローブセットを構築する。これらの2つの基準は、すべての標的プローブ/捕捉プローブの対合の自由エネルギーが同一になるのを可能にするよう相互作用する。前記アルゴリズムは、プローブのそのようなセットを与える。
【0110】
該捕捉プローブセットの各メンバーの配列が、該捕捉プローブセットの他のすべてのメンバーと少なくとも20%、好ましくは40%、より好ましくは50%、最も好ましくは60%異なっていることが重要である。配列相同性のこの程度(該セットの任意の2つのメンバー間で80%未満)は、標的プローブが、それが結合するように設計されているプローブセット以外のプローブセットのメンバーと結合するのを妨げる。
【0111】
前記で大まかに説明した一般的な設計基準を満足する多数の捕捉プローブが存在する。以下に記載するものは、前記基準を適切に満足する前記アルゴリズムにより作製される16要素(エレメント)の捕捉プローブセットの具体例である。
【0112】
この具体例では、全16個のセットメンバー間で、捕捉プローブの長さは16塩基に保たれ、塩基組成はG5C5T3A3に固定されている。捕捉プローブ要素1個当たり僅か3個のG-GまたはC-C対合が存在するにすぎない。この個々の捕捉プローブセットは、その3'末端でアミン結合を介してマイクロタイター支持体に結合するように設計されている。しかしながら、5'アミン結合または他の化学法を用いることも可能であろう。
【0113】
最上部のアレイ要素(#1)を、標準体として選択した。このセットの詳細な検討から、該セットの各メンバーが他のすべてのメンバーと少なくとも10塩基のミスマッチで異なり、捕捉プローブセット要素間の50%以下の相同性の基準を満足していることが示される。
【0114】
a=アミド結合を介してカルボキシラート修飾表面に又はエポキシド修飾表面に結合している、固体支持体に対するアミン結合(例えば、3'プロパノールアミン)。
【0115】
2.標的プローブ
標的プローブセットは、捕捉プローブセットに特異的に結合するように設計し構築する。すなわち、各標的プローブ要素が、捕捉プローブセットの1つの要素だけに結合するようにする。したがって、標的プローブの混合物を、マイクロタイタープレートの底に形成された捕捉プローブアレイまたは同等の表面に投与することができる。汎用アレイの核酸の実施形態では、結合の後、標的プローブセットは、ワトソン・クリック塩基対合により捕捉プローブセットメンバー間で分配され、それにより特有の結合ドメイン(被検体と同類)をプローブアレイ中の各部位へ運搬することとなる。
【0116】
特製の核酸に基づく二官能性標的プローブを合成するために最終使用者が使用することができる2つの一般的な方法がある。最も単純で最も直接的な方法は、標準的な自動DNA合成装置を用いて、リンカー領域により分離した2つのドメイン(捕捉およびアナライト)を含有する一本鎖オリゴヌクレオチドを合成するものである。1つのクラスとして、核酸実施形態用の二官能性標的プローブは、捕捉プローブセットの1つの要素にワトソン・クリック的に相補的な捕捉プローブと同類の構造ドメインを有する。したがって、その長さ及び塩基配列は、逆平行ワトソン・クリック二重らせんの形成の標準的な規則で、捕捉プローブの長さ及び塩基配列により定められる。さらに、標的プローブはまた、以下の構造ドメインの1つを含有する。
【0117】
a.溶液状態の核酸標的アナライトの小さなセグメントに対する同類体
これは、分析する溶液状態の標的核酸にワトソン・クリック対合で相補的である標的プローブの成分である。一般に、その配列は、捕捉プローブと同類であるドメインの配列に対して何ら相関性を有さない。しかしながら、いくつかの一般的な設計基準は満たされるべきである。
【0118】
第1に、標的プローブの合成を容易にするための、約5〜30塩基長、好ましくは約10〜25塩基長の領域中の特有の(ユニーク)ドメイン。より短い標的プローブドメインでは、アナライト結合親和性が不十分であり、より長い標的プローブドメインは、合成上の困難性を示す。
【0119】
第2に、該ユニーク配列の長さが、捕捉プローブセットと等しいか又はそれより長い場合、該ユニーク要素は、任意の捕捉プローブ要素のワトソン・クリック相補体に対して80%以下の相同性の配列を有すべきである。この基準は、ユニーク標的プローブセグメントと捕捉プローブセットのメンバーとの不適当な会合を排除するものである。
【0120】
b.PCR、LCRなどの生化学的増幅に使用するプライミング部位に対する同類体
このドメインは、本質的には、汎用アレイ中の捕捉プローブ部位に対して相補的なテイルを有する核酸増幅プライマーを与える。増幅後、得られたアンプリコンのセットを、捕捉プローブアレイに直接ハイブリダイズさせ、後記のとおり分析することができる。
【0121】
c.直接結合のための化学修飾
二官能性DNA標的プローブを合成するもう1つの方法は、単一の二官能性分子中への2つのドメインの後続の化学的結合を可能にする反応性官能性を取込むために化学的に改変されたアナライト・捕捉配列オリゴを個々別々に合成することよりなる。一般には、2つの配列が頭−尾または尾−頭で縮合するのを促進するために、各オリゴの5'または3'末端を化学的に改変する。2つのオリゴの縮合のための種々の適当な官能性を与える多数の方法が、核酸合成の当業者に公知である。好ましい官能性には、カルボキシル基、ホスファート基、アミノ基、チオール基およびヒドロキシル基が含まれる。さらに、ホモまたはヘテロ二官能性活性化試薬でこれらの官能性を化学的に活性化することにより、該活性化オリゴともう1つの官能基化オリゴ配列との縮合が可能となる。縮合を引き起こす種々の官能性および活性化試薬のいくつかの例を、以下に挙げる。
【0122】
【0123】
関心のあるアナライトに選択的に結合しうる特異的に修飾されたプローブ、核酸または他の分子に対して直接結合が可能となるよう修飾することが可能であり汎用アレイの捕捉プローブセットと同類である標的プローブドメインの具体例を、図5bに示す。図5bは、標的プローブに対する直接結合を示す概要図である。図5bに示すとおり、標的プローブは、2つの部分から構築する。第1部分は、第2標的複合体(TP2)に結合するための結合要素を有する捕捉プローブと相補的な予め合成されたプローブ(TP1)である。第1標的成分は、そのまま使用できる形で提供されるため、そのような実施形態は消費者にとって非常に簡便である。
【0124】
そのような2小片(two piece)アプローチのためのサンプルプロトコールは、以下のとおりである。
【0125】
1)商業的入手元、例えばGenometrix(3'アミン、5'チオールとして合成されている)からTP1を得る。
2)TP2をアミンとして合成する。
3)TP2を「バッファーA」中のヨード酢酸無水物と混合して、ヨードアセタート誘導体TP2を得る。
4)G25遠心カラム上でエタノール沈殿を行ない、TP2*だけを含有する排除体積を集め、小分子反応物を除去する。
5)TP1+TP2*を「バッファーB」と混合する。
6)G50遠心カラム上で分離する。
【0126】
本発明では、「バッファーA」は10mMクエン酸ナトリウム(pH7.0)よりなり、「バッファーB」は10mM炭酸水素ナトリウム(pH9.0)よりなる。
【0127】
3.リンカー
いくつかの場合には、標的プローブの2つの核酸ドメインを分離して標的プローブと溶液状態の核酸アナライトとの間の立体的相互作用を最小にするために、化学的リンカーが必要かもしれない。このリンカーは、核酸ビルディングブロックから構築することができる。例えば、配列Tn(n=1〜5)が好ましい。なぜなら、Tの伸長は、容易に合成でき、捕捉プローブ、他の標的プローブドメイン、または液相の核酸アナライトとの配列依存的相互作用の可能性を最小限に抑えるからである。
【0128】
しかしながら、該リンカーは、より好ましくは、オリゴ-エチレングリコラート結合体(-O-CH2-CH2-O-)nなどの不活性ポリマーから合成する。n=3の結合体が、標準的なホスホジエステル結合を介したオリゴ核酸への簡便合成のためのホスホルアミノダートとして、商業的に入手可能である。必要に応じて、1〜5個のリンカーを導入することができる。
【0129】
前記捕捉プローブセットに基づく本発明の具体例を、以下に詳しく説明する。ここでは、リンカードメインを、ホスホジエステル結合により標的オリゴヌクレオチドバックボーン中に結合したトリエチレングリコラートシントンの2回繰返し体として記載する。
【0130】
96ウェルマイクロタイタープレートの単一ウェル内に16個の捕捉プローブを有する汎用アレイを、図5cに示す。図5cは、4×4汎用アレイのマルチマイクロタイターウェルの近位CCDイメージを示すプリントされたコンピューターイメージである。図5cでは、該アレイ内の16個中15個のオリゴ要素において、標的特異的ハイブリダイゼーションが認められる。マルチウェル反応容器中の3個の分離した反応チャンバー中で同時に行なった15個の標的特異的ハイブリダイゼーションの結果を、近位CCDイメージャーから得たデジタルイメージから定量的に評価する。ハイブリッドは、抗ジゴキシゲニン抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびELFTM蛍光を用いて検出された、ジゴキシゲニンで末端標識されたオリゴヌクレオチド標的である。このアッセイ(Molecular Probes, Inc.から入手)では、該抗体がジゴキシゲニン基に結合し、アルカリホスファターゼを該結合標的に運搬する。該アルカリホスファターゼは、非蛍光性ELF前駆体を、UV照射により検出可能な蛍光性産物に変換する。
【0131】
図5dは、4×4汎用アレイの単一マイクロタイターウェルの近位CCDイメージを示すプリントされたコンピューターイメージである。図5dは、アレイ中の16個中4個のオリゴヌクレオチド要素(A2、B2、C2およびD2の位置)の標的特異的ハイブリダイゼーションを示す。望ましいことに、有意な交差反応が存在しないことに注目されたい。該交差反応は、設計において最大相違の制約を課すことにより特異的に最小限に抑制されている。ハイブリッドは、前記のとおり、抗ジゴキシゲニン抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびELFTM蛍光を用いて検出された、ジゴキシゲニンで末端標識されたオリゴヌクレオチド標的である。
【0132】
4.非核酸実施形態
迅速でハイスループットの薬物スクリーニングには、小分子汎用アレイを使用することができる。このフォーマットでは、表面結合捕捉プローブは、固相支持体に結合した分離したバイオサイト中に配置された小さなハプテンまたは分子よりなる。各バイオサイトは、特異的にアドレス可能な共有的に固定化された小分子(例えば、ハプテン、薬物およびペプチド)よりなる。これらの有機捕捉分子は、二重特異性リガンドと高い親和性で会合するように設計する。これらのリガンドは、小さな固定化有機分子(捕捉プローブ)と同類のドメインと、目的のアナライトと同類であるドメインとを含有する。アナライトと同類のドメインは、この標的に直接的に又はアナライト上の標識に会合することが可能である。
【0133】
二重特異性リガンドの具体例には、抗体:抗体、抗体:受容体、抗体:レクチン、受容体:受容体、二重特異性抗体、抗体:酵素、抗体:ストレプトアビジン、および抗体:ペプチドコンジュゲートが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
アナライトには、dsDNA、ssDNA、全RNA、mRNA、rRNA、ペプチド、抗体、タンパク質、有機酵素基質、薬物、農薬、殺虫剤および小有機分子を含めることができるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
逆に、巨大分子リガンドが捕捉プローブとなるよう、小分子汎用アレイ用のフォーマットを反対にすることができる。したがって、汎用アレイ(巨大分子汎用アレイ(Macromolecular Universal Array)は、固定化捕捉プローブとして、抗体、タンパク質、多糖類、ペプチド、受容体など(これらに限定されるものではない)の大きな巨大分子を含有することが可能である。同様に、巨大分子バイオサイトと特異的かつ高い親和性で会合する特有の(ユニークな)小分子タグを、アナライトと同類の種々のプローブに共有結合させる。これらの標識プローブは今度は、捕捉巨大分子および標的アナライトの両方と同類の二重特異性成分を表す。小分子(ハプテンまたは薬物)のいくつかの代表例を、後記表1に挙げる。これは、ハプテン、ステロイドホルモンおよび他の小分子薬物に対する市販の抗体の部分的な一覧にすぎない。これらの二重特異性小分子で標識される巨大分子には、例えば、抗体、受容体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、dsDNA、ssDNA、RNA、多糖類、ストレプトアビジンまたはレクチンが含まれる。特異的抗体が入手可能な48個の代表的化合物の部分的な一覧には、フルオレセイン、ジニトロフェノール、アンフェタミン、バルビツール酸誘導体、アセトアミノフェン、アセトヘキサミド、デシプラミン、リドカイン、ジギトキシン、クロロキニン、キニン、リタリン、フェノバルビタール、フェニトイン、フェンタニル、フェンシクリジン、メタンフェタミン、メタニフリン、ジゴキシン、ペニシリン、テトラヒドロカンナビノール、トブラマイシン、ニトラゼパム、モルヒネ、テキサスレッド(Texas Red)、TRITC、プリマキン、プロゲステロン、ベンダザック、カルバマゼピン、エストラジオール、テオフィリン、メサドン、メトトレキセート、アルドステロン、ノルエチステロン、サリシラート、ワルファリン、コルチゾール、テストステロン、ノルトリプチリン、プロパノロール、エストロン、アンドロステンジオン、ジゴキシゲニン、ビオチン、チロキシンおよびトリヨードサイロニンが含まれる。
【0136】
DNAに基づく、小分子に基づく又はタンパク質に基づく汎用アレイの一般的概念は、大きな多様性、および最終使用者にとっての利便性を可能にする。記載されている種々の形態は、多種多様なアナライト混合物の、高度に平行的で同時に行なえる多重化されたハイスループットのスクリーニングおよび分析を可能にする。
【0137】
工程3:分子標識方法
分子標識方法は、大きな近位領域の検出/イメージングに適合した標的分子の汎用標識(蛍光、化学発光など)に関連している。
【0138】
1.序論−通常の標識
標識は、当業者に公知の種々の多数の方法のうちの1つにより行なうことができる。一般に、核酸ハイブリッドの標識および検出は、一般的な2つのタイプ(すなわち、直接方法および間接方法)に分けることができる。直接方法は、DNAプローブに対するシグナル生成部分(例えば、同位体、発蛍光団または酵素)の共有結合または直接酵素取込みを利用する。間接標識ではハプテン(例えば、ビオチンまたはジゴキシゲニン)を使用し、それを核酸プローブ中に導入(化学的または酵素的のいずれかによる)し、ついでシグナル生成部分(例えば、発蛍光団、またはシグナル生成酵素、例えばアルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲートされたストレプトアビジンまたは抗体などの二次試薬で該ハプテンを検出する。
【0139】
例えば、会合/ハイブリダイゼーションの検出方法には、蛍光標識、放射性同位体標識、化学発光標識、生物発光標識、比色標識および電気化学発光標識が含まれるが、これらに限定されるものではない。多数の公知の標識技術(例えば、蛍光、放射性同位体、化学発光、生物発光および比色標識)は、ハイブリダイゼーション/会合溶液から過剰な標的を除去するために洗浄工程を必要とする。これらのいくつかを、以下で説明することにする。
【0140】
2.蛍光標識
蛍光標識は、いくつかの理由で本発明に適している。まず、放射性同位体などの潜在的に危険な物質が避けられる。さらに、蛍光標識法は、化学発光法より簡便である。なぜなら、後者は、溶液状態での酵素反応および検出を必要とするからである。最後に、蛍光標識アプローチは、標的分子1個当たり数百個の蛍光色素分子の結合を可能にする二次結合化学を利用することにより、最も安全な標識技術のなかで最高のシグナル−ノイズ比(SNR)が得られるように改変することができる。
【0141】
考慮される個々の蛍光色素には、臭化エチジウムなどの市販の物質、および関連化学成分において提案されている新規色素が含まれる。これらの標識物質は、近UV(300〜350nm)領域に強力な吸収バンドを有し、一方、それらの主発光バンドは、該スペクトルの可視(500〜650nm)領域内にある。したがって、これらの蛍光標識は、提案されている近位CCD検出アッセイに最適のようである。なぜなら、該装置の量子効率は、励起波長(337nm)では蛍光シグナル波長(545nm)より数桁低いからである。したがって、発光の検出の観点から言えば、ポリシリコンCCDゲートは、UV領域中の入射光の寄与を濾去するための組込み容量を有するが、提案されている蛍光リポーター基が生成する可視蛍光に対して非常に高感度である。UV励起に対するそのように本質的に著しい識別は、該CCDにより大きなSNR(100以上)を得るのを可能にする。
【0142】
3.電気化学発光標識
電気化学発光または電気的化学発光(ECL)標識(例えば、ルテニウム(Ru))は、過剰な標的を溶液から除去するための洗浄工程を必要とせず、非常に高感度である。簡単に説明すると、検出方法としての電気化学発光では、反応チャンバーの内部表面を導電体(例えば、金)でコーティングし、この導電表面にバイオサイトを結合させる(図6を参照されたい)。図6は、近位CCDイメージングによる反応容器内でのECLの実施を示す概要図である。1個のマイクロタイターウェル(96マイクロタイターウェルプレートのもの)を反応チャンバーとして使用して、前記のいくつかの方法(インクジェット、キャピラリーまたはフォトリソグラフィー/キャピラリー)の1つにより該マイクロタイターウェルの内部領域上にバイオサイトを固着させる。
【0143】
この導電性表面は陰極(正リード(positive lead))として作用し、陽極(負リード(negative lead))は、中央部から突出する電極を有する金属カップを反応チャンバー(マイクロタイターウェル)中に挿入することにより設ける。該電極は、それがハイブリダイゼーション溶液中に挿入されるように配置する。陽極にかける電圧は、光量子(光)の形態でエネルギーを放出する標識分子表面において電気化学的事象を誘発する。
【0144】
該特異的ECL標識(例えば、Ru)は、通常の手段により標的分子に結合させる。その標識された標的をハイブリダイゼーション溶液に加える。Ru標識標的とバイオサイトとの間でハイブリダイゼーションが生じたら(例えば、ハイブリダイゼーションが完了するのに十分な時間が経過した後)、電圧をかける。すると、バイオサイトと会合(ハイブリダイズ)したRu標識標的だけが発光し、検出されることとなる。Ru標識標的が検出されるためには、それは陰極の近傍に存在している必要がある。したがって、バイオサイトと会合していない残存した過剰のRu標識標的は、発光しないことになる。
【0145】
ECL反応容器の概要を図7に示す。図7においては、薄膜基体(例えば、プラスチック、ガラスなど)に導電体(例えば、金、白金など)でパターンを付して(パターン化)、反応チャンバー内に電極を形成させる。つぎに、前記のいくつかの方法(インクジェット、キャピラリーまたはフォトリソグラフィー/キャピラリー)の1つで、該パターン化電極上にバイオサイトを固着させる。最後に、得られた薄膜基体を、反応チャンバーの底として機能する反応容器上に結合させる。
【0146】
4.ランタニドキレート標識
表面に非特異的に吸収されてシグナルバックグラウンドを増加させる傾向があることが知られているエチジウムに基づく蛍光リポーター基に代わる方法として、本発明では、芳香族ランタニド(Ln)キレーターを使用することができる。ランタニドイオン(特に、TbおよびEu)は、1に近い蛍光収率、および1年〜100μ秒までの発光寿命を有するが、それらは光を弱くしか吸収しないため、好ましくない発光色素である。しかしながら、適切に選択された芳香族ドナーによりキレート化されると、エネルギー転移が生じ、高い総発光収率を得ることができる。DPA(ジピコリン酸)は、そのような芳香族Lnキレーターの典型例であり、優れた光物理学的(photophysical)特性を有する。しかしながら、その吸収極大は260nm付近であり、これはDNA吸収バンドと重なり、したがって近位CCDアプローチには不適当である。そのため、適当な吸収特性を有し標的分子に直接的または間接的に結合する能力を有する修飾DPA誘導体の合成を開発した。
【0147】
Lnイオン1個当たり3個のDPA等価体が結合するため、好ましいアプローチは、該修飾DPAをポリマー性格子(これは、接近したキレーター間隔を与え、有用なDNAまたはRNA結合特性を有するように設計することが可能である)に結合させることである。これらの結果は、縮合(fused)二環性DPA誘導体が、好ましい候補であることを示唆している。
【0148】
図8は、ランタニドキレーターを示す化学式である。図8に例示する2つのクラスのポリマー性格子を使用して、どちらも104の分子量範囲の合成ポリペプチドの使用に基づいてDPA誘導体を結合させることが可能である。合成は、単純なDPA−ペプチドコンジュゲートに関して記載されているとおりに行なうことができる。第1ポリマーは、シトシンとのアミノ交換反応を介してRNAに共有結合させるために使用する。このペプチド格子は、単純なポリ-L-lysであることが可能である。第2のアプローチは、修飾DPAをDNA結合性ペプチド(これは、非共有的核酸結合により該LnキレートをRNAへ運搬するために使用することができる)にカップリングさせることを含む。例えば、ペプチドをLys3Arg1ランダムコポリマー(平均分子量104)として溶液中で合成することができる。Lys残基を該修飾DPAコンジュゲートに変換した後、ポリアルギニンの公知のヘリックス選択性を利用して複数のArg等価体と会合させることにより、RNA結合を駆動させることができる。臭化エチジウム(EB)に関しては、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーを維持するために洗浄した後、非共有的キレーターコンジュゲートを加えることができる。
【0149】
工程4.検出系
検出系は、大きな近位領域(proximal large area)の検出器/イメージャーを使用する、反応チャンバーを含有する反応容器中での平行的な検出および/またはイメージングに関連している。
【0150】
1.概略的説明
多重化分子分析系のハイブリダイゼーション法の後、反応容器の反応チャンバー中の各バイオサイトに結合したハイブリダイズした標的分子の量を、定量的に測定しなければならない。本発明においてハイブリダイゼーションを定量するための好ましい検出/イメージング系は、後記で更に詳しく説明するとおり、近位荷電結合素子(CCD)検出/イメージングである(固有の汎用性(化学発光、蛍光および放射性同位体標的分子リポーター基に適応する)、ハイスループットおよび高感度のためである)。
【0151】
多重化分子分析系に使用する検出/イメージング装置は、複数の固体イメージング装置、例えばCCDのアレイ、フォトコンダクター(光導電体)オンMOS(photoconductor-on-MOS)アレイ、フォトコンダクターオンCMOSアレイ、電荷注入装置(CID)、フォトコンダクターオン薄膜トランジスタアレイ、アモルファスシリコンセンサー、フォトダイオードアレイなどを含むレンズ無しのイメージングアレイよりなる。該アレイは、サンプル(バイオサイトにハイブリダイズした標的分子)の近くに固着させ、サイズにおいては反応チャンバーと同等である。このようにして、サンプルとイメージングアレイとの間にレンズを1個も使用しなくても、結合した標的分子の空間的分布の比較的大きなフォーマットデジタルイメージが得られる。この装置は、
1)高感度(サブアトモル(subattomole)のDNAの検出)、
2)ハイスループット(イメージ収集の完了に数秒)、
3)広いダイナミックレンジにわたる直線的な応答(3〜5桁)、
4)低いノイズ、
5)高い量子効率、および
6)速いデータ収集
をもたらす。
【0152】
さらに、図1に例示するとおりイメージングアレイをサンプルの近くに配置することにより、収集効率が少なくとも10倍(例えば通常のCCDカメラで見出されるレンズに基づく任意の技術の100倍以上)改善される。したがって、サンプル(発光体または吸収体)は、検出器(イメージングアレイ)にほぼ接触するため、通常のイメージング用光学的部品、例えばレンズおよび鏡が不要になる。無レンズCCDアレイ装置は、光量子およびX線粒子の両方に対して非常に高感度であるため、この装置は、放射性同位体、蛍光および化学発光標識分子を検出し定量的にイメージングするために使用することができる。したがって、放射性同位体から蛍光色素にわたる多数の分子標識技術と共に、単一のイメージング装置を使用することができる。
【0153】
本明細書に開示する検出/イメージング装置の発明は、2つのサブクラスに分類することができる。第1のサブクラスは、サンプルサイズに匹敵する比較的大きなフォーマット領域内に複数のイメージング装置を配置する静的なプラットフォームを含む。
【0154】
第2のサブクラスは、イメージング装置のアレイまたはサンプルのいずれかをお互いに関して移動させることにより比較的大きなフォーマットのサンプルをイメージングするためのイメージング装置のより小さなセットを可能にする動的なプラットフォームを含む。
【0155】
したがって、検出/イメージャーの発明の動的な実施形態は、一般に、比較的大きなフォーマットにおけるサンプル(標的分子)からの/による粒子放出の空間的および/または時間的分布の超高感度の検出、高い分解能の定量的デジタルイメージングおよび分光学の方法および装置に関する。本発明の装置は、以下のものを含む:
a)検出される粒子分布の比較的大きなイメージを、光学的レンズを使用することなく得るための、大きな領域の検出アレイ、
b)効率的なイメージングのための方式でセンサーアレイまたはサンプルのいずれかを移動させるためのスキャナー、
c)サンプルを励起したり又はサンプルによる吸収を得るためのエネルギー源。
【0156】
最適には、サンプルイメージに対する検出アレイサイズの比率は、静的フォーマットでは1、動的フォーマットでは1未満である。
【0157】
多重化分子分析で使用する近位検出器/イメージャーの電子的な概要図を、図9に示す。図9は、多重化分子分析系の電子的スキームを示す概要図である。図9に例示するとおり、反応容器は、センサーアレイに結合した光ファイバー面板上に直接配置する。該面板は、ルーチンなクリーニングに適応するためのセンサーの分離、および冷却センサー運転下での超高感度検出のための熱的な分離をもたらす。また、該光学的面板は、選択的コーティングを用いることにより励起照射を濾過するように機能しうる。該センサーアレイは、複数のより小さなセンサーよりなり、該複合アレイが表面領域に接近するようになっている。該励起源は、標的分子に結合した蛍光リポーター基を励起するように機能する。選択したリポーター基に応じて、該励起源は、UVランプ、レーザーまたは当業者が一般に用いる他の光源となることが可能である。該センサーアレイ駆動回路は、センサー内のピクセル電極を計時し、バイアスし、ゲートすることを含む。該冷却回路は、非常に低い熱雑音をもたらすことにより超高感度検出を可能にするためにセンサーアレイの下の熱電冷却器を制御する。基本的には、使用者が運転の必要温度を選択し、フィードバック回路を介して、該センサーアレイは、そのような温度に一定に維持される。該イメージ受信回路は、センサーアレイからデジタルイメージを得るためのものであり、前置増幅、増幅、アナログ−デジタル変換、フィルターリング、多重化、サンプリングおよびホールディング(holding)ならびにフレーム保持(grabbing)機能を含む。最後に、データ処理装置は、必要なパラメーターを分子分析の結果に与えるための、定量的イメージングデータを有する。また、デジタルイメージを表示するために、コンピュータディスプレイが含まれる。
【0158】
2.センサーアレイ装置
本発明の検出/イメージングセンサーアレイの好ましい実施形態は、図10A〜10Cに例示するとおり、大きなフォーマットモジュール中に集合した複数のCCDアレイ(CCD1...CCDN)よりなる。図10Aは、それぞれのピクセルゲート16の下部に電子34を収集する、標識された生物学的サンプル32にさらされた複数のピクセルを有するCCDアレイを示す。個々のCCDアレイは、接近して整列されており、図10Bに示すリニアアレイ型または図10Cに示す二次元の行列型の比較的大きな(1cm2以上)フォーマットイメージングセンサーを形成するように特定の形態で相互連結されている。
【0159】
検出スループットと装置のコストとの間の最良のトレードオフ解析を決定するために、多数のCCDのタイル張り(tiling)方法を検討することが可能である。ウェーハの大きさのいくつかのCCDを有する、大きなフォーマットでタイル張りされたアレイは、数秒以内で反応容器中の全バイオサイトの同時検出をもたらすであろう。しかしながら、大きな(8.5×12.2cm)CCDセンサーアレイのコストは法外なものとなる可能性がある。したがって、タイル張りされたアレイのコストを有意に減少させるためのより小さな装置の使用を比較検討する一方、該全多重化分子分析系におけるその他の方法によるスループットと同等のものを得るよう、工学的な譲歩を行なうことが好ましい。
【0160】
図10Aに示すとおり、Siウェーハ/基体12上の種々の酸化物層14を成長させパターン化することにより通常の方法で、各CCDアレイ(CCD1...CCDN)を形成させる。ついでゲート絶縁体または電解酸化物(field oxide)14上にポリシリコンまたは他の透明ゲート材料を固着(蒸着)させることにより、CCDゲート電極10を形成させる。ついで誘電体層またはポリマー層18(好ましくは、窒化ケイ素またはガラス、SiO2またはポリアミドなどの光透過性材料のもの)を、電極16の上に形成させる。
【0161】
好ましくは、標識分子の実施形態においては、点線17で示すフィルター(これは、アルミニウムまたはタングステン金属格子、または誘電体多層干渉フィルター、または吸収フィルターから形成されていることが可能である)を、誘電体層18中、表面と金属電極16との間に形成させる。このフィルターは、励起照射を遮断しサンプル20からの二次電子放出を通過するように適合させる。静的プラットフォームの実施形態では、センサーモジュールは、サンプルに対して固定されたまま維持される。したがって、比較的大きなイメージングフォーマットを達成するためには、図10Bおよび10Cに例示するとおり、複数のイメージング装置CCD1...CCDNをモジュール中に配置すべきである。それぞれ特定の用途を有する複数のモジュールを促進するために、容易な設置が可能となるよう該モジュールをパッケージングすることが可能である。種々のタイル張り方法が文献記載されており、それらを用いて装置間の断絶を最小限に抑えることが可能である(例えば、Burkeら, “An Abuttable CCD Imager for Visible and X-Ray Focal Plane Arrays”, IEEE Trans On Electron Devices, 38(5):1069 (1991年5月)に記載されている)。
【0162】
図10Aに例示するとおり、反応容器20は、CCDアレイセンサー10の近くに配置する。サンプルは、外部エネルギー源により励起することが可能であり、あるいはエネルギー粒子または照射を放出する放射性同位体で内部標識することが可能であり、あるいは蛍光性および化学発光性物質で標識した場合には(矢印30)、光量子をサンプルから放出させることが可能である。逆に、それらの存在を確認するために、直接吸収を用いることが可能である。この場合、検出器上の照明照射(illuminating radiation)の不存在が、ある特定の分子構造の存在を示すことが可能である。好ましくは、粒子放出を透過させる面板により、サンプルをCCD検出器から物理的に分離する。
【0163】
サンプルから生じた又はそれにより伝達されたアステリスク32で示されるエネルギーhνの荷電粒子または照射がCCDゲート16上に入射した場合には、CCD検出およびイメージングアレイCCD1...CCDNはシリコン12(図10Aを参照されたい)中に電子孔対(electron-hole pairs)を生成する。あるいは、感度の増加のために荷電粒子がバルクシリコン12に入射するバックイルミネーション(back illumination)フォーマットとして、CCDを構築することができる。ついで、放出した光電子34を、隣接するCCDゲート16の下で集め、通常の方法でディスプレイ上で順次読取る。
【0164】
半導体式検出およびイメージングセンサーとしては、シリコンに基づくCCDが好ましい。その主な理由は、該装置が、1〜10,000Åの広い波長領域にわたり高感度である点にある。すなわち、シリコンは、可視スペクトルから軟X線までの電磁波に対して非常に応答性である。特にシリコンでは、3,000〜11,000Åの波長領域で電子孔対を生成するのに、わずか1.1eVのエネルギーしか要求されない。したがって、可視光では、CCDゲート16上に入射した単一の光量子は、該ゲートの下に単一の電荷パケット(electron charge packet)を与え、一方、軟X線では、単一のβ粒子(典型的にはKeV〜MeVの範囲)は、数千から数万個の電子を生成するであろう。したがって、シリコンCCD装置は、低エネルギーのαまたはβ放出性同位体(3H、14C、35S)および高エネルギーのαまたはβ放出性同位体(32P、125I)に関する超高感度の検出およびイメージングをもたらす。そのため、該CCDは、可視的イメージャー(蛍光的および化学発光的に標識された分子サンプルに適用可能である)であると同時に粒子分光器(放射性同位体で標識されたサンプルおよび外部X線で照射されたサンプルに適用可能である)でもある。したがって、該CCDは、同一イメージにおける同時的なイメージングおよび分光測定をもたらす。
【0165】
各ピクセルまたはゲート16の下に集められた電荷パケットが、電子数個から百万個の範囲に及ぶことが可能であるため、該CCDは、高感度であることに加えて、広いダイナミックレンジ(5桁まで)を付与する。さらに、検出応答は、分光学的機能を促進する広いダイナミックレンジにわたり直線的である。なぜなら、集められた電荷の量は、入射光量子エネルギーに正比例するからである。したがって、写真フィルムにおける良く知られている問題点である相互分解(reciprocity breakdown)は、該CCDにおいては全く生じない。
【0166】
3.スキャニング機構
より小さいサイズでより安価なセンサーアレイを有する反応容器をイメージングするためには、それがスキャニング機構によりセンサーアレイを横切って移動しながら各カラム(行)ごとに反応容器をイメージングすることができる。断絶を最小限に抑えるために、カラムのモジュール中に複数のイメージング装置を配置することができる。また、スキャニングは、大きなファーマットサンプルの全領域にわたり連続的な高分解能イメージングを得るために意図的重複(intentional overlapping)により行なうことができる。
【0167】
実施例1
汎用アレイを使用する3個のNHS固定化ハプテンの差次的検出
この実施例では、図18および19に例示する小分子汎用アレイの実施化を示す。図18は、Hamilton 2200 Microlabロボットを使用してガラススライド上にプリントされるマイクロアレイの図式的配置である。この図式的配置は、ガラス基体上の3つの分離した共有的に固定化されたハプテン(例えば、ジゴキシゲニン、フルオレセインおよびビオチン)の相対的な空間的位置/アドレスを例示している。該ロボットは、10nL容量の各活性化ハプテン(N-ヒドロキシスクシンイミドで活性化されたもの)をアミノシラン化ガラス表面上に固着させて4×4マトリックスマイクロアレイを作製することにより、該アレイをプリントする。図示されているとおり、各ハプテンは該ロボットにより4回固着される。例えば、ジゴキシゲニンは、アドレス位置A1、B2、C3およびD4で示されるアレイアドレスに固着される。同様に、図示されているとおり、フルオレセインはアドレス位置A4、B3、C2およびD1に、ビオチンはB2、B3、B4およびC3に見出される。バッファーブランク(対照)は、A2、A3、D2およびD3の位置に固着される。これらのバッファーブランクは、ハプテン検出コンジュゲートの存在下、CCD近位検出器上でシグナルを生成しないはずである。
【0168】
これらの共有的に固定化されたハプテンマイクロアレイを、抗体/酵素コンジュゲートなどの適当な二重特異性分子(例えば、ハプテン認識部位および酵素リポーター部位)と共にインキュベートし、ついで適当な化学発光性基質を検出すると、図18に示す図式的アドレスから予想されるイメージ「パターン」がCCD検出器上に得られるはずである。この実施例では、特定の発光性基質分子を、該アレイ中の予想可能/アドレス可能なバイオサイトに、個別的にあるいは多重化形態で局在させる。
【0169】
簡単に説明すると、前記ハプテンマイクロアレイを共有的に固定化するために、以下のプロトコールを開発した。まず、22×22mmの正方形のガラス顕微鏡カバースライド(厚さ150μm)数枚を、ALCONOX界面活性剤溶液を含有する容器中で洗浄し、ついで暖かい水道水を含有する清潔な容器に移して、該界面活性剤を濯いだ。この濯ぎ工程の後、別々の2回の簡単な濯ぎを、まず100%アセトンを含有する容器中で行ない、ついで該スライドを100%メタノールの溶液中の濯ぎ液に移した。該スライドを、最後に1回、脱イオン水中で濯ぎ、微量の有機溶媒を除去した。ついで、清潔なガラススライドを37℃でオーブン乾燥した。乾燥後、それらの清潔なスライドの表面を、真空オーブン中、3-アミノプロピルトリメトキシシランの溶液の真空蒸着(固着)により誘導体化した。該スライドを金属トレイ中、リントフリーの清潔な紙タオル上に寝かした。1mlの3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Aldrich)と3mlの乾燥p-キシレン溶媒とを小さなガラスシャーレ中で混合することにより、3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびキシレンの1:3溶液を新たに調製した。該皿をアルミホイルで覆い、該ホイル中に小さな針穴をあけた。この溶液を、該ガラススライドと共に該トレイ中に配置した。ついで該トレイをアルミホイルで覆い、25"のHg真空下、75℃のNAPCO真空オーブン中に一晩放置した。翌日、該アミノシラン化ガラススライドを該真空オーブンから取り出し、使用するまで乾燥した場所で保存した。
【0170】
ハプテンマイクロアレイを自動(ロボット)的に分注しプリントするために、4個の別々の活性化ハプテン溶液を、以下のとおり調製した。まず、以下の化合物の約1mgを別々の秤量ボート(weigh boat)中に計りとった:フルオレセイン-5-(および-6)-カルビキサミド)へキサン酸、スクシンイミジルエステル、ついで1mgのスルホスクシンイミジル6-(ビオチンアミド)ヘキサノアート、ついで1mgのジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-γ-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル。各活性化ハプテンを100μLのDMSO中に溶解した。ついで50ulの各ハプテンを、950ulの0.1M Na2HCO3/NaCO3バッファー(pH8.05)を含有する別々の試験管中で混合した。また、50μLのDMSOを該バッファー中に含有するブランク溶液を、前記アレイ上に分注するための対照として調製した。それらの4種の溶液(100μL)のそれぞれを、マイクロタイタープレートの16個のウェル中に入れた。ついで該マイクロタイタープレートをHamilton 2200 Microlabロボット上に配置し、アミノシラン化ガラスカバースライド上の、図18の図式的配置により示される既知アドレス位置に、該ロボットの分注用針により、10nLのアリコートを収集・分注した。
【0171】
コンピュータ制御されたロボットの針による4個の別々(同一)のガラスカバースライドの微小流体(microfluid)分注の後、該アレイを15分間風乾した。該固定化ハプテンを検出するために、1×TBS+0.1% TweenR20(Tris-Buffered Saline, 100mM Tris-HCl, 150mM NaCl, pH7.5)の10ml中、該ガラススライドを10分間濯いだ。ついで個々のスライドを適当なコンジュゲート希釈液と共にインキュベートした。1×TBS+0.1% TweenR20中の1:5000希釈のステレプトアビジン:西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート10ml中で該スライドの1つをインキュベートすることにより、イメージAを得た。1:5000希釈の抗ジゴキシゲニン:西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート中で該スライドの1つをインキュベートすることにより、イメージBを得た。1:1000希釈の抗フルオレセイン:西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート中でインキュベートすることにより、イメージCを得た。最後に、第4のスライドを前記希釈度の全3個の西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートと同時にインキュベートすることにより、イメージDを得た。コンジュゲートのインキュベートの後、過剰なコンジュゲートを除去するために、10mlの1×TBS+0.1% TweenR20中プラットフォームシェーカー上での10分間の濯ぎにより全スライドを洗浄した。ついで、製造業者の推奨に従い新たに調製した化学発光基質(Pierce Chemicalから入手したSuperSignalTM Substrate)200μLを加えることにより、該スライドをイメージングした。基質を含有するスライドを、前記の近位CCD検出器上、室温で10秒間の積分時間によりイメージングした。
【0172】
図19Aは、ストレプトアビジン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、ビオチンでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。図19Aにおいて、イメージAは、ビオチンに特異的なストレプトアビジン:HRPコンジュゲートと共に小分子の4×4汎用アレイをインキュベートすることにより得た。このイメージから認められるとおり、ビオチンを含有することが既知のアドレスB1、C1、B4およびC4およびC4を有するバイオサイトだけが(図18を参照されたい)、化学発光シグナルの近位CCDイメージングを用いて検出されている。これらのバイオサイトの特異的アドレッシング(addressing)は、「箱型」のイメージングパターンを与える。
【0173】
図19Bおよび19Cに示すとおり、イメージBおよびイメージCは、示されている抗体コンジュゲートと共にインキュベートした2つの追加的な4×4マイクロアレイである。図19Bは、抗ジゴキシゲニン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、ジゴキシゲニンでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。図19Bで認められるとおり、ジゴキシゲニンを含有することが既知のアドレスA1、B2、C3およびD4を有するバイオサイトだけが(図18を参照されたい)、化学発光シグナルの近位CCDイメージングを用いて検出されている。図19Cは、抗フルオレセイン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、フルオレセインでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。図19Cで認められるとおり、フルオレセインを含有することが既知のアドレスA4、B3、C2およびD1を有するバイオサイトだけが(図18を参照されたい)、化学発光シグナルの近位CCDイメージングを用いて検出されている。したがって、これらの2つの小分子からのシグナルは、図18に示されるとおりの予想される「対角線」を与える。
【0174】
さらに、図19Dにおいては、イメージDは、単一の4×4アレイを全3個のコンジュゲートと同時にインキュベートすることによる、単一のウェル中での全3個のハプテンの同時検出を示す。図19Dは、抗フルオレセイン、抗ジゴキシゲニンおよびストレプトアビジン:HRPコンジュゲートを使用して検出されたフルオレセイン、ビオチンおよびジゴキシゲニンバイオサイトの同時イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。このイメージは、A2、A3、D2およびD3のウェルがブランクであることから予想される「H」型のパターンを与える(図18を参照されたい)。
【0175】
実施例II
用途:マイクロプレート中でのマイクロアレイ
個々の反応容器として働く複数ウェルのマイクロプレートに適応しうる該多重化分子分析系のいくつかの適用を、以下で詳しく説明する。しかしながら、新規性は、各ウェル内の複数のバイオサイトにある。すなわち、複数ウェルのマイクロタイタープレート中の各ウェルは、N個(Nは2〜1,000の範囲である)のバイオサイトを含有する。その上限は、近位CCD検出器/イメージャーと共に使用するマイクロタイタープレートの底部基体により課される分解限界に基づく。
【0176】
例えば、各ウェルまたは反応チャンバーは、図11に示すとおり、96個のバイオサイトを含有することが可能である。図11は、マイクロプレート反応容器内のマイクロアレイを示すプリントされたコンピューターイメージである。1つの単一反応チャンバーを挿入図として示す。したがって、該反応容器は、マイクロプレート1個当たり累積的に9,216(96×96)個のハイブリダイゼーション実験が可能なマイクロプレート内のマイクロアレイより実質的になり、100:1の多重化能を有する。
【0177】
近位イメージングと共に使用する特定の多重化マイクロタイタープレート反応容器は、通常の底無しマイクロタイタープレートに薄膜(典型的にはガラスまたはプラスチック)を結合させることにより作製する。現在までに試験した市販のすべてのマイクロタイタープレートは、底部基体の厚さおよび組成のため、近位イメージングには不適当である。
【0178】
バイオサイトは、該底をプレートに結合させる前または後に、開示されているいくつかの方法の1つにより固着させる。どちらの場合にも、個々のバイオサイトを含むプローブ分子をガラスまたはプラスチック表面に結合させなければならない。
【0179】
好ましい実施形態では、薄い(50〜300μm)ビニル基体を、ガラス基体の場合と同様に、シランでアミノまたはエポキシ官能基化する。薄いビニル基体を、65℃でポリビニルアルコールの1〜2%水溶液に浸す。ついで、吸着したポリビニルアルコールを、エポキシシランまたはアミノシランと反応させて、ポリマー性ヒドロキシル基を官能基化する。そのような光学的に透明なビニル基体は、近位CCD検出器上に入射する大量のUV励起源は遮断するがより長い波長(例えば、500〜650nm)は効率的に通過させるという顕著な利点を有する。これは、そのような波長領域で発光する標識された検出分子に対する、より高い感度を可能にする。
【0180】
ガラスに対する核酸プローブの結合には、Southernら(U. Maskosら, Nucleic Acids Res (1992) 20:1679-84; S.C. Case-Greenら, Nucleic Acids Res (1994) 22:131-36; およびZ. Guoら, Nucleic Acids Res (1994) 22:5456-65)が記載している良く知られているエポキシシラン法(図12を参照されたい)を用いる。図12は、ガラスおよびポリプロピレン表面への結合化学を示す概要図である。3'アミン修飾プローブでは、理論上の充填密度限界に近い1011分子/mm2の共有表面密度を得ることができる。アミノ修飾ポリプロピレンは、ガラス基体の簡便な代替物である。なぜなら、それは、安価であり300nm以上で光学的に透明だからである。アミン修飾ポリプロピレンは、アセトニトリル中で濃無水コハク酸で処理することによりカルボン酸修飾表面に変換することができる。ついでアミン修飾プローブを、H2O中で標準的なカルボジイミド化学により、この表面にカップリングさせて、109/mm2に近い密度でプローブを得る(図12を参照されたい)。
【0181】
実施例III
用途:多重化診断
該多重化分子分析系は、イムノアッセイおよびプローブに基づく診断に用いることができる。イムノアッセイでは、通常のELISAアッセイのスループットを、患者のサンプルを単一の反応チャンバー(ウェル)内で多数の抗原/抗体に同時に応答させることが可能な多重化マイクロプレートフォーマットで増加させることができる。
【0182】
同様に、プローブに基づく診断では、患者のサンプルに由来する標的分子を、遺伝病または感染症を診断するための多数のバイオサイトを含有する単一のウェル中に分注することができる。例えば、嚢胞性線維症の96個の公知突然変異に相補的な一本鎖核酸プローブを、マイクロプレート中の単一のウェル内に配置する。患者のDNAサンプルとのハイブリダイゼーションに際して、近位CCD検出器/イメージャーから得られる生じた結合パターンは、そのような公知突然変異の存在を示す。
【0183】
また、ハイスループットの、プローブに基づく感染症診断のために、該系を使用することができる。この場合、マイクロタイタープレート中の単一のウェル内のバイオサイトのアレイは、公知ウイルス株に相補的なDNAプローブを含むことが可能である。例えば、単一のウェル(反応チャンバー)内で多数の性的感染症を診断するために、プローブ(バイオサイト)のパネルを配置する。その結果、単一のマイクロタイタープレートでは、非常に迅速で費用効果的な診断試験プラットフォームを得るために、多数の患者のサンプルを多数のプローブのパネルに対してそれぞれ同時に応答させることができる。
【0184】
汎用アレイ(Universal Arays)は、単一のPCR鋳型内の複数の点突然変異の分析および検出に完全に適している。単一のPCRアンプリコン反応から複数の点突然変異の分析を試みる際に、しばしば、技術的制約に遭遇する。リボヌクレアーゼ保護アッセイ、SSCP、CLEAVASETMなどのほとんどの点突然変異分析技術は、アンプリコンまたはDNA鋳型1個当たりの単一の点突然変異の検出に良く適合し、長時間を要するゲルに基づく分離技術を必要とする。高価で長時間を要するゲル分離工程を行なわずに済む、単一のPCRアンプリコン内の多数の点突然変異の迅速な同時検出は、これらの技術の能力を十分に超えるものである。その他のより新しい、ゲルに基づかない技術(例えば、TAQMANTM)もまた、単一反応容器内での多重化分析には十分には適合しない。図13は、単一座における突然変異分析(遺伝子型決定)のための汎用アレイの使用の概念を例示する。図13は、汎用点突然変異スキャニングによる遺伝子型決定を示す概要図である。単なる例示として、図13では、このタイプの分析を例示するために単一の点突然変異のバイオサイトを用いているが、これは、図14に例示のものとおそらく同程度に容易に単一のPCR鋳型上の25個の異なる座上で同時に行なうことが可能であろう。
【0185】
簡単に説明すると、図13に示すとおり、PCR鋳型を、標準的な配列決定用混合物を含有する4本の別々の試験管(各dNTPにつき1本)内に分割(アリコート化)する。ただし、該混合物中には、ジデオキシヌクレオチドが含まれていない。その代わりに、それらの4個の別々の混合物のそれぞれにおいて、単一のα-チオdNTPを使用する。また、各混合物は、PCR鋳型上の突然変異部位から離れた唯一のヌクレオチドにアニーリングする5'末端の汎用配列または「ハンドル」を有する単一の標識プライマーを含有する(注:ユニークな汎用配列をそれぞれが有し鋳型上の異なる座と相補的である複数のプライマーは、容易に得られる)。標準的な加熱サイクル伸長反応を完了させた後、各試験管をヘビ毒ホスホジエステラーゼと共に短時間インキュベートする。配列決定反応中に伸長しなかったプライマーおよび鋳型だけが、この3'特異的エキソヌクレアーゼによる消化を受ける。3'チオホスファートエステル結合を含有する突然変異プライマーは、消化に対して非常に抵抗性である。
【0186】
この特定の実施例では、Tが該PCR鋳型上の次の相補的塩基であるため、Aの反応だけが伸長した。ついで、それぞれの消化された配列決定反応混合物を今度は、汎用プライマー配列に相補的な同一の固定化マイクロアレイを含有する4個のマイクロタイターウェルにハイブリダイズさせる。この場合、A反応混合物にハイブリダイズしたマイクロタイターウェルだけが、汎用ハンドルに相補的なバイオサイト座において陽性シグナルを与える。このようにして、単一のPCR鋳型上の点突然変異に関して96個までの座をプローブすることが可能であろう。PCRアンプリコン中の両方の鎖は、該鋳型上の同一ハイブリダイゼーション座に関して完了しなくても多数のプライマーがアニーリングするためのより多くの機会が得られるよう、このように同時に「スキャン」することが可能であろう。図13では、「5-DIG」は、5'ジゴキシゲニン標識を意味する。
【0187】
単一の標的分子内での多重化と低い標的濃度との両方が問題となるプローブに基づく診断では、汎用アレイと一緒になったマイクロタイターウェルの概念においてマイクロタイタープレートを使用するPCRまたはLCRでの増幅は、顕著な利点を有する。好ましい実施形態では、汎用「ハンドル」は、ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ連鎖反応のプライマーの5'末端上で直接合成することができ、in situ加熱サイクリングの後、該増幅産物を96個の別々のバイオサイトに同時にハイブリダイズさせることができる。このフォーマットは、検出診断上の他の利点を有する。例えば、サンプルウェルを周囲環境に開放またはさらさなくても、増幅産物の均一検出が可能である。
【0188】
図14は、マイクロタイターに基づくスループット遺伝子型決定を示す概要図である。簡単に説明すると、図14は、マイクロアレイを使用するハイスループット遺伝子型決定の概念を例示している。実際には、96個の異なる患者サンプルから単離したゲノムDNA鋳型を使用して、96個の別々のPCR増幅反応を行なうことになる。この図は、これらの反応から自動的に予め精製した96個のPCR鋳型から出発する遺伝子型決定の概念を例示している。それらの96個のウェルのそれぞれからの各精製PCR産物を、384ウェルのプレートの4個の別々のアリコート/ウェルに分割する。この新たなプレート中の各ウェルは、予め調製された配列決定バッファー混合物、25個のプライマー、耐熱性DNAポリメラーゼ、および4個のαチオ-dNTPの1個だけを含有するであろう。該プライマーは、遺伝子型決定するヌクレオチド座から僅か1ヌクレオチド離れたPCR鋳型に並列的にアニールするであろう。それらの4個のウェルのそれぞれにおいて、該配列決定混合物中の含まれているヌクレオチドに隣接して並列したプライマーが伸長するであろう。384個の反応の同時伸長の後、それらの384ウェルのそれぞれをヘビ毒ホスホジエステラーゼでin situ消化する。単一の塩基により伸長した各反応中のプライマーだけが、消化から保護される。他のすべてのDNAはモノヌクレオチドに分解する。エキソヌクレアーゼを短時間熱変性させた後、それらの全ウェルの内容物を、各ウェルの底に結合した5×5マイクロアレイとしてマイクロアレイ化された配列相補体を含有する新たな384ウェルマイクロタイタープレトに自動的に移す。消化されていない25個のプライマーのそれぞれは、該アレイ中のその対応する相補体にハイブリダイズし、各座における遺伝子型を決定するためにCCD検出器上でイメージングされるであろう。
【0189】
図15は、3個の異なる座において同時にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行なうための、この均一系多重化アプローチを例示している。図15は、多重化PCRアンプリコンの均一in situマイクロアレイ検出を示す概要図である。図15は、マイクロタイターに基づくマイクロアレイを用いる、PCR産物の特定の多重ハイブリダイゼーション検出を例示している。簡単に説明すると、この図では、3個の別々の増幅座が、同時に検出されている。各座(例えば、PCR LOCUS1)は、増幅されたPCR産物の末端を定める特別に修飾された2個の増幅プライマーにより定められる。そのペア(対)中の一方のプライマーは、フルオレセインなどの蛍光的に検出可能な標識を含有する。そのペア中のもう一方のプライマーは、2個のドメイン(1つは、単一のマイクロタイターウェルの底にアレイ化された捕捉プローブに相補的なユニーク汎用配列であり、もう1つのドメインは、鋳型増幅に特異的なものである)を含有する。該汎用配列を5'-5'連結で増幅プライマーに結合させ、それにより、目的の領域を該ポリメラーゼが増幅している際に、それがこの特別な連結部を飛び越えずに、該汎用アレイが一本鎖のモチーフとして残されるようにする。増幅されるサンプルウェル中の或る特定の鋳型が、両方のプライマー座(すなわち、検出部位および捕捉部位)を含有する場合には、CCD近位検出器により汎用捕捉アレイの相補的メンバーに対して同時にハイブリダイズし検出されうるPCR産物が生成することになる。各ウェルの底において汎用アレイのメンバーにハイブリダイズしたPCRアンプリコンだけが検出器の近くに存在するため、該アッセイは、ハイブリダイズしたアンプリコンを検出するための特別な分離工程を必要とせず、したがって事実上均一系になる。
【0190】
同様に、図16は、ギャップ(Gap)リガーゼ連鎖反応(G-LCR)によるこの多重化概念を例示している。図16は、多重化ギャップ・リガーゼ連鎖反応産物の均一in situマイクロアレイ検出を示す概要図である。ハイブリダイゼーション事象を均一的に検出する能力は、特異的バイオサイトと近位で結合した分子だけが検出器によりイメージングされ得ることによりもたらされる。図16は、マイクロタイターに基づくマイクロアッセイを用いる、ギャップ・リガーゼ連鎖反応産物の特定の多重化ハイブリダイゼーション検出を例示している。同様に、PCR産物に関して既に記載したとおり(図15を参照されたい)、この図は、3個の別々の連結依存的増幅座における同時アッセイを例示している。各座(例えば、LOCUS 1)は、ギャップ・リガーゼ連鎖反応産物の末端を定める特別に修飾された2個の増幅プライマーにより定められる。そのペア(対)中の一方のプライマーは、フルオレセインなどの蛍光的に検出可能な標識を含有する。そのペア中のもう一方のプライマーは、2個のドメイン(1つは、単一のマイクロタイターウェルの底にアレイ化された捕捉プローブに相補的なユニーク汎用配列であり、もう1つのドメインは、検出される鋳型上の領域に特異的なものである)を含有する。このプライマーに結合した汎用配列は、配列特異的一本鎖ハンドルとして機能する。サンプル中に鋳型が存在する場合には、配列指向性(sequence directed)連結が、該標識および該汎用ハンドルの両方を単一の産物中に合体させることになる。多数のサイクルの後、この増幅された連結産物は、マイクロタイターウェルの底に固定化された汎用捕捉アレイ上のその相補的メンバーに対して同時にハイブリダイズし検出され、CCD近位検出器によりイメージングされうる。各ウェルの底において汎用アレイのメンバーにハイブリダイズした連結産物だけが検出器の近くに存在するため、該アッセイは、ハイブリダイズしたアンプリコンを検出するための特別な分離工程を必要とせず、したがって事実上均一系になる。
【0191】
実施例IV
薬物の発見/スクリーニング分析
この実施例では、小分子汎用アレイは、多数のハプテン、ステロイドまたは小分子薬物に対する、高い親和性の市販の抗体を用いることが可能であろう。特異的抗体が入手可能な48個の代表的な化合物の部分的な一覧を、表1に列挙する。この表は、ハプテン、ステロイドホルモンおよび他の小分子薬物に対する市販の抗体の部分的な一覧にすぎない。
【0192】
【表1】
【0193】
小分子汎用アレイは、小分子(例えば、表1に記載のもの)を基体表面に共有結合させることにより作製する。ハプテン、ステロイドまたは薬物の固定化は、該小分子の一方の末端に官能基化部分を導入することにより行なう。これらの部分は、当業者に良く知られている(例えば、N-ヒドロキシ-スクシンイミド、マレイミド、イソチオシアナート、ヨードアセトアミドまたは他のアミンまたは硫黄反応性部分)。ついで小さな官能基化分子または薬物を、NH2またはSH2で誘導体化されたプラスチックまたはガラス基体と反応させることができる。そのような市販の活性化ハプテンのいくつかの具体例には、NHS-フルオレセイン、NHS-ビオチン、NHS-ジゴキシゲニン、マレイミド-ビオチンおよびマレイミド-テトラメチルローダミンが含まれる。
【0194】
個々の小分子バイオサイトの固着の後、ある与えられたバイオサイトに対する特異的結合事象を空間的に局在化するために、二重特異性リガンドを使用することができる。該二重特異性リガンドは、抗体-抗体コンジュゲート、抗体-受容体、抗体-ストレプトアビジン、抗体-ペプチド、抗体-小分子コンジュゲートまたは二重特異性抗体を含むことが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0195】
該二重特異性リガンドは、基体表面(バイオサイト)上の固定化ハプテンまたは薬物とスクリーニングするアナライトとの両方に特異的である。汎用アレイスクリーニングの具体例を、図17に図示する。図17は、小分子汎用アレイ(薬物のスクリーニング/発見)を示す概要図である。図17は、単一のウェル中で4個の異なる固定化ハプテンを使用する、基本的な小分子汎用アレイの概念を例示している。種々の二重特異性分子が、例示目的に示されている。図17は、マイクロタイタープレートの96個のウェルのそれぞれの底に固定化された4個の別々の異なるハプテンを例示している。該アレイ中の各座またはバイオサイトは、この実施例でフルオレセイン、ジゴキシゲニン、2,4ジニトロフェノールおよびTRITCとして例示する4個のユニークな固定化ハプテンにより定められる。該固定化ハプテンとサンプル中のもう1つの標識アナライトとの両方に特有に特異的な二重特異性分子を、各ウェルに加える。このようにして、異なる複数のアナライトを同時に検出し、特異的ハプテンバイオサイトにおけるシグナルによりそれらの存在を示すことができる。この実施例では、96個のサンプルを、4個の異なるアナライトに関して同時にアッセイすることができる。示されているとおり、該フルオレセインバイオサイトは標識受容体(タンパク質)アナライトを検出し、2,4ジニトロフェノールおよびジゴキシゲニンハプテンの両方は、サンプル中の2つの追加的な型のタンパク質受容体の同時検出または存在の表示を可能にする。最後に、TRITCハプテンは、介在酵素コンジュゲートを介して特異的酵素基質の検出および存在の表示を可能にする。ここでもまた、近位形態の検出が、該アレイの表面における結合事象のみの均一イメージングを可能にする。そのような多重化免疫学的アプローチの利点は、非常に高い特異性と、DNAに基づかないバイオサイト認識を用いるそのような汎用アレイを含む小分子の多様性にある。
【0196】
小分子汎用アレイの実際の実施化は、図18および19に例示されており、前記実施例Iに記載されている。
【0197】
実施例V
用途:遺伝子発現分析
該多重化分子分析系はまた、単一の組織サンプル中の数百個の異なるmRNA種の発現をマイクロタイタープレートの単一のウェル内で分析するのに有用である。ここでは、合成核酸が、異なるバイオサイトを形成し、該バイオサイトは、わずか50μLのサンプル抽出物を使用することにより、1サンプルごとに高感度かつ高選択性の多数のハイブリダイゼーション分析をもたらす。そのような大規模ハイブリダイゼーション分析は、癌などの特定の疾患に関する多数の生物マーカーの発見および使用を可能にする。本質的に、初期肺癌の生物マーカーの探索は、反復的な組合せ方法になる。肺癌および他の上皮疾患の場合、数百個のmRNAが、生物マーカーとしてのそれらの価値に関して比較的低コストで分析される。そのような反復的方法においては、生物統計学者が、該技術およびmRNA生物マーカーの最終的なセットを開発する上で最も重要な成分の最終使用者になる。この反復的アプローチによりmRNA生物マーカーのセットが一旦見出されたら、当然のことながら、該技術は、えり抜きのmRNA生物マーカーセットを用いる、大きな患者集団の低コストでハイスループットのスクリーニングに適合する。
【0198】
実施例VI
用途:細胞分取
逆に、本発明の多重化フォーマットを利用して、無傷細胞を分析する。特に、ほとんどの「細胞富化(cell enrichment)」プロトコールは、二重標識フローサイトメトリーまたは或る種のアフィニティークロマトグラフィーによる細胞の物理的分離のいずれかを含む。どちらも、目的の細胞型に特異的な抗体の利用を必要とする。
【0199】
多重化マイクロプレートフォーマットでは、細胞特異的抗体を反応チャンバー(96ウェルマイクロプレート中の単一のウェル)内にマトリックス状に配置する。細胞分析操作を行なう上で重要なポイントは、無傷細胞に高親和性および高選択性で結合する能力をそのような抗体アレイが保有する状況を作ることにある。
【0200】
該方法は、複雑な細胞混合物、例えば、生物学的サンプル(例えば、血液または痰)を、そのような抗体マトリックスに加え、ついである程度局所的に混合しながら、該細胞を該表面に結合させる。細胞がそのようなマトリックスに良好な親和性および選択性で結合すれば、それらをマトリックスに固定し、それらの透過性を上昇させ、それらを標識プローブハイブリダイゼーション(またはPCR)に付す(これは、顕微鏡検査またはフローサイトメトリーにおいて細胞中のDNAまたはRNAを分析するために現在用いられている方法とほとんど同じ方法で行なう)。
【0201】
該多重化フォーマットの主な利点は、多数の異なる細胞型がマイクロタイタープレートの単一のウェル中で分離されることにある。
【0202】
実施例VII
用途:微生物のモニター
また、該多重化分子分析系は、微生物のモニターの用途に向けることが可能である。特に、空気、水および食物を微生物に関してモニターする場合には、該系は、迅速かつ費用効果的に、複雑な生物学的混合物の検出および定量をもたらす。一例として、バイオサイトとして機能する核酸プローブが、特徴的な微生物のRNAを選択的に捕捉するために選択される、リボソームRNAプローブに基づくアッセイが挙げられる。
【0203】
基本的には、該方法は、反応チャンバー内のバイオサイトアレイに対するハイブリダイゼーション用の微生物rRNAサンプルを調製することにより開始する。蛍光的に標識された微生物RNAの、該プローブアレイに対する特異的結合の後、二次元イメージの結果は、そのサンプルを独自に特徴づける。該アナライザーの出力は、該サンプル中に存在する微生物の量および型よりなる微生物のスペクトルである。
【0204】
微生物の同時モニターのための、提案しているアプローチの原理には、以下のものが含まれる:
1)完了に数日間を要する標準的な細胞培養法を避けることにより、速い微生物分析を行なうことができる。さらに、提案している高感度近位CCD検出法は、rRNAの固有の増幅特性と共に、組合されたサンプル調製、アッセイおよび検出にかかる時間を数日間から数時間に減少させる。
2)複数の微生物のハイスループットの検出および同定を促進するために1cm2当たり数百個の固定化プローブを支持する高密度アレイのおかげで、同時微生物モニターを行なうことができる。
3)最低限の労力および訓練が要求されるにすぎない。細胞培養もゲルに基づく配列決定も不要だからである、その代わりに、操作者は、微生物スペクトルを得るために、調製されたサンプルを単に、自動化されたハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥法に付すだけである。
4)このプローブに基づくアッセイは、近位CCD検出装置と組合されるため、最低限の設備が必要とされるにすぎない。それにより、エピ蛍光(epifluorescent)および共焦点顕微鏡検査などの伝統的なマクロ検出技術の負担を軽減する。
【0205】
以下の参照文献は、本発明の或る態様および/または実施形態の理解または実施を容易にするかもしれない。この一覧に或る参照文献が含まれていることは、その参照文献が本発明に関する先行技術に相当すると容認することを意図するものではなく、そのような容認を構成するものではない。
【0206】
Hansell, 米国特許第2,512,743号
D. Bogg, F. Talke, IBM Jour. Res. Develop. (1984) 29:214-321
Burkeら, "An Abuttable CCD Imager for Visible and X-Ray Focal Plane Arrays," IEEE Trans. On Electron Devices, 38(5):1069 (May, 1991).
Maskos, Uら, Nucleic Acids Res. 20:1679-1684 (1992).
Stephen C. Case-Greenら, Nucleic Acids Res. 22:131-136 (1994).
Guo, Zら, Nucleic Acids Res. 22:5456-5465 (1994)。
【0207】
以上、本発明の多数の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の修飾を施すことが可能であると理解されるであろう。したがって、他の実施形態も、以下の請求の範囲の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】多重化分子分析検出/イメージング系を示す概要図である。
【図2】インクジェットプリンティングによる固着DNAプローブバイオサイトを示す、近位CCDイメージャーで得られたプリントされたコンピューターイメージである。
【図3】斜置(staggered)インクジェット分注モジュールを使用するバイオサイト固着系を示す概要図である。
【図4】複数の毛管を使用するバイオサイト固着系を示す概要図である。図4aは、アレイ鋳型によるバイオサイト固着を示す概要図である。図4bは、ナノリットルウェル中へのバイオサイト固着を示す概要図である。
【図5a】汎用アレイ(Universal Array)の概念を示す概要図である。
【図5b】汎用アレイと結合した標的プローブに対する直接結合を示す概要図である。
【図5c】4×4汎用アレイのマルチマイクロタイターウェルの近位CCDイメージを示すプリントされたコンピューターイメージである。
【図5d】4×4汎用アレイの単一マイクロタイターウェルの近位CCDイメージを示すプリントされたコンピューターイメージである。
【図6】近位CCDイメージングによる反応容器内でのECLの実施を示す概要図である。
【図7】ECL反応容器の作製を示す概要図である。
【図8】ランタニドキレーターを示す化学式である。
【図9】多重化分子分析系の電子的概要図を示す概要図である。
【図10a】近位CCDイメージャー用のCCDセンサーアレイを示す概要図である。
【図10b】大きなフォーマットの近位CCDイメージャーを形成するためのCCDセンサーのタイル張り(tiling)を示す概要図である。
【図10c】大きなフォーマットの近位CCDイメージャーを形成するために使用する多数のCCDセンサーのもう1つのタイル張りスキームを示す概要図である。
【図11】マイクロプレート反応容器内のマイクロアレイを示すプリントされたコンピューターイメージである。1つの単一反応チャンバーを挿入図として示す。
【図12】ガラスおよびポリプロピレン表面への結合化学を示す概要図である。
【図13】汎用点突然変異スキャニングによる遺伝子型決定を示す概要図である。
【図14】マイクロタイターに基づくスループット遺伝子型決定を示す概要図である。
【図15】多重化PCRアンプリコンの均一in situマイクロアレイ検出を示す概要図である。
【図16】多重化ギャップ・リガーゼ・チェイン反応産物の均一in situマイクロアレイ検出を示す概要図である。
【図17】小分子汎用アレイ(薬物のスクリーニング/発見)を示す概要図である。
【図18】アミノ誘導体化薄底ガラスマイクロタイターウェル上に共有的に固定化された小分子の空間アドレス(spatial address)を例示する概要図である。
【図19A】ストレプトアビジン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、ビオチンでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。
【図19B】抗ジゴキシゲニン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、ジゴキシゲニンでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。
【図19C】抗フルオレセイン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、フルオレセインでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。
【図19D】抗フルオレセイン、抗ジゴキシゲニンおよびストレプトアビジン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、フルオレセイン、ビオチンおよびジゴキシゲニンバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み入れる1996年12月31日付け米国仮出願第60/034,627号を基礎とする。
【0002】
米国連邦政府の援助によりなされた研究に関する陳述
本発明の少なくとも一部は、米国航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration)からの基金(授与番号NAGW 4530)によりなされたものである。
【0003】
技術分野
本発明は、サンプル中の1以上の分子構造体の検出および定量のための多重化(マルチプレックス化)分子分析装置および方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
サンプル中の1以上の分子構造体を迅速に検出し定量することは、非常に望ましいことである。そのような分子構造体は、典型的には、リガンド、例えば抗体および抗抗体を含む。リガンドは、ある特定の受容体に認識される分子である。リガンドには、細胞膜受容体に対するアゴニストおよびアンタゴニスト、毒素、毒物、オリゴ糖、タンパク質、細菌およびモノクローナル抗体を含めることが可能であるが、これらに限定されるものではない。例えば、DNAまたはRNA配列分析は、遺伝病および伝染病の診断、毒物学的試験、遺伝的研究、農学および医薬の開発に非常に有用である。同様に、細胞および抗体の検出は、多数の疾患の診断において重要である。
【0005】
特に、核酸に基づく分析は、しばしば、配列の同定および/または分析、例えばin vitro診断アッセイおよび方法の開発、天然産物の生物活性に関するハイスループット(高処理量)スクリーニング、および分解しやすい物質(例えば、提供された血液、組識または食品)の、多種多様な病原体に関する迅速なスクリーニングを必要とする。これらのいずれの場合においても、分析に対する基本的な制約(例えば、限られたサンプル、時間または多くの場合はその両方)がある。
【0006】
これらの使用分野においては、前記の制約との関連において精度、速度および感度の間でバランスをとる必要がある。既存のほとんどの方法は、一般には、多重化されていない。すなわち、分析条件の最適化および結果の解釈は、単純化された単一の測定アッセイで行なわれる。しかしながら、これは、決定的な診断が必要とされる場合には問題となることがある。なぜなら、核酸ハイブリダイゼーション技術においては、スクリーニングする病原体を予め知っておく必要があるからである。症状が明らかでなかったり、かなり多数の異なる病原生物を示す場合には、考えうる多数の原因因子に関してスクリーニングするアッセイが非常に望ましいであろう。さらに、おそらく複数の病原体により症状が複合的になる場合には、特異性の増加と共に関与生物が示される「決定樹(decision tree)」として機能するアッセイが、診断上非常に貴重であろう。
【0007】
多重化は、精度を維持するために追加的な制御を要する。分析条件の設計の際には、汚染、サンプルの分解、インヒビターまたは交差反応体の存在および鎖間/内相互作用による偽陽性または陰性の結果を考慮すべきである。
【0008】
通常の技術および限界
サンガーの配列決定
既存のすべての技術のなかで最も信頼のおけるものの1つとして、伝統的なサンガーの配列決定技術が挙げられる。この技術は、予め知られていない又は疑われていない病原体を同定する場合に非常に貴重である。また、それは、病原生物の特定の株に薬剤耐性を付与する突然変異を決定する場合に貴重である。これらの分析は、一般には、研究指向的なものである。この研究の最終的な結果(例えば、ある特定の病原体の配列決定)を用いて、臨床場面における同定用途のためのプローブを設計することができる。
【0009】
しかしながら、この技術を臨床研究室で用いることに対しては制約がある。主な制約としては、熟練者が多工程を実施することを要する固有の労働集約的手法による経費および処理量が挙げられる。例えば、典型的な分析は、通常、完了に1日以上を要する。より懸念されるのは、複数の病原体株が1つのサンプル中に存在する場合に不明確になる可能性があることだ。病原体のビルレンスは、株によって決まることが多い。一例として、ヒトパピローマウイルスとしても公知のHPVが挙げられる。70株のHPVが存在することが、一般に公知である。特に、2株が頚部癌のリスクの増大に強く関連しており、したがって、悪性度に関するスクリーニングまたは治療の攻撃性は、HPV株の存在により影響される。配列決定の方法を用いる場合には、複数の株が、不明確な結果を招く。理想的なアッセイは、含まれるすべての株を同定するための選択性により多重化されるであろう。
【0010】
ブロッティング技術
ブロッティング技術(例えば、サザン分析およびノーザン分析で用いるブロッティング技術)は、臨床的に重要な核酸の検出のための主要技術として広く用いられている。内在性ヌクレアーゼからサンプルを保護するようサンプルを迅速に調製し、ついで該アッセイに適した核酸断片を得るために該サンプルを制限酵素消化またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析に付す。ゲル電気泳動を用いて、サイズによる分離を行なう。ついで、標的核酸分子と結合するメンブレン上へのブロッティングにより、該変性断片を標識プローブに対するハイブリダイゼーションで利用可能なものとする。複数の断片を同定するために、適当な洗浄およびハイブリダイゼーション工程と共に連続的にプローブを使用する。これは、非特異的結合によるシグナルの喪失およびバックグラウンドの増加につながることがある。ブロッティング技術は高感度かつ安価であるが、それらは、労働集約的であり、技術者の技量に左右される。また、それらにおいては、種々のプローブの連続的使用に関連した問題のため、高度の多重化が不可能である。
【0011】
マイクロプレートアッセイ
結合アッセイ(例えば、ELISAアッセイ、受容体結合および核酸プローブハイブリダイゼーション技術)を利用するために、マイクロプレートアッセイが開発されている。典型的には、1個のマイクロプレート(例えば、マイクロウェルタイタープレート)の場合、例えば発光分析により1ウェル当たり1回しか読取りを行なうことができない。これらのアッセイは、(1)溶液中でのハイブリダイゼーション、または(2)表面に結合した分子に対するハイブリダイゼーションの2つの様式のいずれか1つで機能する。後者の場合、1ウェル当たり1個の要素だけが固定化される。これは、もちろん、サンプル1単位当たりで決定されうる情報の量を限定する。サンプルのサイズ、労働コストおよび分析時間などの実際の考慮事項が、多重分析におけるマイクロプレートの使用に制限を課す。適当なコントロールによる複数の病原体のスクリーニングにおいては、1ウェル当たり1回の分析、反応または測定だけで、典型的な96ウェルフォーマットのマイクロプレートのかなりの部分を消費することになろう。株の決定を行なう場合には、複数のプレートを使用しなければならない。そのような多数のウェル上に患者のサンプルを分布させることは、入手可能なサンプル材料が限定されるため非常に非実用的なものとなる。このように、入手可能な患者のサンプル容量が分析を本質的に制限し、また、容量を増加させるためにサンプルを希釈すると、感度が著しく損なわれる。
【0012】
ポリメラーゼ連鎖反応
標的配列を増幅しアッセイの感度を増加させるためにはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いることができるが、サンプル中の増幅可能な配列の数には事実上限界がある。例えば、臨床用途のためのほとんどの多重化PCR反応は、1反応当たり数個の標的配列しか増幅しない。得られたアンプリコンは更に、サンガーの配列決定法、ゲル電気泳動またはハイブリダイゼーション技術(例えば、サザンブロッティングまたはマイクロプレートアッセイ)により分析しなければならない。PCRの選択的増幅の場合、サンプル成分が、交差反応による異常な結果を与える可能性は低いであろう。しかしながら、これは完全には除去されず、対照を使用すべきである。さらに、PCRは、汚染による偽陽性結果の可能性を増加させ、したがって環境的コントロールを必要とする。また、PCRの対照には、偽陰性を防ぐための増幅陽性対照を含める必要がある。PCR法に対するインヒビター(例えば、ヘモグロビン)は、臨床的サンプルにおいて一般的である。その結果、多重分析のためのPCR法は、既に大まかに説明したほとんどの問題にさらされる。正確な診断的判定を保証するためには、高密度の情報を得る必要がある。全般的に、PCRは、定量的アッセイ、または多数の病原体の広域スクリーニングには実用的でない。
【0013】
プローブに基づくハイブリダイゼーションアッセイ
最近では、固体表面上のアレイフォーマット(「チップフォーマット」とも称される)において、プローブハイブリダイゼーションアッセイが行われている。これらのチップフォーマットを用いることにより、非常に少量のサンプルを使用する多数のハイブリダイゼーション反応を行なうことができ、それにより、合理的なサンプル容量を用いて、情報に富む分析を容易にすることができる。
【0014】
プローブに基づくこれらのハイブリダイゼーションアッセイの精度を増加させるために、種々の方法が実施されている。1つの方法は、種々のGC含量の多数の核酸プローブを用いるアッセイでの選択性の維持の問題に対処するものである。GCに富むプローブに対する単一塩基のミスマッチ交差反応を除去するために用いるストリンジェンシー条件は、ATに富むプローブの完全なマッチを除去することになる。この問題を克服するための方法は、ストリンジェンシーの制御のための個々のアドレス可能(addressable)なプローブ部位における電界の使用から、別々の洗浄条件の維持が可能となるよう別々のマイクロ容量反応チャンバーを設けることまで、多岐にわたる。この後者の例は、小型化マイクロプローブに類似しているであろう。他の系では、それほどストリンジェントでない条件を用いる一方でミスマッチに対する識別を可能にする「プルーフリーダー」としての酵素を使用する。
【0015】
前記の考察はミスマッチの問題に向けられているが、核酸ハイブリダイゼーションは他の誤りにもさらされる。偽陰性は、重要な問題であり、以下の状況から生じることが多い。
【0016】
1)標的またはプローブ分子中の鎖内フォールディング、タンパク質結合、交差反応DNA/RNA競合結合、または標的分子の分解によりしばしば生じる、結合ドメインが利用できないこと。
2)小分子インヒビターの存在、サンプルの分解および/または高いイオン強度により標的分子が増幅されないこと。
3)標識系の問題は、サンドイッチアッセイにおいて問題となることが多い。ハイブリダイゼーション実験においては、結合標的分子上の二次部位に相補的な標識プローブよりなるサンドイッチアッセイが一般に用いられる。これらの部位は、前記の結合ドメインの問題にさらされる。酵素化学発光系は、酵素または基質のインヒビターの影響を受け、内在性ペルオキシダーゼが、化学発光性基質を酸化することにより偽陽性を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【0017】
概要
本発明は、最適なアッセイパラメーターを迅速に決定するための多重化環境と、標的アナライトの定量分析のための迅速で費用効果的で高精度な系とを提供し、それにより単一測定アッセイの制限を回避する。多重化アッセイの最適化は、ハイブリダイゼーションおよびストリンジェンシー洗浄のための適当な溶解条件を決定するための実験的応答(experimental interrogation)により行なうことができる。これらの最適な化学的環境の開発は、結合捕捉プローブ分子のアレイの特性、その相補的標的分子およびサンプルマトリックスの性質に大きく左右されるであろう。
【0018】
多重化分子分析は、しばしば、特定の問題に対する解答を得ることを要する。例えば、考えうる生物のパネルの中のいずれの感染性因子が一連の特定の疾患症状を引き起こすのかを決定するためには、多数の分析を必要とする。捕捉プローブアレイは、これらの多変数の解答を与える状況を提供する。しかしながら、単一プローブアレイプラットフォームの使用は、この種の問題を解決するための十分な情報を常に提供するわけではない。近位(proximal)荷電結合素子(CCD)技術の最近の革新的な応用は、マイクロプレートウェルの底に組込まれた分子プローブアレイを定量的に検出しイメージングすることを可能にした。これは、非常に複雑な分析パラメーターによるいくつかの適用の検討を可能にする格別に有用なハイスループットプラットフォームを与える。
【0019】
用途
本発明の多重化分子分析系は、サンプル物質を適用する複数のバイオサイト(biosite)を有するアレイを使用してサンプル物質中のいくつかの分子標的を分析し定量するのに有用である。例えば、本発明は、多重化診断、薬物発見およびスクリーニング分析、遺伝子発現分析、細胞分取ならびに微生物のモニターのために(各用途に関しては、後記実施例を参照されたい)、マイクロプレート中のマイクロアレイと共に使用することができる。
【0020】
多重化アレイによる近位CCDイメージング
本発明のマイクロプレートに基づくアレイの1つの用途は、多数のサンプルの平行処理におけるものである。大きな臨床試験所では、1日に数千個のサンプルを処理する。96ウェルのそれぞれにおいて4×4マトリックスのバイオサイトで構成されたマイクロプレートであれば、図1に示す近位CCDイメージャーを使用して、96個の異なる患者サンプルから合計1536個の試験をほぼ同時に行なうことが可能であろう。図1は、多重化分子分析検出/イメージング系を示す概要図である。さらに、96ウェルのそれぞれにおいて15×15アレイのプローブ要素で構成されたマイクロプレートは、合計21,600個のほぼ同時的なハイブリダイゼーション分析を可能にし、これは、特定の細胞からの遺伝子発現の分析に重要となる。
【0021】
生物活性に関して天然産物をスクリーニングする場合には、スループット(処理量)も重要である。関心のある結合部位をモデルにしたバイオサイトのマトリックスを、各ウェルの底に配置し、未知産物で応答(interrogate)させることが可能である。これらのバイオサイトアレイに対して、1日に数千の分子をスクリーニングすることができる。
【0022】
階層アレイの作製
マイクロプレートに基づく該アレイのもう1つの用途は、複合分析のための階層(hierarchical)アレイの作製である。このフォーマットにおいては、複合アッセイに対する解答を得るために、複数のアレイを同時に作動させる。「背景」の節に記載の診断アッセイの具体例は、正確な結果を得るために考慮すべきパラメーターのいくつかを示している。いずれの特定の分析においても、1組のプローブ要素を選択しなければならない。選択したプローブ要素は、定められた標的と選択的に会合する能力を有すべきであり、この場合、ある特定のサンプル型に一般に関連した患者または他の生物から予想される他の巨大分子に対する有意な交差会合を伴うべきではない。対照は、「背景」の節で大まかに説明した原因に由来する偽陽性または陰性の結果を避けるように設計しなければならない。これを行なったら、定められた分析のための最適な会合および選択性の条件を同定するために組合せ法を用いることができる。核酸の適用の場合には、これらの条件は、捕捉プローブの長さおよび組成、標的の塩基組成、およびサンプルマトリックスに大きく左右される。使用するアレイの数は、多数の種々の要因、例えば、行なう制御、および捕捉プローブの塩基組成の相違に左右される。最終的には、関心のある分子分析の解答を迅速に効率的に正確に与える1組の集積(integrated)化学装置が得られる。
【0023】
該階層アレイおよび反応容器に基づくアレイのもう1つの用途は、広範囲の可能な標的に関してサンプルをスクリーニングすることである。1つの場合には、定められた一群の症状の原因を探るために診断試験を行なう。ほとんどの場合には、これは、考えうる生物の範囲を少数の生物に狭める。逆に、提供された血液または組識を広範囲の病原生物に関してスクリーニングするためには、決定樹アプローチを用いることが可能であろう。この場合には、より広いクラスの病原体に関してスクリーニングするために、高度に保存された核酸領域のためのプローブを使用して開始アレイまたは1組のアレイを選択することが可能であろう。この結果は、より大きな特異性へと進むために、つぎにマイクロプレート内のどの追加的アレイセットをサンプリングすべきかを示すであろう。提供された血液または組識の場合のように十分なサンプルが入手可能な場合には、決定樹要素のすべてを同時に応答(interrogate)させることが可能であろう。サンプル量が限られている場合には、このアプローチを連続的に進めることが可能であろう。
【0024】
いずれの多重分析のアッセイ開発にも、多くの時間がかかる。本明細書に記載のマイクロプレートに基づくアレイは、捕捉プローブ/標的結合またはハイブリダイゼーションのための方法を加速化するために使用することができる。一定のアレイを、マイクロプレートの各ウェル中に固着(deposit)させることが可能であり、ついで、二次元で変化する条件の「勾配(gradient)」を用いて会合反応を行なうことができる。例えば、8列12行に配置された核酸を含有する96ウェルマイクロプレートで考えてみる。最適化の1つの工程では、種々の基質組成に対するpHの影響を調べて、これがハイブリダイゼーションの特異性に対してどのような影響を及ぼすかを知ることが可能であろう。12個の異なるpH(各行に1個)および8個の異なる表面化学(各列に1個)を、その他の点では同一のハイブリダイゼーション条件下で用いて、アレイ中の各捕捉プローブ/標的要素に関するハイブリダイゼーションに対する影響を測定することが可能であろう。アレイ技術が広く用いられるようになり任意の受容体/リガンド結合型実験に適したものになるにつれて、このタイプの分析が不可欠となるであろう。
【0025】
複合分析の解答を与えるために平行的に機能する個別的に最適化された化学環境を有する一定の組のアレイよりなる階層アレイフォーマットを、他の方法で実施することができる。各マイクロプレート中に一連の分析セットを配置するバッチ法の代わりに、階層アレイ分析セットをフローセル(flow cell)配置に設計することができる。これは、ある特定の分析に特異的であり、適当なアレイセットと、単一のサンプルを採取し適当なアリコートを該セット中の各アレイに運搬するのに必要なフルイディクスとからなる。該フルイディクスが、該セット中の各アレイに関して定められたとおりに反応を行なうための適当な会合および洗浄流体を運搬することとなる。
【0026】
利点
本発明の多重化分子分析系は、通常の系に対して多数の利点を有する。これらの利点のいくつかを以下で考察する。
【0027】
ハイスループット
マイクロタイタープレート1個当たり1,536(96×16)〜21,600(96×225)個のハイブリダイゼーション試験を行なう可能性を与える96ウェルマイクロタイタープレートの底に、複数のDNA/RNAプローブアレイを作製することができる。各ウェルは、プラスチックまたはガラス上に分注されマイクロタイタープレートに結合しているN個の要素(エレメント)のプローブアレイを含有する。さらに、該マイクロタイタートレイを直接(無レンズ)CCD近位/イメージャーに連結することにより、合計1,536〜21,600個のハイブリダイゼーション試験を室温で数秒以内に定量的に行なうことができる。そのような近位CCD検出アプローチは、本質的に高い集積効率および平行的イメージング運転のため、前例のない速度および分解能を可能にする。該ハイブリダイゼーション試験のマイクロタイタープレート1個当たりの上限は、中心間間隔100μmのバイオサイトに基づけば100,000を超える。
【0028】
低コスト
反応基質上に分注する捕捉プローブの容量は約50ピコリットル(pL)に限定することが可能であるため、1,500個以上の異なる結合試験を行なうのに、捕捉プローブ試薬は150ナノリットル(nL)しか必要とされない。プラスチックロール上または薄いガラスシート上へのプローブアレイの分注は、モジュラーインクジェットまたはキャピラリー固着系で流れ作業的に効率的に行なうことができる。
【0029】
自動化運転
該多重化アッセイは、サンプルの運搬および調製に利用する通常のロボットシステムに適応した室温での運転のための標準的な96ウェルマイクロタイタープレートフォーマットとして設計することができる。また、グラフィック(graphical)ユーザ・インターフェースを有する近位CCDに基づくイメージャーは、多数のハイブリダイゼーション試験結果の同時入手の自動化を可能にするであろう。CCDイメージングシステムソフトウェアは、各プローブ/標的結合領域の自動化されたフィルタリング(filtering)、スレショルディング(thresholding)、標識、統計分析および定量的グラフィック表示を数秒以内にもたらす。
【0030】
汎用性
該多重化分子分析系の特定の実施形態で用いる近位CCD検出器/イメージャーは、蛍光、化学発光および放射性同位体を含む多数の分子標識手段に適応する。その結果、最大限の情報抽出のために多重化態様で別々に又は一緒に使用する種々のリポーター基に関して、単一の装置を使用することができる。
【0031】
高分解能
併用する近位CCD検出器/イメージャーは、空間的およびデジタル的な高い分解能を与える。好ましい実施形態では、約25×25μm2のCCDピクセルサイズが、反応基体上の数百個から数千個のバイオサイトのイメージングを支持する。16ビットのデジタルイメージングと共に、高密度のバイオサイトの高度に定量的なイメージが得られる。
【0032】
速いタイム・ツー・マーケット
大まかに説明されているアプローチは、通常のサイズのマイクロタイタープレート中に分注されたマイクロアレイに連結した既に実証されている近位CCD検出およびイメージングに基づくため、全体の分子分析系は、複雑な多成分分子に基づく分析に対する速いタイム・ツー・マーケット(time-to-market)の解答を与えると予想される。
【0033】
全体的には、開示されている発明は、最適なアッセイパラメーターを迅速に決定するための多重環境と、分子の定量分析のための迅速で費用効果的で高精度な系との両方のための方法および装置を提供し、それにより単一測定アッセイの制限を回避する。
【0034】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および請求の範囲から明らかとなろう。
【0035】
詳細な説明
定義
本発明の目的においては、種々の語句を以下のとおりに定義する。
【0036】
「標的分子または標的アナライト」は、アレイ中に固定化された捕捉プローブに対する結合により応答させようとする物質中の、関心のある分子を意味する。
【0037】
「mRNA標的分子またはmRNA標的アナライト」は、同一mRNA成分または本質的に異なるmRNAの混合物を含有する物質を意味する。
【0038】
「捕捉プローブ、プローブ分子またはプローブ」は、標的分子に応答させるために反応基体上にバイオサイトとして固着された分子を意味する。プローブは、核酸、DNA、RNA、受容体、リガンド、抗体、抗抗体、抗原、タンパク質、および小さな化合物(例えば、薬物、ハプテンまたはペプチド)をも包含する意である。
【0039】
「ハプテン結合性ポリペプチド」なる語は、無傷抗体分子ならびにそのフラグメント、例えば、Fab、F(ab')2、Fv、一本鎖抗体(SCA)および単一の相補性決定領域(CDR)を含む。本発明の目的においては、「ハプテン」および「エピトープ」は互換性があるとみなされる。
【0040】
「アレイ」なる語は、二次元の空間的布置または配置を意味する。
【0041】
「階層アレイ」は、階層として配置された又は一連の等級もしくはランク付けで配置されたアレイを意味する。本発明の多重化アッセイを含む異なる「階層アレイ」には、例えば、96ウェルマイクロタイタープレートのアレイのうち、1ウェル当たりN個のプローブ部位またはバイオサイトが存在するもの、各プローブ部位またはバイオサイト当たり107〜1010個の分子が存在するもの、96マイクロタイターウェル反応チャンバー中の該ウェルの底を形成するフィルム基体上の各プローブ部位内にプローブを固着させるためにM個のデポジター(depositor)のアレイを使用するものが含まれるが、これらに限定されるものではない。該デポジターは、種々の多数のメカニズム、例えば、インクジェット固着、キャピラリーおよびフォトリソグラフィーによりプローブを固着させることが可能である。
【0042】
「プローブアレイ」なる語は、標的分子の混合物または該アレイの表面に投与された単一の標的分子上の複数の部位に応答するように機能する、反応基体上に固着されたN個の異なるバイオサイトのアレイを意味する。
【0043】
「オリゴヌクレオチドプローブアレイ」なる語は、プローブが核酸から構成されているプローブアレイを意味する。
【0044】
「荷電結合素子」は、CCDとも称され、空間的にアドレス可能な態様でCCD表面上への入射エネルギーに比例した電子的シグナルを出力する良く知られている電子装置を意味する。
【0045】
「CCD近位検出」なる語は、CCDが分析サンプルに対して近位に存在することにより通常のレンズの必要性を回避する、検出およびイメージングのためのCCD技術の使用を意味する。
【0046】
「リガンド」は、ある特定の受容体に認識される分子を意味する。「リガンド」には、細胞膜受容体に対するアゴニストおよびアンタゴニスト、毒素、毒物、オリゴ糖、タンパク質、細菌およびモノクローナル抗体を含めることが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
「多重化」は、多数または複数の数を意味する。
【0048】
「多重化診断アッセイ」は、多数の組または多数の診断アッセイを平行して行なうための方法を意味する。したがって、既に記載されている方法における単一サンプルと同じ労力で1組の平行反応を取り扱うことができる。したがって、より多数のアッセイを一定時間内で取り扱うことができる。平行した組の反応または多重化アッセイを、該方法の終了時に解析しなければならない。これは、本明細書に記載のとおり、バイオサイトに標識またはタグを付けることにより行なう。
【0049】
「反応容器」なる語は、以下に定義する反応チャンバーのアレイを意味する。反応容器の一例として、96ウェルマイクロタイタープレートが挙げられる。
【0050】
「反応チャンバー」は、ハイブリダイゼーションまたは他の会合が生じる環境を意味する。商業的に入手可能な反応容器は、少なくとも1つの反応チャンバーを含有するが、8、24、96または384個の反応チャンバーを含有することが可能である。本発明では、「反応チャンバー」、「ウェル」、「反応部位」、「反応基体」、「アレイハイブリダイゼーション部位」、「ハイブリダイゼーションチャンバー」および「ハイブリダイゼーションウェル」を互換的に使用する。反応チャンバーの一例として、96ウェルマイクロタイタープレート中の96個のマイクロタイターウェルの1個が挙げられる。
【0051】
「バイオサイト」は、反応基体または基体材料の最上表面上に固着されている生物学的分子または捕捉プローブを意味する。適当な条件下、会合またはハイブリダイゼーションが、捕捉プローブと標的分子との間で生じうる。生物学的分子と標的分子との各成分鎖間で反応が生じる可能性があるため、生物学的分子の成分鎖がバイオサイトを形成する。例えば、各反応容器は、少なくとも1つのバイオサイトを含有することが可能である。反応チャンバー1個当たりのバイオサイトの最大数は、反応容器のサイズと、付随する検出器/イメージャーの実際の光学的分解能とに左右されることになる。例えば、16個(4×4アレイ)のバイオサイトのアレイを、反応容器全体の底を最終的に形成するハイブリダイゼーション基体または基体材料上に固着させることができる。各バイオサイトは、直径約25〜200ミクロン(μm)の円を含む。したがって、16個のバイオサイトのアレイでは、16×直径200μmの領域のそれぞれが、ハイブリダイゼーション基体(基体材料)に結合したプローブの均一領域を、プローブサイズおよびウェルサイズに大きく依存する濃度で含有する。半径25〜200μmの各領域は、数百万個のプローブ分子を含有することが可能である。また、16個の異なるバイオサイト(プローブ部位)のそれぞれは、1つの型のプローブを含有することが可能である。したがって、反応チャンバー1個当たり16個のバイオサイト(4×4アレイ)を含有するアレイ中で、16個の異なるプローブ型をアッセイすることができる。もう1つの例として、4個の独立した10×10アレイ(400個のバイオサイト)を、96ウェルマイクロタイタープレートの1個のウェル中に適合するように作製することが可能であり、この場合、その400個の各バイオサイト間に十分な間隔を設けるようにする。この10×10フォーマットの場合、単一反応チャンバー内で、400個のハイブリダイゼーション実験が可能であり、これは、ほぼ同時に行なうことができる38,400(96×400)個のアッセイ/ハイブリダイゼーションに相当する。
【0052】
「反応基体」は、デポジターを使用してバイオサイトまたはプローブ部位が固着されている基体を意味する。「反応基体」には、例えば、ナイロンメンブレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ビニル、他のプラスチックおよびガラスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
「モジュラー固着アレイ」は、デポジターのアレイを意味する。デポジターの数は、主に、反応基体の寸法に左右される。例えば、4個のデポジターが、互いに隣接して嵌合し、各デポジターの前から後への位置に関してずれていること(斜置、staggered)が可能である。各デポジターは、収容リザーバーに直接結合させることが可能である。収容リザーバーは、溶液(例えば、所望のプローブを適当な濃度で含有する溶液)を収容する。ここでもまた、噴射機構の数は、デポジターの設計に左右され、例えば、デポジター1個当たり1個〜数個の噴射機構となることが可能である。
【0054】
「固体表面上のアレイフォーマット」は、チップフォーマットまたはマイクロアレイを意味する。
【0055】
「スループット」は、一定の単位時間内に完了されるアナライトの数を意味する。
【0056】
「決定樹アプローチ」は、いずれが後続の工程を方向づけるかの評価を各工程で行なう連続的な経路決定アプローチを意味する。
【0057】
「ハイブリダイゼーション検出」は、ハイブリダイゼーション、会合、連結、結合、化学的結合、共有結合、鍵−鍵穴会合および反応を介して相互作用する2以上の成分の手段を包含する意であるが、これらに限定されるものではない。本発明の目的においては、これらの用語を互換的に使用する。
【0058】
「会合/ハイブリダイゼーションの検出方法(または検出)」は、蛍光標識、放射性同位体標識、化学発光標識、生物発光標識、比色標識を包含する意であるが、これらに限定されるものではない。標識は、当業者に公知の種々の多数の方法の1つにより行なうことができる。
【0059】
「発光」なる語は、電気的なもの、化学的なもの、蛍光、りん光、生物発光などを意味するが、これらに限定されるものではない。しかしながら、本発明では、過剰な標的分子を溶液から除去するための洗浄工程を必要とせず高感度であるもう1つの検出方法として、電解化学発光または電気化学発光(ECL)標識が含まれる。電解化学発光または電気化学発光による検出方法では、ハイブリダイゼーション/会合が生じ電圧をかけたら、バイオサイトと会合した標識標的分子だけが発光し検出されることになる。したがって、バイオサイトと会合せずに溶液中に残存する過剰の標識は発光しないことになる。
【0060】
本出願は、参照により本明細書に組み入れる以下の係属中の米国特許出願と関連している:1991年11月11日付け出願の米国特許出願第07/794,036号(“Method and Apparatus for Molecular Detection”)、1996年7月2日付け発行の米国特許出願第08/353,957号(“Multiple Molecular Detection Apparatus”)、1995年6月1日付け出願の米国特許出願第08/457,096号(“Multiple Molecular Detection Method”)、1992年4月23日付け出願の米国特許出願第07/872,582号(“Optical and Electrical Methods and Apparatus for Molecular Detection”)、1995年8月7日付け出願の米国特許出願第08/511,649号(“Optical and Electrical Methods and Apparatus for Molecular Detection”)、および1994年2月25日付け出願の米国特許出願第08/201,651号(“Method and Apparatus for Detection and Imaging Particles”)。
【0061】
概観
本発明の多重化分子分析系は、以下の4つの態様に分けることができる。
【0062】
A.反応チャンバー内のプローブアレイに対する後続の会合のためにサンプルを調製すること。これは、標的分子をサンプルから抽出するために必要な精製、単離、変性、標識などのすべての前工程を含む。
【0063】
B.会合が生じるのに十分な濃度で、特定の反応チャンバー内のバイオサイトに標的分子を結合させること。標的分子の非特異的結合は、会合後に反応チャンバーを洗浄することにより最小限に抑えられる場合が多い。
【0064】
C.各反応チャンバー内のバイオサイトと標的分子との会合(ハイブリダイゼーション)を近位検出/イメージングにより検出および/またはイメージングすること。
【0065】
D.分析結果につながる、一定のサンプル内の特異的分子構成成分の存在および量などの、標的分子に関する情報を判定するためにイメージを処理すること。
【0066】
本発明の利点は、前記の4つの方法/工程の個々の手段、特に、以下の工程のための方法および装置にある。
【0067】
工程1:バイオサイトの固着
バイオサイトの固着は、マイクロアレイの構築に関連する。
【0068】
工程2:自己集合アレイ−汎用アレイ
自己集合プローブアレイまたは汎用アレイの作製および構築は、バイオサイトのオンライン形態(on-line configuration)を可能にし、この場合、標的または標的混合物の分析のために特別に設計された改変されたプローブアレイを得るために、一定のプローブアレイ(捕捉プローブ)を、1組の同類アダプター(標的プローブ)に結合させることにより活性化する。本発明では、「同類」は、核酸に関しては、ワトソン・クリック型対合によりもう1つの配列と相補的である配列と定義される。
【0069】
工程3:分子標識方法
分子標識方法は、大きな近位領域の検出/イメージングに適合した標的分子の汎用標識(蛍光、化学発光など)に関連している。
【0070】
工程4.検出系
検出系は、大きな近位領域の検出器/イメージャーを使用する、反応チャンバーを含有する反応容器中での平行的な検出および/またはイメージングに関連している。
【0071】
工程1:バイオサイトの固着
バイオサイトの固着は、マイクロアレイの構築に関連している。反応チャンバー中/上にバイオサイトを固着させるためには、種々の多数の方法を用いることができる。これらのうちの3つのアプローチを、以下に記載する。
【0072】
1.インクジェット固着
生物学的流体をプリントしてバイオサイトを形成するために、インクジェットプリントを用いることができる。このアプローチは、非常に小さな滴容量(直径75μmのスポットサイズを有する約100pL)を与え、そのため、使用する試薬(したがってコスト)が最小限に抑えられる。さらに、該プリント方法は、液滴数千個/秒にまで加速することができ、それにより反応容器に関するハイスループットの生産能を可能にする。
【0073】
本発明で有用な1つの方法では、圧電気材料に電圧をかけることにより流体の容量変化を生じさせる電気機械的に駆動されるインクジェットを用いる(Hansell, 米国特許第2,512,743号, 1950を参照されたい)。その容量変化は、それに続いて流体中に過渡的な圧力を生じさせ、それを、要求に応じて液滴を形成するように導くことが可能である(D. Boggら, IBM Jour Res Develop (1984) 29:214-321)。
【0074】
複数の流体のプリントが可能となるよう、個々のインクジェット装置をモジュラー形態に組込むことができる。例えば、MicroFab Inc.は、個々の駆動および制御エレクトロニクスによりアドレスされる一体式(integral)の500mLリザーバーをそれぞれが有する8個のモジュラー分注単位からなる、インクジェットに基づくDNAプローブアレイプリンターを開発している。
【0075】
図2は、インクジェットプリントで固着されたDNAプローブバイオサイトを示すプリントされたコンピューターイメージを図示する。図2は、実際のバイオサイトの固着を例示しており、この場合、1cm2当たり100個のDNAプローブバイオサイトのアレイがガラス基体上にインクジェット固着されている。該アレイは、マッチおよびミスマッチの12マー(12量体)のプローブの交互の行よりなり、それをついで、12マーの一本鎖DNA標的にハイブリダイズさせた。ミスマッチの行は、プローブ/標的複合体におけるA-Aミスマッチに対応する。その実際のイメージは、後記の近位CCD検出器/イメージャーにより1秒以内に捕捉された。
【0076】
図3に例示するとおり、反応チャンバーの底表面上にL×M個の異なるバイオサイトをプリントするために、モジュール1個当たりM個のデポジターを含有するモジュラーインクジェット装置のL個の並びを斜置的に合体させることができる。図3は、斜置インクジェット分注モジュールを使用するバイオサイト固着系を示す概要図である。この場合、高速プリント用インクジェット装置の下の精密モータ制御されたステージにより、反応容器を移動させる。モジュラーインクジェット装置の追加的な並びを構築することにより、および/または、個々のデポジターを小型化することにより、任意の大きな個数の異なるバイオサイトを、反応容器内にプリントすることができる。別法として、ガラスまたはプラスチックなどの薄い基体上でプリントを行ない、ついで反応容器の底を形成するよう該基体を結合させることが可能である。
【0077】
2.キャピラリー固着
バイオサイトの固着のためのもう1つのアプローチは、図4、4aおよび4bに例示されているとおり、反応基体上に少量のバイオサイト溶液を分注するために毛管を使用することを含む。図4は、複数の毛管を使用するバイオサイト固着系を図示する。図4aは、アレイ鋳型によるバイオサイトの固着を示す概要図である。図4bは、ナノリットルウェル中へのバイオサイトの固着を示す概要図である。示されているとおり、適当な溶液を含有する貯蔵容器を、しばらくの間加圧して、マニホルドにより適当な位置に保持された管をプライム(prime)して、毛管分注作用を開始させる。非常に小さな内径(<50μm)の毛管を使用して、連続的な圧力をかけることができる。種々の持続時間の圧力パルスを用いて、より大容量の溶液を運搬する。反応基体との接触に際して、毛管は、束ねた毛管の空間的配置により制御された正確な位置で小容量のバイオサイト溶液を同時に運搬する。
【0078】
本発明では、貯蔵容器は、標準的フォーマットのマイクロタイタープレートまたは小容量の液体を保持するように設計された特製プレートからのサンプリングを可能にし、蒸発による損失または交差汚染の可能性を最小限に抑えて毛管がピコリットルの容量の液体を数千個のバイオサイトに効率的に分注することを可能にする。
【0079】
ロボットアームにより運搬可能なマイクロプレート中に含まれるバイオサイト溶液の自動的変化を可能にするために、貯蔵容器ホルダーの蓋をZ軸運動制御装置に結合させることができる。これは、薬物の発見に使用する小分子ライブラリーなどの多数の溶液を含有するアレイのセットをプリントするのに有用である。
【0080】
また、本発明では、毛管は、ポリイミドの外層でコーティングされた融解石英からなることが可能である。これらの管は、種々の幅および内径を有する任意の長さのものが商業的に入手可能である。好ましい寸法は、外径(OD)80〜500μmおよび内径(ID)10〜200μmである。毛管の束はロボットアームに固定することができ、毛管をアレイ鋳型に通すことにより該束を正確な形態で保持することができる。アレイ鋳型は、毛管を所望の配置および間隔で維持するように設計された構造体であり、金属格子またはメッシュ、強固に保持された布メッシュ、流体運搬毛管を収容するのに十分な内径を有する「スリーブ」管の束、または孔またはチャンネルを有する固体ブロック(例えば、有孔アルミニウムブロック)(これらに限定されるものではない)よりなることが可能である。
【0081】
示されている実施形態では、プリント固定具の最上部の結合部位に通した外径190μmの毛管を使用している。該管は、結合部位から、プリント中に毛管が曲がるのを可能にする領域を通過して伸長する。柔軟化領域以降は、毛管は、アレイ鋳型または1組の融解石英スリーブ(アルミニウムホルダーアセンブリにより格子形態で保持されているもの)を通る。該毛管スリーブ/アレイ鋳型は、重要な革新をもたらす。また、アレイ鋳型/毛管スリーブは、毛管が滑らかに且つプリント中に垂直軸方向で互いに独立して移動することを可能にする。
【0082】
該プリント系は、マイクロプレートウェルの底表面に広がる高密度プローブアレイをプリントする。これを達成するためには、該プリント系は、正確なプリントパターンを維持しなければならず、不規則な表面に適合しなければならない。正確なパターンを維持するためには、強固な管を使用することが可能であろう。しかしながら、それらは、不規則な表面に容易に適応することはできない。柔軟な管は、不均一な表面上にプリントするものの、正確なプリントパターンを維持しないであろう。その強固なスリーブは、アルミニウムホルダーアセンブリの下方に約2cm伸長し、柔軟な外径190μmの融解石英毛管を支持し、この距離にわたり、正確な格子パターンを維持するのに必要な構造的剛性を付与する。また、該スリーブは、190μmの管がプリント中にZ軸方向に滑らかに移動するのを可能にする。この能力は小さな外径の毛管の柔軟性と共に、完全には平坦でない又はプリント固定具に対して完全には垂直でない表面上に成功裡にプリントするのを可能にする。ロボットアームは、毛管の束が該表面に接触する点を越えて0.1mm〜0.3mm伸長しているため、毛管は図4に示すたわみ領域内で曲がり、該束中の全毛管における全表面の接触をもたらす。プリント固定具が基体から退去すると、毛管は真っ直ぐになり、その元の位置に戻る。キャピラリーバンドル(capillary bundle、毛管束)プリント技術の高度な平行的特性は、2〜10,000個以上の化学的に特有のバイオサイトを含有するマイクロアレイが1回の「スタンプ」で作製されることを可能にする。該プリンターは、これらのアレイを毎秒約1個の速度でプリントする。これは、通常のロード・分注技術を用いるフォトリソグラフィックin situ合成またはロボット固着(robotic deposition)などの既存の技術に対して10倍以上の速度増加に相当する。
【0083】
フォトリソグラフィックマイクロアレイ合成では、基体ごとに核酸プローブを一度に作製するために一連のマスクを連続的に適用する。それぞれ12塩基長のオリゴヌクレオチドプローブのアレイであれば、48個のマスク(12ヌクレオチド位×4塩基)が必要となるであろう。この方法では、48個のマイクロアレイを含有するウェーハを完成するのに約16時間かかる。
【0084】
現在のロボットマイクロアレイプリンティングまたはグリッディング系は、一般に、種々のロード・分注技術に基づく。これらの技術は、2つの範疇に分けることができる。注射針、毛管などの能動ローディング(active loading)系は、複数のバイオサイトまたはアレイ要素に分注するのに十分な溶液を吸い上げた後、新たなプローブ溶液を再ロードまたは集めるために戻る。ピン形態のプリンティングまたはグリッディング系は、一度にピン1個当たり1個のバイオサイトをプリントできるにすぎない。ピンを、しばらくの間、プローブ溶液中に浸す。ピンに付着した溶液の量は、単一のバイオサイトをプリントするのに十分である。どちらの範疇も、本明細書に記載のキャピラリーバンドルプリント系によって解決される制約を有する。
【0085】
製造能力は、マイクロアレイの製造における主な制約であり、コストおよび制限された入手可能性のため、薬物の発見などの高容量適用におけるマイクロアレイの使用を制限する。フォトリソグラフィックin situ合成における制約は、有効となるために必要な長さのプローブのアレイを作製するために適用しなければならない個々のマスクの数である。製造能力を向上させるためには、製造系を重複させなければならない。このアプローチの現在の能力(1997年で約80,000個のアレイ)は、1社当たりで毎年100,000個を超えるサンプルをスクリーニングする可能性がある薬物発見の市場の要求を満たしていない。
【0086】
ロボットプリント系は、現在、大規模で連続的にマイクロアレイを製造している。流体リザーバーの形状が、しばしば、バイオサイトの同時固着の程度を制限する。これは、マイクロアレイを製造するために必要な方法を例示することにより説明することができる。「マイクロ」アレイは、典型的には2cm×2cm未満の小さな全体寸法を有する。実際のサイズは、アレイ要素の数およびそれらの間隔により決定され、試薬のコストおよびサンプルの要件を減少させるために全体のサイズを可能な限り減少させることが重要となる。複数のピンまたはデポジターを使用して平行プリントアプローチを行なう場合には、これらのデポジターの形状は、それらがプローブ溶液リザーバーと相互作用するのが可能で、なおかつ、マイクロアレイに占有される領域の境界内にぴったり合致しうるものでなければならない。プローブ溶液リザーバーとして中心間間隔4.5mmのウェルを有する標準的な384ウェルマイクロプレートを使用して1cm2の100エレメントのマイクロアレイ(10×10)を構築する場合には、該マイクロアレイ内に同時にプリントするためにはデポジターを4個しか使用できない。該アレイを完成させるためには、合計25サイクルのローディングおよびプリントが必要となろう。それに比べて、100本の毛管を有するキャピラリーバンドルプリンターでは、このアレイは単一のプリント工程で製造されるであろう。これは、ロード・分注技術を用いるロボットデポジターより50倍速い。同じアレイを0.5cm2の領域内に凝縮させる場合には、デポジターは1個しか使用できず、キャピラリーバンドルプリンターと比べて製造時間で200倍の差が生じる。
【0087】
キャピラリーバンドルプリンターの重要な特徴は、それをプリント溶液貯蔵容器に接続させる方法にある。毛管の束(キャピラリーバンドル)は、プリント(遠位)末端および貯蔵容器末端を有する。各管がマイクロタイタープレートの特定のウェル(供給チャンバー)内にウェル1個当たり管1本で浸されるように、マニホルドを介してプリントバンドル内に各管を配置する密封された容器中に、プリント溶液は保持される。現在のマルチウェルマイクロタイタープレートは、96、384または1536ウェルのものが入手可能であり、それぞれ96、384または1536個のプローブ溶液を含有することが可能である。より多数のプローブ要素を含有するマイクロアレイの場合には、図4aに例示するとおり、複数のプリント溶液リザーバーまたは貯蔵容器を単一のプリントヘッドに接続させることが可能である。この設計概念では、ロード・分注系に伴う形状の問題が回避される。柔軟な融解石英毛管をアレイ鋳型またはスリーブと一緒に集めて、中心間間隔が僅か200μmの毛管を有するプリントヘッドを作製することができる。
【0088】
封入されたプリント溶液貯蔵容器を、該プリント法のプライム工程中に不活性ガスでパージする。これはまた、プローブ溶液のために不活性環境を維持することにも役立つ。毛管内の流動は一方通行であるため、プローブ溶液の汚染は最小限に抑えられる。ロード・分注技術の場合と同様に、各プリントサイクルの後にプリント末端はリザーバー内に浸されない。これは、マイクロアレイを含有することになるチップまたはスライドの表面にデポジターが接触する接触プリント(contact printing)の場合に重要である。これらの表面は、プローブ溶液と相互作用または結合するように化学的に処理される。ロード・分注系では、残存した反応性化学物質または塵や汚れでさえも、プローブ溶液供給チャンバー内に導入される可能性がある。しばしば、プリントする溶液は、限られた量しか入手できないか、または非常に高価である。合成された又は天然源から採集および精製された数十万個の特有の化学構造体を含有する小分子ライブラリーを、可能な限り多数の潜在的疾患標的のハイスループットスクリーニングで使用する、医薬発見のための用途において、これが当てはまることが多い。これらのライブラリーは、可能な限り効率的に使用しなければならない。各プリント系に必要な流体の量は、設計によって異なる。ほとんどの場合、最低で100マイクロリットル(μL)必要であり、プリントサイクルの間の洗浄でかなりの量の溶液が失われ、1,000個未満のスライドしかプリントできない。該キャピラリーアレイプリンターでは、3μLしか必要とされず、初期プライミングに使用されるのは1μL未満である。プリント溶液のこの容量は、各毛管がアレイ1個当たり50〜100pLを分注する場合、20,000〜30,000個のマイクロアレイをプリントするのに十分な量である。ロード・分注系は、アレイ1個当たり800pL〜数nLをいずれかの位置に運搬する。
【0089】
そのような高度に平行的なアプローチは、プローブ溶液貯蔵容器の形状とは無関係にマイクロアレイの形状(2cm×2cm未満)でプローブ溶液を固着するのを可能にする。これは、プリントヘッドの1回のスタンプにおいて、2〜10,000個以上の特有の捕捉プローブ(バイオサイト)を含有する全マイクロアレイの製造を可能にする。
【0090】
プリント用貯蔵容器から出た柔軟な融解石英管(または他の適当な材料、例えばガラス、Teflonまたは他の比較的不活性なプラスチックまたはゴム、または薄く柔軟な金属、例えばステンレス鋼)は、プリントヘッド中の特定の位置に保持された一連のアレイ鋳型またはスリーブを通過する。結合部位は、水平または垂直の移動を一般に許容しない一定の位置に毛管を保持する。毛管は、この固定点から開放領域(「柔軟領域」)を経て1組のアレイ鋳型またはスリーブ中に伸長する。より低いこれらのアレイ鋳型またはスリーブは、プリントするマイクロアレイに合致した形態でプリント用毛管を保持するように機能する。アレイ鋳型は、正確なプリントパターンを維持するためにプリント用毛管の横方向の移動を制限し、一方、互いに独立した各プリント用毛管の無制限な垂直移動を可能にする。この特徴は、プリントヘッドが若干不規則または不均一な表面上にプリントするのを可能にする。プリントヘッドは下方に移動して、プローブ溶液を受け取ることになる基体と接触し、最初の接触の後、プリント用毛管のすべてが該表面と接触するのが保証されるように下方運動が継続する(距離は、その表面によって異なり、100μm〜数mmである)。結合部位(固定されたキャピラリーを保持している)とアレイ鋳型またはスリーブとの間に位置する柔軟領域は、プリントヘッドの「オーバードライブ(overdrive、過剰移動)」に適応するために各毛管が曲がるのを可能にする。プリントヘッドが基体から上方へ移動すると、プリント用毛管は再び真っ直ぐになる。
【0091】
キャピラリーバンドルは、分離した流体供給チャンバー(例えば、マイクロタイタープレート中のウェル)を含有する封入容器から出発する。各毛管は、特定のウェル(これは、通常、その他のウェルに対して特有のプローブ溶液を含有する)中に挿入される。該貯蔵容器を、しばらくの間、加圧して、毛管のすべてにおいて同時に流体の流動を開始させ、プリンターをプライムすることができる。プライムの後、ヘッドの高さ(ヘッド高)ΔH(図4に示すとおり、上側の流体リザーバーからプリント先端までの垂直距離)を調節することにより、あるいは電気浸透力または電気泳動力により(この場合、電気浸透および/または電気泳動ポテンシャルを維持し調整するよう、管、貯蔵容器および反応チャンバーを適当に修飾する)、毛管を通るプローブ溶液の連続的な流動を促進する。窒素、アルゴンなどの不活性ガスで該チャンバーを加圧することにより、該チャンバーは不活性環境を維持することが可能である。
【0092】
ヘッド高を調節することにより、プリント溶液貯蔵容器に圧力をかけることにより、プリント用毛管の長さ又は内径を変化させることにより、あるいはプローブ溶液またはプリントされる基体の表面張力を調節することにより、各バイオサイトに固着させる流体容量を改変することができる。
【0093】
複数の毛管によるプライムおよび連続的なプリントは、ロード・分注系(それは、表面と接触し、ついで更に流体を引き込むためにプローブ溶液に戻らなければならない)で生じうるプローブ溶液の汚染を防ぐ。キャピラリーバンドルプリンターの連続的なプリントは、非常に効率的であり、小容量のプローブ溶液の使用を要する用途のための実施可能な技術であることが判明している。プリント用毛管の小さな外径および内径は、5μL未満の合計容量から1μL当たり10,000スポットものプリントを可能にする。
【0094】
もう1つの実施形態では、毛管は、柔軟な又は移動可能な様態で結合部位に取付けられアレイ鋳型によりスライド可能に保持された実質的に強固な管(例えば、ステンレス鋼)であることが可能である。この実施形態では、複数の毛管を反応基体に押付け、該毛管は、アレイ鋳型を通って縦方向に移動することにより、それらの遠位末端で「平均化(even up)」して、それにより不均一な固着表面に適応するすることができる。
【0095】
3.フォトリソグラフィー/キャピラリー固着
キャピラリー固着アプローチの空間的分解能および精度を増加させるために、組合されたフォトリソグラフィー化学マスキングおよびキャピラリーアプローチを本明細書で開示する。最初のフォトリソグラフィー工程は、反応基体上の正しいバイオサイト領域を選択的に活性化する。選択的活性化が達成されたら、生じるキャピラリー固着は、均一なバイオサイト分布を与える。
【0096】
本発明では、種々の多数の基体(例えば、ガラスまたはプラスチック基体)を使用することができる。ガラス基体の場合、基体をアミノシランでコーティングして該表面をアミノ化することにより、該方法を開始する。ついで、このアミンをUV感受性保護基(例えば、「かご状(caged)スクシミダート」とも称されるα(4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル)のスクシミジルエステル)と反応させる。UV励起源(UVレーザーまたは水銀アーク)での局所照射により、遊離アミンの分離スポットが該かご状スクシミダート表面上に現れる。これは遊離酸基を現し、ついでこれを、アミンで修飾されたオリゴヌクレオチドプローブと反応させることができる。そのような方法は、比較的高い表面張力の無反応部位を有する基質領域に囲まれた局所バイオサイトの修飾をもたらす。
【0097】
プラスチック基体を使用する場合には、難水溶性であり従って高い表面張力のコーティングを与えるアミン保護基(例えば、トリチル)でアミノ化プラスチックをコーティングすることにより、この方法を開始する。ついで、励起源(例えば、エキサイマまたはIRレーザー)を用いて、光誘導性加熱によりトリチルを選択的に除去する。ついで該バイオサイト領域を、二官能性NHSエステルまたは等価体で活性化する。正味の結果は、ガラスの場合と同様であり、この場合、局所的に活性化されたバイオサイト領域が、バイオサイト領域に対するキャピラリー分注を抑制する比較的高い表面張力により囲まれた低い水性表面張力を有することになる。
【0098】
工程2:自己集合アレイ−汎用アレイ
自己集合プローブアレイまたは汎用アレイの作製および構築は、バイオサイトのオンライン形態(on-line configuration)を可能にし、この場合、標的または標的混合物の分析のために特別に設計された改変されたプローブアレイを得るために、一定のプローブアレイ(捕捉プローブ)を、1組の同類アダプター(標的プローブ)に結合させることにより活性化する。
【0099】
汎用アレイ(Universal Array)フォーマットは、プローブアレイ技術が商業的に広く実施されるのを現在妨げている著しい障害を克服する。基本的には、結合事象の高度に平行的な分析を可能にするプローブアレイは、結合パターンを解釈するための装置を製造し精巧にするための特別の設備を必要とする。残念なことに、バイオサイトアレイを製造するための現在の製造法(例えば、インクジェット、ロボット固着またはフォトリソグラフィーin situ合成)は、比較的に柔軟性に欠ける。これらの技術は、設置および運転のコストを賄うために多数の特異的アレイを製造するように設計されている。したがって、小さな容量の特製(custom)アレイは、法外に高価なものとなろう。
【0100】
これに対して、本明細書に開示する汎用アレイ系は、捕捉プローブアレイ専用の効率的な大容量の製造技術を用いることにより、この問題を解決する。この方法では、最終使用者が容易に「自家製または特製」化できる予備製造された高密度バイオサイト捕捉アレイを、各買い手が使用することができる。本発明では、「標的アナライト」を、プローブアレイに対する結合を介して分析される溶液状態の溶質と定義する。要するに、アレイの特製化は、買い手の研究室で行なうことができる。最終使用者は、2つの分離した結合ドメイン[1つの結合ドメインは、該アレイ中の特異的メンバーと同類であり(捕捉ドメイン)、もう1つの結合ドメインは、関心のある標的アナライトに特異的である(標的ドメイン)]を含有する二官能性標的プローブを合成したり製造する。実際のアッセイでは、最終使用者は、彼らの特製の二官能性プローブを、アナライトの液相混合物に付加し、予備製造された汎用捕捉アレイを含有する反応チャンバー中でインキュベートする。別法として、まず該捕捉アレイを二官能性プローブと共にインキュベートし、ついで該アナライト混合物を加える(図5を参照されたい)。図5aは、汎用アレイを示す概要図である。該アナライトは、標的および捕捉アレイの両相補的部分に対するそれらの二官能性プローブの選択的結合によりサンドイッチ式に該アレイ上に自己集合する。得られたアドレス可能な自己集合したアレイは、相補的近位検出器/イメージャーで容易に分析される。表面に結合する捕捉プローブおよび標的プローブの構築に関する概要を、以下に開示する。
【0101】
1.捕捉プローブ
表面に結合される(表面結合)汎用捕捉プローブは、固体支持体に結合したバイオサイトのアレイ内に配置される。各バイオサイトは、該アレイ中の他のすべてのバイオサイトで見出されるものと機能または組成において異なる多数の特異的分子よりなる。これらの捕捉プローブは、標的プローブの捕捉ドメインに対する迅速かつ効率的な結合を得るために特異的な組成または配列を有するように設計する。また、特異的な組成は、捕捉プローブとそれらの特異的標的プローブとの間の交差会合が最小限になるように選択する。
【0102】
特に核酸捕捉プローブの場合には、表面結合捕捉アレイは、最適な長さ、塩基組成、配列、化学およびプローブ間相違になるように設計すべきである。
【0103】
核酸捕捉プローブの長さは、2〜30塩基、好ましくは5〜25塩基となるべきである。より好ましくは、その長さは、捕捉プローブ間の十分な相違を可能にする約10〜20塩基、最も好ましくは約16塩基長である。また、10−9Mと同程度に希薄な標的プローブ混合物の添加により捕捉プローブアレイが活性化されうるよう、標的プローブ結合親和性を増加させるために、長さをこの範囲で調節する。これは、標的プローブが小規模かつ安価で合成されるのを可能にする。また、捕捉プローブアレイからの標的プローブの解離の速度を減少させるために、長さをこの範囲に調節する。これは、特異的に結合した標的プローブが該表面から解離することなく未結合標的プローブを除去するために活性化捕捉プローブアレイが完全に洗浄されるのを可能にする。そのようなサイズ範囲の捕捉プローブを使用した場合、標的プローブと捕捉プローブとの相互作用によりそれらの間で形成される複合体は、後続の風乾の間じゅう安定であり、冷凍により無限に貯蔵することが可能である。
【0104】
捕捉プローブアレイのセットに関する好ましい塩基組成率は、約30〜40%のG、30〜40%のC、10〜20%のA、10〜20%のTである。生じる捕捉標的プローブの対合の熱力学的安定性が高くなり、そのため低い標的プローブ添加濃度(例えば、10−9Mの範囲)での表面の活性化が可能になるよう、比較的にG+Cに富む捕捉プローブが望ましい。該捕捉プローブのセットにおける最隣接頻度は、G-GまたはC-Cの隣接を最小限に抑えるはずである。この基準は、表面に対する捕捉プローブの結合中または捕捉プローブ−標的プローブ結合段階中のGカルテット(G-quartet)の形成により媒介される副反応の可能性を最小限に抑える。
【0105】
捕捉プローブのセットでは、該捕捉プローブのセットの各メンバーが他のすべてと最大限に相違しているセット構造を得ることが望ましい。そのような最大限に相違しているセットを得るためには、以下のアルゴリズムを用いることができる。
【0106】
1)セットサイズを定める。好ましい実施形態では、16、24、36、48、49、64、81、96および100が、有用なサイズを構成する。
2)捕捉プローブセットの全体の配列構造を定める。前記の長さ及び塩基組成を用いて、そのようなパラメーターを定める。一般に、G塩基およびC塩基の数は、A塩基およびT塩基の数と等しく保たれる。この同一性は、最終セットの立体配置多様性を最適化する。したがって、そのようなセットを、式GnCnAmTmで表すことにする。
3)mおよびnで定められるセット構造の場合、ランダムな配列異性体のセットを得るために乱数発生器を使用する。
4)該ランダム配列セットの1つのメンバーは、該セットの要素#1として使用するよう選択する。
5)セットメンバー間で許容される最大類似性を定める。類似性は、局所的な対状(pair-wise)の塩基の比較の点で定義される。例えば、同じ長さnの2つのオリゴマー鎖を、5'および3'末端が正確に合うように整列させ、ミスマッチの欠如は、1〜nのすべての位置においてそれらの2本の鎖中の塩基が同一である状況を意味する。完全なミスマッチは、1〜nのすべての位置においてそれらの2本の鎖中の塩基が異なっている状況を意味する。例えば、有用な最大類似性は、16個の16マー捕捉プローブのセット内で10以上のミスマッチとなることが可能であろう。
6)ランダムな配列セットの第2のメンバーを選択し、要素#1に対するその類似性を決定する。要素#2が、要素#1に対する最大許容類似性より小さい類似性を有する場合には、それをセット中に残しておく。要素#2が、最大許容類似性より大きな類似性を有する場合には、それを捨て、比較のために新たな配列を選択する。第2の要素が決定するまで、この過程を繰返す。
7)既に選択したすべての要素に関する相違上の制約を満たす該ランダム配列セットの追加的なメンバーを連続的に選択する。
【0107】
捕捉プローブの合成においては、標準的なデオキシリボ核酸塩基のホモログ、または修飾されたプリンまたはピリミジンを有するホモログ塩基、または修飾されたバックボーン化学(例えば、ホスホルアミダート、メチルホスホナートまたはPNA)を用いることができる。
【0108】
捕捉プローブは、固体支持体に結合させるべきである。これは、該プローブをその3'または5'末端によりカップリングさせることにより行なうことができる。3'または5'ビオチン化誘導体として、3'/5'アミン修飾誘導体、3'/5'カルボキシル化誘導体、3'/5'チオール誘導体として、または化学的等価体としての捕捉プローブの合成を介して、結合を得ることができる。そのような末端修飾された捕捉プローブを、ストレプトアビジンフィルム(ビオチンの場合)との相互作用、表面カルボン酸またはエポキシド基またはハロゲン化アルキルまたはイソチオシアナート(アミンの場合)に対する、あるいはエポキシドまたはハロゲン化アルキル(チオールの場合)に対する、あるいは表面アミン(カルボン酸の場合)に対するカップリングを介して、基礎となるマイクロタイタープレートに化学的に結合させる。捕捉プローブアレイの一般的な性能特性を改変することなく、当業者に容易に知られる他の結合化学法を代用することが可能である。捕捉プローブアレイは、ロボットまたはマイクロインクジェット技術を用いて、そのような化学法により作製することができる。
【0109】
標的プローブ活性化工程中の交差ハイブリダイゼーションを最小限に抑えるために、捕捉プローブセットの各メンバーが、該セットの平均長と同一または1塩基だけ異なる長さを有し、該セットのすべての他のメンバーと同一または実質的に類似している全総塩基組成を有するように、捕捉プローブセットを構築する。これらの2つの基準は、すべての標的プローブ/捕捉プローブの対合の自由エネルギーが同一になるのを可能にするよう相互作用する。前記アルゴリズムは、プローブのそのようなセットを与える。
【0110】
該捕捉プローブセットの各メンバーの配列が、該捕捉プローブセットの他のすべてのメンバーと少なくとも20%、好ましくは40%、より好ましくは50%、最も好ましくは60%異なっていることが重要である。配列相同性のこの程度(該セットの任意の2つのメンバー間で80%未満)は、標的プローブが、それが結合するように設計されているプローブセット以外のプローブセットのメンバーと結合するのを妨げる。
【0111】
前記で大まかに説明した一般的な設計基準を満足する多数の捕捉プローブが存在する。以下に記載するものは、前記基準を適切に満足する前記アルゴリズムにより作製される16要素(エレメント)の捕捉プローブセットの具体例である。
【0112】
この具体例では、全16個のセットメンバー間で、捕捉プローブの長さは16塩基に保たれ、塩基組成はG5C5T3A3に固定されている。捕捉プローブ要素1個当たり僅か3個のG-GまたはC-C対合が存在するにすぎない。この個々の捕捉プローブセットは、その3'末端でアミン結合を介してマイクロタイター支持体に結合するように設計されている。しかしながら、5'アミン結合または他の化学法を用いることも可能であろう。
【0113】
最上部のアレイ要素(#1)を、標準体として選択した。このセットの詳細な検討から、該セットの各メンバーが他のすべてのメンバーと少なくとも10塩基のミスマッチで異なり、捕捉プローブセット要素間の50%以下の相同性の基準を満足していることが示される。
【0114】
a=アミド結合を介してカルボキシラート修飾表面に又はエポキシド修飾表面に結合している、固体支持体に対するアミン結合(例えば、3'プロパノールアミン)。
【0115】
2.標的プローブ
標的プローブセットは、捕捉プローブセットに特異的に結合するように設計し構築する。すなわち、各標的プローブ要素が、捕捉プローブセットの1つの要素だけに結合するようにする。したがって、標的プローブの混合物を、マイクロタイタープレートの底に形成された捕捉プローブアレイまたは同等の表面に投与することができる。汎用アレイの核酸の実施形態では、結合の後、標的プローブセットは、ワトソン・クリック塩基対合により捕捉プローブセットメンバー間で分配され、それにより特有の結合ドメイン(被検体と同類)をプローブアレイ中の各部位へ運搬することとなる。
【0116】
特製の核酸に基づく二官能性標的プローブを合成するために最終使用者が使用することができる2つの一般的な方法がある。最も単純で最も直接的な方法は、標準的な自動DNA合成装置を用いて、リンカー領域により分離した2つのドメイン(捕捉およびアナライト)を含有する一本鎖オリゴヌクレオチドを合成するものである。1つのクラスとして、核酸実施形態用の二官能性標的プローブは、捕捉プローブセットの1つの要素にワトソン・クリック的に相補的な捕捉プローブと同類の構造ドメインを有する。したがって、その長さ及び塩基配列は、逆平行ワトソン・クリック二重らせんの形成の標準的な規則で、捕捉プローブの長さ及び塩基配列により定められる。さらに、標的プローブはまた、以下の構造ドメインの1つを含有する。
【0117】
a.溶液状態の核酸標的アナライトの小さなセグメントに対する同類体
これは、分析する溶液状態の標的核酸にワトソン・クリック対合で相補的である標的プローブの成分である。一般に、その配列は、捕捉プローブと同類であるドメインの配列に対して何ら相関性を有さない。しかしながら、いくつかの一般的な設計基準は満たされるべきである。
【0118】
第1に、標的プローブの合成を容易にするための、約5〜30塩基長、好ましくは約10〜25塩基長の領域中の特有の(ユニーク)ドメイン。より短い標的プローブドメインでは、アナライト結合親和性が不十分であり、より長い標的プローブドメインは、合成上の困難性を示す。
【0119】
第2に、該ユニーク配列の長さが、捕捉プローブセットと等しいか又はそれより長い場合、該ユニーク要素は、任意の捕捉プローブ要素のワトソン・クリック相補体に対して80%以下の相同性の配列を有すべきである。この基準は、ユニーク標的プローブセグメントと捕捉プローブセットのメンバーとの不適当な会合を排除するものである。
【0120】
b.PCR、LCRなどの生化学的増幅に使用するプライミング部位に対する同類体
このドメインは、本質的には、汎用アレイ中の捕捉プローブ部位に対して相補的なテイルを有する核酸増幅プライマーを与える。増幅後、得られたアンプリコンのセットを、捕捉プローブアレイに直接ハイブリダイズさせ、後記のとおり分析することができる。
【0121】
c.直接結合のための化学修飾
二官能性DNA標的プローブを合成するもう1つの方法は、単一の二官能性分子中への2つのドメインの後続の化学的結合を可能にする反応性官能性を取込むために化学的に改変されたアナライト・捕捉配列オリゴを個々別々に合成することよりなる。一般には、2つの配列が頭−尾または尾−頭で縮合するのを促進するために、各オリゴの5'または3'末端を化学的に改変する。2つのオリゴの縮合のための種々の適当な官能性を与える多数の方法が、核酸合成の当業者に公知である。好ましい官能性には、カルボキシル基、ホスファート基、アミノ基、チオール基およびヒドロキシル基が含まれる。さらに、ホモまたはヘテロ二官能性活性化試薬でこれらの官能性を化学的に活性化することにより、該活性化オリゴともう1つの官能基化オリゴ配列との縮合が可能となる。縮合を引き起こす種々の官能性および活性化試薬のいくつかの例を、以下に挙げる。
【0122】
【0123】
関心のあるアナライトに選択的に結合しうる特異的に修飾されたプローブ、核酸または他の分子に対して直接結合が可能となるよう修飾することが可能であり汎用アレイの捕捉プローブセットと同類である標的プローブドメインの具体例を、図5bに示す。図5bは、標的プローブに対する直接結合を示す概要図である。図5bに示すとおり、標的プローブは、2つの部分から構築する。第1部分は、第2標的複合体(TP2)に結合するための結合要素を有する捕捉プローブと相補的な予め合成されたプローブ(TP1)である。第1標的成分は、そのまま使用できる形で提供されるため、そのような実施形態は消費者にとって非常に簡便である。
【0124】
そのような2小片(two piece)アプローチのためのサンプルプロトコールは、以下のとおりである。
【0125】
1)商業的入手元、例えばGenometrix(3'アミン、5'チオールとして合成されている)からTP1を得る。
2)TP2をアミンとして合成する。
3)TP2を「バッファーA」中のヨード酢酸無水物と混合して、ヨードアセタート誘導体TP2を得る。
4)G25遠心カラム上でエタノール沈殿を行ない、TP2*だけを含有する排除体積を集め、小分子反応物を除去する。
5)TP1+TP2*を「バッファーB」と混合する。
6)G50遠心カラム上で分離する。
【0126】
本発明では、「バッファーA」は10mMクエン酸ナトリウム(pH7.0)よりなり、「バッファーB」は10mM炭酸水素ナトリウム(pH9.0)よりなる。
【0127】
3.リンカー
いくつかの場合には、標的プローブの2つの核酸ドメインを分離して標的プローブと溶液状態の核酸アナライトとの間の立体的相互作用を最小にするために、化学的リンカーが必要かもしれない。このリンカーは、核酸ビルディングブロックから構築することができる。例えば、配列Tn(n=1〜5)が好ましい。なぜなら、Tの伸長は、容易に合成でき、捕捉プローブ、他の標的プローブドメイン、または液相の核酸アナライトとの配列依存的相互作用の可能性を最小限に抑えるからである。
【0128】
しかしながら、該リンカーは、より好ましくは、オリゴ-エチレングリコラート結合体(-O-CH2-CH2-O-)nなどの不活性ポリマーから合成する。n=3の結合体が、標準的なホスホジエステル結合を介したオリゴ核酸への簡便合成のためのホスホルアミノダートとして、商業的に入手可能である。必要に応じて、1〜5個のリンカーを導入することができる。
【0129】
前記捕捉プローブセットに基づく本発明の具体例を、以下に詳しく説明する。ここでは、リンカードメインを、ホスホジエステル結合により標的オリゴヌクレオチドバックボーン中に結合したトリエチレングリコラートシントンの2回繰返し体として記載する。
【0130】
96ウェルマイクロタイタープレートの単一ウェル内に16個の捕捉プローブを有する汎用アレイを、図5cに示す。図5cは、4×4汎用アレイのマルチマイクロタイターウェルの近位CCDイメージを示すプリントされたコンピューターイメージである。図5cでは、該アレイ内の16個中15個のオリゴ要素において、標的特異的ハイブリダイゼーションが認められる。マルチウェル反応容器中の3個の分離した反応チャンバー中で同時に行なった15個の標的特異的ハイブリダイゼーションの結果を、近位CCDイメージャーから得たデジタルイメージから定量的に評価する。ハイブリッドは、抗ジゴキシゲニン抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびELFTM蛍光を用いて検出された、ジゴキシゲニンで末端標識されたオリゴヌクレオチド標的である。このアッセイ(Molecular Probes, Inc.から入手)では、該抗体がジゴキシゲニン基に結合し、アルカリホスファターゼを該結合標的に運搬する。該アルカリホスファターゼは、非蛍光性ELF前駆体を、UV照射により検出可能な蛍光性産物に変換する。
【0131】
図5dは、4×4汎用アレイの単一マイクロタイターウェルの近位CCDイメージを示すプリントされたコンピューターイメージである。図5dは、アレイ中の16個中4個のオリゴヌクレオチド要素(A2、B2、C2およびD2の位置)の標的特異的ハイブリダイゼーションを示す。望ましいことに、有意な交差反応が存在しないことに注目されたい。該交差反応は、設計において最大相違の制約を課すことにより特異的に最小限に抑制されている。ハイブリッドは、前記のとおり、抗ジゴキシゲニン抗体−アルカリホスファターゼコンジュゲートおよびELFTM蛍光を用いて検出された、ジゴキシゲニンで末端標識されたオリゴヌクレオチド標的である。
【0132】
4.非核酸実施形態
迅速でハイスループットの薬物スクリーニングには、小分子汎用アレイを使用することができる。このフォーマットでは、表面結合捕捉プローブは、固相支持体に結合した分離したバイオサイト中に配置された小さなハプテンまたは分子よりなる。各バイオサイトは、特異的にアドレス可能な共有的に固定化された小分子(例えば、ハプテン、薬物およびペプチド)よりなる。これらの有機捕捉分子は、二重特異性リガンドと高い親和性で会合するように設計する。これらのリガンドは、小さな固定化有機分子(捕捉プローブ)と同類のドメインと、目的のアナライトと同類であるドメインとを含有する。アナライトと同類のドメインは、この標的に直接的に又はアナライト上の標識に会合することが可能である。
【0133】
二重特異性リガンドの具体例には、抗体:抗体、抗体:受容体、抗体:レクチン、受容体:受容体、二重特異性抗体、抗体:酵素、抗体:ストレプトアビジン、および抗体:ペプチドコンジュゲートが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
アナライトには、dsDNA、ssDNA、全RNA、mRNA、rRNA、ペプチド、抗体、タンパク質、有機酵素基質、薬物、農薬、殺虫剤および小有機分子を含めることができるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
逆に、巨大分子リガンドが捕捉プローブとなるよう、小分子汎用アレイ用のフォーマットを反対にすることができる。したがって、汎用アレイ(巨大分子汎用アレイ(Macromolecular Universal Array)は、固定化捕捉プローブとして、抗体、タンパク質、多糖類、ペプチド、受容体など(これらに限定されるものではない)の大きな巨大分子を含有することが可能である。同様に、巨大分子バイオサイトと特異的かつ高い親和性で会合する特有の(ユニークな)小分子タグを、アナライトと同類の種々のプローブに共有結合させる。これらの標識プローブは今度は、捕捉巨大分子および標的アナライトの両方と同類の二重特異性成分を表す。小分子(ハプテンまたは薬物)のいくつかの代表例を、後記表1に挙げる。これは、ハプテン、ステロイドホルモンおよび他の小分子薬物に対する市販の抗体の部分的な一覧にすぎない。これらの二重特異性小分子で標識される巨大分子には、例えば、抗体、受容体、ペプチド、オリゴヌクレオチド、dsDNA、ssDNA、RNA、多糖類、ストレプトアビジンまたはレクチンが含まれる。特異的抗体が入手可能な48個の代表的化合物の部分的な一覧には、フルオレセイン、ジニトロフェノール、アンフェタミン、バルビツール酸誘導体、アセトアミノフェン、アセトヘキサミド、デシプラミン、リドカイン、ジギトキシン、クロロキニン、キニン、リタリン、フェノバルビタール、フェニトイン、フェンタニル、フェンシクリジン、メタンフェタミン、メタニフリン、ジゴキシン、ペニシリン、テトラヒドロカンナビノール、トブラマイシン、ニトラゼパム、モルヒネ、テキサスレッド(Texas Red)、TRITC、プリマキン、プロゲステロン、ベンダザック、カルバマゼピン、エストラジオール、テオフィリン、メサドン、メトトレキセート、アルドステロン、ノルエチステロン、サリシラート、ワルファリン、コルチゾール、テストステロン、ノルトリプチリン、プロパノロール、エストロン、アンドロステンジオン、ジゴキシゲニン、ビオチン、チロキシンおよびトリヨードサイロニンが含まれる。
【0136】
DNAに基づく、小分子に基づく又はタンパク質に基づく汎用アレイの一般的概念は、大きな多様性、および最終使用者にとっての利便性を可能にする。記載されている種々の形態は、多種多様なアナライト混合物の、高度に平行的で同時に行なえる多重化されたハイスループットのスクリーニングおよび分析を可能にする。
【0137】
工程3:分子標識方法
分子標識方法は、大きな近位領域の検出/イメージングに適合した標的分子の汎用標識(蛍光、化学発光など)に関連している。
【0138】
1.序論−通常の標識
標識は、当業者に公知の種々の多数の方法のうちの1つにより行なうことができる。一般に、核酸ハイブリッドの標識および検出は、一般的な2つのタイプ(すなわち、直接方法および間接方法)に分けることができる。直接方法は、DNAプローブに対するシグナル生成部分(例えば、同位体、発蛍光団または酵素)の共有結合または直接酵素取込みを利用する。間接標識ではハプテン(例えば、ビオチンまたはジゴキシゲニン)を使用し、それを核酸プローブ中に導入(化学的または酵素的のいずれかによる)し、ついでシグナル生成部分(例えば、発蛍光団、またはシグナル生成酵素、例えばアルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ)にコンジュゲートされたストレプトアビジンまたは抗体などの二次試薬で該ハプテンを検出する。
【0139】
例えば、会合/ハイブリダイゼーションの検出方法には、蛍光標識、放射性同位体標識、化学発光標識、生物発光標識、比色標識および電気化学発光標識が含まれるが、これらに限定されるものではない。多数の公知の標識技術(例えば、蛍光、放射性同位体、化学発光、生物発光および比色標識)は、ハイブリダイゼーション/会合溶液から過剰な標的を除去するために洗浄工程を必要とする。これらのいくつかを、以下で説明することにする。
【0140】
2.蛍光標識
蛍光標識は、いくつかの理由で本発明に適している。まず、放射性同位体などの潜在的に危険な物質が避けられる。さらに、蛍光標識法は、化学発光法より簡便である。なぜなら、後者は、溶液状態での酵素反応および検出を必要とするからである。最後に、蛍光標識アプローチは、標的分子1個当たり数百個の蛍光色素分子の結合を可能にする二次結合化学を利用することにより、最も安全な標識技術のなかで最高のシグナル−ノイズ比(SNR)が得られるように改変することができる。
【0141】
考慮される個々の蛍光色素には、臭化エチジウムなどの市販の物質、および関連化学成分において提案されている新規色素が含まれる。これらの標識物質は、近UV(300〜350nm)領域に強力な吸収バンドを有し、一方、それらの主発光バンドは、該スペクトルの可視(500〜650nm)領域内にある。したがって、これらの蛍光標識は、提案されている近位CCD検出アッセイに最適のようである。なぜなら、該装置の量子効率は、励起波長(337nm)では蛍光シグナル波長(545nm)より数桁低いからである。したがって、発光の検出の観点から言えば、ポリシリコンCCDゲートは、UV領域中の入射光の寄与を濾去するための組込み容量を有するが、提案されている蛍光リポーター基が生成する可視蛍光に対して非常に高感度である。UV励起に対するそのように本質的に著しい識別は、該CCDにより大きなSNR(100以上)を得るのを可能にする。
【0142】
3.電気化学発光標識
電気化学発光または電気的化学発光(ECL)標識(例えば、ルテニウム(Ru))は、過剰な標的を溶液から除去するための洗浄工程を必要とせず、非常に高感度である。簡単に説明すると、検出方法としての電気化学発光では、反応チャンバーの内部表面を導電体(例えば、金)でコーティングし、この導電表面にバイオサイトを結合させる(図6を参照されたい)。図6は、近位CCDイメージングによる反応容器内でのECLの実施を示す概要図である。1個のマイクロタイターウェル(96マイクロタイターウェルプレートのもの)を反応チャンバーとして使用して、前記のいくつかの方法(インクジェット、キャピラリーまたはフォトリソグラフィー/キャピラリー)の1つにより該マイクロタイターウェルの内部領域上にバイオサイトを固着させる。
【0143】
この導電性表面は陰極(正リード(positive lead))として作用し、陽極(負リード(negative lead))は、中央部から突出する電極を有する金属カップを反応チャンバー(マイクロタイターウェル)中に挿入することにより設ける。該電極は、それがハイブリダイゼーション溶液中に挿入されるように配置する。陽極にかける電圧は、光量子(光)の形態でエネルギーを放出する標識分子表面において電気化学的事象を誘発する。
【0144】
該特異的ECL標識(例えば、Ru)は、通常の手段により標的分子に結合させる。その標識された標的をハイブリダイゼーション溶液に加える。Ru標識標的とバイオサイトとの間でハイブリダイゼーションが生じたら(例えば、ハイブリダイゼーションが完了するのに十分な時間が経過した後)、電圧をかける。すると、バイオサイトと会合(ハイブリダイズ)したRu標識標的だけが発光し、検出されることとなる。Ru標識標的が検出されるためには、それは陰極の近傍に存在している必要がある。したがって、バイオサイトと会合していない残存した過剰のRu標識標的は、発光しないことになる。
【0145】
ECL反応容器の概要を図7に示す。図7においては、薄膜基体(例えば、プラスチック、ガラスなど)に導電体(例えば、金、白金など)でパターンを付して(パターン化)、反応チャンバー内に電極を形成させる。つぎに、前記のいくつかの方法(インクジェット、キャピラリーまたはフォトリソグラフィー/キャピラリー)の1つで、該パターン化電極上にバイオサイトを固着させる。最後に、得られた薄膜基体を、反応チャンバーの底として機能する反応容器上に結合させる。
【0146】
4.ランタニドキレート標識
表面に非特異的に吸収されてシグナルバックグラウンドを増加させる傾向があることが知られているエチジウムに基づく蛍光リポーター基に代わる方法として、本発明では、芳香族ランタニド(Ln)キレーターを使用することができる。ランタニドイオン(特に、TbおよびEu)は、1に近い蛍光収率、および1年〜100μ秒までの発光寿命を有するが、それらは光を弱くしか吸収しないため、好ましくない発光色素である。しかしながら、適切に選択された芳香族ドナーによりキレート化されると、エネルギー転移が生じ、高い総発光収率を得ることができる。DPA(ジピコリン酸)は、そのような芳香族Lnキレーターの典型例であり、優れた光物理学的(photophysical)特性を有する。しかしながら、その吸収極大は260nm付近であり、これはDNA吸収バンドと重なり、したがって近位CCDアプローチには不適当である。そのため、適当な吸収特性を有し標的分子に直接的または間接的に結合する能力を有する修飾DPA誘導体の合成を開発した。
【0147】
Lnイオン1個当たり3個のDPA等価体が結合するため、好ましいアプローチは、該修飾DPAをポリマー性格子(これは、接近したキレーター間隔を与え、有用なDNAまたはRNA結合特性を有するように設計することが可能である)に結合させることである。これらの結果は、縮合(fused)二環性DPA誘導体が、好ましい候補であることを示唆している。
【0148】
図8は、ランタニドキレーターを示す化学式である。図8に例示する2つのクラスのポリマー性格子を使用して、どちらも104の分子量範囲の合成ポリペプチドの使用に基づいてDPA誘導体を結合させることが可能である。合成は、単純なDPA−ペプチドコンジュゲートに関して記載されているとおりに行なうことができる。第1ポリマーは、シトシンとのアミノ交換反応を介してRNAに共有結合させるために使用する。このペプチド格子は、単純なポリ-L-lysであることが可能である。第2のアプローチは、修飾DPAをDNA結合性ペプチド(これは、非共有的核酸結合により該LnキレートをRNAへ運搬するために使用することができる)にカップリングさせることを含む。例えば、ペプチドをLys3Arg1ランダムコポリマー(平均分子量104)として溶液中で合成することができる。Lys残基を該修飾DPAコンジュゲートに変換した後、ポリアルギニンの公知のヘリックス選択性を利用して複数のArg等価体と会合させることにより、RNA結合を駆動させることができる。臭化エチジウム(EB)に関しては、ハイブリダイゼーションストリンジェンシーを維持するために洗浄した後、非共有的キレーターコンジュゲートを加えることができる。
【0149】
工程4.検出系
検出系は、大きな近位領域(proximal large area)の検出器/イメージャーを使用する、反応チャンバーを含有する反応容器中での平行的な検出および/またはイメージングに関連している。
【0150】
1.概略的説明
多重化分子分析系のハイブリダイゼーション法の後、反応容器の反応チャンバー中の各バイオサイトに結合したハイブリダイズした標的分子の量を、定量的に測定しなければならない。本発明においてハイブリダイゼーションを定量するための好ましい検出/イメージング系は、後記で更に詳しく説明するとおり、近位荷電結合素子(CCD)検出/イメージングである(固有の汎用性(化学発光、蛍光および放射性同位体標的分子リポーター基に適応する)、ハイスループットおよび高感度のためである)。
【0151】
多重化分子分析系に使用する検出/イメージング装置は、複数の固体イメージング装置、例えばCCDのアレイ、フォトコンダクター(光導電体)オンMOS(photoconductor-on-MOS)アレイ、フォトコンダクターオンCMOSアレイ、電荷注入装置(CID)、フォトコンダクターオン薄膜トランジスタアレイ、アモルファスシリコンセンサー、フォトダイオードアレイなどを含むレンズ無しのイメージングアレイよりなる。該アレイは、サンプル(バイオサイトにハイブリダイズした標的分子)の近くに固着させ、サイズにおいては反応チャンバーと同等である。このようにして、サンプルとイメージングアレイとの間にレンズを1個も使用しなくても、結合した標的分子の空間的分布の比較的大きなフォーマットデジタルイメージが得られる。この装置は、
1)高感度(サブアトモル(subattomole)のDNAの検出)、
2)ハイスループット(イメージ収集の完了に数秒)、
3)広いダイナミックレンジにわたる直線的な応答(3〜5桁)、
4)低いノイズ、
5)高い量子効率、および
6)速いデータ収集
をもたらす。
【0152】
さらに、図1に例示するとおりイメージングアレイをサンプルの近くに配置することにより、収集効率が少なくとも10倍(例えば通常のCCDカメラで見出されるレンズに基づく任意の技術の100倍以上)改善される。したがって、サンプル(発光体または吸収体)は、検出器(イメージングアレイ)にほぼ接触するため、通常のイメージング用光学的部品、例えばレンズおよび鏡が不要になる。無レンズCCDアレイ装置は、光量子およびX線粒子の両方に対して非常に高感度であるため、この装置は、放射性同位体、蛍光および化学発光標識分子を検出し定量的にイメージングするために使用することができる。したがって、放射性同位体から蛍光色素にわたる多数の分子標識技術と共に、単一のイメージング装置を使用することができる。
【0153】
本明細書に開示する検出/イメージング装置の発明は、2つのサブクラスに分類することができる。第1のサブクラスは、サンプルサイズに匹敵する比較的大きなフォーマット領域内に複数のイメージング装置を配置する静的なプラットフォームを含む。
【0154】
第2のサブクラスは、イメージング装置のアレイまたはサンプルのいずれかをお互いに関して移動させることにより比較的大きなフォーマットのサンプルをイメージングするためのイメージング装置のより小さなセットを可能にする動的なプラットフォームを含む。
【0155】
したがって、検出/イメージャーの発明の動的な実施形態は、一般に、比較的大きなフォーマットにおけるサンプル(標的分子)からの/による粒子放出の空間的および/または時間的分布の超高感度の検出、高い分解能の定量的デジタルイメージングおよび分光学の方法および装置に関する。本発明の装置は、以下のものを含む:
a)検出される粒子分布の比較的大きなイメージを、光学的レンズを使用することなく得るための、大きな領域の検出アレイ、
b)効率的なイメージングのための方式でセンサーアレイまたはサンプルのいずれかを移動させるためのスキャナー、
c)サンプルを励起したり又はサンプルによる吸収を得るためのエネルギー源。
【0156】
最適には、サンプルイメージに対する検出アレイサイズの比率は、静的フォーマットでは1、動的フォーマットでは1未満である。
【0157】
多重化分子分析で使用する近位検出器/イメージャーの電子的な概要図を、図9に示す。図9は、多重化分子分析系の電子的スキームを示す概要図である。図9に例示するとおり、反応容器は、センサーアレイに結合した光ファイバー面板上に直接配置する。該面板は、ルーチンなクリーニングに適応するためのセンサーの分離、および冷却センサー運転下での超高感度検出のための熱的な分離をもたらす。また、該光学的面板は、選択的コーティングを用いることにより励起照射を濾過するように機能しうる。該センサーアレイは、複数のより小さなセンサーよりなり、該複合アレイが表面領域に接近するようになっている。該励起源は、標的分子に結合した蛍光リポーター基を励起するように機能する。選択したリポーター基に応じて、該励起源は、UVランプ、レーザーまたは当業者が一般に用いる他の光源となることが可能である。該センサーアレイ駆動回路は、センサー内のピクセル電極を計時し、バイアスし、ゲートすることを含む。該冷却回路は、非常に低い熱雑音をもたらすことにより超高感度検出を可能にするためにセンサーアレイの下の熱電冷却器を制御する。基本的には、使用者が運転の必要温度を選択し、フィードバック回路を介して、該センサーアレイは、そのような温度に一定に維持される。該イメージ受信回路は、センサーアレイからデジタルイメージを得るためのものであり、前置増幅、増幅、アナログ−デジタル変換、フィルターリング、多重化、サンプリングおよびホールディング(holding)ならびにフレーム保持(grabbing)機能を含む。最後に、データ処理装置は、必要なパラメーターを分子分析の結果に与えるための、定量的イメージングデータを有する。また、デジタルイメージを表示するために、コンピュータディスプレイが含まれる。
【0158】
2.センサーアレイ装置
本発明の検出/イメージングセンサーアレイの好ましい実施形態は、図10A〜10Cに例示するとおり、大きなフォーマットモジュール中に集合した複数のCCDアレイ(CCD1...CCDN)よりなる。図10Aは、それぞれのピクセルゲート16の下部に電子34を収集する、標識された生物学的サンプル32にさらされた複数のピクセルを有するCCDアレイを示す。個々のCCDアレイは、接近して整列されており、図10Bに示すリニアアレイ型または図10Cに示す二次元の行列型の比較的大きな(1cm2以上)フォーマットイメージングセンサーを形成するように特定の形態で相互連結されている。
【0159】
検出スループットと装置のコストとの間の最良のトレードオフ解析を決定するために、多数のCCDのタイル張り(tiling)方法を検討することが可能である。ウェーハの大きさのいくつかのCCDを有する、大きなフォーマットでタイル張りされたアレイは、数秒以内で反応容器中の全バイオサイトの同時検出をもたらすであろう。しかしながら、大きな(8.5×12.2cm)CCDセンサーアレイのコストは法外なものとなる可能性がある。したがって、タイル張りされたアレイのコストを有意に減少させるためのより小さな装置の使用を比較検討する一方、該全多重化分子分析系におけるその他の方法によるスループットと同等のものを得るよう、工学的な譲歩を行なうことが好ましい。
【0160】
図10Aに示すとおり、Siウェーハ/基体12上の種々の酸化物層14を成長させパターン化することにより通常の方法で、各CCDアレイ(CCD1...CCDN)を形成させる。ついでゲート絶縁体または電解酸化物(field oxide)14上にポリシリコンまたは他の透明ゲート材料を固着(蒸着)させることにより、CCDゲート電極10を形成させる。ついで誘電体層またはポリマー層18(好ましくは、窒化ケイ素またはガラス、SiO2またはポリアミドなどの光透過性材料のもの)を、電極16の上に形成させる。
【0161】
好ましくは、標識分子の実施形態においては、点線17で示すフィルター(これは、アルミニウムまたはタングステン金属格子、または誘電体多層干渉フィルター、または吸収フィルターから形成されていることが可能である)を、誘電体層18中、表面と金属電極16との間に形成させる。このフィルターは、励起照射を遮断しサンプル20からの二次電子放出を通過するように適合させる。静的プラットフォームの実施形態では、センサーモジュールは、サンプルに対して固定されたまま維持される。したがって、比較的大きなイメージングフォーマットを達成するためには、図10Bおよび10Cに例示するとおり、複数のイメージング装置CCD1...CCDNをモジュール中に配置すべきである。それぞれ特定の用途を有する複数のモジュールを促進するために、容易な設置が可能となるよう該モジュールをパッケージングすることが可能である。種々のタイル張り方法が文献記載されており、それらを用いて装置間の断絶を最小限に抑えることが可能である(例えば、Burkeら, “An Abuttable CCD Imager for Visible and X-Ray Focal Plane Arrays”, IEEE Trans On Electron Devices, 38(5):1069 (1991年5月)に記載されている)。
【0162】
図10Aに例示するとおり、反応容器20は、CCDアレイセンサー10の近くに配置する。サンプルは、外部エネルギー源により励起することが可能であり、あるいはエネルギー粒子または照射を放出する放射性同位体で内部標識することが可能であり、あるいは蛍光性および化学発光性物質で標識した場合には(矢印30)、光量子をサンプルから放出させることが可能である。逆に、それらの存在を確認するために、直接吸収を用いることが可能である。この場合、検出器上の照明照射(illuminating radiation)の不存在が、ある特定の分子構造の存在を示すことが可能である。好ましくは、粒子放出を透過させる面板により、サンプルをCCD検出器から物理的に分離する。
【0163】
サンプルから生じた又はそれにより伝達されたアステリスク32で示されるエネルギーhνの荷電粒子または照射がCCDゲート16上に入射した場合には、CCD検出およびイメージングアレイCCD1...CCDNはシリコン12(図10Aを参照されたい)中に電子孔対(electron-hole pairs)を生成する。あるいは、感度の増加のために荷電粒子がバルクシリコン12に入射するバックイルミネーション(back illumination)フォーマットとして、CCDを構築することができる。ついで、放出した光電子34を、隣接するCCDゲート16の下で集め、通常の方法でディスプレイ上で順次読取る。
【0164】
半導体式検出およびイメージングセンサーとしては、シリコンに基づくCCDが好ましい。その主な理由は、該装置が、1〜10,000Åの広い波長領域にわたり高感度である点にある。すなわち、シリコンは、可視スペクトルから軟X線までの電磁波に対して非常に応答性である。特にシリコンでは、3,000〜11,000Åの波長領域で電子孔対を生成するのに、わずか1.1eVのエネルギーしか要求されない。したがって、可視光では、CCDゲート16上に入射した単一の光量子は、該ゲートの下に単一の電荷パケット(electron charge packet)を与え、一方、軟X線では、単一のβ粒子(典型的にはKeV〜MeVの範囲)は、数千から数万個の電子を生成するであろう。したがって、シリコンCCD装置は、低エネルギーのαまたはβ放出性同位体(3H、14C、35S)および高エネルギーのαまたはβ放出性同位体(32P、125I)に関する超高感度の検出およびイメージングをもたらす。そのため、該CCDは、可視的イメージャー(蛍光的および化学発光的に標識された分子サンプルに適用可能である)であると同時に粒子分光器(放射性同位体で標識されたサンプルおよび外部X線で照射されたサンプルに適用可能である)でもある。したがって、該CCDは、同一イメージにおける同時的なイメージングおよび分光測定をもたらす。
【0165】
各ピクセルまたはゲート16の下に集められた電荷パケットが、電子数個から百万個の範囲に及ぶことが可能であるため、該CCDは、高感度であることに加えて、広いダイナミックレンジ(5桁まで)を付与する。さらに、検出応答は、分光学的機能を促進する広いダイナミックレンジにわたり直線的である。なぜなら、集められた電荷の量は、入射光量子エネルギーに正比例するからである。したがって、写真フィルムにおける良く知られている問題点である相互分解(reciprocity breakdown)は、該CCDにおいては全く生じない。
【0166】
3.スキャニング機構
より小さいサイズでより安価なセンサーアレイを有する反応容器をイメージングするためには、それがスキャニング機構によりセンサーアレイを横切って移動しながら各カラム(行)ごとに反応容器をイメージングすることができる。断絶を最小限に抑えるために、カラムのモジュール中に複数のイメージング装置を配置することができる。また、スキャニングは、大きなファーマットサンプルの全領域にわたり連続的な高分解能イメージングを得るために意図的重複(intentional overlapping)により行なうことができる。
【0167】
実施例1
汎用アレイを使用する3個のNHS固定化ハプテンの差次的検出
この実施例では、図18および19に例示する小分子汎用アレイの実施化を示す。図18は、Hamilton 2200 Microlabロボットを使用してガラススライド上にプリントされるマイクロアレイの図式的配置である。この図式的配置は、ガラス基体上の3つの分離した共有的に固定化されたハプテン(例えば、ジゴキシゲニン、フルオレセインおよびビオチン)の相対的な空間的位置/アドレスを例示している。該ロボットは、10nL容量の各活性化ハプテン(N-ヒドロキシスクシンイミドで活性化されたもの)をアミノシラン化ガラス表面上に固着させて4×4マトリックスマイクロアレイを作製することにより、該アレイをプリントする。図示されているとおり、各ハプテンは該ロボットにより4回固着される。例えば、ジゴキシゲニンは、アドレス位置A1、B2、C3およびD4で示されるアレイアドレスに固着される。同様に、図示されているとおり、フルオレセインはアドレス位置A4、B3、C2およびD1に、ビオチンはB2、B3、B4およびC3に見出される。バッファーブランク(対照)は、A2、A3、D2およびD3の位置に固着される。これらのバッファーブランクは、ハプテン検出コンジュゲートの存在下、CCD近位検出器上でシグナルを生成しないはずである。
【0168】
これらの共有的に固定化されたハプテンマイクロアレイを、抗体/酵素コンジュゲートなどの適当な二重特異性分子(例えば、ハプテン認識部位および酵素リポーター部位)と共にインキュベートし、ついで適当な化学発光性基質を検出すると、図18に示す図式的アドレスから予想されるイメージ「パターン」がCCD検出器上に得られるはずである。この実施例では、特定の発光性基質分子を、該アレイ中の予想可能/アドレス可能なバイオサイトに、個別的にあるいは多重化形態で局在させる。
【0169】
簡単に説明すると、前記ハプテンマイクロアレイを共有的に固定化するために、以下のプロトコールを開発した。まず、22×22mmの正方形のガラス顕微鏡カバースライド(厚さ150μm)数枚を、ALCONOX界面活性剤溶液を含有する容器中で洗浄し、ついで暖かい水道水を含有する清潔な容器に移して、該界面活性剤を濯いだ。この濯ぎ工程の後、別々の2回の簡単な濯ぎを、まず100%アセトンを含有する容器中で行ない、ついで該スライドを100%メタノールの溶液中の濯ぎ液に移した。該スライドを、最後に1回、脱イオン水中で濯ぎ、微量の有機溶媒を除去した。ついで、清潔なガラススライドを37℃でオーブン乾燥した。乾燥後、それらの清潔なスライドの表面を、真空オーブン中、3-アミノプロピルトリメトキシシランの溶液の真空蒸着(固着)により誘導体化した。該スライドを金属トレイ中、リントフリーの清潔な紙タオル上に寝かした。1mlの3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Aldrich)と3mlの乾燥p-キシレン溶媒とを小さなガラスシャーレ中で混合することにより、3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびキシレンの1:3溶液を新たに調製した。該皿をアルミホイルで覆い、該ホイル中に小さな針穴をあけた。この溶液を、該ガラススライドと共に該トレイ中に配置した。ついで該トレイをアルミホイルで覆い、25"のHg真空下、75℃のNAPCO真空オーブン中に一晩放置した。翌日、該アミノシラン化ガラススライドを該真空オーブンから取り出し、使用するまで乾燥した場所で保存した。
【0170】
ハプテンマイクロアレイを自動(ロボット)的に分注しプリントするために、4個の別々の活性化ハプテン溶液を、以下のとおり調製した。まず、以下の化合物の約1mgを別々の秤量ボート(weigh boat)中に計りとった:フルオレセイン-5-(および-6)-カルビキサミド)へキサン酸、スクシンイミジルエステル、ついで1mgのスルホスクシンイミジル6-(ビオチンアミド)ヘキサノアート、ついで1mgのジゴキシゲニン-3-O-メチルカルボニル-γ-アミノカプロン酸-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル。各活性化ハプテンを100μLのDMSO中に溶解した。ついで50ulの各ハプテンを、950ulの0.1M Na2HCO3/NaCO3バッファー(pH8.05)を含有する別々の試験管中で混合した。また、50μLのDMSOを該バッファー中に含有するブランク溶液を、前記アレイ上に分注するための対照として調製した。それらの4種の溶液(100μL)のそれぞれを、マイクロタイタープレートの16個のウェル中に入れた。ついで該マイクロタイタープレートをHamilton 2200 Microlabロボット上に配置し、アミノシラン化ガラスカバースライド上の、図18の図式的配置により示される既知アドレス位置に、該ロボットの分注用針により、10nLのアリコートを収集・分注した。
【0171】
コンピュータ制御されたロボットの針による4個の別々(同一)のガラスカバースライドの微小流体(microfluid)分注の後、該アレイを15分間風乾した。該固定化ハプテンを検出するために、1×TBS+0.1% TweenR20(Tris-Buffered Saline, 100mM Tris-HCl, 150mM NaCl, pH7.5)の10ml中、該ガラススライドを10分間濯いだ。ついで個々のスライドを適当なコンジュゲート希釈液と共にインキュベートした。1×TBS+0.1% TweenR20中の1:5000希釈のステレプトアビジン:西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート10ml中で該スライドの1つをインキュベートすることにより、イメージAを得た。1:5000希釈の抗ジゴキシゲニン:西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート中で該スライドの1つをインキュベートすることにより、イメージBを得た。1:1000希釈の抗フルオレセイン:西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート中でインキュベートすることにより、イメージCを得た。最後に、第4のスライドを前記希釈度の全3個の西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートと同時にインキュベートすることにより、イメージDを得た。コンジュゲートのインキュベートの後、過剰なコンジュゲートを除去するために、10mlの1×TBS+0.1% TweenR20中プラットフォームシェーカー上での10分間の濯ぎにより全スライドを洗浄した。ついで、製造業者の推奨に従い新たに調製した化学発光基質(Pierce Chemicalから入手したSuperSignalTM Substrate)200μLを加えることにより、該スライドをイメージングした。基質を含有するスライドを、前記の近位CCD検出器上、室温で10秒間の積分時間によりイメージングした。
【0172】
図19Aは、ストレプトアビジン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、ビオチンでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。図19Aにおいて、イメージAは、ビオチンに特異的なストレプトアビジン:HRPコンジュゲートと共に小分子の4×4汎用アレイをインキュベートすることにより得た。このイメージから認められるとおり、ビオチンを含有することが既知のアドレスB1、C1、B4およびC4およびC4を有するバイオサイトだけが(図18を参照されたい)、化学発光シグナルの近位CCDイメージングを用いて検出されている。これらのバイオサイトの特異的アドレッシング(addressing)は、「箱型」のイメージングパターンを与える。
【0173】
図19Bおよび19Cに示すとおり、イメージBおよびイメージCは、示されている抗体コンジュゲートと共にインキュベートした2つの追加的な4×4マイクロアレイである。図19Bは、抗ジゴキシゲニン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、ジゴキシゲニンでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。図19Bで認められるとおり、ジゴキシゲニンを含有することが既知のアドレスA1、B2、C3およびD4を有するバイオサイトだけが(図18を参照されたい)、化学発光シグナルの近位CCDイメージングを用いて検出されている。図19Cは、抗フルオレセイン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、フルオレセインでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。図19Cで認められるとおり、フルオレセインを含有することが既知のアドレスA4、B3、C2およびD1を有するバイオサイトだけが(図18を参照されたい)、化学発光シグナルの近位CCDイメージングを用いて検出されている。したがって、これらの2つの小分子からのシグナルは、図18に示されるとおりの予想される「対角線」を与える。
【0174】
さらに、図19Dにおいては、イメージDは、単一の4×4アレイを全3個のコンジュゲートと同時にインキュベートすることによる、単一のウェル中での全3個のハプテンの同時検出を示す。図19Dは、抗フルオレセイン、抗ジゴキシゲニンおよびストレプトアビジン:HRPコンジュゲートを使用して検出されたフルオレセイン、ビオチンおよびジゴキシゲニンバイオサイトの同時イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。このイメージは、A2、A3、D2およびD3のウェルがブランクであることから予想される「H」型のパターンを与える(図18を参照されたい)。
【0175】
実施例II
用途:マイクロプレート中でのマイクロアレイ
個々の反応容器として働く複数ウェルのマイクロプレートに適応しうる該多重化分子分析系のいくつかの適用を、以下で詳しく説明する。しかしながら、新規性は、各ウェル内の複数のバイオサイトにある。すなわち、複数ウェルのマイクロタイタープレート中の各ウェルは、N個(Nは2〜1,000の範囲である)のバイオサイトを含有する。その上限は、近位CCD検出器/イメージャーと共に使用するマイクロタイタープレートの底部基体により課される分解限界に基づく。
【0176】
例えば、各ウェルまたは反応チャンバーは、図11に示すとおり、96個のバイオサイトを含有することが可能である。図11は、マイクロプレート反応容器内のマイクロアレイを示すプリントされたコンピューターイメージである。1つの単一反応チャンバーを挿入図として示す。したがって、該反応容器は、マイクロプレート1個当たり累積的に9,216(96×96)個のハイブリダイゼーション実験が可能なマイクロプレート内のマイクロアレイより実質的になり、100:1の多重化能を有する。
【0177】
近位イメージングと共に使用する特定の多重化マイクロタイタープレート反応容器は、通常の底無しマイクロタイタープレートに薄膜(典型的にはガラスまたはプラスチック)を結合させることにより作製する。現在までに試験した市販のすべてのマイクロタイタープレートは、底部基体の厚さおよび組成のため、近位イメージングには不適当である。
【0178】
バイオサイトは、該底をプレートに結合させる前または後に、開示されているいくつかの方法の1つにより固着させる。どちらの場合にも、個々のバイオサイトを含むプローブ分子をガラスまたはプラスチック表面に結合させなければならない。
【0179】
好ましい実施形態では、薄い(50〜300μm)ビニル基体を、ガラス基体の場合と同様に、シランでアミノまたはエポキシ官能基化する。薄いビニル基体を、65℃でポリビニルアルコールの1〜2%水溶液に浸す。ついで、吸着したポリビニルアルコールを、エポキシシランまたはアミノシランと反応させて、ポリマー性ヒドロキシル基を官能基化する。そのような光学的に透明なビニル基体は、近位CCD検出器上に入射する大量のUV励起源は遮断するがより長い波長(例えば、500〜650nm)は効率的に通過させるという顕著な利点を有する。これは、そのような波長領域で発光する標識された検出分子に対する、より高い感度を可能にする。
【0180】
ガラスに対する核酸プローブの結合には、Southernら(U. Maskosら, Nucleic Acids Res (1992) 20:1679-84; S.C. Case-Greenら, Nucleic Acids Res (1994) 22:131-36; およびZ. Guoら, Nucleic Acids Res (1994) 22:5456-65)が記載している良く知られているエポキシシラン法(図12を参照されたい)を用いる。図12は、ガラスおよびポリプロピレン表面への結合化学を示す概要図である。3'アミン修飾プローブでは、理論上の充填密度限界に近い1011分子/mm2の共有表面密度を得ることができる。アミノ修飾ポリプロピレンは、ガラス基体の簡便な代替物である。なぜなら、それは、安価であり300nm以上で光学的に透明だからである。アミン修飾ポリプロピレンは、アセトニトリル中で濃無水コハク酸で処理することによりカルボン酸修飾表面に変換することができる。ついでアミン修飾プローブを、H2O中で標準的なカルボジイミド化学により、この表面にカップリングさせて、109/mm2に近い密度でプローブを得る(図12を参照されたい)。
【0181】
実施例III
用途:多重化診断
該多重化分子分析系は、イムノアッセイおよびプローブに基づく診断に用いることができる。イムノアッセイでは、通常のELISAアッセイのスループットを、患者のサンプルを単一の反応チャンバー(ウェル)内で多数の抗原/抗体に同時に応答させることが可能な多重化マイクロプレートフォーマットで増加させることができる。
【0182】
同様に、プローブに基づく診断では、患者のサンプルに由来する標的分子を、遺伝病または感染症を診断するための多数のバイオサイトを含有する単一のウェル中に分注することができる。例えば、嚢胞性線維症の96個の公知突然変異に相補的な一本鎖核酸プローブを、マイクロプレート中の単一のウェル内に配置する。患者のDNAサンプルとのハイブリダイゼーションに際して、近位CCD検出器/イメージャーから得られる生じた結合パターンは、そのような公知突然変異の存在を示す。
【0183】
また、ハイスループットの、プローブに基づく感染症診断のために、該系を使用することができる。この場合、マイクロタイタープレート中の単一のウェル内のバイオサイトのアレイは、公知ウイルス株に相補的なDNAプローブを含むことが可能である。例えば、単一のウェル(反応チャンバー)内で多数の性的感染症を診断するために、プローブ(バイオサイト)のパネルを配置する。その結果、単一のマイクロタイタープレートでは、非常に迅速で費用効果的な診断試験プラットフォームを得るために、多数の患者のサンプルを多数のプローブのパネルに対してそれぞれ同時に応答させることができる。
【0184】
汎用アレイ(Universal Arays)は、単一のPCR鋳型内の複数の点突然変異の分析および検出に完全に適している。単一のPCRアンプリコン反応から複数の点突然変異の分析を試みる際に、しばしば、技術的制約に遭遇する。リボヌクレアーゼ保護アッセイ、SSCP、CLEAVASETMなどのほとんどの点突然変異分析技術は、アンプリコンまたはDNA鋳型1個当たりの単一の点突然変異の検出に良く適合し、長時間を要するゲルに基づく分離技術を必要とする。高価で長時間を要するゲル分離工程を行なわずに済む、単一のPCRアンプリコン内の多数の点突然変異の迅速な同時検出は、これらの技術の能力を十分に超えるものである。その他のより新しい、ゲルに基づかない技術(例えば、TAQMANTM)もまた、単一反応容器内での多重化分析には十分には適合しない。図13は、単一座における突然変異分析(遺伝子型決定)のための汎用アレイの使用の概念を例示する。図13は、汎用点突然変異スキャニングによる遺伝子型決定を示す概要図である。単なる例示として、図13では、このタイプの分析を例示するために単一の点突然変異のバイオサイトを用いているが、これは、図14に例示のものとおそらく同程度に容易に単一のPCR鋳型上の25個の異なる座上で同時に行なうことが可能であろう。
【0185】
簡単に説明すると、図13に示すとおり、PCR鋳型を、標準的な配列決定用混合物を含有する4本の別々の試験管(各dNTPにつき1本)内に分割(アリコート化)する。ただし、該混合物中には、ジデオキシヌクレオチドが含まれていない。その代わりに、それらの4個の別々の混合物のそれぞれにおいて、単一のα-チオdNTPを使用する。また、各混合物は、PCR鋳型上の突然変異部位から離れた唯一のヌクレオチドにアニーリングする5'末端の汎用配列または「ハンドル」を有する単一の標識プライマーを含有する(注:ユニークな汎用配列をそれぞれが有し鋳型上の異なる座と相補的である複数のプライマーは、容易に得られる)。標準的な加熱サイクル伸長反応を完了させた後、各試験管をヘビ毒ホスホジエステラーゼと共に短時間インキュベートする。配列決定反応中に伸長しなかったプライマーおよび鋳型だけが、この3'特異的エキソヌクレアーゼによる消化を受ける。3'チオホスファートエステル結合を含有する突然変異プライマーは、消化に対して非常に抵抗性である。
【0186】
この特定の実施例では、Tが該PCR鋳型上の次の相補的塩基であるため、Aの反応だけが伸長した。ついで、それぞれの消化された配列決定反応混合物を今度は、汎用プライマー配列に相補的な同一の固定化マイクロアレイを含有する4個のマイクロタイターウェルにハイブリダイズさせる。この場合、A反応混合物にハイブリダイズしたマイクロタイターウェルだけが、汎用ハンドルに相補的なバイオサイト座において陽性シグナルを与える。このようにして、単一のPCR鋳型上の点突然変異に関して96個までの座をプローブすることが可能であろう。PCRアンプリコン中の両方の鎖は、該鋳型上の同一ハイブリダイゼーション座に関して完了しなくても多数のプライマーがアニーリングするためのより多くの機会が得られるよう、このように同時に「スキャン」することが可能であろう。図13では、「5-DIG」は、5'ジゴキシゲニン標識を意味する。
【0187】
単一の標的分子内での多重化と低い標的濃度との両方が問題となるプローブに基づく診断では、汎用アレイと一緒になったマイクロタイターウェルの概念においてマイクロタイタープレートを使用するPCRまたはLCRでの増幅は、顕著な利点を有する。好ましい実施形態では、汎用「ハンドル」は、ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ連鎖反応のプライマーの5'末端上で直接合成することができ、in situ加熱サイクリングの後、該増幅産物を96個の別々のバイオサイトに同時にハイブリダイズさせることができる。このフォーマットは、検出診断上の他の利点を有する。例えば、サンプルウェルを周囲環境に開放またはさらさなくても、増幅産物の均一検出が可能である。
【0188】
図14は、マイクロタイターに基づくスループット遺伝子型決定を示す概要図である。簡単に説明すると、図14は、マイクロアレイを使用するハイスループット遺伝子型決定の概念を例示している。実際には、96個の異なる患者サンプルから単離したゲノムDNA鋳型を使用して、96個の別々のPCR増幅反応を行なうことになる。この図は、これらの反応から自動的に予め精製した96個のPCR鋳型から出発する遺伝子型決定の概念を例示している。それらの96個のウェルのそれぞれからの各精製PCR産物を、384ウェルのプレートの4個の別々のアリコート/ウェルに分割する。この新たなプレート中の各ウェルは、予め調製された配列決定バッファー混合物、25個のプライマー、耐熱性DNAポリメラーゼ、および4個のαチオ-dNTPの1個だけを含有するであろう。該プライマーは、遺伝子型決定するヌクレオチド座から僅か1ヌクレオチド離れたPCR鋳型に並列的にアニールするであろう。それらの4個のウェルのそれぞれにおいて、該配列決定混合物中の含まれているヌクレオチドに隣接して並列したプライマーが伸長するであろう。384個の反応の同時伸長の後、それらの384ウェルのそれぞれをヘビ毒ホスホジエステラーゼでin situ消化する。単一の塩基により伸長した各反応中のプライマーだけが、消化から保護される。他のすべてのDNAはモノヌクレオチドに分解する。エキソヌクレアーゼを短時間熱変性させた後、それらの全ウェルの内容物を、各ウェルの底に結合した5×5マイクロアレイとしてマイクロアレイ化された配列相補体を含有する新たな384ウェルマイクロタイタープレトに自動的に移す。消化されていない25個のプライマーのそれぞれは、該アレイ中のその対応する相補体にハイブリダイズし、各座における遺伝子型を決定するためにCCD検出器上でイメージングされるであろう。
【0189】
図15は、3個の異なる座において同時にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行なうための、この均一系多重化アプローチを例示している。図15は、多重化PCRアンプリコンの均一in situマイクロアレイ検出を示す概要図である。図15は、マイクロタイターに基づくマイクロアレイを用いる、PCR産物の特定の多重ハイブリダイゼーション検出を例示している。簡単に説明すると、この図では、3個の別々の増幅座が、同時に検出されている。各座(例えば、PCR LOCUS1)は、増幅されたPCR産物の末端を定める特別に修飾された2個の増幅プライマーにより定められる。そのペア(対)中の一方のプライマーは、フルオレセインなどの蛍光的に検出可能な標識を含有する。そのペア中のもう一方のプライマーは、2個のドメイン(1つは、単一のマイクロタイターウェルの底にアレイ化された捕捉プローブに相補的なユニーク汎用配列であり、もう1つのドメインは、鋳型増幅に特異的なものである)を含有する。該汎用配列を5'-5'連結で増幅プライマーに結合させ、それにより、目的の領域を該ポリメラーゼが増幅している際に、それがこの特別な連結部を飛び越えずに、該汎用アレイが一本鎖のモチーフとして残されるようにする。増幅されるサンプルウェル中の或る特定の鋳型が、両方のプライマー座(すなわち、検出部位および捕捉部位)を含有する場合には、CCD近位検出器により汎用捕捉アレイの相補的メンバーに対して同時にハイブリダイズし検出されうるPCR産物が生成することになる。各ウェルの底において汎用アレイのメンバーにハイブリダイズしたPCRアンプリコンだけが検出器の近くに存在するため、該アッセイは、ハイブリダイズしたアンプリコンを検出するための特別な分離工程を必要とせず、したがって事実上均一系になる。
【0190】
同様に、図16は、ギャップ(Gap)リガーゼ連鎖反応(G-LCR)によるこの多重化概念を例示している。図16は、多重化ギャップ・リガーゼ連鎖反応産物の均一in situマイクロアレイ検出を示す概要図である。ハイブリダイゼーション事象を均一的に検出する能力は、特異的バイオサイトと近位で結合した分子だけが検出器によりイメージングされ得ることによりもたらされる。図16は、マイクロタイターに基づくマイクロアッセイを用いる、ギャップ・リガーゼ連鎖反応産物の特定の多重化ハイブリダイゼーション検出を例示している。同様に、PCR産物に関して既に記載したとおり(図15を参照されたい)、この図は、3個の別々の連結依存的増幅座における同時アッセイを例示している。各座(例えば、LOCUS 1)は、ギャップ・リガーゼ連鎖反応産物の末端を定める特別に修飾された2個の増幅プライマーにより定められる。そのペア(対)中の一方のプライマーは、フルオレセインなどの蛍光的に検出可能な標識を含有する。そのペア中のもう一方のプライマーは、2個のドメイン(1つは、単一のマイクロタイターウェルの底にアレイ化された捕捉プローブに相補的なユニーク汎用配列であり、もう1つのドメインは、検出される鋳型上の領域に特異的なものである)を含有する。このプライマーに結合した汎用配列は、配列特異的一本鎖ハンドルとして機能する。サンプル中に鋳型が存在する場合には、配列指向性(sequence directed)連結が、該標識および該汎用ハンドルの両方を単一の産物中に合体させることになる。多数のサイクルの後、この増幅された連結産物は、マイクロタイターウェルの底に固定化された汎用捕捉アレイ上のその相補的メンバーに対して同時にハイブリダイズし検出され、CCD近位検出器によりイメージングされうる。各ウェルの底において汎用アレイのメンバーにハイブリダイズした連結産物だけが検出器の近くに存在するため、該アッセイは、ハイブリダイズしたアンプリコンを検出するための特別な分離工程を必要とせず、したがって事実上均一系になる。
【0191】
実施例IV
薬物の発見/スクリーニング分析
この実施例では、小分子汎用アレイは、多数のハプテン、ステロイドまたは小分子薬物に対する、高い親和性の市販の抗体を用いることが可能であろう。特異的抗体が入手可能な48個の代表的な化合物の部分的な一覧を、表1に列挙する。この表は、ハプテン、ステロイドホルモンおよび他の小分子薬物に対する市販の抗体の部分的な一覧にすぎない。
【0192】
【表1】
【0193】
小分子汎用アレイは、小分子(例えば、表1に記載のもの)を基体表面に共有結合させることにより作製する。ハプテン、ステロイドまたは薬物の固定化は、該小分子の一方の末端に官能基化部分を導入することにより行なう。これらの部分は、当業者に良く知られている(例えば、N-ヒドロキシ-スクシンイミド、マレイミド、イソチオシアナート、ヨードアセトアミドまたは他のアミンまたは硫黄反応性部分)。ついで小さな官能基化分子または薬物を、NH2またはSH2で誘導体化されたプラスチックまたはガラス基体と反応させることができる。そのような市販の活性化ハプテンのいくつかの具体例には、NHS-フルオレセイン、NHS-ビオチン、NHS-ジゴキシゲニン、マレイミド-ビオチンおよびマレイミド-テトラメチルローダミンが含まれる。
【0194】
個々の小分子バイオサイトの固着の後、ある与えられたバイオサイトに対する特異的結合事象を空間的に局在化するために、二重特異性リガンドを使用することができる。該二重特異性リガンドは、抗体-抗体コンジュゲート、抗体-受容体、抗体-ストレプトアビジン、抗体-ペプチド、抗体-小分子コンジュゲートまたは二重特異性抗体を含むことが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0195】
該二重特異性リガンドは、基体表面(バイオサイト)上の固定化ハプテンまたは薬物とスクリーニングするアナライトとの両方に特異的である。汎用アレイスクリーニングの具体例を、図17に図示する。図17は、小分子汎用アレイ(薬物のスクリーニング/発見)を示す概要図である。図17は、単一のウェル中で4個の異なる固定化ハプテンを使用する、基本的な小分子汎用アレイの概念を例示している。種々の二重特異性分子が、例示目的に示されている。図17は、マイクロタイタープレートの96個のウェルのそれぞれの底に固定化された4個の別々の異なるハプテンを例示している。該アレイ中の各座またはバイオサイトは、この実施例でフルオレセイン、ジゴキシゲニン、2,4ジニトロフェノールおよびTRITCとして例示する4個のユニークな固定化ハプテンにより定められる。該固定化ハプテンとサンプル中のもう1つの標識アナライトとの両方に特有に特異的な二重特異性分子を、各ウェルに加える。このようにして、異なる複数のアナライトを同時に検出し、特異的ハプテンバイオサイトにおけるシグナルによりそれらの存在を示すことができる。この実施例では、96個のサンプルを、4個の異なるアナライトに関して同時にアッセイすることができる。示されているとおり、該フルオレセインバイオサイトは標識受容体(タンパク質)アナライトを検出し、2,4ジニトロフェノールおよびジゴキシゲニンハプテンの両方は、サンプル中の2つの追加的な型のタンパク質受容体の同時検出または存在の表示を可能にする。最後に、TRITCハプテンは、介在酵素コンジュゲートを介して特異的酵素基質の検出および存在の表示を可能にする。ここでもまた、近位形態の検出が、該アレイの表面における結合事象のみの均一イメージングを可能にする。そのような多重化免疫学的アプローチの利点は、非常に高い特異性と、DNAに基づかないバイオサイト認識を用いるそのような汎用アレイを含む小分子の多様性にある。
【0196】
小分子汎用アレイの実際の実施化は、図18および19に例示されており、前記実施例Iに記載されている。
【0197】
実施例V
用途:遺伝子発現分析
該多重化分子分析系はまた、単一の組織サンプル中の数百個の異なるmRNA種の発現をマイクロタイタープレートの単一のウェル内で分析するのに有用である。ここでは、合成核酸が、異なるバイオサイトを形成し、該バイオサイトは、わずか50μLのサンプル抽出物を使用することにより、1サンプルごとに高感度かつ高選択性の多数のハイブリダイゼーション分析をもたらす。そのような大規模ハイブリダイゼーション分析は、癌などの特定の疾患に関する多数の生物マーカーの発見および使用を可能にする。本質的に、初期肺癌の生物マーカーの探索は、反復的な組合せ方法になる。肺癌および他の上皮疾患の場合、数百個のmRNAが、生物マーカーとしてのそれらの価値に関して比較的低コストで分析される。そのような反復的方法においては、生物統計学者が、該技術およびmRNA生物マーカーの最終的なセットを開発する上で最も重要な成分の最終使用者になる。この反復的アプローチによりmRNA生物マーカーのセットが一旦見出されたら、当然のことながら、該技術は、えり抜きのmRNA生物マーカーセットを用いる、大きな患者集団の低コストでハイスループットのスクリーニングに適合する。
【0198】
実施例VI
用途:細胞分取
逆に、本発明の多重化フォーマットを利用して、無傷細胞を分析する。特に、ほとんどの「細胞富化(cell enrichment)」プロトコールは、二重標識フローサイトメトリーまたは或る種のアフィニティークロマトグラフィーによる細胞の物理的分離のいずれかを含む。どちらも、目的の細胞型に特異的な抗体の利用を必要とする。
【0199】
多重化マイクロプレートフォーマットでは、細胞特異的抗体を反応チャンバー(96ウェルマイクロプレート中の単一のウェル)内にマトリックス状に配置する。細胞分析操作を行なう上で重要なポイントは、無傷細胞に高親和性および高選択性で結合する能力をそのような抗体アレイが保有する状況を作ることにある。
【0200】
該方法は、複雑な細胞混合物、例えば、生物学的サンプル(例えば、血液または痰)を、そのような抗体マトリックスに加え、ついである程度局所的に混合しながら、該細胞を該表面に結合させる。細胞がそのようなマトリックスに良好な親和性および選択性で結合すれば、それらをマトリックスに固定し、それらの透過性を上昇させ、それらを標識プローブハイブリダイゼーション(またはPCR)に付す(これは、顕微鏡検査またはフローサイトメトリーにおいて細胞中のDNAまたはRNAを分析するために現在用いられている方法とほとんど同じ方法で行なう)。
【0201】
該多重化フォーマットの主な利点は、多数の異なる細胞型がマイクロタイタープレートの単一のウェル中で分離されることにある。
【0202】
実施例VII
用途:微生物のモニター
また、該多重化分子分析系は、微生物のモニターの用途に向けることが可能である。特に、空気、水および食物を微生物に関してモニターする場合には、該系は、迅速かつ費用効果的に、複雑な生物学的混合物の検出および定量をもたらす。一例として、バイオサイトとして機能する核酸プローブが、特徴的な微生物のRNAを選択的に捕捉するために選択される、リボソームRNAプローブに基づくアッセイが挙げられる。
【0203】
基本的には、該方法は、反応チャンバー内のバイオサイトアレイに対するハイブリダイゼーション用の微生物rRNAサンプルを調製することにより開始する。蛍光的に標識された微生物RNAの、該プローブアレイに対する特異的結合の後、二次元イメージの結果は、そのサンプルを独自に特徴づける。該アナライザーの出力は、該サンプル中に存在する微生物の量および型よりなる微生物のスペクトルである。
【0204】
微生物の同時モニターのための、提案しているアプローチの原理には、以下のものが含まれる:
1)完了に数日間を要する標準的な細胞培養法を避けることにより、速い微生物分析を行なうことができる。さらに、提案している高感度近位CCD検出法は、rRNAの固有の増幅特性と共に、組合されたサンプル調製、アッセイおよび検出にかかる時間を数日間から数時間に減少させる。
2)複数の微生物のハイスループットの検出および同定を促進するために1cm2当たり数百個の固定化プローブを支持する高密度アレイのおかげで、同時微生物モニターを行なうことができる。
3)最低限の労力および訓練が要求されるにすぎない。細胞培養もゲルに基づく配列決定も不要だからである、その代わりに、操作者は、微生物スペクトルを得るために、調製されたサンプルを単に、自動化されたハイブリダイゼーション、洗浄および乾燥法に付すだけである。
4)このプローブに基づくアッセイは、近位CCD検出装置と組合されるため、最低限の設備が必要とされるにすぎない。それにより、エピ蛍光(epifluorescent)および共焦点顕微鏡検査などの伝統的なマクロ検出技術の負担を軽減する。
【0205】
以下の参照文献は、本発明の或る態様および/または実施形態の理解または実施を容易にするかもしれない。この一覧に或る参照文献が含まれていることは、その参照文献が本発明に関する先行技術に相当すると容認することを意図するものではなく、そのような容認を構成するものではない。
【0206】
Hansell, 米国特許第2,512,743号
D. Bogg, F. Talke, IBM Jour. Res. Develop. (1984) 29:214-321
Burkeら, "An Abuttable CCD Imager for Visible and X-Ray Focal Plane Arrays," IEEE Trans. On Electron Devices, 38(5):1069 (May, 1991).
Maskos, Uら, Nucleic Acids Res. 20:1679-1684 (1992).
Stephen C. Case-Greenら, Nucleic Acids Res. 22:131-136 (1994).
Guo, Zら, Nucleic Acids Res. 22:5456-5465 (1994)。
【0207】
以上、本発明の多数の実施形態について説明した。しかしながら、本発明の精神および範囲から逸脱することなく種々の修飾を施すことが可能であると理解されるであろう。したがって、他の実施形態も、以下の請求の範囲の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【図1】多重化分子分析検出/イメージング系を示す概要図である。
【図2】インクジェットプリンティングによる固着DNAプローブバイオサイトを示す、近位CCDイメージャーで得られたプリントされたコンピューターイメージである。
【図3】斜置(staggered)インクジェット分注モジュールを使用するバイオサイト固着系を示す概要図である。
【図4】複数の毛管を使用するバイオサイト固着系を示す概要図である。図4aは、アレイ鋳型によるバイオサイト固着を示す概要図である。図4bは、ナノリットルウェル中へのバイオサイト固着を示す概要図である。
【図5a】汎用アレイ(Universal Array)の概念を示す概要図である。
【図5b】汎用アレイと結合した標的プローブに対する直接結合を示す概要図である。
【図5c】4×4汎用アレイのマルチマイクロタイターウェルの近位CCDイメージを示すプリントされたコンピューターイメージである。
【図5d】4×4汎用アレイの単一マイクロタイターウェルの近位CCDイメージを示すプリントされたコンピューターイメージである。
【図6】近位CCDイメージングによる反応容器内でのECLの実施を示す概要図である。
【図7】ECL反応容器の作製を示す概要図である。
【図8】ランタニドキレーターを示す化学式である。
【図9】多重化分子分析系の電子的概要図を示す概要図である。
【図10a】近位CCDイメージャー用のCCDセンサーアレイを示す概要図である。
【図10b】大きなフォーマットの近位CCDイメージャーを形成するためのCCDセンサーのタイル張り(tiling)を示す概要図である。
【図10c】大きなフォーマットの近位CCDイメージャーを形成するために使用する多数のCCDセンサーのもう1つのタイル張りスキームを示す概要図である。
【図11】マイクロプレート反応容器内のマイクロアレイを示すプリントされたコンピューターイメージである。1つの単一反応チャンバーを挿入図として示す。
【図12】ガラスおよびポリプロピレン表面への結合化学を示す概要図である。
【図13】汎用点突然変異スキャニングによる遺伝子型決定を示す概要図である。
【図14】マイクロタイターに基づくスループット遺伝子型決定を示す概要図である。
【図15】多重化PCRアンプリコンの均一in situマイクロアレイ検出を示す概要図である。
【図16】多重化ギャップ・リガーゼ・チェイン反応産物の均一in situマイクロアレイ検出を示す概要図である。
【図17】小分子汎用アレイ(薬物のスクリーニング/発見)を示す概要図である。
【図18】アミノ誘導体化薄底ガラスマイクロタイターウェル上に共有的に固定化された小分子の空間アドレス(spatial address)を例示する概要図である。
【図19A】ストレプトアビジン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、ビオチンでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。
【図19B】抗ジゴキシゲニン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、ジゴキシゲニンでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。
【図19C】抗フルオレセイン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、フルオレセインでアドレス可能なバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。
【図19D】抗フルオレセイン、抗ジゴキシゲニンおよびストレプトアビジン:HRPコンジュゲートを使用して検出された、フルオレセイン、ビオチンおよびジゴキシゲニンバイオサイトの特異的イメージングを示すプリントされたコンピューターイメージである(4×4の単一ウェルマイクロアレイ)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的アナライトと捕捉プローブとの結合を測定するための多重化マイクロアッセイの実施用の反応基体を製造するための装置であって、
複数の毛管(各毛管は、近位末端および遠位末端を有する)、
該毛管の遠位末端から隔てられた点で該毛管を保持するための結合部位、
各毛管をその遠位末端付近でスライド可能に保持するための、および各毛管の遠位末端が該結合部位に関して移動するのを可能にするためのアレイ鋳型、
各毛管の近位末端を、対応する供給チャンバー(各供給チャンバーは、少なくとも1つの対応する毛管に液体試薬を供給しうる)内に位置決めするための少なくとも1つのマニホルド、および
該アレイ鋳型と該毛管とを該反応基体に関して正確に位置決めし、該毛管からの液体試薬を該反応基体上にバイオサイトとして固着させるための位置決め装置を含んでなる装置。
【請求項2】
前記の複数の毛管が、約80μm〜約5mmの中心間間隔を有する約2〜約10,000本の管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各供給チャンバーが1本の毛管だけに供給する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
供給チャンバーが複数の毛管に供給する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
該毛管がステンレス鋼、プラスチック、ゴム、ガラスまたは融解石英(ポリイミドでコーティングされているもの)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
該装置が複数のアレイ鋳型を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
該反応基体を正確に位置決めするための位置決め装置を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
該毛管が、約10〜約200μmの内径および約80〜約500μmの外径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
該アレイ鋳型がスリーブのアレイを含み、各スリーブが、その中を毛管がスライドするのを許容するのに十分な内径と、流体が該反応基体上に固着される際に正確なパターンが維持されるのを可能にするのに十分な長さとを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
該アレイ鋳型が、強固な材料中に形成された複数の孔を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
該アレイ鋳型が、強固に形成された又は保持されたメッシュを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
該供給チャンバーを含有するためのハウジングを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
該ハウジングが不活性雰囲気を維持しうる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
該ハウジングが、上昇した又は低下した温度を維持しうる、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
該ハウジングが、予め決められた圧力まで加圧されることが可能である、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
該圧力が、該毛管を通過する液体試薬の流動を制御するように調整される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
該供給チャンバーが、圧力ヘッドを得るために該毛管の遠位末端より高く配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
捕捉プローブの固着が電気泳動により制御される、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
液体試薬の供給が電気浸透により制御される、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
該装置が供給チャンバーの複数のセットを含み、それらの各々が、該毛管のサブセットに液体試薬を供給するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
該毛管が該結合部位と該アレイ鋳型との間で自由に曲がることが可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
該反応基体が、固着されるバイオサイトの形状に合致した反応領域のパターンを定めるためにプレエッチングされている、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
該バイオサイトが実質的に同時に固着される、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
各バイオサイトが、他の各バイオサイトから流体的に分離している、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
標的分子と捕捉プローブ/標的プローブ複合体との結合を測定するための多重化マイクロアッセイの実施用の反応基体であって、該反応基体がバイオサイトのアレイを含み、各バイオサイトが、該基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含み、各捕捉プローブが、対応する捕捉プローブに特異的に結合する捕捉プローブ特異的ドメインと標的アナライトに特異的に結合する標的アナライト特異的ドメインとを有する対応する標的プローブに結合しうることを特徴とする反応基体。
【請求項26】
該反応基体が約50μm〜約300μmの厚さである、請求項25に記載の反応基体。
【請求項27】
該反応基体上の各バイオサイトが、該反応基体上の他の各バイオサイト中の捕捉プローブとは異なる捕捉プローブを含む、請求項25に記載の反応基体。
【請求項28】
前記のバイオサイトのアレイが約2〜約10,000個のバイオサイトを含む、請求項25に記載の反応基体。
【請求項29】
対応する捕捉プローブに特異的に結合する捕捉プローブ特異的ドメインと標的アナライトに特異的に結合する標的アナライト特異的ドメインとを有する標的プローブを更に含む、請求項25に記載の反応基体。
【請求項30】
各捕捉プローブが第1オリゴヌクレオチドであり、各捕捉プローブ特異的ドメインが第2オリゴヌクレオチドであり、各標的アナライト特異的ドメインが第3オリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項31】
各捕捉プローブがハプテンであり、各捕捉プローブ特異的ドメインがハプテン結合性ポリペプチドであり、各標的アナライト特異的ドメインがオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項32】
各ハプテン結合性ポリペプチドが、抗体、Fab、F(ab')2、FvおよびSCAおよびCDRよりなる群から選ばれる、請求項31に記載の反応基体。
【請求項33】
各捕捉プローブが第1オリゴヌクレオチドであり、各捕捉プローブ特異的ドメインが第2オリゴヌクレオチドであり、各標的アナライト特異的ドメインがハプテン結合性ポリペプチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項34】
各捕捉プローブがハプテン結合性ポリペプチドであり、各捕捉プローブ特異的ドメインがハプテンであり、各標的アナライト特異的ドメインがオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項35】
各ハプテン結合性ポリペプチドが、抗体、FVおよびFabよりなる群から選ばれる、請求項34に記載の反応基体。
【請求項36】
各捕捉プローブがアビジンであり、各捕捉プローブ特異的ドメインがビオチンであり、各標的アナライト特異的ドメインがオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項37】
各標的アナライト特異的ドメインがオリゴヌクレオチド核酸増幅プライマーである、請求項30、31、35または36に記載の反応基体。
【請求項38】
少なくとも1つの反応基体が少なくとも1つの反応チャンバー中に含有されている、請求項25に記載の反応基体。
【請求項39】
複数の反応基体が各反応チャンバー内に含有されている、請求項38に記載の反応基体。
【請求項40】
複数の反応チャンバーを含有する反応容器を更に含む、請求項40に記載の反応基体。
【請求項41】
該反応容器が約2〜約10,000個の反応チャンバーを含む、請求項39に記載の反応基体。
【請求項42】
該反応基体が光学的に透明である、請求項25に記載の反応基体。
【請求項43】
各捕捉プローブが、約30〜40%のG、30〜40%のC、10〜20%のAおよび10〜20%のTの塩基組成率を有する、請求項25に記載の反応基体。
【請求項44】
各捕捉プローブが2〜30塩基の範囲の長さを有する、請求項25に記載のセット。
【請求項45】
各捕捉プローブが5〜25塩基の範囲の長さを有する、請求項44に記載のセット。
【請求項46】
各捕捉プローブが10〜20塩基の範囲の長さを有する、請求項45に記載のセット。
【請求項47】
各捕捉プローブが約16塩基の長さを有する、請求項25に記載のセット。
【請求項48】
各捕捉プローブが、全捕捉プローブの平均長から1塩基だけ異なる長さを有する、請求項25に記載のセット。
【請求項49】
各捕捉プローブが、他のすべての捕捉プローブの全総塩基組成と実質的に同様の全総塩基組成を有する、請求項25に記載のセット。
【請求項50】
各捕捉プローブが、他の各捕捉プローブの配列相同性と少なくとも20%異なる配列相同性を有する、請求項25に記載のセット。
【請求項51】
各捕捉プローブが、他の各捕捉プローブの配列相同性と少なくとも40%異なる配列相同性を有する、請求項50に記載のセット。
【請求項52】
各捕捉プローブが、他の各捕捉プローブの配列相同性と少なくとも50%異なる配列相同性を有する、請求項51に記載のセット。
【請求項53】
各捕捉プローブが、他の各捕捉プローブの配列相同性と少なくとも60%異なる配列相同性を有する、請求項52に記載のセット。
【請求項54】
任意の2つの捕捉プローブの配列相同性が80%未満である、請求項25に記載のセット。
【請求項55】
標的分子と捕捉プローブとの結合を測定するための多重化マイクロアッセイの実施において使用するための反応基体であって、該反応基体が、平行的なプリントされたバイオサイトのアレイを有し、各バイオサイトが、該反応基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含むことを特徴とする反応基体。
【請求項56】
アッセイ装置として使用するための反応基体の製造法であって、バイオサイトのアレイを該反応基体上に平行的にプリントする工程を含んでなり、各バイオサイトが、該反応基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含むことを特徴とする製造法。
【請求項57】
前記のバイオサイトのアレイに複数の標的プローブ(各標的プローブは該アレイ内の特異的捕捉プローブに結合する)を結合させる工程を更に含む、請求項56に記載の製造法。
【請求項58】
各バイオサイトが直径約25〜約200μmのスポットを含む、請求項56に記載の製造法。
【請求項59】
該反応基体が、光学的に透明であり、約50〜約300μmの厚さを有する、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
複数の分離したサンプル中の標的アナライト(各標的アナライトは、対応する捕捉プローブに結合しうる)を同定するための方法であって、
バイオサイトのアレイを反応基体上に平行的にプリントし(各バイオサイトは、該基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含む)、
少なくとも1つの標的アナライトを含むサンプルと各バイオサイトとを接触させ、
該アレイ中の各バイオサイトにおける標的アナライトの結合の存在または不存在を判定する工程を含んでなる方法。
【請求項61】
各標的アナライトが、検出可能な様態で標識されている、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
各標的アナライトが蛍光標識で標識されている、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
各標的アナライトがエレクトロルミネセンス標識で標識されている、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
各標的アナライトが放射性同位体標識で標識されている、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
各バイオサイトにおける結合の存在または不存在を、光学的感知アレイを使用して判定する、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
該光学的感知アレイが該反応基体に接近して配置されている、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
該光学的感知アレイがレンズを含有しない、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
アッセイ装置として使用するための反応基体を製造するための装置であって、
複数の柔軟性毛管を該毛管の遠位末端から隔てられた点で保持するための結合部位、
対応する供給チャンバー(各供給チャンバーは、少なくとも1つの対応する毛管に液体試薬を供給しうる)内の各毛管の近位末端を位置決めするための構造体、
前記の複数の毛管をそれらの遠位末端付近で保持するための、および液体試薬を該反応基体上にバイオサイトとして固着させるために該毛管の遠位末端を該反応基体に関して正確に位置決めするためのプリントヘッドを含んでなる装置。
【請求項69】
該プリントヘッドがインクジェット固着装置を含む、請求項68に記載の装置。
【請求項70】
標識されたサンプル分子を検出するための方法であって、
複数のバイオサイトを有する反応基体を準備し(各バイオサイトは該反応基体に結合しており、該反応基体は、電気源に接続された埋め込まれた導電体を有する)、
標識された分子のサンプルと各バイオサイトとを接触させ、
電磁エネルギーを放出する該標識分子内の電気化学的事象を開始させ、
放出された電磁エネルギーを検出する工程を含んでなる方法。
【請求項71】
該サンプル分子が蛍光的に標識されている、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
該サンプル分子がエレクトロルミネセンスで標識されている、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
放出された電磁エネルギーを、光学的感知アレイを使用して検出する、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
該光学的感知アレイが該反応基体に接近して配置されている、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
該光学的感知アレイがレンズを含有しない、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
標識されたサンプル分子からの粒子放出を検出するための方法であって、
複数のバイオサイトを有する反応基体を準備し(各バイオサイトは、該基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含む)、
前記の複数のバイオサイトに接近して配置された粒子検出器の無レンズアレイを準備し、
標識された分子のサンプルと各バイオサイトとを接触させ、
該サンプルから直接発せられた粒子放出を、該粒子検出器中で、対応する電気シグナルに変換し、
該サンプルからの各バイオサイト上の該標識分子の定量的な存在または不存在を表す該電気シグナルからイメージを形成させる工程を含んでなる方法。
【請求項77】
該サンプル分子が蛍光的に標識されている、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
該サンプル分子が化学発光的に標識されている、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
該サンプル分子が放射性同位体で標識されている、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
反応基体に結合するようにそれぞれが設計されている核酸捕捉プローブのセットであって、各捕捉プローブが、捕捉プローブ間の相違をもたらすのに十分な長さを有し、各捕捉プローブが、約30〜40%のG、30〜40%のC、10〜20%のAおよび10〜20%のTの塩基組成率を有し、該セット中の各捕捉プローブの核酸配列が該セット中の他のすべての捕捉プローブの核酸配列と実質的に相違するように該セットが選ばれることを特徴とするセット。
【請求項81】
該長さが2〜30塩基の範囲である、請求項80に記載のセット。
【請求項82】
該長さが5〜25塩基の範囲である、請求項81に記載のセット。
【請求項83】
該長さが10〜20塩基の範囲である、請求項82に記載のセット。
【請求項84】
該長さが約16塩基である、請求項80に記載のセット。
【請求項85】
該捕捉プローブの長さが、該捕捉プローブの平均長と1塩基だけ異なる、請求項80に記載のセット。
【請求項86】
各捕捉プローブが、該セットの他のすべての捕捉プローブの全総塩基組成と実質的に同様の全総塩基組成を有する、請求項80に記載のセット。
【請求項87】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも20%異なる核酸配列を有する、請求項80に記載のセット。
【請求項88】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる結合特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも40%異なる核酸配列を有する、請求項87に記載のセット。
【請求項89】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる結合特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも50%異なる核酸配列を有する、請求項88に記載のセット。
【請求項90】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる結合特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも60%異なる核酸配列を有する、請求項89に記載のセット。
【請求項91】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる結合特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも80%異なる核酸配列を有する、請求項90に記載のセット。
【請求項92】
該セットが少なくとも16個の捕捉プローブを含む、請求項80に記載のセット。
【請求項1】
標的アナライトと捕捉プローブとの結合を測定するための多重化マイクロアッセイの実施用の反応基体を製造するための装置であって、
複数の毛管(各毛管は、近位末端および遠位末端を有する)、
該毛管の遠位末端から隔てられた点で該毛管を保持するための結合部位、
各毛管をその遠位末端付近でスライド可能に保持するための、および各毛管の遠位末端が該結合部位に関して移動するのを可能にするためのアレイ鋳型、
各毛管の近位末端を、対応する供給チャンバー(各供給チャンバーは、少なくとも1つの対応する毛管に液体試薬を供給しうる)内に位置決めするための少なくとも1つのマニホルド、および
該アレイ鋳型と該毛管とを該反応基体に関して正確に位置決めし、該毛管からの液体試薬を該反応基体上にバイオサイトとして固着させるための位置決め装置を含んでなる装置。
【請求項2】
前記の複数の毛管が、約80μm〜約5mmの中心間間隔を有する約2〜約10,000本の管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各供給チャンバーが1本の毛管だけに供給する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
供給チャンバーが複数の毛管に供給する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
該毛管がステンレス鋼、プラスチック、ゴム、ガラスまたは融解石英(ポリイミドでコーティングされているもの)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
該装置が複数のアレイ鋳型を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
該反応基体を正確に位置決めするための位置決め装置を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
該毛管が、約10〜約200μmの内径および約80〜約500μmの外径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
該アレイ鋳型がスリーブのアレイを含み、各スリーブが、その中を毛管がスライドするのを許容するのに十分な内径と、流体が該反応基体上に固着される際に正確なパターンが維持されるのを可能にするのに十分な長さとを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
該アレイ鋳型が、強固な材料中に形成された複数の孔を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
該アレイ鋳型が、強固に形成された又は保持されたメッシュを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
該供給チャンバーを含有するためのハウジングを更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
該ハウジングが不活性雰囲気を維持しうる、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
該ハウジングが、上昇した又は低下した温度を維持しうる、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
該ハウジングが、予め決められた圧力まで加圧されることが可能である、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
該圧力が、該毛管を通過する液体試薬の流動を制御するように調整される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
該供給チャンバーが、圧力ヘッドを得るために該毛管の遠位末端より高く配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
捕捉プローブの固着が電気泳動により制御される、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
液体試薬の供給が電気浸透により制御される、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
該装置が供給チャンバーの複数のセットを含み、それらの各々が、該毛管のサブセットに液体試薬を供給するためのものである、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
該毛管が該結合部位と該アレイ鋳型との間で自由に曲がることが可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
該反応基体が、固着されるバイオサイトの形状に合致した反応領域のパターンを定めるためにプレエッチングされている、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
該バイオサイトが実質的に同時に固着される、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
各バイオサイトが、他の各バイオサイトから流体的に分離している、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
標的分子と捕捉プローブ/標的プローブ複合体との結合を測定するための多重化マイクロアッセイの実施用の反応基体であって、該反応基体がバイオサイトのアレイを含み、各バイオサイトが、該基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含み、各捕捉プローブが、対応する捕捉プローブに特異的に結合する捕捉プローブ特異的ドメインと標的アナライトに特異的に結合する標的アナライト特異的ドメインとを有する対応する標的プローブに結合しうることを特徴とする反応基体。
【請求項26】
該反応基体が約50μm〜約300μmの厚さである、請求項25に記載の反応基体。
【請求項27】
該反応基体上の各バイオサイトが、該反応基体上の他の各バイオサイト中の捕捉プローブとは異なる捕捉プローブを含む、請求項25に記載の反応基体。
【請求項28】
前記のバイオサイトのアレイが約2〜約10,000個のバイオサイトを含む、請求項25に記載の反応基体。
【請求項29】
対応する捕捉プローブに特異的に結合する捕捉プローブ特異的ドメインと標的アナライトに特異的に結合する標的アナライト特異的ドメインとを有する標的プローブを更に含む、請求項25に記載の反応基体。
【請求項30】
各捕捉プローブが第1オリゴヌクレオチドであり、各捕捉プローブ特異的ドメインが第2オリゴヌクレオチドであり、各標的アナライト特異的ドメインが第3オリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項31】
各捕捉プローブがハプテンであり、各捕捉プローブ特異的ドメインがハプテン結合性ポリペプチドであり、各標的アナライト特異的ドメインがオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項32】
各ハプテン結合性ポリペプチドが、抗体、Fab、F(ab')2、FvおよびSCAおよびCDRよりなる群から選ばれる、請求項31に記載の反応基体。
【請求項33】
各捕捉プローブが第1オリゴヌクレオチドであり、各捕捉プローブ特異的ドメインが第2オリゴヌクレオチドであり、各標的アナライト特異的ドメインがハプテン結合性ポリペプチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項34】
各捕捉プローブがハプテン結合性ポリペプチドであり、各捕捉プローブ特異的ドメインがハプテンであり、各標的アナライト特異的ドメインがオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項35】
各ハプテン結合性ポリペプチドが、抗体、FVおよびFabよりなる群から選ばれる、請求項34に記載の反応基体。
【請求項36】
各捕捉プローブがアビジンであり、各捕捉プローブ特異的ドメインがビオチンであり、各標的アナライト特異的ドメインがオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の反応基体。
【請求項37】
各標的アナライト特異的ドメインがオリゴヌクレオチド核酸増幅プライマーである、請求項30、31、35または36に記載の反応基体。
【請求項38】
少なくとも1つの反応基体が少なくとも1つの反応チャンバー中に含有されている、請求項25に記載の反応基体。
【請求項39】
複数の反応基体が各反応チャンバー内に含有されている、請求項38に記載の反応基体。
【請求項40】
複数の反応チャンバーを含有する反応容器を更に含む、請求項40に記載の反応基体。
【請求項41】
該反応容器が約2〜約10,000個の反応チャンバーを含む、請求項39に記載の反応基体。
【請求項42】
該反応基体が光学的に透明である、請求項25に記載の反応基体。
【請求項43】
各捕捉プローブが、約30〜40%のG、30〜40%のC、10〜20%のAおよび10〜20%のTの塩基組成率を有する、請求項25に記載の反応基体。
【請求項44】
各捕捉プローブが2〜30塩基の範囲の長さを有する、請求項25に記載のセット。
【請求項45】
各捕捉プローブが5〜25塩基の範囲の長さを有する、請求項44に記載のセット。
【請求項46】
各捕捉プローブが10〜20塩基の範囲の長さを有する、請求項45に記載のセット。
【請求項47】
各捕捉プローブが約16塩基の長さを有する、請求項25に記載のセット。
【請求項48】
各捕捉プローブが、全捕捉プローブの平均長から1塩基だけ異なる長さを有する、請求項25に記載のセット。
【請求項49】
各捕捉プローブが、他のすべての捕捉プローブの全総塩基組成と実質的に同様の全総塩基組成を有する、請求項25に記載のセット。
【請求項50】
各捕捉プローブが、他の各捕捉プローブの配列相同性と少なくとも20%異なる配列相同性を有する、請求項25に記載のセット。
【請求項51】
各捕捉プローブが、他の各捕捉プローブの配列相同性と少なくとも40%異なる配列相同性を有する、請求項50に記載のセット。
【請求項52】
各捕捉プローブが、他の各捕捉プローブの配列相同性と少なくとも50%異なる配列相同性を有する、請求項51に記載のセット。
【請求項53】
各捕捉プローブが、他の各捕捉プローブの配列相同性と少なくとも60%異なる配列相同性を有する、請求項52に記載のセット。
【請求項54】
任意の2つの捕捉プローブの配列相同性が80%未満である、請求項25に記載のセット。
【請求項55】
標的分子と捕捉プローブとの結合を測定するための多重化マイクロアッセイの実施において使用するための反応基体であって、該反応基体が、平行的なプリントされたバイオサイトのアレイを有し、各バイオサイトが、該反応基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含むことを特徴とする反応基体。
【請求項56】
アッセイ装置として使用するための反応基体の製造法であって、バイオサイトのアレイを該反応基体上に平行的にプリントする工程を含んでなり、各バイオサイトが、該反応基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含むことを特徴とする製造法。
【請求項57】
前記のバイオサイトのアレイに複数の標的プローブ(各標的プローブは該アレイ内の特異的捕捉プローブに結合する)を結合させる工程を更に含む、請求項56に記載の製造法。
【請求項58】
各バイオサイトが直径約25〜約200μmのスポットを含む、請求項56に記載の製造法。
【請求項59】
該反応基体が、光学的に透明であり、約50〜約300μmの厚さを有する、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
複数の分離したサンプル中の標的アナライト(各標的アナライトは、対応する捕捉プローブに結合しうる)を同定するための方法であって、
バイオサイトのアレイを反応基体上に平行的にプリントし(各バイオサイトは、該基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含む)、
少なくとも1つの標的アナライトを含むサンプルと各バイオサイトとを接触させ、
該アレイ中の各バイオサイトにおける標的アナライトの結合の存在または不存在を判定する工程を含んでなる方法。
【請求項61】
各標的アナライトが、検出可能な様態で標識されている、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
各標的アナライトが蛍光標識で標識されている、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
各標的アナライトがエレクトロルミネセンス標識で標識されている、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
各標的アナライトが放射性同位体標識で標識されている、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
各バイオサイトにおける結合の存在または不存在を、光学的感知アレイを使用して判定する、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
該光学的感知アレイが該反応基体に接近して配置されている、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
該光学的感知アレイがレンズを含有しない、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
アッセイ装置として使用するための反応基体を製造するための装置であって、
複数の柔軟性毛管を該毛管の遠位末端から隔てられた点で保持するための結合部位、
対応する供給チャンバー(各供給チャンバーは、少なくとも1つの対応する毛管に液体試薬を供給しうる)内の各毛管の近位末端を位置決めするための構造体、
前記の複数の毛管をそれらの遠位末端付近で保持するための、および液体試薬を該反応基体上にバイオサイトとして固着させるために該毛管の遠位末端を該反応基体に関して正確に位置決めするためのプリントヘッドを含んでなる装置。
【請求項69】
該プリントヘッドがインクジェット固着装置を含む、請求項68に記載の装置。
【請求項70】
標識されたサンプル分子を検出するための方法であって、
複数のバイオサイトを有する反応基体を準備し(各バイオサイトは該反応基体に結合しており、該反応基体は、電気源に接続された埋め込まれた導電体を有する)、
標識された分子のサンプルと各バイオサイトとを接触させ、
電磁エネルギーを放出する該標識分子内の電気化学的事象を開始させ、
放出された電磁エネルギーを検出する工程を含んでなる方法。
【請求項71】
該サンプル分子が蛍光的に標識されている、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
該サンプル分子がエレクトロルミネセンスで標識されている、請求項70に記載の方法。
【請求項73】
放出された電磁エネルギーを、光学的感知アレイを使用して検出する、請求項70に記載の方法。
【請求項74】
該光学的感知アレイが該反応基体に接近して配置されている、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
該光学的感知アレイがレンズを含有しない、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
標識されたサンプル分子からの粒子放出を検出するための方法であって、
複数のバイオサイトを有する反応基体を準備し(各バイオサイトは、該基体に結合した単一の型の捕捉プローブを含む)、
前記の複数のバイオサイトに接近して配置された粒子検出器の無レンズアレイを準備し、
標識された分子のサンプルと各バイオサイトとを接触させ、
該サンプルから直接発せられた粒子放出を、該粒子検出器中で、対応する電気シグナルに変換し、
該サンプルからの各バイオサイト上の該標識分子の定量的な存在または不存在を表す該電気シグナルからイメージを形成させる工程を含んでなる方法。
【請求項77】
該サンプル分子が蛍光的に標識されている、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
該サンプル分子が化学発光的に標識されている、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
該サンプル分子が放射性同位体で標識されている、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
反応基体に結合するようにそれぞれが設計されている核酸捕捉プローブのセットであって、各捕捉プローブが、捕捉プローブ間の相違をもたらすのに十分な長さを有し、各捕捉プローブが、約30〜40%のG、30〜40%のC、10〜20%のAおよび10〜20%のTの塩基組成率を有し、該セット中の各捕捉プローブの核酸配列が該セット中の他のすべての捕捉プローブの核酸配列と実質的に相違するように該セットが選ばれることを特徴とするセット。
【請求項81】
該長さが2〜30塩基の範囲である、請求項80に記載のセット。
【請求項82】
該長さが5〜25塩基の範囲である、請求項81に記載のセット。
【請求項83】
該長さが10〜20塩基の範囲である、請求項82に記載のセット。
【請求項84】
該長さが約16塩基である、請求項80に記載のセット。
【請求項85】
該捕捉プローブの長さが、該捕捉プローブの平均長と1塩基だけ異なる、請求項80に記載のセット。
【請求項86】
各捕捉プローブが、該セットの他のすべての捕捉プローブの全総塩基組成と実質的に同様の全総塩基組成を有する、請求項80に記載のセット。
【請求項87】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも20%異なる核酸配列を有する、請求項80に記載のセット。
【請求項88】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる結合特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも40%異なる核酸配列を有する、請求項87に記載のセット。
【請求項89】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる結合特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも50%異なる核酸配列を有する、請求項88に記載のセット。
【請求項90】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる結合特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも60%異なる核酸配列を有する、請求項89に記載のセット。
【請求項91】
一定の結合特異性の各捕捉プローブが、異なる結合特異性の他の各捕捉プローブの核酸配列と少なくとも80%異なる核酸配列を有する、請求項90に記載のセット。
【請求項92】
該セットが少なくとも16個の捕捉プローブを含む、請求項80に記載のセット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−78605(P2010−78605A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229552(P2009−229552)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【分割の表示】特願平10−530285の分割
【原出願日】平成9年12月31日(1997.12.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(502280957)ジェノメトリックス ジェノミクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【分割の表示】特願平10−530285の分割
【原出願日】平成9年12月31日(1997.12.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(502280957)ジェノメトリックス ジェノミクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
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