説明

実装方法、半導体チップ、及び半導体ウエハ

【課題】異方導電接着剤を用いた電子部品の実装方法において、接続される電極間で捕捉される導電粒子の捕捉効率を向上させる実装方法、並びにこのような実装方法に好適に用いられる半導体チップ及び半導体ウエハを提供する。
【解決手段】この実装方法においては、回路面33a上のバンプ電極35を埋め込むように絶縁性接着剤層37が形成された半導体チップ30を準備し、この半導体チップ30の絶縁性接着剤層37とLCD50の平面電極55との間に、絶縁性の接着剤基材61及び導電粒子63を含む異方導電接着剤層60を挟んで、半導体チップ30をLCD50に加圧し圧着させる。そして、半導体チップ30の絶縁性接着剤層37は、バンプ電極35の高さと略同じ厚さに形成されており、異方導電接着剤層60は、導電粒子63の粒径と略同じ厚さに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を実装基板上に実装する実装方法、及び、このような実装方法に特に好適に用いられる半導体チップ及び半導体ウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップなどの電子部品を実装基板上に実装する際に、接着剤基材に導電粒子を分散させた異方導電接着剤が用いられている。すなわち、この異方導電接着剤を、半導体チップのバンプ電極と実装基板の接続用電極との間に配置し、加熱及び加圧によって上記電極同士を接続することで、加圧方向に導電性を持たせると共に、隣接して形成されている電極同士には絶縁性を付与して、対向する電極間のみの電気的接続を行うことができる。
【0003】
このような技術としては、例えば、下記特許文献1、2に記載の電子部品の接続方法が知られている。これらの接続方法では、平面電極をもつ第1基板と、突出電極をもつ第2基板との間に、異方導電接着剤層と絶縁性接着剤層とが積層されてなる接着フィルムが挟まれて、両基板が圧着される。このとき、異方導電接着剤層に含まれる導電粒子が、対向する突出電極と平面電極との間に捕捉されるので、両電極はこの導電粒子を介して電気的に接続される。
【特許文献1】特開平8−148212号公報
【特許文献2】特開平4−366630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2の方法では、両基板の圧着の際、第2基板側の突出電極が接着フィルムを押し退けながら食い込んでいくときに、異方導電接着剤層及び絶縁性接着剤層が流動し導電粒子が横に押し流されるので、対向する電極間で最終的に捕捉される導電粒子が減少してしまうといった現象が発生する。そして、この現象に起因して、対向する電極間の接続信頼性が十分に得られなかったり、横に押し流された導電粒子により隣接する電極間のショートが発生したりすることが問題となる。上記特許文献1、2の方法においては、異方導電接着剤層及び絶縁性接着剤層の物性(流動性、活性化温度等)を別々にコントロールすることで、導電粒子の流動を抑え導電粒子の捕捉効率を向上しようとしているが、それでも十分とは言えず、更なる捕捉効率の向上が求められる。
【0005】
そこで、本発明は、異方導電接着剤を用いた電子部品の実装方法において、接続される電極間で捕捉される導電粒子の捕捉効率を向上させる実装方法、並びにこのような実装方法に好適に用いられる半導体チップ及び半導体ウエハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実装方法は、電子部品の主面上に突出して形成された突出電極を実装基板上に形成された接続用電極に接続させ、主面を実装基板に対向させた状態で電子部品を実装基板上に実装する実装方法であって、主面上の突出電極を埋め込むように絶縁性接着剤層が主面上に形成された電子部品を準備する電子部品準備工程と、実装基板上に、絶縁性の接着剤基材及び当該接着剤基材中に分散された導電粒子を含む異方導電接着剤層を形成する実装基板準備工程と、電子部品準備工程で準備された電子部品と実装基板準備工程で準備された実装基板を加圧し圧着させる電子部品圧着工程と、を備え、電子部品準備工程では、電子部品の絶縁性接着剤層が、突出電極の高さと略同じ厚さに形成され、実装基板準備工程では、異方導電接着剤層が、導電粒子の粒径と略同じ厚さに形成されることを特徴とする。
【0007】
この実装方法においては、電子部品準備工程で準備される電子部品は、主面上に突出する突出電極をもち、この主面上に当該突出電極の高さと略同じ厚さの絶縁性接着剤層が形成され、この絶縁性接着剤層に突出電極が埋め込まれた状態となっている。電子部品圧着工程では、この状態の電子部品の突出電極と実装基板の接続用電極とが、異方導電接着剤層を挟んで加圧し圧着される。
【0008】
ここで、異方導電接着剤層は、導電粒子の粒径と略同じ厚さであるので、導電粒子は、異方導電接着剤層の厚み方向に1つずつのみ配列している。従って、異方導電接着剤層が厚み方向に加圧を受けても、厚み方向に直交する方向(以下「横方向」という)の導電粒子の移動が起こりにくい。よって、異方導電接着剤層が突出電極と接続用電極との間に厚み方向に挟み込まれる際に、導電粒子は横方向にほとんど移動せず、導電粒子は効率よく両電極間に挟み込まれる。
【0009】
また、電子部品の主面と異方導電接着剤層との間に挟まれる絶縁性接着剤層は、突出電極の高さと略同じ厚さに形成されているので、主面と異方導電接着剤層との間の間隙がこの絶縁性接着剤層で充填されるにあたり、絶縁性接着剤層自体の変形は少なく抑えられる。また、絶縁性接着剤層は、突出電極を埋め込むように予め主面上に形成されているので、絶縁性接着剤層には、突出電極に押し退けられる場合に発生するような流動もほとんど発生しない。従って、絶縁性接着剤層の加圧に起因する、導電粒子の流動も少ない。以上の結果、突出電極と接続用電極との間には、導電粒子が効率よく捕捉される。
【0010】
また、実装基板準備工程では、電子部品を実装基板に圧着させる前において、異方導電接着剤層を、予め実装基板上に形成している。このように形成された異方導電接着剤層は、電子部品と実装基板との間に安定して挟まれる。
【0011】
また、実装基板準備工程では、異方導電接着剤層の接着剤基材が、導電粒子の粒径の0.8〜1.2倍の厚さに形成されることが好ましい。接着剤基材の厚さがこの範囲よりも大きいと、異方導電接着剤層の導電粒子の流動が大きくなり、前述の十分な捕捉効率が得られなくなる。また、厚さがこの範囲よりも小さいと、実装の完了後において電子部品と実装基板との間に空隙が生じてしまい、接着不良が生じるおそれがある。
【0012】
また、電子部品準備工程では、電子部品の絶縁性接着剤層が、突出電極の高さの0.9〜1.1倍の厚さに形成されることが好ましい。絶縁性接着剤層の厚さがこの範囲よりも大きいと、電子部品圧着工程において導電粒子の流動が大きくなり、前述の十分な捕捉効率が得られなくなる。また、厚さがこの範囲よりも小さいと、実装の完了後において電子部品と実装基板との間に空隙が生じてしまい、接着不良が生じるおそれがある。
【0013】
また、電子部品は、バンプ電極が突出電極として主面上に突出して形成された半導体チップであってもよい。上述の実装方法は、このような半導体チップの実装に好適に適用できる。
【0014】
また、電子部品準備工程は、主面上にバンプ電極が形成された半導体ウエハを準備するウエハ準備ステップと、半導体ウエハの主面上にバンプ電極の高さと略同じ厚さの絶縁性接着剤層を形成させる絶縁性接着剤層形成ステップと、半導体ウエハのダイシングを行い、個片化された半導体チップを電子部品として作製するダイシングステップと、を有することが好ましい。このような電子部品準備工程により、半導体チップが効率よく準備される。
【0015】
また、本発明の半導体チップは、回路が形成された半導体チップ本体と、半導体チップ本体の回路が存在する回路面上に形成されたバンプ電極と、を備え、回路面上には、当該回路面上の突出電極を埋め込むようにバンプ電極の高さと略同じ厚さに絶縁性接着剤層が形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の半導体ウエハは、回路が形成された半導体ウエハ本体と、半導体ウエハ本体の回路が存在する回路面上に形成されたバンプ電極と、を備え、回路面上には、当該回路面上の突出電極を埋め込むようにバンプ電極の高さと略同じ厚さに絶縁性接着剤層が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、異方導電接着剤を用いた電子部品の実装方法において、接続される電極間で捕捉される導電粒子の捕捉効率を向上させる実装方法、並びにこのような実装方法に好適に用いられる半導体チップ及び半導体ウエハを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る実装方法、半導体チップ、及び半導体ウエハの好適な一実施形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明の実装方法の一実施形態として以下に説明する実装方法は、回路面(主面)にバンプ電極(突出電極)が突出して形成された半導体チップ(電子部品)を、表面に平面電極(接続用電極)が形成された液晶ディスプレイ(実装基板:以下「LCD」)上に実装する方法である。この実装方法では、半導体チップが、回路面をLCDに対向させた状態でLCD上に実装される。また、後述するように、半導体チップの回路面とLCDとの間には、両者を接着固定するための絶縁性接着剤層と異方導電接着剤層とが挟み込まれる。
【0020】
(半導体チップの準備工程)
以下、半導体ウエハを個片化して上記半導体チップを準備する工程について説明する。図1に示すように、半導体ウエハ10は、所定の工程を経て回路面13a側に回路が形成された半導体ウエハ本体13と、当該半導体ウエハ13の回路面13a上に突出して形成されたバンプ電極15とを備えている。半導体ウエハ10の回路面13a側に、ベースフィルム21上の絶縁性接着剤フィルム23を押し当て加圧し、絶縁性接着剤フィルム23をラミネートする。ベースフィルム21には、変形可能な柔らかい基材が用いられる。なお、このような絶縁性接着剤フィルム23は、一般に、「NCF(Non Conductive Film)」等と呼ばれる場合がある。
【0021】
ここでは、ベースフィルム21が所定の圧力で加圧されることで、バンプ電極15同士の間を埋めるように絶縁性接着剤フィルム23が充填される。そして、図2に示すように、ベースフィルム21が除去されると、回路面13a上には、バンプ電極15の高さと略同一の厚さで、当該バンプ電極15を埋め込むような絶縁性接着剤層17が形成される。
【0022】
続いて、この状態の上記半導体ウエハ10をダイシングにより個片化すると、図3に示す半導体チップ30が完成する。図に示すように、この半導体チップ30は、回路が形成された半導体チップ本体33と、半導体チップ本体の回路面33a上に形成されたバンプ電極35と、を備え、回路面33a上には、バンプ電極35の高さと略同じ厚さの絶縁性接着剤層37が形成されており、バンプ電極35は、絶縁性接着剤層37に埋め込まれた状態となっている。
【0023】
(半導体チップの圧着工程)
まず、半導体チップ30をLCD50に圧着させる処理に先立ち、図4に示すように、実装基板であるLCD50の実装面50a上に、異方導電接着剤層60を形成する処理が行われる。この異方導電接着剤層60は、絶縁性の接着剤基材61中に、導電粒子63を分散させてなる層であり、回路電極同士の接続時に、対向する電極同士を結ぶ方向に導電性を示し、その対向する回路電極同士のみを電気的に接続することが可能な異方導電性を有する層である。なお、このような異方導電接着剤層60は、一般に、「ACF(Anisotropic Conductive Film)」等と呼ばれる場合がある。
【0024】
図に示すように、LCD50は、ガラス製のLCD本体53と、その実装面50a上にITO(酸化インジウムスズ)で形成され、半導体チップ30のバンプ電極35の配置に対応して配置された平面電極55とを備えている。このような実装面50a上に接着剤基材61を塗布し、塗布された上記接着剤基材61上に、噴霧ノズルを介して空気と混合した導電粒子63を散布する。その後、非粘着性のセパレータを導電粒子63上に被せラミネートロールで圧縮することで、導電粒子63が接着剤基材61に押し込まれる。このような処理により、接着剤基材61が接着剤導電粒子63の粒径と略同じ厚さに形成され、上記セパレータを取り除くと、導電粒子63の粒径と略同じ厚さをもつ異方導電接着剤層60が、実装面50a上に完成する。
【0025】
続いて、図5に示すように、前述の通り準備した半導体チップ30を、回路面33a側をLCD50に対向させた状態で、加熱・加圧する。この加圧により、バンプ電極35の先端と平面電極55との間には、導電粒子63が挟み込まれ、加圧により変形する。その結果バンプ電極35と平面電極55とが、この導電粒子63を介して電気的される。また、この加熱により、熱硬化性をもつ絶縁性接着剤層37と異方導電接着剤層60の接着剤基材61とが硬化するので、半導体チップ30は、LCD50上に接着固定される。なお、上記の加熱及び加圧の条件は、絶縁性接着剤層37、異方導電接着剤層60中の接着剤の硬化性等に応じて、絶縁性接着剤層37及び異方導電接着剤層60が硬化して十分な接着強度が得られるように、適宜調整される。
【0026】
ここで、異方導電接着剤層60は、導電粒子63の粒径と略同じ厚さであるので、導電粒子63は、異方導電接着剤層60の厚み方向には1つずつのみ配列されている。従って、異方導電接着剤層60が厚み方向に加圧を受けても、厚み方向に直交する方向(以下「横方向」という)の導電粒子63の移動が起こりにくい。よって、異方導電接着剤層60がバンプ電極35先端と平面電極55との間に厚み方向に挟み込まれる際に、導電粒子63は横方向にほとんど移動せず、バンプ電極35と平面電極55との間に元々存在していた導電粒子63がほとんどそのままバンプ電極35と平面電極55とで挟み込まれる。このように、導電粒子63は効率よく両電極35,55間に捕捉される。
【0027】
更には、半導体チップ30の回路面33aと異方導電接着剤層60との間には、絶縁性接着剤層37が、予めバンプ電極35同士の間を埋めるように回路面33a上に形成され、かつ、絶縁性接着剤層37は、バンプ電極35の高さと略同じ厚さに形成されているので、回路面33aと異方導電接着剤層60との間の間隙がこの絶縁性接着剤層37で充填されるにあたり、絶縁性接着剤層37自体の変形は少なく抑えられ、絶縁性接着剤層37の流動がほとんど発生しない。従って、絶縁性接着剤層37の加圧・流動に起因する、導電粒子63の流動も少ない。
【0028】
以上の結果、バンプ電極35と平面電極55との間には、導電粒子63が効率よく捕捉され、接続信頼性を高めることができる。また、導電粒子63の捕捉効率が高まれば、異方導電接着剤層60における導電粒子63の濃度を小さくすることもでき、コストダウンを図ることができる。また、導電粒子63の横方向の移動が減少することから、隣接するバンプ電極35同士、或いは隣接する平面電極55同士の間でのショートの発生を抑制することができる。また、絶縁性接着剤層37と異方導電接着剤層60をあまり変形させずに、半導体チップ30の回路面33aとLCD50との間の間隙が十分に充填されるので、加圧の圧力を低くすることもできる。
【0029】
ここで、前述の異方導電接着剤層60の接着剤基材61は、導電粒子63の粒径と略同じ厚さとしたが、特に、導電粒子63の粒径の0.7〜1.2倍(更に好ましくは導電粒子63の粒径の0.8〜1.2倍)の厚さに形成されることが好ましい。接着剤基材61の厚さがこの範囲よりも大きいと、導電粒子63の流動が大きくなり、前述の十分な捕捉効率が得られなくなる。また、接着剤基材61の厚さがこの範囲よりも小さいと、実装の完了後において半導体チップ30とLCD50との間に空隙が生じてしまい、接着不良が生じるおそれがある。
【0030】
また、前述の絶縁性接着剤層37は、バンプ電極35の高さと略同じ厚さとしたが、特に、バンプ電極35の高さの0.8〜1.1倍(更に好ましくはバンプ電極35の高さの0.9〜1.1倍)の厚さに形成されることが好ましい。絶縁性接着剤層37の厚さがこの範囲よりも大きいと、導電粒子63の流動が大きくなり、前述の十分な捕捉効率が得られなくなる。また、絶縁性接着剤層37の厚さがこの範囲よりも小さいと、実装の完了後において半導体チップ30とLCD50との間に空隙が生じてしまい、接着不良が生じるおそれがある。
【0031】
また、上記異方導電接着剤層60の接着剤基材61は、熱により硬化する反応性樹脂(熱硬化性樹脂)を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂と、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤との混合物や、ラジカル反応性樹脂と有機過酸化物との混合物等が用いられる。
【0032】
上記エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂、ナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独にあるいは2種以上を混合して用いることが可能である。
【0033】
これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等の含有量を300ppm以下に低減した高純度品を用いることが、エレクトロンマイグレーション防止の観点から好ましい。
【0034】
異方導電接着剤層60には、接続するチップのバンプや基板電極等の高さのばらつきを吸収するため、異方導電性を積極的に付与する目的で、前述の通り、導電粒子63が混入・分散されている。導電粒子63は、例えば、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属を含む導電性を有する粒子であり、ポリスチレン等の高分子からなる球状の核材の表面に、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属からなる導電層を形成してなる粒子であることがより好ましい。また、導電粒子63は、導電性を有する粒子の表面に、Su、Au、はんだ等の表面層を形成してなるものであってもよい。
【0035】
導電粒子63の粒径は、接続する電極の最小の間隔よりも小さいことが必要であり、且つ、電極の高さにばらつきがある場合、その高さのばらつきよりも大きいことが好ましい。導電粒子63の平均粒径は、1〜10μmであることが好ましく、2〜5μmであることがより好ましい。平均粒径が1μm未満であると、電極の高さのばらつきに対応できずに電極間の導電性が低下しやすい傾向があり、10μmを超えると、隣接する電極間の絶縁性が低下しやすい傾向がある。
【0036】
異方導電接着剤層60における導電粒子63の含有量は、導電性接着剤層中の固形分の全体積を基準として、0.1〜30体積%であることが好ましく、0.2〜20体積%であることがより好ましい。この含有量が0.1体積%未満であると、接続すべき電極上の導電粒子の数が減少することから接触点数が不足し、接続される電極間の導電性が低下しやすい傾向があり、30体積%を超えると、粒子表面積の著しい増加により粒子が2次凝集を起こして連結しやすく、隣接電極間の絶縁性が低下しやすい傾向がある。
【0037】
異方導電接着剤層60には、そのフィルム形成性をより良好なものとする観点から、フィルム形成性高分子を配合することもできる。フィルム形成性高分子としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらのフィルム形成性高分子は、熱硬化性樹脂の硬化時の応力緩和に効果がある。特に、フィルム形成性高分子が水酸基等の官能基を有する場合、接着性が向上するためより好ましい。
【0038】
また、絶縁性接着剤層37は、絶縁性を有する層である。絶縁性接着剤層37は、隣接するバンプ電極35間の絶縁性を十分に確保する(好ましくは、隣接するバンプ電極35間の絶縁抵抗値を1×10Ω以上とする)ことが可能なものであれば、その組成は特に限定されないが、例えば、上述の異方導電接着剤層60から導電粒子63を除いた組成と同様の組成とすることができる。
【0039】
また、異方導電接着剤層60及び絶縁性接着剤層37には、更に無機質充填材やゴム粒子を混入・分散することができる。これらは、導電粒子63と共に異方導電接着剤層60に混入・分散することができ、導電粒子63が使用されない絶縁性接着剤層37に混入・分散することもできるが、特に導電粒子63を使用する異方導電接着剤層60に混入・分散することが好ましい。これら無機質充填材やゴム粒子を異方導電接着剤層60に添加することにより、異方導電接着剤層60の回路部材同士の接続時の溶融粘度を、絶縁性接着剤層37の接続時の溶融粘度よりも容易に且つ十分に高くすることができる。
【0040】
上記無機質充填材としては、特に制限されないが、例えば、溶融シリカ、結晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム等の粉体が挙げられる。無機質充填材の平均粒径は、接続部での導通不良を防止する観点から、3μm以下であることが好ましい。
【0041】
無機質充填材を用いる場合の配合量は、異方導電接着剤層60及び絶縁性接着剤層37のいずれにおいても、接着剤基材の配合量を100質量部として5〜100質量部であることが好ましい。なお、溶融粘度を高めるためには、この配合量が大きいほど効果的である。
【0042】
ゴム粒子としては、ガラス転移温度が25℃以下のゴム粒子であれば特に限定されないが、例えば、ブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等を用いることができる。ゴム粒子としては、平均粒径が0.1〜10μmのものを用いることが好ましく、平均粒径以下の粒子が粒径分布の80%以上を占めるゴム粒子がより好ましい。ゴム粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであることが更に好ましい。また、ゴム粒子の表面をシランカップリング剤で処理した場合、反応性樹脂に対する分散性が向上するためより好ましい。
【0043】
ゴム粒子の中でもシリコーンゴム粒子は、耐溶剤性に優れる他、分散性にも優れるため、効果的なゴム粒子として好ましく用いることができる。なお、シリコーンゴム粒子は、シラン化合物やメチルトリアルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を、苛性ソーダ、アンモニア等の塩基性物質によりpH9以上に調整したアルコール水溶液に添加し、加水分解、重縮合させる方法や、オルガノシロキサンの共重合等で得ることができる。また、分子末端又は分子内側鎖に水酸基、エポキシ基、ケチミン、カルボキシル基、メルカプト基等の官能基を含有したシリコーン微粒子は、反応性樹脂への分散性が向上するため好ましい。
【0044】
ゴム粒子を用いる場合の配合量は、異方導電接着剤層60及び絶縁性接着剤層4,5のいずれにおいても、接着剤基材の配合量を100質量部として5〜50質量部であることが好ましい。
【0045】
絶縁性接着剤層37の形成は、少なくとも上記接着剤基材(反応性樹脂及び潜在性硬化剤等)を含む接着組成物を有機溶剤に溶解あるいは分散することで液状化して塗布液を調製し、この塗布液を剥離性基材である前述の支持フィルム21上に塗布して、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行うことができる。このとき用いる溶剤は、芳香族炭化水素系溶剤と含酸素系溶剤との混合溶剤が、材料の溶解性を向上させる観点から好ましい。また、支持フィルム21としては、離型性を有するように表面処理されたPETフィルム等が好適に用いられる。
【0046】
また、異方導電接着剤層60は、絶縁性接着剤層37よりも、回路部材同士の接続時の溶融粘度が高いことが好ましい。ここで、上記接続時の溶融粘度とは、前述の半導体チップの圧着処理の際の加熱温度における溶融粘度である。なお、一般に、回路部材同士を接続する際の加熱温度は、接着剤の硬化性等に応じて適宜調整されるが、通常、120℃〜220℃の範囲である。したがって、その温度範囲内において、異方導電接着剤層60の溶融粘度が絶縁性接着剤層37の溶融粘度よりも高いことがより好ましい。
【0047】
また、異方導電接着剤層60の接続時の溶融粘度として具体的には、例えば120℃において、5.0×10〜5.0×10Pa・sであることが好ましく、5.0×10〜5.0×10Pa・sであることがより好ましい。
【0048】
また、絶縁性接着剤層4,5の接続時の溶融粘度として具体的には、例えば120℃において、1.0×10〜1.0×10Pa・sであることが好ましく、1.0×10〜1.0×10Pa・sであることがより好ましい。
【0049】
なお、本発明の一実施形態として、半導体チップ30をLCD50上に実装する実装方法を示したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。例えば、電子部品又は実装基板としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はない。具体的には、実装基板としては、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて使用される。本発明の電子部品又は実装基板としては、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する実装基板を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実装方法に用いられる半導体チップを製造するための半導体ウエハ及び絶縁性接着剤フィルムを示す断面図である。
【図2】回路面上に絶縁性接着剤層が形成された状態の半導体ウエハを示す断面図である。
【図3】回路面上に絶縁性接着剤層が形成された状態の半導体チップを示す断面図である。
【図4】本発明の実装方法に用いられるLCD上に異方導電接着剤層が形成された状態を示す断面図である。
【図5】半導体チップをLCD上に加圧・圧着する処理を示す図であり、バンプ電極と平面電極との接続部のうち1組を拡大して示す断面図である。
【図6】半導体チップがLCD上に加圧・圧着された状態を示す図であり、バンプ電極と平面電極との接続部のうち1組を拡大して示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…半導体ウエハ、13a…半導体ウエハの回路面(主面)、15…半導体ウエハのバンプ電極(突出電極)、17…半導体ウエハの絶縁性接着剤層(絶縁性接着剤層)、30…半導体チップ(電子部品)、33a…半導体チップの回路面(主面)、35…半導体チップのバンプ電極(突出電極)、37…半導体チップの絶縁性接着剤層(絶縁性接着剤層)、50…LCD(実装基板)、55…平面電極(接続用電極)、60…異方導電接着剤層、61…接着剤基材、63…導電粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の主面上に突出して形成された突出電極を実装基板上に形成された接続用電極に接続させ、前記主面を前記実装基板に対向させた状態で前記電子部品を前記実装基板上に実装する実装方法であって、
前記主面上の前記突出電極を埋め込むように絶縁性接着剤層が前記主面上に形成された前記電子部品を準備する電子部品準備工程と、
前記実装基板上に、絶縁性の接着剤基材及び当該接着剤基材中に分散された導電粒子を含む異方導電接着剤層を形成する実装基板準備工程と、
前記電子部品準備工程で準備された前記電子部品と前記実装基板準備工程で準備された実装基板を加圧し圧着させる電子部品圧着工程と、を備え、
前記電子部品準備工程では、
前記電子部品の前記絶縁性接着剤層が、前記突出電極の高さと略同じ厚さに形成され、
前記実装基板準備工程では、
前記異方導電接着剤層が、前記導電粒子の粒径と略同じ厚さに形成されることを特徴とする実装方法。
【請求項2】
前記実装基板準備工程では、
前記異方導電接着剤層の前記接着剤基材が、前記導電粒子の粒径の0.80〜1.2倍の厚さに形成されることを特徴とする請求項1に記載の実装方法。
【請求項3】
前記電子部品準備工程では、
前記電子部品の前記絶縁性接着剤層が、前記突出電極の高さの0.9〜1.1倍の厚さに形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の実装方法。
【請求項4】
前記電子部品は、バンプ電極が前記突出電極として前記主面上に突出して形成された半導体チップであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の実装方法。
【請求項5】
前記電子部品準備工程は、
前記主面上にバンプ電極が形成された半導体ウエハを準備するウエハ準備ステップと、
前記半導体ウエハの前記主面上に前記バンプ電極の高さと略同じ厚さの絶縁性接着剤層を形成させる絶縁性接着剤層形成ステップと、
前記半導体ウエハのダイシングを行い、個片化された半導体チップを前記電子部品として作製するダイシングステップと、を有することを特徴とする請求項4に記載の実装方法。
【請求項6】
回路が形成された半導体チップ本体と、前記半導体チップ本体の前記回路が存在する回路面上に形成されたバンプ電極と、を備え、
前記回路面上には、当該回路面上の前記突出電極を埋め込むように前記バンプ電極の高さと略同じ厚さに絶縁性接着剤層が形成されていることを特徴とする半導体チップ。
【請求項7】
回路が形成された半導体ウエハ本体と、前記半導体ウエハ本体の前記回路が存在する回路面上に形成されたバンプ電極と、を備え、
前記回路面上には、当該回路面上の前記突出電極を埋め込むように前記バンプ電極の高さと略同じ厚さに絶縁性接着剤層が形成されていることを特徴とする半導体ウエハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−147231(P2009−147231A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325124(P2007−325124)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】