説明

定着装置、ゴムロール及びロール部材

【課題】 トナー像の乱れを防止するとともに、長期にわたりトナー像を良好に定着させることができる定着装置を提供すること。
【解決手段】 定着装置160において、ハロゲンヒータ45を備えた定着ロール401、加圧ロール52と張架ロール53及びリードロール54に張架された加圧ベルト55、ニップ部Nの上流に設けた圧力補助ロール51、を有し、圧力補助ロール51は、表面層と、硬弾性層である内層と、軟弾性層である中間層とからなる3層構造を有し、中間層の硬度は、他の2個のゴム層の硬度よりも低く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置等に関し、より詳しくは、画像形成装置における定着装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
記録シート上に担持された未定着のトナー像を加熱・溶融して定着する装置として、回転可能に支持された定着ロールと、無端移動が可能に張架された加圧ベルトとを圧接し、これらの間に記録シートを送り込んで定着するものが知られている(特許文献1参照)。
例えば、図7は、従来のベルトニップ方式の定着装置を説明するための図である。図7に示されたベルトニップ方式の定着装置200は、内部にハロゲンランプ107が設けられた定着ロール101と、支持ロール104、105及び加圧ロール103に張架された加圧ベルト102と、から主要部が構成されている。定着ロール101は、金属製の円筒状のコア112と、その表面に形成された下地層113及びトップコート層114からなる弾性体層を有している。
【0003】
図7に示すように、加圧ロール103が定着ロール101に圧接され、これにともなって加圧ベルト102の一部が定着ロール101に巻き回されるように接触している。さらに、定着ロール101と加圧ベルト102とが接触する部分の上流部には、圧力補助ロール106が加圧ベルト102を介して定着ロール101に押圧され、これらの接触部分がニップ部を形成している。未定着のトナー116を担持した記録記録シート115がニップ部に送り込まれると、定着ロール101と加圧ベルト102との間に挟持されて搬送される。そして定着ロール101から伝えられるハロゲンランプ107の熱によってトナーが溶融し、加圧ベルト102または加圧ロール103の圧接力で記録記録シート115に圧着される。
このようなベルトニップ方式の定着装置200は、加圧ベルト102を使用しない定着装置に比べ、記録シートの搬送速度を大きくすることができ、また、特に多層のトナーを所望の色に発色させるカラー複写機の定着に適している。
【0004】
従来、ベルトニップ方式の定着装置には、条件によってトナー画像のズレが発生するという問題が知られている。この原因は、トナー116を記録シート115に融着させる際に、暖められた記録シート115の繊維の間隙やトナー粒子の間隙から発生した空気または蒸発した水蒸気によるものと考えられている。このような空気や水蒸気は、記録シート115と定着ロール101またはエンドレスベルト102との間に気泡となって介在し、記録シート115がニップ部を通過し終えると同時に外部に排出される。
【0005】
ここで、図8は、定着装置200における加圧力分布を説明する図である。図8(a)に示すように、加圧ロール103による押圧部と圧力補助ロール106による押圧部との間に、圧力Pが小さい領域が広く存在している。この領域に存在する気泡は定着ロール101とエンドレスベルト102との間で動き回り、その気泡の動きに影響されてニップ部における記録シート115上の未定着のトナー116が移動し、このため、トナー画像のズレが発生する場合がある。
【0006】
上述した現象は、例えば、圧力補助ロール106を大径化し、且つ、弾性層の厚さを大きくし、硬度を下げることにより、定着ロール101に押圧したときのニップ部の幅を大きくすることにより改善される。
例えば、図8(b)は、定着装置200において大径化した圧力補助ロールを用いた場合の加圧力分布を説明する図である。図8(b)に示すように、大径化した圧力補助ロール106を用いることにより、定着装置200におけるニップ部の押圧部を、周方向に幅広く形成することが可能となり、ニップ部内で圧力Pが小さくなる部分を少なくすることができる。その結果、記録シート115やトナー粒子間に含まれる空気や水蒸気の熱膨張による画像ズレを抑制することができる。
【0007】
【特許文献1】特開平8−166734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ベルトニップ方式の定着装置200では、上述したように、加圧ロール103による押圧部と圧力補助ロール106による押圧部との間の圧接力の小さい領域を少なくするために、圧力補助ロール106を大きく変形させる必要がある。そのために、圧力補助ロール106の弾性層は、出来るだけ低硬度の材料を用いる必要がある。しかし、低硬度の弾性体を用いた場合、以下の問題が発生する。
即ち、圧力補助ロール106は、芯金両端を支持されて定着ロール101に当接される際に、弾性層内の応力分布は、芯金付近に集中した状態となる。この場合、最大応力が弾性層のゴム強度よりも大きいとゴムは破断し、ロールが破壊する。また、一般に、ゴム強度はゴム硬度が低いほど小さくなるため、低硬度のゴムを使用すると、圧力補助ロール106が容易に破壊されるおそれがある。また、この応力集中は、芯金の外径が小さいほど顕著になるため、圧力補助ロール106を大きく変形させるために弾性層の厚みを大きくし、芯金の径を小さくするほど、圧力補助ロール106は容易に破壊されるおそれがある。
【0009】
また、画像欠陥を生じさせないためには、定着の際に発生する空気や水蒸気に対抗できるNip荷重で圧力補助ロール106を押圧し、記録シート115と定着部材表面を密着させる必要がある。
しかし、圧力補助ロール106の表面が軟らかい場合は、Nip荷重が十分に大きい場合であっても、部分的に発生する空気や水蒸気の圧力に圧力補助ロール106の表面が耐えられず変形する。従って、Nip荷重が大きい場合であっても、画像欠陥の防止が困難となる。
【0010】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、トナー像の乱れを防止するとともに、長期にわたりトナー像を良好に定着させることができる定着装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、トナー像の乱れを防止し、トナー像を良好に定着させるゴムロールを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、広いニップ幅を確保できるロール部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明においては、硬度の異なる複数の層構造を有するロール部材を用いている。
即ち、本発明によれば、被押圧部材と、被押圧部材を押圧して記録媒体が通過するニップ部を形成するロール部材と、を備える定着装置であって、ロール部材は、被押圧部材と接触する表面層と、金属製芯金の周囲に形成された硬弾性層と、表面層及び硬弾性層より低硬度の軟弾性層と、を有することを特徴とする定着装置が提供される。
ここで、本発明が適用される定着装置において使用されるロール部材は、軟弾性層が、表面層と硬弾性層との間に設けられている3層構造を有することが好ましい。ロール部材の構造を、このような硬度が異なる3層の積層構造とすることにより、ロール部材の長寿命化が図れるとともに画像欠陥を防止することが可能となる。
【0012】
このとき、ロール部材を構成する軟弾性層は、多孔質体により構成されることが好ましい。軟弾性層がスポンジ状等の多孔質体により形成されることにより、被押圧部材に圧接されたロール部材の変形を確保することができる。
また、ロール部材は、軸方向に対して複数の軟弾性層が所定の間隔で配置された構造を有することもできる。複数の軟弾性層が軸方向に延在することにより、軸方向全体にわたり広いニップ幅を確保することができる。
【0013】
さらに、被押圧部材としては、回動部材と、回動部材に接触しながら移動するベルト部材と、を有する構成とすることにより、ベルトニップ方式の定着装置に適用することができる。
また、被押圧部材として、加熱源により加熱される被加熱部材と、被加熱部材に接触しながら移動するベルト部材と、を有する構成の場合は、未定着のトナー像の上側に配置された定着ベルトを有する定着装置に適用することができる。
【0014】
次に、本発明によれば、記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着装置であって、加熱源を備えた被押圧部材と、被押圧部材に接触しながら移動するベルト部材と、ベルト部材を介して被押圧部材を押圧しつつ回転し、記録媒体が通過するニップ部を形成するロール部材と、を備え、ロール部材は、ベルト部材と接触する表面層と、金属製芯金の周囲に形成された硬弾性層と、表面層及び硬弾性層の硬度より低硬度を有する軟弾性層と、を有することを特徴とする定着装置が提供される。
ここで、ロール部材の表面層と硬弾性層との間に設けられている軟弾性層の硬度が、ASKER C 5〜50(SRIS 0101)の範囲であることが好ましい。
【0015】
また、被押圧部材として、被押圧部材とベルト部材との間に記録媒体が通過するニップ部を形成する定着ロールであり、ロール部材として、ベルト部材の内側に配置され、ニップ部の上流側に設けられた圧力補助ロールの場合、ベルトニップ方式の定着装置におけるニップ部が容易に確保される。
また、定着装置としては、被押圧部材として、回動する定着ロールと、定着ロールを含む複数個のロールにより張架された定着ベルトと、定着ベルト部材と接触しつつ移動し、定着ベルトとの間に記録媒体が通過するニップ部を形成する加圧ベルトと、を有する構成の定着装置に適用することができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、画像形成装置に用いられる定着装置であって、回動部材と、回動部材に接触しながら従動回転するベルト部材と、ベルト部材の内側に配置され、ベルト部材を回動部材に圧接させて回動部材とベルト部材との間に記録媒体が通過するニップ部を形成する圧力部材と、を備え、回動部材は、金属製芯金の周囲に形成された硬度が異なる少なくとも3個のゴム層を有し、回動部材のベルト部材と接触する表面と芯金との間に、他の2個のゴム層より低硬度の軟弾性層を有することを特徴とする定着装置が提供される。
この場合、回動部材が、金属製芯金の外周面を覆う硬弾性層と、ベルト部材と接触する表面層と、を有する層構造とすることにより、長期にわたりトナー像を良好に定着させることができる。
さらに、回動部材の構造は、金属製芯金の表面に形成された硬弾性層と、硬弾性層上に形成された軟弾性層と、軟弾性層上に形成され、ベルト部材と接触する表面層と、が順番に積層された3層構造を有することが好ましい。
また、圧力部材は、ニップ部に熱を供給する発熱源を有することが好ましい。
【0017】
次に、本発明によれば、定着回転体を押圧してニップ部を形成するゴムロールであって、長尺状の金属製芯金と、金属製芯金の周囲に形成された硬弾性層と、定着回転体と接触する表面層と、表面層及び硬弾性層より低硬度の軟弾性層と、を有することを特徴とするゴムロールが提供される。
ここで、軟弾性層は、硬弾性層の周囲に積層されることが好ましい。
また、ゴムロールの構造として、軟弾性層が、硬弾性層中に配置される構造とすることも可能である。
さらに、軟弾性層は、シリコーンゴムの多孔質体により構成されることが好ましい。また、表面層上に、フッ素ゴム又はフッ素樹脂からなる被覆層を有することが好ましい。
【0018】
また、本発明によれば、表面層と、金属製芯金の周囲に形成された硬弾性層と、硬弾性層を軸方向に貫通するように所定の間隔で配置された複数の軟弾性層と、を有し、軟弾性層は、表面層及び硬弾性層より低硬度であることを特徴とするロール部材が提供される。
この場合、硬弾性層中に複数の軟弾性層が軸方向に延在することにより、ニップ部を形成するための変形が確保されるとともに軸方向全体にわたり広いニップ幅を確保することができる。
ここで、軟弾性層は、多孔質体から構成されることが好ましい。また、軟弾性層は、ASKER C 5〜20(SRIS 0101)の範囲の硬度を有することが好ましい。さらに、被押圧部材と接触する表面層は、フッ素ゴムまたはフッ素樹脂から構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明が適用される定着装置によれば、トナー像の乱れを防止するとともに、長期にわたり、トナー像を良好に定着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について、図面に基づき説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを表すものではない。
(画像形成装置)
初めに、画像形成装置について説明する。
図1は、画像形成装置100を説明するための概略構成図である。図1には、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置100が示されている。図1に示された画像形成装置100は、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト145に順次転写(一次転写)させる一次転写部110と、中間転写ベルト145上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部120と、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置160と、を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部140を有している。
【0021】
本実施の形態において、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム111の周囲に、これらの感光体ドラム111を帯電する帯電器121と、感光体ドラム111上に静電潜像を書込むレーザ露光器141(図1中、露光ビームを符号Bmで示す)と、各色成分トナーが収容されて感光体ドラム111上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器144と、感光体ドラム111上に形成された各色成分トナー像を一次転写部110にて中間転写ベルト145に転写する一次転写ロール146と、感光体ドラム111上の残留トナーが除去されるドラムクリーナ117と、等の電子写真用デバイスが順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは、中間転写ベルト145の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0022】
中間転写体である中間転写ベルト145は、ポリイミドあるいはポリアミド等の樹脂にカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の無端ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は、10Ωcm〜1014Ωcmとなるように形成されており、その厚さは、例えば、0.1mm程度に構成されている。中間転写ベルト145は、各種ロールによって、図1に示すB方向に所定の速度で循環駆動(回動)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモーター(図示せず)により駆動されて中間転写ベルト145を回動させる駆動ロール131と、各感光体ドラム111の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト145を支持する支持ロール132と、中間転写ベルト145に対して一定の張力を与えると共に中間転写ベルト145の蛇行を防止する補正ロールとして機能するテンションロール133と、二次転写部120に設けられるバックアップロール125と、中間転写ベルト145上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニングバックアップロール134と、を有している。
【0023】
一次転写部110は、中間転写ベルト145を挟んで感光体ドラム111に対向して配置される一次転写ロール146により構成されている。一次転写ロール146は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層とで構成されている。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層は、例えば、カーボンブラック等の導電剤を配合したアクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)とスチレン−ブタジエンゴム(SBR)とエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)とのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が10Ωcm〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、一次転写ロール146は、中間転写ベルト145を挟んで感光体ドラム111に圧接配置され、さらに一次転写ロール146には、トナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体ドラム111上のトナー像が中間転写ベルト145に順次、静電吸引され、中間転写ベルト145上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0024】
二次転写部120は、中間転写ベルト145のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール122と、バックアップロール125と、によって構成される。バックアップロール125は、EPDMゴムからなる内層部とカーボンを分散したEPDM及びNBRのブレンドゴムからなるチューブ状の表面層とから構成されている。そして、その表面抵抗率が10Ω/□〜1010Ω/□となるように形成され、硬度は、例えば70°(アスカーC)に設定されている。このバックアップロール125は、中間転写ベルト145の裏面側に配置されて二次転写ロール122の対向電極をなし、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール126が当接配置されている。
【0025】
一方、二次転写ロール122は、シャフトと、シャフトの周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層と、で構成されている。シャフトは、例えば、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムから形成され、体積抵抗率が10Ωcm〜10Ωcmのスポンジ状の円筒ロールである。そして、二次転写ロール122は、中間転写ベルト145を挟んでバックアップロール125に圧接配置され、さらに二次転写ロール122は接地されてバックアップロール125との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部120に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
【0026】
また、中間転写ベルト145の二次転写部120の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト145上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト145の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ135が接離自在に設けられている。一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)142が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ143が配設されている。この基準センサ142は、中間転写ベルト145の裏側に設けられた所定のマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部140からの指示により、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0027】
さらに、本実施の形態の画像形成装置100では、用紙搬送系として、用紙Pを収容する用紙トレイ150と、この用紙トレイ150に集積された用紙Pを所定のタイミングで取り出して搬送するピックアップロール151と、ピックアップロール151により繰り出された用紙Pを搬送する搬送ロール152と、搬送ロール152により搬送された用紙Pを二次転写部120へと送り込む搬送シュート153と、二次転写ロール122により二次転写された後に搬送される用紙Pを定着装置160へと搬送する搬送ベルト155と、用紙Pを定着装置160に導く定着入口ガイド156と、を備えている。
【0028】
次に、本実施の形態が適用される画像形成装置100の基本的な作像プロセスについて説明する。
図1に示す画像形成装置100では、画像読取装置(IIT)(図示せず)やパーソナルコンピュータ(PC)(図示せず)等から出力される画像データは、画像処理装置(IPS)(図示せず)により所定の画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kによって作像作業が実行される。IPSでは、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の所定の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器141に出力される。
【0029】
レーザ露光器141では、入力された色材階調データに応じて、例えば、半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各々の感光体ドラム111に照射している。画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの各感光体ドラム111では、帯電器121によって表面が帯電された後、このレーザ露光器141によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0030】
画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kの感光体ドラム111上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム111と中間転写ベルト145とが当接する一次転写部110において、中間転写ベルト145上に転写される。より具体的には、一次転写部110において、一次転写ロール146により、中間転写ベルト145の基材に対し、トナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト145の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0031】
トナー像が中間転写ベルト145の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト145は移動してトナー像が二次転写部120に搬送される。トナー像が二次転写部120に搬送されると、用紙搬送系では、トナー像が二次転写部120に搬送されるタイミングに合わせてピックアップロール151が回転し、用紙トレイ150から所定サイズの用紙Pが供給される。ピックアップロール151により供給された用紙Pは、搬送ロール152により搬送され、搬送シュート153を経て二次転写部120に到達する。この二次転写部120に到達する前に、用紙Pは一旦停止され、トナー像が担持された中間転写ベルト145の移動タイミングに合わせてレジストロール(図示せず)が回転することで、用紙Pの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0032】
二次転写部120では、中間転写ベルト145を介して、二次転写ロール122がバックアップロール125に押圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Pは、中間転写ベルト145と二次転写ロール122との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール126からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール122とバックアップロール125との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト145上に担持された未定着トナー像は、二次転写ロール122とバックアップロール125とによって押圧される二次転写部120において、用紙P上に一括して静電転写される。
【0033】
その後、トナー像が静電転写された用紙Pは、二次転写ロール122によって中間転写ベルト145から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール122の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト155へと搬送される。搬送ベルト155では、定着装置160における最適な搬送速度に合わせて、用紙Pを定着装置160まで搬送する。定着装置160に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着装置160によって熱および圧力で定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部に搬送される。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト145上に残った残留トナーは、中間転写ベルト145の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール134および中間転写ベルトクリーナ135によって中間転写ベルト145上から除去される。
【0034】
(定着装置)
次に、定着装置160について説明する。
(第1の実施形態)
図2は、定着装置の第1の実施形態を説明するための概略構成図である。図2に示されたベルトニップ方式の定着装置160は、内部にハロゲンランプ45が設けられた第1の部材としての定着ロール401と、張架ロール53、リードロール54及び加圧ロール52に張架されたベルト部材としての加圧ベルト55と、定着ロール401と加圧ベルト55とが接触する部分の上流部に設けられ、加圧ベルト55を介して定着ロール401に押圧してニップ部Nを形成する第2の部材としての圧力補助ロール56と、から主要部が構成されている。加圧ロール52は加圧ベルト55を定着ロール401に圧接している。
【0035】
本実施の形態が適用される定着装置160において、第1の部材である定着ロール401は、金属製の円筒状のコア42と、その表面に形成された下地層43a及びトップコート層43bからなる弾性体層を有している。本実施の形態では、コア42はアルミニウムで形成され、外径62mm、長さ350mmである。下地層43aは、HTVシリコーンゴムにより形成され、厚さ1.5mm、硬度Hs35 JIS A(JIS K 6301)である。トップコート層43bは、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー(PFA)により形成され、厚さ30μmで鏡面状態に近い表面にコートされている。
【0036】
図2に示すように、定着ロール401は、モータ46により周方向(E)に回転駆動される。二次転写部120(図1)において、記録紙47の上にトナー像48が転写され、ニップ部Nに搬送された記録紙47は、ニップ部Nの定着ロール401に圧力補助ロール51が圧接する部分に侵入する。未定着のトナー像48は、加圧ベルト55に作用する圧力及びハロゲンランプ45によって定着ロール401を介して付与される熱により、記録紙47上に定着される。
【0037】
コア42の内部には、加熱源として出力1200wのハロゲンランプ45が配置されている。また、定着ロール401の表面には温度センサ50が配置され、この表面の温度を計測する。そして、温度センサ50の計測信号により、図示しない温度コントローラによってハロゲンランプ45がフィードバック制御されて、定着ロール401の表面が160℃に調節される。定着ロール401は、モータ46により周速度(V)270mm/secで回転する。
【0038】
本実施の形態が適用される定着装置160において、ベルト部材である加圧ベルト55は、厚さ75μm、幅300mmのポリイミド基材層の上に、厚さ40μmのPFAがスプレーコートされている。加圧ベルト55は、支持ロール52、53、54の周囲に約10kgfの張力で巻回されている。加圧ベルト55は、定着ロール401の回転に伴い、速度270mm/secで従動回転する。張架ロール53、54はステンレスにより構成され、その直径は、いずれも18mmである。
【0039】
加圧ロール52は、定着ロール401の回転方向(E)における圧力補助ロール51の下流側に設けられており、コイルスプリング57によって定着ロール401に約50kgfの荷重で押圧されている。これにより、定着ロール401の弾性層43に局部的に変形を生じさせている。加圧ロール52および圧力補助ロール51によって、加圧ベルト55が定着ロール401に圧接され、これらの配置により、加圧ベルト55の定着ロール401への巻付角度は約50°である。この場合ベルトニップの幅は約28mmとなる。
【0040】
次に、圧力補助ロール51について説明する。
本実施の形態が適用される定着装置160において、第2の部材である圧力補助ロール51は、定着ベルト55を介して、コイルスプリング56によって定着ロール401に接触荷重60kgfで押圧されている。圧力補助ロール51の長軸方向の長さは330mmである。接触面の幅は17mmであり、平均接触圧力は約1kgf/cmである。
本実施の形態では、圧力補助ロール51が、硬度が異なる3種類のゴム層により構成されていることにより、ニップ部Nにおける充分なニップ幅を確保できるとともに、ニップ部Nにおける空気の膨張や水蒸気の発生によるトナー像の乱れを防止し、長期にわたりトナー像を良好に定着させることができる。
【0041】
図3は、圧力補助ロール51の構造を説明するための断面概略図である。圧力補助ロール51は、芯金511と、芯金511の表面に形成された硬弾性層である内層512と、内層512の外周に形成された軟弾性層である中間層513と、最外層を形成する表面層514と、から主要部が構成されている。
【0042】
芯金511は、通常、金属材料により構成され、その種類は特に限定されない。本実施の形態では、芯金511はステンレスにより構成され、直径φ13mmである。
硬弾性層である内層512は、芯金511周辺の応力集中に耐えうる硬度を有し、定着ロール401に押圧される圧力補助ロール51が変形により破壊されることを防止する。内層512を構成するゴム材料の種類は、芯金511周辺の応力集中に耐え、且つ耐熱性を有するものであれば特に限定されないが、本実施の形態では、内層512はHTVシリコーンゴムにより構成されている。内層512の硬度は、芯金511周辺の応力集中に耐えうる硬度であれば特に限定されないが、本実施の形態では、内層512の硬度は、35Hs JIS A(JIS K 6301)である。内層512の厚さは、特に限定されないが、本実施の形態では、厚さ2mmである。
【0043】
軟弾性体層である中間層513は、他の2個のゴム層(内層512、表面層514)と比較して硬度が低く、定着ロール401に押圧される圧力補助ロール51の変形を大きくすることができる。中間層513を構成するゴム材料の種類は、圧力補助ロール51を大きく変形させ、且つ耐熱性を有するものであれば特に限定されないが、本実施の形態では、発泡シリコーンゴムにより構成されている。中間層513の硬度は、圧力補助ロール51が破壊されない範囲で変形を大きくすることができる硬度であれば特に限定されないが、通常、ASKER C 5〜50(SRIS 0101)、好ましくは、ASKER C 20〜30(SRIS 0101)である。本実施の形態では、中間層513の硬度は、ASKER C 25(SRIS 0101)である。また、中間層513を多孔質体(例えば、スポンジ、発泡ゴム)により構成することにより、中間層513をの硬度をより低くすることが可能となる。中間層513の厚さは、特に限定されないが、本実施の形態では、厚さ11mmである。
【0044】
最外層を形成する表面層514は、ニップ部Nにおいて部分的に発生する空気の膨張や水蒸気の圧力に抗する硬度を有することが必要である。表面層514の硬度は、特に限定されないが、本実施の形態では、硬度55Hs JIS A(JIS K 6301)である。表面層514を構成するゴム材料の種類は、ニップ部Nに発生する空気等の圧力に抗する硬度が得られ、且つ、離型性付与や潤滑を目的として用いられるシリコーンオイル等に対する耐油性、及び耐熱性を有するものであれば特に限定されないが、本実施の形態では、フッ素ゴムにより構成されている。表面層514の厚さは特に限定されないが、本実施の形態では、厚さ1mmである。
【0045】
本実施の形態では、圧力補助ロール51が、硬度が異なる3種類のゴム層により構成されていることに特徴を有するものである。特に、軟弾性層である中間層513の硬度(Hb)は、他の2個のゴム層の硬度(内層512の硬度(Ha)、表面層514の硬度(Hc))よりも小さいことが必要である(Ha、Hc>>Hb)。軟弾性層である中間層513の硬度が他の2個のゴム層よりも小さいことにより、圧力補助ロール51の変形が確保される。また、内層512の硬度(Ha)は表面層514の硬度(Hc)より大きいこと(Ha>Hc)が好ましい。
【0046】
次に、圧力補助ロールの他の実施形態について説明する。
図4は、圧力補助ロールの他の実施形態について説明するための図である。図4(a)は、長軸方向の構造を示す概略断面図であり、図4(b)は、長軸方向に直行する方向の構造を示す概略断面図である。図4(a)に示すように、圧力補助ロール61は、芯金611と、芯金611の表面に形成された硬弾性層である内層612と、所定の径を有する複数の軟弾性層から形成され、内層612中を長軸方向に延在する中間層613と、最外層を形成する表面層614と、から主要部が構成されている。本実施の形態では、圧力補助ロール61の長軸方向の長さは330mmである。また、図4(b)に示すように、硬弾性層である内層612中に16個の軟弾性層からなる中間層613が形成され、芯金611外周を取り囲むように配置されている。
本実施の形態では、圧力補助ロール61の長軸方向の長さが330mmである。また、圧力補助ロール61の接触荷重は60kgfに設定されており、接触面の幅が17mmであることから、平均接触圧力は、約1kgf/cmである。
【0047】
芯金611は、前述した圧力補助ロール51の場合と同様に、通常、金属材料により構成され、金属材料の種類は特に限定されない。本実施の形態では、芯金611はステンレスにより構成され、直径φ15mmである。
硬弾性層である内層612は、圧力補助ロール61が変形による応力集中に耐え得る強度を有し、且つ耐熱性を有するゴム材料を用いて形成される。本実施の形態では、内層612はHTVシリコーンゴムにより構成されている。内層612の硬度は、本実施の形態では、ASKER C 30(SRIS 0101)である。内層612の厚さは、本実施の形態では、厚さ17.5mmである。
【0048】
軟弾性体層である中間層613は、内層612と比較して硬度が低く、内層612中を長軸方向に貫通するように設けられている。内層612中に複数の中間層613を設けることにより、圧力補助ロール61の形状変化が防止できるとともに、加圧変形による応力集中が抑制され、長軸方向全域にわたり、フラットなニップ部Nを確保することが可能となる。さらに、軟弾性体層である中間層613が容易に変形することにより、充分なニップ幅を得ることができる。
中間層613を構成するゴム材料の種類は特に限定されないが、本実施の形態では、発泡シリコーンゴムにより構成されている。中間層613の硬度は、本実施の形態では、ASKER C 10(SRIS 0101)である。また、中間層613の径は、特に限定されないが、本実施の形態では、径φ3mmである。
【0049】
表面層614の硬度は、特に限定されないが、本実施の形態では、硬度55Hs JIS A(JIS K 6301)である。表面層614を構成するゴム材料の種類は特に限定されないが、本実施の形態では、フッ素ゴムにより構成されている。尚、PFA等のフッ素樹脂を用いることもできる。表面層614の厚さは、本実施の形態では、厚さ30μmである。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、定着装置の第2の実施形態について説明する。
図5は、定着装置の第2の実施形態を説明するための概略構成図である。図5に示された定着装置170は、定着ベルトモジュール171と加圧ベルトモジュール172とで主要部が構成されている。定着ベルトモジュール171は、第1の部材として、内部に加熱部材としてのハロゲンランプ45aが配設され矢印A方向に回転する定着ロール501、内部にハロゲンランプ45bが配設された張架ロール59、同様に内部にハロゲンランプ45cが配設された張架ロール58、定着ロール501と張架ロール59と張架ロール58とに張架されて矢印D方向に従動回転する定着ベルト60を有している。
【0051】
一方、加圧ベルトモジュール172は、内部に加熱部材としてのハロゲンランプ45dが配設されたリードロール64、ベルト部材として加圧ロール62と張架ロール63及びリードロール64の3本のロールにより張架された加圧ベルト65、第2の部材として加圧ベルト65を介して定着ロール501に押圧される圧力補助ロール601により主要部が構成されている。そして、加圧ベルト65は、定着ロール501が矢印A方向へ回転するのに伴い、定着ロール501に従動して矢印F方向に回動する。
【0052】
定着ベルトモジュール171における定着ロール501は、アルミニウムで形成され、外径100mm、長軸方向の長さ390mmである。定着ロール501は、モータ46によって周方向Aに回転駆動される。コア42の内部には、加熱源として出力1000wのハロゲンランプ45aが配置されている。定着ロール501の表面には温度センサ50aが配置され、表面温度を計測する。尚、温度センサ50aの計測信号に基づき温度コントローラ(図示せず)によってハロゲンランプ45aがフィードバック制御されて、定着ロール501の表面は170℃に調節されている。
【0053】
定着ベルト60は、厚さ75μm、幅300mmのポリイミド基材層の上に、厚さ200μmのシリコーンゴム弾性層(硬度:20Hs JIS A)、厚さ30μmのPFA離型層が形成されている。定着ベルト60は、定着ロール501及び張架ロール58,59によって張架され、約15kgfの張力で巻回されている。
張架ロール58,59の内部には、それぞれ、加熱源として出力1000wのハロゲンランプ45b,45cが配置されている。また、張架ロール58,59の表面には、それぞれ、温度センサ50b,50cが配置され、表面温度を計測する。尚、温度センサ50b,50cの計測信号に基づき温度コントローラ(図示せず)によってハロゲンランプ45b,45cがフィードバック制御されて、温度センサ50b,50cの表面は170℃に調節されている。
定着ロール501は、モータ46により周速度(V)300mm/secで回転し、定着ロール501の回転により定着ベルト60は、速度300mm/secで従動回転する。
【0054】
加圧ベルトモジュール172における加圧ベルト65は、厚さ75μm、幅300mmのポリイミド基材層の上に、厚さ40μmのPFAがスプレーコートされている。加圧ベルト65は、張架ロール63、リードロール64及び加圧ロール62に張架され、約15kgfの張力で巻回されている。張架ロール63及びリードロール64は、ステンレスにより構成され、それぞれの直径は、25mm、25mmである。
加圧ロール62は、直径46mmのステンレス製芯金の外周に、厚さ2mmのシリコーンゴム弾性層(硬度:45Hs JIS A)が被覆されている。
【0055】
図5に示すように、加圧ロール62は、定着ロール501の回転方向(A)における圧力補助ロール601の下流側に設けられ、コイルスプリング67により加圧ベルト65及び定着ベルト60を介して定着ロール501に約100kgfの荷重で押圧されている。定着ロール501への加圧ベルト65の巻付角度は約50゜である。この場合、ベルトニップの幅は約45mmとなる。
【0056】
本実施の形態が適用される定着装置170では、圧力補助ロール601が、硬度が異なる3種類のゴム層により構成されている。
即ち、圧力補助ロール601は、長軸方向の長さ390mmであり、ステンレス製の芯金は直径φ16mmである。圧力補助ロール601は、芯金の外周に形成された厚さ4mmの硬弾性層、硬弾性層の外周に設けられた厚さ22mmの軟弾性体層、最外周を被覆する厚さ1.5mmの表面層、から主要部が構成されている。
【0057】
本実施の形態における圧力補助ロール601において、硬弾性層は、硬度45Hs JIS AのHTVシリコーンゴムにより形成されている。また、軟弾性層は、硬度 ASKER C 30のシリコーンゴムにより形成されている。さらに、表面層は、硬度55Hs JIS Aのシリコーンゴムにより形成されている。尚、表面層の外周には、厚さ30μmのフッ素ゴムがコーティングされている。
図5に示すように、圧力補助ロール601は、コイルスプリング66により加圧ベルト65及び定着ベルト60を介して、定着ロール501に約80kgfの荷重で押圧されている。接触面の幅が20mmであり、平均接触圧力は、約1kgf/cmである。
【0058】
(第3の実施形態)
次に、定着装置の第3の実施形態について説明する。
図6は、定着装置の第3の実施形態を説明するための概略構成図である。図6に示した定着装置190は、加熱手段として発熱源が押圧された定着ベルトを用い、加圧手段として加圧ロールを用いている。
図6に示すように、定着装置190は、記録用紙47のトナー像48担持面側に配置されたベルト部材としての定着ベルト92と、定着ベルト92の内側にホルダ85に保持されたセラミックヒータ82と、が配設され、セラミックヒータ82からニップ部Nに熱を供給するように構成している。セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がほぼフラットに形成され、定着ベルト92を介して加圧ロール91に押圧される状態で配置され、ニップ部Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。尚、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、摺擦部材の一例としての低摩擦シート88が配設されている。
【0059】
定着ベルト92は、原形が円筒形状に形成された無端ベルトであり、厚さ75μm、幅300mmのポリイミド基材層の上に、厚さ200μmのシリコーンゴム弾性層(硬度:20Hs JIS A)、厚さ30μmのPFA離型層が形成されている。
尚、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため低摩擦シート88が配設されている。
【0060】
一方、加圧ロール91は定着ベルト92に対向するように配置され、駆動モータ(図示せず)により矢印D方向に回転する。尚、加圧ロール91の回転により、定着ベルト92が従動回転する。
本実施の形態では、加圧ロール91が、硬度が異なる3種類のゴム層により構成されていることにより、ニップ部Nにおける充分なニップ幅を確保できるとともに、ニップ部Nにおける空気の膨張や水蒸気の発生によるトナー像の乱れを防止し、長期にわたりトナー像を良好に定着させることができる。
【0061】
即ち、加圧ロール91は、芯金911と、芯金911の表面に形成された硬弾性層である内層912と、内層912の外周に形成された軟弾性層である中間層913と、最外層を形成する表面層914と、から主要部が構成されている。加圧ロール91を構成する3種類のゴム層の硬度は、特に、軟弾性層である中間層913の硬度(Hb)は、他の2個のゴム層の硬度(内層912の硬度(Ha)、表面層914の硬度(Hc))よりも小さくなるように形成されている(Ha、Hc>>Hb)。軟弾性層である中間層913の硬度が他の2個のゴム層よりも小さいことにより、加圧ロール91の変形が確保される。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例により本実施の形態をさらに具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
前述した第1の実施形態が適用される定着装置160を用いて画像出力を行い、画像ズレの発生を確認した。画像出力条件は、像ズレが起こりやすいストレス条件とした。具体的には、A4サイズの記録紙(王子製紙株式会社製OKトップコートN(127.9gsm)を高温高湿条件(30℃×85%)で調湿し、この記録紙に、画像ズレの目視検知が最も容易なサイアン単色(濃度100%)のベタ画像トナーを転写した。転写したベタ画像トナーを定着装置160により定着したときの像ズレの有無を、目視/ルーペで判断した。
その結果、記録紙50枚を通紙した場合の像ズレの発生頻度は0枚であり、像ズレの発生が防止された。
【0063】
また、定着装置160の圧力補助ロール51の維持性テストを、上述した使用状態での空回しを行うことにより評価した。
その結果、圧力補助ロール51は、60時間の空回しにおいて破壊しなかった。これに対し、比較のため、芯金(直径:φ13)の周囲に弾性層である内層を設けずに、2層構造とした圧力補助ロール(軟弾性層(厚さ:13mm)/表面層(厚さ:1mm))を、同様な条件で空回しを行ったところ、約5時間で破壊した。
これにより、圧力補助ロール51の構造を、硬度が異なる3種類のゴム層から構成することにより、定着装置160の長寿命化が図れることが分かる。
【0064】
(実施例2)
前述した第2の実施形態が適用される定着装置170を用いて、実施例1と同様な条件で画像出力を行い、画像ズレの発生を確認した。
その結果、記録紙50枚を通紙した場合の像ズレの発生頻度は0枚であり、像ズレの発生が防止されることがわかる。
また、実施例1と同様に圧力補助ロール601の維持性テストを行い、実施例1と同様に、圧力補助ロール601は、60時間の空回しにおいて破壊しなかった。
尚、内層を設けずに2層構造とした圧力補助ロールを同様な条件で空回しを行ったところ、約3時間で破壊した。
【0065】
以上説明したとおり、本実施の形態が適用される定着装置160、170は、硬度が異なる3層のゴム層からなる圧力補助ロール51、601を用いることにより、圧力補助ロール51、601の長寿命化が図れ、且つ、空気や水蒸気に起因する画像欠陥を防止することが可能となる。
尚、本実施の形態においては、定着ロールとエンドレスベルトの組み合わせからなる定着装置160、170について説明したが、対向する部材の形態によらずに適用することができる。例えば、定着ロールに張架されたエンドレスベルトと、そのエンドレスベルトとニップを形成するエンドレスベルトとを有する、いわゆる2ベルト構成の定着装置であっても、同様の効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】画像形成装置を説明するための概略構成図である。
【図2】定着装置の第1の実施形態を説明するための概略構成図である。
【図3】圧力補助ロールの構造を説明するための断面概略図である。
【図4】圧力補助ロールの他の実施形態について説明するための図である。
【図5】定着装置の第2の実施形態を説明するための概略構成図である。
【図6】定着装置の第3の実施形態を説明するための概略構成図である。
【図7】従来のベルトニップ方式の定着装置を説明するための図である。
【図8】定着装置における加圧力分布を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
1Y,1M,1C,1K…画像形成ユニット、51,61,106,601…圧力補助ロール、52,62,91,103…加圧ロール、55,65,102…加圧ベルト、100…画像形成装置、101,401,501…定着ロール、111…感光体ドラム、117…ドラムクリーナ、120…二次転写部、121…帯電器、141…レーザ露光器、144…現像器、145…中間転写ベルト、146…一次転写ロール、160,170,190…定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被押圧部材と、前記被押圧部材を押圧して記録媒体が通過するニップ部を形成するロール部材と、を備える定着装置であって、
前記ロール部材は、
前記被押圧部材と接触する表面層と、
金属製芯金の周囲に形成された硬弾性層と、
前記表面層及び前記硬弾性層より低硬度の軟弾性層と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ロール部材は、前記軟弾性層が、前記表面層と前記硬弾性層との間に設けられている3層構造を有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記ロール部材は、前記軟弾性層が多孔質体により構成されることを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項4】
前記ロール部材は、軸方向に対して複数の前記軟弾性層が所定の間隔で配置された構造を有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項5】
前記被押圧部材は、
回動部材と、
前記回動部材に接触しながら移動するベルト部材と、
を有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項6】
前記被押圧部材は、
加熱源により加熱される被加熱部材と、
前記被加熱部材に接触しながら移動するベルト部材と、
を有することを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項7】
記録媒体に転写されたトナー像を定着させる定着装置であって、
加熱源を備えた被押圧部材と、
前記被押圧部材に接触しながら移動するベルト部材と、
前記ベルト部材を介して前記被押圧部材を押圧しつつ回転し、前記記録媒体が通過するニップ部を形成するロール部材と、を備え、
前記ロール部材は、
前記ベルト部材と接触する表面層と、
金属製芯金の周囲に形成された硬弾性層と、
前記表面層及び前記硬弾性層の硬度より低硬度を有する軟弾性層と、
を有することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
前記軟弾性層が、前記表面層と前記硬弾性層との間に設けられていることを特徴とする請求項7記載の定着装置。
【請求項9】
前記軟弾性層は、ASKER C 5〜50(SRIS 0101)の範囲の硬度を有することを特徴とする請求項7記載の定着装置。
【請求項10】
前記被押圧部材が、当該被押圧部材と前記ベルト部材との間に前記記録媒体が通過するニップ部を形成する定着ロールであり、
前記ロール部材が、前記ベルト部材の内側に配置され、前記ニップ部の上流側に設けられた圧力補助ロールであることを特徴とする請求項7記載の定着装置。
【請求項11】
前記被押圧部材は、
回動する定着ロールと、
前記定着ロールを含む複数個のロールにより張架された定着ベルトと、
前記定着ベルト部材と接触しつつ移動し、当該定着ベルトとの間に前記記録媒体が通過するニップ部を形成する加圧ベルトと、
を有することを特徴とする請求項7記載の定着装置。
【請求項12】
画像形成装置に用いられる定着装置であって、
回動部材と、
前記回動部材に接触しながら従動回転するベルト部材と、
前記ベルト部材の内側に配置され、当該ベルト部材を前記回動部材に圧接させて当該回動部材と当該ベルト部材との間に前記記録媒体が通過するニップ部を形成する圧力部材と、を備え、
前記回動部材は、金属製芯金の周囲に形成された硬度が異なる少なくとも3個のゴム層を有し、
前記回動部材の前記ベルト部材と接触する表面と前記金属製芯金との間に、他の2個の前記ゴム層より低硬度の軟弾性層を有することを特徴とする定着装置。
【請求項13】
前記回動部材は、
前記金属製芯金の外周面を覆う硬弾性層と、
前記ベルト部材と接触する表面層と、
を有することを特徴とする請求項12記載の定着装置。
【請求項14】
前記回動部材は、
前記金属製芯金の表面に形成された硬弾性層と、
前記硬弾性層上に形成された前記軟弾性層と、
前記軟弾性層上に形成され、前記ベルト部材と接触する表面層と、が
順番に積層された3層構造を有することを特徴とする請求項12記載の定着装置。
【請求項15】
前記圧力部材は、前記ニップ部に熱を供給する発熱源を有することを特徴とする請求項12記載の定着装置。
【請求項16】
定着回転体を押圧してニップ部を形成するゴムロールであって、
長尺状の金属製芯金と、
前記金属製芯金の周囲に形成された硬弾性層と、
前記定着回転体と接触する表面層と、
前記表面層及び前記硬弾性層より低硬度の軟弾性層と、
を有することを特徴とするゴムロール。
【請求項17】
前記軟弾性層は、前記硬弾性層の周囲に積層されることを特徴とする請求項16記載のゴムロール。
【請求項18】
前記軟弾性層は、前記硬弾性層中に配置されることを特徴とする請求項16記載のゴムロール。
【請求項19】
前記軟弾性層は、シリコーンゴムの多孔質体により構成されることを特徴とする請求項16記載のゴムロール。
【請求項20】
前記表面層上にフッ素ゴム又はフッ素樹脂からなる被覆層を有することを特徴とする請求項16記載のゴムロール。
【請求項21】
表面層と、
金属製芯金の周囲に形成された硬弾性層と、
前記硬弾性層を軸方向に貫通するように所定の間隔で配置された複数の軟弾性層と、を有し、
前記軟弾性層は、前記表面層及び前記硬弾性層より低硬度であることを特徴とするロール部材。
【請求項22】
前記軟弾性層は、多孔質体から構成されることを特徴とする請求項21記載のロール部材。
【請求項23】
前記軟弾性層は、ASKER C 5〜20(SRIS 0101)の範囲の硬度を有することを特徴とする請求項21記載のロール部材。
【請求項24】
前記表面層は、フッ素ゴムまたはフッ素樹脂から構成されることを特徴とする請求項21記載のロール部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−251620(P2006−251620A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70648(P2005−70648)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】