説明

太陽光制御多層フィルム

多層フィルム物品が開示されている。多層フィルム物品は、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物、赤外光吸収性ナノ粒子及び重合開始剤を含むハードコート組成物の反応生成物であるハードコート層と、を含む。ハードコート層は、多層フィルムに隣接して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して太陽光制御多層フィルムに関する。本発明は、より詳しくは、赤外線吸収性ナノ粒子及び望ましい特性を付与する少なくとも1つのフルオロシリコーン含有化合物を含むハードコート層を有する太陽光制御多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
着色及び真空コーティングされているプラスチックフィルムは、太陽光による熱負荷を減少させる目的で窓に適用されている。熱負荷を減少させる際には、太陽光スペクトルの可視光部分又は赤外部分のいずれか(即ち、400nm〜2500nm以上の波長)の太陽光の透過を遮断する。
【0003】
着色フィルムは、主に吸収を通じて可視光の透過を制御することができ、その結果、グレアの減少をもたらす。しかし、着色フィルムは一般に近赤外太陽エネルギーを遮断せず、そのため太陽光制御フィルムとして完全に有効ではない。また、着色フィルムは、太陽暴露によって色あせることが多い。これに加え、複数の色素でフィルムを染めた場合、色素が様々な速度で色あせる場合が多く、フィルムの耐用期間にわたって好ましからざる変色を引き起こす。
【0004】
既知のその他の窓フィルムは、ステンレススチール合金、インコネル合金、モネル合金、クロム合金又はニクロム合金などの真空蒸着灰色金属を用いて作られている。付着させた灰色金属フィルムは、太陽光スペクトルの可視部及び赤外部で、ほぼ同程度の透過率をもたらす。その結果、灰色金属フィルムは、太陽光制御の点では、着色フィルムを上回るものである。灰色金属フィルムは、光、酸素及び/又は、水分にさらされても比較的安定しており、酸化によってコーティングの透過率が上昇するケースでも、一般に変色は検出されない。灰色金属は、透明ガラスに塗布した後は、太陽光の反射量及び吸収量とほぼ等しい量で光の透過を遮断する。
【0005】
銀、アルミニウム及び銅などの真空蒸着された層は、主に反射によって太陽光の放射線を制御すると共に、高レベルな可視反射が原因で、限られた数の用途でしか有用ではない。銅及び銀といった特定の反射性物質によって、適度な選択性(即ち、赤外透過率よりも高い可視透過率)が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高い可視光線透過率を有し、赤外放射を実質的に遮断すると共に、望ましい洗浄及びスクラッチ耐性特性を有する改善された太陽光制御フィルムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明には、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、ハードコート層が、少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物、赤外光吸収性ナノ粒子及び少なくとも1つの重合開始剤を含む混合物の反応生成物を含む、ハードコート層と、を含む物品が含まれる。
【0008】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0009】
【化1】

【0010】
であって、
式中、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
はR又はエチレン性若しくは多エチレン性不飽和基Zであり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であるが、
a+bは少なくとも5であり、R基の少なくとも2つはZであることを条件とする。
【0011】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0012】
【化2】

【0013】
であって、
式中、R、R、Z、a及びbは上記で定義されるとおりである。
【0014】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0015】
【化3】

【0016】
であって、
式中、R、R、Z、a及びbは上記で定義されるとおりであり、
cは2〜2000であるが、
a+b+cは少なくとも5であることを条件とする。
【0017】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0018】
【化4】

【0019】
であって、
式中、R、Z、a及びbは上記で定義されるとおりであり、
cは2〜2000であるが、
a+b+cは少なくとも5であることを条件とする。
【0020】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0021】
【化5】

【0022】
であって、
式中、R、R、Z、a及びbは上記で定義されるとおりであり、
cは2〜2000であるが、
a+b+cは少なくとも5であることを条件とする。
【0023】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)(CH=CH)又はそれらの組み合わせである。
【0024】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(Me)SiO−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CNHC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CHCHC(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)(Me)SiO−[Si(Me)(CHCHMeC(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CH2OC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(CCHCH)Si(Me)O−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CHCH)又はそれらの組み合わせである。
【0025】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0026】
【化6】

【0027】
であって、
式中、Rは一価のヒドロカルビル有機基であり、
はH又はRであり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、
d+e+gは少なくとも5であり、R基の少なくとも2つはHであることを条件とする。
【0028】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0029】
【化7】

【0030】
であって、
式中、R、R、d及びgは上記で定義されるとおりであるが、d+gは少なくとも5であることを条件とする。
【0031】
本発明は、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品も含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0032】
【化8】

【0033】
であって、
式中、R、R、d、e及びgは上記で定義されるとおりであるが、
d+e+gは少なくとも5であることを条件とする。
【0034】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0035】
【化9】

【0036】
であって、
式中、R、d、e及びgは上記で定義されるとおりである。
【0037】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0038】
【化10】

【0039】
であって、
式中、R、R、d、e及びgは上記で定義されるとおりである。
【0040】
本発明は、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品も含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−SiH(Me)、(Et)SiH−O−[Si(Et)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−SiH(Et)、(Et)SiH−O−[Si(Et)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−SiH(Et)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−SiH(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CHC(H)(Me)C(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CNHC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(CCHCH)Si(Me)−O−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(H)−O]−Si(Me)(CHCH)又はそれらの組み合わせである。
【0041】
本発明は更に、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品を含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0042】
【化11】

【0043】
であって、
式中、R、R、R、a、b、d、e及びgは上記で定義されるとおりであり、
はR又はRであり、R及びRは上記で定義されるとおりであるが、
少なくとも1つのRはRであり、少なくとも2つのRはZであり、少なくとも2つのRはHである。
【0044】
また本発明には、赤外光源からの赤外光を遮断するための光制御物品であって、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、ハードコート層は、少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物、赤外光吸収性ナノ粒子及び少なくとも1つの重合開始剤を含むハードコート組成物の反応生成物を含む、ハードコート層と、赤外光反射性多層フィルムに隣接して配置された基材と、を含む光制御物品が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本出願は、添付図面と関連させて、本発明の様々な実施形態の詳細な説明を考慮すると、更に完全に理解できると思われる。
【図1】多層フィルムの斜視図。
【図2】太陽光制御多層フィルム物品の実施形態を概略的に例示する図。
【図3】太陽光制御多層フィルム物品の別の実施形態を概略的に例示する図。
【図4】本発明の実施形態により形成されたハードコートされた光学ディスプレイを有する物品を例示する図。
【0046】
本発明は様々な変更及び代替形状が可能であるが、その具体例を一例として図面に示すと共に詳細に説明する。しかしながら、本発明を、記載される特定の実施形態に限定することを意図しないことが理解されよう。逆に本発明は、本発明の趣旨及び範囲内にあるすべての修正、等価物及び代替物を網羅するものである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
太陽光制御多層フィルムは、太陽光制御を必要とする種々の用途、例えば建築及び輸送用途などに適用可能であると考えられる。いくつかの実施形態においては、太陽光制御多層フィルム物品は、赤外線反射性多層フィルム上に配置された赤外線吸収性ナノ粒子層を含む。他の実施形態においては、太陽光制御多層フィルム物品は、赤外線吸収性ナノ粒子層と接着層との間に配置された赤外線反射性多層フィルムを含む。太陽光制御フィルムは、光学基材、例えばガラス基材などに接着させることができる。これらの例及び後述する例において、開示される太陽光制御多層フィルムの適用性が理解されるが、限定的な意味で解釈してはならない。
【0048】
用語「ポリマー(polymer)」又は「高分子(polymeric)」は、ポリマー、コポリマー(例えば2つ以上の異なるモノマーを使用して形成されるポリマー)、オリゴマー、並びに、これら及び、ポリマー、オリゴマー又はコポリマーの組み合わせと理解される。別段の指定がない限り、ブロック及びランダムコポリマーの両者が含まれる。
【0049】
本明細書において使用する際、「フルオロシリコーン含有化合物」若しくは「フルオロシリコーン含有添加物」又は「フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物」若しくは「フルオロアルキルペンダントシロキサン添加物」は、1つの特定の化合物又は2つ以上の化合物の混合物を指すことができる。
【0050】
特に注記がない限り、「HFPO−」は、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)OCHの末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を指し、式中、「y」の平均値は2〜15である。いくつかの実施形態では、yの平均値は3〜10であるか又は5〜8である。そのような種は、一般的にyの値の範囲を有するオリゴマーの分散物又は混合物として存在し、その結果yの平均値は非整数となることがある。1つの実施形態では、yの平均値は6.2である。このメチルエステルは1,211g/モルの平均分子量を有し、米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)に報告されている方法に従って調製することができ、分留により精製される。
【0051】
特に指示がない限り、本明細書及び請求項において使用される、形状寸法、量及び物理的性質を表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」によって修正されるものとして理解されるべきである。したがって、特に指示されない限り、先の明細書及び添付した特許請求の範囲に記述されている数値パラメータは、当業者により本明細書にて開示される教示を利用して獲得しようとされる所望の性質に応じて変化し得る概算である。
【0052】
用語「硬質樹脂」又は「ハードコート」は、得られる硬化ポリマーがASTM D−882〜91手順に従って評価されたときに、50、40、30、20、10又は5パーセント未満の破断点伸びを示すことを意味する。いくつかの実施形態では、硬質樹脂ポリマーは、ASTM D−882〜91手順に従って評価されたときに、6.89×10パスカル(100kpsi)よりも大きな引張係数を示すことができる。いくつかの実施形態においては、硬質樹脂ポリマーは、ヘイズ値として、500g及び50サイクルの負荷の下でASTM D1044〜99に従ってテーバー摩耗試験機において試験したときに、10%未満又は5%未満の値を示す可能性がある(ヘイズは、ヘイズガードプラス(Haze-Gard Plus)(BYK−ガードナ(BYK-Gardner)(メリーランド州)ヘイズメータを用いて測定することができる)。
【0053】
ハードコート組成物に関連して用いるとき、特定の成分の「重量パーセント」又は「重量%」は、ハードコート組成物から溶媒を取り除いた後であるが、ハードコート層を形成するためにハードコート組成物を硬化する前のハードコート組成物中の特定の成分の量(重量で)を指す。
【0054】
用語「隣接した」は、1つの素子が別の素子に極めて接近した状態にあることを指し、この用語には、素子が接触し合っていることが含まれると共に、更に、素子が素子の間に配置されている1つ以上の層で隔てられていることも含まれる。
【0055】
用語「光学ディスプレイ」又は「ディスプレイパネル」は、任意の従来の光学ディスプレイを指すことができ、液晶ディスプレイ(「LCDs」)、プラズマディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、ブラウン管(「CRTs」)及び看板、ビジュアルサイン伝達などの多重特性多回線ディスプレイ、並びに発光ダイオード(「LEDs」)、信号灯及びスイッチなどの単一特性又はバイナリディスプレイが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなディスプレイパネルの露出面は、「レンズ」と呼ばれてもよい。本発明は、特にインクペン、マーカー及びその他のマーキング道具、ワイピングクロス、紙用品並びにその類により触れられ又は接触されやすい表示表面を有するディスプレイに有用である。
【0056】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば、1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5)並びにその範囲内のいかなる範囲も含まれる。
【0057】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。ゆえに、例えば、「ナノ粒子層」を含有する組成物への言及は、2つ以上のナノ粒子層を包含する。本明細書及び添付特許請求の範囲内にて使用される場合、用語「又は」は、別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0058】
本開示では概して、ポリマー多層フィルム上に配置された赤外線吸収性ナノ粒子層を備える多層フィルムについて説明する。多くの実施形態では、赤外光反射性多層フィルムは、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有しており、赤外光吸収ナノ粒子層が、多層フィルムに隣接している。ナノ粒子層は、複数の金属酸化物ナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、多層フィルムは、太陽光制御物品を形成するためにガラスなどの光学基材に隣接して配置される。いくつかの実施形態においては、多層フィルムの平均の可視光線透過率は少なくとも45%であり、780nm〜2500nmの光に対する平均の赤外線透過率は15%未満である。
【0059】
図1に、多層の光学フィルム20を例示する。フィルムは、個々の層22、24を含む。それらの層が異なった屈折率特性を有すると、一部の光は隣接する層間の境界面において反射される。層は、フィルムに所望の反射又は透過特性をもたらす目的で、複数の境界面で反射した光に建設的又は相殺的干渉をもたらすほど十分に薄い。紫外線、可視線又は近赤外線の波長の光を反射するように設計されている光学フィルムでは、各層の光学的厚み(即ち、物理的厚みに屈折指数を乗じた数値)は一般に、約1マイクロメートル未満である。ただし、これよりも厚い層、例えば、フィルム外面にある表面薄層又は層の束を区切るフィルム内に配置されている保護境界層も含めることができる。
【0060】
多層光学フィルム20の反射及び透過特性は、それぞれの層(即ち、微小層)の屈折率の関数である。各層は、フィルムの少なくとも局所部分においては、面内屈折率n、n及びフィルムの厚み方向軸と関連する屈折率nによって特徴付けることができる。これらの屈折率は、それぞれ、相互に直交するx軸、y軸及びz軸に沿って偏光された光の、対象材料の屈折率を表す(図1を参照のこと)。実際には、屈折率は、賢明な材料選択及び加工条件によって制御する。フィルム20は、2つの交互のポリマーA、Bの、通常は数十又は数百の層を共押出しし、その後、所望により、多層押出物を1以上の増倍のダイに通過させ、次に、押出物を伸張させる又は他の方法で配向させて、最終フィルムを形成することによって製造することができる。得られたフィルムは、典型的には数十又は数百の個々の層から構成されており、これらの層の厚み及び屈折率は、スペクトルの所望の領域(単一又は複数)、例えば、可視領域、近赤外領域及び/又は赤外領域に1つ以上の反射バンドをもたらすように調整されている。適度な数の層で高い反射率を実現させるために、隣接し合っている層では、x軸に沿って偏光した光に対する屈折率の差(Δn)が少なくとも0.05であるのが好ましい。いくつかの実施形態では、2つの直交する偏光で高い反射率が望ましい場合、隣接している層では、y軸に沿って偏光した光の屈折率の差(Δn)も少なくとも0.05である。別の実施形態では、ある1つの偏光状態の法線入射光を反射させると共に、直交偏光状態の法線入射光を透過する層スタックを作製させるために、屈折率の差Δnは0.05未満又は0にできる。
【0061】
所望に応じて、隣接している層の間における、z軸に沿って偏光した光の屈折率の差(Δn)も、斜入射光のp偏光成分で所望の反射特性を得られるように調整することができる。説明を容易にするために、多層光学フィルム上のいかなる関心点においても、x軸は、Δnの大きさが最も大きくなるようにフィルム面内に配向させるものとする。したがって、Δnの大きさは、Δnの大きさに等しいか又はそれ未満(超過ではない)とすることができる。更に、差Δn、Δn、Δnを計算する際、どの材料層から始めるべきかという選定は、Δnを負数にしないことを求めることに左右される。言い換えれば、界面を形成する2層間の屈折率の差はΔn=n1j−n2jであり、j=x、y又はzであり、層の表記1、2は、n1x≧n2x、即ち、Δn≧0となるように選定される。
【0062】
斜め入射角におけるp偏光の高い反射率を維持するために、層間のz屈折率の不一致Δnは、最も大きい面内屈折率の差Δnより実質的に小さく制御して、Δn≦0.5×Δnのようにすることができる。一実施形態においては、Δn0.25×Δnである。層の間における、大きさがゼロ又はほぼゼロのz屈折率の不一致は、入射角の関数としてp偏光の反射率が一定又はほぼ一定である境界面を層の間にもたらす。更に、z屈折率の不一致Δnは、面内屈折率の差Δnと比較して反対の極性を有するように、即ち、Δn<0であるように、制御することができる。この条件は、s偏光の場合と同様に、p偏光に対する反射率が、入射角の増加と共に増加する境界面をもたらす。
【0063】
多層光学フィルムは例えば、米国特許第3,610,724号(ロジャース(Rogers))、同第3,711,176号(アルフレー・Jr(Alfrey, Jr.)ら)「赤外光、可視光又は、紫外光用の高反射型熱可塑性光学体(Highly Reflective Thermoplastic Optical Bodies For Infrared、Visible or Ultraviolet Light)」、同第4,446,305号(ロジャース(Rogers)ら)、同第4,540,623号(イム(Im)ら)、同第5,448,404号(シュレンク(Schrenk)ら)、同第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)「光学フィルム(Optical Film)」、同第6,045,894号(ジョンザ(Jonza)ら)「透明〜着色セキュリティフィルム(Clear to Colored Security Film)」、同第6,531,230号(ウェーバー(Weber)ら)「カラーシフトフィルム(Color Shifting Film)」、PCT国際公開特許WO 99/39224号(アウダーカーク(Ouderkirk)ら)「赤外干渉フィルタ(Infrared Interference Filter)」及び、米国特許出願公開第2001/0022982 A1号(ニービン(Neavin)ら)「多層光学フィルムを作製するための装置(Apparatus For Making Multilayer Optical Films)」に記載されており、これらは全て参考として本明細書に組み込まれる。そのようなポリマー多層光学フィルムでは、個々の層の構成にポリマー材を優勢的に又は独占的に使用する。そのようなフィルムは、大量製造プロセスに対応することができると共に、大型のシート及びロール商品の形で作製してもよい。
【0064】
多層フィルムは、交互性ポリマータイプ層のいずれか有用な組み合わせによって形成させることができる。多くの実施形態では、交互性高分子層の少なくとも1つが複屈折で配向されている。いくつかの実施形態では、交互性高分子層の一方が複屈折で配向されており、もう一方が等方性である。1つの実施形態では、多層光学フィルムは、第1のポリマータイプ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンテレフタレートのコポリマー(coPET)と、第2のポリマータイプ、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)又はポリ(メチルメタクリレート)のコポリマー(coPMMA)の交互層によって形成させる。別の実施形態では、多層光学フィルムは、第1のポリマータイプ、例えばポリエチレンテレフタレートと、第2のポリマータイプ、例えばポリ(メチルメタクリレート及びエチルアクリレート)のコポリマーの交互層によって形成させる。別の実施形態では、多層光学フィルムは、第1のポリマータイプ、例えばグリコール化ポリエチレンテレフタレート(PETG−コポリマーエチレンテレフタレート及び第2のグリコール部分、例えばシクロヘキサンジメタノール)又はグリコール化ポリエチレンテレフタレートのコポリマー(coPETG)と、第2のポリマータイプ、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)又はポリエチレンナフタレートのコポリマー(coPEN)の交互層によって形成させる。別の実施形態では、多層光学フィルムは、第1のポリマータイプ、例えばポリエチレンナフタレート又はポリエチレンナフタレートのコポリマーと、ポリ(メチルメタクリレート)又はポリ(メチルメタクリレート)を含む第2のポリマータイプのコポリマーの交互層によって形成させる。交互性ポリマータイプ層の有用な組み合わせは、米国特許第6,352,761号及び同第6,797,396号に開示されており、これらの特許は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0065】
図2に、太陽光制御多層フィルム物品100の実施形態を概略的に例示する。フィルム100は、上記に記載のように、第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルム110を含む。赤外光吸収性ハードコート層120(本明細書では、単に「ハードコート層」とも呼ばれる)は、多層フィルム110に隣接して配置されている。接着層130が多層フィルム110上に配置されている。剥離層又は基材140が接着層130上に配置されている。任意的な第2のハードコート層150を、多層フィルム110に隣接して配置され得る。
【0066】
多くの実施形態において、フィルム100は、前述したように第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルム110を含み、ハードコート層120は、多層フィルム110に隣接して配置される。いくつかの実施形態においては、ハードコート層120は、硬化したポリマー結合剤内に分散した金属酸化物を含む。いくつかの実施形態においては、このハードコート層120の厚さは、1〜20マイクロメートル、1〜10マイクロメートル又は1〜5マイクロメートルの範囲である。接着層130が多層フィルム110上に配置されている。剥離層又は光学基材140が、接着層130上に配置されている。
【0067】
図3に、太陽光制御多層フィルム物品200の別の実施形態を概略的に例示する。フィルム200は、前述したように第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルム210を含む。赤外光吸収性ハードコート層220は、多層フィルム210に隣接して配置されている。任意的な中間体接着層270は、ハードコート層220と多層フィルム210との間に配置されている。接着層230は、多層フィルム210上に配置されている。剥離層又は光学基材240は、感圧性接着剤層230上に配置され得る。任意的の第2のハードコート層250を、多層フィルム210に隣接して配置され得る。任意的な中間体ポリマー層260が、任意的な第2のハードコート層250と中間体接着層270との間に配置されている。
【0068】
上記の多層フィルム物品構造体は、改良型の太陽光制御フィルム物品を提供する。いくつかの実施形態においては、多層フィルム物品の平均の可視光線透過率(400〜780nm)は少なくとも45%であり、780nm〜2500nmの光に対する平均の赤外光線透過率は10%未満又は15%未満である。いくつかの実施形態では、多層フィルム物品の平均可視光線透過率は少なくとも60%であり、950nm〜2500nmの間の実質的にすべての波長における赤外光線透過率は20%以下である。いくつかの実施形態においては、多層フィルム物品の780〜1200nmでの平均の光反射率は50%以上であり、1400〜2500nmでの平均の光透過率は50%以下である。更なる実施形態においては、多層フィルム物品の780〜1200nmでの平均の光反射率は80%以上であり、1400〜2500nmでの平均の光透過率は20%以下である。更なる実施形態、多層フィルム物品の780〜1200nmでの平均の光反射率は90%以上であり、1400〜2500nmでの平均の光透過率は5%以下である。
【0069】
一実施形態においては、ハードコート層は70度を超える水の静的接触角を有している。別の実施形態においては、ハードコート層は90度を超える水の静的接触角を有している。更なる実施形態においては、ハードコート層は100度を超える水の静的接触角を有している。本発明の一実施形態においては、ハードコート層は、50度を超えるヘキサデカン(油)の静的接触角を有している。
【0070】
一実施形態においては、低い表面エネルギー(例えば、防汚、染み耐性、撥油性及び/又は撥水性)と耐久性(例えば、耐磨耗性)との組み合わせが、ハードコート層にとっては望ましい特性である。ハードコート層は、いくつかの実施形態においては、耐久性及び光学的透明性を改善する一方で、グレア損失を小さくするように機能することもできる。
【0071】
表面エネルギーは、「実施例」に記載される試験方法により確定される接触角、防インク性などの様々な方法によって特徴付けることができる。本願では、「防汚染性」とは、水との静的接触角が少なくとも70度を呈する表面処理を指す。一実施形態においては、接触角は少なくとも80度であり、別の実施形態では少なくとも90度である。あるいは又はそれに加えて、ヘキサデカンとの静的接触角は少なくとも40度であり、別の実施形態では少なくとも50度であり、更に別の実施形態では少なくとも60度である。低い表面エネルギーは、結果的に防汚及び染み耐性の特性を生じ、並びに露出面を洗浄しやすくする。低い表面エネルギーの別の指標は、露出面に適用されたときに、ペン又はマーカーからのインクが玉状化する程度に関する。表面層及び物品が「撥インク性」を示すというのは、ペン及びマーカーからのインクが玉状化して別個の液滴になり、露出面をテッシュペーパー又はペーパータオル(例えば、キンバリークラーク社(Kimberly Clark Corporation)(ジョージア州ロズウェル(Roswell))から商品名「サーパスフェイシャルティシュー(SURPASS FACIAL TISSUE)」で販売されるテッシュペーパー)で拭くことによって容易に取り除くことができるときである。
【0072】
耐久性は、溶媒抵抗試験とスチールウールを用いた耐磨耗性試験との組み合わせから得られる結果に関して定義することができる。スチールウールは、ホーマックスプロダクツ(Homax Products)(ワシントン州ベリンガム(Bellingham))の一部門であるローデスアメリカン(Rhodes-American)から、商品名「#0000−スーパーファイン(Super-Fine)」で入手され、500グラムのおもりをスタイラスに加えた後に300回引っかく。これについは、実施例に記載したとおりである。
【0073】
前述した接着層130には、太陽光制御多層フィルムを基材に取り付けることができる任意のタイプの接着剤を含むことができる。太陽光制御フィルムをガラスに取り付けるために、太陽光制御フィルムの1つの表面に接着剤をコーティングし、フィルムを基材に貼り付ける前に剥離シートを接着層から取り除く。紫外線吸収性添加剤を接着層内に取り入れることができる。
【0074】
一実施形態においては、接着層130に含まれる接着剤は感圧性接着剤(PSA)である。別の実施形態においては、接着剤は水分硬化可能な接着剤である。PSAを用いる実施形態では、PSAは光学的に透明なPSAフィルム、例えばポリアクリレート感圧性接着剤である。感圧テープ協議会(Pressure-Sensitive Tape Council)では、感圧性接着剤を、以下の特性を伴う材料であると規定している。(1)積極的かつ永続的な接着性、(2)指圧力以下の接着性、(3)接着物上に保持する十分な能力、(4)十分な貼着性強度及び(5)エネルギー源による活性化が不要。PSAは通常、典型的には室温以上(即ち、約20℃〜約30℃以上)であるアセンブリ温度で粘着性を示す。PSAとして十分に機能することが分かっている材料は、必須の粘弾性特性を示すように設計及び処方されており、その結果として、アセンブリ温度で粘着性と剥離接着性と剪断保持力の望ましいバランスをもたらすポリマーである。PSAを調製する際に最も一般的に用いられているポリマーは、天然ゴム−、合成ゴム−(例えば、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)及びスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー)、シリコーンエラストマー、ポリα−オレフィン−及び種々の(メタ)アクリレート(例えば、アクリレート及びメタクリレート)系ポリマーである。これらのうち、(メタ)アクリレート系ポリマーであるPSAは、その光学的透明性、特性の長期間にわたる恒久不変性(経時的安定性)及び汎用な接着程度(これらはPSAの利点のほんの一部である)から、本発明におけるPSAの1つの部類として発展してきている。
【0075】
前述の剥離ライナーは、例えばポリマー又は紙などのいずれか有用な材料で形成することができ、剥離コートを含むことができる。剥離コートで用いる好適な材料としては、接着剤から剥離ライナーを容易に剥離させるように設計されているフッ素ポリマー、アクリル樹脂及びシリコーンが挙げられるが、これらに限らない。
【0076】
前述した基材は、任意の有用な材料で形成することができ、多くの実施形態において光学基材である。いくつかの実施形態では、基材は、ポリマー材料、例えば、セルローストリアセテート、ポリカルボネート、ポリアクリレート、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートで形成されている。別の実施形態では、基材は、無機材料、例えば、石英、ガラス、サファイア、YAG又は雲母で形成されている。基材には、任意の有用な厚みを持たせることができる。ある1つの実施形態では、基材は自動車用ガラス又は建築用ガラスである。グレージングシステムとして透明ガラス基材を含むいくつかの実施形態では、グレージングシステムは、70%以上のTVISにおいて、0.68以下、0.6以下、0.55以下又は0.50以下の遮蔽係数を有する。
【0077】
ハードコート層は、最終製品の処理中及び使用中の基材の耐久性を向上させることができる。ハードコート層としては、いずれかの有用な物質、例えばシリカ系ハードコート、シロキサンハードコート、メラミンハードコート、アクリル系ハードコートなどを挙げることができる。ハードコート層は、例えば、1〜20マイクロメートル、1〜10マイクロメートル又は1〜5マイクロメートルなど、いずれかの有用な厚さとすることができる。
【0078】
ハードコート層は、少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物、赤外光吸収性ナノ粒子及び少なくとも1つの重合開始剤を含む混合物の反応生成物を含む。混合物は、本明細書において「ハードコート組成物」と呼ぶことができる。
【0079】
ハードコート組成物は、2つ以上のエチレン性不飽和の重合可能な基を有する少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和成分を含む。ポリエチレン性不飽和成分は、式R(Z’)のものであり、式中、Rは、価数jの有機部分であり、jは少なくとも2であり、Z’はエチレン性不飽和の重合可能な基であり、フルオロアルキルペンダントシロキサンのエチレン性又は多エチレン性不飽和基と反応性である。一実施形態では、R部分は、ヒドロカルビル基(炭素と水素だけを含有する)であり、別の実施形態では、R部分は、直鎖、分枝状、環状又は非環状非ウレタン脂肪族基である。
【0080】
エチレン性不飽和基Z’は、アルケニル基、例えばビニル、アリル及びブテニル(butentyl);アルキニル基、例えばエチニル、プロピニル及びブチニル、ビニルオキシアルキレン(例えば、CH=CHO−C2r−)、アリルオキシアルキレン、(例えば、CH=CHCHO−C2r−)及び(メタ)アクリロイル基、(例えば、CH=CR”CO−C2r−、R”=H、C−Cアルキル、F及びその窒素類縁体)を含んでもよく、rは1〜12の整数である。一実施形態では、ポリエチレン性不飽和化合物のZ’基は、(メタ)アクリロイル基である。
【0081】
例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジアクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸ジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化(10)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(3)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化(4)ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートなどの化合物を含有するジ(メタ)アクリロイル;グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート類(例えば、エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化トリアクリレート類(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレートなどの化合物を含有するトリ(メタ)アクリル;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの化合物を含有する高官能性(メタ)アクリル;例えば、ポリエステルアクリレート類、エポキシアクリレート類などのオリゴマー(メタ)アクリル化合物;ポリアクリルアミド類似体;及びそれらの組み合わせなどの幅広い(メタ)アクリロイル化合物が、コーティング組成物に使用できる。
【0082】
そのような化合物は、例えば、サートマー社(Sartomer Company)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))、UCBケミカルズ社(UCB Chemicals Corporation)(ジョージア州スミュルナ(Smyrna))及びアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))のようなの販売業者から広範囲に入手可能である。追加の有用な(メタ)アクリレート物質としては、例えば米国特許第4,262,072号(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載されたようなヒダントイン部分含有ポリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。)
代表的な市販の(メタ)アクリロイル化合物としては、商品表記「SR306」として入手可能なトリプロピレングリコールジアクリレート、商品表記「SR351」として入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレート、商品表記「SR444」として入手可能なペンタエリスリトールトリアクリレート、商品表記「SR399LV」として入手可能なジペンタエリスリトールペンタアクリレート、商品表記「SR454」として入手可能なエトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート及び商品表記「SR494」として入手可能なエトキシル化(4)ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)から入手可能なものが挙げられる。
【0083】
いくつかの用途については、わずか5重量部の少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和成分(100重量部の少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物及び少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサンに対して)で好適な耐久性がもたらされる場合があるが、特にこれらの化合物が一般にフッ素化化合物よりも安価であることから、濃度は通常最大にされる。それ故に、本明細書に記載のコーティング組成物は、典型的に50重量部を超えて非フッ素化有機ポリエチレン性不飽和成化合物を含む。いくつかの実施では、ハードコート層を構成するために、非フッ素化有機ポリエチレン性不飽和化合物の総量は、60重量部を超え、少なくとも70重量部、少なくとも80重量部、少なくとも90重量部及び更に約99.5重量部のハードコート組成物を含んでもよい。
【0084】
あるいは、ポリエチレン性不飽和成分は、表面官能化無機粒子、一実施形態では、複数のポリエチレン性不飽和基を有するナノ粒子(100ナノメートル未満の平均粒子サイズを有する)を含んでもよい。これらの粒子及びナノ粒子は、シリカ、酸化亜鉛、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、クロミア、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化スズ、その他のコロイド状金属酸化物及びそれらの混合物の群からのコロイド状物質から調製されることができ、(a)粒子は硬化性組成物中に分散され、(b)粒子に結合されるエチレン性不飽和基は重合可能であるように、官能化され、これらの粒子は、実質的にシリカなどの単一酸化物を含むことができるか又は1つの種類の酸化物のコア(又は物質のコア)を含むことができ、その上に別の種類の酸化物が付着される。粒子は、5〜約1000nm、一実施形態では100ナノメートル未満、別の実施形態では10〜50nmの平均粒径を有することができる。平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡を使用して測定することができ、所定の直径の粒子数を数える。好適なコロイド状シリカの更なる例が、参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許第5,126,394号に記載されている。
【0085】
そのような粒子は、米国特許第6,353,037号及び同第6,462,100号(サンホルスト(Thunhorst)ら)及び同第6,329,058号(アーニー(Arney)ら)に記載され、それらは本明細書に参考として組み込まれる。他の有用な表面変性粒子が、米国特許出願公開第2002/0128336号(バラン(Baran)ら)に記載されており、参照として本明細書に組み込まれる。
【0086】
一実施形態では、粒子は、(メタ)アクリロイル官能化無機粒子であり、即ち複数の(メタ)アクリロイル基で官能化される。典型的にシリカ粒子は、シリルアクリレートを水性コロイダルシリカに添加することにより官能化される。アクリレート官能化コロイダルシリカの例が、米国特許第4,491,508号及び同第4,455,205号(オルセン(Olsen)ら)、同第4,478,876号及び同第4,486,504号(チャン(Chung))、並びに同第5,258,225号(カットサンベリス(Katsamberis))に記載されており、それらのすべてが参照として本明細書に組み込まれる。
【0087】
ポリエチレン性不飽和無機粒子は、有機ポリエチレン性不飽和化合物の全て又は一部を置き換えてもよく、即ち、ハードコート組成物は、フルオロアルキルペンダントシロキサン、ポリエチレン性不飽和官能化粒子成分、赤外線吸収性ナノ粒子及び重合開始剤を含んでもよい。一般に、有機化合物、表面官能化無機粒子成分又はそれらの組み合わせのいずれであれ、エチレン性不飽和成分の総量は、50重量部を超える、即ち51〜99.95重量部である。
【0088】
反応生成物がハードコート層であるハードコート組成物はまた、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物を含む。
【0089】
一実施形態では、ペンダントフルオロアルキルシロキサン化合物は、以下の式で表すことができ、
【0090】
【化12】

【0091】
式中、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
はR又はエチレン性若しくは多エチレン性不飽和基Zであり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であるが、
a+bは少なくとも5であり、R基の少なくとも2つはエチレン性不飽和基Zであることを条件とする。
【0092】
式Iに関して、フルオロアルキルシリコーンは、少なくとも2つの末端エチレン性不飽和基を有する化合物を含んでもよく、式IIで表され、
【0093】
【化13】

【0094】
式中、R、Z、R、a及びbは上記で定義されるとおりである。
【0095】
フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、式IIIで表されてもよく、
【0096】
【化14】

【0097】
式中、R、Z、R、a及びbは上記で定義されるとおりであり、
cは2〜2000であるが、a+b+cは少なくとも5であることを条件とする。
【0098】
フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、式IVで表されてもよく、
【0099】
【化15】

【0100】
式中、R、Z、R、a、b及びcは上記で定義されるとおりである。
【0101】
フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、式Vで表されてもよく、
【0102】
【化16】

【0103】
式中、R、Z、R、a、b及びcは上記で定義されるとおりである。
【0104】
別の実施形態では、フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、式VIで表されることができ、
【0105】
【化17】

【0106】
式中、R及びRは上記で定義されるとおりであり、
はH又はRであり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、d+e+gは少なくとも5であり、少なくとも2つのRはHであることを条件とする。
【0107】
本発明は、ハードコート組成物から形成されるハードコート層を有する物品も含み、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0108】
【化18】

【0109】
であって、
式中、R、R、d及びgは上記で定義されるとおりであるが、d+gは少なくとも5であることを条件とする。
【0110】
フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、式VIIで表されることもでき、
【0111】
【化19】

【0112】
式中、R、R、d、e及びgは上記で定義されるとおりであるが、d+e+gは少なくとも5であることを条件とする。
【0113】
フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、式VIIIで表されることもでき、
【0114】
【化20】

【0115】
式中、R、R、d、e及びgは上記で定義されるとおりである。
【0116】
フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、式IXで表されることもでき、
【0117】
【化21】

【0118】
式中、R、R、d、e及びgは上記で定義されるとおりである。
【0119】
少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、1を超える化合物を含んでもよい。一実施形態では、触媒で又は触媒なしで、2つ以上の化合物を共に反応させてから、最終的に硬化後にハードコート層となる混合物に加えることができる。別の実施形態では、最終的にハードコート層となる混合物内で2つ以上の化合物を組み合わせることができ、それらはハードコート層が硬化される前又は硬化されるときにその混合物内で反応する。
【0120】
実施形態は、ヒドロシリル化触媒と反応する、本明細書に提示される式の1つ以上の化合物を含むこともできる。一実施形態では、式VI〜Xのいずれかによる1つ以上の化合物をヒドロシリル化触媒と組み合わせることができる。したがって、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(光ヒドロシリル化触媒を含む)は、ハードコート組成物に含まれることができる。有用なヒドロシリル化触媒としては、熱触媒(例えば、白金触媒類)が挙げられ、ケイ素結合水素基とケイ素結合エチレン性不飽和基間のヒドロシリル化反応を促進するのに有効である。熱ヒドロシリル化触媒に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第2,823,218号、(スパイアー(Speier)ら)、同第2,970,150号(ベイリー(Bailey))、同第3,159,601号及び同第3,159,662号(アシュビー(Ashby))、同第3,220,972号(ラモロー(Lamoreaux))、同第3,516,946号(モディク(Modic))、同第3,814,730号(カーステッド(Karstedt))、同第4,029,629号(ジェラム(Jeram))、同第4,533、575号及び同第4,504,645号(メランコン(Melancon))、並びに第5,741,552号(タカヤマ(Takayama)ら)に見ることができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
一実施形態では、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物は、
【0122】
【化22】

【0123】
を含み、
式中、R、R、R、a、b、d、e及びgは上記で定義されるとおりであり、
はR又はRであり、式中、R及びRは、上記で定義されるとおりであるが、
少なくとも1つのRはRであり、少なくとも2つのRはZであり、少なくとも2つのRはHであることを条件とする。
【0124】
フルオロアルキル又はパーフルオロポリエーテル基、Rは、C2n+1(CHO)2m−、C2n+1CHXCF(C2mO)2p−又はC2n+1OCHXCF(C2mO)2p−であることができ、式中、XはH又はFであり、nは1〜12の整数であり、mは1〜12の整数であり、oは0又は1であり、pは2〜12の整数である。一実施形態では、nは3〜6の整数である。RはHFPOを指す場合もある。フルオロアルキル又はパーフルオロポリエーテル基の大きさ及びR基の数は、硬化されたコーティングが少なくとも10重量%のフッ素、別の実施形態では少なくとも20重量%のフッ素を有するように選択される。
【0125】
フルオロアルキル基の代表的な例は、CFCHCH−、CFCFCFCFCHCH−、(CFNCFCFCHCH−、CFCHOCHCH−、CFCFCHOCHCH−、CFCFHCFCHOCHCH−、CFCFHCFOCHCH−、CFCFCFCFCHCFCHCH−、HFPO及びCFOCFCFCHCH−である。別の実施形態では、RはHFPOである。
【0126】
で表される一価の有機基は、脂肪族であっても芳香族であってもよく、1〜20個の炭素原子を有することができる。別の実施形態では、Rは1〜10個の炭素原子を有することができる。一価の有機基の例としては、一価の炭化水素基が挙げられるがこれらに限定されない。一価の炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル及びオクタデシルなどのアルキル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル並びにフェニル、トリル及びナフチル(napthyl)などの芳香族基(アリール)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0127】
エチレン性又は多エチレン性不飽和基Zは、ビニル、アリル及びブテニル(butentyl)のようなアルケニル基、エチニル、プロピニル及びブチニルのようなアルキニル基、ビニルオキシアルキレン(例えば、CH=CHO−C2q−)、アリルオキシアルキレン(例えば、CH=CHCHO−C2q−)、並びに(メタ)アクリロイル基をを含んでもよく、式中、qは1〜12の整数である。一実施形態では、Z基はビニル基を含む。
【0128】
式I〜XIIに関して、説明されるフルオロアルキルペンダントシロキサンはランダムコポリマーであってもブロックコポリマーであってもよいことが、当業者には理解される。整数a、b、c、d、e及びgにより表されるシリコーンユニットの数は、式がどの特定の総数を表すか(例えば、a+b又はa+b+c)にかかわらず、一般に1つの化合物における総数が少なくとも5である。いくつかの実施形態においては、シリコーンユニットの数は、一般に合計が少なくとも10、更なる実施形態では、合計が少なくとも20である。フルオロアルキルシリコーンのいずれも、任意のRSiO1/2単位、SiO4/2単位、RSiO3/2単位及びRSiO2/2単位又はこれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0129】
特定のパーフルオロオクチル含有化合物(C17−)が生物中に生体内蓄積する傾向がありうることが報告されている。この傾向は、いくつかのフルオロケミカル組成物に関する潜在的な懸念として述べられてきた。例えば、米国特許第5,688,884号(ベーカー(Baker)ら)を参照のこと。結果として、より効果的に生体系から排除されつつ、所望の機能特性、例えば、撥水性及び撥油性、界面活性剤特性などを提供する際に有効なフッ素含有組成物が必要とされている。
【0130】
本明細書で利用されるフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物はまた、更なる利点を提供することができる。先ず、より短い(即ちC〜C)フルオロアルキル基を含有するハードコート層は、それらの有効性を、同じ重量基準で有効な低表面エネルギーコーティングとして維持すると同時に、より高い収率のため、重量当たりより低いコストで製造できる。例えば、フッ素化ヘプタフルオロブチリル前駆体は、電気化学フッ素化プロセス(R.E.バンクス(R. E. Banks)編「有機フッ素化合物の調製、特性及び工業用途(Preparation, Properties, and Industrial Applications of Organofluorine Compounds)」(エリス・ホーウッド社(Ellis Horwood Ltd)、1982、p.26)のフッ素化パーフルオロオクタノイル前駆体(31%)と比べて60%の収率で調製することができる。更に、短鎖カルボン酸(推定中間分解生成物)は、より長鎖の同族体より低い毒性及び低い生体内蓄積性である。
【0131】
代表的なフルオロアルキルペンダントシロキサンには、これらに限定されないが、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[(Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)(CH=CH)又はこれらの組み合わせが挙げられ、式中、a及びbは上記で定義されるとおりである。他の代表的なフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物には、これらに限定されないが、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(Me)SiO−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(Me)Si−O[Si(Me)(CNHC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CHCHC(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CHCHMeC(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CH2OC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(CCHCH)Si(Me)O−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CHCH)又はこれらの組み合わせが挙げられ、式中、a、b及びcは上記で定義されるとおりである。代表的なフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物には、これらに限定されないが、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−SiH(Me)、(Et)SiH−O−[Si(Et)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−SiH(Et)、(Et)SiH−O−[Si(Et)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−SiH(Et)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]d−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−SiH(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CHC(H)(Me)C(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CNHC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)(CCHCH)Si(Me)−O−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(H)−O]−Si(Me)(CHCH)又はこれらの組み合わせが挙げられ、式中、e、d及びgは上記で定義されるとおりである。
【0132】
フルオロアルキルペンダントシロキサンは、当業者には既知であり、いくつかの手段で調製することができる。1つの代表的な方法では、下に示すように、フルオロアルキルビニル化合物は、ジクロロアルキルシランでヒドロシリル化され、水で処理されて環状トリマー(又はテトラマー)を形成し、続いて塩基(任意にジアルキルシロキサンの環状トリマー)と共に重合されてフルオロアルキルシリコーンを生成することができる。
【0133】
CH=CH→RCHCHSiMeCl→RCHCHSiMeO2/2の環状トリマー若しくはテトラマー→−(SiMe(C)−O)−又はMeSiO2/2の環状トリマー若しくはテトラマーとのコポリマー→−(SiMe(C)−O)−(SiMe−O)−。CH=CHSiMeO2/2の環状トリマー又はテトラマーとの重合→−(SiMe(C)−O)−(SiMe(CH=CH)−O)
【0134】
別の代表的な手段は、他のRSiMe(OMe)あり又はなしのRCHCHSiMe(OMe)からの加水分解及びそれに続く脱水である。
【0135】
更に別の代表的な手段は、「J.Fluorine Chem.」(104、2000年、p.37〜45)でチボークリス・ジョン(Tsibouklis,John)らにより説明されているもののように、ペンダントフルオロアルキル基をポリシロキサンに直接取り入れることである。
【0136】
フルオロアルキルシリコーンを調製するための他の方法は、米国特許第2,915,544号(ホルブルック(Holbrook)ら)、タラント・P.(Tarrant,P.)らの「J.Am.Chem.Soc.」(1957年、79巻、p.6536〜6540)ゲイヤー・A.M.(Geyer, A.M.)らの「J.Chem.Soc.」(1957年、p.4472〜9)、キム・Y.K.(Kim, Y.K.)らの「J.Org.Chem.」(1973年、38巻、p.1615〜6)及びベイユー・E.(Beyou, E.)らの「Tet.Letters」(1995年、36巻(11)、p.1843〜4)に記載されている。
【0137】
更に、フルオロアルキルシリコーンは、エチレン不飽和基含有末端ブロッキング試薬を用いた、ダウト(Daudt)らのシリカヒドロゾルキャッピング法によって作製されてもよい。ダウト(Daudt)らの方法が、米国特許第2,676,182号に開示されている。簡潔に述べると、ダウト(Daudt)らの方法は、酸性条件下でシリカ水性ゾルとトリメチルクロロシランなどの加水分解性トリオルガノシラン、ヘキサメチルジシロキサンなどのシロキサン又はそれらの混合物とを反応させる工程及びそれらから得られるユニットを有するコポリマーを回収する工程を包含する。生成したコポリマーは、一般に2〜5重量%のヒドロキシル基を含有する。
【0138】
典型的に2重量%未満のケイ素結合ヒドロキシル基を含有するフルオロアルキルペンダントシロキサンは、ダウト(Daudt)らの生成物と不飽和有機基含有末端ブロッキング剤及び脂肪族不飽和のない末端ブロッキング剤とを、最終製品中に3〜30モルパーセントの不飽和有機基をもたらすのに十分な量で反応させることにより調製できる。末端ブロッキング剤の例としては、シラザン、シロキサン及びシランが挙げられるが、これらに限定されない。好適なエンドブロッキング剤は当該技術分野において既知であり、本明細書に参考として組み込まれる米国特許第4,584,355、同第4,591,622号及び同第4,585,836に例示されている。単一末端ブロッキング剤又は剤の混合物は、樹脂を調製するために使用できる。
【0139】
複数のポリエチレン性不飽和基を有する市販のシリコーンとしては、商品名「シルオフ(SYL-OFF)Q2−7785」及び「シルオフQ2−7560」でダウ・コーニング社(Dow Corning Corp.)より市販されているビニル末端フルオロシリコーンが挙げられる。
【0140】
フルオロアルキルペンダントシロキサンは、単一流体又は以下の特性、即ち構造、粘度、平均分子量、シロキサン単位及び順序の少なくとも1つが異なる2つ以上のフルオロアルキルシリコーン流体を含む組み合わせであることができる。
【0141】
混合物は、所望により、官能基を有するモノ(メタ)アクリロイル化合物を更に含んでもよい。官能化合物は、一般式、
【0142】
【化23】

【0143】
を有し、式中、Rは水素、C〜Cのアルキル基又はフェニル基であり、好ましくは、水素又はメチル基であり、Rは(メタ)アクリロイル基を官能基Yに結合し、34まで、別の実施形態では18まで、更に別の実施形態では10までの炭素、所望により酸素及び窒素原子を含有することができる二価連結基である。Rは−O−R−及び−NH−R−から選択されることができ、Rは、1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基、5〜10個の炭素原子を有する5若しくは6員シクロアルキレン基又はアルキレン−オキシアルキレンであり、各アルキレンはC1〜C6炭素原子又は6〜16個の炭素原子を有する二価の芳香族基であり、Yは硬化性組成物の基材に対する結合又は接着を改善するための官能基である。一実施形態では、Yはヒドロキシル、アミノ(二級及び三級アミノを包含する)、カルボキシル、イソシアナト、アジリジニル、エポキシ、ハロゲン化アシル、アズラクトン、オキサゾリニル、アセトアセチル、加水分解可能なシラン(トリアルコキシシランなど)及び環状無水物基からなる部類から選択される。化合物は、一般に100重量部のモノ(メタ)アクリロイル化合物、ポリエチレン性不飽和成分及びフルオロアルキルシリコーン成分を基準として10重量部の量で使用される。
【0144】
ある実施形態では、コーティングされた組成物は、少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルペンダントシロキサン及び少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンのヒドロシリル化反応生成物を含む。Si−H基は、末端、ペンダント又はそれらの組み合わせであってもよい。複数個のビニル基を有するフルオロアルキルシリコーンと複数個のSi−H基を有するヒドロシリコーンは、ヒドロシリル化により反応させる。それ故に、少なくとも1つのヒドロシリル化触媒(光ヒドロシリル化触媒を含む)が組成物に含まれることができる。有用なヒドロシリル化触媒としては、熱触媒類(例えば、白金触媒類)が挙げられ、ケイ素結合水素基とケイ素結合エチレン性不飽和基間のヒドロシリル化反応を促進するのに有効である。熱ヒドロシリル化触媒に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第2,823,218号(スパイアー(Speier)ら)、同第2,970,150号(ベイリー(Bailey))、同第3,159,601号及び同第3,159,662号(アシュビー(Ashby))、同第3,220,972号(ラモロー(Lamoreaux))、同第3,516,946号(モディク(Modic))、同第3,814,730号(カーステッド(Karstedt))、同第4,029,629号(ジェラム(Jeram))、同第4,533、575号及び同第4,504,645号(メランコン(Melancon))、並びに同第5,741,552号(タカヤマ(Takayama)ら)に見ることができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
光活性化ヒドロシリル化触媒類(即ち、光ヒドロシリル化触媒類)も使用されてよい。ヒドロシリル化光触媒及びそれらの使用方法(例えば、光硬化条件)の例は、例えば、米国特許第4,510,094号及び同第4,530,879号(ドラーナク(Drahnak))、同第5,145,886号(オクスマン(Oxman)ら)、同第6,376,569号(ボードマン(Boardman)ら)、及び同第6,451,869号(バッツ(Butts))に見ることができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。ヒドロシリル化触媒、光触媒及び/又は硬化方法の組み合わせも使用されてよい。PtCpMeなどの光活性化ヒドロシリル化は、紫外線に暴露されるまでヒドロシリル化反応を開始しない。そのため、硬化性組成物は、貯蔵安定性を有する。
【0146】
触媒は、典型的にヒドロシリル化反応を促進するのに有効な量で存在する。より典型的には、触媒は、ビニル基を有するシリコーン百万部当たり1部以下の触媒を供給するのに十分な量で存在する。一方、ビニル基を有するシリコーン1,000部当たり1〜10部以上の触媒を供給するのに十分な触媒量が使用されてもよい。
【0147】
少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するフルオロアルキルシリコーンと少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーンの反応生成物は、組み合わされ、フリーラジカル触媒、一実施形態ではUV触媒を使用して硬化される。架橋の主手段は、ポリエチレン性不飽和成分のエチレン性不飽和基とフルオロアルキルシリコーンの未反応エチレン性不飽和基の間にある。
【0148】
あるいは、フルオロアルキルシリコーン、少なくとも2つのSi−H基を有するヒドロシリコーン及びポリエチレン性不飽和成分は、ヒドロシリル化触媒と組み合わされ、ヒドロシリル化をもたらし、その後フリーラジカル触媒を添加し、続いて硬化させてもよい。ヒドロシリル化は、ヒドロシリコーンとフルオロアルキルシリコーンとの間及びヒドロシリコーンとポリエチレン性不飽和成分との間で発生することになる。しかし、使用したポリエチレン性不飽和成分の量によりポリエチレン性不飽和化合物の遊離エチレン性不飽和基は、その後のフリーラジカル架橋のため残留する。
【0149】
ハードコート組成物から最終的に形成されるハードコート層には、赤外光吸収性粒子も含まれる。一実施形態においては、許容できるレベルのヘイズ成分を有する物品を形成するために赤外光吸収性粒子を選択する。一般的に、光学層中の粒子は、粒子サイズが増加するにつれて、ヘイズ成分に対して効果を有し始める。一実施形態においては、粒子が、関連する波長(即ち、可視光)の10X分の1であれば、層のヘイズ成分に対して容認できない程度まで影響することはない。一実施形態においては、ヘイズ成分値が5%未満の物品は一般的に、許容できると考えられる。
【0150】
一実施形態においては、赤外光吸収性粒子には金属酸化物粒子が含まれる。オキシドナノ粒子は通常、着色され、電磁スペクトルの異なる部分において吸収する。太陽光制御物品は、高い可視光透過を有する一方で、赤外線放射をできるだけ阻止することが望ましい可能性がある。赤外線放射とは一般的に、780nm〜2500nmの電磁放射を指す。一実施形態においては、金属酸化物ナノ粒子(例えば以下で例示するもの)の濃度は一般に、ほぼ100%の吸光度が1800nmよりも高い波長において実現されるように、別の実施形態では100%の吸光度が1500nmよりも高い波長において実現されるように選択する。そのような濃度において、少なくとも50%の可視光線透過率が望ましく、別の実施形態においては、少なくとも70%の可視光線透過率が望ましい。
【0151】
本発明のハードコート組成物中で赤外線吸収性粒子として使用可能な代表的な金属酸化物ナノ粒子としては、スズ、アンチモン、インジウム及び酸化亜鉛、並びにドープされた酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、金属酸化物ナノ粒子としては、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、インジウムドープ酸化スズ、アンチモンドープ酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、アンチモンドープ酸化スズ又はこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、金属酸化物ナノ粒子としては、酸化スズ又はドープ酸化スズが挙げられ、任意に、更に酸化アンチモン及び/又は酸化インジウムが挙げられる。ナノ粒子の寸法は、いずれかの有用な寸法、例えば1〜100、30〜100又は30〜75ナノメートルにすることができる。いくつかの実施形態では、金属酸化物ナノ粒子としては、ポリマー物質内に分散させたアンチモンスズ酸化物又はドープされたアンチモンスズ酸化物が挙げられる。ナノ粒子組成物は、例えば、韓国のアドバンスト・ナノ・プロダクツ社(Advanced Nano Products Co., LTD.)からTRB−PASTE(商標)SM6080(B)、SH7080、SL6060という商品名で市販されている。別の実施形態では、金属酸化物ナノ粒子としては、酸化亜鉛及び/又は酸化アルミニウムが挙げられ、そのような酸化物は、ドイツのGfEメタルウンドマテリアリエン社(GfE Metalle und Materialien GmbH)から入手可能である。
【0152】
一実施形態においては、本発明のハードコート組成物には、所望の量の赤外線吸収性を与える物品を提供するために十分な量の赤外光吸収性粒子が含まれる。一実施形態においては、赤外線吸収性粒子は20〜65重量%の範囲で存在する。別の実施形態においては、赤外線吸収性粒子は20〜55重量%の範囲で存在する。
【0153】
硬化を促進するために、本発明によるハードコート組成物には少なくとも1つの重合開始剤も含まれる。本発明において有用な重合開始剤には、フリーラジカル熱重合開始剤及び/又は光重合開始剤の両方が含まれる。通常、重合開始剤及び/又は光重合開始剤は、ハードコート組成物の10重量%未満で、一実施形態においては5重量%未満で、別の実施形態においては2重量%未満で存在する。フリーラジカル硬化技術は当該分野で周知であり、例えば熱硬化法並びに電子ビーム又は紫外放射線などの放射線による硬化法が挙げられる。フリーラジカル熱及び光重合技術に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第4,654,233号(グラント(Grant)ら)、同第4,855,184号(クルン(Klun)ら)及び同第6,224,949号(ライト(Wright)ら)に見出すことができる。
【0154】
有用なフリーラジカル熱開始剤には、例えば、アゾ、ペルオキシド、ペルスルフェート及びレドックス開始剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0155】
有用なフリーラジカル光開始剤としては、例えばアクリレートポリマーのUV硬化に有用であるものとして既知のものが挙げられる。そのような開始剤には、ベンゾフェノンとその誘導体;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリールベンゾイン、α−ベンジルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール(ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から「イルガキュア(IRGACURE)651」の商品名で市販されている)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルなどのベンゾインエーテル;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から「ダロキュア(DAROCUR)1173」の商品名で市販されている)及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(同様にチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から「イルガキュア184」の商品名で市販されている)などの、アセトフェノンとその誘導体;同様にチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から「イルガキュア907」の商品名で市販されている2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から「イルガキュア369」の商品名で市販されている2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン;ベンゾフェノンとその誘導体及びアントラキノンとその誘導体などの芳香族ケトン;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩;例えば、同様にチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から「CGI 784DC」の商品名で市販されているものなどのチタン錯体;ハロメチルニトロベンゼン;並びに、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社から「イルガキュア1700」、「イルガキュア1800」、「イルガキュア1850」、「イルガキュア819」、「イルガキュア2005」、「イルガキュア2010」、「イルガキュア2020」及び「ダロキュア(DAROCUR)4265」の商品名で市販されているものなどのモノ−及びビス−アシルホスフィンが挙げられるがこれらに限定されない。2種以上の光開始剤の組み合わせを使用してもよい。更に、ミシシッピー州パスカグーラ(Pascagoula)のファースト・ケミカル社(First Chemical Corporation)から市販品されている2−イソプロピルチオキサントンなどの増感剤を「イルガキュア(IRGACURE)369」などの光開始剤と組み合わせて使用してもよい。
【0156】
ハードコート層として使用するためのハードコート組成物は、所望により他の物質を含んでもよく、そのような物質は、より優れたコーティング及び改善された性能をもたらして、異なる用途に関する条件を満たすように選択されることができる。一実施形態においては、1つ以上のヒンダードアミン光安定剤(HALS)及び/又は1つ以上のホスホネート安定剤化合物を、重合性コーティング組成物に添加してもよく、これは米国特許第6,613,819号に記載され、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0157】
1つの又は混合された溶媒が存在することは、特に金属酸化物ナノ粒子が存在する場合に、ハードコート組成物にとっても望ましい可能がある。フリーラジカル架橋反応中で用いる有機溶媒は、次のような有機液体、即ち反応体及び生成物に対して不活性であり、その他の場合には反応に悪影響を与えず、しかし配合物を安定にすること及びコーティングを高品質にすることに役立たなければならない任意の有機液体とすることができる。好適な有機溶媒は極性を持っており、メタノール、エタノール、カルビトール及びイソプロパノールなどのアルコール、酢酸エチルなどのエステル、トルエンなどの芳香族系溶媒、ジエチルエーテル、THF及びt−ブチルメチルエーテルなどのエーテル、並びアセトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトンが挙げられる。他の溶媒システムを用いてもよく、例えばアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド及びジメチルスルホンである。溶媒の量は、一般に反応物質と溶媒の全重量の約20〜90重量%であることができる。
【0158】
ハードコート組成物は、層に付随する静電気を低減するために任意に組み込まれることができる他の無機粒子も含むことができる。一般的に、金属酸化物を用いてそのような特性を実現することができる。また金属酸化物は、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどの材料を用いて表面処理することもできる。これらの粒子によって、帯電防止特性及び他の望ましい特性を有する構造を実現することができる。これは、フィルムを取り扱い及び洗浄する間に、静帯電並びにその結果としてのホコリ及び他の不要な残骸の接着によって生じる汚染を防止するのに望ましいことがある。そのような実施形態の1つにおいては、そのような金属酸化物粒子を、フルオロアクリレート含有ハードコートを炭化水素系ハードコートに付与した本発明の2層の実施形態の最上部の(薄い)層に取り入れる。十分な帯電防止の特性を与えるためにコーティング中にそのような粒子が必要となり得るレベル(通常25重量%以上)では、これらの濃く着色された粒子によって、望ましくない色が構造に付与される可能性がある。しかし2層のフッ素化ハードコート構成の薄い最上部層では、フィルムの光学及び透過特性に対するそれらの効果を最小限にすることができる。この実施形態において有用な伝導性の金属酸化物ナノ粒子の例としては、日産化学(Nissan Chemical)から、商品名セルナックス(Celnax)CXZ−210IP及びCXZ−210IP−F2で販売されるアンチモン複酸化物が挙げられる。これらの粒子が本発明のコーティング中に適切なレベルで含まれていると、得られるフッ素化ハードコートは、静電気減衰時間として約0.5秒未満を示すことができる。この試験において、サンプルを2つの電気接点の間に置いて、+/−5kVまで帯電させる。次にサンプルを接地した後、電荷がその初期値の10%まで減衰するのに必要な時間を測定して、静電気減衰時間として記録する。対照的に、非伝導ナノ粒子を含むフィルム構造は、静電気減衰時間>30秒を示す。
【0159】
前述したように、本発明の物品には任意に、中間体接着層270を含むことができる。中間体接着層270は、任意の有用な材料から形成することができる。いくつかの実施形態においては、中間体接着層270には、前述したように、感圧性接着剤材料を含むことができる。いくつかの実施形態においては、中間体接着層270には、硬化可能な接着剤例えば、熱、UV又は水分硬化可能な接着剤などを含むことができる。中間体接着層270は、任意の有用な厚さ、例えば1〜100マイクロメートル、5〜50マイクロメートル、10〜50マイクロメートル又は10〜30マイクロメートル等を有することができる。
【0160】
任意的な中間体ポリマー層260は、任意の有用な材料から形成することができる。いくつかの実施形態においては、中間体ポリマー層260には、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、フルオロポリマーなどを含むことができる。一実施形態においては、中間体ポリマー層260にはポリエチレンテレフタレートを含むことができる。中間体ポリマー層260は、任意の有用な厚さ、例えば5〜500マイクロメートル、10〜100マイクロメートル、25〜75マイクロメートル又は25〜50マイクロメートル等を有することができる。
【0161】
また本発明の物品には、耐引裂性フィルム(図示せず)を含むこともできる。多くの実施形態において、耐引裂性フィルムには剛性のポリマーと延性ポリマーとの交互層が含まれる。いくつかの実施形態では、耐引裂性フィルム160には、剛性ポリエステル又はコポリエステル及び延性のセバシン酸系コポリエステルとの交互層が含まれる。多くの実施形態では、剛性ポリエステル若しくはコポリエステル層は、少なくとも1つの方向に配向している及び/又は2軸配向している。これらの耐引裂性フィルムの例は、米国特許6,040,061号、同第5,427,842号、及び同第5,604,019号に記載されており、それらの特許を本開示と対立しない範囲で本明細書に参考として組み込まれる。
【0162】
他の実施形態では、耐引裂性フィルムは、所望のレベルの耐引裂性をもたらす単一のモノリシック高分子フィルムである。そのようなフィルムは、当該技術分野では「強靭な(tough)」高分子フィルムとして知られている。強靭性は、ポリマーが破断前に吸収できるエネルギーの指標として記述することができ、強靭なポリマーの例としては、ABS(ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン))、LDPE(線状低密度ポリエチレン)、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ポリウレタンなどが挙げられる。更に、モノリシック高分子フィルムの厚さを増大させると、PET及びナイロンなどの一部のポリマーの使用を耐引裂性フィルムとして利用できるようになることがある。
【0163】
「耐引裂性」によって大まかに示されているのは、本開示による多層フィルムによって、そのフィルムの1つの方向のグレーブス面積(Graves area)が多層フィルムの剛性のポリマーのみを含む単層フィルム(単層フィルムは、多層フィルムの場合と同じ方法及び実質的に同じ厚さまで処理される)に対する同じ方向のグレーブス面積を超えることが実証されているということである。多くの実施形態では、耐引裂性太陽光制御フィルムは、少なくとも約275.8+400(x)MPa(40+0.4(x)(kpsi))%に等しい、フィルムの一方向でのグレーブス面積(Graves area)を示しており、式中、xは、フィルムの公称厚さ(マイクロメートル)である。より具体的には、グレーブス面積は、試験の間に、フィルムが受ける応力(kpsiで測定される)対フィルムが受ける歪み(グレーブス伸びによって%で測定され、以下で更に十分に規定される)のグラフプロットにおける曲線の真下の面積を数学的に積分することによって得られる。試験では、グレーブス面積試験用に専用に成形されたフィルムサンプルを、対向するつかみ具の間にクランプして一定速度で離れるように動かし、引裂応力を小さい面積に集中させて行なう。ゆえに、グレーブス面積は、フィルムの引張係数(即ち、フィルムの剛性及び寸法安定性)と、フィルムが引裂きの進行に耐える能力との、複合指標である。したがって、グレーブス面積は、フィルムを破損させるのに必要な総エネルギー、即ち、フィルムがエネルギーを吸収する能力の指標と見なすことができる。多くの実施形態では、耐引裂性太陽光制御フィルムは、望ましくは、グレーブス面積試験の間に、少なくとも20%又は少なくとも40%のグレーブス破断時伸びを示す。耐引裂性太陽光制御フィルムは、ASTM試験方法D1004(グレーブス引裂試験としても知られる)によって測定することができる。
【0164】
加えて、本開示による多くの多層又はモノリシックの耐引裂性フィルムでは、引っ張り係数(従来の引張試験で測定される)が、フィルムの少なくとも1つの方向において、少なくとも1,208MPa(175kpsi)、少なくとも1,656MPa(240kpsi)又は少なくとも3,105MPa(450kpsi)であることが実証される。
【0165】
耐引裂性多層フィルムの厚さと、耐引裂性多層フィルムを構成する個々の層の厚さとは、広い限界にわたって多様なものとすることができる。これらのフィルムは、約7〜500マイクロメートル又は約15〜185マイクロメートルの公称厚さを有することができる。剛性ポリエステル又はコポリエステルの個々の層は、少なくとも約0.5マイクロメートル、0.5超過〜75マイクロメートル又は約1〜25マイクロメートルの平均公称厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、延性のセバシン酸系コポリエステル層は、剛性ポリエステル/コポリエステル層よりも薄い。延性材料層は、約0.01マイクロメートル超過から約5マイクロメートル未満まで又は約0.2〜3マイクロメートルの平均公称厚さにわたることができる。同様に、個々の層の正確な順序は、重要ではない。層の総数は、また、かなり多様なものとすることができる。多くの実施形態では、耐引裂性多層フィルムは、少なくとも3層、5〜35層又は10〜15層を含む。
【0166】
最終的にハードコート層を形成するハードコート組成物は、様々な携帯用又は非携帯用の情報ディスプレイ物品にも利用されることができる。そのようなハードコート層は、少なくとも1つのポリエチレン性不飽和化合物、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物、少なくとも1つの重合開始剤を含む組成物の反応生成物を含むことができる。そのようなハードコート層は、光学ハードコート層とも呼ばれることができる。
【0167】
これらの物品としては、PDA類、携帯電話(PDA/携帯電話を含む)、LCDテレビ(直接照明及び端部照明)、接触感応スクリーン、腕時計、自動車用位置情報システム、全地球測位システム、測深器、計算器、電子ブック、CD及びDVDプレーヤー、投写型テレビジョンスクリーン、コンピューターモニター、ノートパソコン表示装置、計器ゲージ、計器パネルカバー、図形表示などのビジュアルサイン伝達並びにその類が挙げられる。表示面は従来のいかなる大きさ及び形状をも有することができ、また平面又は非平面であることができるが、フラットパネルディスプレイがその例である。コーティング組成物又はコーティングフィルムは、例えばカメラのレンズ、眼鏡のレンズ、双眼鏡のレンズ、鏡、再帰反射性シーティング、自動車の窓、建物の窓、電車の窓、汽船の窓、飛行機の窓、車両のヘッドランプ及び尾灯、ショーケース、道路舗装マーカー(例えば隆起した)及び舗道マーキングテープ、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、時計カバー、並びに光及び光磁気記録ディスク及びその類などの様々な他の物品にも使用することができる。
【0168】
光学ハードコート層としての使用に適したコーティングは、通常、実質的に目に見える欠陥を含まない。観察し得る、目に見える欠陥には、これらに限定されないが、色むら、斑点、まだら、塊若しくは多量の波形又は光学及びコーティングの分野の当業者に既知のその他の目に見える指標が挙げられる。したがって、実験の項に記述される「粗い」表面は、これらの特徴の1つ以上を有しており、組成物の1つ以上の成分が互いに適合性がないコーティング材料を示し得る。反対に、本発明の目的のために以下で「滑らか」として特徴付けられる実質的に滑らかなコーティングは、反応した最終状態の様々な成分がコーティングを形成するコーティング組成物を有すると思われ、そのコーティングにおいて成分は、互いに適合性があるか又は適合性があるように変性されており、更に「粗い」表面の特徴があるなら、それをほとんど有さない。
【0169】
更に、ハードコート層は、2%未満の初期ヘイズ及び/又は少なくとも90%の初期透過を示すことができる。
【0170】
ここで図4を参照すると、物品(ここではコンピューターモニター10)の斜視図は、ハウジング14内に結合した光学ディスプレイ12を有するとして示されている。光学ディスプレイ12は、光学的に向上させる特性を有する実質的に透明な材料であり、それによりユーザは文章、図形又は表示されたその他の情報を見ることができる。光学ディスプレイ12は、光学基材16に適用されたハードコート層18を含む。ハードコート層の厚さは通常、少なくとも0.5マイクロメートル、一実施形態では少なくとも1マイクロメートル、別の実施形態では少なくとも2マイクロメートルである。ハードコート層の厚さは一般的に25マイクロメートル以下である。一実施形態では、厚さは3マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲である。
【0171】
別の実施形態(図示せず)では、本明細書に記載されるハードコート層(即ち、少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物及び少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物を含む)は、最も外側のハードコート表面層の下にある追加のハードコート層を有する、最も外側のハードコート表面層として提供されてよい。この実施形態では、最も外側のハードコート表面層の下にある追加のハードコート層は、通常は25マイクロメートル以下の厚さを有することができる。一実施形態では、追加のハードコート層は、3〜5マイクロメートルの厚さを有する。
【0172】
様々な永久的な及び取り外し可能な等級の接着剤組成物が基材16の反対側(即ち、ハードコート18の反対側)上にコーティングされてよく、その結果、物品をディスプレイ表面に容易に実装することができる。好適な接着剤組成物としては、テキサス州ウェストホロウ(Westhollow)のクレイトンポリマーズ(Kraton Polymers)から商品表記「クレイトン(Kraton)G−1657」として市販のもののような(例えば、水素添加された)ブロックコポリマー、並びに他の(例えば、類似の)熱可塑性ゴムが挙げられるが、これらに限定されない。その他の代表的な接着剤としては、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系及びエポキシ系接着剤が挙げられる。一実施形態では、十分な光学的品質及び光安定性を有する接着剤が使用され、その結果、接着剤は経時的に又は風雨への露出の際に、光学ディスプレイの表示品質を低下させる黄色化を起こさない。
【0173】
一実施形態では、感圧性接着剤(PSA)が使用される。感圧性テープ審議会(The Pressure-Sensitive Tape Council)は、感圧性接着剤を以下の特性、即ち、(1)積極的(aggressive)及び永久的な粘着、(2)指の圧力以下での接着、(3)被接着物上にとどまる十分な能力、(4)十分な結合力及び(5)エネルギー源による活性化を必要としないこと、を備えた材料として定義している。PSAは、典型的には、室温以上(即ち、約20℃〜約30℃以上)であるアセンブリ温度で粘着性を示す。PSAとして十分に機能することが見出されている材料は、必須の粘弾性特性を示すように設計及び処方されており、その結果として、アセンブリ温度で粘着性と剥離接着性と剪断保持力の望ましいバランスをもたらすポリマーである。PSAを調製する際に最も一般的に用いられているポリマーは、天然ゴム系、合成ゴム系(例えば、スチレン/ブタジエンコポリマー(SBR)及びスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー)、シリコーンエラストマー系、ポリα−オレフィン−及び種々の(メタ)アクリレート系(例えば、アクリレート及びメタクリレート)系ポリマーである。これらのうち、(メタ)アクリレート系ポリマーであるPSAは、その光学的透明性、特性の長期間にわたる恒久不変性(経時的安定性)及び汎用な接着程度(これらはPSAの利点のほんの一部である)から、本発明におけるPSAの好ましい部類として発展してきている。
【0174】
トランスファーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティングなどの様々な既知のコーティング技術を使用して接着剤を適用することができる。代表的な接着剤が、米国特許出願公開第2003/0012936号に記載されている。接着剤のいくつかが、ミネソタ州セントポール(St. Paul)の3M社(3M Company)から商品表記8141、8142及び8161として市販されている。
【0175】
基材16は、多種多様な材料のいずれかを含んでよく、それには、様々な光学デバイスで一般に使用される、ガラスなどの非高分子材料又はポリエチレンテレフタレート(PET)、ビスフェノールAポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)及び2軸配向ポリプロピレンなどの高分子材料が挙げられるが、これらに限定されない。また、基材は、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、エポキシ等を含む。本発明のハードコートは、光学基材上にも使用されることができ、本明細書で使用されるとき、光学基材には、透明基材、透過性基材、ミクロ構造基材及び多層フィルム基材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
典型的に、基材は部分的に、意図された使用に望ましい光学特性及び機械特性に基づいて選択される。例えば、基材は、様々な光学特性を有して選択されることができるが、それには、光透過率、光反射率及び不透明性が挙げられるが、これらに限定されない。機械特性としては典型的に、可撓性、寸法安定性及び衝撃耐性が挙げられる。基材の厚さも典型的に、意図された用途次第である。ほとんどの用途に対して、0.5mm未満の基材厚さが利用され得るが、その他の実施形態では、基材厚さは、0.02〜0.2mmである。一実施形態では、自立型高分子フィルムが基材として利用される。押出及び押出フィルムの任意の1軸又は2軸配向によるなどの従来のフィルム製造技術を使用して、ポリマー材料をフィルムへと形成することができる。基材とハードコート層との間での接着を改善するために、例えば化学処置、コロナ処置、例えば空気又は窒素コロナ、プラスマ、火炎又は化学放射線によって基材を処理することができる。所望であれば、層間接着を増大させるため、任意の連結層又はプライマーを基材及び/又はハードコート層に適用することができる。基材は、その上にすでにコーティングされた様々な種類の層を有する、予めコーティングされた物品であることもできる。
【0177】
ディスプレイパネルの場合には、基材16は光透過性であるが、それは、ディスプレイを見ることができるように光が基材16を透過することが可能であることを意味している。透明(例えば光沢)及びマットの両方の光透過性基材16が、ディスプレイパネル10において使用されることができる。マットな基材16は、典型的には、典型的な光沢フィルムよりも透過率が低く、ヘイズ値が高い。マットなフィルムは、通常、マイクロメートルサイズの分散した無機充填剤、例えば光を拡散するシリカの存在のために、この鏡面反射特性を示す。代表的なマットなフィルムは、ジョージア州シーダータウン(Cedartown)の米国キモトテック(U.S.A. Kimoto Tech)から「N4D2A」という商品名で市販されている。透明基材、ハードコートコーティングされた透明基材、並びに透明基材からなるディスプレイ物品の場合、ヘイズ値は5%未満であることができ、別の実施形態では2%未満であることができ、更に別の実施形態では1%未満であることができる。あるいは又はそれに加えて、透過率は90%を超える場合がある。
【0178】
種々の光透過性光学フィルムが既知であり、多層光学フィルム、再帰反射性シーティング及び輝度増強フィルムなどのミクロ構造化フィルム、(例えば、反射性又は吸収性)偏光フィルム、拡散フィルム、並びに米国特許第7,099,083号に記載されているような(例えば、2軸)位相差フィルム及び補償素子フィルムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
米国特許第6,991,695号に記載されているように、多層光学フィルムは、異なる屈折率のミクロ層の配列により、少なくとも部分的に所望の透過及び/又は反射特性をもたらす。ミクロ層は、異なる屈折率特性を有し、そのため一部の光は、隣接したミクロ層間の境界面で反射される。フィルム体に所望の反射又は透過特性を付与するために、複数の境界面で反射する光が、強め合う又は弱め合う干渉を受けるように、ミクロ層は十分に薄い。紫外、可視又は近赤外波長で光を反射するように設計された光学フィルムに関して、各ミクロ層は一般的に約1マイクロメートル未満の光学的厚さ(即ち、屈折率を乗じた物理的厚さ)を有する。しかしながら、フィルム外面の表面薄層又はミクロ層のパケットを分離させるフィルム内に配置されている保護境界層などのより厚い層を含めることもできる。ラミネート中で多層光学フィルムの2枚以上のシートに結合するように、多層光学フィルム体に1つ以上の厚い接着剤層を含めることもできる。
【0180】
適切な多層光学フィルム及び関連構造の更なる詳細については、米国特許第5,882,774号(ジョンザ(Jonza)ら)及びPCT国際公開特許WO 95/17303号(オウダーカーク(Ouderkirk)ら)及び同第WO 99/39224号(オウダーカーク(Ouderkirk)ら)に見出すことがが可能である。ポリマー多層光学フィルム及びフィルム体には、それらの光学的特性、機械的特性及び/又は化学的特性に関して選択した追加的な層及びコーティングを含めることができる。米国特許第6,368,699号(ギルバート(Gilbert)ら)を参照されたい。ポリマーフィルム及びフィルム体には、無機層、例えば金属又は金属酸化物コーティング又は層を含めることもできる。
【0181】
ハードコート組成物は、光学デバイスの内部構成部品上にハードコート層を形成するのにも使用されることができる。そのようなハードコート層は、光学デバイスの組立中の内部構成部品への損傷を最小化するのに有用であり得る。そのようなハードコート層の使用により、組立プロセス前及び組立プロセス中の欠陥部の発生を減少させることができる。内部構成部品におけるハードコートの使用に関する更なる実施形態及び考察は、米国特許出願第11/267790号、名称「ハードコートを含むオプティカルデバイスの内部構成部品(INTERNAL COMPONENTS OF OPTICAL DEVICE COMPRISING HARDCOAT)」、(2005年11月3日出願)に見出すことができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0182】
ハードコートは、基材上に配置される単一層として提供されてよい。この構造では、ハードコート組成物における全フッ素化化合物の重量%は、1〜40重量%の範囲であることができる。別の実施形態では、ハードコート組成物における全フッ素化化合物の重量%は、1〜20重量%の範囲であることができる。更なる実施形態では、ハードコート組成物における全フッ素化化合物の重量%は、1〜10重量%の範囲であることができる。
【0183】
ハードコート層は、上述のように、少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物を含む混合物の反応生成物から形成される。そのような少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物は、従来のハードコート材料とも呼ばれることができる。そのような材料の例としては、光学技術において当業者に周知の炭化水素系材料が挙げられるが、これに限定されない。一実施形態では、炭化水素系材料は、アクリレート系のハードコート材料である。本発明に使用するための1つの代表的なハードコート材料は、PETA(ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート)に基づいたものである。ペンタエリスリトールトリアクリレート(「PET3A」)の1つの市販の形態はSR444Cであり、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(「PET4A」)の1つの市販の形態はSR295であり、それぞれサートマー社(Sartomer Company)(ペンシルバニア州エクストン(Exton))から入手可能である。しかしながら、他の有機ポリエチレン性不飽和化合物、例えば以上記で例示されたものなども使用されることができる。
【0184】
とりわけ、(メタ)アクリレート架橋剤は通常、本明細書に記載されるフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物などのフッ素化化合物より安価であるため、少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物の濃度を最大にするのが有利である可能性がある。したがって、本明細書で記載される組成物は、通常、少なくとも20重量%の有機ポリエチレン性不飽和化合物を含む。一実施形態では、組成物は、少なくとも50重量%の有機ポリエチレン性不飽和化合物を含んでよく、例えば少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%及び少なくとも95重量%の有機ポリエチレン性不飽和化合物であってよい。
【0185】
以上記で考察及び例示されるように、硬化を促進するために、組成物は少なくとも1つの重合開始剤を更に含んでもよい。
【0186】
所望であれば、組成物は、有機溶媒又は混合された溶媒を更に含んでもよい。フリーラジカル架橋反応に使用される有機溶媒は、反応物質及び生産物に対して不活性であり、別の方法で反応に悪影響を及ぼさない任意の有機液体であることができる。好適な溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びカルビトールなどのアルコール、エチルアセテートなどのエステル、トルエンなどの芳香族溶媒、CHCl及びCOCHなどの塩素化又はフッ素化された溶媒、ジエチルエーテル、THF及びt−ブチルメチルエーテルなどのエーテル、並びにアセトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトンが挙げられる。他の溶媒系も使用できる。溶媒の量は、一般に反応物質と溶媒の全重量の約20〜90重量%であることができる。なお、溶液重合に加え、架橋は、懸濁、乳化及びバルク重合技術などの他の周知の技術により実行することができる。
【0187】
その反応生成物がハードコート層となる組成物は、光透過性(transmissible)基材などの基材層に適用され、光硬化されて、清浄化が容易で、シミ及びインクをはじくハードコート層を形成することができる。
【0188】
表面層として使用するための組成物又はその下にあるハードコート層は、機械的強度又はその他の望ましい特性を、得られるコーティングに加えることができる無機粒子を含むこともできる。太陽光制御物品に関して以上で考察された赤外線吸収性ナノ粒子は、そのような無機粒子の一例である。一実施形態では、無機粒子は、表面変性された粒子であることができる。表面変性された粒子は、概して、米国特許第6,376,590号及び米国特許出願公開第2006/0148950号に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0189】
様々な無機酸化物粒子を、ハードコートに使用することができる。その粒子は、典型的には、その形状が実質的に球状であり、そのサイズが比較的均一である。その粒子は、実質的に単分散の粒径分布を有していてもよいし、あるいは、実質的に単分散分布のものを2種以上ブレンドすることにより得られる多分散の分布を有していてもよい。その無機酸化物粒子は、典型的には非凝集(実質的に分散)であるが、それは、凝集が起きると、無機酸化物粒子が沈降したり、ハードコートのゲル化が起きたりする可能性があるからである。無機酸化物粒子は、典型的に0.001〜約0.2マイクロメートル、0.05マイクロメートル未満及び0.03マイクロメートル未満の平均粒径を有する大きさのコロイドである。これらの範囲の大きさであると、結合剤樹脂の中に無機酸化物粒子を分散させるのが容易となり得、所望の表面特性及び光学的透明度を有するセラマーが得られる。無機酸化物粒子の平均粒子サイズは、透過型電子顕微鏡を用いて、所定の直径の無機酸化物粒子の数を数えることによって測定することができる。
【0190】
無機酸化物粒子は、例えばシリカのような単一の酸化物を含んでもよく、あるいはシリカ及び酸化アルミニウムのような酸化物の組み合わせ又は別のタイプの酸化物がその上に付着する1つのタイプの酸化物のコア(又は金属酸化物以外の材料のコア)を含むことができる。シリカが、一般的な無機粒子である。
【0191】
無機オキシド粒子は、液状媒体の中に無機酸化物粒子のコロイド状分散物を含むゾルの形態で供給されることも多い。ゾルは、例えば、開示内容が本明細書に参考として組み込まれる、米国特許第5,648,407号(ゲッツ(Goetz)ら)、同第5,677,050号(ビルカディ(Bilkadi)ら)及び同第6,299,799号(クレイグ(Craig)ら)に記載されているように、様々な技術を用い及びヒドロゾル(この場合、水が液体媒質として機能する)、オルガノゾル(この場合、有機液体がそのように機能する)及び混合ゾル(この場合、液体媒質は水と有機液体の両方を含有する)を包含する様々な形態で調製することができる。(例えば、非晶質シリカの)水性ゾルを使用することも可能である。ゾルには一般に、ゾルの全重量を基準にして、少なくとも2重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも25重量%、多くの場合少なくとも35重量%のコロイド状無機酸化物粒子を含む。コロイド状の無機酸化物粒子の量は典型的には50重量%以下である(例えば、45重量%)。無機粒子の表面は、米国特許第5,677,050号に記載されるように「アクリレート官能化」することができる。ゾルは、結合剤のpHに適合させることもでき、また対イオン又は水溶性化合物(例えば、アルミン酸ナトリウム)を含有することができ、これらは全てカン(Kang)らによる米国特許第6,238,798号に記載されている。
【0192】
そのような粒子の一例は、A−174(ナトロケム社(Natrochem, Inc.)から入手可能)などのメタクリルシラン結合剤、N,Nジメチルアクリルアミドなどのその他の分散剤助剤及び様々なその他の添加剤(安定剤、反応開始剤など)と反応させたコロイドシリカである。
【0193】
粒子状つや消し剤も、アンチグレア特性を表面層に付与するために、重合性組成物の中に組み込むことができる。粒子状つや消し剤はまた、関連するハードコート層への干渉による反射率の減少及び不均一な着色を防ぐことができる。粒子状つや消し剤は、通常透明であり、約90%を超える透過率値を示す。あるいは又はそれに加えて、ヘイズ値は、5%未満であることができ、一実施形態では2%未満であり、別の実施形態では1%未満である。
【0194】
つや消し剤をハードコーティング層に組み込むが、異なるハードコーティング組成物を有する代表的なシステムは、例えば、米国特許第7,101,618号に記載されており、本明細書に参照により組み込まれる。更に、代表的なつや消しフィルムは、米国キモトテック(U.S.A. Kimoto Tech)(ジョージア州シーダータウン(Cedartown))から「N4D2A」という商品名で市販されている。
【0195】
加えられる粒子状つや消し剤の量は、ハードコート層の厚さによって、0.5〜10重量%であることができる。一実施形態では、約2重量%である。アンチグレア層としても機能するハードコート層は、0.5〜10マイクロメートル、別の実施形態では0.8〜7マイクロメートルの厚さを有することができるが、これは一般的に光沢ハードコーティングと同じ厚さの範囲である。
【0196】
粒子状つや消し剤の平均粒子直径は、層の厚さに部分的に依存する、予め画定されている最小値及び最大値を有する。しかしながら、概して、1.0マイクロメートルよりも小さな平均粒子直径は包含の正当な理由になるのに十分な程度のアンチグレアを提供しない一方で、10.0マイクロメートルを超える平均粒子直径は透過画像の鮮やかさを劣化させる。したがって、平均粒子サイズはコールター(Coulter)法により測定される数平均値に関して、通常1.0〜10.0マイクロメートルであり、別の実施形態では1.7〜3.5マイクロメートルである。
【0197】
粒子状つや消し剤として無機粒子又は樹脂粒子が使用され、例えば、非晶質シリカ粒子、TiO粒子、Al粒子、架橋ポリ(メチルメタクリレート)、架橋ポリスチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子及び架橋ポリシロキサン粒子からなるものなどの架橋アクリルポリマー粒子が挙げられる。製造プロセス中の、アンチグレア層及び/又はハードコート層のためのコーティング混合物中の粒子の分散安定性及び沈殿安定性を考慮すると、樹脂粒子は結合剤材料に対して高い親和性及び小さな比重を有するため、樹脂粒子を使用することができ、一実施形態では架橋されたポリスチレン粒子を使用することができる。
【0198】
粒子状つや消し剤の形状に関しては、球形及び非晶質粒子を使用することができる。しかしながら、一貫したアンチグレア特性を得るためには、球形粒子が望ましい。2種以上の粒子材料が、組み合わせて使用されてもよい。
【0199】
ディップコーティング、ロール式フォワード・リバースコーティング、巻線ロッドコーティング及びダイコーティングなどの様々な技術を使って、ハードコート組成物を基材16に適用してハードコート層18を形成することができる。ダイコーティング機としては、ナイフコーティング機、スロットコーティング機、スライドコーティング機、流体ベアリングコーティング機、スライドカーテンコーティング機、ドロップダイカーテンコーティング機及び押出コーティング機が挙げられる。エドワード・コーエン(Edward Cohen)及びエドガー・グトフ(Edgar Gutoff)の「現代のコーティング及び乾燥技術(Modern Coating and Drying Technology)」(VCHパブリッシャーズ(VCH Publishers)、ニューヨーク、1992年、ISBN 3−527−28246−7)、並びに、グトフ(Gutoff)及びコーエン(Cohen)の「コーティング及び乾燥欠陥:操作上の問題のトラブルシューティング(Coating and Drying Defects:Troubleshooting Operating Problems)」(ワイリーインターサイエンス(Wiley Interscience)、ニューヨーク、ISBN 0−471−59810−0)などの文献に、多くのタイプのダイコーティング機が記載されている。
【0200】
ダイコーティング機とは一般的に、第1のダイブロック及び第2のダイブロックを利用してマニホールドキャビティ及びダイスロットを形成する装置を指す。コーティング流体は圧力下でマニホールドキャビティを通過してコーティングスロットから流出して、コーティング材料のリボンを形成する。コーティングは単層として又は2つ以上の積層として適用することができる。通常、基材は連続ウェブの形状であるのが好都合だが、基材はまた不連続シートの連続であってもよい。
【0201】
様々な基材を利用することができる。好適な基材材料としては、繊維性基材、例えば織布、不織布及び編地、織物、カーペット、革及び紙、並びに硬質基材、例えばビニル、木、ガラス、セラミック、石工、コンクリート、天然石、人工石、グラウト、金属シート及びホイル、木、塗料、プラスチック及び熱可塑性樹脂のフィルム、例えばポリエステル、ポリアミド(ナイロン)、ポリオレフィン、ポリカーボネート及びポリ塩化ビニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に関心のある基材は、光学的に透明な基材である。
【0202】
基材とハードコート層との間の接着は、基材が部分的に、コーティング組成物内の反応性基と共有結合又は水素結合を形成できる反応性基の存在を基に選択されると、改善されることができる。そのような反応性基の例には、これらに限定されないが、塩化物、臭化物、ヨウ化物、アルケン(C=C)、アルキン、−OH、−CO、CONH基などが挙げられる。基材とハードコート層との間の接着を更に改善するために、例えば化学処理等によって反応性基を基材表面に組み込むことによって、基材を処理することができる。所望であれば、層間接着を増大させるため、任意の連結層又はプライマーを基材及び/又はハードコート層に適用することができる。
【0203】
実験
材料
特に注記がない限り、「HFPO−」とは、実施例で使用されるとき、末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を指す。HFPO−COCHは、米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)に報告される方法により、分留による浄化で調製されたF(CF(CF)CFO)xCF(CF)C(O)OCHであり、この特許の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0204】
米国特許出願公開第20060148350号のパラグラフ[0058]に記載の公開された特許に従って、HFPO−C(O)OCH(MW〜1313)及びNHCHCHOHから調製された、HFPO−OH,HFPO−C(O)NHCHCHOH。平均分子重量は約1344である。
【0205】
HFPO−MA,HFPO−C(O)N(H)CHCHOC(O)C(CH)=CHは、(HFPO)−メタクリレートの合成に関して米国特許出願公開第20040077775号に記載される方法と似た方法により、HFPO−OHから作られる。
【0206】
HFPO−C(O)NHCHCH=CH(HFPO−AA)は、米国特許公開第20060148350号のパラグラフ[0058]に従って、NHCHCHOHの代わりにHFPO−C(O)OCH及びNHCHCH=CHから調製される。平均分子重量は約1045である。
【0207】
ポリ(メチルフェニルシロキサン−co−メチルヒドロシロキサン(methylhyhydrosiloxane)、−(SiMePh−O)x−(SiMeH−O)y−(ペンシルベニア州ブリストル(Bristol)のハルス・ペトラルク・システムズ(Huls Petrarch Systems)から入手可能な、45〜50%のメチルヒドロシロキサンを含有するPS129.5)。
【0208】
50〜55%のジメチルシロキサンを含有するトリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン−co−メチルヒドロシロキサン)、MeSiO−(SiMe−O)x−(SiMeH−O)y−SiMe;アルドリッチ(Aldrich)から入手可能。
【0209】
ポリメチルヒドロシロキサン、−(SiMeH−O)y−(ペンシルベニア州ブリストル(Bristol)のハルス・ペトラルク・システムズ(Huls Petrarch Systems)から入手可能な、PS−120)。
【0210】
アルドリッチ(Aldrich)から入手可能なビニルトリメトキシシラン、CH=CHSi(OMe)
【0211】
TMPTA、トリメチロールプロパントリアクリレート(ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)から入手可能な、SR351)。
【0212】
D−1173、(ダロカー(Darocur)(商標)1173;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、反応開始剤、ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手可能)。
【0213】
Pt−1:触媒、ビニル末端シリコーン中、3〜3.5%プラチナ−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(ペンシルベニア州モリスビル(Morrisville)のゲレスト社(Gelest, Inc.)から入手可能)、ヘプタンで0.15%溶液に希釈。
【0214】
Pt−2:アルドリッチ(Aldrich)から入手可能な水素ヘキサクロロプラチネート(IV)水和物、使用するためにジグリムで〜7.5%溶液に希釈。
【0215】
tBME:t−ブチルメチルエーテル、ニュージャージー州ギブズタウン(Gibbstown)のEMDケミカルズ社(EMD Chemicals Inc.)から入手可能。
【0216】
MEK:メチルエチルケトン、ニュージャージー州ギブズタウン(Gibbstown)のEMインダストリーズ社(EM Industries, Inc.)から入手可能。
【0217】
ATO−1は、62.5%ATO(コネチカット州ファーミントン(Farmington)のインフラマット社(Inframat Corporation))、15%HDDA(1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、SR238、ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー(Sartomer))、15%PETA(ペンタエリスリトールトリアクリレート、PETA−K、ジョージア州スマーナ(Smyrna)のUCB−ラドキュア(Radcure))及び7.5%ポリマー分散剤(ソルプラス(Solplus)D510、オハイオ州クリーブランド(Cleveland)のノベオン社(Noveon Inc.))を含むアンチモンスズ酸化物(ATO)コーティング配合物を指す。分散を、モリネックス(MoliNEx)(商標)偏心ディスク及び1Lのステンレス鋼チャンバを有するネッツ(Netzsch)LME−1ディスクミル(ネッツ社(Netzsch Incorporated)、ペンシルベニア州エクストン(Exton))を用いて8時間、粉砕した。最終的な粒径は、〜60nm(PDI=0.21)であり、これはゼータサイザーナノ(Zetasizer Nano)ZS(マルバーン・インスツルメンツ社(Malvern Instruments Ltd)、英国ウースターシャー(Worcestershire))によって測定した。次にATO−1を、1−メトキシ−2−プロパノール中で配合物の45%溶液を作ることによって作製した。配合するために、溶液を希釈して、メチルエチルケトン又はt−ブチルメチルエーテルで30%溶液にし、2%のD−1173光開始剤が添加された。
【0218】
ATO−2は、80gTRBペースト6070(アドバンスト・ナノ・プロダクツ(Advanced Nano Products)(韓国(S.Korea))から購入)を含むATOコーティング配合物、並びに24.58%HDDA、1.59%チヌビン123(チバ(Ciba))、1.11%イルガキュア819(チバ(Ciba))、1.11%イルガキュア184(チバ(Ciba))及び71.36%MEKを含む20gATOプレミックス配合物を指す。
【0219】
FA−1、C−、HMeSi−[O−SiHMe]y−[O−SiMeC]x−OSiMeHを有するフッ素化ヒドロシロキサンは、ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウ・コーニング(Dow Corning)からQ2−7560として入手可能であり、ヘプタンで10%に希釈される。
【0220】
FA−2、C−、CH=CHSiMe−[O−SiMe]y−[O−SiMeC]x−OSiMeCH=CHを有するフッ素化ビニルシロキサンは、ミシガン州ミッドランドのダウ・コーニング(Dow Corning)からQ2−7785として入手可能であり、ヘプタン中10%の溶液である。
【0221】
FA−3、FA−1及びFA−2を1/9の比で有するフッ素化ヒドロシロキサン、ヘプタンで10%溶液に希釈される。
【0222】
FA−4、FA−1及びFA−2を4/6の比で有するフッ素化ヒドロシロキサン、ヘプタンで10%溶液に希釈される。
【0223】
FA−5、
【0224】
【化24】

【0225】
マルチアクリレート基を有するフッ素化シロキサンが、17/83の重量比のQ2−7560と超過TMPTAとのヒドロシリル化から作られた(MEK中20%溶液)。50mLフラスコに、0.52gのQ2−7560、2.506gのTMPTA、10.021gのt−BME及び2.015gのヘプタンが充填された。溶液のFTIR分析から、2165.31cm−1での信号がQ2−7560からのSi−Hに割り当てられ、1635.42/1621.92cm−1がTMPTAからのCH=CHCO−に割り当てられた。Pt−2を3滴加え、溶液を66℃で窒素下において1時間反応させた。FTIR分析から、Si−Hからの2165.31cm−1での信号が消え、1634.95cm−1及び1621.24cm−1での信号が減少して、ヒドロシリル化を示した。20%溶液を添加剤として使用した。
【0226】
FA−6、マルチアクリレート基を有するフッ素化シロキサンが、1/2の重量のQ2−7560と超過TMPTAとのヒドロシリル化から作られた(MEK中20%溶液)。
【0227】
50mLフラスコに、1.013gのQ2−7560、2.013gのTMPTA、8.975gのt−BME及び2.883gのヘプタンが充填された。溶液のFTIR分析から、2165.31cm−1での信号がQ2−7560からのSi−Hに割り当てられ、1635.42/1621.92cm−1がTMPTAからのCH=CHCO−に割り当てられた。Pt−2を3滴加え、溶液を66℃で窒素下において1時間反応させた。FTIR分析から、Si−Hからの2165.31cm−1での信号が消え、1635.02cm−1及び1620.46cm−1での信号が減少して、ヒドロシリル化を示した。20%溶液を添加剤として使用した。
【0228】
FA−7、
【0229】
【化25】

【0230】
HFPO末端部及びマルチアクリレート基を有するフッ素化シロキサンが、1.5/1/2.5の重量比のポリ(メチルヒドロシロキサン/メチル−フェニルシロキサン)と(HFPO)xC(O)NHCHCH=CH及び超過TMPTAとのヒドロシリル化から作られた(23.8%溶液)。50mLフラスコに、1.5289gのポリ(メチルフェニルシロキサン−co−メチルヒドロシロキサン(methylhyhydrosiloxane)、1.006gのHFPO−C(O)NHCHCH=CH、0.107gのPt−2(ジグリム中7.5%)及び16.027gのt−BMEが充填された。混合物を65℃で窒素下において1時間反応させた。FTIR分析から、Si−Hに割り当てられた2159.34cm−1での信号が減少し、CH=CHCH−信号が消えた。次に、2.51gのTMPTAを室温で添加し、65℃でもう1時間反応させた。FTIR分析から、Si−Hからの2159.34cm−1での信号が、TMPTAからのアクリレート信号と共に消えた。添加剤としての評価のために、23.8%溶液をMEKで希釈して20%溶液にした。
【0231】
FA−8、
【0232】
【化26】

【0233】
フッ素化シロキサンを含有するトリメトキシシラン、Q2−7560/CH=CHSi(OMe)を、以下のように作製した。電磁攪拌棒の付いたフラスコ内において、20gのQ2−7560を11.70gのCH=CHSi(OMe)(MW=148.24、78.9meq CH=CH−)と窒素下で混合した。FTIR分析から、2167.09cm−1での吸収はSi−Hに、1599.79cm−1はCH=CH−に割り当てられた。溶液に0.15%の白金触媒(Pt−1)を5滴加え、70℃で窒素下において磁気攪拌により8時間反応させた。FTIR分析から、2160.31cm−1でのSi−Hの信号は、大幅に減少し、1599.79cm−1でのCH=CH−の信号は消えて、CH=CHSi(OMe)のQ2−7560へのヒドロシリル化(hydrisilsilation)添加の完成を示した。評価のために、3gのサンプルを7gのt−BuOMeで希釈して10gの透明な溶液(30%)を得た。
【0234】
FA−9、
【0235】
【化27】

【0236】
HFPOを有するフッ素化ヒドロシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン/HFPO−MAを、以下のように作製した。50mLのボトルに、1.0gのポリメチルヒドロシロキサン(−(SiMeH−O)y−)、1.0gのHFPO−MAr、3.0gのt−BuOMeが窒素下で充填された。FTIR分析から、2163.76cm−1でのSi−Hの信号及び1641.05cm−1でのCH=CMeCO−が確認された。Pt−2を3滴加え、混合物を70℃で2時間反応させた。FTIRから、1641.05cm−1での信号は消え、2167.07cm−1でのSi−Hの信号は減少して、ヒドロシリル化を示した。評価のために〜30%溶液を作るために、1.67のt−BuOMeを添加した。
【0237】
FA−10、HFPOを有するフッ素化ヒドロシロキサン、ポリメチルヒドロシロキサン/HFPO−MA:50mLのボトルに、1.0gのポリメチルヒドロシロキサン(−(SiMeH−O)y−)、2.0gのHFPO−MAr、6.0gのt−BuOMeが窒素下で充填された。Pt−2触媒を3滴加えた後、ボトルは密封され、混合物を70℃で2時間反応させた。FTIRから、1640.27cm−1でのCH=CHCO−の信号は消え、2163.67cm−1での信号は減少して、ヒドロシリル化の反応を示した。評価のために、1.0gのt−BuOMeを添加して、〜30%溶液を作った。
【0238】
FA−11、HFPOを有するフッ素化ヒドロシロキサン、ポリ(ジメチル−メチルヒドロシロキサン)/HFPO−MA:50mLのボトルに、1.0gのトリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン−co−メチルヒドロシロキサン)、1.0gのHFPO−MAr、3.0gのt−BuOMeが窒素下で充填された。Pt−2触媒を3滴加えた後、ボトルは密封され、混合物を70℃で2時間反応させた。FTIRから、1640.69cm−1でのCH=CHCO−の信号は消え、2160.28cm−1でのSi−Hの信号は減少して、ヒドロシリル化の反応を示した。評価のために、1.67gのt−BuOMeを添加して、〜30%溶液を作った。
【0239】
FA−12、HFPOを有するフッ素化ヒドロシロキサン、ポリ(ジメチル−メチルヒドロシロキサン)/HFPO−MA:50mLのボトルに、1.0gのトリメチルシリル末端ポリ(ジメチルシロキサン−co−メチルヒドロシロキサン)、2.0gのHFPO−MAr、6.0gのt−BuOMeが窒素下で充填された。Pt−2触媒を3滴加えた後、ボトルは密封され、混合物を70℃で2時間反応させた。FTIRから、1639.30cm−1でのCH=CHCO−の信号は消え、2159.95cm−1でのSi−Hの信号は減少して、ヒドロシリル化の反応を示した。評価のために、1.0gのt−BuOMeを添加して、〜30%溶液を作った。
【0240】
接触角の決定方法
水及びヘキサデカンの接触角の測定にかける前に、IPAの中でコーティングを手で1分間かけて揺することにより洗浄した。マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のミリポア社(Millipore Corporation)から得られた濾過システムを通して濾過した、受け取ったままの状態での試薬グレードのヘキサデカン「油」(アルドリッチ(Aldrich))及び脱イオン水を用い、マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のASTプロダクツ(AST Products)から商品番号VCA−2500XEとして入手可能なビデオ接触角分析計により、測定を行った。報告された値は、滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均である。液滴体積は静止測定に関して5μLであり、前進及び後退に関して1〜3μLであった。ヘキサデカンの場合には、前進接触角及び後退接触角のみを報告しているが、その理由は、静止接触角と前進接触角がほぼ同じであることが見出されたからである。
【0241】
マーカー忌避性を測定する方法:
この試験のため、シャーピー・パーマネント・マーカー(Sharpie Permanent Marker)、ビス−ア−ビス・パーマネント・オーバーヘッド・プロジェクト・ペン(Vis-a-vis Permanent Overhead Project Pen)又はキングサイズ・パーマネント・マーカー(King Size Permanent Marker)(全てが米国のサンフォード(Sanford)から市販)の1つをマーカーとして使用した。先ず、選択したマーカーのチップをかみそりの刃でカットし幅の広い平坦なマーキングチップを用意した。次に、マーカーとガイドとして直線用定規の縁部を使用し、PET基材に適用された試料コーティング上に約1秒当たり15cmの速度で直線を引いた。コーティング上に引かれた直線の外観を観察し、マーカーに対する試料コーティングの撥性の程度を反映するために数字を割り当てた。1の割り当て番号は、優れた忌避性を示し、一方5の割り当て番号は、劣った忌避性を示す。使用したマーカーの種類にもよるが、結果をシャーピー試験(Sharpie test)、ビス−ア−ビス試験(Vis-a-vis test)又はキングマーカー試験(King marker test)として報告する。溶媒抵抗を決定する方法。この試験のため、メチルエチルケトン(MEK)又はその他の有機溶媒の1滴(直径約1.25cm)を、PET基材上に塗布された試料コーティング上に置き、室温にて自然乾燥させた。その後、試料コーティングは、外観を目視により観察し、劣った溶媒忌避性を示すヘイズ(H)又は良好な溶媒忌避性を示す透明(C)としてのどちらか一方で評価した。更に、上記「マーカー試験方法」を使用し、シャーピー試験(Sharpie test)をMEK又は有機溶媒忌避性試験の滴が行われたスポット上で繰り返し、1〜5の範囲のマーカー忌避性番号を割り当てた。
【0242】
スチールウール試験
硬化させたフィルムの摩耗抵抗性は、スタイラス(ゴムガスケットの手段により)に固定したチーズクロス又はスチールウールをフィルムの表面に対して振動させることが可能な機械装置を使用することにより、コーティング方向に対してクロスウェブに試験した。スタイラスを、10cmの掃引幅で、3.5拭取り/秒の速度で振動させたが、ここで「拭取り(wipe)」は、10cmを1回移動させることと定義する。スタイラスは、平坦で円筒状の幾何学的形状を有し、直径1.25インチ(3.2cm)であった。その装置にはプラットホームが備え付けられていて、その上におもりを載せて、フィルムの表面に対して直角にしたスタイラスにより加わる力を増やした。チーズクロスは、ペンシルバニア州ハッツフィールド(Hatsfield)、EMSアクイジション社(EMS Acquisition Corp.)の事業部の一部門である、EMSパッケージング、サマーズオプティカル(Summers Optical,EMS Packaging)から「ミルスペック(MIL SPEC)CCC−c−440生成物(PRODUCT)番号S12905」の商品名で入手した。チーズクロスは折りたたんで12層とした。スチールウールは、ワシントン州ベリンハム(Bellingham)のホーマックスプロダクツ(Homax Products)の部門、ローデス−アメリカン(Rhodes-American)から商品表記「#0000スーパーファイン(Super-Fine)」として得られ、標準として使用した。それぞれの実施例では1個の試料について試験したが、スタイラスに加えた重量(グラム)及び試験の際の拭取り数を報告する。目に見える引っかきがなかったことは、表において「NS」と報告されている。
【0243】
添加剤としてのフッ素化シロキサンを有するUV硬化性ATOハードコート配合物
異なるフッ素化シロキサン添加剤を有するATOハードコートの配合物(FA)は、観察されたコーティングの質と共に表Iに挙げられるが、「不濡れ」は、許容できるコーティングが得られなかったことを示した。
【0244】
変性されたATO−1ナノ粒子ハードコートが1%のD−1173光開始剤と共に加えられ(MEK中10%溶液)、次いでMEK又はt−BMEで20〜30%溶液に希釈された。Si−H官能基を有するフッ素系シロキサン添加剤溶液がATOハードコートと配合されるとき、ヒドロシリル化触媒、プラチナ−ジビニルテトラメチルジシロキサン(platinum-divinyltetamethydisiloxane)錯体(Pt−1)、が0.015重量%で加えられた。異なる重量比での詳しい配合物が表Iに集約されるが、これらはPETフィルム上に#10の線材でコーティングされる。コーティングされたフィルムは110℃のオーブン内で〜5分間乾燥されてから、フュージョン・システムズ(Fusion Systems)(メリーランド州ガイザーズバーグ(Gaithersberg))500ワットH−バルブを0.10m/s(毎分20フィート)にて窒素下で使用してUV硬化される。マーカー忌避性(1が最良である、1から5の評価)、接触角データ及び溶媒耐性(続くマーカー忌避性試験で透明又は曇り)結果が、表II及びIIIに要約される。代表的な調合物からのスチールウール耐久性試験結果が、表IVに報告された。
【0245】
【表1】

【0246】
:HFPO−U−(Ar)nは、以下の手順で作られたHFPO−OH/100/SR−444C(15/100/88.5)であった:電磁攪拌棒を備えた500mLの丸底2首フラスコを25.00g(0.131eq、191EW)のDes N100、26.39g(0.0196eq、1344EW)のF(CF(CF)CFO)6.85CF(CF)C(O)NHCHCHOH及び109.62gのMEKで充填し、かき混ぜ均質な溶液を製造した。フラスコを、摂氏80度の槽の中に置き、ジブチル錫ジラウレート触媒を2滴充填し、凝縮器を取り付けた。反応は、最初は濁っていたが、2分以内に透明になった。約1.75時間経ってから、フラスコを槽から取り出して、失われた溶媒を補償するために2.42gのMEKを添加した。2.0gのサンプルをフラスコから取り出して、反応の(1−(2.0/161.01))又は0.9876重量分率を残し、57.51g(58.23gの98.76%)(0.116mol、494.3当量)のSR−444Cを反応に添加した後、摂氏63度の槽内に置いた。約5.25時間後、FTIRによれば、2273cm−1におけるイソシアネート吸収は見られず、失われた溶媒を補償するために0.56gのMEKを添加して、材料を50%固形物にした。生成物の計算された重量%Fは15.6%Fであった。
【0247】
【表2】

【0248】
【表3】

【0249】
【表4】

【0250】
:3.18cm(1.25インチ)のスタイラス、500gの重量及び300回摩擦によるスチールウール試験
本発明は、上に記載した特定の実施例に限られると見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲で明確に提示されているように、本発明のあらゆる態様を網羅していると理解されるべきである。様々な修正、同等の方法及び、本発明を適用可能である多くの構造は、本発明が対象とする技術分野の当業者が本発明の明細書を検討することにより、容易に明らかになるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、
前記多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、前記ハードコート層が、
少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物、
少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物、
赤外光吸収性ナノ粒子及び
少なくとも1つの重合開始剤を含むハードコート組成物の反応生成物を含む、ハードコート層と、を含む、物品。
【請求項2】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化1】

であって、
式中、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
はR又はエチレン性若しくは多エチレン性不飽和基Zであり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であるが、
a+bは少なくとも5であり、前記R基の少なくとも2つがZであることを条件とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化2】

であって、
式中、Rは一価のヒドロカルビル有機基であり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であるが、
a+bは少なくとも5であることを条件とする、請求項2に記載の物品。
【請求項4】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化3】

であって、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
Zはエチレン性又は多エチレン性不飽和基であり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であり、
cは2〜2000であるが、
a+b+cは少なくとも5であり、前記R基の少なくとも2つはZであることを条件とする、請求項2に記載の物品。
【請求項5】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化4】

であって、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
Zはエチレン性又は多エチレン性不飽和基であり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であり、
cは2〜2000であるが、
a+bは少なくとも5であることを条件とする、請求項2に記載の物品。
【請求項6】
前記フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化5】

であって、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
Zはエチレン性又は多エチレン性不飽和基であり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であり、
cは2〜2000であるが、
a+b+cは少なくとも5であることを条件とする、請求項2に記載の物品。
【請求項7】
はC2n+1(CHO)2m−、C2n+1CHXCF(C2mO)2p−又はC2n+1OCHXCF(C2mO)2p−であり、
式中、XはH又はFであり、
nは1〜12の整数であり、
mは1〜12の整数であり、
oは0又は1であり、
pは2〜12の整数である、請求項2に記載の物品。
【請求項8】
はHFPOである、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
ZはCH=CH−、CH=CHCO−L−又はそれらの組み合わせであり、Lは連鎖基である、請求項2に記載の物品。
【請求項10】
前記フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)(CH=CH)又はそれらの組み合わせであり、
式中、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であり、
cは2〜2000であるが、
a+b+cは少なくとも5であることを条件とする、請求項2に記載の物品。
【請求項11】
前記フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(CH=CH)Si(Me)O−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CH=CH)、(Me)SiO−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CNHC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CHCHC(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(Me)SiO−[Si(Me)(CHCHMeC(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)(CCOC((Et)(CHOC(O)CH=CH))−O]−Si(Me)、(CCHCH)Si(Me)O−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(CH=CH)−O]−Si(Me)(CHCH)又はそれらの組み合わせであり、式中、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であり、
cは2〜2000であるが、
a+b+cは少なくとも5であることを条件とする、請求項5に記載の物品。
【請求項12】
前記フルオロアルキルペンダントシロキサンが、
【化6】

であって、
式中、Rは一価のヒドロカルビル有機基であり、
はH又はRであり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、
d+e+gは少なくとも5であり、前記R基の少なくとも2つはHであることを条件とする、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化7】

であって、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
dは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、
d+gは少なくとも5であることを条件とする、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化8】

であって、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、
d+e+gは少なくとも5であることを条件とする、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化9】

であって、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、
d+e+gは少なくとも5であることを条件とする、請求項12に記載の物品。
【請求項16】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化10】

であって、
は一価のヒドロカルビル有機基であり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、
d+e+gは少なくとも5であることを条件とする、請求項12に記載の物品。
【請求項17】
はC2n+1(CHO)2p−、C2n+1CHXCF(C2mO)2p−又はC2n+1OCHXCF(C2mO)2p−であり、
式中、XはH又はFであり、
nは1〜12の整数であり、
mは1〜12の整数であり、
oは0又は1であり、
pは2〜12の整数である、請求項12に記載の物品。
【請求項18】
はHFPOである、請求項12に記載の物品。
【請求項19】
前記フルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−SiH(Me)、(Et)SiH−O−[Si(Et)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−SiH(Et)、(Et)SiH−O−[Si(Et)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−SiH(Et)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−SiH(Me)、(Me)SiH−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−SiH(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CCF)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(Ph)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CHC(H)(Me)C(O)OCOC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(Me)Si−O−[Si(Me)(H)−O]−[Si(Me)(CNHC(O)HFPO)−O]−[Si(Me)−O]−Si(Me)、(CCHCH)Si(Me)−O−[Si(Me)(C)−O]−[Si(Me)(H)−O]−Si(Me)(CHCH)又はそれらの組み合わせであり、
式中、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、
d+e+gは少なくとも5であることを条件とする、請求項12に記載の物品。
【請求項20】
前記混合物が、ヒドロシリル化触媒を更に含む、請求項12に記載の物品。
【請求項21】
前記少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物が、
【化11】

を含み、
式中、Rは一価のヒドロカルビル有機基であり、
はR又はエチレン性若しくは多エチレン性不飽和基Zであり、
はH又はRであり、
はR又はRであり、
はフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基であり、
aは0〜2000であり、
bは1〜2000であり、
dは0〜2000であり、
eは0〜2000であり、
gは1〜2000であるが、
d+e+gは少なくとも5であり、a+bは少なくとも5であり、少なくとも1つのRはRであり、少なくとも2つのRはZであり、少なくとも2つのRはHであることを条件とする、請求項1に記載の物品。
【請求項22】
前記混合物が、ヒドロシリル化触媒を更に含む、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
前記混合物が、少なくとも1つの化合物を更に含み、前記化合物が、以下の式
【化12】

を有し、
式中、Rは水素、C〜Cのアルキル基又はフェニル基であり、
Yは硬化性組成物の基材に対する結合又は接着を改善するための官能基であり、
は(メタ)アクリロイル基をYに結合する二価連結基である、請求項1に記載の物品。
【請求項24】
赤外光吸収性粒子が、アンチモンスズ酸化物である、請求項1に記載の物品。
【請求項25】
接着層を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項26】
赤外光源からの赤外光を遮断するための光制御物品であって、
第1のポリマータイプ及び第2のポリマータイプの交互層を有する赤外光反射性多層フィルムと、
前記多層フィルム上に配置されたハードコート層であって、前記ハードコート層が、ハードコート組成物の反応生成物を含み、前記ハードコート組成物が、
少なくとも1つの有機ポリエチレン性不飽和化合物、
少なくとも1つのフルオロアルキルペンダントシロキサン化合物、
赤外光吸収性ナノ粒子及び
少なくとも1つの重合開始剤を含む、ハードコート層と、
前記赤外光反射性多層フィルムに隣接して配置された基材と、を含む光制御物品。
【請求項27】
前記赤外光反射性多層フィルムとガラス基材との間に配置される感圧性接着剤層を更に含む、請求項26に記載の光制御物品。
【請求項28】
耐引裂性ポリマーフィルムを更に含む、請求項26に記載の光制御物品。
【請求項29】
前記ハードコート層の厚さが、1〜20マイクロメートルの範囲である、請求項26に記載の光制御物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2010−516499(P2010−516499A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546455(P2009−546455)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/050180
【国際公開番号】WO2008/088939
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】