説明

太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュール

【課題】意匠性又は反射性を有するとともに、封止材との密着力が高く、湿熱経時による剥離が抑制される太陽電池用バックシート及び長期に亘って発電性能を安定して保つことができる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】支持体と、該支持体の一方の側に設けられ、極性基を有するポリオレフィンのアイオノマー、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む0.8〜15.0g/mのバインダー樹脂、並びに、1.5〜15.0g/mの無機顔料を含有する第1のポリマー層とを含む、太陽電池用バックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池素子の太陽光入射側の反対側に設けられる太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、発電時に二酸化炭素の排出がなく環境負荷が小さい発電方式であり、近年急速に普及が進んでいる。
【0003】
太陽電池モジュールは、通常、太陽光が入射する側のオモテ面ガラスと、太陽光が入射する側とは反対側(裏面側)に配置される、太陽電池用バックシート(以下、単に「バックシート」とも称する)との間に、太陽電池素子(セル)が挟まれた構造を有している。太陽電池モジュールにおいて、オモテ面ガラスとセルとの間、及びセルとバックシートとの間は、それぞれエチレン−ビニルアセテート(EVA)樹脂などで封止されている。
【0004】
バックシートは、太陽電池モジュールの裏面からの水分の浸入を防止する働きを有するもので、従来はガラスやフッ素樹脂等が用いられていたが、近年では、コスト低減の観点からポリエステルが用いられるようになってきている。
【0005】
バックシートは、単なるポリマーシートではなく、種々の機能が付与される場合がある。例えば、バックシートに白色層を設けて反射率を向上させることで反射光を利用して発電効率を向上させたり、あるいは、意匠性を向上させるため、顔料を添加した青色層または黒色層を設けることがなされている(例えば、特許文献1参照)。このように反射率や意匠性を確保するためには白色又は有色の無機顔料を添加した層を設けることが有効である。
一方、バックシートは封止材に対して強固な接着性を有することが必要である。特に太陽電池モジュールは屋外に設置されるので、湿熱雰囲気で長期間保存された場合にもバックシートが封止材から剥離しないことが必要である。
特許文献2にはコロナ放電処理により接着性を向上させる技術が開示されている。
特許文献3にはポリマー基材上に所定量の顔料とバインダーとを含有する着色層と、所定量のバインダーと無機微粒子とを含有する易接着性層とを有するバックシートが開示されている。
特許文献4には基材フィルム上に白色顔料、水系バインダー、及び無機酸化物フィラーを含有する白色層用水系組成物と、水系バインダーを含有する接着保護層用水系組成物と、を塗布して、白色層及び接着保護層を形成してなるバックシート用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−93120号公報
【特許文献2】特開2000−243999号公報
【特許文献3】特開2011−146658号公報
【特許文献4】特開2011−146659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の太陽電池用バックシートはポリエステル支持体、白色又は有色のシート、フッ素系シートなどを貼り合わせることにより形成されていた。このようなバックシートは反射率が高く、発電効率の観点からは有利である。しかしこの型のバックシートはモジュール表面から見ると、セル(青灰色)の周りに白色のバックシート部分が見えるため、意匠上好ましくなかった。そこで、バックシートの表面(セル側)を黒色や青色に着色することがあった。このようなバックシートは意匠性が良好であるが、その反面、白色又は有色の層と封止材の間の接着が不充分であることがある。これに対して、例えば、コロナ放電処理により、湿熱経時をさせる前の接着性を向上させることが可能であるが、コロナ放電処理で得られるバックシートの接着性は、長時間の湿熱経時後には不充分で、たとえば湿熱経時後に剥離が発生する場合がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、意匠性及び/又は反射性を有するとともに、封止材との密着力が高く、湿熱経時による封止材からの剥離が抑制される太陽電池用バックシート及び長期に亘って発電性能を安定して保つことができる太陽電池モジュールを提供し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 支持体と、該支持体の一方の側に設けられ、極性基を有するポリオレフィンのアイオノマー、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む0.8g/m〜15.0g/mのバインダー樹脂、並びに、1.5g/m〜15.0g/mの無機顔料を含有する第1のポリマー層とを含む、太陽電池用バックシート。
<2> 前記支持体がポリエステルを含有する<1>に記載のバックシート。
<3> 前記第1のポリマー層における前記無機顔料の含有量が2.5g/m〜12.5g/mの範囲であり、かつ前記第1のポリマー層におけるバインダー樹脂の含有量が1.0g/m〜12.5g/mである、<1>または<2>に記載のバックシート。
<4> 前記無機顔料が、白色顔料、黒色顔料又は青色顔料である<1>〜<3>のいずれかに記載のバックシート。
<5> 前記第1のポリマー層が、架橋剤に由来する構造部分を含有し、前記第1のポリマー層中における該構造部分の含有量が、前記第1のポリマー層中の前記バインダー樹脂の全質量に対して2〜30質量%である<1>〜<4>のいずれかに記載のバックシート。
<6> 前記架橋剤が、カルボジイミド系架橋剤又はオキサゾリン系架橋剤である<5>に記載のバックシート。
<7> 前記支持体と前記第1のポリマー層との間に、少なくともポリマーを含有する第2のポリマー層を含む<1>〜<6>のいずれかに記載のバックシート。
<8> 120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、保存前の破断伸びに対する比が、50%以上である<1>〜<7>のいずれかに記載のバックシート。
<9> 150℃の雰囲気下に30分間保持した時の収縮率が0.5%以下である<1>〜<8>のいずれかに記載のバックシート。
<10> 前記第1のポリマー層が、太陽電池素子を封止する封止材に対して10N/cm以上の接着力を有し、120℃/100%RHの条件で湿熱処理した後に前記封止材に対して5N/cm以上の接着力を有する<1>〜<9>のいずれかに記載のバックシート。
<11> 前記支持体の前記第1のポリマー層が配置されている側の面とは反対側の面に、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層を含む<1>〜<10>のいずれかに記載のバックシート。
<12> 太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材と接着し、受光面側を保護する表面保護部材と、前記封止材と接着し、前記受光面とは反対側を保護する裏面保護部材とを有し、前記裏面保護部材が<1>〜<11>のいずれかに記載のバックシートである太陽電池モジュール。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、意匠性又は反射性を有するとともに、封止材との密着力が高く、湿熱経時による封止材からの剥離が抑制される太陽電池用バックシート及び長期に亘って発電性能を安定して保つことができる太陽電池モジュールを提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、以下の実施形態は本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。
数値範囲の表示(「m以上n以下」または「m〜n」)は、当該数値範囲の下限値として表示される数値(m)を最小値として含み、当該数値範囲の上限値として表示される数値(n)を最大値として含む範囲を示す。
組成物中のある成分の量について言及する場合において、組成物中に当該成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に別途定義しない限り、当該量は、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示のバックシートは、支持体と、該支持体の一方の側に設けられた第1のポリマー層とを有し、該第1のポリマー層は、太陽電池素子を封止する封止材と直接接着される層であって、極性基を有するポリオレフィンのアイオノマー、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む0.8g/m〜15.0g/mのバインダー樹脂、並びに、1.5g/m〜15.0g/mの無機顔料を含有する。バックシートは、支持体の一方の側に上記特定のバインダー樹脂と所定量の無機顔料を含む第1のポリマー層を最表面に有することで、該第1のポリマー層は着色層として機能し、無機顔料の種類に応じて優れた光反射性及び/又は意匠性を呈するとともに、電池本体との接着(特に太陽電池素子を封止するEVA系封止剤との接着)に優れた易接着性層としても機能し、湿熱環境下での経時で封止材からの剥離等を起こすことなく安定的に保つことができる。太陽電池は、かかるバックシートを用いることで長期に亘って発電性能を安定して保つことができる。
【0012】
−支持体−
バックシートは、基材として、支持体を有する。支持体はポリエステルを含んでもよく、含まなくてもよい。該ポリエステルは、芳香族二塩基酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどを挙げることができる。このうち、力学的物性やコストのバランスの点で、ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
【0013】
前記ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。
支持体は、前記ポリエステルに他の種類の樹脂、例えばポリイミド等を少量ブレンドしたものからなってもよく、樹脂として実質的にポリエステルのみを含むものであってもよい。
【0014】
ポリエステルを重合する際には、カルボキシル基含量を所定の範囲以下に抑え得る観点から、Sb系、Ge系、Ti系の化合物を触媒として用いることが好ましく、中でも特にTi系化合物が好ましい。Ti系化合物を用いる場合、Ti系化合物を1ppm以上30ppm以下、より好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で触媒として用いることにより重合する態様が好ましい。Ti系化合物の割合が前記範囲内であると、末端カルボキシル基を下記範囲に調整し得、ポリエステル支持体の耐加水分解性を低く保ち得る。
【0015】
Ti系化合物を用いたポリエステルの合成には、例えば、特公平8−301198号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号等に記載の方法を適用できる。
【0016】
ポリエステルの全質量に対するカルボキシル基の含量は50当量/t以下が好ましく、より好ましくは35当量/t以下である。カルボキシル基含量が50当量/t以下であると、耐加水分解性を保持し、湿熱経時したときの強度低下を小さく抑制することができる。カルボキシル基含量の下限は、ポリエステル支持体の表面に形成される層(例えば第1のポリマー層)との間の接着性を保持する点で、2当量/tが望ましい。
ポリエステル中のカルボキシル基含量は、重合触媒種、製膜条件(製膜温度や時間)により調整することが可能である。
【0017】
支持体を構成するポリエステルは、重合後に固相重合されていることが好ましい。これにより、好ましいカルボキシル基含量を達成することができる。固相重合は、連続法(タワーの中に樹脂を充満させ、これを加熱しながらゆっくり所定の時間滞流させた後、送り出す方法)でもよいし、バッチ法(容器の中に樹脂を投入し、所定の時間加熱する方法)でもよい。具体的には、固相重合には、特許第2621563号、特許第3121876号、特許第3136774号、特許第3603585号、特許第3616522号、特許第3617340号、特許第3680523号、特許第3717392号、特許第4167159号等に記載の方法を適用することができる。
【0018】
固相重合の温度は、170℃以上240℃以下が好ましく、より好ましくは180℃以上230℃以下であり、さらに好ましくは190℃以上220℃以下である。また、固相重合時間は、5時間以上100時間以下が好ましく、より好ましくは10時間以上75時間以下であり、さらに好ましくは15時間以上50時間以下である。固相重合は、真空中あるいは窒素雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0019】
支持体がポリエステルを含む場合、ポリエステル支持体は、例えば、上記のポリエステルをフィルム状に溶融押出を行なった後、キャスティングドラムで冷却固化させて未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸して形成された2軸延伸フィルムであることが好ましい。
さらに、必要に応じて180〜230℃で1〜60秒間の熱処理を行なったものでも行なわないものでもよい。
【0020】
支持体の厚みは、25〜300μm程度が好ましく、より好ましくは125〜260μmである。支持体の厚みは、25μm以上であると力学強度が良好であり、300μm以下であるとコスト的に有利である。
ポリエステル支持体は、厚みが増すに伴って耐加水分解性が悪化し、長期使用に耐えない傾向にあり、ある実施態様では、ポリエステル支持体の厚みが120μm以上300μm以下であって、かつポリエステル中のカルボキシル基含量が2〜50当量/tである場合に、よりバックシートの湿熱耐久性の向上効果が奏され得る。
【0021】
−第1のポリマー層−
第1のポリマー層は、極性基を有するポリオレフィンのアイオノマー、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1つを含む0.8g/m〜15.0g/mのバインダー樹脂と、1.5g/m〜15.0g/mの無機顔料を含有する。この第1のポリマー層は、必要に応じて、さらに上記以外の樹脂、各種添加剤などの他の成分を含んでも含まなくてもよい。
【0022】
第1のポリマー層の第1の機能は、反射機能又は装飾機能である。例えば、第1のポリマー層が白色の無機顔料を含有すると、入射光のうち太陽電池素子(セル)を通過して発電に使用されずにバックシートに到達した光を反射させてセルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げ得る。また、例えば、第1のポリマー層が青色顔料又は黒色顔料である無機顔料を含むと、太陽電池モジュールを太陽光が入射する側(オモテ面側)から見た場合の外観の装飾性を向上させ得る。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側(受光側)から見ると、セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートが第1のポリマー層を有することにより装飾性を向上させて見栄えを改善することができる。
【0023】
(無機顔料)
第1のポリマー層は、無機顔料の少なくとも一種を含有する。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料を、適宜選択して含有することができる。例えば、反射性の向上を考慮する場合は白色顔料を用い、意匠性(装飾性)を考慮する場合は青色顔料又は黒色顔料を用いることができる。
【0024】
第1のポリマー層中には、無機顔料を1.5g/m〜15.0g/mの範囲で含有する。無機顔料の第1のポリマー層中における含量が1.5g/m以上であると、必要な着色を得、反射性や装飾性が十分となり得る。また、第1のポリマー層中における無機顔料の含量が15.0g/m以下であると、EVA等の封止材との接着性が十分となり得、且つ第1のポリマー層の面状が良好となり、膜強度を得うる。
これらの観点から、ある実施態様においては、無機顔料の好ましい含量は、2.5g/m〜12.5g/mの範囲であり、より好ましくは3.0〜13.0g/mの範囲であり、さらに好ましくは4.5〜11.0g/mである。
【0025】
無機顔料の平均粒径は、体積平均粒径で0.03〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5μm程度である。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が高くなり得る。平均粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔商品名、(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0026】
(バインダー)
第1のポリマー層は、極性基を有するポリオレフィンのアイオノマー、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1つを含むバインダー樹脂(以下、「特定の樹脂」という場合がある。)を含有する。これらのバインダー樹脂を含むことにより、ポリウレタンやポリエステルなどの樹脂に比べ、加水分解し難く、湿熱経時による劣化を抑制し得、屋外の過酷な環境下においても長期にわたってEVA等の封止材との密着性を高く保ち得る。この効果の原因の詳細は不明であるが、おそらくバインダー樹脂の主鎖が湿熱経時で分解しにくいためであると推測される。
【0027】
第1のポリマー層中におけるバインダー樹脂の含有量は、0.8g/m〜15.0g/mの範囲であり、好ましくは1.0g/m〜12.5g/mの範囲である。また第1のポリマー層中におけるバインダー樹脂の含有量は、第1のポリマー層中における前記無機顔料の含有量に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの含有量は、15質量%以上であると、第1のポリマー層の強度が充分に得られ、また200質量%以下であると、反射率や装飾性を良好に保つことができる。
【0028】
極性基を有するポリオレフィンのアイオノマーとしては、カルボキシル基等の極性基を有するものが好ましく、例えば、ケミパールS75N(商品名、三井化学(株)製)、アローベースSE1200、アローベースSB1200(商品名、ユニチカ(株)製)、ハイテックS3111、ハイテックS3121(商品名、東邦化学(株)製) 等が挙げられる。
【0029】
ポリアクリルとしては、ジュリマーET−410、ジュリマーSEK−301(ともに商品名、日本純薬(株)製)が挙げられる。アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例としてセラネートWSA1060、セラネートWSA1070(ともに商品名、DIC(株)製)、ポリデュレックスH7620、ポリデュレックスH7630、ポリデュレックスH7650(全て商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)などを挙げることができる。
【0030】
ポリビニルアルコール(PVA)としては、PVA105、R103、R205(いずれも商品名、クラレ(株)製)等が挙げられる。また、シラノール変性されたPVAも好ましく、例えばR1130、R2105、R2130(以上商品名、クラレ(株)製)等が挙げられる。
【0031】
第1のポリマー層は、極性基を有するポリオレフィンのアイオノマー、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1つを含むバインダー樹脂以外に、必要に応じてこれ以外のポリマー(以下、「特定の樹脂以外の樹脂」という場合がある。)をバインダーとして混合してもしなくてもよい。特定の樹脂以外の樹脂としては例えばポリエステル、ポリウレタンなどを挙げることができる。特定の樹脂以外の樹脂の添加量は、第1のポリマー層に含まれる全バインダーの30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であることが好ましい。特定の樹脂以外の樹脂の割合が全バインダーの30質量%以下であると、湿熱経時でバックシートの封止材からの剥離等の不都合を回避し得る。
【0032】
第1のポリマー層を形成する場合、無機顔料及び上記バインダー樹脂以外に、必要に応じて、更に他の樹脂、架橋剤、界面活性剤、フィラー等の添加剤を添加してもしなくてもよい。
【0033】
(架橋剤)
第1のポリマー層は、架橋剤の少なくとも一種を含有することが好ましい。
第1のポリマー層に好適な架橋剤の例としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等を挙げることができる。中でも、湿熱経時後の接着性を確保する観点から、カルボジイミド系架橋剤又はオキサゾリン系架橋剤が好ましく、特にオキサゾリン系の架橋剤が好ましい。
【0034】
前記カルボジイミド系架橋剤の具体例としては、カルボジライトV-02-L2、カルボジライトSV−02、カルボジライトV−02、カルボジライトE−01(以上商品名、日清紡(株)製)が挙げられる。
【0035】
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく用いられる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、エポクロスK2020E、エポクロスK2030E、エポクロスWS-500、エポクロスWS-700(いずれも登録商標、日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
【0036】
第1のポリマー層を形成するための塗布液に架橋剤を添加する場合、その添加量は、塗布液におけるバインダー樹脂の含有量に対して、2〜30質量%が好ましい。該添加量がこの範囲であると、第1のポリマー層に含まれるバインダー樹脂の全質量に対する、架橋剤に由来する構造部分の質量の割合が、2質量%〜30質量%となる。前記添加量はより好ましくは5〜20質量%であり、前記添加量がこの範囲であると、前記割合が5質量%〜20質量%となる。架橋剤の添加量は、2質量%以上であると、第1のポリマー層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、30質量%以下であると、塗布層中に凝集物が発生し難く、塗布液のポットライフを長く保ち得る。
【0037】
前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げられる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、15mg/m以下であると、接着を良好に行なうことができる。
【0038】
(微粒子)
第1のポリマー層は、無機顔料以外の無機微粒子を含有してもしなくてもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
【0039】
無機微粒子の粒径は、体積平均粒径で10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径がこの範囲内であると、より良好な易接着性を得ることができる。粒径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔商品名、(株)堀場製作所製〕により測定される値である。
【0040】
無機微粒子の形状には、特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のいずれのものを用いることができる。
【0041】
無機微粒子の含有量は、第1のポリマー層中のバインダー樹脂の全質量に対して、5〜400質量%の範囲とすることが好ましい。無機微粒子の含有量は、5質量%以上であると、湿熱雰囲気に曝されたときに良好な接着性を保持し得、400質量%以下であると、第1のポリマー層の面状を良好とし得る。
中でも、無機微粒子の含有量は、50〜300質量%の範囲が好ましい。
【0042】
(物性)
−厚み−
第1のポリマー層の厚みには、特に制限はない。通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。第1のポリマー層の厚みは、0.05μm以上であると、反射性又は意匠性を好適に得うるとともに、必要な易接着性を好適に得うる。8μm以下であると面状がより良好になり得る。
【0043】
−接着力−
第1のポリマー層は、極性基を有するポリオレフィンのアイオノマー、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1つを含むバインダー樹脂と、2.5〜14.0g/mの無機顔料を含有することで、太陽電池素子を封止するEVA等の封止材に対して、10N/cm以上(好ましくは20N/cm以上)の接着力を有し、120℃/100%RHの条件で湿熱処理した後に前記封止材に対して5N/cm以上の接着力を有し得る。バックシートの封止材と接着させる面(第1のポリマー層)にコロナ処理を施してもよく施さなくてもよい。コロナ処理を施した場合、接着力をより高め得る。
【0044】
−反射率−
第1のポリマー層に無機顔料として白色顔料を添加して反射層とする場合、第1のポリマー層が設けられている側のバックシート表面における550nmの光の光反射率は、75%以上であることが好ましい。なお、光反射率とは、バックシート表面のうち、第1のポリマー層を有する側(反射層側)から入射した光が反射層で反射した光量の入射光量に対する比率である。
光反射率が75%以上であると、セルを素通りして内部に入射した光を効果的にセルに戻すことができ、発電効率の向上効果が大きい。第1のポリマー層における無機顔料の含有量を2.5〜14.0g/mの範囲で制御することにより、光反射率を75%以上に調整し得る。
【0045】
第1のポリマー層を反射層として構成する場合、反射層の厚みは、1〜20μmが好ましく、より好ましくは1.5〜10μm程度である。この厚みが1μm以上であると、必要な装飾性や反射率を得うる。また20μm以下であると、面状を良好に保ち得る。
【0046】
(第1のポリマー層の形成方法)
第1のポリマー層は、第1のポリマー層を形成するための塗布液(第1ポリマー層形成用塗布液)を支持体に直接又は後述する第2のポリマー層を介して塗布することにより形成することができる。
従来のように、無機顔料等を含む樹脂フィルムをウレタンやポリエステル等の接着剤を介して貼り合わせてバックシートを作成する場合、バックシートの厚みが大きくなり、また長期間の使用により接着剤が加水分解して劣化するためバックシートの封止材からの剥離が生じ易い。一方、本実施形態のように塗布により第1のポリマー層を形成すれば、簡便であり、均一な薄膜の形成が可能であり、且つ剥離が生じにくい。
【0047】
塗布方法としては、例えば、グラビアコーター、バーコーターなどの公知の塗布方法を利用することができる。
塗布液は、塗布溶媒として水を用いた水系でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒を用いた溶剤系でもよい。中でも、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。塗布溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
−第2のポリマー層−
バックシートは、支持体と第1のポリマー層との間に少なくともポリマー(バインダー樹脂)を含む第2のポリマー層を有しても有さなくてもよい。第2のポリマー層の例としては、第1のポリマー層と支持体の間の接着性を向上させ得る下塗り層が挙げられる。
かかる下塗り層のバインダーとしては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂等を用いることができる。これらの中では、接着性の観点からカルボキシル基含有ポリエステル樹脂またはアクリルシリコーン樹脂が特に好ましい。
【0049】
(その他の添加剤)
下塗り層には、必要に応じて、架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもしなくてもよい。
【0050】
(架橋剤)
前記架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。これらの中でカルボジイミド系及びオキサゾリン系架橋剤が好ましい。カルボジイミド系架橋剤の具体例としてはカルボジライトV−02−L2(商品名、日清紡績(株)製)、オキサゾリン系架橋剤の具体例としてはエポクロスWS−700、エポクロスK−2020E(いずれも登録商標、日本触媒(株)製)などがある。
架橋剤の添加量は、下塗り層を構成するバインダーに対して0.5〜25質量%が好ましく、より好ましくは2〜20質量%である。架橋剤の添加量は、0.5質量%以上であると、下塗り層の強度及び接着性を保持しながら充分な架橋効果が得られ、25質量%以下であると、塗布液のポットライフを長く保てる。
【0051】
(界面活性剤)
前記界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤を添加する場合、その添加量は0.1〜10mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜3mg/mである。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であると、ハジキの発生を抑えて良好な層形成が得られ、10mg/m以下であると、支持体及び第1のポリマー層との接着を良好に行なうことができる。
【0052】
(フィラー)
フィラーとしてはコロイダルシリカ、二酸化チタンなどの公知のフィラーを用いることができる。
フィラーの添加量は、下塗り層のバインダー樹脂に対し20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーの添加量が20質量%以下であると、下塗り層の面状がより良好に保てる。
【0053】
(厚み)
下塗り層の厚みは0.05〜10μmである。下塗り層の厚みが0.05〜10μmの範囲にあると下塗り層の耐久性と面状を両立し、支持体と第1のポリマー層との接着性を高めることができ、特に1.0〜10μm程度の範囲が好ましい。
【0054】
(下塗り層の形成方法)
下塗り層は、バインダー等を含む塗布液を支持体上に塗布して乾燥させることにより形成することができる。乾燥後、加熱するなどして硬化させてもよい。塗布方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
塗布液に用いる溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトン等の有機溶媒でもよい。溶媒は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。ある実施態様では、バインダーを水含有溶媒に分散した水系塗布液を形成して、これを塗布することが好ましい。この場合、溶媒中の水の割合は60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0055】
支持体が2軸延伸フィルムである場合は、2軸延伸した後の支持体に下塗り層を形成するための塗布液を塗布した後、塗膜を乾燥させてもよいし、1軸延伸後の支持体に塗布液を塗布して塗膜を乾燥させた後に、初めの延伸と異なる方向に支持体を延伸してもよい。延伸前の支持体に塗布液を塗布して塗膜を乾燥させた後に支持体を2方向に延伸してもよい。
【0056】
−耐候性層−
バックシートは、前記支持体の、前記第1のポリマー層が配置されている面とは反対側の面に、さらに、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層を有することが好ましい。
【0057】
耐候性層形成用塗布液が含有するフッ素系樹脂としては、例えば、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体が挙げられる。中でも、溶解性、および耐候性の観点から、ビニル系化合物と共重合させたクロロトリフルオロエチレン・ビニルエーテル共重合体が好ましい。
耐候性層形成用塗布液の全固形分質量に対するフッ素系樹脂の含有量は、耐候性と膜強度の観点から、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0058】
耐候性層形成用塗布液が含有するシリコーン−アクリル複合樹脂としては、セラネートWSA1060、セラネートWSA1070〔共に商品名、DIC(株)製〕とポリデュレックスH7620、ポリデュレックスH7630、ポリデュレックスH7650〔全て商品名、旭化成ケミカルズ(株)製〕が挙げられる。
耐候性層形成用塗布液全固形分質量に対するシリコーン−アクリル複合樹脂の含有量は、耐候性と膜強度の観点から、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜80質量%であることがより好ましい。
【0059】
耐候性層形成用塗布液の塗布量は、耐候性および支持体との密着性の観点から、0.05g/m〜30g/mとすることが好ましく、1g/m〜20g/mとすることがより好ましい。
【0060】
耐候性層形成用塗布液を塗布するための方法は、特に制限はない。
塗布方法としては、たとえばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
耐候性層形成用塗布液の塗布溶媒としては好ましくは水が用いられ、耐候性層形成用塗布液に含まれる溶媒中の60質量%以上が水であることが好ましい。水系塗布液は、環境に負荷をかけにくい点で好ましく、また水の割合が60質量%以上であることにより、防爆性、および安全性の点で有利である。
耐候性層形成用塗布液中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の70質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0061】
耐候性層は、前記無機酸化物フィラー及び無機酸化物フィラー以外の微粒子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤等の種々の添加剤を含有していてもよい。
【0062】
耐候性層の層厚は、0.3μm〜15.0μmであることが好ましく、0.5μm〜12.0μmであることがより好ましい。膜厚を0.3μm以上とすることで、耐候性を十分に発現することができ、15.0μm以下とすることで面状悪化を抑制することができる。
なお、耐候性層は、単層でもよいし、2層以上を積層して構成してもよい。
【0063】
−バックシートの製造−
バックシートは、上記のように、支持体の上に必要に応じて下塗り層(第2のポリマー層)を形成した後、上記の第1のポリマー層を塗布により形成することにより好適に作製し得る。
第1のポリマー層形成用塗布液は、2.5〜14.0g/mの無機顔料とバインダー樹脂とを含有する。塗布液を構成する成分や量的範囲の詳細は、既述の通りである。
【0064】
好適な塗布法も既述の通りであり、例えばグラビアコーターやバーコーターを利用することができる。
【0065】
第1のポリマー層形成用塗布液は、溶媒全質量に対して60質量%以上が水である水系塗布液であることが好ましい。水系塗布液は、環境負荷の点で好ましい。水の割合が60質量%以上であることにより、環境負荷が特に小さくなる。
第1のポリマー層形成用塗布液中の水の割合は、環境負荷の観点からは、さらに多い方が望ましく、水が全溶媒の90質量%以上含まれる場合がより好ましい。
【0066】
支持体の表面に直にあるいは好ましくは、厚み2μm以下の下塗り層(第2のポリマー層)を介して、第1のポリマー層形成用塗布液を塗布し、第1のポリマー層を形成することができる。
【0067】
(熱収縮率)
ある実施態様において、バックシートは、150℃の雰囲気下に30分間保持した時の収縮率が0.5%以下とすることができる。
一般にポリエステルは、ガラスに比べて、熱膨張係数や吸湿膨張係数が大きいために温湿度変化で応力がかかりやすく、ひび割れや層の剥がれを招来しやすい傾向があるが、熱収縮率が上記範囲内であると、長期に亘る経時でのひび割れの発生及び塗布形成された層の支持体等からの剥がれを効果的に防止し得る。
熱収縮率は、例えば、支持体として製膜したシート状のポリマーを80℃〜200℃程度の温度で熱処理するによって、上記範囲に調整することができる。
【0068】
(破断伸び率)
バックシートは、120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、保存前の破断伸びに対する比(以下、単に「破断伸び保持率」ともいう)が50%以上であるものが好ましい。破断伸び保持率が50%以上であることで、加水分解に伴う変化が抑えられ、長期使用の際に封止材との密着界面での密着状態が安定的に保持されることにより、経時でのバックシートの封止材からの剥離等が防止される。これにより、例えば屋外等の高温、高湿環境や曝光下に長期に亘り置かれる場合でも、高い耐久性能を示す。
ここで破断伸び保持率は、支持体と第1のポリマー層(必要に応じて第2のポリマー層等の他の層)が設けられた形態で測定される破断伸びに基づいて算出される値である。
バックシートの破断伸び保持率は、上記同様の理由から、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましい。
【0069】
<太陽電池モジュール>
本開示の太陽電池モジュールは、前記バックシートを備える。
ある実施形態では、前記モジュールは、太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材と接着し、受光面側を保護する表面保護部材と、前記封止材と接着し、前記受光面とは反対側を保護する裏面保護部材とを有し、前記裏面保護部材が前記バックシートである。より具体的には、例えば、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子を、太陽光が入射する透明性の基板(表面保護部材)と既述のバックシート(裏面保護部材)との間に配置し、該基板とバックシートとの間を封止材、好ましくはエチレン−ビニルアセテート(EVA)系封止材で封止して構成される。
【0070】
太陽電池モジュール、太陽電池素子(セル)、バックシート以外の部材については、例えば、「太陽光発電システム構成材料」(杉本栄一監修、(株)工業調査会、2008年発行)に詳細に記載されている。
【0071】
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
【0072】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は質量基準である。体積平均粒子径は、特に断りの無い限り、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置LA950〔商品名、(株)堀場製作所製〕を用いて測定した。
【0074】
(実施例1)
−ポリエステル支持体の作製−
<ポリエステルの合成>
高純度テレフタル酸(三井化学(株)製)100kgとエチレングリコール(日本触媒(株)製)45kgのスラリーを、予めビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート約123kgが仕込まれ、温度250℃、圧力1.2×10Paに保持されたエステル化反応槽に、4時間かけて順次供給し、供給終了後もさらに1時間かけてエステル化反応を行なった。その後、得られたエステル化反応生成物123kgを重縮合反応槽に移送した。
【0075】
引き続いて、エステル化反応生成物が移送された重縮合反応槽に、エチレングリコールを、得られるポリマーに対して0.3質量%添加した。5分間撹拌した後、酢酸コバルト及び酢酸マンガンのエチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対してそれぞれ30ppm、15ppmとなるように加えた。更に5分間撹拌した後、チタンアルコキシド化合物の2質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。前記チタンアルコキシド化合物は、特開2005−340616号公報の段落番号[0083]の実施例1で合成しているチタンアルコキシド化合物(Ti含有量=4.44質量%)である。その5分後、ジエチルホスホノ酢酸エチルの10質量%エチレングリコール溶液を、得られるポリマーに対して5ppmとなるように添加した。
【0076】
得られた低重合度重合体を30rpmで攪拌しながら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。そのまま3時間反応を続け、その後反応系を窒素パージし、常圧に戻し、重縮合反応を停止した。そして、得られたポリマー溶融物を冷水にストランド状に吐出し、直ちにカッティングしてポリマーのペレット(直径約3mm、長さ約7mm)を作製した。
【0077】
<固相重合>
上記で得られたペレットを、40Paに保たれた真空容器中、220℃の温度で30時間保持して、固相重合を行なった。
【0078】
<ベース形成>
固相重合を経た後のペレットを、280℃で溶融して金属ドラムの上にキャストし、厚さ約2.5mmの未延伸ベースを作成した。その後、90℃で縦方向に3倍に延伸し、更に120℃で横方向に3.3倍に延伸した。その後215℃で1分間熱固定して、厚み250μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体(以下、「支持体」と称することがある。)を得た。
別途、未延伸ベースの厚みを変更する以外は同様にして125μm厚の2軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体(PET基材)、188μm厚のPET基材、および300μm厚のPET基材を得た。
【0079】
<下塗り層>
−下塗り層形成用塗布液の調製−
下記組成中の各成分を混合し、下塗層形成用塗布液を調製した。
(塗布液の組成)
・ポリエステル系バインダー ・・・48.0質量部
(バイロナールDM1245(登録商標、東洋紡(株)製、固形分30質量%))
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・10.0質量部
(商品名:カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:10質量%)
・オキサゾリン化合物(架橋剤) ・・・3.0質量部
(エポクロスWS700(登録商標)、(株)日本触媒製、固形分:25質量%)
・界面活性剤 ・・・15.0質量部
(商品名:ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・蒸留水 ・・・907.0質量部
【0080】
−下塗り層の形成−
得られた下塗り層形成用塗布液をPET基材の一方の面に、バインダー量が塗布量で0.1g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが約0.1μmの下塗り層を形成した。
【0081】
<着色層>
−二酸化チタン分散物の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理した。
【0082】
(二酸化チタン分散物の組成)
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm) ・・・39.9質量%
〔商品名:タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%〕
・ポリビニルアルコール ・・・49.9質量%
〔商品名:PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10質量%〕
・界面活性剤〔商品名:デモールEP、花王(株)製、固形分:10質量%〕・・・0.5質量%
・蒸留水 ・・・9.7質量%
【0083】
−着色層形成用塗布液の調製−
下記組成中の成分を混合し、着色層形成用塗布液を調製した。
【0084】
(塗布液の組成)
・二酸化チタン分散物 ・・・80.0質量%
・シラノール変性ポリビニルアルコールバインダー(P−1) ・・・11.4質量%
〔商品名:R1130、株〕クラレ製、固形分:7質量%〕
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル ・・・3.0質量%
〔商品名:ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%〕
・オキサゾリン化合物 ・・・2.0質量%
〔エポクロスWS−700(登録商標)、日本触媒(株)製、固形分:25%;架橋剤〕
・蒸留水 ・・・3.6質量%
【0085】
−着色層(第1のポリマー層)の形成−
得られた塗布液を、上記の2軸延伸PET基材上の一方の面に塗布し、180℃で1分間乾燥させて、二酸化チタン量が7.0g/m、バインダー量が1.2g/mの着色層を形成した。
【0086】
<裏面下塗り層>
−顔料分散物の調製−
下記組成中の各成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理した。
【0087】
(顔料分散物の組成)
・二酸化チタン(体積平均粒子径=0.42μm) ・・・40質量%
(商品名:タイペークR−780−2、石原産業(株)製、固形分100質量%)
・ポリビニルアルコール水溶液(10質量%) ・・・20.0質量%
(商品名:PVA−105、(株)クラレ製)
・界面活性剤(商品名:デモールEP、花王(株)製、固形分:25質量%)・・・0.5質量%
・蒸留水 ・・・39.5質量%
【0088】
−裏面下塗り層形成用塗布液の調製−
下記組成中の各成分を混合し、下塗り層形成用塗布液を調製した。
(塗布液の組成)
・アクリル/シリコーン系バインダー(バインダー)・・・362.3質量部
(商品名:セラネートWSA−1070、DIC(株)製、固形分:40質量%)
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・48.3質量部
(商品名:カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:40質量%)
・界面活性剤 ・・・9.7質量部
(商品名:ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・上記分散物 ・・・157.0質量部
・蒸留水 ・・・422.7質量部
【0089】
−裏面下塗り層の形成−
得られた下塗り層形成用塗布液を支持体の白色層を形成した面の反対面に、バインダー量が塗布量で3.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚みが約3μmの下塗り層を形成した。
【0090】
<裏面ポリマー層>
−裏面ポリマー層形成用塗布液の調製−
下記組成中の各成分を混合し、裏面ポリマー層形成用塗布液を調製した。
(塗布液の組成)
・アクリル/シリコーン系バインダー(バインダー)・・・362.3質量部
(商品名:セラネートWSA−1070、DIC(株)製、固形分:40質量%)
・カルボジイミド化合物(架橋剤) ・・・24.2質量部
(カルボジライトV−02−L2、日清紡績(株)製、固形分:40質量%)
・界面活性剤 ・・・24.2質量部
(商品名:ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分:1質量%)
・蒸留水 ・・・703.8質量部
【0091】
−裏面ポリマー層の形成−
得られた裏面ポリマー層形成用塗布液を裏面下塗り層の上に、バインダー量が塗布量で2.0g/mになるように塗布し、180℃で1分間乾燥させて、乾燥厚み約2μmの裏面ポリマー層を形成した。
【0092】
こうして、PET基材の両面に塗布により各層を形成したバックシート試料を作製した。この試料について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
<評価>
−1.接着性−
[A]湿熱経時前の接着性(Fr)
上記のようにして作製したサンプルシートをカットして、20mm巾×150mm長のサイズを有するサンプル片を2枚準備した。
この2枚のサンプル片を、互いに着色層(第1のポリマー層)側が内側になるように重ねて配置し、この間に20mm幅×100mm長のサイズを有するEVAシート〔商品名:SC50B、三井化学ファブロ社製〕を挟みこんだ。サンプル片とEVAシートの長さが異なるので、ここで得られた積層試料の一端から50mmまでの領域にはEVAシートが存在しない。この積層試料を、真空ラミネータ〔日清紡社製〕を用いてホットプレスすることにより、EVAシートとサンプル片の第1ポリマー層とを接着させた。このときの接着条件は、以下の通りとした。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンで150℃で30分間、本接着処理を施した。このようにして、互いに接着した2枚のサンプル片の一端から50mmまでの領域はEVAシートと未接着で、残りの100mmの部分にEVAシートが接着された接着評価用試料を得た。
【0094】
得られた接着評価用試料のEVA未接着部分を、テンシロン万能材料試験機(商品名:RTC−1210A、ORIENTEC製)にて上下クリップに挟み、剥離角度180°、引っ張り速度300mm/分で引っ張りせん断試験を行ない、これにより測定された引張り剪断接着強さを接着力の指標とした。
接着力を、以下の評価基準にしたがって評価した。このうち、ランク4、5が実用上許容可能な範囲である。
【0095】
<評価基準>
5:密着が非常に良好であった(20N/10mm以上)
4:密着は良好であった (10N/10mm以上20N/10mm未満)
3:密着がやや不良であった (5N/10mm以上10N/10mm未満)
2:密着不良が生じた (3N/10mm以上5N/10mm未満)
1:密着不良が顕著であった (3N/10mm未満)
【0096】
[B]湿熱経時後の接着性(PC)
得られた接着評価用試料を、120℃、100%RHの環境条件下で48時間保持(湿熱経時)した後、前記[A]と同様の方法にて接着力を測定した。測定された保持後の接着力について、同じ接着評価用試料の前記[A]湿熱経時前の接着力に対する比率〔湿熱経時後の接着力/[A]湿熱経時前の接着力×100〕を算出した(単位:パーセント)。また、測定された湿熱経時後の接着力をもとに、前記[A]と同様の方法にて接着力を評価した。
【0097】
−2.破断伸び保持率−
得られた試料について、以下の測定方法により得られた破断伸びの測定値L及びLに基づいて、下記式にて示される破断伸び保持率(%)を算出した。実用上許容できるものは、破断伸び保持率が50%以上のものである。
破断伸び保持率(%)=(L/L)×100
【0098】
(破断伸びの測定方法)
試料を、幅10mm×長さ200mmに裁断して、測定用の試料A及びBを用意する。
試料Aに対して、25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿した後、テンシロン万能材料試験機(商品名:RTC−1210A、ORIENTEC製)で引っ張り試験を行う。なお、測定は試料の両端において端から50mmまでの領域をそれぞれチャッキングし、延伸される部分の長さを100mmとして行う。また、引っ張り速度は20mm/分である。この評価で得られた試料Aの破断伸びをLとする。
別途、試料Bに対して、120℃、100%RHの雰囲気で50時間湿熱処理した後、試料Aと同様にして引っ張り試験を行う。この時の試料Bの破断伸びをLとする。
【0099】
−3.熱収縮−
試料を25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿する。その後、カミソリを用いて、試料表面に約30cm間隔で平行な2つのキズをつけて、この間隔Gを測定する。このサンプルを150℃で30分間保持して熱処理する。熱処理後の試料を25℃、60%RHの雰囲気で24時間調湿してから2つのキズの間隔Gを測定する。
収縮率は下記の式で計算する。収縮率は試料の長手方向と幅方向について行い、この平均値を試料の収縮率とする。収縮率の単位は%で、数値が正の時は伸びを、負の時は縮みを表す。
収縮率=[(G−G)/G]×100
【0100】
(実施例2、3)
実施例1の無機顔料を群青またはカーボンブラックに変更する以外は実施例1と同様にして実施例2と3を実施した。
群青とカーボンブラックの分散物は以下の方法で作成した。
【0101】
<青色層>
−群青分散物の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理した。
【0102】
(群青分散物の組成)
・群青(商品名:Ultramarine Blue Nubiflow、(株)尾関より入手可能)・・・39.9質量%
・ポリビニルアルコール ・・・8.0質量%
〔商品名:PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10%〕
・界面活性剤〔商品名:デモールEP、花王(株)製、固形分:25%〕 ・・・0.5質量%
・蒸留水 ・・・51.6質量%
【0103】
<黒色層>
−カーボンブラック分散物の調製−
下記組成中の成分を混合し、その混合物をダイノミル型分散機により1時間、分散処理した。
(カーボンブラック分散物の組成)
・カーボンブラック(商品名:トーカブラック #8500F、東海カーボン社製) ・・・39.9質量%
・ポリビニルアルコール ・・・8.0質量%
〔商品名:PVA−105、(株)クラレ製、固形分:10%〕
・界面活性剤〔商品名:デモールEP、花王(株)製、固形分:25%〕 ・・・0.5質量%
・蒸留水 ・・・51.6質量%
【0104】
得られた試料について実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0105】
(実施例5、6、7、比較例1、2)
着色層のバインダーを表1のように変更する以外は実施例1と同様にして実施例5、6、7と比較例1、2を実施した。得られた試料について実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0106】
(実施例8)
着色層を形成する側の面に下塗り層を設けないこと以外は実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0107】
(実施例9〜12)
着色層の架橋剤を表1のように変更する以外は実施例1と同様にして実施例9〜12を実施した。得られた試料について実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0108】
(実施例13、15、16、比較例3、4)
着色層の無機顔料の添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様にして実施例13、15、16と比較例3、4を実施した。得られた試料について実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0109】
(実施例17、19〜22)
着色層のバインダーの添加量を表1のように変更する以外は実施例1と同様にして実施例17、19〜22を実施した。得られた試料について実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0110】
(実施例23)
支持体として、実施例1の支持体の形成で、固相重合を行わなかったことと、ベース形成時の熱固定温度を215℃から235℃に変更した以外は、実施例1と同様にして支持体を形成した。この支持体を用いる以外は実施例1と同様にして実施例23を実施した。得られた試料について実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0111】
(比較例5)
厚さ50μmの白色PET(二酸化チタン含有率12質量%含有するポリエチレンテレフタレートベース、基材1)と厚さ188μmの透明PET(二酸化チタンを含有しないポリエチレンテレフタレートベース、基材2)を下記の条件で張り合わせたバックシートを準備した。
【0112】
〈貼合方法〉
接着剤としてLX−660(K)〔商品名、DIC(株)製〕に、硬化剤KW−75〔商品名DIC(株)製〕を10部混合したものを用い、基材2と基材1とを真空ラミネータ〔日清紡(株)製 真空ラミネート機〕でホットプレス接着した。
接着は80℃で3分の真空引き後、2分間加圧することで行い、その後40℃で4日間保持して反応を完了させた。
【0113】
白色PETの表面に50Hzの周波数で1kJ/mの強度でコロナ放電処理を施した。その後、実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0114】
(実施例24〜29)
着色層に添加するオキサゾリン化合物(架橋剤)の量を表1に示すように変更する以外は実施例1と同様にして実施例24〜29を実施した。得られた試料について実施例1と同様の評価を行った結果を表1に示す。
【0115】
(実施例30)
<太陽電池モジュールの作製>
厚さ3.2mmの強化ガラスと、EVAシート〔商品名:SC50B、三井化学ファブロ社製〕と、結晶系太陽電池素子(セル)と、EVAシート〔商品名:SC50B、三井化学ファブロ社製〕と、実施例1のバックシート1と、をこの順に重ね合わせ、真空ラミネータ〔日清紡社製〕を用いてホットプレスすることにより、EVAと接着させた。ただし、バックシートはその易接着性層(着色層)がEVAシートと接触するように配置した。また、EVAの接着条件は、以下の通りである。
真空ラミネータを用いて、128℃で3分間の真空引き後、2分間加圧して仮接着した。その後、ドライオーブンにて150℃で30分間、本接着処理を施した。
このようにして、結晶系の太陽電池モジュール1を作製した。また、バックシート1に代え、バックシート2〜29のいずれかを用いることにより、結晶系の太陽電池モジュール2〜29を作製した。
作製した太陽電池モジュール1〜29について、発電運転をしたところ、いずれも太陽電池として良好な発電性能を示した。
【0116】
【表1】



【0117】
表1に示すように、実施例では、EVA系封止材への接着性と反射性に優れていた。これに対し、比較例では、接着性(特に湿熱経時後の接着性)の点で大幅に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、意匠性又は反射性を有するとともに、封止材との密着力が高く、湿熱経時による封止材からの剥離が抑制される太陽電池用バックシート及び長期に亘って発電性能を安定して保つことができる太陽電池モジュールを提供し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の一方の側に設けられ、極性基を有するポリオレフィンのアイオノマー、ポリアクリル、及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む0.8g/m〜15.0g/mのバインダー樹脂、並びに、1.5g/m〜15.0g/mの無機顔料を含有する第1のポリマー層とを含む、太陽電池用バックシート。
【請求項2】
前記支持体がポリエステルを含有する請求項1に記載のバックシート。
【請求項3】
前記第1のポリマー層における前記無機顔料の含有量が2.5g/m〜12.5g/mの範囲であり、かつ前記第1のポリマー層におけるバインダー樹脂の含有量が1.0g/m〜12.5g/mである、請求項1または請求項2に記載のバックシート。
【請求項4】
前記無機顔料が、白色顔料、黒色顔料又は青色顔料である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のバックシート。
【請求項5】
前記第1のポリマー層が、架橋剤に由来する構造部分を含有し、前記第1のポリマー層中における該構造部分の含有量が、前記第1のポリマー層中の前記バインダー樹脂の全質量に対して2〜30質量%である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のバックシート。
【請求項6】
前記架橋剤が、カルボジイミド系架橋剤又はオキサゾリン系架橋剤である請求項5に記載のバックシート。
【請求項7】
前記支持体と前記第1のポリマー層との間に、少なくともポリマーを含有する第2のポリマー層を含む請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のバックシート。
【請求項8】
120℃、100%RHの条件で50時間保存した後の破断伸びの、保存前の破断伸びに対する比が、50%以上である請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載のバックシート。
【請求項9】
150℃の雰囲気下に30分間保持した時の収縮率が0.5%以下である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載のバックシート。
【請求項10】
前記第1のポリマー層が、太陽電池素子を封止する封止材に対して10N/cm以上の接着力を有し、120℃/100%RHの条件で湿熱処理した後に前記封止材に対して5N/cm以上の接着力を有する請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載のバックシート。
【請求項11】
前記支持体の前記第1のポリマー層が配置されている側の面とは反対側の面に、フッ素系樹脂及びシリコーン−アクリル複合樹脂の少なくとも一方を含有する耐候性層を含む請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載のバックシート。
【請求項12】
太陽電池素子と、前記太陽電池素子を封止する封止材と、前記封止材と接着し、受光面側を保護する表面保護部材と、前記封止材と接着し、前記受光面とは反対側を保護する裏面保護部材とを有し、前記裏面保護部材が請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のバックシートである太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2012−119677(P2012−119677A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247871(P2011−247871)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】