説明

定着用ローラ

【課題】実際に回転駆動させた状態でも、長期間に渡り使用可能な状態を確実に継続させることの出来る定着用ローラ、及びこの定着用ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】定着用ローラ12は、芯金16と、この芯金の外周を取り巻くように配設された少なくとも独立気泡型のシリコーンエラストマー製の多孔質体層22と、この多孔質体層22の外周を被覆する金属製薄肉スリーブ26とを具備することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、芯金の外周を多孔質体層で覆い、更に、この多孔質体層の外周を金属製薄肉スリーブで被覆した構成の定着用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複写機・プリンタ・ファクシミリ等の画像形成装置において、電子写真方式・静電記録方式・磁気記録方式等の適宜の作像プロセス機構により被記録材(転写材・感光紙・静電記録紙・印刷紙等)に転写方式(間接方式)或いは直接方式で目的の画像情報に対応させて形成担持させた未定着トナー像を、被記録材面に加熱・加圧定着させるための定着装置としては、定着ローラ及び加圧ローラを備えた所謂2ローラ方式の装置構成が広く用いられている。
【0003】
ここで、本願特許出願と同一出願人より、特許文献1に示すように、「芯金とこれの外周を取り巻くように配設された少なくとも独立気泡を有する多孔質体層とを備えて構成される多孔質体を、金属製薄肉スリーブの内径寸法以上の外径寸法を有するように加工する第1の工程と、この多孔質体の外周面及び前記金属製薄肉スリーブの内周面の少なくとも一方に接着剤を塗布する第2の工程と、前記多孔質体と金属製薄肉スリーブとを加圧容器内に収納して加圧し、該多孔質体の外径を、該金属製薄肉スリーブの内径よりも径小にさせる第3の工程と、前記加圧容器内において、前記多孔質体を前記金属製薄肉スリーブ内に挿入して、スリーブ体を形成する第4の工程と、前記スリーブ体を、前記加圧容器から取り出し、前記多孔質体が膨張して該多孔質体の外周面を前記金属製薄肉スリーブの内周面に密着させる第5の工程と、前記接着剤を固化して、前記多孔質体と前記金属製薄肉スリーブとを接着する第6の工程とを具備することを特徴とする定着用ローラの製造方法。」が提供され、この製造方法により製造された定着用ローラは、実際に回転駆動させた状態において、長期間に渡り使用可能な状態を継続させることができるとされている。
【特許文献1】特開2004−53924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載された技術では、弾性層としてシリコーンゴムを発泡させてなるスポンジ(以下、単にシリコーンスポンジと言う。)が採用されているため、シリコーンスポンジ特有の問題としてのセルの大きさの不均一さやセル形状の不定形性があり、この特許文献1に記載された製造方法により製造された定着用ローラにおいては、これに、外力が作用して変形した部分において、セル破壊が発生しやすい状況となり、セル破壊が発生すると、定着用ローラの耐久性の悪化を引き起こす事となり、解決が強く要望されていた。
【0005】
この発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、この発明の目的は、弾性層としてシリコーンスポンジを用いることなく、耐久性を向上させ、実際に回転駆動させた状態でも、長期間に渡り使用可能な状態を確実に継続させることの出来る定着用ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した問題点を解決し、目的を達成するため、この発明に係わる定着用ローラは、請求項1の記載によれば、芯金と、この芯金の外周を取り巻くように配設されたエマルジョン組成物から調製された少なくとも独立気泡型のシリコーンエラストマー製の多孔質体層と、この多孔質体層の外周を被覆する金属製薄肉スリーブとを具備することを特徴としている。
【0007】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項2の記載によれば、前記多孔質体層は、50μm以下の径を有するセルが全セル数の50%以上を占め、かつ60%以上の単泡率を有するシリコーンエラストマーから形成されていることを特徴としている。
【0008】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項3の記載によれば、式(A):0<=(m−n)/m<=0.5(ここで、mは、セルの長径を表し、nは、セルの短径を表す)で示される関係を満たすセルが、全セル数の50%以上を占めることを特徴としている。(なお、「<=」は「以上」「以下」を示す記号で、「a<=b」であれば、aはb以下(もしくはbはa以上)を示す。)
【0009】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項4の記載によれば、式(B):0<=(m−n)/n<=0.5で示される関係をも満たすセルが、全セル数の50%以上を占めることを特徴としている。
【0010】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項5の記載によれば、前記シリコーンエラストマーは、30μm以下の平均セル径を有することを特徴としている。
【0011】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項6の記載によれば、前記シリコーンエラストマーは、80%以上の単泡率を有することを特徴としている。
【0012】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項7の記載によれば、前記セルの径が0.1μm〜70μmの範囲内にあることを特徴としている。
【0013】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項8の記載によれば、前記多孔質体が、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水を含有する油中水型エマルジョン組成物から調製されたものであることを特徴としている。
【0014】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項9の記載によれば、前記金属製薄肉スリーブの外周に、離型層を備えることを特徴としている。
【0015】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項10の記載によれば、前記離型層と前記金属製薄肉スリーブとの間には、弾性層が介設されていることを特徴としている。
【0016】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項11の記載によれば、前記金属製薄肉スリーブの外周には、弾性層が配設されていることを特徴としている。
【0017】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項12の記載によれば、前記弾性層の外周には、離型層が配設されていることを特徴としている。
【0018】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項13の記載によれば、前記離型層は、フッ素樹脂から形成されていることを特徴としている。
【0019】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項14の記載によれば、前記フッ素樹脂は、前記弾性層の外周面に、塗布される事により配設されていることを特徴としている。
【0020】
また、この発明に係わる定着用ローラは、請求項15の記載によれば、記フッ素樹脂はチューブ状に構成され、前記弾性層の外周面に、被覆される事により配設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、弾性層としてシリコーンスポンジを用いることなく、耐久性を向上させ、実際に回転駆動させた状態でも、長期間に渡り使用可能な状態を確実に継続させることの出来る定着用ローラが提供されることになる。
【0022】
また、この発明によれば、弾性層としての多孔質体と金属製薄肉スリーブとの間を接着することにより、多孔質体の外周面と金属製薄肉スリーブの内周面との間が周方向に沿って相対移動することを禁止し、多孔質体の外周面がぼろぼろになる状態を確実に回避して、長寿命化を図ることの出来る定着用ローラが提供されることになる。
【0023】
また、この発明によれば、多孔質体と金属製薄肉スリーブとの間を接着することにより、多孔質体の外周面と金属製薄肉スリーブの内周面との間が軸方向に沿って相対移動することを禁止し、金属製薄肉スリーブに多孔質体層のエッジが当たって応力集中が発生する事による割れの発生を効果的に抑制して、長寿命化を図ることの出来る定着用ローラが提供されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、添付図面を参照して、この発明に係わる定着用ローラの一実施例の構成、及び、この発明に係わる定着用ローラの製造方法の一実施例の手順を説明するが、以下の説明においては、この発明に係わる定着用ローラを、2ローラ方式の定着装置の定着ローラに適用した場合につき、詳細に説明するものとする。
【0025】
尚、以降の説明の順序としては、先ず、この発明に係わる定着用ローラの一実施例の構成として特徴的に備えられる発泡体ではない多孔質体、更に詳細には、エマルジョンから調製される多孔質体を詳細に説明し、次に、この発明に係わる定着用ローラが装着される定着装置を説明し、更に、定着用ローラの実施態様としての定着ローラの構成を説明し、最後に、この定着ローラの製造方法を説明するものとする。
【0026】
先ず、この発明で用いられる多孔質体の構造、及び、このエマルジョンから調製された多孔質体の製造方法を、以下に詳細に説明するが、この説明に先立ち、エマルジョンから調整されたスポンジ形成性組成物を既に開示している特許文献2について説明する。
【特許文献2】特開2005−62534号公報 この特許文献2には、シリコーンゴム製のスポンジ形成性組成物が開示されており、その記載によれば、微細で均一なセルを形成することが出来るとしている。しかしながら、この特許文献2に開示された技術により達成されるスポンジ形成性組成物は、そのセル形状に関する記載が一切なく、例えば詳細は後述するが、本件出願により形成される多孔質体のセル形状が球状となることにより達成されるところの、外力に対して所定の強度を発揮し、その結果、セル破壊に強い多孔質体となる旨の効果を達成することができないものである。
【0027】
先ず、上述した多孔質体は、この実施例においては、独立気泡型のシリコーンエラストマー多孔質体であり、更に詳細には、シリコーンエラストマーで作られた母体(マトリックス)とこの母体中に分散・分布した多数の閉じたセル(独立気泡)を含むものと表現することができる。
【0028】
また、このシリコーンエラストマー多孔質体は、50μm以下の径を有するセルが全セル数の50%以上を占め、かつ60%以上の単泡率を有することを特徴とする実質的に独立気泡型のシリコーンエラストマー多孔質体である。
【0029】
以後詳述するが、独立気泡数の割合の指標となる単泡率が、60%未満であると、多孔質体の強度が弱くなる。
【0030】
さらに、このシリコーンエラストマー多孔質体は、セルの径が0.1〜70μmの範囲内にあり得、さらにセルの径は、0.1〜60μmの範囲内にあり得る。また、本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、50μm以下の径を有するセルが全セル数の80%以上を占めることができるものである。
【0031】
このシリコーンエラストマー多孔質体では、下記式(A)
(A):0<=(m−n)/m<=0.5
(ここで、mは、セルの長径を表し、nは、セルの短径を表す)で示される長径と短径との関係を満たすセルが、全セル数の50%以上を占めることができるものである。
【0032】
ここで、式(A)は、セルがどの程度真球に近いか(真球度)を表す尺度である。このシリコーンエラストマー多孔質体においては、下記式(B)によって与えられる条件をも満足するセルが、全セル数の80%以上を占めることができる。
(B):0<=(m−n)/n<=0.5
【0033】
ここで、セルの長径mとは、シリコーンエラストマー多孔質体の断面に現れる各セルについて、そのほぼ中心を通る、セルの輪郭上の最大2点間直線距離を意味し、短径nとは、各セルについて、そのほぼ中心を通る、セルの輪郭上の最小2点間距離を意味する。より具体的には、シリコーン多孔質体の任意の断面をSEMで撮影し、100〜250個程度のセルが存在する領域で各セルの長径mと短径nを計測する。この計測は、ノギスを用いて手作業で行うことができる。なお、平均セル径は、画像処理により行うこともできる。画像処理は、例えば、TOYOBO製解析ソフト「V10 for Windows 95 (登録商標)Version 1.3」を用いて行うことができる。
【0034】
各セルの径は、各セルの長径mと短径nの和を2で除した値に相当する。いうまでもなく、セルが真球の場合には、m=nとなる。
【0035】
更に、このシリコーンエラストマー多孔質体は、30μm以下、さらには10μm以下の平均セル径を有することができる。
【0036】
上記100〜250個程度のセルが存在する領域におけるセルサイズ特性が、多孔質体全体のセルサイズ特性を表すほど、本発明の多孔質体は、セル径が均一である。いいかえると、本発明の多孔質体は、その任意断面において、100〜250個のセルが存在する矩形領域において、上記本発明で規定するセルサイズ特性(セルサイズ、平均セルサイズ、50μm以下のセルサイズを有するセルの占める割合、真球度等)を示す。このような断面積の任意領域におけるセルサイズ特性は、多孔質体の全体のセルサイズ特性、例えば、160mm(幅)×400mm(長さ)×15mm(厚さ)までの大きさの多孔質体の全体のセルサイズ特性を表し得ることが確認されている。従来、100〜250個のセルが存在する矩形領域において、本発明で規定するセルサイズ特性を示す多孔質体は存在しなかった。
【0037】
既述のように、このシリコーンエラストマー多孔質体は、実質的に独立気泡型のものである。多孔質体の全セル数のうち、閉じたセル(独立気泡)がどの程度の割合で存在するかは、「単泡率」で表現することができる。この単泡率は、以下の実施例の項で説明したように測定することができる。本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、60%以上の単泡率を有することができ、さらには80%以上の単泡率を有することができる。
【0038】
このシリコーンエラストマー多孔質体は、基本的に、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、および水を含有する油中水型エマルジョンから製造することができる。その際、液状シリコーンゴム材が低い粘度を有する場合には、液状シリコーンゴム材と水を十分に攪拌し、エマルジョンを生成させ、その後すぐに加熱して硬化させることができる。しかしながら、本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材および水とともに、界面活性作用を有するシリコーンオイル材を含有する油中水型エマルジョンから好適に製造することができる。
【0039】
上述した液状シリコーンゴム材は、加熱により硬化してシリコーンエラストマーを生成するものであれば特に制限はないが、いわゆる付加反応硬化型液状シリコーンゴムを使用することが好ましい。付加反応硬化型液状シリコーンゴムは、主剤となる不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと架橋剤となる活性水素含有ポリシロキサンを含む。不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンにおいて、不飽和脂肪族基は、両末端に導入され、側鎖としても導入され得る。そのような不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンは、例えば、下記式(1)で示すことができる。
【0040】
【化1】

【0041】
式(1)において、R1は、不飽和脂肪族基を表し、各R2は、C1〜C4低級アルキル基、フッ素置換C1〜C4低級アルキル基、またはフェニル基を表す。a+bは、通常、50〜2000である。R1によって表される不飽和脂肪族基は、通常、ビニル基である。各R2は、通常、メチル基である。
【0042】
活性水素含有ポリシロキサン(ハイドロジェンポリシロキサン)は、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンに対し架橋剤として作用するものであり、主鎖のケイ素原子に結合した水素原子(活性水素)を有する。水素原子は、活性水素含有ポリシロキサン1分子当たり3個以上存在することが好ましい。そのような活性水素含有ポリシロキサンは、例えば、下記式(2)で示すことができる。
【0043】
【化2】

【0044】
式(2)において、R3は、水素またはC1〜C4低級アルキル基を表し、R4は、C1〜C4低級アルキル基を表す。c+dは、通常、8〜100である。R3およびR4で表される低級アルキル基は、通常、メチル基である。
【0045】
これら液状シリコーンゴム材は、市販されている。なお、市販品では、付加反応硬化型液状シリコーンゴムを構成する不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとは別々のパッケージで提供され、以後詳述する両者の硬化に必要な硬化触媒は、活性水素含有ポリシロキサンに添加されている。いうまでもなく、液状シリコーンゴム材は、2種類以上を併用して用いることができる。
【0046】
界面活性作用を有するシリコーンオイル材は、エマルジョン中に水を安定に分散させるための分散安定剤として作用するものである。すなわち、この界面活性作用を有するシリコーンオイル材は、水に対し親和性を示すとともに、液状シリコーンゴム材に対しても親和性を示すものである。このシリコーンオイル材は、エーテル基等の親水性基を有することが好ましい。また、このシリコーンオイル材は、通常3〜13、好ましくは4〜11のHLB値を示す。より好ましくは、HLB値が3以上異なる2種類のエーテル変性シリコーンオイルを併用する。その場合、さらに好ましくは、7〜11のHLB値を有する第1のエーテル変性シリコーンオイルと、4〜7のHLB値を有する第2のエーテル変性シリコーンオイルとを組み合わせて使用する。いずれのエーテル変性シリコーンオイルも、ポリシロキサンの側鎖にポリエーテル基を導入したものを用いることができ、例えば、下記式(3)で示すことができる。
【0047】
【化3】

【0048】
式(3)において、R5は、C1〜C4低級アルキル基を表し、R6は、ポリエーテル基を表す。e+fは、通常、8〜100である。R5で表される低級アルキル基は、通常、メチル基である。また、R6により表されるポリエーテル基は、通常、(C24O)x基、(C36O)y基、または(C24O)x(C36O)y基を含む。主に、x、yの数により、HLB値が決定される。これら界面活性作用を有するシリコーンオイル材は市販されている。
【0049】
水は、いうまでもなく、上記油中水型エマルジョン中において、粒子(水滴)の形態で不連続相として分散して存在する。後に詳述するように、この水粒子の粒径が、本発明のシリコーンエラストマー多孔質体のセル(気泡)の径を実質的に決定する。
【0050】
上述の油中水型エマルジョンは、液状シリコーンゴム材を硬化させるために、硬化触媒を含有することができる。硬化触媒としては、それ自体既知のように、白金触媒を用いることができる。白金触媒の量は、白金原子として、1〜100重量ppm程度で十分である。硬化触媒は、シリコーンエラストマー多孔質体を製造する際に上記油中水型エマルジョンに添加してもよいが、上記油中水型エマルジョンを製造する際に配合することもできる。
【0051】
上記した油中水型エマルジョンにおいて、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、界面活性作用を有するシリコーンオイル材を0.2〜5.5重量部の割合で、水を10〜250重量部の割合で使用することが、水分散安定性に特に優れたエマルジョンを得る上で好ましい。そのような水分散安定性に優れたエマルジョンを使用することにより、良好な多孔質体をより一層安定に製造することができる。
【0052】
また、界面活性作用を有するシリコーンオイル材が、前記した第1のエーテル変性シリコーンオイルと前記第2のエーテル変性シリコーンオイルとの組合せからなる場合、液状シリコーンゴム材100重量部に対し、第1のエーテル変性シリコーンオイルを0.15〜3.5重量部の量で、第2のエーテル変性シリコーンオイルを0.05〜2重量部の量(合計0.2〜5.5重量部)で用いることが好ましい。また、液状シリコーンゴム材が不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとの組合せからなる場合、前者と後者の重量比は、6:4〜4:6であることが好ましい。
【0053】
また、このシリコーンエラストマー多孔質体は、その用途に応じて、種々の添加剤を含有することができる。そのような添加剤としては、着色料(顔料、染料)、導電性付与材(カーボンブラック、金属粉末等)、充填材(シリカ等)を例示することができる。これら添加剤は、上記油中水型エマルジョンに配合することができる。さらに、上記油中水型エマルジョンは、例えば、脱泡を容易にすること等を目的としてエマルジョンの粘度を調整するために、分子量の低い、非反応性のシリコーンオイルを含有することができる。上記油中水型エマルジョンは、1cSt〜20万cStの粘度を有すると、脱泡が容易に行え、取り扱いに都合がよい。
【0054】
上記油中水型エマルジョンは、種々の方法により製造することができるものである。一般的には、液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水を、必要に応じてさらなる添加剤とともに、混合し、十分に撹拌することによって製造される。液状シリコーンゴム材が、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと活性水素含有ポリシロキサンとの組合せにより提供される場合には、不飽和脂肪族基を有するポリシロキサンと界面活性作用を有するシリコーンオイル材の一部を混合・撹拌して第1の混合物を得、他方活性水素含有ポリシロキサンと界面活性作用を有するシリコーンオイル材の残りを混合・撹拌して第2の混合物を得ることができる。ついで、第1の混合物と第2の混合物を混合・撹拌しながら、徐々に水を添加して、撹拌することにより所望のエマルジョンを得ることができる。
【0055】
いうまでもなく、上記油中水型エマルジョンの製造方法はこれに限定されるものではない。液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水、並びに必要に応じて添加される添加剤の添加順序は、どのようなものでもよい。好適な油中水型エマルジョンを形成させるための撹拌は、例えば、300rpm〜1000rpmの攪拌器回転速度で行うことができる。エマルジョン形成後、油中水型エマルジョンを、加熱することなく、例えば真空減圧機を用いて、脱泡処理に供してエマルジョン中に存在する空気を除去することができる。
【0056】
上記したように油中水型エマルジョンを用いてシリコーンエラストマー多孔質体を製造するためには、硬化触媒の存在下に、上記油中水型エマルジョンを液状シリコーンゴム材の加熱硬化(一次加熱)条件に供することができる。一次加熱では、エマルジョン中の水を揮発させることなく、液状シリコーンゴム材を加熱硬化させるために、130℃以下の加熱温度を用いることが好ましい。一次加熱の際の加熱温度は、通常、80℃以上であり、加熱時間は、通常、5分〜60分程度である。この一次加熱により、液状シリコーンゴム材が硬化し、エマルジョン中の水粒子をエマルジョン中の状態のまま閉じ込める。硬化したシリコーンゴムは、以下述べる二次加熱による水分の蒸発の際の膨張力に耐える程度までに硬化する。
【0057】
次に、水粒子を閉じ込めた硬化シリコーンゴムから水分を除去するために、二次加熱を行う。この二次加熱は、70℃〜300℃の温度で行うことが好ましい。加熱温度が70℃未満では水の除去に長時間を要し、加熱温度が300℃を超えると、硬化したシリコーンゴムが劣化し得る。70℃〜300℃の加熱では、1時間〜24時間で水分は揮発除去される。二次加熱により水分が揮発除去されるとともに、シリコーンゴム材の最終的な硬化も達成される。揮発除去された水分は、硬化したシリコーンゴム材(シリコーンエラストマー)中に、水粒子の粒径にほぼ等しい径を有するセルを残す。
【0058】
このように、このシリコーンエラストマー多孔質体は、発泡現象を伴うことなく上記したように油中水型エマルジョンから製造することができる。また、上記した油中水型エマルジョン中の水粒子は、一次加熱により硬化したシリコーンゴムに閉じ込められ、二次加熱の際には、単に揮発するだけである。
【0059】
次に、上述した多孔質体を複数の実施例により、より具体的に説明するが、この多孔質体は、これらの実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0060】
以下の例において、シリコーンエラストマー多孔質体の単泡率は以下のようにして求めた。
<単泡率の測定>
本発明のシリコーンエラストマー多孔質体は、表面張力が高く、そのセルは微細であるため、水が侵入しにくい。そこで、シリコーンエラストマー多孔質体の水に対する濡れ性を向上させるために、界面活性剤を用いる。
【0061】
すなわち、製造したシリコーンエラストマー多孔質体の表層(表面から約1.0mm程度)を除去し、除去後の多孔質体の重量(吸水前多孔質体重量)を測定する。この多孔質体を水100重量部と親水性シリコーンオイル(ポリエーテル変性シリコーンオイル(信越化学社製KF−618))1重量部との混合溶液に浸漬し、減圧(70mmHg)下で10分間放置する。その後、大気圧に戻し、混合溶液から多孔質体を取り出し、多孔質体表面に付着している水をきれいに拭き取り、多孔質体の重量(吸水後多孔質体重量)を測定する。下記式から吸水率、連泡率、単泡率を順次算出する。
【0062】
吸水率(%)={(吸水後多孔質体重量−吸水前多孔質体重量)/吸水前多孔質体重量}×100
連泡率(%)=(多孔質体比重×吸水率/100)/{混合溶液の比重−(多孔質体比重/シリコーンエラストマーの比重)}×100
単泡率(%)=100−連泡率(%)。
【0063】
ここで、シリコーンエラストマーの比重は、液状シリコーンゴム材をそのまま硬化させたものの比重であり、製品カタログにも記載されている。
【0064】
実施例1
この実施例1では、液状シリコーンゴム材として、信越化学社から入手した液状シリコーンゴム(商品名KE−1353)を用いた。この液状シリコーンゴムは、活性水素含有ポリシロキサン(粘度:16Pa・S)と、ビニル基含有ポリシロキサン(粘度:15Pa・S)とが別々のパッケージとして提供され、ビニル基含有ポリシロキサンには、触媒量の白金触媒が添加されているものであった。以下、前者をシリコーンゴムA剤、後者をシリコーンゴムB剤と表示する。活性水素含有ポリシロキサンは、各R4がメチル基である上記式(2)の構造を有し、他方ビニル基含有シリコーンオイルは、各R1がビニル基であり、各R2がメチル基である上記式(1)の構造を有する。また、分散安定剤としては、いずれも信越化学社製ポリエーテル変性シリコーンオイルであるKF−618(HLB値:11);以下、「分散安定剤I」)およびKF−6015(HLB値:4);以下、分散安定剤II)を用いた。本実施例で用いた液状シリコーンゴム材から得られるシリコーンエラストマー自体の比重は、1.04である(カタログ値)。
【0065】
50重量部のシリコーンゴムA剤に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を添加し、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Aを調製した。他方、50重量部のシリコーンゴムB剤に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を添加し、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Bを調製した。
【0066】
得られた混合物Aと混合物Bを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、90重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0067】
得られたエマルジョンを真空減圧機内で脱泡させ、混入空気を除去した後、深さ6mmの圧縮成形金型に流し込み、プレス盤を用いて、設定温度100℃で30分間加熱(一次加熱)し、成形した。得られた成形体(多孔質体前駆体)を電気炉中、150℃で5時間加熱(二次加熱)し、水を除去した。こうして、長さ42mm、幅20mm、厚さ6mmの矩形板状のシリコーンエラストマー多孔質試験片を作製した。この試験片を幅方向に切断し、その切断面をSEMで観察し、セルの長径および短径をノギスで測定し、セルサイズ特性を求めた。また、この試験片について単泡率を測定した。結果を下記表1に示す。また、本実施例で得られた多孔質エラストマーの比重を測定したところ、0.66であり、硬度(Asker−C)は、40であった。なお、本試験片の切断面のSEM写真(倍率100倍)を図1に示す。このように、非常に微細で、均一なセル径を有する独立気泡型多孔質体が得られた。
【0068】
実施例2
この実施例2では、液状シリコーンゴム材として、東レ・ダウコーニング社から入手した液状シリコーンゴム(商品名DY35−7002)を用いた。この液状シリコーンゴムは、活性水素含有ポリシロキサン(粘度:15Pa・S)と、ビニル基含有ポリシロキサン(粘度:7.5Pa・S)とが別々のパッケージとして提供され、ビニル基含有ポリシロキサンには、触媒量の白金触媒が添加されているものであった。以下、前者をシリコーンゴムA剤、後者をシリコーンゴムB剤と表示する。活性水素含有ポリシロキサンは、各R4がメチル基である上記式(2)の構造を有し、他方ビニル基含有シリコーンオイルは、各R1がビニル基であり、各R2がメチル基である上記式(1)の構造を有する。また、分散安定剤としては、上記分散安定剤I分散安定剤IIを用いた。本実施例で用いた液状シリコーンゴム材から得られるシリコーンエラストマー自体の比重は、1.03である(カタログ値)。
【0069】
50重量部のシリコーンゴムA剤に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を添加し、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Aを調製した。他方、50重量部のシリコーンゴムB剤に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を添加し、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Bを調製した。
【0070】
得られた混合物Aと混合物Bを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、90重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0071】
このエマルジョンを用いて、実施例1と同様にしてシリコーンエラストマー多孔質体試験片を作製し、実施例1と同様にセルサイズ特性を測定し、単泡率を測定した。結果を下記表1に併記する。本実施例で得られた多孔質エラストマーの比重を測定したところ、0.55であり、硬度(Asker−C)は、56であった。なお、本試験片の切断面のSEM写真(倍率100倍)を図2に示す。このように、極めて微細で、均一なセル径を有する独立気泡型多孔質体が得られた。
【0072】
実施例3
この実施例3では、上述した実施例2で用いたシリコーンゴムA剤とシリコーンゴムB剤とを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、90重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0073】
このエマルジョンを用いて、実施例1と同様にしてシリコーンエラストマー多孔質体試験片を作製し、実施例1と同様にセルサイズ特性を測定し、単泡率を測定した。結果を下記表1に併記する。なお、本実施例で得られた多孔質エラストマーの比重を測定したところ、0.53であり、硬度(Asker−C)は、58であった。
【0074】
実施例4
この実施例4では、上述した実施例2で用いた液状シリコーンゴム材と、東レ・ダウコーニング社から入手した液状シリコーンゴム(商品名DY35−615)を用いた。この液状シリコーンゴムDY35−615は、活性水素含有ポリシロキサン(粘度:113Pa・S)と、ビニル基含有ポリシロキサン(粘度:101Pa・S)とが別々のパッケージとして提供され、ビニル基含有ポリシロキサンには、触媒量の白金触媒が添加されているものであった。以下、前者を本シリコーンゴムA剤、後者を本シリコーンゴムB剤と表示する。活性水素含有ポリシロキサンは、各R4がメチル基である上記式(2)の構造を有し、他方ビニル基含有シリコーンオイルは、各R1がビニル基であり、各R2がメチル基である上記式(1)の構造を有する。
【0075】
このシリコーンゴムA剤と実施例2で用いたシリコーンゴムA剤との体積比50:50の混合物50重量部に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を添加し、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Aを調製した。他方、本シリコーンゴムB剤と実施例2で用いたシリコーンゴムB剤との体積比50:50の混合物50重量部に、0.7重量部の分散安定剤Iと0.3重量部の分散安定剤IIとを予め混合した混合物を添加し、ハンドミキサーで5分間撹拌し、十分に分散させて混合物Bを調製した。
【0076】
得られた混合物Aと混合物Bを混合し、ハンドミキサーで3分間撹拌しながら、10重量部の水を添加した後、さらに2分間撹拌した。この混合物をハンドミキサーで撹拌しながら、90重量部の水を徐々に添加し、エマルジョンを調製した。
【0077】
このエマルジョンを用いて、実施例1と同様にしてシリコーンエラストマー多孔質体試験片を作製し、実施例1と同様にセルサイズ特性を測定し、単泡率を測定した。結果を下記表1に併記する。なお、本実施例で用いた液状シリコーンゴム材から得られるシリコーンエラストマー自体の比重は、1.07であった。また、本実施例で得られた多孔質体の比重は、0.60であり、硬度(Asker−C)は、35であった。
【0078】
比較例1
富士ゼロックス社製プリンタAble 1405から加圧ローラを取り外し、その弾性層であるシリコーンエラストマー多孔質体(発泡剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリルを用いて発泡させたもの)から試験片を切り出した。この試験片について、実施例1と同様に、セルサイズ特性と単泡率を測定した。結果を下記表1に併記する。なお、本試験片の切断面のSEM写真(倍率100倍)を図3に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
(定着装置10の説明)
次に、上述した多孔体質が用いられる定着用ローラが装着させる定着装置10の概略構成を、図4を参照して説明するが、この定着装置10には、この発明に係わる一実施例の定着用ローラが適用されるところの、加熱用回転体としての定着ローラ12が装着されている。また、参照符号14は、この定着ローラ12に所定の圧力で転接する加圧部材としての加圧ローラを示している。尚、この定着ローラ10の外周面には、この表面温度を測定するためのサーミスタ38が接触配置されている。
【0081】
この定着ローラ12は、鉄等の金属製駆動軸の長手方向端部にある不図示の駆動ギアを介して、不図示の駆動系により、矢印で示す方向に回転駆動されるように構成されている。一方、加圧ローラ14は、鉄製の芯金18の長手方向両端部にある不図示の軸受を介して、不図示の加圧バネにより、定着ローラ12側へ圧接された状態で、定着ローラ12の回転に従動して矢印で示す方向に回転する。参照符号Nは、この両ローラ12、14が互いに転接する圧接ニップ部を示している。
【0082】
(定着ローラ12の説明)
この発明の一実施例に係わる定着ローラ12は、後述する製造方法により製造されるものであり、図5に取り出して示すように、芯金16と、この芯金16の外周に、プライマー20を介してこれを取り巻くように配設された多孔質体層22と、この多孔質体層22の外周を被覆するように、接着剤層24を介して接着された金属製薄肉スリーブ26と、この金属製薄肉スリーブ26の外周にこれを被覆するように配設された離型層28とを備えて、基本的に構成されている。
【0083】
ここで、上述した多孔質体層22は、詳細は後述するが、少なくとも独立気泡を含むシリコーンエラストマー、即ち、独立気泡型のシリコーンエラストマーから構成されている。そして、この多孔質体層22は、金属製薄肉スリーブ26に嵌入前の状態において、その外径が、金属製薄肉スリーブ26の内径よりも径大になるように、図示しない外径研磨装置により加工されている。具体的には、金属製薄肉スリーブ26の内径は、30.0mmに設定されているが、嵌入前の多孔質体層22の外径は、30.5mmになるように、加工されている。
【0084】
また、金属製薄肉スリーブ26は、高い熱伝導を有する金属材料、例えば、鉄・SUS・ニッケル等、具体的には、この一実施例においては、ニッケル電鋳製のスリーブをスリーブ基材26aとして備えており、その内径が30.0mm、肉厚が10〜100μm、好ましくは30〜50μm、具体的には、肉厚35μmの薄肉スリーブとして形成されている。また、このスリーブ基材26aの外周には、プライマーを介してシリコーンゴムが塗布されており、シリコーンゴム層26bが構成されている。また、このシリコーンゴム層26bの外周には、接着剤を介して離型層28を規定するフッ素樹脂としての例えばパーフルオロアルコキシテトラフルオロエチレン共重合体(PFA)製チューブが被覆されている。
【0085】
尚、シリコーンゴム層26bの層厚としては、シリコーンゴムの硬化後の状態において200μmとなるように設定され、離型層28を規定するPFA製チューブの膜厚としては、30μmが設定されている。また、シリコーンゴム層26bと離型層28との間を接着する接着層(図示せず)の厚さとしては、約30μmが設定されており、この接着層を構成する接着剤としては、例えばシリコーンゴム系接着剤が用いられており、例えば、2液付加LTV(商品名:SE1700、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)が用いられている。また、RTV(商品名:KE45、信越化学工業社製)の接着剤も、用いられ得るものである。
【0086】
ここで、この金属製薄肉スリーブ26の製造手順について簡単に説明すると、図示しない電鋳ベルト製造装置を用いてスリーブ基材26aを作成し、このスリーブ基材26aの外表面にプライマーを塗布してこれを乾燥させ、この乾燥したプライマー層上にシリコーンゴムを硬化後において200μmとなるように塗布し、これを硬化させる。
【0087】
この後、硬化したシリコーンゴムにより規定されるシリコーンゴム層26bの外表面上に接着剤を約30μmの厚さで塗布し、この接着剤を介して接着されるようにPFAチューブを被覆する。そして、接着剤を硬化させて、PFAチューブからなる離型層28をシリコーンゴム層26bの外表面に接着させて、金属製薄肉スリーブ26を調製した後、これを所定の長さに切断して、所望寸法の金属製薄肉スリーブ26を製造する。
【0088】
このようにして、金属製薄肉スリーブ26がその外表面に離型層28を備えた状態で製造されることになる。
【0089】
また、上述した多孔質体層22と金属製薄肉スリーブ26とを接着するために、多孔質体層22の外周面及び金属製薄肉スリーブ26の内周面の少なくとも一方、具体的には、多孔質体層22の外周面には、これの外周への金属製薄肉スリーブ26の嵌入に先立ち、接着剤が全面に渡り塗布されていて接着剤層24が構成されている。
【0090】
ここで、この接着剤層24を構成する接着剤としては、例えばシリコーンゴム系接着剤が用いられており、上述したシリコーンゴム層26bと離型層28との間を接着する接着剤と同様に、2液付加LTV(商品名:SE1700、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)が用いられている。また、RTV(商品名:KE45、信越化学工業社製)の接着剤も、用いられ得るものである。
【0091】
ここで、この接着剤層24の層厚としては、5〜200μmの範囲が適切であり、特に、塗布量からの換算として、約50μmに設定されている。尚、接着剤層24の層厚が5μmより薄いと、接着強度が担保されず、一方で、200μmより厚いと、多孔質体層22の断熱効果を損なうこととなり好ましくない。従って、上記したように、接着剤層24の層厚としては、5〜200μmが最適な範囲となるものである。
【0092】
このように、多孔質体層22と金属製薄肉スリーブ26とを互いに接着しているために、定着ローラ12の回転状態において、金属製薄肉スリーブ26と加圧ローラ14との間の摩擦係合力が強くなったとしても、多孔質体層22と金属製薄肉スリーブ26との間で相対回転が発生せず、従来問題となっていたような、短時間のうちに多孔質体層の外表面がぼろぼろになって、使用不能状態となることが、確実に防止されることになり、その効果は絶大である。
【0093】
また、このような定着ローラ12の回転状態において、金属製薄肉スリーブ26は多孔質体層22に接着固定されているので、金属製薄肉スリーブ26が多孔質体層22に対して軸方向に沿って変位する状態が確実に防止されることとなる。この結果、金属製薄肉スリーブ26が多孔質体層22に対して軸方向に沿って変位する事により発生していた所の、応力集中による割れの発生が、確実に防止されることとなり、この観点でも、その効果は絶大である。
【0094】
また、接着剤層24を構成する接着剤として、シリコーンゴム系の接着剤を採用することにより、この接着剤自身に所定の柔らかさ及び弾性を発揮し得ることとなる。この結果、柔らかな多孔質体層22と硬い金属製薄肉スリーブ26とを接着するに際して、両者の間の硬度の違いを効果的に吸収して、ストレスを与えない点で、顕著な効果を奏することが出来るものである。
【0095】
また、この接着剤層24は、上述したように所定の弾性を有しているために、硬い金属製薄肉スリーブ26からの力を、直に、多孔質体層22に伝達することを防止して、所謂保護層としての機能を発揮することが出来るものである。
【0096】
また、離型層28は、PTFEあるいはPFA等のフッ素樹脂から形成されている。例えば、金属製薄肉スリーブ26の外周面にPFAを塗布する事により形成しても良いし、PFA製のチューブを被覆する事により形成しても良いものである。
【0097】
一方、加圧ローラ14は芯金18の外周に、シリコーンゴム製の弾性層30、そして、PTFEあるいはPFA等の離型層32を順次形成して構成されている。
【0098】
また、参照符号34は定着ローラ12の表面を外部より加熱する外部加熱手段としてのハロゲンヒータを示している。このハロゲンヒータ34は、定着ローラ12と加圧ローラ14との圧接ニップ部Nの転写材入口近傍において定着ローラ12に対向させて配設してあり、このハロゲンヒータ34の輻射熱により定着ローラ12の表面が加熱されるようになされている。
【0099】
ここで、ハロゲンヒータ34による定着ローラ12の輻射加熱を効率的に行うために、ハロゲンヒータ34を中にして定着ローラ12と反対側には反射率の高い湾曲した反射板36が配置されており、ハロゲンヒータ34からの輻射熱を発散させずに定着ローラ12側へ反射させるように構成されている。
【0100】
上述した定着ローラ12に対しては、この定着ローラの表面温度を検知するためのサーミスタ38が当接されており、これにより検知された定着ローラ12の表面温度情報は、A/D変換器(不図示)を介してCPU(不図示)へと送られ、これに基づきCPU(不図示)は、ACドライバ(不図示)を介してハロゲンヒータ34のON/OFFを制御することにより、定着ローラ12の表面温度を所定値に制御するように構成されている。
【0101】
このように、定着ローラ12の構成が、内部に多孔質体層22、外部に金属製薄肉スリーブ26を形成しているので、熱容量が小さく熱伝導性に優れた金属スリーブ26は外部からの加熱手段(ハロゲンヒータ)34によって急激に加熱することができることになる。
【0102】
ここで、金属製薄肉スリーブ26の肉厚を薄くしすぎると、加工上の観点からも問題であるが、加工上の観点を満足するために金属製薄肉スリーブ26の厚みをあまり厚くすると、剛性が強くなり、ニップ部Nのニップ幅を十分に得られなくなる問題点が発生する。以上の観点から、定着ローラ12の金属製薄肉スリーブ26は10〜100μmの肉厚で形成することが望ましいことがわかる。
【0103】
また、内部に断熱効果の高い弾性体層としての多孔質体層22を形成し、その外側に10〜100μmの金属製薄肉スリーブ26を形成した定着ローラ12の表面を、外部の加熱手段34により定着可能な温度に加熱することによって、ウォームアップ時間を短縮することができる。よって画像形成装置が動作していない状態においては従来例のごとく定着ローラ表面を加熱する必要がなく、消費電力を大幅に削減できることになる。
【0104】
また、定着ローラ内部の弾性により小径の加圧ローラ14の芯金18が撓むことによる圧接ニップ部Nの不均一性を解消でき、圧接ニップ部長手方向のニップ幅を均一化することで転写材に同様の負荷を与えるため波打ち等の転写材の不具合を防止できることになる。
【0105】
更に、定着ローラ12にも弾性を持たせてあることから、ニップ幅を広く設定することが容易になり、画像形成装置の高速化をも可能とする定着装置となるものである。
【0106】
尚、上述した実施例において、定着ローラ12の表面を外部より加熱する外部加熱手段として、ハロゲンヒータ34を用いるように説明したが、この発明は、外部加熱手段としてハロゲンヒータ34を用いることに限定されること無く、電磁誘導加熱方式を利用して加熱する事も出来るものであり、要は、定着ローラ12に備えられた金属製薄肉スリーブ26に外部から熱を供給して加熱させても良いし、また、金属製薄肉スリーブ26自身を発熱するようにしても良いものである。
【0107】
以下に、外部加熱手段として電磁誘導加熱方式を利用した変形例としての電磁誘導加熱器40の構成を、図11及び図12を参照して概略的に説明する。
【0108】
図11に示すように、電磁誘導加熱器40は、定着ローラ12に設けられた金属製薄肉スリーブ26を加熱領域Zにて電磁誘導発熱させるためのものである。この実施の形態において、電磁誘導加熱器40は、定着ローラ12の外側においてこれに沿って約半周分延出するように円弧状に配設されている。即ち、図12に異なる断面方向で示すように、定着ローラ12の外周面に沿って約半周分に渡り配設される非磁性の基台42と、この基台42の定着ローラ12への対向面に形成された凹部の中央に配設されるフェライト等の磁性コア44と、この磁性コア44に巻き回されて定着ローラ12の半径方向に向かって変動磁界Hを生成する励磁コイル46とを備え、図示しない電源にて励磁コイル46に給電することにより定着ローラ12の金属製薄肉スリーブ26の厚さ方向を貫くように変動磁界Hを生成し、この金属製薄肉スリーブ26に渦電流Icを生じさせて、金属製薄肉スリーブ26を自己発熱させるものである。
【0109】
この変形例に示すように外部加熱手段としての電磁誘導加熱器40を構成することにより、ハロゲンヒータ34を用いた場合と比較して更に迅速に(即ち急激に)、定着ローラ12の金属製薄肉スリーブ26を発熱させて、定着ローラ12と加圧ローラ14とのニップ部に挟持された未定着シート上の未定着トナーを加熱することが出来ることになる。
【0110】
(製造装置50の説明)
次に、上述した構成の定着ローラ12を製造するための製造方法を実施するための製造装置50の構成を、図6を参照して、概略的に説明する。
【0111】
この製造装置50は、加圧法により、定着ローラ12の多孔質体層22の外径を縮径させると共に、この縮径させた状態で、多孔質体層22の外周面に接着剤を塗布し、且つ、この塗布動作後、金属製薄肉スリーブ26内に嵌入させることが出来るように構成されている。
【0112】
具体的には、この製造装置50は、上述した動作を加圧環境下で一括して実施するための加圧容器52を備えている。この加圧容器52には、コンプレッサ等の圧力供給機構54が連結されており、この圧力供給機構54が作動することにより、加圧容器52内は、例えば0.5MPaの高圧環境となるようになされている。
【0113】
この製造装置50は、加圧容器52内に、金属製薄肉スリーブ26を起立した状態で保持するスタンド56と、芯金16の外周に多孔質体層22が配設された多孔質体Xを、スタンド56に保持した金属製薄肉スリーブ26と同軸な状態で支持すると共に、この同軸状態を維持したままで、軸方向に沿ってこれを移動させることが出来るように構成された支持機構58と、この支持機構58に支持された多孔質体Xの多孔質体層22の外周面に、接着剤を一様に塗布するための接着剤塗布機構60が配設されている。
【0114】
尚、上述した支持機構58は、上述したスタンド56及びこれに保持された金属製薄肉スリーブ26を同軸貫通する上下一対の支持軸62、64を備え、両支持軸62,64により多孔質体Xは同軸に支持されるように設定されている。また、この支持軸62、64は、図示しない移動機構を介して、互いに一体的に移動駆動されると共に、互いに離間する方向にも移動駆動されるように構成されている。
【0115】
以上のように構成される製造装置50を用いて、上述した構造の定着ローラ12の製造方法の一実施例の手順を、詳細に説明する。
【0116】
先ず、芯金16を図示しない注型装置のキャビティ内に装着し、型閉めした状態で、上述した多孔質体の原材料となるエマルジョン、例えば上述した実施例1で得られたエマルジョンを、真空減圧機内で脱泡させ、混入空気を除去した後、キャビティ内に注入し、実施例1で記載した同一の形成条件で、キャビティ内で固化させる。これにより、芯金16と、これの外周を取り巻くように配設され少なくとも独立気泡を有するシリコーンエラストマー多孔質体層22とを備えて多孔質体Xを形成する。この後、注型装置から多孔質体Xを脱型して取り出し、図示しない外径研磨装置に装着して、多孔質体層22の外径を所定の数値、例えば、金属製薄肉スリーブ26の内径寸法である30.0mm以上の外径寸法としての30.5mmになるように、その外周面を研削加工する。
【0117】
この後、加圧容器52を開放して、多孔質体Xを支持機構58の上下一対の支持軸62,64間に挟持すると共に、スタンド56上に金属製薄肉スリーブ26を起立した状態で保持する。
【0118】
この後、加圧容器52を閉じて、圧力供給機構54を起動して、加圧容器52内に収納している多孔質体Xを加圧する。これにより、この多孔質体Xを構成している多孔質体層22の外径を、金属製薄肉スリーブ26の内径よりも径小にさせる。
【0119】
そして、図7に示すように、接着剤塗布機構60を起動すると共に、図示しない移動機構を起動して、上下一対の支持軸62,64を下降駆動して、両者に支持される多孔質体Xを下降させて、多孔質体Xの外周面及び金属製薄肉スリーブ26の内周面の少なくとも一方、具体的には、多孔質体Xの外周面に接着剤を塗布して、接着剤層24を形成する。
【0120】
そして、この加圧容器52内において、引き続いて図示しない移動機構を起動して、上下一対の支持軸62,64を下降駆動して、両者に支持される多孔質体Xを、金属製薄肉スリーブ26内に挿入して、図8に示すように、スリーブ体Yを形成する。
【0121】
このように加圧容器52内で形成されたスリーブ体Yを、この加圧容器52の加圧状態を解除して大気に開放した上で、ここから取り出し、多孔質体Xの多孔質体層22が膨張してこの多孔質体層22の外周面を、金属製薄肉スリーブ26の内周面に密着させる。尚、この密着工程においては、加圧容器52の加圧状態を解除した時点で、多孔質体層22の膨張が開始して、加圧状態の解除と殆ど同時に、密着動作が完了することになる。
【0122】
この後、接着剤を固化して、多孔質体Xと金属製薄肉スリーブ26とを接着する。この接着工程においては、このスリーブ体Yを図示しない恒温槽内に収容し、150℃で30分程度、加熱することにより、接着させるように設定されている。尚、このような加熱による接着動作が完了した後に、エージング動作を行っても良いことは言うまでもない。
【0123】
このようにして、接着動作が完了した時点で、金属製薄肉スリーブ26の外周面には、予めフッ素樹脂としてのPFA製の離型層28が被覆されているので、定着用ローラ12が完成することになる。
【0124】
この発明に係わる定着用ローラは、上述の構成に限定される事なく、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である事は、言うまでもない。以下に、定着用ローラの他の実施例の構成を、添付図面を参照して説明する。尚、以下の説明において、上述した構成と同一部分には、同一符号を付して、その説明を省略する。
【0125】
(定着ローラの他の構成例の説明)
例えば、上述した定着ローラ12においては、離型層28は、金属製薄肉スリーブ26の外周面に直接的に配設されるように説明したが、この定着ローラ12は、このような構成に限定される事なく、例えば図9に他の構成例として示すように、離型層28を、注型装置に装着する前の段階で、金属製薄肉スリーブ26の外周面に形成しておかず、シリコーンゴム等の弾性層48のみを形成しておき、金属製薄肉スリーブ26と多孔質体層22とを一体化させた後に、この弾性層48の外周面に離型層28を形成するようにしてもよい事は、言うまでもない。要は、この離型層28は、本発明にとって必須的な構成要素ではなく、何れのタイミングで装着されるものでよいものである。
【0126】
(定着用ローラの他の適用例の説明)
また、この発明に係わる定着用ローラを、定着ローラに適用した場合につき説明したが、このような適用に限定される事なく、図10に他の適用例として示すように、この発明に係わる定着用ローラを、加圧ローラ14に適用しても良いことは言うまでもない。
【0127】
また、上述した製造方法の一実施例の手順において、多孔質体Xを加圧する事により縮径させるように説明したが、減圧する事により縮径させるようにしても良い事は言うまでも無い。要は、多孔質体Xを金属製薄肉スリーブ26内に挿入してスリーブ体Yを形成するに際して、挿入時の多孔質体Xの外径を金属製薄肉スリーブ26の内径よりも小さく設定させておき、挿入後、多孔質体Xの外径と金属製薄肉スリーブ26の内径とを実質的に同一又は多孔質体Xの外径を金属製薄肉スリーブ26の内径よりも僅かに大きくなるようにさせることが出来るものであれば良く、上述したように、多孔質体Xを圧力をパラメーターとして、加圧又は減圧により縮径させる方法でも良いし、また、熱をパラメータとして金属製薄肉スリーブを加熱により拡径させる方法や多孔質体Xを冷却により縮径させる方法でも良いことは言うまでも無い。
【0128】
また、上述した実施例においては、多孔質体Xを金属製薄肉スリーブ26内に挿入するに当たり、多孔質体Xを、「芯金16と、これの外周を取り巻くように配設され少なくとも独立気泡を有するシリコーンエラストマー多孔質体層22とを備え」て構成するように説明したが、この発明は、このような手順に限定されること無く、多孔質体Xを芯金16の無い状態、即ち、竹輪状のシリコーンエラストマー多孔質体層22自身から構成して、金属製薄肉スリーブ26内に挿入するようにし、挿入動作の完了後に、芯金16を金属製薄肉スリーブ26内に挿入されたシリコーンエラストマー多孔質体層22の中心孔内に挿入するようにしても良いものである。このように手順を規定することにより、シリコーンエラストマー多孔質体層22の外径を、金属製薄肉スリーブ26の内径と略同一又は、僅かに大きく形成しても、芯金16を伴っていないために、竹輪状のシリコーンエラストマー多孔質体層22を金属製薄肉スリーブ26内に簡単に且つ確実に挿入することが出来るものであり、換言すれば、スリーブ体Yを、簡単且つ確実に、多孔質体Xと金属製薄肉スリーブ26とを備えて構成することが出来ることになる。
【0129】
また、上述した製造方法の一実施例の手順において、多孔質体Xを形成するために、注型装置に芯金16を装着し、この芯金16の外周に多孔質体の原材料としてのエマルジョンを注入して注型装置内で芯金16の外周に多孔質体層2を被覆するように説明したが、この発明は、このような手順に限定されることなく、予め、中心部に挿通孔が形成された円筒状の多孔質体を形成しておき、この円筒状の多孔質体に芯金16を挿通することにより、多孔質体Xを形成するようにしても良いことは、言うまでもない。要は、芯金16の外周に多孔質体層22が形成されているものであれば、その形成手順を何等問わないものである。
【0130】
また、上述した実施例においては、加圧容器52内において、加圧環境下で多孔質体層22の外周面への接着剤の塗布動作を行うように、換言すれば、縮径された多孔質体層22の外周面に接着剤を塗布するように説明したが、この発明は、このような手順に限定されることなく、大気中で多孔質体層22の外周面への塗布動作を行っても、換言すれば、縮径される前の段階で、多孔質体層22の外周面に接着剤の塗布動作を行っても、同様の効果を奏することが出来ることは言うまでもない。
【0131】
また、上述した一実施例の製造方法に係わる手順においては、離型層28を、弾性層としてのシリコーンゴム層26bを介して形成するように説明したが、この発明は、このような手順に限定されることなく、金属製薄肉スリーブ26のスリーブ本体26aの外周面に直接的に形成するようにしても良いことは言うまでもない。
【0132】
また、フッ素樹脂製の離型層28の形成に際して、PFAチューブを緊密に被覆することにより行うように説明したが、この発明は、このような手順に限定されることなく、例えば、PFAを、金属製薄肉スリーブ26の外周面に塗布することにより形成しても良いことは言うまでもない。尚、この塗布動作は、金属製薄肉スリーブ26の外周面に形成されたシリコーンゴム層26bの外周面に直接的に行ってもよいことは、言うまでもない。
【0133】
また、上述した実施例においては、金属製薄肉スリーブ26は、多孔質体層22の外周に、接着剤層24を介して接着されるように説明したが、この発明は、このような構成に限定されること無く、金属製薄肉スリーブ26と多孔質体層22とが摩擦係合して、芯金16を外部から回転駆動する場合に、多孔質体層22の回転に応じて金属製薄肉スリーブ26が連れ回りするのであれば、または、金属製薄肉スリーブ26が外部から回転駆動する場合に、多孔質体層22(従って、芯金16)が連れ回りするのであれば、接着剤層24が無くても良いことは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】実施例1で作製したシリコーンエラストマー多孔質体の断面のSEM写真である。
【図2】実施例2で作製したシリコーンエラストマー多孔質体の断面のSEM写真である。
【図3】比較例1のシリコーンエラストマー多孔質体の断面のSEM写真である。
【図4】この発明に係わる定着用ローラを備えた定着装置の一実施例の構成を概略的に示す図である。
【図5】この発明に係わる定着用ローラを、定着ローラに適用した場合の構成を示す断面図である。
【図6】この発明に係わる定着用ローラを製造するための製造装置の構成を概略的に示す図である。
【図7】図6に示す製造装置を用いて定着ローラの製造方法を実施する過程に於いて、加圧容器内で多孔質体の外周に接着剤を塗布している状態を示す図である。
【図8】図6に示す製造装置を用いて定着ローラの製造方法を実施する過程に於いて、加圧容器内でスリーブ体が形成された状態を示す図である。
【図9】この発明に係わる定着用ローラの他の構成例に係わる構成を概略的に示す図である。
【図10】この発明に係わる定着用ローラを、加圧ローラに適用した場合の他の適用例の構成を概略的に示す図である。
【図11】この発明に係る定着用ローラを加熱するための外部加熱手段の変形例としての電磁誘導加熱器の構成を概略的に示す正面図である。
【図12】図11に示す電磁誘導加熱器の内部構造を、定着ローラの中心軸線に沿って断面を取った状態で概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0135】
10 定着装置
12 定着ローラ
14 加圧ローラ
16 定着ローラ12の芯金
18 加圧ローラ14の芯金
20 プライマー
22 多孔質体層
24 接着剤層
26 金属製薄肉スリーブ
26a スリーブ本体
26b シリコーンゴム層
28 定着ローラ12の離形層
30 加圧ローラ14の弾性層
32 加圧ローラ14の離型層
34 ハロゲンヒータ(外部加熱手段)
36 反射板
38 サーミスタ
40 電磁誘導加熱器
42 基台
44 磁性コア
46 励磁コイル
48 弾性層
50 製造装置
52 加圧容器
54 圧力供給機構
56 スタンド
58 支持機構
60 接着剤塗布機構
62 (上側の)支持軸
64 (下側の)支持軸
N ニップ部
P 転写材(被加熱材)
X 多孔質体
Y スリーブ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、
この芯金の外周を取り巻くように配設されたエマルジョン組成物から調製された少なくとも独立気泡型のシリコーンエラストマー製の多孔質体層と、
この多孔質体層の外周を被覆する金属製薄肉スリーブと、
を具備することを特徴とする定着用ローラ。
【請求項2】
前記多孔質体層は、50μm以下の径を有するセルが全セル数の50%以上を占め、かつ60%以上の単泡率を有するシリコーンエラストマーから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着用ローラ。
【請求項3】
式(A):0<=(m−n)/m<=0.5
(ここで、mは、セルの長径を表し、nは、セルの短径を表す)で示される関係を満たすセルが、全セル数の50%以上を占める事を特徴とする請求項2に記載の定着用ローラ。
【請求項4】
式(B):0<=(m−n)/n<=0.5
で示される関係をも満たすセルが、全セル数の50%以上を占める事を特徴とする請求項3に記載の定着用ローラ。
【請求項5】
前記シリコーンエラストマーは、30μm以下の平均セル径を有することを特徴とする請求項2に記載の定着用ローラ。
【請求項6】
前記シリコーンエラストマーは、80%以上の単泡率を有することを特徴とする請求項2に記載の定着用ローラ。
【請求項7】
前記セルの径が0.1μm〜70μmの範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の定着用ローラ。
【請求項8】
前記多孔質体が、硬化してシリコーンエラストマーを生成する液状シリコーンゴム材、界面活性作用を有するシリコーンオイル材、および水を含有する油中水型エマルジョン組成物から調製されたものであることを特徴とする請求項1に記載の定着用ローラ。
【請求項9】
前記金属製薄肉スリーブの外周に、離型層を備えることを特徴とする請求項1に記載の定着用ローラ。
【請求項10】
前記離型層と前記金属製薄肉スリーブとの間には、弾性層が介設されていることを特徴とする請求項9に記載の定着用ローラ。
【請求項11】
前記金属製薄肉スリーブの外周には、弾性層が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の定着用ローラ。
【請求項12】
前記弾性層の外周には、離型層が配設されていることを特徴とする請求項11に記載の定着用ローラ。
【請求項13】
前記離型層は、フッ素樹脂から形成されていることを特徴とする請求項9又は12に記載の定着用ローラ。
【請求項14】
前記フッ素樹脂は、前記弾性層の外周面に、塗布される事により配設されていることを特徴とする請求項13に記載の定着用ローラ。
【請求項15】
前記フッ素樹脂はチューブ状に構成され、前記弾性層の外周面に、被覆される事により配設されていることを特徴とする請求項13に記載の定着用ローラ。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−285216(P2006−285216A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49618(P2006−49618)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(000227412)日東工業株式会社 (99)
【Fターム(参考)】