説明

天然ゼオライト中空糸多孔体、ゼオライト膜複合多孔体及びその製造方法

【課題】原料として安価な天然ゼオライトを利用し、多元的細孔分布と、48%以上の高い空隙率と、耐薬品性などを有し、水中でフレキシビリティを示す中空糸多孔体、それを支持体としたゼオライト膜複合多孔体を提供する。
【解決手段】天然ゼオライト粉末と、3−50wt%の有機高分子によって構成される、湿式紡糸された中空糸多孔体であって、細孔径が0.01−100ミクロンの範囲に複数の径の細孔が分布する多元多孔体であり、浸水可能な耐水性を有し、乾燥後も、含水状態で、可逆的にフレキシビリティ性能を示す天然ゼオライト中空糸多孔体、該天然ゼオライト中空糸多孔体を支持体として、その外表面にゼオライト膜が製膜されている構造を有するゼオライト膜複合多孔体、及びその製造方法。
【効果】含水状態で、フレキシビリティ性能を示すゼオライト中空糸多孔体製品などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゼオライト中空糸多孔体、ゼオライト膜複合多孔体及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、天然ゼオライト粉体を用いて作製した、数十ナノメートルから数十ミクロン径の細孔径分布を有する、空隙率が高く、且つ耐水性や耐薬品性が高く、安価な天然ゼオライト中空糸多孔体と、それにゼオライト膜を製膜したゼオライト膜複合多孔体、その製造方法、及び用途に関するものである。
【0002】
本発明は、αアルミナ粉末や合成ゼオライト粉末に比べて、非常に安価である天然ゼオライト資源を用いて、アルミナや、合成ゼオライトと同様に、湿式紡糸することが可能で、且つ有機物の除去を行なわなくても、高い空隙率と、0.2μm前後及び0.3−1.0μm範囲に複数の多元細孔径を具備し、高い耐水性を示し、室温乾燥後も含水させることで可逆的にフレキシビリティを示す天然ゼオライト中空糸多孔体、及び、この中空糸多孔体を支持体としてゼオライト膜を製膜したゼオライト膜複合多孔体、更に、低コストの天然セオライト資源の高度利用法と高付加価値化に関する新技術・新製品を提供するものである。
【背景技術】
【0003】
ゼオライトは、規則的に配列したミクロ孔を有し、一般に、耐熱性が高く、化学的にも安定なものが数多く得られることから、様々な分野で利用されている。このゼオライトは、その骨格構造が、Siの一部がAlに置換したアルミノシリケートであり、分子オーダー(3−10Å程度)の細孔を有し、立体選択的な吸着作用を持つことより、モレキュラーシーブ(分子ふるい)としての機能を有する。
【0004】
ゼオライトは、数十種類の天然に産出するゼオライトの他に、これまでに、150種類以上のゼオライトが合成されており、固体酸触媒、分離吸着剤、及びイオン交換剤などの分野で幅広く用いられている。日本の天然ゼオライト資源として豊富であるものは、アナルサイム、モルデナイト、クリノプチロライトなどであり、主として、珪長質凝灰岩が地層水による埋没続成作用や、貫入岩の熱による変質作用などでゼオライト化したものである。通常、ゼオライトの他に不純物として珪長質凝灰岩の構成鉱物である石英や他の粘土鉱物が共存している。このため、その商業的な用途は、主として、園芸用土の改質材や壁材、脱臭吸着剤などであり、2次加工品としての利用は少ない。
【0005】
ゼオライトは、天然産出品も合成品も可塑性に乏しいため、膜状などに成形する場合、ほとんどの場合は、水熱合成法により、基板上に、ゼオライト膜を合成している。すなわち、大量の水とアルミニウム源、シリカ源、アルカリ金属、アミン類などの有機結晶化調整剤を、適宜、目的の生成物のゼオライト組成になるように調合し、オートクレーブなどの圧力容器に、それらを封じ込めて、アルミナやムライトなどの多孔質基板や、チューブを共存させて、加熱することにより、それらの基板上に、ゼオライト膜を合成している。
【0006】
これまでに、例えば、MFI、MEL、LTA、ANA、CHA、FAU、SOD、MOR、ERI、BEA、LTL、DDR(以上は、http://www.iza−structure.org/databases/のframework Typesに記載されているゼオライトの3次元構造の種類を表すコードである。)といったゼオライト膜が合成されている。
【0007】
これらのゼオライト膜は、それぞれのゼオライトの性質(例えば、細孔径・親和性など)から、気体又は液体などの分離対象を、適宜、選択して使用される。先行技術文献には、支持体に、ゼオライト種結晶を塗布した後、更に、水熱合成することにより、欠陥のないゼオライト膜を合成する方法が開示されている(特許文献1、2)。また、他の先行技術文献には、これらの手法で合成されたゼオライト膜は、分離対象の気体又は液体混合物からの分離・濃縮などに利用されることが示されている。
【0008】
前述の各種ゼオライト膜で、高い性能が発揮されるためには、支持体の特性として、表面積が大きいこと、更に、空隙率が高く、肉厚が薄いこと、が要求される。また、製膜される最表面では、膜との機密性が高く保持されることが必要である。通常、SUSなどの金属やムライト、アルミナ、ジルコニアなどのセラミックの多孔体が支持体として用いられる。
【0009】
しかし、これらの支持体に対して、性質の異なるゼオライト膜を緻密に製膜するためには、通常、これらの支持体としての多孔体の表面を親水性に改質したり、緻密化したり、種結晶を塗布するなどの作業を行なわなければならず、種結晶がない場合は、合成処理を2回以上行って緻密化することが求められる。
【0010】
これに対して、支持体そのものにゼオライトを使用する試みも行なわれており、他の先行技術文献には、ゼオライトの粉に5−40%の有機高分子を混ぜて紡糸した上で、更に、表面にゼオライトを成長させる複合膜とその製造方法について開示されている(特許文献3)。
【0011】
これらの先行技術は、通常、粒度や組成が均一な合成ゼオライトを使用して実施されており、特に、親水性が高く、製膜後に高い水選択性と透過量を得られるA型ゼオライトが好んで用いられている。しかし、A型ゼオライトは、洗剤ビルダーであったように、構造の安定性が低いために、用途が限られ、例えば、酢酸分離のような耐薬品性を要する用途に使用することはできない。また、合成ゼオライトは、アルミナやジルコニアなどのセラミック粉に比較して、更に高価である上、ゼオライト支持膜をモジュール化し、プラント化する際に、多孔質支持体の価格がネックになり、コスト高になるため、普及しにくいという難点があった。
【0012】
これに対して、天然ゼオライト粉末の価格は、通常のセラミック多孔体の原料となるαアルミナ粉やジルコニア粉の価格の1/400−1/40と安価であるが、従来技術では、天然ゼオライト構造が、モルデナイトやクリノプチロライトなど特定のものに限定されてしまうこと、結晶粒子サイズが大きく、不均一であることや、産地による組成の不均一性、不純物の存在などから、天然ゼオライトを、ガス分離や液体分離などのナノレベルの分離膜支持体用途や、分離膜合成用の種結晶用途に用いることは、不適切であると考えるのが、当技術分野における技術常識とされていた。
【0013】
また技術的にも、同様の方法で、多孔体の成型を試みる際、共存鉱物として、より粘性や親水性が高い微粒粘土鉱物、石英のように粗粒で硬い不純物が同時に存在し、ゼオライト粒子自体も粒子サイズの分布が大きく、形状もまちまちであるため、有機高分子とのナノコンポジット化や、細密な多孔体成型が困難であると考えるのが、当技術分野における技術常識とされていた。
【0014】
天然ゼオライトに含まれるモルデナイトやクリノプチロライトも親水性を示し、天然ゼオライトを成型体として、分離用途に利用することができるが、一般的には、吸着吸湿剤としてブロック状の多孔体に成型する。このような多孔体状に成型する方法として、他の先行技術文献には、ゼオライト粉体に加える水の量を20−40質量%にコントロールして成形、焼成することによって、バインダーなしに、成形体が得られる方法が提案され、焼結温度が400℃までなら、陽イオン交換容量の100質量%が、500−700℃までなら、その70−80質量%が、保持されることが報告されている(特許文献4)。
【0015】
しかしながら、実際に、従来技術による天然ゼオライト多孔体は、ゼオライトの低い自己焼結性や強い親水性のため、そのままでは、耐圧性、耐水性が乏しく、崩れ易いうえ、ゼオライトが吸水して細孔が小さくなり、空隙率が低くなるなどの難点があり、肉厚も厚くなるため、製膜用支持体として、水溶液中で長期間用いるのには不適切であった。そこで、当該技術分野においては、支持体として有用で、従来技術では得ることが困難な、長期間浸液して使用可能な特性を有し、耐圧性や、耐水性及び耐薬品性を併せ持ち、空隙率が高く、肉厚の薄い、高い膜面積が得られる、安価なゼオライト中空糸多孔体製品及びその製造技術を開発することが強く要請されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−159518号公報
【特許文献2】特開2003−144871号公報
【特許文献3】特開2008−43864号公報
【特許文献4】特開2006−27983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、支持体として、耐水性、耐圧性、空隙率が高く、肉厚の薄い多孔体を作製することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、天然ゼオライトを用いた場合も、ミルの併用や構成粒子の平均粒径から表面積の変化を考慮して、紡糸用スラリーの調製条件を最適ないし好適化することにより、合成ゼオライトと同様に湿式紡糸でき、且つ有機物の焼成除去を行なわなくても高い空隙率が得られること、また、天然ゼオライト、特に天然モルデナイトの結晶性の高さや構造による安定性、結晶粒子サイズや形状の不均一性によって、0.3−1.0μm範囲の合成ゼオライト多孔体に比較して、広範囲の複数の細孔径と0.2μm前後の細孔の多元的な細孔径分布を有する耐水性及び耐薬品性の高い天然ゼオライト中空糸多孔体が得られること、更に、有機高分子の構成比が低い多孔体についても、室温乾燥後に含水状態にすることによって可逆的なフレキシビリティが得られ、更に、適当な水熱処理を施すことによって、耐圧性を増加できること、また、ゼオライトの構成比が50wt%以上であれば、天然ゼオライト中空糸多孔体の外表面に、剥離せず、高い水分離性能を示すゼオライト膜を製膜できること、などの新規知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明は、結晶粒子サイズや形状が不均一な天然ゼオライト粉末を利用して、耐水性が著しく高く、含水状態でフレキシビリティを有し、有機高分子を入れたままであっても空隙率が高く、多元的な細孔径分布を有する中空糸多孔体を製造する技術と、その結果、得られる中空糸多孔体、及び、それを水熱処理して得られる中空糸多孔体、また、ゼオライト膜複合多孔体を提供することを目的とするものである。また、本発明は、ゼオライト中空糸多孔体中の有機高分子の焼成除去及び種結晶塗布の2工程を不要とするゼオライト膜複合多孔体の製造方法を提供することを目的とするものである。更に、本発明は、安価で、膜面積の大きい無機中空糸多孔体、浸透気化用脱水膜、及び天然モルデナイトなどの天然ゼオライト資源の有効利用法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)天然ゼオライト粉末と、3−50wt%の有機高分子によって構成される、湿式紡糸された中空糸多孔体であって、細孔径が0.01−100ミクロンの範囲に複数の径の細孔が分布する多元多孔体であり、浸水可能な耐水性を有し、乾燥処理後も、含水状態にすることによって、可逆的にフレキシビリティ性能を示すことを特徴とする天然ゼオライト中空糸多孔体。
(2)乾燥処理された状態の天然ゼオライト中空糸多孔体であり、バインダーの焼成除去の有無に関わらず、0.01−100ミクロンの範囲に複数の径の細孔が分布する多元多孔体であり、気孔率が、少なくとも48%である、前記(1)に記載の天然ゼオライト中空糸多孔体。
(3)中空糸多孔体を構成する天然ゼオライトの主成分が、モルデナイトである、前記(1)又は(2)に記載の天然ゼオライト中空糸多孔体。
(4)中空糸多孔体の外径が2−3mm、内径が1−2mm、肉厚が0.5−1mmである、前記(1)から(3)のいずれかに記載の天然ゼオライト中空糸多孔体。
(5)水熱処理された状態の天然ゼオライト中空糸多孔体であり、処理後の、中空糸の伸張方向に対する圧縮強さが、少なくとも4N/mmである、前記(1)に記載の天然ゼオライト中空糸多孔体。
(6)前記(1)から(5)のいずれかに記載の天然ゼオライト中空糸多孔体を支持体として、その外表面にゼオライト膜が製膜されている構造を有することを特徴とするゼオライト膜複合多孔体。
(7)浸透気化による、アルコール又は有機酸の水溶液からの脱水性能を有する、前記(6)に記載のゼオライト膜複合多孔体。
(8)原料粉末として、天然ゼオライトを使用し、これに有機高分子を混合し、湿式紡糸して天然ゼオライト中空糸多孔体を作製し、1)この中空糸多孔体を支持体として、その外表面にゼオライト膜を製膜し、水熱処理して、あるいは、2)作製した中空糸多孔体を水熱処理することにより水熱処理された状態の天然ゼオライト中空糸多孔体を作製し、この中空糸多孔体を支持体として、その外表面にゼオライト膜を製膜して、ゼオライト膜複合多孔体を作製することを特徴とするゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
(9)支持体の外表面にゼオライト膜を製膜する際に、支持体への種結晶塗布を必要としない、前記(8)に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
(10)中空糸多孔体の水熱処理とゼオライト膜を製膜し、水熱処理する際の水熱処理が、同時に1回の処理で行われる、前記(8)に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
(11)90%エタノール水溶液からの脱水性能が、75℃で、α3900を越え、Fluxが0.6kg/mh前後となるゼオライト膜複合多孔体を作製する、前記(8)に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
(12)50%酢酸水溶液からの脱水性能が、60℃で、α>900(TCD検出器で透過液中に酢酸未検出)となり、Fluxが0.5kg/mh前後となるゼオライト膜複合多孔体を作製する、前記前記(8)に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
(13)天然ゼオライト中空糸多孔体を構成する天然ゼオライトとは異なる種類のゼオライト膜を製膜する、前記(8)に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
(14)ゼオライト膜を製膜した後、天然ゼオライト中空糸多孔体の含水状態におけるフレキシビリティを生かし、該中空糸多孔体を特異形状に成型する、前記(8)に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
(15)前記(6)に記載の天然ゼオライト膜複合多孔体をスタック化した、又は該スタックを集積してモジュール化したことを特徴とする天然ゼオライト複合多孔体スタック又はモジュール。
【0020】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、天然ゼオライト粉末と、50wt%以下の有機高分子によって構成され、且つSi原子の表面濃度が、原子濃度で12%以上である天然ゼオライト中空糸多孔体、及びこの中空糸多孔体を支持体としてゼオライト膜を製膜したゼオライト膜複合多孔体、である。本発明の天然ゼオライト中空糸多孔体は、Si原子の表面濃度が、原子濃度で12%、好ましくは15%以上であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明者らは、これまでに報告されていない、安価で、フレキシブル、且つ高い耐水性や耐圧性を示す天然ゼオライト中空糸多孔体、及びその中空糸多孔体を支持体としたゼオライト膜複合多孔体を開発すべく、鋭意検討を行った結果、不均一な種類やサイズの粒子を含む天然モルデナイトを用いても、その結晶性の高さや、結晶粒子サイズ分布の広さを利用した、耐薬品性の高い、多元な細孔径分布を有する中空糸多孔体が得られ、更に、これを、薄く、且つ表面積を大きく成型できれば、脱水膜の支持体として十分に使用できること、を見出した。
【0022】
また、予め十分にミルやふるいにかけて天然ゼオライトを微粉化し、更に、スラリーの濃度などの条件を最適ないし好適化すれば、アルミナ多孔体の場合と同様に、原料粉を分散した有機溶媒に有機高分子を添加して紡糸し、水によって重合させる方法で、耐水性の高い天然ゼオライト中空糸多孔体が得られ、また、この中空糸多孔体は、有機高分子が入ったままでも、高い空隙率と、MFの細孔分布を示すことを見出した。
【0023】
こうして得られた天然ゼオライト中空糸多孔体には、種結晶を用いなくても、ゼオライトの薄膜が製膜でき、この製膜用の水熱処理で、中空糸多孔体そのものの強度や耐圧性も向上することを見出した。更に、上記中空糸多孔体は、製膜用の水熱処理以外でも、水熱処理や有機高分子の配合を最適ないし好適化すれば、耐圧性を増加させ、且つ中空糸多孔体としてそのまま用いることができることを見出した。
【0024】
このように、本発明は、精密濾過膜としての細孔分布と、48%以上の高い空隙率を有する耐水性の天然ゼオライト中空糸多孔体、及びそれを支持体としたゼオライト膜複合多孔体を提供するものであり、また、原料粉末として、天然モルデナイトのような安価なゼオライトを使用して、有機高分子化合物と混合して湿式紡糸する天然ゼオライト中空糸多孔体の製造方法を提供するものである。
【0025】
本発明では、この天然ゼオライト中空糸多孔体を水熱処理することによって、耐圧性を高めた天然ゼオライト中空糸多孔体を合成し、更に、その外表面に、ゼオライト膜を製膜したゼオライト膜複合多孔体を合成することで、製膜に際して、支持体成型に用いたバインダーの焼成除去及び種結晶塗布の2工程を必要とすることなく、ゼオライト膜複合多孔体を製造することができる。また、本発明では、浸透気化法によって、アルコールや有機酸の水溶液から高選択的に脱水できるゼオライト膜複合多孔体を調製することができる。
【0026】
すなわち、本発明は、天然ゼオライト粉末もしくは天然ゼオライト粉末と、20wt%以下のバインダーによって構成され、細孔径が0.01−100ミクロンの範囲に分布し、バインダーの焼成除去の有無に関わらず、気孔率が48%以上である中空糸多孔体と、その中空糸多孔体を支持体としてゼオライト膜を製膜したゼオライト膜複合多孔体を提供するものである。
【0027】
また、本発明は、ゼオライトが、例えば、天然産のモルデナイトであること、製膜に際して、支持体のバインダーの除去の是非を問わず、種結晶を必要としない上に、例えば、1回の水熱処理によって得られること、を特徴とする、上記のゼオライト膜複合多孔体及びその製造方法を提供するものである。すなわち、本発明では、支持体としての中空糸多孔体は、未焼成で、種結晶は不使用で、水熱合成は、例えば、モルデナイトの製膜に関しては、約165℃の条件で、24−48時間、1回が好適である。
【0028】
次に、本発明の好適な実施の形態を説明するが、本発明において、数値範囲の記載は、両端値のみならず、その中に含まれる全ての任意の中間値を含むものである。本発明の中空糸多孔体の製造において、用いる天然ゼオライトの構造や形態については、特に限定はなく、用途に応じて選ぶことができる。種結晶を使用しない場合は、製膜したいゼオライトに、構造や組成的に近いゼオライトを選ぶことが好ましいが、種結晶を塗布する場合は、この限りではない。
【0029】
本発明において、中空糸多孔体の細孔構造は、ゼオライトの結晶粒子間や凝集粒子間の隙間が反映されるため、結晶粒子や2次粒子の大きさと形状が細孔径分布を決定する。従って、ゼオライト結晶の結晶粒子径は、好ましくは0.05−10μm程度であり、より好ましくは1−5μm程度である。
【0030】
これより粒子径が大きいと、ノズル孔にかかり易く、また、これより小さすぎると、ゼオライト粒子同士で凝集を起こし易くなり、いずれも、中空糸多孔体としての成型が困難である。大きい凝集粒子を含む場合は、ボールミルなどで粉砕すればよく、また、遠心分離機などで分級することは一向に差し支えない。
【0031】
本発明において、天然ゼオライトを中空子多孔体に成型する手法としては、通常のセラミックス多孔体の成形手法を用いることで特に差し支えなく、例えば、文献(特開平11−100283号公報)に開示される射出成形に従って、セラミック粒子の代わりに、粉砕した天然ゼオライト粉末を添加する方法で成形しても差し支えない。
【0032】
この場合、好ましくは、文献[特開昭62−52185号公報、特開2008−43864号公報、あるいは、Membr.Sci.,188(2001),87−95]に開示される湿式紡糸法を用い、ゼオライト粉末を、溶媒中で、バインダーとして添加した有機高分子と混錬し、成型した後、有機高分子を重合させる。このときの製膜原液中のゼオライト粉末濃度は、20−48%の濃度が好ましく、より好ましくは、23−46%の濃度である。
【0033】
これ以上の濃度では、スラリーの粘性が高くなりすぎて紡糸することができず、また、これ以下の濃度では、中空糸外表面への製膜が困難になる。分散溶媒としては、バインダーとなる有機高分子を溶解することができ、ゼオライトが凝集しにくく、水にも馴染み易い両親媒性の溶媒であればよく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどを使用することができる。
【0034】
混錬する有機高分子の種類としては、成型後の固結性が室温で高いものであればよく、例えば、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリルニトリル、酢酸セルロースなどを用いることができるが、耐薬品性の高いものがより好ましい。有機高分子の添加量としては、一緒に紡糸するゼオライトの粒子サイズや含有量によるが、得られる乾燥後の中空糸多孔体の全量に対して、3−50wt%、好ましくは12−50wt%、より好ましくは15−30wt%前後である。
【0035】
有機高分子の添加量が多すぎると、粘性が高くなり、中空糸多孔体の成型や、ゼオライトの製膜が困難になる他、ゼオライトの粒界が埋められて、得られた中空糸多孔体の細孔径分布も変化して、0.1μm前後の小さな細孔しか得られなくなってしまい、フレキシビリティも減少してしまう。また、少なすぎると、ゼオライトの親水性の表面を覆いきれず、ゼオライト粉末が水浴中で分散して、中空子多孔体の成型が困難となる。
【0036】
本発明の天然ゼオライト中空子多孔体は、本発明において、水熱処理を経て、その耐圧性が高められ、精密濾過膜、限外濾過膜として用いることができ、また、浸透気化膜の支持体として、外側に親水性のゼオライト膜を製膜すれば、例えば、有機溶媒の脱水膜として用いることができる。耐圧性を高めるための水熱処理条件としては、中空子多孔体を構成する天然ゼオライト粒子間の結合が強められる条件であれば特に限定されず、この条件を満たす範囲であれば、他の種類のゼオライトであるLTA、CHA、PHI、MER、MFIなどの合成条件で水熱処理を行なっても一向に差し支えない。
【0037】
しかし、ゼオライト構成成分であるアルミニウムやシリカを含まない蒸留水や希薄溶液で煮沸すると、天然ゼオライトが溶解し、却って中空糸多孔体の変形や崩れをまねく。本発明の中空糸多孔体を支持体とする浸透気化膜を作製する場合の水熱処理条件は、既存のモルデナイト膜や、その他のゼオライト膜の製膜条件に準拠するものとなる。モルデナイト膜の製膜条件としては、例えば、文献[Applied Catalysis A,181,29−38(1999)]に挙げられている条件で、合成溶液の組成Na:Al:Si=1−3.5:1:5−9に対して、蒸留水の添加濃度を2倍程度に増やして希釈したものを用いてもよい。
【0038】
従来法では、支持体に、高価なセラミック粉末、もしくは合成ゼオライトを用いるため、膜1本あたりの単価が非常に高くなり、結果として、普及し難いという難点があり、また、セラミック粉末を用いる場合は、中空糸多孔体の作製後の焼成工程、製膜に際しての種結晶の塗布工程が必須であり、特に、種結晶の塗布工程は、膜の性能を大きく左右し、結晶の構造やサイズ、塗布量、乾燥の度合いなどが影響するため、モジュール化などで、多量合成する際にネックとなるという難点があった。これに対して、本発明は、αアルミナ粉末などに比べて、非常に安価な天然ゼオライト源を利用し、しかも、アルミナと同様に、湿式紡糸ができ、且つ有機物の焼成除去を行なわなくても、高い空隙率と、0.3−1.0μm範囲と0.2μm前後の多元細孔径を有する天然ゼオライト中空糸多孔体及びゼオライト膜複合多孔体を製造し、提供することを実現可能とするものである。
【0039】
すなわち、本発明では、種結晶の塗布を行なわなくても、例えば、1回の水熱処理で、高選択性の脱水膜を形成することができ、また、天然ゼオライト源を利用するので、親水性の合成ゼオライトに比較して、結晶性や組成の面で耐薬品性や耐熱性が高く、表面に形成できるゼオライト膜は、支持体と同種のゼオライトに限定されない。また、水熱処理によって、中空糸多孔体の耐圧強度が増すため、表面を緻密化しないように、水熱処理条件をコントロールすることで、精密濾過膜として用いるようにすることも可能である。
【0040】
本発明の天然ゼオライト中空糸多孔体は、外径2−3mm前後、内径1−2mm前後、肉厚0.5−1mm前後であり、0.01−100ミクロンの範囲に複数の径の細孔が分布する多元多孔体であり、気孔率が48%以上であり、水中での作業操作に耐えられる高い耐水性を有しており、室温乾燥後も、含水させることによって、含水状態と室温乾燥状態とで、可逆的にフレキシビリティ性能を示し、このフレキシビリティ性能を生かして、螺旋形状などの特異形状に成型することが可能である(図1参照)。
【0041】
また、本発明では、該特異形状の成型体の外表面にゼオライトを製膜して、ゼオライト膜複合多孔体とすることが可能であり、また、上記ゼオライト中空糸多孔体又はその成型体をスタック化して、適宜の形態のゼオライト膜複合多孔体モジュールを構築することが可能である。本発明のゼオライト中空糸多孔体は、上述のように、室温乾燥後も、含水させることによって、含水状態でフレキシビリティ性能を示すことから、該フレキシビリティ性能を利用して、任意の形態の成型体を作製し、また、上記ゼオライト中空糸多孔体を複数束ねてスタック化し、また、該スタックを集積してモジュール化することが可能である。
【0042】
従来、一般的に、ゼオライト中空糸を作製することや、該中空糸にゼオライト膜を製膜してゼオライト膜とすることは種々試みられているが、本発明のように、室温乾燥後も、含水することによって、含水状態と室温乾燥状態とで、可逆的にフレキシビリティ性能を示すゼオライト中空糸多孔体や、その外表面にゼオライト膜を製膜した、ゼオライト膜複合多孔体や、それらの成型体や、スタック化及びモジュール化した製品などは知られておらず、本発明は、このような製品を提供することを可能にするものとして有用である。
【0043】
本発明の天然ゼオライト中空糸多孔体は、含水させた状態で過度に屈曲させても、該中空糸多孔体の構造・形態自体は、損壊を生じにくく、その性能を安定に保持することができ、例えば、図1の右図に示されるように、二本の中空糸多孔体を縒りこんだ特異形状の構造体をきわめて容易に作製することが可能であり、本発明の天然ゼオライト中空糸多孔体は、上述のような特異形状の構造体を作製するための基本要素として重要である。本発明は、特に、例えば、脱水膜、バイオエタノールの脱水濃縮、食品添加物などの製造過程におけるエステル化支援脱水膜、触媒反応、精密濾過膜、バラストなどの廃液処理の技術分野において有用である。
【発明の効果】
【0044】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)本発明では、従来のアルミナ支持体を用いる膜に比べて、天然ゼオライトを使用することで、材料的にも1/400−1/40安価で、且つ支持体の焼成、種結晶合成、塗布の3工程を必要としない、格段に安価で、且つ簡便に、浸透気化用脱水膜などを製造し、提供することが可能になる。
(2)比較的耐酸性の高い天然モルデナイトを用い、膜との間の熱膨張係数の差なども少ない、使用環境による劣化の少ない、膜面積の大きなゼオライト膜を提供することが可能になる。
(3)本発明のゼオライト膜複合多孔体は、例えば、バイオエタノールの精製プラント用の膜モジュールや、エステル化をはじめとする脱水縮合反応の反応促進用脱水膜、排水処理剤などとして好適に使用することができる。
(4)本発明のゼオライト膜複合体は、例えば、ガス分離膜、VOC除去膜として好適に使用することができる。
(5)モルデナイトには、多環芳香族のイソプロピル化などの触媒能があるため、これらの触媒反応膜として、好適に使用することが可能である。
(6)本発明の天然ゼオライト中空糸多孔体は、0.2μm径の細孔を有するため、蛋白質や酵素など、熱に弱い物質の分離又は濃縮用の、限外濾過膜として、また、銀担持可能であることから、細菌やウイルスの殺菌除去膜として、好適に使用することができる。
(7)本発明のゼオライト中空糸多孔体は、人体に無害で、ミネラル成分に富み、精密濾過膜として、酵母などや飲料水用の濾過や、水質改良剤などとして、好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1の、水中での含水状態においてフレキシビリティを示す中空系多孔体と、その螺旋状に成型加工後の乾燥体の写真を示す。
【図2】実施例1、2及び7の天然モルデナイト中空糸多孔体と、市販のムライト管(ニッカトー株式会社製、6mmφニッカトーPMチューブ)及びアルミナチューブ(アルミナ中空糸、2mmφ、湿式紡糸後、1500℃1時間での焼成品)の細孔径分布曲線を示す。
【図3】実施例1のモルデナイト中空糸多孔体、実施例3、5のモルデナイト膜複合体多孔体及び実施例8のマーリノアイト(MER)膜複合体多孔体の表面X線回折パターンを示す。
【図4】実施例3のゼオライト膜複合多孔体の表面及び断面SEM像と、EDXによる膜組成を示す。
【図5】実施例7(表面にLTAを成長させたもの)の中空糸多孔体及び8(表面にMERを成長させたもの)のゼオライト膜複合多孔体の表面SEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例などによって何ら限定されるものではない。
【0047】
以下の実施例で行った、中空糸多孔体の細孔径分布、空隙率及び圧縮強さの測定方法について説明する。中空糸多孔体の細孔径分布及び空隙率は、水銀ポロシメータを用いて測定した。中空糸多孔体の耐圧性の指標として、ファインセラミクスの圧縮強さ試験方法(JIS R1608)に準拠して、圧縮強さの測定を行なった。この圧縮強さ試験方法において、試験片として、2−3mmφの中空糸を5.5ミリメートル長にカットしたものを使用し、圧縮強さは、中空糸の伸張方向にクロスヘッド速度1.0mm/minで圧縮負荷を加えて、測定した。
【実施例1】
【0048】
天然モルデナイトCP(平均結晶粒子サイズ:2−5μm,株式会社新東北化学工業)200gを、エタノール203gに分散して、5mm径のアルミナボールを入れたアトライタで、2時間半、粉砕した後、電気炉にて、60℃で、一晩乾燥した。乾燥済のモルデナイト粉末130.4gとラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.74gを、ジメチルホルムアミド(DMF)160.14gとともに、蓋付きの丸底フラスコにセットして、35℃のオイルバス内で加熱しながら、撹拌機にて、350rpm以上で、一晩撹拌した。
【0049】
その間に、ジメチルホルムアミド(DMF)が一部揮発して、スラリー全量が、291.3gから277.2gへと減少した。これに、撹拌したまま、ポリスルホン(PS)15.94gを添加して、更に、400rpmで、3日間、撹拌し続けたところ、スラリー全量が、285.3g、スラリー全量中のゼオライト濃度が、45.7wt%、PS濃度が、5.9wt%(ポリスルホン抜きで269.4g、ゼオライト/PS抜スラリー=0.48、PS/ゼオライト=0.12)となった。
【0050】
このスラリーを、湿式紡糸機にセットし、外径3.3mm、内径1.2mmの二重環状ノズルを通して、35℃の凝固浴に対して、10cmのインターバルから、32mL/minの速度で紡糸した。芯液には、水を20mL/minで流して、中空糸とした。得られた中空糸多孔体は、60℃で乾燥した後も、含水状態においてフレキシビリティを示し、例えば、螺旋状に成型加工することが可能であった(図1参照)。得られた中空糸を、60℃で乾燥して、乾燥処理された状態の中空糸多孔体を得た。
【0051】
得られた中空糸多孔体について、水銀ポロシメーターで細孔特性を測定した結果、該中空糸多孔体は、空隙率が59.1%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.2μm前後の径及び0.9μm前後の径の2種類の細孔を有していた(図2参照)。該中空糸多孔体の体積平均による平均細孔径は、0.62μmであり、中空糸多孔体の伸張方向の圧縮強さは、1.1N/mmであった。
【実施例2】
【0052】
実施例1で得られた中空糸多孔体を、500℃で、1時間以上焼成して、ポリスルホンを除去したものについて、水銀ポロシメーターで細孔特性を測定した結果、0.2と0.9μm径の細孔の他、0.6μm径の細孔が現れた。この焼成物の体積平均による平均細孔径は、0.65μmであった。この焼成物では、空隙率は、66%と増加したが、強度は、焼成前に比べて低下して、圧縮強さは、0.56N/mmであった。
【実施例3】
【0053】
水酸化ナトリウム(和光特級)0.8gを、蒸留水53gに溶解して、アルミン酸ナトリウム(和光特級)1.2gを、更に添加・溶解した後、40%濃度のコロイダルシリカ溶液(触媒化成SI40)15gを、10gの蒸留水で希釈したものを徐々に加えて、モルデナイト製膜用の原液とした(仕込み組成比Si/AL=6.67)。
【0054】
実施例1で得られた、60℃で乾燥済みの中空糸多孔体を、5cm前後にカットしたものを3本準備し、これを、テフロン(登録商標)内筒型SUSオートクレーブにそのまま立ててセットし、これに、モルデナイト製膜用の原液を加えて、165℃のオーブン内に入れ、24時間静置して水熱処理を行なった後、取り出し、水洗後に、室温にて乾燥し、ゼオライト膜複合多孔体を得た。
【0055】
電子顕微鏡観察とX線回折パターンによると、得られたゼオライト膜は、モルデナイトであり、膜厚は、4μm前後であった。該ゼオライト膜の膜表面のSi/Al組成比は、6.2であり(図3参照)、また、圧縮強さが向上し、4.7N/mmとなった。
【0056】
上記ゼオライト膜の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性が、350以上(透過液の水濃度が98%以上)、透過流束は、0.6kg/mhであった。また、該ゼオライト膜の酢酸酸性下のエタノール水溶液(酢酸:エタノール:水=10:81:9)からの脱水性能は、75℃で、水選択性は、500以上(透過液の水濃度が98%以上)、透過流束は、0.46kg/mhであった。
【実施例4】
【0057】
実施例2において、オーブン内で48時間静置して水熱処理を行なう他は、実施例2と全く同様に、実施例1で得られた中空糸多孔体を焼成して、ポリスルホンを除去した。その結果、得られた焼成物は、更に、圧縮強さが向上し、4.9N/mmとなった。この焼成物の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性は、600以上(透過液の水濃度が98.5%以上)、透過流束は、0.35kg/mhであった。
【実施例5】
【0058】
実施例3において、水酸化ナトリウムを溶解する際の蒸留水の量を60gとし、40%濃度のコロイダルシリカ溶液を希釈する際の蒸留水の量を48g(蒸留水の総添加量108g)とした他は、実施例3と全く同じ条件で、実施例1の中空糸多孔体の水熱処理を行なった。その結果、得られたゼオライト膜多孔体の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性は、6以上、透過流束は、0.8kg/mhであった。
【実施例6】
【0059】
実施例3において、水酸化ナトリウム0.6gを、蒸留水53gに溶解して、アルミン酸ナトリウム(和光特級)1.62gを、更に添加・溶解する(仕込み組成比Si/AL=5)他は、実施例3と全く同じ条件で、実施例1の中空糸多孔体を水熱処理した。その結果、X線回折パターンによると、得られたゼオライト膜は、モルデナイト膜であった。
【0060】
このゼオライト膜のEDXによる膜表面のSi/Al組成比は、2.41であり、水熱処理後の圧縮強さは、4.9N/mmとなった。該ゼオライト膜の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性は、3900以上(透過液の水濃度が99.7%以上)、透過流束は、0.6kg/mhであった。
【実施例7】
【0061】
イオン交換水41.62gに、メタ珪酸ナトリウム9水和物15.40gを添加し、均一に溶かした液を、撹拌した状態で、これとは別に、イオン交換水21.36gに、水酸化ナトリウム0.26gを溶かし、アルミン酸ナトリウム6.4gを均一に溶かした液を、上述の液に混合し、水熱処理用の液とした。
【0062】
実施例1で得られた乾燥済み中空糸多孔体を、テフロン(登録商標)内筒型SUSオートクレーブに、実施例3と同様にセットして、100℃にて、3時間水熱処理した。その結果、電子顕微鏡観察によると、A型ゼオライトの立方体の結晶が中空糸多孔体の表面を被覆(図5参照)し、内部にも分布している様子が観察された。
【0063】
水熱処理後の中空糸多孔体を、水銀ポロシメーターで測定した結果、該中空糸多孔体の空隙率が、52.5%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.2,0.3,0.5及び0.9μm径の細孔が得られ(図2参照)、水熱処理後の圧縮強さは、4.1N/mmとなった。この中空糸多孔体の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性は、1(原液と透過液の組成がほぼ変わらない)、透過流束は、19.6kg/mh以上であった。
【実施例8】
【0064】
水酸化カリウム水溶液に、ベーマイト粉末5.42gを入れて、120℃で、4時間加熱して完全に溶解させた。この溶液から、15.7gを分取して、これに、50.76gの蒸留水を添加した。これに、40%濃度のコロイダルシリカ溶液を15gの蒸留水で希釈したものを徐々に加えて、水熱処理用の原液とした。この原液中で、実施例1の中空糸多孔体を、150℃にて、24時間水熱処理して、ゼオライト膜複合多孔体を得た。
【0065】
該ゼオライト膜複合多孔体の表面の電子顕微鏡観察(図5参照)及びX線回折パターン(図3参照)によると、得られた膜は、MER膜であった。該MER膜の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性が1(原液と透過液の組成がほぼ変わらない)、透過流束は、8kg/mh以上であり、中空糸多孔体の水熱処理後の伸張方向の圧縮強さは、5.6N/mmであった。
【実施例9】
【0066】
実施例8において、実施例1の中空糸多孔体を、150℃にて、6時間処理する他は、実施例8と全く同様の処理を行い、ゼオライト膜複合多孔体を得た。該ゼオライト膜複合多孔体の表面の電子顕微鏡観察によると、得られた膜は、MERとCHAの混合膜であった。該混合膜の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性は、3.2(原液と透過液の組成がほぼ変わらない)、透過流束は、1.5kg/mh以上であった。
【実施例10】
【0067】
実施例1において、モルデナイト、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物を、37℃のオイルバス内で、撹拌機にて350rpm以上で、3日間撹拌し続けた他は、実施例1(4日撹拌)と全く同様に、スラリーを調製したところ、スラリー全量が、298.6g、スラリー中のゼオライト濃度が、43.7wt%、PS濃度が、5.6wt%(PS抜きで282.7g、ゼオライト/PS抜スラリー=0.46、PS/ゼオライト=0.13)となった。
【0068】
このスラリーを、湿式紡糸機にセットし、33℃の凝固浴に対して、10cmのインターバルから32mL/minの速度で紡糸した。芯液には、水を20mL/minで流して、中空糸とした。得られた中空糸を、60℃で乾燥して、中空糸多孔体を得た。該中空糸多孔体について、水銀ポロシメーターで測定したところ、空隙率が54.3%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.2、0.5及び0.7μm径の細孔を有していた。この中空糸多孔体の体積平均による平均細孔径は、0.50μmであり、中空糸多孔体の伸張方向の圧縮強さは、2.4N/mmであった。
【実施例11】
【0069】
実施例1において、モルデナイト、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物のうち、モルデナイト粉末が、乾燥重量で126.5gであり、予め粒子径1−2μmの微粒子をそろえたものを使用し、原料のアトライタでの混合粉砕は行なわないこと、ゼオライトの粒子径が、およそ2分の1になり、表面積が増加すること、を考慮して、スラリーに添加するポリスルホンの分量を、1.5倍の24gとして、37℃のオイルバス内で、撹拌機にて、400rpm前後で撹拌し続けたことの他は、実施例1と全く同様に、スラリーを調製した。
【0070】
その結果、4日後のスラリー全量は、285.7g、スラリー全量に対するゼオライト濃度は、44wt%、PS濃度は、8.4wt%(ポリスルホン抜きで261.7g、CP/PS抜スラリー=0.48、PS/ゼオライト=0.19)となった。このスラリーを、湿式紡糸機にセットし、37℃の凝固浴に対して、10cmのインターバルから32mL/minの速度で、紡糸した。芯液には、水を20mL/minで流して、中空糸とした。
【0071】
得られた中空糸を、65℃で乾燥して、中空糸多孔体を得た。該中空糸多孔体について、水銀ポロシメーターで測定したところ、空隙率が、48.8%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.2、0.45μm径の細孔を有していた。この中空糸多孔体の体積平均による平均細孔径は、0.41μmであり、中空糸多孔体の伸張方向の圧縮強さは、4.6N/mmであった。
【実施例12】
【0072】
実施例11において、モルデナイト、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物のうち、モルデナイト粉末が、乾燥重量で110gであり、スラリーに添加するポリスルホンの分量を、30gとして、5日間、撹拌し続けたことの他は、実施例11と全く同様に、スラリーを調製した。その結果、5日後のスラリー全量は、286.0g、スラリー中のゼオライト濃度は、38.5wt%、PS濃度は、11wt%(ポリスルホン抜きで256.0g、CP/PS抜スラリー=0.44)となった。
【0073】
このスラリーを、湿式紡糸機にセットし、40℃の凝固浴に対して、10cmのインターバルから32mL/minの速度で、紡糸した。芯液には、水を20mL/minで流して、中空糸とした。得られた中空糸を、65℃で乾燥して、中空糸多孔体を得た。該中空糸多孔体について、水銀ポロシメーターで測定すると、空隙率が、61.8%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.2、0.5、0.75μm径の細孔を有していた。この中空糸多孔体の体積平均による平均細孔径は、0.47μmであり、中空糸多孔体の伸張方向の圧縮強さは、4.5N/mmであった。
【実施例13】
【0074】
1.5gのビール酵母菌(4−5μm径)を、150gの水に分散した分散液を用意した。実施例12の乾燥済の中空糸多孔体(6cm長)の片端を、シールで塞いだ状態で、酵母分散液(撹拌)に浸し、中空糸多孔体のもう片側から、ドライポンプで真空に引いて減圧濾過を試みたところ、5分間の吸引で、1.20gの透過液が得られた。SEM観察により、透過液中の酵母菌を調べたところ、1μm径以上のサイズの酵母菌は、除去されていた。
【実施例14】
【0075】
実施例6と全く同じ条件で、実施例12の中空糸多孔体を水熱処理した。水熱処理後の中空糸多孔体の伸張方向の圧縮強さは、9.2N/mm以上となった。この中空糸多孔体の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性は、1100(透過液の水濃度が99.65%以上)、透過流束は、0.46kg/mhであった。
【実施例15】
【0076】
実施例11において、モルデナイト、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物のうち、モルデナイト粉末が、乾燥重量で75gであり、スラリーに添加するポリスルホンの分量を、75gとして、4日間、撹拌し続けたことの他は、実施例11と全く同様に、スラリーを調製した。その結果、4日後のスラリー全量は、312g、スラリー中のゼオライト濃度は、24wt%、PS濃度は、24wt%(ポリスルホン抜きで237g、CP/PS抜スラリー=0.32)となった。
【0077】
このスラリーを、湿式紡糸機にセットし、40℃の凝固浴に対して、10cmのインターバルから33mL/minの速度で、紡糸した。芯液には、水を27mL/minで流して、中空糸とした。得られた中空糸を、65℃で乾燥して、中空糸多孔体を得た。該中空糸多孔体について、水銀ポロシメーターで測定すると、空隙率が、57.2%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.2、0.5、0.9μm径の細孔を有していた。この中空糸多孔体の体積平均による平均細孔径は、0.30μmであり、中空糸の伸張方向の圧縮強さは、12.5N/mm以上であった。
【実施例16】
【0078】
実施例6と全く同じ条件で、実施例15の中空糸多孔体を水熱処理したところ、該中空糸多孔体の水熱処理後の圧縮強さは、12.5N/mm以上となった。この中空糸多孔体の浸透気化測定による90%エタノール水溶液の脱水性能は、75℃で、水選択性は、2800(透過液の水濃度が99.6%以上)、透過流束は、0.74kg/mhであった。
【0079】
また、同様にして、50%酢酸水溶液からの脱水を行なったところ、60℃で、透過流束は0.48kg/mhで、ガスクロのTCD検出器による測定で、透過液中には、酢酸が検出されなかった。
【実施例17】
【0080】
実施例15において、モルデナイト粉末に、乾燥重量で25%の割合の天然モンモリロナイト(クニミネ工業、クニピアG)を混合し、その混合粉末75gを使用することの他は、実施例15と全く同様に、スラリーを調製した。このスラリーを、湿式紡糸機にセットし、40℃の凝固浴に対して、10cmのインターバルから33mL/minの速度で、紡糸した。芯液には、水を27mL/minで流して、中空糸とした。得られた中空糸を、65℃で乾燥して、中空糸多孔体を得た。該中空糸多孔体について、水銀ポロシメーターで測定すると、空隙率が、61.0%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.1、0.2、0.5、1.2、1.8μm径の細孔を有していた。この中空糸多孔体の体積平均による平均細孔径は、0.63μmであり、中空糸多孔体の伸張方向の圧縮強さは、12.5N/mm以上であった。
【実施例18】
【0081】
実施例17で得られた中空糸多孔体を、1000℃で、1時間以上焼成して、ポリスルホンを除去したものについて、水銀ポロシメーターで測定すると、空隙率が、58.6%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.2、0.9、1.8μm径の細孔を有していた。この中空糸多孔体の体積平均による平均細孔径は、0.9μmであり、中空糸多孔体の伸張方向の圧縮強さは、2.9N/mmであった。
【実施例19】
【0082】
1.5gのビール酵母菌(4−5μm径)を、150gの水に分散した分散液を用意した。実施例17の乾燥済の中空糸多孔体(7cm長)の片端を、シールで塞いだ状態で、中空糸多孔体のもう片側から、酵母分散液を注入し、手動加圧濾過を行なった。SEM観察により、透過液中の酵母菌を調べたところ、1μm径以上のサイズの酵母菌は、除去されていることが確認された。
【0083】
[比較例1]
ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.75gを、ジメチルホルムアミド(DMF)144gに溶解し、これに、実施例1で用いたものと同じ平均結晶粒子サイズ2−5μmの天然モルデナイトCP125gを分散して、スラリー(269.75g)とした。得られたスラリーを、5mm径のアルミナボールを入れたアトライタで、4時間半粉砕した後、更に、ジメチルホルムアミド(DMF)を添加して、スラリー量を、285.6gとした(ゼオライト/スラリー<0.44)。
【0084】
これに、更に、ポリスルホン(PS)16.42g(PS/ゼオライト=0.13)を添加し、スラリー中のゼオライト濃度を、41.4wt%、PS量を、5.7wt%とした。これを、丸底ビーカー内で、370rpmで、一晩以上撹拌した他は、実施例1と全く同じ方法で、紡糸を試みたところ、ゼオライトとポリスルホンの添加量が少なく、スラリーの粘性が足りず、成型することができなかった。
【0085】
[比較例2]
実施例11で用いたものと同じ、粉砕乾燥済で、平均結晶粒子サイズ1−2μmのモルデナイト粉末117.7gと、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.68gを、ジメチルホルムアミド(DMF)144gとともに、蓋付きの丸底フラスコにセットして、35℃のオイルバス内で、撹拌機にて、350rpm以上で撹拌したまま、ポリスルホン(PS)14.16gを添加して、更に、一晩撹拌した。
【0086】
その間に、ジメチルホルムアミド(DMF)が一部揮発して、スラリー全量が、266.5g、スラリー全量中のゼオライト濃度が、44wt%、PS濃度が、5.6wt%(PS/ゼオライト=0.13)となった。このスラリーを、実施例11と全く同じ条件にて、紡糸を試みたところ、ポリスルホンの添加量が少なく、撹拌時間も短かったため、PSによるゼオライト粒子表面の被覆が不十分となり、粒子が局所的に凝集し、水浴中で分散して、中空子を得ることができなかった。
【0087】
[比較例3]
実施例3において、モルデナイト製膜用原液の代わりに、蒸留水を用いる他は、全く同じ条件で、実施例1の中空糸多孔体を水熱処理した。水熱処理後、中空糸多孔体の変形が認められ、また、処理前に対して、耐圧性低下(圧縮強さ0.67N/mm)が認められた。
【0088】
[比較例4]
実施例11において、モルデナイト、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジメチルホルムアミド(DMF)混合物のうち、ジメチルホルムアミド(DMF)が167g、モルデナイト粉末が乾燥重量で51gであり、スラリーに添加するポリスルホンの分量を100gとしたことの他は、実施例11と全く同様に、スラリーを調製した。その結果、スラリー全量は、319g、スラリー全量中のゼオライト濃度は、16wt%、PS濃度は、31wt%(ポリスルホン抜きで219g、CP/PS抜スラリー=0.23)となった。
【0089】
このスラリーを、3日間撹拌し続けた後、湿式紡糸機にセットし、40℃の凝固浴に対して、10cmのインターバルから33mL/minの速度で、紡糸した。芯液には、水を27mL/minで流して、中空糸とした。得られた中空糸を、65℃で乾燥して、中空糸多孔体とした後、水銀ポロシメーターで測定すると、空隙率は、52.3%前後であり、細孔径分布曲線によると、0.05、0.09、0.16μm径の細孔を有していたが、0.3μm径以上の細孔容積が、著しく小さくなった。
【0090】
この中空糸多孔体の体積平均による平均細孔径は、0.07μmであった。また、実施例13と同様の減圧濾過は、濾過速度が遅く、実施することができなかった。更に、実施例6と同様に、得られた中空糸多孔体を、水熱処理すると、表面にモルデナイトの成長は認められたが、支持体とゼオライト膜間の機密性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上詳述したように、本発明は、天然ゼオライト多孔体、ゼオライト膜複合多孔体及びその製造方法に係るものであり、本発明により、天然ゼオライト粉体を用いて作製した、数十ナノメートルから数十ミクロン径の多元的な細孔径分布を有する多孔体と、それにゼオライトを製膜した複合体、その調製方法及び用途を提供することができる。本発明により、現在までに報告されていない、天然ゼオライトを用いた、安価で、且つ空隙率が高く、高性能な中空糸多孔体、及び脱水膜などを提供することができる。本発明は、例えば、バラスト水や食品工業用排水の処理膜として好適に使用することが可能であり、また、銀その他の金属イオンなどを担持することにより、抗菌性や触媒作用などの機能を付与することが可能であるゼオライト膜複合多孔体を提供するものとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゼオライト粉末と、3−50wt%の有機高分子によって構成される、湿式紡糸された中空糸多孔体であって、細孔径が0.01−100ミクロンの範囲に複数の径の細孔が分布する多元多孔体であり、浸水可能な耐水性を有し、乾燥処理後も、含水状態にすることによって、可逆的にフレキシビリティ性能を示すことを特徴とする天然ゼオライト中空糸多孔体。
【請求項2】
乾燥処理された状態の天然ゼオライト中空糸多孔体であり、バインダーの焼成除去の有無に関わらず、0.01−100ミクロンの範囲に複数の径の細孔が分布する多元多孔体であり、気孔率が、少なくとも48%である、請求項1に記載の天然ゼオライト中空糸多孔体。
【請求項3】
中空糸多孔体を構成する天然ゼオライトの主成分が、モルデナイトである、請求項1又は2に記載の天然ゼオライト中空糸多孔体。
【請求項4】
中空糸多孔体の外径が2−3mm、内径が1−2mm、肉厚が0.5−1mmである、請求項1から3のいずれかに記載の天然ゼオライト中空糸多孔体。
【請求項5】
水熱処理された状態の天然ゼオライト中空糸多孔体であり、処理後の、中空糸の伸張方向に対する圧縮強さが、少なくとも4N/mmである、請求項1に記載の天然ゼオライト中空糸多孔体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の天然ゼオライト中空糸多孔体を支持体として、その外表面にゼオライト膜が製膜されている構造を有することを特徴とするゼオライト膜複合多孔体。
【請求項7】
浸透気化による、アルコール又は有機酸の水溶液からの脱水性能を有する、請求項6に記載のゼオライト膜複合多孔体。
【請求項8】
原料粉末として、天然ゼオライトを使用し、これに有機高分子を混合し、湿式紡糸して天然ゼオライト中空糸多孔体を作製し、1)この中空糸多孔体を支持体として、その外表面にゼオライト膜を製膜し、水熱処理して、あるいは、2)作製した中空糸多孔体を水熱処理することにより水熱処理された状態の天然ゼオライト中空糸多孔体を作製し、この中空糸多孔体を支持体として、その外表面にゼオライト膜を製膜して、ゼオライト膜複合多孔体を作製することを特徴とするゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
【請求項9】
支持体の外表面にゼオライト膜を製膜する際に、支持体への種結晶塗布を必要としない、請求項8に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
【請求項10】
中空糸多孔体の水熱処理とゼオライト膜を製膜し、水熱処理する際の水熱処理が、同時に1回の処理で行われる、請求項8に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
【請求項11】
90%エタノール水溶液からの脱水性能が、75℃で、α3900を越え、Fluxが0.6kg/mh前後となるゼオライト膜複合多孔体を作製する、請求項8に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
【請求項12】
50%酢酸水溶液からの脱水性能が、60℃で、α>900(TCD検出器で透過液中に酢酸未検出)となり、Fluxが0.5kg/mh前後となるゼオライト膜複合多孔体を作製する、前記請求項8に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
【請求項13】
天然ゼオライト中空糸多孔体を構成する天然ゼオライトとは異なる種類のゼオライト膜を製膜する、請求項8に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
【請求項14】
ゼオライト膜を製膜した後、天然ゼオライト中空糸多孔体の含水状態におけるフレキシビリティを生かし、該中空糸多孔体を特異形状に成型する、請求項8に記載のゼオライト膜複合多孔体の製造方法。
【請求項15】
請求項6に記載の天然ゼオライト膜複合多孔体をスタック化した、又は該スタックを集積してモジュール化したことを特徴とする天然ゼオライト複合多孔体スタック又はモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−72534(P2012−72534A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265213(P2010−265213)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】