説明

姿勢制御方法および姿勢制御装置

【課題】簡易な制御により、丸管の処理面に対し、処理手段の姿勢を所望の姿勢で臨ませることができる姿勢制御方法および姿勢制御装置を提供する。
【解決手段】処理手段と、処理手段により処理が施される丸管の処理面と、の間の距離を4つの距離計測手段により計測して、処理手段の姿勢を制御する姿勢制御方法であって、第1計測距離から第2計測距離を引いた差分と、第3計測距離から第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ピッチ軸周りの姿勢を制御し、第1計測距離から第3計測距離を引いた差分と、第2計測距離から第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ヨー軸周りの姿勢を制御し、第2計測距離および第3計測距離を合算した第1合算距離と、第1計測距離および第4計測距離を合算した第2合算距離との差分とに基づいて、ロール軸周りの姿勢を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸管の処理面に対する処理手段の姿勢を制御する姿勢制御方法および姿勢制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の姿勢制御装置として、蒸気発生器の水室内に立設した旋回支持部と、旋回支持部に設けられたスライドテーブルと、スライドテーブルに装着されたマニピュレーターと、マニピュレーターの先端に装着された先端工具(処理手段)とを備えた先端工具案内装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この先端工具案内装置では、マニピュレーターを制御して、水室に設けられた管台の内周面のショットピーニング領域に沿って先端工具を移動(案内)している。このとき、先端工具はマニピュレーターによって内周面に押し付けられ、これにより、先端工具の姿勢は、管台の内周面に倣った姿勢となる。つまり、先端工具の姿勢は、マニピュレーターにより内周面に押し付けられて密着させることで、所定の姿勢となるように制御されている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−181909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の先端工具案内装置によれば、マニピュレーターにより先端工具を内周面に押し付けてしまうと、押付方向によっては、先端工具案内装置の剛性が、内周面からの反力に耐えることができない。このため、先端工具案内装置が僅かに撓んだり、または、ねじれてしまったりすることで、押し付けて密着させたはずの先端工具が、僅かに浮き上がってしまう場合がある。この場合、先端工具の浮きにより、先端工具による処理不良を引き起こしてしまう虞がある。この問題を解消すべく、先端工具案内装置の剛性を高めることが考えられるが、先端工具案内装置は、水室内に搬入することを考慮して設計されているため、設計上における制約により、所定の剛性以上の剛性にすることが困難である。
【0006】
そこで、本発明は、簡易な制御により、丸管の処理面に対し、処理手段の姿勢を所望の姿勢で臨ませることができる姿勢制御方法および姿勢制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の姿勢制御方法は、丸管の内周面または外周面に対して処理を施す処理手段と、処理手段により処理が施される丸管の処理面と、の間隙の距離を計測して、処理面に対する処理手段の姿勢を制御する姿勢制御方法であって、処理手段には、複数の距離計測手段が設けられると共に、少なくとも任意の4つの距離計測手段が矩形の4つの頂点の位置関係となって処理面に臨むように配置され、任意の4つの距離計測手段のうち、一方の対角に位置する2つの距離計測手段によりそれぞれ計測された計測距離を合算した第1合算距離と、他方の対角に位置する2つの距離計測手段によりそれぞれ計測された計測距離を合算した第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御する姿勢制御工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合、複数の距離計測手段が臨む処理面には、処理面において管軸方向に延びる第1仮想境界線および第1仮想境界線に直交する直交方向に延びる第2仮想境界線に基づいて、4つの仮想区画領域が設定され、4つの仮想区画領域は、第1仮想区画領域と、第1仮想区画領域の管軸方向に隣接する第2仮想区画領域と、第1仮想区画領域の直交方向に隣接する第3仮想区画領域と、第2仮想区画領域の直交方向に隣接すると共に第3仮想区画領域の管軸方向に隣接する第4仮想区画領域とで構成されており、任意の4つの距離計測手段のうち、第1距離計測手段を第1仮想区画領域に臨ませ、第2距離計測手段を第2仮想区画領域に臨ませ、第3距離計測手段を第3仮想区画領域に臨ませ、第4距離計測手段を第4仮想区画領域に臨ませる計測手段位置決め工程をさらに備え、姿勢制御工程では、第2距離計測手段により計測した第2計測距離および第3距離計測手段により計測した第3計測距離を足し合わせた第1合算距離と、第1距離計測手段により計測した第1計測距離および第4距離計測手段により計測した第4計測距離を足し合わせた第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御することが、好ましい。
【0009】
また、本発明の他の姿勢制御方法は、丸管の内周面または外周面に対して処理を施す処理手段と、処理手段により処理が施される丸管の処理面と、の間隙の距離を計測して、処理面に対する処理手段の姿勢を制御する姿勢制御方法であって、処理手段には、矩形の4つの頂点の位置関係となって処理面に臨むように4つの距離計測手段が設けられ、4つの距離計測手段が臨む処理面には、処理面において管軸方向に延びる第1仮想境界線および第1仮想境界線に直交する直交方向に延びる第2仮想境界線に基づいて、4つの仮想区画領域が設定され、4つの仮想区画領域は、第1仮想区画領域と、第1仮想区画領域の管軸方向に隣接する第2仮想区画領域と、第1仮想区画領域の直交方向に隣接する第3仮想区画領域と、第2仮想区画領域の直交方向に隣接すると共に第3仮想区画領域の管軸方向に隣接する第4仮想区画領域とで構成されており、4つの距離計測手段のうち、第1距離計測手段を第1仮想区画領域に臨ませ、第2距離計測手段を第2仮想区画領域に臨ませ、第3距離計測手段を第3仮想区画領域に臨ませ、第4距離計測手段を第4仮想区画領域に臨ませる計測手段位置決め工程と、第1距離計測手段により計測した第1計測距離から第2距離計測手段により計測した第2計測距離を引いた差分と、第3距離計測手段により計測した第3計測距離から第4距離計測手段により計測した第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ピッチ軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御し、第1計測距離から第3計測距離を引いた差分と、第2計測距離から第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ヨー軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御し、第2計測距離および第3計測距離を足し合わせた第1合算距離と、第1計測距離および第4計測距離を足し合わせた第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御する姿勢制御工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
この場合、処理手段は、その姿勢を処理面に倣わせた状態で処理面に沿って移動する倣い動作を行うように構成され、処理手段の倣い動作時において、姿勢制御工程をリアルタイムに実行して、処理手段の姿勢をフィードバック制御することが、好ましい。
【0011】
これらの場合、第1計測距離、第2計測距離、第3計測距離および第4計測距離の平均距離から予め設定した設定距離を引いた差分に基づいて、処理手段と処理面との間隙を設定距離とする間隙距離設定工程を、さらに備えたことが、好ましい。
【0012】
また、これらの場合、姿勢制御工程では、予め設定したピッチ軸周りにおける処理手段の初期姿勢、予め設定したヨー軸周りにおける処理手段の初期姿勢、および予め設定したロール軸周りにおける処理手段の初期姿勢に基づいて、処理手段の姿勢を制御していることが、好ましい。
【0013】
また、本発明の姿勢制御装置は、丸管の内周面または外周面に対して処理を施す処理手段の姿勢を制御する姿勢制御装置であって、処理手段に設けられ、処理手段と処理手段により処理が施される丸管の処理面との間隙の距離を計測する複数の距離計測手段と、複数の距離計測手段のうち、少なくとも任意の4つの距離計測手段の計測結果に基づいて、処理面に対する処理手段の姿勢を制御する姿勢制御手段と、を備え、任意の4つの距離計測手段は、矩形の4つの頂点の位置関係となって処理面に臨むように配置され、姿勢制御手段は、任意の4つの距離計測手段のうち、一方の対角に位置する2つの距離計測手段によりそれぞれ計測された計測距離を合算した第1合算距離と、他方の対角に位置する2つの距離計測手段によりそれぞれ計測された計測距離を合算した第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御することを特徴とする。
【0014】
この場合、複数の距離計測手段が臨む処理面には、処理面において管軸方向に延びる第1仮想境界線および第1仮想境界線に直交する直交方向に延びる第2仮想境界線に基づいて、4つの仮想区画領域が設定され、4つの仮想区画領域は、第1仮想区画領域と、第1仮想区画領域の管軸方向に隣接する第2仮想区画領域と、第1仮想区画領域の直交方向に隣接する第3仮想区画領域と、第2仮想区画領域の直交方向に隣接すると共に第3仮想区画領域の管軸方向に隣接する第4仮想区画領域とで構成され、任意の4つの距離計測手段のうち、第1距離計測手段を第1仮想区画領域に臨ませ、第2距離計測手段を第2仮想区画領域に臨ませ、第3距離計測手段を第3仮想区画領域に臨ませ、第4距離計測手段を第4仮想区画領域に臨ませた状態で、姿勢制御手段は、第2距離計測手段により計測した第2計測距離および第3距離計測手段により計測した第3計測距離を足し合わせた第1合算距離と、第1距離計測手段により計測した第1計測距離および第4距離計測手段により計測した第4計測距離を足し合わせた第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御することが、好ましい。
【0015】
また、本発明の他の姿勢制御装置は、丸管の内周面または外周面に対して処理を施す処理手段の姿勢を制御する姿勢制御装置であって、処理手段に設けられ、処理手段と処理手段により処理が施される丸管の処理面との間隙の距離を計測する4つの距離計測手段と、4つの距離計測手段の計測結果に基づいて、処理面に対する処理手段の姿勢を制御する姿勢制御手段と、を備え、4つの距離計測手段は、矩形の4つの頂点の位置関係となって処理面に臨むように配置され、4つの距離計測手段が臨む処理面には、処理面において管軸方向に延びる第1仮想境界線および第1仮想境界線に直交する直交方向に延びる第2仮想境界線に基づいて、4つの仮想区画領域が設定され、4つの仮想区画領域は、第1仮想区画領域と、第1仮想区画領域の管軸方向に隣接する第2仮想区画領域と、第1仮想区画領域の直交方向に隣接する第3仮想区画領域と、第2仮想区画領域の直交方向に隣接すると共に第3仮想区画領域の管軸方向に隣接する第4仮想区画領域とで構成され、姿勢制御手段は、4つの距離計測手段のうち、第1距離計測手段を第1仮想区画領域に臨ませ、第2距離計測手段を第2仮想区画領域に臨ませ、第3距離計測手段を第3仮想区画領域に臨ませ、第4距離計測手段を第4仮想区画領域に臨ませ、第1距離計測手段により計測した第1計測距離から第2距離計測手段により計測した第2計測距離を引いた差分と、第3距離計測手段により計測した第3計測距離から第4距離計測手段により計測した第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ピッチ軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御し、第1計測距離から第3計測距離を引いた差分と、第2計測距離から第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ヨー軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御し、第2計測距離および第3計測距離を足し合わせた第1合算距離と、第1計測距離および第4計測距離を足し合わせた第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における処理手段の姿勢を制御することを特徴とする。
【0016】
この場合、処理手段は、その姿勢を処理面に倣わせた状態で処理面に沿って移動する倣い動作を行うように構成され、姿勢制御手段は、処理手段の倣い動作時において、姿勢制御工程をリアルタイムに実行して、処理手段の姿勢をフィードバック制御することが、好ましい。
【0017】
これらの場合、姿勢制御手段は、第1計測距離、第2計測距離、第3計測距離および第4計測距離の平均距離から予め設定した設定距離を引いた差分に基づいて、処理手段と処理面との間隙が設定距離となるように処理手段の姿勢を制御することが、好ましい。
【0018】
また、これらの場合、姿勢制御手段は、予め設定したピッチ軸周りにおける処理手段の初期姿勢、予め設定したヨー軸周りにおける処理手段の初期姿勢、および予め設定したロール軸周りにおける処理手段の初期姿勢に基づいて、処理手段の姿勢を制御することが、好ましい。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の姿勢制御方法および請求項7の姿勢制御装置によれば、簡易な制御により、処理手段の姿勢を、ロール軸周りに制御することができる。このとき、任意の4つの距離計測手段を用いているため、例えば、処理手段の姿勢が、ピッチ軸周りの回転方向における角度成分、またはヨー軸周りの回転方向における角度成分にズレたとしても、このズレに影響されることなく、処理手段の姿勢を適切にロール軸周りに制御することができる。なお、少なくとも4つの距離計測手段を用いればよく、場合によっては、4以上の距離計測手段を用いて、処理手段の姿勢をロール軸周りに制御してもよい。
【0020】
請求項2の姿勢制御方法および請求項8の姿勢制御装置によれば、任意の4つの距離計測手段を、4つの仮想区画領域に適切に臨ませることができる。つまり、対角に位置する2つの距離計測手段(例えば、第2距離計測手段および第3距離計測手段、または、第1距離計測手段および第4距離計測手段)が、第1仮想境界線または第2仮想境界線に重なったりすることがなく、また、1つの仮想区画領域に複数の距離計測センサが臨んだりすることがない。このため、処理手段の姿勢のロール軸周りにおけるズレを、第1合算距離と第2合算距離との差分により、所定の姿勢に戻すための方向が分かるため、処理手段の姿勢をロール軸周りに正確に制御することができる。
【0021】
請求項3の姿勢制御方法および請求項9の姿勢制御装置によれば、簡易な制御により、処理手段の姿勢を、ピッチ軸周り、ヨー軸周りおよびロール軸周りに制御することができる。この制御により、処理手段を、丸管の処理面に倣わせた状態で臨ませることができる。このため、処理手段の姿勢を、処理面に倣った姿勢に制御することで、従来のように、マニピュレーターで先端工具を内周面(処理面)に押し付ける必要がなく、処理面からの反力が大きくならないので、先端工具案内装置の剛性を高める必要もない。
【0022】
なお、処理手段としては、例えば、ショットピーニング処理を行うための先端工具、超音波等により検査を行う検査装置、顕微鏡等の撮像カメラ、または切削加工やフライス加工を行うための加工装置等がある。また、丸管としては、その断面が、断面円形、断面楕円形や断面卵形等のものがある。
【0023】
請求項4の姿勢制御方法および請求項10の姿勢制御装置によれば、処理手段の倣い動作時において、処理手段の姿勢をフィードバック制御することができるため、処理手段が移動しても、処理手段の姿勢を、常に処理面に倣った姿勢に維持することができる。
【0024】
請求項5の姿勢制御方法および請求項11の姿勢制御装置によれば、処理手段と処理面との間隙の距離を所望の距離とすることができるため、間隙を所定の距離に維持した状態で処理手段により処理を施すことができる。
【0025】
請求項6の姿勢制御方法および請求項12の姿勢制御装置によれば、処理手段を予め設定した初期姿勢とすることで、処理面に対し、処理手段を初期姿勢に維持した状態で処理手段により処理を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明にかかる姿勢制御方法および姿勢制御装置について説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
ここで、図1は、本実施例にかかる先端工具案内装置を示す斜視図であり、図2は、先端工具を示す模式図である。また、図3は、計測センサ位置決め工程における説明図である。
【0028】
先ず、図1を参照して、本実施例にかかる姿勢制御方法および姿勢制御装置を先端工具案内装置に適用した場合について説明する。先端工具案内装置10は、加圧水型軽水炉原子力発電設備に設けられた蒸気発生器の水室1内に設置されるものである。そして、先端工具案内装置10は、水室1の下部に設けられた管台2および管台2に接続した円筒管3(丸管)の間の溶接部分の内周面(以下、処理面4という)に各種処理を施すものである。
【0029】
先端工具案内装置10は、水室1の底面から天面にかけて立設する旋回支持部14と、スライド機構を有すると共に旋回支持部14に着脱自在に連結されたスライドテーブル15と、スライドテーブル15に着脱自在に装着されるマニピュレーター16と、マニピュレーター16の先端に着脱自在に装着される先端工具17(処理手段)とを備えている。そして、先端工具案内装置10は、旋回支持部14、スライドテーブル15、マニピュレーター16および先端工具17に、それぞれ解体可能に構成されると共に、組立可能に構成されている。また、先端工具案内装置10には制御装置18が接続されており、制御装置18により先端工具案内装置10の各種動作が制御されている。
【0030】
旋回支持部14は、水室1の底面に設置される下部ベース20と、下部ベース20の上部に設けられ、下部ベース20に対して旋回移動可能な柱状の旋回部21と、旋回部21の上部に設けられ、旋回部21に設けた昇降機構により下部ベース20に対して昇降移動可能な上部支持部22とを有している。
【0031】
旋回支持部14を設置する場合は、先ず、下部ベース20を水室1の底面に設置し、この後、昇降機構により上部支持部22を鉛直方向に上昇させて水室1の天面に押し付ける。これにより、旋回支持部14は、水室1の底面および天面に対し、鉛直方向に突っ張った状態で固定される。
【0032】
スライドテーブル15は、基端部を旋回部21の上部に連結するテーブル部30と、テーブル部30上をスライド移動するスライド部31と、テーブル部30の先端部に回動軸24を介して回動自在に連結された支持部23とを有しており、スライド部31は、図示しない駆動部によって、スライド移動可能となっている。スライド部31には、マニピュレーター16を着脱自在に装着可能な第1ツールチェンジャー32が設けられている。また、支持部23は、その基端部が回動軸24を中心に、収容位置と支持位置との間で移動可能となっており、支持部23の基端部は、旋回部21の下部に連結される。
【0033】
スライドテーブル15を旋回支持部14に設置する場合は、テーブル部30の基端部を旋回部21の上部に連結した後、支持部23の基端部を、収容位置から支持位置に回動させ、支持部23の基端部を旋回部21の下部に連結する。
【0034】
マニピュレーター16は、いわゆる7軸マニピュレーターであり、その基端部は、スライド部31の第1ツールチェンジャー32に着脱自在に連結されている。マニピュレーター16の先端部には、先端工具17を着脱自在に装着する第2ツールチェンジャー35が設けられている。なお、マニピュレーター16は、上記の制御装置18により、その動作が制御されている。
【0035】
先端工具17は、例えば、上記の処理面4にショットピーニング処理を行う先端工具や、上記の処理面4を検査する先端工具等が用意されている。なお、以下の説明では、ショットピーニング処理を行う先端工具を用いた場合について説明する。
【0036】
図2に示すように、先端工具17は、直方体状の工具本体40と、工具本体40の側面に設けられたエアシリンダ41と、処理面4に対向する工具本体40の設置面に設けられた4つの全方向転動ローラ42a,42b,42c,42dとを備えている。また、先端工具17には、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dが設けられている。
【0037】
エアシリンダ41は、その基端部が上記のマニピュレーター16の第2ツールチェンジャー35に装着され、その先端部に工具本体40が固定されている。このため、マニピュレーター16により工具本体40の4つの全方向転動ローラ42a,42b,42c,42dが処理面4に押し当てられると、エアシリンダ41は処理面4からの反力によって収縮する一方、マニピュレーター16により工具本体40が処理面4から離間すると、エアシリンダ41は伸長する。つまり、エアシリンダ41は、処理面4に対する工具本体40の離接に追従して伸縮幅を可変しており、これにより、工具本体40と処理面4との間隙の誤差を吸収している。
【0038】
4つの全方向転動ローラ42a,42b,42c,42dは、工具本体40の設置面に設けられており、第1全方向転動ローラ42a(図示右上)、第2全方向転動ローラ42b(図示右下)、第3全方向転動ローラ42c(図示左上)および第4全方向転動ローラ42d(図示左下)で構成され、長方形の4つの頂点の位置関係となるように配置されている。つまり、4つの全方向転動ローラ42a,42b,42c,42dは、長方形の格子状に配置されている。
【0039】
4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dは、第1距離計測センサ43a(図示右上)、第2距離計測センサ43b(図示右下)、第3距離計測センサ43c(図示左上)および第4距離計測センサ43d(図示左下)で構成され、先端工具17と処理面4との間の距離を計測している。また、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dは、工具本体40の側面に付設されており、上記の4つの全方向転動ローラ42a,42b,42c,42dと同様に、長方形の4つの頂点の位置関係となるように配置されている。つまり、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dも、長方形の格子状に配置されている。
【0040】
距離計測センサとしては、例えば、ストローク式の接触型変位計を用いており、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dの先端は、工具本体40の設置面から突出するように設けられ、その突出量はそれぞれ同長となっている。この4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dによる計測結果は、制御装置18に向けて出力される。なお、本実施例では、接触型変位計を用いたが、レーザー変位計等の非接触型変位計を用いてもよい。
【0041】
次に、先端工具案内装置10に接続された制御装置18について説明する。制御装置18は、主としてCPU、ROMおよびRAM等によって構成されており、これらが協働して先端工具案内装置10を制御することにより、先端工具案内装置10に様々な動作を行わせることが可能となっている。
【0042】
制御装置18は、先端工具17を処理面4に沿って移動させるための移動軌跡を設定する移動軌跡設定部50と、設定した移動軌跡に沿って先端工具17の姿勢を処理面4に倣わせて移動させるようにマニピュレーター16の動作を制御する動作制御部51と、移動軌跡に沿って移動する先端工具17の姿勢を補正するようにマニピュレーター16の動作制御を補正する動作補正制御部52と、を有している。
【0043】
移動軌跡設定部50は、各種データに基づいて、先端工具17を、例えば、管台2と円筒管3との間の溶接部分の内周面(処理面4)の周方向全域(一周)に亘って移動するように、移動開始位置から移動終了位置までの移動軌跡を設定するものである。
【0044】
動作制御部51は、設定された移動軌跡上を、移動開始位置から移動終了位置まで、先端工具17の姿勢が処理面4に倣って移動する倣い動作を行うように、すなわち、先端工具17と処理面4(厳密には、処理面4は湾曲しているため、正確には、処理面4における接線方向)とが平行となるようにマニピュレーター16の動作を制御するものである。
【0045】
動作補正制御部52は、移動軌跡上を処理面4に倣って移動する先端工具17の姿勢が、誤差等によりずれてしまった場合、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dの計測結果に基づいて、先端工具17の姿勢を補正するようにマニピュレーター16の動作を補正するものである(詳細は後述)。つまり、請求項で述べる姿勢制御手段は、動作補正制御部52のことである。
【0046】
ここで、先端工具案内装置10により、管台2と円筒管3との間の溶接部分の内周面(処理面4)に処理を施す一連の処理制御動作について説明する。この処理制御動作は、移動軌跡設定工程と、計測センサ位置決め工程(計測手段位置決め工程)と、動作制御工程と、動作補正制御工程(姿勢制御工程)とから構成されている。
【0047】
移動軌跡設定工程は、上記の移動軌跡設定部50により移動開始位置から移動終了位置までの先端工具17の移動軌跡を周方向全域に亘って設定する(図2参照)。
【0048】
図3に示すように、計測センサ位置決め工程は、設定した移動軌跡の移動開始位置における処理面4に、先端工具17およびこれに付設した4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dを臨ませる。このとき、移動開始位置における円筒管3の処理面4は、処理面4において管軸方向に延びる第1仮想境界線K1および第1仮想境界線K1に直交する接線方向(直交方向)に延びる第2仮想境界線K2により、4つの仮想区画領域E1,E2,E3,E4に区分けされている。4つの仮想区画領域E1,E2,E3,E4は、第1仮想区画領域E1(図示右上)と、第1仮想区画領域E1の管軸方向に隣接する第2仮想区画領域E2(図示右下)と、第1仮想区画領域E1の接線方向に隣接する第3仮想区画領域E3(図示左上)と、第2仮想区画領域E2の接線方向に隣接すると共に第3仮想区画領域E3の管軸方向に隣接する第4仮想区画領域E4(図示左下)とで構成されている。
【0049】
そして、制御装置18は、マニピュレーター16を制御して、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dの中の第1距離計測センサ43aを第1仮想区画領域E1に、第2距離計測センサ43bを第2仮想区画領域E2に、第3距離計測センサ43cを第3仮想区画領域E3に、第4距離計測センサ43dを第4仮想区画領域E4に臨むように処理面4に接触させて臨ませる。このため、第1距離計測センサ43aおよび第4距離計測センサ43dが第1仮想境界線K1または第2仮想境界線K2に重なったりすることなく、あるいは、第2距離計測センサ43bおよび第3距離計測センサ43cが、第1仮想境界線K1または第2仮想境界線K2に重なったりすることなく、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dを適切に処理面4に接触させることができる。また、1つの仮想区画領域に複数の距離計測センサが臨んだりすることなく、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dを適切に処理面4に接触させることができる。
【0050】
動作制御工程は、制御装置18の動作制御部51によりマニピュレーター16を制御して、処理面4に対し先端工具17の姿勢を維持させた状態で、設定された移動軌跡に沿って、先端工具17を移動開始位置から移動終了位置まで移動させる。
【0051】
そして、動作補正制御工程は、移動軌跡上を移動する先端工具17の倣い動作時において、動作補正制御部52により、マニピュレーター16の動作補正をリアルタイムに実行して、先端工具17の姿勢をフィードバック制御している。
【0052】
次に、本実施例の特徴部分である、先端工具17の姿勢を補正するマニピュレーター16の動作補正制御工程について詳細に説明する。
【0053】
マニピュレーター16の動作補正制御工程、すなわち、先端工具17の姿勢制御工程は、接触させた4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dの計測結果に基づいて、接線方向に延びるピッチ軸周りの回転方向における先端工具17の姿勢を制御するピッチ軸姿勢制御工程と、管軸方向に延びるヨー軸周りの回転方向における先端工具17の姿勢を制御するヨー軸姿勢制御工程と、先端工具17と処理面4との離間方向に延びるロール軸周りの回転方向における先端工具17の姿勢を制御するロール軸姿勢制御工程と、から構成されている。なお、接線方向、管軸方向および離間方向は、X軸方向(管軸方向)、Y軸方向(接線方向)およびZ軸方向(離間方向)の関係と同じであり、先端工具17を基準にした座標系である。また、以下の説明では、先端工具17の姿勢が、接線方向、管軸方向および離間方向において平行な姿勢となるように制御する場合について説明する。
【0054】
上記の計測センサ位置決め工程において、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dを接触させると、4つの距離計測センサ43a,43b,43c,43dにより先端工具17と処理面4との間の距離が計測される。
【0055】
ピッチ軸姿勢制御工程は、第1距離計測センサ43aにより計測した第1計測距離L1から第2距離計測センサ43bにより計測した第2計測距離L2を引いた差分(L1−L2)と、第3距離計測センサ43cにより計測した第3計測距離L3から第4距離計測センサ43dにより計測した第4計測距離L4を引いた差分(L3−L4)とに基づいて、ピッチ軸周りの回転方向における先端工具17の姿勢を制御する。具体的には、数1の(1)に示す式により算出されるピッチ成分の制御量に基づいて制御される。このとき、Gpはピッチ制御ゲインであり、動作環境に応じて適切なゲインが設定される。
【数1】

【0056】
例えば、ピッチ軸周りにおける先端工具17の姿勢が処理面4と平行となった状態において、ピッチ軸周りに先端工具17が回転する。すると、第1計測距離L1および第3計測距離L3は伸び、第2計測距離L2および第4計測距離L4は縮む。あるいは、第1計測距離L1および第3計測距離L3は縮み、第2計測距離L2および第4計測距離L4は伸びる。つまり、先端工具17の姿勢が回転すると、第1計測距離L1から第2計測距離L2を引いた差分および第3計測距離L3から第4計測距離L4を引いた差分が大きくなる。このため、先端工具17の姿勢を戻すように、つまり処理面4と平行となるように制御する場合は、第1計測距離L1から第2計測距離L2を引いた差分および第3計測距離L3から第4計測距離L4を引いた差分を、ゼロに近づけるようにマニピュレーター16の動作を制御すればよい。
【0057】
ヨー軸姿勢制御工程は、第1計測距離L1から第3計測距離L3を引いた差分(L1−L3)と、第2計測距離L2から第4計測距離L4を引いた差分(L2−L4)とに基づいて、ヨー軸周りの回転方向における先端工具17の姿勢を制御する。具体的には、数1の(2)に示す式により算出されるヨー成分の制御量に基づいて制御される。このとき、Gyはヨー制御ゲインであり、動作環境に応じて適切なゲインを設定する。
【0058】
例えば、ヨー軸周りにおける先端工具17の姿勢が処理面4と平行となった状態において、ヨー軸周りに先端工具17が回転する。すると、第1計測距離L1および第2計測距離L2は伸び、第3計測距離L3および第4計測距離L4は縮む。あるいは、第1計測距離L1および第2計測距離L2は縮み、第3計測距離L3および第4計測距離L4は伸びる。つまり、先端工具17の姿勢が回転すると、第1計測距離L1から第3計測距離L3を引いた差分および第2計測距離L2から第4計測距離L4を引いた差分が大きくなる。このため、先端工具17の姿勢を戻すように、つまり処理面4と平行となるように制御する場合は、第1計測距離L1から第3計測距離L3を引いた差分および第2計測距離L2から第4計測距離L4を引いた差分を、ゼロに近づけるようにマニピュレーター16の動作を制御すればよい。
【0059】
ロール軸姿勢制御工程は、第2計測距離L2および第3計測距離L3を足し合わせた第1合算距離(L2+L3)から、第1計測距離L1および第4計測距離L4を足し合わせた第2合算距離(L1+L4)を引いた差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における先端工具17の姿勢を制御する。具体的には、数1の(3)に示す式により算出されるロール成分の制御量に基づいて制御される。このとき、Grはロール制御ゲインであり、動作環境に応じて適切なゲインを設定する。
【0060】
例えば、ロール軸周りにおける先端工具17の姿勢が処理面4と平行となった状態において、ロール軸周りに先端工具17が回転する。すると、第2計測距離L2および第3計測距離L3は伸び、第1計測距離L1および第4計測距離L4は縮む。あるいは、第2計測距離L2および第3計測距離L3は縮み、第1計測距離L1および第4計測距離L4は伸びる。つまり、先端工具17の姿勢が回転すると、第1合算距離(L2+L3)から第2合算距離(L1+L4)を引いた差分が大きくなる。このため、先端工具17の姿勢を戻すように制御する場合は、第1合算距離(L2+L3)から第2合算距離(L1+L4)を引いた差分を、ゼロに近づけるようにマニピュレーター16の動作を制御すればよい。
【0061】
上記の構成によれば、ピッチ軸姿勢制御工程、ヨー軸姿勢制御工程およびロール軸姿勢制御工程からなる動作補正制御工程(姿勢制御工程)を実行することにより、簡易な制御で、先端工具17の姿勢を、ピッチ軸周り、ヨー軸周りおよびロール軸周りに制御することができる。また、先端工具17の姿勢を、円筒管3の処理面4に倣わせた状態で、すなわち接線方向、管軸方向および離間方向において平行な姿勢となった状態で臨ませることができる。
【0062】
さらに、動作補正制御工程をリアルタイムに実行することで、先端工具17の倣い動作時において、先端工具17の姿勢をフィードバック制御することができるため、先端工具17が処理面4に沿って移動しても、先端工具17の姿勢を、常に処理面4に倣った姿勢に維持することができる。
【0063】
なお、上記の動作補正制御工程を、断面楕円形または断面卵形となる丸管の処理面4に対して実行する場合には、処理面4に応じて制御用ゲインGp、Gy、Grを適宜可変させながら実行することで、先端工具17の姿勢を制御することが可能となる。また、処理面4が丸管の外周面であった場合には、ロール軸姿勢制御工程における(3)の式の正負を逆とする(マイナスを乗算する)ことで、上記の動作補正制御工程を適用することができる。さらに、移動軌跡は、周方向全域に亘って設定する必要はなく、任意に設定してよい。
【0064】
次に、本実施例にかかる先端工具案内装置10の変形例1について説明する。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。変形例1における先端工具案内装置10では、先端工具17と処理面4との間隙を所定の距離(設定距離)に維持した状態で、先端工具17を移動軌跡上に沿うように移動させることができる。
【0065】
具体的に、動作制御補正工程では、間隙距離設定工程をさらに有している。間隙距離設定工程では、第1計測距離L1、第2計測距離L2、第3計測距離L3および第4計測距離L4の平均距離成分から予め設定した設定距離成分Lsを引いた差分に基づいて、先端工具17と処理面4との間隙が設定距離成分Lsとなるように制御している。つまり、数2の(4)に示す式により算出される押付成分の制御量に基づいて制御される。このとき、Gsは、押付制御ゲインであり、動作環境に応じて適切なゲインが設定される。
【数2】

【0066】
例えば、先端工具17の姿勢が処理面4に対し倣い姿勢となった状態において、先端工具17と処理面4との間隙が設定距離成分Lsとなっていない場合、平均距離成分から設定距離成分Lsを引いた差分は大きくなる。このため、先端工具17と処理面4との間隙を設定距離Lsとする場合は、平均距離成分から設定距離成分Lsを引いた差分を、ゼロに近づけるようにマニピュレーター16の動作を制御すればよい。
【0067】
以上の構成によれば、先端工具17の姿勢を、ピッチ軸周り、ヨー軸周りおよびロール軸周りに制御可能であるのはもちろんのこと、先端工具17と処理面4との間隙の距離を、設定距離Lsに維持した状態で、先端工具17の倣い動作を行わせることができる。この場合、先端工具17に設けられたエアシリンダ41および4つの全方向転動ローラ42a,42b,42c,42dを排した構成としてもよい。
【0068】
次に、本実施例にかかる先端工具案内装置10の変形例2について説明する。なお、この場合も、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。変形例2における先端工具案内装置10では、処理面4に対し先端工具17の姿勢を所望の初期姿勢とした状態で臨ませることができると共に、初期姿勢を維持した状態で先端工具17を移動軌跡上に沿うように移動させることができる。
【0069】
具体的には、ピッチ軸姿勢制御工程における(1)の式に、予め設定した先端工具17のピッチ軸周りの回転方向における初期姿勢の角度成分Fpを差し引いた数3の(5)に示す式に基づいて制御される。同様に、ヨー軸姿勢制御工程およびロール軸姿勢制御工程における(2)および(3)の式に、予め設定した先端工具17のヨー軸周りおよびロール軸周りの回転方向における初期姿勢の角度成分Fy,Frを差し引いた数3の(6)および(7)に示す式に基づいて制御される。
【数3】

【0070】
例えば、ピッチ軸周りにおける先端工具17の姿勢が初期姿勢Fpとなった状態から、ピッチ軸周りに先端工具17が回転する。すると、(1)の式によって求められる先端工具の姿勢から初期姿勢Fpを引いた差分が大きくなる。このため、先端工具17を初期姿勢に戻す場合は、(1)の式によって求められる先端工具の姿勢から初期姿勢Fpを引いた差分を、すなわち(5)の式の値を、ゼロに近づけるようにマニピュレーター16の動作を制御すればよい。なお、ヨー軸姿勢制御工程およびロール軸姿勢制御工程においても、同様であるため説明を省略する。
【0071】
以上の構成によれば、先端工具17の姿勢を、ピッチ軸周り、ヨー軸周りおよびロール軸周りに制御可能であるのはもちろんのこと、先端工具17の姿勢を、初期姿勢に維持した状態で、先端工具17の倣い動作を行わせることができる。この場合、各種処理に応じて、先端工具17の姿勢を適切な初期姿勢とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる姿勢制御方法および姿勢制御装置は、丸管の内周面および外周面に対して処理を施すものに有用であり、特に、丸管の溶接部分へ処理を施す場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例1にかかる先端工具案内装置を示す斜視図である。
【図2】先端工具を示す模式図である。
【図3】計測センサ位置決め工程における説明図である。
【符号の説明】
【0074】
3 円筒管
4 処理面
10 先端工具案内装置
17 先端工具
18 制御装置
43a 第1距離計測センサ
43b 第2距離計測センサ
43c 第3距離計測センサ
43d 第4距離計測センサ
52 動作補正制御部
K1 第1仮想境界線
K2 第2仮想境界線
E1 第1仮想区画領域
E2 第2仮想区画領域
E3 第3仮想区画領域
E4 第4仮想区画領域
L1 第1計測距離
L2 第2計測距離
L3 第3計測距離
L4 第4計測距離
Ls 設定距離成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸管の内周面または外周面に対して処理を施す処理手段と、前記処理手段により処理が施される前記丸管の処理面と、の間隙の距離を計測して、前記処理面に対する前記処理手段の姿勢を制御する姿勢制御方法であって、
前記処理手段には、複数の距離計測手段が設けられると共に、少なくとも任意の4つの距離計測手段が矩形の4つの頂点の位置関係となって前記処理面に臨むように配置され、
前記任意の4つの距離計測手段のうち、一方の対角に位置する2つの距離計測手段によりそれぞれ計測された計測距離を合算した第1合算距離と、他方の対角に位置する2つの距離計測手段によりそれぞれ計測された計測距離を合算した第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御する姿勢制御工程とを備えたことを特徴とする姿勢制御方法。
【請求項2】
前記複数の距離計測手段が臨む前記処理面には、前記処理面において管軸方向に延びる第1仮想境界線および前記第1仮想境界線に直交する直交方向に延びる第2仮想境界線に基づいて、4つの仮想区画領域が設定され、
前記4つの仮想区画領域は、第1仮想区画領域と、前記第1仮想区画領域の前記管軸方向に隣接する第2仮想区画領域と、前記第1仮想区画領域の前記直交方向に隣接する第3仮想区画領域と、前記第2仮想区画領域の前記直交方向に隣接すると共に前記第3仮想区画領域の前記管軸方向に隣接する第4仮想区画領域とで構成されており、
前記任意の4つの距離計測手段のうち、第1距離計測手段を前記第1仮想区画領域に臨ませ、第2距離計測手段を前記第2仮想区画領域に臨ませ、第3距離計測手段を前記第3仮想区画領域に臨ませ、第4距離計測手段を前記第4仮想区画領域に臨ませる計測手段位置決め工程をさらに備え、
前記姿勢制御工程では、前記第2距離計測手段により計測した第2計測距離および前記第3距離計測手段により計測した第3計測距離を足し合わせた前記第1合算距離と、前記第1距離計測手段により計測した第1計測距離および前記第4距離計測手段により計測した第4計測距離を足し合わせた前記第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御することを特徴とする請求項1に記載の姿勢制御方法。
【請求項3】
丸管の内周面または外周面に対して処理を施す処理手段と、前記処理手段により処理が施される前記丸管の処理面と、の間隙の距離を計測して、前記処理面に対する前記処理手段の姿勢を制御する姿勢制御方法であって、
前記処理手段には、矩形の4つの頂点の位置関係となって前記処理面に臨むように4つの距離計測手段が設けられ、
前記4つの距離計測手段が臨む前記処理面には、前記処理面において管軸方向に延びる第1仮想境界線および前記第1仮想境界線に直交する直交方向に延びる第2仮想境界線に基づいて、4つの仮想区画領域が設定され、
前記4つの仮想区画領域は、第1仮想区画領域と、前記第1仮想区画領域の前記管軸方向に隣接する第2仮想区画領域と、前記第1仮想区画領域の前記直交方向に隣接する第3仮想区画領域と、前記第2仮想区画領域の前記直交方向に隣接すると共に前記第3仮想区画領域の前記管軸方向に隣接する第4仮想区画領域とで構成されており、
前記4つの距離計測手段のうち、第1距離計測手段を前記第1仮想区画領域に臨ませ、第2距離計測手段を前記第2仮想区画領域に臨ませ、第3距離計測手段を前記第3仮想区画領域に臨ませ、第4距離計測手段を前記第4仮想区画領域に臨ませる計測手段位置決め工程と、
前記第1距離計測手段により計測した第1計測距離から前記第2距離計測手段により計測した第2計測距離を引いた差分と、前記第3距離計測手段により計測した第3計測距離から前記第4距離計測手段により計測した第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ピッチ軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御し、
前記第1計測距離から前記第3計測距離を引いた差分と、前記第2計測距離から前記第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ヨー軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御し、
前記第2計測距離および前記第3計測距離を足し合わせた第1合算距離と、前記第1計測距離および前記第4計測距離を足し合わせた第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御する姿勢制御工程とを備えたことを特徴とする姿勢制御方法。
【請求項4】
前記処理手段は、その姿勢を前記処理面に倣わせた状態で前記処理面に沿って移動する倣い動作を行うように構成され、
前記処理手段の倣い動作時において、前記姿勢制御工程をリアルタイムに実行して、前記処理手段の姿勢をフィードバック制御することを特徴とする請求項3に記載の姿勢制御方法。
【請求項5】
前記第1計測距離、前記第2計測距離、前記第3計測距離および前記第4計測距離の平均距離から予め設定した設定距離を引いた差分に基づいて、前記処理手段と前記処理面との間隙を前記設定距離とする間隙距離設定工程を、さらに備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の姿勢制御方法。
【請求項6】
前記姿勢制御工程では、
予め設定した前記ピッチ軸周りにおける前記処理手段の初期姿勢、予め設定した前記ヨー軸周りにおける前記処理手段の初期姿勢、および予め設定した前記ロール軸周りにおける前記処理手段の初期姿勢に基づいて、前記処理手段の姿勢を制御していることを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに1項に記載の姿勢制御方法。
【請求項7】
丸管の内周面または外周面に対して処理を施す処理手段の姿勢を制御する姿勢制御装置であって、
前記処理手段に設けられ、前記処理手段と前記処理手段により処理が施される前記丸管の処理面との間隙の距離を計測する複数の距離計測手段と、
前記複数の距離計測手段のうち、少なくとも任意の4つの距離計測手段の計測結果に基づいて、前記処理面に対する前記処理手段の姿勢を制御する姿勢制御手段と、を備え、
前記任意の4つの距離計測手段は、矩形の4つの頂点の位置関係となって前記処理面に臨むように配置され、
前記姿勢制御手段は、前記任意の4つの距離計測手段のうち、一方の対角に位置する2つの距離計測手段によりそれぞれ計測された計測距離を合算した第1合算距離と、他方の対角に位置する2つの距離計測手段によりそれぞれ計測された計測距離を合算した第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御することを特徴とする姿勢制御装置。
【請求項8】
前記複数の距離計測手段が臨む前記処理面には、前記処理面において管軸方向に延びる第1仮想境界線および前記第1仮想境界線に直交する直交方向に延びる第2仮想境界線に基づいて、4つの仮想区画領域が設定され、
前記4つの仮想区画領域は、第1仮想区画領域と、前記第1仮想区画領域の前記管軸方向に隣接する第2仮想区画領域と、前記第1仮想区画領域の前記直交方向に隣接する第3仮想区画領域と、前記第2仮想区画領域の前記直交方向に隣接すると共に前記第3仮想区画領域の前記管軸方向に隣接する第4仮想区画領域とで構成され、
前記任意の4つの距離計測手段のうち、第1距離計測手段を前記第1仮想区画領域に臨ませ、第2距離計測手段を前記第2仮想区画領域に臨ませ、第3距離計測手段を前記第3仮想区画領域に臨ませ、第4距離計測手段を前記第4仮想区画領域に臨ませた状態で、
前記姿勢制御手段は、前記第2距離計測手段により計測した前記第2計測距離および前記第3距離計測手段により計測した前記第3計測距離を足し合わせた前記第1合算距離と、前記第1距離計測手段により計測した前記第1計測距離および前記第4距離計測手段により計測した前記第4計測距離を足し合わせた前記第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御することを特徴とする請求項7に記載の姿勢制御装置。
【請求項9】
丸管の内周面または外周面に対して処理を施す処理手段の姿勢を制御する姿勢制御装置であって、
前記処理手段に設けられ、前記処理手段と前記処理手段により処理が施される前記丸管の処理面との間隙の距離を計測する4つの距離計測手段と、
前記4つの距離計測手段の計測結果に基づいて、前記処理面に対する前記処理手段の姿勢を制御する姿勢制御手段と、を備え、
前記4つの距離計測手段は、矩形の4つの頂点の位置関係となって前記処理面に臨むように配置され、
前記4つの距離計測手段が臨む前記処理面には、前記処理面において管軸方向に延びる第1仮想境界線および前記第1仮想境界線に直交する直交方向に延びる第2仮想境界線に基づいて、4つの仮想区画領域が設定され、
前記4つの仮想区画領域は、第1仮想区画領域と、前記第1仮想区画領域の前記管軸方向に隣接する第2仮想区画領域と、前記第1仮想区画領域の前記直交方向に隣接する第3仮想区画領域と、前記第2仮想区画領域の前記直交方向に隣接すると共に前記第3仮想区画領域の前記管軸方向に隣接する第4仮想区画領域とで構成され、
前記4つの距離計測手段のうち、第1距離計測手段を前記第1仮想区画領域に臨ませ、第2距離計測手段を前記第2仮想区画領域に臨ませ、第3距離計測手段を前記第3仮想区画領域に臨ませ、第4距離計測手段を前記第4仮想区画領域に臨ませた状態で、
前記姿勢制御手段は、
前記第1距離計測手段により計測した第1計測距離から前記第2距離計測手段により計測した第2計測距離を引いた差分と、前記第3距離計測手段により計測した第3計測距離から前記第4距離計測手段により計測した第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ピッチ軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御し、
前記第1計測距離から前記第3計測距離を引いた差分と、前記第2計測距離から前記第4計測距離を引いた差分とに基づいて、ヨー軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御し、
前記第2計測距離および前記第3計測距離を足し合わせた第1合算距離と、前記第1計測距離および前記第4計測距離を足し合わせた第2合算距離との差分に基づいて、ロール軸周りの回転方向における前記処理手段の姿勢を制御することを特徴とする姿勢制御装置。
【請求項10】
前記処理手段は、その姿勢を前記処理面に倣わせた状態で前記処理面に沿って移動する倣い動作を行うように構成され、
前記姿勢制御手段は、前記処理手段の倣い動作時において、前記姿勢制御工程をリアルタイムに実行して、前記処理手段の姿勢をフィードバック制御することを特徴とする請求項9に記載の姿勢制御装置。
【請求項11】
前記姿勢制御手段は、
前記第1計測距離、前記第2計測距離、前記第3計測距離および前記第4計測距離の平均距離から予め設定した設定距離を引いた差分に基づいて、前記処理手段と前記処理面との間隙が前記設定距離となるように前記処理手段の姿勢を制御することを特徴とする請求項9または10に記載の姿勢制御装置。
【請求項12】
前記姿勢制御手段は、
予め設定した前記ピッチ軸周りにおける前記処理手段の初期姿勢、予め設定した前記ヨー軸周りにおける前記処理手段の初期姿勢、および予め設定した前記ロール軸周りにおける前記処理手段の初期姿勢に基づいて、前記処理手段の姿勢を制御することを特徴とする請求項9ないし11のいずれか1項に記載の姿勢制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−66713(P2009−66713A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238427(P2007−238427)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】