説明

太陽電池およびその製造方法

【課題】p型材料とn型材料の組み合わせにかかわらず容易に形成することができる、ナノメートルオーダーのpn接合界面を有するバルクヘテロ接合型の有機薄膜を備える光電変換効率に優れた太陽電池を提供すること。
【解決手段】第1の電極および第2の電極と、該電極間に、p型またはn型のメソポーラス有機シリカとn型またはp型の材料とがバルクヘテロ接合している有機薄膜とを備えることを特徴とする太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機薄膜太陽電池およびその製造方法に関し、より詳しくは、バルクヘテロ接合型の有機薄膜を備える太陽電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機薄膜太陽電池に光が照射されると、p型材料(またはn型材料)中で励起子(正孔と電子のペア)が生成する。このような励起子のうち、pn接合界面近傍に存在するものはpn接合界面に移動して電荷分離が起こり、正孔と電子に分離して反対側の電極へ移動するが、pn接合界面近傍に存在しない励起子は再結合して消滅する。このため、従来のp型半導体層とn型半導体層を備える太陽電池の光電変換効率は非常に低いものであった。そこで、前記励起子が再結合せずに移動できる距離が約10nmと言われていることから、励起子が生成した地点から約10nm以内の距離にpn接合界面が存在するように、微細構造のpn接合界面を有する有機薄膜を備える太陽電池が提案されている。
【0003】
例えば、特開2008−141103号公報(特許文献1)には、p型材料層(またはn型材料層)を微細凹凸を有するモールドで押圧して表面に凹凸を有する層を形成し、その上にn型材料層(またはp型材料層)形成して、微細構造のpn接合界面を形成する方法が開示されている。また、特開2008−227282号公報(特許文献2)には、電界紡糸法によりp型材料およびn型材料の少なくとも一方を線状化して微細構造のpn接合界面を形成する方法が開示されている。しかしながら、このように機械的に微細構造のpn接合界面を形成する方法は、p型材料およびn型材料の組み合わせによらずに微細構造のpn接合界面を形成できる方法であるが、10nmオーダーの微細構造を形成することは実質的には困難であった。
【0004】
また、特開2005−183150号公報(特許文献3)には、陽極酸化ポーラスアルミナ膜の細孔中にn型材料(またはp型材料)を埋め込んだ後、陽極酸化ポーラスアルミナ膜を除去し、前記n型材料(またはp型材料)の細孔中にp型材料(またはn型材料)を埋め込んで微細構造のpn接合界面を形成する方法が開示されている。Chem.Mater.、2006年、18巻、11号、5080−5087頁(非特許文献1)には、n型のTiOナノロッドを形成した後にp型材料を塗布して微細構造のpn接合界面を形成する方法が開示されている。しかしながら、これらの方法は煩雑な工程が必要であった。
【0005】
さらに、微細構造のpn接合界面を形成する方法としてp型材料とn型材料をバルクヘテロ接合させる方法も提案されている。例えば、Nature Mater.、2008年、7巻、158−164頁(非特許文献2)には、ポリチオフェン(P3HT)などのp型材料とフラーレン誘導体などのn型材料を混合してミクロ相分離させて、これらをバルクヘテロ接合させる方法が開示されている。この方法は簡便であり、高い光電変換性能を有する有機薄膜を形成することが可能する。しかしながら、p型材料とn型材料の組み合わせによってはミクロ相分離構造が異なるため、所望の微細構造を形成できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−141103号公報
【特許文献2】特開2008−227282号公報
【特許文献3】特開2005−183150号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Q.Wei et al.、Chem.Mater.、2006年、18巻、11号、5080−5087頁
【非特許文献1】M.Campoy−Quiles et al.、Nature Mater.、2008年、7巻、158−164頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、p型材料とn型材料の組み合わせにかかわらず容易に形成することができる、ナノメートルオーダーのpn接合界面を有するバルクヘテロ接合型の有機薄膜を備える光電変換効率に優れた太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、p型またはn型の架橋有機基を有する有機シラン化合物を原料として使用し、界面活性剤ミセルの自己組織化を利用してp型またはn型のメソポーラス有機シリカを形成し、このメソポーラス有機シリカのメソ細孔にn型またはp型の材料を挿入することによって、p型材料とn型材料の組み合わせにかかわらず、また、煩雑な工程を必要とせずに、約10nm以下のオーダーの微細構造のpn接合界面を有する有機薄膜(バルクヘテロ接合型有機薄膜)が形成でき、さらにこの有機薄膜を備える太陽電池が優れた光電変換効率を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の太陽電池は、第1の電極および第2の電極と、該電極間に、p型またはn型のメソポーラス有機シリカとn型またはp型の材料とがバルクヘテロ接合している有機薄膜とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
このような太陽電池において、前記メソポーラス有機シリカは規則的なメソ細孔構造を有するものであることが好ましい。また、前記有機薄膜はp型メソポーラス有機シリカとn型材料とを含有するものであることが好ましい。
【0012】
前記p型メソポーラス有機シリカとしては、下記式(1):
【0013】
【化1】



【0014】
[式(1)中、Arはそれぞれ独立にフェニレン基、ビフェニリレン基およびナフチレン基からなる群から選択される1種のアリーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、Lはそれぞれ独立にエーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カーボネート基、アミノ基、アミド基およびウレタン基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む2価の脂肪族有機基、アルキレン基または単結合を表し、R〜Rは、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される1種の置換基、ハロゲン原子または水素原子を表す。]
で表される繰り返し単位を有するものが好ましい。
【0015】
このような本発明の太陽電池の製造方法は、第1の電極を形成する工程と、界面活性剤の存在下でp型の架橋有機基を有する有機シラン化合物を縮合させて、前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜を形成する工程と、前記有機シリカ薄膜中の界面活性剤を除去してp型のメソポーラス有機シリカ薄膜を形成する工程と、前記p型のメソポーラス有機シリカ薄膜のメソ細孔中にn型材料を挿入してバルクヘテロ接合型の有機薄膜を形成する工程と、第2の電極を形成する工程と、を含むことを特徴とする方法である。
【0016】
前記p型の架橋有機基を有する有機シラン化合物としては、下記式(2):
【0017】
【化2】

【0018】
[式(2)中、Arはそれぞれ独立にフェニレン基、ビフェニリレン基およびナフチレン基からなる群から選択される1種のアリーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、Lはそれぞれ独立にエーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カーボネート基、アミノ基、アミド基およびウレタン基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む2価の脂肪族有機基、アルキレン基または単結合を表し、R〜Rは、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される1種の置換基、ハロゲン原子または水素原子を表し、Rはメチル基またはエチル基を表し、Rはメチル基などの置換基を有していてもよいアリル基を表し、nは0〜3の整数である。]
で表されるものが好ましい。
【0019】
なお、本発明の太陽電池が光電変換性能に優れたものとなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明にかかる有機薄膜においては、ナノメートルオーダーのpn接合界面が形成されている。このため、励起子の再結合による消滅が低減されると推察される。また、pn接合界面がナノメートルオーダーであるため、その面積が大きく電荷分離の頻度が多くなると推察される。このため、このような有機薄膜を備える本発明の太陽電池は光電変換効率が高くなるものと推察される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、p型材料とn型材料の組み合わせにかかわらず、ナノメートルオーダーのpn接合界面を有するバルクヘテロ接合型の有機薄膜を容易に形成することができ、これにより光電変換効率に優れた太陽電池を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の太陽電池の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明の太陽電池の他の一実施形態を示す模式図である。
【図3】本発明の太陽電池の他の一実施形態を示す模式図である。
【図4】実施例1で得られた有機シリカ薄膜のX線回折パターンを示すグラフである。
【図5】実施例1および比較例1で得られた太陽電池の外部量子効率の波長依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0023】
本発明の太陽電池は、第1の電極および第2の電極と、これらの電極間に、p型のメソポーラス有機シリカとn型の材料、あるいはn型のメソポーラス有機シリカとp型の材料とがバルクヘテロ接合している有機薄膜(バルクヘテロ接合層)とを備えるものである。具体的には、例えば、図1に示すような、基板1と、この基板1上に形成された電極2と、この電極2上に形成された有機薄膜(バルクヘテロ接合層)3と、このバルクヘテロ接合層3上に形成された電極4とを備える太陽電池が挙げられる。このような太陽電池に光を照射すると、バルクヘテロ接合層3で光が吸収されて励起子が生成する。この励起子が拡散してpn接合界面に到達すると電荷分離が起こり、正孔と電子が反対側の電極に移動して取り出されることによって光電変換機能が発現する。
【0024】
このような太陽電池の製造方法としては、基板1上に電極2(例えば、第1の電極)を形成する工程と、前記電極2上に前記有機薄膜(バルクヘテロ接合層)3を形成する工程と、前記有機薄膜3上に電極4(例えば、第2の電極)を形成する工程とを含む方法が挙げられる。なお、各層の形成方法については後述する。
【0025】
また、本発明の太陽電池においては、図2に示すように、各電極において正孔や電子を取り出しやすくするために、電極2とバルクヘテロ接合層3との間に正孔輸送層11を設けたり、バルクヘテロ接合層3と電極4との間に電子輸送層12を設けたりすることが好ましい。さらに、電極2において電子の移動をブロックして正孔を取り出しやすくするために、図3に示すように、電極2とバルクヘテロ接合層3との間に電子ブロック層21を設けたり、電極4において正孔の移動をブロックして電子を取り出しやすくするために、図3に示すように、バルクヘテロ接合層3と電極4との間に正孔ブロック層22を設けたりすることも好ましい。これらの層を設けることによってさらに光電変換効率を高めることが可能となる。なお、本発明の太陽電池は、図2〜4に示した構造に限定されるものではない。
【0026】
このような太陽電池の製造方法としては、基板1上に電極2(例えば、第1の電極)を形成する工程と、前記電極2上に正孔輸送層11および/または電子ブロック層21を形成する工程と、前記正孔輸送層11上または電子ブロック層21上に前記有機薄膜(バルクヘテロ接合層)3を形成する工程と、前記有機薄膜3上に電子輸送層12および/または正孔ブロック層22を形成する工程と、前記電子輸送層12上および/または正孔ブロック層22上に電極4(例えば、第2の電極)を形成する工程とを含む方法が挙げられる。なお、各層の形成方法については後述する。
【0027】
<有機薄膜>
先ず、本発明にかかる有機薄膜について説明する。本発明にかかる有機薄膜は、p型のメソポーラス有機シリカとn型の材料とを含有し、これらがバルクヘテロ接合しているもの、あるいはn型のメソポーラス有機シリカとp型の材料とを含有し、これらがバルクヘテロ接合しているものである。従って、前記有機薄膜は、本発明の太陽電池においてバルクヘテロ接合層として機能するものである。
【0028】
このような有機薄膜のうち、光電変換性能がより高くなるという観点から、p型メソポーラス有機シリカとn型材料とを含有する有機薄膜が好ましい。また、前記メソポーラス有機シリカにおいては、規則的なメソ細孔が形成されていることが好ましい。これにより、励起子の拡散距離が揃い、励起子の再結合による消滅が低減され、pnへテロ接合界面において電荷分離効率が向上する傾向にある。
【0029】
(メソポーラス有機シリカ)
本発明にかかるp型のメソポーラス有機シリカはp型の架橋有機基を有するメソポーラス有機シリカであり、n型のメソポーラス有機シリカはn型の架橋有機基を有するメソポーラス有機シリカである。このようなp型またはn型のメソポーラス有機シリカは、近紫外領域、可視光領域、近赤外領域のいずれか1つまたは複数の組み合わせの波長領域に吸収帯を有することが好ましく、太陽光に含まれるこれらの波長領域の光により光励起して励起子が生成するため、太陽電池に使用することが可能となる。このような吸収帯は、架橋有機基によって決定される。
【0030】
前記p型架橋有機基はp型の有機化合物から形成される基である。p型の有機化合物としては、ピレンおよびその誘導体、p−フェニレンビニレンおよびその誘導体、1,3,5−トリススチリルベンゼンおよびその誘導体、トリフェニルアミンおよびその誘導体、ポルフィリンおよびその誘導体、カルバゾールおよびその誘導体、フルオレンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、アクリドンおよびその誘導体などが挙げられる。前記ポリフィリンおよびその誘導体の中心金属としては、Mg、Zn、Cu、Ag、Pt、Fe、Co、Ni、Si、Sn、Pb、Al、Cr、Mn、V、Tiなどの金属、金属酸化物や金属ハロゲン化物が挙げられる。
【0031】
前記n型架橋有機基はn型の有機化合物から形成される基である。n型の有機化合物としては、ペリレンおよびその誘導体、ナフタレン誘導体(ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)など)などが挙げられる。
【0032】
(メソポーラス有機シリカの製造方法)
本発明にかかるp型またはn型の架橋有機基を有するメソポーラス有機シリカは、界面活性剤の存在下でp型またはn型の架橋有機基を有する有機シラン化合物を縮合させて、前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜を形成し、次いで、前記メソ構造の有機シリカ薄膜中の界面活性剤を除去することによって製造することができる。
【0033】
前記架橋有機基を有する有機シラン化合物は、前記架橋有機基を任意に導入することが可能であり、導入する架橋有機基を調整することによって、任意の伝導型のメソポーラス有機シリカを設計することが可能となる。
【0034】
前記縮合反応においては、前記有機シリカ化合物のシリル基(親水性基)と界面活性剤ミセルの親水性表面との相互作用によって規則的なメソ構造が自己組織的に誘起される。また、シリル基の縮合によりシロキサン結合が形成されてメソポーラス有機シリカの骨格が形成される。その結果、架橋有機基の種類によらず、規則的なメソ構造が形成される。
【0035】
なお、前記縮合反応の際、前記架橋有機基を有する有機シラン化合物と、ジメトキシシラン、ジエトキシシランといったジアルコキシシラン;トリメトキシシラン、トリエトキシシランといったトリアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランといったテトラアルコキシシランなどの公知のアルコキシシラン化合物を共重合させることも可能であるが、得られるメソポーラス有機シリカの骨格の導電性が低下する場合があり、本発明においては共重合させないことが好ましい。
【0036】
前記架橋有機基を有する有機シラン化合物および必要に応じて前記アルコキシシラン化合物(以下、これらを総称して「シランモノマー」という)を(共)重合せしめる場合、前記架橋有機基を有する有機シラン化合物の割合は、(共)重合に使用する全シランモノマー100質量%に対して10〜100質量%が好ましく、50〜100質量%がより好ましく、100質量%が特に好ましい。また、前記(共)重合反応における前記シランモノマーの濃度は、ケイ素濃度換算で0.0055〜0.33mol/L程度であることが好ましい。
【0037】
前記(共)重合反応の操作条件は特に制限されないが、先ず、前記界面活性剤を含む酸性溶液(塩酸、硝酸などの水溶液またはアルコール溶液など)に前記シランモノマーを添加し、この溶液を攪拌して反応(部分加水分解および部分縮合反応)せしめてその部分重合体を含むゾル溶液を製造することが好ましい。このような前記シランモノマーの加水分解反応はpHが低い領域で起こりやすいことから、系のpHを低くすることにより部分重合を促進することができる。このとき、pHは6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましい。また、その際の反応温度は15〜25℃程度が好ましく、反応時間は30分間〜1日間程度が好ましい。
【0038】
次に、このようにして得られたゾル溶液を電極などに塗布することにより、前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜を作製することができる。前記ゾル溶液を電極などに塗布する方法としては特に制限されず、各種コーティング方法を適宜採用することができる。例えば、溶液キャスト法や、バーコーター、ロールコーター、グラビアコーターなどを用いて塗布する方法、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティングといった方法などが挙げられる。さらに、ゾル溶液をインクジェット法により塗布することにより、電極などにパターン状の有機シリカ薄膜を形成することも可能である。
【0039】
次いで、得られた薄膜を25〜120℃程度で乾燥せしめ、前記部分重合体の重縮合反応を進めて三次元的な架橋構造を形成させることが好ましい。得られる薄膜の平均膜厚は2μm以下であることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
【0040】
また、このようなメソ構造の有機シリカ薄膜は、特開2001−130911号公報等に記載の方法に準拠して得ることもできる。
【0041】
このように、界面活性剤の存在下で前記p型またはn型の架橋有機基を有する有機シラン化合物を(共)縮合させることにより、細孔径分布曲線における中心細孔直径が1〜20nmのメソ細孔を有するp型またはn型の有機シリカ薄膜が、前記メソ細孔に前記界面活性剤が含まれた状態で形成される。
【0042】
なお、前記中心細孔直径とは、細孔容積(V)を細孔直径(D)で微分した値(dV/dD)を細孔直径(D)に対してプロットした曲線(細孔径分布曲線)の最大ピークにおける細孔直径であり、次に述べる方法により求めることができる。すなわち、メソポーラス有機シリカを液体窒素温度(−196℃)に冷却して窒素ガスを導入し、定容量法あるいは重量法によりその吸着量を求め、次いで、導入する窒素ガスの圧力を徐々に増加させ、各平衡圧に対する窒素ガスの吸着量をプロットし、吸着等温線を得る。この吸着等温線を用い、Cranston−Inklay法、Pollimore−Heal法、BJH法などの計算法により細孔径分布曲線を求めることができる。
【0043】
このようなメソポーラス有機シリカは、細孔径分布曲線における中心細孔直径の±40%の範囲に全細孔容積の60%以上が含まれることが好ましい。この条件を満たすメソポーラス有機シリカは、細孔の直径が非常に均一であることを意味する。また、メソポーラス有機シリカの比表面積については特に制限はないが、700m/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。
【0044】
さらに、このようなメソポーラス有機シリカは、そのX線回折(XRD)パターンにおいて1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークを有することが好ましい。X線回折ピークはそのピーク角度に相当するd値の周期構造が試料中にあることを意味する。したがって、1.5〜30.5nmのd値に相当する回折角度に1本以上のピークがあることは、細孔が1.5〜30.5nmの間隔で規則的に配列していることを意味する。
【0045】
本発明にかかるメソポーラス有機シリカを製造する際に用いられる界面活性剤としては特に制限はなく、カチオン性、アニオン性、ノニオン性のうちのいずれであってもよく、具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルトリエチルアンモニウム、ジアルキルジメチルアンモニウム、ベンジルアンモニウムなどの塩化物、臭化物、ヨウ化物あるいは水酸化物;脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリエチレンオキサイド系ノニオン性界面活性剤、一級アルキルアミンなどが挙げられる。これらの界面活性剤は1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0046】
上記の界面活性剤のうち、ポリエチレンオキサイド系ノニオン性界面活性剤としては、疎水性成分として炭化水素基、親水性部分としてポリエチレンオキサイドをそれぞれ有するポリエチレンオキサイド系非イオン性界面活性剤などが挙げられる。このような界面活性剤としては、例えば、一般式C2n+1(OCHCHOHで表され、nが10〜30、mが1〜30であるものが好適に使用できる。また、このような界面活性剤としては、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸とソルビタンとのエステル、あるいはこれらのエステルにポリエチレンオキサイドが付加した化合物を用いることもできる。
【0047】
さらに、このような界面活性剤としては、トリブロックコポリマー型のポリアルキレンオキサイドを用いることもできる。このような界面活性剤としては、ポリエチレンオキサイド(EO)とポリプロピレンオキサイド(PO)からなり、一般式(EO)(PO)(EO)で表されるものが挙げられる。x、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。上記のトリブロックコポリマーとしては、(EO)19(PO)29(EO)19、(EO)13(PO)70(EO)13、(EO)(PO)70(EO)、(EO)13(PO)30(EO)13、(EO)20(PO)30(EO)20、(EO)26(PO)39(EO)26、(EO)17(PO)56(EO)17、(EO)17(PO)58(EO)17、(EO)20(PO)70(EO)20、(EO)80(PO)30(EO)80、(EO)106(PO)70(EO)106、(EO)100(PO)39(EO)100、(EO)19(PO)33(EO)19、(EO)26(PO)36(EO)26が挙げられる。これらのトリブロックコポリマーはBASF社、アルドリッチ社などから入手可能であり、また、小規模製造レベルで所望のx値とy値を有するトリブロックコポリマーを得ることができる。
【0048】
また、エチレンジアミンの2個の窒素原子にそれぞれ2本のポリエチレンオキサイド(EO)鎖−ポリプロピレンオキサイド(PO)鎖が結合したスターダイブロックコポリマーも使用することができる。このようなスターダイブロックコポリマーとしては、一般式((EO)(PO)NCHCHN((PO)(EO)で表されるものが挙げられる。ここでx、yはそれぞれEO、POの繰り返し数を表すが、xは5〜110、yは15〜70であることが好ましく、xは13〜106、yは29〜70であることがより好ましい。
【0049】
上記のような界面活性剤を用いて本発明にかかるメソポーラス有機シリカを製造する場合においては、前記界面活性剤を含有する溶液中においてp型またはn型の架橋有機基を有する有機シラン化合物を加水分解および縮合反応せしめることにより前記メソポーラス有機シリカ中に前記界面活性剤が導入されてなるメソ構造の有機シリカを得る。前記溶液中の界面活性剤の濃度は1〜20質量%であることが好ましい。前記界面活性剤の濃度が前記下限未満になると細孔の形成が不完全となりやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えると未反応で溶液中に残留する界面活性剤の量が増大して細孔の均一性が低下しやすい傾向にある。
【0050】
次に、このようにして得られた前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜に含まれる界面活性剤を除去することによって容易にメソ細孔を形成することができ、本発明にかかるメソポーラス有機シリカを得ることができる。前記界面活性剤を除去する方法としては以下の方法が挙げられる。すなわち、例えば、(i)界面活性剤に対する溶解度が高い有機溶媒(例えば、エタノール)中に、前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜を浸漬して前記界面活性剤を除去する方法、(ii)前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜を250〜550℃で焼成して前記界面活性剤を除去する方法、(iii)前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜を酸性溶液(例えば、希塩酸)に浸漬して加熱し、前記界面活性剤を水素イオンに交換せしめるイオン交換法、(iv)前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜を、加熱した酸性蒸気(例えば、塩酸蒸気)に曝露した後、有機溶媒(例えば、エタノール)に浸漬して前記界面活性剤を有機溶媒中に溶出させる方法、などを挙げることができる。これらの方法における処理条件は、使用する界面活性剤、有機溶媒、酸性蒸気の種類などにより適宜設定することができる。
【0051】
(メソポーラス有機シリカの具体例1)
好ましいメソポーラス有機シリカとしては、下記式(1):
【0052】
【化3】

【0053】
で表される繰り返し単位を有するものが挙げられる。このメソポーラス有機シリカは架橋有機基にピレン骨格を有するものであり、p型のメソポーラス有機シリカである。このp型のメソポーラス有機シリカを用いることによって光電変換効率が向上する傾向にある。これは、前記式(1)で表される繰り返し単位を有するメソポーラス有機シリカにおいてはπ共役系が2次元的に広がっており、架橋有機基がシリカ骨格中でオーバーラップしやすいためであると推察される。
【0054】
前記式(1)中のArは、それぞれ独立にフェニレン基、ビフェニリレン基およびナフチレン基からなる群から選択される1種のアリーレン基を表す。このアリーレン基は、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基またはハロゲン基などの置換基を有していてもよい。
【0055】
前記式(1)中のLは、それぞれ独立にエーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カーボネート基、アミノ基、アミド基およびウレタン基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む2価の脂肪族有機基、アルキレン基または単結合を表す。前記アルキレン基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい。このようなアルキレン基のうち、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が特に好ましく、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が最も好ましい。また、前記2価の脂肪族有機基は、さらに、炭素数1〜12(より好ましくは1〜6)の2価の炭化水素基を含むものであることが好ましく、前記2価の炭化水素基としてはアルキレン基が好ましい。
【0056】
前記式(1)中のR〜Rは、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される1種の置換基、ハロゲン原子または水素原子を表す。前記アルキル基およびアルコキシ基の炭素数は1〜12が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0057】
このようなメソポーラス有機シリカのうち、シリカ骨格に対する疎水性有機骨格の体積分率を抑制しつつ高い光電変換効率を達成するという観点から、前記式(1)中のArがフェニレン基であり、R〜Rが水素原子であるメソポーラス有機シリカが特に好ましい。
【0058】
前記式(1)で表される繰り返し単位を有する本発明にかかるp型のメソポーラス有機シリカは、例えば、下記式(2):
【0059】
【化4】

【0060】
で表される有機シラン化合物を縮合させることにより形成することができる。この有機シラン化合物は架橋有機基にピレン骨格を有するものであり、p型の架橋有機基を有する有機シラン化合物である。このp型の架橋有機基を有する有機シラン化合物を用いることによって規則的なメソ構造を形成しやすくなる。これは、前記式(2)で表される架橋有機基を有する有機シラン化合物においてはシリル基が4つ以上存在し、これにより鋳型である界面活性剤ミセルとの相互作用が強くなるからであると推察される。
【0061】
前記式(2)中のAr、LおよびR〜Rは、前記式(1)中のAr、LおよびR〜Rと同義である。また、Rはメチル基またはエチル基を表し、Rはメチル基などの置換基を有していてもよいアリル基を表す。nは0〜3の整数であるが、縮合反応が進行しやすく、縮合後の構造が安定するという観点からnは1〜3の整数が好ましい。
【0062】
このような架橋有機基を有する有機シラン化合物のうち、シリカ骨格に対する疎水性有機骨格の体積分率を抑制しつつ高い量子収率を達成するという観点から、前記式(2)中のArがフェニレン基であり、R〜Rが水素原子である架橋有機基を有する有機シラン化合物が特に好ましい。
【0063】
(メソポーラス有機シリカの具体例2)
他のメソポーラス有機シリカの具体例としては、下記式(3):
【0064】
【化5】

【0065】
で表される分子構造を含有するものが挙げられる。
【0066】
前記式(3)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表す。
【0067】
また、前記式(3)中のY〜Yはそれぞれ独立に下記式(4):
【0068】
【化6】

【0069】
で表される有機基(フェニレンビニレン基)を表し、前記式(3)中の*は他の分子構造との結合部位を表す。したがって、このメソポーラス有機シリカは架橋有機基に1,3,5−トリススチリルベンゼン骨格を有するものであり、p型のメソポーラス有機シリカである。
【0070】
前記式(4)中、X〜Xはそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基、アミノ基、シアノ基およびニトロ基のうちのいずれか1つの置換基を表す。前記式(4)中の*は他の基との結合部位を表す。また、前記式(4)中のnは、1〜10の整数であり、原料である架橋有機基を有する有機シラン化合物の合成のしやすさやメソポーラス有機シリカにおけるメソ構造の作りやすさの観点からnは1〜3の整数であることが好ましい。
【0071】
前記式(3)で表される分子構造を含有する本発明にかかるp型のメソポーラス有機シリカは、例えば、下記式(5):
【0072】
【化7】

【0073】
で表される有機シラン化合物を縮合させることにより形成することができる。
【0074】
前記式(5)中、X〜XおよびY〜Yは、それぞれ前記式(3)中のX〜XおよびY〜Y同義である。また、前記式(5)中のR〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基を表す。したがって、この有機シラン化合物は架橋有機基に1,3,5−トリススチリルベンゼン骨格を有するものであり、p型の架橋有機基を有する有機シラン化合物である。これらのうち、重合(縮合)のしやすさの観点から炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
【0075】
前記式(5)で表される有機シラン化合物の製造方法は特に限定されないが、以下の方法が好ましい。例えば、前記式(4)においてn=1である前記式(5)で表される有機シラン化合物の場合には、先ず、下記反応式(A):
【0076】
【化8】

【0077】
(式(A)中、Xはハロゲン原子(好ましくは臭素原子)を表し、R10は炭素数1〜18のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)を表す)
に示すように、ハロゲン化アルキルを除去しながら1,3,5−トリス(ハロゲン化メチル)ベンゼンに亜リン酸トリアルキルを反応せしめて1,3,5−トリス(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンを調製する。
【0078】
次に、テトラヒドロフランなどの溶媒中、tert−ブチルオキシカリウムなどの触媒の存在下で、下記反応式(B):
【0079】
【化9】

【0080】
(式(B)中のR10は前記反応式(A)中のR10と同義である)
に示すように、前記1,3,5−トリス(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンに4−ヨードベンズアルデヒドを反応せしめて1,3,5−トリス(4−ヨードスチリル)ベンゼンを調製する。
【0081】
次いで、蒸留ジメチルホルムアミドと蒸留トリエチルアミンとの混合溶媒などの溶媒中、[Rh(cod)(CHCN)]BFおよびn−BuNIなどの触媒の存在下で、下記反応式(C):
【0082】
【化10】

【0083】
(式(C)中、R11は水素原子または炭素数1〜15のアルキル基を表す)
に示すように、前記1,3,5−トリス(4−ヨードスチリル)ベンゼンにトリアルコキシシランなど(好ましくはトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、より好ましくはトリエトキシシラン)を反応せしめることにより1,3,5−トリス(4−トリアルコキシシリルスチリル)ベンゼンを得ることができる。
【0084】
また、前記式(4)においてnが2以上である前記式(5)で表される有機シラン化合物の場合には、先ず、下記反応式(D):
【0085】
【化11】

【0086】
(式(D)中、Xはハロゲン原子(好ましくは臭素原子)を表し、R12は炭素数1〜18のアルキル基(好ましくはメチル基またはエチル基)を表す)
に示すように、ハロゲン化アルキルを除去しながら4−ヨード−1−ハロゲン化メチルベンゼンに亜リン酸トリアルキルを反応せしめて4−ヨード−1−(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンを調製する。
【0087】
次に、テトラヒドロフランなどの溶媒中、tert−ブチルオキシカリウムなどの触媒の存在下で、下記反応式(E):
【0088】
【化12】

【0089】
(式(E)中のR12は前記反応式(D)中のR12と同義であり、nは1〜10の整数である)
に示すように、前記4−ヨード−1−(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンにテレフタルアルデヒドまたはジホルミルオリゴ(フェニレンビニレン)を反応せしめてヨードホルミルオリゴ(フェニレンビニレン)を調製する。
【0090】
次いで、テトラヒドロフランなどの溶媒中、tert−ブチルオキシカリウムなどの触媒の存在下で、下記反応式(F):
【0091】
【化13】

【0092】
(式(F)中のR10は前記反応式(A)中のR10と同義であり、式(F)中のnは前記反応式(E)中のnと同義である)
に示すように、前記反応式(A)に従って得られる1,3,5−トリス(ジアルコキシホスホメチル)ベンゼンに前記ヨードホルミルオリゴ(フェニレンビニレン)を反応せしめて4−ヨードスチリル基を有する1,3,5−トリススチリルベンゼン誘導体を調製する。
【0093】
次いで、蒸留ジメチルホルムアミドと蒸留トリエチルアミンとの混合溶媒などの溶媒中、[Rh(cod)(CHCN)]BFおよびn−BuNIなどの触媒の存在下で、下記反応式(G):
【0094】
【化14】

【0095】
(式(G)中のR11は前記反応式(C)中のR11と同義であり、式(G)中のnは前記反応式(F)中のnと同義である)
に示すように、前記1,3,5−トリススチリルベンゼン誘導体にトリアルコキシシランなど(好ましくはトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、より好ましくはトリエトキシシラン)を反応せしめることにより前記式(4)においてnが2以上である前記式(5)で表される有機シラン化合物を得ることができる。
【0096】
(n型材料)
本発明にかかるn型材料は、前記メソポーラス有機シリカがp型の場合に用いられるものであり、電子受容性を有する材料であれば特に制限はない。このようなn型材料としては、例えば、フラーレン誘導体(PCBM(PC60BM、(6,6)−フェニル−C61−メチル酪酸)、PC70BMなど)、ペリレンおよびその誘導体(3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、N,N’−ジメチルペリレン−3,4,9,10−ビス(ジカルボキシイミド)(Me−PTCDI)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸−ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)など)、ナフタレン誘導体(ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA)など)、ベンゾフェナンスロリン類およびその誘導体によるラダーポリマー、シアノ−ポリフェニレンビニレンなどの高分子、フッ素化無金属フタロシアニン、フッ素化金属フタロシアニン類およびその誘導体、バソクプロイン(バソクプロイン(BCP))、カーボンナノチューブの誘導体、ZnOx、TiOxなどの金属酸化物が挙げられる。
【0097】
(p型材料)
本発明にかかるp型材料は、前記メソポーラス有機シリカがn型の場合に用いられるものであり、電子供与性を有する材料であれば特に制限はない。このようなp型材料としては、例えば、テトラフェニルピレン誘導体、オリゴフェニレンビニレン誘導体(ポリ2−メトキシ−5−2−エチルヘキシロキシ−1,4−フェニレンビニレン(MEH−PPV)、ポリフェニレンビニレン(PPV)、ポリ2−メトキシ−5−3,7−ジメチルオクチロキシ−1,4−フェニレンビニレン(MDMO−PPV)など)、オリゴチオフェン誘導体、チオフェン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーおよびポリマー、ビニルカルバゾールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーおよびポリマー、ベンゾチアジアゾールおよびその誘導体を骨格にもつオリゴマーおよびポリマー、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニン、およびそれらの誘導体、サブフタロシアニンおよびその誘導体、ポルフィリン、テトラメチルポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、テトラベンズポルフィリン、モノアゾテトラベンズポルフィリン、ジアゾテトラベンズポルフィン、トリアゾテトラベンズポルフィリン、オクタエチルポルフィリン、オクタアルキルチオポルフィラジン、オクタアルキルアミノポルフィラジン、ヘミポルフィラジン、クロロフィルなど無金属ポルフィリン、金属ポルフィリン、およびそれらの誘導体、サブポルフィリンおよびその誘導体、ジアミン類、フェニルジアミン類、およびそれらの誘導体、ペンタセンなどのアセン類およびその誘導体、シアニン色素、メロシアニン色素、スクアリリウム色素、キナクリドン色素、アゾ色素、アントラキノン、ベンゾキノン、ナフトキノンといったキノン系色素などの有機薄膜太陽電池のp型材料として公知の高分子材料および低分子材料が挙げられる。前記金属フタロシアニン、前記金属ポルフィリン、およびそれらの誘導体の中心金属としては、Mg、Zn、Cu、Ag、Pt、Fe、Co、Ni、Si、Sn、Pb、Al、Cr、Mn、V、Tiなどの金属、金属酸化物や金属ハロゲン化物が挙げられる。また、前記サブフタロシアニン、サブポルフィリン、およびそれら誘導体の中心元素としてはB(ホウ素)が挙げられる。
【0098】
(バルクヘテロ接合方法)
上記のようにして得られた前記p型またはn型のメソポーラス有機シリカ薄膜のメソ細孔中に前記n型またはp型の材料を挿入してナノメートルオーダーのpn接合界面を形成させ、これらをバルクヘテロ接合させる。すなわち、p型のメソポーラス有機シリカ薄膜のメソ細孔にはn型の材料を挿入し、n型のメソポーラス有機シリカ薄膜のメソ細孔にはp型の材料を挿入してナノメートルオーダーのpn接合界面を形成させる。
【0099】
挿入方法としては、前記n型またはp型の材料が有機溶媒に溶解する場合には、n型またはp型の材料を有機溶媒に溶解させ、この溶液に前記p型またはn型のメソポーラス有機シリカ薄膜を浸漬したり、前記p型またはn型のメソポーラス有機シリカ薄膜上に前記溶液を塗布したりすることによって、メソ細孔中に前記n型またはp型の材料を挿入させる。この方法で挿入可能なn型またはp型の材料としては、PCBM、PC70BMなどのフラーレン誘導体、ZnOx、TiOxなどが挙げられる。一方、前記n型またはp型の材料が有機溶媒に溶解しない場合には、n型またはp型の材料を真空蒸着によりメソ細孔中に挿入させる。この方法で挿入可能なn型またはp型の材料としては、フラーレンが挙げられる。
【0100】
このようにしてメソ細孔中に挿入されたn型またはp型の材料の含有量は、本発明にかかる有機薄膜全体に対して10〜90質量%であることが好ましい。n型またはp型の材料の含有量が前記範囲外になるとナノメートルオーダーのpn接合界面が十分に形成されず、光電変換効率が向上しにくい傾向にある。
【0101】
また、前記メソポーラス有機シリカの含有量は、本発明にかかる有機薄膜全体に対して10〜90質量%であることが好ましい。メソポーラス有機シリカの含有量が前記下限未満になるとメソ構造の秩序が低下しやすい傾向にあり、他方、前記上限を超えるとナノメートルオーダーのpn接合界面が十分に形成されず、光電変換効率が向上しにくい傾向にある。
【0102】
<基板>
次に、本発明にかかる基板について説明する。本発明の太陽電池は、通常、基板を備えており、この基板側から光が入射する。従って、本発明にかかる基板としてはガラス基板や透明プラスチック基板などの可視光域において透明な基板が好ましい。このような基板としては、ITO付ガラス基板など、予め後述する電極を備える基板を使用してもよい。また、フレキシブルな太陽電池を形成する場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板などの透明プラスチック基板が好ましい。
【0103】
<電極>
本発明にかかる電極としては特に制限はないが、例えば、金属(例えば、Al、Au、Ag、Cu、Ca、Cr、Ni、Mo、Ptなど)、金属酸化物(好ましくは、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、ZnOなど)、カーボンナノチューブ、シリコンなどの導電膜が挙げられる。なお、このような電極材料を、正孔取り出し電極と電子取り出し電極のいずれに採用するかは、2つの電極材料の仕事関数の違いによって決定される。また、第1および第2の電極のうち、基板側の電極は基板側から光が透過するため、可視光域において透明であることが好ましい。
【0104】
このような電極の形成方法としては特に制限はなく、使用する電極材料の種類に応じて適宜公知の方法を採用することができるが、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法またはスパッタリング法などの真空成膜法;電析法、電気泳動法、電解メッキ、無電解メッキなどの湿式成膜法などが用いられる。
【0105】
<正孔輸送層>
本発明の太陽電池においては、正孔の取り出し効率を高めるために、前記有機薄膜と正孔取り出し電極との間に正孔輸送層を設けることが好ましい。このような正孔輸送層としては正孔輸送性を有する材料からなる層であれば特に制限はなく、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート膜(PEDOT:PSS膜)などの導電性高分子膜;MoO、NiO、Vなどの金属酸化物の蒸着膜(膜厚0.5〜10nm程度);テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F−TCNQ)などの電子受容性の非常に強い有機分子をドーピングした膜などの公知の正孔輸送層が挙げられる。
【0106】
<電子輸送層>
本発明の太陽電池においては、電子の取り出し効率を高めるために、前記有機薄膜と電子取り出し電極との間に電子輸送層を設けることが好ましい。このような電子輸送層としては電子輸送性を有する材料からなる層であれば特に制限はなく、LiF薄膜などの公知の電子輸送層が挙げられる。
【0107】
<正孔ブロック層>
本発明の太陽電池においては、電子取り出し電極へ正孔が流れ込まないように、正孔ブロック層を形成することが好ましい。このような正孔ブロック層としては正孔ブロック能を有する材料からなる層であれば特に制限はなく、例えば、TiOxなどのゾルゲル膜、BCP(バソクプロイン)などの真空蒸着膜が挙げられる。
【0108】
<電子ブロック層>
本発明の太陽電池においては、正孔取り出し電極へ電子が流れ込まないように、電子ブロック層を形成することが好ましい。このような電子ブロック層としては特に制限はなく、LUMOレベルが浅く、正孔輸送性を有する材料からなる公知の薄膜が挙げられる。
【0109】
<製膜方法>
このような各層の形成方法としては特に制限はなく、使用する材料の種類に応じて適宜公知の方法を採用することができる。無機材料を使用する場合には、通常、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法またはスパッタリング法などの真空成膜法;電析法、電気泳動法、電解メッキ、無電解メッキなどの湿式成膜法などが用いられる。また、有機材料を使用する場合には、通常、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ドクターブレード法、ロール・ツー・ロール法、スクリーン印刷法などが用いられる。
【実施例】
【0110】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0111】
(合成例1)
<1,3,6,8−テトラキス{4−[3−(トリイソプロポキシシリル)プロピル]フェニル}ピレンの合成>
1,3,6,8−テトラブロモピレン(3.90g,7.53mmol)、4−アリルフェニルボロン酸(6.24g,38.5mmol)およびKCO(5.00g,36.2mmol)を混合してアルゴン置換した後、脱水1,4−ジオキサン(330ml)および脱気した蒸留水(33ml)を添加した。この混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で数分間撹拌した後、Pd(PPh(1.04g,0.90mmol,12mol%)を添加し、次いで、アルゴン雰囲気下、90℃で72時間撹拌して下記反応式(I):
【0112】
【化15】

【0113】
で表される反応を実施した。その後、水を加えて反応を停止させ、有機層と水層を分離した後、水層をクロロホルムで抽出した。得られた有機層を塩化ナトリウムの飽和水溶液で洗浄し、MgSOを用いて乾燥し、ろ過した後、濃縮した。残渣にクロロホルムを添加してシリカゲル(5cmφ×20cm)に通し、得られた有機層を濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物をヘキサン/ジエチルエーテル/クロロホルム=7.5/7.5/1(160ml)の混合溶媒で洗浄した後、乾燥して黄色粉末の1,3,6,8−テトラキス(4−アリルフェニル)ピレンを得た(5.00g,収率100%)。
【0114】
この1,3,6,8−テトラキス(4−アリルフェニル)ピレンをH−NMR測定および13C−NMR測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ3.52(d,J=6.8Hz,8H)、5.12−5.21(m,8H)、6.02−6.13(m,4H)、7.36(d,J=8.0Hz,8H)、7.60(d,J=8.0Hz,8H)、7.99(s,2H)、8.11(s,4H)。
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ40.0、46.9、116.0、125.2、128.1、128.6、129.5、130.7、137.0、137.4、138.9、139.1。
【0115】
次に、1,3,6,8−テトラキス(4−アリルフェニル)ピレン(300mg,0.45mmol)および[PtCl(C(1.04mg,1.77μmol,0.4mol%Pt)を混合してアルゴン置換した後、脱水ベンゼン(12ml)を添加した。この混合物を0℃に冷却し、トリクロロシラン(4.80ml,47.6mmol)を滴下し、アルゴン雰囲気下、40℃で19時間撹拌して下記反応式(II):
【0116】
【化16】

【0117】
で表される反応を実施した。反応終了後、真空下で溶媒を留去して黄色固体の1,3,6,8−テトラキス{4−[3−(トリクロロシリル)プロピル]フェニル}ピレンを得た(544mg,収率100%)。
【0118】
この1,3,6,8−テトラキス{4−[3−(トリクロロシリル)プロピル]フェニル}ピレンをH−NMR測定および13C−NMR測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ1.49−1.53(m,8H)、2.01−2.05(m,8H)、2.85(t,J=8.4Hz,8H)、7.34(d,J=8.0Hz,8H)、7.61(d,J=8.0Hz,8H)、7.99(s,2H)、8.18(s,4H)。
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ23.9、24.1、37.6、125.3、128.1、128.3、128.5、130.5、130.8、137.0、139.1、139.9。
【0119】
次に、アルゴン雰囲気下、1,3,6,8−テトラキス{4−[3−(トリクロロシリル)プロピル]フェニル}ピレン(544mg,0.45mmol)を脱水ジエチルエーテル(80ml)に溶解して0℃に冷却し、脱水イソプロパノール(1.24ml,16.2mmol)および脱水トリエチルアミン(1.26mL,9.06mmol)を滴下した。この反応溶液を、アルゴン雰囲気下、40℃で7時間撹拌して下記反応式(III):
【0120】
【化17】

【0121】
で表される反応を実施した。反応終了後、生成した無機塩をセライトと活性炭に通して除去し、得られた有機層を濃縮して黄褐色粘性液体の1,3,6,8−テトラキス{4−[3−(トリイソプロポキシシリル)プロピル]フェニル}ピレン(以下、「TPhPy−C3シランモノマー」と略す)を得た(670mg,収率100%)。
【0122】
このTPhPy−C3シランモノマーをH−NMR測定および13C−NMR測定により同定した。その結果を以下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ0.70−0.74(m,8H)、1.21(t,J=8.0Hz,24H)、1.79−1.88(m,8H)、2.76(t,J=8.0Hz,8H)、4.20−4.26(m,4H)、7.34(d,J=8.0Hz,8H)、7.57(d,J=8.0Hz,8H)、7.99(s,2H)、8.18(s,4H)。
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ12.0、25.2、25.6、39.2、64.9、125.2、128.5、130.5、134.2、137.2、138.5、141.7、152.6、154.0。
【0123】
(実施例1)
<メソ構造の確認>
合成例1で得たTPhPy−C3シランモノマー(7.5mg)にノニオン性界面活性剤P123(商品名、アルドリッチ社製、化学式:HO(CHCHO)20(CHCH(CH)O)70(CHCHO)20H、15mg)を添加し、これにテトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒(質量比1:1、0.75ml)、水(12μl)および2MのHCL(3.3μl)を添加し、室温下、500rpmで11時間撹拌してゾル溶液を調製した。
【0124】
得られたゾル溶液をキャスト法によりガラス基板上に塗布し、TPhPy−C3架橋有機シリカと界面活性剤からなる有機シリカ薄膜を作製した。この薄膜についてX線回折測定を行なった結果を図4に示す。図4に示したX線回折パターンから明らかなように、この薄膜は周期9.50nm(2θ=0.93°)の規則的なメソ構造を有するものであることが確認された。
【0125】
<太陽電池の作製>
紫外線およびオゾンにより親水化処理を施した清浄なITO付ガラス基板上に、下記式(6):
【0126】
【化18】

【0127】
で表されるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホネート(以下、「PEDOT:PSS」と略す)溶液をスピンコート法(回転数:4000rpm,30秒)により塗布し、大気中、140℃で30分間加熱して膜厚50nmのPEDOT:PSS膜を作製した。
【0128】
次に、合成例1で得たTPhPy−C3シランモノマー(22.5mg)にテトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒(質量比1:1、0.95ml)、水(11μl)および2MのHCL(2μl)を添加し、室温下、500rpmで7時間撹拌した。得られた溶液(100μl)をスピンコート法(回転数:4000rpm,30秒)により前記PEDOT:PSS膜上に塗布し、TPhPy−C3架橋有機シリカ縮合膜を作製した。この有機シリカ縮合膜は大気中で1日間風乾させた。なお、この有機シリカ縮合膜は、後述する界面活性剤の抽出除去の際に、メソ細孔を有するp型のTPhPy−C3架橋有機シリカ薄膜が剥離するのを防ぐために形成した。
【0129】
次に、p型の架橋有機基を有する有機シラン化合物である、前記TPhPy−C3シランモノマー(7.5mg)に、前記ノニオン性界面活性剤P123(15mg)を添加し、これにテトラヒドロフランとエタノールとの混合溶媒(質量比1:1、0.75ml)、水(12μl)および2MのHCL(3.3μl)を添加し、室温下、500rpmで11時間撹拌してゾル溶液を調製した。得られたゾル溶液(100μl)をスピンコート法(回転数:4000rpm,30秒)により、風乾後の前記TPhPy−C3架橋有機シリカ縮合膜上に塗布し、p型のTPhPy−C3架橋有機シリカと界面活性剤からなるメソ構造の有機シリカ薄膜を作製した。この有機シリカ薄膜を大気中で1日間風乾させた後、クロロホルムに浸漬し、超音波洗浄を繰り返して界面活性剤(P123)を抽出除去し、メソ細孔を有するp型のTPhPy−C3架橋有機シリカ薄膜を作製した。
【0130】
次に、n型材料である、下記式(7):
【0131】
【化19】

【0132】
で表されるフラーレン誘導体のPCBM(10.7mg)をクロロホルム(1.07g)に溶解し、50℃で1時間攪拌した。得られた溶液をスピンコート法(回転数:4000rpm,30秒)により前記メソ細孔を有するTPhPy−C3架橋有機シリカ薄膜上に塗布し、メソ細孔の内部へPCBMを浸透させて前記p型のTPhPy−C3架橋メソポーラス有機シリカ薄膜のメソ細孔中にn型材料のPCBMが挿入された有機シリカ薄膜(以下、「PCBM含有有機薄膜」ともいう)を作製した。その後、トルエンを含んだ綿棒を用いてガラス基板上の不要な膜を除去した後、前記PEDOT:PSS膜と前記TPhPy−C3架橋有機シリカ縮合膜と前記PCBM含有有機薄膜の3層の合計膜厚は約170nmであった。
【0133】
このようにして得られた、ITO付ガラス基板上に前記3層を備える太陽電池素子を、大気中、85℃で10分間加熱した後、高真空装置へ導入して1×10−7Torrの雰囲気下でLiFを0.5nmの厚さで真空蒸着させ、続いてAlを150nmの厚さで真空蒸着させた。得られた太陽電池素子を大気から遮断するため、高純度窒素雰囲気(1気圧)のグローブボックス内で紫外線硬化樹脂を用いて前記太陽電池素子をガラス封止して太陽電池を作製した。
【0134】
<太陽電池の光電変換特性の評価>
分光感度測定装置(分光計器(株)製「CEP−2000型」)を使用し、太陽電池には電位を印加せずに外部量子効率(光子から電子への変換効率:Incident−Photon−to−Current Conversion Efficiency(IPCE))の波長依存性を測定(定フォトン測定:1×1016counts/cm)した。その結果を図5に示す。
【0135】
(比較例1)
実施例1と同様にしてITO付ガラス基板上に膜厚50nmのPEDOT:PSS膜を作製した。
【0136】
次に、p型材料である、下記式(8):
【0137】
【化20】

【0138】
で表される1,3,6,8−テトラフェニルピレン(以下、「TPhPy」と略す)(8.3mg)と、n型材料である、前記式(7)で表されるフラーレン誘導体のPCBM(8.3mg)をクロロホルム(3.36g)に溶解し、50℃で1時間攪拌した。得られた溶液(100μl)をスピンコート法(回転数:2000rpm,30秒)により前記PEDOT:PSS膜上に塗布し、TPhPyとPCBMの混合薄膜を作製した。
【0139】
このようにして得られた、ITO付ガラス基板上に前記PEDOT:PSS膜と前記混合薄膜を備える太陽電池素子に、実施例1と同様にしてLiF真空蒸着とAl真空蒸着を順次施し、さらにガラス封止した。得られた太陽電池の外部量子効率の波長依存性を実施例と同様にして測定した。その結果を図5に示す。
【0140】
図5に示した結果から明らかなように、本発明にかかるp型のメソポーラス有機シリカのメソ細孔内にn型材料を挿入した有機薄膜を備える太陽電池(実施例1)には、p型材料とn型材料の混合薄膜を備える場合に比べて、外部量子効率が向上し、特に波長300〜450nmの領域において著しく向上した。
【産業上の利用可能性】
【0141】
以上説明したように、本発明によれば、p型材料とn型材料の組み合わせにかかわらず、ナノメートルオーダーのpn接合界面を有するバルクヘテロ接合型の有機薄膜を容易に形成することが可能となる。
【0142】
したがって、本発明の太陽電池はこのような有機薄膜を備えており、光電変換効率に優れているため、薄型、軽量、フレキシブルな太陽電池として有用である。
【符号の説明】
【0143】
1:基板、2,4:電極、3:有機薄膜(バルクヘテロ接合層)、11:正孔輸送層、12:電子輸送層、21:電子ブロック層、22:正孔ブロック層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極および第2の電極と、該電極間に、p型またはn型のメソポーラス有機シリカとn型またはp型の材料とがバルクヘテロ接合している有機薄膜とを備えることを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記メソポーラス有機シリカが規則的なメソ細孔構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記有機薄膜がp型メソポーラス有機シリカとn型材料とを含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記p型メソポーラス有機シリカが、下記式(1):
【化1】

[式(1)中、Arはそれぞれ独立にフェニレン基、ビフェニリレン基およびナフチレン基からなる群から選択される1種のアリーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、Lはそれぞれ独立にエーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カーボネート基、アミノ基、アミド基およびウレタン基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む2価の脂肪族有機基、アルキレン基または単結合を表し、R〜Rは、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される1種の置換基、ハロゲン原子または水素原子を表す。]
で表される繰り返し単位を有するものであることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
第1の電極を形成する工程と、
界面活性剤の存在下でp型の架橋有機基を有する有機シラン化合物を縮合させて、前記界面活性剤を含有するメソ構造の有機シリカ薄膜を形成する工程と、
前記有機シリカ薄膜中の界面活性剤を除去してp型のメソポーラス有機シリカ薄膜を形成する工程と、
前記p型のメソポーラス有機シリカ薄膜のメソ細孔中にn型材料を挿入してバルクヘテロ接合型の有機薄膜を形成する工程と、
第2の電極を形成する工程と、
を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記p型の架橋有機基を有する有機シラン化合物が、下記式(2):
【化2】

[式(2)中、Arはそれぞれ独立にフェニレン基、ビフェニリレン基およびナフチレン基からなる群から選択される1種のアリーレン基を表し、前記アリーレン基は置換基を有していてもよく、Lはそれぞれ独立にエーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、カーボネート基、アミノ基、アミド基およびウレタン基からなる群から選択される少なくとも1種の基を含む2価の脂肪族有機基、アルキレン基または単結合を表し、R〜Rは、それぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基およびシアノ基からなる群から選択される1種の置換基、ハロゲン原子または水素原子を表し、Rはメチル基またはエチル基を表し、Rはメチル基などの置換基を有していてもよいアリル基を表し、nは0〜3の整数である。]
で表されるものであることを特徴とする請求項5に記載の太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−66328(P2011−66328A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217645(P2009−217645)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構「有機シリカハイブリッド材料の合成と機能設計」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】