説明

多関節型座標測定装置

【課題】 多関節型測定アームに測定誤差要因となるストレスがかからない測
定姿勢を維持させる。
【解決手段】 測定アームの各関節の角度に基づき、1)測定アームの第1リ
ンクと第2リンクがなす角度が所定値を超えて180°に近づいた、2)手首関
節からアーム支点への距離が所定値を超えて遠くなった、3)バランサーにより
発生される力に基づいて定められる所定範囲を超えて第2リンクが曲げられた、
のいずれかの条件が成立した場合、ユーザへの警告を行ない、専用プロセッサか
らの空間座標値の出力を中止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが多関節型の測定アームを動かして、測定アームの先端に取
り付けられた接触型または非接触型のプローブを被測定物上の任意の点に近づけ
ることにより、複雑な三次元形状を有する被測定物上の任意の点の空間座標を測
定することのできる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
屈曲自在な測定アームが、空間を移動して被測定物の位置や寸法等を測定する
多関節型座標測定装置においては、測定アームの各関節に対応してロータリーエ
ンコーダ等の角度センサが内蔵されており、これらの角度センサが検出する各関
節の回転角度と、アームの関節−関節間や関節−プローブ間等の長さとに基づい
て、プローブの先端点の空間座標が計算される。
【0003】
このような測定装置において、その測定誤差を低減するために、様々な工夫が
行なわれている。例えば、特許文献1には、各関節にその関節の回転の限界とな
る端部ストップを設け、各関節の角度センサが、その関節の角度が端部ストップ
に近づきすぎると、ライトを点灯させたり警告音を発したりすることにより、ア
ームの向きを調整し直すようユーザに促すことが、開示されている。
【0004】
また、同公報には、測定アームを組み立てた後、アームの各部材の機械加工も
しくは組み立てにより生じる設計値からのずれを、校正ジグを用いた測定結果に
基づいて求め、この求めた位置ずれの値を、アームの先端の空間座標を求めるた
めの運動式に組み込むことで、より正確な座標測定を実現することも、開示され
ている。
【0005】
【特許文献1】特開平8−261745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような多関節型座標測定装置で測定を行なっているとき、ユーザが、
測定アームを強く引っ張ったり、あるいは測定アームを無理に縮めたりすること
で、測定装置にストレスを与えると、アームがたわんで位置の変化が角度センサ
の出力に表れなくなったり、逆に関節の角度が変化していなくても角度センサが
回転を検出してしまう等の不都合が生じ、測定誤差が大きくなる。
【0007】
このように測定誤差が大きくなる測定アームの特定の姿勢は、各関節の角度が
それぞれの端部ストップに近づいたかどうかで検出することはできないため、ユ
ーザは、測定誤差が増えていることに気が付かず測定を続けてしまっていた。
【0008】
また、アームの操作性と安全性を向上するために、測定アームの根元付近にバ
ランサーを設ける構成が知られているが、測定アームの姿勢によってバランサー
の負荷力が変化するため、測定装置にかかるストレスに差が発生し、これも測定
誤差の大きくなる原因となっている。
【0009】
このようなバランサーは、例えばバネを用いて構成され、このバネにアームの
中立位置からの旋回量に応じて弾性エネルギーが蓄積されるようになっており、
測定アームが自重で根元から倒れようとする力を軽減する。このバネの働きによ
り、ユーザは測定時には測定アームを軽く動かすことができ、また、測定をやめ
て手を離した際にアームが倒れてくる危険性を低減することができる。
【0010】
このバネが測定アームを持ち上げようとする力は、アームの中立位置、すなわ
ち測定アームが根元から垂直に立っている状態からの旋回量に応じて変化する。
そして、上述した位置ずれの校正は、例えば、測定アームにかかる重力と、バネ
が測定アームを持ち上げようとする力とが釣り合うポイントの付近で、測定誤差
が最小になるように、行なわれる。この場合、測定アームがこの釣り合いポイン
トよりも上方に持ち上げられるにつれて、実際に測定アームにかかるバランサー
の力は弱くなり、逆に測定アームがこの釣り合いポイントよりも下方に押し下げ
られるにつれて、実際に測定アームにかかるバランサーの力は強くなるため、こ
のバランサーの力の差が、測定誤差を広げることになる。
【0011】
このバランサーの力の差による誤差は、発生する力が小さいバランサーを使用
すれば小さくなるが、その場合は、測定アームの自重がバランサーの力に勝るこ
ととなるので、ユーザが手を離すと測定アームは根元から倒れてしまい、安全性
が損なわれる。
【0012】
本発明は、以上のような事情を考慮し、測定アームが測定精度の良好に保たれ
る測定姿勢をとっているかどうかを、ユーザに知らせることのできる多関節型座
標測定装置を提供することを、一つの目的とする。
【0013】
本発明の別の目的は、測定アームの姿勢によってバランサーが発生する力に差
が出る場合であっても、測定精度の良い空間座標を得ることのできる多関節型座
標測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る多関節型座標測定装置は、一端にプローブを取り付け可能であり
、プローブ取り付け部材と第1リンクと第2リンクとが順に連結され、他端が支
持部材に取り付けられる、多関節型測定アームと、この測定アームの各関節の角
度に基づいて、プローブの位置に対応する空間座標を算出するプロセッサとを備
える。上記の測定アームは、第1リンクに対するプローブ取り付け部材の曲げ動
作を提供する手首関節と、第2リンクに対する第1リンクの曲げ動作を提供する
肘関節と、支持部材に対する第2リンクの曲げ動作を提供する肩関節とを備える
ものである。上記の測定アームは、これらに加えて、第1リンクに対するプロー
ブ取り付け部材のねじり動作を提供する関節と、前記第2リンクに対する前記第
1リンクのねじり動作を提供する関節と、前記支持部材に対する前記第2リンク
のねじり動作を提供する関節とのうち、少なくとも一つをさらに備えるものとし
ても良い。
【0015】
ユーザがこの測定アームを引っ張って遠くの方を測定しようとすると、測定誤
差が許容範囲を超えて大きくなることがあるが、本発明の第一の発明によれば、
このような状態での測定になってしまう前に、測定アームの姿勢に関するパラメ
ータに基づいて、ユーザに対して警告を行なうので、警告されたユーザは、測定
アームを測定精度の良好に保たれる姿勢に戻して測定を続行することができ、結
果として出力される空間座標の精度を高めることができる。
【0016】
上記のパラメータとして、単一のパラメータ(例えば後述する第一及び第二の
パラメータのいずれかのみ)を用いても良いが、測定アームのリンクがなす角度
に関する第一のパラメータと、測定アームの到達距離に関する第二のパラメータ
とを併用すると、測定誤差が許容範囲を超えて大きくなる前に確実に警告を行な
うことができる。
【0017】
第一のパラメータについては、例えば、第1リンクと第2リンクとがなす角度
が180°に近いということは、測定アームが伸び切る状態が近いということで
あり、180°に近づくにつれて測定誤差は大きくなるので、所望の測定精度が
出る角度の限界(例えば170°)を超えていたら、あるいはその限界に近づい
たら、警告を行なうようにする。
【0018】
第二のパラメータについては、例えば、手首関節と測定アームの根元の支点と
の間の距離が遠くなるほど、測定アームが伸び切る状態が近いことになるため、
所望の測定精度が出る距離の限界(例えば、伸び切った状態での手首関節から測
定アームの支点までの長さが1350mmである場合に、1300mm)を超え
ていたら、あるいはその限界に近づいたら、警告を行なうようにする。
【0019】
ここでは、代表的に、手首関節から測定アームの支点までの距離を用いている
が、これは、ユーザが測定アームの手首関節付近を握って動かすことが多く、そ
の場合にはプローブやプローブ取り付け部材に測定誤差を生じさせるような力が
かかることはほぼ無いという事情による。しかし、ユーザがプローブやプローブ
取り付け部材の付近を持って測定アームを動かすことが多いタイプの装置であれ
ば、プローブ先端から測定アームの支点までの距離、もしくはプローブ取り付け
部材の所定位置から測定アームの支点までの距離を用いても良く、このような実
施も本発明の範囲に含まれる。また、測定アームの支点も、測定装置の構成によ
り、肩関節の位置、他端を支持部材に取り付ける位置、これらの間の任意の位置
のうち、いずれを採用しても構わない。
【0020】
上記の距離は、例えば、測定装置が備えるプロセッサを利用して手首関節等の
位置を求め、この求めた位置と予め知られている測定アームの支点の位置との間
の距離を算出することにより、求めることができる。
【0021】
上述した本発明の第一の発明に係る測定装置は、肘関節の角度から、第1リン
クと第2リンクとがなす角度が所定値を超えて180°に近づいたことを検出す
る第一の手段と、手首関節の位置の、測定アームの支点に対する距離が、所定値
を超えて遠くなったことを検出する第二の手段と、これら第一及び第二の手段の
少なくとも一方が検出をした場合に、ユーザへの警告を行なう警告手段とを具備
したことを特徴とする。
【0022】
上述した本発明の第一の発明に係る測定制御方法は、プローブにより支持部材
から離れた位置を測定しようとするユーザの測定アームに対する引っ張り力によ
り生じる測定誤差が、許容範囲を超える可能性があることを、測定アームの姿勢
に関する所定のパラメータが所定値を超えたかどうかに基づいて、プロセッサに
検出させ、検出がされた場合に、ユーザへの警告を行なうことを特徴とする。
【0023】
次に、本発明の第二の発明に係る測定装置は、肩関節もしくはその近辺に設け
られ、測定アームにかかる重力に対抗して第2リンクの前記肘関節側が持ち上が
るような力を発生するためのバランサーをさらに備えている。
【0024】
このようなバランサーを備える測定装置の場合、バランサーの力は、一般的に
、測定アームが垂直に立っているときに最も小さく、測定アームが肩関節の周り
に下方向へ回転するにつれて大きくなる。一方、測定アーム組み立て後の校正は
、バランサーの力がある値となるポイント、例えば、バランサーにより発生され
る力が測定アームにかかる重力と釣り合うポイントにおいて行なわれるため、こ
のポイントを略中心とする所定範囲を外れて、ユーザが測定アームを曲げて測定
しようとすると、測定誤差が許容範囲を超えて大きくなることがある。
【0025】
本発明の第二の発明によれば、このようなバランサーの力の強弱により、測定
誤差が許容範囲となる所定範囲から外れた状態での測定になってしまう前に、測
定アームの姿勢に関するパラメータに基づいて、ユーザに対して警告を行なうの
で、警告されたユーザは、測定アームを測定精度の良好に保たれる姿勢に戻して
測定を続行することができ、結果として出力される空間座標の精度を高めること
ができる。
【0026】
第二の発明におけるパラメータについては、例えば、第2リンクが水平である
状態が、上記のバランサーの力が所定の値となるポイントであるとすれば、第2
リンクが肩関節の周りを上方向に回転して垂直に近づくと、バランサーの力は弱
くなり過ぎ、第2リンクが肩関節の周りを下方向に回転して垂直に近づくと、バ
ランサーの力は強くなり過ぎるので、肩関節の角度が、所望の測定精度が出る角
度の限界(例えば水平の状態を0°として、±80°)を超えていたら、あるい
はその限界が近づいたら、警告を行なうようにする。
【0027】
ここで、バランサーの力が所定の値となるポイントとしては、重力と釣り合う
ポイントでなくても、他のどのような状態を採用しても構わない。また、バラン
サーの力が強くなる方での測定精度の悪化が許容範囲であれば、バランサーの力
が弱くなる方での警告のみ(上記の例であれば、水平から上方向に80°以上回
転した場合のみ警告)を行なうことにしても良いし、逆にバランサーの力が強く
なる方での警告のみ(上記の例であれば、水平から下方向に80°以上回転した
場合のみ警告)を行なうことにしても良いし、上方向の限界と下方向の限界とし
て異なる角度(例えば水平から+80°と−70°等)を設定しても良い。
【0028】
上述した本発明の第二の発明に係る測定装置は、肩関節の角度から、バランサ
ーにより発生される力に基づいて定められる所定範囲を超えて第2リンクが曲げ
られたことを検出する検出手段と、この検出手段が検出をした場合に、ユーザへ
の警告を行なう警告手段とを具備したことを特徴とする。
【0029】
上述した本発明の第二の発明に係る測定制御方法は、プローブにより所望の位
置を測定しようとするユーザの測定アームに取らせる姿勢が、上記のバランサー
の測定アームに及ぼす力の影響で許容範囲を超える測定誤差を生じさせる可能性
があることを、測定アームの姿勢に関する所定のパラメータが所定値を超えたか
どうかに基づいて、プロセッサに検出させ、検出がされた場合に、ユーザへの警
告を行なうことを特徴とする。
【0030】
上述した第一の発明と第二の発明は、組み合わせて実施しても効果的である。
例えば、第1リンクと第2リンクとがなす角度が所定値を超えて180°に近づ
いたことを検出する第一の手段と、手首関節から支点への距離が所定値を超えて
遠くなったことを検出する第二の手段と、第2リンクが支持部材に対して、バラ
ンサーにより発生される力に基づいて定められる所定範囲を超えて、曲げられた
ことを検出する第三の手段とを備え、これら第一乃至第三の手段の少なくとも一
つが検出をした場合に、ユーザへの警告を行なうように構成しても良い。
【0031】
また、上述した第一の発明においても、第二の発明においても、ユーザに警告
を行なうことに加えて、プロセッサからの空間座標の出力を中止すれば、ユーザ
が測定精度の悪い空間座標値を使用してしまうことを確実に防ぐことができる。
空間座標の出力を中止させる方法として、プロセッサへの各関節の角度の取り込
みを停止して空間座標値の算出自体が行われないようにしても良いし、プロセッ
サが算出した空間座標値を外部へ出力しないようにするのでも良い。
【0032】
このように、ユーザへの警告と空間座標値の出力中止とを併用する場合、観測
される各パラメータが、所望の測定精度が出せる限界値より少し手前の所定値に
達したときに、ユーザへの警告を開始し、この警告を無視してユーザが測定アー
ムを動かし続けてそのパラメータが限界値を超えたときに、空間座標値の出力を
中止するようにしても、効果的である。
【0033】
最後に、本発明の第三の発明に係る測定装置は、肩関節もしくはその近辺に設
けられ、測定アームにかかる重力に対抗して第2リンクの前記肘関節側が持ち上
がるような力を発生するためのバランサーをさらに備えており、プロセッサが空
間座標を算出するための方程式として、バランサーにより発生される力が肩関節
の角度によって変化することにより生じる誤差を補正する項を含む方程式を用い
ることを特徴とする。例えば、上記の方程式に、バランサーの力により第2リン
クに発生するたわみを表すパラメータを含ませ、このたわみを表すパラメータの
値として肩関節の角度に基づいて定められる値を用いる。
【0034】
本発明の第三の発明によれば、測定アームの姿勢によってバランサーの力が小
さくなったり大きくなったりしても、プロセッサがこれにより生じる誤差を吸収
するように空間座標を算出するので、出力される空間座標の精度を高めることが
できる。
【0035】
本発明の第二の発明は、バランサーの力の影響で生じる測定誤差を、ユーザに
警告することで避けようとするものであるのに対し、本発明の第三の発明は、バ
ランサーの強弱の影響をプロセッサが用いるソフトウェアで補正することで、測
定誤差を近似的に除去しようとするものである。したがって、第三の発明は、第
二の発明を代替するものとして実施することもできるし、第二の発明と組み合せ
て実施する(ソフトウェアにより補正しても測定誤差が除去しきれないところま
で第2のリンクが曲げられたらユーザに警告する等)こともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る多関節型座標測定装置の一例の外観を示す図である
。測定アームは、プローブ取り付け部2、第1リンク5、第2リンク8と、6個
の関節から構成されており、プローブ取り付け部2にプローブ1が取り付けられ
るようになっている。6番目の関節が、測定アームを支持する支柱に取り付けら
れて、測定アームと支柱との間の回転を提供している。
【0038】
No.1関節(手首関節)3は、第1リンク5に対するプローブ取り付け部2の曲
げ動作(図2のA軸周りの回転)を提供し、No.2関節4は、第1リンク5に対す
るプローブ取り付け部2のねじり動作(図2のB軸周りの回転)を提供し、No.3
関節(肘関節)4は、第2リンク8に対する第1リンク5の曲げ動作(図2のC
軸周りの回転)を提供し、No.4関節7は、第2リンク8に対する第1リンク5の
ねじり動作(図2のD軸周りの回転)を提供し、No.5関節(肩関節)9は、支柱
11に対する第2リンク8の曲げ動作(図2のE軸周りの回転)を提供し、No.6
関節10は、支柱11に対する第2リンク8のねじり動作(図2のF軸周りの回
転)を提供する。これらNo.1〜No.6の各関節には、ロータリーエンコーダ等の角
度センサが内蔵されており、それぞれの軸周りの回転角度が検出される。No.2、
No.4、No.6関節のねじり動作は、回転角度に限界があってもよいし、エンドレス
に回転するものであっても良い。
【0039】
支柱11は、移動可能な台12に据え付けられており、台12には、専用プロ
セッサ13と、コンピュータ14が、備え付けられている。専用プロセッサ13
と、各関節のロータリーエンコーダとは、有線または無線で接続されており、各
ロータリーエンコーダの出力が専用プロセッサ13に入力されるようになってい
る。専用プロセッサ13は、入力される各関節の角度と、各部材の固定的な位置
関係(リンクやプローブの長さ等を含む)とに基づいて、プローブ1の先端の(
X,Y,Z)座標を算出することができる。コンピュータ14では、様々なアプ
リケーションプログラムを起動実行することができ、専用プロセッサ13で算出
された空間座標値が、そのアプリケーションプログラムに入力される。
【0040】
上記の測定アームは、プローブ取り付け部2に、様々なプローブを取り付ける
ことができる。図1のプローブ1は、その先端を被測定物の表面に接触させて、
接触点の座標を求めるものであるが、これを例えば図3に示すような非接触型プ
ローブに付け替えることもできる。図3の例では、非接触型のレーザプローブ3
1を、G軸周りの回転を提供するプローブ関節32に組み込んだものを、プロー
ブ取り付け部2に装着している。非接触型プローブ31のセンサ部分の位置を特
定するために、プローブ関節32にもロータリーエンコーダが内蔵されており、
この場合は、専用プロセッサ13は、No.1〜No.6及びプローブの各関節の角度に
基づいて、プローブの先端の空間座標を求めることになる。非接触型プローブ3
1のレーザによるセンシングの結果は、各関節の角度とは別に、非接触型プロー
ブコントローラ33に入力され、ここで処理されたセンシング結果と、専用プロ
セッサ13で求められたプローブ先端の座標とを合成して、被測定物の表面のデ
ータが得られる。
【0041】
このように構成された測定アームをユーザが動かして、被測定物の位置座標を
測定する際に、その測定精度が許容範囲を超えて悪化しないように、測定アーム
が図4及び図5に例示するような姿勢になると、ユーザに警告を行なう。図4及
び図5には、図3のプローブ31を使用した例を示したが、図1のプローブ1を
使用する場合も、同様な制御を行なう。
【0042】
図4は、ユーザが測定アームを引っ張って遠くの方を測定しようとしている場
合に、測定誤差が許容範囲を超えて大きくなる姿勢を特定するためのパラメータ
の一例を示す。
【0043】
一つのパラメータは、No.3関節(肘関節)6の角度である。No.3関節6の角度
センサは、この例では、第1リンク5と第2リンク8とが直角であるときに0°
を示すように設定されている。そして、No.3関節6の角度センサが+80°を超
えると、第1リンク5と第2リンク8とは平行に近くなり、測定誤差が許容範囲
を超えて大きくなる。したがって、この場合は、80°(第1リンク5と第2リ
ンク8との相対角度で言えば170°)が特定姿勢限界となる。
【0044】
もう一つのバラメータは、No.1関節(手首関節)3の中心の位置と、測定アー
ムの支点との間の距離である。測定アームの支点としては、例えば、支柱11に
取り付けられるNo.6関節10の中心の位置を用いることができる。図4の測定ア
ームのNo.1関節3までの最大長さは1350mmであるが、No.1関節3のアーム
支点からの距離が1300mmを超えると、測定誤差が許容範囲を超えて大きく
なるので、この場合は、1300mmが特定姿勢限界となる。
【0045】
上記の二つのパラメータのいずれかが特定姿勢限界に近づくと、測定装置がア
ラーム音を鳴らす、ライトを点滅させる等の方法で、ユーザに警告する。例えば
、No.3関節6の角度が78°を超えるか、No.1関節3の距離が1270mmを超
えるかしたら、ユーザに警告する。その後、No.3関節6の角度が80°を超える
か、No.1関節3の距離が1300mmを超えるかしたら、専用プロセッサ13の
、各関節の角度センサからの信号を取り込む処理か空間座標を出力する処理の少
なくとも一方を止める。このとき、ユーザへの警告を続行するとともに、そのア
ラーム音の音質や音量、ライトの点灯等を変化させても良いし、ユーザが空間座
標の出力が中止されたことを認識できる他の方法を採っても良い。
【0046】
図1及び図2に示すように、本例の測定アームは、プローブ取り付け部2がA
軸の周りに360°もしくはエンドレスに回転するため、ユーザは、No.1関節3
を持って測定アームを被測定物の付近に移動させることが多い。このため、本例
の測定アームでは、プローブ取り付け部2の位置やプローブ1の先端からアーム
支点までの距離ではなく、No.1関節3からの距離を、姿勢を特定するパラメータ
として用いている。
【0047】
図5は、測定アームのバランサーが発生する力の大きさが、測定アームの姿勢
によって異なる様子を示し、このバランサーの影響で測定誤差が許容範囲を超え
て大きくなる姿勢を特定するためのパラメータの一例を示す。
【0048】
バランサーとしては、種々の公知の構成のものを採用することができる。例え
ば、特開昭61−168491号公報に示されるようなバネ組立体を、No.5関節
9に対して結合させる構成や、特開昭58−34791号公報に示されるような
ねじりコイルバネを、No.5関節9に組み込む構成がある。また、USP5189
797号公報に示されるように、第2リンクと平行にリンク支持部材を設け、No
.5関節9に隣り合わせてバネを設け、このバネの力をリンク支持部材を介して第
2リンクに伝達させる構成もある。
【0049】
いずれの形態のバランサーであっても、本例の測定アームでは、図5に示すよ
うに、No.5関節9を中心に第2リンク8を持ち上げればバランサーの力は弱くな
り、逆に第2リンク8を押し下げればバランサーの力は強くなる。本例の場合、
ユーザが測定アームから手を離したニュートラルの状態は、第2リンク8がほぼ
水平で、第1リンク5が地面に垂直にぶら下がっている状態であり、この状態で
、測定アームにかかる重力とバランサーが測定アームを押し上げようとする力と
が釣り合っている。そして、この釣り合っている状態の近辺で、最も高い測定精
度が出るように、測定アームの組み立て後の校正や各種調整が行なわれている。
【0050】
本例の場合、バランサーの力の強弱の影響で許容範囲を超える測定誤差が出る
ので、図5に示すように、バランサーの力が弱くなり過ぎて、許容範囲を超える
測定誤差が出る特定姿勢限界として、No.5関節9の角度センサが+80°という
値を設定する。なお、No.5関節9の角度センサは、この例では、第2リンク8が
地面と平行であるときに0°を示すように設定されているので、この特定姿勢限
界は、支柱11と第2リンク8との相対角度で言えば170°ということになる
。特定姿勢限界が近づくと(例えばNo.5関節9の角度センサが78°になると)
、ユーザに警告し、特定姿勢限界を超えると、角度センサからのデータの取得お
よび/または空間座標の出力を行なわないようにすることは、図4の例と同様で
ある。
【0051】
バランサーの力が強くなり過ぎる場合も、同様に特定姿勢限界を定めることが
できる(図5の例ではNo.5関節9の角度センサが−70°)が、本例の測定アー
ムでは、測定アームをそのように押し下げる姿勢は取らせにくいため、ユーザが
下側の特定姿勢限界を超えることはないと見越して、下側のユーザ警告機能を省
略することも可能である。
【0052】
図6には、図4及び図5で説明した特定姿勢限界に基づく測定制御を行なうた
めの、専用プロセッサ13の内部構成例を示す。No.1〜No.6関節の各ロータリー
エンコーダからの出力は、カウンタ回路61に入力されて、各関節の角度を表わ
す信号となる。専用プロセッサ13のプロセッサ部60は、下記に説明する条件
判断部62と座標算出部63を含む。
【0053】
座標算出部63は、測定アームの各部材の固定的な位置関係を規定する設計値
と、測定アーム組立て後に求めた設計値からの位置ずれ(校正値)とを、記憶部
65から読み込み、これらの値と、カウンタ回路61から入力される各関節の角
度とを、運動方程式に代入して、プローブの先端の(X,Y,Z)座標を算出す
る。算出された座標は、通信インタフェース68を介して、コンピュータ14の
アプリケーションプログラムへ送出される。
【0054】
条件判断部62は、図4及び図5の例によれば、以下の三つの処理を行なう。
一つ目は、カウンタ回路61から入力されるNo.3関節の角度を、条件判断用設
定値記憶部64に記憶されている値(図4の例では78°と80°)と比較する
処理である。そして、条件判断部62は、No.3関節の角度が78°を超えていれ
ば、警告インタフェース66を介して、スピーカかランプ67に信号を送ってユ
ーザに警告し、80°を超えていれば、座標算出部63からの空間座標値の出力
を中止する。
【0055】
二つ目は、カウンタ回路61から入力される各関節の角度を座標算出部63に
入力してNo.1関節の位置を算出させ、この算出結果に基づいてNo.1関節からアー
ム支点までの距離を計算し、この計算結果を、条件判断用設定値記憶部64に記
憶されている値(図4の例では1270mmと1300mm)と比較する処理で
ある。そして、条件判断部62は、計算した距離が1270mmを超えていれば
、警告インタフェース66を介して、スピーカかランプ67に信号を送ってユー
ザに警告し、1300mmを超えていれば、座標算出部63からの空間座標値の
出力を中止する。
【0056】
三つ目は、カウンタ回路61から入力されるNo.5関節の角度を、条件判断用設
定値記憶部64に記憶されている値(図5の例では78°と80°)と比較する
処理である。そして、条件判断部62は、No.5関節の角度が78°を超えていれ
ば、警告インタフェース66を介して、スピーカかランプ67に信号を送ってユ
ーザに警告し、80°を超えていれば、座標算出部63からの空間座標値の出力
を中止する。
【0057】
上記のように座標算出部63からの空間座標値の出力を中止することにより、
プロセッサ部60もしくは専用プロセッサ13からの空間座標値の出力は中止さ
れる。なお、条件判断用設定値64と測定アームの設計値及び校正値65は、R
OMやRAM等の記憶媒体の形で専用プロセッサ13に組み込むことができる。
また、カウンタ回路61と警報インタフェース66と記憶部64及び65を、コ
ントロール部69として構成することもできる。
【0058】
ここでは、プロセッサ部60として説明したが、条件判断部62と座標算出部
63は、別々のプロセッサで構成しても良いし、一つのプロセッサがある時点で
は条件判断部62の処理を記述したプログラムに従って動作し別の時点では座標
算出部63の処理を記述したプログラムに従って動作するように構成しても良い

【0059】
なお、No.3関節とNo.5関節の曲げ動作には、測定アームの構造上の回転角度限
界が存在するが、その物理的な回転限界とは関わりなく、上述した特定姿勢限界
で、ユーザに警告を行ない、空間座標値の出力を中止する。
【0060】
図4及び図5にその一例を示した特定姿勢限界の値は、同一の設計により製造
された測定装置に対しては同一の値を設定するようにしても良いが、測定装置毎
に検証データに従って決定していくことも可能である。後者の場合、各測定装置
に固有の誤差要因も含めて測定精度の落ちるアーム姿勢を特定できるので、安定
した測定結果が得られるアーム姿勢を維持できる効果がより高くなる。
【0061】
測定装置毎に検証データを得る方法の一例を、図7に示す。図7の例では、例
えば1mのブロックゲージを測定装置の前方周辺の様々な場所に配置し、それぞ
れについて測定を行ない、測定誤差が規定値より大きい姿勢についてNo.3関節の
角度、No.1関節の到達位置、No.5関節の角度を調べ、各パラメータの限界値を決
定する。なお、図7(a)は、測定装置を真上から見た場合のブロックゲージの
配置を、図7(b)は、測定装置を真横から見た場合のブロックゲージの配置を
示す。図7に加えて、特殊なゲージを種々の位置に配置して測定した結果を用い
て、各パラメータの限界値を決定しても良い。
【0062】
以下には、バランサーの強弱の影響を補正ソフトで近似的に除去する場合の、
図6の座標算出部63及びこれに付随する記憶部65の動作内容を説明する。
【0063】
まず、座標算出部63が用いる運動方程式は、6関節型三次元座標測定装置の
プローブ先端Pの空間座標値を与えるもので、4行4列のマトリックスを6個か
それ以上掛け合わせた変換マトリックスの運動方程式であるが、ここでは、バラ
ンサーの力の影響を受ける第2リンク部について簡略化して説明する。
【0064】
図8に示すモデル(バランサーの力の影響が無視できる場合のモデル)で、No
.4関節部を無視した第2リンク機構の座標系において、No.3関節部から見たプロ
ーブ先端Pの空間座標値を、No.5関節部から見たプローブ先端Pの空間座標値P
(x,y,z)に変換する4行4列変換マトリックスの運動方程式は、下記の数
式(1)のようになる。
【0065】
【数1】


数式(1)において、Aは、第2リンクの長さであり、Yは、No.5関節の角度
である。数式(1)には、バランサーの強弱による影響を補正する項が含まれて
いないため、数式(1)により計算されるP(x,y,z)は、バランサーの力
の変化に伴う動的な測定誤差を有する。
【0066】
これに対し、本実施形態では、図5に示すように第2リンクをNo.5関節の周り
に回転させると、バランサー力Fの強弱により動的なたわみが発生することを考
慮した運動方程式を用いる。すなわち、本実施形態における座標算出部63は、
No.3関節部から見たプローブ先端Pの空間座標値を、No.5関節部から見たプロー
ブ先端Pの(補正された)空間座標値P0(x,y,z)に変換する4行4列変
換マトリックスの運動方程式として、例えば下記の数式(2)を用いる。この数
式(2)は、上述したたわみを、図9に示すようにモデル化することにより導出
されるものである。
【0067】
【数2】


数式(2)において、Bは、図9に示すように、No.3関節中心からたわみによ
る変曲点までの距離であり、Cは、No.5関節中心からたわみによる変曲点までの
距離であり、B+CはほぼA(第2リンクの長さ)に等しいとする。Yは、No.5
関節の角度であり、Xは、たわみによるNo.3関節部の誤差角度ΔNo.3である。な
お、たわみによるNo.5関節部の角度誤差ΔNo.5は、No.5関節の検出角度Yに含ま
れて検知される。
【0068】
数式(2)には、バランサーの強弱による影響を補正する項として、たわみに
よる変曲点が1箇所である場合の近似補正が含まれている。すなわち、数式(2
)には、バランサー力の強弱により変動する項として、sinX、cosX、B、Cが
含まれている。但し、B及びCは、固定値として扱っても構わない。Xは、バラ
ンサーの強弱による変化を反映し、No.5関節の角度Yによって異なる値をとる(
バランサーの力が大きくなるときはXも大きくなり、バランサーの力が小さくな
るときはXも小さくなる)。
【0069】
したがって、例えばNo.5関節の所定の角度毎に設定された補正定数から近似的
に内部補間した補正値Xを算出し、これを数式(2)に代入することで、数式(
2)により計算されるP0(x,y,z)は、バランサーの力の変化に伴う動的
な測定誤差が近似的に除去されたものとなる。ここで用いる補正定数は、校正フ
ァイルとして記憶部65に記憶させておけばよく、その値を状況に応じて変更す
ることも可能である。また、バランサーの力をセンサで検知することにより、自
動的(リアルタイム)に補正値を演算して、この演算値を設定するようにしても
良い。
【0070】
上記の例では、第2リンクのYZ平面上の補正(Y,Z座標値に補正の影響が
出る)を示したが、X座標値についても、同様な補正により測定誤差を近似的に
除去できる。バランサーの力を受ける第2リンクは、No.4、No.5、No.6の各関節
の回転が連動して運動するので、Y,Z座標値だけでなくX座標値についても補
正すれば、より高精度に空間座標値P0を算出することができる。
【0071】
また、上記の例では、変曲点が1箇所であるモデルを説明したが、アームの構
造上複数の変曲点が存在しうる場合にも、同様に変換マトリックスを展開するこ
とができる。さらに、ねじれの影響による誤差も、同様に変換マトリックスを展
開して、補正することができる。
【0072】
上記には、No.3関節部から見た空間座標値(x、y、z)を、No.5関節部から
見た空間座標値に変換する例を示したが、その逆の変換も勿論可能である。
【0073】
なお、バランサーの強弱による影響が、図9に示した以外のリンク機構や関節
部に生じている場合、その影響が何軸の回転運動か平行運動かを分析し、上記に
例示した運動方程式に取り入れることにより、幅広く補正をかけることもできる

【0074】
以上に本発明の実施形態について説明したが、上述の実施形態を本発明の範囲
内で当業者が変形可能なことはもちろんである。例えば、本発明は、図1のよう
な構成以外の構成を持つ多関節型測定装置にも適用できる。図1の測定アームは
、垂直な支柱に対して、第2リンクが水平に支持され、そこから第1リンクが垂
れ下がるのを基本姿勢としているが、支柱の代わりに支持台を持つ装置でも、第
2リンクが垂直な状態が基本姿勢である装置でも、本発明が応用実施できること
は当然である。
【0075】
以上のように、本発明によれば、測定アームに測定誤差要因となるストレスが
かからない測定姿勢が維持されているかどうかを、測定装置が検出することがで
き、それを外れた場合にユーザに知らせることができるため、安定した測定結果
を得ることができる。
【0076】
また、測定誤差要因となるストレスが測定アームのバランサーの力である場合
には、上述したようにユーザに知らせることで安定した測定結果が得られる測定
姿勢を維持することもできるが、測定装置がバランサーの力の影響を補正して空
間座標を算出することで、精度の良い測定結果を得るようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施形態に係る多関節型座標測定装置の一例の外観を示す図。
【図2】図1の測定アームの各関節の回転方向を示す図。
【図3】図1の測定アームに取り付け可能なプローブの他の例を示す図。
【図4】ユーザが測定アームを引っ張って遠くの方を測定しようとしている場合に、測定誤差が許容範囲を超えて大きくなる姿勢を特定するためのパラメータの一例を示す図。
【図5】測定アームの姿勢によってその発生力が異なるバランサーの影響により、測定誤差が許容範囲を超えて大きくなる姿勢を特定するためのパラメータの一例を示す図。
【図6】図1の専用プロセッサの内部構成例を示す図。
【図7】図4及び図5のパラメータを各測定装置固有に求めるための検証方法の一例を示す図。
【図8】図1の測定アームの第2リンク部分の運動方程式を説明するためのモデル図。
【図9】図8の第2リンク部分に発生するたわみの基本形態を例示する図。
【符号の説明】
【0078】
1 プローブ
2 プローブ取り付け部
3 No.1関節(手首関節)
4 No.2関節
5 第1リンク
6 No.3関節(肘関節)
7 No.4関節
8 第2リンク
9 No.5関節(肩関節)
10 No.6関節
11 支柱
12 台
13 専用プロセッサ
14 コンピュータ
31 非接触型プローブ
32 プローブ関節
33 非接触型プローブコントローラ
60 プロセッサ部
61 カウンタ回路
62 条件判断部
63 座標算出部
64 条件判断用設定値記憶部
65 測定アームの設計値と校正値記憶部
66 警報インタフェース
67 スピーカ及び/又はランプ
68 通信インタフェース
69 コントロール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にプローブを取り付け可能であり、プローブ取り付け部材と第1リンクと第2リンクとが順に連結され、他端が支持部材に取り付けられる、多関節型測定アームであって、該第1リンクに対する該プローブ取り付け部材の曲げ動作を提供する手首関節と、該第2リンクに対する該第1リンクの曲げ動作を提供する肘関節と、該支持部材に対する該第2リンクの曲げ動作を提供する肩関節とを備える測定アームと、
前記測定アームの各関節の角度に基づいて、前記プローブの位置に対応する空間座標を算出するプロセッサと、
前記肘関節の角度から、前記第1リンクと前記第2リンクとがなす角度が所定値を超えて180°に近づいたことを検出する第一の手段と、
前記手首関節の位置の、前記測定アームの支点に対する距離が、所定値を超えて遠くなったことを検出する第二の手段と、
前記第一の手段及び前記第二の手段の少なくとも一方が検出をした場合に、ユーザへの警告を行なう警告手段とを具備したことを特徴とする多関節型座標測定装置。
【請求項2】
前記第二の手段は、前記プロセッサを利用して前記手首関節の位置を求め、この求めた位置と前記支点との間の距離を算出し、この算出した距離を所定値と比較する手段を含むことを特徴とする請求項1記載の多関節型座標測定装置。
【請求項3】
前記肩関節もしくはその近辺に設けられ、前記測定アームにかかる重力に対抗して前記第2リンクの前記肘関節側が持ち上がるような力を発生するためのバランサーと、
前記肩関節の角度から、前記バランサーにより発生される力に基づいて定められる所定範囲を超えて前記第2リンクが曲げられたことを検出する第三の手段とをさらに具備し、
前記警告手段は、前記第一乃至第三の手段の少なくとも一つが検出をした場合に、ユーザへの警告を行なうものであることを特徴とする請求項1記載の多関節型座標測定装置。
【請求項4】
前記肩関節もしくはその近辺に設けられ、前記測定アームにかかる重力に対抗して前記第2リンクの前記肘関節側が持ち上がるような力を発生するためのバランサーをさらに具備し、
前記プロセッサは、空間座標を算出するための方程式として、前記バランサーにより発生される力が前記肩関節の角度によって変化することにより生じる誤差を補正する項を含む方程式を、用いるものであることを特徴とする請求項1記載の多関節型座標測定装置。
【請求項5】
一端にプローブを取り付け可能であり、プローブ取り付け部材と第1リンクと第2リンクとが順に連結され、他端が支持部材に取り付けられる、多関節型測定アームであって、該第1リンクに対する該プローブ取り付け部材の曲げ動作を提供する手首関節と、該第2リンクに対する該第1リンクの曲げ動作を提供する肘関節と、該支持部材に対する該第2リンクの曲げ動作を提供する肩関節とを備える測定アームと、
前記測定アームの各関節の角度に基づいて、前記プローブの位置に対応する空間座標を算出するプロセッサと、
前記肩関節もしくはその近辺に設けられ、前記測定アームにかかる重力に対抗して前記第2リンクの前記肘関節側が持ち上がるような力を発生するためのバランサーと、
前記肩関節の角度から、前記バランサーにより発生される力に基づいて定められる所定範囲を超えて前記第2リンクが曲げられたことを検出する検出手段と、
前記検出手段が検出をした場合に、ユーザへの警告を行なう警告手段とを具備したことを特徴とする多関節型座標測定装置。
【請求項6】
前記警告手段は、ユーザへの警告を行なう手段と、前記プロセッサからの空間座標の出力を中止する手段とを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の多関節型座標測定装置。
【請求項7】
前記測定アームは、前記第1リンクに対する前記プローブ取り付け部材のねじり動作を提供する関節と、前記第2リンクに対する前記第1リンクのねじり動作を提供する関節と、前記支持部材に対する前記第2リンクのねじり動作を提供する関節とのうち、少なくとも一つをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多関節型座標測定装置。
【請求項8】
一端にプローブを取り付け可能であり、プローブ取り付け部材と第1リンクと第2リンクとが順に連結され、他端が支持部材に取り付けられる、多関節型測定アームであって、該第1リンクに対する該プローブ取り付け部材の曲げ動作を提供する手首関節と、該第2リンクに対する該第1リンクの曲げ動作を提供する肘関節と、該支持部材に対する該第2リンクの曲げ動作を提供する肩関節とを備える測定アームと、前記測定アームの各関節の角度に基づいて、前記プローブの位置に対応する空間座標を算出するプロセッサとを具備する多関節型座標測定装置による測定を制御する方法であって、
前記プローブにより前記支持部材から離れた位置を測定しようとするユーザの前記測定アームに対する引っ張り力により生じる測定誤差が、許容範囲を超える可能性があることを、前記測定アームの姿勢に関する所定のパラメータが所定値を超えたかどうかに基づいて、前記プロセッサに検出させ、
前記検出がされた場合に、ユーザへの警告を行なうことを特徴とする測定制御方法。
【請求項9】
前記所定のパラメータとして、前記測定アームのリンクがなす角度に関する第1のパラメータと、前記測定アームの到達距離に関する第2のパラメータとを用い、該第1及び第2のパラメータの少なくとも一方が所定値を超えた場合に、ユーザへの警告を行なうことを特徴とする請求項8記載の測定制御方法。
【請求項10】
一端にプローブを取り付け可能であり、プローブ取り付け部材と第1リンクと第2リンクとが順に連結され、他端が支持部材に取り付けられる、多関節型測定アームであって、該第1リンクに対する該プローブ取り付け部材の曲げ動作を提供する手首関節と、該第2リンクに対する該第1リンクの曲げ動作を提供する肘関節と、該支持部材に対する該第2リンクの曲げ動作を提供する肩関節とを備える測定アームと、前記測定アームの各関節の角度に基づいて、前記プローブの位置に対応する空間座標を算出するプロセッサと、前記肩関節もしくはその近辺に設けられ、前記測定アームにかかる重力に対抗して前記第2リンクの前記肘関節側が持ち上がるような力を発生するためのバランサーとを具備する多関節型座標測定装置による測定を制御する方法であって、
前記プローブにより所望の位置を測定しようとするユーザの前記測定アームに取らせる姿勢が、前記バランサーの前記測定アームに及ぼす力の影響で許容範囲を超える測定誤差を生じさせる可能性があることを、前記測定アームの姿勢に関する所定のパラメータが所定値を超えたかどうかに基づいて、前記プロセッサに検出させ、
前記検出がされた場合に、ユーザへの警告を行なうことを特徴とする測定制御方法。
【請求項11】
前記検出がされた場合、さらに、前記プロセッサからの空間座標の出力を中止することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の測定制御方法。
【請求項12】
一端にプローブを取り付け可能であり、プローブ取り付け部材と第1リンクと第2リンクとが順に連結され、他端が支持部材に取り付けられる、多関節型測定アームであって、該第1リンクに対する該プローブ取り付け部材の曲げ動作を提供する手首関節と、該第2リンクに対する該第1リンクの曲げ動作を提供する肘関節と、該支持部材に対する該第2リンクの曲げ動作を提供する肩関節とを備える測定アームと、
前記肩関節もしくはその近辺に設けられ、前記測定アームにかかる重力に対抗して前記第2リンクの前記肘関節側が持ち上がるような力を発生するためのバランサーと、
前記バランサーにより発生される力が前記肩関節の角度によって変化することにより生じる誤差を補正する項を含む方程式に、前記測定アームの各関節の角度を入力して、前記プローブの位置に対応する空間座標を算出するプロセッサとを具備したことを特徴とする多関節型座標測定装置。
【請求項13】
前記プロセッサが用いる方程式は、前記バランサーの力により前記第2リンクに発生するたわみを表すパラメータを含み、このたわみを表すパラメータの値が前記肩関節の角度に基づいて定められるものであることを特徴とする請求項12記載の多関節型座標測定装置。
【請求項14】
前記測定アームは、前記第1リンクに対する前記プローブ取り付け部材のねじり動作を提供する関節と、前記第2リンクに対する前記第1リンクのねじり動作を提供する関節と、前記支持部材に対する前記第2リンクのねじり動作を提供する関節とのうち、少なくとも一つをさらに備えることを特徴とする請求項12乃至13のいずれか1項に記載の多関節型座標測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−127667(P2007−127667A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349665(P2006−349665)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【分割の表示】特願2003−54218(P2003−54218)の分割
【原出願日】平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願人】(501292142)株式会社小坂研究所 (16)
【Fターム(参考)】