説明

定盤修正用ポリイソシアヌレート系ポリウレタン形成性組成物

【課題】耐久性のある定盤修正用砥石を提供する。
【解決手段】定盤修正用砥石材に使用するJISK6253に規定されるD硬度が60〜90度のポリウレタン樹脂を得るためのイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物であって、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系有機イソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)からなり、ポリオール(B)が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(B1)とポリブタジエンポリオール(B2)とを97.0/3.0〜99.8/0.2の重量比で配合するものであり、MDI系有機イソシアネート(A)とポリオール(B)との配合比おいてイソシアネート基を2.3〜3.6mmol/g過剰で配合する、定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
定盤修正用砥石材に使用するJIS K 6253に規定されるD硬度が60〜90度のポリウレタン樹脂を得るためのイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物であって、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系有機イソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)からなり、ポリオール(B)が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(B1)とポリブタジエンポリオール(B2)とを97.0/3.0〜99.8/0.2の重量比で配合するものであり、MDI系有機イソシアネート(A)とポリオール(B)との配合比おいてイソシアネート基を2.3〜3.6mmol/g 過剰で配合することを特徴とする、定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物に関する。
本発明からなるイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物は、耐久性に優れ、鋳鉄製研磨定盤を平滑にすることを特徴とするものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコンウエハ、合成石英ガラス、水晶、液晶ガラス、セラミック等を研磨・平滑化させる際に定盤コンディショナーと呼ばれる研磨装置が用いられ、この装置の研磨定盤は粒状黒鉛を含有した鋳鉄製である。
この研磨装置によりラッピング加工を繰り返すと、研磨定盤は摩耗して凸型或いは凹凸形状になり、それに伴い被加工物の平滑度も悪化し、平滑度の良い被加工物を得ることができない。
そこで、定盤と同質材料である鋳鉄製の修正キャリアを用いて、研磨スラリー及び遊離砥粒を供給しながら定盤表面の修正、平滑化を行う。
従来、このようなラッピング加工を施す研磨装置の定盤表面を修正するための修正用キャリア(冶具、砥石など)として、特開平11−10522号公報(特許文献1)、特開2000−218521号公報(特許文献2)、特許文献3:特開2006−297488号公報(特許文献3)、特開2007−69323号公報(特許文献4)、特開2007−196345号公報(特許文献5)に記載されたものが知られている。
【0003】
しかし、これら定盤修正用キャリア、冶具は、定盤を修正、平滑化するために長時間にわたる修正研磨が必要で、その際、鋳鉄製定盤表面に存在する孔(粒状黒鉛の燃焼により形成される)にバリが発生し、鋳鉄製定盤表面が荒れた状態となってしまう。また、近年では、研磨装置の大型化に伴い定盤修正キャリアもそれに比例して大きくする必要があり、鋳鉄製修正キャリアの重量も著しく増加するため作業性の悪化が懸念されている。このため、研磨装置が大型化しても軽量で作業性に優れ、短時間で修正研磨でき、なおかつ、バリの発生により鋳鉄製定盤表面を荒らすことのない定盤修正用砥石が求められている。
【0004】
一方、特許3097890号公報(特許文献6)および特開2005−177945号公報(特許文献7)に開示されている従来のポリウレタン樹脂を定盤修正用の砥石として使用することも考えられるが、それぞれ本発明請求項に記載のJIS K 6253に規定されるD硬度の領域以下の硬度を示すものであり、本発明の目的として使用される鋳鉄製定盤コンディショナーの荷重に耐えられず、研磨性能を発揮することができないといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−10522号公報
【特許文献2】特開2000−218521号公報
【特許文献3】特開2006−297488号公報
【特許文献4】特開2007−69323号公報
【特許文献5】特開2007−196345号公報
【特許文献6】特許3097890号公報
【特許文献7】特開2005−177945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされるものである。
本発明の第1の目的は、従来から定盤修正用に用いられる金属等の定盤修正キャリア、冶具等より優れた耐久性(消耗量)を示し、研磨装置が大型化しても修正用砥石は軽量であるため作業性に優れるイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物からなる定盤修正用砥石を提供することにある。
第2の目的は、研磨装置における鋳鉄製定盤を従来から用いられる金属等の定盤修正キャリア、冶具等より平滑にすることができるイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物からなる定盤修正用砥石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、以下の(1)〜(3)に該当するものである。
(1)定盤修正用砥石材に使用するJIS K 6253に規定されるD硬度が60〜90度のポリウレタン樹脂を得るためのイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物であって、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系有機イソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)からなり、ポリオール(B)が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(B1)とポリブタジエンポリオール(B2)とを97.0/3.0〜99.8/0.2の重量比で配合するものであり、MDI系有機イソシアネート(A)とポリオール(B)との配合比おいてイソシアネート基を2.3〜3.6mmol/g 過剰で配合することを特徴とする、定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物。
【0008】
(2)研磨助剤として、無機系研磨砥粒を前記(1)に記載の定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物100部に対して、0.01〜25部添加することを特徴とする定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物。
【0009】
(3)前記(1)又は(2)に記載の定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を40〜150℃の温度で0.2〜20時間加熱キュアすることで得られる定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、金属等の定盤修正キャリア、冶具等を用いて同一砥粒及びスラリーを供給しながら定盤の表面修正を行った場合より、優れた平滑性を示す定盤表面が得られ、尚且つ、研磨装置が大型化しても軽量で作業性に優れ、耐久性(消耗性)に優れるため、被加工物の不良率低減ならびに歩留まりの向上が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物>
本発明の定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物は、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系有機イソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)からなり、ポリオール(B)としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(B1)とポリブタジエンポリオール(B2)とを97.0/3.0〜99.8/0.2の重量比とし、MDI系有機イソシアネート(A)とポリオール(B)との配合比おいてイソシアネート基を2.3〜3.6mmol/g 過剰で配合することを特徴とし、得られたイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物はJIS K 6253に規定されるD硬度が60〜90度を示す。
【0012】
<MDI系有機イソシアネート(A)>
MDI系有機イソシアネートとしては、従来から使用されているものが使用できる。このようなMDI系有機イソシアネートには、各種異性体、すなわち、4、4′−MDI、2、4′−MDI、2、2′−MDI、これらの任意の混合物が挙げられる。また、液状MDI(カルボジイミド化MDI、ウレトンイミン化MDI等)やポリメリックMDI(ジフェニルメタンジイソシアネートの2核体および3核体以上の混合物)も用いることができる。中でも、比較的貯蔵安定性に優れた液状MDIが特に好ましい。さらに、これらをポリオール等で変性したイソシアネート基末端プレポリマーを使用することも可能である。
【0013】
<ポリオール(B1)>
本発明で用いるポリオール(B1)は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであり、その数平均分子量は200〜4000であるものが好ましく、中でも数平均分子量が650〜2000であるものが特に好ましい。また、少量であれば、その他にポリウレタン分野で使用されているポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を混合して使用することも可能である。
【0014】
<ポリオール(B2)>
本発明で用いるポリオール(B2)は、研磨時に発生するスラリーの泡を破泡することを目的として添加されるものであり、ポリブタジエンポリオールが特に好ましく、その数平均分子量が1000〜3000であるものが好ましい。さらに、ポリブタジエンポリオールの含有量としては、0.2〜3.0重量%が特に好ましい。
ポリブタジエンポリオールのポリオール(B)における重量比が0.2未満では、研磨時にスラリーが泡立ち、その大量の泡の影響で排水等に支障をきたすため作業性が低下する恐れがある。また、ポリブタジエンポリオールのポリオール(B)における重量比が3.0以上では、ポリオール(B1)との相溶性が悪化し分離または白濁するため、成型不良等の不具合を生じる恐れがある。
【0015】
<三量化触媒(C)>
三量化触媒は主にイソシアヌレートまたはイソシアヌレート基を形成することを目的として用い、ポリオール(B)に対して、0.001〜0.1部添加することができる。
三量化触媒の添加量が0.001部未満の場合、イソシアヌレートまたはイソシアヌレート基の形成が不十分となり、得られたイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物はJIS K 6253に規定されるD硬度が60〜90度のものが得られない。
三量化触媒の添加量が0.1部以上の場合は、反応速度が速過ぎるあるいは、可使時間が短過ぎるため混合不十分になりやすい、または、成形型に注入することができない。
三量化触媒として、カルボン酸のアルカリ金属塩類、カルボン酸のアルカリ土類金属類、金属アルコラート類、金属フェノラート類、金属水酸化物類等の有機金属系触媒、第3級アミン類、第3級フォスフィン類、燐のオニウム塩化合物、第4級アンモニウム塩類等を単独あるいは、2種以上を混合して用いることができる。
【0016】
<研磨助剤>
研磨助剤として、無機系研磨砥粒を定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物に添加することができる。添加量としては、イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物100部に対して0.01〜66部が好ましく、1〜25部がより好ましい。研磨助剤の材質としては、炭化珪素、アルミナ、酸価クロム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及びジルコンサンド等を単独あるいは、2種以上を混合して用いることができる。特に本発明において定盤の修正を行う場合は、研磨する際に使用する遊離砥粒と材質、粒度が同一のものを使用することが好ましい。
【0017】
本発明においては、必要に応じ添加剤として、その他の触媒、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、紫外線吸収剤、反応調節剤等を使用することができる。
【0018】
<イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物のNCO基モル量>
本発明のイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物において、MDI系有機イソシアネートのイソシアネート基により三量化しポリイソシアヌレート基を形成させ、JISK 6253に規定されるD硬度65度以上を得る観点から、MDI系有機イソシアネートのイソシアネート基モル量からポリオールの水酸基モル量を差し引いた際の過剰イソシアネート基モル量を2.3〜3.6mmol/g必要とする。
過剰イソシアネート基モル量が2.3mmol/g未満では、得られたイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物のイソシアヌレート基量が少なくなるため柔らかくなり、JIS−D硬度65度以上を得ることができない。
過剰イソシアネート基モル量が3.6mmol/g以上では、得られたイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物のイソシアヌレート基量が過剰となるため脆さが発現し、耐久性(消耗量)の悪化につながる。
【0019】
<定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物の成型>
本発明のイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物からなる定盤修正用砥石の成型手順としては、上記各原料と成形型を用い、例えば以下のように成型させる。
1.イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を硬化させる工程。
MDI系有機イソシアネートと、ポリオールと、ポリブタジエンポリオールと、三量化触媒と、ウレタン化触媒と、研磨砥粒とを所定の配合比率で連続的にミキシングヘッドで混合し、この液状物を成形型に流し込み(注型)、加熱して硬化反応させる。このときのキュア温度は25〜200℃、加熱キュア時間0.2〜20時間程度であり、その中でもキュア温度は40〜150℃、加熱キュア時間1〜16時間が特に好ましい。
キュア温度が25℃未満の場合は、反応性が低下する問題があり、200℃以上の場合は各原料が熱劣化する恐れがある。
加熱キュア時間が0.2時間未満の場合は、得られるイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物の硬化が不十分のため成形型から取り出すことができず、20時間以上の場合は、高温においては熱劣化する恐れがある。
2.硬化反応をせしめた硬化物を金型から取り出す工程。
3.硬化物を任意の砥石形状に加工する工程。
【0020】
本発明の定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物の砥石形状としては、特に制限される形状は無く、任意に加工できる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明における調製例、合成例、実施例について説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」は、それぞれ、「質量部」および「質量%」を意味するものとする。
【0022】
<ポリオールプレミックス調製例1>
下記表1に示す処方にしたがって、「PTMEG2000(数平均分子量2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール、PTG−2000SN、保土谷化学株式会社製)」99.0部と、「Poly bd(数平均分子量1,200のポリブタジエンポリオール、R−15HT、出光興産株式会社製)」1.0部と、「三量化触媒(四級アンモニウム塩、TOYOCAT−TRX、東ソー株式会社製)」0.015部の比率で調製し、45℃の窒素封入下で30分攪拌混合することによりポリオールプレミックス調製例1を得た。
【0023】
<ポリオールプレミックス調製例2〜4、6〜7>
調製例1と同様に下記表1に示す処方にしたがって、「PTMEG1500(数平均分子量1,500のポリテトラメチレンエーテルグリコール、PTG−1500SN、保土谷化学工業株式会社製)」95.0〜99.9部と、「Poly bd」0.1〜5.0部と、「三量化触媒」0.015部の比率で調製し、45℃の窒素封入下で30分攪拌混合することによりポリオールプレミックス調製例2〜4を得た。
【0024】
<ポリオールプレミックス調製例5>
調製例1と同様に下記表1に示す処方にしたがって、「PTMEG650(数平均分子量650のポリテトラメチレンエーテルグリコール、PTG−650SN、保土谷化学株式会社製)」99.0部と、「Poly bd」1.0部と、「三量化触媒」0.015部の比率で調製し、45℃の窒素封入下で30分攪拌混合することによりポリオールプレミックス調製例5を得た。
【0025】
<ポリオールプレミックス調製例8>
調製例1と同様に下記表1に示す処方にしたがって、「PTMEG1500」99.0部と、一般的に整泡剤として用いられる「シリコーン系整泡剤(L−5366、東レ・ダウコーニング株式会社製)」1.0部と、「三量化触媒」0.015部の比率で調製し、45℃の窒素封入下で30分攪拌混合することによりポリオールプレミックス調製例8を得た。
【0026】
<ポリオールプレミックス調製例9>
調製例1と同様に下記表1に示す処方にしたがって、「PTMEG1500」99.0部と、一般的に破泡剤として用いられる「シリコーン系破泡剤(F−122、信越化学工業株式会社製)」1.0部と、「三量化触媒」0.015部の比率で調製し、45℃の窒素封入下で30分攪拌混合することによりポリオールプレミックス調製例9を得た。
【0027】
<ポリオールプレミックス調製例10〜11>
調製例1と同様に下記表1に示す処方にしたがって、「PCD(数平均分子量1,000のポリカーボネートジオール、N−965、日本ポリウレタン工業株式会社製)」99.0〜100部と、「Poly bd」0〜1.0部と、「三量化触媒」0.015部の比率で調製し、45℃の窒素封入下で30分攪拌混合することによりポリオールプレミックス調製例10〜11を得た。
【0028】
<ポリオールプレミックス調製例12〜13>
調製例1と同様に下記表1に示す処方にしたがって、「PPG(数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール、PL−2100、三洋化成工業株式会社製)」99.0〜100部と、「Poly bd」0〜1.0部と、「三量化触媒」0.015部の比率で調製し、45℃の窒素封入下で30分攪拌混合することによりポリオールプレミックス調製例12〜13を得た。
【0029】
【表1】

【0030】
<合成例>
以下、本発明の合成例について説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」は、それぞれ、「質量部」および「質量%」を意味するものとする。
【0031】
<合成例1>
下記表2に示す処方にしたがって、イソシアネート基が2.32mmol/g過剰になるよう「ポリオールプレミックス調製例1」58.0部と、「液状MDI(NCO含量29%のカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、MTL−S、日本ポリウレタン工業株式会社製)」42.0部とを2液混合型ポリウレタン注型機にて撹拌混合させた混合液をあらかじめ40℃に予熱した外径180mm×内径90mm×高さ70mmのドーナツ形状の注形型に注入し、その後、40℃×16時間にわたり加熱キュアを行い、イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を得た。
【0032】
<合成例2>
合成例1と同様に下記表2に示す処方にしたがって、イソシアネート基が3.48mmol/g過剰になるよう「ポリオールプレミックス調製例2」38.0部と、「液状MDI(NCO含量27%のカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製試作品)」62.0部とを2液混合型ポリウレタン注型機にて撹拌混合された混合液を25℃に温調した外径180mm×内径90mm×高さ70mmのドーナツ形状の注形型に注入し、その後、25℃×20時間にわたり加熱キュアを行い、イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を得た。
【0033】
<合成例3>
合成例1と同様に下記表2に示す処方にしたがって、イソシアネート基が2.97mmol/g過剰になるよう「ポリオールプレミックス調製例3」44.6部と、「液状MDI(NCO含量27%のカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製試作品)」55.4部に、「研磨助剤(酸化アルミニウム系研磨剤、FO#1200、株式会社フジミインコーポレーテッド製)」11部をそれぞれあらかじめミキサー等で混合させた混合液を2液混合型ポリウレタン注型機に投入し、撹拌混合された混合液をあらかじめ200℃に予熱した外径180mm×内径90mm×高さ70mmのドーナツ形状の注形型に注入し、その後、200℃×0.2時間にわたり加熱キュアを行い、イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を得た。
【0034】
<合成例4〜18>
合成例1と同様に下記表2に示す処方にしたがって、イソシアネート基が2.11〜3.71mmol/g過剰になるよう「ポリオールプレミックス調製例」33.0〜55.7部と、「液状MDI(NCO含量27%のカルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、日本ポリウレタン工業株式会社製試作品)」44.3〜67.0部に、「研磨助剤」11〜66部をそれぞれあらかじめミキサー等で混合させた混合液を2液混合型ポリウレタン注型機に投入し、撹拌混合された混合液をあらかじめ80〜200℃に予熱した外径180mm×内径90mm×高さ70mmのドーナツ形状の注形型に注入し、その後、80〜200℃×0.2〜16時間にわたり加熱キュアを行い、イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を得た。
【0035】
【表2】

【0036】
<砥石加工>
合成例にて得られたイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を裁断及び研磨することにより、外径145mm×内径105mm×高さ20mmのリング形状のイソシアヌレート含有ポリウレタン砥石を得た。得られたイソシアヌレート含有ポリウレタン砥石を用いて各評価を行った結果を表3および4に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
実施例及び比較例にて評価した項目について、以下に記載する。
<研磨泡>
本発明におけるイソシアヌレート含有ポリウレタン砥石を研磨装置に装着して修正・研磨する際に発生するスラリーによる泡のことを指す。泡が多く発生すると排水の際に泡が引っかかり排水に支障をきたす恐れがある。この泡を破泡、抑制するため破泡剤(整泡剤)として導入したポリオールB2について以下の3項目を評価した。
<破泡効果>
破泡剤(整泡剤)として用いるポリオールB2の導入より、研磨時に発生するスラリー泡を破泡する効果を評価した。
○:泡が発生しないか発生しても3秒以内に破泡する。
×:泡が大量に発生し、10秒以上泡を保持し破泡しない。
<液分離(液性の安定性)>
破泡剤(整泡剤)として用いるポリオールB2を導入した際、ポリオールプレミックスの液分離、液の安定性を評価した。液分離が起こると合成反応の際、混合不良等が起こる可能性が高い。
○:攪拌したポリオールプレミックスを静置した際に分離・白濁が見られない(正常)。
×:攪拌したポリオールプレミックスを静置した際に分離・白濁が発生する(異常)。
【0040】
<成形性>
注型により得られたイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物が正常に硬化されているかを評価した。
○:外観不良が見られず、正常に硬化した。
×:外観不良(スジ、軟化部分)が見られる、硬化しない、硬度バラツキが大きい。
【0041】
<研磨性能>
本発明におけるイソシアヌレート含有ポリウレタン砥石の研磨性能を評価した。評価項目は以下の3項目である。
(1)D硬度:砥石加工して得られたイソシアヌレート含有ポリウレタン砥石についてJIS K 6253に規定されるD硬度を測定した。60〜90度を示すことが好ましい。60度以下では研磨装置に装着した際に定盤荷重に耐えられず研磨性能を発揮できない。また、耐久性が大きく低下する。90度以上では鋳鉄製定盤より硬度が高くなりすぎるため砥石としての研磨能力が低くなる。
(2)耐久性(消耗量):イソシアヌレート含有ポリウレタン砥石にて1時間定盤を修正した後の砥石の高さを測定し消耗量として評価した。消耗量は0.4mm/h以下が好ましく、0.5mm/h以上では砥石の消耗が早く交換頻度が増え、ランニングコストの上昇に繋がる。
(3)研磨後の定盤の平滑性:イソシアヌレート含有ポリウレタン砥石にて1時間定盤を修正した後の定盤直径方向を等間隔に定盤の高さを9点測定し、その最大値と最小値の差を算出した。この差が小さければ小さいほど定盤は平滑に修正されたことを意味し、大きければ大きいほど定盤は平滑に修正されていなく、砥石の修正能力が低いことを意味する。この定盤高さの差が10μm以下であることが好ましく、さらに5μm以下であることが特に好ましい。
【0042】
<定盤修正研磨条件>
定盤材質:粒状黒鉛含有鋳鉄FCD450
定盤サイズ:16B(1127mmΦ)
キャリアー:イソシアヌレート含有ウレタン砥石を装着する冶具、ガイド。1キャリアーにつき砥石を5個装着できる。材質:ガラス繊維含有エポキシ樹脂
キャリアーサイズ:1キャリアー423mmΦを定盤に5キャリアー装着できる。したがって、研磨修正時に装着する全砥石数は25個である。
研磨時の定盤荷重:100g/cm
下定盤回転数:60rpm
上定盤回転数:20rpm
スラリー(分散液):界面活性剤、防錆剤、水を任意で混合させた水溶液
遊離砥粒種類(スラリーに混合させる砥粒):FO#1200
遊離砥粒濃度:スラリー液に対し20%
遊離砥粒含有スラリーの供給量:200cc/分
研磨時間:1時間
【0043】
<実施例1〜8>
表3に示される実施例について、上記評価項目について評価した結果、実施例1〜8に記載のイソシアヌレート含有ポリウレタン砥石は、研磨泡が発生することなく、研磨性能においては、砥石消耗量が少なく、定盤高さの差が小さいため、修正能力が高い砥石であることが言える。
【0044】
<比較例1>
下表4に示される比較例1は、実施例5の過剰イソシアネート基のモル量を約0.5倍に削減したものである。実施例3と比較して、比較例1はD硬度が低いため定盤荷重に耐えられず満足な評価が行えなかった。
【0045】
<比較例2>
下表4に示される比較例2は、実施例8の過剰イソシアネート基のモル量を約1.5倍に増加させたものである。実施例8と比較して、比較例2は砥石消耗量が増加し、定盤高さの差も大きくなったことから、過剰イソシアネート基のモル量が3.6mmol/gを上回ると研磨性能が劣ることを確認した。
【0046】
<比較例3>
下表4に示される比較例3は、実施例4のポリオールB2(ポリブタジエンポリオール)量を0.1部まで削減したものである。実施例4と比較して、比較例3はポリブタジエンポリオール含有量が少な過ぎるため研磨時に発生するスラリー泡を破泡することができなかった。したがって、研磨時に発生するスラリー泡を破泡するためには、ポリブタジエンポリオール(B2)含有量は0.2重量部以上必要であることを確認した。
【0047】
<比較例4>
下表4に示される比較例4は、実施例6のポリオールB2(ポリブタジエンポリオール)量をさらに5部まで増加したものである。実施例6と比較して、比較例4はポリブタジエンポリオール含有量が多過ぎるためポリオールB1(PTMEG)との相溶性が悪化し、ポリオールプレミックスの液は分離した。さらに、分離により成形性は悪化し、イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を得ることができず、研磨評価も実施できなかった。したがって、ブタジエンポリオール(B2)含有量は3.0重量部以下であることを確認した。
【0048】
<比較例5および比較例6>
下表4に示される比較例5および比較例6は、実施例5のポリオールB2をウレタンフォームにおけるセルへの破泡効果の高い整泡剤(L−5366およびF−122)に置き換えたものである。実施例5と比較して、比較例5および比較例6は研磨時に発生するスラリー泡を破泡することができなかった。したがって、研磨時に発生するスラリー泡を破泡するためには、ポリブタジエンポリオール(B2)が最も好ましいことを確認した。
【0049】
<比較例7および比較例8>
下表4に示される比較例7および比較例8は、ポリオールB1としてPCDを用いたものであり、比較例7はポリオールB2(ポリブタジエンポリオール)を導入せず、比較例8はポリオールB2(ポリブタジエンポリオール)を1.0重量部導入したものである。比較例7ではポリブタジエンポリオール(B2)が0重量部のため、研磨時に発生するスラリー泡が大量に発生する結果となり、研磨性能も実施例に対し大きく劣るものであった。ポリブタジエンポリオール(B2)を1.0重量部導入した比較例8は、研磨時に発生するスラリー泡を破泡することができたが、PTMEG(B1)を用いた実施例5と比較して、研磨性能は大きく劣る結果となった。したがって、ポリオールB1はPTMEG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)を用いることが最も好ましいことを確認した。
【0050】
<比較例9および比較例10>
下表4に示される比較例9および比較例10は、ポリオールB1としてPPGを用いたものであり、比較例9はポリオールB2(ポリブタジエンポリオール)を導入せず、比較例10はポリオールB2(ポリブタジエンポリオール)を1.0重量部導入したものである。比較例9ではポリブタジエンポリオール(B2)が0重量部のため、研磨時に発生するスラリー泡が大量に発生する結果となり、研磨性能も実施例に対し大きく劣るものであった。ポリブタジエンポリオール(B2)を1.0重量部導入した比較例10は、研磨時に発生するスラリー泡を破泡することができたが、PTMEG(B1)を用いた実施例5と比較して、研磨性能は大きく劣る結果となった。したがって、ポリオールB1はPTMEG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)を用いることが最も好ましいことを確認した。
【0051】
<比較例11>
下表に示される比較例11は、一般的に用いられている鋳鉄定盤修正用鋳鉄製修正キャリアの研磨性能を示したものである。実施例と比較して、比較例11は消耗量が少ないが、研磨性能は大きく劣る結果となった。本来、鋳鉄製修正キャリアにて鋳鉄定盤を修正する際は定盤荷重を2.5倍の250g/cmとし約10時間かけて修正を行うため、イソシアヌレート含有ポリウレタン砥石における研磨条件では、鋳鉄製修正キャリアは修正能力を発揮することができない。したがって、本発明のイソシアヌレート含有ポリウレタン砥石は短時間で修正でき、耐久性も高く、研磨性能も優れたものであることを確認した。
【0052】
<比較例12>
下表に示される比較例12は、ポリウレタンと同様の硬度を示すプラスチックとしてエポキシ樹脂を選択し、エポキシ樹脂製砥石による研磨性能を評価したものである。実施例と比較して、比較例12は、研磨時に発生するスラリー泡は全く発生しなかったが、砥石消耗量がかなり多く、研磨性能では大きく劣るものであった。したがって、本発明のイソシアヌレート含有ポリウレタン砥石は高硬度プラスチックの中でも耐久性が高く、さらに研磨性能も優れたものであることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定盤修正用砥石材に使用するJIS K 6253に規定されるD硬度が60〜90度のポリウレタン樹脂を得るためのイソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物であって、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系有機イソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)からなり、ポリオール(B)が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(B1)とポリブタジエンポリオール(B2)とを97.0/3.0〜99.8/0.2の重量比で配合するものであり、MDI系有機イソシアネート(A)とポリオール(B)との配合比おいてイソシアネート基を2.3〜3.6mmol/g 過剰で配合することを特徴とする、定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物。
【請求項2】
研磨助剤として、無機系研磨砥粒を請求項1記載の定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物100部に対して、0.01〜25部添加することを特徴とする定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物を40〜150℃の温度で0.2〜20時間加熱キュアすることで得られる定盤修正用砥石材用イソシアヌレート含有ポリウレタン形成性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−30331(P2012−30331A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173388(P2010−173388)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】