説明

定着装置

【課題】非接触型温度センサーを用いて、加熱ローラの表面温度の測定を正確に行うことが可能な定着装置を提供する。
【解決手段】電磁誘導手段により電磁誘導加熱する定着装置であって、赤外線透過フィルタ541と、赤外線フィルタ541を透過した赤外線を検出する温度センサー544と、窓部を有し、赤外線フィルタ541が窓部に嵌合されるように赤外線透過フィルタ541と温度センサー544とを内蔵するケーシング545とを有する非接触型温度センサーユニット54を備え、ケーシング54における赤外線透過フィルタ541の近傍部分は、定着装置内の露点温度よりも高く、前記温度センサーの動作温度の上限を超えない温度範囲内のキュリー温度を有する感温磁性材料551で構成されており、非接触型温度センサーユニット54は、感温磁性材料551が電磁誘導手段により電磁誘導加熱される位置に配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファックス若しくはこれらの複合機等の画像形成装置において使用される定着装置に関し、特に、定着装置の温度センサーの測定精度を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置においては、消費電力の低減、ウォーミングアップ時間の短縮を図るため、電磁誘導加熱方式の定着装置が利用されるようになってきている。
電磁誘導加熱方式の定着装置は、電磁誘導発熱層を有し、回転可能な加熱ローラと、磁束を発生させる磁束発生装置とを備え、磁束発生装置から発生される磁束によって、加熱ローラの電磁誘導発熱層を発熱させることにより、加熱ローラを加熱する。
【0003】
電磁誘導加熱方式では、上記のように、磁束によって加熱ローラの電磁誘導発熱層が発熱して、加熱ローラが加熱されるので、加熱ローラの昇温が早く、ウォーミングアップ時間を短縮することができるとともに、発熱効率が良いので、加熱ローラの加熱に要する消費電力を低減することができる。
しかし、反面、電磁誘導発熱層は、熱容量が小さいため、加熱ローラの表面の温度分布が不均一になりやすく、加熱ローラの表面温度の変動に基づくトナーの定着不良(コールドオフセット、ホットオフセット等)を防ぐため、定着装置には、加熱ローラの表面温度を測定するための温度センサーが設けられ、温度センサーにより検知された表面温度に応じて、加熱ローラの加熱制御が行われている。
【0004】
加熱ローラの表面温度を検知する方法として、接触型温度センサーを用いる方法があるが、接触型温度センサーを用いると、加熱ローラの表面が傷つきやすく、傷ついた部分においてトナーの定着不良を招きやすいことから、加熱ローラと接触させることなく、表面温度の測定が可能な非接触型温度センサーを用いる方法が提案されている。
非接触型温度センサーは、二種類の金属又は半導体を接合した熱電対が、多数直列に接続されて構成されたものであり、加熱ローラが発熱することにより放射される赤外線を、赤外線透過フィルタへ透過させ、透過した赤外線を受光部(熱電対の温接点)で受光し、ゼーベック効果により熱電対の冷接点との間に発生する熱起電力を測定し、熱起電力の大きさに基づいて、加熱ローラの表面温度を算出する。
【0005】
非接触型温度センサーは、加熱ローラから放射される赤外線の入射を受けることができるように、加熱ローラと近接した位置に配置されるため、定着の際に加熱ローラにより加熱された用紙から発生する水蒸気が、非接触型温度センサーの赤外線透過フィルタと接触し、赤外線透過フィルタに結露が生じることがある。この結露の影響により、赤外線の受光部への入射が一部妨げられて、表面温度が、正常の場合よりも低く測定され、加熱ローラの加熱制御を正確に行えない。
【0006】
特許文献1には、非接触型温度センサーの赤外線透過フィルタの周囲に、ニクロム線等からなる加熱手段を設け、赤外線透過フィルタを温めることにより、赤外線フィルタに結露が生じるのを防止する技術が開示されている。
これにより、用紙から発生する水蒸気が、赤外線透過フィルタ近傍に達することがあっても、赤外線透過フィルタ面に結露が生じないようにすることができ、加熱ローラの表面温度を正確に測定することができる。
【特許文献1】特開平7−77891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、非接触型温度センサーまで加熱され、計測精度が低下するおそれがある。このため、加熱手段の出力制御を行う必要が生じて、処理が複雑になってしまうという問題がある。
又、加熱手段を設けることにより、装置構成が複雑になり、スペース効率が悪くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、非接触型温度センサーを用いた定着装置において、スペース効率を悪化させることなく、結露の発生を防止するとともに、計測精度を低下させることなく、加熱ローラの表面温度の測定を正確に行うことが可能な定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、電磁誘導手段により加熱ローラを電磁誘導加熱する定着装置であって、加熱ローラから放射される赤外線を検出する非接触型温度センサーユニットを備え、前記非接触型温度センサーユニットは、前記赤外線を透過させる赤外線透過フィルタと、前記赤外線フィルタを透過した赤外線を検出する温度センサーと、窓部を有し、前記赤外線フィルタが窓部に嵌合されるように前記赤外線透過フィルタと前記温度センサーとを内蔵するケーシングとを有し、前記ケーシングにおける前記赤外線透過フィルタの近傍部分は、定着装置内における露点温度よりも高く、前記温度センサーの動作温度の上限を超えない温度範囲内のキュリー温度を有する感温磁性材料で構成されており、前記非接触型温度センサーユニットは、前記感温磁性材料が、前記電磁誘導手段により電磁誘導加熱される位置に存在する状態で配されている。
【0010】
前記感温磁性材料のキュリー温度は、60℃以上100℃以下の範囲にあることとすることができる。
前記感温磁性材料は、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Cr合金、Cu−Ni合金、Mn−Pt合金の何れかにより構成されていることとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、上記構成を備えることにより、非接触型温度センサーユニットの赤外線透過フィルター近傍の部分の温度が、キュリー温度より低い場合に、電磁誘導手段により感温磁性材料が発熱するので、結露が生じるのを防止することができるとともに、感温磁性材料の発熱により上記近傍部分の温度が上昇して、キュリー温度以上になると磁束に対する透磁率が急激に低下し、発熱が抑制されるので、上記近傍の部分の温度を非接触型温度センサーユニットの動作温度の上限を超えないように制御することができる。
【0012】
従って、加熱手段を別途設けることなく、省スペースで、赤外線透過フィルタに結露が生じるのを防止できるとともに、非接触型温度センサーユニットが過熱して温度測定の精度が悪化するのを防止することができる。
ここで、前記ケーシング全体が、感温磁性材料で構成されていることとすることができる。
【0013】
これにより、ケーシング全体が、感温磁性材料で構成され、磁束を受けると、電磁誘導加熱により、非接触型温度センサーユニットの全体が一定温度まで、迅速に加熱されるので、非接触型温度センサーユニットの温度を安定化することができるので、内部温度の変動により、温度測定精度が低下するのを有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明する。
<構成>
図1は、本実施の形態における定着装置50を用いる画像形成装置100の全体の構成を示す断面概略図である。
図1に示すように、画像形成装置100は、画像プロセス部30、給送部40、定着部50および制御部60を備えており、ネットワーク(例えばLAN)と接続される。
【0015】
画像形成装置100は、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラーの画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成部分の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
(制御部60)
外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、光学部10の発光素子を駆動させるための駆動信号を生成する。
(光学部10)
レーザダイオードなどの発光素子を備え、制御部60からの駆動信号により、Y〜K色の画像形成のためのレーザ光Lを発し、感光体ドラム31Y〜31Kを露光走査させる。この露光走査により、帯電器32Y〜32Kにより帯電された感光体ドラム31Y〜31K上に静電潜像が形成され、形成された各静電潜像は、現像器33Y〜33Kにより現像されて感光体ドラム31Y〜31K上にY〜K色のトナー像が形成される。
(画像プロセス部30)
Y〜K色のそれぞれに対応する作像部30Y,30M,30C,30K、中間転写ベルト11などを備えている。
【0016】
(作像部30Y〜30K)
作像部30Yは、感光体ドラム31Y、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、一次転写ローラ34Y、感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナ35Yなどを備えており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。他の作像部30M〜30Kについても、作像部30Yと同様の構成になっている。
【0017】
作像された各色のトナー像は、一次転写ローラ34Yの静電力により中間転写ベルト11上に順次転写される。この際、各色の転写動作は、そのトナー像が中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わされるようにタイミングをずらして実行される。
中間転写ベルト11上に重ね合わされた各色トナー像は、中間転写ベルト11の回転により、図1の符合46で示す二次転写位置に移動する。
【0018】
中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラ12と従動ローラ13に張架されて矢印A方向に回転駆動される。
(給送部40)
記録シートとしての用紙Sを収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の用紙Sを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された用紙Sを二次転写位置46に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ対44と、二次転写ローラ45などを備えている。
【0019】
給送部40は、中間転写ベルト11上に重ね合わされた各色トナー像の移動タイミングに合わせて、用紙Sの基準位置を把握するタイミングローラ対44を介して用紙Sを二次転写位置46へ給送する。
二次転写位置46に給送された用紙Sは、回転する中間転写ベルト11と二次転写ローラ45の間に挟まれて搬送され、二次転写ローラ45の静電力により中間転写ベルト11上に重ね合わされた各色トナー像が一括して用紙S上に二次転写される。
(定着装置50)
図2は、図1に示す定着装置50の断面概略図の拡大図であり、図3は、定着装置50の部分断面斜視図である。
【0020】
図2及び図3に示すように、定着装置50は、磁束発生部53と、加熱ローラ51と、加圧ローラ52と、均熱ローラ56と、非接触型温度センサーユニット54と、温度制御装置55を備える。
なお、説明の便宜上、図2では、図3の上側ケーシング部301を省略している
(磁束発生部53)
加熱ローラ51に向けて周期的に変動する磁束を発生させて誘導加熱する機能部であり、図3に示すように、コイルボビンを兼ねる長尺な下側ケーシング部305と、この下側ケーシング部305の長手方向に延面する中央の左右の内壁に沿設された磁性体コア302、及び下側ケーシング部305の長手方向に延面する左右の内壁に沿設された2つの磁性体コア303と、磁性体コア302と左右のそれぞれの磁性体コア303に挟まれる領域において巻回された励磁コイル304と、磁性体コア303に跨設された複数の磁性体コア306と、下側ケーシング部305を封口する上側ケーシング部301とからなる。
【0021】
下側ケーシング部305は、樹脂などの絶縁材料からなる長尺なケーシング(以下、「絶縁ケーシング」という。)の下部を構成するものであり、その内部に励磁コイル304の巻回経路となる環状の溝部が配されている。
磁性体コア302、303は、加熱ローラ51の長手方向寸法に略対応した長さ寸法を有する長尺部材であり、磁性体コア302は、環状の溝部の内周面に、磁性体コア303は、下側ケーシング部305の内周面にそれぞれ沿設されている。
【0022】
励磁コイル304は、下側ケーシング部305の溝部に巻回されたリッツ線であり、不図示の耐熱性の樹脂で被覆されている。
この励磁コイル304は、高周波インバー夕(不図示)に接続されており、10〜100[kHz]、100〜2000[W]の高周波電力が供給されことにより、周期的に変動する磁界を発生する。
【0023】
磁性体コア306は、複数存在し、それぞれが励磁コイル304の直上において上記2つの磁性体コア303に跨設されている。磁性体コア306は、磁気回路の効率を上げるためと、磁気遮蔽のために設けられている。
磁性体コア302、303、306の材料としては、高透磁率であって鉄損が小さなもの、例えば、パーマロイの積層体が用いられる。
【0024】
上側ケーシング部301は、上記絶縁ケーシングの上部を構成するものであり、磁性体コア302、303、励磁コイル304及び磁性体コア306を収容した下側ケーシング部305を封口する。
(加熱ローラ51)
磁束発生部53の近傍に回転自在に配され、図2、図3に示すように、芯金105の表面に、断熱層104、電磁誘導発熱性層103、弾性層102及び離型層101がこの順で積層されてなる。
【0025】
加熱ローラ51のローラ硬度としては、ASKER‐C硬度で30〜90度程度となっている。
(芯金105)
外径が20mm、厚みが4mmのアルミニウム製である。
芯金105の材料として、金属材料を用いる場合には、磁束発生部170で発生した磁界により芯金が電磁誘導加熱されるのを軽減する為に、電磁誘導の影響が少ない非磁性材料を用いることが望ましいが、PPS(ポリフェニレンサルファイト)のような耐熱性のモールドのパイプを使用することも可能である。
【0026】
(断熱層104)
電磁誘導発熱性層103を断熱保持し、電磁誘導発熱性層103の発熱効率を高めるための層である。断熱層104の材質としては、弾性及び耐熱性が高いゴム材料や樹脂材のスポンジ体(断熱構造体)、例えば、シリコンゴムまたはフッ素ゴム等の耐熱性エラストマーのスポンジ体を用いられる。
【0027】
上記材質を用いることにより、断熱保持するとともに、電磁誘導発熱性層103のたわみを許容し、圧接ニップ幅を増やし、ローラ強度を小さくして排紙性及び記録材分離性能を向上させることができる。又、上記材質をゴム材及びスポンジ体の2層構成としてもよい。例えば、断熱層104にシリコンスポンジ材を用いる場合は、厚さ2〜12mm、望ましくは3〜10mm、ゴム硬度計で20〜60度、望ましくは、30〜50度に設定される。
【0028】
(電磁誘導発熱性層103)
厚みが10〜100μm、望ましくは、20〜50μmの無端状のニッケル電鋳ベルト層であり、磁束発生部53で発生した磁束により渦電流が生じ、電磁誘導発熱性層103がジュール発熱する。
電磁誘導発熱性層103に用いられる他の材質としては、例えば、磁性ステンレスのような磁性材料(磁性金属)といった、比較的透磁率が高く、適当な抵抗率を持つものを用いることができる。又、非磁性材料で、金属などの導電性の材料を薄膜にして用いることができる。
【0029】
又、樹脂に発熱粒子を分散させたものを用いることとしてもよい。
(弾性層102)
記録シートと加熱ローラ51の表面との密着性を高めるための層である。弾性層102の材質としては、ゴム材や樹脂材が用いられ、例えば、定着温度での使用に耐えられるシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性エラストマーを用いることができる。
【0030】
弾性層102には、熱伝導性の補強を目的として、各種充填剤を混入することとしてもよい。例えば、熱伝導性粒子として、ダイヤモンド、銀、銅、アルミニウム、大理石、ガラス等を混入してもよい。
弾性層102の厚みは、例えば、厚さ10〜800μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。弾性層102の厚さが10μm未満であると、厚み方向の弾力性を得ることが難しく、800μmを超えると、電磁誘導発熱性層103で発生した熱が、定着フィルムの外周面に達し難くなり、熱効率が悪化するためである。
【0031】
弾性層102の硬度は、JIS硬度で1〜80度、好ましくは、5〜30度のシリコンゴムから構成されるのが望ましい。上記JIS硬度範囲とすることにより、弾性層102の強度低下、密着性の不良を防止できるとともに、トナーの定着性の不良を防止することができる。
シリコンゴムとしては、1成分系、2成分系又は3成分系以上のシリコンゴム、LTV型、RTV型又はHTV型のシリコンゴム、縮合型又は付加型のシリコンゴム等を使用することができる。本定着装置50の弾性層102においては、JIS硬度10度、厚さ200μmのシリコンゴムの層を用いている。
【0032】
(離型層101)
加熱ローラ表面の離型性を高めるための層であり、定着温度での使用に耐えられるもので、トナー離型性を有するものが用いられる。
例えば、シリコンゴム、フッ素ゴムや、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフロロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFEP(四フッ化エチレン・六フッ化. プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂が好ましく用いられる。
【0033】
離型層615の厚さは5μm〜100μmが好ましく、10μm〜50μmがより好ましい。
また、層間接着力を向上させるためにプライマー等による接着処理を行ってもよい。なお、離型層615の中に必要に応じて、導電材、耐摩耗材、良熱伝導材をフィラーとして添加することもできる。
(加圧ローラ52)
バネなどを用いた不図示の加圧機構によって加熱ローラ51を押圧しながらモータ(不図示)などにより回転駆動する
加圧ローラ52は、回転駆動される芯金203の外周面に、断熱層202が設けられ、さらに断熱層202の上に、加圧ローラ表面の離型性を高めるための離型層201が設けられて構成される。
【0034】
(芯金203)
芯金203は、厚さ3mmのアルミニウム製のパイプからなる。アルミニウム製に限ら
ず、鉄、PPS(ポリフェニレンサルファイド)のような耐熱性のモールドのパイプを用
いることもできるが、芯金が発熱するのを防ぐ為に電磁誘導加熱の影響が少ない非磁性材
料を用いるのが望ましい。
【0035】
(断熱層202)
厚さ3mm〜10mmのシリコンスポンジゴムからなる層であり、厚さは使用条件に応
じて3mm〜10mmの範囲で変更することができる。
又、断熱層202は、シリコンゴムとシリコンスポンジの2層構成としてもよい。
(離型層201)
厚みが10μm〜50μmのフッ素系樹脂からなる無端状の帯体である。
フッ素系樹脂としては例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレン-パーフロロアルコキシエチレン共重合体)等を用いることができる。
(均熱ローラ56)
加圧ローラ52の長手方向の全域に押圧バネを含む押圧装置(不図示)で当接されて加圧ローラ52に従動回転する。
【0036】
均熱ローラ56は、加熱源としてヒータランプ501を内蔵し、その外郭円筒部が熱伝導性の良い金属材料で形成されている。
上記金属材料として、例えば、アルミニウムを用いることができる。又、加熱源としては、ヒータランプ以外に抵抗発熱体のような他の熱源を用いることができる。
(非接触型温度センサーユニット54)
磁束発生部53が発生する磁束(図2の符合57で示す。)の作用を受けることが可能な位置に配され、加熱ローラの表面温度を測定する。
【0037】
図4(a)、(b)は、非接触型温度センサーユニット54の斜視図である。非接触型温度センサーユニット54は、加熱ローラ51から放出された赤外線を受光する非接触型温度センサーであるサーモパイルチップ542と、サーモパイルチップ542上に取り付けられる補正センサーであるサーミスタ543と、サーミスタ543を取り付けたサーモパイルチップ542が載置される略円柱状のベース部材546と、ベース部材546を覆うように被着されることにより、サーモパイルチップ542及びサーミスタ543を保護する筒状のケーシング545とで構成され、ケーシング545の、ベース部材546に対向する上面には、赤外線を透過するための窓が設けられており、さらに上記窓を封止するように、赤外線透過フィルタ541がケーシング545の上面の内壁面に取り付けられている。
【0038】
又、ケーシング545の内部には、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスが封入され、べース部材546には、リード線を介してサーミスタ543の電圧を出力するサーミスタ出力端子547、548とリード線を介してサーモパイルチップで生じた熱起電力を出力するサーモパイル出力端子549、550とが設けられ、各出力端子は、ベース部材546を貫通してケーシング545の外部に延出され、温度制御装置55(図2参照)に接続されている。
【0039】
(赤外線透過フィルタ541)
赤外線透過フィルタ541は、ポリエチレン樹脂やシリコン樹脂で形成されている。赤外線透過フィルタの代わりに、赤外線透過レンズを用いることとしてもよい。例えば、シリコンレンズを赤外線透過レンズとして用いることができる。
(サーモパイルチップ542)
図5は、サーモパイルチップ542の詳細な構造を示す斜視図である。図5に示すように、サーモパイルチップ542は、 HYPERLINK "http://www8.ipdl.inpit.go.jp/Tokujitu/tjitemdrw.ipdl?N0000=235&N0500=1E#N/;%3e:=;876=///&N0001=121&N0552=9&N0553=000007" \t "tjitemdrw" 図5に示すように、例えばポリシリコン及びアルミニウムを接合した熱電対が多数直列に接続されたサーモパイル5422を具備する測温素子であり、その温接点(図示せず)を熱容量の小さい絶縁薄膜5424上に配置し、その冷接点5423をシリコン製の基板材であるヒートシンク544上に配置し、温接点を赤外線吸収膜5421によって覆ったものである。
【0040】
(サーミスタ543)
サーミスタ543は、図5に示すように、ヒートシンク544上における、冷接点5423に近接する位置に配置されている。サーミスタ543では、ヒートシンク544の温度に応じて電気抵抗値が変化し、その出力電圧がサーミスタ出力端子547、548を介して温度制御装置55に入力される。
【0041】
(ヒートシンク544)
シリコン製の基板材で形成されている。
(ケーシング545)
図4(a)の符号551Aで示す斜線部分で示すように、その全体が、感温磁性材料で形成されている。ここで、「感温磁性材料」とは、自身の温度がキュリー温度を超えると磁性を失い、透磁率が急激に低下する性質を有する材料のことをいう。
【0042】
ここでは、感温磁性材料のキュリー温度が、定着装置50の使用環境下での露点温度よりも高く、サーモパイルチップ542について定められている動作温度の上限(製造業者によって、定められている動作温度の上限)を超えない範囲にある磁性材料を用いることができる。
好ましくは、キュリー温度が60℃から100℃の範囲にある感温磁性材料を用いるのが望ましい。
【0043】
感温磁性材料の材料としては、例えば、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Cr合金を用いることができる。Fe−Ni合金、Fe−Ni−Cr合金は、Ni含有量に応じてキュリー温度を所望のキュリー温度に変更することが可能であり、例えば、FeとNiの組成比率が、原子パーセント(at%)で、Fe70%、Ni30%の場合に、キュリー温度が約100℃の感温磁性材料が得られ、又、Fe−Ni−Cr合金では、FeとNiとCrの組成比率が、at%で、Ni31%、Fe61%、Cr8%の場合に、キュリー温度が約70℃の感温磁性材料が得られる。
【0044】
又、上記合金以外にも、Cu−Ni合金やMn−Pt合金を用いることができる。これらの合金の場合においても、組成比率を変更することにより、所望のキュリー温度の感温磁性材料が得られる。
ケーシング545を形成する感温磁性材料は、磁束発生部53が発生する磁束を受けると、電磁誘導加熱により感温磁性材料が発熱して赤外線透過フィルタ541に結露が生じるのを防止する。そして、感温磁性材料の発熱により、その温度がキュリー温度を超えると、磁束に対する透磁率が急激に低下し、非接触型温度センサーユニット54の本体温度がその動作温度の上限を超えないように、感温磁性材料の発熱を抑制する。
【0045】
又、ケーシング545全体が感温磁性材料で形成されているので、電磁誘導加熱によりケーシング545全体が急速に加熱されるので、ケーシング545内部に配されているサーモパイルチップ542及びサーミスタ543の温度を迅速に安定化することができる。
従って、電源投入後、迅速にサーモパイルチップ542及びサーミスタ543の温度を安定化し、電源投入直後において、非接触型温度センサーユニット54の温度測定精度が低下するのを有効に防止することができる。
【0046】
又、感温磁性材料で形成する部分は、ケーシング545の全体ではなく、図4(b)の符号551Bで示す斜線部分で示すように、赤外線透過フィルタ近傍の部分のみとし、その他の部分を電磁誘導で加熱されない材料、例えば、非磁性の銅で形成することとしてもよい。
(温度制御装置55)
非接触型温度センサーユニット54より入力される、熱起電力及びサーミスタ543の電圧に基づいて、加熱ローラ51の表面温度を演算する。具体的には、サーミスタ543の出力電圧に基づいて求められた温度をサーモパイルチップ542の冷接点5423の温度とみなし、これに応じて、入力された熱起電力に基づいて求められた温度を補正し、加熱ローラ51の表面温度を特定する。
<補足>
以上、本発明に係る定着装置50について、について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施の形態に限られないことは勿論である。
(1)ケーシング545の内、感温磁性材料で形成する部分は、図4(b)の斜線部分551Bに示すような赤外線透過フィルタ近傍の部分の全部ではなく、一部であってもよい。例えば、上記近傍部分の一部に、感温磁性材料を貼り付けたり、上記近傍部分の一部に凹部や切り込みを設け、凹部や切り込みに感温磁性材料を埋め込むこととしてもよい。
(2)又、感温磁性材料で形成する部分は、図4(b)の斜線部分551Bの内、赤外線透過フィルタ541と直接接触する部分であってもよい。
【0047】
これにより、感温磁性材料の発する熱を、効率よく赤外線フィルタ541に伝熱させることができるので、より少ない感熱磁性材料で、熱効率よく赤外線フィルタ541を昇温させ、結露の発生を効果的に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、複写機、プリンタ、ファックス若しくはこれらの複合機等の画像形成装置において使用される定着装置に関し、特に、定着装置の温度センサーの測定精度を向上させる技術として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施の形態における定着装置50を用いる画像形成装置100の全体の構成を示す断面概略図である。
【図2】図1に示す定着装置50の断面概略図の拡大図である。
【図3】定着装置50の部分断面斜視図である。
【図4】非接触型温度センサーユニット54の斜視図である。
【図5】サーモパイルチップ542の詳細な構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 光学部
11 中間転写ベルト
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
30 画像プロセス部
30Y〜30K 作像部
31Y〜31K 感光体ドラム
32Y〜32K 帯電器
33Y〜33K 現像器
34Y〜34K 一次転写ローラ
35Y〜35K クリーナ
40 給送部
41 給紙カセット
42 ローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ対
45 二次転写ローラ
46 二次転写位置
50 定着装置
51 加熱ローラ
52 加圧ローラ
53 磁束発生部
54 非接触型温度センサーユニット
55 温度制御装置
56 均熱ローラ
60 制御部
101、201 離型層
102 弾性層
103 電磁誘導発熱性層
104、202 断熱層
105、203 芯金
301 上側ケーシング部
302、303 磁性体コア
304 励磁コイル
305 下側ケーシング部
501 ヒータランプ
541 赤外線透過フィルタ
542 サーモパイルチップ
543 サーミスタ
544 ヒートシンク
545 ケーシング
546 ベース部材
547、548 サーミスタ出力端子
549、550 サーモパイル出力端子
5421 赤外線吸収膜
5422 サーモパイル
5423 冷接点
5424 絶縁薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導手段により加熱ローラを電磁誘導加熱する定着装置であって、
加熱ローラから放射される赤外線を検出する非接触型温度センサーユニットを備え、
前記非接触型温度センサーユニットは、
前記赤外線を透過させる赤外線透過フィルタと、
前記赤外線フィルタを透過した赤外線を検出する温度センサーと
窓部を有し、前記赤外線フィルタが窓部に嵌合されるように前記赤外線透過フィルタと前記温度センサーとを内蔵するケーシングと
を有し、
前記ケーシングにおける前記赤外線透過フィルタの近傍部分は、定着装置内における露点温度よりも高く、前記温度センサーの動作温度の上限を超えない温度範囲内のキュリー温度を有する感温磁性材料で構成されており、
前記非接触型温度センサーユニットは、前記感温磁性材料が、前記電磁誘導手段により電磁誘導加熱される位置に存在する状態で配されている
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記感温磁性材料のキュリー温度は、60℃以上100℃以下の範囲にある
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記ケーシング全体が、感温磁性材料で構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記感温磁性材料は、Fe−Ni合金、Fe−Ni−Cr合金、Cu−Ni合金、Mn−Pt合金の何れかにより構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−98210(P2009−98210A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266994(P2007−266994)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】