説明

多関節ロボット

【課題】動作経路上に障害物があってもワークを把持するように経路変更でき、狭所空間で作業ができる多関節ロボットを提供する。
【解決手段】アーム1の長手方向に対して垂直な回動軸14のまわりに回転する手首部2と、前記部手首部2に取り付けられ、前記回動軸14に対して垂直な回動軸15のまわりに回転する回転部3と、前記回転部3に取り付けられた第2手首リンク10と、前記第2手首リンク10の他端が取り付けられた第4手首リンク12と、前記第4手首リンク12の他端が取り付けられた第3手首リンク11と、前記第3手首リンク11の他端が取り付けられた第1手首リンク9と、前記第1リンク9の他端が前記手首部2に取り付けられて平行四辺形を形成するリンク機構と、前記第3手首リンク11に取り付けられたワーク把持装置13とからなり、前記ワーク把持装置13を前記回動軸15を中心に旋回させる回動部が前記手首部2に備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを搬送するための多関節ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多関節ロボットは、垂直多関節型で手首部にアーム1の延長線上に固定されたリンク式手首機構を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図7および8に示すように、ベース21、基部22、第1アーム23、第2アーム24および第3アーム25を備え、第2アーム24に設けたB軸駆動モータ261により第3アーム25の長手方向に対して垂直な回動軸(B軸)の回りに旋回し得る手首部26を設け、手首部26には第2アーム24に設けたT軸駆動モータ271によりB軸に垂直な回動軸(T軸)の回りに回動し得る回転部7を設けて、回転部27にワークWを把持するワーク把持装置28が取り付けられている。回転部27の外径に、第2アーム24の延長線上に伸びる第1手首リンク263を剛に固定し、手首部6に設けた回転部27の出力軸273(減速機の出力軸)に、第2手首リンク264を固定し連結部の剛性を高めてある。第1手首リンク263の先端には回動し得るようにピン連結した第3手首リンク265を設け、第2手首リンク264と第3手首リンク265の先端には、第1手首リンク263に平行な第4手首リンク266の両端をそれぞれピン連結して平行四辺形リンク機構を形成してある。第2手首リンク264は、回転部27の出力軸273により回動するようにしてある。第3手首リンク265の先端には、第3手首リンク265の回動により回転するフランジにワークWを把持するワーク把持部281を固定してある。
ワーク把持装置28に把持したワークWは、移動方向に対してワークWの姿勢を常に一定の方向に向くように維持した状態で移動される。
【特許文献1】特許番号:第2867703号(第3−4頁、図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多関節型ロボットは、複数台は位置され、狭所空間で作業することが多くなってきており、ハンドリングする経路に障害物が存在するケースが増えてきている。このために多関節ロボットには、障害物が存在していても経路変更ができるようにワーク把持機構にも関節が付加されることが望まれている。従来技術のワーク把持機構では、ワークを所定の向きに向けておくことはできるが、障害物に対する経路変更するための関節を有していないために障害物を回避できないという問題があった。
また、障害物を無くすような作業空間にするために、ロボットの配置や作業位置を変える等を行うが、作業するための空間を広げる必要があり、作業スペースに増大化に伴う工場コストの増加になるという問題が生じていた。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、ロボットの動作経路上に障害物があってもワークを把持するように経路変更でき、狭所空間で作業できる多関節ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記問題を解決するために本発明は次のように構成したものである。
請求項1に記載の発明は、アームの長手方向に対して垂直な回動軸のまわりに回転する手首部と、前記部手首部に取り付けられ、前記回動軸に対して垂直な回動軸のまわりに回転する回転部と、前記回転部に取り付けられた第2手首リンクと、前記第2手首リンクの他端が取り付けられた第4手首リンクと、前記第4手首リンクの他端が取り付けられた第3手首リンクと、前記第3手首リンクの他端が取り付けられた第1手首リンクと、前記第1リンクの他端が前記手首部に取り付けられて平行四辺形を形成するリンク機構と、前記第3手首リンクに取り付けられたワーク把持装置とからなる多関節ロボットにおいて、前記ワーク把持装置を前記回動軸に対して垂直な前記回動軸を中心に旋回させる回動部が前記手首部に備えられたものである。
請求項2に記載の発明は、前記回動軸に対して垂直な前記回動軸の半径方向に関して前記手首部に配置されたブラケットに、前記ワーク把持装置を回動する駆動機構が備えられたものである。
また、請求項3に記載の発明は、前記駆動機構が、前記ブラケットに配置されたモータと、前記モータと前記手首部間で前記モータの回転角度を変換する伝達機構からなるものである。
また、請求項4に記載の発明は、前記回動軸に対して垂直な前記回動軸が、前記第1手首リンクの旋回軸と同軸であるものである。
また、請求項5に記載の発明は、前記ブラケットに配置されたモータ軸と前記回動軸に対して垂直な前記回動軸が、旋回軸線上に配置されたものである。
また、請求項6に記載の発明は、アームの長手方向に対して垂直な回動軸のまわりに回転する手首部と、前記回動軸に対して垂直な回動軸のまわりに回転する回転部と、前記回転部に取り付けられた第2手首リンクと、前記第2手首リンクの他端が取り付けられた第4手首リンクと、前記第4手首リンクの他端が取り付けられた第3手首リンクと、前記第3手首リンクの他端が取り付けられた第1手首リンクと、前記第1リンクの他端が前記手首部に取り付けられて平行四辺形を形成するリンク機構と、前記第3手首リンクに取り付けられたワーク把持装置とからなる多関節ロボットにおいて、前記回動軸に対して垂直な前記回動軸と前記ワーク把持装置を旋回させる駆動機構の回転軸が同軸であるものである。
また、請求項7に記載の発明は、前記駆動機構が、前記手首部に内包されたものである。
また、請求項8に記載の発明は、前記駆動機構と前記第2リンクの回転軸が旋回軸線上に配置されたものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1から8に記載の発明によると、ワーク把持装置を回動軸(T軸)中心に旋回することで、ワークを把持するための動作経路上に障害物が存在しても回避しながらワークを保持することができるとともに、第3手首リンクを回転部の回転をリンク機構により伝達することで回転する構成としたことで、所定の向きにワークを向けることができる。また、動作経路上の障害物を回避することができることから、障害物があってもロボットの配置や作業位置を変更することがなく、狭所空間にロボットを配置して作業することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明の手首機構の側面図、図2はその平面図である。手首機構以外の部分については、従来例と同じであるので説明を省略する。1はアーム、2は手首部、3は回転部、4はブラケット、5はモータ、6は小ギヤ、7は大ギヤ、8はベアリング、9は第1手首リンク、10は第2手首リンク、11は第3手首リンク、12は第4手首リンク、13はワーク把持装置、14はB軸14、15はT軸、16は旋回軸線である。本発明が特許文献1と異なる部分は、第1手首リンクを旋回させるモータが先端固定部に取り付けられたブラケットに配設され、ギヤを介してモータの回転角度が第1手首リンクの旋回角度に変換されている点である。
次に本実施例の詳細な構造について説明する。アーム1の長手方向に対して垂直な回動軸(B軸)15のまわりに回転する手首部2が前記アーム1の先端に回転自在に取り付けられている。手首部2にはB軸14に垂直な回動軸(T軸)15のまわりに回動する回転部3がT軸15に軸中心が一致するように設けられ、回転部3には第2手首リンク10の一端がT軸15に軸中心が一致するように取り付けられている。第2手首リンク10の他端には回転自在に第4手首リンク12の一端が取り付けられている。第4手首リンク12の他端は回転自在に支持された第3手首リンク11の一端に取り付けられている。第3手首リンク11の他端には回転自在に支持された第1手首リンク9の一端が取り付けられ、第3手首リンク11の他端にはワーク把持装置13が設けられている。第1手首リンク9の他端は前記手首部2に取り付けられたベアリング8によりT軸15に軸中心が一致するように回転自在に支持されている。また、前記手首部2にはT軸15から半径方向にブラケット4が固定されており、ブラケット4に取り付けられたモータ5はモータ5軸とT軸15が旋回軸線16上にあるように配置され、モータ5の先端には、第1手首リンク9に取り付けられた大ギヤ7と噛み合う小ギヤ6が固定されている。また、回動部18は、手首部2に設置されたT軸15を軸中心とするように回転部3、第2手首リンク10と第1手首リンク9とブラケット4に配置されたモータ5から構成される。
【0008】
次に、動作について説明する。手首部2に内包した図示しないモータにより回転部3が回転すると、第2手首リンク10が回転し、前記第2手首リンク10と第1手首リンク9と第3手首リンク11と第4手首リンク12で平行四辺形が形成され、ワーク把持装置13が回転される。
また、モータ5が回転することにより前記モータ5に取り付けられた小ギヤ6が回転し、小ギヤ6の回転角度とギヤ比に応じた回転角度が大ギヤ7に伝達され。第1手首リンク9は所定の回転角度を回転し、ワーク把持装置13は所定の位置に位置決めされる。図3に示すように、従来の多関節ロボット(図3(a))に対して本実施例(図3(b))では、ロボットの配置間隔距離をL+αからLに短縮することができ、搬送時間の短縮および狭所空間にロボットを配置しての作業が可能である。また、従来の多関節ロボットは、ワーク把持装置を具備していないのでワークを把持する際に障害物に干渉するのに対して、本実施例ではワーク把持装置に関節を有しているので障害物を回避してワークを把持することが可能である。
尚、ブラケット上に配置されたモータはモータ軸とT軸が旋回軸線上にあるように配置された例で説明したが、モータ先端に取り付けられた小ギヤと第1手首リンクに取り付けられた大ギアとが噛み合うようにT軸から半径方向にブラケットが配置されて良く、多関節ロボットの動作に干渉が生じない場所に配置されれば良く、限定されるものではない。また、モータの先端に小ギヤを取り付け、第1手首リンクに大ギヤを取り付け、噛み合う減速機構を構成した例について説明したが、減速比が1またはそれ以下でも良いことは当然である。
【実施例2】
【0009】
次に第2実施例について説明する。図4は本発明の手首機構の側面図、図5はその平面図である。本発明が第1実施例と異なる部分は、手首部にモータを具備し、該モータによりワーク把持装置を旋回するようにしたことである。
次に、本発明の詳細な構造について説明する。アーム1の長手方向に対して垂直な回動軸(B軸)14のまわりに旋回する手首部2がアーム1の先端に回転自在に取り付けられている。手首部2には図示しないモータが配置され、手首部2にはB軸14に垂直な回転軸(T軸)15のまわりに旋回する第1手首リンク9が取り付けられている。第1手首リンク9にはモータ17が固定されている。モータ17には第2手首リンク10の一端が取り付けられ、第2手首リンク10の他端には回転自在に第4手首リンク12の一端が取り付けられている。第4手首リンク12の他端には回転自在に第3手首リンク11の一端が取り付けられ、第3手首リンク11の他端には回転自在に第1手首リンク9の一端が取り付けられている。第1手首リンク9と第4手首リンク12の両支持長さは同一で、第2の手首リンク10と第3手首リンク11の両支持長さは同一であるため平行四辺形の形状をなしている。第3手首リンク11にはワーク把持装置13が設けられ、T軸15から旋回軸線16上の位置に配置されている。
【0010】
次に、動作について説明する。手首部2に内包した図示しないモータが回転することにより第1手首リンク9が回転しワーク把持装置13を旋回させる。また、モータ17が回転することにより第2手首リンク10が回転し、互いに回転自在に支持された第2手首リンク10と第1手首リンク9と第3手首リンク11と第4手首リンク12が平行四辺形を形成したまま、モータ17と同一量、T軸と平行な旋回軸線16上でワーク把持装置13は回転する。図6に示すように、従来の多関節ロボット(図6(a))に対して本実施例(図6(b))では、ロボットの配置間隔距離をL+αからLに短縮することができ、搬送時間の短縮および狭所空間にロボットを配置しての作業が可能である。このように実施例2も実施例1と同様の効果を有している。
尚、ワーク把持装置の回転駆動機構について、手首部に内包したモータおよびギヤ伝達で説明したが、ベルト伝達やギヤとシャフトの組み合せ等でも良く、ワーク把持装置を旋回できるものであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例の手首機構の側面図
【図2】本発明の第1実施例の手首機構の平面図
【図3】本発明の第1実施例を使用した際の設備レイアウトの従来技術との比較例
【図4】本発明の第2実施例の手首機構の側面図
【図5】本発明の第2実施例の手首機構の平面図
【図6】本発明の第2実施例を使用した際の設備レイアウトの従来技術との比較例
【図7】従来の多関節ロボットの側面図
【図8】従来の多関節ロボットの平面図
【符号の説明】
【0012】
1 アーム
2 手首部
3 回転部
4 ブラケット
5 モータ
6 小ギヤ
7 大ギヤ
8 ベアリング
9 第1手首リンク
10 第2手首リンク
11 第3手首リンク
12 第4手首リンク
13 ワーク把持装置
14 B軸
15 T軸
16 旋回軸線
17 モータ
18 回動部
21 ベース
22 基部
23 第1アーム
24 第2アーム
25 第3アーム
26 手首部
261 B軸駆動モータ
263 第1手首リンク
264 第2手首リンク
265 第3手首リンク
266 第4手首リンク
27 回転部
271 T軸駆動モータ
273 出力軸
28 ワーク把持装置
281 ワーク把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームの長手方向に対して垂直な回動軸のまわりに回転する手首部と、前記部手首部に取り付けられ、前記回動軸に対して垂直な回動軸のまわりに回転する回転部と、前記回転部に取り付けられた第2手首リンクと、前記第2手首リンクの他端が取り付けられた第4手首リンクと、前記第4手首リンクの他端が取り付けられた第3手首リンクと、前記第3手首リンクの他端が取り付けられた第1手首リンクと、前記第1リンクの他端が前記手首部に取り付けられて平行四辺形を形成するリンク機構と、前記第3手首リンクに取り付けられたワーク把持装置とからなる多関節ロボットにおいて、
前記ワーク把持装置を前記回動軸に対して垂直な前記回動軸を中心に旋回させる回動部が前記手首部に備えられたことを特徴とする多関節ロボット。
【請求項2】
前記回動軸に対して垂直な前記回動軸の半径方向に関して前記手首部に配置されたブラケットに、前記ワーク把持装置を回動する駆動機構が備えられたことを特徴とする請求項1記載の多関節ロボット。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記ブラケットに配置されたモータと、前記モータと前記手首部間で前記モータの回転角度を変換する伝達機構からなることを特徴とする請求項2記載の多関節ロボット。
【請求項4】
前記回動軸に対して垂直な前記回動軸は、前記第1手首リンクの旋回軸と同軸であることを特徴する請求項1に記載の多関節ロボット。
【請求項5】
前記ブラケットに配置されたモータ軸と前記回動軸に対して垂直な前記回動軸は、旋回軸線上に配置されたことを特徴とする請求項1記載の多関節ロボット。
【請求項6】
アームの長手方向に対して垂直な回動軸のまわりに回転する手首部と、前記回動軸(に対して垂直な回動軸のまわりに回転する回転部と、前記回転部に取り付けられた第2手首リンクと、前記第2手首リンクの他端が取り付けられた第4手首リンクと、前記第4手首リンクの他端が取り付けられた第3手首リンクと、前記第3手首リンクの他端が取り付けられた第1手首リンクと、前記第1リンクの他端が前記手首部に取り付けられて平行四辺形を形成するリンク機構と、前記第3手首リンクに取り付けられたワーク把持装置とからなる多関節ロボットにおいて、
前記回動軸に対して垂直な前記回動軸と前記ワーク把持装置を旋回させる駆動機構の回転軸が同軸であることを特徴とする多関節ロボット。
【請求項7】
前記駆動機構は、前記手首部に内包されたことを特徴とする請求項6記載の多関節ロボット。
【請求項8】
前記駆動機構と前記第2リンクの回転軸が旋回軸線上に配置されたことを特徴とする請求項6記載の多関節ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−276025(P2007−276025A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−103505(P2006−103505)
【出願日】平成18年4月4日(2006.4.4)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】