説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】
コストアップを招くことなく、定着シャッタが閉じたときに対向側の搬送ガイドの搬送面を傷つけることのない定着装置を提供する。
【解決手段】
定着装置の定着シャッタ23は複数の突起24を有し、突起24は、定着シャッタ23が閉じた際に、定着入り口ガイド30の非通紙面32に対向する位置に配設される。定着入り口ガイド30と定着シャッタ23とが対向した際、定着入り口ガイド30の通紙面と定着シャッタ23との間、及び突起24と定着入り口ガイド30の非通紙面32との間にクリアランスが形成される。通紙面と開閉シャッタとの間のクリアランスは、突起24と定着入り口ガイド30の非通紙面32との間のクリアランスよりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた画像形成装置に設けられる定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の定着装置を備える画像形成装置では、プロセスカートリッジ着脱やジャム処理時にユーザが定着装置の内部機器に触れないために、定着シャッタを設けているものがある。たとえば特許文献1の定着装置の場合、画像形成装置本体に、画像形成装置内部にアクセスするための開閉部材を有し、この開閉部材との開閉に連動して回転する定着シャッタが設けられている。転写材搬送時には定着シャッタを開けて搬送路を確保し、非搬送時においては、定着シャッタを閉じ、ジャム処理時にユーザが定着装置内の定着フィルムおよび加圧ローラに触れないようにしている。
【0003】
定着シャッタは閉じたときに非通紙領域にあるストッパ部に突き当たり、閉じた位置が決まる。そのとき定着シャッタの通紙領域範囲は対向側の搬送ガイドに突き当たらないようにクリアランスが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−323822(図2、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記定着シャッタを備える従来の定着装置においては、定着シャッタが閉じた時に外力によって定着シャッタがたわんだり、定着シャッタの部品自体の反りなどが生じる場合がある。このため、通紙領域内で対向側の搬送ガイドに当接して、搬送ガイドの搬送面を傷つけてしまう場合がある。一方、定着シャッタの部品精度を上げて反りを防いだり、部品自体の剛性をあげることによりこれらは回避できるが、これでは定着装置及び画像形成装置のコストアップを招いてしまう。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、コストアップを招くことなく、開閉部材が閉じたときに対向側のガイド手段の搬送面を傷つけることを防止できる定着装置、及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る代表的な構成は、記録媒体に形成されたトナー像を加熱定着させる定着手段と、前記記録媒体の搬送経路に設けられて、前記定着手段に対して搬入又は搬出される前記記録媒体をガイドする、平面部及び前記平面部に突設されて前記記録媒体が当接する複数の搬送リブを備えたガイド手段と、前記ガイド手段に対向する位置であって画像形成装置の本体に設けられたドアの開閉と連動して前記記録媒体の前記搬送経路を開閉する、回動可能な開閉部材とを有する定着装置であって、前記開閉部材は複数の開閉部材側リブを有し、前記開閉部材側リブは、前記開閉部材が閉じた際に、前記ガイド手段の前記平面部に対向する位置に配設されて、前記ガイド手段と前記開閉部材とが対向した状態において、前記搬送リブと前記開閉部材との間、及び前記開閉部材側リブと前記ガイド手段の前記平面部との間にそれぞれクリアランスが形成され、前記搬送リブと前記開閉部材との間の前記クリアランスが、前記開閉部材側リブと前記ガイド手段の前記平面部との間の前記クリアランスよりも大きくなるように形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、開閉部材定着に複数の開閉部材側リブを設け、搬送リブの先端部から開閉部材までの距離が、開閉部材側リブの先端部からガイド手段の平面部までの距離よりも長くなるように形成されている。そのため、開閉部材がたわんでも開閉部材側リブがガイド部材の平面部非通紙面に突き当たる。このとき、搬送リブの先端部と開閉部材との間には依然間隙部が形成されているので、開閉部材が搬送リブを傷つけることはない。しかも、その状態で開閉部材は開閉部材本来の機能を果たすことができる。
【0009】
また、開閉部材側リブを複数有しているため、開閉部材がたわんだときに複数の点で支えることができるので、開閉部材自体の長手方向の剛性が弱くても、開閉部材自体の機能をはたすことが可能である。
【0010】
また、開閉部材は、たわみやソリを防ぐために金属製の補強ステーなどを設けたり、部品精度を上げて反りを防いだりする必要がなく、安価なモールド材料等のみで作ることが可能となる。従って、コストアップを招くことなく、開閉部材が閉じたときに対向側のガイド手段の搬送面を傷つけることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の一例であるレーザービームプリンタの概略構成を示す断面図である。
【図2】図1の定着装置18近傍を拡大した図である。
【図3】定着入り口ガイドの詳細図である。
【図4】定着入り口ガイド及び定着シャッタの詳細図である。
【図5】ストッパ部の詳細図である。
【図6】定着入り口ガイド及び定着シャッタの詳細図である。
【図7】クリアランスC1の詳細図(A−A断面図)である。
【図8】クリアランスC2の詳細図(B−B断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<画像形成装置の全体構成>
本発明に係る画像形成装置の一の実施形態について、図を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る定着装置を備える画像形成装置の概略断面を示す。同図において、画像形成装置1は画像情報に応じて発信されるレーザー光を照射及び走査する光学手段と走査手段を有するスキャナユニット2を有し、10は主たる画像形成手段を内蔵したプロセスカートリッジである。このプロセスカートリッジ10は、像担持体である感光ドラム3と、半導体性のゴムからなるローラ帯電器4とを備える。さらに、プロセスカートリッジ10は、トナー6を感光ドラム3上に転移させて静電潜像を現像する現像装置5及び廃トナーを感光ドラム3上から除去するクリーナーを一体的に組み込んで構成されている。
【0014】
上記プロセスカートリッジ10内の感光ドラム3が回転駆動され、ローラ帯電器4によって感光ドラム3の表面が一様に帯電された後、スキャナユニット2で発信されたレーザー光が感光ドラム3の表面上に静電潜像が形成される。そして、静電潜像は、現像装置5によりトナーが供給されてトナー像として可視像化される。
【0015】
一方、給紙カセット11内には転写材(記録媒体)12が複数蓄積されている。転写材12はたとえば坪量64〜216gの紙であり、給紙ローラ13によって1枚ずつ分離されて給紙される。給紙された転写材12は上下ガイド14に沿って一対のレジストローラ15に搬送される。レジストローラ15は、転写材12が来るまで停止しており、これに転写材12の先端が突き当たることによって該転写材12の斜行を補正する。
【0016】
ついで、レジストローラ15は、感光ドラム3上に形成されたトナー像の先端と同期するように転写材12を転写部へと搬送する。尚、このレジストローラ15の近傍には不図示の給紙センサーが設置されており、該給紙センサーは通紙状態やジャム、転写材12の長さを検知する。
【0017】
上述のようにして転写部に搬送された転写材12は、転写ローラ7によってトナーと逆極性の電荷を転写材12の裏側から与えられ、感光ドラム3上に形成されたトナー像が該転写材12に転写される。トナー像の転写を受けた転写材12は、搬送ガイド16に沿って定着装置(定着手段)18に搬送され、該定着装置18は転写材12上の未定着トナー像を熱及び圧力で転写材12上に定着して記録画像を形成する。そして、画像定着後の転写材12は、排紙トレイ20に排出される。ドア17は搬送ジャムなどが発生したときに画像形成装置1の内部にアクセスするために搬送経路の途中に設けられている。
【0018】
<定着装置>
次に上記定着装置18の詳細を図2に基づいて説明する。
【0019】
図2は定着装置18の概略構成を示す断面図である。この定着装置18は、定着体としての定着フィルム27と、加圧体としての加圧ローラ28と、定着フィルムの加熱源としての定着体用加熱手段であるヒータ(セラミックヒータ)25とを備える。さらに、定着装置18は、ヒータの温度を検知する温調サーミスタ26と、転写材を定着手段へとガイドするガイド手段として定着入り口ガイド(ガイド手段)30を備えている。また、定着入り口ガイド30の対向側には開閉部材としての定着シャッタ(開閉部材)23を有している。この定着シャッタ23は、定着装置18の入り口付近、即ち、転写材12が搬送ガイド16に沿って定着装置18に搬入される箇所に回動可能に設けられている。
【0020】
定着フィルム27はたとえばポリイミド、SUSなどの無端筒状薄板からなり、外径をたとえば20mm、厚み60μmとして低熱容量で昇温の早い構成となっている。そして離型性を付与するために、表面には20μmのフッ素樹脂からなる離型層が被覆されている。
【0021】
加圧ローラ28はたとえば鉄、ステンレススチール、等の金属製の芯金と耐熱性を有するシリコンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金を被覆した弾性部材とからなる。
【0022】
定着入り口ガイド30は、モールド材料等で形成されている。図3に示す通り、この定着入り口ガイド30は、略平面状の非通紙面(平面部)32、及び、この非通紙面32に複数突設された通紙面(搬送リブ)31を有する。通紙面31はそれぞれ平行に配設されて櫛歯状に形成されている。この通紙面31には、転写材12が当接し長手方向に沿って搬送される。これらの通紙面31は、定着入り口ガイド30が定着シャッタ23に対向した際に、後述する基板部29に対向する位置に設けられている。
【0023】
図4に示す、定着シャッタ23も、モールド材料等で形成されている。この定着シャッタ23は、本体が細長い形状に形成され、平面状の基板部29に、複数の突起(開閉部材側リブ)24が突設されている。後述するとおり、これらの突起24は、定着シャッタ23が定着入り口ガイド30に対向した際に、定着入り口ガイド30の非通紙面32に対向する位置にそれぞれ設けられている。また、この突起24は、定着入り口ガイド30の通紙面31近傍に設けられていることが望ましい。
【0024】
なお、基板部29に対する突起24の高さ方向大きさは、非通紙面32に対する通紙面31の高さ方向大きさよりも大きく形成されている。
【0025】
また、図5に示す通り、定着シャッタ23の本体の両端部近傍には、板状のストッパ部35が両端方向に突設されている。なお、このストッパ部35は、転写材12が通過しない領域(非通紙領域)に設けられている。
【0026】
<定着装置における、定着シャッタの動作>
次に、この定着装置18における、定着シャッタ23の動作について説明する。
【0027】
まず、画像形成装置1が画像形成動作を行っているとき、トナー画像が転写された転写材12は、定着装置18に送られる。転写材12は、定着装置18で加熱定着されることにより、トナー画像が転写材12に半永久的に定着される。定着ニップを抜けた転写材12は搬送ガイド33に沿って排紙ローラ34により排紙トレイ20に排出される。
【0028】
そして、転写材搬送時は、定着装置18は、図2の定着シャッタ23を実線にて示すように開けて搬送路を確保する。
【0029】
一方、紙詰まり等のジャム処理時においては、ユーザは図1に示す画像形成装置1のドア17を開き、搬送経路上のジャム紙にアクセスする。このとき、定着装置18は、ドア17が開くのと連動し、定着シャッタ23を図2に示す破線にて示すように閉じる。これにより、定着装置18は、ジャム処理時にユーザが定着フィルム27および加圧ローラ28を触れないようにしている。ユーザがドア17を元の位置に閉じると、定着シャッタ23は連動して開いた位置に戻る。
【0030】
図6に示すとおり、定着シャッタ23が閉じたとき、非通紙領域にあるストッパ部35は定着入り口ガイド30の一部に突き当たり、定着シャッタ23の閉じた位置が決まる。このとき、図7に示すとおり、定着シャッタ23の転写材12が通過する領域(通紙領域)の範囲内においては、クリアランスC1が形成される。このクリアランスC1は、定着入り口ガイド30の通紙面31と定着シャッタ23の基板部29との間にできた間隙部のことである。
【0031】
一方、図8に示すとおり、定着シャッタ23の通紙領域においては、クリアランスC2が形成される。このクリアランスC2は、突起24と定着入り口ガイド30の非通紙面32との間に形成された間隙部のことである。
【0032】
定着シャッタ23が外力等によりたわんだ場合、対向側の定着入り口ガイド30の非通紙面32に定着シャッタ23の突起24が突き当たる。この状態で、定着シャッタ23の回動は規制され、定着シャッタ23はそれ以上回動することは抑止される。
【0033】
ここで、前述の通り、基板部29に対する通紙面31の高さ方向大きさは、非通紙面32に対する通紙面31の高さ方向大きさよりも大きい。そのため、図7及び図8に示す通り、クリアランスC1の大きさとクリアランスC2の大きさは、C1>C2となるように形成されている。そのため、非通紙面32に突起24が突き当たった場合、通紙面31と基板部29との間には、依然、クリアランスC2が形成されている。そのため、通紙面31が定着シャッタ23に接触して傷つけられることはない。しかも、定着シャッタ23は依然開閉部材としての機能を果たすことができる。
【0034】
また、突起24は定着シャッタ23に複数設けられているので、定着シャッタ23がたわんだときに複数の点で支えることができる。これにより、定着シャッタ23自体の長手方向の剛性が弱くても定着シャッタ23本来の機能を果たすことが可能である。また、定着シャッタ23のたわみやソリを防ぐために金属製の補強ステーなどを設ける必要はなく、安価なモールド材料のみ定着シャッタ23を作ることが可能である。また、部品精度を上げて反りを防ぐ必要がなく、コストアップを招くことがない。
【0035】
また、通紙面31の高さ方向大きさは通紙面31の高さ方向大きさよりも大きく形成されているので、クリアランスC1,C2の大きさがC1>C2となる状態を容易に形成できる。
【0036】
また、非通紙面32に突起24が突き当たった状態で、定着シャッタ23の回動は規制されているため、定着シャッタ23が更にたわんでも通紙面31が傷つけられる事態を確実に防止できる。
【0037】
なお、本実施形態では定着シャッタ23を定着装置18の入り口付近に設けた例を示した。しかしこれに限られず、定着装置18の出口付近(定着装置18から転写材12が搬出される経路)に定着シャッタ23を設けてもよい。また、定着装置18の入り口付近、及び出口付近の双方に定着シャッタ23を設けてもよい。
【0038】
本実施形態ではモノクロレーザプリンタの定着装置を示した。しかしこれに限られず、カラーレーザプリンタなど他の画像形成装置に用いられる定着装置においても同様の効果が得られることはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
1‥‥‥画像形成装置
3‥‥‥感光ドラム
5‥‥‥現像装置
10‥‥‥プロセスカートリッジ
14‥‥上下ガイド
16‥‥搬送ガイド
17‥‥ドア
18‥‥定着装置
23‥‥定着シャッタ
24‥‥突起
27‥‥定着フィルム
28‥‥加圧ローラ
30‥‥定着入り口ガイド
31‥‥通紙面
32‥‥非通紙面
33‥‥搬送ガイド
34‥‥排紙ローラ
35‥‥ストッパ
C1‥‥通紙面とシャッタのクリアランス
C2‥‥非通紙面と突起のクリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に形成されたトナー像を加熱定着させる定着手段と、
前記記録媒体の搬送経路に設けられて、前記定着手段に対して搬入又は搬出される前記記録媒体をガイドする、平面部及び前記平面部に突設されて前記記録媒体が当接する複数の搬送リブを備えたガイド手段と、
前記ガイド手段に対向する位置であって画像形成装置の本体に設けられたドアの開閉と連動して前記記録媒体の前記搬送経路を開閉する、回動可能な開閉部材とを有する定着装置であって、
前記開閉部材は複数の開閉部材側リブを有し、
前記開閉部材側リブは、前記開閉部材が閉じた際に、前記ガイド手段の前記平面部に対向する位置に配設されて、
前記ガイド手段と前記開閉部材とが対向した状態において、前記搬送リブと前記開閉部材との間、及び前記開閉部材側リブと前記ガイド手段の前記平面部との間にそれぞれクリアランスが形成され、
前記搬送リブと前記開閉部材との間の前記クリアランスが、前記開閉部材側リブと前記ガイド手段の前記平面部との間の前記クリアランスよりも大きくなるように形成されたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記開閉部材側リブの高さ方向大きさは、前記搬送リブの高さ方向大きさよりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記開閉部材側リブが前記平面部に突き当たったときに、前記開閉部材の回動が規制されることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記開閉部材は、前記定着手段の入り口付近及び出口付近の少なくとも何れか一方に設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の定着装置。
【請求項5】
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
請求項1乃至4の何れか一つに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−170213(P2011−170213A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35532(P2010−35532)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】