説明

安全運転支援システム

【課題】車両側に乗員の生体情報を検出ための特別なセンサを設けることなく、日常の車両の運転状態と、日常の睡眠状態とをモニタして、乗員や車両に働きかけて、事故等を未然に防止できるように安全運転を支援する安全運転支援システムを提供する。
【解決手段】就寝中に検出された生体情報に基づいて、睡眠の質を含む睡眠状態を示す睡眠状態情報を演算する睡眠状態演算部2と、走行中に検出された車両30の挙動に基づいて、運転の質を含む運転状態を示す運転状態情報を演算する運転状態演算部4と、睡眠状態情報と運転状態情報とに基づいて、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す運転レベルマップ6を設定する運転レベル設定部5と、情報伝達手段9を介して取得された最新の睡眠状態情報と運転レベルマップ6とに基づいて、複数の異なる報知レベルを有する報知情報を設定する報知情報設定部7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員による日常の車両の運転状態と、当該乗員の日常の睡眠状態とをモニタして、乗員及び車両の一方又は双方に対して報知して安全運転を支援する安全運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような安全運転支援システムに関する技術として、特開2008−113946号公報(特許文献1)に開示された体調管理システムがある。この体調管理システムは、就寝時体調管理部と、運転時体調管理部とを備えて構成され、両管理部は、情報伝達部を介して、体調情報や生体情報を相互に伝達する。就寝時体調管理部は、就寝中に脈拍や呼吸、体温、体動などの就寝時生体情報を検出し、就寝時体調情報を演算する。運転時体調管理部は、車両への乗車中に脈拍や呼吸、視線の動きなどの運転時生体情報を検出し、運転時体調情報を演算する。運転時体調情報は、運転時体調管理部が検出した運転時生体情報と、情報伝達部を介して取得した就寝時体調情報とに基づいて、運転時体調管理部で演算される。同様に、就寝時体調情報は、就寝時体調管理部が検出した就寝時生体情報と、情報伝達部を介して取得した運転時体調情報とに基づいて、就寝時体調管理部で演算される。運転時体調管理部は、演算された運転時体調情報に基づいて、運転者の集中力が低下した場合の覚醒の補助や、休憩を促す報知などの運転補助作動を制御する。尚、就寝中などの生体情報の検出方法については、例えば、国際公開公報WO98/52467号(特許文献2)等に紹介されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−113946号公報(第22〜23段落、図1〜7等)
【特許文献2】国際公開公報WO98/52467号パンフレット(Fig.3-7、Fig.19等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、運転中に取得された生体情報(運転時生体情報)を用いて運転時体調情報が演算され、この運転時体調情報に基づいて運転補助作動が制御される。従って、車両には運転中に脈拍や呼吸、視線の動きなどの乗員の生体情報を取得するためのセンサを必要とする。また、上記技術では、運転中に実際に眠くなるなど、所定の状態にならなければ機能しない。従って、より事故などを未然に防止できる機能を有するシステムが望まれている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたもので、車両側に乗員の生体情報を検出ための特別なセンサを設けることなく、乗員による日常の車両の運転状態と、当該乗員の日常の睡眠状態とをモニタして、乗員や車両に対して働きかけて、事故等を未然に防止できるように安全運転を支援する安全運転支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る安全運転支援システムの特徴構成は、
乗員による日常の車両の運転状態と、当該乗員の日常の睡眠状態とをモニタして、前記乗員及び前記車両の一方又は双方に対して報知して安全運転を支援する安全運転支援システムであって、
就寝中に検出された生体情報に基づいて、睡眠の質を含む睡眠状態を示す睡眠状態情報を演算する睡眠状態演算部と、
走行中に検出された当該車両の挙動に基づいて、運転の質を含む運転状態を示す運転状態情報を演算する運転状態演算部と、
前記睡眠状態情報と前記運転状態情報とを取得して、当該両情報の履歴に基づいて、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す運転レベルマップを設定する運転レベル設定部と、
前記運転レベルマップと、情報伝達手段を介して取得された最新の前記睡眠状態情報とに基づいて、複数の異なる報知レベルを有する報知情報を設定する報知情報設定部と、を備える点にある。
【0007】
車両には、運転操作の補助装置や安全装置を制御するために、加速度センサや速度センサなどが備えられている。これらのセンサの検出結果を利用すれば、運転の質を含む運転状態のレベルを運転状態情報として定量的に検出することができる。従って、別途、専用のセンサを搭載することなく、運転状態を検出することができる。本特徴構成によれば、このようにして取得可能な運転状態情報と、別途、就寝中に取得された生体情報を用いて演算された睡眠状態情報との履歴に基づいて、運転レベルマップが設定される。そして、この運転レベルマップと最新の睡眠状態情報とに基づいて、車両運転時に当該乗員や車両に対する報知情報が設定される。報知情報は、例えば、乗員に対しては運転に関する注意点を示す情報であり、車両に対しては車両の挙動や乗員の居住環境を制御するための情報である。従って、車両側に乗員の生体情報を検出ための特別なセンサを設けることなく、車両の運転時に乗員や車両に対して働きかけ、事故等を未然に防止できるように安全運転を支援することが可能となる。
【0008】
また、本発明に係る安全運転支援システムは、前記運転レベル設定部が、過去の所定収集期間に取得した前記睡眠状態情報及び前記運転状態情報に基づいて前記運転レベルマップを設定すると好適である。
【0009】
睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関関係は、年齢などに応じて変化する。また、季節に応じて変化することもある。過去の所定収集期間に亘って取得された睡眠状態情報と運転状態情報とに基づいて運転レベルマップが設定されると、所定収集期間よりも前に取得された古い情報を除外して、新たに取得した情報を用いて運転レベルマップを更新することができる。従って、この構成によれば、運転レベルマップを設定する上での充分なサンプル数を確保できると共に、経年変化や気候の変化にも良好に追従させることが可能である。
【0010】
また、本発明に係る安全運転支援システムの前記報知情報設定部は、前記所定収集期間に亘って収集され、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す前記睡眠状態情報及び前記運転状態情報の対の総サンプル数が、所定の下限総サンプル数未満の場合、前記運転レベルマップに関係なく、最新の前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに応じて前記報知情報を設定すると好適である。
【0011】
睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す睡眠状態情報及び運転状態情報の対である総サンプル数が少ない場合には、運転レベルマップにおける相関関係の信頼性が低下する。一方、睡眠状態のレベルに対応した運動能力や運転能力のレベルは、個人差があるものの一般的な相関関係を有すると考えられる。従って、総サンプル数が少ない場合には、最新の前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに応じて報知情報を設定すると少なくとも乗員にとって違和感が少なく、一般的な報知情報を設定することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る安全運転支援システムの前記報知情報設定部は、前記所定収集期間に亘って収集された情報に基づいて設定された前記運転レベルマップにおける睡眠状態のレベルに対する運転状態のレベルの対応関係が、運転状態のレベルが低下する方向に推移しているか否かを前記所定収集期間よりも短い所定のチェック期間ごとに判定し、運転状態のレベルが低下していると判定された場合には、運転状態のレベルが低下傾向にあることを前記報知情報に含めて設定すると好適である。
【0013】
上述したように、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関関係は、年齢や季節などに応じて変化する。また、労働環境や生活環境によっても変化する可能性がある。このような変化は、順次、運転レベルマップに反映されるようになっているが、運転レベルマップを設定するための所定収集期間よりも短い所定のチェック期間ごとに変化がチェックされるとさらによい。運転状態のレベルが、低下傾向にある場合、この傾向を報知情報に含めることで、さらなる安全運転を促すことが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る安全運転支援システムの前記報知情報設定部は、前記情報伝達手段を介して取得された最新の前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルと、当該睡眠状態のレベル以上のレベルに対応する運転状態のレベルとを前記運転レベルマップから取得し、睡眠状態のレベルの違いによる運転状態のレベルの差に基づいて前記報知情報を設定すると好適である。
【0015】
一般的に、充分な睡眠が得られた後には、運転の質も向上する。本特徴によれば、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベル以上の睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルを基準として、報知情報が設定される。つまり、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルと同等、または良好な睡眠状態のレベルであった場合の運転状態に比べて、現時点の睡眠状態のレベルではどのような運転状態となるかという観点から、報知情報が設定される。従って、乗員に対して、より注意を促す方向への報知情報が設定されるので、乗員は気の緩みを抑制される。その結果、乗員は、より安全運転を行う可能性が高くなり好適である。
【0016】
ここで、本発明に係る安全運転支援システムの前記報知情報設定部は、睡眠状態のレベルの低下に応じて運転状態のレベルが低下している場合には、前記報知情報に居眠り運転に関する注意を含め、睡眠状態のレベルの低下に拘わらず運転状態のレベルに差がない場合には、前記報知情報に居眠り運転に関する注意を含めずに、前記報知情報を設定する。
【0017】
睡眠状態のレベルの低下に応じて運転状態のレベルが低下している場合には、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルに影響を及ぼしていることになる。従って、睡眠の質に関連する居眠り運転に関する注意を含めて報知情報が設定されると、睡眠状態のレベルの低下に伴う安全性の低下を抑制することができる。一方、睡眠状態のレベルの違いに拘わらず、運転状態のレベルに差が無い場合には、報知情報に居眠り運転に関する注意が含められない。従って、乗員は、不適切な注意に対する煩わしさを感じることがない。
【0018】
また、ここで、本発明に係る安全運転支援システムの前記報知情報設定部は、前記情報伝達手段を介して取得された最新の前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルと、当該睡眠状態のレベル以上の睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルとの少なくとも何れか1つに対応する前記運転レベルマップにおけるサンプル数が、所定の下限個別サンプル数未満の場合、睡眠状態のレベルの違いによる運転状態のレベルの差に関係なく、前記報知情報に居眠り運転に関する注意を含めて前記報知情報を設定する。
【0019】
当該サンプル数が、所定の下限個別サンプル数未満の場合、睡眠状態のレベルの違いによる運転状態のレベルの差に関する相関関係の信頼性が高いとは言えない。従って、信頼性が高くない相関関係に基づいて報知情報を設定するよりも、より安全性を考慮して報知情報を設定する方がよい。従って、睡眠状態のレベルの低下に伴う居眠り運転の可能性を考慮して、報知情報に居眠り運転に関する注意を含めて報知情報が設定されると好適である。
【0020】
また、本発明に係る安全運転支援システムの前記報知情報設定部は、最新の前記睡眠状態情報を受け取った日から過去に連続する所定日数において受け取った前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルが、所定の下限睡眠状態を下回って推移している場合、前記運転レベルマップに拘わらず、運転を控えることを促す情報を前記報知情報に含めて設定すると好適である。
【0021】
睡眠状態のレベルが低いと、一般的には運動能力や運転能力が低下する。従って、所定の下限睡眠状態を下回るような睡眠の質の悪い状態が続いている場合には、運転操作力や判断力などが低下する可能性ある。このような場合には、運転を控えることが好ましい。運転レベルマップに拘わらず、運転を控えることを促す情報が報知情報に含められることによって、安全性を向上させることが可能となる。
【0022】
また、本発明に係る安全運転支援システムの前記報知情報設定部は、生理学的に眠気を生じやすい所定の警告時間帯に前記車両の運転を開始した場合及び運転を継続している場合に、前記報知レベルに応じて設定される眠気に関する注意情報を付加して前記報知情報を設定すると好適である。
【0023】
生理学的に眠気を生じやすい時間帯が知られている。そこで、運転レベルマップに基づいて設定される報知情報に対して、当該報知情報の報知レベルに応じた眠気に関する注意情報が付加される。乗員の特性に合わせて設定される報知情報に、生理学的な統計に基づく注意情報が付加されることによって、より安全運転を促すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る安全運転支援システムの構成例を模式的に示すブロック図である。安全運転支援システム10は、乗員による日常の車両の運転状態と、当該乗員の日常の睡眠状態とをモニタして、乗員及び車両の一方又は双方に対して報知して安全運転を支援するシステムである。図1に示すように、安全運転支援システム10は、生体情報検出部1と、睡眠状態演算部2と、挙動検出部3と、運転状態演算部4と、運転レベル設定部5と、運転レベルマップ6と、報知情報設定部7と、情報伝達手段9とを有している。
【0025】
本実施形態において、生体情報検出部1と、睡眠状態演算部2とは、ベッド20に例示される就寝システムに備えられている。また、本実施形態において、挙動検出部3と
運転状態演算部4と、運転レベル設定部5と、運転レベルマップ6と、報知情報設定部7とは、車両30に備えられている。情報伝達手段9は、例えば、メモリカードであり、ベッド20及び車両30は、共に当該メモリカードに対する情報の読み書きが可能なカードスロットを備えている。当然ながら、情報伝達手段9は、メモリカードに限定されることはなく、光学ディスクや、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、ICカード等の他の媒体であってもよい。また、情報伝達手段9は、有形の記憶媒体に限定されることもなく、ワイヤレス通信や、インターネットなどの通信網を介した通信などの通信手段によって構成されてもよい。また、車両30には、電波時計やGPS(global positioning system)システムなど、日付及び時刻情報を取得可能な装置が搭載されている。運転状態演算部4や、報知情報設定部7などは、日付情報や時刻情報を用いて演算することが可能である。
【0026】
生体情報検出部1は、本実施形態では、ベッド20に備えられたセンサである。このセンサは、例えば、圧電素子を利用したセンサ(圧電センサ)であり、ベッド20において利用者(乗員)の体重が掛かる場所に少なくとも1つ設置される。当然複数箇所に設置されていてもよい。圧電センサは、振動などの外力に応じて圧電変換された電荷の量を検出結果として出力する。圧電センサは、ベッド20に横たわる利用者の脈拍や呼吸、体動などの外力に応じた検出結果を出力する。利用者の脈拍や呼吸、体動などは、本発明の生体情報に相当する。このような生体情報の検出方法の詳細については、例えば、国際公開公報WO98/52467(特許文献2)等に開示されているように公知であるので、詳細な説明は省略する。尚、圧電センサのみに限らず、さらに温度センサを用いて生体情報として体温を検出してもよい。また、睡眠時間も本発明の生体情報とする。
【0027】
睡眠状態演算部2は、就寝中に検出された生体情報に基づいて、睡眠の質を含む睡眠状態を示す睡眠状態情報を演算する。例えば、体動が多かった場合には、寝苦しく眠りが浅いことが考えられる。その他、呼吸や脈拍、体温、睡眠時間などの生体情報に基づいて、睡眠状態情報を演算する。演算された睡眠状態情報は、本実施形態においては、メモリカードに記録され、利用者(乗員)によって車両30へと伝達される。
【0028】
車両30には、車両走行時の当該車両の挙動を検出する挙動検出部3が備えられている。挙動検出部3は、例えば、加速度センサや速度センサなどによって構成される。これらのセンサは、運転操作の補助装置や安全装置を制御するために、車両30に搭載されているセンサを利用することができる。加速度センサは、車両30に生じる加速度を検出するセンサであり、急発進や急制動、急旋回などによって生じる加速度を検出する。また、速度センサは、例えば車輪に備えられて車輪の回転数を検出ことによって車速を検出するセンサである。速度センサによって、速度の不規則な増減や、速度超過などを検出することも可能である。その他、ステアリング角センサによって、急旋回や、蛇行などを検出することも可能である。上記において例示した急発進や急制動、急旋回、速度の不規則な増減や、速度超過、急旋回や、蛇行などは、本発明の車両の挙動に相当する。各挙動の詳細な検出原理等については、多くの文献等によって公知であるので、詳細な説明は省略する。また、上記の挙動は一例であり、その他の物理現象を挙動とすることを妨げるものではない。
【0029】
運転状態演算部4は、挙動検出部3によって検出された車両30の挙動に基づいて、運転の質を含む運転状態を示す運転状態情報を演算する。例えば、急発進や急制動、急旋回などが多い場合や、蛇行しているような場合には、運転の質が良くないという情報を含む運転状態情報を演算結果として出力する。
【0030】
運転レベル設定部5は、睡眠状態情報と運転状態情報とを取得して、両情報の履歴に基づいて、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す運転レベルマップ6を設定する機能部である。運転レベルマップ6は、睡眠状態と運転状態との対応を定量化したものである。睡眠状態と運転状態との関連性は、年齢や季節などによって変化するため、過去の所定収集期間に亘って蓄積された睡眠状態と運転状態とからマップ化される。所定収集期間とは、例えば3ケ月間である。図2は、運転レベルマップ6の一例を模式的に示す説明図である。図2に示すように、睡眠状態と運転状態とをそれぞれ3つのレベルに分割すると、9つのブロック分けを行うことができる。これは一例であり、睡眠状態と運転状態とが、3つ以外のレベルに分割されてもよい。また、その際、睡眠状態と運転状態とが異なる段数に分割されてもよい。運転レベルマップ6は、適宜更新される。更新時期は、毎日であっても良いし、1週間ごと、1ケ月ごと、3ケ月ごとであってもよい。
【0031】
ここで、3つのレベルの「良い」、「やや悪い」、「悪い」は、睡眠状態情報及び運転状態情報から定量的に導かれるレベル分割であると好適である。例えば、睡眠状態情報及び運転状態情報をそれぞれ、0〜100点の点数を有する情報に定量化する。そして、70点以上の場合を「良い」、50点以上70点未満の場合を「やや悪い」、50点未満の場合を「悪い」とすることができる。当然ながら、睡眠状態情報と運転状態情報とで、異なる点数の範囲を割り当ててもよいし、3つ以外のレベルに分割することも可能である。
【0032】
図3は、図2に示す運転レベルマップ6にマッピングされた一例を示す説明図である。運転レベルマップ6の1つの枠内に記載されている数字は、睡眠状態情報及び運転状態情報の対であるサンプル数である。図3は、過去3ケ月に亘って蓄積された睡眠状態と運転状態とに基づいて設定された運転レベルマップ6を示している。総サンプル数は、69である。図中、丸を付けた枠は、睡眠状態ごとに最大の度数を有する運転状態を選択したものである。つまり、睡眠状態が「良い」時及び睡眠状態が「やや悪い」時には、運転状態が「良い」場合が最も頻度が高く、睡眠状が「悪い」時には、運転状態が「やや悪い」場合が最も頻度が高い。
【0033】
報知情報設定部7は、運転レベルマップ6と情報伝達手段9を介して取得された最新の睡眠状態情報とに基づいて、車両運転時に乗員に対して報知する報知情報を設定する機能部である。報知情報を設定する例について以下に説明する。報知情報の設定に関する説明に先立って、「報知情報」について簡単に説明する。本実施形態においては、「報知情報」は、「運転警告」と「居眠り警告」との2種類設けられる。「運転警告」は、主として運転操作に関する報知であり、例えば、「周囲に注意して運転してください。」等のメッセージである。「居眠り警告」は、主として覚醒状態に関する報知であり、例えば、「眠りの状態が悪いのでいつも以上に運転に機を配ってください。」等のメッセージである。本実施形態においては、運転レベルマップ6と、情報伝達手段9を介して取得された最新の睡眠状態情報とに基づいて、最適な「運転警告」又は「居眠り警告」が「報知情報」として設定される。「運転警告」は、報知情報に居眠り運転に関する注意を含まない警告であり、「居眠り警告」は、報知情報に居眠り運転に関する注意を含む警告である。具体例については、以下に具体的な適用事例と共に示す。
【0034】
報知情報設定部7は、最新の睡眠状態情報に基づいて、当該睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベル以上の睡眠状態であるときにどのような運転状態であるかを運転レベルマップ6から取得する。最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態における運転状態は、睡眠状態が同等以上の場合と比べて、低下又は同等となるものとして、報知情報が設定される。
【0035】
具体的には、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルが「やや悪い」に属する睡眠状態であったとする。この場合には、当該睡眠状態のレベル(「やや悪い」)以上の睡眠状態のレベル(「良い」)の時の運転状態が運転レベルマップ6から取得される。ここで、取得された運転状態のレベルが「やや悪い」に属するものであった場合には、睡眠状態のレベルの低下に伴ってさらに運転状態のレベルが悪くなることを抑制する報知情報が設定される。つまり、睡眠状態がよい良い場合においてさえ、運転状態が「やや悪い」ものであったので、睡眠状態のレベル低下に伴ってさらに運転状態のレベルが低下することが考えられるとして、運転状態のレベルが低下することを抑制する報知情報が設定される。
【0036】
以下、具体的な例に基づいて説明する。図4〜図6は、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態と、当該睡眠状態に対応する運転レベルマップの運転状態と、その際に設定される報知情報との関係を示す対応図である。それぞれ、図4は、睡眠状態のレベルが「良い」場合の対応図を示し、図5は、睡眠状態のレベルが「やや悪い」場合の対応図を示し、図6は、睡眠状態のレベルが「悪い」場合の対応図を示す。
【0037】
図4に示すように、睡眠状態のレベルが「良い」のレベルである場合には、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態よりも高いレベルの睡眠状態はない。従って、同等の睡眠状態である「良い」のレベルに対応する運転状態が運転レベルマップ6から取得され、その運転状態のレベルに基づいて報知情報が設定される。この場合、睡眠状態が「良い」のレベルであるので、睡眠状態に関する報知情報である「居眠り警告」ではなく、運転操作に関する報知情報である「運転警告」が設定される。
【0038】
具体的には、運転レベルマップ6において、運転状態が「良い」のレベルであった場合には、「運転警告A」が報知情報として設定される。運転警告Aは、例えば、「今日も安全運転に努めて下さい。」というメッセージである。
【0039】
運転状態が「やや悪い」のレベルであった場合には、「運転警告B」が報知情報として設定される。運転警告Bは、例えば、「ブレーキは早めに、周囲に注意して運転してください。」というメッセージである。睡眠状態が「良い」レベルであっても、運転状態が「やや悪い」のレベルの乗員であるので、運転操作に注意を促すメッセージが設定される。
【0040】
運転状態が「悪い」のレベルであった場合には、「運転警告C」が報知情報として設定される。運転警告Cは、例えば、「注意が散漫になる傾向が見られます。あせらず、落ち着いて運転してください。」というメッセージである。睡眠状態が「良い」レベルであっても、運転状態が「悪い」のレベルの乗員であるので、運転操作に強く注意を促すメッセージが設定される。
【0041】
図5に示すように、睡眠状態が「やや悪い」のレベルである場合には、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態よりも高いレベルの睡眠状態である「良い」のレベルの睡眠状態を基準として報知情報が判別されて設定される。より詳しくは、睡眠状態が「やや悪い」のレベルに対応する運転状態が運転レベルマップ6から取得され、さらに、睡眠状態が「良い」のレベルに対応する運転状態が運転レベルマップ6から取得される。そして、これらの運転状態に基づいて報知情報が判別されて設定される。つまり、現在の睡眠状態のレベル(「やや悪い」)における運転状態と、この睡眠状態よりも良い運転状態のレベル(「良い」)における運転状態とに基づいて報知情報が設定される。報知情報は、睡眠状態の低下に伴って運転状態がどのように変化するかが考慮されて設定されることになる。従って、報知情報は、運転レベルマップ6から取得される運転状態のレベルに応じて、「居眠り警告」又は「運転警告」となる。以下、具体的に説明する。
【0042】
初めに、報知情報を判別するための第1判別条件について説明する。図7は、報知情報を判別するための第1判別条件を示す対応図である。図7に示すように、第1判別条件に応じて、4つの判別番号に判別される。つまり、睡眠状態が「良い」のレベルのときに、運転状態も「良い」のレベルであれば、判別番号は「1」となる。睡眠状態が「良い」のレベルのときに、運転状態が「やや悪い」のレベルであれば、判別番号は「2」となる。睡眠状態が「良い」のレベルのときに、運転状態が「悪い」のレベルであれば、判別番号は「3」となる。尚、運転レベルマップ6において、睡眠状態が「良い」に対応するサンプルが無かった場合には、判別番号は「4」となる。
【0043】
まず、睡眠状態が「やや悪い」のレベルにおいて運転レベルマップ6から取得される運転状態のレベルが「良い」であった場合に、図7の第1判別条件を適用して、報知情報を設定する場合について説明する。この場合、第1判別条件の判別結果に基づいて、報知情報リスト1から報知情報が取得され、設定される。図8は、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態が「やや悪い」のレベルである場合の報知情報を示す対応図である。図8には、報知情報リスト1〜3の対応が示されており、この場合には報知情報リスト1から報知情報が取得される。図中の網掛けについては、後述する。
【0044】
第1判別条件に基づいて、判別番号「1」と判別された場合には、図8に示すように、「運転警告A」が設定される。上述したように、運転警告Aは、例えば、「今日も安全運転に努めて下さい。」というメッセージである。睡眠状態のレベルが「良い」場合も、「やや悪い」場合も、運転状態のレベルが「良い」ので、睡眠状態のレベルに低下による運転状態のレベルの低下は心配されず、通常の良好な運転操作を継続することを促すメッセージが報知情報として設定される。
【0045】
図8を参照すると、睡眠状態のレベルが「良い」の時に、運転状態のレベルが「やや悪い」や「悪い」の場合には、判別番号が「2」や「3」となるが、「運転警告A」が設定される。この場合、睡眠状態のレベルの低下に伴って、運転状態のレベルが低下していないので、良好な運転操作を継続することを促すメッセージが報知情報として設定される。判別番号が「4」の場合も同様である。
【0046】
次に、睡眠状態が「やや悪い」のレベルにおいて運転レベルマップ6から取得される運転状態のレベルが「やや悪い」であった場合に、図7の第1判別条件を適用して、報知情報を設定する場合について説明する。この場合、第1判別条件の判別結果に基づいて、図8に示す報知情報リスト2から報知情報が取得され、設定される。
【0047】
第1判別条件に基づいて、判別番号「1」と判別された場合には、「居眠り警告A」が設定される。「居眠り警告A」は、例えば、「眠りの状態が少々悪いため、いつも以上に運転に気を配ってください。」というメッセージである。つまり、睡眠状態のレベルが「良い」から「やや悪い」に低下したことによって、運転状態のレベルが「良い」から「やや悪い」に低下しているので、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルの低下に影響していると考えられる。従って、睡眠状態に関する注意を促すべく、「居眠り警告A」が報知情報として設定される。
【0048】
第1判別条件に基づいて、判別番号「2」と判別された場合には、「運転警告B」が設定される。上述したように、運転警告Bは、例えば、「ブレーキは早めに、周囲に注意して運転してください。」というメッセージである。この場合、睡眠状態のレベルの低下に伴って、運転状態のレベルが低下していないので、運転状態のレベルが「やや悪い」場合に対応する「運転警告B」が設定される。
【0049】
第1判別条件に基づいて、判別番号「3」と判別された場合にも、「運転警告B」が設定される。この場合、睡眠状態のレベルの低下に伴って、運転状態のレベルが改善している。従って、少なくとも運転状態のレベルが「やや悪い」場合に対応する運転状態を継続することを促すために、「運転警告B」が設定される。判別番号が「4」の場合も同様である。
【0050】
続いて、睡眠状態が「やや悪い」のレベルにおいて運転レベルマップ6から取得される運転状態のレベルが「悪い」であった場合に、図7の第1判別条件を適用して、報知情報を設定する場合について説明する。この場合、第1判別条件の判別結果に基づいて、図8に示す報知情報リスト3から報知情報が取得され、設定される。
【0051】
第1判別条件に基づいて、判別番号「1」と判別された場合に先だって、第1判別条件に基づいて、判別番号「2」と判別された場合について説明する。判別番号「2」と判別された場合には、「居眠り警告B」が設定される。「居眠り警告B」は、例えば、「眠りの状態が少々悪いため、運転能力が下がります。注意して運転してください。」というメッセージである。つまり、睡眠状態のレベルが「良い」から「やや悪い」に低下したことによって、運転状態のレベルが「やや悪い」から「悪い」に低下しているので、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルの低下に影響していると考えられる。さらに、運転状態のレベルは上述した「居眠り警告A」を設定した場合に比べて低いので、「居眠り警告A」よりもさらに注意を促す内容の「居眠り警告B」が報知情報として設定される。
【0052】
第1判別条件に基づいて、判別番号「1」と判別された場合には、「居眠り警告C」が設定される。「居眠り警告C」は、例えば、「眠りの状態が少々悪いため、かなりの運転能力低下の傾向が見られます。今日は特に注意して運転してください。」というメッセージである。つまり、睡眠状態のレベルが「良い」から「やや悪い」に低下したことによって、運転状態のレベルが「良い」から「悪い」に著しく低下しているので、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルの低下に大きく影響していると考えられる。従って、睡眠状態のレベルの低下に起因して運転能力が低下傾向にある点を強く認識させるべく、「居眠り警告A」及び「居眠り警告B」よりもさらに強く注意を促す「居眠り警告C」が報知情報として設定される。
【0053】
第1判別条件に基づいて、判別番号「3」と判別された場合には、「運転警告C」が設定される。上述したように、運転警告Cは、例えば、「注意が散漫になる傾向が見られます。あせらず、落ち着いて運転してください。」というメッセージである。この場合、睡眠状態のレベルの低下に伴って、運転状態のレベルが低下していないので、運転状態のレベルが「悪い」場合に対応する「運転警告C」が設定される。判別番号が「4」の場合も同様である。
【0054】
このように、現在の睡眠状態のレベルにおける運転状態と、この睡眠状態以上のレベルの時の運転状態のレベルにおける運転状態とに基づいて報知情報が設定される。従って、運転の当日だけの睡眠状態及び運転状態から報知を行うような従来のシステムと比べて、より乗員のくせや傾向に有った報知情報を設定することが可能となる。
【0055】
以下、続いて、睡眠状態が「悪い」のレベルである場合の報知情報の設定について説明する。報知情報設定部7が、最新の睡眠状態情報に基づいて、当該睡眠状態情報に示された睡眠状態以上の睡眠状態であるときにどのような運転状態であるかを運転レベルマップ6から取得する点については同様である。しかし、睡眠状態のレベルが「やや悪い」の場合には、当該レベルよりも上位のレベルは「良い」だけであったのに対し、睡眠状態のレベルが「悪い」の場合には、当該レベルよりも上位に2つのレベル「良い」と「やや悪い」とが存在する。従って、適切な報知情報の設定には、睡眠状態が上位の2つのレベルのそれぞれにおいて運転状態のレベルがどうであったかを考慮する必要がある。そこで、上述した第1判別条件に加えて、第2判別条件が適用される。
【0056】
図9は、報知情報を判別するための第1判別条件を示す対応図である。図9に示すように、第2判別条件に応じて、4つの判別番号に判別される。つまり、睡眠状態が「やや悪い」のレベルのときに、運転状態が「良い」のレベルであれば、判別番号は「1」となる。睡眠状態が「やや悪い」のレベルのときに、運転状態が「やや悪い」のレベルであれば、判別番号は「2」となる。睡眠状態が「やや悪い」のレベルのときに、運転状態が「悪い」のレベルであれば、判別番号は「3」となる。尚、運転レベルマップ6において、睡眠状態が「やや悪い」に対応するサンプルが無かった場合には、判別番号は「4」となる。
【0057】
まず、図6に示すように、睡眠状態が「悪い」のレベルにおいて運転レベルマップ6から取得される運転状態のレベルが「良い」であった場合について説明する。初めに、図7に示す第1判別条件に基づいて判別され、その後、図9に示す第2判別条件に基づいて判別される。そして、第2判別条件に基づいて判別された判別番号に基づき、図10に示す報知情報リスト4〜7から適切な報知情報が取得されて設定される。図10は、睡眠状態のレベルが「悪い」であり、運転状態のレベルが「良い」場合に適用される報知情報を示す対応図である。図中の網掛けについては、後述する。
【0058】
図10に示すように、睡眠状態が「悪い」のレベルにおいて運転レベルマップ6から取得される運転状態のレベルが「良い」であった場合には、全て、「運転警告A」が報知情報として設定される。つまり、睡眠状態のレベルが「悪い」にも拘わらず、運転状態のレベルが「良い」であるので、睡眠状態のレベルに低下による運転状態のレベルの低下は心配されず、通常の良好な運転操作を継続することを促すメッセージが報知情報として設定される。
【0059】
次に、睡眠状態が「悪い」のレベルにおいて運転レベルマップ6から取得される運転状態のレベルが「やや悪い」であった場合について説明する。図11は、睡眠状態のレベルが「悪い」であり、運転状態のレベルが「やや悪い」場合に適用される報知情報を示す対応図である。図中の網掛けについては、後述する。
【0060】
第1判別条件に基づいて判別番号「1」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下したことによって、運転状態のレベルが「良い」から「やや悪い」に低下しているので、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルの低下に影響していると考えられる。従って、第1判別条件に基づいて判別番号「1」と判別された場合には、図11の報知情報リスト8に示すように、「居眠り警告A」又は「居眠り警告A’」が報知情報として設定される。ここで、「居眠り警告A」は、上述したように、例えば、「眠りの状態が少々悪いため、いつも以上に運転に気を配ってください。」というメッセージである。そして、「居眠り警告A’」は、例えば、「眠りの状態が悪いため、いつも以上に運転に気を配ってください。」というメッセージである。
【0061】
具体的には、図9に示す第2判別条件に基づいて判別番号「1」と判別された場合には、「居眠り警告A」が選択され、判別番号「2」、「3」、「4」と判別された場合には、「居眠り警告A’」が選択される。判別番号「1」と判別される場合には、睡眠状態のレベルが「良い」時も「やや悪い」時も、運転状態のレベルが「良い」である。そして、睡眠状態のレベルが「悪い」となった時に、初めて運転状態のレベルが「やや悪い」に低下している。従って、運転状態に影響を及ぼす睡眠状態のレベルの低下は、「少々」と考えられ、「居眠り警告A」が設定される。
【0062】
一方、第2判別条件に基づいて判別番号「2」と判別される場合には、睡眠状態のレベルが「良い」時には運転状態のレベルが「良い」であり、睡眠状態のレベルが「やや悪い」時には運転状態のレベルが「やや悪い」である。そして、睡眠状態のレベルが「悪い」時には、運転状態のレベルが「やや悪い」である。睡眠状態のレベルが「やや悪い」から「悪い」に低下する際には、運転状態のレベルの低下はないが、睡眠状態のレベルが「良い」から「やや悪い」に低下する際に既に運転状態のレベルが低下している。この点で、第2判別条件に基づいて判別番号「1」と判別された上記例よりも早く運転状態のレベルが低下していると見ることができる。従って、上記例よりも、少し強く睡眠の質の低下に伴う運転の質の低下に対して注意を促すことが好ましい。従って、「居眠り警告A’」が報知情報として設定される。
【0063】
第2判別条件に基づいて判別番号「3」と判別される場合には、睡眠状態のレベルが「良い」時には運転状態のレベルが「良い」であり、睡眠状態のレベルが「やや悪い」時には運転状態のレベルが「悪い」である。睡眠状態のレベルが「悪い」となった時には、運転状態のレベルは「やや悪い」に持ち直しているので、直接的には睡眠状態のレベルの低下によって運転状態のレベルが低下しているとは言えない。しかし、睡眠状態のレベルが「良い」時から「やや悪い」に低下した際に、運転状態のレベルが「良い」から「悪い」へと著しく低下している。報知はより安全な方向を指向することが好ましく、従って、睡眠の質の低下に伴う運転の質の低下に対して強く注意を促すことが好ましい。従って、「居眠り警告A’」が報知情報として設定される。サンプル数が少なく、第2判別条件に基づいて判別番号「4」と判別される場合も同様である。
【0064】
第1判別条件に基づいて判別番号「2」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下した場合でも、運転状態のレベルが「やや悪い」から「やや悪い」の現状維持である。このため、第2判別条件に基づいて睡眠状態のレベルの低下の影響を判別して、図11に示す報知情報リスト9から報知情報が選択されて設定される。
【0065】
第2判別条件に基づいて判別番号「1」と判別される場合には、睡眠状態のレベルが「やや悪い」時に運転状態のレベルが「良い」であり、睡眠状態のレベルが「悪い」時に運転状態のレベルが「やや悪い」である。運転状態のレベルの低下に睡眠状態のレベルの低下が影響を及ぼしているので、「居眠り警告A」が設定される。
【0066】
第2判別条件に基づいて判別番号「2」と判別される場合には、睡眠状態のレベルが「良い」時、及び「やや悪い」時に運転状態のレベルが「やや悪い」であり、睡眠状態のレベルが「悪い」時にも運転状態のレベルが「やや悪い」である。運転状態のレベルの低下に睡眠状態のレベルの低下が影響を及ぼしていないので、「運転警告B」が設定される。
【0067】
第2判別条件に基づいて判別番号「3」と判別される場合には、睡眠状態のレベルが「やや悪い」時に運転状態のレベルが「悪い」であり、睡眠状態のレベルが「悪い」時には運転状態のレベルは「やや悪い」に持ち直している。運転状態のレベルの低下に睡眠状態のレベルの低下が影響を及ぼしていないので「運転警告B」が設定される。サンプル数が少なく、第2判別条件に基づいて判別番号「4」と判別される場合も同様である。
【0068】
第1判別条件に基づいて判別番号「3」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下した場合に、運転状態のレベルが「悪い」から「やや悪い」に持ち直している。このため、睡眠状態のレベルの低下は運転状態のレベルに直接の影響を与えていないと判定される。従って、図11の報知情報リスト10に示すように、第2判別条件において何れの判別番号に判別されても、「運転警告B」が設定される。
【0069】
第1判別条件に基づいて判別番号「4」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下した場合の影響を考慮することができない。このため、第2判別条件に基づいて睡眠状態のレベルの低下の影響を判別して、図11に示す報知情報リスト11から報知情報が選択されて設定される。専ら、第2判別条件に基づいて報知情報を設定するので、報知情報リスト11は上述した報知情報リスト9と同様である。従って、ここでは詳細な説明を省略する。
【0070】
次に、睡眠状態が「悪い」のレベルにおいて運転レベルマップ6から取得される運転状態のレベルが「悪い」であった場合について説明する。図12は、睡眠状態のレベルが「悪い」であり、運転状態のレベルが「悪い」場合に適用される報知情報を示す対応図である。図中の網掛けについては、後述する。
【0071】
第1判別条件に基づいて判別番号「1」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下したことによって、運転状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下しているので、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルの低下に大きく影響していると考えられる。従って、第1判別条件に基づいて判別番号「1」と判別された場合には、図12の報知情報リスト12に示すように、「居眠り警告D」又は「居眠り警告D’」又は「居眠り警告E」が報知情報として設定される。
【0072】
ここで、「居眠り警告D」は、例えば、「眠りの状態が悪いため、かなりの運転能力低下が見られます。今日は長時間運転を控えるようにしてください。」というメッセージである。また、「居眠り警告D’」は、例えば、「眠りの状態が悪いため、運転能力低下の傾向が見られます。今日は長時間運転を控えるようにしてください。」というメッセージである。また、「居眠り警告E」は、例えば、「眠りの状態が悪く、運転能力が低下しています。今日は特に運転に注意し、長時間運転を控えるようにしてください。」というメッセージである。
【0073】
第2判別条件に基づくそれぞれの報知情報の適用については、上述した例と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0074】
第1判別条件に基づいて判別番号「2」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下したことによって、運転状態のレベルが「やや悪い」から「悪い」に低下しているので、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルの低下に影響していると考えられる。従って、第1判別条件に基づいて判別番号「2」と判別された場合には、図12の報知情報リスト13に示すように、「居眠り警告D」又は「居眠り警告D’」が報知情報として設定される。第2判別条件に基づくそれぞれの報知情報の適用については、上述した例と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0075】
第1判別条件に基づいて判別番号「3」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下した場合でも、運転状態のレベルが「悪い」から「悪い」の現状維持である。このため、専ら、第2判別条件に基づいて睡眠状態のレベルの低下の影響を判別して、図12に示す報知情報リスト14から報知情報が選択されて設定される。
【0076】
第2判別条件に基づいて判別番号「1」又は「2」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「やや悪い」から「悪い」に低下したことによって、運転状態のレベルが「良い」又は「やや悪い」から「悪い」に低下しているので、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルの低下に影響していると考えられる。従って、第2判別条件に基づいて判別番号「1」又は「2」と判別された場合には、図12の報知情報リスト14に示すように、「居眠り警告D」又は「居眠り警告D’」が報知情報として設定される。
【0077】
一方、第1判別条件に基づいて判別番号「3」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「やや悪い」から「悪い」に低下した場合でも、運転状態のレベルが「悪い」から「悪い」の現状維持である。従って、図12の報知情報リスト14に示すように、「運転警告C」が報知情報として設定される。サンプル数が少なく、第2判別条件に基づいて判別番号「4」と判別される場合も同様である。
【0078】
第1判別条件に基づいて判別番号「4」と判別された場合には、睡眠状態のレベルが「良い」から「悪い」に低下した場合の影響を考慮することができない。このため、専ら、第2判別条件に基づいて睡眠状態のレベルの低下の影響を判別して、図12に示す報知情報リスト15から報知情報が選択されて設定される。専ら、第2判別条件に基づいて報知情報を設定するので、報知情報リスト15は上述した報知情報リスト14と同様である。従って、ここでは詳細な説明を省略する。
【0079】
このように、現在の睡眠状態のレベルにおける運転状態と、この睡眠状態以上のレベルの時の運転状態のレベルにおける運転状態とに基づいて報知情報が設定される。従って、運転の当日だけの睡眠状態及び運転状態から報知を行うような従来のシステムと比べて、より乗員のくせや傾向に有った報知情報を設定することが可能となる。尚、現在の睡眠状態のレベルよりも高いレベルの睡眠状態が複数段階存在する場合には、上述したように、より高いレベルの睡眠状態のレベルにおける運転状態のレベルとの比較から順に実施される。
【0080】
尚、図3に示した各枠内において、サンプル数が所定数(所定の下限個別サンプル数)未満であった場合、例えば、10未満であったような場合には、運転レベルマップ6の精度が低い可能性がある。そのように低い精度の運転レベルマップ6に基づいて、報知情報を設定すると、的確な報知情報を設定できない可能性がある。そこで、このように、運転レベルマップ6の各枠内におけるサンプル数が所定数未満であった場合には、図8、図10〜図12に示した報知情報リストではなく、図13〜図16に示す報知情報リストを用いると好適である。具体的には、図8、図10〜図12において、網掛けで示した報知情報が図13〜図16において変更されており、その他の報知情報は同一である。図13〜図16における網掛け部分の報知情報は、睡眠状態のレベルの違いによる運転状態のレベルの差に関係なく、居眠り運転に関する注意を含めて設定される。
【0081】
所定の下限個別サンプル数を満たしているか否かの判定は、運転レベルマップ6において比較対象となる全ての枠に対して実施される。1つは、情報伝達手段9を介して取得された最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルが示された枠である。2つ目は、当該睡眠状態のレベル以上の睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルが示された枠である。この枠は、複数存在する場合がある。例えば、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルが「悪い」の場合には、当該睡眠状態のレベル以上の睡眠状態のレベルには「やや悪い」と「良い」との2つがある。従って、睡眠状態のレベルが「やや悪い」と「良い」とに対応する枠が比較対象となる。これら比較対象となる枠におけるサンプル数が所定数(下限個別サンプル数)未満であった場合、例えば、10未満であったような場合には、運転レベルマップ6の精度が低い可能性がある。
【0082】
サンプル数が少ないと、睡眠状態のレベルの低下が運転状態のレベルに与える影響について明確に規定することが困難である。そこで、睡眠状態のレベルの低下が、運転状態のレベルに与えると想定される一般的な影響に基づいて、報知情報として「居眠り警告」が設定される。具体的には、「居眠り警告Aa」、「居眠り警告Ba」、「居眠り警告Ca」、「居眠り警告Da」が設定される。
【0083】
「居眠り警告Aa」は、例えば、「眠りの状態があまり良くないため、運転に注意しましょう。」というメッセージである。「居眠り警告A」は、例えば、「眠りの状態が少々悪いため、いつも以上に運転に気を配ってください。」というメッセージであったので、「睡眠状態」を強調し、より運転に注意を促す表現となっている。
【0084】
「居眠り警告Ba」は、例えば、「眠りの状態が悪いため、運転能力が下がります。注意して運転してください。」というメッセージである。「居眠り警告B」は、例えば、「眠りの状態が少々悪いため、運転能力が下がります。注意して運転してください。」というメッセージであったので、「睡眠状態」を強調し、より運転に注意を促す表現となっている。
【0085】
「居眠り警告Ca」は、例えば、「眠りの状態が悪いため、運転能力の低下が予測されます。今日は特に運転に注意してください。」というメッセージである。「居眠り警告C」は、例えば、「眠りの状態が少々悪いため、かなりの運転能力低下の傾向が見られます。今日は特に注意して運転してください。」というメッセージであったので、「睡眠状態」を強調し、より運転に注意を促す表現となっている。
【0086】
「居眠り警告Da」は、例えば、「眠りの状態が悪く、運転能力の低下が予測されます。今日は特に運転に注意し、なるべく長時間運転は控えてください。」というメッセージである。「居眠り警告D」は、例えば、「眠りの状態が悪いため、かなりの運転能力低下が見られます。今日は長時間運転を控えるようにしてください。」というメッセージであったので、「睡眠状態」を強調し、より運転に注意を促す表現となっている。
【0087】
また、運転レベルマップ6は、上述したように一例として過去3ケ月の睡眠状態情報と運転状態情報とに基づいて設定されるが、車両を長期間使用しない場合など、そのサンプル数が非常に少なくなる場合がある。そのような場合には、睡眠状態と運転状態との関連性が不充分であるため、睡眠状態のみに基づいて報知情報が設定されると好適である。つまり、総サンプル数が所定の下限総サンプル数未満であった場合には、睡眠状態のみに基づいて報知情報が設定されると好適である。総サンプル数とは、例えば3ケ月間の所定収集期間に亘って収集され、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す睡眠状態情報及び運転状態情報の対の総数である。具体例としては、図3の運転レベルマップ6の9つの枠内のサンプル数の総数である69である。この総サンプル数が、所定の下限総サンプル数未満、例えば10未満であるような場合、運転レベルマップ6に関係なく、最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに応じて報知情報が設定される。
【0088】
睡眠状態のレベルが「良い」場合、例えば、「良い眠りが得られています。今日も安全運転に努めて下さい。」とのメッセージが報知情報として設定される。また、睡眠状態のレベルが「やや悪い」場合、例えば、「眠りの状態が少々悪いため、いつも以上に運転に気をつけてください。」とのメッセージが報知情報として設定される。また睡眠状態のレベルが「悪い」場合、例えば、「眠りの状態が悪いため、今日は特に運転に注意してください。」とのメッセージが報知情報として設定される。
【0089】
また、報知情報設定部7は、例えば3ケ月間の所定収集期間に亘って収集された情報に基づいて設定された運転レベルマップ6における睡眠状態のレベルに対する運転状態のレベルの対応関係の変化を、特性変化として、定期的にチェックすると好適である。つまり、運転状態のレベルが低下する方向に推移しているか否かを所定収集期間よりも短い所定のチェック期間、例えば1ケ月ごとに判定すると好適である。そして、睡眠状態のレベルに対して、運転状態のレベルが低下方向に移行している場合には、上述した報知情報にさらに、以下に例示するような報知情報を追加すると好適である。
【0090】
〔睡眠状態のレベルが「良い」の場合〕
〔運転状態のレベルが「1段階」低下〕
「前回に比べて運転能力の低下が見られます。」
〔運転状態のレベルが「2段階」低下〕
「前回に比べて運転能力の大きな低下が見られます。」
〔運転状態のレベルが「1段階」上昇〕
「前回に比べて運転能力の向上が見られます。」
〔運転状態のレベルが「2段階」上昇〕
「前回に比べて運転能力の大きな向上が見られます。」
〔睡眠状態のレベルが「やや悪い」の場合〕
〔運転状態のレベルが「1段階」低下〕
「前回に比べて眠りが少々悪くなると運転能力の低下が見られます。」
〔運転状態のレベルが「2段階」低下〕
「前回に比べて眠りが少々悪くなると運転能力の大きな低下が見られます。」
〔運転状態のレベルが「1段階」上昇〕
「前回に比べて眠りが少々悪くなっても運転能力の向上が見られます。」
〔運転状態のレベルが「2段階」上昇〕
「前回に比べて眠りが少々悪くなっても運転能力の大きな向上が見られます。」
〔睡眠状態のレベルが「悪い」の場合〕
〔運転状態のレベルが「1段階」低下〕
「前回に比べて眠りが悪くなると運転能力の低下が見られます。」
〔運転状態のレベルが「2段階」低下〕
「前回に比べて眠りが悪くなると運転能力の大きな低下が見られます。」
〔運転状態のレベルが「1段階」上昇〕
「前回に比べて眠りが悪くなっても運転能力の向上が見られます。」
〔運転状態のレベルが「2段階」上昇〕
「前回に比べて眠りが悪くなっても運転能力の大きな向上が見られます。」
【0091】
上述したような、報知情報を受け取った車両のECU(electronic control unit)は、報知情報に基づくメッセージを音声合成装置を介して音声で報知したり、車内のディスプレイに文字情報として表示したりすることができる。また、報知情報に基づいて、休憩を促すような別のメッセージを音声や文字によって報知することもできる。また、このような乗員に対する報知に限らず、車両30に対して報知を行ってもよい。つまり、報知情報は、車両30の種々の制御に利用されることが可能である。例えば、エアコンディショナーの調整により室内の温度を下げる、換気により酸素濃度を上げる等である。なお、換気には、室内循環モードを外気導入モードに変更する制御を含む。また、最大速度を制限したり、加速を制限したりしてもよい。さらに、他の運転支援装置、例えば自動ブレーキ装置などの感度を高くしたり、居眠り検出装置の感度を高くしたりしてもよい。
【0092】
上述した運転警告A〜Cや、居眠り警告A〜Eは、Aが最も注意を要する程度が低く、B,Cと進むに従って注意を要する程度が高くなる。居眠り警告の場合には、居眠り警告AからEに向かって運転時に注意を要することから、居眠り警告の種類に応じて早めに報知を行うようにしてもよい。例えば、運転開始から1時間後に報知情報に基づいて報知(運転警告又は居眠り警告)が実施される場合、以下のようにすると好適である。居眠り警告A(A’、Aa)の場合には、運転開始後50分で居眠り警告を実施する。居眠り警告B(B’、Ba)の場合には、運転開始後40分で居眠り警告を実施する。居眠り警告C(C’、Ca)の場合には、運転開始後30分で居眠り警告を実施する。居眠り警告D(D’、Da)の場合には、運転開始後20分で居眠り警告を実施する。居眠り警告Eの場合には、運転開始後10分で居眠り警告を実施する。
【0093】
さらに、報知情報設定部7は、最新の睡眠状態情報を受け取った日から過去に連続する所定日数において受け取った睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルが、所定の下限睡眠状態を下回って推移している場合、運転レベルマップに拘わらず、運転を控えることを促す情報を報知情報に含めて設定する。具体的には、報知情報設定部7は、過去数日間、例えば3日間の睡眠状態が最低のレベル(下限睡眠状態)である「悪い」で推移している場合には、運転レベルマップ6に優先して、下記に示すように別の報知情報を設定すると好適である。例えば、以下のようなメッセージを報知情報(居眠り警告F)として設定すると好適である。尚、下限睡眠状態は、睡眠状態のレベル「悪い」をそのまま適用してもよいし、「悪い」に分類される定量的な値に応じて設定されてもよい。上述したように、「悪い」に分類される場合の定量的な値が、50点未満であるような場合には、下限睡眠状態は30点未満に設定されてもよい。
【0094】
〔睡眠状態のレベル:「悪い」、運転状態のレベル:「良い」の場合〕
居眠り警告F1:「眠りの状態が悪い期間が3日連続となりました。運転レベルは高い状態ですが、運転に差し支える可能性があります。長時間の運転は控えてください。」
〔睡眠状態のレベル:「悪い」、運転状態のレベル:「やや悪い」の場合〕
居眠り警告F2:「眠りの状態が悪い期間が3日連続となりました。運転には注意を要します。特に長時間の運転は控えてください。」
〔睡眠状態のレベル:「悪い」、運転状態のレベル:「悪い」の場合〕
居眠り警告F3:「眠りの状態が悪い期間が3日連続となりました。運転には非常に注意を要します。運転は控えてください。」
【0095】
上述したように、運転警告や、居眠り警告のアルファベットの添え字の一文字目は、Aが最も注意を要する程度が低く、B,Cと進むに従って注意を要する程度が高くなる。つまり、運転警告及び居眠り警告に備えられたアルファベットの添え字の一文字目は、報知情報における報知レベルに相当する。上記において詳細に説明したように、報知情報設定部7は、運転レベルマップ6と、情報伝達手段9を介して取得された最新の睡眠状態情報とに基づいて、複数の異なる報知レベルを有する報知情報を設定する。
【0096】
報知情報設定部7は、自らが設定する報知情報の報知レベルに基づいて、さらに別の注意事項を報知情報に付加することができる。人間には、一般的に共通して眠気をもよおす時間帯があることが検証されている。午前3時から午前5時の間、午後2時から午後4時の間がその時間帯(警告時間帯)に相当する。そこで、報知情報設定部7は、不図示の計時手段(電波時計や一般的なクオーツ時計、GPS(global positioning system)等)から、時刻情報を取得して、各報知情報にさらに、以下の報知情報を付加すると好適である。これらの報知情報は、当該時間帯に運転を開始する場合や、運転中に当該時間帯に入った場合に設定されると好適である。
【0097】
〔運転警告が設定される場合〕
「眠気の強い時間帯です。眠りの状態は問題ありませんが、これからの運転には特に注意してください。」
〔居眠り警告A、B、Cが設定される場合〕
「眠気の強い時間帯です。眠りの状態が少々悪いので、1時間以上の連続運転は避けてください。」
〔居眠り警告D、E、Fが設定される場合〕
「眠気の強い時間帯です。眠りの状態が悪いので、長時間の運転は控えてください。現在、30分以上連続して運転中であれば休憩してください。」
【0098】
このように、報知情報設定部7は、生理学的に眠気を生じやすい所定の警告時間帯に車両30の運転を開始した場合及び運転を継続している場合に、報知レベルに応じて設定される眠気に関する注意情報を付加して報知情報を設定することができる。
【0099】
以上、説明したように、本発明によって、車両側に乗員の生体情報を検出ための特別なセンサを設けることなく、乗員による日常の車両の運転状態と、当該乗員の日常の睡眠状態とをモニタして、乗員及び前記車両の一方又は双方に働きかけ、事故等を未然に防止し、安全運転を支援する安全運転支援システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る安全運転支援システムの構成例を模式的に示すブロック図
【図2】運転レベルマップの一例を模式的に示す説明図
【図3】図2に示す運転レベルマップにマッピングされた一例を示す説明図
【図4】最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態と、当該睡眠状態に対応する運転レベルマップの運転状態と、その際に設定される報知情報との関係を示す対応図(睡眠状態が「良い」場合の対応図)
【図5】最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態と、当該睡眠状態に対応する運転レベルマップの運転状態と、その際に設定される報知情報との関係を示す対応図(睡眠状態が「やや悪い」場合の対応図)
【図6】最新の睡眠状態情報に示された睡眠状態と、当該睡眠状態に対応する運転レベルマップの運転状態と、その際に設定される報知情報との関係を示す対応図(睡眠状態が「悪い」場合の対応図)
【図7】報知情報を判別するための第1判別条件を示す対応図
【図8】睡眠状態のレベルが「やや悪い」場合に適用される報知情報を示す対応図
【図9】報知情報を判別するための第2判別条件を示す対応図
【図10】睡眠状態のレベルが「悪い」であり、運転状態のレベルが「良い」場合に適用される報知情報を示す対応図
【図11】睡眠状態のレベルが「悪い」であり、運転状態のレベルが「やや悪い」場合に適用される報知情報を示す対応図
【図12】睡眠状態のレベルが「悪い」であり、運転状態のレベルが「悪い」場合に適用される報知情報を示す対応図
【図13】サンプル数が個別下限サンプル数未満の場合の図8に対応する報知情報を示す対応図
【図14】サンプル数が個別下限サンプル数未満の場合の図10に対応する報知情報を示す対応図
【図15】サンプル数が個別下限サンプル数未満の場合の図11に対応する報知情報を示す対応図
【図16】サンプル数が個別下限サンプル数未満の場合の図12に対応する報知情報を示す対応図
【符号の説明】
【0101】
2:睡眠状態演算部
5:運転レベル設定部
6:運転レベルマップ
7:報知情報設定部
10:安全運転支援システム
30:車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員による日常の車両の運転状態と、当該乗員の日常の睡眠状態とをモニタして、前記乗員及び前記車両の一方又は双方に対して報知して安全運転を支援する安全運転支援システムであって、
就寝中に検出された生体情報に基づいて、睡眠の質を含む睡眠状態を示す睡眠状態情報を演算する睡眠状態演算部と、
走行中に検出された当該車両の挙動に基づいて、運転の質を含む運転状態を示す運転状態情報を演算する運転状態演算部と、
前記睡眠状態情報と前記運転状態情報とを取得して、当該両情報の履歴に基づいて、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す運転レベルマップを設定する運転レベル設定部と、
前記運転レベルマップと、情報伝達手段を介して取得された最新の前記睡眠状態情報とに基づいて、複数の異なる報知レベルを有する報知情報を設定する報知情報設定部と、を備える安全運転支援システム。
【請求項2】
前記運転レベル設定部は、過去の所定収集期間に取得した前記睡眠状態情報及び前記運転状態情報に基づいて前記運転レベルマップを設定する請求項1に記載の安全運転支援システム。
【請求項3】
前記報知情報設定部は、前記所定収集期間に亘って収集され、睡眠状態のレベルと運転状態のレベルとの相関を示す前記睡眠状態情報及び前記運転状態情報の対の総サンプル数が、所定の下限総サンプル数未満の場合、前記運転レベルマップに関係なく、最新の前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに応じて前記報知情報を設定する請求項2に記載の安全運転支援システム。
【請求項4】
前記報知情報設定部は、前記所定収集期間に亘って収集された情報に基づいて設定された前記運転レベルマップにおける睡眠状態のレベルに対する運転状態のレベルの対応関係が、運転状態のレベルが低下する方向に推移しているか否かを前記所定収集期間よりも短い所定のチェック期間ごとに判定し、運転状態のレベルが低下していると判定された場合には、運転状態のレベルが低下傾向にあることを前記報知情報に含めて設定する請求項2又は3の何れか一項に記載の安全運転支援システム。
【請求項5】
前記報知情報設定部は、前記情報伝達手段を介して取得された最新の前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルと、当該睡眠状態のレベル以上のレベルに対応する運転状態のレベルとを前記運転レベルマップから取得し、睡眠状態のレベルの違いによる運転状態のレベルの差に基づいて前記報知情報を設定する請求項1〜4の何れか一項に記載の安全運転支援システム。
【請求項6】
前記報知情報設定部は、睡眠状態のレベルの低下に応じて運転状態のレベルが低下している場合には、前記報知情報に居眠り運転に関する注意を含め、睡眠状態のレベルの低下に拘わらず運転状態のレベルに差がない場合には、前記報知情報に居眠り運転に関する注意を含めずに、前記報知情報を設定する請求項5に記載の安全運転支援システム。
【請求項7】
前記報知情報設定部は、前記情報伝達手段を介して取得された最新の前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルと、当該睡眠状態のレベル以上の睡眠状態のレベルに対応する運転状態のレベルとの少なくとも何れか1つに対応する前記運転レベルマップにおけるサンプル数が、所定の下限個別サンプル数未満の場合、睡眠状態のレベルの違いによる運転状態のレベルの差に関係なく、前記報知情報に居眠り運転に関する注意を含めて前記報知情報を設定する請求項6に記載の安全運転支援システム。
【請求項8】
前記報知情報設定部は、最新の前記睡眠状態情報を受け取った日から過去に連続する所定日数において受け取った前記睡眠状態情報に示された睡眠状態のレベルが、所定の下限睡眠状態を下回って推移している場合、前記運転レベルマップに拘わらず、運転を控えることを促す情報を前記報知情報に含めて設定する請求項1〜7の何れか一項に記載の安全運転支援システム。
【請求項9】
前記報知情報設定部は、生理学的に眠気を生じやすい所定の警告時間帯に前記車両の運転を開始した場合及び運転を継続している場合に、前記報知レベルに応じて設定される眠気に関する注意情報を付加して前記報知情報を設定する請求項1〜8の何れか一項に記載の安全運転支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−122732(P2010−122732A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293405(P2008−293405)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】