説明

嫌気硬化性組成物用の硬化促進剤

本発明は、嫌気硬化性組成物、例えば、接着剤およびシーラントのための有用な硬化促進剤に関し、その硬化促進剤は、構造A:


の範囲内にあり、構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、嫌気硬化性組成物、例えば、接着剤およびシーラントのための有用な硬化促進剤に関し、その硬化促進剤は、下記の構造A:
【0002】
【化1】

の範囲内にあり、構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく、Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の簡単な説明)
嫌気接着組成物は一般に周知である。例えば、R.D.Rich「嫌気接着剤(Anaerobic Adhesives)」[接着剤技術ハンドブック(Handbook of Adhesive Technology)、第29章、467〜79頁、A.Pizzi、K.L.Mittal編、Marcel Dekker,Inc.、New York(1994年)]およびそこに引用されている参考文献を参照。それらは数多く使用され、新規の用途が引き続き開発されている。
【0004】
従来の嫌気接着剤は通常、フリーラジカル重合可能なアクリレートエステルモノマーをペルオキシ開始剤および禁止剤成分と共に含む。そのような嫌気接着組成物はまた、組成物が硬化する速度を増大させる促進剤成分も含むことも多い。
【0005】
硬化を誘導および促進するための望ましい嫌気硬化誘導組成物は、サッカリン、トルイジン、例えば、N,N−ジエチル−p−トルイジン(「DE−p−T」)およびN,N−ジメチル−o−トルイジン(「DM−o−T」)、アセチルフェニルヒドラジン(「APH」)、マレイン酸、およびキノン、例えば、ナフタキノンおよびアントラキノンの1種以上を含んでいてよい。例えば、米国特許第3,218,305号(Kriebe)、同4,180,640号(Melody)、同4,287,330号(Rich)および同4,321,349号(Rich)各公報を参照。
【0006】
サッカリンおよびAPHは、嫌気接着剤硬化システムにおいて標準的硬化促進剤成分として使用される。現在Henkel Corporationから入手できるLOCTITEブランドの嫌気接着剤製品は、その嫌気接着剤のほとんどにおいてサッカリンを単独で使用するか、またはサッカリンとAPHを併用するかのいずれかである。しかしながら、これらの成分は世界のある地域では規制監視下に置かれており、従って、代替物としての候補を同定するための努力が払われてきた。
【0007】
嫌気接着剤のための他の硬化剤の例としては、チオカプロラクタム(例えば、米国特許第5,411,988号)およびチオ尿素[例えば、米国特許第3,970,505号(Hauser)(テトラメチルチオ尿素)、独国特許文献第DE1 817 989号(アルキルチオ尿素およびN,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素)および同2 806 701号(エチレンチオ尿素)、ならびに日本特許文献第07−308,757号(アシル、アルキル、アルキリデン、アルキレンおよびアルキルチオ尿素)]が挙げられ、後者の一部は約20年前まで商業的に使用されていた。
【0008】
Loctite(R&D)Ltd.は、嫌気接着組成物のための有効な硬化剤として、新しい種類の材料であるトリチアジアザペンタレンを見いだした。これらの材料を従来の硬化剤(例えば、APH)の代替として嫌気接着剤に添加すると、驚くべきことにそれらから形成された反応生成物に、少なくとも従来に匹敵する硬化速度および物理的特性をもたらす。米国特許第6,583,289号(McArdle)公報を参照。
【0009】
米国特許第6,835,762号(Klemarczyk)公報は、実質的にアセチルフェニルヒドラジンおよびマレイン酸を含まない嫌気硬化誘導組成物と、同じ分子上に連結基−C(=O)−NH−NH−および有機酸基を有する嫌気硬化促進剤化合物[ただし、この嫌気硬化促進剤化合物は、1−(2−カルボキシアクリロイル)−2−フェニルヒドラジンを除外する]を有する、(メタ)アクリレート成分をベースとする嫌気硬化性組成物を提供する。嫌気硬化促進剤は:
【0010】
【化2】

によって包含され、上記式中、R〜Rは、各々独立して、水素およびC1〜4から選択され;Zは、炭素−炭素の単結合または炭素−炭素の二重結合であり;qは、0または1であり;pは、1〜5の整数であり、それらの例として、3−カルボキシアクリロイルフェニルヒドラジン、メチル−3−カルボキシアクリロイルフェニルヒドラジン、3−カルボキシプロパノイルフェニルヒドラジン、およびメチレン−3−カルボキシプロパノイルフェニルヒドラジンがある。
【0011】
米国特許第6,897,277号(Klemarczyk)公報は、実質的にサッカリンを含まない嫌気硬化誘導組成物と、下記の構造:
【0012】
【化3】

の範囲内にある嫌気硬化促進剤化合物を有する(メタ)アクリレート成分をベースとする嫌気硬化性組成物を提供し、上記構造中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、カルボキシル、およびスルホナトから選択され、Rは、水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、およびアルカリルから選択され、それらの例としてフェニルグリシンおよびN−メチルフェニルグリシンがある。
【0013】
米国特許第6,958,368号(Messana)公報は、嫌気硬化性組成物を提供する。この組成物は、実質的にサッカリンを含まない嫌気硬化誘導組成物を有する(メタ)アクリレート成分をベースとし、下記の構造:
【0014】
【化4】

の範囲内にあり、上記構造中、Yは、C1〜6のアルキルまたはアルコキシ、もしくはハロ基によって5つまでの位置で任意に置換されていてもよい芳香族環であり;Aは、C=O、S=OまたはO=S=Oであり;Xは、NH、OまたはSであり、Zは、C1〜6のアルキルまたはアルコキシ、もしくはハロ基によって5つまでの位置で任意に置換されていてもよい芳香族環であり、またはYおよびZは、一緒になって同じ芳香族環または芳香族環システムに結合されてよいが、ただし、XがNHである場合、o−安息香酸スルフィミドは上記構造から除外される。上記構造に包含される嫌気硬化促進剤化合物の例としては、2−スルホ安息香酸環状無水物、および3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシドが挙げられる。
【0015】
株式会社スリーボンド(東京、日本)は、過去に嫌気接着およびシーラント組成物における成分として、テトラヒドロキノリン(「THQ」)と呼ばれる成分を記載した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
当該技術分野の現状にもかかわらず、現存する製品と異なり原材料の供給不足または停止の場合に供給を保障する、嫌気硬化促進剤に対する代替の技術を見いだすことが、継続的に要求されている。さらに、従来の嫌気硬化誘導組成物で使用される原材料のいくつかは、多かれ少なかれ規制監視下に置かれなければならないので、嫌気硬化誘導組成物のための代替の成分は望ましいであろう。従って、嫌気的硬化性組成物の硬化において硬化成分として機能する新規の材料を同定することは望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、嫌気硬化性組成物、例えば、接着剤およびシーラントのために有用な硬化促進剤に関し、その硬化促進剤は、構造A:
【0018】
【化5】

の範囲内にあり、上記構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。より具体的には、THQ系またはインドリン系付加物は、硬化促進剤として構造Aによって包含されてよい。
【0019】
例えば、構造Aの範囲内にある付加物は以下のように調製してよい:
【0020】
【化6】

【0021】
THQ−DおよびInd−Dは異性体混合物であり、それぞれ以下のとおり表される。
【0022】
【化7】

【0023】
また、構造Aの範囲内にある付加物は、以下のようなTHQ(または示されていないが、インドリン)のN−アルキル化付加物を特に参照して調製されてもよい。
【0024】
【化8】

【0025】
したがって、N−メチル−、N−ブチル−、N−ベンジル−、およびN−1−ベンジル−6−メチルTHQ(ならびにN−メチル−、N−ブチル−、N−ベンジル−およびN−1−ベンジル−6−メチル−インドリン)付加物はそのように調製してもよく、また、構造Aによって包含されてもよい。
【0026】
構造Aによって包含される硬化促進剤は、(a)構造I:
【0027】
【化9】

(構造中、R、Y、Z、nおよびzは、上記の定義と同じである)によって表される化合物、例えば、
【0028】
【化10】

(構造中、Rおよびzは、上記の定義と同じである)から選択される少なくとも1種の化合物と、(b)構造II:
【0029】
【化11】

(構造中、Z”は、−O−、−S−、または−NH−から選択され;qは、1〜2であり;Rは、独立して、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、またはチオアルキルから選択され;nは、少なくとも1である)によって表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物とを、含む反応体から調製されてよく、ここで前記反応生成物は、独立して、−OH、−NHまたは−SHから選択される少なくとも2つのペンダント官能基を含む。
【0030】
本発明は、嫌気硬化性組成物、例えば、接着剤およびシーラントのために有用な硬化促進剤に関し、その硬化促進剤は、構造A:
【0031】
【化12】

の範囲内にあり、上記構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。
【0032】
また、構造Aによって包含される嫌気硬化促進剤は、(a)構造I:
【0033】
【化13】

(構造中、R、Y、Z、nおよびzは、上記の定義と同じものである)によって表される化合物、例えば、
【0034】
【化14】

(構造中、Rおよびzは、上記の定義と同じものである)から選択される少なくとも1種の化合物と、(b)アルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤から選択される反応体と、を含む反応体から調製された反応生成物であってもよい。例えば、そのようなアルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤は、アルキル−、アルケニル−またはアルカリル−ハライド化合物、例えば、第3級アミンのような有機塩基または炭酸カリウムのような無機塩基であってよい。そのようなアルキル−、アルケニル−またはアルカリル−ハライド化合物としては、メチル、エチル、プロピル、プロペニル、ブチル、ブテニルおよびベンジルハライド、例えば、塩化物、臭化物およびヨウ化物が挙げられる。他のそのようなアルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤としては、例えば、トシラート、メシラートおよびトリフレートが挙げられる。
【0035】
上記反応生成物から調製される嫌気的に硬化性接着剤およびシーラント組成物も提供される。
【0036】
(a)構造I:
【0037】
【化15】

(構造中、Rは、任意であるが、存在する場合、各々、他とは独立して4回まで存在してよく、Rは、ハロゲン、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、C2〜20のアルキニル、C1〜20のアルキルオキシ、C2〜20のアルケニルオキシまたはC2〜20のアルキニルオキシから選択され、Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、zは、1〜3である)で表されるものから選択される少なくとも1種の化合物と、(b)(i)構造II:
【0038】
【化16】

(構造中、Z”は、−O−、−S−、または−NH−から選択され;qは、1〜2であり;Rは、独立して、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、またはチオアルキルから選択され;nは、少なくとも1である)から選択される少なくとも1種の化合物であって、ここで(a)と(b)(i)との反応生成物が、独立して、−OH、−NHまたは−SHから選択される少なくとも2つのペンダント官能基を含む、または(ii)アルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤、のいずれかとを、反応させることを含む反応体から調製される反応生成物を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、スチールピンおよびカラーについて、嫌気接着組成物の硬化時間に対する剪断強度のプロットを示し、そのいくつかは本発明の硬化促進剤を使用している。
【図2】図2は、間にスペーサーを有するスチールナットおよびボルトについて、嫌気接着組成物の硬化時間に対する解除破壊強度(breakloose break strength)のプロットを示し、そのいくつかは本発明の硬化促進剤を使用している。
【図3】図3は、間にスペーサーを有するスチールナットおよびボルトについて、嫌気接着組成物の硬化時間に対する解除優性強度(breakloose prevail strength)のプロットを示し、そのいくつかは本発明の硬化促進剤を使用している。
【図4】図4は、間にスペーサーを有するステンレススチールナットおよびボルトについて、嫌気接着組成物の硬化時間に対する解除破壊強度のプロットを示し、そのいくつかは本発明の硬化促進剤を使用している。
【図5】図5は、間にスペーサーを有するステンレスチールナットおよびボルトについて、嫌気接着組成物の硬化時間に対する解除優性強度のプロットを示し、そのいくつかは本発明の硬化促進剤を使用している。
【0040】
(発明の詳細な説明)
上記のように本発明は、下記の構造A:
【0041】
【化17】

に包含される嫌気硬化促進剤を提供し、上記構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’はH、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。
【0042】
例えば、
【0043】
【化18】

構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。
【0044】
または、
【0045】
【化19】

構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。より具体的には、THQ系またはインドリン系成分は、硬化促進剤として構造Aによって包含されてよい。
【0046】
上記のように本発明は、下記の構造A:
【0047】
【化20】

によって包含される嫌気硬化促進剤を提供し、上記構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である。より具体的には、THQ系またはインドリン系成分は、硬化促進剤として構造Aによって包含されてよい。
【0048】
例えば、構造Aの範囲内にある付加物は、以下のとおり調製してもよい:
【0049】
【化21】

【0050】
THQ−DおよびInd−Dは異性体混合物であり、それぞれ以下のように表される:
【0051】
【化22】

【0052】
構造A:
【0053】
【化23】

(構造中、Rは、任意であるが、存在する場合、各々、他とは独立して3回まで存在してよく、Rは、ハロゲン、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、C2〜20のアルキニル、C1〜20のアルキルオキシ、C2〜20のアルケニルオキシまたはC2〜20のアルキニルオキシから選択され、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルから選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、zは、1〜3である)によって包含される嫌気硬化促進剤は、(a)構造I:
【0054】
【化24】

(構造中、Rは、任意であるが、存在する場合、各々、他とは独立して4回まで存在してよく、Rは、ハロゲン、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、C2〜20のアルキニル、C1〜20のアルキルオキシ、C2〜20のアルケニルオキシまたはC2〜20のアルキニルオキシから選択され、Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、zは、1〜3である)によって表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、(b)構造II:
【0055】
【化25】

(構造中、Z”は、−O−、−S−、または−NH−から選択され;qは、1〜2であり;Rは、独立して、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、またはチオアルキルから選択され;nは、少なくとも1である)によって表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、を含む反応体から調製された反応生成物であってよく、ここで反応生成物は、独立して、−OH、−NHまたは−SHから選択される少なくとも2つのペンダント官能基を含む。
【0056】
構造Aによって包含される嫌気硬化促進剤は、(a)構造I:
【0057】
【化26】

(構造中、Rは、任意であるが、存在する場合、各々、他とは独立して4回まで存在してよく、Rは、ハロゲン、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、C2〜20のアルキニル、C1〜20のアルキルオキシ、C2〜20のアルケニルオキシまたはC2〜20のアルキニルオキシから選択され、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルから選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、zは、1〜3である)によって表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、(b)アルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤と、を含む反応体から、塩基、例えば、上記のようなものの存在下で調製された反応生成物であってよい。そのようなアルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤は、メチル、エチル、プロピル、プロペニル、ブチル、ブテニルおよびベンジルハライド、例えば、塩化物、臭化物およびヨウ化物などを含めて、アルキル−、アルケニル−またはアルカリル−ハライド化合物によって例示されてよい。
【0058】
加えて、構造I、したがって構造Aは、芳香族環に縮合した飽和環または不飽和環を含んでいてよい。構造Aによって包含され、不飽和環を有する化合物の例は、N−アルキルインドール、例えば、以下に示されるようなN−メチルインドールである。
【0059】
【化27】

【0060】
また、必要に応じて構造AまたはIの範囲内にある化合物は、
【0061】
【化28】

を含んでいてよい。
【0062】
上記構造IIで表される化合物において、Z”は、−O−、−S−、または−NH−から選択されことが望ましく;qは、1〜4であってよく;Rは、独立して、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、またはチオアルキルから選択されてよく;nは、少なくとも1である。構造IIで表される反応体は、以下に示されるグリシドールであることが望ましい。
【0063】
【化29】

【0064】
上で考察されたように、前記反応生成物は、独立して、−OH、−NHまたは−SHから選択される少なくとも2つのペンダント官能基を含む。反応生成物は、2または3つのペンダント官能基、例えば、ヒドロキシ官能基を含む。
【0065】
構造Iで表される化合物は、インドリンそれ自体か、THQ、インドリンまたはインドールをベースとするインドリンのいずれかであることが望ましい。すなわち、THQ、インドリンまたはインドールをベースとする場合、構造Aで表される化合物は、THQ、インドリンまたはインドールの、アルキル、アルケニル、アルカリル、もしくは官能基化アルキル、官能基化アルケニルもしくは官能基化アルカリル付加物である。
【0066】
従来の嫌気硬化促進剤(例えば、トルイジン、DE−p−TおよびDM−o−T、および/またはAPH)の量の一部またはすべての代わりとして、そのような反応生成物を硬化促進剤として嫌気接着剤に添加すると、驚くべきことにそれらの硬化促進剤から形成された反応生成物に、従来の嫌気硬化性組成物から観察されたものと比較して、少なくとも匹敵する硬化速度および物理的特性が提供される。
【0067】
構造Iで表される化合物(単数または複数)と、構造IIで表される化合物(単数または複数)との反応生成物を調製すること、またはアルキル−、アルケニル−またはアルカリル−ハライド化合物を調製して構造Aで表される化合物(単数または複数)を形成する方法が提供される。この方法は、(a)構造I:
【0068】
【化30】

(構造中、Rは、任意であるが、存在する場合、各々、他とは独立して4回まで存在してよく、Rは、ハロゲン、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、C2〜20のアルキニル、C1〜20のアルキルオキシ、C2〜20のアルケニルオキシまたはC2〜20のアルキニルオキシから選択され、Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、zは、1〜3である)によって表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物と、(b)(i)構造II:
【0069】
【化31】

(構造中、Z”は、−O−、−S−、または−NH−から選択され;qは、1〜2であり;Rは、独立して、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、またはチオアルキルから選択され;nは、少なくとも1である)から選択される少なくとも1種の化合物、または(ii)塩基の存在下でアルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤、のいずれか1つとを、反応させることを含む。
【0070】
構造Aで表される化合物の調製において、反応は溶媒の存在下で実施されてよく、その場合、構造Iで表される化合物は、構造IIで表される化合物もしくはアルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤との反応の前に溶媒に溶解されてよく、または逆もまた同様である。
【0071】
また、反応に採用される温度も広い範囲で変化してよい。成分がほぼ化学的に当量、または一方がわずかに過剰で混合される場合、有用な温度は室温または室温より低い温度(例えば、10℃〜15℃)から、100℃〜175℃の温度まで、およびそれらの温度を含めた温度まで変化してよい。約90℃〜150℃で実施される反応は円滑に進む。
【0072】
そのように形成された反応生成物(単数または複数)は、精製して不純物、例えば、反応副生物または反応体に付随する不純物が除去されてよい。反応生成物(単数または複数)は、精製された反応生成物(単数または複数)が、実質的に不純物を含まないか、または約1重量%未満の不純物しか含まないか、または不純物を含まないように、例えば、蒸留、濾過、ストリッピングまたはクロマトグラフィーによって精製することができる。
【0073】
嫌気硬化性接着剤およびシーラント組成物は一般に、嫌気硬化誘導組成物と共に、(メタ)アクリレート成分をベースにする。本発明において嫌気硬化誘導組成物は、少なくとも低減された濃度でのAPHまたはトルイジン(例えば、従来の嫌気硬化性組成物で使用される重量の約50重量%以下)を有し、実質的にAPHまたはトルイジンを含まない(約10重量%未満、例えば、約5重量%未満、望ましくは約1重量%未満)か、もしくはAPHまたはトルイジンを含まない。APHまたはトルイジンの一部または全部の代替であるのが本発明の硬化促進剤であり、つまりこれが構造Aによって包含される化合物である。
【0074】
本発明において(メタ)アクリレート成分として使用するのに適した(メタ)アクリレートモノマーは、広く様々な材料、例えば、HC=CGCOで表されるものなどから選択されてよく、ここで、Gは、水素、ハロゲンまたは1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、Rは、1〜約16個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリル、アルカリルまたはアリール基から選択されてよく、それらのいずれも、場合によっては任意に、シラン、シリコン、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、硫黄、スルホネート、スルホンなどで置換または割り込まれていてよい。
【0075】
本発明で使用するのに適した追加の(メタ)アクリレートモノマーとしては、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、例えば、2または3官能性(メタ)アクリレート、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(「HPMA」)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(「TMPTMA」)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ−(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ジグリセロールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ならびにビスフェノール−Aモノおよびジ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシ化ビスフェノール−A(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)、ならびにビスフェノール−Fモノおよびジ(メタ)アクリレート、例えば、エトキシ化ビスフェノール−A(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0076】
さらに、本発明で使用されてよい他の(メタ)アクリレートモノマーとしては、シリコーン(メタ)アクリレート部分構造(「SiMA」)、例えば、米国特許第5,605,999号(Chu)公報で教示および特許請求されたようなものが挙げられ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
他の適したモノマーとしては、式:
【0078】
【化32】

で表されるポリアクリレートエステルが挙げられ、上記式中、Rは、水素、ハロゲンまたは1〜約4個の炭素原子のアルキルから選択される基であり;qは、少なくとも1に等しい整数であり、好ましくは1〜約4に等しい整数であり;Xは、少なくとも2個の炭素原子を含有し、q+1の全結合能力有する有機基である。Xにおける炭素原子数の上限に関して、有効なモノマーは実質的に任意の値で存在する。しかしながら、実際問題として一般の上限は約50個、例えば望ましくは30個、望ましくは約20個の炭素原子である。
【0079】
例えば、Xは、式:
【0080】
【化33】

で表される有機基であってよく、式中、YおよびYの各々は、少なくとも2個の炭素原子、望ましくは2〜約10個の炭素原子を含有する有機基、例えば、炭化水素基であり、Zは、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは2〜約10個の炭素原子を含有する有機基、好ましくは炭化水素基である。
【0081】
他の有用なモノマー種は、ジ−またはトリ−アルキロールアミン(例えば、エタノールアミンまたはプロパノールアミン)とアクリル酸との反応生成物であり、例えば、仏国特許第1,581,361号公報に開示されているものである。
【0082】
有用なアクリルエステルオリゴマーの例としては、下記の一般式:
【0083】
【化34】

を有するものが挙げられ、上記式中、Rは、水素、1〜約4個の炭素原子の低級アルキル、1〜約4個の炭素原子のヒドロキシアルキル、または
【0084】
【化35】

から選択される基を表し、Rは、水素、ハロゲン、または1〜約4個の炭素原子の低級アルキルから選択される基であり、Rは、水素、ヒドロキシル、または
【0085】
【化36】

から選択される基であり、mは、少なくとも1に等しい整数、例えば、1〜約15またはそれよりも多く、望ましくは1〜約8の整数であり;nは、少なくとも1に等しい整数、例えば、1〜約40またはそれよりも多く、望ましくは約2〜約10の間の整数であり;pは0または1である。
【0086】
上記一般式に対応するアクリルエステルオリゴマーの典型例としては、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコールジメタクリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(クロロアクリレート)、ジグリセロールジアクリレート、ジグリセロールテトラメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、およびトリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
【0087】
ジ−および他のポリアクリレートエステル、特に先行する段落に記載されたポリアクリレートエステルは望ましいものでありうるが、単官能アクリレートエステル(1つのアクリレート基を含有するエステル)も使用してよい。単官能アクリレートエステルを取り扱う場合、比較的極性のアルコール性部分構造を有するエステルを使用することが非常に望ましい。そのような材料は、低分子量アルキルエステルより揮発性が低く、さらに重要なことに極性基は硬化の間および後に分子間引力をもたらす傾向があり、従って、より望ましい硬化特性を生み出し、さらにより耐久性のあるシーラントまたは接着剤を生成する。極性基は、不安定な水素、複素環式環、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、およびハロ極性基から選択されることが最も好ましい。この部類の範囲内にある化合物の典型的な例は、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、およびクロロエチルメタクリレートである。
【0088】
他の有用なモノマー種は、官能性置換基上に活性水素原子を含有する単官能的に置換されたアルキルまたはアリールアクリレートエステルの反応によって調製される。この単官能アクリレート末端材料は、すべてのイソシアネート基をウレタンまたはウレイド基に転化するのに適した割合で有機ポリイソシアネートと反応させる。単官能アルキルおよびアリールアクリレートエステルは、ヒドロキシまたはアミノ官能基をそれらの非アクリレート部分に含有するアクリレートおよびメタクリレートであることが好ましい。使用するのに適したアクリレートエステルは、式:
【0089】
【化37】

を有し、上記式中、Xは、−O−および
【0090】
【化38】

から選択され、ここで、Rは、水素または1〜7個の炭素原子の低級アルキルから選択され;Rは、水素、ハロゲン(例えば、塩素)またはアルキル(例えば、メチルおよびエチル基)から選択され;Rは、1〜8個の炭素原子の低級アルキレン、フェニレンおよびナフチレンから選択される2価の有機基である。これらの基は、ポリイソシアネートとの適切な反応によって、下記の一般式:
【0091】
【化39】

で表されるモノマーを与え、上記式中、nは、2〜約6の整数であり;Bは、置換および未置換のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アルカリル、アルカリルおよび複素環式基から選択される多価有機基であり;R、RおよびXは、上記と同じ意味を有する。
【0092】
反応体を混合させてよい割合はいくらか変えることができるが、しかしながら、反応体を化学的に当量からわずかに過剰までの量で使用することが一般に好ましい。
【0093】
また当然ながら、これらの(メタ)アクリレートモノマーの組合せも使用してよい。
【0094】
(メタ)アクリレート成分は、組成物の全重量を基準に組成物の約10〜約90重量%、例えば、約60〜約90重量%含んでよい。
【0095】
追加的な成分は過去において、配合物またはそれらの反応生成物のいずれかの物理的特性を変えるために、従来の嫌気接着剤に含められてきた。例えば、1種以上のマレイミド成分、耐熱性を付与する共反応体、昇温条件で反応性の希釈剤成分、モノ−またはポリ−ヒドロキシアルカン、ポリマー可塑剤、およびキレート剤(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,391,993号公報を参照)は、配合物の物理的特性および/または硬化プロファイルおよび/または硬化接着剤の強度または温度抵抗性を改変するために含まれてよい。
【0096】
マレイミド、共反応体、反応性希釈剤、可塑剤、および/またはモノ−またはポリ−ヒドロキシアルカンは、使用する場合、組成物の全重量を基準に約1重量%〜約30重量%の範囲内で存在してよい。
【0097】
また、本発明の組成物は他の従来的な成分、例えば、フリーラジカル開始剤、フリーラジカル共促進剤、およびフリーラジカル生成禁止剤、さらに金属触媒を含んでもよい。
【0098】
限定されることなしに、ヒドロペルオキシド、例えば、クメンヒドロペルオキシド(「CHP」)、パラ−メンタンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド(「TBH」)およびt−ブチルペルベンゾエートなどの多くの周知のフリーラジカル重合開始剤は、典型的には嫌気硬化性組成物に包含される。他のペルオキシドとしては、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジアセチルペルオキシド、ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バリレート、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチル−ペルオキシヘキサ−3−イン、4−メチル−2,2−ジ−t−ブチルペルオキシペンタン、t−アミルヒドロペルオキシド、1,2,3,4−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0099】
そのようなペルオキシドは、典型的には本発明において、組成物の全重量を基準に約0.1〜約10重量%の範囲で採用され、約1〜約5重量%が望ましい。
【0100】
上記のように、本発明の嫌気硬化促進剤と併用して従来のフリーラジカル重合の促進剤も、過去に使用された量よりも少ない量ではあるが使用されてよい。そのような促進剤は、典型的には米国特許第4,287,350号(Rich)および同4,321,349号(Rich)各公報に開示されているヒドラジン型(例えば、APH)である。マレイン酸は通常、APH含有嫌気硬化誘導組成物に添加される。
【0101】
フリーラジカル重合の共促進剤も本発明の組成物において使用してよく、有機アミドおよびイミド、例えば、安息香酸スルフィミド(サッカリンとしても公知)(米国特許第4,324,349号公報を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
早期のペルオキシド分解および本発明の組成物の重合を制御および防止するために、安定剤および禁止剤(例えば、ヒドロキノンおよびキノンを含むフェノール類)、ならびにそれらに由来する微量の金属汚染物質を捕捉するために、キレート化剤[例えば、エチレンジアミン四酢酸テトラナトリウム塩(「EDTA」)]も採用されてよい。使用される場合、キレート化剤は通常、組成物の全重量を基準に組成物中に約0.001重量%〜約0.1重量%の量で存在してよい。
【0103】
本発明の嫌気硬化促進剤は、組成物の全重量を基準に約0.1〜約5重量%、例えば、約1〜約2重量%の量で使用してよい。従来の促進剤との組合せで使用される場合(そのような従来の促進剤よりは低い濃度で、ではあるが)、本発明の促進剤は組成物の全重量を基準に0.01〜5重量%、例えば、0.02〜2重量%の量で使用すべきである。
【0104】
金属触媒溶液またはそれらの事前混合物は、約0.03〜約0.1重量%の量で使用される。
【0105】
増粘剤、非反応性可塑剤、フィラー、強化剤(例えば、エラストマーおよびゴム)のような他の添加物、および他の周知の添加物は、当業者が望ましいであろうと考える場合、組成物中に包含されてよい。
【0106】
また本発明は、本発明の嫌気接着およびシーラント組成物ならびにそれらの組成物の反応生成物を調製および使用する方法も提供する。
【0107】
本発明の組成物は、当業者には周知である従来の方法を使用して調製されてよい。例えば、本発明の嫌気接着およびシーラント組成物の成分は、成分が組成物中で果たす役割および機能と調和する任意の都合の良い順序で共に混合されてよい。公知の装置を使用する従来の混合技術が採用されてよい。
【0108】
本発明の組成物は様々な基体に塗布され、本明細書に記載された所望の利益および利点を伴って機能することができる。例えば、適切な基体は、スチール、真鍮、銅、アルミニウム、亜鉛、および他の金属および合金、セラミックおよび熱硬化性樹脂から構成されてよい。嫌気硬化性組成物のための適切なプライマーは、硬化速度を増大するために選択された基体の表面に塗布されてよい。または、本発明の嫌気硬化促進剤は、プライマーとして基体の表面に塗布されてよい。例えば、米国特許第5,811,473号(Ramos)公報を参照。
【0109】
さらに本発明は嫌気硬化性組成物を調製する方法を提供し、そのステップは、(メタ)アクリレート成分、嫌気硬化誘導組成物、および構造Aによって包含される化合物を共に混合することを含む。
【0110】
また、本発明は、本発明の嫌気硬化性組成物から反応生成物を調製するための工程も提供し、そのステップは、組成物を所望の基体表面に塗布するステップ、および組成物を硬化するのに充分な時間、組成物を嫌気環境に曝すステップを含む。
【0111】
また、本発明は、嫌気硬化性組成物のための硬化促進剤として構造Aで表される化合物を使用する方法を提供する。その方法は、(メタ)アクリレート成分および嫌気硬化誘導組成物を含む嫌気硬化性組成物を提供するステップ;嫌気硬化性組成物のための硬化促進剤として構造Aによって包含される化合物を提供するステップ;ならびに、嫌気硬化性組成物および硬化促進剤を、組成物を硬化するのに有利な条件に曝すステップを含む。
【0112】
また本発明は、嫌気硬化促進剤化合物を使用する方法を提供し、それは(I)嫌気硬化促進剤化合物を嫌気硬化性組成物中で混合するステップ、または(II)嫌気硬化促進剤化合物を基体表面に塗布し、その上に嫌気硬化性組成物を塗布するステップを含む。当然ながら、また本発明は、嵌合した基体間に本発明の組成物によって形成された接合を提供する。
【0113】
本発明の上述を参照して、広範囲の実用機会が提供されることは明らかである。下記の実施例は例示的な目的のみであり、本明細書の教示を決して制限するようには解釈されるべきではない。
【実施例】
【0114】
<構造Aで表される化合物の合成>
APHの代替品としてグリシドールとインドリンまたはTHQとの反応生成物(単数または複数)およびある種のアルキル化インドリンまたはTHQ付加物を、嫌気硬化性組成物、例えば、接着剤における硬化促進剤として評価するために研究を実施した。
【0115】
下記の合成スキームに従ってインドリン−グリシドール付加物を調製した:
【0116】
【化40】

【0117】
コンデンサー、添加漏斗、窒素パージ、磁気撹拌子およびサーモプローブを備えた500mlの四つ口丸底フラスコに、グリシドール(62グラム;805ミリモル)を添加した。フラスコを氷浴中に置き、その後に、インドリン(97グラム;805ミリモル)を窒素のパージ下で混合しながら添加した。混合を2時間継続し、その時点で固体の形成を観察した。
【0118】
そのように形成した固体は、混合しながら固体−アセトン混合物を溶液が形成するまで50℃に加熱することによって、アセトンで再結晶した。次いで温度を38℃に下げ、そこで固体の再形成を観察した。次いで混合物を濾過し、固体を採取し、オーブン中50℃で真空乾燥した。
【0119】
下記の合成スキームに従ってTHQ−グリシドール付加物を調製した:
【0120】
【化41】

【0121】
コンデンサー、添加漏斗、窒素パージ、磁気撹拌子およびサーモプローブを備えた500mlの四つ口丸底フラスコに、グリシドール(8グラム;108ミリモル)およびTHQ(14グラム;108ミリモル)を添加した。フラスコを60℃で維持したホットプレート上に9時間置き、その間中、攪拌を続けた。反応混合物を一夜、室温で放置した。100mlの脱イオン水を添加し、反応混合物を再度、60℃に加熱した。
【0122】
混合物は、イソプロピルアルコール/水、続いて脱イオン水を混合することによって再結晶化し、ここで固体が再形成するのを観察した。次いで混合物を濾過し、固体を採取し、オーブン中、50℃で真空乾燥した。
【0123】
下記の合成スキームに従ってN−メチルTHQを調製した:
【0124】
【化42】

【0125】
コンデンサー、サーモカップル、添加漏斗、磁気撹拌子、および窒素入口を備えた1000mlの四つ口丸底フラスコに、テトラヒドロキノリン(53.2g、400ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン(103.2g、800ミリモル)、およびDMF(200ml)を攪拌しながら添加した。ヨウ化メチル(101.6g、800ミリモル)を添加漏斗から45分に渡って滴下し、発熱を制御するために水/氷浴で温度を30℃未満に保つ。添加を完了した後、反応混合物を環境温度で一夜攪拌し、ジイソプロピルエチルアンモニウムヨウ化物塩が溶液から析出した。反応混合物を1000mlの分離漏斗中の400mlのHOおよび200mlの(i−Pr)Oに添加した。水層を分離し、200mlの(i−Pr)Oで洗浄した。2つの有機層を混合し、毎回200mlのHOで3回洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO)、濾過を行った。溶媒を減圧下で除去した。残留物をNaH(0.5g)上、真空下(約1トール)で蒸留した。収率=32.4g(55%);B.P.(℃)=85〜88/0.7トール。H NMR(CDCl)δ7.1(t、1、Ar−H)、6.9(d、1、Ar−H)、6.6(t、2、Ar−H)、3.2(t、2、N−CH)、2.8(s、3、N−CH)、2.7(t、2、Ar−CH)、1.9(t、2、CH);IR(ニート)2929、2816、1601、1505、1320、1206、1001、741、714。
【0126】
N−1−ブチルTHQを下記の合成スキームに従って調製した:
【0127】
【化43】

【0128】
コンデンサー、サーモカップル、添加漏斗、磁気撹拌子、および窒素入口を備えた1000mlの四つ口丸底フラスコに、テトラヒドロキノリン(53.2g、400ミリモル)、ジイソプロピルエチルアミン(177.4g、600ミリモル)、1−ブロモブタン(82.2g、600ミリモル)、およびDMF(200ml)を攪拌しながら添加した。溶液を加熱して2時間攪拌しながら還流し、次いで環境温度に冷却した。冷却すると、ジイソプロピルエチルアンモニウム臭化物塩が溶液から析出した。反応混合物を1000mlの分離漏斗中の400mlのHOおよび200mlの(i−Pr)Oに添加した。水層を分離し、200mlの(i−Pr)Oで洗浄した。2つの有機層を混合し、毎回200mlのHOで3回洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO)、濾過を行った。溶媒を減圧下で除去した。残留物を真空下(<1トール)で蒸留した。粗収率=73.2g(97%);B.P.(℃)=108〜110/0.6トール。H NMR(CDCl)δ7.0(t、1、Ar−H)、6.9(d、1、Ar−H)、6.6(m、2、Ar−H)、3.2(m、4、N−CH)、2.7(t、2、Ar−CH)、1.9(m、2、CH)、1.6(m、2、CH)、1.3(m、2、CH)、0.95(t、3、CH);IR(ニート)2929、2860、1601、1503、1344、1193、1104、739、715。
【0129】
N−ベンジルTHQを下記の合成スキームに従って調製した:
【0130】
【化44】

【0131】
コンデンサー、サーモカップル、添加漏斗、磁気撹拌子、および窒素入口を備えた1000mlの四つ口丸底フラスコに、THQ(26.2g、200ミリモル)、炭酸カリウム(41.4g、300ミリモル)、塩化ベンジル(37.8g、300ミリモル)、およびDMF(100ml)を攪拌しながら添加した。溶液を加熱して2時間攪拌しながら還流し、次いで環境温度に冷却した。反応混合物を1000mlの分離漏斗中の400mlのHOおよび200mlの(i−Pr)Oに添加した。水層を分離し、200mlの(i−Pr)Oで洗浄した。2つの有機層を混合し、毎回200mlのHOで3回洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO)、濾過を行った。溶媒を減圧下で除去した。残留物を真空下(<1.0トール)で蒸留した。粗収率=46.4g;B.P.(℃)=155〜157/1.0トール。H NMR(CDCl)δ7.3(m、5、Ar−H)、6.9(m、2、Ar−H)、6.6(t、1、Ar−H)、6.5(d、1、Ar−H)、4.4(s、2、Ar−N−CH)、3.3(t、2、N−CH)、2.8(t、2、Ar−CH)、2.0(m、2、CH);IR(ニート)2925、2839、1600、1504、1494、1450、1329、1246、1198、1154、969、740、730、694。
【0132】
N−1−ブチル−6−メチルTHQを下記の合成スキームに従って調製した:
【0133】
【化45】

【0134】
コンデンサー、サーモカップル、機械的撹拌器、および窒素入口を備えた500mlの四つ口丸底フラスコに、6−メチルTHQ(44.1g、300ミリモル)、炭酸カリウム(62.1g、450ミリモル)、1−ブロモブタン(61.7g、450ミリモル)、およびN,N−ジメチルホルムアミド(150ml)を攪拌しながら添加した。溶液を加熱して約90分間攪拌しながら還流し、次いで環境温度に冷却した。反応混合物を1000mlの分離漏斗中の400mlのHOおよび200mlの(i−Pr)Oに添加した。水層を分離し、200mlの(i−Pr)Oで洗浄した。2つの有機層を混合し、毎回200mlのHOで3回洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(MgSO)、濾過を行った。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物を真空下(<1.0トール)で蒸留した。粗収率=58.9g(97%);B.P.(℃)=114〜115/0.8トール;H NMR(CDCl)δ6.8(m、2、Ar−H)、6.5(d、1、Ar−H)、3.2(m、4、N−CH)、2.7(t、2、Ar−CH)、2.1(s、3、CH)、1.9(m、2、CH)、1.55(m、2、CH)、1.35(m、2、CH)、0.95(t、3、CH)。
【0135】
<嫌気硬化性組成物の調製>
下記の表にリストした成分を使用して、評価のための嫌気硬化性組成物を作製した。
【0136】
【表1】

【0137】
6つの配合物をこのように調製し、そのうち5つ(試料A〜E)は促進剤が存在し、1つ(試料F)は存在しなかった。下記の表では、試料A〜Fは促進剤が存在したかどうか、および存在する場合どの促進剤が存在したのか、およびそれが本発明の範囲内にあるかどうかを示す。
【0138】
【表2】

【0139】
ASTM 4562に従って、これらの配合物の各々をスチールピンおよびカラー(脱グリース)の5つのレプリカに塗布し、下記の表に示すように15分間〜24時間の期間範囲で硬化させた。これらの期間後、剪断強度を測定し、記録した。図1を参照し、下記の表に示すように測定値を理解することができる。
【0140】
【表3】

【0141】
次に、6つの配合物;インドリン(試料番号1)、N−メチルインドリン(試料番号2)、THQ(試料番号3)、N−メチルTHQ(試料番号4)、およびN−1−ブチルTHQ(試料番号5)(図2〜5におけるx軸上の芳香族アミンと表されている)、ならびに代わりにトルイジン促進剤パッケージに依存するコントロール(試料番号1)を作製して比較した。下記の表を参照して、配合物の成分を理解することができる。
【0142】
【表4】

【0143】
<保存期間安定性>
接着剤配合物が82℃で3時間以上、液体のままである場合、その配合物は許容できる保存期間安定性を有すると判定する評価に従って、配合物の82℃での安定性を決定した。トルイジンパッケージ、THQ、インドリンの各々自体を含有する配合物の評価と同様に、N−メチルTHQまたはN−メチルインドリンのいずれかを含有する配合物について各々の3つの試験片を82℃で評価した。各配合物は、この温度で24時間を超えて液体のままであった。
【0144】
<破壊−優性/解除強度>
破壊/優性接着力試験(break/prevail adhesion testing)をASTM D5649に従って行った。破壊トルクは、固定した組立品において軸力を減少または除去するのに必要な初期トルクである。優性/トルク(prevail/torque)は、接合の初期破壊の後、ナットの360°回転中の任意の点で測定される。優性トルクは通常、ナットの180°回転で決定される。解除接着力試験を、ナットとボルトの台座との間のスペーサーを用いて行った。スチール3/8×16ナットおよびボルトを1,1,1−トリクロロエチレンで脱グリースし、接着剤をボルトに塗布し、スペーサーとしてスチールカラーを備えたボルトにナットをねじ込んだ。
【0145】
試験する配合物の各々に対して、スチールおよびステンレススチールの20個のナットおよびボルト試験片を組み立てた。破壊/優性接着力試験では、試験片を組立後(各々5つの試験片)、環境温度で15分間、30分間、1時間、4時間および24時間維持した。次いで破壊および優性トルク強度[インチ−ポンド(in−lbs)で測定]は、各々の配合物の5つの試験片をそれぞれ環境温度(25℃)および45〜50%相対湿度で15分、30分、1時間、4時間および24時間後において記録した。次いで解除トルク強度(インチ−ポンドで測定)は、各々の配合物の5つの試験片をそれぞれ環境温度(25℃)および45〜50%相対湿度で15分、30分、1時間、4時間および24時間後に記録した。較正した自動トルク分析器を用いてトルク強度を測定した。スチールナットおよびボルト組立品についての評価データを下記の表および図2〜3に説明する。ステンレススチールナットおよびボルト組立品についての評価データを下記の表および図4〜5に説明する。
【0146】
【表5】

【0147】
このデータは、本発明に従った配合物は、スチール基体上で塗布および硬化した場合、従来の嫌気接着剤と比較して室温で特に良好な破壊および優性特性を見せることを示している。本発明に従った配合物は、スチール基体に塗布および硬化した場合、従来の嫌気接着剤と比較して、室温で特に良好な解除特性を見せる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)構造I:
【化1】

(構造中、Rは、任意であるが、存在する場合、各々、他とは独立して3回まで存在してよく、ハロゲン、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、C2〜20のアルキニル、C1〜20のアルキルオキシ、C2〜20のアルケニルオキシまたはC2〜20のアルキニルオキシからなる群より選択され;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3である)で表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物と、
(b)
(i)構造II:
【化2】

(構造中、Z”は、−O−、−S−、および−NH−からなる群より選択され;qは、1〜4であり;Rは、独立して、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、およびチオアルキルからなる群より選択され;nは、少なくとも1である)によって表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物、ここでその反応生成物は、独立して、−OH、−NHおよび−SHからなる群より選択される少なくとも2つのペンダント官能基を含む、または
(ii)アルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤、
のいずれかと、
を含む反応体から調製される、嫌気硬化性組成物の硬化を促進するための反応生成物。
【請求項2】
構造A:
【化3】

(構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルからなる群より選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルからなる群より選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である)の範囲内にある化合物。
【請求項3】
前記(a)において構造Iで表される化合物が、THQ、インドリンまたはインドールである、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項4】
前記(b)において構造IIで表される化合物が、グリシドールである、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項5】
前記(b)が、アルキルハライドを含む、請求項1に記載の反応生成物。
【請求項6】
(a)(メタ)アクリレート成分と、
(b)嫌気硬化システムと、および
(c)請求項1に記載の反応生成物と
を含む、嫌気硬化性組成物。
【請求項7】
前記嫌気硬化システムが、クメンヒドロペルオキシド、パラ−メンタンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジアセチルペルオキシド、ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチル−ペルオキシヘキサ−3−イン、4−メチル−2,2−ジ−t−ブチルペルオキシペンタン、t−アミルヒドロペルオキシド、1,2,3,4−テトラメチルブチルヒドロペルオキシドおよびそれらの組合せからなる群より選択されるヒドロペルオキシドを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
さらに、少なくとも1種の促進剤を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記促進剤が、アミン、アミンオキシド、スルホンアミド、金属および金属源、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記促進剤が、トリアジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアニリン、ベンゼンスルホンイミド、シクロへキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、サッカリン、N,N−ジエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−o−トルイジン、アセチルフェニルヒドラジン、マレイン酸およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
さらに、少なくとも1種の安定剤を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
前記安定剤が、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ブチル化ヒドロキシトルエン、エチレンジアミン四酢酸またはその塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
嫌気硬化性組成物のための硬化促進剤として、構造A:
【化4】

(構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルからなる群より選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルからなる群より選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である)によって包含される化合物を使用する方法であって、以下のステップ:
(a)(メタ)アクリレート成分および嫌気硬化誘導組成物を含む嫌気硬化性組成物を提供するステップ、
(b)嫌気硬化性組成物のための硬化促進剤として、構造A:
【化5】

(構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルからなる群より選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルからなる群より選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である)によって包含される化合物を提供するステップ、および
(c)前記嫌気硬化性組成物および前記硬化促進剤を、前記組成物を硬化するのに有利な条件に曝すステップ、
を含む、方法。
【請求項14】
嫌気硬化性組成物の硬化を促進するための反応生成物を反応体から作製する方法であって、前記方法は、
(a)構造I:
【化6】

(構造中、Xは、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルからなる群より選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく、またはXおよびYは、一緒になって5〜7個の環原子を有する炭素環状環を形成してもよく;Zは、O、S、またはNX’であり、ここでX’は、H、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルからなる群より選択され、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;Rは、任意であるが、存在する場合、芳香族環上で3回まで存在してよく、および存在する場合、C1〜20のアルキル、C2〜20のアルケニル、またはC7〜20のアルカリルであり、後者の3つのいずれも1つ以上のヘテロ原子によって割り込まれていてよく、または−OH、−NHもしくは−SHから選択される1つ以上の基によって官能基化されていてよく;nは、0または1であり;zは、1〜3であるが、ただし、XがHである場合、zは2ではなく、好ましくは1である)によって表される化合物の群より選択される少なくとも1種の化合物と、
(b)
(i)構造II:
【化7】

(構造中、Z”は、−O−、−S−、および−NH−からなる群より選択され;qは、1〜4であり;Rは、独立して、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、およびチオアルキルからなる群より選択され;nは、少なくとも1であり、ここで前記(a)および(b)(i)の反応生成物は、独立して、−OH、−NHおよび−SHからなる群より選択される少なくとも2つのペンダント官能基を含む)によって表される化合物群から選択される少なくとも1種の化合物、または
(ii)塩基の存在下、アルキル化剤、アルケニル化剤またはアルカリル化剤、
のいずれかと
を反応させることを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−525417(P2012−525417A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508670(P2012−508670)
【出願日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/032873
【国際公開番号】WO2010/127055
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【出願人】(501194879)ロックタイト (アール アンド ディー) リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】LOCTITE (R & D) LIMITED
【Fターム(参考)】